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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】木製パネルの製造方法及び木製パネル
(51)【国際特許分類】
   B27M 1/00 20060101AFI20221205BHJP
   B27M 3/00 20060101ALI20221205BHJP
   E04C 2/20 20060101ALI20221205BHJP
   E04C 2/30 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
B27M1/00 C
B27M3/00 B
B27M3/00 C
E04C2/20 E
E04C2/30 T
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021188344
(22)【出願日】2021-11-19
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】513110849
【氏名又は名称】株式会社長谷萬
(73)【特許権者】
【識別番号】591226586
【氏名又は名称】兼松サステック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康史
(72)【発明者】
【氏名】小林 辰美
(72)【発明者】
【氏名】手塚 大介
(72)【発明者】
【氏名】角谷 俊和
(72)【発明者】
【氏名】藤井 進
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-307606(JP,A)
【文献】特開2004-237689(JP,A)
【文献】特開2016-089558(JP,A)
【文献】特開2018-066131(JP,A)
【文献】特開2004-181891(JP,A)
【文献】特開2013-052592(JP,A)
【文献】登録実用新案第3213647(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0251927(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27M 1/00 - 3/38
E04C 2/00 - 2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸方向に長手方向を有する複数の基材と各基材を締結する複数の締結木材とを備える木製パネルの製造方法であって、
第1の含水率まで乾燥させた複数本の第1の木材のそれぞれから前記基材を製材する第1の製材工程と、
前記第1の含水率より低い第2の含水率まで乾燥させた複数本の第2の木材のそれぞれから前記締結木材を製材する第2の製材工程と、
前記製材された複数の基材について長手方向に対して並行に配列し、当該複数の基材を各基材の一端部の配列方向に貫通する複数の穴を穿孔する穿孔工程と、
前記複数の穴のうち少なくとも2つ以上の穴のそれぞれに、前記製材された複数の締結木材を1本ずつ圧入することにより、前記複数の基材を締結して木製パネルを組み立てる組立工程と、
木材保存用薬剤を有機溶媒に溶解した木材保存溶液を、前記組み立てられた木製パネルに加圧注入する加圧注入工程と、
前記木製パネルに含浸させた前記木材保存溶液から前記有機溶媒を少なくとも気化又は液化させ、当該気化又は液化された前記有機溶媒を排出する溶媒排出工程と、
を備え
前記穿孔工程は、前記複数の穴を3つ以上穿孔し、
前記組立工程は、前記3つ以上の穴のうち2つ以上かつ一部の穴に対して、前記締結木材を圧入する
木製パネルの製造方法。
【請求項2】
前記第1の製材工程は、前記第1の木材のいずれかから前記基材よりも長手方向が短い中間基材をさらに製材し、
前記穿孔工程は、前記複数の基材の間に前記中間基材を配列し、当該複数の基材及び当該中間基材を配列方向に貫通するように、前記複数の穴を穿孔し、
前記組立工程は、前記締結木材により前記複数の基材及び前記中間基材を締結して前記木製パネルを組み立てる
請求項に記載の木製パネルの製造方法。
【請求項3】
前記複数の締結木材のそれぞれについて、円柱状の本体部から径方向に突出する複数の突出部を形成する突出部形成工程をさらに備える
請求項1又は2に記載の木製パネルの製造方法。
【請求項4】
一軸方向に長手方向を有し、第1の含水率まで乾燥させた複数本の第1の木材のそれぞれから製材され、長手方向に対して並行に配列され、一端部の配列方向に貫通する複数の穴をそれぞれ備える複数の基材と、
前記第1の含水率より低い第2の含水率まで乾燥させた複数本の第2の木材のそれぞれから製材され、前記複数の穴のうち少なくとも2つ以上の穴のそれぞれに、1本ずつ圧入されて前記複数の基材を締結する複数の締結木材と、
を備える木製パネルであって、
木材保存用薬剤を有機溶媒に溶解した木材保存溶液が加圧注入され、加圧注入後に前記木材保存溶液から前記有機溶媒が少なくとも気化又は液化され、当該気化又は液化された前記有機溶媒が排出され
前記複数の基材は、前記複数の穴が3つ以上穿孔され、
前記複数の締結木材は、前記3つ以上の穴のうち2つ以上かつ一部の穴に対して、1本ずつ圧入される
ことを特徴とする木製パネル。
