(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】回転式電子部品用摺動子
(51)【国際特許分類】
H01H 19/10 20060101AFI20221205BHJP
H01H 1/26 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
H01H19/10 D
H01H1/26 A
(21)【出願番号】P 2021113283
(22)【出願日】2021-07-08
(62)【分割の表示】P 2017234435の分割
【原出願日】2017-12-06
【審査請求日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】P 2016244564
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000215833
【氏名又は名称】帝国通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】塚原 吉晴
(72)【発明者】
【氏名】桑原 敏
(72)【発明者】
【氏名】林 直紀
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0106624(US,A1)
【文献】特開2004-095242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 19/10
H01H 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光用突起を突出する回転体の摺動子取付面に取り付けられ、この回転体に対向して設置される摺接パターン上を摺動してその出力信号を変化させる回転式電子部品用摺動子において、
前記回転体の摺動子取付面に取り付けられる基部
を有し、
前記基部の外周辺に略直線状部分を設け、当該略直線状部分の中央位置に当該基部を前記回転体の摺動子取付面に取り付けた際に、当該摺動子取付面に設けた導光用突起への当接を回避する凹部を形成し、
一方前記基部の外周辺の前記略直線状部分の前記凹部の両側に両端が接続され
、その途中に前記摺接パターンに当接する接点部を形成してなるアーム
部を有し、
前記アーム部の両端近傍部分を基部から折り返すことでアーム部を基部上に位置させ、
さらに前記アーム部には、一方の折り返し部近傍から接点部を分割して他方の折り返し部近傍に至る1本又は複数本のスリットが形成されて
いることを特徴とする回転式電子部品用摺動子。
【請求項2】
請求項1に記載の回転式電子部品用摺動子において、
前記基部の
外周辺の前記アーム部を接続した
2か所の部分
よりもさらに両外側部分の外周辺を、前記回転体の摺動子取付面に設けた回転止め用突部外周の回転止め部に係止する回転止め部としたことを特徴とする回転式電子部品用摺動子。
【請求項3】
回転体に取り付けられ、この回転体に対向して設置される摺接パターン上を摺動してその出力信号を変化させる回転式電子部品用摺動子において、
前記回転体の摺動子取付面に取り付けられる基部と、
両端が前記基部の
外周辺の2か所に接続され、その途中に前記摺接パターンに当接する接点部を形成してなるアーム部と、
を有し、
前記アーム部の両端近傍部分を基部から折り返すことでアーム部を基部上に位置させ、
さらに前記アーム部には、一方の折り返し部近傍から接点部を分割して他方の折り返し部近傍に至る1本又は複数本のスリットが形成され、
前記基部の
外周辺の前記アーム部を接続した
2か所の部分
よりもさらに両外側部分の外周辺を、前記回転体の摺動子取付面に設けた回転止め用突部外周の回転止め部に係止する回転止め部としたことを特徴とする回転式電子部品用摺動子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式スイッチや回転式可変抵抗器等の各種回転式電子部品に用いて好適な回転式電子部品用摺動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、回転式電子部品に用いる摺動子の中には、例えば特許文献1の
図3,
図4に示す摺動子(80)のように、基部(81),(83)の外周から突出するアーム部(85)の根元部分を折り曲げ、折り曲げたアーム部(85)の先端に接点部(89)を設ける構造のものがあった。そして摺動子(80)は、基部(81),(83)に設けた小孔からなる取付部(87)に、回転体(50)の下面に設けた小突起(65)を挿入し、小突起(65)の先端を熱カシメすることによって、回転体(50)の下面に取り付けられる。
【0003】
