(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】廃棄物処理装置および方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/40 20220101AFI20221205BHJP
B01D 53/38 20060101ALI20221205BHJP
C10B 53/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
B09B3/40
B01D53/38 ZAB
C10B53/00 A
(21)【出願番号】P 2022025111
(22)【出願日】2022-02-21
【審査請求日】2022-09-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522066919
【氏名又は名称】株式会社エイコー
(73)【特許権者】
【識別番号】522069312
【氏名又は名称】梅田 忠利
(74)【代理人】
【識別番号】100159019
【氏名又は名称】石井 弥
(72)【発明者】
【氏名】梅田 忠弘
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-343364(JP,A)
【文献】特開平10-85700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/40
B01D 53/38
C10B 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電熱ヒータによって加熱温度調整された気体で熱源体を直接加熱し、この熱源体の輻射熱で熱分解処理槽内の廃棄物を加熱して熱分解処理する熱分解処理ユニットと、
前記熱分解処理によって発生した排気を冷却浄化処理ユニットに送る排気配管ユニットと、
前記排気を冷却浄化槽内で水微粒子雰囲気に晒して冷却処理するともに前記排気中の不純物質を捕獲して浄化処理する前記冷却浄化処理ユニットと、
前記冷却処理および浄化処理された気体をブロア加圧するとともに、前記電熱ヒータで加熱温度調整し、この加熱温度調整された気体を前記熱分解処理ユニット内の前記熱源体に向けて略水平方向から放出する帰還浄気配管ユニットとを備え、
こられのユニットによって構成された閉鎖空間領域内で廃棄物の熱分解処理が開始から終了までなされることを特徴とする廃棄物処理装置。
【請求項2】
前記熱分解処理ユニットは、前記閉鎖空間領域の熱分解処理部分を構成する熱分解タンク部と、前記熱分解タンク部の天面および底面ならびに側面から離間するように前記熱分解タンク部内に設けられ、その天面が開放され、その側面および底面が網体または多孔体で構成され、投入された廃棄物が熱分解処理される熱分解処理槽部と、前記熱分解タンク部の天部にロードロック構造で凸設され、廃棄物を前記熱分解処理槽部内に投下する廃棄物搬入部と、前記熱分解タンク部の底面と前記熱分解処理槽部の底面の間に設けられ、ヒータ部からの加熱温度調整気体によって加熱されて輻射熱を放出する熱源部とを有し、
前記排気配管ユニットは、前記熱分解タンク部内の天面またはこの天面近傍の側面と冷却浄化処理槽部内の側面との間に繋設され、前記熱分解タンク部内の熱分解による発生気体を前記冷却浄化処理槽部内に送る排気配管部と、前記排気配管部の途中に設けられ、前記閉鎖空間領域の熱分解処理部分の少なくとも圧力および温度を測定する測定手段とを有し、
前記冷却浄化処理ユニットは、前記閉鎖空間領域の熱分解による排気の冷却および浄化処理部分を構成する冷却浄化タンク部と、前記冷却浄化タンクの天面および底面ならびに側面から離間するように前記冷却浄化タンク部内に設けられ、その天面が閉成されるとともに、その底面が開放され、前記排気が水微粒子によって冷却および浄化処理される前記冷却浄化処理槽部と、前記冷却浄化タンク部内の底部に貯められた水を微粒子化させ、この水微粒子を前記冷却浄化処理槽部内に放出する冷却浄化水微粒子生成手段とを有し、
前記帰還浄気配管ユニットは、前記冷却浄化処理槽部内の天面近傍の側面と前記熱源部を略水平方向に延長した位置の前記熱分解タンク部内の側面との間に繋設され、前記冷却浄化タンク部内の冷却および浄化された気体を前記熱分解タンク部内に送る帰還配管部と、前記帰還配管部の途中に設けられ、前記冷却浄化タンク部からの気体を加圧するブロワ部と、前記帰還配管部の前記熱分解タンク部側の端部に設けられ、前記ブロワ部からの加圧気体を電熱体によって加熱温度調整し、この加熱温度調整気体を前記熱源体部に放出する前記ヒータ部とを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理装置。
【請求項3】
前記帰還浄気配管ユニットは、前記ブロワ部と前記ヒータ部の間の前記帰還配管部から分岐されて、前記熱分解タンク部内の側面であって前記ヒータ部よりも前記熱分解タンク部の天面側に繋設された分岐配管部と、前記分岐配管部の前記熱分解タンク部側の端部に設けられ、前記ブロワ部からの加圧気体を電熱体によって加熱温度調整し、この加熱温度調整気体を前記熱分解処理槽部に向けて放出する補助ヒータ部とをさらに有することを特徴とする請求項2に記載の廃棄物処理装置。
