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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】爪矯正器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/11 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
A61F5/11
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021082877
(22)【出願日】2021-05-17
【審査請求日】2021-10-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-16
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520484704
【氏名又は名称】医療法人社団Xanadu
(74)【代理人】
【識別番号】100127306
【弁理士】
【氏名又は名称】野中 剛
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 史子
【合議体】
【審判長】筑波 茂樹
【審判官】三宅 龍平
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-38447(JP,A)
【文献】国際公開第2020/148910(WO,A1)
【文献】特開2018-175681(JP,A)
【文献】特開2012-229424(JP,A)
【文献】実開平6-33038(JP,U)
【文献】特開平2-275823(JP,A)
【文献】特許第7066928(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部領域と、第2端部領域と、前記第1端部領域と前記第2端部領域の間の中間領域とを有する接触部を備えた爪矯正器具であって、
前記爪矯正器具は、矯正対象の爪に掛け止めする部材及び領域を備えず、
前記接触部の前記第1端部領域と前記中間領域と前記第2端部領域が並べられる方向である第1方向の長さが、前記爪の側爪甲縁の一方と前記爪の側爪甲縁の他方の間の長さよりも長くなるように、前記接触部が形成され、
前記爪との掛け止めを行わない状態で、前記第1端部領域は、接着により、前記爪の爪甲の側部の一方に貼り付けられ、
前記爪との掛け止めを行わず、前記第1端部領域が前記爪甲の側部の一方に貼り付けられ、且つ前記中間領域が弾性変形で曲げられた状態で、前記中間領域は、接着により、少なくとも前記爪甲の側部の一方と前記爪甲の側部の他方の間の領域に貼り付けられ、
前記接触部の下面は、平面形状を有し、
前記第1端部領域の上面の前記第1方向と垂直な第2方向の後側は、平面部分を有し、
前記第1端部領域の上面の前記第2方向の前側は、凸部を有し、
前記凸部と一体で構成され、前記第1端部領域から、前記第2方向に突出する形状を有する把持部を更に備える、 爪矯正器具。
【請求項2】
第1端部領域と、第2端部領域と、前記第1端部領域と前記第2端部領域の間の中間領域とを有する接触部を備え、
前記接触部の前記第1端部領域と前記中間領域と前記第2端部領域が並べられる方向である第1方向の長さが、矯正対象の爪の側爪甲縁の一方と前記爪の側爪甲縁の他方の間の長さよりも長くなるように、前記接触部が形成され、
前記第1端部領域は、接着により、前記爪の爪甲の側部の一方に貼り付けられ、
前記第1端部領域が前記爪甲の側部の一方に貼り付けられ、且つ前記中間領域が弾性変形で曲げられた状態で、前記中間領域は、接着により、少なくとも前記爪甲の側部の一方と前記爪甲の側部の他方の間の領域に貼り付けられ、
前記接触部の下面は、平面形状を有し、
前記第1端部領域の上面の前記第1方向と垂直な第2方向の後側は、平面部分を有し、
前記第1端部領域の上面の前記第2方向の前側は、凸部を有
前記凸部と一体で構成され、前記第1端部領域から、前記第2方向に突出する形状を有する把持部を更に備える、 爪矯正器具。
【請求項3】
第1端部領域と、第2端部領域と、前記第1端部領域と前記第2端部領域の間の中間領域とを有する接触部を備え、
前記接触部の前記第1端部領域と前記中間領域と前記第2端部領域が並べられる方向である第1方向の長さが、矯正対象の爪の側爪甲縁の一方と前記爪の側爪甲縁の他方の間の長さよりも長くなるように、前記接触部が形成され、
前記第1端部領域は、接着により、前記爪の爪甲の側部の一方に貼り付けられ、
前記第1端部領域が前記爪甲の側部の一方に貼り付けられ、且つ前記中間領域が弾性変形で曲げられた状態で、前記中間領域は、接着により、少なくとも前記爪甲の側部の一方と前記爪甲の側部の他方の間の領域に貼り付けられ、
前記接触部の下面は、平面形状を有し、
前記第1端部領域の上面の前記第1方向と垂直な第2方向の後側は、平面部分を有し、
前記第1端部領域の上面の前記第2方向の前側は、凸部を有し、
前記凸部は、前記第2方向に延びる半円柱状の棒状部材で構成され、
前記凸部の前記第2方向の後側には、斜面が形成され、
前記斜面の前記平面部分と接する部分は、前記第1端部領域の前記中間領域と接する側と反対側が、前記第1端部領域の前記中間領域と接する側よりも、前記第1端部領域の前記第2方向の後側の端部に近くなるように形成される、爪矯正器具。
