(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】α-フルオロアルキルケトン及びβ-フルオロアルキルアルコールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 45/00 20060101AFI20221205BHJP
C07C 49/76 20060101ALI20221205BHJP
C07C 49/80 20060101ALI20221205BHJP
C07C 253/30 20060101ALI20221205BHJP
C07C 255/56 20060101ALI20221205BHJP
C07C 67/313 20060101ALI20221205BHJP
C07C 69/78 20060101ALI20221205BHJP
C07F 5/02 20060101ALI20221205BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221205BHJP
【FI】
C07C45/00
C07C49/76 A
C07C49/80
C07C253/30
C07C255/56
C07C67/313
C07C69/78
C07F5/02 C
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2018203042
(22)【出願日】2018-10-29
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】川本 拓治
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-149652(JP,A)
【文献】川本拓治ほか,One-pot反応によるα-トリフルオロメチルケトンの合成,第40回フッ素化学討論会講演要旨集,2017年11月14日,pp. 184-185
【文献】KAWAMOTO, T et al.,Synthesis of α-Trifluoromethylated Ketones from Vinyl Triflates in the Absence of External Trifluoromethyl Sources,Angewandte Chemie, International Edition,2017年,Vol. 56,pp. 1342-1345
【文献】AL-HUNITI, MH et al.,Zinc(II) Catalyzed Conversion of Alkynes to Vinyl Triflates in the Presence of Silyl Triflates,Organic Letters,2014年,Vol. 16,pp. 4154-4157
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、R
1は、
置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基;置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基;又は置換基を有していてもよい複素環基を表し、R
2は、水素原子;トリアルキルシリル基;アリルジアルキルシリル基;アルキルジアリルシリル基;又はトリアリルシリル基を
表す。)で表されるアルキン化合物と、ラジカル開始剤存在下に、フルオロアルキルスルホン酸(R
fSO
3H)(式中、R
fは、フルオロアルキル基を表す。)と反応させる式(II)
【化2】
(式中、R
1は、式(I)と同じ意味を表し、R
fは、前記と同じ意味を表す。)で表されるα-フルオロアルキルケトンの製造方法。
【請求項2】
式(II)中におけるフルオロアルキル基が、アルキル基中の水素原子の60%以上がフッ素原子で置換されているアルキル基である請求項1に記載のα-フルオロアルキルケトンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α-フルオロアルキルケトン化合物の製造法に関し、さらに得られたα-フルオロアルキルケトン化合物から誘導されるβ-フルオロアルキルアルコール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機フッ素化合物には、フッ素と水素の原子半径がほぼ同じであることに由来する、生体側の立体的分子認識の相似性効果(ミミック効果)、C-F結合がC-H結合と比べ強固であるため、代謝部位の保護やそれに伴う毒性の回避ができる効果(ブロック効果)、及び、脂溶性の向上により生体内での吸収・輸送を促進する効果(脂溶性効果)のような、フッ素原子の特徴的な大きさや電子的性質に由来する効果が知られている。これらの効果を適応した化学修飾により、数多くの医農薬品の開発が行われてきた。そして、アルキル基のミミック置換基であるフルオロアルキル基の導入法の開拓が行われている。ケトンのα位にフルオロアルキル基が導入された化合物であるα-フルオロアルキルケトン化合物及びヒドロキシ基のβ位にフルオロアルキル基が導入されたβ-フルオロアルキルアルコール化合物は、医農薬中間体や液晶材料の原料として極めて有用である。
【0003】
α-フルオロアルキルケトン化合物を製造する方法として、(1)ケトン由来のエノラートに対し外部ペルフルオロアルキル化剤を用いる方法(非特許文献1、2及び3、特許文献1参照)、(2)アルケンに対しペルフルオロアルキル化剤及び酸化剤を作用させる方法(非特許文献4参照)、(3)アルキンに対しフォトレドックス触媒及び求電子的ペルフルオロアルキル化剤を作用させる方法(非特許文献5)、(4)ケトンからフルオロアルカンスルホン酸無水物と塩基を用いて、又はアルキン類からトリメチルシリルトリフラートを用いて誘導したビニルフルオロアルカンスルホナートに対しラジカル開始剤を作用させる方法(特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-24674号公報
【文献】特開2017-149652号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Umemoto, T.; Ishihara, S., Tetrahedron Lett. 1990, 31, 3579-3582.
【文献】Eisenberger, P.; Gischig, S.; Togni, A., Chem. Eur. J. 2006, 12, 2579-2586.
【文献】Pham, P. V.; Nagib, D. A.; MacMillan, D. W. C., Angew. Chem. Int. Ed. 2011, 50, 6119-6122.
