(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】高温安定性組成変調ハードコート被膜
(51)【国際特許分類】
C23C 14/06 20060101AFI20221205BHJP
C30B 29/38 20060101ALI20221205BHJP
C30B 23/02 20060101ALI20221205BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20221205BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
C23C14/06 A
C30B29/38 Z
C30B29/38 C
C30B23/02
B23B27/14 A
B32B9/00 A
(21)【出願番号】P 2019541258
(86)(22)【出願日】2018-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2018000058
(87)【国際公開番号】W WO2018145815
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2021-02-01
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516082866
【氏名又は名称】エリコン サーフェス ソリューションズ アーゲー、 プフェフィコン
【住所又は居所原語表記】Churerstrasse 120 8808 Pfeffikon SZ CH
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【氏名又は名称】安達 友和
(72)【発明者】
【氏名】ヤラマンチリ,シバ,ファニ,クマール
(72)【発明者】
【氏名】アーント,ミリアム
(72)【発明者】
【氏名】ラム,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】クラスニッツァー,ジークフリート
(72)【発明者】
【氏名】クラポブ,デニス
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-127863(JP,A)
【文献】YALAMANCHILI KUMAR,"Growth and thermal stability of TiN/ZrAlN: Effect of internal interfaces", ACTA MATERIALIA, ELSEVIER, OXFORD, GB, vol. 121, 16 September 2016 (2016-09-16), pages 396-406, ACTA MATERIALIA,ELSEVIER,2016年09月16日,121,pp.396-406
【文献】SZEKELY L, "Crossover of texture and morphology in (Ti1-xAlx)1-yYyN alloy films and the pathway of structure evolution",SURFACE AND COATINGS TECHNOLOGY, vol. 257 , pages 3-14,SURFACE & COATINGS TECHNOLOGY,ELSEVIER,2014年09月06日,257,pp.3-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/06
C30B 29/38
C30B 23/02
B23B 27/14
B32B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の遷移金属、TM、アルミニウム、Al、および窒素、Nを備える膜(3,4または3,4,5)を有する被膜が被覆されている基板を備える部品であって、
TMとNおよびAlとNを、それぞれ窒化化合物を形成する膜に備え、遷移金属窒化物、TM-Nは、TM-Nの1つの結晶相を呈する異なる部分に分布する膜中に存在し、アルミニウム窒化物、Al-Nは、Al-Nの1つの相を呈する異なる部分において膜中に存在し、
遷移金属窒化物の相は立方晶、c-TMNであり、
アルミニウム窒化物の相は、ウルツ鉱型、w-AlNであり、
膜は、c-TMN相の部分とw-Al-N相の部分の間に整合界面または半整合界面を呈し、
拡散障壁性を有する化合物(5)は、c-TMN相の部分とw-Al-N相の部分の間の界面に存在することを特徴とする部品。
【請求項2】
基板(1)は多結晶材料であり、シード層(2)は基板(1)と膜の間に堆積されていることを特徴とする、請求項1に記載の部品。
【請求項3】