【請求項4】
前記凸部と一体で構成され、前記第1端部領域から、前記第2方向に突出する形状を有する把持部を更に備える、請求項3に記載の爪矯正器具。
【請求項5】
第1端部領域と、第2端部領域と、前記第1端部領域と前記第2端部領域の間の中間領域とを有する接触部を備え、
前記接触部の前記第1端部領域と前記中間領域と前記第2端部領域が並べられる方向である第1方向の長さが、矯正対象の爪の側爪甲縁の一方と前記爪の側爪甲縁の他方の間の長さよりも長くなるように、前記接触部が形成され、
前記第1端部領域は、接着により、前記爪の爪甲の側部の一方に貼り付けられ、
前記第1端部領域が前記爪甲の側部の一方に貼り付けられ、且つ前記中間領域が弾性変形で曲げられた状態で、前記中間領域は、接着により、少なくとも前記爪甲の側部の一方と前記爪甲の側部の他方の間の領域に貼り付けられ、
前記第1端部領域は、前記第2端部領域と比べて、前記第1方向と垂直な第2方向の幅が広く、
前記中間領域は、前記第1端部領域がある側から、前記第2端部領域がある側にかけて、連続的且つ滑らかに、前記第2方向の幅が狭くなる形状を有し、前記第2方向の前側が直線状で、前記第2方向の後側が曲線状に形成される、爪矯正器具。
【請求項6】
抗菌性と抗ウィルス性の少なくとも一方を備える金属を微細化したものに基づいて生成された組成物と、抗菌性と抗ウィルス性の少なくとも一方を備える金属を取り込んだガラス材料の少なくとも一方が前記爪矯正器具に含まれる、請求項1~請求項5のいずれかに記載の爪矯正器具。
【請求項7】
銅を微細化したものに基づいて生成された組成物が、5重量パーセント前記爪矯正器具に含まれる、請求項1~請求項5のいずれかに記載の爪矯正器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、爪矯正器具などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、嵌入爪を矯正する矯正具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-360619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、側爪甲縁に矯正具を掛け止めする必要がある。
【0005】
したがって本発明の目的は、掛け止めを行わずに、爪の矯正が可能な爪矯正器具などを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る爪矯正器具は、第1端部領域と、第2端部領域と、第1端部領域と第2端部領域の間の中間領域とを有する接触部を備える。
接触部の第1端部領域と中間領域と第2端部領域が並べられる方向である第1方向の長さが、矯正対象の爪の側爪甲縁の一方と爪の側爪甲縁の他方の間の長さよりも長くなるように、接触部が形成される。
第1端部領域と中間領域は、矯正対象の爪の爪甲に接触する。
第2端部領域は、第1端部領域と中間領域が爪甲に取り付けられた時に、爪甲がある領域から突出する。
第1端部領域は、爪甲の側部の一方に、接着だけで固定される。
中間領域は、少なくとも爪甲の側部の一方と爪甲の側部の他方の間の領域に、第1端部領域が爪甲の側部の一方に固定され且つ接触部が曲げによる弾性変形した状態で、接着で固定される。
【0007】
爪矯正器具の爪甲と接着した領域は、弾性変形で曲げられた状態で爪甲に接着されている。
このため、曲げられた状態から平らな状態(曲げられる前の状態)に戻ろうとする反力で、爪甲の側爪甲縁が内側に巻いたように変形した状態及び側爪甲縁が皮膚に食い込んだ状態を改善させることが出来る。
【0008】
また、側爪甲縁に爪矯正器具を掛け止めすることをせず、爪甲の表面の接着だけで爪矯正器具の爪甲への取り付けが行われる。
このため、掛け止めに起因した爪甲を含む領域の痛みは生じない。
また、爪甲と爪床の間に器具の一部を差し込めず、掛け止めが出来ない場合でも、爪矯正器具の爪甲への取り付けが容易に行える。
【0009】
好ましくは、接触部の下面は、平面形状を有する。
第1端部領域の上面の第1方向と垂直な第2方向の後側は、平面部分を有する。
第1端部領域の上面の第2方向の前側は、凸部を有する。
【0010】
当該押し当てにより、爪甲の伸びを阻害する部分を凹ませて、爪甲が伸びやすい状況にすることが可能になる。
【0011】
さらに好ましくは、凸部の第2方向の後側は、第1端部領域の中間領域と接する側と反対側が、第1端部領域の中間領域と接する側よりも、第1端部領域の第2方向の後側の端部に近くなるような蹄形形状を有する。
【0012】
凸部の蹄形形状により、爪甲の斜めに切り落とされた先端部と凸部の第2方向の後側の先端とが近づいた状態で、当該押し当てを行うことが出来る。
【0013】
また、好ましくは、爪矯正器具は、凸部と一体で構成され、第1端部領域から、第2方向に突出する形状を有する把持部を更に備える。
【0014】
さらに好ましくは、第1端部領域は、第2端部領域と比べて、第1方向と垂直な第2方向の幅が広い。
中間領域は、第1端部領域がある側から、第2端部領域がある側にかけて、連続的且つ滑らかに、第2方向の幅が狭くなる形状を有し、第2方向の前側が直線状で、第2方向の後側が曲線状に形成される。
【0015】
第2端部領域は、第1端部領域よりも幅が狭い形状を有する。
このため、第2端部領域が、幅が広い形状を有する形態に比べて、接触部の曲げを行いやすく、且つ第2端部領域の切り落としを行いやすい。
