(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】癌を治療するためのグルカゴン受容体アンタゴニストとPI3K経路阻害剤との組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20221205BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221205BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221205BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20221205BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20221205BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20221205BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20221205BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20221205BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20221205BHJP
A61K 31/4545 20060101ALI20221205BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20221205BHJP
A61K 31/496 20060101ALN20221205BHJP
A61K 31/517 20060101ALN20221205BHJP
A61K 31/4985 20060101ALN20221205BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P43/00 121
A61P35/00
A61K31/4745
A61K31/519
A61K31/4709
A61K31/5377
A61K31/4439
A61K31/4375
A61K31/4545
C07K16/28
A61K31/496
A61K31/517
A61K31/4985
(21)【出願番号】P 2019505193
(86)(22)【出願日】2017-08-03
(86)【国際出願番号】 US2017045390
(87)【国際公開番号】W WO2018027084
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-31
(32)【優先日】2016-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516365493
【氏名又は名称】アールイーエムディー バイオセラピューティクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REMD Biotherapeutics,Inc
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】カルツォーネ,フランク,ジェイ
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-504331(JP,A)
【文献】British Journal of Cancer ,2015年,volume 113,p. 1541-1547,DOI:10.1038/bjc.2015.373
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61P 35/00
A61K 39/395
A61K 31/00
C07K 16/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)経路阻害剤による治療を受けている対象における癌の治療に用いるための医薬組成物であって、前記医薬組成物が、i)単離グルカゴン受容体(GCGR)アンタゴニスト、およびii)薬学的に許容可能な担体を含み、
前記対象において、PI3K経路阻害剤のみで治療された対象と比較して、PI3K経路阻害剤により誘発される高血糖症および高インスリン血症が低減する一方で腫瘍PI3K阻害が維持され、
前記単離GCGRアンタゴニストが、
配列番号49の重鎖をコードするアミノ酸配列および配列番号50の軽鎖をコードするアミノ酸配列を含む完全ヒトGCGRアンタゴニスト抗体
であり、前記PI3K経路阻害剤が、
BYL719、BKM120、およびMK2206からなる群から選択される
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記単離GCGRアンタゴニスト抗体が、少なくとも約1×10
-7M、少なくとも約1×10
-8M、少なくとも約1×10
-9M、少なくとも約1×10
-10M、少なくとも約1×10
-11M、または少なくとも約1×10
-12Mの解離定数(K
D)でヒトグルカゴン受容体に特異的に結合することを特徴とする医薬組成物。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の医薬組成物において、前記単離GCGRアンタゴニスト抗体の治療有効量が、1週間当たり体重に対して0.001~10mg/kg、0.001~9mg/kg、0.001~8mg/kg、0.001~7mg/kg、0.001~6mg/kg、0.001~5mg/kg、0.001~4mg/kg、0.001~3mg/kg、0.001~20mg/kg、0.001~1mg/kg、0.010~10mg/kg、0.010~9mg/kg、0.010~8mg/kg、0.010~7mg/kg、0.010~6mg/kg、0.010~5mg/kg、0.010~4mg/kg、0.010~3mg/kg、0.010~2mg/kg、0.010~1mg/kg、0.1~10mg/kg、0.1~9mg/kg、0.1~8mg/kg、0.1~7mg/kg、0.1~6mg/kg、0.1~5mg/kg、0.1~4mg/kg、0.1~3mg/kg、0.1~2mg/kg、0.1~1mg/kg、0.5~10mg/kg、0.5~9mg/kg、0.5~8mg/kg、0.5~7mg/kg、0.5~6mg/kg、0.5~5mg/kg、0.5~4mg/kg、0.5~3mg/kg、0.5~2mg/kg、0.5~1mg/kg、1~10mg/kg、1~9mg/kg、1~8mg/kg、1~7mg/kg、1~6mg/kg、1~5mg/kg、1~4mg/kg、1~3mg/kg、および1~2mg/kgからなる群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項4】
請求項1乃至
3の何れか1項に記載の医薬組成物において、前記PI3K経路阻害剤の治療有効量が、1日当たりレシピエントの体重に対して0.05mg/kg~75mg/kg、0.05mg/kg~70mg/kg、0.05mg/kg~60mg/kg、0.05mg/kg~50mg/kg、0.05mg/kg~40mg/kg、0.05mg/kg~30mg/kg、0.05mg/kg~20mg/kg、0.05mg/kg~10mg/kg、0.1mg/kg~75mg/kg、0.1mg/kg~30mg/kg、0.1mg/kg~40mg/kg、0.1mg/kg~50mg/kg、0.1mg/kg~40mg/kg、0.1mg/kg~30mg/kg、0.1mg/kg~20mg/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、0.5mg/kg~75mg/kg、0.5mg/kg~70mg/kg、0.5mg/kg~60mg/kg、0.5mg/kg~50mg/kg、0.5mg/kg~40mg/kg、0.5mg/kg~30mg/kg、0.5mg/kg~20mg/kg、0.5mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~75mg/kg、1mg/kg~70mg/kg、1mg/kg~60mg/kg、1mg/kg~50mg/kg、1mg/kg~40mg/kg、1mg/kg~30mg/kg、1mg/kg~20mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、5mg/kg~75mg/kg、5mg/kg~70mg/kg、5mg/kg~60mg/kg、5mg/kg~50mg/kg、5mg/kg~40mg/kg、5mg/kg~30mg/kg、5mg/kg~20mg/kg、および5mg/kg~10mg/kgからなる群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れか1項に記載の医薬組成物において、前記PI3K経路阻害剤およびGCGRアンタゴニストが、同時に投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項6】
請求項1乃至
4の何れか1項に記載の医薬組成物において、前記PI3K経路阻害剤およびGCGRアンタゴニストが、異なる時間に投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
請求項1乃至
6の何れか1項に記載の医薬組成物において、前記癌が、B細胞リンパ腫、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、乳癌、膵癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳癌または中枢神経系癌、末梢神経系癌、食道癌、頸癌、黒色腫、子宮癌または子宮内膜癌、口腔癌または咽頭癌、肝癌、腎癌、胆道癌、小腸癌または虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、脂肪肉腫、精巣癌および悪性線維性組織球腫、皮膚癌、頭頸部癌、リンパ腫、肉腫、多発性骨髄腫、ならびに白血病からなる群から選択されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
請求項
7に記載の医薬組成物において、前記癌が、再発癌であることを特徴とする医薬組成物。
【請求項9】
請求項
7に記載の医薬組成物において、前記癌が、PI3K経路阻害剤による治療に対して耐性または難治性であることを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願
本願は、参照によりその全体が援用される2016年8月3日出願の米国仮特許出願第62/370,642号明細書の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)は、細胞代謝、細胞周期、アポトーシス、DNA修復、老化、血管新生、および運動性の調節に中心的役割を果たす脂質キナーゼである(Cantley LC著、Science誌、第296巻、第5573号:1655~1657頁、2002年)。PI3Kシグナル伝達は、タンパク質合成、細胞生存、増殖、分化、老化、運動性、血管新生、および代謝をはじめとする広範にわたる細胞プロセスを調節する。セカンドメッセンジャー(PIP3、PI 3,4-ビスホスフェート)が発生すると、PI3Kシグナル伝達は、多様な一連のプレクストリン相同(PH)ドメイン含有細胞内シグナル伝達タンパク質に作用して、AKT、mTOR、ERK1/2、p38 MAPK、NFκB、およびJNK/SAPK経路をはじめとする複数のエフェクターキナーゼ経路の活性化を達成するイベントのカスケードを間接的に惹起し、最終的に正常細胞の生存および成長をもたらす(Id)。PI3Kの活性は、PTEN(10番染色体から欠失されるホスファターゼテンシンホモログ)などの内部シグナルにより正常細胞において厳密に調節されるが、PI3Kシグナル伝達経路の脱調節がヒト癌の1/3において発生に関連することが広く認められている(Arteaga CL著、Curr Top Microbiol Immunol.誌、第347巻:189~208頁、2010年、Liu P著、Nat Rev Drug Discov.誌、第8巻、第8号:627~644頁、2009年)。癌においてPI3K経路を駆動する遺伝子異常としては、PI3Kの遺伝子増幅、PTENの調節活性損失、ならびにEGFRおよびHER2などの受容体チロシンキナーゼ(RTK)の活性化突然変異が挙げられる(Engelman JA著、Nat Rev Cancer.誌、第9巻、第8号:550~562頁、2009年)。
【0003】
2つのPI3Kアイソフォーム(PIK3αおよびPIK3β)は、グルコース恒常性および脂質生成をはじめとする全身の代謝を制御するインスリンの作用を媒介するのに不可欠である(Weiら著、Vaccine誌、第33巻:7401~7407頁、2015年)。肝臓において、インスリンによるインスリン受容体(IR)の活性化は、グルコースの利用ならびにグリコーゲンおよび脂質としての貯蔵を刺激すると同時に糖新生を抑制する。インスリンシグナル伝達は、筋肉および脂肪組織などの末梢組織においてグルコースの取込みおよび利用も調節する。欠損インスリンシグナル伝達は、1型糖尿病(T1D)、2型糖尿病(T2D)、および他のメタボリック症候群に関連付けられている(MollerおよびKaufman著、Annual review of medicine誌、第56巻:45~62頁、2005年)。インスリンに加えて、末梢細胞代謝は、インスリン様成長因子受容体1への結合を介してインスリン様成長因子(IGF1、IGF2)の作用により制御される(LeRoithおよびYakar著、Nat Clin Pract End Met誌、第3巻:302~310頁、2007年)。
【0004】
末梢組織において、PI3K経路阻害剤(PI3Ki)が新規な抗癌療法の有望な目標として現れた。薬剤設計が成功して、先進的な前臨床試験から臨床開発の様々な段階まで進んだ3つのクラスの強力且つ選択的低分子阻害剤がもたらされた。過去数年間、幾つかのクラスの強力且つ選択的低分子PI3K経路阻害剤が開発されており、少なくとも15種の化合物は、新しい抗癌剤として臨床試験に進んでいる(Akinleyeら著、Journal of Hematology & Oncology誌、第6巻:88頁、2013年)。残念ながら、臨床効果は、標的範囲が狭いためにこれまでのところ期待外れであり、また、多くのPI3K経路阻害剤は、動物試験でかなりの毒性を示すと共に、こうした医薬上の制限があるために臨床評価に進んでいない。
【0005】
高血糖症、高インスリン血症、インスリン抵抗性、および体重減少は、PI3Kiで治療された患者で観測される用量制限毒性である(Smith,G.C.ら著、Biochem J誌、第442巻、第1号:161~9頁、2012年)。例えば、1)高血糖症は、グルコース利用および好気的解糖を増加させることにより腫瘍においてPI3Kiの代謝作用を無効にするため、腫瘍グルコース取込みを促進してPI3K阻害に関係なく細胞成長および複製を駆動し(Wardら著、Cancer Cell.誌、第21巻、第3号:297~308頁、2012年)、2)高インスリン血症は、腫瘍IRおよびIGF1Rハイブリッド受容体シグナル伝達を刺激することによりPI3Kiに拮抗し、および3)PI3Kiにより誘発されるT1D様症状は、用量制限性であり、腫瘍標的範囲を厳しく制限する(Fritsch,Cら著、Mol Cancer Ther誌、2014.第13巻、第5号:1117~29頁、2014年)。PI3K阻害剤で観測される毒性作用は、糖尿病の管理に使用される薬剤により正常化されない(例えば、GSK690693によるCD-17scidマウスの治療は、高血糖症を強く誘発する。この作用は、ロシグリタゾンマレイン酸塩、ビルダグリプチン、メトホルミン、およびエキセンジン-4をはじめとする臨床的糖尿病の治療に使用される幾つかの薬剤により予防も低減もされなかった。Crouthamelら著、Clin Cancer Res誌、第15巻:217~225頁、2009年を参照されたい)。AKT阻害剤(直接PI3K標的)により誘発される高血糖症は、齧歯動物において絶食により部分的に消散可能であるが、高インスリン血症は軽減されない。したがって、インスリンシグナル伝達を用いずにグルコースを調節することはできないと推定されるため、腫瘍学では広いPI3K範囲を達成できないように思われる。
【0006】
循環グルコースおよび代謝恒常性は、インスリンおよびグルカゴンの同様に重要な反対作用により調節される(UngerおよびCherrington著、J Clin Invest誌、第122巻:4~12頁、2012年)。肝グルカゴン受容体(GCGR)の活性化は、肝グルコース取込みの減少、肝グリコーゲン分解の増加、肝糖新生の増加、ケトン体生成の増加、およびグリコーゲン合成の減少に直接関与し、これらは、全て循環グルコースを増加させる(UngerおよびOrci著、Lancet誌、第1巻:14~16頁、1975年)。グルカゴンの主標的器官は、GCGRがユニークに高レベルで発現される肝臓である。肝細胞におけるGCGRの活性化は、グリコーゲン分解および糖新生の主要な酵素の合成および生化学的活性を刺激し、肝グルコース産生の増加をもたらす。GCGRは、他の生命維持器官(例えば、小腸、心臓、脳など)でかなり低いレベルで発現される。しかしながら、これらの器官の受容体活性は、循環グルコースの調節にそれほど重要でない。ヒトGCGRに特異的に結合して拮抗する単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質を用いてグルカゴンの産生または機能を標的とすることにより、T2Dモデルにおいて血糖の制御および低下ならびにグルコース耐性の改善が可能であること(例えば、Yanらの米国特許第7,947,809号明細書を参照されたい)、また1型糖尿病(T1D)モデルにおいてインスリン療法の完全な不在下で血糖値およびヘモグロビンA1cレベルの正常化が可能であること(例えば、PCT国際公開第2015/189698号パンフレット(HaiおよびShi)を参照されたい)が示されている。高血糖症、高インスリン血症、体重減少、インスリン抵抗性の増加、およびインスリン産生の減少をはじめとするT2DおよびT1Dの幾つかの顕著な特徴が、PI3K経路阻害剤を用いた癌の治療に伴うという事実を考慮すると、癌、例えば卵巣癌および乳癌の新規な治療法を開発する研究努力は、癌を有するかまたは癌と診断された対象を効果的に治療するためにそのようなアンタゴニスト性抗原結合タンパク質の効果を評価する研究により、かなり奏功する可能性があるであろう。
【0007】
本明細書で参照される全ての刊行物、特許、特許出願、および公開特許出願の開示は、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、部分的には、標的範囲が狭いためだけでなく、PI3K経路阻害剤による患者の治療により明らかな代謝再プログラミングも誘発されるため、PI3K経路阻害剤の臨床効果が期待外れであったという本発明者のユニークな洞察に基づく。そのような代謝再プログラミングを予防する目的で糖尿病性および非糖尿病性癌患者においてGCGR阻害を行えば、次の方式:1)腫瘍に対する過剰グルコースの成長促進効果が減少すること、2)PI3Kにより誘発される高血糖症および高インスリン血症の低減がPI3K経路阻害剤に対する拮抗作用を低減すること、3)グルコースの正常化がMTDを増加させてPI3K標的範囲の拡大を可能にするはずであること、および4)GCGR遮断がPTEN活性の向上により肝臓においてインスリンシグナル伝達のPI3K阻害を増強し得ることの1つ以上により、PI3K経路阻害剤の有効性が増強されるはずであることを本発明者らは提案する。
【0009】
したがって、一態様において、本開示は、癌を有する対象を治療する組み合わせ治療方法であって、a)ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)経路阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩を含む有効量の医薬組成物、およびb)グルカゴン受容体アンタゴニストを含む有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。様々な実施形態において、組み合わせ治療方法は、PI3K経路阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩およびグルカゴン受容体アンタゴニスト抗体を含む有効量の医薬組成物を投与することを含む。
【0010】
様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤は、PI3Kアルファ阻害剤、PI3Kベータ阻害剤、PI3Kガンマ阻害剤、PI3Kデルタ阻害剤、および汎PI3Kアイソフォーム阻害剤からなる群から選択されるPI3K阻害剤である。様々な実施形態において、PI3K阻害剤は、GDC-0941(Genentech)、BKM120(NVP-BKM120)(Novartis)、XL147(Sanofi)、PX-866(Oncothyreon)、BAY806946(Bayer)、CH5132799(Chugai)、BYL719(NVP-BYL719)(Novartis)、MLN1117(Millennium)、AZD8186(Astra-Zeneca)、SAR260301(Sanofi)、GSK2636771(Glaxo Smith Kline)、GS-1101(Gilead)、AMG319(Amgen)、GS-9820(Gilead)、IPI-145(Infinity)、GDC-0032(Genentech)、およびGDC-0084(Genentech)からなる群から選択される。様々な実施形態において、PI3K阻害剤は、BYL719である。
【0011】
様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤は、インスリン様成長因子受容体1(IGFR1)低分子チロシンキナーゼ阻害剤またはモノクローナル抗体である。様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤は、BMS754807(BMS)、INSM-18(Insmed/UCSF)、OSI-906(リンシチニブ)(Osi Pharmaceuticals)、XL-228(Exelixis)、GSK1904529A(GSK)、ABDP(AZ)、A-928605(Abbott)、AXL1717(PPP)(Alexar)、KW-2450(Kyowa Kirin)、NVP-ADW742(Novartis)、NVP-AEW541(Novartis)、AG-1024(Merck)、BMS-536924(BMS)、BMS-554417(BMS)、およびBVP-51004(Biovitrum)からなる群から選択されるIGFR1チロシンキナーゼ阻害剤である。様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤は、MK0646(ダロツズマブ)(Merck)、AMG479(ガニツムマブ)(Amgen)、A12(シクスツムマブ)(ImClone)、CP751,871(フィギツムマブ)(Pfizer)、AVE1642(Sanofi-Aventis)、Sch717454(ロバツムマブ)(Schering-Merck)、R1507(Roche)、BIIB022(Biogen Idec)、h10H5(Genentech)、MEDI-573(Medimmune)、およびBI836845(Boehringer-lngleheim)からなる群から選択されるIGFR1モノクローナル抗体である。
【0012】
様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤は、ミルテホシン、ペリホシン、PF-04691502、CCT128930、A-674563、MK-2206(Merck)、RX-0201、PBI-05204、AZD5363(Astra-Zeneca)、AKTi-1/2、AT7867、AT13148、GDC-0068(イパタセルチブ)(Genentech)、TIC10、SC79、GSK690693、GSK2110183、およびGSK2141795(Glaxo Smith Kline)からなる群から選択されるAKTキナーゼ阻害剤である。
【0013】
様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤は、シロリムス、RAD001(エベロリムス)(Novartis)、CCI-779(テムシロリムス)(Wyeth-Pfizer)、ABT578、SAR543、アスコマイシン、リダフォロリムス、AP23573(デフォロリムス)(Ariad/Merck)、AP23841、KU-0063794、INK-128、EX2044、EX3855、EX7518、MK-8669、AZD08055、MLN0128、AZD2014、CC-223、およびOSI027からなる群から選択されるmTOR阻害剤である。
【0014】
様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤は、NVP-BEZ235(Novartis)、NVP-BGT226(Novartis)、XL765(Sanofi)、GSK1059615(Glaxo Smith Kline)、およびGDC-0980(Genentech)からなる群から選択される汎PI3K/mTOR阻害剤である。
【0015】
様々な実施形態において、グルカゴン受容体アンタゴニストは、ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質である。様々な実施形態において、単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質としては、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体断片、Fab、Fab’、Fab2、Fab’2、IgG、IgM、IgA、IgE、scFv、dsFv、dAb、ナノボディ、ユニボディ、およびディアボディからなる群から選択される抗体が挙げられる。様々な実施形態において、抗体は、完全ヒトモノクローナル抗体である。
【0016】
様々な実施形態において、単離抗体または抗原結合抗体断片は、少なくとも約1×10-7M、少なくとも約1×10-8M、少なくとも約1×10-9M、少なくとも約1×10-10M、少なくとも約1×10-11M、または少なくとも約1×10-12Mの解離定数(KD)でヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する。
【0017】
様々な実施形態において、単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質は、配列番号2の重鎖可変領域をコードするアミノ酸配列および配列番号3の軽鎖可変領域をコードするアミノ酸配列を含む抗体を含む。様々な実施形態において、単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質は、配列番号4の重鎖可変領域をコードするアミノ酸配列および配列番号5の軽鎖可変領域をコードするアミノ酸配列を含む抗体を含む。様々な実施形態において、単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質は、配列番号6の重鎖可変領域をコードするアミノ酸配列および配列番号7の軽鎖可変領域をコードするアミノ酸配列を含む抗体を含む。様々な実施形態において、単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質は、配列番号8の重鎖をコードするアミノ酸配列および配列番号9の軽鎖をコードするアミノ酸配列を含む抗体を含む。
【0018】
様々な実施形態において、B細胞リンパ腫、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞肺癌)、気管支癌、結腸直腸癌、前立腺癌、乳癌、膵癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳癌または中枢神経系癌、末梢神経系癌、食道癌、頸癌、黒色腫、子宮癌または子宮内膜癌、口腔癌または咽頭癌、肝癌、腎癌、胆道癌、小腸癌または虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、脂肪肉腫、精巣癌および悪性線維性組織球腫、皮膚癌、頭頸部癌、リンパ腫、肉腫、多発性骨髄腫、ならびに白血病からなる群から選択される癌である。様々な実施形態において、対象は、以前に抗癌療法による治療に反応したが、療法中止により再発(これ以降では「再発癌」)を受けている。様々な実施形態において、対象は、PI3K経路阻害剤を単独で用いた治療、別の抗癌剤を単独で用いた治療、または別の抗癌剤と組み合わせてPI3K経路阻害剤を用いた治療に対して耐性または難治性の癌を有する。
【0019】
様々な実施形態において、組み合わせ治療方法は、PI3K経路阻害剤およびグルカゴン受容体アンタゴニストを同一の医薬組成物または個別の医薬組成物の何れかで同時に投与することを含む。様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤組成物およびグルカゴン受容体アンタゴニスト組成物は、逐次的に投与される。すなわち、PI3K経路阻害剤組成物は、グルカゴン受容体アンタゴニスト組成物の投与前または投与後の何れかで投与される。様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤組成物およびグルカゴン受容体アンタゴニスト組成物の投与は、並行的である。すなわち、PI3K経路阻害剤組成物の投与期間およびグルカゴン受容体アンタゴニスト組成物の投与期間は、互いに重なる。様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤組成物およびグルカゴン受容体アンタゴニスト組成物の投与は、非並行的である。例えば、様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤組成物の投与は、グルカゴン受容体アンタゴニスト組成物が投与される前に終了し、また様々な実施形態において、グルカゴン受容体アンタゴニスト組成物の投与は、PI3K経路阻害剤組成物が投与される前に終了する。
【0020】
様々な実施形態において、本方法は、抗肥満剤(食欲抑制剤を含む)、抗糖尿病剤、抗高血糖剤、脂質低下剤、抗高血圧剤の投与、免疫療法、化学療法、低分子キナーゼ阻害剤標的療法、手術、放射線療法、および幹細胞移植からなる群から選択される1つ以上の追加の療法をさらに含み得る。
【0021】
別の態様において、本開示は、1つ以上の薬学的に許容可能な担体と共にPI3K経路阻害剤および/またはグルカゴン受容体アンタゴニストを含む医薬組成物に関する。様々な実施形態において、医薬組成物は、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、胸骨内注射、静脈内注射、動脈内注射、脊髄内注射、脳室内注射、尿道内注射、頭蓋内注射、滑液嚢内注射、および注入を介したものからなる群から選択される経路を介して投与されるように製剤される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、給餌C57BL/6マウスにおいてPI3K/Akt経路阻害剤による高血糖症の誘発に対するREMD2.59c前治療の効果を決定するために使用した投与およびサンプリングのプロトコルの概略図である。
【
図2】
図2Aは、50mg/kg BYL719が投与され、且つREMD2.59cまたはASN媒体で24時間にわたり前治療されたマウスにおいて投与0.5時間前、投与2時間後、および投与4時間後の血糖値を表すヒストグラムである。
図2Bは、50mg/kg BKM120が投与され、且つREMD2.59cまたはASN媒体で24時間にわたり前治療されたマウスにおいて投与0.5時間前、投与2時間後、および投与4時間後の血糖値を表すヒストグラムである。
図2Cは、150mg/kg MK2206が投与され、且つREMD2.59cまたはASN媒体で24時間にわたり前治療されたマウスにおいて投与0.5時間前、投与2時間後、および投与4時間後の血糖値を表すヒストグラムである。黒色バーは、ASN治療マウスを表す。灰色バーは、REMD2.59cで前治療されたマウスを表す。
【
図3】
図3Aは、100mg/kg OSI-906が投与され、且つREMD2.59cまたはASN媒体で24時間にわたり前治療されたマウスにおいて投与0.5時間前、投与2時間後、および投与4時間後の血糖値を表すヒストグラムである。
図3Bは、100mg/kg GDC-0068が投与され、且つREMD2.59cまたはASN媒体で24時間にわたり前治療されたマウスにおいて投与0.5時間前、投与2時間後、および投与4時間後の血糖値を表すヒストグラムである。
図3Cは、10mg/kg GDC-0980が投与され、且つREMD2.59cまたはASN媒体で24時間にわたり前治療されたマウスにおいて投与0.5時間前、投与2時間後、および投与4時間後の血糖値を表すヒストグラムである。