【文献】Tomita, R. ; Yasu, Y. ; Koike, T. ; Akita, M., Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53, 7144-7148.
【文献】Malpani, Y. ; Biswas, B. K. ; Han, H. S. ; Jung, Y. S. ; Han, S. B., Org. Lett., 2018, 20, 1693-1697
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記(1)の方法では、フルオロアルキル化剤のほかにケトンの活性化剤が必要となる点、上記(2)の方法では、化学量論量の酸化剤が必要となる点、上記(3)の方法では、高価なフルオロアルキル化剤が必要である点、上記(4)の方法では、フルオロアルカンスルホン酸無水物の2つのフルオロアルキル基のうち1つしか利用することができない点又は高価なフルオロアルキル化剤が必要である点で、それぞれ問題を有していた。
本発明は、以上のような問題点にかんがみ、より簡便で、安価に、しかも効率よくα-フルオロアルキルケトン及びβ-フルオロアルキルアルコールを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、比較的入手が容易なアルキン化合物を出発原料として、ラジカル開始剤の存在下に、安価なフルオロアルキルスルホン酸を反応させることにより、α-フルオロアルキルケトンが、それを還元することによりβ-フルオロアルキルアルコールがそれぞれ効率よく得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の事項により特定される次のとおりのものである。
[1]式(I)
【化1】
(式中、R
1は、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基;置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基;置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基;置換基を有していてもよい複素環基;-OR
3;-NR
4R
4’;又は置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基から選ばれる少なくとも1種の基とが複合した基を表し、R
2は、水素原子;トリアルキルシリル基;アリルジアルキルシリル基;アルキルジアリルシリル基;又はトリアリルシリル基を表し、R
3は、水素原子;置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基;置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基;置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基;置換基を有していてもよい複素環基;又は置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基から選ばれる少なくとも一つの基とが複合した基を表し、R
4及びR
4’は、それぞれ独立に、水素原子;置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基;置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基;置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基;置換基を有していてもよい複素環基;又は置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基から選ばれる少なくとも一つの基とが複合した基を表す。)で表されるアルキン化合物と、ラジカル開始剤存在下に、フルオロアルキルスルホン酸(R
fSO
3H)(式中、R
fは、フルオロアルキル基を表す。)と反応させる式(II)
【化2】
(式中、R
1は、式(I)と同じ意味を表し、R
fは、前記と同じ意味を表す。)で表されるα-フルオロアルキルケトンの製造方法。
[2][1]に記載の式(II)で表されるα-フルオロアルキルケトンを還元する又は有機金属試薬と反応させる式(III)
【化3】
(式中、R
1及びR
fは、式(II)と同じ意味を表し、R’は、水素原子又は有機金属試薬の有機基部分を表す。)で表されるβ-フルオロアルキルアルコールの製造方法。
[3]式(II)中におけるフルオロアルキル基が、アルキル基中の水素原子の60%以上がフッ素原子で置換されているアルキル基である上記[1]に記載のα-フルオロアルキルケトンの製造方法。
[4]式(III)中におけるフルオロアルキル基が、アルキル基中の水素原子の60%以上がフッ素原子で置換されているアルキル基である上記[2]に記載のβ-フルオロアルキルアルコールの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法を用いれば、比較的入手が容易なアルキン類を用いて、安価な試薬と温和な条件下で、かつ簡便な操作で、目的とするα-フルオロアルキルケトンを得ることができ、得られたケトンを還元することにより、β-フルオロアルキルアルコールも容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のα-フルオロアルキルケトンの製造方法は、式(I)で表されるアルキン類を、ラジカル開始剤存在下に、フルオロアルキルスルホン酸と反応させる方法である。アルキン類にフルオロアルキルスルホン酸が付加することで、反応系内に中間体としてビニルフルオロアルカンスルホナートが生成していると考えられるが、本発明の方法においては、ラジカル開始剤存在下で反応を行うため、直ちに転移して目的とするα-フルオロアルキルケトンが得られる。
【0011】