【請求項4】
前記冷却浄化処理槽部は、天面が閉成され、底面が開口され、天面よりも底面の面積が小さい逆瓶体であり、
この冷却浄化処理槽部の底側の端部と前記冷却浄化タンク部の底部に貯められた水の表面との垂直離間距離が約1cmである
ことを特徴とする請求項2または3に記載の廃棄物処理装置。
【請求項5】
廃棄物を大気から遮断された閉鎖空間領域内で熱分解処理して炭化あるいは無機化させる廃棄物処理方法であって、
廃棄物を前記閉鎖空間領域内に配置された熱源部によって加熱し、
前記廃棄物から揮発した排気気体を、前記閉鎖空間領域内に配置された水微粒子発生部によって生成された水微粒子雰囲気に晒して冷却するとともに含有不純物質を捕獲して浄化し、
この冷却および浄化された気体を、前記閉鎖空間領域内に配置されたブロワ部によって加圧するとともに、前記閉鎖空間領域内に配置されたヒータ部によって加熱温度調整し、
この加熱温度調整された気体を略水平方向から前記熱源部に向けて放出する
ことを特徴とする廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機質の廃棄物、例えば、レジ袋や洗剤容器などのプラスチック廃棄物,食品廃棄物,衣類廃棄物,古タイヤや古長靴などのゴム製廃棄物,木製廃棄物,使用済み紙オムツなどの介護廃棄物、さらには使用済みガーゼや注射器容器部などの医療廃棄物等を、熱分解処理して炭化あるいはさらに無機質化させる廃棄物処理装置および廃棄物処理方法に関し、特に、閉鎖空間領域内で廃棄物ならびに熱源部および排気処理部に燃焼を伴うことなく、熱分解処理ができる装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前から、プラスチックやゴム、さらには紙オムツなどの介護廃棄物を熱分解処理してセラミック化する技術が提案されており、これらのいくつかはすでに実使用されている。
【0003】
このような廃棄物の処理装置は、微量の酸素雰囲気下あるいは酸素欠乏雰囲気下で廃棄物を加熱して炭化あるいはさらに無機質化させ、排気を触媒等によって浄化するとともに空冷する構成である。
【0004】
例えば、大気中の酸素を永久磁石によって作られた磁界を通して活性化させ、この活性化空気を熱分解処理室に微量送り込み、廃棄物の熱分解を促進させるものがある(特許文献1,2参照)。
【0005】
また例えば、負イオン発生器を設けた大気(空気)開放通路で負イオン空気を生成し、この負イオン空気を熱分解処理室に送り込み、廃棄物の熱分解を促進させるものがある(特許文献3,4参照)。
【0006】
また、廃棄物の加熱については、粉状セラミック層やセラミック素材を熱源とし、この熱源を石炭やコークスを燃焼させて加熱するものや処理室の底部に電気ヒータを設けて上記の熱源を加熱するものがあり(特許文献3,5参照)、排気の処理については、長い排気路中に加熱触媒を設けて冷却および浄化し、大気中に放出するものがある(特許文献5参照)。
【0007】
なお、廃棄物の熱分解技術ではないが、塗装時に発生する塗料の不要粒子を、水の微細ミストによって捕獲する技術がある(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-128781号公報
【文献】特開2010-058103号公報
【文献】WO2005/110634
【文献】特開2015-059664号公報
【文献】特開2019-131823号公報
【文献】特開2014-018641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来技術では、熱源の加熱に石炭等の燃焼熱を用いるため、あるいは大気解放の高温の触媒によって排気が燃焼する可能性があるため、非燃焼下での熱分解処理とは言い難い部分がある。
【0010】
また、大気を磁界や負イオン発生器を通して処理室内に取り入れる空気流入口があるため、あるいは酸化触媒を通して排気を大気中に放出しているため、正常な熱分解処理時にも汚染排気を大気中に放出してしまうおそれがある。
【0011】
このように、従来の技術では、閉鎖空間領域内で非燃焼熱分解処理(被熱分解処理物のみならず装置の熱源部および排気処理部にも燃焼部位が存在しない熱分解処理)がなされているとは言い難い構成であった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであって、廃棄物の非燃焼熱分解処理を閉鎖空間領域(熱分解処理部分のみならずシステム全体として大気から遮断された空間領域)内で可能とする廃棄物処理装置および廃棄物処理方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の廃棄物処理装置は、電熱ヒータによって加熱温度調整された気体で熱源体を直接加熱し、この熱源体の輻射熱で熱分解処理槽内の廃棄物を加熱して熱分解処理する熱分解処理ユニットと、前記熱分解処理によって発生した排気を冷却浄化処理ユニットに送る排気配管ユニットと、前記排気を冷却浄化処理槽内で水微粒子雰囲気に晒して冷却処理するともに前記排気中の不純物質を捕獲して浄化処理する冷