中間領域は、連続的に、幅が狭くなる形状を有する。
これにより、中間領域が階段状など尖った領域を有する形態に比べて、接触部の曲げによる破断が起きにくくできる。
【0016】
さらに好ましくは、第2端部領域と中間領域の一方の一部は、爪甲の側部の他方に、接着で固定される。
【0017】
側爪甲縁の一方から他方まで接触部が爪甲に接着で固定されることになる。このため、接着面積が大きくなり、接触部と爪甲との接着を強固なものにすることができる。
【0018】
さらに好ましくは、抗菌性と抗ウィルス性の少なくとも一方を備える金属を微細化したものに基づいて生成された組成物と、抗菌性と抗ウィルス性の少なくとも一方を備える金属を取り込んだガラス材料の少なくとも一方が爪矯正器具に含まれる。
【0019】
爪矯正器具に菌、ウィルス、カビなどが増殖しにくく出来る。
【0020】
また、好ましくは、銅を微細化したものに基づいて生成された組成物が、5重量パーセント爪矯正器具に含まれる。
【0021】
材料に銅が含まれる場合、抗菌・抗ウィルス効果が得られるだけでなく、爪矯正器具は、褐色がかった透明な素材で構成される。これにより、無色で且つ透明な素材で構成された場合に比べて、爪矯正器具が患者の爪甲及び肌の色に近くなり、爪矯正器具を患者の爪甲に取り付けた時に目立ちにくく出来る。
【0022】
本発明に係る爪矯正器具の使用方法は、第1端部領域と、第2端部領域と、第1端部領域と第2端部領域の間の中間領域とを有する接触部を備えた爪矯正器具の使用方法である。
接触部の第1端部領域と中間領域と第2端部領域が並べられる方向である第1方向の長さが、矯正対象の爪の側爪甲縁の一方と爪の側爪甲縁の他方の間の長さよりも長くなるように、接触部が形成される。
第1端部領域と中間領域は、矯正対象の爪の爪甲に接触する。
第2端部領域は、第1端部領域と中間領域が爪甲に取り付けられた時に、爪甲がある領域から突出する。
爪矯正器具の使用方法は、第1端部領域を、爪甲の側部の一方に、接着だけで固定する第1接着工程と、中間領域を、少なくとも爪甲の側部の一方と爪甲の側部の他方の間の領域に、第1端部領域が爪甲の側部の一方に固定され且つ接触部が曲げによる弾性変形した状態で、接着で固定する第2接着工程とを備える。
【0023】
好ましくは、爪矯正器具の使用方法は、硬化促進剤を爪矯正器具と爪甲の一方に塗布する促進剤塗布工程をさらに備える。
第1接着工程、及び第2接着工程の接着で用いられる接着剤は、光硬化型接着剤である。
爪矯正器具の使用方法は、爪甲の、爪矯正器具が取り付けられない領域に残った接着剤に対して、光を照射する光硬化工程をさらに備える。
【0024】
硬化促進剤を用いない形態に比べて、爪矯正器具と爪甲との接着の完了を早めることが可能になる。
爪矯正器具と爪甲の間から漏れ出た接着剤について、光照射装置を使って早期に硬化させることが可能になる。
【0025】
さらに好ましくは、硬化促進剤は、刷毛を使って、爪矯正器具に塗布される。
接着剤は、接着剤の容器から爪甲に塗布される。
【0026】
さらに好ましくは、爪矯正器具の使用方法は、第2接着工程の後、第2端部領域を切り落とす切り落とし工程と、爪矯正器具の爪と接着した領域の表面を研磨する研磨工程とを更に備える。
【0027】
研磨工程によって、爪矯正器具の爪甲と接着した領域の表面(上面)は滑らかに研磨されるため、爪矯正器具の爪甲と接着した領域に触れても、当該表面に引っかかる可能性は低い。
【0028】
本発明に係る爪矯正器具の使用方法は、平面部分と凸部を有する第1端部領域と、第2端部領域と、第1端部領域と第2端部領域の間の中間領域とを有する接触部を備えた爪矯正器具の使用方法である。
接触部の第1端部領域と中間領域と第2端部領域が並べられる方向である第1方向の長さが、矯正対象の爪の側爪甲縁の一方と爪の側爪甲縁の他方の間の長さよりも長くなるように、接触部が形成される。
第1端部領域と中間領域は、矯正対象の爪の爪甲に接触する。
第2端部領域は、第1端部領域と中間領域が爪甲に取り付けられた時に、爪甲がある領域から突出する。
爪矯正器具の使用方法は、凸部を指の先端で爪甲が無い部分に押し当てた状態で、第1端部領域の平面部分を、爪甲の側部の一方に、接着だけで固定する第1接着工程と、中間領域を、少なくとも爪甲の側部の一方と爪甲の側部の他方の間の領域に、第1端部領域が爪甲の側部の一方に固定され且つ接触部が曲げによる弾性変形した状態で、接着で固定する第2接着工程とを備える。
【発明の効果】
【0029】
以上のように本発明によれば、掛け止めを行わずに、爪の矯正が可能な爪矯正器具などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本実施形態における第1爪矯正器具の斜視図である。
図2図1とは別の方向から見た第1爪矯正器具の斜視図である。
図3】本実施形態における第2爪矯正器具の斜視図である。
図4図3とは別の方向から見た第2爪矯正器具の斜視図である。
図5】第1施術の第1研磨工程の患者の脚指と、研磨工具と、集塵装置と、施術者の手指の斜視図である。
図6】第1施術の位置あわせ工程の患者の脚指と、第2爪矯正器具と、施術者の手指の斜視図である。
図7】第1施術の促進剤塗布工程の患者の脚指と、第2爪矯正器具と、促進剤塗布用刷毛と、施術者の手指の斜視図である。
図8】第1施術の第1塗布工程の患者の脚指と、第2爪矯正器具と、接着剤容器と、施術者の手指の斜視図である。