部品は工具、特に切削工具であることを特徴とする、請求項1または2に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成変調被膜、特に自己適合型整合界面および好ましくは拡散障壁体の界面を備えるPVDハードコート被膜である、被膜を被覆した基板の製造方法に関し、被覆される基板の表面は、多結晶質基板表面である。本発明に従って製造する被膜は、高温において機械的かつ化学的安定性を呈する。本明細書においては、用語“高温”または“昇温”は、少なくとも800℃および800℃より高い温度に適用するために、特に900~1100℃の間の温度、および900~1100℃を含む温度に適用するために用いる。
【背景技術】
【0002】
物理気相成長(PVD)は、工具や部品の性能を改良するためにハードコートかつ耐摩耗性の被膜の堆積のために用いられる既知の技術である。PVD窒化物、酸化物、および炭化物系ハードコート被膜は既知である。しかし、昇温下にて高耐摩耗抵抗性を呈することができるハードコート被膜に対する大きな要求が依然として存在する。これは、昇温下にて構造的かつ化学的安定性を呈するハードコート被膜により達成される。ハードコート被膜のこの安定性は、好ましくは高い高温硬度を含み、高い高温硬度は昇温下における高硬度を意味する。本明細書において、用語“高い高温硬度”は、ハードコート被膜を昇温に曝露した後に測定された、または昇温下にてインサイチュウに測定された、約32~40GPaの硬度値に適用するために用いる。
【0003】
本明細書において、用語構造的かつ化学的安定性は、初期の整合界面構造を保持するために適用し、それぞれ、酸化のような、環境劣化に対する抵抗性を保持するために適用する。
【0004】
遷移金属窒化物は被膜材料として製造され、PVD処理による非平衡成長条件下にて準安定相を形成することが知られている(以下、頭文字“TMおよびTMN”は、それぞれ“遷移金属”および“遷移金属窒化物”に適用するために用いられる)。例えば、アルミニウム窒化物は、PVD処理を行うための原料物質として、Al-Nは、反応性ガスとして窒素を含む真空雰囲気において、それぞれTi-Al-N、Cr-Al-N、V-Al-N、およびNb-Al-N被膜を形成するために、Cr-Al、V-Al、およびNbA-Iのような二元合金を用いて形成される(原料物質は、例えばマグネトロンスパッタリングソースまたはアーク蒸発ソースを操作することによるカソードとして用いられ、原料物質の表面は、ソースの操作の間スパッタリングまたは蒸発する)。この方法により、Al-Nは、立方晶アルミニウム窒化物、c-AlNの一部を、例えば60~70at%(at%は原子パーセントを意味する)含む準安定立方晶固溶体中において形成され、異なる著者、例えばRovereらのActa Mater. 58 (2010)2708-2715に公表された科学論文“スパッタCr-Al-Y-Nハードコート被膜の相安定性におけるイットリウムの効果における実験的および計算的研究”により、KnutssonらのJ.Appl.Phys.108(2010)0-7に公表された科学論文“アーク蒸発Ti 0.3 Al0.66 N/TiN多層被膜の熱増機械特性”またはReiterらのSurf.Coatings Technol.200(2005)2114-2122に公表された科学論文“カソードアーク蒸発によって調製されたAli-xCrxN被膜の特性の評価”により報告されている。
【0005】
準安定立方相は、優れた機械的および摩耗特性を可能にすることが知られている。これは、例えば準安定立方相チタンアルミニウム窒化物(c-TiAlN)の場合である。しかし、c-TiAlNは、スピノーダル分解により、立方晶チタン窒化物(c-TiN)および立方晶アルミニウム窒化物(c-AlN)に同形分解する。これは、MayrhoferらのAppl.Phys.Lett.83(2003)2049-2051に公表された科学論文“Ti-Al-Nシステムにおける自己組織化ナノ構造”に説明されている。上述の同形分解は、優れた耐摩耗性を導く、
図1に示す整合性およびケーラー強化のような、追加の強化機構によりさらに硬度強化する。この現象は、Horlingらの特許文献US7056602B2およびJ.Vac.Sci.Technol.AVacuum, Surfaces,Film.20(2002)1815の科学論文“アーク蒸発高アルミニウム含有Ti[i-x]Al[X]N薄膜の熱安定性”によっても説明される。アルミニウム窒化物の1つ以上の準安定立方相と少なくとも1つの遷移金属を含む、またはアルミニウム窒化物の1つ以上の準安定立方相と少なくとも1つの遷移金属からなる、準安定な固溶液からなる、または準安定な固溶液を含む被膜が昇温にて相転移することもよく知られている。この種の準安定立方相は、本明細書において、c-TM-Al-N相として適用される。この式(c-TM-Al-N)は、立方晶遷移金属アルミニウム窒化物を指し、TMは1つ以上の遷移金属であり、Alはアルミニウムであり、Nは窒素であり、立方相中のAlとTMの窒化物を示す。上記したように、TM-Al-N相は、昇温下、特に900℃より高い温度にて相転移し、c-TMNおよびw-AlN相の熱力学平衡混合物になる(c-TMNは、1つ以上の遷移金属の窒化物の立方相を示し、w-AlNはアルミニウム窒化物のウルツ鉱型相を示す)。この転移は、望ましくない硬度低下および体積不安定性を生じ、耐摩耗性の損失になる。
【0006】