【請求項5】
前記複数の締結木材のそれぞれは、円柱状の本体部から径方向に突出する複数の突出部を有する
請求項に記載の木製パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木製パネルの製造方法及び木製パネルに関し、特に、木材を含む基材を配列した木製パネルの製造方法及び木製パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
日本では国策として大量に植林された人工林が成長し、これらの伐期を迎えている。そのため、現在では森林資源が充実している。また、都市では木造建築が進展している。よって、木材活用の観点から、木材の平易な屋外利用が求められている。屋外であっても、より体積の大きい大断面の木材を用いることで、木材活用を促進できる。
【0003】
ところが、乾燥材を集成しまたは積層して大断面化した木材、並びに単一の材料で大断面の木材については、屋外利用が進んでいない。その理由の一つとして、大断面の木質素材は、小型の断面の木材に比べて、防腐薬剤の加圧注入が行いにくいことが挙げられる。乾燥材を集成や積層する場合、接着剤を用いる手法が多く採用されるが、こうした接着剤を用いる集成材や積層材の製造には、大掛かりな製造設備が必要であり、初期投資が掛かるため、地域の中小製材事業者や木材関係業者は参入し難い。また、中小製材事業者が都市木造で必要な木質素材の生産に関わるためには、簡易な製造技術で製造できる技術が求められる。
【0004】
ここで、特許文献1には、未乾燥木材を活用した木造構造物の製造方法に関する技術が開示されている。特許文献1にかかる技術は、変形や収縮を伴う未乾燥木材を乾燥せずに製材し、乾燥木材を用いた棒状の木材を、未乾燥材木材の連結穴部に繊維が略直交方向に挿通させ防腐薬剤を加圧注入するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-066131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1にかかる技術は、未乾燥木材の乾燥に伴う変形によって生ずる締まり羽目効果を利用して、未乾燥木材と乾燥木材とを組み立て後、防腐薬剤を加圧注入し、木材の耐久性を高め、時間の経過とともに固結して一体化させるものである。そのため、自ずと乾燥時の変形によって生ずる木材の内部応力によって、締まり羽目効果を生ずることから、棒状の木材による反力によって、寸法変化を拘束する効果は期待できるといえる。
【0007】
しかしながら、特許文献1にかかる技術では、未乾燥材を活用することから、組み立て後の内部応力による木材の微小な変形を抑制することはできず、設計時の想定寸法を経年で維持することが困難であるという問題点がある。
【0008】
本開示の目的は、上述した課題を鑑み、寸法安定性を有しつつ、防腐性能や防蟻性能等の木材保存性能を高めた木製パネルの製造方法及び木製パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の態様にかかる木製パネルの製造方法は、
一軸方向に長手方向を有する複数の基材と各基材を締結する複数の締結木材とを備える木製パネルの製造方法であって、
第1の含水率まで乾燥させた複数本の第1の木材のそれぞれから前記基材を製材する第1の製材工程と、
前記第1の含水率より低い第2の含水率まで乾燥させた複数本の第2の木材のそれぞれから前記締結木材を製材する第2の製材工程と、
前記製材された複数の基材について長手方向に対して並行に配列し、当該複数の基材を各基材の一端部の配列方向に貫通する複数の穴を穿孔する穿孔工程と、
前記複数の穴のうち少なくとも2つ以上の穴のそれぞれに、前記製材された複数の締結木材を1本ずつ圧入することにより、前記複数の基材を締結して木製パネルを組み立てる組立工程と、
木材保存用薬剤を有機溶媒に溶解した木材保存溶液を、前記組み立てられた木製パネルに加圧注入する加圧注入工程と、
前記木製パネルに含浸させた前記木材保存溶液から前記有機溶媒を少なくとも気化又は液化させ、当該気化又は液化された前記有機溶媒を排出する溶媒排出工程と、
を備える。
【0010】
本開示の第2の態様にかかる木製パネルは
一軸方向に長手方向を有し、第1の含水率まで乾燥させた複数本の第1の木材のそれぞれから製材され、長手方向に対して並行に配列され、一端部の配列方向に貫通する複数の穴をそれぞれ備える複数の基材と、
前記第1の含水率より低い第2の含水率まで乾燥させた複数本の第2の木材のそれぞれから製材され、前記複数の穴のうち少なくとも2つ以上の穴のそれぞれに、1本ずつ圧入されて前記複数の基材を締結する複数の締結木材と、
を備える木製パネルであって、
木材保存用薬剤を有機溶媒に溶解した木材保存溶液が加圧注入され、加圧注入後に前記木材保存溶液から前記有機溶媒が少なくとも気化又は液化され、当該気化又は液化された前記有機溶媒が排出された
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、寸法安定性を有し、防腐性能や防蟻性能等の木材保存性能を高めた木製パネルの製造方法及び木製パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態1にかかる木製パネルの製造方法の流れを示すフローチャートである。