図3Dは、30mg/kg GSK690693が投与され、且つREMD2.59cまたはASN媒体で24時間にわたり前治療されたマウスにおいて投与0.5時間前、投与2時間後、および投与4時間後の血糖値を表すヒストグラムである。黒色バーは、ASN治療マウスを表す。灰色バーは、REMD2.59cで前治療されたマウスを表す。
【
図4】
図4Aは、150mg/kg MK2206が経口投与され、且つREMD2.59cまたはASN媒体で24時間にわたり前治療されたBalb/c無胸腺ヌードマウスにおいて投与0.5時間前、投与2時間後、および投与4時間後の血糖値を表すヒストグラムである。
図4Bは、150mg/kg MK2206が投与され、且つREMD2.59cまたはASN媒体で24時間にわたり前治療されたマウスにおいて投与0.5時間前、投与2時間後、および投与4時間後のインスリンレベルを表すヒストグラムである。黒色バーは、ASN治療マウスを表す。灰色バーは、REMD2.59cで前治療されたマウスを表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書に別段の定義がない限り、本開示との関連で使用される科学技術用語は、当業者が通常理解する意味を有するものとする。さらに、文脈上特に必要とされない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、且つ複数形の用語は、単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸化学、さらにはハイブリダイゼーションとの関連で使用される命名法およびそれらの技術は、当技術分野で通常使用される周知のものである。本開示の方法および技術は、別段の指示がない限り、当技術分野で周知であり、且つ本明細書全体を通じて列挙および考察される様々な一般的およびより特定の参照文献に記載の従来の方法に従って一般に実施される。例えば、参照により本明細書に援用されるGreenおよびSambrook著、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2012年)を参照されたい。酵素反応および精製技術は、当技術分野で通常達成されるようにまたは本明細書に記載されるように製造業者の仕様書に従って実施される。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、ならびに医化学および薬化学との関連で使用される命名法ならびにそれらの実験手法および技術は、当技術分野で通常使用される周知のものである。化学合成、化学分析、医薬調製、製剤、および送達ならびに対象の治療には、標準的技術が使用される。
【0024】
定義
本明細書において使用される場合、「治療」は、有益なまたは所望の臨床結果を得る手法である。本発明の目的では、有益なまたは所望の臨床結果としては、限定されるものではないが、1つ以上の症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の広がり(例えば、転移、例えば肺またはリンパ節への転移)の予防または遅延、疾患の再発の予防または遅延、疾患進行の遅延または減速、疾患状態の改善、および寛解(一部であるか全部であるかを問わない)の何れか1つ以上が挙げられる。また、「治療」には増殖疾患の病理学的影響の低減が包含される。本発明の方法では、治療のこうした態様の何れか1つ以上が企図される。
【0025】
本明細書において使用される「有効量」または「治療有効量」という用語は、特定の障害、病気、または疾患を治療するのに十分である、例えばその症状の1つ以上を改善、緩和、軽減、および/または遅延するのに十分な化合物または組成物の量を指す。癌または他の望ましくない細胞増殖が言及される場合、有効量は、(i)癌細胞数の低減、(ii)腫瘍サイズの低減、(iii)末梢器官への癌細胞浸潤のある程度の阻害、遅延、減速、好ましくは停止、(iv)腫瘍転移の阻害(すなわち、ある程度の減速、好ましくは停止)、(v)腫瘍成長の阻害、(vi)腫瘍の発生および/もしくは再発の予防もしくは遅延、ならびに/または(vii)癌に関連する1つ以上の症状のある程度の緩和に十分な量を含む。有効量は、1回以上の投与で投与され得る。
【0026】
「アジュバント状況」は、個体が癌の病歴を有していると共に療法(限定されるものではないが、手術(例えば、外科切除)、放射線療法、および化学療法を含む)に一般に(必ずではないが)反応している臨床状況を指す。しかしながら、癌の病歴があるため、こうした個体は、疾患を発症するリスクがあると見なされる。「アジュバント状況」下の治療または投与は、治療の後続形態を指す。リスク度(すなわち、アジュバント状況下の個体が「高リスク」または「低リスク」と見なされるとき)は、幾つかの因子、最も一般的には最初に治療を受けたときの疾患の程度に依存する。
【0027】
「患者」、「個体」、および「対象」という用語は、互換的に使用され得ると共に、哺乳動物、好ましくはヒトまたは非ヒト霊長動物だけでなく、家畜哺乳動物(例えば、イヌまたはネコ)、実験哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、モルモット)、および農業哺乳動物(例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ)を指す。様々な実施形態において、患者は、外来診療状況または他の診療状況として病院、精神医療施設で医師または他の医療従事者のケアを受けているヒト(例えば、成人の男性、成人の女性、青年期の男性、青年期の女性、男性の子供、女性の子供)であり得る。
【0028】
「医薬組成物」は、ヒトにおける医薬使用に適切な組成物を指す。医薬組成物は、薬理学的有効量の活性剤および薬学的に許容可能な担体を含む。「薬理学的有効量」は、意図された薬理学的結果を得るのに有効な薬剤の量を指す。「薬学的に許容可能な担体」は、標準的な医薬担体、媒体、緩衝液、および賦形剤、例えばリン酸緩衝生理食塩水溶液、5%デキストロース水溶液、ならびにエマルジョン、例えば油/水または水/油エマルジョン、さらには様々なタイプの湿潤剤および/または補助剤の何れかを指す。適切な医薬担体および製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第21版、2005年、マック・パブリッシング社、イーストンに記載されている。「薬学的に許容可能な塩」は、医薬使用の配合物として製剤され得る塩であり、例えば金属塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの塩)およびアンモニアまたは有機アミンの塩が挙げられる。
【0029】
「投与する」または「投与を施す」という語句は、患者への薬剤/化合物の投与を制御および/または許可する医療専門家(例えば、医師)または患者診療担当者がとる行動を指す。投与を施すことは、患者に対する診断、および/または適切な治療計画の決定、および/または特定の薬剤/化合物の処方を含み得る。そのような処方は、例えば、処方箋様式の作成、医療記録の注釈付与などを含み得る。本明細書に投与が記載される場合、「投与を施す」ことも企図される。
【0030】
本明細書において使用される場合、本開示の単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよびPI3K経路阻害剤を参照する「共投与」、「共投与される」、および「組み合わせて」という用語は、実質的に同時に成分を対象に放出する単一剤形として成分が一緒に製剤される場合、治療を必要とする対象への単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよびPI3K経路阻害剤の組み合わせの同時投与、実質的に同時に対象により摂取される個別剤形として成分が互い別々に製剤されて成分が実質的に同時に対象に放出される場合、治療を必要とする対象への単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよびPI3K経路阻害剤の組み合わせの実質的同時投与、各投与間に有意な時間間隔を設けて逐次的に対象により摂取される個別剤形として成分が互い別々に製剤されて成分が実質的に異なる時間に対象に放出される場合、治療を必要とする対象への単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよびPI3K経路阻害剤の組み合わせの逐次投与、ならびに並行的に、逐次的に、および/または重なって同じおよび/または異なる時間に対象に放出されるように制御下で成分を放出する単一剤形として成分が一緒に製剤されて各部分が同じまたは異なる経路の何れかで投与され得る場合、治療を必要とする対象への単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよびPI3K経路阻害剤の組み合わせの逐次投与を意味することが意図されると共に、それらを参照して含む。
【0031】
本明細書において使用される場合、「固定用量」および「単一製剤」という用語は、両方の治療剤を癌の治療に対して一体的に治療に有効な量で患者に送達するように製剤された単一医薬組成物を指す。単一媒体は、何れかの薬学的に許容可能な担体または賦形剤と共にある量の各薬剤を送達するように設計される。様々な実施形態において、媒体は、タブレット、カプセル、ピル、またはパッチである。様々な実施形態において、媒体は、溶液または懸濁液である。
【0032】
本明細書において使用される場合、「非固定の組み合わせ」という用語は、活性成分が両方とも特定の時間制限を設けることなく同時、並行的、または逐次的の何れかで個別のエンティティーとして患者に投与されて、そのような投与が治療有効レベルの活性成分を患者に提供することを意味する。後者は、カクテル療法、例えば3つ以上の活性成分の投与にも適用される。
【0033】
「耐性または難治性の癌」は、例えば、PI3K阻害療法、化学療法、手術、放射線療法、幹細胞移植、および免疫療法をはじめとする以前の抗癌療法に反応しない腫瘍細胞または癌を指す。腫瘍細胞は、治療の開始時に耐性もしくは難治性であり得るか、または治療時に耐性もしくは難治性であり得る。難治性腫瘍細胞は、治療の開始時に反応しないか、または初期に短期間にわたって反応するが、治療に反応しなくなる腫瘍を含む。難治性腫瘍細胞は、抗癌療法に反応するが、療法の後続ラウンドに反応しなくなる腫瘍も含む。本発明の目的では、難治性腫瘍細胞は、抗癌療法による治療により阻害されたように見えるが、治療中断の5年後までに、ときには10年後までに、またはそれよりも後に再発する腫瘍も包含する。抗癌療法は、化学療法剤単独、放射線療法単独、標的療法単独、手術単独で、またはそれらの組み合わせを利用し得る。限定されるものではないが、説明を容易にするために、難治性腫瘍細胞が耐性腫瘍と互換的であることは理解されるであろう。
【0034】
本明細書において使用される場合、「免疫療法」という用語は、限定されるものではないが、特定の腫瘍抗原に対する枯渇抗体を用いた治療、抗体-薬剤コンジュゲートを用いた治療、CTLA-4、PD-1、OX-40、CD137、GITR、LAG3、TIM-3、VISTAなどの共刺激分子または共阻害分子(免疫チェックポイント)に対するアゴニスト性抗体、アンタゴニスト性抗体、または遮断抗体を用いた治療、ブリナツモマブなどの二重特異性T細胞エンゲージ抗体(BiTE(登録商標))を用いた治療、IL-2、IL-12、IL-15、IL-21、GM-CSF、IFN-α、IFN-β、IFN-γなどの生物学的反応修飾剤の投与を含む治療、シプリューセル-Tなどの治療ワクチンを用いた治療、樹状細胞ワクチンまたは腫瘍抗原ペプチドワクチンを用いた治療、キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞を用いた治療、CAR-NK細胞を用いた治療、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を用いた治療、養子導入抗腫瘍T細胞(生体外拡大および/またはTCR遺伝子導入)を用いた治療、TALL-104細胞を用いた治療、ならびにToll様受容体(TLR)アゴニストCpGおよびイミキモドなどの免疫刺激剤を用いた治療をはじめとする癌治療を指す。
【0035】
「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語はそれぞれペプチド結合によって相互に結合した2個以上のアミノ酸残基を含む分子を指す。これらの用語は、例えば、あるタンパク質配列の天然タンパク質と人工タンパク質、タンパク質断片およびポリペプチド類似体(改変タンパク質、変異体、および融合タンパク質等)ならびに翻訳後に改変されたか、または他の場合では共有結合または非共有結合によって改変されたタンパク質を包含する。ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は単量体でも多量体でもあり得る。ある特定の実施形態において、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」はペプチド結合を介して連結しているα炭素を有するアミノ酸鎖である。したがって、その鎖の一方の末端(アミノ末端)の末端アミノ酸は遊離アミノ基を有し、その鎖の他方の末端(カルボキシ末端)の末端アミノ酸は遊離カルボキシル基を有する。本明細書において使用される場合、「アミノ末端」(N末端と略される)という用語はペプチドのアミノ末端のアミノ酸上の遊離α-アミノ基、またはそのペプチド内の他のいずれかの位置にあるアミノ酸のα-アミノ基(ペプチド結合に関与しているときはイミノ基)を指す。同様に、「カルボキシ末端」という用語はペプチドのカルボキシ末端上の遊離カルボキシル基、またはそのペプチド内の他のいずれかの位置にあるアミノ酸のカルボキシル基を指す。ペプチドにはまた、アミド結合と対照的にエーテル結合によって結合したアミノ酸などのペプチド模倣物を含むがこれらに限定されないあらゆるポリアミノ酸が基本的に含まれる。
【0036】
「治療用タンパク質」という用語は、1つ以上の治療活性および/または生物活性を有するタンパク質、ポリペプチド、抗体、ペプチド、またはそれらの断片もしくは変異体を指す。本発明に包含される治療用タンパク質としては、限定されるものではないが、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、および生物学的因子が挙げられる。(ペプチド、タンパク質、およびポリペプチドという用語は、本明細書において互換的に使用される。)「治療用タンパク質」という用語は、抗体ならびにその断片および変異体を包含することが特に企図される。
【0037】
ポリヌクレオチド配列とポリペプチド配列は標準的な1文字または3文字の略記を用いて表示される。別段の指示が無い限り、ポリペプチド配列はそれらのアミノ末端を左側に有し、且つ、それらのカルボキシ末端を右側に有し、一本鎖核酸配列と二本鎖核酸配列のトップストランドはそれらの5’末端を左側に有し、且つ、それらの3’末端を右側に有する。ポリペプチドの特定の区域はアミノ酸80~119のようにアミノ酸残基番号によるか、またはSer80~Ser119のようにその部位の実際の残基によって指定され得る。特定のポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列はどのくらいその配列が基準配列と異なっているか説明することによっても記載され得る。
【0038】
本開示のポリペプチドにはあらゆる理由のために、例えば、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させるため、(2)酸化に対する感受性を低下させるため、(3)タンパク質複合体形成向けに結合親和性を変化させるため、(4)結合親和性を変化させるため、および(5)他の物理化学的特性または機能的特性を付与または改変するために多少なりとも改変されているポリペプチドが含まれる。例えば、単一アミノ酸置換または多重アミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)が天然配列の中に(例えば、分子間接触部を形成するドメインの外側にあるポリペプチド部分の中に)起きて良い。「保存的アミノ酸置換」は機能的に類似のアミノ酸によるアミノ酸のポリペプチド中での置換を指す。次の6群は相互に保存的置換物であるアミノ酸をそれぞれ含む。
アラニン(A)、セリン(S)、およびトレオニン(T)
アスパラギン酸(D)およびグルタミン酸(E)
アスパラギン(N)およびグルタミン(Q)
アルギニン(R)およびリシン(K)
イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、およびバリン(V)
フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、およびトリプトファン(W)
【0039】
「非保存的アミノ酸置換」はこれらのクラスのうちの1つのクラスのメンバーによる別のクラスのメンバーに対する置換を指す。ある特定の実施形態によると、そのような変更を行うときにアミノ酸の疎水性親水性指標を考慮して良い。それぞれのアミノ酸にはその疎水性特性と電荷特性に基づいて疎水性親水性指標が割り当てられている。疎水性親水性指標はイソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(-0.4)、トレオニン(-0.7)、セリン(-0.8)、トリプトファン(-0.9)、チロシン(-1.3)、プロリン(-1.6)、ヒスチジン(-3.2)、グルタミン酸(-3.5)、グルタミン(-3.5)、アスパラギン酸(-3.5)、アスパラギン(-3.5)、リシン(-3.9)、およびアルギニン(-4.5)である。
【0040】
相互作用性生物学的機能をタンパク質に付与する際の疎水性親水性アミノ酸指標の重要性が当技術分野において理解されている(例えば、Kyteら著、1982年、J.Mol.Biol.誌、第157巻:105~131頁を参照されたい)。ある特定のアミノ酸を類似の疎水性親水性指標またはスコアを有する他のアミノ酸に対して置換して良く、それでもなお類似の生物活性が保持されることが知られている。疎水性親水性指標に基づいて変更を行う際に±2以内の疎水性親水性指標を有するアミノ酸の置換がある特定の実施形態に含まれる。±1以内の疎水性親水性指標を有するアミノ酸の置換がある特定の実施形態に含まれ、±0.5以内の疎水性親水性指標を有するアミノ酸の置換がある特定の実施形態に含まれる。
【0041】
類似のアミノ酸の置換は、特にそれによって作製された生物学的に機能的なタンパク質またはペプチドを本明細書において開示されるように免疫学的実施形態に使用するつもりである場合、親水性に基づいて効果的に行われ得ることも当技術分野において理解されている。ある特定の実施形態において、タンパク質の最大局所的平均親水性はその隣接するアミノ酸の親水性によって影響され、そのタンパク質の免疫原性と抗原性、すなわちそのタンパク質の生物学的特性と相関する。
【0042】
次の親水性値がこれらのアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リシン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0±1)、グルタミン酸(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、トレオニン(-0.4)、プロリン(-0.5±1)、アラニン(-0.5)、ヒスチジン(-0.5)、システイン(-1.0)、メチオニン(-1.3)、バリン(-1.5)、ロイシン(-1.8)、イソロイシン(-1.8)、チロシン(-2.3)、フェニルアラニン(-2.5)およびトリプトファン(-3.4)。類似の親水性値に基づいて変更を行う際に±2以内の親水性値を有するアミノ酸の置換がある特定の実施形態に含まれ、±1以内の親水性値を有するアミノ酸の置換がある特定の実施形態に含まれ、±0.5以内の親水性値を有するアミノ酸の置換がある特定の実施形態に含まれる。例となるアミノ酸置換が表1に示されている。
【0043】
当業者はよく知られている技術を用いて本明細書において明記されるポリペプチドの適切な変異体を決定することができる。ある特定の実施形態において、当業者は、活性にとって重要であると考えられていない領域を標的とすることによって活性を損なうことなく変更することができる分子の適切な領域を特定することができる。他の実施形態において、当業者は類似のポリペプチドの間で保存されているそれらの分子の残基および部分を特定することができる。追加の実施形態において、生物活性または構造にとって重要であり得る領域ですら、生物活性を損なうことがない、またはポリペプチド構造に悪影響を与えることがない保存的アミノ酸置換の対象とされ得る。
【0044】
加えて、当業者は類似のポリペプチド中の残基であって、活性または構造にとって重要であるそれらの残基を特定する構造機能研究を再検討することができる。そのような比較を考慮すると、当業者はあるポリペプチド中のアミノ酸残基であって、類似のポリペプチドにおける活性または構造にとって重要なアミノ酸残基に対応するそれらアミノ酸残基の重要性を予測することができる。当業者はそのような予測された重要なアミノ酸残基に対する化学的に類似のアミノ酸置換を選択することができる。
【0045】
当業者は三次元構造およびアミノ酸配列を類似のポリペプチド中のその構造と関連して分析することもできる。そのような情報を考慮すると、当業者はポリペプチドのアミノ酸残基の整列をその三次元構造に関して予測することができる。ある特定の実施形態において、そのポリペプチドの表面上にあると予測されるアミノ酸残基は他の分子との重要な相互作用に関与し得るので、当業者はそのような残基に対して極端な変更を行わないことを選択することができる。また、当業者はそれぞれの所望のアミノ酸残基の位置に単一のアミノ酸置換を有する検査変異体を作製することができる。次に、当業者に知られている活性アッセイ法を用いてそれらの変異体をスクリーニングすることができる。適切な変異体についての情報を集めるためにそのような変異体を使用することが可能である。例えば、特定のアミノ酸残基に対する変更が活性の棄損、活性の望ましくない低下、または不適切な活性を引き起こすことが分かった場合、そのような変更を有する変異体を回避することができる。言い換えると、当業者は、さらなる置換が単独で、または他の突然変異と組み合わせて回避されるべき位置にあるアミノ酸をそのような日常の実験から集められた情報に基づいて容易に決定することができる。
【0046】
本明細書において使用される「ポリペプチド断片」および「短縮型ポリペプチド」という用語は、対応する完全長タンパク質と比較してアミノ末端欠失および/またはカルボキシ末端欠失を有するポリペプチドを指す。ある特定の実施形態において、断片は、例えば、少なくとも5アミノ酸長、少なくとも10アミノ酸長、少なくとも25アミノ酸長、少なくとも50アミノ酸長、少なくとも100アミノ酸長、少なくとも150アミノ酸長、少なくとも200アミノ酸長、少なくとも250アミノ酸長、少なくとも300アミノ酸長、少なくとも350アミノ酸長、少なくとも400アミノ酸長、少なくとも450アミノ酸長、少なくとも500アミノ酸長、少なくとも600アミノ酸長、少なくとも700アミノ酸長、少なくとも800アミノ酸長、少なくとも900アミノ酸長、または少なくとも1000アミノ酸長であり得る。ある特定の実施形態において、断片は、例えば、多くとも1000アミノ酸長、多くとも900アミノ酸長、多くとも800アミノ酸長、多くとも700アミノ酸長、多くとも600アミノ酸長、多くとも500アミノ酸長、多くとも450アミノ酸長、多くとも400アミノ酸長、多くとも350アミノ酸長、多くとも300アミノ酸長、多くとも250アミノ酸長、多くとも200アミノ酸長、多くとも150アミノ酸長、多くとも100アミノ酸長、多くとも50アミノ酸長、多くとも25アミノ酸長、多くとも10アミノ酸長、または多くとも5アミノ酸長でもあり得る。断片はその末端のうちの一方または両方のどちらかに1個以上の追加アミノ酸、例えば、異なる天然タンパク質に由来するアミノ酸の配列(例えば、Fcドメインまたはロイシンジッパードメイン)または人工アミノ酸配列(例えば、人工リンカー配列)をさらに含み得る。
【0047】
本明細書において使用される「ポリペプチド変異体」および「ポリペプチド突然変異体」という用語は、あるアミノ酸配列を備え、別のポリペプチド配列との関連で1個以上のアミノ酸残基がそのアミノ酸配列に挿入され、そのアミノ酸配列から欠失され、および/またはそのアミノ酸配列に置換されているポリペプチドを指す。ある特定の実施形態において、挿入、欠失、または置換されるアミノ酸残基の数は、例えば、少なくとも1アミノ酸長、少なくとも2アミノ酸長、少なくとも3アミノ酸長、少なくとも4アミノ酸長、少なくとも5アミノ酸長、少なくとも10アミノ酸長、少なくとも25アミノ酸長、少なくとも50アミノ酸長、少なくとも75アミノ酸長、少なくとも100アミノ酸長、少なくとも125アミノ酸長、少なくとも150アミノ酸長、少なくとも175アミノ酸長、少なくとも200アミノ酸長、少なくとも225アミノ酸長、少なくとも250アミノ酸長、少なくとも275アミノ酸長、少なくとも300アミノ酸長、少なくとも350アミノ酸長、少なくとも400アミノ酸長、少なくとも450アミノ酸長、または少なくとも500アミノ酸長であり得る。本開示の変異体には融合タンパク質が含まれる。
【0048】
ポリペプチドの「誘導体」は化学的に改変されているポリペプチド、例えば、別の化学部分への結合、例えばポリエチレングリコールへの結合、アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)への結合、リン酸化、およびグリコシル化があるポリペプチドである。
【0049】
「%配列同一性」という用語は本明細書において「%同一性」という用語と互換的に使用され、配列アラインメントプログラムを使用して整列させたときの2つ以上のペプチド配列の間のアミノ酸配列同一性のレベル、または2つ以上のヌクレオチド配列の間のヌクレオチド配列同一性のレベルを指す。例えば、本明細書において使用される場合、80%の同一性は規定のアルゴリズムによって決定される80%配列同一性と同じ事を意味し、所与の配列が別の長さの別の配列に対して少なくとも80%同一であることを意味する。ある特定の実施形態において、その%同一性は、例えば、所与の配列に対する少なくとも60%の、少なくとも65%の、少なくとも70%の、少なくとも75%の、少なくとも80%の、少なくとも85%の、少なくとも90%の、少なくとも95%、または少なくとも99%の、またはそれよりも高い配列同一性から選択される。ある特定の実施形態において、その%同一性は、例えば、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約85%、約85%~約90%、約90%~約95%、または約95%~約99%の範囲内にある。
【0050】
「%配列相同性」という用語は本明細書において「%相同性」という用語と互換的に使用され、配列アラインメントプログラムを使用して整列させたときの2つ以上のペプチド配列の間のアミノ酸配列相同性のレベル、または2つ以上のヌクレオチド配列の間のヌクレオチド配列相同性のレベルを指す。例えば、本明細書において使用される場合、80%の相同性は規定のアルゴリズムによって決定される80%配列相同性と同じ事を意味し、したがって所与の配列のホモログがその所与の配列のある長さにわたって80%を超える配列相同性を有することを意味する。ある特定の実施形態において、その%相同性は、例えば、所与の配列に対する少なくとも60%の、少なくとも65%の、少なくとも70%の、少なくとも75%の、少なくとも80%の、少なくとも85%の、少なくとも90%の、少なくとも95%、または少なくとも99%の、またはそれより高い配列相同性から選択される。ある特定の実施形態において、その%相同性は、例えば、約60%~約70%、約70%~約80%、約80%~約85%、約85%~約90%、約90%~約95%、または約95%~約99%の範囲内にある。
【0051】
2つの配列間の同一性を決定するために使用され得る例となるコンピュータープログラムにはNCBIウェッブサイトにおいてインターネット上で公開されているBLASTプログラム、例えば、BLASTN、BLASTX、およびTBLASTX、BLASTPおよびTBLASTNからなるパッケージが含まれるがこれらに限定されない。Altschulら著、1990年、J.Mol.Biol.誌、第215巻:403~10頁(公表された初期設定、すなわちw=4、t=17のパラメーターに特に関連して)およびAltschulら著、1997年、Nucleic Acids Res.誌、第25巻:3389~3402頁も参照されたい。配列検索は、所与のアミノ酸配列をGenBank Protein Sequencesおよび他の公開データベースの中のアミノ酸配列と比較して評価するときにBLASTPプログラムを使用して実行されることが典型的である。BLASTXプログラムは全てのリーディングフレームで翻訳された核酸配列をGenBank Protein Sequencesおよび他の公開データベースの中のアミノ酸配列に対して検索することにとって好ましい。BLASTPとBLASTXの両方は11.0のオープンギャップペナルティ―と1.0の伸長ギャップペナルティ―という初期パラメーターを使用して実行され、且つ、BLOSUM-62マトリックスを利用する。同文献を参照されたい。
【0052】
パーセント配列同一性の算出に加え、BLASTアルゴリズムは2つの配列間の類似性の統計分析も実施する(例えば、KarlinおよびAltschul著、Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA誌、第90巻:5873~5787頁(1993年)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの基準は最小和確率(P(N))であり、それは2つのヌクレオチド配列またはアミノ酸配列の間の整合が偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、基準核酸に対する検査核酸の比較における最小和確率が例えば約0.1未満、約0.01未満、または約0.001未満である場合にその核酸はその基準配列に対して類似していると考えらえる。
【0053】
「単離分子」という用語は(その分子が例えばポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体である場合に)その起源または誘導源によって(1)その分子の天然状態ではその分子に付随する天然結合成分と結合していない分子、(2)同じ種に由来する他の分子を実質的に含まない分子、(3)異なる種に由来する細胞によって発現される分子、または(4)自然界では生じない分子である。したがって、化学合成される分子、または自然界で起源となる細胞とは異なる細胞系で発現される分子は、その分子の天然結合成分から「単離」される。分子は、当技術分野においてよく知られている精製技術を用いて単離されることによって天然結合成分を実質的に含まないようにされても良い。分子の純度または均質性は当技術分野においてよく知られている多数の手段によってアッセイされ得る。例えば、ポリペプチド試料の純度は、当技術分野においてよく知られている技術を用いるポリアクリルアミドゲル電気泳動およびそのポリペプチドを可視化するためのそのゲルの染色を用いてアッセイされ得る。ある特定の目的のためにHPLCまたは当技術分野においてよく知られている精製のための他の手段を用いることでより高い解像度が提供され得る。
【0054】
タンパク質またはポリペプチドは、試料の少なくとも約60%~75%が単一種のポリペプチドを示すときに「実質的に純粋」であり、「実質的に均質」であり、または「実質的に精製」されている。実質的に純粋なポリペプチドまたはタンパク質はタンパク質試料の約50%(重量/重量)、60%(重量/重量)、70%(重量/重量)、80%(重量/重量)、または90%(重量/重量)を構成することが典型的であり、約95%を構成することがより一般的であり、例えば、それは99%を超える。タンパク質の純度または均質性は、タンパク質試料のポリアクリルアミドゲル電気泳動とそれに続く当技術分野においてよく知られている染色液によるそのゲルの染色時の単一ポリペプチドバンドの視覚化などの当技術分野においてよく知られている多数の手段によって示され得る。ある特定の目的のためにHPLCまたは当技術分野においてよく知られている精製のための他の手段を用いることでより高い解像度が提供され得る。
【0055】
「抗原結合性拮抗タンパク質」は、抗原に結合する部分を含み、且つ、その抗原へのその単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質の結合を促進する構造をその抗原結合部分に採らせるスキャフォルドまたはフレームワーク部分を含んでも良いタンパク質である。抗原結合性拮抗タンパク質の例には抗体、抗体断片(例えば、抗体の抗原結合部分)、抗体誘導体、および抗体類似体が挙げられる。その単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質は、例えば、移入されたCDRまたはCDR派生物を有する代替的タンパク質スキャフォルドまたは人工スキャフォルドを含み得る。そのようなスキャフォルドには、例えば前記単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質の三次元構造を安定化するために導入された突然変異を含む抗体由来スキャフォルド、ならびに例えば生体適合性重合体を含む完全合成スキャフォルドが含まれるがこれらに限定されない。例えば、Korndorferら著、2003年、Proteins:Structure,Function,and Bioinformatics誌、第53巻、第1号:121~129頁(2003年)、Roqueら著、Biotechnol.Prog.誌、第20巻:639~654頁(2004年)を参照されたい。加えて、ペプチド抗体模倣物(「PAM」)ならびにスキャフォルドとしてフィブロネクション成分を利用する抗体模倣物に基づくスキャフォルドを使用することができる。