1つ以上のTM-Al-N相からなる、または1つ以上のTM-Al-N相を含む被膜材料中に観察されるこの不利益に打ち勝つために、いくつかの材料設計コンセプトが、準安定立方相の安定状態を高めるために探求されている。この点に関して、例えば、特許出願US2011111197A1およびWO2012069475A1には、多層化および多成分合金化設計コンセプトを使用することが示唆される。しかし、これらのコンセプトの使用は、その出願にのみ限定され、1000℃以上の温度において、c-TMNおよびw-AlN相を含む、平衡における相の混合物の形成が避けられず、上記した不可避の硬度低下になるので、被膜は1000℃未満の温度に曝露される。これらの被膜は、さらにAlNが立方相からウルツ鉱型層に相転移することにより、約20%のモル堆積膨張に関連する体積不安定性になる。
【0007】
近年、Yalamanchiliらは、Acta Mater.(2016)1-11に公表した“TiN/ZrAlNの成長と熱安定性:内部界面の効果”において、c-TMNおよびw-AlN相を形成し、それらが整合界面を呈するように配置された、耐摩耗硬質膜が、準安定相の限定された熱安定性により支配される制限された動作エンベロープを有することを説明する。しかし、Yalamanchiliらは、(AlNの立方相からウルツ鉱型相への相転移を含む)上記問題に打ち勝ち、より高い熱安定性を提供するために膜成長の間に形成される、平衡相の混合物、すなわちc-TMNおよびw-AlN相を形成するが、相が整合または(半)整合界面(用語“(半)整合界面”は、本明細書において、非同形部分整合界面に適用される)を呈して堆積されるように堆積される、被膜材料の製造を提案する。この目的のもとYalamanchiliらは、TiN膜およびZrAlN膜からなる多層システムを作成し、実験し、ZrNリッチおよびAlNリッチドメインを含む、後者の膜を製造した。上記膜の分析は、立方体ジルコニウム窒化物(c-ZrN)およびウルツ鉱型アルミニウム窒化物(w-AlN)相ならびに非同形整合または(半)整合界面の合成を示す。しかし、Yalamanchiliらの提案するアプローチは、c-ZrNとw-AlN間の非同形(半)整合界面を含む膜が少なくとも900℃の高い基板温度においてのみ成長することができ、基板上において、単結晶面を呈するという不利益を含む。これは、基板材料の選択を厳しく制限する。
【0008】
Yalamanchiliらの提案する上記の面内変調構造におけるさらなる不利益は、隣接するZrNおよびAlNドメイン間に拡散経路を形成することである。これは、ドメイン整合を引き起こし、被膜を長時間昇温に曝露する場合、ドメインサイズを増加する。例えば、溶融金属鍛造打型のように、10時間以上の長い期間、800℃を超える温度に被膜を曝露しなければならない場合である。このような場合に、増加したドメインサイズは、整合破損および結果としての硬度低下を導く歪みエネルギーの増加を引き起こす。また、c-TiNおよびc-ZrNのより低い酸化抵抗は、それらの構造が800℃を超える温度における雰囲気に不適合である。
【0009】
上記の理由のため、面内変調構造を設計するコンセプトを用いてTiN/ZrAlN被膜の熱安定性の増加を達成する上記提案された解決方法は、工具および部品が通常多結晶面を含むため、また、工具および部品が通常900℃より高い昇温に長期曝露されるため、保護被膜を含む工具および部品を提供するために提示した形体に適さないと思われる。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的は、高い高温硬度と、昇温下にて構造的かつ化学的安定性(例えば、具体的に本明細書において、800~1100℃の間の温度にて硬度>32GPaを意味する)を呈する、材料表面、特に多結晶材料表面上で成長し、少なくとも1つのTMNおよび少なくとも1つのAlN相からなる少なくとも1つの膜を備える被膜を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、上記本発明の被膜で被覆した多結晶面を有する工具および部品の製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の目的は、自己適合型整合および拡散障壁界面を有する熱的に安定な面内および面外化学的変調構造を製造することを許容する方法を用いて、多結晶面に製造された被膜を提供して達成する。
【0013】
本発明の説明
本発明の方法は、相間に自己適合型整合界面および好ましくは拡散障壁界面を含むc-TMNおよびw-AlN相からなる少なくとも1つの組成上および構造上変調された被膜を製造することを含む。被膜は、多結晶基板上に製膜される。上記本発明の方法は、好ましくは、最大600℃、好ましくは500℃未満の基板温度を維持することにより行う。
【0014】
本発明によれば、変調構造は、
図2に示す方位c-(111)/w-(0001)、またはc-(110)/w-(10-10)、またはc-(110)/w-(11-20)を意味する、c-TMNおよびw-AlN相間の3つの整合方位の1つを呈して、形成される。