しかし、上記構造の摺動子(80)においては、小突起(65)による熱カシメの箇所が破損した場合、アーム部(85)の折り曲げた根元部分を支点にしてその基部(81),(83)が回転体(50)の下面から離れる方向に移動しようとするため、接点部(89)が摺接パターン(31)に弾接する力が弱まって接触不良を起こしてしまう虞があった。
【0004】
一方、回転式電子部品に用いる摺動子の中には、例えば特許文献2の
図4に示す摺動子(140)のように、基部(141)の外周から突出する接点用アーム部(143)の根元部分を約180°折り返し、折り返して基部(141)上に位置する接点用アーム部(143)の先端に接点部(145)を設けた構造のものもあった。そしてこの摺動子(140)は、基部(141)に設けた取付孔(147)に、回転つまみ(100)の摺動子取付面(113)に設けた取付突起(121)を挿入し、取付突起(121)の先端を熱カシメすることによって、回転つまみ(100)の摺動子取付面(113)に取り付けられる。この摺動子(140)の場合、その構造上、接点部(145)が摺接パターン(157)に弾接することで、基部(141)の面全体が摺動子取付面(113)に押し付けられるので、取付突起(121)による熱カシメの箇所が破損しても、基部(141)は摺動子取付面(113)から浮き上がらず、このため接点部(145)の摺接パターン(157)との接触不良は生じにくい。
【0005】
しかし、特許文献2に示す摺動子(140)の場合、接点用アーム部(143)が直線状であって且つ片持ち構造なので、この摺動子(140)を回転しながらその接点部(145)を摺接パターン(157)に摺接させた際、接点用アーム部(143)にねじれ方向のストレスが加わり、経年変化によって、接点用アーム部(143)が破断してしまう虞があった。また接点用アーム部(143)が片持ち構造なので、接点用アーム部(143)の長さが短くなり、その分、接点部(145)の摺接パターン(157)に対する接触圧が強くなり、摺接パターン(157)の寿命を短くしてしまう虞もあった。またこの摺動子(140)の接点用アーム部(143)は直線状なので、この接点用アーム部(143)を回転方向の接線方向に向けて設置してこれを回転した際に、その回転中心から最も離れた点(外側の接点用アーム部(143)の左右両角部)と、最も接近した点(内側の接点用アーム部(143)の内側辺中央部分)による軌跡の幅が、両接点用アーム(143)の直線方向の幅よりも大きくなり、その分、摺動子(140)の使用半径スペースを大きく取らなければならないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-54058号公報
【文献】特開2014-127409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、たとえ回転体に対する固定が破損しても接点部による摺接パターンへの弾接状態が維持でき、またアーム部の破損を効果的に防止できて耐久性を向上することができる回転式電子部品用摺動子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、導光用突起を突出する回転体の摺動子取付面に取り付けられ、この回転体に対向して設置される摺接パターン上を摺動してその出力信号を変化させる回転式電子部品用摺動子において、前記回転体の摺動子取付面に取り付けられる基部を有し、前記基部の外周辺に略直線状部分を設け、当該略直線状部分の中央位置に当該基部を前記回転体の摺動子取付面に取り付けた際に、当該摺動子取付面に設けた導光用突起への当接を回避する凹部を形成し、一方前記基部の外周辺の前記略直線状部分の前記凹部の両側に両端が接続され、その途中に前記摺接パターンに当接する接点部を形成してなるアーム部を有し、前記アーム部の両端近傍部分を基部から折り返すことでアーム部を基部上に位置させ、さらに前記アーム部には、一方の折り返し部近傍から接点部を分割して他方の折り返し部近傍に至る1本又は複数本のスリットが形成されていることを特徴としている。
アーム部の両端を基部の外周の2か所に接続したので、アーム部の基部への取付強度を強くすることができ、これによってアーム部の破損を効果的に防止することができ、耐久性が向上する。同時に、アーム部の両端近傍部分を基部から折り返すことでアーム部を基部上に位置させたので、例え熱カシメ等による回転体への基部の固定が破損(完全な破損や、固定にゆるみが生じる等のがたつきの発生等を含む)しても、接点部が摺接パターンに弾接することで、基部の面全体が摺動子取付面に押し付けられ、これによって基部は浮き上がらず、このため接点部の摺接パターンへの接触不良は生じにくくなり、回転式電子部品としての機能を維持することができる。