【0056】
単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質は、例えば、天然免疫グロブリンの構造を有し得る。「免疫グロブリン」は四量体分子である。天然免疫グロブリンではそれぞれの四量体が二対の同一のポリペプチド鎖から構成され、それぞれのペアが1本の「軽」鎖(約25kDa)と1本の「重」鎖(約50~70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識に対して最終的な責任がある約100アミノ酸~110アミノ酸、またはそれより多くのアミノ酸からなる可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分はエフェクター機能に対して最終的な責任がある定常領域を規定する。ヒト軽鎖はカッパ軽鎖とラムダ軽鎖に分類される。重鎖はミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、またはイプシロンとして分類され、その抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして規定する。軽鎖と重鎖の内部では可変領域と定常領域が約12個以上のアミノ酸からなる「J」領域によって連結されており、重鎖はさらに約10個多いアミノ酸からなる「D」領域も含む。Fundamental Immunology、第7章(Paul,W.編、第2版、レイブン・プレス、ニューヨーク(1989年))を全般的に参照されたい(全ての目的のために参照によりその全体が援用される)。完全な免疫グロブリンが2つの結合部位を有するように各軽鎖/重鎖対の可変領域が抗体結合部位を形成する。
【0057】
「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片によって実質的または部分的にコードされ、且つ、腫瘍抗原に対する特異性または病理状態で過剰発現された分子に対する特異性を有する1つ以上のポリペプチドを含むタンパク質を指す。広く認められている免疫グロブリン遺伝子にはカッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、およびミューの定常領域遺伝子、ならびにこれらの遺伝子のサブタイプおよび多種多様な免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖(LC)はカッパまたはラムダのどちらかとして分類される。重鎖(HC)はガンマ、ミュー、アルファ、デアルタ、またはイプシロンとして分類され、それらは次にそれぞれIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEの免疫グロブリンクラスを規定する。典型的な免疫グロブリン(例えば抗体)構造単位は四量体を含む。各四量体は二対の同一のポリペプチド鎖から構成され、それぞれのペアが1本の「軽」鎖(約25kD)と1本の「重」鎖(約50~70kD)を有する。各鎖のN末端は抗原認識に対して最終的な責任がある約100アミノ酸~110アミノ酸、またはそれより多くのアミノ酸からなる可変領域を規定する。
【0058】
完全長抗体では各重鎖は重鎖可変領域(本明細書においてHCVRまたはVHと略記される)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域はCH1、CH2およびCH3の3ドメイン(および幾つかの例ではCH4)から構成される。各軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書においてLCVRまたはVLと略記される)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域はCLの1ドメインから構成される。VH領域とVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存的な領域が散在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性領域にさらに細かく分割され得る。VHとVLのそれぞれがアミノ末端からカルボキシ末端に向かって次の順序、すなわちFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置されている3つのCDRと4つのFRから構成される。フレームワーク領域とCDRの範囲が規定されている。様々な軽鎖または重鎖のフレームワーク領域の配列がヒトなどの種の内部で比較的に保存されている。抗体のフレームワーク領域、すなわち構成要素である軽鎖と重鎖のフレームワーク領域複合体は三次元空間内でCDRを配置および配列するように働く。免疫グロブリン分子はいずれかのタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgAおよびIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)またはサブクラスの分子であり得る。
【0059】
抗体は完全な免疫グロブリンとして、または多数のよく特徴づけられた断片として存在する。そのような断片には標的抗原に結合するFab断片、Fab’断片、Fab2、F(ab)’2断片、単鎖Fvタンパク質(「scFv」)、およびジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)が含まれる。scFvタンパク質は免疫グロブリンの軽鎖可変領域と免疫グロブリンの重鎖可変領域がリンカーによって結合している融合タンパク質であり、一方でdsFvではそれらの鎖の結合を安定化させるためにそれらの鎖に突然変異が形成されてジスルフィド結合が導入されている。様々な抗体断片が完全抗体の消化との関連で規定されており、当業者は化学的に、または組換えDNA法を利用することでそのような断片を新規に合成し得ることを理解する。したがって、本明細書において使用される場合、抗体という用語は、例えば、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの完全抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二特異性抗体)、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、単ドメイン抗体、ドメイン抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、所望の生物活性を示す抗体断片、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、イントラボディ、および上記のいずれかのエピトープ結合断片または抗原結合断片を包含する。
【0060】
Fab断片はVLドメイン、VHドメイン、CLドメインおよびCH1ドメインを有する一価断片であり、F(ab’)2断片はヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を有する二価断片であり、Fd断片はVHドメインとCH1ドメインを有し、Fv断片はある抗体の単腕のVLドメインとVHドメインを有し、dAb断片はVHドメイン、VLドメイン、またはVHドメインもしくはVLドメインの抗原結合断片を有する(米国特許第6,846,634号明細書、第6,696,245号明細書、米国特許出願公開第05/0202512号明細書、第04/0202995号明細書、第04/0038291号明細書、第04/0009507号明細書、第03/0039958号明細書、Wardら著、Nature誌、第341巻:544~546頁(1989年))。
【0061】
単鎖抗体(scFv)は、そのタンパク質鎖が自身の上に折り重なり、且つ、一価抗原結合部位を形成することを可能にするほど充分に長いリンカー(例えば、アミノ酸残基の合成配列)を介して連続的なタンパク質鎖を形成するためにVL領域とVH領域が連結されている抗体である(例えば、Birdら著、Science誌、第242巻:423~26頁(1988年)およびHustonら著、1988年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA誌、第85巻:5879~83頁(1988年)を参照されたい)。ディアボディは、2本のポリペプチド鎖を含み、同じ鎖の上にある2つのドメインの間で対合させるにはあまりに短いリンカーによって連結されたVHドメインとVLドメインをそれぞれのポリペプチド鎖が含み、そうして各ドメインが別のポリペプチド鎖上にある相補的なドメインと対合するようになっている二価抗体である(例えば、Holligerら著、1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA誌、第90巻:6444~48頁(1993年)、およびPoljakら著、Structure誌、第2巻:1121~23頁(1994年)を参照されたい)。ディアボディのそれら2本のポリペプチド鎖が同一である場合、それらの対合により生じるディアボディは2か所の同一の抗原結合部位を有することになる。2つの異なる抗原結合部位を有するディアボディを作製するために異なる配列を有するポリペプチド鎖が使用され得る。同様に、トリボディおよびテトラボディは、それぞれ3本および4本のポリペプチド鎖を含み、且つ、それぞれ同じでも異なっていても良い3か所および4か所の抗原結合部位を形成する抗体である。
【0062】
単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質は1か所以上の結合部位を有し得る。1か所より多くの結合部位が存在する場合、それらの結合部位は相互に同一であっても異なっていても良い。例えば、天然ヒト免疫グロブリンは2か所の同一な結合部位を有していることが典型的であり、一方で「二特異性」または「二官能性」抗体は2か所の異なる結合部位を有する。
【0063】
「ヒト抗体」という用語にはヒト免疫グロブリン配列に由来する1つ以上の可変領域と定常領域を有する全ての抗体が含まれる。1つの実施形態において、それら可変ドメインと定常ドメインの全てがヒト免疫グロブリン配列に由来する(完全ヒト抗体)。これらの抗体は様々な方法で調製されて良く、それらの方法の例が下で説明されており、それらにはヒト重鎖および/または軽鎖コード遺伝子に由来する抗体を発現するように遺伝的に改変されているマウスの目的の抗原による免疫を介した方法が含まれる。
【0064】
「ヒト化抗体」は、そのヒト化抗体がヒト患者に投与されたときにその抗体が非ヒト種抗体と比較して免疫応答を誘導する可能性が低くなるように、および/または程度が低い免疫応答を誘導するように、その非ヒト種に由来する抗体の配列と1か所以上のアミノ酸置換、欠失、および/または付加によって異なる配列を有する。1つの実施形態において、ヒト化抗体を作製するために非ヒト種抗体の重鎖および/または軽鎖のフレームワークドメインと定常ドメインの中のある特定のアミノ酸に突然変異が形成される。別の実施形態において、ヒト抗体の定常ドメインが非ヒト種の可変ドメインに融合される。別の実施形態において、非ヒト抗体がヒト患者に投与されたときのその抗体のあり得る免疫原性を減少させるためにその非ヒト抗体の1つ以上のCDR配列中の1個以上のアミノ酸残基が変更されるが、そのヒト化抗体の抗原への結合がその非ヒト抗体の抗原への結合よりもあまり悪くならないようにそれらの変更されるアミノ酸残基はその抗体の抗原への免疫特異的結合にとって重要ではないか、またはそのアミノ酸配列へ変更が保存的変更で行われるかのどちらかである。ヒト化抗体の作製法の例を米国特許第6,054,297号明細書、第5,886,152号明細書および第5877293号明細書に見ることができる。
【0065】
抗体を含む本開示の単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質は、10-7Mまたはそれより低い解離定数(以下で定義されるKd、または対応するKb)値によって判定される高い結合親和性でヒトグルカゴン受容体などの抗原に結合する場合、その抗原に「特異的に結合」する。ヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質は他の種に由来するグルカゴン受容体にも同じ親和性、または異なる親和性で結合して良い。
【0066】
「エピトープ」は単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質(例えば、抗体)が結合する分子のその部分である。エピトープはその分子の非連続的な部分(例えば、ポリペプチドの場合、そのポリペプチドの一次配列では連続していないが、そのポリペプチドの三次構造および四次構造の状況では抗原結合性拮抗タンパク質が結合するほど充分に相互に近傍にあるアミノ酸残基)を含み得る。
【0067】
用語「血糖値(blood glucose level)」、または「血糖値(level of blood glucose)」は、血糖濃度を意味するものとする。ある実施形態では、血糖値は血漿グルコース値である。血漿グルコースは、例えばEtgen et al.,Metabolism,49(5):684-688,2000)に従って求めてもよいし、あるいは、D’Orazio et al.,Clin.Chem.Lab.Med.,44(12):1486-1490,2006に従って全体血糖濃度の変換から算出してもよい。
【0068】
用語「正常血糖値(normal glucose level)」は、ヒトにおいて、空腹時血糖値では約100mg/dL未満、食後2時間の血糖値では約145mg/dL未満、あるいは、ランダム血糖値検査の血糖値(random glucose)では125mg/dLの、平均血漿グルコース値を指す。用語「血糖値上昇(elevated blood glucose level)」または「血糖値上昇(elevated levels of blood glucose)」は、臨床的に不適切な基底および食後の高血糖を示す対象において見られるもの等、または、経口グルコース負荷試験(oGTT)で対象において見られるもの等の、血糖値上昇を意味するものとし、「血糖値上昇」は、空腹時条件下で試験された場合には約100mg/dL超であり、1時間の時点で試験された場合には約200mg/dL超である。
【0069】
用語「グルカゴン阻害剤」、「グルカゴン抑制剤」および「グルカゴンアンタゴニスト」は同義的に使用される。各々はグルカゴンシグナル伝達を検出可能に阻害する分子である。阻害剤によって引き起こされる阻害は、その阻害がグルカゴンシグナル伝達阻害を決定するものとして当該技術分野において認知および理解されるアッセイを用いて検出可能である限り、完了される必要はない。
【0070】
本明細書および添付されている特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「or」、および「the」は文脈から明確にそうではないことが示されていない限り複数の指示物を含む。本明細書に記載される本開示の態様とその変形例にはある態様と変形例から「なる」こと、および/または「基本的になる」ことが含まれることが理解される。
【0071】
本明細書中の「約」が付いた値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーター自体を対象とする変量を含む(および、その変量を説明する)。例えば、「約X」を参照する説明は「X」の説明を含む。
【0072】
PI3K経路阻害剤
ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)阻害剤
PI3Kは、複雑に絡まって相互接続された細胞内シグナル伝達ネットワークの上流に位置する脂質キナーゼのファミリーであり、RTKおよびGタンパク質結合受容体(GPCR)などの膜貫通受容体から(リン酸化脂質の産生を介して)細胞質にシグナルを伝達して、増殖、分化、老化、運動、および生存をはじめとする主要な細胞プロセスを調節する(Liu P著、Nat Rev Drug Discov.誌、第8巻、第8号:627~644頁、2009年)。PI3Kは、約200~300kDaの分子量の酵素である。ヒトにおいて、3つの識別可能なクラスのPI3K(I~III)が同定されており、それらの構造特性、基質特異性、および脂質最終産物の性質の点で異なる。クラスI酵素は、調節(p85)ドメインおよび触媒(p110)サブユニット(4つのアイソフォーム:p110α、p110β、p110Δ、およびp110γが存在する)を有するヘテロ二量体からなる。αアイソフォームおよびβアイソフォームは、ユビキタスに発現され、αは、主に受容体チロシンキナーゼに上流で連結されるが、βは、Gタンパク質共役受容体および受容体チロシンキナーゼの両方からのシグナルを媒介し得る。Δアイソフォームおよびγアイソフォームは、主にリンパ球で発現され、免疫反応の調節に重要な役割を果たす。クラスI PI3Kは、ヘテロ二量体であり、2つのサブファミリーIAおよびIBにさらに分けられる。クラスIA PI3Kは、最も研究され、癌に関与する頻度が高い(Courtney K著、J Clin Oncol.誌、第28巻、第6号:1075~1083頁、2010年)。PI3K阻害剤は、薬動学的性質およびPI3KのATP結合部位のアイソフォーム選択性に基づいて汎クラスI、アイソフォーム選択的PI3K阻害剤、およびデュアルPI3K/mTOR阻害剤の3つのクラスに分類される(Vadas Oら著、Sci Signal.誌、第4巻、第195号、2011年)。
【0073】
本開示の医薬組成物および組み合わせ療法において使用が企図されるPI3K阻害剤は、PI3Kを阻害可能であるとして当技術分野で記載されているあらゆる1種または複数の化合物であり得る。様々な実施形態において、本開示の医薬組成物は、PI3Kアルファ阻害剤、PI3Kベータ阻害剤、PI3Kガンマ阻害剤、PI3Kデルタ阻害剤、および汎PI3Kアイソフォーム阻害剤からなる群から選択されるPI3K阻害剤またはそれらの薬学的に許容可能な塩を含む。
【0074】
使用が企図されるPI3K阻害剤の例としては、限定されるものではないが、LY-294002、ウォルトマンニン、BEZ235(NVP-BEZ235)、GDC-0941(Genentech)、PI-103、BKM120(NVP-BKM120)(Novartis)、CAL-101(GS-1101)、IC-87114、GSK2636771、TG100713、BYL719(NVP-BYL719)(Novartis)、PI3K/HDAC阻害剤1,3-メチルアデニン、YM201636、NVP-BGT226、BAY80-6946、PF-04691502、PKI-402、CH5132799(Chugai)、GDC-0980(RG7422)、NU7026、NU7441(KU-57788)、AS-252424、AS-604850、AS-041164、CAY10505、GSK2126458、A66、PF-05212384(PKI-587)、PIK-294、PIK-293、XL765、PIK-93、AZD6482、AS-605240、GSK1059615、TG100-115、PIK-75、PIK-90、TGX-115、TGX-221、XL147(Sanofi)、ZSTK474、ケルセチン、テトロドトキシンクエン酸塩、チオペラミドマレイン酸塩、PI103、(-)-デジイエリン、OSUO3012、タンデュチニブ、GSK690693、KU-55933、MK-2206、ペリホシン、トリシリビン、PI828、WII-P154、compound15e、17-P-ヒドロキシウォルトマンニン、Pp121、PX-478、PX-866、PX-867、WAY-266176、WAY-266175、SF1126、07412、LC-486068、およびLME00084が挙げられる。様々な実施形態において、PI3K阻害剤は、GDC-0941(Genentech)、BKM120(NVP-BKM120)(Novartis)、XL147(Sanofi)、PX-866(Oncothyreon)、BAY806946(Bayer)、CH5132799(Chugai)、BYL719(NVP-BYL719)(Novartis)、MLN1117(Millennium)、AZD8186(Astra-Zeneca)、SAR260301(Sanofi)、GSK2636771(Glaxo Smith Kline)、GS-1101(Gilead)、AMG 319(Amgen)、GS-9820(Gilead)、IPI-145(Infinity)、GDC-0032(Genentech)、およびGDC-0084(Genentech)からなる群から選択される。
【0075】
BYL719(NVP-BYL719)(Novartis)は、野生型酵素および突然変異体酵素の両方を阻害するアイソフォーム選択的PIK3キナーゼ阻害剤である(Furet,P.ら著、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters誌、第23巻、第13号:3741~3748頁、2013年)。循環NVP-BYL719濃度、PI3KCA範囲、高血糖症、高インスリン血症、体重減少、および腫瘍成長阻害間の定量的関係は、包括的薬理学的研究で規定されている(Fritsch,Cら著、Mol Cancer Ther誌、第13巻、第5号:1117~29頁、2014年)。
【0076】
本開示の様々な実施形態において、PI3K阻害剤は、BYL719(PubChem CID56649450)である。本開示の様々な実施形態において、PI3K阻害剤は、BKM120(PubChem CID16654980)である。本開示の様々な実施形態において、PI3K阻害剤は、MK2206(PubChem CID24964624)である。
【0077】
PI3K阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩の追加の例は、例えば、それぞれその全体が参照により本明細書に援用される米国特許第9,150,579号明細書、米国特許第9,335,320号明細書、米国特許第8,980,259号明細書、米国特許第7,173,029号明細書、米国特許第7,037,915号明細書、米国特許第6,608,056号明細書、米国特許第6,608,053号明細書、米国特許第6,838,457号明細書、米国特許第6,770,641号明細書、米国特許第6,653,320号明細書、米国特許第6,403,588号明細書、米国特許第7,750,002号明細書、米国特許第7,872,003号明細書、米国特許出願公開第2014/0235630号明細書、米国特許出願公開第2015/0141426号明細書、米国特許出願公開第2016/0039793号明細書、米国特許出願公開第2015/0342951号明細書、米国特許出願公開第2015/0265616号明細書、米国特許出願公開第2004/0092561号明細書、米国特許出願公開第2003/0149074号明細書、米国特許出願公開第2011/0230476号明細書、米国特許出願公開第2009/0312319号明細書、米国特許出願公開第2011/0281866号明細書、米国特許出願公開第2011/0269779号明細書、米国特許出願公開第2010/0249099号明細書、米国特許出願公開第2011/0009405号明細書、国際公開第2006/046035号パンフレット、国際公開第2007/042806号パンフレット、国際公開第2007/042810号パンフレット、国際公開第2004/017950号パンフレット、国際公開第2004/007491号パンフレット、国際公開第2004/006916号パンフレット、国際公開第2003/037886号パンフレット、国際公開第2012146667号パンフレット、国際公開第2012135009号パンフレット、国際公開第2012140419号パンフレット、国際公開第2007/044729号パンフレット、および国際公開第2010/029082号パンフレットに記載されている。
【0078】
IR/IGFR1チロシンキナーゼ阻害剤-IGFR1モノクローナル抗体
IGFシグナル伝達は、腫瘍進行の開始および促進に重要な役割を果たすことから、癌療法の魅力的な標的になってきている。生体内および生体外の両方でこの系の成分を標的とする様々なストラテジーが使用されてきており、その幾つかは、臨床使用に進んでいる。これらのアプローチの一般的な目標は、低分子干渉RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスRNA、三重螺旋形成性オリゴデオキシヌクレオチド、特異的キナーゼ阻害剤、単鎖抗体、および完全ヒト化抗IGF1Rモノクローナル抗体をはじめとする方法によりIGF系成分の機能を妨害することである(Heideggerら著、Cancer Biol Ther誌、第11巻、第8号、701~707頁、2011年)。IGF1R阻害に関して最も徹底的に研究された2つのストラテジーは、低分子チロシンキナーゼ阻害剤およびモノクローナル抗体であり、両方とも様々な利点を有すると共に様々な活性プロファイルを呈する。研究は、細胞内キナーゼドメインを標的とすることによりIGF1Rチロシンキナーゼ活性をモジュレートすることに集中している。
【0079】
様々なIGF1R低分子チロシンキナーゼ阻害剤およびモノクローナル抗体が当技術分野において知られている。使用が企図されるそのようなIGF1R阻害剤の例としては、限定されるものではないが、BM754807、OSI-906(リンシチニブ)、フィギツムマブ(CP-751871)、NT52、INSM-18、NVP-AEW541、NVP-ADW742、aIR3、IGF1R scFv-Fc、486/STOP、950/STOP、N-(2-メトキシ-5-クロロフェニル)-N’-(2-メチルキノリン-4-イル)-尿素、BMS-754807、IGF-IRi、AG1024、R1507、AXL-1717、ピクロポドフィロトキシン、PQ401、ダロツズマブ、A-928605、KW-2450、BMS-536924、IMC-AI2、CP-751871、n-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)-N’-(2-メトキシキノリン-4-イル)-尿素、TAE226、BMS-554417、MK-0646、BMS-536924、MAE87、XL228、AGL2263、I-OMe-AG538、AG538、OSI-868、BMS-754807、ADW742、NVP-ADW642、R1507、MK-0646、A928605、MAB391、BMS-536942、IMC-AI2、rhlGFBP3、ANT-429、ATL-1101、BVP-51004、JV-1-38、ペグビソマント、A-928605、およびピクロポドフィリイン(PPP)(CAS477-47-4)が挙げられる。
【0080】
様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤は、BMS754807(BMS)、INSM-18(Insmed/UCSF)、OSI-906(リンシチニブ)(Osi Pharmaceuticals)、XL-228(Exelixis)、GSK1904529A(GSK)、ABDP(AZ)、A-928605(Abbott)、AXL1717(PPP)(Alexar)、KW-2450(Kyowa Kirin)、NVP-ADW742(Novartis)、NVP-AEW541(Novartis)、AG-1024(Merck)、BMS-536924(BMS)、BMS-554417(BMS)、およびBVP-51004(Biovitrum)からなる群から選択されるIGFR1チロシンキナーゼ阻害剤である。
【0081】
様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤は、MK0646(ダロツズマブ)(Merck)、AMG479(ガニツムマブ)(Amgen)、A12(シクスツムマブ)(ImClone)、CP751,871(フィギツムマブ)(Pfizer)、AVE1642(Sanofi-Aventis)、Sch717454(ロバツムマブ)(Schering-Merck)、R1507(Roche)、BIIB022(Biogen Idec)、h10H5(Genentech)、MEDI-573(Medimmune)、およびBI836845(Boehringer-lngleheim)からなる群から選択されるIGFR1モノクローナル抗体である。
【0082】
IGF1R阻害剤の追加の例は、米国特許第8,895,008号明細書、同第8,580,254号明細書、同第8,318,159号明細書、同第8,168,409号明細書、同第7,985,842号明細書、同第7,638,621号明細書、同第7,638,605号明細書、同第7,605,272号明細書、同第7,538,195号明細書、同第7,521,453号明細書、同第7,432,244号明細書、および同第6,071,891号明細書(それぞれ参照により本明細書に援用される)、ならびに米国特許出願公開第2015/0274829号明細書、同第20150259422号明細書、同第2015/0183860号明細書、同第2013/0287763号明細書、同第20130236457号明細書、同第2012/0208721号明細書、同第2010/0047243号明細書、同第2010/0028342号明細書、同第2009/0099229号明細書、同第2009/0099133号明細書、同第2009/0054508号明細書、同第2008/0025990号明細書、同第2008/0161278号明細書、同第2008/0152649号明細書、同第2007/0185319号明細書、同第2007/0275922号明細書、同第2007/0129399号明細書、2007/0123491、同第2005/0054638号明細書、および2004/0213792(それぞれその全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0083】
AKTキナーゼ阻害剤
AKT/プロテインキナーゼB(PKB)は、その持続性活性化がヒト腫瘍形成をもたらす広く発現されるSer/Thrプロテインキナーゼであることが示されている。AKTは、アポトーシスの抑制ならびに血管新生および増殖の両方の増強により癌に対してその作用を発揮すると考えられている(Tokerら著(2006年)Cancer Res.誌、第66巻、第8号:3963~3966頁)。AKTは、限定されるものではないが、結腸癌(Zindaら著(2001年)Clin.Cancer Res.誌、第7巻:2475頁)、卵巣癌(Chengら著(1992年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA誌、第89巻:9267頁)、脳癌(Haas Koganら著(1998年)Curr.Biol.誌、第8巻:1195頁)、肺癌(Brognardら著(2001年)Cancer Res.誌、第61巻:3986)、膵癌(Bellacosaら著(1995年)Int.J.Cancer誌、第64巻:280-285頁、Chengら著(1996年)Proc.Natl.Acad.Sci誌、第93巻:3636~3641頁)、前立腺癌(Graffら著(2000年)J.Biol.Chem.誌、第275巻:24500頁)、および胃癌(Staalら著(1987年)Proc.Natl.Acad.Sci.USA誌、第84巻:5034~5037頁)をはじめとする多くの形態のヒト癌で過剰発現する。
【0084】
AKTは、その構造的および機能的な性質ならびに癌療法分野におけるその意義に関してかなりの関心が払われてきた。AKTファミリーは、構造的に非常に類似した3つのメンバー(>85%の配列相同性)、すなわちAKT1(PKBα)、AKT2(PKBβ)、およびAKT3(PKBγ)からなる。各アイソフォームは、N末端プレクストリン相同(PH)ドメイン、中央触媒ドメイン、およびC末端調節テールからなる。AKT活性の阻害は、構成的活性化AKTを有する様々な器官に由来する腫瘍細胞系において細胞成長を抑制すると共にアポトーシスを誘発することが示されている。特定のAKTキナーゼ阻害剤は、AKTの活性部位に結合してATPと競合するため、ATP競合阻害剤として知られる。アロステリック阻害剤として知られる特定のAKTキナーゼ阻害剤は、AKTの活性部位に結合しない。また、AKTキナーゼ阻害剤は、阻害剤がAKT1、AKT2、およびAKT3の2つ以上の活性を阻害可能な汎AKT阻害剤であり得る。AKTキナーゼ阻害剤は、阻害剤が他の2つの活性を阻害することなく、AKT1、AKT2、およびAKT3の1つの活性を阻害可能な選択的AKT阻害剤であり得る。
【0085】