図9】第1施術の第1接着工程の患者の脚指と、第2爪矯正器具と、施術者の手指の斜視図である。
図10】第1施術の第2塗布工程の患者の脚指と、第2爪矯正器具と、接着剤容器と、施術者の手指の斜視図である。
図11】第1施術の第2接着工程で、中間領域を爪甲に接着する状態の、患者の足指と、第2爪矯正器具と、施術者の手指の斜視図である。
図12】第1施術の光硬化工程の患者の脚指と、第2爪矯正器具と、光照射装置と、施術者の手指の斜視図である。
図13】第1施術の切り落とし工程の患者の脚指と、第2爪矯正器具と、手動工具と、施術者の手指の斜視図である。
図14】第1施術の第2研磨工程の患者の足指と、第2爪矯正器具の一部と、研磨工具と、集塵装置と、施術者の手指の斜視図である。
図15】第1施術の第1接着工程の患者の脚指と、y方向後側の一部を切り取った第2爪矯正器具と、施術者の手指の斜視図である。
図16】第2施術の第1接着工程の患者の脚指と、第2爪矯正器具と、施術者の手指の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本実施形態について、図を用いて説明する。
なお、実施形態は、以下の実施形態に限られるものではない。また、一つの実施形態に記載した内容は、原則として他の実施形態にも同様に適用される。また、各実施形態及び各変形例は、適宜組み合わせることが出来る。
【0032】
(爪矯正器具10)
本実施形態における爪矯正器具10は、指の爪の巻き爪若しくは嵌入爪を正常な状態に近づけるために使用される矯正器具である。
本実施形態では、爪矯正器具10を使って、2種類の施術(第1施術、第2施術)が行われる。
第1施術では、爪矯正器具10の接触部11の下面が爪甲20に取り付けられる。
第2施術では、凸部12を指の先端で爪甲20が無い部分(被押し当て領域A)に押し当てた状態で、爪矯正器具10の接触部11の上面が爪甲20に取り付けられる。
【0033】
爪矯正器具10は、接触部11と凸部12と把持部13を備える(図1図4参照)。
爪矯正器具10は、セルロースナノファイバー、ABS樹脂などで構成される。
また、爪矯正器具10は、無色で且つ透明な板で構成されるのが望ましい。
接触部11と凸部12と把持部13とは、金型形成などで、一体的に形成されるのが望ましいが、別体で構成され、後から接着などで取り付けられてもよい。
【0034】
方向を説明するために、爪矯正器具10の長手方向をx方向(第1方向)、x方向と垂直な短手方向をy方向(第2方向)、x方向とy方向に垂直な略鉛直方向をz方向(第3方向)として説明する。
図1などにおいて、xyz軸のそれぞれの矢印が指し示す方向をそれぞれ右方向、前方向、上方向と定義する。
【0035】
爪矯正器具10は、爪甲20の大きさ、爪甲20の変形度合い、矯正の進行度合いなどに合わせて、不必要な部分を切除した状態で使用される。
ただし、複数種類の大きさのものを用意する必要はない。
爪矯正器具10は、第1端部領域11aと第2端部領域11bのx方向の位置が逆転した2種類(第1爪矯正器具10a、第2爪矯正器具10b)が用意される。
【0036】
(接触部11)
接触部11は、可撓性のある平板状の板で構成され、第1端部領域11a、第2端部領域11b、中間領域11cを有する。
第1端部領域11aと第2端部領域11bと中間領域11cは、x方向に並べられ、一体的に構成される。
【0037】
接触部11のx方向の長さが、矯正対象の爪の側爪甲縁の一方(爪甲20の側部の一方(第1側部21)の縁)と側爪甲縁の他方(爪甲20の側部の他方(第2側部22)の縁)の間の長さよりも長くなるように、接触部11が形成される。
第1端部領域11aと中間領域11cは、矯正対象の爪の爪甲20に接触する。
第1端部領域11aと中間領域11cが爪甲20に取り付けられた時に、第2端部領域11bは、爪甲20がある領域からx方向に突出する。
【0038】
接触部11の下面は、第1施術の際に、爪甲20と対向し、促進剤塗布工程で硬化促進剤が塗布される領域である(図7参照)。
接触部11の上面は、第2施術の際に、爪甲20と対向し、促進剤塗布工程で硬化促進剤が塗布される領域である。
【0039】
(第1端部領域11a)
第1端部領域11aは、y方向の幅が広く(y方向の寸法が長く)、且つz方向の厚さが薄い(z方向の寸法が短い)領域である。
例えば、第1端部領域11aは、x方向の幅が約2.74mm、y方向の幅が約12mm、z方向の厚さが約0.61mmで形成される。
第1端部領域11aの上面のy方向前側は、凸部12が設けられ、第1端部領域11aの上面のy方向後側は、平面部分11a1が形成される。
【0040】
第1爪矯正器具10aは、x方向右側に第1端部領域11aが設けられる(図1図2参照)。
第2爪矯正器具10bは、x方向左側に第1端部領域11aが設けられる(図3図4参照)。
第1施術で爪甲20の右側部を矯正する場合は、第1爪矯正器具10aの下面が爪甲20と対向する状態で接着が行われる。
第1施術で爪甲20の左側部を矯正する場合は、第2爪矯正器具10bの下面が爪甲20と対向する状態で接着が行われる(図5図14参照)。
第2施術で爪甲20の右側部を矯正する場合は、第2爪矯正器具10bの上面が爪甲20と対向する状態で接着が行われる(図16参照)。
第2施術で爪甲20の左側部を矯正する場合は、第1爪矯正器具10aの上面が爪甲20と対向する状態で接着が行われる。
【0041】
(第2端部領域11b)