【0015】
本発明者らは、既知の物理的気相堆積技術を用いると、多結晶材料の表面にこのような構造を形成することができないことを観察した。そのため、本発明者らは、望ましい結晶方位w-(0001)、またはw-(10-10)、w-(11-20)を呈するシード層としてw-AlN相を堆積することを発想した。これらのシード層は、変調構造の成長の開始前に、下層として堆積する。驚くべきことに、本発明者らは、多結晶材料基板の表面に被膜を堆積するためにPVD技術を用いるにもかかわらず、30~100nmの厚さの上記シード層が、上記のような変調構造の成長を促進するために十分であることを見出した。
【0016】
成長フロント上に適切な熱力学的かつ動的条件、例えば、30~300Vの基板バイアス、0.1~10kW/cm2のターゲット電力密度、0.2~10Paの作動圧力、100~1000Gの平行成分を有する磁界、50~200mmの基板距離に対するターゲット、400~600℃の基板温度にすることにより、シード層を形成する。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、70~100%の体積分率を有するc-TMNおよびw-AlN相からなる変調被膜構造を、共堆積方法において合成する。このようにして、TMの入射放射束とAlの入射放射束を共堆積し、
図3aおよび3bに示すように面内変調被膜を形成するために、事前に成長したシード層上にc-TMNおよびw-AlN相の混合物を形成する。整合界面を有するc-TMNおよびw-AlNからなる面内変調構造の断面図を
図3aに、平面図を3bに示す。
【0018】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明の被膜構造を製造する鍵となる要件は、成長フロント上に十分に高い吸着原子モビリティ、例えば50nm/sより大きい吸着原子モビリティを達することにあることを見出した。本発明の好ましい実施形態によれば、十分に高い吸着原子モビリティは、HIPIMS堆積方法、好ましくは750w/cm2/0.8Acm2より高い電力/電流密度を用いて、高いプラズマ密度を達成することによっても到達する。例えば、Oerlikon Balzers社のS3P技術を用いることによる。高いプラズマ密度は、アーク蒸発処理を用いることにより、またはアーク蒸発とS3P処理を組み合わせることにより到達する。本発明の他の好ましい実施形態によれば、十分に高い吸着原子モビリティは、基板に非対称バイポーラパルスバイアスを印加することによっても到達する。後者の場合、バイポーラパルスバイアスは、好ましくは正負のサイクルからなり、バイアス電圧は、正のサイクルの間、10~100Vの間で変化し、負のサイクルの間、20~40Vの間で変化することができる値を有し、周波数は、好ましくは50~500kHzの間で維持するので、入射吸着原子は局所エピタキシャル成長を促進するために十分な動的エネルギーを有する。
【0019】
後者の実施形態において、電子は、正のサイクルの間、基板を静電駆動し、ジュール加熱を起こし、非常に局所的な成長フロント上の温度を加速しながら、基板全体を500℃周辺の比較的低い温度に保つ。
【0020】
最大局所温度および被膜を横切る温度勾配は、成長フロントにおける正のパルス時間、正のバイアス電圧、パルスの形状、パルスバイアスの周波数、プラズマ密度、および局所組成により調整される。
【0021】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、吸着原子モビリティは、In、Ga、H2およびこれらの組合せのような界面活性物質を用いることによりさらに促進され、これらは、入射放射束量の0.1~5%の割合において制御された方法により添加する。本発明の上記実施形態のいずれかによる堆積方法を用いて得られた十分に高い吸着原子モビリティは、成長フロント上に不混和性成分の表面偏析を起こし、数ナノメーターのサイズのc-TMNおよびw-AlNドメインを形成する。
【0022】
本発明によって製造された被膜の好ましい実施形態において、c-TMNおよびw-AlNドメインが形成され、5~20nmの大きさを有する。
【0023】
以下に、本発明における自己組織化面内変調構造の形成を説明する。
c-TMNおよびw-AlNドメインを含むナノスケールの分離構造は、高い界面エネルギーを導く、50%までの高い界面材料量を特徴とする。界面エネルギー最小化は、分離ドメインのための熱力学的駆動力を提供し、整合界面を形成する。熱力学的状態と動的状態との組合せは、吸着原子がシード層の結晶方位を引き継ぐことに好都合であり、それらは面内変調c-TMNおよびw-AlNドメイン間に整合界面を形成することができる。成長方向におけるc-TMNおよびw-AlNの非等構造ドメイン間の整合界面の引継ぎは、
図3aおよびbに示すように、自己整合変調構造の形成を導く。c-TMNのドメイン組成は、w-AlNを有するミスフィットひずみを2%未満に減らすように、c-TiN、c-ZrN、c-VN、c-NbN、またはこれらの組合せである。これは、