様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤は、ミルテホシン、ペリホシン、PF-04691502、CCT128930、A-674563、MK-2206(Merck)、RX-0201、PBI-05204、AZD5363(Astra-Zeneca)、AKTi-1/2、AT7867、AT13148、GDC-0068(イパタセルチブ)(Genentech)、TIC10、SC79、GSK690693、GSK2110183、およびGSK2141795(Glaxo Smith Kline)からなる群から選択されるAKTキナーゼ阻害剤である。
【0086】
AKT阻害剤の追加の例は、それぞれその全体が参照により本明細書に援用される米国特許第9,156,853号明細書、同第9,150,549号明細書、および同第8,481,503号明細書、米国特許出願公開第2016/0153049号明細書、同第20150064171号明細書、同第2014/0275106号明細書、および同第2013/0287763号明細書、ならびに国際公開第2011/055115号パンフレット、国際公開第2008/070134号パンフレット、国際公開第2008/070016号パンフレットおよび国際公開第2008/070041号パンフレットに記載されている。
【0087】
mTOR阻害剤
哺乳動物ラパマイシン標的mTORは、栄養素および成長因子に対する腫瘍細胞の反応を調節すると共に血管内皮成長因子VEGFに対する作用を介して腫瘍血液供給を制御する細胞シグナル伝達タンパク質である。mTORは、2つの識別可能な分子複合体、すなわちmTOR複合体1(mTORC1)およびmTOR複合体2(mTORC2)の触媒サブユニットとして機能する。mTORの阻害剤は、mTORの作用を阻害することにより癌細胞を飢餓状態にしたり腫瘍を収縮させたりする。mTOR阻害剤がmTORキナーゼに結合すると2つの重要な効果がある。第1に、mTORは、PI3K/AKT経路の下流メディエーターである。PI3K/AKT経路は、多くの癌で過剰活性化されると考えられており、mTOR阻害剤に対する様々な癌の広範にわたる反応を説明し得る。mTOR阻害は、癌細胞において上流のインスリン様成長因子1受容体(IGF1R)シグナル伝達を誘発してAKT活性化をもたらし得ることが示されている。上流経路の過剰活性化は、通常、同様にmTORキナーゼの過剰活性化を引き起こすであろう。しかしながら、mTOR阻害剤の存在下では、このプロセスは遮断される。遮断効果は、細胞成長を制御する下流経路へのmTORからのシグナル伝達を防止する。mTOR阻害の第2の主要な効果は、VEGFレベルの低下を介する抗血管形成である。
【0088】
利用可能なmTOR阻害剤には2つの広義のカテゴリー、すなわちラパマイシンの誘導体であり、通常、「ラパログ」(mTORC1阻害剤)と呼ばれるアロステリック阻害剤および新規な低分子mTOR阻害剤が存在する。様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤は、シロリムス、RAD001(エベロリムス)(Novartis)、CCI-779(テムシロリムス)(Wyeth-Pfizer)、ABT578、SAR543、アスコマイシン、リダフォロリムス、AP23573(デフォロリムス)(Ariad/Merck)、AP23841、KU-0063794、INK-128、EX2044、EX3855、EX7518、MK-8669、AZD8055、MLN0128、AZD2014、CC-223、およびOSI-027からなる群から選択されるmTOR阻害剤である。
【0089】
様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤は、NVP-BEZ235(Novartis)、NVP-BGT226(Novartis)、XL765(Sanofi)、GSK1059615(Glaxo Smith Kline)、およびGDC-0980(Genentech)からなる群から選択される汎PI3K/mTOR阻害剤である。
【0090】
グルカゴン受容体および抗原結合性拮抗タンパク質
グルカゴンは、プロホルモンとプロニューロペプチドの細胞内成熟に関与する神経内分泌特異的プロテアーゼであるプロホルモン転換酵素2(PC2)の細胞特異的発現によって膵臓α細胞においてそのプレプロ型をプロセッシングして作られる29アミノ酸ホルモンである(Furutaら著、J.Biol.Chem.誌、第276巻:27197~27202頁(2001年))。生体内ではグルカゴンはインスリン作用に対する主要な逆調節性ホルモンである。空腹時にグルコースレベルの低下に応じてグルカゴン分泌が増加する。増加したグルカゴン分泌により、肝臓のグリコーゲン分解と糖新生の促進によるグルコース産生が刺激される(DunningおよびGerich著、Endocrine Reviews誌、第28巻:253~283頁(2007年))。したがって、グルカゴンは動物における正常なグルコースレベルの維持においてインスリンの効果を相殺する。
【0091】
グルカゴンの生物学的効果には特異的な細胞表面受容体であるグルカゴン受容体への結合とその後の活性化が介在する。グルカゴン受容体(GCGR)はGタンパク質共役受容体セクレチンサブファミリー(ファミリーB)のメンバーである。ヒトGCGRは477アミノ酸配列GPCRであり、GCGRのアミノ酸配列は種を越えてよく保存されている(Mayoら著、Pharmacological Rev.誌、第55巻:167~194頁、(2003年))。グルカゴン受容体は主に肝臓で発現し、それは肝臓では肝臓でのグルコース産生を調節し、腎臓および膵島β細胞では糖新生におけるその役割を反映する。肝臓におけるグルカゴン受容体の活性化によりアデニルシクラーゼの活性およびホスホイノシトール代謝回転が刺激され、それが引き続いてホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)、フルクトース-1,6-ビスホスファターゼ(FBPase-1)、およびグルコース-6-ホスファターゼ(G-6-Pase)を含む糖新生酵素の発現増加を引き起こす。加えて、グルカゴンシグナル伝達によってグリコーゲンホスホリラーゼが活性化され、グリコーゲンシンターゼが抑制される。高めの基底グルカゴンレベルと食後のグルカゴン分泌の抑制欠如がヒトにおいて糖尿病状態に寄与することが研究から示されている(Mullerら著、N Eng J Med誌、第283巻:109~115頁(1970年))。したがって、GCGRアンタゴニストを使用してグルカゴンの産生または機能を標的とすることによって血糖を制御し、低下させる方法が探索されている。
【0092】
様々な実施形態において、本開示の抗原結合性拮抗タンパク質は、細胞上に発現される膜結合型グルカゴン受容体に結合し、グルカゴン受容体を介するグルカゴンシグナル伝達を阻害または遮断するように選択され得る。様々な実施形態において、本開示の抗原結合性拮抗タンパク質はヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する。様々な実施形態において、ヒトグルカゴン受容体に結合する本抗原結合性拮抗タンパク質は他の種のグルカゴン受容体に結合しても良い。幾つかの種のグルカゴン受容体のポリヌクレオチド配列とポリペプチド配列が知られている(例えば、ヒト、ラット、マウスおよびカニクイザルのグルカゴン受容体のポリヌクレオチド配列とポリペプチド配列についてのその具体的な教示のために参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第7947809号明細書を参照されたい)。本開示の様々な実施形態において、本抗原結合性拮抗タンパク質は配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するヒトグルカゴン受容体に特異的に結合する。
ヒト(Homo sapiens)グルカゴン受容体アミノ酸配列
(受託番号AAI04855)
MPPCQPQRPLLLLLLLLACQPQVPSAQVMDFLFEKWKLYGDQCHHNLSLLPPPTELVCNRTFDKYSCWPDTPANTTANISCPWYLPWHHKVQHRFVFKRCGPDGQWVRGPRGQPWRDASQCQMDGEEIEVQKEVAKMYSSFQVMYTVGYSLSLGALLLALAILGGLSKLHCTRNAIHANLFASFVLKASSVLVIDGLLRTRYSQKIGDDLSVSTWLSDGAVAGCRVAAVFMQYGIVANYCWLLVEGLYLHNLLGLATLPERSFFSLYLGIGWGAPMLFVVPWAVVKCLFENVQCWTSNDNMGFWWILRFPVFLAILINFFIFVRIVQLLVAKLRARQMHHTDYKFRLAKSTLTLIPLLGVHEVVFAFVTDEHAQGTLRSAKLFFDLFLSSFQGLLVAVLYCFLNKEVQSELRRRWHRWRLGKVLWEERNTSNHRASSSPGHGPPSKELQFGRGGGSQDSSAETPLAGGLPRLAESPF(配列番号1)
様々な実施形態において、それら引用された参照文献に記載されるグルカゴン受容体に対して少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の(当技術分野において知られており、且つ、本明細書に記載される方法を用いて計算される)同一性を有するグルカゴン受容体に特異的に結合する本開示の抗原結合性拮抗タンパク質も本開示に含まれる。
【0093】
本開示のアンタゴニスト性抗原結合タンパク質は、グルカゴンとその受容体との間の相互作用を遮断して、グルカゴンのグルコース増加作用を阻害する働きをする。すなわち、本開示のアンタゴニスト性抗原結合タンパク質の使用は、正常なグルコースレベルを達成することにより、糖尿病の一つもしくは複数の症状、または糖尿病によって引き起こされる長期的合併症、例えば、限定はされないが、高血糖症、高グルカゴン血症(hyperglucanemia)、および高インスリン血症、を改善または防止する、有効な手段である。
【0094】
ヒトグルカゴン受容体などの抗原に結合する抗体の作製方法が当業者に知られている。例えば、標的抗原ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を作製するための方法は、検出可能な免疫応答を刺激するために有効である量の、その標的抗原ポリペプチドを含む免疫原性組成物をマウスに投与すること、そのマウスから抗体産生細胞(例えば、脾臓由来細胞)を入手し、それらの抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合して抗体産生性ハイブリドーマを得ること、およびそれらの抗体産生性ハイブリドーマを検査してその標的抗原ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを特定することを含み得る。一旦ハイブリドーマが獲得されると、細胞培養物の中で、所望によりハイブリドーマ由来細胞が標的抗原ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する培養条件下でそのハイブリドーマを増殖させることができる。そのモノクローナル抗体はその細胞培養物から精製され得る。そこで、特に望ましい抗体を特定するために多種多様な技術が抗原/抗体相互作用の試験に利用可能である。
【0095】
例えば、ライブラリーから組換え抗体を選択する方法、または全レパートリーのヒト抗体を産生することが可能な遺伝子導入動物(例えば、マウス)の免疫に依存する方法をはじめとした、必要な特異性を有する抗体を作製または単離する他の適切な方法を使用することができる。例えば、Jakobovitsら著、Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)誌、第90巻:2551~2555頁、1993年;Jakobovitsら著、Nature誌、第362巻:255~258頁、1993年;Lonbergら、米国特許第5,545,806号明細書、およびSuraniら、米国特許第5,545,807号明細書を参照されたい。
【0096】
種々の方法で抗体を改変することができる。それらの抗体は単鎖抗体(小型モジュール免疫薬剤、すなわちSMIP(商標)を含む)、FabおよびF(ab’)2断片等として作製され得る。抗体はヒト化され得る、キメラ化され得る、脱免疫化され得る、または完全ヒト型であり得る。多数の刊行物が多種多様な抗体とそのような抗体の作製方法について説明している。例えば、米国特許第6,355,245号明細書、第6,180,370号明細書、第5,693,762号明細書、第6,407,213号明細書、第6,548,640号明細書、第5,565,332号明細書、第5,225,539号明細書、第6,103,889号明細書、および第5,260,203号明細書を参照されたい。
【0097】
キメラ抗体は当技術分野において知られている組換えDNA技術によって作製され得る。例えば、マウス(または他の種)モノクローナル抗体分子のFc定常領域をコードしている遺伝子を制限酵素で消化してマウスFcをコードする領域を取り外し、そしてヒトFc定常領域をコードしている遺伝子の同等の部分を置換する(Robinsonら、国際特許出願公開PCT/US86/02269号明細書;Akiraら、欧州特許出願公開第184187号明細書;Taniguchi,M.、欧州特許出願公開第171,496号明細書;Morrisonら、欧州特許出願公開第173,494号明細書;Neubergerら、国際出願公開第86/01533号パンフレット、Cabillyら、米国特許第4,816,567号明細書;Cabillyら、欧州特許出願公開第125,023号明細書;Betterら著、Science誌、第240巻:1041~1043頁、1988年;Liuら著、Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)誌、第84巻:3439~3443頁、1987年;Liuら著、J.Immunol.誌、第139巻:3521~3526頁、1987年;Sunら著、Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)誌、第84巻:214~218頁、1987年;Nishimuraら著、Canc.Res.誌、第47巻:999~1005頁、1987年;Woodら著、Nature誌、第314巻:446~449頁、1985年、およびShawら著、J.Natl Cancer Inst.誌、第80巻:1553~1559頁、1988年を参照されたい)。
【0098】
抗体をヒト化するための方法が当技術分野において説明されている。幾つかの実施形態において、ヒト化抗体は非ヒトCDRに加えてヒトではない起源から導入された1個以上のアミノ酸残基を有する。ヒト化は基本的にWinterと共同研究者の方法に従い、超可変領域配列をヒト抗体の対応配列に対して置換することにより実施され得る(Jonesら著、Nature誌、第321巻:522~525頁、1986年;Riechmannら著、Nature誌、第332巻:323~327頁、1988年;Verhoeyenら著、Science誌、第239巻:1534~1536頁、1988年)。したがって、そのような「ヒト化」抗体は、完全なヒト可変領域よりもかなり小さな領域が非ヒト種に由来する対応配列によって置換されているキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号明細書)。実際にはヒト化抗体は、数個の超可変領域残基と可能であれば数個のフレームワーク領域残基がげっ歯類抗体中の類似の部位の残基によって置換されているヒト抗体であることが典型的である。
【0099】
Queenらの米国特許第5,693,761号は抗体のヒト化についてのWinterらの方法に対する改良点を開示しており、CDRが折り畳まれてマウス抗体中に見出される結合可能構造になることを立体構造的または他の化学的不適合性のために妨げるそのヒト化フレームワーク中の構造的モチーフ内の問題に結合力喪失の原因があるとする前提に基づいている。この問題に対処するため、Queenはヒト化されるマウス抗体のフレームワーク配列に対して直鎖ペプチド配列の状態で非常に相同的なヒトフレームワーク配列を使用することを教示している。したがって、Queenの方法は種間でフレームワーク配列を比較することに焦点を当てている。典型的には、全ての利用可能なヒト可変領域配列を特定のマウス配列と比較し、対応するフレームワーク残基間のパーセンテージ同一性を算出する。それらのフレームワーク配列をヒト化プロジェクトに提供するために最も高いパーセンテージを有するヒト可変領域を選択する。QueenはCDRを結合可能構造の中に支持ために重要なマウスフレームワーク由来のある特定のアミノ酸残基をヒト化フレームワークの中に保持することが重要であることも教示している。潜在的な重要度は分子モデルから評価される。保持される候補残基は典型的には直鎖配列の状態でCDRに隣接する残基、またはどのCDR残基からでも物理的にその6Å以内にある残基である。
【0100】
他のアプローチでは、特定のフレームワークアミノ酸残基の重要性は、Riechmannら著、1988年によって記載されるように低結合力ヒト化コンストラクトが一旦得られると個々の残基をマウス配列のものに戻し、抗原結合をアッセイすることによって実験的に決定される。フレームワーク配列中の重要なアミノ酸を特定するための別の例となるアプローチはCarterらの米国特許第5,821,337号およびAdairらの米国特許第5,859,205号によって開示されている。これらの参照文献は、フレームワーク内の特異的なKabat残基位置であって、ヒト化抗体中では結合力を維持するために対応するマウスのアミノ酸による置換を必要とし得る前記残基位置を開示している。
【0101】
抗体をヒト化する「フレームワークシャッフリング」と呼ばれる別の方法は、個々のヒト生殖系列フレームワークをまとめたものにインフレームで融合された非ヒトCDR可変領域を含むコンビナトリアルライブラリーの作製に依存する(Dall’Acquaら著、Methods誌、第36巻:43頁、2005年)。次に良好な結合を保持するヒト化抗体をコードするクローンを特定するためにそれらのライブラリーがスクリーニングされる。
【0102】
ヒト化抗体の作製の際に使用される軽鎖と重鎖の両方のヒト可変領域の選択が抗原性を低下させるために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法によると、げっ歯類抗体の可変領域の配列が公知のヒト可変ドメイン配列からなる全ライブラリーに対してスクリーニングされる。そして、そのげっ歯類抗体の可変領域の配列に最も近いヒト配列がヒト化抗体用のヒトフレームワーク領域(フレームワーク領域)として受け入れられる(Simsら著、J.Immunol.誌、第151巻:2296頁、1993年;Chothiaら著、J.Mol.Biol.誌、第196巻:901頁、1987年)。別の方法は、特定のサブグループの軽鎖可変領域または重鎖可変領域を有する全ヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークを幾つかの異なるヒト化抗体に使用することができる(Carterら著、Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)誌、第89巻:4285頁、1992年;Prestaら著、J.Immunol.誌、第151巻:2623頁、1993年)。
【0103】
ヒト可変領域の中に置換される非ヒト残基の選択は様々な因子によって影響を受け得る。これらの因子には、例えば、特定の位置にあるアミノ酸の希少性、CDRまたは抗原のどちらかとの相互作用の確率、および軽鎖可変ドメイン接触面と重鎖可変ドメイン接触面との間の接触面に参加する確率が含まれる(例えば、米国特許第5,693,761号明細書、第6,632,927号明細書、および第6,639,055号明細書を参照されたい)。これらの因子を分析するための1つの方法は非ヒト配列とヒト化配列の三次元モデルの使用を介したものである。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に利用可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列のありそうな三次元立体配座構造を例示および提示するコンピュータープログラムが利用可能である。これらの提示物の調査により、候補免疫グロブリン配列の機能におけるそれらの残基のあり得る役割についての分析、例えば、候補免疫グロブリンの抗原への結合能力に影響を与える残基の分析が可能になる。標的抗原への増加した親和性などの所望の抗体特性を達成するために、このようにして非ヒト残基を選択し、ヒト可変領域残基に置換することができる。
【0104】
完全ヒト抗体を作製するための方法が当技術分野において説明されている。例として、抗GCGR抗体またはその抗原結合性抗体断片を作製するための方法は、ファージ上でヒト抗体のライブラリーを合成するステップ、GCGRまたはその抗体結合部分を用いてライブラリーをスクリーニングするステップ、GCGRに結合するファージを単離するステップ、およびそのファージから抗体を獲得するステップを含む。別の例として、ファージディスプレイ技術に使用される抗体ライブラリーを調製するための1つの方法は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を備える非ヒト動物をGCGRまたはその抗原性部分で免疫して免疫応答を生じさせるステップ、その免疫された動物から抗体産生細胞を取り出すステップ、それらの取り出された細胞から本開示の抗体の重鎖と軽鎖をコードするRNAを単離するステップ、そのRNAを逆転写してcDNAを作製するステップ、プライマーを使用してcDNAを増幅するステップ、およびファージディスプレイベクターにそのcDNAを挿入して抗体をファージ上に発現させるステップを含む。本開示の組換え抗GCGR抗体はこのようにして獲得され得る。
【0105】
また、例として、本開示の組換えヒト抗GCGR抗体は、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーをスクリーニングすることによっても単離され得る。そのライブラリーは、B細胞から単離されたmRNAより調製されたヒトVL cDNAとVH cDNAを使用して作製されたscFvファージディスプレイライブラリーであることが好ましい。そのようなライブラリーを調製し、そしてスクリーニングするための方法が当技術分野において知られている。ファージディスプレイライブラリーを作製するためのキットが市販されている(例えば、Pharmaciaリコンビナント・アンティボディ・システム、カタログ番号27-9400-01;およびStratagene SurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。抗体ディスプレイライブラリーの作製およびスクリーニングにおいて使用され得る他の方法および試薬も存在する(例えば、全ての参照により本明細書に援用される米国特許第5,223,409号明細書、PCT国際公開第92/18619号パンフレット、第91/17271号パンフレット、第92/20791号パンフレット、第92/15679号パンフレット、第93/01288号パンフレット、第92/01047号パンフレット、第92/09690号パンフレット、Fuchsら著、Bio/Technology誌、第9巻:1370~1372頁(1991年);Hayら著、Hum.Antibod.Hybridomas誌、第3巻:81~85頁、1992年;Huseら著、Science誌、第246巻:1275~1281頁、1989;McCaffertyら著、Nature誌、第348巻:552~554頁、1990年;Griffithsら著、EMBO J.誌、12巻:725~734頁、1993年;Hawkinsら著、J.Mol.Biol.誌、第226巻:889~896頁、1992年;Clacksonら著、Nature誌、第352巻:624~628頁、1991年;Gramら著、Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)誌、第89巻:3576~3580頁、1992年;Garradら著、Bio/Technology誌、第9巻:1373~1377頁、1991年;Hoogenboomら著、Nuc.Acid Res.誌、第19巻:4133~4137頁、1991年;およびBarbasら著、Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)誌、第88巻:7978~7982頁、1991年)を参照されたい)。
【0106】
ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子座および軽鎖遺伝子座の幾つか、または全てをゲノム内に含む非ヒト遺伝子導入動物、例えばXenoMouse(商標)動物(Abgenix社/Amgen社、フリーモント、カリフォルニア州)をヒトIgE抗原で免疫することによっても作製される。XenoMouse(商標)マウスは、ヒト免疫グロブリン重鎖遺伝子座と軽鎖遺伝子座の大きな断片を含み、且つ、マウス抗体の産生が欠損している遺伝子改変マウス株である。例えば、Greenら著、Nature Genetics誌、第7巻:13~21頁、1994年および米国特許第5,916,771号明細書、第5,939,598号明細書、第5,985,615号明細書、第5,998,209号明細書、第6,075,181号明細書、6,091,001号明細書、第6,114,598号明細書、第6,130,364号明細書、第6,162,963号明細書、および第6,150,584号明細書を参照されたい。XenoMouse(商標)マウスは成体様ヒトレパートリーの完全ヒト抗体を産生し、抗原特異的ヒト抗体を生成する。幾つかの実施形態において、XenoMouse(商標)マウスは酵母人工染色体(YAC)中のヒト重鎖遺伝子座とカッパ軽鎖遺伝子座のメガベースサイズの生殖系列構成断片の導入を介してヒト抗体V遺伝子レパートリーの約80%を含む。他の実施形態において、XenoMouse(商標)マウスはヒトラムダ軽鎖遺伝子座のほぼ全てをさらに含む。Mendezら著、Nature Genetics誌、第15巻:146~156頁、1997年;GreenおよびJakobovits著、J.Exp.Med.誌、第188巻:483~495頁、1998年;および国際公開第98/24893号パンフレットを参照されたい。
【0107】
様々な実施形態において、本開示の単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片、組換え抗体、ディアボディ、キメラ化もしくはキメラ抗体またはその抗原結合断片、ヒト化抗体またはその抗原結合断片、完全ヒト抗体またはその抗原結合断片、CDR移植抗体またはその抗原結合断片、単鎖抗体、Fv、Fd、Fab、Fab’、またはF(ab’)2、および合成もしくは半合成抗体である抗体またはその抗原結合性抗体断片を利用している。
【0108】
様々な実施形態において、本開示の単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質は、例えば、少なくとも約1×10-7M、少なくとも約1×10-8M、少なくとも約1×10-9M、少なくとも約1×10-10M、少なくとも約1×10-11M、または少なくとも約1×10-12Mの解離定数(KD)で免疫チェックポイントタンパク質抗原に結合する抗体または抗原結合断片を利用している。様々な実施形態において、本開示の単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質は、例えば、少なくとも約1×10-7Mから少なくとも約1×10-8M、少なくとも約1×10-8Mから少なくとも約1×10-9M、少なくとも約1×10-9Mから少なくとも約1×10-10M、少なくとも約1×10-10Mから少なくとも約1×10-11M、または少なくとも約1×10-11Mから少なくとも約1×10-12Mの範囲の解離定数(KD)で免疫チェックポイントタンパク質抗原に結合する抗体または抗原結合断片を利用している。
【0109】
グルカゴン受容体に対する抗体は、例えば、米国特許第5,770,445号;同第7,947,809号;同第7,968,686号;同第8,545,847号;同第8,771,696号;同第9,657,099号;欧州特許出願第EP2074149A2号;欧州特許第EP0658200B1号;米国特許公開第2009/0041784号;同第2009/0252727号;同第2013/0344538号;同第2014/0335091号;ならびに国際公開第2008/036341号で記載されている。本発明の様々な実施形態において、単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質は、例えば米国特許第7,947,809号および同第8,158,759号(各々、様々な抗GCGR抗体または抗GCGR抗原結合性フラグメントのポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列のその具体的な教示について、その全体が参照によって本明細書に援用される)に記載されるポリヌクレオチド配列およびポリペプチド配列を含む、抗GCGR(「アンタゴニスト性」)抗体または抗GCGR抗原結合性フラグメントである。
【0110】
本開示の様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号2に示される重鎖可変領域配列を備える抗体のものと同等以上の抗原結合親和性を有する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号2に示される重鎖可変領域配列を備える抗体と同じエピトープに結合する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号2に示される重鎖可変領域配列を備える抗体と競合する抗GCGR抗体である。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号2に示される重鎖可変領域配列の少なくとも1つ(例えば、2つ、または3つの)CDRを含む抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は配列番号2に示される重鎖可変領域配列を備える抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は配列番号2に示される重鎖可変領域配列、すなわち
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVMWYDGSNKDYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNRLRAEDTAVYYCAREKDHYDILTGYNYYYGLDVWGQGTTVTVSS(配列番号2)
を含む抗GCGR抗体であり得る。
【0111】
本開示の様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号3に示される軽鎖可変領域配列を備える抗体のものと同等以上の抗原結合親和性を有する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号3に示される軽鎖可変領域配列を備える抗体と同じエピトープに結合する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号3に示される軽鎖可変領域配列を備える抗体と競合する抗GCGR抗体である。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号3に示される軽鎖可変領域配列の少なくとも1つ(例えば、2つ、または3つの)CDRを含む抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は配列番号3に示される軽鎖可変領域配列を備える抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は配列番号3に示される軽鎖可変領域配列、すなわち
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSVQPEDFVTYYCLQHNSNPLTFGGGTKVEIK(配列番号3)
を含む抗GCGR抗体であり得る。
【0112】
様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号2または3の配列と、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の観察された相同性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0113】
本開示の様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号4に示される重鎖可変領域配列を備える抗体のものと同等以上の抗原結合親和性を有する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号4に示される重鎖可変領域配列を備える抗体と同じエピトープに結合する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号4に示される重鎖可変領域配列を備える抗体と競合する抗GCGR抗体である。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号4に示される重鎖可変領域配列の少なくとも1つ(例えば、2つ、または3つの)CDRを含む抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は配列番号4に示される重鎖可変領域配列を備える抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は配列番号4に示される重鎖可変領域配列、すなわち
