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  • 特許-プロテオグリカンの含有量の測定法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】プロテオグリカンの含有量の測定法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20221205BHJP
   A23L 33/125 20160101ALN20221205BHJP
【FI】
G01N27/447 331G
G01N27/447 301B
A23L33/125
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020018430
(22)【出願日】2020-02-06
(65)【公開番号】P2021124404
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000119472
【氏名又は名称】一丸ファルコス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】江坂 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】小島 弘之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 達治
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0103627(US,A1)
【文献】特表平09-504375(JP,A)
【文献】特表2007-513209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/447
A23L 5/40-5/4931、31/00-31/15、33/00-33/29
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャピラリー電気泳動を用いる組成物に含有されるプロテオグリカンの含有量の測定法であって、ポリジメチルアクリルアミド(PDMA)にて内壁をコーティングしたキャピラリーを用いてキャピラリー電気泳動を行う、当該測定法。
【請求項2】
SDSが含有されている泳動用緩衝液を当該電気泳動で用いる、請求項1に記載の測定法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サプリメントなどの食品等の組成物に含有されているプロテオグリカンを簡便に測定する方法、に関する。
【背景技術】
【0002】
プロテオグリカンは、コラーゲンやヒアルロン酸と共に細胞外マトリックス中の基質を形成する主要な生体高分子であって、ヒトや牛などの哺乳動物、鮭や鮫など魚類の軟骨に含まれていることが知られており、プロテオグリカンを含むサプリメントなどの食品、プロテオグリカンの製造方法等が多く報告されている。また、プロテオグリカン自体の有用性も多く報告されており、分子量の低い50kDaから1000kDaのプロテオグリカンは軟骨分化促進作用やひざ関節改善作用、皮膚色素沈着抑制作用など報告されている(特許文献1)。
【0003】
上述のように、プロテオグリカンは複合体であり、サプリメントなどの食品等の組成物に含有されているプロテオグリカンの含有量を正確に測定することは難しいと考えられている。そのため、組成物に含まれているプロテオグリカンの含有量の測定法について、まだ技術が確立されていないと考えられている。例えば、カルバソール硫酸法による分析だと、組成物中に含まれるコンドロイチン硫酸とプロテオグリカンの分別定量が難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-138060
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明により解決しようとする課題は、サプリメントなどの飲食品等の組成物に含有されているプロテオグリカンを簡便に測定する方法を見出すこと、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、PDMA(poly-N,N-dimetyl-acrylamide(ポリジメチルアクリルアミド))にて内壁をコーティングしたキャピラリーを用いること等により、プロテオグリカンの含有量を測定するための組成物の壁面吸着を抑制し、更に電気浸透流(EOF)も抑制して、壁面吸着等の変動による検出時間の再現性の低下を抑制することにより、簡便にプロテオグリカンを測定することができること、を見出した。
【0007】
すなわち本発明は、以下の項を含む。
[項1]キャピラリー電気泳動を用いる組成物に含有されるプロテオグリカンの含有量の測定法であって、PDMAにて内壁をコーティングしたキャピラリーを用いてキャピラリー電気泳動を行う、当該測定法。
[項2]短波長の吸光検出にて当該電気泳動を行う、[項1]記載の測定法。
[項3]SDSが含有されている泳動用緩衝液を当該電気泳動で用いる、[項1]又は[項2]記載の測定法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、サプリメントなどの食品等の組成物に含有されているプロテオグリカンを簡便に測定する方法が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)はプロテオグリカンの構造、(b)はコンドロイチン硫酸の構造、(c)はヒアルロン酸の構造、(d)はコラーゲンの典型的なアミノ酸組成(含有割合(%))、示す。
図2】内面未修飾のキャピラリー(bare capillary)及び泳動用緩衝液として100mMのホウ酸緩衝液(pH9.20)を用いて、キャピラリー電気泳動を行った結果を示す。当該泳動により、泳動サンプル中に含まれるプロテオグリカン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸及びコラーゲンの分離を行った。図中の0は電気浸透流(EOF)を示し、1はコラーゲンのピーク、2はヒアルロン酸のピーク、3はプロテオグリカンのピーク、4はコンドロイチン硫酸のピークを示す。なお、以下の条件(Conditions)で当該泳動を行った。Applied potential, 15kV (Operating current,19μA); Capillary, a bare one, total length, 600mm (eff. Length, 510mm), 0.050mm i.d, (0.365mm o.d.); Injection, 25mbar, 20s; Temperature, 20℃; detection, 200 nm.