図2に示す各結晶学的整合配合に特定である。
【0024】
しかし、面内変調構造において、c-TMNおよびw-AlNドメインは、共に
図3bに示す、隣接する拡散経路を有する。これは、昇温下において十分な時間後にドメイン合体を引き起こし、最終的にドメインサイズは、整合破損になる高いひずみエネルギーを引き起こすに十分な大きさである。
【0025】
この問題に打ち勝つために、本発明者らは、
図3cおよびdに示す、1~5単層の厚さを有するc-TMNおよびw-AlNドメイン間の界面にてSiN、BN、およびWNからなる自己適合型拡散障壁層を成長することを提案する。SiN、BN、およびWNは、c-TMNおよびw-AlN両方に非混和性であり、c-TMNおよびw-AlN両方への制御された合金化(3~10at%)は提案する自己適合型拡散障壁層への展開を導く。成長の間に、提案された成長条件下において加速された表面拡散の助けにより、または印加の間に、拡散障壁層を形成する。
【0026】
拡散障壁層は、c-TMNおよびw-AlNドメインを閉じ込め(
図3d)、整合界面は、1100℃より高い昇温における、約20時間の長い曝露に対して高い熱安定性を示す。c-TMNおよびw-AlNの非同系ドメイン間の熱安定性整合界面構造は、1100℃までの昇温における長い曝露に安定した硬度をもたらす。
【0027】
また、自己適合型拡散障壁層は、転位運動を妨げ、更なる硬度を向上する剛性率において局所変動を発生する。拡散障壁層組成は、昇温下にて雰囲気中にSiO2からなる酸化保護膜を形成するように調整され、被膜の高い酸化抵抗を誘発する。
【0028】
本発明は、
図4に示すように、多結晶基板上に自己適合型整合界面および拡散障壁層を有する面外変調構造の成長を開示する。
図2に示すように、例えば、c(111)/w(0001)、c(110)/w(10-10)、およびc(110)/w(11-20)のc-TMNおよびw-AlN相間に同様の面内対象を有する、3つの結晶面が存在する。例えばw-(0001)、w-(10-10)およびw-(1120)の要求される結晶方位を有する、厚さ30~100nmのw-AlNのシード層は、上記したように多結晶基板上に成長する。その後、入射放射束は、c-TMNとw-AlN間を10~30nmの制御された厚さに変調する。c-TMN層の組成は、w-AlNを有するミスフィットひずみが2%未満になるように、c-TiN、c-ZrN、c-VN、およびc-NbN、または組合せの間で変動する。界面活性物質とバイポーラパルスが誘発した上記局所原子スケール加熱成長条件の組み合わせ効果の条件下において高い吸着原子モビリティは、界面エネルギー最小化によって駆動される
図4に示すように、シード層からc-TMN層、およびその後のw-AlNに特定の結晶方位の継承を促進する。c-TMNとw-AlNは、非混和性であるため、昇温への長い曝露、例えば1100℃で、20時間においても、層厚さは限定される。
【0029】
被膜は、提案される成長レイアウトに配置され、整合界面は、面内および面外変調構造(
図3c、および
図4)の両方において熱的に安定であり、
図5に示すように硬度挙動をもたらす。また、TMN層へのSiN、BN、およびWNの制御した添加ならびにw-AlNは、前記したように、c-TMNとw-AlN層間に自己適合型界面を形成する。偏析層は、重力性滑動転移を妨害することにより、さらなる強化を誘発し、雰囲気中昇温にて酸化プロセスに対する拡散障壁層を提供する。
【0030】
TM-Al-N変調構造の窒素副格子は、1~20at%の間で酸素と置換し、提案された成長レイアウトを支持し、昇温硬度と、酸化抵抗を調整する。
【0031】
要約すると、自己適合型界面と拡散障壁層を有する面内および面外変調構造の提案された構造は、TM-Al-N被膜および他の酸化物、ならびに炭化物系硬質皮膜において、高熱安定性、容積安定性、および酸化抵抗を提案する。界面活性物質とバイポーラパルス誘発局所原子スケール加熱を組み合わせた効果は、必要な吸着原子モビリティを提供し、600℃未満の基板温度にて提案された構造を達成する。最終的に、この精巧な構造は、特定の結晶方位を有するシード層を形成することによる多結晶基板上に成長する。
【0032】
本発明は以下を可能にする。
-自己適合型拡散障壁層を促進することにより、提案された成長レイアウトの酸化抵抗を高める。
-酸化物系および炭化物系被膜の耐摩耗性と同等である、800~1100℃の範囲の昇温下にて改良された耐摩耗性をもたらし、
図5に示す遷移金属アルミニウム窒化物系被膜(すなわち、タイプ(Ti,V,Nb,Cr,Zr)-Al-N)用の安定被膜高温硬度を達成する。
-TM-Al-N被膜ならびに関連する酸化物、および炭化物系硬質皮膜において高い体積安定性を達成する。
【0033】
本発明は、800~1100℃の範囲の昇温下における耐摩耗性を改良する、遷移金属(Ti,V,Nb,Cr,Zr)-Al-Nのための(高温硬度)硬度昇温における安定被膜硬度を達成する方法を開示する。
【0034】
整合界面である面内変調構造の熱安定性を増し、好ましくは同時に良好な酸化抵抗を取得する方法を開示する。