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVMWYDGSNKDYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREKDHYDILTGYNYYYGLDVWGQGTTVTVSS(配列番号4)
を含む抗GCGR抗体であり得る。
【0114】
本開示の様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号5に示される軽鎖可変領域配列を備える抗体のものと同等以上の抗原結合親和性を有する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号5に示される軽鎖可変領域配列を備える抗体と同じエピトープに結合する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号5に示される軽鎖可変領域配列を備える抗体と競合する抗GCGR抗体である。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号5に示される軽鎖可変領域配列の少なくとも1つ(例えば、2つ、または3つの)CDRを含む抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は配列番号5に示される軽鎖可変領域配列を備える抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は配列番号5に示される軽鎖可変領域配列、すなわち
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFVTYYCLQHNSNPLTFGGGTKVEIK(配列番号5)
を含む抗GCGR抗体であり得る。
【0115】
様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号4または5の配列と、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の観察された相同性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0116】
本開示の様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号6に示される重鎖可変領域配列を備える抗体のものと同等以上の抗原結合親和性を有する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号6に示される重鎖可変領域配列を備える抗体と同じエピトープに結合する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号6に示される重鎖可変領域配列を備える抗体と競合する抗GCGR抗体である。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号6に示される重鎖可変領域配列の少なくとも1つ(例えば、2つ、または3つの)CDRを含む抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は配列番号6に示される重鎖可変領域配列を備える抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は配列番号6に示される重鎖可変領域配列、すなわち
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVMWYDGSNKDYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNRLRAEDTAVYYCAREKDHYDILTGYNYYYGLDVWGQGTTVTVSS(配列番号6)
を含む抗GCGR抗体であり得る。
【0117】
本開示の様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号7に示される軽鎖可変領域配列を備える抗体のものと同等以上の抗原結合親和性を有する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号7に示される軽鎖可変領域配列を備える抗体と同じエピトープに結合する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号7に示される軽鎖可変領域配列を備える抗体と競合する抗GCGR抗体である。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号7に示される軽鎖可変領域配列の少なくとも1つ(例えば、2つ、または3つの)CDRを含む抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は配列番号7に示される軽鎖可変領域配列を備える抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は配列番号7に示される軽鎖可変領域配列、すなわち
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLESGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSVQPEDFVTYYCLQHNSNPLTFGGGTKVEIK(配列番号7)
を含む抗GCGR抗体であり得る。
【0118】
様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号6または7の配列と、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の観察された相同性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0119】
本開示の様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号8に示される重鎖配列を備えるキメラ抗体のものと同等以上の抗原結合親和性を有する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号8に示される重鎖配列を備える抗体と同じエピトープに結合する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号8に示される重鎖配列を備える抗体と競合する抗GCGR抗体である。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号8に示される重鎖配列の少なくとも1つ(例えば、2つ、または3つの)CDRを含む抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は配列番号8に示される重鎖配列を備える抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号8に示される重鎖配列、すなわち
MEFGLSWVFLVALLRGVQCQVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVMWYDGSNKDYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNRLRAEDTAVYYCAREKDHYDILTGYNYYYGLDVWGQGTTVTVSSAKTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSETVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTQPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITDFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMDTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK(配列番号8)
を含む抗GCGR抗体であり得る。
【0120】
本開示の様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号9に示される軽鎖配列を備えるキメラ抗体のものと同等以上の抗原結合親和性を有する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号9に示される軽鎖配列を備える抗体と同じエピトープに結合する抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号9に示される軽鎖配列を備える抗体と競合する抗GCGR抗体である。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号9に示される軽鎖配列の少なくとも1つ(例えば、2つ、または3つの)CDRを含む抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は配列番号9に示される軽鎖配列を備える抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は配列番号9に示される軽鎖配列、すなわち
MDMRVPAQLLGLLLLWFPGARCDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLESGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSVQPEDFVTYYCLQHNSNPLTFGGGTKVEIKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC(配列番号9)
を含む抗GCGR抗体であり得る。
【0121】
様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号8または9の配列と、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の観察された相同性を共有するアミノ酸配列を含む。様々な実施形態において、抗体は、配列番号8に示される重鎖配列および配列番号9に示される軽鎖配列を含むキメラ抗GCGR抗体である(これ以降では「REMD2.59C])。
【0122】
本開示の様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26および配列番号27から選択される重鎖可変領域配列と配列番号28、配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44および配列番号45から選択される軽鎖可変領域配列を備える抗GCGR抗体であり得る。様々な実施形態において、前記抗体は、配列番号10~27または配列番号28~45の配列と、例えば、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の観察された相同性を共有するアミノ酸配列を含む。
【0123】
本開示の単離抗GCGR抗体、本開示の抗体断片、または本開示の抗体誘導体は当技術分野において知られているあらゆる定常領域を含み得る。その軽鎖定常領域は、例えば、カッパまたはラムダタイプの軽鎖定常領域、例えばヒトカッパまたはラムダタイプの軽鎖定常領域であり得る。その重鎖定常領域は、例えば、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、またはミュータイプの重鎖定常領域、例えば、ヒトアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、またはミュータイプの重鎖定常領域であり得る。様々な実施形態において、前記軽鎖定常領域または重鎖定常領域は天然定常領域の断片、誘導体、変異体、または改変タンパク質である。
【0124】
目的の抗体から異なるサブクラスまたはアイソタイプの抗体を誘導するための技術、すなわち、サブクラススイッチングが知られている。したがって、IgG抗体が例えばIgM抗体に由来することも、その反対もあり得る。そのような技術により、所与の抗体(親抗体)の抗原結合特性を持つが、親抗体のものと異なる抗体アイソタイプまたはサブクラスに関連する生物学的特性も持つ新しい抗体の調製が可能になる。組換えDNA技術を用いても良い。特定の抗体ポリペプチドをコードするクローン化DNA、例えば、所望のアイソタイプの抗体の定常ドメインをコードするDNAをそのような技法に用いても良い。Lanittoら著、Methods Mol.Biol.誌、第178巻:303~16頁(2002年)も参照されたい。
【0125】
様々な実施形態において、本開示の単離抗原結合タンパク質は配列番号46に示されるカッパ軽鎖定常領域またはその断片を含む。様々な実施形態において、本開示の単離抗原結合タンパク質は配列番号47に示されるラムダ軽鎖定常領域またはその断片を含む。様々な実施形態において、本開示の単離抗原結合タンパク質は配列番号48に示されているIgG2重鎖定常領域またはその断片を含む。
【0126】
様々な実施形態において、本開示の単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質は、配列番号49に示される重鎖配列および配列番号50に示される軽鎖を含む完全抗GCGR抗体(これ以降では「REMD-477」)である。
【0127】
本開示の様々な実施形態において、単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質は、ヘミボディである。「ヘミボディ」は、完全重鎖、完全軽鎖、および完全重鎖のFc領域に対合する第2の重鎖Fc領域を含む免疫機能性免疫グロブリン構築物である。重鎖Fc領域および第2の重鎖Fc領域を連結するためにリンカーを利用し得るが、その必要があるとは限らない。様々な実施形態において、ヘミボディは、(i)完全軽鎖、および(ii)Fc領域(例えば、IgG2 Fc領域)に融合された重鎖を含む一価抗原結合タンパク質である。ヘミボディの調製方法は、例えば、本明細書においてそのようなヘミボディの調製を教示する目的でその全体が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2012/0195879号明細書に記載されている。
【0128】
様々な実施形態において、グルカゴン受容体アンタゴニストまたはモジュレーターは、低分子である。様々な実施形態において、本方法は、米国特許第8907103号明細書、同第8445538号明細書、同第8,361,959号明細書、同第9045389号明細書、同第8623818号明細書、同第7138529号明細書、同第8748624号明細書、同第8232413号明細書、同第8470773号明細書、同第8324384号明細書、同第8809579号明細書、同第8318667号明細書、同第8735604号明細書、同第789472号明細書、同第7935713号明細書、同第7803951号明細書、同第7687534号明細書、および同第8436015号明細書、米国特許出願公開第20140135400号明細書、同第20110281795号明細書、同第20130012493号明細書、および同第20130012434号明細書、ならびにPCT国際公開第2010019828号パンフレット、国際公開第2003051357号パンフレット、国際公開第2015066252号パンフレット、国際公開第2003053938号パンフレット、国際公開第2004/069158号パンフレット、国際公開第2005/121097号パンフレット、および国際公開第2007/015999号パンフレットに記載されるグルカゴン受容体アンタゴニストまたはモジュレーターの使用を含む。様々な実施形態において、本方法は、米国特許第8084489号明細書、同第7816557号明細書、同第7807702号明細書、同第8691856号明細書、同第7863329号明細書、同第8076374号明細書、同第7696248号明細書、同第7989457号明細書、同第8809342号明細書、同第8507533号明細書、および同第8927577号明細書に記載されるグルカゴン受容体モジュレーターの使用を含む。様々な実施形態において、本方法は、LY2409021、MK-0893、GRA1、LGD-6972、PF-06291874、およびBat27-9955から選択されるグルカゴン受容体アンタゴニストの使用を含む。
【0129】
様々な実施形態において、グルカゴン受容体アンタゴニストは、抗GCGR抗体であり、且つPI3K経路阻害剤は、BYL719(PI3Kα選択的)である。様々な実施形態において、グルカゴン受容体アンタゴニストは、抗GCGR抗体であり、且つPI3K経路阻害剤は、GSK2636771(PI3Kβ選択的)である。様々な実施形態において、グルカゴン受容体アンタゴニストは、抗GCGR抗体であり、且つPI3K経路阻害剤は、BYL719およびGSK2636771の組み合わせである。様々な実施形態において、グルカゴン受容体アンタゴニストは、抗GCGR抗体であり、且つPI3K経路阻害剤は、NVP-BKM120(汎特異的)である。様々な実施形態において、グルカゴン受容体アンタゴニストは、抗GCGR抗体であり、且つPI3K経路阻害剤は、GSK690693およびMK-2206から選択される汎AKT阻害剤である。様々な実施形態において、グルカゴン受容体アンタゴニストは、抗GCGR抗体であり、且つPI3K経路阻害剤は、RAD001(mTORC1阻害剤)である。様々な実施形態において、グルカゴン受容体アンタゴニストは、抗GCGR抗体であり、且つPI3K経路阻害剤は、ガニツマブ(IGF1Rモノクローナル抗体)である。様々な実施形態において、グルカゴン受容体アンタゴニストは、抗GCGR抗体であり、且つPI3K経路阻害剤は、リンシチニブ(IGF1R+IRキナーゼ阻害剤)である。様々な実施形態において、グルカゴン受容体アンタゴニストは、抗GCGR抗体であり、且つPI3K経路阻害剤は、MEDI573(IGF1+IGF2モノクローナルAb)である。
【0130】
癌
癌は、生体の他の部分に広がるかまたは浸潤する潜在能力を有する異常細胞成長を含む疾患の群である。別々の腫瘍塊を形成する、すなわち嚢胞も液体領域も含有しない異常成長は、固形腫瘍として定義される。固形腫瘍は、良性(癌ではない)または悪性(癌)であり得る。様々なタイプの固形腫瘍がそれらを形成する細胞のタイプに因んで命名される。固形腫瘍の例としては、肉腫、癌腫、およびリンパ腫が挙げられる。骨髄系およびリンパ系の2つの血液細胞系列の何れかに由来する癌は、血液悪性病変として定義される。そのような悪性病変は、血液癌または液性腫瘍とも呼ばれる。液性腫瘍の例としては、多発性骨髄腫、急性白血病(例えば、11q23陽性急性白血病、急性リンパ球白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病、ならびに骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、および赤白血病)、慢性白血病(例えば、慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、および慢性リンパ球性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(無痛性および高悪性度の形態)、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、ヘアリー細胞白血病、および脊髄異形成が挙げられる。
【0131】
一態様において、本開示は、癌を有する対象を治療する組み合わせ治療方法であって、a)ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)阻害剤を含む有効量の医薬組成物、およびb)グルカゴン受容体アンタゴニストを含む有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。様々な実施形態において、癌は、a)限定されるものではないが、浸潤性腺管癌、浸潤性小葉癌、腺管癌、上皮内小葉癌、および転移性乳癌をはじめとする乳癌、b)限定されるものではないが、様々なT細胞およびB細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキン病、および中枢神経系リンパ腫をはじめとするリンパ球細胞癌、(c)多発性骨髄腫、慢性好中球性白血病、慢性好酸球性白血病/好酸球増加症候群、慢性特発性骨髄線維症、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、慢性骨髄単球性白血病、非定型慢性骨髄性白血病、若年性骨髄単球性白血病、環状鉄芽球を伴うおよび環状鉄芽球を伴わない不応性貧血、多系列異形成を伴う難治性血球減少症(骨髄異形成症候群)、過剰芽球を伴う不応性貧血(骨髄異形成症候群)、5q-症候群、t(9;12)(q22;p12)を伴う骨髄異形成症候群、および骨髄性白血病(例えば、フィラデルフィア染色体陽性(t(9;22)(qq34;q11)))、d)限定されるものではないが、基底細胞癌、扁平上皮細胞癌、悪性黒色腫、およびカポジ肉腫をはじめとする皮膚癌、e)限定されるものではないが、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、およびヘアリー細胞白血病をはじめとする白血病、f)限定されるものではないが、肛門癌、結腸癌、結腸直腸癌、食道癌、胆嚢癌、胃(stomach)(胃(gastric))癌、膵癌、膵島細胞癌、直腸癌、小腸癌、および唾液腺癌をはじめとする消化管癌、g)限定されるものではないが、肝細胞癌、胆管癌、混合型肝細胞癌・胆管細胞癌、原発性肝癌、および転移性肝癌をはじめとする肝癌、h)限定されるものではないが、前立腺癌、精巣癌、および陰茎癌をはじめとする男性生殖器癌、i)限定されるものではないが、子宮癌(子宮内膜)、子宮頸癌、卵巣癌、腟癌、外陰癌、子宮肉腫、および卵巣胚細胞腫瘍をはじめとする女性生殖器癌、j)限定されるものではないが、小細胞および非小細胞肺癌、気管支腺腫、胸膜肺芽腫、および悪性中皮腫をはじめとする気道癌、k)限定されるものではないが、脳幹・視床下部神経膠腫、小脳・大脳星状細胞腫、髄芽腫、上衣腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、および神経外胚葉・松果体腫瘍をはじめとする脳癌、l)限定されるものではないが、眼球内黒色腫、網膜芽細胞腫、および横紋筋肉腫をはじめとする眼癌、m)限定されるものではないが、喉頭癌、下咽頭癌、鼻咽頭癌、中咽頭癌、および口唇・口腔癌、扁平上皮頸部癌、転移性副鼻腔癌をはじめとする頭頸部癌、n)限定されるものではないが、甲状腺癌、胸腺腫、悪性胸腺腫、髄様甲状腺癌、甲状腺乳頭癌、多発性内分泌新生物2A型(MEN2A)、褐色細胞腫、上皮小体腺腫、多発性内分泌新生物2B型(MEN2B)、家族性髄様甲状腺癌(FMTC)、およびカルチノイドをはじめとする甲状腺癌、o)限定されるものではないが、膀胱癌をはじめとする尿路癌、p)限定されるものではないが、軟組織肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織球腫、リンパ肉腫、および横紋筋肉腫をはじめとする肉腫、q)限定されるものではないが、腎細胞癌、腎明細胞癌、および腎細胞腺癌をはじめとする腎癌、r)前駆Bリンパ芽球白血病/リンパ腫(前駆B細胞急性リンパ芽球白血病)、B細胞性慢性リンパ球性白血病/小リンパ球リンパ腫、B細胞前リンパ球白血病、リンパ形質細胞リンパ腫、脾辺縁帯B細胞リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、形質細胞骨髄腫/形質細胞腫、MALT型節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、瀰漫性大B細胞リンパ腫、縦隔大B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫およびバーキットリンパ腫/バーキット細胞白血病、(s)前駆Tリンパ芽球性リンパ腫/白血病(前駆T細胞急性リンパ芽球性白血病)、T細胞前リンパ球性白血病、T細胞顆粒リンパ球性白血病、侵攻性NK細胞白血病、成人T細胞リンパ腫/白血病(HTLV-1)、節外性NK/T細胞リンパ腫(鼻型)、腸疾患型T細胞リンパ腫、肝脾型ガンマ-デルタT細胞リンパ腫、皮下脂肪組織炎様T細胞リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群、未分化大細胞リンパ腫(T/ヌル細胞、皮膚原発型)、末梢性T細胞リンパ腫(他に特徴付けられないもの)、血管性免疫芽性T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫(T/ヌル細胞および全身原発型)、(t)結節性リンパ球優勢型ホジキンリンパ腫、結節硬化型ホジキンリンパ腫(悪性度1および2)、高リンパ球型古典的ホジキンリンパ腫、混合細胞型ホジキンリンパ腫、およびリンパ球枯渇型ホジキンリンパ腫、ならびに(u)t(8;21)(q22;q22)を伴うAML、AML1(CBF-アルファ)/ETO、急性前骨髄球性白血病(t(15;17)(q22;q11-12)を伴うAMLおよび変異体PML/RAR-アルファ)、異常骨髄好酸球を伴うAML(inv(16)(p13q22)またはt(16;16)(p13;q11)、CBFb/MYH11.times.)、および11q23(MLL)異常を伴うAML、微分化型AML、成熟を伴わないAML、成熟を伴うAML、急性骨髄単球性白血病、急性単球性白血病、急性赤白血病、急性巨核球性白血病、急性好塩基球性白血病、および骨髄線維症を伴う急性汎骨髄症からなる群から選択される。様々な実施形態において、癌は、乳癌である。様々な実施形態において、癌は、卵巣癌である。
【0132】
医薬組成物
別の態様において、本開示は、1つ以上の薬学的に許容可能な担体と共に本明細書に記載される単離グルカゴン受容体アンタゴニストを含む医薬組成物、1つ以上の薬学的に許容可能な担体と共に本明細書に記載されるPI3K阻害剤を含む医薬組成物、または1つ以上の薬学的に許容可能な担体と共に本明細書に記載される単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよびPI3K阻害剤を含む医薬組成物を提供する。本明細書に記載される医薬組成物および使用方法は、以下に詳述されるように他の活性剤との組み合わせ(共投与)の実施形態も包含する。
【0133】
本明細書に提供される単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよび/またはPI3K経路阻害剤は、医薬製剤分野の当業者に明らかな様々な方法により製剤され得る。そのような方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版、(マック・パブリッシング社、1995年)に見ることができる。医薬組成物は、一般的には、無菌であり、実質的に等張性であり、且つ米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)の全てのGMP規制に完全に準拠したものとして製剤される。
【0134】
一般的には、本発明の単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよび/またはPI3K経路阻害剤は、1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤または担体を併用した製剤として投与するのに好適である。そのような薬学的に許容可能な賦形剤および担体は、周知であり、当業者に理解されていると共に広範にわたり記載されている(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、A.R.Gennaro編、マック・パブリッシング社、1990年を参照されたい)。薬学的に許容可能な担体は、例えば、組成物のpH、オスモル濃度、粘度、透明性、色、等張性、臭気、無菌性、安定性、溶解もしくは放出の速度、吸着性、または浸透性を改変、維持、または保持する目的で含まれ得る。そのような医薬組成物は、ポリペプチドの物理的状態、安定性、生体内での放出速度、および生体内での排除速度に影響を及ぼし得る。適切な薬学的に許容可能な担体には、限定されるものではないが、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリシン)、抗微生物剤、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、または亜硫酸水素ナトリウム)、緩衝剤(例えば、ホウ酸塩、重炭酸塩、トリス-HCl、クエン酸塩、リン酸塩、他の有機酸)、バルキング剤(例えば、マンニトールまたはグリシン)、キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、複合体化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、ベータ-シクロデキストリン、またはヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン)、充填剤、単糖、二糖、および他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、またはデキストリン)、タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン)、着色剤、風味剤および希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン(例えば、ナトリウム)、保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸、または過酸化水素)、溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコール)、糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)、懸濁化剤、界面活性剤または湿潤剤(例えば、プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポール)、安定性向上剤(スクロースまたはソルビトール)、張度向上剤(例えば、アルカリ金属ハロゲン化物(好ましくは塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール)、送達媒体、希釈剤、賦形剤および/または医薬補助剤が含まれる。
【0135】
医薬組成物の主要な媒体または担体は、本質的に水性または非水性の何れかであり得る。例えば、適切な媒体または担体は、注射用水、生理食塩水溶液、または人工脳脊髄液であり得ると共に、非経口投与用組成物に一般に見られる他の物質を追加することも可能である。血清アルブミンと混合された中性緩衝生理食塩水または生理食塩水は、さらなる例示的媒体である。他の例示的医薬組成物は、約pH7.0~8.5のトリス緩衝液または約pH4.0~5.5の酢酸緩衝液を含むと共に、ソルビトールまたはその適切な代替物をさらに含み得る。本開示の一実施形態において、組成物は、凍結乾燥ケークまたは水溶液の形態で任意の製剤化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences、supra)と共に所望の純度を有する選択された組成物を混合することにより貯蔵用として調製され得る。さらに、治療用組成物はスクロースなどの適切な賦形剤を用いて凍結乾燥物として製剤され得る。最適な医薬組成物は、例えば、意図される投与経路、送達方式、および所望の投与量に依存して当業者により決定される。
【0136】
本発明の医薬組成物は、典型的には非経口投与に好適である。本明細書において使用される場合、医薬組成物の「非経口投与」は、対象の組織を物理的に突破して組織の突破口を介して医薬組成物を投与することにより、一般的には血流、筋肉、または内部器官への直接投与を行うことにより特徴付けられるあらゆる投与経路を含む。したがって、非経口投与としては、限定されるものではないが、組成物の注射、外科的切開を介する組成物の適用、組織貫通非外科的創傷を介する組成物の適用などによる医薬組成物の投与が挙げられる。様々な実施形態において、医薬組成物は、例えば、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、胸骨内注射、静脈内注射、動脈内注射、脊髄内注射、脳室内注射、尿道内注射、頭蓋内注射、滑液嚢内注射または注入を介したものから選択される経路を介した非経口投与のために製剤される。
【0137】