【0009】
また本発明のように、1本のアーム部をスリットによって2つに分割すれば、分割されたそれぞれの接点部の摺接パターンに対する接触圧を小さくでき、その寿命を長くすることができると共に、その接触フィーリングを向上でき、さらに分割されたそれぞれの接点部が摺接パターンに摺接することで、接触安定性の向上(摺接パターンへの確実な接触)を図ることができる。スリットの数は、1本のアーム部について複数本設けても良い。
【0010】
また本発明は、前記基部の外周辺の前記アーム部を接続した2か所の部分よりもさらに両外側部分の外周辺を、前記回転体の摺動子取付面に設けた回転止め用突部外周の回転止め部に係止する回転止め部としたことを特徴としている。
【0011】
また本発明は、回転体に取り付けられ、この回転体に対向して設置される摺接パターン上を摺動してその出力信号を変化させる回転式電子部品用摺動子において、前記回転体の摺動子取付面に取り付けられる基部と、両端が前記基部の外周辺の2か所に接続され、その途中に前記摺接パターンに当接する接点部を形成してなるアーム部と、を有し、前記アーム部の両端近傍部分を基部から折り返すことでアーム部を基部上に位置させ、さらに前記アーム部には、一方の折り返し部近傍から接点部を分割して他方の折り返し部近傍に至る1本又は複数本のスリットが形成され、前記基部の外周辺の前記アーム部を接続した2か所の部分よりもさらに両外側部分の外周辺を、前記回転体の摺動子取付面に設けた回転止め用突部外周の回転止め部に係止する回転止め部としたことを特徴としている。
これによって、熱カシメ等による回転体への基部の固定が破損(完全な破損や、固定にゆるみが生じる等のがたつきの発生等を含む)した状態で、回転体を左右何れの方向に回転しても、左右回転方向の力は、一対の回転止め部によって支えられ、正常な動作を維持することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る回転式電子部品用摺動子によれば、回転体に対する固定が破損しても、接点部による摺接パターンへの弾接状態を維持することができ、またアーム部の破損を効果的に防止することができて耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】回転式電子部品用摺動子10,10と回転体100とを示す分解斜視図である。
【
図2】回転つまみ100に摺動子10,10を取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図3】摺動子10,10を拡大して示す斜視図である。
【
図4】摺動子10,10を拡大して示す平面図である。
【
図7】回転式電子部品1を別の角度から見た斜視図である。
【
図8】回転式電子部品1の概略断面図(
図6のA-A概略断面図)である。
【
図9】回転式電子部品1から第4ケース300と防滴部材250と第3ケース220と第2ケース70を分解して示す分解斜視図である。
【
図10】
図9を別の角度から見た分解斜視図である。
【
図11】第4ケース300とパッキン250と第3ケース220と第2ケース70を除く回転式電子部品1の他の部品の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の1実施形態に係る一対の回転式電子部品用摺動子(以下「摺動子」という)10,10と、これら摺動子10,10を取り付ける回転体(以下「回転つまみ」という)100とを示す分解斜視図、
図2は回転つまみ100に摺動子10,10を取り付けた状態(但し、熱カシメ前の状態)を示す斜視図、
図3は摺動子10,10を拡大して示す斜視図、
図4は摺動子10,10を拡大して示す平面図、
図5は摺動子10を拡大して示す側面図である。
【0015】
これらの図において、一対の摺動子10,10は同一形状なので、各部を示す符号は同一符号とする。即ち、摺動子10は、何れも1枚の弾性金属板製であって、回転つまみ100の下記する摺動子取付面113に取り付けられる基部11と、両端が前記基部11の外周の2か所に接続され、その途中に下記する摺接パターン165に当接する接点部17,18を形成してなる一対のアーム部13,15と、を具備して構成されている。
【0016】