図2】本実施形態1にかかる木製パネルの一例における(a)は正面図、(b)は斜視図である。
図3】本実施形態1にかかる木製パネルの他の例における(a)は正面図、(b)は斜視図である。
図4】本実施形態1にかかる木製パネルの他の例における斜視図である。
図5】本実施形態1にかかる木製パネルの他の例における(a)は正面図、(b)は斜視図である。
図6】本実施形態1にかかる木製パネルの他の例における(a)は正面図、(b)は斜視図である。
図7】本実施形態2にかかる木製パネルの一例における(a)は正面図、(b)は斜視図である。
図8】本実施形態3にかかる木製パネルの製造方法の流れを示すフローチャートである。
図9】本実施形態3にかかる木製パネルの一例における(a)は正面図、(b)は斜視図である。
図10】本実施形態4にかかる木製パネルの製造方法の流れを示すフローチャートである。
図11】は本実施形態4にかかる(基材の穴への圧入前の)木ダボの断面形状、及び、形成された突出部を示す図である。
図12】(a)は、本実施形態4にかかる基材の穴と圧入される木ダボの関係を示す概念図、(b)は本実施形態4にかかる木ダボが圧入されたことにより、突出部の先端部がめり込むことを概念的に示す図、(c)は本実施形態4にかかる圧入後の木ダボの突出部の先端部に変形部が形成されたこと、及び、穴表面と突出部との隙間に木材保存溶液が染み込むことを概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略する。
【0014】
まず、本発明の実施形態が解決しようとする課題について改めて説明する。
現在の木製パネルは乾燥させた木材同士を、接着剤で貼り付ける方法で木材同士を接合させる方法が主流である。しかしながら、接着剤を使用した木材の製造には、大掛かりな製造設備が必要であり、初期投資が掛かるため、地域の中小製材事業者や木材関係業者は参入し難い問題がある。また、接着剤を使用した木製パネルは、リサイクルやリユースしにくいという問題がある。
【0015】
また、含水率が30%を超える未乾燥材を用いた木製パネルの場合、木材は乾燥過程で含水率が約30%を下回るところで変形することから、平衡含水率になる過程で変形が避けられず、寸法安定性が求められる部位では利用ができない問題があった。
【0016】
そこで、接着剤で接合せずに、乾燥された製材を木材のみで接合して木製パネルを製造する(組み立てる)技術が求められている。しかし、木材のみで組み立てた木製パネルは、乾燥度合いによって、経年による含水率の変化の影響により変形が起こり得る。特に、家具や建築物(木造住宅等)の柱や梁といったものには、寸法の安定性が求められる。また、木製パネルを屋外で利用しようとした場合、腐朽を防止する必要があり、耐用年数の長期化が求められる。
【0017】
また、特許文献1にかかる技術では、上述したように、設計時の想定寸法を確保することが困難である。具体的には、まず、未乾燥木材に加圧注入処理を施した木材に水溶性の防腐処理剤を加圧注入処理した場合、加圧注入により細胞中が自由水で満たされ飽和状態となる。加圧注入処理後の木材が乾燥する程度は、木材の細胞構造から鑑みて、木材細胞的中の水分を強制的に排除するような乾燥を行う場合を除き、処理前の木材の乾燥状態(含水率)程度か、溶媒が水の防腐処理剤を加圧注入した場合は、処理前より高い含水率にしか乾燥されない。そのため、乾燥に伴う変形は避けられず、変形によって生ずる締まり羽目効果はあるものの、寸法安定性は限定的である。
【0018】
また、乾燥に伴う木材の寸法変化(収縮率)は、木材の繊維方向、半径方向、接線方向により異なる。一般的に、収縮率は、「繊維方向:半径方向:接線方向」で「0.5~1:5:10」と一様ではない。そして、未乾燥木材の乾燥に伴う変形によって生ずる締まり効果だけでは収縮による変形の方向性によっては緩む場合もある。
【0019】
そこで本発明者は、国産材をどのような構成にすれば屋外利用の促進を図ることができるかという点に着目し、(1)乾燥した製材(基材)及び乾燥した木ダボを組み合せて、木材の乾燥過程に伴う寸法変化を避けながら、(2)基材に幾つかの穴を穿孔させ、木ダボの貫通と、木材保存用薬剤の内部含浸の誘導に利用し、木材保存用薬剤の含浸性を高める措置を施しつつ、(3)水を溶媒としない木材保存溶液の加圧注入処理を行なうことで、水を溶媒とする木材保存溶液を加圧注入した場合と比べて、加圧注入処理後に木材細胞中の自由水の高まりによる含水率の上昇を抑制し乾燥する際の寸法変化が増大することを避け、寸法を安定させたまま、木材のみで接合された屋外利用ができる耐久性能の高いパネル化を可能とする本発明を完成させた。
【0020】
以下では、上述した課題の少なくとも一部又は全てを解決するためになされた各実施形態について説明する。
【0021】
<実施形態1>
本実施形態1にかかる木製パネルは、一軸方向に長手方向を有する複数の基材と各基材を締結する複数の締結木材とを備えるものである。図1は、本実施形態1にかかる木製パネルの製造方法の流れを示すフローチャートである。ステップS11及びS12は第1の製材工程、ステップS15及びS16は第2の製材工程、ステップS13及びS14は穿孔工程、ステップS17は組立工程、ステップS18は加圧注入工程、ステップS19は溶媒排出工程の一例である。
【0022】