却浄化処理ユニットと、前記冷却浄化処理された気体をブロア加圧するとともに、前記電熱ヒータで加熱温度調整し、この加熱温度調整された気体を前記熱分解処理ユニット内の前記熱源体に向けて略水平方向から放出する帰還浄気配管ユニットとを備え、こられのユニットによって構成された閉鎖空間領域内で廃棄物の熱分解処理が開始から終了までなされることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の廃棄物処理方法は、廃棄物を大気から遮断された閉鎖空間領域内で熱分解処理して炭化あるいは無機化させる廃棄物処理方法であって、廃棄物を前記閉鎖空間領域内に配置された熱源部によって加熱し、前記廃棄物から揮発した排気気体を、前記閉鎖空間領域内に配置された水微粒子発生部によって生成された水微粒子雰囲気に晒して冷却するとともに含有不純物質を捕獲して浄化し、この冷却および浄化された気体を、前記閉鎖空間領域内に配置されたブロワ部によって加圧するとともに、前記閉鎖空間領域内に配置されたヒータ部によって加熱温度調整し、この加熱温度調整された気体を前記熱源部に向けて略水平方向から放出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電熱ヒータによる加熱気体を略水平方向(水平方向に加えて斜め上方向および斜め下方向を含み、垂直方向を除く)から放出して熱源体を直接加熱し、この熱源体の輻射熱で廃棄物を加熱して熱分解処理し、この熱分解処理によって発生した排気を水微粒子雰囲気内で冷却するとともに上記の排気に含まれる不純物質(熱分解発生物質)を捕獲することによって浄化し、この冷却浄化処理された気体を上記の電熱ヒータで気流のまま加熱温度調整(所定温度に加熱することであるが、加熱せずに温度を変動させない場合も含む)して、上記の熱源体に向けて放出することにより、廃棄物の非燃焼熱分解処理が閉鎖空間領域内で可能となるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態の廃棄物処理装置の構成を説明する模式概念図である。
【
図2】本発明の他の実施の形態の廃棄物処理装置の要部構成を説明する模式概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の実施の形態の廃棄物処理装置の構成を説明する模式概念図である。この
図1のように、本実施の形態の廃棄物処理装置は、熱分解処理ユニット100と、排気配管ユニット200と、冷却浄化処理ユニット300と、帰還浄気配管ユニット400とを備えて構成される。そして、本実施の形態の廃棄物処理装置では、こられのユニットによって廃棄物熱分解処理の開始から終了まで空気の出入りがない(大気から遮断された)閉鎖空間領域が構成される。
【0018】
熱分解処理ユニット100は、熱分解タンク部110と、熱分解処理槽部120と、廃棄物搬入部130と、熱源部140とを有して構成されている。排気配管ユニット200は、排気配管部210と、圧力測定部220と、温度測定部230と、排気フィルタ部240と、非常時ベント部250とを有して構成されている。冷却浄化処理ユニット300は、冷却浄化タンク部310と、冷却浄化処理槽部320と、水循環配管部330と、水フィルタ部340と、水循環ポンプ部350と、水微粒子発生部360とを有して構成される。帰還浄気配管ユニット400は、帰還配管部410と、ブロワ部420と、ヒータ部430と、輻射熱遮断部440とを有して構成される。
【0019】
熱分解タンク部110は、本実施の形態の廃棄物処理装置に上記4つのユニットによって構成されるシステム全体としての閉鎖空間領域の内、熱分解処理領域部分を構成するものである。この熱分解タンク部110の内部は、廃棄物の熱分解処理の開始から終了まで大気から遮断される構造であり、内部の気体は排気配管部210にのみ流出し、内部に流入する気体は帰還配管部410からヒータ部430を介して流入する冷却浄化タンク部310からの気体のみである。なお、熱分解処理によって熱分解タンク部110内に残る炭化物または無機化物を排出するため、その他メンテナンス等のため開閉部を熱分解タンク部110の底面近傍の側面に設けることが望ましい。
【0020】
排気配管部210は、熱分解タンク部110内部と冷却浄化処理槽部320内部とを挿通するように熱分解タンク部110の天面と冷却浄化処理槽部320の側面との間に繋設され、熱分解タンク部110内での熱分解処理による揮発気体を冷却浄化処理槽部320内に送る役目を担っている。なお、排気配管部210は、熱分解タンク部110の天面近傍の側面に繋設された構成とすることも可能である。また、排気配管部210は、排気抵抗を増加させないために、L字(直角)配管を避けて、配管曲率をでき得る範囲で大きくすることが望ましい。
【0021】