基部11は、略台形状の平板であり、対向して設置されるもう一方の摺動子10に対向する側の外周辺11aを、略直線状とし、その中央位置に半円弧状の凹部11bを形成して構成されている。凹部11bは、下記する回転つまみ100の導光用突起115を逃げるために設けられている。外周辺11aの前記凹部11bの両側には、一対のアーム部13,15のそれぞれ両端部が接続されている。さらに外周辺11aの前記アーム部13を接続した部分の両外側部分は、直線状の回転止め部11cとなっている。また基部11の略中央には、矩形状の小孔からなる位置決め部11dが設けられ、また基部11の左右両側の外周辺11e、11fの近傍位置には、1つずつ円形の小孔からなる取付部11gが形成されている。両取付部11gは、
図4に示すように、真上から見て、アーム部13,15に重ならない、アーム部13,15の外側位置に設けられている。
【0017】
一対のアーム部13,15は、何れも円弧状であって、前述のように、その両端を基部11の外周辺11aの2か所に接続し、その途中(中央)に接点部17,18を設けて構成されている。各アーム部13,15の両端は、何れも基部11の外周辺11aから外方に向けて突出した後、折り返し部13a,15aにおいて約180°折り返され、短い直線部13b,15bを経た後、さらに斜め上方(基部11から徐々に離れていく方向)に向けて傾斜しており、これによって、アーム部13,15全体が、基部11の上方に位置し、且つ摺動子10を真上から見て基部11内に位置するようにしている。一方のアーム部15は、もう一方のアーム部13の内側に同心円状に所定の隙間を介して配置されている。各アーム部13,15には、一方の折り返し部13a,15a近傍から接点部17,18を分割して他方の折り返し部13a,15a近傍に至るスリット13c、15cが形成されている。接点部17,18は、アーム部13,15の中央部分を、基部11から離れる方向に向けて湾曲・突出させて構成されている。
【0018】
この摺動子10を製造するには、
図5に点線で示すように、まず、平板を、同一平面上において、基部11やアーム部13,15や接点部17,18の外形形状に打ち抜き加工し、接点部17,18の曲げ加工を行い、最後に、同図に実線で示すように、アーム部13,15の根元部分を折り返す。これによって摺動子10が完成する。
【0019】
次に、上記摺動子10を用いて構成される回転式電子部品1について説明する。
図6は回転式電子部品1の斜視図、
図7は回転式電子部品1を別の角度から見た斜視図、
図8は回転式電子部品1の概略断面図(
図6のA-A概略断面図)、
図9は回転式電子部品1から第4ケース300と防滴部材(以下「パッキン」という)250と第3ケース220と第2ケース70を分解して示す分解斜視図、
図10は
図9を別の角度から見た分解斜視図、
図11は第4ケース300とパッキン250と第3ケース220と第2ケース70を除く回転式電子部品1の他の部品の分解斜視図、
図12は
図11を別の角度から見た分解斜視図である。なお、回転つまみ100の操作部101を露出する面側を前面、その反対側を後面ということとする。
【0020】
これらの図に示すように、回転式電子部品1は、第1ケース20と、第2ケース70と、一対の摺動子10を取り付けた回転つまみ100と、端子ユニット140と、回路基板160と、導光体190と、第3ケース220と、パッキン250と、第4ケース300とを具備して構成されている。
【0021】
第1ケース20は非透明材料からなる合成樹脂を略矩形箱型に成形した成形品であり、その一方の面側に略円筒状の軸受部21を設け、この軸受部21の回転つまみ100を向く側に凹部からなる第1収納部23を、回路基板160を向く側に凹部からなる第2収納部25を設けて構成されている。第1ケース20の対向する上下側面の第1収納部23側の部分には、下記する第2ケース70の爪部79を係止する矩形状の貫通孔からなる一対の被係止部27が設けられている。また第1ケース20の対向する上下側面の第2収納部25側の部分には、下記する第3ケース220の爪部223を係止する矩形状の貫通孔からなる一対の被係止部29が形成されている。また第1ケース20の対向する上下側面の前記両被係止部27,29の間の位置には、下記する第4ケース300の被係止部309を係止する爪状の一対の係止部30が形成されている。軸受部21の後方には、第2収納部25側に向かって開口する略矩形状の端子ユニット収納部31が形成されている。また前記軸受部21の円弧状外周面の一部分と、その左右両側の第1収納部23側に突出する辺の部分はパッキン搭載面33(33a~33c)となっている。また図示はしていないが、第1収納部23内の軸受部21を設けた面の下方(下記するクリック用ボール127に対向する位置)には、円弧状方向(クリック用ボール127の移動する円弧方向)に向かって凹凸するクリック係合部が形成されている。
【0022】