図3】PDMAにて内壁をコーティングしたキャピラリー及び泳動用緩衝液として100mMのホウ酸緩衝液(pH10.0)を用いて、キャピラリー電気泳動を行った結果を示す。当該泳動により、泳動サンプル中に含まれるプロテオグリカン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸及びコラーゲンの分離を行った。図の(a)は泳動用緩衝液に5mMのSDSが含有されていない試験系であり、図の(b)は泳動用緩衝液に5mMのSDSが含有された試験系である。図中の、1はコラーゲンのピーク、2はヒアルロン酸のピーク、3はプロテオグリカンのピーク、4はコンドロイチン硫酸のピークを示す。なお、以下の条件(Conditions)で当該泳動を行った。Applied potential, -30kV (Operating current, 30A); Capillary, a PDMA coated one, total length, 110mm (eff. Length, 101mm), 0.050mm i.d, (0.365mm o.d.); Injection, 25mbar, 20s; Temperature, 20C; detection, 200nm.
図4】PDMAにて内壁をコーティングしたキャピラリー及び泳動用緩衝液として5mMのSDSが含有された100mMのホウ酸緩衝液(pH10.0)を用いて、キャピラリー電気泳動を行った結果を示す。図の(a)は、サメ軟骨粉末を超純水に溶解した液をキャピラリー電気泳動のサンプルとして用いた試験系であり、図の(b)はプロテオグリカンF(一丸ファルコス)を超純水に溶解した液(質量対容量百分率で0.1w/v%のプロテオグリカン含有を想定)をキャピラリー電気泳動のサンプルとして用いた試験系である。図中の3はプロテオグリカンのピーク、4はコンドロイチン硫酸のピークを示す。なお、以下の条件(Conditions)で当該泳動を行った。Applied potential, -30kV (Operating current, 30A); Capillary, a PDMA coated one, total length, 110mm (eff. Length, 101mm), 0.050mm i.d, (0.365mm o.d.); Injection, 25mbar, 20s; Temperature, 20C; detection, 200nm.
図5】PDMAにて内壁をコーティングしたキャピラリー及び泳動用緩衝液として100mMのホウ酸緩衝液(pH10.0)を用いて、キャピラリー電気泳動を行った結果を示す。サプリメント錠剤(プロテオールG、アストリム)を超純水に溶解した液(質量対容量百分率で0.1w/v%の当該錠剤が含有されたことを想定)をキャピラリー電気泳動のサンプルとして用いた試験系である。図中の1はコラーゲンのピーク、2はヒアルロン酸のピーク、3はプロテオグリカンのピーク、4はコンドロイチン硫酸のピークを示す。なお、以下の条件(Conditions)で当該泳動を行った。Applied potential, -30kV (Operating current,30A); Capillary, a PDMA coated one, total length, 110mm (eff. Length,101mm), 0.050mm i.d, (0.365mm o.d.); Injection, 25mbar, 20s; Temperature, 20C; detection, 200nm.