【0035】
本発明の更なる目的は、TM-Al-N被膜、好ましくは関連する酸化物、および炭化物系硬質皮膜において高い体積安定性を達成することにある。
【0036】
本発明の整合界面は、透過電子顕微鏡(TEM)技術を用いて検出することができる。本発明の窒化物、炭化物、酸化物硬質皮膜のTEM画像は、特徴的なSAED(制限視野回折)パターンおよびHR(高解像度)を明らかにする。
TEM画像は、本発明の多結晶基板上の非同形ドメイン間に整合界面を示す。
【0037】
本発明は、32~38Gpa間の安定した硬度を有する、特に、1150℃の昇温アニーリングに至るまでのTM-Al-Nおよび関連する被膜のための、新規な被膜材料を取得することを可能にする。
同様に、本発明の被膜は、構造変態のない、体積的に安定な被膜であり、同時に優れた酸化抵抗を呈する。
本発明を、以下の図および実施例により、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】最新の準安定性c-TM-Al-N被膜硬度対アニーリング温度である。
【
図2】同様の面内幾何学的対称性を有するc-TMNおよびw-AlNの結晶面である。
【
図3】多結晶基板上の提案される成長レイアウトの図画表現、a)面内変調構造の斜視断面図、b)整合のための拡散経路を明らかにする平面図画像、c)自己適合型拡散障壁層を有する面内変調構造の斜視断面図、およびd)ドメイン制限を示す平面図画像である。
【
図4】多結晶基板上の自己適合型拡散障壁層を有する面外変調構造の図画表現である。
【
図5】アニーリング温度の機能として提案される変調構造および硬度挙動の図画表現である。
【
図6】Bragg-Brentanoジオメトリにおいて異なる周期厚を有するMgO 111基板上のc-TiN/w-AlN多層のX線回折パターンである。
【
図7】0.2Pa Arの一定のAr分圧における全圧(ArおよびN
2)に応じたN
2消費、文字Tは、対象操作が金属モードから化合物モードに変わる転移点を示す。
【
図8】比較被膜1、#1016、のTEM画像、明視野像(a)、およびHR-TEM(b)である。黒矢印は、非整合界面を示す。本発明の被膜1、#1019、のTEM画像、明視野像(c)、および整合界面を示唆する画像化されたc-TiNおよびw-AlN層間のc-TiNおよびw-AlN連続格子縞を示す、HR-TEM(d)である。
【
図9】比較被膜(
図9a)および本発明の被膜(
図9b)のXRDディフラクトグラムおよび極点図である。36.6°の2e値における極点図は、11nmの周期厚を有するc-TiN 111およびw-AlN 0001の回折ピークの位置に相当する。
【
図10】c-TiN、およびw-AlN、ならびに非整合界面を有する比較被膜(#1016、#1017、#1018)、および(半)整合界面を有する本発明の被膜(#1019、#1020、#1021)を有するc-TiN/w-AlN多層の可塑性である。
【
図11】c-TiN、およびw-AlN、ならびに非整合界面を有する比較被膜(#1016、#1017、#1018)、および整合界面を有する本発明の被膜(#1019、#1020、#1021)を有するc-TiN/w-AlN多層の弾性率、Eである。
【
図12】c-TiN、およびw-AlN、ならびに非整合界面を有する比較被膜(#1016、#1017、#1018)、および整合界面を有する本発明の被膜(#1019、#1020、#1021)を有するc-TiN/w-AlN多層の硬度である。
【0039】
図1は、最新の準安定性c-TM-Al-N被膜のためのアニーリング温度に応じた硬度を示す。この硬度対アニーリング温度は、これらの被膜のために、900℃より高い温度において、硬度が降下することを明確に示す。
【0040】
図2は、同様の面内幾何学的対称性を有するc-TMNおよびw-AlNの結晶面を示す。
【0041】
図3は、多結晶基板上の提案される成長レイアウトの図画表現、a)面内変調構造の斜視断面図、b)整合のための拡散経路を明らかにする平面図画像、c)自己適合型拡散障壁層を有する面内変調構造の斜視断面図、およびd)ドメイン制限を示す平面図画像を示す。本発明の好ましい実施形態に沿って提案される構造をより良好に説明するための多結晶基板1、シード層2、c-TMN相3、w-AlN相、および自己適合型拡散障壁層5を、それぞれ
図3(a)および
図3(c)に表す。
【0042】
図4は、多結晶基板上の自己適合型拡散障壁層を有する面外変調構造の図画表現を示す。この図においても、多結晶基板1、シード層2、c-TMN相3、w-AlN相、および自己適合型拡散障壁層5を、それぞれ示す。
【0043】
図5は、アニーリング温度に応じた提案される本発明に沿って提案される変調構造の硬度挙動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明をより詳細に説明するための具体例
本発明に沿う異なる多層被膜を製造した。例えば、タイプ高出力インパルスマグネトロンスパッタリングプロセスのPVD方法を用いることにより、特定の成長条件下で整合して整合して成長した、c-TiNまたはw-AlN相を含む多層c-TiN/w-AlN被膜を製造した。