非経口投与が企図される場合、治療用医薬組成物は、薬学的に許容可能な媒体中に所望の単離グルカゴン受容体アンタゴニストを含む発熱原フリーの非経口的に許容可能な水溶液の形態であり得る。非経口注射に特に適切な媒体は、適切に保存された無菌等張液としてポリペプチドが製剤される無菌蒸留水である。様々な実施形態において、注射用投与に適切な医薬製剤は、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、生理学的緩衝生理食塩水などの生理学的適合性緩衝液で製剤され得る。水性注射用懸濁剤は、懸濁剤の粘度を増加させる物質、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、またはデキストランを含有し得る。加えて、活性化合物の懸濁剤は、適切な油性の注射用懸濁剤として調製され得る。必要に応じて、懸濁剤はまた、適切な安定化剤または化合物の溶解度を増加させる薬剤を含有し得ると共に、高濃度溶液の調製を可能にし得る。注射用製剤は、単位剤形で、例えばアンプルまたは保存剤を含有する複数回用量容器で調製、包装、または販売され得る。他の有用な非経口投与可能な製剤としては、マイクロ結晶形態またはリポソーム調製物で活性成分を含むものが挙げられる。非経口投与用製剤は、即時放出および/または調節放出されるように製剤され得る。放出調節製剤には、遅延放出、持続性放出、パルス放出、制御放出、標的放出、およびプログラム放出が含まれる。
【0138】
本開示の単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよび/またはPI3K阻害剤は、乾燥粉剤吸入器から、適切な噴射剤を用いてもしくは用いずに加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー(好ましくは、電気流体力学を用いて微細ミストを生成するアトマイザー)、もしくはネブライザーからエアロゾルスプレーとして、または点鼻剤として、典型的には乾燥粉剤(単独、混合物、または混合成分粒子の何れかで、例えば適切な薬学的に許容可能な担体と混合して)の形態で鼻腔内にまたは吸入により投与され得る。
【0139】
加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザー、またはネブライザーは、一般的には、例えば活性剤の分散、可溶化、または長期放出に適切な薬剤、溶媒としての噴射剤を含む本開示の単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよび/またはPI3K阻害剤の溶液または懸濁液を含有する。
【0140】
乾燥粉剤製剤または懸濁剤製剤の使用前に前記医薬製品は概して吸入による送達に適切なサイズ(典型的には5マイクロン未満)にまで微粉にされる。これはスパイラルジェットミリング、流動床ジェットミリング、ナノ粒子を形成するための超臨界流体プロセッシング、高圧ホモジナイゼーション、またはスプレー乾燥などのあらゆる適切な粉砕方法によって達成され得る。
【0141】
吸入器または散布器の中に使用するためのカプセル、ブリスターおよびカートリッジは、本開示のグルカゴン受容体アンタゴニストおよび/またはPI3K阻害剤、適切な粉末基材、および性能調節剤からなる粉末混合物を含むように製剤され得る。
【0142】
メントールおよびレボメントールなどの適切な着香料、またはサッカリンもしくはサッカリンナトリウムなどの甘味料を吸入/鼻腔内投与用の本開示の製剤に添加して良い。
【0143】
吸入/鼻腔内投与用の製剤は即時放出および/または調節放出されるように製剤され得る。放出調節製剤には遅延放出、持続性放出、パルス放出、制御放出、標的放出、およびプログラム放出が含まれる。
【0144】
乾燥粉剤吸入器およびエアロゾル剤の事例では投薬単位は計量された量を送達する弁によって決定される。本開示に準拠する単位は、計量された用量または「一吹き」の本開示の抗体を投与するように用意されていることが典型的である。全体的な1日用量は単回投与で投与されることが典型的であり、より一般的には一日を通して複数に分割された用量として投与される。
【0145】
本開示の単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよび/またはPI3K阻害剤は経口投与用に製剤されても良い。経口投与はその化合物が胃腸管に入ることになる飲み込み、および/またはその化合物が口から直接的に血流に入るバッカル投与、舌投与、または舌下投与を含み得る。経口投与に適切な製剤には、錠剤、多粒子またはナノ粒子を含む軟質カプセル剤または硬質カプセル剤、液剤、または粉剤、ロゼンジ剤(液体充填型を含む)、チューイング剤、ゲル剤、急速分散剤形、フィルム剤、膣坐剤、スプレー剤、およびバッカル/粘膜付着パッチなどの固形系、半固形系、および液体系が含まれる。
【0146】
経口用の医薬組成物は医薬組成物の製造についての技術分野に知られているあらゆる方法に従って調製されて良く、薬学的に洗練されており、且つ、口当たりが良い調製物を提供するためにそのような組成物は甘味剤からなる群より選択される1種類以上の薬剤を含んで良い。例えば、経口送達用錠剤を調製するために前記単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよび/またはPI3K阻害剤が少なくとも1種類の医薬担体と混合され、そしてその固形製剤が胃腸管への送達用に公知の方法に従って圧縮されて錠剤に成形される。その錠剤組成物は添加物、例えばサッカリド担体またはセルロース担体、デンプンペーストまたはメチルセルロースなどの結合剤、充填剤、崩壊剤、または医薬調製物の製造に通常は使用されることが典型的である他の添加物と共に製剤されることが典型的である。経口送達用カプセル剤を調製するためにDHEAが少なくとも1種類の医薬担体と混合され、そしてその固形製剤が胃腸管への送達に適切なカプセル容器の中に入れられる。単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよび/またはPI3K阻害剤を含む組成物は、参照により本明細書に援用されるRemington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、1990年(マック・パブリッシング社、イーストン、ペンシルバニア州18042)の第89章に概ね記載されているように調製され得る。
【0147】
様々な実施形態において、前記医薬組成物は、錠剤の製造にとって適切である無毒の薬学的に許容可能な担体と混合して単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよび/またはPI3K阻害剤を含む経口送達用錠剤として製剤される。これらの担体は炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤、顆粒化剤および崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン、ゼラチンまたはアカシアガム、および滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクであり得る。それらの錠剤は被覆されていなくても良く、または胃腸路における崩壊と吸収を遅らせることによってより長い期間にわたって持続性作用を提供するために公知の技術で被覆されても良い。例えば、モノステアリン酸グリセリルもしくはジノステアリン酸グリセリル単独またはワックスとそれらなどの時間遅延物質を用いて良い。
【0148】
様々な実施形態において、前記医薬組成物は、前記単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよび/またはPI3K阻害剤が不活性固形希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合している硬質ゼラチンカプセル剤として、または前記単離グルカゴン受容体アンタゴニストおよび/またはPI3K阻害剤が水性媒体または油性媒体、例えばラッカセイ油、ピーナッツ油、液体パラフィン、またはオリーブ油と混合している軟質ゼラチンカプセル剤として製剤される。
【0149】
液体製剤には懸濁剤、水剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれる。そのような製剤は(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから作製された)軟質カプセル剤または硬質カプセル剤の中で充填剤として使用されて良く、典型的には担体、例えば水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロース、または適切な油と1種類以上の乳化剤および/または懸濁化剤を含む。液体製剤は例えばサシェの固形物の再構成によっても調製され得る。
【0150】
当技術分野で認められているペプチド、タンパク質、抗体、および免疫コンジュゲートを製剤および投与する何れの方法も、本発明の単離グルカゴン受容体アンタゴニストを投与するのに適切に利用され得る。様々な実施形態において、本発明のREMD-477は、認証GMP製造業者CMC Biologies(米国シアトル)により製造され、皮下投与用の無菌の透明な無色~微黄色の凍結液体製剤(DP)として供給される。各無菌バイアルには、10mM酢酸ナトリウム、5%(w/v)ソルビトール、0.004%(w/v)ポリソルベート20、pH5.2を用いて製剤された1mLの送達可能体積の70mg/mL REMD-477が充填される。
【0151】
治療方法
一態様において、本開示は、癌を有する対象を治療する組み合わせ治療方法であって、a)ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)阻害剤を含む有効量の医薬組成物、およびb)グルカゴン受容体アンタゴニストを含む有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む方法に関する。様々な実施形態において、組み合わせ治療方法は、PI3K阻害剤またはその薬学的に許容可能な塩およびグルカゴン受容体アンタゴニスト抗体を含む有効量の医薬組成物を投与することを含む。これらの様々な組み合わせ療法は、「相乗効果」を提供し得る。すなわち、活性成分を一緒に使用したときに達成される効果は、化合物を個別に使用することにより得られる効果の和よりも大きい。これらの組み合わせ治療方法は、PI3K阻害剤単独、別の抗癌剤単独、または別の抗癌剤と組み合わされたPI3K阻害剤を用いた治療に対して耐性または難治性の癌に対して特に有効である。
【0152】
本開示の医薬組成物は、臨床試験で試験され得る。適切な臨床試験は、例えば、癌患者におけるオープンラベル用量漸増試験であり得る。そのような試験は、特に本発明の組み合わせの活性成分の相乗作用を証明する。癌に対する有益な効果は、当業者にそれ自体公知のこうした試験の結果から直接決定され得る。そのような研究は、特に活性成分を用いた単独療法の効果および本発明の組み合わせの効果を比較するのに好適である。様々な実施形態において、PI3K阻害剤の用量は、最大許容投与量に達するまで漸増され、且つグルカゴン受容体アンタゴニスト抗体は、固定用量で投与される。様々な実施形態において、PI3K阻害剤は、固定用量で投与され、且つグルカゴン受容体アンタゴニスト抗体の用量は、漸増される。各患者は、毎日または間欠的の何れかで化合物を何回か摂取し得る。治療の有効性は、例えば、4~6週間ごとに症状スコアを評価することにより、12、18、または24週間の治療後、そのような試験で決定され得る。本発明の組み合わせに使用される医薬活性成分の1つのみを適用する単独療法と比較して、本開示の組み合わせ療法の実施により、例えば症状の軽減、進行遅延、または阻害に関して相乗的治療効果などの有益な効果が得られるだけでなく、副作用の減少、生活の質の向上、罹患率の減少などのさらに驚くべき有益な効果が得られると想定される。さらなる利益は、本発明の組み合わせの活性成分の一方または両方の用量の減少および/または適用回数の減少を行うことが可能であり、これにより、副作用の発生率または重症度の減少が可能になることである。これは、治療される患者の要望および要件に叶う。
【0153】
様々な実施形態において、PI3K阻害剤およびグルカゴン受容体アンタゴニスト抗体の医薬の組み合わせは、癌、例えばPIK3CA増幅癌および/またはPIK3CA突然変異癌の治療または予防におけるその治療有効性が評価される。
【0154】
投与計画を調節して最適な所望の応答(例えば、治療的応答または予防的応答)をもたらすことができる。例えば、単回ボーラスを投与することができ、一定の期間にわたって数回に分割された用量(複数回用量または反復用量または維持用量)を投与することができ、そして急迫した治療状況によって示されるように比例的にその用量を減少または増加することができる。投与を簡単にし、且つ、投与量を均一にするために投薬単位剤形で非経口組成物を製剤することが特に有利である。本明細書において使用される投薬単位剤形は治療を受ける哺乳類対象への統一的な投与量として適切な物理的に別々の単位を指し、各単位は必要とされる医薬担体と共に所望の治療効果をもたらすように計算された所定の量の活性化合物を含む。本開示の投薬単位剤形の仕様は、主として、グルカゴン受容体アンタゴニストおよびPI3K経路阻害剤の特性ならびに達成されるべき特定の治療効果によって決定付けられる。
【0155】
したがって、当業者は本明細書において提供される開示に基づいて治療技術分野においてよく知られている方法に準拠して用量と投与計画が調節されることを理解することになる。すなわち、最大忍容用量を容易に確定することができ、検出可能な治療利益を患者に提供するための各薬剤を投与する時間的要求事項を決定できるように検出可能な治療利益をその患者に対して提供する有効量を決定することもできる。したがって、ある特定の用量と投与計画が本明細書において例示されるが、これらの例は本開示の実施に際して患者に提供され得る用量と投与計画を決して限定しない。
【0156】
投与量の値は緩和されるべき病気の種類と重症度によって変化する場合があり得、それらは単回用量または複数回用量を含み得ることが特筆されるべきである。どの特定の患者についても具体的な投与計画は、その個人の要求と前記組成物の投与を行い、またはその投与を指揮する人物の専門的な判断に応じて時間と共に調節されるべきであること、および本明細書において明記される投与量範囲はただの例示であり、本請求の構成要素の範囲または実施を制限することを意図したものではないことがさらに理解されるべきである。さらに、本開示の組成物を用いる投与計画は疾患の種類、患者の年齢、体重、性別、医療状態、病気の重症度、投与経路、および使用される特定の抗体をはじめとする様々な因子に基づいて良い。したがって、投与計画は大幅に変化する場合があり得るが、それは標準的方法を用いて日常的に決定され得る。例えば、用量は薬物動態パラメーターまたは薬力学パラメーターに基づいて調節されて良く、それらのパラメーターは毒性効果および/または検査室値などの臨床効果を含み得る。したがって、本開示は当業者によって決定される患者内用量増加を包含する。適切な投与量および投与計画の決定は関連の技術分野においてよく知られており、本明細書において開示される教示が一旦提供されるとそのような決定が包含されることが当業者によって理解されることになる。
【0157】
ヒト患者への投与について、本開示の単離アンタゴニスト性抗原結合タンパク質の毎月の総用量は、当然投与モードに応じて対象当たり0.5~1200mg、対象当たり0.5~1100mg、対象当たり0.5~1000mg、対象当たり0.5~900mg、対象当たり0.5~800mg、対象当たり0.5~700mg、対象当たり0.5~600mg、対象当たり0.5~500mg、対象当たり0.5~400mg、対象当たり0.5~300mg、対象当たり0.5~200mg、対象当たり0.5~100mg、対象当たり0.5~50mg、対象当たり1~1200mg、対象当たり1~1100mg、対象当たり1~1000mg、対象当たり1~900mg、対象当たり1~800mg、対象当たり1~700mg、対象当たり1~600mg、対象当たり1~500mg、対象当たり1~400mg、対象当たり1~300mg、対象当たり1~200mg、対象当たり1~100mg、または対象当たり1~50mgの範囲内にあり得る。例えば、毎月の用量は対象当たり約1~1000mgを必要とし得る。ある特定の実施形態において、本開示の単離グルカゴン受容体アンタゴニストは対象当たり約1~200mg、対象当たり約1~150mgまたは対象当たり1~100mgを投与され得る。その毎月の総用量は単回用量または分割用量で投与されてよく、医師の裁量で本明細書において示された典型的な範囲から外れてよい。
【0158】
本開示の単離グルカゴン受容体アンタゴニストの治療有効量または予防有効量についての例となる非限定的な毎週毎の投与範囲は、体重に対して0.001~10mg/kg、0.001~9mg/kg、0.001~8mg/kg、0.001~7mg/kg、0.001~6mg/kg、0.001~5mg/kg、0.001~4mg/kg、0.001~3mg/kg、0.001~20mg/kg、0.001~1mg/kg、0.010~10mg/kg、0.010~9mg/kg、0.010~8mg/kg、0.010~7mg/kg、0.010~6mg/kg、0.010~5mg/kg、0.010~4mg/kg、0.010~3mg/kg、0.010~2mg/kg、0.010~1mg/kg、0.1~10mg/kg、0.1~9mg/kg、0.1~8mg/kg、0.1~7mg/kg、0.1~6mg/kg、0.1~5mg/kg、0.1~4mg/kg、0.1~3mg/kg、0.1~2mg/kg、0.1~1mg/kg、0.5~10mg/kg、0.5~9mg/kg、0.5~8mg/kg、0.5~7mg/kg、0.5~6mg/kg、0.5~5mg/kg、0.5~4mg/kg、0.5~3mg/kg、0.5~2mg/kg、0.5~1mg/kg、1~10mg/kg、1~9mg/kg、1~8mg/kg、1~7mg/kg、1~6mg/kg、1~5mg/kg、1~4mg/kg、1~3mg/kgであり得、および体重に対して1~2mg/kgであり得る。
【0159】
様々な実施形態において、投与されるグルカゴン受容体アンタゴニスト抗体の全用量は、例えば、約1~1000μg/ml、約1~750μg/ml、約1~500μg/ml、約1~250μg/ml、約10~1000μg/ml、約10~750μg/ml、約10~500μg/ml、約10~250μg/ml、約20~1000μg/ml、約20~750μg/ml、約20~500μg/ml、約20~250μg/ml、約30~1000μg/ml、約30~750μg/ml、約30~500μg/ml、約30~250μg/mlの範囲内の血漿抗体濃度を達成するであろう。
【0160】
本開示のPI3K経路阻害剤の治療有効量または予防有効量についての例となる非限定的な投与範囲は、1日当たりレシピエントの体重に対して約0.05mg/kg~75mg/kg、0.05mg/kg~70mg/kg、0.05mg/kg~60mg/kg、0.05mg/kg~50mg/kg、0.05mg/kg~40mg/kg、0.05mg/kg~30mg/kg、0.05mg/kg~20mg/kg、0.05mg/kg~10mg/kg、0.1mg/kg~75mg/kg、0.1mg/kg~30mg/kg、0.1mg/kg~40mg/kg、0.1mg/kg~50mg/kg、0.1mg/kg~40mg/kg、0.1mg/kg~30mg/kg、0.1mg/kg~20mg/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、0.5mg/kg~75mg/kg、0.5mg/kg~70mg/kg、0.5mg/kg~60mg/kg、0.5mg/kg~50mg/kg、0.5mg/kg~40mg/kg、0.5mg/kg~30mg/kg、0.5mg/kg~20mg/kg、0.5mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~75mg/kg、1mg/kg~70mg/kg、1mg/kg~60mg/kg、1mg/kg~50mg/kg、1mg/kg~40mg/kg、1mg/kg~30mg/kg、1mg/kg~20mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、5mg/kg~75mg/kg、5mg/kg~70mg/kg、5mg/kg~60mg/kg、5mg/kg~50mg/kg、5mg/kg~40mg/kg、5mg/kg~30mg/kg、5mg/kg~20mg/kg、および5mg/kg~10mg/kgであり得る。様々な実施形態において、投与範囲は、約0.1~25mg/kg/日である。様々な実施形態において、投与範囲は、約0.5~10mg/kg/日である。様々な実施形態において、70kgの者への投与の投与範囲は、約35~700mg/日である。
【0161】
様々な実施形態において、本開示の医薬組成物は、1:100~1:1の範囲内のPI3K経路阻害剤:GCGRアンタゴニスト抗体の比を含む。様々な実施形態において、PI3K阻害剤:GCGRアンタゴニスト抗体の比は、1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:5、1:2、および1:1からなる群から選択される。様々な実施形態において、本開示の医薬組成物は、1:100~1:1の範囲内のGCGRアンタゴニスト抗体:PI3K経路阻害剤の比を含む。様々な実施形態において、GCGRアンタゴニスト抗体:PI3K阻害剤の比は、1:100、1:90、1:80、1:70、1:60、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:5、1:2、および1:1からなる群から選択される。
【0162】
様々な実施形態において、医薬組成物の単回投与または複数回投与は、患者の必要および耐性に応じた投与量および頻度に依存して投与される。投与量は、1回で投与可能であるが、治療結果が得られるまでまたは副作用により治療の中断が必要になるまで周期的に適用され得る。
【0163】
様々な実施形態において、組み合わせ療法は、単離グルカゴン受容体アンタゴニスト組成物およびPI3K経路阻害剤組成物を同一の医薬組成物または個別の医薬組成物の何れかで同時に投与することを含む。様々な実施形態において、単離グルカゴン受容体アンタゴニスト組成物およびPI3K経路阻害剤組成物は、逐次的に投与される。すなわち、単離グルカゴン受容体アンタゴニスト組成物は、PI3K経路阻害剤組成物の投与前または投与後の何れかで投与される。
【0164】
様々な実施形態において、単離グルカゴン受容体アンタゴニスト組成物およびPI3K経路阻害剤組成物の投与は、並行的である。すなわち、単離グルカゴン受容体アンタゴニスト組成物の投与期間およびPI3K経路阻害剤組成物の投与期間は、互いに重なる。
【0165】
様々な実施形態において、単離グルカゴン受容体アンタゴニスト組成物およびPI3K経路阻害剤組成物の投与は、非並行的である。例えば、様々な実施形態において、単離グルカゴン受容体アンタゴニスト組成物の投与は、PI3K経路阻害剤組成物が投与される前に終了している。様々な実施形態において、PI3K経路阻害剤組成物の投与は、単離グルカゴン受容体アンタゴニスト組成物が投与される前に終了している。
【0166】
本発明の医薬組成物の毒性および治療指数は、例えばLD50(集団の50%にとって致死的である用量)およびED50(集団の50%において治療上有効である用量)のための細胞培養物または実験動物における標準的薬学的手法によって決定され得る。有毒な用量と治療的に有効な用量との間の用量の比率が治療指数であり、それは比率LD50/ED50として表され得る。大きい治療指数を示す組成物が一般的に好ましい。
【0167】
本発明の方法で第3の薬剤として使用し得る適切な医薬剤としては、抗肥満剤(食欲抑制剤を含む)およびグルコース低下剤、例えば抗糖尿病剤、抗高血糖剤、脂質低下剤、および抗高血圧剤が挙げられる。
【0168】
適切な抗肥満剤(その幾つかは抗糖尿病剤としても作用し得る)としては、11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ-1(1型11β-HSD)阻害剤、ステアロイル-CoAデサチュラーゼ-1(SCD-1)阻害剤、MCR-4アゴニスト、コレシストキニン-A(CCK-A)アゴニスト、モノアミン再取込み阻害剤(例えば、シブトラミン)、交感神経模倣剤、β3アドレナリン作動性アゴニスト、ドーパミンアゴニスト(例えば、ブロモクリプチン)、メラニン細胞刺激ホルモン類似体、5HT2cアゴニスト、メラニン凝集ホルモンアンタゴニスト、レプチン(OBタンパク質)、レプチン類似体、レプチンアゴニスト、ガラニンアンタゴニスト、リパーゼ阻害剤(例えば、テトラヒドロリプスタチンすなわちオルリスタット)、食欲抑制剤(例えば、ボンベシンアゴニスト)、ニューロペプチド-Yアンタゴニスト(例えば、NPY Y5アンタゴニスト、例えばベルネペリット)、PYY3-36(その類似体を含む)、BRS3モジュレーター、オピオド受容体サブタイプの混合アンタゴニスト、甲状腺ホルモン模倣剤、デヒドロエピアンドロステロンまたはその類似体、グルココルチコイドアゴニストまたはアンタゴニスト、オレキシンアンタゴニスト、グルカゴン様ペプチド-1アゴニスト、毛様体神経栄養因子(例えば、リジェネロン・ファーマシューティカルズ社、タリータウン、ニューヨーク州およびプロクター・アンド・ギャンブル社、シンシナティ、オハイオ州から入手可能なAXOKINE(商標))、ヒトアグーチ関連タンパク質(AGRP)阻害剤、ヒスタミン3アンタゴニストまたはインバースアゴニスト、ニューロメジンUアゴニスト、MTP/ApoB阻害剤(例えば、腸選択的MTP阻害剤、例えばジルロタピド、JTT130、ユシスタピド、SLx4090)、オピオイドアンタゴニスト、ミューオピオイド受容体モジュレーター(限定されるものではないが、GSK1521498を含む)、MetAp2阻害剤(限定されるものではないが、ZGN-433を含む)、2つ以上のグルカゴンで混合モジュレート活性を有する薬剤、GIPおよびGLP1受容体、例えばMAR-701またはZP2929、ノルエピネフリントランスポーター阻害剤、カンナビノイド-1-受容体アンタゴニスト/インバースアゴニスト、グレリンアゴニスト/アンタゴニスト、オキシントモジュリンおよび類似体、モノアミン取込み阻害剤(限定されるものではないが、テソフェンシンを含む)、オレキシンアンタゴニスト、組み合わせ剤(例えば、ブプロピオン+ゾニサミド、プラムリンチド+メトレレプチン、ブプロピオン+ナルトレキソン、フェンテルミン+トピラマート)などが挙げられる。
【0169】
様々な実施形態において、抗肥満剤は、腸選択的MTP阻害剤(例えば、ジルロタピド、ミトラタピド、およびインプリタピド、R56918(CAS番号403987)およびCAS番号913541-47-6)、CCKaアゴニスト(例えば、N-ベンジル-2-[4-(1H-インドール-3-イルメチル)-5-オキソ-1-フェニル-4,5-ジヒドロ-2,3,6,10b-テトラアザ-ベンゾ[e]アズレン-6-イル]-N-イソプロピル-アセトアミド(PCT国際公開第2005/116034号パンフレットまたは米国特許出願公開第2005-0267100A1号明細書に記載)、5HT2cアゴニスト(例えば、ロルカセリン)、MCR4アゴニスト(例えば、米国特許第6,818,658号明細書に記載の化合物)、リパーゼ阻害剤(例えば、セチリスタット)、PYY3-36(本明細書において使用される場合、「PYY3-36」は、類似体、例えばペグ化PYY3-36、例えば米国特許出願公開第2006/0178501号明細書に記載のものを含む)、オピオイドアンタゴニスト(例えば、ナルトレキソン)、オレオイルエストロン(CAS No.180003-17-2)、オビネピチド(TM30338)、プラムリンチド(SYMLIN(商標))、テソフェンシン(NS2330)、レプチン、ブロモクリプチン、オルリスタット、AOD-9604(CAS No.221231-10-3)、およびシブトラミンから選択される。
【0170】
好適なグルコース低下剤としては、抗糖尿病剤、抗高血糖剤、脂質低下剤、および抗高血圧剤が挙げられる。様々な実施形態において、グルコース低下剤は、ビグアニド、スルホニル尿素、メグリチニド、チアゾリジンジオン(TZD)、α-グルコシダーゼ阻害剤、DPP-4阻害剤、胆汁酸捕捉剤、ドーパミン-2アゴニスト、SGLT2阻害剤、GLP-1Rアゴニスト、GLP-1アゴニスト(例えば、エキセナチド(商品名Byetta(登録商標)(アミリン/Astrazeneca))、リラグルチド(商品名Victoza(登録商標)、Novo Nordisk A/S)、リキシセナチド(商品名Lyxumia(登録商標)、Sanofi)、アルビグルチド(商品名Tanzeum(登録商標)、GlaxoSmithKline)、デュラグルチド(商品名Trulicity(登録商標)、Eli Lilly))、アミリン模倣剤、およびインスリンから選択される。
【0171】
様々な実施形態において、本明細書に記載の方法は、増殖障害の治療または予防を目的とする他の従来の抗癌治療アプローチ、例えば、限定されるものではないが、免疫療法、化学療法、低分子キナーゼ阻害剤標的療法、手術、放射線療法、および幹細胞移植をはじめとするアプローチと組み合わせて使用され得る。例えば、そのような方法は、予防的な癌の防止において、手術後の癌の再発および転移の防止において、ならびに他の従来の癌療法の補助剤として使用し得る。従来の癌療法(例えば、化学療法、放射線療法、光線療法、免疫療法、および手術)の有効性は、本明細書に記載の組み合わせ法を用いて向上され得ることが本開示から分かる。
【0172】
広範にわたる一連の従来の化合物は、抗新生物活性を有することが示されている。これらの化合物は、固形腫瘍を収縮させたり、転移およびさらなる成長を予防したり、または白血病もしくは骨髄悪性病変で悪性T細胞数を減少させたりするために医薬剤として化学療法に使用されてきた。化学療法は、様々なタイプの悪性病変の治療に有効になっているが、多くの抗新生物化合物は、望ましくない副作用を誘発する。2つ以上の異なる治療を組み合わせた場合、治療は、相乗的に機能して各治療の投与量の低減を可能にし得ることから、高投与量の各化合物により引き起こされる有害な副作用が低減されることが示されている。他の場合、治療に対して難治性の悪性病変は、2つ以上の異なる治療の組み合わせ療法に反応し得る。
【0173】
本明細書に開示されるグルカゴン受容体アンタゴニスト+PI3K経路阻害剤組成物を別の従来の抗新生物剤と組み合わせて並行的または逐次的の何れかで投与した場合、グルカゴン受容体アンタゴニスト+PI3K経路阻害剤組成物は、抗新生物剤の治療効果を向上させ得るかまたはそのような抗新生物剤に対する細胞耐性を克服し得る。これにより抗新生物剤の投与量を減少させることが可能になるため、望ましくない副作用が低減するかまたは耐性T細胞における抗新生物剤の有効性が回復する。様々な実施形態において、化学療法剤などの第2の抗癌剤が患者に投与される。例示的化学療法剤のリストには、限定されるものではないが、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、窒素マスタード、クロラムブシル、メルファラン、シクロホスファミド、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、ベンダムスチン、シタラビン(CA)、5-フルオロウラシル(5-FU)、フロクスウリジン(5-FUdR)、メトトレキセート(MTX)、コルヒチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、テニポシド、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ペントスタチン、クラドリビン、シタラビン、ゲムシタビン、プララトレキサート、マイトキサントロン、ジエチルスチルベストロール(DES)、フルラダビン、イホスファミド、ヒドロキシ尿素タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドキセタキセル)および/またはアンスラサイクリン抗生物質、ならびに薬剤の組み合わせ、例えば、限定されるものではないが、DA-EPOCH、CHOP、CVP、またはFOLFOXが含まれる。様々な実施形態において、そのような化学療法剤の投与量としては、限定されるものではないが、約10mg/m2、20mg/m2、30mg/m2、40mg/m2、50mg/m2、60mg/m2、75mg/m2、80mg/m2、90mg/m2、100mg/m2、120mg/m2、150mg/m2、175mg/m2、200mg/m2、210mg/m2、220mg/m2、230mg/m2、240mg/m2、250mg/m2、260mg/m2、および300mg/m2の何れかが挙げられる。
【0174】