まず、例えば、山で伐採された丸太を皮むきし、1本の丸太から複数本の第1の木材に製材する。ここで、第1の木材は、樹種を針葉樹とするが、これに限定されない。また、第1の木材は、最終製品である基材より一回り大きいサイズであるとよい。そして、複数本の第1の木材のそれぞれを第1の含水率まで乾燥させる(S11)。第1の含水率は、例えば、22.5%を基準とし、上下7.5%を許容範囲とする。つまり、第1の木材を含水率15%から30%の範囲まで乾燥させる。尚、木材を所定の含水率まで乾燥させる方法は、公知の人工乾燥技術を用いて構わない。
【0023】
次に、複数本の第1の木材のそれぞれから基材を製材する(S12)。例えば、1本の第1の木材を略矩形断面で所定の長さで加工し、表面を平滑にするなどして最終製品のサイズの基材とする。つまり、第1の木材A1から基材B1を製材し、第1の木材A2から基材B2を製材する。尚、1本の第1の木材から2本以上の基材を製材してもよい。尚、各基材の長手方向の断面形状や長さは、後述するように異なっていても良い。また、ステップS11及びS12の順序は問わない。例えば、各第1の木材の乾燥前又は乾燥中に、各基材を製材し、各基材を第1の含水率まで乾燥させてもよい。つまり、各基材は、ステップS13の前までに第1の含水率になっていればよい。
【0024】
続いて、製材された各基材について長手方向に対して並行に配列する(S13)。本実施形態1では、各基材を、長手方向に揃えて、隣り合う2本が接するように配列するものとする。このとき、配列された各基材を周囲から固定してもよい。
【0025】
そして、配列後の複数の基材を配列方向(各基材の一端部の配列方向)に貫通する複数の穴を穿孔する(S14)。ここで、複数の穴は、基材の長手方向の側面、幅方向の中心部に略等間隔の位置に設けられると良い。尚、複数の穴の配置は、様々なものを取り得る。また、穴の直径は、穴ごとに異なっていてもよい。但し、その場合、各穴に対応する径の大きさを有する木ダボを用いるものとする。また、穴の幅方向の位置は、木製パネルの使用時に掛かる外力によって、基材に伝わる応力の方向に基づき、木ダボに伝わる木ダボをせん断しようとする力の方向をふまえて、幅方向のうち2つある端部のいずれかの端部に偏ってもよい。このように、配列した複数の基材を固定した状態でまとめて穴を開けることで、基材ごとの穴のズレを防止し、後述する木ダボの圧入を容易にできる。
【0026】
ステップS11からS14とは独立して、複数本の第2の木材のそれぞれを第2の含水率まで乾燥させる(S15)。第2の木材は、樹種を針葉樹又は広葉樹とするが、これに限定されない。つまり、第1の木材と第2の木材は、同一の樹種であっても構わない。または、第1の木材の第1の樹種は、第2の木材の第2の樹種よりも気乾比重が小さな樹種であってもよい。例えば、第1の樹種は気乾比重0.4程度の樹種であり、第2の樹種は気乾比重0.6程度の樹種であってもよい。第2の含水率は、第1の含水率より低い、第2の含水率は、例えば、13%を基準とし、上下5%を許容範囲とする。つまり、第2の木材を含水率8%から18%の範囲まで乾燥させる。尚、ステップS11とS15とは、樹種や心材、辺材等の条件の違いに応じて、乾燥時間を適宜、変えて含水率に差を付けても良い。
【0027】
尚、第1の含水率は平衡含水率より高い含水率とし、第2の含水率は平衡含水率より低い含水率としてもよい。ここで、平衡含水率は、第1及び第2の木材を用いて後述するように製造された木製パネルが一定の温湿度下に置かれた後に、吸湿や放湿が安定した状態(平衡状態)における含水率である。例えば、木製パネルを用いて建築物が建築された場合に形成される内部空間(室内等)における平均の含水率であってもよい。
【0028】
次に、複数本の第2の木材のそれぞれから木ダボを製材する(S16)。ここで、木ダボは、上述した締結木材の一例である。また、第2の木材も上述した第1の木材と同様に、山で伐採された丸太を皮むきし、1本の丸太から複数本の第2の木材に製材してもよい。そして、例えば、1本の第2の木材から木ダボを略円形断面で所定の長さで加工して1本の木ダボとする。つまり、第2の木材C1から木ダボD1を製材し、第2の木材C2から木ダボD2を製材する。尚、1本の第2の木材から2本以上の木ダボを製材してもよい。各木ダボの長手方向の長さは、上述した複数の基材の配列後の配列方向の長さ以上であればよい。各木ダボの軸方向の断面形状の最外径は、ステップS14で基材に穿孔された穴の直径よりもわずかに大きいものとする。言い換えると、基材の穴の直径は、木ダボの直径よりも微小に小さいものとする。
【0029】
また、ステップS15及びS16の順序は問わない。例えば、各第2の木材の乾燥前又は乾燥中に、各木ダボを製材し、各木ダボを第2の含水率まで乾燥させてもよい。つまり、各木ダボは、ステップS17の前までに第2の含水率になっていればよい。
【0030】
ステップS14及びS16の後、配列後の基材の穴のそれぞれに、木ダボを配列方向と同一方向に1本ずつ圧入する(S17)。これにより、複数の基材が2以上の木ダボにより締結され、木製パネルが組み立てられる。
【0031】
