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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】電子部品パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/04 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
H01L23/04 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018154129
(22)【出願日】2018-08-20
(65)【公開番号】P2020031086
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000237444
【氏名又は名称】リバーエレテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097043
【弁理士】
【氏名又は名称】浅川 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100128071
【弁理士】
【氏名又は名称】志村 正樹
(72)【発明者】
【氏名】木下 義則
【審査官】多賀 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-039516(JP,A)
【文献】特開平08-316399(JP,A)
【文献】特開2004-315941(JP,A)
【文献】特開平02-148859(JP,A)
【文献】特開2011-160115(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047755(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/00-23/04、23/50
H03H 9/15-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、上面の反対側の下面と、上面の周縁と下面の周縁との間の側面とを有するパッケージ本体と、
パッケージ本体の上面に形成された上面導電パターンと、
パッケージ本体の下面に形成され外部と導通する下面導電パターンと、
パッケージ本体の側面に形成され前記上面導電パターン及び下面導電パターンの両方と電気的に導通する側面導電パターンと、を備えた電子部品パッケージにおいて、
前記上面導電パターンと側面導電パターンとが繋がる前記パッケージ本体の稜線部に現れるエッジを含むエリアに、前記上面導電パターン及び側面導電パターンのいずれの金属表面よりもハンダ濡れ性の悪い金属表面を有するハンダバリア部が形成される電子部品パッケージ。
【請求項2】
水晶ウェハによって形成されたベース基板、機能部基板及びキャップ基板の積層体からなるパッケージ本体と、
前記キャップ基板の上面に形成された上面導電パターンと、
前記ベース基板の下面に形成された下面導電パターンと、
前記ベース基板、機能部基板及びキャップ基板のそれぞれの側面に形成され、前記上面導電パターン及び下面導電パターンの両方と電気的に導通する側面導電パターンと、を備え、
前記キャップ基板の側面に形成された側面導電パターンから前記上面導電パターンに掛かるキャップ基板の稜線部に現れるエッジを含むエリアに、前記上面導電パターン及び側面導電パターンのいずれの金属表面よりもハンダ濡れ性の悪い金属表面を有するハンダバリア部が形成される電子部品パッケージ。
【請求項3】
前記上面導電パターン及び側面導電パターンのいずれの金属表面が金又は金合金を含む金属材料によって形成され、ハンダバリア部の金属表面がニッケル又はニッケル合金を含む金属材料によって形成されている請求項1又は2に記載の電子部品パッケージ。
【請求項4】
前記ハンダバリア部は、複数の金属材料の積層体によって形成された上面導電パターンのうち、少なくとも表面層を除いた残りの積層体によって形成されている請求項1乃至のいずれかに記載の電子部品パッケージ。
【請求項5】
前記ハンダバリア部は、酸化された金属表面を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の電子部品パッケージ。
【請求項6】
前記パッケージ本体が複数のウェハを積層して形成されたウェハレベルパッケージからなる請求項1又は2に記載の電子部品パッケージ。
【請求項7】