第2ケース70は、非透明材料からなる合成樹脂を一体成形して構成されており、略平板矩形状のケース本体部71と、ケース本体部71から回転つまみ100側に向けて突出する円板状のつまみ支持部73とを具備して構成されている。つまみ支持部73の外周には第1ケース側に向けて突出する円筒状の外側壁74が設けられ、その内側には同心円状に突出する有底円筒状の突出部75が設けられている。ケース本体部71の上下両側辺からは、回転つまみ100側に向けて一対の係止爪77が突出している。係止爪77は平板状であり、その先端近傍の両外側位置に爪部79を設けている。またケース本体部71の外周の一部は、下記するパッキン250を当接するパッキン搭載面81となっている。
【0023】
回転つまみ100は合成樹脂の成形品であり、透明材料と非透明材料からなる二色成形品である。回転つまみ100は略円板形状であり、その外周面が操作部101となっている。回転つまみ100の第2ケース70側を向く面には、円形の凹部103が設けられ、凹部103内には、2つの筒状の突出部105,107が同心円状に突設されている。両突出部105,107の間の円形の凹部は、前記第2ケース70の突出部75を挿入する挿入部109となっている。また突出部107中央の凹部の底面は、略円錐凹状の光反射面110(
図8参照)となっている。回転つまみ100の第1ケース20側を向く面の中央からは、略円柱形状の軸部111が突出している。軸部111の上面は摺動子取付面113となっており、さらに摺動子取付面113の中央からは円錐台形状の導光用突起115が突出している。導光用突起115の先端面は光入射面117になっている。摺動子取付面113上には、
図1に示すように、小突起からなる摺動子取付突部119が一対ずつ2組形成されている。これら摺動子取付突部119は、前記摺動子10の各取付部11gに対向する位置に形成されている。一対の摺動子取付突部119の中間位置には略矩形状の小突起からなる位置決め部120が形成されている。位置決め部120は、前記摺動子10の位置決め部11dに対向する位置に形成されている。また各組の摺動子取付突部119の中間位置にも小突起からなる回転止め用突部121が形成され、この回転止め用突部121の対向する一対ずつの辺を回転止め部122としている。回転止め部122は、前記摺動子10の回転止め部11cに対向する位置に形成されている。軸部111の周囲には、リング状の防滴用凹部123が形成されている。また回転つまみ100の第1ケース20側を向く面の外周部分には、有底円形の穴からなるクリック機構収納部124が形成されている。クリック機構収納部124には、コイルバネ125とクリック用ボール127とが収納される。
【0024】
また上述のように、回転つまみ100は、2種類の樹脂A1,A2(
図8参照)を一体成形することによって構成されている。一方の樹脂A1は透明な樹脂であり、もう一方の樹脂A2は不透明な樹脂である。透明な樹脂A1は、その全体がつまみ用導光部A1を構成し、この回転つまみ100の軸部111と操作部101の間を光学的につないでおり、操作部101の外周面と、導光用突起115の光入射面117間を光学的に結ぶように成形されている。光入射面117は円形の平面状に形成されている。つまみ用導光部A1は、略円板状の導光本体部A11と、導光本体部A11の中心から軸部111側に垂直に突出して軸部111の中心部分を構成する導光軸部A13とを具備している。導光本体部A11の導光軸部A13とは反対側の面の中央に、前記光反射面110が形成されている。また前記両突出部105,107も導光本体部A11の一部を構成している。一方、樹脂A2は、導光本体部A11の光反射面110側の面の操作部101の裏面側の部分と、導光本体部A11の軸部111側の面略全体の部分とに形成されており、軸部111の導光軸部A13を除く部分と、摺動子取付面113と、防滴用凹部123とを構成している。
【0025】
端子ユニット140は、6本の金属板製の端子141を、略矩形状の成形樹脂製の第1端子保持部材143と、略四角棒状の第2端子保持部材144内にインサート成形して構成されている。各端子141はその途中の2か所でほぼ直角に屈曲することで、その一端は後方に向かって1列に6本突出し、他端は一側面側を向いて1列に6本突出している。
【0026】
回路基板160は、硬質で略矩形状の板からなる絶縁基板161の所定位置に、円形の貫通する挿通部163を設け、この挿通部163の周囲の回転つまみ100を向く面側に、前記摺動子10の接点部17,18を摺接させる摺接パターン165を形成し、また絶縁基板161の後方の外周辺近傍に一列に前記端子141の一端を挿入する6つの小孔からなる端子挿入孔167を形成し、さらに絶縁基板161の前記摺接パターン165を設けた反対の面側の所定位置に発光素子169と、他の各種電子部品171を取り付けて構成されている。絶縁基板161上には、図示しない回路パターンが形成されており、前記摺接パターン165や発光素子169や各種電子部品171や前記端子挿入孔167に取り付けられる端子141間を電気的に接続する。摺接パターン165としては、スイッチパターンや抵抗体パターン等の種々のパターンが適用できる。