様々な実施形態において、本開示の組み合わせ治療方法は、限定されるものではないが、特定の腫瘍抗原に対する枯渇抗体を用いた治療、抗体-薬剤コンジュゲートを用いた治療、CTLA-4、PD-1、OX-40、CD137、GITR、LAG3、TIM-3、VISTAなどの共刺激分子または共阻害分子(免疫チェックポイント)に対するアゴニスト性抗体、アンタゴニスト性抗体、または遮断抗体を用いた治療、ブリナツモマブなどの二重特異性T細胞エンゲージ抗体(BiTE(登録商標))を用いた治療、IL-2、IL-12、IL-15、IL-21、GM-CSF、IFN-α、IFN-β、IFN-γなどの生物学的反応修飾剤の投与を含む治療、シプリューセル-Tなどの治療ワクチンを用いた治療、樹状細胞ワクチンまたは腫瘍抗原ペプチドワクチンを用いた治療、キメラ抗原受容体(CAR)-T細胞を用いた治療、CAR-NK細胞を用いた治療、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を用いた治療、養子導入抗腫瘍T細胞(生体外拡大および/またはTCR遺伝子導入)を用いた治療、TALL-104細胞を用いた治療、ならびにToll様受容体(TLR)アゴニストCpGおよびイミキモドなどの免疫刺激剤を用いた治療をはじめとする治療有効量の免疫療法を対象に施すことをさらに含み得る。ただし、組み合わせ療法は、腫瘍細胞のエフェクター細胞死滅の増加をもたらす。すなわち、共投与した場合、グルカゴン受容体アンタゴニスト、PI3K阻害剤、および免疫療法間に相乗作用が存在する。
【0175】
本発明を説明してきたが、限定ではなく例示を目的として以下の実施例を提供する。
【実施例】
【0176】
実施例1
グルカゴン受容体アンタゴニスト抗体を用いた前治療が、正常C57BL/6マウスにおいてPI3K/AKT経路阻害剤誘発高血糖を低減するかを決定するために試験を実施した。GCGRアンタゴニスト性モノクローナル抗体の前臨床検証をはじめとするT1DMおよびT2DMの薬理学的試験に一般に使用される免疫コンピテントC57BL/6マウス系統を試験に使用した(Yanら著、J Pharmacol Exp Ther誌、第329巻、第1号:102~111頁、2009年)。
【0177】
この実施例において、組み合わせ療法は、配列番号8に示される重鎖配列および配列番号9に示される軽鎖配列を含むキメラ抗GCGR抗体(「REMD2.59C」)による前治療ならびに表2に挙げられているPI3K経路阻害剤(シャンハイ・バイオケムパートナー社、上海、中国から入手)の投与を含んでいた。
【0178】
この試験における動物の取り扱い、ケア、および治療に関連する手法の全ては、国際実験動物ケア評価認証協会(Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care)(AAALAC)のガイダンスに準拠してファーマロン社の施設動物管理使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)により承認されたガイドラインに従って実施された。試験前7日間にわたりC57BL/6マウス(バイタル・リバー・ラボラトリー・アニマル・テクノロジー社)(雄、8~10週齢)を隔離した。動物の健康状態を獣医により評価して、完全な健康チェックを実施した。異常のある動物は、試験前に除外した。プロトコルにより特定された時間を除いて全試験期間にわたり照射殺菌乾燥顆粒食品を動物が自由に摂取できるようにした。
【0179】
試験品は、次のように、REMD2.59c(10mM酢酸Na pH5.2、5%ソルビトール、0.004%T-20)、BYL719(10%NMP(ALFA AESAR)/30%PEG300(ALDRICH)/20%HS15(SIGMA)/40%水)、(BKM120(10%NMP(ALFA AESAR)/90%PEG300(ALDRICH))、MK-2206(30%Captisol(CYDEX)を投与するように製剤された。
【0180】
PI3K/Akt経路阻害剤による高血糖の誘発に対するREMD2.59cの効果を決定する実験プロトコルは、
図1に例示される。体重に基づいて、コンピューター生成ランダム化手法を用いて表3に挙げられているそれぞれの治療グループにランダムにマウスを帰属した。1日目(-24h)、REMD2.59C抗体(7.0mg/kg、i.p.)または抗体媒体単独(ASN)の何れかを単回投与でマウスに投与した。2日目(0h)、REMD2.59cおよびASNで治療されたマウス(それぞれn=3)マウスは、表3に示されるようにBYL719(50mg/kg)、BKM120(50mg/kg)、MK2206(150mg/kg)を1回(p.o.)で摂取した。投与0.5時間前ならびに投与2時間後および4時間後の時点でAccu-Chek Performa System(Roche Diagnostics)を用いて尾静脈を介してマウスの給餌下血糖値を測定した。選択されたREMD2.59cの用量は、以前の観測に基づいて飽和している(Yanら著、J Pharmacol Exp Ther誌、第329巻、第1号:102~111頁、2009年)。BYL-719、BKM120、およびMK2206の用量は、一般的には、前臨床試験で報告された最大量の50%超であった。
【0181】
REMD2.59c治療マウスまたは未治療マウスにおいてPI3K/Akt経路阻害に反応するグルコースレベルの統計解析をGraphPad Prism5.0ソフトウェアにより実施した。グループの平均、標準偏差を計算し、有意水準を5%またはP<0.05に設定して対応のないt検定比較試験を適用した。
【0182】
REMD2.59c前治療を用いておよび用いずにPI3K/Akt経路阻害剤の調査で得られたベースラインおよび治療のグルコースレベルの平均値/標準偏差は、各時間点に対して表3に挙げられている。データは、
図2A(BYL719)、
図2B(BKM120)、および
図2C(MK2206)にヒストグラムとしてプロットした。図中、黒色バーは、ASN前治療マウスを表し、且つ灰色バーは、REMD2.59c前治療マウスを表す。
図2A~2Cに示されるように、REMD2.59cによる前治療は、ベースライン循環グルコースを統計的に有意に33パーセント低減させた。
注:
*p<0.05、
**p<0.01、それぞれ媒体+化合物Xと比較した。BYL719 ASN対照および治療の結果は、異なる日に実施した実験で得た。
【0183】
ASN抗体媒体単独で前治療してBYL719、BKM120、およびMK-2206を投与した2時間後、重症糖尿病の範囲内の高血糖(投与0.5時間前と比較して約2倍に上昇)が一貫して観測された。BYL719、BKM120、およびMK-2206による2時間での高血糖の誘発は、薬剤投与前にREMD2.59cを摂取した動物では完全に予防された。グルコース値は、未治療ASN対照マウスのベースライン未満に維持された。REMD2.59cで前治療されなかったマウスにおける4時間でのグルコースレベルの低下は、循環からのPI3K/AKTの排除に起因する標的範囲の減少が原因である。
【0184】
実施例1で得られた結果は、肝臓におけるインスリン受容体を介するPI3K/AKTシグナル伝達の活性化がマウスおよび他の動物の給餌時のグルコース恒常性を制御することを示す多くの一連の既報の証拠と一致している。特定のPI3KおよびAKT阻害剤(BLY719、BKM120、MK2206)で治療された動物においてグルカゴン受容体阻害が正常血糖値を効果的に維持し得るという観測は、以前には報告されていない。
【0185】
実施例2
実施例1に記載の実験は、BLY719、BKM120、およびAKTに対する標的選択性および他の性質が異なるPI3K/AKT経路阻害剤も用いて実施された。これらの追加の阻害剤は、GDC-0980、GSK690693、GDC-0068、およびOSI-906を含んでいた(表2)。これらの試験品は、次のように、すなわちGDC-0980(0.5%メチルセルロース(SIGMA)、0.2%Tween-80(SOLARBIO)、GSK6900693(5%マンニトール(SIGMA)、GDC-0068(0.5%メチルセルロース(SIGMA)、0.2%Tween-80(SOLARBIO)、OSI-906(25mM酒石酸(Tianjing Guangfu Technology Development社)となるように製剤された。REMD2.59c治療マウスおよびASN治療マウス(n=3)マウスは、表3に示されるように、飽和用量またはほぼ飽和用量(p.o.)のGDC-0980(10mg/kg)、GSK6900693(30mg/kg)、GDC-0068(10mg/kg)、またはOSI-906(100mg/kg)を1回で摂取した。
【0186】
結果は、
図3にヒストグラムとしてプロットされる。GDC-0980、GSK690693、GDC-0068、およびOSI-906により誘発された高血糖に対するREMD2.59c前治療の効果は、
図3にヒストグラム形式で表される(A.OSI-906、B.GDC-0068、C.GDC-0980、D.GSK690693)。図中、黒色バーは、ASN前治療マウスを表し、且つ灰色バーは、REMD2.59c前治療マウスを表す。循環グルコースは、GDC-0980、GSK690693、GDC-0068、およびOSI-906を摂取したマウスにおいて2時間の治療後に3.0~3.2倍に増加した(表3)。GDC-0980、GSK690693、GDC-0068、およびOSI-906を用いて薬剤により誘発された高血糖作用は、REMD2.59c前治療により2時間で部分的に低減された。しかしながら、高血糖は、これらのPI3K/AKT阻害剤の投与4時間後に存続しており、REMD2.59は、一般的には保護的でなかった。
【0187】
実施例1および2で特徴付けられた阻害剤のキナーゼ選択性に関する現在の情報は、表2に挙げられる。mTOR交差反応性が低いかまたは不在であることから、BYL719およびBKM120とGDC-0980とのキナーゼ特異性が識別される。MK2206は、2つの点でGSK690693およびGDC-0068と異なる。MK2206は、アロステリック汎AKT阻害剤である一方、GSK690693およびGDC-0068は、酵素活性部位を直接標的とするATP競合阻害剤である。GSK690693およびGDC-0068は、MK2206よりもAKTに対して選択性が低い。PKA、PKC、PKG、PRKGなどをはじめとする、GSK690693およびGDC-0068により阻害されるオフターゲットキナーゼは、代謝および細胞生物学の様々な側面を調節することで知られている。
【0188】
こうした情報に基づいて、GCGR阻害がPI3K薬剤誘発高血糖を制御する能力は、高いPI3K特異性とmTORキナーゼ交差反応性の欠如とに依存すると思われる。AKT阻害剤による薬剤誘発高血糖のGCGR遮断による有効な正常化は、キナーゼ阻害のATP競合機序ではなく、高いAKT特異性およびアロステリック機序に関連するように思われる。
【0189】
REMD2.59c前治療は、INSR、IGF1R、およびIRRに対して同じように効力のあるATP競合阻害剤のOSI-906により誘発された高血糖を制御することができなかった。これとは対照的に、抗体アンタゴニスト(REGN1193)によるGCGR阻害は、ペプチドINSRアンタゴニスト(S961)を用いて重篤なインスリン抵抗性マウスにしたC57BL/6マウスにおいて血糖を正常化し得ることが最近示された(Okamotoら著、PNAS誌、第114巻、第10号:2753~2758頁、2017年)。このペプチドアンタゴニストは、受容体細胞外ドメインに結合するインスリンを遮断する。AKT阻害剤を用いて分かるように、IGF1RおよびIRRは、肝細胞で発現されないため、ATP競合INSRキナーゼ阻害剤機序はGCGR阻害による高血糖の是正と両立できないようにも思われる。
【0190】
実施例3
BALB/c無胸腺ヌードマウスは、この免疫不全マウスがヒト腫瘍細胞系異種移植片を拒絶しないため、PI3K/Akt経路阻害剤の有効性を特徴付けるために最も多く使用される。腫瘍担持BALB/c無胸腺ヌードマウスが、ヒトおよびC57BL/6マウスにおいて観測されるPI3K/AKT経路阻害に対する高血糖反応および高インスリン反応を再現するかを決定するために実験を実施した。
【0191】
BALB/c無胸腺ヌードマウス(Anikeeper、北京)にDMEM:Matrigel(1:1)中の5×106ヒトMiaPaCa2膵癌細胞を皮下接種した。29日後、体重(21.8±0.7g)および腫瘍体積(334±27)に従ってマウスをランダム化した。9匹の動物を24時間にわたりREMD2.59cまたはASN媒体で前治療した。次いで、実施例2に示されるように製剤されたMK2206(150mg/kg、p.o.)を動物に投与した。投与0.5時間前ならびに投与2時間後および4時間後、Accu-Chek Performa System(Roche Diagnostics)を用いて尾切込みにより給餌下血糖を決定した。給餌下血液試料を眼窩採血により取得し、血清試料を調製して-80℃で貯蔵した。インスリン。超高感度マウスインスリンELISAキット(Crystal Chem、カタログ番号:90080)を用いて血清インスリンレベルを測定した。各時間点に対して個別マウスグループ(n=3)の試料採取を省くことにより、グルコースおよびインスリンのレベルに及ぼす動物ストレスの影響を最小限に抑えた。
【0192】
MK2206阻害によるAKT阻害に反応するグルコースおよびインスリンのレベルの統計解析をGraphPad Prism5.0ソフトウェアにより実施された。グループの平均、標準偏差を計算し、有意水準を5%またはP<0.05に設定して対応のないt検定比較試験を適用した。
【0193】
REMD2.59c前治療を受けて/受けずにMK2206で治療されたBALB/cヌード腫瘍担持マウスで得られたベースラインおよび治療のグルコースおよびインスリンのレベルの平均/標準偏差は、表4および5に挙げられている。結果は、
図4にヒストグラムとしてプロットした(A.グルコースレベル、B インスリンレベル)。図中、ASN治療マウスは、黒色バーにより表され、且つ灰色バーは、REMD2.59c治療マウスを表す。実施例1においてC57BL/6マウスで得られた結果と異なり、グルコースレベルは、BALB/cヌードマウスではMK2206による治療の2時間後に増加しなかった。しかしながら、2時間にわたるMK2206によるBALB/cヌードマウスの治療は、血清インスリンが統計的に有意に65.5倍に増加したことに関連付けられた。結果は、BYL719で治療された腫瘍担持無胸腺ヌードマウスで以前に報告されたデータと一致している(Fritschら著、Mol Cancer Ther誌、第13巻、第5号1117~29頁、2014年)。これらの著者らは、約20μモル/Lの薬剤濃度の「高血糖閾値」を超える高いBYL719用量のときのみ、長期にわたる繰り返し投与により高インスリン血症を伴う高血糖が現れると報告した。
【0194】
MiaPaCa2腫瘍は、MK2206治療に反応してBALB/cヌードマウスにおいてグルコース上昇を抑制した可能性がある。この可能性を調べるために、ナイーブBALB/cヌードマウスにおいてMK2206投与プロトコルを繰り返した。ナイーブマウスを用いて得られ挙げられたグルコースレベルは、対照マウスおよびMK2206治療腫瘍担持マウスで識別不能であった。こうした結果から、MiaPaCa2腫瘍グルコース取込みまたは別の腫瘍関連機序により薬剤誘発高血糖がマスキングされる可能性が除外された。
【0195】
MiaPaCa2腫瘍担持無胸腺BALB/cヌードの前治療は、グルコースレベルを1/1.6に低減した。給餌下グルコースの低減は、REMD2.59cによる24時間の治療後にC57BL/67マウスで得られた効果に類似していた。こうした結果から、BALB/c無胸腺ヌードマウスおよびC57BL/6マウスを識別する複遺伝子性遺伝子型は、ランゲルハンス島-肝臓内分泌軸に影響を及ぼさないことが提案される。C57BL/6マウスおよびBALB/c無胸腺ヌードマウスの遺伝子型は、複数の遺伝子座で異なる(Belizario,JE著、The Open Immunology Journal誌、第2巻、第1号、2009年)。無胸腺ヌード免疫不全表現型は、Foxn1の自然突然変異に関連する。
【0196】
MK2206治療による高インスリン血の誘発は、REMD2.59cにより前治療されたBALB/c無胸腺ヌード腫瘍担持マウスにおいて少なくとも92%低減された。REMD2.59c前治療マウスにおける2時間後のインスリンレベルは、0.5時間前のベースラインと比較してわずか3倍に上昇したにすぎなかった。まとめると、INSR経路阻害に伴う高血糖および高インスリン血の両方は、AKT遮断と組み合わせたREMD2.59c前治療により逆転されることが、MK2206を用いた実施例1および実施例3に記載の結果から示唆される。
【0197】
S961は、INSRの細胞外ドメインに結合して受容体シグナル伝達を阻害するペプチドアンタゴニストである。Okamotoら(2017)は、アンタゴニスト抗体(REGN1193)によるGCGR阻害がC57BL/6マウスにおいてS961によるインスリン受容体遮断により誘発される高血糖を大幅に是正し得ることを最近報告した(Okamotoら著、PNAS誌、第114巻、第10号:2753~2758頁、2017年)。しかしながら、REGN1193治療は、このモデルにおいて高インスリン血を是正しなかった。実際には、インスリンレベルが増加した。したがって、INSR阻害ではなく、PI3K阻害(例えば、BKM719およびBKM120を用いる)またはAKT阻害(例えば、MK220Kを用いる)は、癌療法における高血糖および高インスリン血ならびにPI3K/AKT経路阻害の他の適応症の是正に不可欠であり得る。
注:
*腫瘍を有するBALB/cマウスは、約0.3mm
3のMiaPaCa2腫瘍異種移植片を有していた。ナイーブマウスは、腫瘍フリーであった。
【0198】
実施例4
本発明者らは、REMD2.59Cとの共投与がマウスにおいてPI3K阻害剤標的範囲の増加をどの程度可能にするかを決定すること、および得られた何れのPI3K阻害剤範囲の増加についてもマウスにおいてどの程度良好に許容されるかを決定することを望む。この実施例では、組み合わせ療法は、配列番号8に示される重鎖配列および配列番号9に示される軽鎖配列を含むキメラ抗GCGR抗体(「REMD2.59C」)の投与ならびにPI3K阻害剤BYL719およびBKM120ならびにAKT阻害剤MK2206の投与を含む。
【0199】
耐容性試験は、次のように実施される。すなわち、C57BL/6マウス(バイタル・リバー・ラボラトリー・アニマル・テクノロジー社)(雄、8~10週齢)またはCB17scidマウス(バイタル・リバー・ラボラトリー・アニマル・テクノロジー社)(雌、8~10週齢)を離乳後に普通食で飼育し、体重(典型的には20~22gm)により6グループ(n=12匹の動物/グループ)にランダム化する。マウスの3つのグループ(グループ1、2、および3)にREMD2.59C抗体(7.0mg/kg、s.c.、1、4、7、および10日目)を投与し、且つ3つのグループ(グループ4、5、および6)にIgG1対照抗体(7.0mg/kg、s.c.、1、4、7、および10日目)を投与する。2日目にBYL719、BKM120、またはMK2206による各グループの治療を次のように開始する。グループ1および4(BYL719、BKM120 50mg/kgまたはMK2206 150mg/kb)、グループ2および5(PI3K/AKT阻害剤用量を2倍にした)、グループ3および6(PI3K/AKT阻害剤用量を3倍にした)。グループ7は、IgG1対照抗体を単独で摂取する。グループ8は、REMD2.59cを単独で摂取する。
【0200】
当日、投与前の一定した時間に体重を測定する。試験全体を通じて全ての動物の体重を毎日測定する。次式:BW変化(%)=BWDayX/BWDay0×100を用いて、%で表される体重変化を計算する。式中、BWDayXは、所与の日のBWであり、且つBWDay0は、0日目(BYL719治療の開始)のBWである。5%を超える体重減少は、BYL719およびBKM120の以前の特徴付けに従って最大耐容用量(MTD)を決定する安全性閾値として帰属される(Fritschら著、Mol Cancer Ther誌、第13巻、第5号:1117~29頁、2014年)。健常および病理学的な体重減少を識別するためにマウスの腓腹筋および副睾丸脂肪の重量を決定する。剖検は、代謝活性器官(肝臓および腎臓)の重量測定ならびに何れかの全体的病理学的所見を含む。
【0201】
標的範囲をさらに評価するための生存中の薬力学的マーカーとしては、血糖、血清インスリン、およびグルカゴンが挙げられる。各グループに対して、繰り返し投与により引き起こされる動物ストレス効果を最小限に抑えるサンプル採取プロトコルを利用する(n=4)。給餌下血糖は、Accu-Chek Performa System(Roche Diagnostics)を用いて尾静脈を介して測定される尾静脈ニックにより測定される。最大および最小のPI3KまたはAKT標的範囲を捕えるために、10日間にわたり投与2時間前および投与2時間後に交互に血糖採取を行った。インスリンおよびグルカゴンのレベルに対するPI3KまたはAKT阻害の最大効果を決定するために、眼窩採血により血液試料を採取する(1、4、および10日目に各グループに対してn=4で(投与2時間後)。血清試料を調製して-80℃で貯蔵する。インスリン。超高感度マウスインスリンELISAキット(Crystal Chem、カタログ番号:90080)を用いて血清インスリンを測定する。
【0202】
より広範なマーカー分析のために、10日目の投与2時間後、4時間後、および8時間後に各グループから最終の血液および肝組織を採取する(各時間点でn=4)。抗凝固剤としてK2EDTAを含有するチューブに最終心臓穿刺により予定試料採取時間で各動物から血液試料(約800μL)を採取し、1500~2000gで遠心分離して血漿を単離する。血漿は、-80℃で貯蔵される。BYL719、BKM120、およびMK2206の血漿濃度は、標準的LC/MS/MS方法により決定される。REMD2.59c濃度は、ELISAにより決定される。グルコース、アミノ酸、および異化産物(Orn、Lys、Met、Thr、Gly、アミノマロン酸、Asn、His、Cys、2-アミノアジピン酸、Gin、Ser、Pro、シトルリン、N-メチル-Ala、Ala、Tyr、Asp、Glu、Leu、ホモセリン、Metスルホキシド、b-Ala、Lie、Val、N-アセチル-Glu/Gln、クレアチン、Phe、Trp)、および他の代謝物は、LC/MS/MSプロファイリング(Metabolon社、ダーラム、ノースカロライナ州)により定量される。血漿ホルモンは、超高感度マウスインスリンELISAキット(Crystal Chem、カタログ番号:90080)およびマウスグルカゴンELISAキット(Crystal Chem、カタログ番号:81518)を用いて測定される。
【0203】
最終の肝試料(各グループに対して投与2時間後、4時間後、および8時間後にN=4をフラッシュ凍結し、-80℃で貯蔵する。組織をRIPA(10mMトリス-Cl(pH8.0)、1mM EDTA、1%トリトンX-100、0.1%ナトリウムデオキシコレート、0.1%SDS、140mM NaCl、cOmplete(商標)プロテアーゼ阻害剤カクテル(カタログ番号11697498001 Sigma-Aldrich)、ホスファターゼ阻害剤カクテル(カタログ番号P2850 SIGMA)中でホモジナイズし、4℃、10K RPMで遠心分離により清澄化する。全AKT、S473P-Akt、および糖新生酵素(ALT、AST PEPCK、pCREB)は、標準的方法を用いて定量IP/ウェスタンにより測定される。
【0204】
実施例1および2に示されるように、グルコース値は、REMD2.59c治療の不在下(グループ7)で肝PI3KまたはAKT標的阻害の指標として取得し得る。抗体単独を用いてグループ8で観測されるグルコースの減少は、GCCR遮断の程度のインジケーターである。治療グループの高血糖の是正は、式:G%=(G2/G1)×100を用いて計算される。式中、G2は、特定のPI3K阻害用量またはAKT阻害用量の組み合わせ薬剤治療に対するグルコースレベルであり、且つG1は、PI3KまたはAKT阻害剤単独で得られたグルコースレベルである。同じ計算が全ての薬力学的マーカーに適用される。
【0205】
標的暴露は、PKおよび他の分析ソフトウェア(GraphPad PRISM)を用いて循環薬力学的マーカーに個別に関連付けられる。各用量レベルでのPK/PD関係は、示された各時間点における対照に対するPI3KまたはAKT阻害剤濃度での肝S473P-Aktレベルの阻害%を比較することにより確立される。REMD2.59Cの共投与は、5%を超える体重減少も他の悪影響も増大させることなく投与期間にわたり標的範囲を約2~3増加させることが予想される。ヒト臨床試験においてREMD477ならびにBYL791、BKM120、およびMK2206の組み合わせ投与および個別投与を調整するために循環バイオマーカーを分析によりさらに検証するべきである。薬力学的マーカーの予測された挙動を表6に挙げる。
【0206】
実施例5
この実施例では、本発明者らは、ヒト腫瘍異種移植モデルの使用時にREMD2.59Cとの共投与が抗腫瘍有効性の増加をもたらす程度を評価することを望む。腫瘍成長阻害(TGI)の有効性に対するヘテロ接合性損失を有するPIK3CA突然変異およびPTEN突然変異の影響を決定する実験を設計する。PTENヌル状態は、BYL719に対する耐性を付与する一方、BKM120およびAKT阻害剤は、PTENヌル腫瘍異種移植片に有効であり得ることが報告されてきた(Fritschら著、Mol Cancer Ther誌、第13巻、第5号:1117~29頁、2014年)。この実施例では、組み合わせ療法は、配列番号8に示される重鎖配列および配列番号9に示される軽鎖配列を含むキメラ抗GCGR抗体(「REMD2.59C」)の投与ならびにPI3K阻害剤BYL719およびBKM120ならびにMK2206AKT阻害剤の投与を含む。
【0207】
前臨床研究に利用された少なくとも1000ヒト癌細胞系のグローバルなDNAコピー数、突然変異状態、RNA発現レベル、およびエピジェネティクスは、ゲノム技術を用いて完全に評価されてきた(Barretinaら著、Nature誌、第483巻、第7391号、603~7頁、2012年)。PIK3CA突然変異を有するかまたはPTENヌルであるヒト癌細胞系は、こうした公開データで容易に同定される(COSMIC、CCLE、broadinstitute.org)。細胞系ゲノムデータは、マウス異種移植片としての腫瘍原性、成長、および生存に及ぼすPIK3CA突然変異またはPTEN損失の影響を改変し得る突然変異遺伝子または改変遺伝子に関する情報を含む。GCGR遮断と組み合わされたPI3KまたはAKT阻害に対するPIK3CA突然変異およびPTEN損失の影響を特徴付けるヒト腫瘍異種移植片パネルは、表7に挙げられている。これらのヒト異種移植片は、COSMICまたはCCLEで同定された類似または同一の遺伝子型を有する癌細胞系で置き換えられ得る。PI3Ka選択的BYL719の有効性は、PIK3CA突然変異体および野生型の腫瘍に制限されることが、現在の前臨床的証拠から示唆される(Fritschら著、Mol Cancer Ther誌、第13巻、第5号:1117~29頁、2014年)。BKM120(汎特異的PI3K阻害剤)およびMK2206(PI3K/PTENの下流のAKTに作用する)は、PTENヌル癌に対してより効果があると予測される。
【0208】
TP53、KRAS、およびERBB2は、腫瘍成長および侵入に及ぼすPIK3CA突然変異およびPTEN損失の影響を増強することが知られている遺伝子変異である(Rodonら著、Nat Rev Clin Oncol誌、第10巻、第3号:143~53頁、2013年)。この実施例におけるTP53、KRAS、およびERBB2の突然変異または増幅異種移植モデルの選択は、患者選択の予測マーカーとしてのこれらの遺伝子の役割を明らかにするようにおよびPI3K/AKT阻害剤に対する耐性に影響を及ぼすように設計される。
注:PI3KCA突然変異は、ヘテロ接合である。他の突然変異は、すべてホモ接合である。
【0209】
マトリゲルを有する0.2mlの成長培地中の腫瘍細胞をCB17scidマウス(Charles River Labs)の右脇腹の皮下に接種する(0.5~1.5×107細胞)。各細胞系に対する最適細胞数、成長培地およびマトリゲルの比は以前に決定されている。平均体積が約200mm3に達するまで、腫瘍発生を撹乱しないようにする。コンピューター生成ランダム化手法を用いて、マウスを7つのグループ(n=12マウス/グループ)に帰属する。
【0210】
REMD2.59c、BYL719、BKM120、およびMK2206は、実施例1に記載されるように製剤され投与される。治療および対照グループは、MiaPaCa-2腫瘍を有するCB-17scidマウスにおいてBYL719と組み合わされたREMD477を評価する組み合わせ試験用として表8に挙げられている。同一の投与計画は他の異種移植モデルに適用される。REMD2.59cは、GCGRシグナル伝達を最大限に阻害し薬剤誘発高血糖および高インスリン血を効果的に低減する飽和用量(7.0mg/kg)で投与される(実施例1および実施例2)。PI3KおよびAKT阻害剤は3つの用量で試験される。最高用量は、マウス異種移植モデルで以前に報告された最大用量を50~100パーセント超える。BKM120の組み合わせ試験の用量範囲は、毎日50、100、150mg/kg(p.o.)である。MK2206の用量は、毎日150、300、450mg/kg(p.o.)である。
【0211】
腫瘍サイズの測定は、キャリパーを用いて週2回行われ、腫瘍体積(mm
3)は、式:TV=a×b
2/2を用いて推定される。式中、「a」および「b」は、それぞれ腫瘍の長直径および短直径である。腫瘍成長阻害(TGI)は、式:TGI=(1-T/C)×100%を用いて決定される。式中、「T」および「C」は、それぞれ治療グループおよび媒体対照グループの腫瘍の平均相対体積(%腫瘍成長)である。
【0212】
ルーチンモニタリングでは、腫瘍成長だけでなく、行動、例えば運動性、食品および水の消費(ケージサイドチェックのみ)、身体、眼/毛髪の艶消失、および何れの他の異常作用も全ての試験動物でモニターされる。何れの死亡および/または異常臨床徴候も記録される。体重変化は、実施例4に記載されるように週2回測定される。5%を超える体重減少は、BYL719およびBKM120の以前の特徴付けに従って最大耐容用量(MTD)を決定する安全性閾値として帰属される(Fritschら著、Mol Cancer Ther誌、第13巻、第5号1117~29頁、2014年)。
【0213】
対照および治療グループの腫瘍体積および相対BW変化およびグルコースレベルの平均値±SEMは、GraphPad PRIZMソフトウェアを用いて計算され、傾向を同定するために治療日に対してプロットされる。治療期間の終了時の各グループのTGI(%)およびBW(%)変化は、表に示される。反復測定ANOVAおよび続く事後シェッフェを用いて、BYL719、BKM120、もしくはMK2206単独またはREMD2.59Cとの組み合わせで治療されたマウスにおける腫瘍体積および体重の減少を比較する。
【0214】
PI3KまたはAKT阻害剤の投与2時間後および投与2時間前の給餌下血糖を週2回モニターし、ピークおよびトラフの阻害レベルによりグルコース効果を捕える。反復サンプリングにより誘発される動物ストレスを回避するプロトコルの使用時、各グルコース測定に対して各グループから3匹のマウスが選択される。実施例1および2に示されるように、グルコースレベルは、REMD2.59c治療の不在下における肝PI3KまたはAKT標的阻害の指標として取得し得る(グループ1)。抗体単独のグループ8で観測されるグルコースの低減は、GCCR遮断の程度のインジケーターである。治療グループにおける高血糖の是正は、式:G%=(G2/G1)×100を用いて計算される。式中、G2は、特定のPI3KまたはAKT阻害用量での併用薬物治療のグルコースレベルであり、G1は、PI3KまたはAKT阻害剤単独で得られるグルコースレベルである。
【0215】
最後用量のPI3KまたはAKT阻害剤を摂取したら、投与2時間後、4時間後、および8時間後に血液、肝臓、および腫瘍組織の採取のために、各グループから4匹のマウスを屠殺する。血清は、血液から調製され、実施例4に記載されるように、REMD2.59cおよびホルモンについてELISAアッセイ、代謝物および薬剤についてLC/MS/MS法を用いて、循環PI3KまたはAKt阻害剤、グルコース、インスリン、グルカゴン、アミノ酸誘導体代謝物を後に分析するために-80℃で貯蔵される。各肝臓または腫瘍組織はフラッシュ凍結され、次いでRPPA溶解緩衝液により微粉砕され分析されてS473P-Aktレベルが決定され、並行的にPI3KまたはAKTの濃度が標準的LC/MS/MS法により定量される。
【0216】
各用量レベルでのPK/PD関係は、示された各時間点における対照に対するNPI3KまたはAKT阻害剤濃度でのS473P-Aktレベルの阻害%を比較することにより確立される。標的範囲および腫瘍暴露は、PKおよび他の分析ソフトウェア(GraphPad PRISM)を用いて循環薬力学的マーカーに個別に関連付けられる。REMD2.59Cの共投与は、投与間隔の全継続時間にわたり標的範囲を約2~3倍に増加させると共に(BYL719の場合には30%から≧80%に)、PI3KA突然変異型、増幅型、および野生型の腫瘍において対応して抗腫瘍有効性を増加させることが期待される(Fritschら著、Mol Cancer Ther誌、第13巻、第5号:1117~29頁、2014年)。PI3KおよびAKT阻害剤のED50は、PK(Cmax/AUC)およびTGIの分析から導出される。ヒトにおいて効果に対してPI3KまたはAKT阻害薬剤の用量を分かるようにする循環バイオマーカーを分析によりさらに検証するべきである。
【0217】
実施例6