前記パッケージ本体は、水晶によって形成されている請求項1に記載の電子部品パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適正なハンダフィレットの形成が可能な電子部品パッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の電子部品は、プリント基板上にハンダを介して実装される。このハンダ付けにより、プリント基板上に形成されている所定のランド電極と、対応する電子部品パッケージの電極端子との間にハンダフィレットが形成される。
【0003】
前記電子部品パッケージの一つであるウェハレベルパッケージ(WLP)は、一般的に、ビア部を除いて概ね六面体形状となっている。このような六面体形状のWLPのプリント基板への実装は、ビア部に位置する側面に沿って設けられている側面導電パターン(側面電極)を介して、内部の機能部とパッケージ底面に備わる一又は二以上の下面導電パターン(外部電極)とを電気的に接続する構造が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、水晶振動子等の精密な電子部品からなるWLPにあっては、電磁妨害(EMI)対策としてのシールド効果を持たせるため、キャップがガラス構造体で、内部に導電性ウィスカ―を含有するものが知られている(特許文献2)。導電性ウィスカ―含有の代わりに、キャップ上面にメタライズやメッキによって上面導電パターン(シールド電極)を形成する場合もある。
【0005】
前記WLPに備わる側面電極の少なくとも一つが、パッケージ底面の外部電極ともつながるGND端子でもある場合は、キャップ上面に形成される上面導電パターンと接続することで、シールド効果を向上させることができる。また、少なくとも一つの側面電極を介してパッケージ底面の外部電極とつながるGND端子を、キャップ上面の上面導電パターンに接続した場合も、シールド効果を向上させることができる。
【0006】
上記側面電極を備えたWLPの場合、側面電極に沿ってハンダフィレットが形成されることで、プリント基板との固着強度が向上すると共に、外観検査によって電気的接続の良否判断が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-223996号公報
【文献】特開2007-180995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、小型及び薄型の電子部品パッケージにあっては、ハンダ付けによって電気的接続を図るに際して、ハンダの塗布量が少な過ぎると電気的接合が不十分となって導通不良等が生じる。一方、ハンダの塗布量が多過ぎると、所定のハンダ接合領域から広がったハンダフィレットによって外観不良等が生じる場合がある。特に、表面実装型の電子部品パッケージの一つであるウェハレベルパッケージ(WLP)にあっては薄型の製品が多く、また、ハンダフィレットを形成する電極部の幅や高さが限定されているため、ハンダの塗布量を適正に制御しないと、実装不良が生じやすくなる。一方、鉛フリーハンダ対応として、側面電極が外部電極に使用される金属は極めてハンダ濡れ性が良い材料が要求されており、ハンダフィレットが必要以上に広がってしまうおそれがあった。
【0009】
また、スマートフォンやタブレット等の携帯型の電子機器に搭載される電子部品にあっては、特に薄型化が進んでおり、これらの部品のパッケージにWLPが使用される場合、パッケージ本体の表面にまでハンダフィレットが広がることで、電気的不具合や外観不良等が生じるおそれがあった。
【0010】
図11及び図12は従来の一般的なWLP81を示したものである。ここで、図11(a)は、WLP81を下面導電パターン(外部電極)9が形成されているベース基板7のベース面8側から見た斜視図、図11(b)は、WLP81を上面導電パターン(シールド電極)16が形成されているキャップ面4側から見た斜視図、図12は、WLP81をプリント基板(図示せず)のランド電極11にハンダを介して実装した形態を示す斜視図である。図12に示したように、ハンダ付け工程において、ランド電極11から各基板の側面導電パターン(側面電極)2に形成されるハンダフィレット12がキャップ基板5の上面リード電極10を超えてシールド電極16にかかるようにハンダの広がり部13が形成され、WLP81の実装後の外観検査等において不良品として判断される場合があった。さらに、前記ハンダの広がり部13が隆起することで、実装上問題となる場合もあった。
【0011】