【0027】
導光体190は、透明な合成樹脂を、回路基板160側の面が解放された略矩形箱型に一体成形して構成されている。導光体190の回路基板160の面側は凹状の基板収納部191となっており、その底面の所定位置から円柱状の光導出部193を突出している。基板収納部191は、前記回路基板160全体を収納して覆う形状に形成されている。光導出部193は前記回路基板160の挿通部163に挿入できる寸法に形成されており、その先端面は光出射面195となっている。光出射面195は円形の平面状に形成されており、前記光入射面117と同一の外径寸法に形成されている。また導光体190の第4ケース300側の面も光出射面197となっている。また、導光体190の第3ケース220側の面には、光出射面195,197方向に光を反射させる光反射面199が形成されている。
【0028】
第3ケース220は、非透明な合成樹脂を略平板矩形状に成形して構成されており、前記第1ケース20の第2収納部25を略覆う外形形状に形成されている。第3ケース220の上下両側辺からは、第1ケース20側に向けて一対の係止爪221を突出している。係止爪221は平板状であり、その先端近傍の両外側位置に爪部223を設けている。
【0029】
パッキン250は、エラストマー等の弾性体を、横断面円形で略矩形のリング状に形成し、3辺を直線状に、もう1つの辺を円弧状に湾曲した形状として構成されている。
【0030】
第4ケース300は、合成樹脂の成形品であり、第1ケース20側が解放された略矩形箱型に成形して構成されており、これによって収納部301を形成している。第4ケース300の前面(以下「化粧面」という)303の前記回転つまみ100に対向する位置には、回転つまみ100の操作部101の一部を露出する開口305が形成され、また前記導光体190の光出射面197に対向する位置には、照光部307が形成されている。照光部307は、第4ケース300を構成する透明な成形樹脂の表面に塗布した不透光性の塗装を、所望の文字や記号等の形状にレーザー等によって切り欠くことで形成されているが、他の種々の方法によって形成しても良い。第4ケース300の対向する上下両側面の所定位置には、それぞれ前記第1ケース20の係止部30を係止する矩形状の貫通孔からなる被係止部309が形成されている。
【0031】
次に、回転式電子部品1を組み立てるには、まず予め、回転つまみ100の防滴用凹部123内に、防滴用のグリスG(
図8参照)を充填しておく。一方、端子ユニット140の側方に向かって突出する各端子141の先端を、回路基板160の各端子挿入孔167に挿入し、その反対側において回路基板上の回路パターンに半田によって固定しておく。
【0032】
そして
図1,
図2に示すように、まず、回転つまみ100の摺動子取付面113に一対の摺動子10の基部11を載置し、その際、摺動子取付面113の各摺動子取付突部119を摺動子10の各取付部11gに挿入し、その先端を熱カシメして(又は圧入のみで)取り付ける。このとき上述したように、両取付部11gは真上から見てアーム部13,15に重ならないそれらの外側位置に離れて設けられているので、それらの熱カシメする際に用いるポンチがアーム部13,15に干渉せず、熱カシメを容易に行うことができる。
【0033】
このとき同時に、回転つまみ100の各位置決め部120は摺動子10の各位置決め部11dに挿入(圧入ではない)され、さらに同時に、回転つまみ100の各回転止め用突部121の回転止め部122に摺動子10の各回転止め部11cが係止される。なおさらに回転止め用突部121は熱カシメしてもよい(この例では熱カシメしない)。
【0034】
次に、第1ケース20の第1収納部23内に、前記摺動子10を取り付け且つコイルバネ125とクリック用ボール127をクリック機構収納部124に収納した回転つまみ100を収納し、その際、回転つまみ100の軸部111を、第1ケース20の軸受部21内に回動自在に挿入し、軸支する。このとき、回転つまみ100のグリスGを充填した防滴用凹部123内に、第1ケース20の軸受部21が挿入されることで、防滴処理部が形成される。次に、前記回転つまみ100の側面を覆うように、第2ケース70を取り付け、係止爪77の爪部79を第1ケース20の被係止部27に係止し、これによって回転つまみ100を挟んだ状態で第2ケース70を第1ケース20に取り付ける。このとき、第2ケース70のつまみ支持部73が回転つまみ100の側面を覆い、その突出部75が回転つまみ100の挿入部109に挿入される。