冷却浄化タンク部310は、本実施の形態の廃棄物処理装置に上記4つのユニットによって構成されるシステム全体としての閉鎖空間領域の内、冷却浄化処理領域部分を構成するものである。この冷却浄化タンク部310の内部は、廃棄物の熱分解処理の開始から終了まで、従って排気の冷却および浄化処理の開始から終了まで、大気から遮断される構造であり、内部に流入する気体は排気配管部210からの排気のみであり、内部の冷却および浄化された気体は帰還配管部410にのみ流出する。なお、冷却浄化タンク部310内の底部には、排気の冷却および浄化のための水311が貯められているが、この水311を新たに供給するための給水部、および熱分解処理を終了したあとの水311を排出するための排水部を、冷却浄化タンク部310に設けることが望ましい。
【0022】
帰還配管部410は、冷却浄化タンク部310内部と熱分解タンク部110内部とを挿通するように冷却浄化タンク部310の天面と熱分解タンク部110の側面の熱源部140を略水平方向に延長した位置との間に繋設され、冷却浄化タンク部310内の冷却処理および浄化処理された気体を熱分解タンク部110内に送る役目を担っている。なお、帰還配管部410は、冷却浄化タンク部310の天面近傍の側面に繋設された構成とすることも可能である。また、帰還配管部410は、排気配管部210と同様に、排気抵抗を増加させないために、L字(直角)配管を避けて、配管曲率をでき得る範囲で大きくすることが望ましい。
【0023】
熱分解処理槽部120は、熱分解タンク部110の天面および底面ならびに側面から離間するように熱分解タンク部110内に設けられ、その天面が開放され、その側面および底面が通気性を有する網体または多孔体で構成され、その内部に投入された廃棄物が熱分解処理される槽である。この熱分解処理槽部120として、ここでは周面(側面)が多孔構造、底面が網構造の円筒ステンレス槽を使用する。
【0024】
廃棄物搬入部130は、熱分解タンク部110の天部にロードロック構造で凸設され、廃棄物を熱分解処理槽部120内に投下する役目を担っている。ロードロック構造は、開閉可能な蓋または扉(蓋扉とする)を大気側と処理室側に二重に設け、2つの蓋扉が同時に開成されないようにしたものであり、被処理物を両蓋扉の間に一時保管するものである。このようなロードロック構造は、通常は大気圧下から負圧または正圧の処理室内にスムーズに移送するために使用されるものであるが、この廃棄物搬入部130では、安全確保、熱分解処理時の燃焼防止のためにロードロック構造を採用する。つまり、被熱分解処理物である廃棄物の熱分解処理中に、作業者が誤って大気側の蓋扉を開いてしまっても、本実施の形態の閉鎖空間領域を大気開放することなく保持して、熱分解処理槽部120に大気が流入し、廃棄物が燃焼して炎が上がるのを防止するための構造である。
【0025】
熱源部140は、熱分解処理槽部120の底面と熱分解タンク部110の底面の間の空隙に熱源体が配置された構成であり、ヒータ部430からの加熱温度調整気体によって加熱されて輻射熱を放出し、この輻射熱によって主として熱分解処理槽部120内を加熱するものである。本実施の形態における熱源部140では、熱源体としてセラミック体を使用する。
【0026】
ブロワ部420は、帰還配管部410の途中に設けられ、電動ブロワによって構成され、冷却浄化処理ユニット300によって冷却浄化処理されて帰還配管部410に流入した気体を所定の送風力でヒータ部430側(熱分解処理ユニット100側)に向けて加圧(ブロワ加圧)する。このブロワ部420は、大気開放されている部位は無く、本実施の形態の廃棄物処理装置による閉鎖空間領域内で動作する。
【0027】
ヒータ部430は、帰還配管部410の熱分解タンク部110側の端部(帰還配管部410と熱分解タンク部110の繋設部)に設けられ、電熱ヒータによって構成され、ブロワ部420を介した帰還配管部410内の冷却浄化処理および加圧された気流を、その流速を損なうことなく(流速抵抗とならないようにして)そのまま所定温度に加熱温度調整し、この加熱温度調整気体を熱分解処理ユニット100内の熱源体部140に向けて略水平方向から放出する。ヒータ部430として、ここでは円筒電熱体の電熱ヒータを使用する。この電熱ヒータは、流入した冷却浄化された気体をその流速を加熱温度調整し、この加熱調整気体を放出するものである。
【0028】
輻射熱遮断部440は、ヒータ部430の気流放出側に設けられ、ヒータ部430から放出された加熱気体によって加熱された熱源部140からの輻射熱を遮断して、この輻射熱がヒータ部430に逆流するのを防止する役目を担っている。この輻射熱遮断部440は、ヒータ部430を上記の輻射熱から保護するために設けることが望ましい。輻射熱遮断部440として、ここでは、ヒータ部430から放出される加熱気流の流速抵抗とならないような目の粗さのスチールウール断熱体を使用する。
【0029】
圧力測定部220は、排気配管部210の途中、熱分解処理タンク部110の近くに設けられ、主として熱分解処理タンク部110内の圧力を測定する圧力計である。また、温度測定部230は、排気配管210の途中、熱分解処理タンク部110の近くに設けられ、主として熱分解処理タンク部110内の温度を測定する温度計である。
【0030】
これらの圧力測定部220および温度測定部230は、本発明の測定手段を構成している。なお、圧力測定部220または/および温度測定部230を熱分解処理タンク部110の天面または側面に設けた構成とすることも可能である。
【0031】