WLPは超薄型であると共に、導電パターンに使用される金属はハンダ濡れ性が良好なため、パッケージ本体の側面電極に形成したハンダフィレットがキャップの上面導電パターンまで這い上がりやすくなっている。このようなハンダフィレットの広がりが極端な場合、WLPを搭載したプリント基板の中には、外観の異状を指摘されるものも発生していた。特に近年スマートフォンやタブレット端末に代表される電子機器の薄型化が進んでいることもあり、このプリント基板を電子機器へ搭載する際、広がったハンダの隆起によってWLPの総厚が増すことで、電子機器への搭載ができなくなるおそれもあった。
【0012】
また、内部に水晶振動子を備えたWLPの外側に発振器等を構成する周辺素子を搭載してハイブリッド型のパッケージとする場合、プリント基板との接続部分に形成されているハンダフィレットが周辺素子の電気的接続部分に広がり、周辺素子を破壊したり、動作不良を生じたりする場合があった。
【0013】
そこで本発明の目的は、パッケージの少なくとも一部にハンダの広がりを抑えるハンダバリア部を設けることによって、ハンダの過剰な広がりを阻止し、外観不良や電気的接続不良等を生じることのない電子部品パッケージ及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係る電子部品パッケージは、
上面と、上面の反対側の下面と、上面の周縁と下面の周縁との間の側面とを有するパッケージ本体と、
パッケージ本体の上面に形成された上面導電パターンと、
パッケージ本体の下面に形成され外部と導通する下面導電パターンと、
パッケージ本体の側面に形成され前記上面導電パターン及び下面導電パターンの両方と電気的に導通する側面導電パターンと、を備えた電子部品パッケージにおいて、
前記上面導電パターンと側面導電パターンとが繋がる前記パッケージ本体の稜線部に現れるエッジを含むエリアに、前記上面導電パターン及び側面導電パターンのいずれの金属表面よりもハンダ濡れ性の悪い金属表面を有するハンダバリア部が形成される。
【0015】
また、本発明に係る電子部品パッケージは
水晶ウェハによって形成されたベース基板、機能部基板及びキャップ基板の積層体からなるパッケージ本体と、
前記キャップ基板の上面に形成された上面導電パターンと、
前記ベース基板の下面に形成された下面導電パターンと、
前記ベース基板、機能部基板及びキャップ基板のそれぞれの側面に形成され、前記上面導電パターン及び下面導電パターンの両方と電気的に導通する側面導電パターンと、を備え、
前記キャップ基板の側面に形成された側面導電パターンから前記上面導電パターンに掛かるキャップ基板の稜線部に現れるエッジを含むエリアに、前記上面導電パターン及び側面導電パターンのいずれの金属表面よりもハンダ濡れ性の悪い金属表面を有するハンダバリア部が形成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電子部品パッケージによれば、プリント基板にハンダ付け実装する際、パッケージ本体の側面に形成されている側面導電パターンを這い上がる過剰なハンダをパッケージの一部に形成されているハンダバリア部によってその進行を阻止することができる。これによって、パッケージ表面に過剰に広がるハンダによる外観不良や電気的接続不良等を生じることがない。また、前記ハンダバリア部によって、側面導電パターンに形成されるハンダフィレットの形状が一定となるので、外観検査等においてプリント基板に実装された電子部品パッケージの接続の良否判定を容易且つ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態のWLPを実装基板に載置したキャップ面側から見た斜視図(a)及びA-A断面図(b)である。
図2】本発明の第1実施形態のWLPを実装基板にハンダ付けしたキャップ面側から見た斜視図である。
図3】本発明の第2実施形態のWLPを実装基板にハンダ付けしたキャップ面側から見た斜視図(a)及びB-B断面図(b)である。
図4】本発明の第3実施形態のWLPを実装基板にハンダ付けしたキャップ面側から見た斜視図である。
図5】本発明の第4実施形態のWLPをキャップ面側から見た斜視図(a)、ベース面側から見た斜視図(b)及び、第4実施形態において、ICを搭載して実装基板にハンダ付けしたキャップ面側から見た斜視図(c)である。
図6】本発明の第5実施形態のWLPをベース面側から見た斜視図(a)、キャップ面側からの周波数調整工程を示す斜視図(b)である。
図7】従来のハンダバリア部のないWLPのハンダ付け状態を示す斜視図(a)、図6に示した第5実施形態のハンダバリア部を有するWLPのハンダ付け状態を示す斜視図(b)である。
図8】プラズマ照射用に不導体マスクがセットされた接合ウェハの平面図(a)及び、(a)のC-C断面で示すプラズマ照射によるハンダバリア部の製造工程図(b)である。
図9】ハンダバリア部が形成された接合ウェハの平面図(a)及び、(a)のD-D断面で示す金属エッチングによるハンダバリア部の製造工程図(b)である。