その後、木材保存用薬剤を有機溶媒に溶解した木材保存溶液を、組み立てられた木製パネルに加圧注入する(S18)。これにより、木製パネル内に木材保存用薬剤及び有機溶媒を含む木材保存溶液を含浸させる。そして、木製パネル内の有機溶媒を気化及び液化して排出する(S19)。これにより、木製パネルの基材の内部、木ダボの内部、基材の間、基材と木ダボの間に木材保存用薬剤の成分が残る。尚、木製パネルに含浸させた木材保存溶液から有機溶媒を少なくとも気化又は液化させ、当該気化又は液化された有機溶媒を排出すればよい。ここで、木材への木材保存溶液の加圧注入や有機溶媒の気化及び液化並びに排出の方法は、公知技術を用いることができる。例えば、木製パネルを所定の注薬管に入れ、高い圧力をかけながら、木材保存溶液を注薬管に満たすことで、木製パネルの各基材や木ダボの内部に木材保存溶液を浸透させる。そして、一定時間後、注薬管を減圧し、有機溶媒を気化させる。また、気化された蒸気を冷却して液化してもよい。そして、木材保存溶液のうち気化された有機溶媒の蒸気や当該蒸気が液化された有機溶媒の液体を排出する。例えば、有機溶媒を注薬管から排出する。
【0032】
または、ステップS18及びS19の加圧注入工程及び溶媒排出工程は、次のように行っても良い。ここで、木材保存溶液には、不揮発性保存用薬剤を揮発性有機溶媒に溶解した溶液を用いるものとする。その上で、まず、ステップS17で組み立てられた木製パネルを、密閉型含浸タンク内に配置し、当該含浸タンクを減圧する。次に、木材保存溶液を木製パネルに含浸させるように、含浸タンク内に充満するまで木材保存溶液を導入する。例えば、木製パネルを木材保存溶液(作業液)に加圧状態で一定時間浸し続けて、作業液を木製パネルに含浸させる。そして、含浸タンクから有機溶媒を排出し、再度、含浸タンクを減圧する。減圧中の含浸タンク内で木製パネルを直接高周波加熱して木製パネル中の有機溶媒を蒸気化する。蒸気化の最中に、含浸タンクの底部に溜まる有機溶媒の蒸気を、含浸タンクの底部において直接冷却して液化する。そして、液化した有機溶媒を含浸タンクから排出する。
【0033】
ここで、本実施形態にかかる木製パネルは、単一の木材と異なり、製材された複数の基材や木ダボを組み合わせたものである。そのため、配列された基材の間、基材の穴と木ダボの隙間などに木材保存用薬剤が浸透し易い。そのため、木材保存用薬剤の効果である防腐性能及び防蟻性能等の木材保存性能が発揮され易く、木製パネルの耐久性を向上できる。
【0034】
また、ステップS18で用いる木材保存溶液は、水を溶媒としない木材保存用薬剤を有機溶媒(有機溶剤)に溶解させた溶液である。木材保存用薬剤は、木材保存処理用薬剤とも呼ばれ、防腐性能及び防蟻(例えば、耐シロアリ)性能を付与し、比較的に低毒性の薬剤を用いるとよい。また、有機溶媒は、木材保存用薬剤を溶解し、かつ、常温常圧では揮発性の液体であって蒸発及び凝縮による排出や回収に適したものを使用可能である。
【0035】
ステップS19により、有機溶媒が気化するものの水分の蒸発を最小限に抑えることができ、水分の蒸発に伴う木製パネルの形状変化も抑制できる。よって、寸法安定性を有しつつ、防腐性能及び防蟻性能等の木材保存性能を高めることができる。
【0036】
尚、本実施形態にかかる木製パネルは、基材の含水率が木ダボの含水率よりも高い状態で組み立てられる。そのため、時間の経過と共に、基材の含水率は第1の含水率から平衡含水率に近づくように低下し、木ダボの含水率は第2の含水率から平衡含水率に近づくように上昇する。これらによって、木ダボは含水率の増大により、微小な膨張が生じ、一方、基材は基材の含水率の低下、すなわち乾燥の進行によって、微小な縮小が生じる。そのため、基材の穴は広がる方向となるが、木ダボの微小な膨張が生じる。結果として、嵌合力の低下を抑制でき、長期にわたって、接合耐力を維持できる。
【0037】
図2は、本実施形態1にかかる木製パネルの一例における(a)は正面図、(b)は斜視図である。木製パネル100は、基材111、112、113、・・・と、木ダボ131~135とを備え、上述した製造方法により製造されたものである。また、木製パネル100は、有機溶媒を用いた木材保存溶液が加圧注入され、加圧注入後に有機溶媒を気化させ、かつ、木製パネル100から漏れ出た有機溶媒が回収されたものである。
【0038】
各基材111等は、一軸方向に長手方向を有し、第1の含水率まで乾燥させた第1の木材から製材され、長手方向に対して並行に配列されている。ここでは、各基材111等は、長手方向を揃えて隣り合う2本が接するように配列されている。また、各基材111等は、基材の配列方向(少なくとも各基材の一端部の配列方向)に各基材を貫通する複数の穴121から125を有する。木ダボ131から135は、第2の含水率まで乾燥させた第2の木材から製材されたものである。木ダボ131から135は、それぞれ穴121から125に対して1本ずつ圧入され、基材111等を貫通している。これにより、複数の基材が複数の木ダボにより締結される。尚、本実施形態1にかかる基材の数は、2本以上であればよい。また、本実施形態1にかかる基材の穴の数は、2以上であればよい。また、基材に設けられる複数の穴の位置はこれに限定されない。例えば、穴同士は等間隔に穿孔される必要はない。但し、基材111の穴121と122の間隔と、基材112の穴121と122の間隔とは、略同一である。木ダボが貫通するためである。また、基材に設けられる各穴の大きさは異なっても良い。また、図2では、基材110等の側面から木ダボ131等の長手方向の端部が突出しているが、突出していなくてもよい。