【発明を実施するための形態】
【0010】
(キャピラリー電気泳動)
キャピラリー電気泳動(CE)は、内径数十μm、全長数十cmの細管内で主に電荷を持った試料を分離する手法であり、省試料、高速分析、高分離能を実現する分離分析手法である(BUNSEKI KAGAKU vol.67, No.10, pp599-606, 2018)。キャピラリー電気泳動(CE)は、例えば、荷電化試料を電荷/サイズ比で分離するキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、分子ふるい効果を持つポリマー等の溶液を用いて高分子を分子量に従って分離するキャピラリーゲル電気泳動(CCE)、ミセル等の泳動用緩衝液に分離可能な擬似固定相を用いて疎水性試料やキラル化合物を分離する動電クロマトグラフィー(EKC)、抗体やアダプターなどの試料特異的に結合する担体を用いるアフィニティーキャピラリー電気泳動(ACE)など、様々な分離モードがある。以下実施例で用いたキャピラリー電気泳動は、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)である。
【0011】
本発明に係る測定法では、好ましくは、組成物に含有されるプロテオグリカンなどの成分の含有量を、当該成分を未修飾で測定可能にするために、短波長の吸光検出にて当該電気泳動を行う。波長の下限は、好ましくは185nm、より好ましくは190nmであり、波長の上限は、好ましくは215nm、より好ましくは210nmである。
【0012】
(組成物)
本発明で測定される組成物は、例えば、化粧品、サプリメントなどの飲食品、飲食品等に含有される素材等が挙げられる。
【0013】
(SDS)
本発明に係る測定法では、好ましくは、キャピラリー電気泳動にて電気泳動分離能を高めるために、泳動用緩衝液に所定量のSDS(sodium dodecyl sulfate)が含有されるが、例えば1から10mM含有される。
【0014】
(その他)
以下実施例では、細胞外マトリックスを形成している主たる高分子であり、機能性表示食品や保湿成分として化粧品に含有されるプロテオグリカン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸及びコラーゲンの4種(図1に構造等を示す)を対象に、CZEによる分離分析法を検討した。これらは全て荷電高分子であり、例えば、スラブゲル電気泳動で分子量/荷電数に依存した分離後、染色して検出をする。しかし、定量面では、HPLCやキャピラリー電気泳動のようなフローシステムでのクロマトグラムやエレクトロフェログラムでのピーク面積を用いた検量線法が優れていると考えられている。プロテオグリカンはポリペプチド主鎖にイオン性のグリコサミノグリカン(直鎖糖鎖)=硫酸基とカルボキシル基を有するコンドロイチン硫酸の側鎖が多く生えている分子であり、コンドロイチン硫酸は生体内では、その多くの割合がプロテオグリカンの一部として存在すると考えられている。分子量は、プロテオグリカンが数100から数十万Daであると考えられているのに対し、コンドロイチン硫酸は10万Da程度であると考えられている。ヒアルロン酸もコンドロイチン硫酸と同様にイオン性のグリコサミノグリカンであり、荷電構造としてはカルボキシル基のみを有する。コラーゲンは、グリシンが約1/3をしめ、プロリン、ヒドロキシプロリンアラニンで合わせて1/3が構成され、検出に有用な光吸収を示す芳香環を有するPheが1%程度、Tyrほぼ含まず、Trpは全く含まないタンパク質である。従って、グリコサミノグリカンを主構造とするプロテオグリカン、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、コラーゲンは、いずれも分離検出に汎用される250nm付近に大きなモル吸光係数は持たないと考えられる。従って、HPLCでの分離後の検出に、未修飾での吸光検出は適さないと考えられる。
【0015】
一方で、キャピラリー電気泳動は、200nm近辺の低波長での吸光検出が汎用できる。この波長であれば、高感度とは言えないが、糖や多くのアミノ酸の直接検出が可能であり、これら4種のポリマーの検出に用いることが可能である。必要な感度を満たせば、煩雑さや定量性の低下を伴うため、誘導体化はないほうが好ましい。また、品質管理という目的では、分析試料濃度を比較的高くできるため、高い感度は、必ずしも不可欠ではない。
【実施例
【0016】
(試験で用いた標品など)
試験(キャピラリーゾーン電気泳動、CZE)で用いた標品(図1で構造を示す物)は、以下である。