図10図9(a)のD-D断面で示すリフトオフ加工によるハンダバリア部の製造工程図である。
図11】従来の電子部品パッケージ(WLP)をベース面側から見た斜視図(a)、キャップ面側から見た斜視図(b)である。
図12】従来の電子部品パッケージ(WLP)を実装基板にハンダ付けしたときのキャップ面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る電子部品パッケージ及びその製造方法の各実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、電子部品パッケージとして、以下の各実施形態ではウェハレベルパッケージ(WLP)を例にして説明するが、このようなWLPに限らず、他の表面実装型の電子部品パッケージにも適用可能である。図面は、電子部品パッケージ及びその製造方法を模式的に表したものである。これらの実物の寸法および寸法比は、図面上の寸法および寸法比と必ずしも一致していない。また、重複説明は適宜省略させることがあり、同一部材には同一符号を付与することがある。
【0020】
図1(a)は、実装用のプリント基板(図示せず)上に形成されているランド電極11に下面導電パターン(外部電極)9を載置した電子部品パッケージ(WLP)1をキャップ面4側から見た斜視図である。前記WLP1は、上面と、上面の反対側の下面と、上面の周縁と下面の周縁との間の側面とを有するベース基板7、機能部基板6及びキャップ基板5からなる複数のウェハを積層して形成されたパッケージ本体と、前記キャップ基板5の上面に形成された上面導電パターン(シールド電極)16と、前記ベース基板7の下面に形成され外部と導通する外部電極9と、ベース基板7,機能部基板6及びキャップ基板5のそれぞれの側面に形成された複数の側面導電パターン(側面電極)2とを備えている。図1(a)に示した実施形態では、前記側面電極2の少なくとも一つが前記シールド電極16と電気的に接続されている。そして、前記シールド電極16とキャップ基板5の側面電極2との境界付近に、シールド電極16及び側面電極2のいずれの金属表面よりもハンダ濡れ性の悪い金属表面を有するハンダバリア部15が前記パッケージ本体の上面(キャップ基板5のキャップ面4)又はキャップ面4の周縁の一部を含んで形成される。
【0021】
前記WLP1は、前記機能部基板6、ベース基板7及びキャップ基板5がそれぞれ多数形成可能な大判の水晶ウェハ等を形成した後に接合し、ダイシングによって個片化することによって形成される。
【0022】
前記ベース基板7,機能部基板6及びキャップ基板5の(各側面)に形成されている側面電極2は、それぞれの基板の四隅の角部を切り欠いて形成されている。各外部電極9は、前記ベース面8に形成されていて、対応する側面電極2と電気的に接続されている。また、シールド電極16は前記キャップ面4に形成されており、このシールド電極16は、キャップ基板5に形成されている少なくとも一の側面電極2と電気的に接続されている。
【0023】
前記各側面電極2は、ベース基板7,機能部基板6及びキャップ基板5がそれぞれ多数形成可能な大判の水晶ウェハ等を形成し、各水晶ウェハに対してX軸及びY軸が複数交錯するダイシングライン65の各交点にスルーホールを形成し、各水晶ウェハのスルーホールを揃えて接合し、連通したスルーホールにスパッタ又は蒸着などによりコンタクト金属及び下地金属を形成した後、Ni及びAuメッキなどで電極を形成することによって、ビアホール64としている。このビアホール64は、ウェハの段階で楕円の加工がなされ、接合後のダイシングにより1個の楕円が4分割され、外部電極9が4端子の場合は、それぞれの外部電極の角部に設定される。
【0024】
前記外部電極9,側面電極2及びシールド電極16は、複数の金属材料の積層体によって形成されている。図1(b)は、前記キャップ基板5のキャップ面4上に形成されるシールド電極16及び上面リード電極10(ハンダバリア部15含む)からなる上面電極層のA-A断面構造を示したものである。この上面電極層は、絶縁性の水晶基材等によって形成される、キャップ基板5上に形成されるコンタクト金属20と、このコンタクト金属20の上に形成される下層金属19と、この下層金属19の上に形成される中層金属18と、この中層金属18の上に形成される上層金属17との積層体によって形成されている。コンタクト金属20は、付着力の高いCrかTiかNiかMoかFeかWか、そのいずれかを含む合金によって形成され、下層金属19は、CuかNiか、そのいずれかを含む合金によって形成されている。例えば下層金属19をCuにした場合、その特性から膜の内部応力を緩和することができ、圧縮応力によるクラック、膨れ、マイグレーション等の不具合を抑制できる。また中層金属18は、酸化し易いNiかTiかCrかFeか、そのいずれかを含む合金によって形成されている。更に上層金属17は、ハンダ濡れ性の良好なAuかPtかAgかCuかSnかPdか、そのいずれかを含む合金又はハンダメッキによって形成されている。なお、ベース基板7に形成される外部電極9も同様な構成となっている。