第2端部領域11bは、第1端部領域11aと比べて、y方向の幅が狭く(y方向の寸法が短く)、且つz方向の厚さが厚い(z方向の寸法が長い)領域である。
例えば、第2端部領域11bは、y方向の幅が約4.02mm、z方向の厚さが約1.14mmで形成される。
また、第2端部領域11bと中間領域11cは、x方向の幅が約40.73mmで形成される。
第2端部領域11bは、位置合わせ工程などで、施術者(使用者)が爪矯正器具10を把持するため領域である。
また、第2端部領域11bは、第1端部領域11aを第1側部21に接着した後、中間領域11cを、少なくとも第1側部21と第2側部22の間の領域に接着するために、接触部11を曲げる際に、施術者が爪矯正器具10の端部の一方を押さえつけるための領域である(図12参照)。
【0042】
(中間領域11c)
中間領域11cは、第1端部領域11aと第2端部領域11bの間の領域である。
中間領域11cの、第1端部領域11aに近い側は、y方向の幅が広く(y方向の寸法が長く)、且つz方向の厚さが薄い(z方向の寸法が短い)。
中間領域11cの、第2端部領域11bに近い側は、y方向の幅が狭く(y方向の寸法が短く)、且つz方向の厚さが厚い(z方向の寸法が長い)。
すなわち、中間領域11cは、第1端部領域11aがある側から第2端部領域11bがある側にかけて、連続的且つ滑らかに、y方向の幅が狭くなり、且つz方向の厚さが厚くなる形状を有する。
また、中間領域11cのy方向前側(把持部13がある側)が直線状で、y方向後側が曲線状(略円弧状)に形成される。
また、第1端部領域11aと中間領域11cの境界部分を除いて、中間領域11cが、階段状など尖った領域を有さない。
【0043】
(接触部11の厚さ)
接触部11は、第1端部領域11aの側から第2端部領域11bの側にかけて、滑らかにz方向の厚さが厚くなるように形成される。
【0044】
(凸部12)
凸部12は、第1端部領域11aの上面でz方向上方に盛り上がり、y方向に延びる略半円柱状の棒状部材で構成される。
凸部12は、第2施術の際に、指の先端で爪甲20が無い部分(被押し当て領域A)に押し当てられる領域である(図16参照)。
第2施術において、接触部11の上面に硬化促進剤が塗布される場合でも、凸部12には、硬化促進剤は塗布されない。
【0045】
凸部12のy方向後側の端部は、x方向の外側(中間領域11cがある側と反対側)が、x方向の内側(中間領域11cがある側)よりも第1端部領域11aのy方向後側の端部に近くなるような蹄形形状を有する。
当該蹄形形状は、x方向の外側で、且つy方向後側の先端部が尖った形状を有する。
当該蹄形形状の先端部は、図1図4に示すようにyz平面に対して45度程度の鋭角を有する形態であってもよいが、yz平面に対して略45度よりも小さい更なる鋭角を有する形態であってもよい。
【0046】
(把持部13)
把持部13は、第1端部領域11aのy方向前側の端部から、爪甲20を含む爪が伸びる方向(y方向)で且つ爪甲20から遠ざかる方向に突出する略半円柱の棒状部材で構成される。
把持部13は、凸部12と一体で、連続的にy方向に延びる形状を有する。
把持部13は、位置合わせ工程などで、施術者が爪矯正器具10を把持するための領域である(図16参照)。
なお、位置合わせ工程などでは、施術者が把持部13を把持してもよいし、第2端部領域11bを把持してもよい。
また、把持部13は、第1端部領域11aを爪甲20の第1側部21に接着した後、中間領域11cを、少なくとも第1側部21と第2側部22の間の領域に接着するために接触部11を曲げる際に、施術者が爪矯正器具10の端部の他方を押さえつけるための領域である。
【0047】
(手順説明)
次に、巻き爪若しくは嵌入爪を矯正するために、爪矯正器具10を使用する手順、すなわち、爪矯正器具10を爪甲20に取り付ける手順を説明する(図5図14参照)。
本実施形態では、患者の左脚の親指の爪甲20の左側部を第1側部21とし、当該左側部(第1側部21)の巻き爪若しくは嵌入爪を矯正するために、第2爪矯正器具10bの下面を左脚の親指の爪甲20に取り付ける例を示す(第1施術)。
なお、第1施術で、患者の爪甲20の右側部の巻き爪若しくは嵌入爪を矯正するために、第1爪矯正器具10aを爪甲20に取り付ける手順も同様である。
【0048】
まず、接着しやすくするために、爪甲20の表面が研磨工具41を使って研磨される(第1研磨工程、図5参照)。
第1研磨工程では、研磨により生成された削りカスを吸い取る集塵装置43が爪甲20の下方に配置されるのが望ましい。
【0049】
第1研磨工程の後、第2爪矯正器具10bの第1端部領域11aの下面を爪甲20の第1側部21に近づけて、第2爪矯正器具10bを貼り付ける位置の調整(位置あわせ)が行われる(位置あわせ工程、図6参照)。
【0050】
位置あわせ工程の後、第2爪矯正器具10bの接触部11の下面に硬化促進剤(プライマー)が塗布される(促進剤塗布工程、図7参照)。
このとき、第2端部領域11bを施術者が把持することにより、第2爪矯正器具10bの保持が行われる。
硬化促進剤の塗布は、刷毛(促進剤塗布用刷毛45)を使って行われる。
硬化促進剤の塗布は、第1接着工程で接触部11の爪甲20に接触する領域(主に第1端部領域11aの下面)、及び第2接着工程で接触部11の爪甲20に接触する領域(主に第2端部領域11bと中間領域11cの下面)に行われる。
【0051】