本発明の製造方法に用いられる式(I)で表されるアルキン類中、R1は、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、-OR3、-NR4R4’、又は置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基から選ばれる少なくとも1種の基とが複合した基を表す。
【0012】
上記「置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基」における「鎖状炭化水素基」として、具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等を例示することができ、また、アルカジエニル基、アルカトリエニル基等のように、アルキル基における炭素-炭素結合の2~3個が二重結合に変換された基であってもよい。
【0013】
上記アルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のC1~10のアルキル基等を例示することができる。
【0014】
なお、「C1~10」の用語は、母核となる基の炭素原子数が1~10個であることを表している。この炭素原子数には、置換基の中に在る炭素原子の数を含まない。例えば、置換基としてエトキシ基を有するブチル基は、C2アルコキシC4アルキル基に分類する。以下、本明細書において、同じ意味で用いる。
【0015】
上記アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、具体的には、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、1-ヘプテニル基、1-オクテニル基、1-ノネニル基、1-デセニル基等のC2~10のアルケニル基等を例示することができる。
【0016】
上記アルキニル基としては、直鎖状でも分岐状であってもよく、具体的には、エチニル基、1-プロピニル基、1-ブチニル基、1-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、1-ヘプチニル基、1-オクチニル基、1-ノニニル基等のC2~10のアルキニル基等を例示することができる。
【0017】
上記「アルキル基における炭素-炭素結合の2~3個が二重結合に変換された基」として、具体的には、上記炭素数1~10のアルキル基における炭素-炭素結合の2~3個が二重結合に変換された基である、1,3-ブタジエニル等の炭素数4~6のアルカジエニル基、1,3,5-ヘキサトリエニル等のアルカトリエニル基を例示することができる。
【0018】
上記「置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基」における「環状脂肪族炭化水素基」として、具体的には、員数3~10の単環脂肪族炭化水素基又は縮合環脂肪族炭化水素基等を例示することができる。単環脂肪族炭化水素基として、具体的には、飽和又は不飽和の環状脂肪族炭化水素基である、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基等を例示することができる。
【0019】
上記シクロアルキル基として、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等を例示することができる。
【0020】
上記シクロアルケニル基として、具体的には、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、1-シクロヘキセニル基、1-シクロブテニル基、1-シクロヘプテニル基等を例示することができる。
【0021】
上記シクロアルカジエニル基として、具体的には、2,4-シクロペンタジエニル基、2,4-シクロヘキサジエニル基、2,5-シクロヘキサジエニル基等を例示することができる。
【0022】
上記縮合環脂肪族炭化水素基としては、上記単環脂肪族炭化水素基と置換基を有していてもよい芳香族炭化水素が縮合したものも包含され、具体的には、1-インダニル基、2-インダニル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル基、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10-デカヒドロナフタレン-1-イル基、1-ヒドリンダニル基、exo-又はendo-トリシクロ[5.2.1.0]デカン-4-イル基、2-ボルネン-5-イル基、2-ノルボルネン-5-イル基、exo-又はendo-トリシクロ[5.2.1.0]デカ-3-エン-8-イル基、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-1-イル基、トリシクロ[6.2.1.0]ウンデカ-4-エン-8-イル基、テトラシクロ[6.2.1.1.0]ドデカ-4-エン-9-イル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-3-イル基、3a,4,7,7a-テトラヒドロインデン-3-イル基等を例示することができる。
【0023】
上記「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」における「芳香族炭化水素基」としては、単環式でも縮合多環式でもよく、具体的には、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アズレニル基、3-インデニル基、1-インダニル基、5-テトラリニル基等を例示することができる。
【0024】
上記「置換基を有していてもよい複素環基」における「複素環基」として、具体的には、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を含む員数5~10の単環複素環基又は員数5~10の単環芳香族複素環基若しくは縮合芳香族複素環等を例示することができ、縮合芳香族複素環基には、ベンゼン環と窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を含む単環複素環が縮合したものが包含される。
【0025】