【0025】
本実施形態では、図1(a),(b)に示したように、ハンダの這い上がりによる濡れ広がりを阻止するためのハンダバリア部15を前記上面リード電極10の一部に設けた。図1(a)に示したように、ハンダフィレット12が形成される各側面電極2は、比較的エッチング残りの少ない平坦面3となるため、ハンダの這い上がりが容易となり、上面リード電極10や更にその先までハンダフィレット12が形成されやすくなるが、ハンダバリア部15を設けることによって、このようなハンダフィレット12の拡張を抑えることができる。このハンダバリア部15は、複数の金属材料の積層体によって形成されているシールド電極16のうち、少なくとも表面層である上層金属17を除いた残りの中層金属18、下層金属19及びコンタクト金属20からなる積層体によって形成されている。前記上層金属17は、プラズマ、レーザ、電子ビームなどの照射、あるいは、サンドブラスト加工やエッチング加工等によって、その一部が部分的に除去される。この除去によって、その下の中層金属18が露出する。このようにして露出させた中層金属18は、メッキ表面が酸化されることでハンダバリア部15となる。
【0026】
図2は、上記WLP1をプリント基板(図示せず)上に形成されているランド電極11上に載置し、ペースト状のハンダを介して対応する外部電極9に実装した状態を示したものである。前記ランド電極11上に塗布したハンダペーストは、ベース基板7、機能部基板6及びキャップ基板5のハンダ濡れ性の良好な上層金属17を表層面に有する側面電極2に沿って溶着されていくが、ハンダバリア部15に到達すると、ここでハンダの溶着の広がりが阻止される。これによって、適正なハンダ量によるハンダフィレット12を形成することができると共に、電気的接続が図られることで、WLP1のプリント基板等への実装不良を低減させることができる。
【0027】
図3(a),(b)は、第2実施形態のWLP21を示したものである。このWLP21は、上面リード電極10の全てと、この上面リード電極10に繋がるシールド電極16の一部に掛かる部分に至る範囲にハンダバリア部15を形成したものである。第1実施形態では、ハンダバリア部15の位置や範囲等を規定していないため、例えば範囲が僅かで、位置も極端にシールド電極16寄りの場合、ハンダペーストが過剰に塗布された場合などにおいて、ハンダバリア部15を乗り越えてシールド電極16上に広がってしまうおそれがある。これに対して、本実施形態のWLP21では、ハンダバリア部15をキャップ基板5の側面電極2の上端付近からシールド電極16の一部に掛けた広い範囲に設定しているので、ハンダバリア部15を乗り越えることなく、プリント基板のランド電極11から各基板の側面電極2に沿った適正なハンダフィレット12が形成される。特に水晶をウェットエッチングまたはドライエッチングして形成されるパッケージにおいては、水晶の結晶構造が稜線部に現れるため、エッジは非常に切り立った形状となる。このとき、稜線部を含むエリアにハンダバリア部15を形成すると、ハンダバリア部15とエッジ効果の相乗効果で、より効果的に上面へのハンダの這い上がりが防止できる。
【0028】
図4は第3実施形態のWLP31を示したものである。このWLP31は、第1及び第2実施形態で示したキャップ面4の濡れ性の良好な上層金属17を除いて、その下の中層金属18を露出することによってシールド電極16が形成されている。電子部品パッケージのさらなる小型化により、上面リード電極10の上層金属17を除去するだけでは、ハンダの広がりを阻止するためのエリアが確保できない場合がある。このような場合にあっては、ハンダブリッジなどにより、ハンダの乗り上げが生じることがあるが、本実施形態のWLP31にあっては、シールド電極16の表面全てが中層金属18となっているので、このような問題が生じることがない。前記シールド電極16の表層面となる中層金属18は、前記上層金属17に比べてハンダ濡れ性の低下はみられるものの、シールド効果に必要な導電性は十分確保できるので、EMI対策についても問題はない。
【0029】