この実施例では、本発明者らは、腫瘍異種移植モデル(野生型PIK3A突然変異体およびPTENヌル)において、肝臓および腫瘍AKT阻害(REMD2.59投与を用いておよび用いずに)および血液および組織バイオマーカー挙動の間の関係をさらに探究することを望む。この実施例では、組み合わせ療法は、配列番号8に示される重鎖配列および配列番号9に示される軽鎖配列を含むキメラ抗GCGR抗体(「REMD2.59C」)の単回用量の投与ならびにPI3K阻害剤BYL719、BKM120、およびMK2206の投与を含む。バイオマーカー測定は、PI3KおよびAKT阻害剤投与間隔に近い時間にわたり行われる。このタイプの生体内薬力学(PK/PD)における単回用量でのバイオマーカー関連性は、実施例4および実施例5に記載される反復長期投与に関連する生理学的変化および細胞変化による影響を受けない。
【0218】
CB-17scidマウスにおいてA375(野生型PIK3CAおよびPTEN)、MCF7(PIK3CA突然変異体)、およびNCI-1196(PTENヌル)腫瘍異種移植片を用いて生体内薬力学(PK/PD)試験を実施する。腫瘍は実施例5に記載されるように導入される。平均腫瘍サイズが約300mm3に達したとき、マウスは、例えば、A375腫瘍およびBYL719を用いて表9に記載されるように8つのグループにランダムに帰属され、投与される。REMD2.59c、BYL719、BKM120、およびMK2206は、実施例1に記載されるように製剤され投与される。マウスは、BYL719の投与の24時間前に対照IgG1またはREMD2.59cで前治療される。REMD2.59cは、GCGRシグナル伝達を最大限に阻害して薬剤誘発高血糖および高インスリン血を効果的に低減する飽和用量(7.0mg/kg)で投与される(実施例1および実施例2)。BYL719は3つの用量で試験される。最高用量は、マウス異種移植モデルで以前に報告された最大用量を50~100パーセント超える。同一の投与計画は他の異種移植モデルに適用される。BKM120の組み合わせ試験の用量範囲は、毎日50、100、150mg/kg(p.o.)である。MK2206の用量は、毎日150、300、450mg/kg(p.o.)である。
【0219】
血液、肝臓、および腫瘍組織の採取のために、投与1時間後、2時間後、4時間後、および8時間後、各グループから3匹の動物を屠殺する。抗凝固剤としてK2EDTAを含有するチューブに心臓穿刺により予定の試料時間で各動物から血液試料(約800μL)を採取し、1500~2000gで遠心分離して血漿を単離する。血漿は、-80℃で貯蔵される。BYL719、BKM120、およびMK2206の血漿濃度は、標準的LC/MS/MS法により決定される。REMD2.59c濃度は、抗イディオタイプ抗体を用いてELSIAにより決定される。グルコースレベルは、Accu-Chek Performa System(Roche Diagnostics)を用いて屠殺前に尾切込みにより決定される。血漿ホルモンは、超高感度マウスインスリンELISAキット(Crystal Chem、カタログ番号:90080)およびマウスグルカゴンELISAキット(Crystal Chem、カタログ番号:81518)を用いて測定される。
【0220】
最終の肝試料(各グループに対して投与2時間後、4時間後、および8時間後にN=4をフラッシュ凍結し、-80℃で貯蔵する。組織をRIPA(10mMトリス-Cl(pH8.0)、1mM EDTA、1%トリトンX-100、0.1%ナトリウムデオキシコレート、0.1%SDS、140mM NaCl、cOmplete(商標)プロテアーゼ阻害剤カクテル(カタログ番号11697498001 Sigma-Aldrich)、ホスファターゼ阻害剤カクテル(カタログ番号P2850 SIGMA)中でホモジナイズし、4℃、10K RPMで遠心分離により清澄化する。全AKT、S473P-Akt、(肝臓および腫瘍)、および肝酵素(ALT、AST PEPCK、pCREB)は、標準的方法を用いて定量IP/ウェスタンにより測定される。
【0221】
各グループに対して肝臓および腫瘍AKT状態(pAKT、tAKT、pAKT/tAKT)の平均値±SEMを計算し、ヒストグラムとしてプロットする。肝AKT、ALT、AST PEPCK、およびpCREB、血糖、血中インスリンおよびグルカゴン、REMD2.59c、BYL719、BKM120、およびMK2206血漿濃度に同じデータ処理が適用される。対照グループ、薬剤治療グループ、および未治療グループの間の統計的有意差は、スチューデントt検定で評価される。GraphPad PRIZMソフトウェアを用いてGCGRおよびAKT阻害および血液/組織バイオマーカーの間の相関を同定する。予想された結果は、耐容性試験の表5に挙げられるのと同じである。ヒト臨床試験においてREMD477ならびにBYL791、BKM120、およびMK2206の組み合わせ投与および個別投与を調整するために循環バイオマーカーの即時反応をさらに検証するべきである。
【0222】
実施例7
REMD477は、配列番号49に示される重鎖配列および配列番号50に示される軽鎖配列を有する完全ヒトモノクローナル抗体であり、ヒトGCGRに結合して受容体シグナル伝達により媒介されるグルカゴンの代謝作用を阻害する(Yanら著、J Pharmco Exp Ther誌、第329巻、第1号:102~111頁、2009年)。単回用量のREMD-477(70ミリグラム(mg)皮下)は、必要とされるインスリンの量を実質的に低減し、且つ1型糖尿病患者において低血糖(低血糖値)を促進することなくグルコースレベルを改善することが示されている。
【0223】
BLY719、BKM120、およびMK2206の安全性および有効性は、様々な悪性病変の癌患者の第I/II相臨床試験で広範に特徴付けられている(Nitulescaら著、International Journal of Oncology誌、第48巻、第3号:869~885頁、2016年。有効性は、最小限となっており、高血糖および高インスリン血は、一貫して観測されている(Borthakurら著、56th Annual Meeting of the American Society of Hematology(ASH)、2014年)。
【0224】
REMD477とBYL719、BKM120、またはMK2206とを組み合わせる潜在的有用性を確立する臨床試験は、2つの相で行われる。第1相では、組み合わせ投与の安全性が評価され、実施例4~6に記載の前臨床試験で同定される予測マーカーが検証される。第2相では、PIK3CAおよびPTENヌル突然変異を有するおよび有していない癌においてGCGRとPI3KまたはAKT経路阻害との組み合わせ有効性である。
【0225】
第1相:REMD477の単回用量レベル(70mg/週1回)は、ヒトにおいてグルコース正常化に対して飽和しているように見えるため、第I相で評価される。BYL719、BKM120、およびMK2206の投与は、臨床で報告されたMTDの1/2から始めてMTDの2倍まで2倍増加させる。第I相投与は、標準的3+3設計に従う[7]。REMD477 PKは、抗イディオタイプ抗体を用いて既に検証されたELISAを利用する。血漿BYL719、BKM120、およびMK220K PKは、既に記載されたLC/MS/MS法を用いて1日かけて(2、4、8、16h)決定される。血漿グルコースおよび候補アミノ酸および代謝物の薬力学的マーカーは、LC/MS/MS(Metabolon社、ダーラム、ノースカロライナ州)を用いて各PK試料でモニターされる。血漿インスリンおよびグルカゴンのレベルは、認証臨床アッセイで決定される。適切な統計解析は、実施例4の表5に挙げられているPKPD予測の妥当性ならびにREMD477がヒト癌患者において薬剤誘発高血糖および高インスリン血を是正する能力を決定する。
【0226】
第2相:第2相試験は2つのグループを比較する:アーム1は、腫瘍学的BYL719、BKM120、またはMK2206治療を受ける(標準用量で)。アーム2は、第1相のアウトカムに依存してより高用量でREMD477(70mg皮下/週1回)ならびにBYL719、BKM120、およびMK2206を摂取する。臨床仮説は、REMD477が用量制限高血糖をより良好に制御可能であり、結果として、より高い且つ潜在的により有効なPI3K/AKT経路阻害が耐容性であり得ることである。概念実証は、奏効率、無進行生存率、および全生存率がREMD477摂取患者においてより大きいことである。第2相試験は、血漿グルコース、インスリン、薬剤レベル、および第1相で検証された他の循環マーカーの週1回測定を含む。
【0227】
本願で開示および特許請求される物品および方法は全て、本開示に照らして、不要な実験を行うことなく、作製および実行することができる。本開示の物品および方法が好ましい実施形態の観点から記述されたが、本開示の精神および範囲から逸脱しない範囲で物品および方法に変形を適用してよいことは、当業者には明らかである。当業者に明らかな、そのような変形形態および均等物は全て、現存するものであれ後に開発されるものであれ、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神および範囲に包含されると見なされる。本明細書で言及された特許、特許出願、および刊行物は全て、本開示が属する技術分野における当業者の水準を示すものである。全ての特許、特許出願、および刊行物は、あたかも個々の刊行物が、その全体があらゆる目的で参照により援用されると明確且つ個々に示されるのとの同程度に、それらの全体があらゆる目的で参照により本明細書に援用される。本明細書に例示的に記載された開示は、本明細書に特には開示されていないいかなる要素が存在せずとも、好適に実施することができる。使用された用語および表現は、限定ではなく説明のための用語として使用されており、そのような用語および表現の使用に際して、示されそして説明された特徴またはその一部のいかなる均等物も排除する意図も無く、ただし、特許請求された本開示の範囲内で様々な変更形態が可能であると認識される。すなわち、本開示は好ましい実施形態および任意の特徴によって具体的に開示されたが、本明細書で開示された概念の変更および変形が当業者により行われてもよいこと、ならびに、そのような変更および変形が添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲内であると見なされることを理解されたい。
配列表
【0228】
添付されている配列表に挙げられているアミノ酸配列は米国特許法施行規則第1.822条において規定されるアミノ酸の標準的3文字コードを使用して示されている。
【0229】
配列番号1はヒトグルカゴン受容体(GCGR)分子のアミノ酸配列である(受託番号AAI04855)。
【0230】
配列番号2は完全ヒト抗GCGR抗体の重鎖可変領域をコードするアミノ酸配列である。配列番号3は完全ヒト抗GCGR抗体の軽鎖可変領域をコードするアミノ酸配列である。
【0231】
配列番号4は完全ヒト抗GCGR抗体の重鎖可変領域をコードするアミノ酸配列である。配列番号5は完全ヒト抗GCGR抗体の軽鎖可変領域をコードするアミノ酸配列である。
【0232】
配列番号6は完全ヒト抗GCGR抗体の重鎖可変領域をコードするアミノ酸配列である。配列番号7は完全ヒト抗GCGR抗体の軽鎖可変領域をコードするアミノ酸配列である。
【0233】
配列番号8はキメラ抗GCGR抗体の重鎖をコードするアミノ酸配列である。配列番号9はキメラ抗GCGR抗体の軽鎖をコードするアミノ酸配列である。
【0234】
配列番号10~27は様々な完全ヒト抗GCGR抗体の重鎖可変領域をコードするアミノ酸配列である。
【0235】
配列番号28~45は様々な完全ヒト抗GCGR抗体の軽鎖可変領域をコードするアミノ酸配列である。
【0236】
配列番号46はカッパ軽鎖定常領域をコードするアミノ配列である。配列番号47はラムダ軽鎖定常領域をコードするアミノ配列である。
【0237】
配列番号48はIgG2重鎖定常領域をコードするアミノ配列である。
【0238】
配列番号49はヒト抗GCGR抗体(REMD-477)の重鎖をコードするアミノ酸配列である。配列番号50はヒト抗GCGR抗体(REMD-477)の軽鎖をコードするアミノ酸配列である。
【0239】
配列表
配列番号1 ‐ ヒトグルカゴン受容体(GCGR)分子のアミノ酸配列
MPPCQPQRPLLLLLLLLACQPQVPSAQVMDFLFEKWKLYGDQCHHNLSLLPPPTELVCNRTFDKYSCWPDTPANTTANISCPWYLPWHHKVQHRFVFKRCGPDGQWVRGPRGQPWRDASQCQMDGEEIEVQKEVAKMYSSFQVMYTVGYSLSLGALLLALAILGGLSKLHCTRNAIHANLFASFVLKASSVLVIDGLLRTRYSQKIGDDLSVSTWLSDGAVAGCRVAAVFMQYGIVANYCWLLVEGLYLHNLLGLATLPERSFFSLYLGIGWGAPMLFVVPWAVVKCLFENVQCWTSNDNMGFWWILRFPVFLAILINFFIFVRIVQLLVAKLRARQMHHTDYKFRLAKSTLTLIPLLGVHEVVFAFVTDEHAQGTLRSAKLFFDLFLSSFQGLLVAVLYCFLNKEVQSELRRRWHRWRLGKVLWEERNTSNHRASSSPGHGPPSKELQFGRGGGSQDSSAETPLAGGLPRLAESPF
配列番号2 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVMWYDGSNKDYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNRLRAEDTAVYYCAREKDHYDILTGYNYYYGLDVWGQGTTVTVSS
配列番号3 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSVQPEDFVTYYCLQHNSNPLTFGGGTKVEIK
配列番号4 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVMWYDGSNKDYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREKDHYDILTGYNYYYGLDVWGQGTTVTVSS
配列番号5 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFVTYYCLQHNSNPLTFGGGTKVEIK
配列番号6 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVMWYDGSNKDYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNRLRAEDTAVYYCAREKDHYDILTGYNYYYGLDVWGQGTTVTVSS
配列番号7 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLESGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSVQPEDFVTYYCLQHNSNPLTFGGGTKVEIK
配列番号8 ‐ GCGRに結合するキメラ抗体の重鎖のアミノ酸配列
MEFGLSWVFLVALLRGVQCQVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVMWYDGSNKDYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNRLRAEDTAVYYCAREKDHYDILTGYNYYYGLDVWGQGTTVTVSSAKTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSETVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVDISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTQPREEQFNSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFPAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITDFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMDTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK
配列番号9 ‐ GCGRに結合するキメラ抗体の軽鎖のアミノ酸配列
MDMRVPAQLLGLLLLWFPGARCDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLESGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSVQPEDFVTYYCLQHNSNPLTFGGGTKVEIKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
配列番号10 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSNYGMHWVRQAPGKGLEWVAVILSDGRNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDDYEILTGYGYYGMDVWGQGTTVTVSS
配列番号11 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVILNDGRNKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDDYEILTGYGYYGMDVWGQGTTVTVSS
配列番号12 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLQQSGPGLVKPSQTLSLTCAISGDSVSSNGAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYYDYAGSVKSRININPDTSKNQFSLQVNSVTPEDTAVYYCTRDRSSGWNEGYYYYGMDVWGQGTTVTVSS
配列番号13 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYDIHWVRQAPGKGLEWVAVLSSDGNNKYCADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRTEDTAVYYCAREEVYYDILTGYYDYYGMDVWGQGTTVTVSS
配列番号14 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISTYFWTWIRQFPGKGLEWIGYIFYSGSTNYNPSLKSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCAREGYYDILTGEDYSYGMDVWGQGTTVTVSS
配列番号15 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLQQSGPGLVKPSQILSLTCAISGDRVSSNGAAWNWIRQSPSRGLEWLGRTYYRSKWYYDYAGSVKSRININPDTSKNQFSLQVNSVTPEDTAVYYCARDRSSGWNEGYYYYGMDVWGQGTTVTVSS
配列番号16 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLQESGPGLVKPSETLSLTCTVSGGSISTYFWTWIRQFPGEGLEWIGYIFYSGNTNYNPSLTSRVTISVDTSKNQFSLKLSSVTAADTAVYYCAREGYYDILTGEDYSYGIDVWGQGTTVTVSS
配列番号17 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFIFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVISNDGSNKYYADFVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREDYDILTGNGVYGMDVWGQGTTVTVSS
配列番号18 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYTMNWVRQAPGKGLEWVSYISGSSSLIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLHMNSLRDEDTAVYYCARARYNWNDYYGMDVWGQGTTVTVSS
配列番号19 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFAFSSYGIHWVRQAPGKGLEWVAGIWYDGSNKYYADSVKGRFTVSRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARLFDAFDIWGQGTMVTVSS
配列番号20 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFIFSSYTMNWVRQAPGKGLEWVSYISSSSSLIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRDEDTAVYYCARSDYYGSGSYYKGNYYGMDVWGQGTTVTVSS
配列番号21 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVTIIWSDGINKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLNLQMNSLRAEDTAVYYCARERGLYDILTGYYDYYGIDVWGQGTTVTVSS
配列番号22 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVTIIWSDGINKYYADSVKGRFTISRDNSKNTLNLQMNSLRAEDTAVYYCARERGLYDILTGYYDYYGIDVWGQGTTVTVSS
配列番号23 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
EVQLVESGGGLVKPGGSLRLSCAASGITFRSYSMNWVRQAPGKGLEWVSAISSSSSYIYYADSVKGRFTISRDNAKNSVYLQMNSLRAEDTAVYYCARGRYGMDVWGQGTTVTVSS
配列番号24 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGSTFRSYDMHWVRQAPGKGLEWVAVISYDGSNKYYGDSVKGRLTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCARDQYDILTGYSSDAFDIWGQGTMVTVSS
配列番号25 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSRYGMHWVRQAPGKGLEWVAVIWYDGSHKYYEDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRADDTGVYYCARVGYGSGWYEYYYHYGMDVWGQGTTVTVSS
配列番号26 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVMWYDGSNKDYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNRLRAEDTAVYYCAREKDHYDILTGYNYYYGLDVWGQGTTVTVSS
配列番号27 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCVRのアミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVMWYDGSNKDYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNRLRAEDTAVYYCAREKDHYDILTGYNYYYGLDVWGQGTTVTVSS
配列番号28 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNYLAWFQKKPGKAPKSLIYVVSSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTINNLQPEDFATYYCQQYNHYPLTFGGGTRVEIKR
配列番号29 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISNYLAWFQQRPGKAPKSLIYVVSSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISNLQPEDFATYFCQQYNHYPLTFGGGTKVEIKR
配列番号30 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
DIQMTQFPSSLSASIGDRVTITCQASQDISNFLNWFQQKPGKAPKLLIYDASDLETGVPSRFSGSGAGTDFTFTISSLQPEDIATYFCQQYDDLPLTFGGGTRVDIKR
配列番号31 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCLQHNSNPLTFGGGTKVEIKR
配列番号32 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
QNVLTQSPGTLSLSPGERVTLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIFGVSSRATGIPDRFSGSGSGTDFSLTISRLEPEDFAVYYCQQYGNSPFTFGPGTKVDIKR
配列番号33 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
DIQMTQFPSSLSASIGDRVTITCQASQDISNFLNWFQQKPGKAPKLLIYDASDLETGVPSRFSGSGAGTDFTFTISSLQPEDVATYFCQQYDNLPLTFGGGTKVDIKR
配列番号34 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
ENVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVTSSYLAWYQQKPGQAPRLLIFGVSSRATGIPDRFSGSGSGTDFSLTISRLEPEDFAVYYCQQYGNSPFTFGPGTKVDIKR
配列番号35 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIDMYLAWFQQKPGKAPKSLIYAASSLQSGVPSKFSGSGFGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYNIFPFTFGPGTKVDVKR
配列番号36 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLESGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCLQHNSYPWTFGQGTKVEIKR
配列番号37 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
KIVMTQTPLALPVIPGEPASISCRSSQSLVDSDDGDTYLDWYLQKPGQSPQVLIHRLSYRASGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGIYYCMHRIEFPFTFGGGTKVEIKR
配列番号38 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQRPGKAPKRLIYAASSLQTGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPEDFATYYCLQHNSYPWTFGQGTKVEIKR
配列番号39 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
GIVLTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLLHSNGYNYLDWYLQKPGQSPQLLIYLGSNRASGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCMEALQTMCSFGQGTKLEIKR
配列番号40 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
GIVLTQSPLSLPVTPGEPASISCRSSQSLLHSNGYNYLDWYLQKPGQSPQLLIYLGSNRASGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCMEALQTMSSFGQGTKLEIKR
配列番号41 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
DIVMTQTPLFLPVTPGEPASISCRSSQTLLDSDDGNTYLDWYLQKPGQSPQRLIYTLSYRASGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGIYYCMQHIEFPSTFGQGTRLEIKR
配列番号42 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
SYELTQPPSVSVSPGQTASITCSGDKLGDKYASWYQQKPGQSPVLVIYQSTKRPSGIPERFSGSNSGNTATLTISGTQAMDEADYYCQAWDSSTVVFGGGTKLTVLG
配列番号43 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
NIVMTQTPLSLSVTPGQPASISCKSSQSLLHSDGKNYLFWYLQKPGQSPQLLIYEVSYRFSGVPDRFSGSGSGTDFSLKISRVEAEDVGVYYCMQNIQPPLTFGQGTRLEIKR
配列番号44 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSVQPEDFVTYYCLQHNSNPLTFGGGTKVEIKR
配列番号45 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCVRのアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLESGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSVQPEDFVTYYCLQHNSNPLTFGGGTKVEIKR
配列番号46 ‐ カッパ軽鎖定常領域のアミノ酸配列
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
配列番号47 ‐ ラムダ軽鎖定常領域のアミノ酸配列
GQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCLISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAASSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTECS
配列番号48 ‐ IgG2重鎖定常領域のアミノ配列
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号49 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のHCのアミノ酸配列
QVQLVESGGGVVQPGRSLRLSCAASGFTFSSYGMHWVRQAPGKGLEWVAVMWYDGSNKDYVDSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNRLRAEDTAVYYCAREKDHYDILTGYNYYYGLDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号50 ‐ GCGRに結合するヒト抗体のLCのアミノ酸配列
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQGIRNDLGWYQQKPGKAPKRLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSVQPEDFVTYYCLQHNSNPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
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