促進剤塗布工程の後、爪甲20の第1端部領域11aの下面が貼り付けられる領域に、接着剤(ジェル)46が塗布される(第1塗布工程、図8参照)。
接着剤46の爪甲20への塗布は、衛生面の観点から、接着剤容器47から直接行われるのが望ましい。
第1塗布工程は、促進剤塗布工程の前に行われてもよいし、促進剤塗布工程と並行して行われても良い。
接着剤46は、紫外線硬化型または可視光硬化型の光硬化型接着剤で、後述する光照射装置49により発生する波長領域に高感度に反応し、重合硬化する。
【0052】
促進剤塗布工程、及び第1塗布工程の後、第1端部領域11aの下面が、第1側部21に近づけられる。
本実施形態では、患者の左脚の親指の爪甲20の左側部に、第1端部領域11aの下面が近づけられる。
このとき、第2端部領域11bを施術者が把持することにより、爪矯正器具10の保持が行われる。
ただし、爪矯正器具10の保持は、把持部13を施術者が把持することにより行われても良い。
【0053】
次に、第1端部領域11aの下面が、第1側部21に接着される(第1接着工程、図9参照)。
具体的には、第2端部領域11b若しくは把持部13を施術者が把持した状態で、第1端部領域11aを、第1側部21に押し当てることで、第1接着工程が行われる。
このとき、側爪甲縁に第2爪矯正器具10bを掛け止めすることはせず、爪甲20の表面(第1側部21の表面)への接着のみで第2爪矯正器具10bの爪甲20への固定が行われる。
【0054】
接触部11の第1端部領域11aの下面の硬化促進剤と爪甲20の接着剤46が接触して、接着剤46が硬化し、第1端部領域11aと第1側部21との固定(接着)が完了した後、中間領域11cの下面と爪甲20の間に、接着剤46が塗布される(第2塗布工程、図10参照)。
接着剤46の爪甲20への塗布は、衛生面の観点から、接着剤容器47から直接行われるのが望ましい。
第1端部領域11aと第1側部21とが固定された状態であるため、第2爪矯正器具10bを施術者が保持する必要はない。
【0055】
次に、中間領域11cの下面が爪甲20に近づくように、接触部11(第2端部領域11b、中間領域11c)が曲げられ、中間領域11cの下面が、爪甲20の中央部(第1側部21と第2側部22の間)に接着される(第2接着工程、図11参照)。
具体的には、第2端部領域11bの上面を押して、接触部11を撓ませる。
これにより、中間領域11cの下面が爪甲20に近づけられる。
このとき、把持部13の上面も押して、第1端部領域11aの接着が剥がれないようにするのが望ましい。
【0056】
接着面積を大きくして、接触部11と爪甲20との接着を強固なものにするため、中間領域11cの下面、若しくは第2端部領域11bの下面で中間領域11cに近い側の領域が、第2側部22の縁(側爪甲縁の他方)の近傍まで接着剤46を使って接着されるのが望ましい。
【0057】
接触部11の中間領域11cの下面の硬化促進剤と爪甲20の接着剤46が接触して、接着剤46が硬化し、中間領域11cと爪甲20の第1側部21と第2側部22の間の領域との固定(接着)が完了する。これにより、第1端部領域11aと中間領域11cが爪甲20に固定された状態、若しくは第2端部領域11bの一部と第1端部領域11aと中間領域11cが爪甲20に固定された状態になる。
このとき、接触部11の第2端部領域11bの下面であって、中間領域11cに近い領域も、爪甲20の第2側部22若しくは第1側部21と第2側部22の間の領域と固定が行われてもよい。
接触部11と対向しない領域には、接着剤46が残った状態であり、第2接着工程の直後は、接着剤46の硬化が未だ完了していない。
【0058】
中間領域11cと爪甲20(第1側部21と第2側部22の間の領域など)との固定が完了した後、第2端部領域11bの上面への押圧、把持部13の上面への押圧が解除される。
【0059】
第2接着工程の後、爪甲20に、LEDなどの光照射装置49からの光を照射して、爪甲20に露出している接着剤46が硬化せしめられる(光硬化工程、図12参照)。
光照射装置49による光の照射領域50が、爪甲20における硬化していない接着剤46がある領域を含むように、光照射装置49と爪甲20の位置関係が決定される。
なお、光硬化を早めるため、光硬化工程の前に、金属棒などを使って、爪甲20の接着剤46を薄く伸ばしておくのが望ましい。
【0060】
次に、第2端部領域11bなど接触部11の爪甲20と接着していない領域、及び把持部13の接触部11から突出した領域、すなわち第2爪矯正器具10bにおける患部を含む指から突出した領域は、ハサミなどの手動工具51で切り落としされる(切り落とし工程、図13参照)。
【0061】
切り落とし工程の後、研磨工具41を使って、第2爪矯正器具10bの患部と接着した領域の表面(上面)の研磨が行われる(第2研磨工程、図14参照)。
第2研磨工程では、第2爪矯正器具10bと患部との接着状態が維持されるように、爪矯正器具10の上面(患部と接しない側)の研磨が行われる。
第2研磨工程の後、さらにヤスリなどを使って、表面の研磨仕上げが行われる(仕上げ工程、不図示)。
【0062】
(爪矯正器具10のy方向後側を切り落とした状態の使用)
図5図14では、y方向後側などを切り落とさない状態の第2爪矯正器具10bを爪甲20に取り付ける例を説明した。
しかしながら、矯正の進行度合いに合わせて、y方向後側を切り落とした状態で使用される(図15参照)。