【0039】
図3は、本実施形態1にかかる木製パネルの一例における(a)は正面図、(b)は斜視図である。木製パネル100aは、基材111a、・・・116aと、木ダボ131、133、135とを備える。木製パネル100aは、説明を簡略化するため、基材が6本、穴が3つ、木ダボが3本としているが、基材と穴と木ダボの数は、他の木製パネルと同様であってもよい。基材111aは、基材の長手方向かつ、幅の中央付近に溝141aが設けられている。また、他の基材、例えば、基材116aは、基材の長手方向かつ、幅の中央付近に溝146aが設けられている。例えば、上述した図2のステップS12にて、基材111a~116aに溝141a~146aを設けて、加工するとよい。その後、ステップS13にて、基材111a~116aは、溝141a~146aを配列方向に合わせて配列され、ステップS14にて、溝141a~146a内を貫通するように穴121、123及び125を穿孔する。但し、配列方向と溝の位置関係や、溝と穴の関係はこれらに限定されない。ステップS17にて、木ダボ131、133、135のそれぞれは、基材111a~116aに溝141a~146aに設けられた穴121、123及び125のそれぞれに圧入される。基材への長手方向に設ける溝により、木材表面積が増えることで、基材表面からの木材保存用薬剤の吸収量の増加を期待できる。また、積層する基材間の通気も促進され、屋外で使用した際に木材が乾燥しやすくなり、耐久性の向上を期待できる。
【0040】
図4は、本実施形態1にかかる木製パネルの他の例における斜視図である。木製パネル100bは、隣接する基材の高さ(幅)が異なるものである。例えば、基材111と113の間に、基材112bが配列されている。以降の基材も同様である。つまり、木製パネル100bにおいても各基材が長手方向に対して並行に配列され、隣り合う2本が接している。そして、各木ダボは、基材111、112b、113・・・を貫通した穴に圧入されている。
【0041】
図5は、本実施形態1にかかる木製パネルの他の例における(a)は正面図、(b)は斜視図である。木製パネル100cは、基材111、112、113、・・・が長手方向に均等にずらして配列されたものである。つまり、木製パネル100cにおいても各基材が長手方向に対して並行に配列され、隣り合う2本が接している。但し、各基材を長手方向にずらした角度(各基材の一端部の配列方向、所定の傾斜角度)に沿って、貫通するように複数の穴121cから125cが穿孔されている。よって、木ダボ131から135のそれぞれは、基材111、112、113・・・の一端部の配列方向に貫通した穴121cから125cへ圧入されている。
【0042】
図6は、本実施形態1にかかる木製パネルの他の例における(a)は正面図、(b)は斜視図である。木製パネル100dは、基材111dから118dの長手方向の長さの一部が異なるものである。つまり、木製パネル100dにおいても各基材が長手方向に対して並行に配列され、隣り合う2本が接している。また、基材111dから118dの一端部は揃えて配列されている。そして、基材111dから118dは、少なくとも穴121から125が貫通している。よって、木ダボ131から135のそれぞれは、基材111dから118dの一端部の配列方向に貫通した穴121から125へ圧入されている。
【0043】
このように、本実施形態1にかかる木製パネル100、100b、100c、100dは、いずれも上述した製造方法により製造されたものであり、同様の効果を奏する。すなわち、本実施形態1にかかる製造方法は、第1の含水率まで乾燥させた針葉樹の基材の側面に略円形の複数の穴を開け、第1の含水率よりも低い第2の含水率まで乾燥させた(基材よりも過乾燥の)略円形の複数の木ダボを各穴に挿入する。このとき、木ダボの穴は、基材の穴よりも微小に大きな径であるものとする。これにより、穴の周囲に木ダボを微小にめり込ませる嵌合力により木製パネルを組み立てる。そして、組立後の木製パネルに対する木材保存溶液の加圧注入及び有機溶媒の気化及び回収を行う。
【0044】
その後の平衡含水率への乾燥状態への移行によって、穴に貫入された木ダボが緩むことなく、嵌合力が継続する。つまり、基材と木ダボの含水率が平衡含水率に近付いて変化し、微小な膨張と縮小を行うことにより嵌合度が向上する。一方、所定の含水率の乾燥木材同士(基材と木ダボ)で嵌合させるため、特許文献1のような未乾燥木材と比べて組立後の各木材の乾燥による形状の変形は、特許文献1と比べて限定的であり、寸法変化を抑制できる。
【0045】
また、溶媒が水ではなく有機溶媒である木材保存溶液を用いるため、有機溶媒が気化しても水分蒸発が少なく、組立後の各木材の形状の変形に伴う寸法変化を抑制し、形状を安定させることができる。そのため、木材の屋外利用に長期間、耐え得る防腐性能及び防蟻性能等の木材保存性能を有することができる。
【0046】
特に、木製パネルの各基材の接触面付近や基材の穴と木ダボの隙間などに木材保存用薬剤が染み込み易い。また、基材の穴形状や穴位置、穴間隔により木材保存用薬剤の浸潤を加減することができる。つまり、木製パネルの内部にも木材保存用薬剤が染み込むため、1つの木材と比べて木材保存性能が向上し、木製パネルの耐久性を向上できる。
【0047】
<実施形態2>