・プロテオグリカン:富士フイルム和光純薬会社(商品コード:162-22131、168-22133)
・コンドロイチン硫酸:キシダ化学株式会社 (コンドロイチン硫酸ナトリウム特級、製品コード:000-16622)
・ヒアルロン酸:資生堂(バイオヒアルロン酸ナトリウム、HA12N)
・コラーゲン:コラーゲン技術研修会(タイプIIコラーゲン(ウシ関節由来))
【0017】
当該標品を用いて、分離条件の検討を行った。検量のための内部標準としてのフタル酸は和光純薬から購入した。試料(CZEを用いての測定で用いる組成物)として、ヒアロルン酸が含有されている製品(ヒアルロン酸 FCH、キッコーマンバイオケミファ)、サメ軟骨粉末試料(マリンカートリッジ)、プロテオグリカン含有の溶液製品(化粧品用原料、一丸ファルコス)、プロテオグリカン含有の粉末製品(プロテオグリカンF、一丸ファルコス)、プロテオグリカン含有のサプリメント錠(プロテオールG、アストリム)を用いた。
【0018】
泳動用緩衝液の成分であるSodium borate(Na2B4O7・10H2O)及びSodium dodecyl sulfate(SDS)はキシダ化学及び和光純薬から購入した。泳動用緩衝液はmili-Q water(MILIPORE)を用いて調製した。N,N-dimetylacrylamideと3-(trimethoxysilyl)propyl metヒアルロン酸crylateはSigma-Aldrichから購入し、N,N,N,N-tetramethyletylenediamineと過硫酸アンモニウムはナカライテスクから購入した。
【0019】
A Hewlett-Packard CE3D systemを用いて、電気泳動の測定を行った。キャピラリーは、Polymicro technologyから購入した内径 50μm(外径375μm)、全長600 or 110 mm (有効長 510 又は 910 mm)のものを用いた。なお、下記示す試験では、内面未修飾のキャピラリーを用いた試験系と、キャピラリーの内壁をpoly-N,N-dimetylacrylamide(PDMA)にてコーディングした試験系とを設定して、試験を行った。当該コーディングは、文献(Wan , Ohman M Blomberg L . G. J、Chromatogr A、2001、924、59-70)に記載の方法にて行った。
【0020】
(CZEを用いた試験の条件)
プロテオグリカン、コンドロイチン硫酸及びヒアルロン酸の各標品を超純水に溶解して、1.0 mg/mLの濃度のストック溶液(標品プロテオグリカン1.0mg/ml含有のストック溶液、標品コンドロイチン硫酸1.0mg/ml含有のストック溶液及び標品ヒアルロン酸1.0mg/ml含有のストック溶液)を作製した。なお、コラーゲンの水への溶解度が低いため、標品コラーゲン1.0mg/ml含有のストック溶液は、超純水と100 mM SDSを含有させることにより、37℃で30分間の下でコラーゲンの標品を溶解させて作製した。当該ストック溶液を、試験で用いる試料として用いた。泳動用緩衝液として、100 mMホウ酸緩衝液(pH 9.20)または100 mMホウ酸緩衝液(pH 10.0)を用いて、場合により当該ホウ酸緩衝液に5mMのSDSが含有された泳動用緩衝液を用いて、CZEを行った。本実施例でのCZEでは、印加電圧を15 kV(内面未修飾のキャピラリーを用いた場合、この場合の電流は19μA)又は-30 kV(PDMAにて内壁をコーティングしたキャピラリーを用いた場合、この場合の電流は30μA)に設定した。CZEの動作温度は20℃と設定した。試料を注入する際には、25 mbarの圧力で20秒間行った。検出波長は200 nmと設定した。
【0021】
(試験結果:内面未修飾のキャピラリーを用いたCZEによる4種のポリマーの分離結果)
図2に、内面未修飾のキャピラリー(bare capillary)及び泳動用緩衝液として100mMのホウ酸緩衝液(pH9.20)を用いて、キャピラリー電気泳動を行った結果を示す。この測定条件下では陽極から陰極に向けた強い電気浸透流のため、すべてが陰極側で検出されている。コンドロイチン、プロテオグリカン、ヒアルロン酸は多価アニオン性の高分子であり、タンパク質であるコラーゲンも溶出位置から判断して、負に帯電している。図1に示したように、ヒアルロン酸はカルボキシル基1つ、コンドロイチン硫酸はカルボキシル基と硫酸基各1つずつ二糖を含む基本骨格に有している。したがって、電位泳動移動度の絶対値はコンドロイチン硫酸>ヒアルロン酸と予想され、結果も予想通りとなった。