例えば、矯正の初期の段階では、爪甲20の先端部分だけを矯正するために、y方向後側を切り落とした状態の爪矯正器具10が使用される。
【0063】
(第2施術)
次に、第2施術について説明する。
巻き爪若しくは嵌入爪が酷い場合などに、爪甲20の先端であって巻き爪若しくは嵌入爪がある側が切り落とされて、指の先端の皮膚(爪床)の一部が露出していることがある。
この場合、当該爪床の露出部分が盛り上がって、爪の成長を妨げるおそれがある。
第2施術では、当該爪床の露出部分の盛り上がり(被押し当て領域A)に、凸部12を押し当てて、被押し当て領域Aを凹ませて、爪が伸びやすい状態にする(図16参照)。
【0064】
具体的には、患者の左脚の親指の爪甲20の右側部の巻き爪若しくは嵌入爪を矯正するために、第2爪矯正器具10bを左脚の親指の爪甲20に取り付ける場合、促進剤塗布工程では、第2爪矯正器具10bの第1端部領域11aの上面の平面部分11a1など、接触部11の上面であって凸部12が無い平面領域に硬化促進剤が塗布される。
【0065】
本実施形態の第2施術では、患者の左脚の親指の爪甲20の右側部を第1側部21とし、当該右側部(第1側部21)の巻き爪若しくは嵌入爪を矯正するために、第2爪矯正器具10bの上面を左脚の親指の爪甲20に取り付ける例を示す。
【0066】
第2施術における第1研磨工程は、第1施術における第1研磨工程と同様である。
【0067】
第2施術における位置合わせ工程では、第2爪矯正器具10bの第1端部領域11aの上面を爪甲20の第1側部21に近づけて、第2爪矯正器具10bを貼り付ける位置の調整が行われる。
【0068】
第2施術における促進剤塗布工程では、第2爪矯正器具10bの接触部11の上面に硬化促進剤が塗布される。
硬化促進剤の塗布は、第2施術の第1接着工程で接触部11の爪甲20に接触する領域(主に第1端部領域11aの上面の平面部分11a1)、及び第2接着工程で接触部11の爪甲20に接触する領域(主に第2端部領域11bと中間領域11cの上面)に行われる。
【0069】
第2施術における第1塗布工程では、爪甲20の第1端部領域11aの上面の平面部分11a1が貼り付けられる領域に、接着剤46が塗布される。
【0070】
第2施術における第1接着工程では、第1端部領域11aの上面の平面部分11a1が、第1側部21に接着される(図16参照)。
具体的には、第2端部領域11b若しくは把持部13を施術者が把持し、第2爪矯正器具10bの凸部12を指の先端で爪甲20が無い部分(被押し当て領域A)に押し当てた状態で、第2爪矯正器具10bの第1端部領域11aの上面の平面部分11a1が、第1側部21に接着される。
【0071】
当該押し当てにより、爪甲20の伸びを阻害する部分を凹ませて、爪甲20が伸びやすい状況にすることが可能になる。
凸部12のy方向後側の先端の蹄形形状により、爪甲20の斜めに切り落とされた先端部と凸部12のy方向後側の先端とが近づいた状態で、当該押し当てを行うことが出来る。
【0072】
第2施術における第2塗布工程では、中間領域11cの上面と爪甲20の間に、接着剤46が塗布される。
【0073】
第2施術における第2接着工程では、中間領域11cの上面が爪甲20に近づくように、接触部11(第2端部領域11b、中間領域11c)が曲げられ、中間領域11cの上面が、爪甲20の中央部(第1側部21と第2側部22の間)に接着される。
具体的には、第2端部領域11bの下面を押して、接触部11を撓ませる。
これにより、中間領域11cの上面が爪甲20に近づけられる。
このとき、把持部13の下面も押して、第1端部領域11aの接着が剥がれないようにするのが望ましい。
【0074】
第2施術における光硬化工程は、第1施術における光硬化工程と同様である。
第2施術における切り落とし工程は、第1施術における切り落とし工程と同様である。
第2施術における第2研磨工程では、研磨工具41を使って、第2爪矯正器具10bの患部と接着した領域の表面(下面)の研磨が行われる。
【0075】
第1施術及び第2施術における第2研磨工程の後、爪矯正器具10(第1爪矯正器具10a若しくは第2爪矯正器具10b)の一部が爪甲20に接着した状態で、一定期間(例えば、約1ヶ月)放置され、その後に、削り取り、爪の伸びた先端部分(爪甲遊離縁)とともに切り落としなどで取り外しされる。
矯正の進捗状況に応じて、数回(例えば5~6回)、爪矯正器具10の爪甲20への接着、放置、取り外しが繰り返される。
【0076】
(爪矯正器具10を爪甲20に固定したことの効果)
爪矯正器具10の爪甲20と接着した領域は、曲げられた状態で爪甲20に接着されている。
このため、曲げられた状態から平らな状態(曲げられる前の状態)に戻ろうとする反力で、爪甲20の側爪甲縁が内側に巻いたように変形した状態及び側爪甲縁が皮膚に食い込んだ状態を改善させることが出来る。
第2研磨工程によって、爪矯正器具10の爪甲20と接着した領域の表面(第1施術における上面、第2施術における下面)は滑らかに研磨されるため、患者の手などが、爪矯正器具10の爪甲20と接着した領域に触れても、当該表面に引っかかる可能性は低い。
また、爪矯正器具10が無色透明な素材で構成されている場合には、爪甲20を見ても、爪矯正器具10の一部が取り付けられていることに気づきにくい。
【0077】
また、側爪甲縁に爪矯正器具10を掛け止めすることをせず、爪甲20の表面の接着だけで爪矯正器具10の爪甲20への取り付けが行われる。