本実施形態2は、上述した実施形態1の変形例である。本実施形態2にかかる木製パネルの製造方法の穿孔工程は、複数の穴を3つ以上穿孔し、組立工程は、3つ以上の穴のうち2つ以上かつ一部の穴に対して締結木材を圧入するものである。つまり、残りの穴には、木ダボが圧入されない。
【0048】
図7は、本実施形態2にかかる木製パネルの一例における(a)は正面図、(b)は斜視図である。木製パネル100eは、上述した図2の木製パネル100のうち穴122及び124に木ダボが挿入されていないものである。そのため、加圧注入工程において、木材保存溶液が穴122や124に染み込み易くなり、木製パネル100eの耐久性がさらに向上する。
【0049】
<実施形態3>
本実施形態3は、上述した実施形態1の変形例である。本実施形態3にかかる木製パネルの製造方法の第1の製材工程は、第1の木材から基材よりも長手方向が短い中間基材をさらに製材する。そして、穿孔工程は、複数の基材の間に中間基材を配列し、複数の基材及び中間基材を配列方向に貫通するように、複数の穴を穿孔する。そして、組立工程は、締結木材により複数の基材及び中間基材を締結して木製パネルを組み立てる。
【0050】
図8は、本実施形態3にかかる木製パネルの製造方法の流れを示すフローチャートである。図8は上述した図1のうちステップS12からS14及びS17がS12aからS14a及びS17aに置き換わったものである。以下では、図1との違いを中心に説明し、重複する説明は適宜、省略する。具体的には、ステップS11の後、第1の木材から複数の基材及び中間基材を製材する(S12)。ここで、中間基材は、基材よりも短いものとし、穿孔する穴の数に対応する数とする。
【0051】
そして、各基材について長手方向に対して並行に配列し、その際、各基材の間に中間基材を配列する(S13a)。つまり、基材と基材の並行を保ちつつ、穴を開ける予定の位置に各中間基材を配置する。
【0052】
そして、配列後の複数の基材及び中間基材を配列方向に貫通する複数の穴を穿孔する(S14a)。ステップS14a及びS16の後、配列後の基材及び中間基材の穴のそれぞれに、木ダボを配列方向と同一方向に1本ずつ圧入する(S17a)。つまり、木ダボは、配列後の基材及び中間基材を貫通する。これにより、複数の基材と中間基材が2以上の木ダボにより締結され、木製パネルが組み立てられる。以降、上述したようにステップS18及びS19が行われる。
【0053】
図9は、本実施形態3にかかる木製パネルの一例における(a)は正面図、(b)は斜視図である。木製パネル100fは、基材111と113の間に、中間基材1121~1125が配列されている。中間基材1121~1125のそれぞれは、穴121から125のそれぞれの位置に対応した位置に配置されている。また、穴121は、基材111、中間基材1121、基材113、中間基材1141、基材115、中間基材1161、基材117、中間基材1181の順序で貫通している。そのため、木ダボ131は、穴121に挿入されることで、基材111、中間基材1121、基材113、中間基材1141、基材115、中間基材1161、基材117、中間基材1181を締結する。穴122から125並びに木ダボ132から135についても同様である。そのため、木製パネル100fは、木ダボの周辺においては、上述した木製パネル100等と同様に、第1の木材と第2の木材との嵌合力が維持される。
【0054】
また、木製パネル100fは、例えば、基材111及び113と、中間基材1121及び1122とで囲まれた空間が形成される。その他、2つの基材と2つの中間基材とで囲まれた複数の空間が形成される。そして、これらの空間は、空気が通りやすくなることで乾燥し易くなるため、木材の腐朽が発生する条件である、温度・水分・栄養・空気のうち、水分を無くし易くなる。そのため、木製パネル100fの耐久性は、上述した木製パネル100等と比べてさらに向上する。尚、本実施形態3は、実施形態2にも適用可能である。
【0055】
<実施形態4>
本実施形態4は、上述した実施形態1の変形例である。本実施形態4にかかる木製パネルの製造方法は、複数の締結木材のそれぞれについて、円柱状の本体部から径方向に突出する複数の突出部を形成する突出部形成工程をさらに備える。言い換えると、複数の締結木材のそれぞれは、円柱状の本体部から径方向に突出する複数の突出部を有する。
【0056】
図10は、本実施形態4にかかる木製パネルの製造方法の流れを示すフローチャートである。図10は上述した図1のうちステップS16の後に、ステップS16aが追加されたものである。以下では、図1との違いを中心に説明し、重複する説明は適宜、省略する。具体的には、ステップS16の後、各木ダボを切削し、断面形状に突出部を形成する(S16a)。ステップS14及びS16aの後、ステップS17以降が行われる。
【0057】