図5は第4実施形態のWLP41を示したものである。この実施形態のWLP41は、キャップ基板5の上面に配線パターン42を形成し、この配線パターン42上に発振器用IC43を搭載したものである。このWLP41を構成する機能部基板6が、水晶振動片(図示せず)を備えた水晶振動機能を備えている場合、前記水晶振動片に形成されている励振電極(図示せず)が前記配線パターン42を介して発振器用IC43の入力端子(図示せず)に接続され、出力端子(図示せず)がWLP41の外部電極9のいずれかに接続されることで、発振器ユニットを構成することができる。
【0030】
図6は、水晶デバイスとして形成されるWLP51を示したものである。このようなWLP51にあっては、機能部基板6を構成する水晶振動片53の周波数偏差を抑えるために、ベース基板7及びキャップ基板5によって封止後に周波数の微調整が必要となる場合がある。図6(a)に示すWLP51は、プリント基板(図示せず)に実装される外部電極9が形成されたベース面8側から見たものである。WLPの中でも固着強度確保に必要な外部電極の面積を確保しながら、更なる小型化が要求されるようなデバイスにあっては、ベース面8が外部電極9で占められるため、この外部電極9の隙間から水晶振動片53にビームを照射するなどして周波数調整を行うことが困難となっている。そこで、図6(b)に示すように、外部電極9が形成されていないキャップ基板5のキャップ面4側を周波数の調整領域とすることで、ビーム照射できる領域を確保しつつ、測定プローブ55を当接させるための測定用電極54を設けることができる。測定用電極54は、上面リード電極10及び各基板の側面電極2を介して所定の外部電極9に電気的に接続されている。
【0031】
図7(a)に示すように、ハンダバリア部のない従来構造のWLP52にあっては、
プリント基板(図示せず)のランド電極11から各基板の側面電極2に掛けてハンダ付けした際、測定用電極54にハンダの広がり部13が形成され、外観不良を引き起こす場合があった。これに対して、図6におけるWLP51の実装形態を示した図7(b)のように、ハンダバリア部15を設けた構造とすることで、測定用電極54にハンダが這い上がるのを阻止することができる。このため、測定用電極54等の表面にハンダが広がったり、隆起したりすることによる外観不良を防止することができる。
【0032】
次に、図8(a),(b)に基づいて上記WLPの第1の製造方法について説明する。この第1の製造方法は、複数のウェハの接合により形成された接合ウェハ63に対して、図11に示した外部電極9、側面電極2及びシールド電極16をウェハのまま形成した後、このウェハのシールド電極16が形成された面を、不導体材料で形成されたハンダバリア部15形成用の不導体マスク61で覆う工程(図8(a))と、不導体マスク61と直交する方向からプラズマ、レーザ、電子ビームのいずれかによる照射、あるいは、サンドブラストを投射する工程(図8(b-1))と、上面リード電極10及びシールド電極16の表層部にある上層金属17を所定の範囲除去する工程(図8(b-2))と、上層金属17を除去して露出させた中層金属18の表面を酸化させることによってハンダバリア部15を形成する工程(図8(b-3))と、を備えている。
【0033】
この第1の製造方法におけるハンダバリア部15の形成手順の一例を図8(a)及びC-C断面を示した図8(b)を参照して示す。接合ウェハ63の上方に不導体マスク61を、位置を合わせて被せた後、プラズマ照射装置内にセットして、不導体マスク61の上方からプラズマ照射66を行う。このとき、不導体マスク61のマスク開口部62から覗く、上面リード電極10及びシールド電極16の上層金属17に、図8(b)に示すように、直接プラズマ照射66することで、上層金属17が除去され、中層金属18が露出する。そして、この中層金属18が酸化されることでハンダバリア部15となる。
【0034】
また、照射部以外を遮蔽するための不導体マスク61は、加熱による前記接合ウェハ63の伸縮を考慮して、線膨張係数を合わせることや、プラズマ照射66の衝撃によりマスク材の飛散が生じても、非配線部の絶縁性が確保されることから、水晶やガラス等が材料として好ましい。
【0035】
次に、図9(a)のD-D断面を示す図9(b)を参照して、フォトリソ加工によるハンダバリア部の第2の製造方法について説明する。この第2の製造方法は、複数のウェハの接合により形成された接合ウェハ63に対して、図11に示した外部電極9、側面電極2及びシールド電極16をウェハのまま形成した後、前記接合ウェハ63の全面を感光性のレジスト73で覆ってプリベークし、露光マスク71を用いて所定の場所の所定の面積を露光する工程(図9(b-1))と、レジスト73を現像してポストベークする工程(図9(b-2))と、上層金属エッチング液に浸漬して所定の場所の所定の面積を溶解して中層金属18を露出させる工程(図9(b-3))と、レジスト73を剥離した上、露出した中層金属の表層を酸化させてハンダバリア部15を形成する工程(図9(b-4))と、を備えている。