上記複素環基として、具体的には、1-ピペリジニル基、1-モルホリニル基、2-ピロリル基、2-イミダゾリル基、2-ベンゾイミダゾリル基、3-ピラゾリル基、2-チアゾリル基、3-イソチアゾリル基、2-オキサゾリル基、3-イソオキサゾリル基、4-フラザニル基、2-ピリジニル基、2-ピラジニル基、2-ピリミジニル基、3-ピリダジニル基、2-フラニル基、2-ピラニル基、2-チエニル基、2-ベンゾチオフェニル基、2-チオピラニル基、1-イソチオクロメニル基、2-チオクロメニル基、9-チオキサンテニル基、1-チアントレニル基、1-フェノキサチインニル基、1-ピロリジニル基、5H-1-ピリンジン-5-イル基、インドリジン-1-イル基、1-イソインドリル基、1-インドリル基、1-インダゾリニル基、2-プリニル基、1-キノリジニル基、1-イソキノリニル基、2-キノリニル基、2,6-ナフチリジン-1-イル基、2,7-ナフチリジン-1-イル基、1-フタラジニル基、2-キノキサリニル基、2-キナゾリニル基、3-シンノリニル基、2-プテリジニル基、9-カルバゾリル基、9-β-カルボリニル基、10-フェナントリジニル基、9-アクリジニル基、2-ペリミジニル基、1,10-フェナントロリン-2-イル基、1-フェナジニル基、1-フェノチアジニル基、1-フェノキサジニル基、2-アンチリジニル基、1-イソベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、1-イソクロメニル基、2-クロメニル基、9-キサンテニル基、パラチアジニル基、1,2,4-トリアゾール-3-イル基、1,2,3-トリアゾール-1-イル基、5-テトラゾリル基等を例示することができる。
【0026】
上記「置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基からから選ばれる少なくとも一つの基とが複合した基」とは、上記置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、上記置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、上記置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び上記置換基を有していてもよい複素環基から選ばれる少なくとも一つの基とが複合した基であり、具体的には、上記置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と上記置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基とが複合した基、上記置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と上記置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基とが複合した基、上記置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と上記置換基を有していてもよい複素環基とが複合した基を好適に例示することができる。
【0027】
上記「置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と前記置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基とが複合した基」として、具体的には、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロへキシルメチル基、シクロヘプチルメチル基、シクロオクチルメチル基、シクロノニルメチル基、シクロデシルメチル基等のシクロアルキルアルキル基等を例示することができる。
【0028】
上記「置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と前記置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基とが複合した基」として、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を例示することができる。
【0029】
上記「置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と前記置換基を有していてもよい複素環基とが複合した基」として、具体的には、2-ピペリジニルメチル基、1-モルホリニルメチル基、2-ピロリルメチル基、2-イミダゾリルメチル基、2-イミダゾリジニルメチル基、2-ベンゾイミダゾリルメチル基、3-ピラゾリルメチル基、2-チアゾリルメチル基等を例示することができる。
【0030】
上記「置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基」、「置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基」、「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」、「置換基を有していてもよい複素環基」における「置換基」は化学的に許容され、本発明の効果を有する限りにおいて特に制限されない。
【0031】
具体的には、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基若しくはn-デシル基等のC1~10アルキル基;
ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基若しくは2-メチル-2-プロペニル基等のC2~6アルケニル基;
エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基若しくは1-メチル-2-プロピニル基等のC2~6アルキニル基;
【0032】
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基若しくはキュバニル基等のC3~8シクロアルキル基;
フェニル基若しくは1-ナフチル基等のC6~10アリール基;
ベンジル基若しくはフェネチル基等のC6~10アリールC1~6アルキル基;
3~6員ヘテロシクリル基;
3~6員へテロシクリルC1~6アルキル基;