図11は、本実施形態4にかかる(基材の穴への圧入前の)木ダボの断面形状、及び、形成された突出部を示す図である。木ダボ130は、本体部1301と、複数の突出部1302とを備える。本体部1301は、断面形状が円形である。突出部1302は、本体部1301から径方向に突出する先端部を有する。よって、木ダボ130の断面形状は、略円形といえる。複数の突出部1302のそれぞれは、木ダボ130の長手方向と平行して配置され、隣接する突出部1302における本体部1301の側の端部同士が接続する。つまり、木ダボ130は、軸方向の表面に、軸方向と平行に隙間なく連続して複数の突出部を備えた形状である。言い換えると、木ダボ130は、断面形状において、円形である本体部1301の外周上に連続して複数の突出部1302が形成される。つまり、突出部1302は、本体部1301の断面外周部に遠ざかるほど先端が細くなる形状である。そのため、木ダボ130の突出部1302の先端部は、基材の穴への圧入前においては、表面に平滑面が少ないといえる。このように、基材の穴の周面と接触する木ダボの突出部の先端部の面積を小さくすることで、先端部の弾塑性変形が生じ易くなる。尚、木ダボの本体部1301の直径は、基材の穴の直径より小さいことが望ましい。
【0058】
図12(a)は、本実施形態4にかかる基材の穴と圧入される木ダボの関係を示す概念図である。実際には、複数の基材(及び中間基材)が配列されており、基材間で穴の位置が概ね一致していることから、木ダボ130が複数の基材(及び中間基材)の穴を貫通する。このとき、基材の穴表面と木ダボの突出部1302の先端部が基材の穴の径方向に押し付け合うことになるが、基材より木ダボの比重が大きいため、木ダボ130の突出部1302の先端部が、穴の周面に沿ってめり込む。つまり、微小な弾塑性変形が生じる。図12(b)は、本実施形態4にかかる木ダボ130が圧入されたことにより、突出部1302の先端部がめり込むことを概念的に示す図である。
【0059】
そして、図12(c)は、本実施形態4にかかる圧入後の木ダボの突出部の先端部に変形部が形成されたこと、及び、穴表面と突出部との隙間に木材保存溶液が染み込むことを概念的に示す図である。つまり、突出部1302の接触部と基材の穴表面の接触部が穴の周面に沿って塑性変形し、変形部1304を形成する。そのため、木ダボの圧入時に、突出部がめり込む(弾塑性変形が生じる)ことにより、上述した実施形態1から3と比べて、嵌合度が高まる。
【0060】
そして、穴表面と突出部との間には、突出部がない場合と比べて、隙間21が生じる。そのため、加圧注入工程により隙間21に木材保存溶液が浸透22する。つまり、上述した実施形態1から3と比べて、木材保存用薬剤が染み込み易くなり、木製パネルの耐久性がさらに向上する。尚、本実施形態4は、実施形態2又は3にも適用可能である。
【0061】
<その他の実施形態>
尚、上述した各実施形態では、木製パネルを構成する複数の基材の全てが第1の木材である場合について説明した。このように、基材の全てが木材であるため、木ダボとの嵌合度が高くパネル全体の嵌合度が向上する。但し、木製パネルを構成する基材は、少なくとも2本以上が木材であればよい。また、複数の基材は、同一寸法に限定されず、さらに、同一樹種に限定せずに、複数の寸法及び樹種を基材として複合的に使用することも可能である。また、基材は、正確な矩形断面ではない入り皮つきや丸身つきの木材も含めて使用してもよい。これにより、意匠性が高まり、従来では使用が限定された木質部材を有効活用できる。また、基材の接触面の一部に予め加工を施しても良い。
【0062】
尚、本開示では、図1のステップS13、S17、S18及びS19を必須とし、他のステップは、別途行われても構わないものとする。例えば、基材はステップS11により乾燥済みで、ステップS13により各基材で個別に穿孔を行ったものを用いて木製パネルを製造してもよい。
【0063】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本開示は、それぞれの実施の形態を適宜組み合わせて実施されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
100 木製パネル
110~118 基材
111a、116a、111d~118d 基材
121~125 穴
130~135 木ダボ
1301 本体部
1302 突出部
1303 先端部
1304 変形部
141a、146a 溝
100a~100f 木製パネル
112b 基材
121c~125c 穴
1121~1125 中間基材
1141 中間基材
1161 中間基材
21 隙間
22 木材保存溶液の浸透
【要約】
【課題】寸法安定性を有しつつ、木材保存性能を高めること。
【解決手段】木製パネルの製造方法は、第1の含水率まで乾燥させた複数本の第1の木材のそれぞれから基材を製材する第1の製材工程と、第1の含水率より低い第2の含水率まで乾燥させた複数本の第2の木材のそれぞれから締結木材を製材する第2の製材工程と、製材された複数の基材について長手方向に対して並行に配列し、当該複数の基材を配列方向に貫通する複数の穴を穿孔する穿孔工程と、複数の穴のうち少なくとも2つ以上の穴のそれぞれに、製材された複数の締結木材を1本ずつ圧入することにより、複数の基材を締結して木製パネルを組み立てる組立工程と、木材保存用薬剤を有機溶媒に溶解した木材保存溶液を、組み立てられた木製パネルに加圧注入する加圧注入工程と、木製パネルから有機溶媒を少なくとも気化又は液化させ、気化又は液化された有機溶媒を排出する溶媒排出工程と、を備える。
【選択図】図1
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図10
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