【0022】
(試験結果:PDMAにて内壁をコーティングしたキャピラリーを用いたCZEによる4種のポリマーの分離結果)
未修飾キャピラリーを用いたCZEでは、浸透流の変動による検出時間の変動が大きくなった。これは、試料分子(ポリマー分子)が徐々に壁面に吸着蓄積し、電気浸透流(EOF)の大きさが変化(減少)しているためと考えられ、測定回数の増加とともに、移動速度の遅い(電気泳動移動度の比較的大きな)プロテオグリカン、コンドロイチン硫酸は、次第に検出されなくなった。測定間のキャピラリー洗浄によって、ある程度はこの問題を軽減できるが、試験として検出時間の再現性の低さは許容できないレベルとも考えられる。図3では、EOFを抑制する目的で、PDMAで内壁コーティングしたキャピラリーを用いた結果を示す。ここでは、図2に示す試験結果と違い、EOFがないため溶出順が逆転している。PDMAコーティングは、壁面への吸着による深刻なテーリングを予防する効果が報告されている。また、浸透流の変動による検出時間の変動も低減できる。また、ホウ酸緩衝液のpHについて、pH9.2(=ホウ酸のpKa)とpH10.0について比較したところ、コンドロイチン硫酸とプロテオグリカンの分離がpH10.0で改善した(Rsは9.8から1.04になった)のでpH 10.0を採用した。検討した4種の試料で全てある程度広いピーク幅を有するが、各ポリマーの微細な構造バリエーションを反映して、実効電荷/流体力学半径の幅の分布が大きくなっていることが主原因と考えられる。
【0023】
コラーゲンはタンパク質であるため、SDSと複合体を作る。泳動用緩衝液中のSDS濃度の増加に従って、コラーゲンのピークは多くのSDSと結合し陰電荷が増加することで前に移動する。泳動用緩衝液に5mMのSDSが含有された試験系(図3(b))では、コラーゲンはプロテオグリカンとヒアルロン酸の間に溶出された。さらに、泳動用緩衝液に5mMのSDSが含有された試験系(図3(b))では、泳動用緩衝液にSDSが含有されていない試験系(図3(a))で得られたピークと比較して、ヒアルロン酸のピークが狭くなり及びヒアルロン酸のピークの検量線の直線性が向上した。
【0024】
(組成物中のプロテオグリカン含有量の測定試験)
図4は、図3(b)と同じように、5mM SDSが含有されている泳動用緩衝液を用いた試験系でのCZEによるプロテオグリカン含有量の測定試験を示す。図4(a)は、サメ軟骨粉末を超純水に溶解した液をCZEのサンプルとして用いた試験系であり、図5(b)はプロテオグリカンF(一丸ファルコス)を超純水に溶解した液をCZEのサンプルとして用いた試験系である。図4(a)に示す結果では、サメ軟骨粉末は主にコンドロイチン硫酸で構成され、プロテオグリカンはほとんど含まれていないことが示唆された。一方、図4(b)に示す結果では、プロテオグリカン標品のピークと類似したピークを持つ主成分として、プロテオグリカンが検出(図4(b)のMigration Timeが21minの付近で検出)された。プロテオグリカンF中のプロテオグリカンの量は21.3%(w / w)と推定され、製品の規格値と一致していた(表示値は20%(w / w)
以上)(図4(b))。
【0025】
図5は、サプリメント錠剤(プロテオールG、アストリム)を超純水に溶解した液をキャピラリー電気泳動のサンプルとして用いた試験系での試験結果を示す。当該錠剤は、コンドロイチン硫酸、プロテオグリカン、ヒアルロン酸及びコラーゲンを含むが、これらの成分がCZEにより分離でき、それぞれの濃度が測定でき、当該濃度1タブレットあたり1.83%(w / w)、3.25%(w / w)、0.14%(w / w)、1.60%(w / w)
と推定された。
【0026】
以上、本発明の実施の形態(実施例も含め)について、図面を参照して説明してきたが、本発明の具体的構成は、これに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、設計変更等があっても本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明により、サプリメントなどの飲食品等の組成物に含有されているプロテオグリカンを簡便に測定する方法が提供でき、例えばコンドロイチン硫酸、プロテオグリカン、ヒアルロン酸及びコラーゲンを含む食品等の品質管理分析に役立つ可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5