【0033】
水酸基;
メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基若しくはt-ブトキシ基等のC1~6アルコキシ基;
ビニルオキシ基、アリルオキシ基、プロペニルオキシ基若しくはブテニルオキシ基等のC2~6アルケニルオキシ基;
エチニルオキシ基若しくはプロパルギルオキシ基等のC2~6アルキニルオキシ基;
フェノキシ基若しくは1-ナフトキシ基等のC6~10アリールオキシ基;
ベンジルオキシ基若しくはフェネチルオキシ基等のC6~10アリールC1~6アルコキシ基;
2-チアゾリルオキシ基若しくは2-ピリジルオキシ基等の5~6員ヘテロアリールオキシ基;
2-チアゾリルメチルオキシ基若しくは2-ピリジルメチルオキシ基等の5~6員ヘテロアリールC1~6アルキルオキシ基;
【0034】
ホルミル基;
アセチル基若しくはプロピオニル基等のC1~6アルキルカルボニル基;
ホルミルオキシ基;
アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等のC1~6アルキルカルボニルオキシ基;
ベンゾイル基等のC6~10アリールカルボニル基;
ベンゾイルオキシ基等のC6~10アリールカルボニルオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基若しくはt-ブトキシカルボニル基等のC1~6アルコキシカルボニル基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n-プロポキシカルボニルオキシ基、i-プロポキシカルボニルオキシ基、n-ブトキシカルボニルオキシ基、若しくはt-ブトキシカルボニルオキシ基等のC1~6アルコキシカルボニルオキシ基;
カルボキシル基;
【0035】
フルオロ基、クロロ基、ブロモ基若しくはアイオド基等のハロゲノ基;
クロロメチル基、クロロエチル基、トリフルオロメチル基、1,2-ジクロロ-n-プロピル基、1-フルオロ-n-ブチル基若しくはパーフルオロ-n-ペンチル基等のC1~6ハロアルキル基;
2-クロロ-1-プロペニル基若しくは2-フルオロ-1-ブテニル基等のC2~6ハロアルケニル基;
4,4-ジクロロ-1-ブチニル基、4-フルオロ-1-ペンチニル基若しくは5-ブロモ-2-ペンチニル基等のC2~6ハロアルキニル基;
トリフルオロメトキシ基、2-クロロ-n-プロポキシ基若しくは2,3-ジクロロブトキシ基等のC1~6ハロアルコキシ基;
2-クロロプロペニルオキシ基若しくは3-ブロモブテニルオキシ基等のC2~6ハロアルケニルオキシ基;
クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基若しくはトリクロロアセチル基等のC1~6ハロアルキルカルボニル基;
【0036】
アミノ基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基若しくはジエチルアミノ基等のC1~6アルキル置換アミノ基;
アニリノ基若しくは1-ナフチルアミノ基等のC6~10アリールアミノ基;
ベンジルアミノ基若しくはフェネチルアミノ基等のC6~10アリールC1~6アルキルアミノ基;
ホルミルアミノ基;
アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、ブチリルアミノ基若しくはi-プロピルカルボニルアミノ基等のC1~6アルキルカルボニルアミノ基;
ベンゾイルアミノ基等のC6~10アリールカルボニルアミノ基;
メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n-プロポキシカルボニルアミノ基若しくはi-プロポキシカルボニルアミノ基等のC1~6アルコキシカルボニルアミノ基;
【0037】
アミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基若しくはN-フェニル-N-メチルアミノカルボニル基等の無置換若しくは置換基を有するアミノカルボニル基;
イミノメチル基、1-イミノエチル基若しくは1-イミノ-n-プロピル基等のイミノC1~6アルキル基;
N-ヒドロキシ-イミノメチル基、1-(N-ヒドロキシイミノ)エチル基、1-(N-ヒドロキシイミノ)-n-プロピル基、N-メトキシイミノメチル基若しくは1-(N-メトキシイミノ)エチル基等の無置換若しくは置換基を有するN-ヒドロキシイミノC1~6アルキル基;
【0038】
アミノカルボニルオキシ基;
エチルアミノカルボニルオキシ基若しくはジメチルアミノカルボニルオキシ基等のC1~6アルキル置換アミノカルボニルオキシ基;
【0039】
メルカプト基;
メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、i-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、i-ブチルチオ基、s-ブチルチオ基若しくはt-ブチルチオ基等のC1~6アルキルチオ基;
トリフルオロメチルチオ基若しくは2,2,2-トリフルオロエチルチオ基等のC1~6ハロアルキルチオ基;
フェニルチオ基若しくは1-ナフチルチオ基等のC6~10アリールチオ基;
2-チアゾリルチオ基若しくは2-ピリジルチオ基等の5~6員ヘテロアリールチオ基;
メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基若しくはt-ブチルスルフィニル基等のC1~6アルキルスルフィニル基;
トリフルオロメチルスルフィニル基若しくは2,2,2-トリフルオロエチルスルフィニル基等のC1~6ハロアルキルスルフィニル基;
フェニルスルフィニル基若しくは1-ナフチルスルフィニル基等のC6~10アリールスルフィニル基;
2-チアゾリルスルフィニル基若しくは2-ピリジルスルフィニル基等の5~6員ヘテロアリールスルフィニル基;
メチルスルホニル基、エチルスルホニル基若しくはt-ブチルスルホニル基等のC1~6アルキルスルホニル基;
トリフルオロメチルスルホニル基若しくは2,2,2-トリフルオロエチルスルホニル基等のC1~6ハロアルキルスルホニル基;