排気フィルタ部240は、排気配管部210の途中に設けられ、熱分解タンク部110からの排気中に含まれる比較的径の大きな不純物質をフィルタリングするものであり、排気を冷却浄化処理する前処理部分として、設けることが望ましい。排気フィルタ部240として、ここではスチールウール製フィルタを使用する。この排気フィルタは、排気流の大きな抵抗にならないほどの目の粗さのものとすることが望ましい。
【0032】
非常時ベント部250は、排気配管部210の途中に設けられており、もしも熱分解処理中に本実施の形態の廃棄物処理装置内の圧力または温度が所定値を超えて上昇した場合に、この廃棄物処理装置の閉鎖空間領域を大気解放する役目を担っている。この非常時ベント部250は、リスク管理面(非常時の安全確保の面)から設けることが望ましい。非常時ベント部250は、逆止弁構造になっており、廃棄物処理装置内があらかじめ設定されたている圧力以下および温度以下であるとき、つまり廃棄物処理装置が正常に熱分解処理運転されているときには、決して開成されることはなく、廃棄物処理装置内に空気を流入させることはない。
【0033】
冷却浄化処理槽部320は、冷却浄化タンク部310の天面および底面ならびに側面から離間するように冷却浄化タンク部310内に設けられ、天面が閉成され、底面が開口され、その内部に排気配管部210によって送られた排気が水微粒子発生部360によって生成された水微粒子の雰囲気に晒されて冷却および浄化処理される槽である。この冷却浄化処理槽部320として、ここでは逆瓶体のステンレス槽を使用する。この冷却浄化処理槽部320は、天面と底面の面積が同じである槽を使用することも可能であるが、排気の浄化能力を上げるために底面の開口面積を天面の面積および逆瓶体の途中の水平断面積よりも小さくした(開口を狭めた)構成とすることが望ましい。
【0034】
水循環配管部330は、冷却浄化タンク部310内部と冷却浄化処理槽部320内部とを挿通するように冷却浄化タンク部310の底面または底面近傍の側面との冷却浄化処理槽部320の天面または天面近傍の側面との間に繋設され、冷却浄化タンク部310内の底部に貯められた水311を、水循環ポンプ部350と協働して水微粒子発生部360に送る役目を担っている。この水循環配管部330は、水流抵抗を増加させないために、L字(直角)配管を避けて、配管曲率をでき得る範囲で大きくすることが望ましい。
【0035】
水フィルタ部340は、水循環配管部330の途中に設けられ、排気から捕獲されて冷却浄化タンク部310底部の水311に溶け込んだ不純物をフィルタリングする役目を担っている。水フィルタ部340として、ここでは、頻繁に目詰まりを起こすことを防止するために、最小60μmオーダーの布製あるいは紙製フィルタを使用する。
【0036】
水循環ポンプ部350は、水循環配管部330の途中、水フィルタ部340と水微粒子発生部360(水循環配管部330の冷却浄化処理槽部320側の端部)との間に設けられ、フィルタリングされた水311を揚圧して水微粒子発生部360に供給する。
【0037】
水微粒子発生部360は、水循環配管部330の冷却浄化処理槽320側の端部、冷却浄化処理槽320内部の天面近傍の位置に設けられ、水循環ポンプ部350によって揚圧された水311から水微粒子を生成し、この水微粒子を冷却浄化処理槽320内に放出して水微粒子雰囲気を形成する。水微粒子発生部360として、ここでは発生水微粒子径がnmオーダーであるナノミストまたはナノバブル発生器を使用する。
【0038】
これらの水循環配管部330、水フィルタ部340、水循環ポンプ部350、および水微粒子発生部360は、冷却浄化タンク部310内底部に貯められた水311を微粒子化させ、この水微粒子を冷却浄化処理槽部320内に放出する本発明の冷却浄化水微粒子生成手段を構成している。この冷却浄化水微粒子生成手段において、水フィルタ部340を設けない構成とすることも可能である。なお、冷却浄化タンク部310内に貯められた水311は、初期段階で、冷却浄化処理槽部320の下端部(底側の端部)から離間した水位であることが必要であり、この垂直離間距離(冷却浄化処理槽部320の下端部と水311の表面との距離)は約1cmであることが望ましい。
【0039】
ところで、本実施の形態の閉鎖空間領域における非燃焼廃棄物熱分解プロセスに近似する技術として、石油精製技術がある。石油精製は、液体である重油を加熱することによって所望の液体油種を分離する加熱分離処理であり、所望油種成分を気化分離し、この気化油分を冷却して液化させ、所望の油種を得る技術である。
【0040】
例えば、重油を約100℃で継続加熱することにより、重油からガソリン成分のみが気化され、この気化成分を冷却することにより液体のガソリンが得られる。また、例えば、200℃で継続加熱することにより、軽油が得られる。この分離プロセスにおいて、加熱によって所望の油種成分の気化が始まると、重油自体において自家発熱が開始され、加熱を弱めても重油は所定温度に保持される。
【0041】
このような石油精製プロセスは、重油を入れた加熱用タンクと冷却用タンクを配管で接続し、空気を遮断した閉鎖空間領域においてなされ、加熱用タンクを所定温度で加熱して発生する気化成分が、配管を通して冷却用タンクに送られ、冷却タンク内で冷却されて再び液体となり、所望の液体油種が冷却タンク内に貯蔵される。