このため、掛け止めに起因した爪甲20を含む領域の痛みは生じない。
また、爪甲20と爪床の間に器具の一部を差し込めず、掛け止めが出来ない場合でも、爪矯正器具10の爪甲20への取り付けが容易に行える。
【0078】
(第2端部領域11bの幅を狭くしたことの効果)
第2端部領域11bは、第1端部領域11aよりもy方向の幅が狭い形状を有する。
このため、第2端部領域11bが、y方向の幅が広い形状を有する形態に比べて、第2接着工程での接触部11の曲げを行いやすく、且つ切り落とし工程での第2端部領域11bの切り落としを行いやすい。
第2端部領域11bは、第1端部領域11aよりもz方向の厚さが厚い形状を有する。
このため、第2端部領域11bが、z方向の厚さが薄い形状を有する形態に比べて、第2接着工程での接触部11の曲げによる破断が起きにくく出来る。
【0079】
(中間領域11cの形状の効果)
中間領域11cは、連続的に、y方向の幅が狭くなる形状を有する。
これにより、中間領域11cが階段状など尖った領域を有する形態に比べて、第2接着工程での接触部11の曲げによる破断が起きにくくできる。
【0080】
(硬化促進剤を用いることの効果)
促進剤塗布工程では、接触部11の爪甲20と対向する側の面に硬化促進剤が塗布され、第1接着工程及び第2接着工程で、爪甲20に塗布された接着剤46と接触する。
これにより、硬化促進剤を用いない形態に比べて、爪矯正器具10と爪甲20との接着の完了を早めることが可能になる。
なお、広い爪甲20に塗布する方が、接触部11に塗布する形態に比べて、接着領域の全体に多くの接着剤46を塗布しやすいので、爪甲20に接着剤46を塗布し、接触部11に硬化促進剤を塗布するのが望ましい。しかしながら、硬化促進剤を爪甲20に塗布し、接着剤46を接触部11に塗布する形態であってもよい。
【0081】
(光硬化を用いることの効果)
接着剤46に光硬化型接着剤を用いることで、爪矯正器具10と爪甲20の間から漏れ出た接着剤46について、光照射装置49を使って早期に硬化させることが可能になる。
【0082】
(接触部11が爪甲20の側部の両側と接することの効果)
また、第1端部領域11aが爪甲20の第1側部21と接着し、中間領域11cが爪甲20の中央部と接着し、第2端部領域11b若しくは中間領域11cが爪甲20の第2側部22と接着する。
このため、爪甲20の第1側部21がある側の矯正だけでなく、爪甲20の第2側部22がある側の矯正も一度に行うことが可能になる。
【0083】
(爪矯正器具10を構成する材料の応用例)
本実施形態では、爪矯正器具10が、セルロースナノファイバー、ABS樹脂などで構成される例を説明した。しかしながら、爪矯正器具10には、抗菌性材料と抗ウィルス性材料の少なくとも一方が含まれていてもよい。
例えば、抗菌性と抗ウィルス性(ウィルスに対する不活性効果)の少なくとも一方を備える金属(銀、銅など)を微細化したものに基づいて生成された組成物、抗菌性と抗ウィルス性の少なくとも一方を備える金属を取り込んだガラス材料が、当該抗菌性材料と抗ウィルス性材料の少なくとも一方として爪矯正器具10に含まれる。
具体的には、爪矯正器具10の全体に対して5重量パーセント程度、銅を微細化したものに基づいて生成された組成物が、当該抗菌性材料と抗ウィルス性材料の少なくとも一方として爪矯正器具10に含まれる形態が考えられる。
【0084】
(抗菌性材料を含むことの効果)
爪矯正器具10に菌、ウィルス、カビなどが増殖しにくく出来る。
【0085】
(銅を含有させることの効果)
材料に銅が含まれる場合、抗菌・抗ウィルス効果が得られるだけでなく、爪矯正器具10は、褐色がかった透明な素材で構成される。これにより、無色で且つ透明な素材で構成された場合に比べて、爪矯正器具10が患者の爪甲及び肌の色に近くなり、爪矯正器具10を患者の爪甲に取り付けた時に目立ちにくく出来る。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0087】
10 爪矯正器具
11 接触部
11a 第1端部領域
11a1 平面部分
11b 第2端部領域
11c 中間領域
12 凸部
13 把持部
20 爪甲(巻き爪矯正対象の爪の爪甲)
21 第1側部(爪甲の側部の一方)
22 第2側部(爪甲の側部の他方)
41 研磨工具
43 集塵装置
45 促進剤塗布用刷毛
46 接着剤
47 接着剤容器
49 光照射装置
50 照射領域
51 手動工具
A 被押し当て領域
【要約】
【課題】 掛け止めを行わずに、爪の矯正が可能な爪矯正器具などを提供する。
【解決手段】 爪矯正器具10は、第1端部領域11aと、第2端部領域11bと、中間領域11cとを有する接触部11を備える。接触部11の第1方向の長さが、矯正対象の爪の側爪甲縁の一方と爪の側爪甲縁の他方の間の長さよりも長くなるように、接触部11が形成される。第1端部領域11aと中間領域11cは、矯正対象の爪の爪甲20に接触する。第2端部領域11bは、第1端部領域11aと中間領域11cが爪甲20に取り付けられた時に、爪甲20がある領域から突出する。第1端部領域11aは、爪甲20の第1側部21に、接着だけで固定される。中間領域11cは、第1側部21と第2側部22の間の領域に、第1端部領域11aが第1側部21に固定され且つ接触部11が曲げによる弾性変形した状態で、接着で固定される。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16