フェニルスルホニル基若しくは1-ナフチルスルホニル基等のC6~10アリールスルホニル基;
2-チアゾリルスルホニル基若しくは2-ピリジルスルホニル基等の5~6員ヘテロアリールスルホニル基;
メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基若しくはt-ブチルスルホニルオキシ基等のC1~6アルキルスルホニルオキシ基;
トリフルオロメチルスルホニルオキシ基若しくは2,2,2-トリフルオロエチルスルホニルオキシ基等のC1~6ハロアルキルスルホニルオキシ基;
【0040】
トリメチルシリル基、トリエチルシリル基若しくはt-ブチルジメチルシリル基等のトリC1~6アルキル置換シリル基;
トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基若しくはt-ブチルジメチルシリルオキシ基等のトリC1~6アルキル置換シリルオキシ基;
トリフェニルシリル基等のトリC6~10アリール置換シリル基;
トリフェニルシリルオキシ基等のトリC6~10アリール置換シリルオキシ基;
シアノ基又はニトロ基等を例示することができる。
【0041】
また、これらの「置換基」は、当該置換基中のいずれかの水素原子が、異なる構造の基で置換されていてもよい。その場合の「置換基」として、具体的には、C1~6アルキル基、C1~6ハロアルキル基、C1~6アルコキシ基、C1~6ハロアルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基又はニトロ基等を例示することができる。
【0042】
また、上記「3~6員ヘテロシクリル基」とは、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子及びボロン原子からなる群から選ばれる1~4個のヘテロ原子を環の構成原子として含むものである。ヘテロシクリル基は、単環及び多環のいずれであってもよい。多環ヘテロシクリル基は、少なくとも一つの環がヘテロ環であれば、残りの環が飽和脂環、不飽和脂環又は芳香環のいずれであってもよい。「3~6員ヘテロシクリル基」として、具体的には、3~6員飽和ヘテロシクリル基、5~6員ヘテロアリール基、5~6員部分不飽和ヘテロシクリル基等を例示することができる。
【0043】
上記3~6員飽和ヘテロシクリル基として、具体的には、2-アジリジニル基、2-エポキシ基、2-ピロリジニル基、2-テトラヒドロフラニル基、2-チアゾリジニル基、2-ピペリジル基、2-ピペラジニル基、1-モルホリニル基、2-ジオキソラニル基、2-ジオキサニル基、ピナコロニルボロニル基等を例示することができる。
【0044】
上記5員ヘテロアリール基として、具体的には、2-ピロリル基、2-フリル基、2-チエニル基、2-イミダゾリル基、3-ピラゾリル基、2-オキサゾリル基、3-イソオキサゾリル基、2-チアゾリル基、3-イソチアゾリル基、1,2,4-トリアゾール-3-イル基、1,2,4-オキサジアゾール-3-イル基、1,2,4-チアジアゾ-ル-3-イル基、5-テトラゾリル基等を例示することができる。
【0045】
上記6員ヘテロアリール基として、具体的には、2-ピリジル基、3-ピラジニル基、2-ピリミジニル基、2-ピリダジニル基、1,3,5-トリアジン-2-イル基等を例示することができる。
【0046】
上記5~6員部分不飽和ヘテロシクリル基として、具体的には、2-オキサゾリニル基若しくは3-イソオキサゾリニル基等を例示することができる。
【0047】
上記3~6員へテロシクリルのC1~6アルキル基として、具体的には、2-アジリジニルメチル基、グリシジル基、2-ピロリジルメチル基、2-テトラヒドロフラニルメチル基、2-チアゾリジニルメチル基、2-ピロリルメチル基、2-フリルメチル基、2-イミダゾリルメチル基、2-ピリジルメチル基又は4-ピリジルメチル基等を例示することができる。
【0048】
上記「-OR3」のR3として、具体的には、R1の官能基として例示されたものと同じ官能基を例示することができる。「-OR3」として、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基若しくはt-ブトキシ基等のC1~6アルコキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、プロペニルオキシ基若しくはブテニルオキシ基等のC2~6アルケニルオキシ基、エチニルオキシ基若しくはプロパルギルオキシ基等のC2~6アルキニルオキシ基、フェノキシ基若しくは1-ナフトキシ基等のC6~10アリールオキシ基、ベンジルオキシ基若しくはフェネチルオキシ基等のC6~10アリールC1~6アルコキシ基、2-チアゾリルオキシ基若しくは2-ピリジルオキシ基などの5~6員ヘテロアリールオキシ基又はチアゾリルメチルオキシ基若しくはピリジルメチルオキシ基等の5~6員ヘテロアリールC1~6アルキルオキシ基等を例示することができる。
【0049】
上記「-NR4R4’」のR4及びR4’として、具体的には、R1の官能基として例示されたものと同じ官能基を例示することができる。「-NR4R4’」として、具体的には、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基若しくはジエチルアミノ基等のC1~6アルキル置換アミノ基、アニリノ基若しくは1-ナフチルアミノ基等のC6~10アリールアミノ基又はベンジルアミノ基若しくはフェネチルアミノ基等のC6~10アリールC1~6アルキルアミノ基等を例示することができる。
【0050】
上記R1の中でも、好ましくは、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい複素環基であり、さらに好ましくは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、特に好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基である。また、上記置換基を有していてもよいフェニル基上の置換基数は、1でも2以上でもよく、置換基の位置は、三重結合との置換位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置であってもよい。