【0042】
本実施の形態の廃棄物処理装置による廃棄物熱分解プロセスについて以下に説明する。まず、廃棄物搬入部130の天側の蓋扉を開けて被熱分解処理物である廃棄物を投入する。このとき、廃棄物搬入部130の底側の蓋扉は閉成されており、投入された廃棄物は廃棄物搬入部130内に留まる。このあと、廃棄物搬入部130の天側蓋扉を閉じてから底側蓋扉を開いて廃棄物搬入部130内の廃棄物を熱分解処理槽部120内に投下し、そのあと底側蓋扉を閉じる。
【0043】
また、あらかじめ冷却浄化タンク部310内の底部に水311を貯めておく。このとき、水面が冷却浄化処理槽部320の底端部に届かないようにすることが必要であって、この底端部から約1cm下側(冷却浄化タンク部310の底面側)に水面を位置させることが望ましい。
【0044】
次に、ヒータ部430およびブロワ部420ならびに水循環ポンプ部350のスイッチをONしてこれらを稼働させる。なお、ブロワ部420および水循環ポンプ部350は、ヒータ部430よりも所定のタイミング遅れて、つまり廃棄物の熱分解が始まるのを待ってONすることも可能である。
【0045】
ヒータ部430によって熱源部140が加熱されると、熱源部140は輻射熱を放出し始め、この輻射熱によって熱分解処理槽部120が底面から加熱され、熱分解処理槽部120内の温度(従って熱分解タンク部110内の温度)が上昇し始める。そして、熱分解処理槽部120内の温度(廃棄物の温度、ただし最初は主として廃棄物の下層部分の温度)が60~200℃になると、まず廃棄物の主として下層部分から水分および油分が揮発し始め、廃棄物の乾燥が徐々に進む(乾燥プロセス)。
【0046】
廃棄物から水分や油分が十分に揮発して廃棄物が乾燥し、熱分解処理槽部120内の温度が350℃程度まで上昇すると、廃棄物中の高分子の分解が開始され、廃棄物は炭化して黒みを帯びてくる(熱分解炭化プロセス)。このとき、廃棄物は炭化されるに従って揮発気体の放出とともに自家発熱し、この自家発熱は熱分解処理槽部120内の温度を一定温度に保つための補助的な役目をする。
【0047】
さらに、熱分解処理槽部120内の温度が800℃程度まで上昇するに従って、廃棄物の低分子化が徐々に進み、炭化廃棄物は無機化してくる(熱分解無機化プロセス)。この無機化プロセスにおいても炭化廃棄物は熱分解されるに従って揮発気体の放出とともに自家発熱する。なお、炭化プロセスが終了する時期にヒータ部140をOFFする等によって熱分解処理槽部120内の温度を無機化プロセスが始まる温度まで上昇させないようにすれば、熱分解生成物を炭化廃棄物として熱分分解プロセスを終了することも可能である。
【0048】
このような熱分解プロセスにおいて、熱分解処理槽部120内の廃棄物からの揮発気体の一部は、熱分解処理槽部120の開放された天面から排気配管部210内に流入して冷却浄化処理槽部320内に達する。また、揮発気体の他の一部は、熱分解処理槽部120の側面の多孔を通って熱分解タンク部110の内側面との隙間領域に達し、上昇して排気配管部210内に流入し、冷却浄化処理槽部320内に達する。さらにまた、揮発気体の残りの一部は、熱分解処理槽部120の底面の網目から熱源部140との隙間領域に達し、そこから熱分解処理槽部120と熱分解タンク部110との側面隙間領域を上昇して排気配管部210内に流入し、冷却浄化処理槽部320内に達する。
【0049】
本実施の形態の廃棄物処理装置では、熱分解タンク部110の内面(内側面,内底面,内天面)から離間するように(熱分解タンク部110内面との間に隙間ができるように)熱分解処理槽部120が設けられており、この熱分解処理槽部120の側面部および底面部が通気性を有する構造であるとともに天面部が開放された構成なので、廃棄物からの揮発気流が上記のように3通りの経路で排気配管部210内に送られる。
【0050】
また、本実施の形態の廃棄物処理装置では、熱源部140を熱分解処理槽部120の下側(底側)に配置しているので、熱分解処理槽部120内での熱分解プロセスは、廃棄物の下層(底側の層)から上層(天側の層)に向けて層順次に進む。つまり、廃棄物において、乾燥層,炭化層,無機化層(無機化プロセスをする場合)は、それぞれ上層から下層に向けて移動し、同じ層部分については乾燥層,炭化層,無機化層の順に変化していく。従って、例えばある時点で、廃棄物の下層部分が無機化層、中間層部分が炭化層、上層部分が乾燥層となっており、無機化プロセス中の層と炭化中の層と乾燥中の層とが混在することになる。
【0051】
本実施の形態では、熱分解タンク部110内に熱分解処理槽部120を設けて二重構造とし、熱分解処理槽部120を通気性の底面および側面で構成するとともに、熱分解処理槽部120の底面と熱源部140との間、および熱分解処理槽部120の側面と熱分解タンク部110の内側面との間に隙間ができる構成としている。これによって、廃棄物の下層からの揮発気流は、もっぱら熱分解処理槽部120の底面またはこの近傍の側面から上記の隙間に誘導されて排気配管部210に導かれ、廃棄物の中間層からの揮発気流は、もっぱら熱分解処理槽部120の側面から上記の隙間に誘導されて排気配管部210に導かれ、廃棄物の上層からの排気流は、もっぱら熱分解処理槽部120の開放された天面から排気配管部210に導かれ、廃棄物からの揮発気体を速やかに(高い排気効率で)冷却浄化処理ユニット300に送ることができる。