【0036】
この第2の製造方法におけるハンダバリア部15は、接合ウェハ63の全面を感光性でポジのレジスト73で覆い、これをプリベークした後、露光マスク71をセットした露光装置を使用して、図9(b)に示すようにUV照射72を行う。その後現像及びポストベークを行い、上層金属17用のエッチング液に浸漬して、所定の場所に所定の面積分溶解して中層金属18が露出した表層面を酸化させる。この酸化させた面がハンダバリア部15となる。
【0037】
次に、図9(a)のD-D断面を示す図10を参照して上記フォトリソ加工とは別の第3の製造方法について説明する。この第3の製造方法は、複数のウェハの接合により形成された接合ウェハ63に対して、図11に示した外部電極9、側面電極2及びシールド電極16をウェハのまま形成する工程と、前記接合ウェハ63の全面を感光性のレジスト73aで覆って、プリベークした後、露光マスク71aを用いて所定の場所の所定の面積を露光する工程(図10(a))と、レジスト73aを現像し、ポストベークする工程(図10(b))と、接合ウェハ63の上面に酸化され易い金属、例えば中層金属を蒸着又はスパッタする工程(図10(c))と、レジスト73a上の金属をリフトオフによってレジスト73aごと除去し、残った酸化され易い金属、例えば中層金属18と同様の酸化されやすい金属膜の表層を酸化させてハンダバリア部15を形成する工程(図10(d))と、を備えている。
【0038】
この第3の製造方法におけるハンダバリア部15は、接合ウェハ63の全面を感光性でポジのレジスト73aで覆い、これをプリベークしたのち、露光マスク71aをセットした露光装置を使用してUV照射72を行う(図10(a))。その後現像及びポストベークを行い(図10(b))、中層金属18と同種の蒸着金属74を蒸着し(図10(c))、レジスト73a上の蒸着金属74ごとレジスト73aを剥離して、上層金属17上の所定の場所に、所定の面積分残した中層金属と同種の蒸着金属74の表層を酸化させることによってハンダバリア部15が形成される(図10(d))。
【0039】
なお、上記フォトリソ加工で使用される露光マスクやレジストについては、それぞれポジタイプ及びネガタイプのいずれを用いてもよく。いずれの場合であっても、同様のハンダバリア部15を形成することができる。
【0040】
上記製造方法によってハンダバリア部15を形成することで、電子部品パッケージをプリント基板に実装する際に、過剰なハンダの這い上がり現象を抑え、ハンダ接合強度や電気的接続が良好なハンダフィレットを形成することができる。また、電子部品パッケージの上面側だけでなく、側面側にも必要十分なハンダフィレットが形成されるので、外観による接続確認や固着強度確保においても有効になる。
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、導電性パターンへのハンダ付着による外観不良や、ハンダの広がりによって、電子部品パッケージをプリント基板にハンダ付けする際に生じる厚さ異状による筺体へのプリント基板の搭載不良などを未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 WLP(ウェハレベルパッケージ第1実施形態)
2 側面電極(側面導電パターン)
3 平坦面
4 キャップ面
5 キャップ基板
6 機能部基板
7 ベース基板
8 ベース面
9 外部電極(下面導電パターン)
10 上面リード電極
11 ランド電極
12 ハンダフィレット
13 ハンダの広がり部
15 ハンダバリア部
16 シールド電極(上面導電パターン)
17 上層金属
18 中層金属
19 下層金属
20 コンタクト金属
21 WLP(第2実施形態)
31 WLP(第3実施形態)
41 WLP(第4実施形態)
42 配線パターン
43 発振器用IC
51 WLP(第5実施形態)
52 WLP
53 水晶振動片
54 測定用電極
55 測定プローブ
56 ビーム
61 不導体マスク
62 マスク開口部
63 接合ウェハ
64 ビアホール
65 ダイシングライン
66 プラズマ照射
71,71a 露光マスク
72 UV照射
73,73a レジスト
74 蒸着金属
81 WLP
図1
図2
図3
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図5
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図12