【0051】
式(I)中、R2は、水素原子、トリアルキルシリル基、アリルジアルキルシリル基、アルキルジアリルシリル基又はトリアリルシリル基を表し、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ(n-ブチル)シリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等を例示することができる。
【0052】
式(I)で表される化合物として、具体的には、下記式に挙げる化合物を例示することができる。
【0053】
【0054】
また、上記Rfと表されるフルオロアルキル基は、水素原子の全てがフッ素原子により置換されたアルキル基(ペルフルオロアルキル基)であっても、水素原子の一部がフッ素原子により置換されたアルキル基であってもよい。炭素数も特に制限されないが、C1~C10の範囲が好ましく例示することができる。Rfとして、具体的には、CF3、C2F5、C3F7、C4F9、C5F11、C6F13、C7F15又はC8F17等のペルフルオロアルキル基、CF2H、CFH2、CF2CF2H、CH2CF3、CH2CH2CF3、CH2C2F5、CH2CH2C2F5、CH2C3F7、CH2CH2C3F7、CH2C4F9又はCH2CH2C4F9等の部分フッ素置換アルキル基等を例示することができる。中でも、アルキル基中の水素原子の60%以上がフッ素原子で置換されているアルキル基が好ましく、70%以上、80%以上、90%以上がさらに好ましい。さらに、その中でもC1~C6のフルオロアルキル基が好ましく、さらにはC1~C3のフルオロアルキル基が好ましく、特にCF3、CF2CF2Hが好ましい。
【0055】
本発明の製造方法は、式(I)で表されるアルキン化合物を、有機溶媒中又は無溶媒中、ラジカル開始剤存在下にフルオロアルキルスルホン酸(RfSO3H)と反応させる。
【0056】
用いる有機溶媒として、具体的には、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、フルオロベンゼン、若しくはジフルオロベンゼン等の有機ハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン若しくはメシチレン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ(n-ブチル)エーテル、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アニソール、ベラトロール、ジエチルスルフィド、ジ(n-ブチル)スルフィド、アセトニトリル、プロピオニトリル若しくはベンゾニトリル等非プロトン性極性溶媒;ペンタン、ヘキサン、シクロペンタン若しくはシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等を例示することができるが、中でも、有機ハロゲン系溶媒が好ましく、さらに、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロエタンが好ましい。
【0057】
これら有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、式(I)で表されるアルキン化合物に対して、重量比で0.5倍~20倍の範囲が好ましい。
【0058】
使用されるラジカル開始剤は、反応系内で中間体として発生していると考えられるビニルフルオロアルキルスルホナートからフルオロアルキルラジカルを発生させるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、トリエチルボラン若しくはトリブチルボラン等のトリアルキルボラン化合物と分子状酸素、ジエチル亜鉛等のジアルキル亜鉛と分子状酸素、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(N-(2-プロぺニル)-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、ジメチル 2,2’-アゾビス(イソブチレート)等のアゾ化合物又はジ(t-ブチル)パーオキサイド等のパーオキサイド化合物等を例示することができる。これらのうち、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が好ましい。
【0059】
式(I)で表されるアルキン化合物に対するラジカル開始剤の使用量は、モル比で0.01~1.0当量の範囲が好ましい。また、反応系内に中間体として生成しているであろうビニルフルオロアルキルスルホナート化合物からフルオロアルキルラジカルを発生させる方法としては、アゾ化合物を添加し加熱する方法もしくは光を照射する条件や、過酸化物を添加し光を照射する条件も用いることができる。トリエチルボランを使用する場合、分子状酸素は、微量存在していれば十分である。
本発明の方法においては、アゾ化合物等のラジカル開始剤を添加して加熱して行うのが好ましく、加熱する温度は、30℃から用いる溶媒の沸点までの温度が好ましく、用いるラジカル重合開始剤が開裂できる温度以上に加熱するのがさらに好ましく、40~100℃、50~90℃、60~80℃の範囲を好ましく例示することができる。
【0060】
式(I)で表さる化合物に対するフルオロアルキルスルホン酸の使用量は、モル比で、1.0~2.0当量の範囲が好ましい。
【0061】
本発明の製造方法における反応温度は、特に限定されないが、通常、-100℃~150℃である。反応圧力は、常圧又は加圧下にて実施することができる。反応時間は通常、1分~100時間である。なお、反応は十分な攪拌下にて行うことが望ましい。
【0062】
反応後は酢酸や塩酸等の酸あるいは水を添加し、反応試剤を失活させ、不溶物を除去した後、通常の操作を行って、式(II)で表されるα-フルオロアルキルケトン化合物を精製単離することもできるが、そのような単離精製工程を経ずに、反応系に還元剤等を添加して還元を行い、その後、公知の蒸留法、抽出、晶出、再結晶、クロマトグラフィー等の精製によりβ-フルオロアルキルアルコール化合物を単離することができる。