【0052】
熱源体の上に直に被熱分解処理物である廃棄物を載せると、廃棄物から揮発した水分や油分が再び液化して熱源体を湿らせ、熱源体の働きを阻害するおそれがある。しかし、本実施の形態では、熱分解タンク部110内を上記の二重構造として熱分解処理槽部120と熱源部140の間に隙間ができる構造とした上、熱分解処理槽部120を通気性のある底面および側面で構成し、さらに熱分解処理槽部120の側面と熱分解タンク部110の内側面との間に隙間ができる構成とすることによって、上記揮発した水分や油分の気体を熱分解処理槽部120の底面からあるいは側面から熱分解タンク部110の内側面との隙間に誘導して、気体のまま上昇させて排気配管部210に導くので、熱源部140を湿らせてその働きを阻害することを回避できる。
【0053】
また、熱源体の下側(底側)にヒータを設けた構成にすると、熱源体を濡らした再液化した水分や油分(特に酸性の液体)がヒータを湿らせ、ヒータの働きを阻害するおそれがある。しかし、本実施の形態では、ヒータ部430を熱分解タンク部110の側面に加熱温度調整気体の放出端部が熱分解タンク部110内に僅かに突出するようにして熱源部140の略水平方向の位置に設けているので、もしも揮発気体が再液化しても、これによってヒータ部430の働きが阻害されるのを回避できる。
【0054】
排気配管部210から冷却浄化処理ユニット300の冷却浄化処理槽部320内に送られた廃棄物からの揮発気体は、水微粒子発生部360から放出された水微粒子による雰囲気に晒される。そして、この水微粒子によって冷却されるとともに不純物質(廃棄物から揮発した気体に含まれる油分その他の有機分子)が捕獲除去されて浄化される。
【0055】
この冷却浄化された気体は、冷却浄化処理槽部320の底面の開口が狭くなっていることによってこの出口(上記開口)で流速が速くなり、さらに冷却浄化タンク部310内に貯められた水311との僅かな隙間を速やかに通過して、冷却浄化処理槽部320の側面と冷却浄化タンク部310の内側面との隙間を上昇して帰還配管部410内に導かれる。このように、上記の排気を水微粒子雰囲気に晒すことによって高効率な冷却処理および浄化処理が可能となる。
【0056】
また、上記の不純物質を捕獲した水微粒子ならびにこの水微粒子および上記排気が再液化した液体分子は、冷却浄化処理槽部320の底面開口から降下して冷却浄化タンク部310内に貯められた水311に混入される。
【0057】
上記の冷却浄化気体を帰還配管部410に効果的に送るととともに、上記の不純物質を冷却浄化タンク部310内に貯められた水311に効果的に混入させるための、冷却浄化処理槽部320の底面開口と冷却浄化タンク部310内に貯められた水311の表面との垂直離間距離が約1cmなのである。
【0058】
上記の水311は、水循環配管部330に流入し、水フィルタ部340によって混入している不純物がフィルタリングされたあと、水循環ポンプ部350によって揚圧され、この揚圧水が水微粒子発生部360に供給される。このようにして、水311は冷却浄化処理ユニット300による閉鎖空間領域内で循環される。
【0059】
帰還浄気ユニット400の帰還配管部410内に流入した気体は、ブロワ部420によって熱分解処理ユニット100側のヒータ部430に向けて所定送風力で加圧される。そしてこの加圧された冷却浄化された気流は、その流速が遅くなることなくヒータ部430によって所定温度に加熱温度調整され、熱分解タンク部110内の熱源部140に向けて略水平方向から放出される。なお、ヒータ部140による加熱が不要な期間、例えば廃棄物の自家発熱のみで熱分解タンク部110内を所定温度に保持できるときや、熱分解炭化プロセスが終了して熱分解無機化プロセスをせずに廃棄物処理装置内の温度を下げるときには、ヒータ部140をOFFし、気体を非加熱循環させる。
【0060】
本実施の形態では、閉鎖空間領域内で破棄物の熱分解炭化および排気の冷却浄化がなされるので、熱分解炭化中に熱分解タンク部110内に大気(空気)が流入して廃棄物が燃焼することを防止できるとともに、熱分解処理によって発生する揮発気体を燃焼させることも排出することもない。
【0061】
また、本実施の形態では、圧力測定部220および温度測定部230によって熱分解タンク部110内(従って熱分解処理処理槽部120)の圧力および温度を常時監視することができ、冷却浄化処理ユニット300との協働によって熱分解処理中の熱分解タンク部110内の圧力および温度を適正に保つことができる。
【0062】
また、本実施の形態では、熱分解処理による廃棄物の炭化物あるいは無機化物は、十分に冷えるまで熱分解タンク部110内に留めてから取り出すことができるので、これらの炭化物あるいは無機化物が取り出しの際に発火することを防止できる。
【0063】