【0045】
使用したPVDプロセスは、2kW/cm2に至るまでの高出力密度により特徴づけられる、パワー調整パルススパッタリングプロセスである。このプロセスは、フレキシビリティが高く、ピークパワー、平均パワー、およびピーク長さを個々に変えることができる。このプロセスは、2kW/cm2においてでさえ、100msに至るまでの、非常に長いパルスを用いることを許容する。
【0046】
本発明者らは、驚くべきことに、上記PVDプロセスを用いることにより、本発明のプロセスパラメータウインドウ内の選択された被膜パラメータを調整することにより、本発明の被膜を製造するために交互に堆積したc-TiNおよびw-AlN層からなる多層被膜中の界面に影響することができることを発見した。
【0047】
このようにして、例えばそれらの構造が異なっていても、c-TiNおよびw-AlNの層間に(半)整合界面を呈する交互に堆積したc-TiNおよびw-AlN層からなる本発明の多層被膜を製造することができた。適切なプロセスパラメータを調整するための最も重要な基準を以下に述べ、単一結晶基板に堆積した被膜と、多結晶基板に堆積した被膜の両方の結果を図(6、7、8および9)に表す。
【0048】
第1基準は、TiとAl両対象を金属および化合物モードの間の転移モードにおいて操作する、特定のN
2分圧に相当するN
2消費に到達するための各対象のために被覆パラメータを調整することである。
図7は、0.2Pa Arの固定Ar分圧における全圧(ArおよびN
2)に応じたN
2消費を示す。文字Tは、各対象のための、対象操作が金属モードから化合物モードに変わる転移点を示す。
【0049】
窒素を有するTi、およびAl対象間の反応性が異なるため、
図7のTとして示されるように、対象操作の金属モードから化合物モードへの転移は異なっていることがわかった。各対象のこの点Tを超えるカーブの領域は、相当する対象の化合物モードである。
【0050】
本発明者らは、パルス長を変えることにより、適正な作動N2分圧を調製し、驚くべきことに、(半)整合界面を有する多層の成長は、N2分圧が、転移点に近い、化合物モードにおける対象の操作を許容する場合にのみ到達されることを観察した。
【0051】
また、本発明者らは、(半)整合界面を有する本発明の被膜を製造するために以下に述べるパラメータウインドウ内のパラメータレベルを使用することを推奨する。
【0052】
1)50Vより高く、好ましくは100V未満の絶対値を有する負基板バイアス。
2)十分に高い、基板温度、特に本明細書中においては、400℃以上を意味する。
3)約0.2Paのアルゴン分圧、および0.05~0.08PaのN2分圧。
4)多結晶基板上にシード層を核形成する(111)、約50nmの厚さを有する立方晶形の“テンプレート”層TiNを用いる。
5)テクスチャ成長を促進するための10~20sccmのO2流量。
【0053】
図6は、比較被膜(#1016、#1017、#1018)、および本発明の被膜(#1019、#1020、#1021)のXRDパターンを示す。本発明の被膜においては、XRDディフラクトグラムは、TiN c-111およびAlN w-0002に相当する回折ピークのみを示す。比較被膜の場合においては、XRDディフラクトグラムは、TiN c-002、およびc-TiN 220に相当する回折ピークを示す。これらの観察は、比較被膜は非整合のc-TiNおよびw-AlNの層間に界面を備えることを示唆する。
【0054】
図8は、比較被膜および本発明の被膜のTEM画像を示す。
図8dに示すHR-TEM画像において、本発明の被膜格子縞は連続し、(半)整合界面を示唆することを観察することができる。
【0055】
比較被膜の場合において、被膜格子縞は、不連続であり、非整合界面を示唆する。
図9は、多結晶基板上にc-TiN/w-AlNを有するXRD e-2eディフラクトグラムと、c-TiN 111およびw-AlN 0002に相当する、36.6°の2e位置における極点図を示す。
図9bの本発明の被膜の極点図は、c-111の高度に好ましい方位を表す。この情報は、
図9bのXRDにおけるw-AlN 0002のみの存在と組み合わせて、
図8dにおけるHR-TEM画像に示されるのと同様に、本発明の被膜のc-TiNおよびw-AlN層の層間に(半)整合界面を示唆する。
図9aの比較被膜の場合には、極点図は、111のランダム方位であることを示し、XRDは、c-111、c-002、11-20回折ピークの混合を示し、層が非整合界面であることを示唆する。
【0056】
本発明は、単結晶および多結晶基板に(半)整合界面を有するc-TiNおよびw-AlN多層被膜を、どのように達成するかを具体的に示す。
【0057】
また、本発明は、c-TiNおよびw-AlNが(半)整合界面を形成する場合に、被膜の可塑性(可塑性は、材料を可塑的に変形する能力として理解されるべきである)は、
図10に示すように、12.5%の値を有し、かなり低い。非整合界面を有する比較被膜、および(半)整合界面を有する本発明の被膜の弾性率の値を