【0063】
α-フルオロアルキルケトンを還元する方法は、フルオロアルキル基を還元せずにケトンを還元できる方法であれば特に制限されず、具体的には、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリ(s-ブチル)ホウ素リチウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウム、水素化ホウ素ニッケル、水素化ホウ素亜鉛、2-ピコリンボラン錯体、ボランジメチルスルフィド錯体等のボラン錯体等の金属水素化物による還元、パラジウム、ルテニウム錯体等を用いた水素による還元、イソプロパノール、シクロヘキサノールを水素源として、アルミニウムアルコキサイド、ランタノイドアルコキサイド、ジルコニウムアルコキサイド、ルテニウム錯体等を用いたメーヤワイン・ポドルフ・ヴァーレ還元等を例示することができる。
【0064】
また、α-フルオロアルキルケトンからβ-フルオロアルキルアルコールを得る方法として、カルボニル基に対して、有機金属試薬を反応させる方法も例示することができる。有機金属試薬としては、カルボニル基と反応する有機金属試薬であれば、特に限定されず、具体的には、メチルマグネシウムブロマイド、フェニルマグネシウムブロマイド、メチルリチウム、フェニルリチウム等を例示することができる。式(III)におけるR’は、有機金属試薬の有機基部分を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基等のアルキル基、フェニル基、1-ナフチル基等のアリール基などを例示することができる。
【実施例】
【0065】
以下実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例の範囲に限定されるものではない。
[実施例1]
【0066】
反応器にアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)16.7mg(0.10mmol)、1-クロロ-4-エチニルベンゼン65.4mg(0.48mmol)を入れ、窒素置換を実施した。1,2-ジクロロエタン2ml及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホン酸0.08mlを順次加え,加熱下(80℃)で4時間撹拌した。その後、溶媒を留去した後、反応混合物にジブロモメタンを内部標準として加え、1H-NMRにて分析したところ、1-(4-クロロフェニル)-3,3,4,4-テトラフルオロブタン-1-オンの収率は81%であった。
[実施例2]
【0067】
反応器にAIBN16.7mg(0.10mmol),1-クロロ-4-エチニルベンゼン65.4mg(0.48mmol)を入れ,窒素置換を実施した。1,2-ジクロロエタン2ml及び1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホン酸0.08mlを順次加え,加熱下(80℃)で4時間撹拌した。室温に冷却後,メタノール2ml及び水素化ホウ素ナトリウム35.8mg(0.95mmol)を加え室温下で30分撹拌した。その後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え,ジクロロメタンで抽出した。溶媒を留去した後、反応混合物にジブロモメタンを内部標準として加え、1H-NMRにて分析したところ、1-(4-クロロフェニル)-3,3,4,4-テトラフルオロペンタン-1-オールの収率は65%であった。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離・精製を行ったところ、1-(4-クロロフェニル)-3,3,4,4-テトラフルオロブタン-1-オールが68mg(0.27mmol、収率56%)得られた。
【0068】
[実施例3]~[実施例10]
用いるアルキン化合物を表1に示す化合物を用いる以外は、実施例1と同様に反応を行った。その結果を表1に示す。
【0069】
【0070】
1-クロロ-4-エチニルベンゼンの代わりに1-メトキシカルボニル-4-エチニルベンゼンを用い、1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホン酸の代わりにトリフルオロメタンスルホン酸を用いる以外は実施例1と同様に行い、収率56%で、1-(4-メトキシカルボニルフェニル)-3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オンを得た。
【0071】
[実施例12]~[実施例15]
用いるアルキン化合物を表2に示す化合物を用いる以外は、実施例2と同様に反応を行った。その結果を表2に示す。
【0072】
【0073】
反応器にアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)16.7mg(0.10mmol)、1-クロロ-4-(2-トリメチルシリルエチニル)ベンゼン105mg(0.5mmol)を入れ、窒素置換を実施した。1,2-ジクロロエタン2ml及びトリフルオロメタンスルホン酸0.07mlを順次加え,加熱下(100℃)で2時間撹拌した。その後、溶媒を留去した後、反応混合物にジブロモメタンを内部標準として加え、1H-NMRにて分析したところ、1-(4-クロロフェニル)-3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オンを収率は75%で得られたことがわかった。
【0074】
[実施例17]~[実施例26]
用いるアルキン化合物を表3に示す化合物を用いる以外は、実施例16と同様に反応を行った。その結果を表3に示す。
【0075】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の製造方法は、既存のトリフルオロメチル化試薬や酸化剤を用いることなく、医農薬の中間体や液晶材料として有用であるα-トリフルオロメチルケトン化合物等のα-フルオロアルキルケトン化合物又はβ-トリフルオロメチルアルコール化合物等のβ-フルオロアルキルアルコール化合物を効率よく提供することができる。