さらに、本実施の形態では、熱分解処理によって発生する不純物質の内、水溶性のものや不溶性であっても常温で堆積する特性を有するものは、冷却浄化タンク部310の底部に貯められている水に捕獲混入されることとなるので、その余の主として浄化された気体のみが本実施の形態による閉鎖空間領域内に残存する。そして、熱分解処理が終了して本実施の形態による閉鎖空間領域内の温度が常温近傍になったあとに、この閉鎖空間領域を大気開放しても、微量と想定される上記その余の気体が放出される可能性があるのみであって、この残存気体を燃焼させずに適正処理できる。
【0064】
なお、本実施の形態による閉鎖空間領域を大気開放する場合とは、装置が稼働していないときに、例えば、廃棄物搬入部130の二重の蓋扉を同時に開く場合、あるいは熱分解タンク部110に設けたメンテナンス等のための上記の開閉部を開く場合、冷却浄化タンク部310に設けた排水部を開いて内部の水311を排出する場合、冷却浄化タンク部310に設けた給水部を開いて内部に新しい水311を給水する場合等である。
【0065】
このような本実施の形態では、閉鎖空間領域内で圧力および温度を適正に保って廃棄物を熱分解処理したあと、この閉鎖空間領域を保持したまま内部を冷却するため、排気の放出などによって生活環境に支障を生じさせることはない。
【0066】
加えて、本実施の形態の廃棄物処理装置は、上記のように簡易な構成なので、装置を容易に小型化できるとともに、容易に移動(移設)可能である。そしてまた、本実施の形態の廃棄物処理装置は、低コストでの製造が可能であり、装置の製造に要する期間が短いので、オーダーを受けてから短期間での納品が可能である。
【0067】
さらに、本実施の形態の廃棄物処理方法は、上記のようなプロセスで廃棄物の熱分解処理を実現するので、本実施の形態の廃棄物処理装置の使用者においては、特殊な操作や技能は不要であり、廃棄物の種類によって個別の操作をする必要もない。このため、装置の使用者、装置の使用環境、廃棄物の種別の左右されることなく、一律な品質の生成物を得ることができる。
【0068】
以上のように本発明の実施の形態によれば、ヒータ部430による加熱温度調整された気体を略水平方向から放出して熱源部140を直接加熱し、この熱源部140の輻射熱で廃棄物を加熱して熱分解処理し、この熱分解処理によって発生した排気を水微粒子雰囲気内で冷却するとともに上記の排気に含まれる不純物質(熱分解発生物質)を捕獲することによって浄化し、この冷却浄化処理された気体をヒータ部430で気流のまま所定温度に加熱温度調整して、熱源部140に向けて放出することにより、廃棄物の非燃焼熱分解処理が閉鎖空間領域内で実現できる。
【0069】
図2は本発明の他の実施の形態の廃棄物処理装置の要部構成を説明する模式概念図である。この
図2の廃棄物処理装置は、上記
図1の廃棄物処理装置において、帰還配管部410のブロワ部420とヒータ部420との間から分岐され、熱分解タンク部110内の側面であって帰還配管部410よりも天面側に分岐配管部415が繋設され、この分岐配管部415の熱分解タンク部110側の端部に補助ヒータ部435が設けられた構成である。
【0070】
補助ヒータ部435は、ここでは
図1のヒータ部430と同様の構成とする。この補助ヒータ部435は、熱分解処理槽部120に略水平方向から加熱温度調整気体を直接放出する。補助ヒータ部435を設けることによって、水分や油分を多く含んだ廃棄物、例えば紙オムツの乾燥プロセスにかかる時間を短くすることができる。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
100 熱分解処理ユニット、 110 熱分解タンク部、 120 熱分解処理槽部、 130 廃棄物搬入部、 140 熱源部、 200 排気配管ユニット、 210
排気配管部、 220 圧力測定部、 230 温度測定部、 240 排気フィルタ部、 250 非常時ベント部、 300 冷却浄化処理ユニット、 310 冷却浄化タンク部、 311 水、 320 冷却浄化処理槽部、 330 水循環配管部、 340 水フィルタ部、 350 水循環ポンプ部、 360 水微粒子発生部、 400 帰還浄気配管ユニット、 410 帰還配管部、 415 分岐配管部、 420 ブロワ部、 430 ヒータ部、 435 補助ヒータ部、 440 輻射熱遮断部。
【要約】 (修正有)
【課題】閉鎖空間領域内で有機質の廃棄物を非燃焼熱分解処理する。
【解決手段】電熱ヒータによって加熱温度調整された気体で熱源体を直接加熱し、この熱源体の輻射熱で熱分解処理槽内の廃棄物を加熱して熱分解処理する熱分解処理ユニット100と、前記熱分解処理によって発生した排気を冷却浄化処理ユニットに送る排気配管ユニット200と、前記排気を冷却浄化槽内で水微粒子雰囲気に晒して冷却処理するともに前記排気中の不純物質を捕獲して浄化処理する冷却浄化処理ユニット300と、前記冷却処理および浄化処理された気体をブロア加圧するとともに、前記電熱ヒータで加熱温度調整し、この加熱温度調整された気体を前記熱分解処理ユニット内の前記熱源体に向けて略水平方向から放出する帰還浄気配管ユニット400とを備え、こられのユニットによって閉鎖空間領域が構成され、この閉鎖空間領域内で廃棄物の熱分解処理が開始から終了までなされる。
【選択図】
図1