図11において比較することにも留意する。このことは、比較被膜と比較して(半)整合界面を有する本発明の被膜の
図12において約7GPaの硬度向上は、驚くべきことに、変調界面構造のために単独であることを意味する。また、硬度向上は、11~3nm間の精査した範囲内の格子周期ともほぼ無関係である。
【0058】
図10、11、および12に示す可塑性、E弾性率、および硬度の値は、ナノインデンテーション技術を用いて測定した。具体的には、約130nmの先端半径を有するバーコビッチダイヤモンドインデンタを備える荷重制御ナノインデンタを用いた。このインデンタ先端領域機能は、適合更正を有する融合シリカ参照サンプルを用いて、較正され、データは熱ドリフトのために更正された。10mNの最適負荷を選択し、基板効果を避け、荷重非依存性機械特性を取得した。最小の30インデントを被膜上に作製した。
【0059】
本発明を、TiN/AlN変調構造において示したが、当業者は、本発明のプロセスウインドウが、他のTMNと同様にc-VN/w-AlN、c-CrN/w-AlN、c-NBN/w-AlNのような他の材料に容易に展開可能である。
【0060】
実施例
実験した比較および本発明の被膜の更なる詳細
本明細書において数#1019、#1020および#1021として識別される本発明の被膜は、c-111およびw-0001のみを示し、c-111/w-0001の方位関係を有する非等構造層間に(半)整合界面を有し、層間の整合界面を指示する厚さ縞を示す、異なる周期性を有する多層である。
【0061】
本明細書において数#1016、#1017、#1018として識別される比較被膜は、層間に非整合界面を示するTiN c-002、およびc-220に相当する追加の回折ピークを示す多層である。
【0062】
【0063】
【0064】
図9bに示すように、本発明の皮膜#2695は、強い111テクスチャを呈し、これはディフラクトグラムにおける立方体およびウルツ鉱型相からの他の回折ピークの欠如と組み合わされ、層間の整合界面を示唆する
【0065】
図9aに示すように、比較皮膜#939は、極点図においてc-TINの111平面のランダムな方位を呈し、非整合界面を示唆する。
【0066】
【0067】
本発明の好ましい実施形態に沿う本発明の皮膜のさらなる実施例:
この本発明の皮膜のために、成長温度を600℃まで上げ、組成物Ti40Al50Si10を有する複合対象を用い、
図3に示す、c-TiNおよびw-AlN間の整合界面と、SiNxの自己適合型拡散障壁層を有する面内変調構造を形成した。
【0068】
プロセスパラメータを以下に示す。本発明者らは、このような構造がc-TiN、w-AlN、およびSiNxの非混和性成分の分離の固有の駆動により促進されることを疑っている。600℃の高い基板温度、0.35Paの低い全圧、特定の加工パラメータとの組み合わせが、c-TiN、w-AlN、およびSiNxの分配と、形成を促進し、(半)整合界面の形成は、111テクスチャを有するc-TiNのシード層により支持されるエネルギー最小化基準により促進される。
【0069】
【0070】
本発明の構造は、
図5に示すように安定した硬度を示すが、構造相が少なくとも1400℃の温度まで予測されない。SiNx相の拡散障壁層は、結晶粒の成長を抑制し、ドメインサイズを制限し、これにより整合界面が保存される。これらは、
図5に示すように、安定した硬度が期待される。
【0071】
まとめると、本発明は、どのようにして(半)整合界面を有するc-TMNとw-AlNドメインと、単結晶および多結晶基板上にSiNx相の自己適合型拡散障壁層とからなる面内および面外変調構造を達成するかを示す。
【0072】
本発明は、このような整合または(半)整合界面を形成することにより、可塑性に対する化学的変調高抵抗性を12%の値で達成することと、減少した可塑性が高温まで保持されることの組み合わせを見出す。
【0073】
本発明は、特に以下を開示する。
1つ以上の遷移金属、TM、アルミニウム、Al、および窒素、Nを備える膜(3,4または3,4,5)を有する被膜が被覆されている基板を備える部品であって、TMとNおよびAlとNを、それぞれ窒化化合物を形成する膜に備え、遷移金属窒化物、TM-Nは、TM-Nの1つの結晶相を呈する異なる部分に分布する膜中に存在し、アルミニウム窒化物、Al-Nは、Al-Nの1つの相を呈する異なる部分において膜中に存在し、
遷移金属窒化物の相は立方晶、c-TMNであり、
アルミニウム窒化物の相は、ウルツ鉱型、w-AlNであり、
膜は、c-TMN相の部分とw-Al-N相の部分の間に整合界面または半整合界面を呈する。
【0074】
上記した実施形態の部品であって、拡散障壁性を有する化合物(5)は、c-TMN相の部分とw-Al-N相の部分の間の界面に存在する。
【0075】
上記2つの実施形態のいずれかの部品であって、基板(1)は多結晶材料であり、シード層(2)は基板(1)と膜の間に堆積されている。
【0076】
上記実施形態のいずれかの部品であって、部品は工具、特に切削工具である。