【0035】
次に、前記端子ユニット140を取り付けた回路基板160と導光体190とを、第1ケース20の第2収納部25内に収納し、さらにその上から第3ケース220を被せる。そして第3ケース220の各爪部223を、第1ケース20の各被係止部29に係止する。
【0036】
このとき、回路基板160の摺接パターン165には、摺動子10の接点部17,18が当接する。また、端子ユニット140は、端子ユニット収納部31内に収納される。またこのとき、導光体190は回路基板160を覆っている。また導光体190の光導出部193は、回路基板160の挿通部163に挿入され、その先端の光出射面195は回転つまみ100の光入射面117に接近して対向している。
【0037】
次に、パッキン250を、第4ケース300のケース本体収納部301内に挿入し、第4ケース300の開口305の裏側を囲む位置に設けたパッキン搭載面311(
図8参照)に当接・設置する。そして、このパッキン250を取り付けた第4ケース300を、前記第1ケース20の回転つまみ100を露出する側の部分に、その上から被せるように取り付ける。その際、各係止部30を、第4ケース300の各被係止部309に係止し、これによって回転式電子部品1の組み立てを完了する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0038】
このとき、
図6,
図7に示すように、回転つまみ100の操作部101の一部は、開口305から露出する。また第4ケース300の照光部307の裏面に対向する位置に、導光体190の光出射面197が配置される。またこのとき、パッキン250は、第4ケース300のパッキン搭載面311と、前記第1,第2ケース20、70のパッキン搭載面33(33a~33c),81との間で挟持され、密閉される。
【0039】
以上のようにして組み立てられた回転式電子部品1において、回転つまみ100を回転すると、摺動子10の接点部17,18が回路基板160の摺接パターン165上を摺動し、これによって各端子141間の検出出力が変化する。
【0040】
ここでこの実施形態に用いている摺動子10においては、アーム部13,15の両端を基部11の外周(外周辺11a)の2か所に接続したので(両持ち構造)、アーム部13,15の基部11への取付強度を強くすることができ、これによってアーム部13,15の破損を効果的に防止することができ、耐久性が向上する。またアーム部13,15は、摺動子10の回転方向に沿う円弧形状なので、その接点部17,18を摺接パターン165に当接させながら回転した際でも、アーム部13,15がねじれることはなく、この点からも摺動子10の耐久性を向上することができる。またこの摺動子10のアーム部13,15は、摺動子10の回転方向に沿う円弧状なので、これを回転した際の、その回転中心から最も離れた点(外側の円弧部分)と、最も接近した点(内側の円弧部分)による軌跡の幅が、両アーム部13,15の幅と同一になり、これによって、これらが直線状である場合に比べ、摺動子10の使用半径スペースを小さくすることができる。
【0041】
同時に、アーム部13,15の両端近傍部分を基部11から折り返すことでアーム部13,15を基部11上(上方)に位置させたので、アーム部13,15の弾発力は、基部11全体をほぼ均一に回転つまみ100の摺動子取付面113に押え付ける方向の力として作用し、このため摺動子取付突部119の熱カシメ(又は圧入)等による基部11の回転つまみ100への固定が破損(完全な破損や、固定にゆるみが生じる等のがたつきの発生等を含む)しても、基部11は浮き上がらず、このため接点部17,18の摺接パターン165への接触不良は生じにくく、回転式電子部品1としての機能を維持できる。特にこの摺動子10の場合、基部11に設けた位置決め部11dに、摺動子取付面113に設けた位置決め部120を挿入しているので、摺動子取付突部119による固定が破損しても、摺動子10の位置を、正規の位置に保持することができる。さらに、基部11に設けた一対の回転止め部11cが、摺動子取付面113に設けた回転止め部122に係止しているので、摺動子取付突部119による固定が破損した状態で、回転つまみ100を左右何れの方向に回転しても、左右回転方向の力は、一対の回転止め部122によって支えられる。つまり、摺動子10は、摺動子取付突部119による固定が破損しても、その機能を失うことなく、正常な動作を維持できる。
【0042】
また上記摺動子10においては、アーム部13,15が両持ち構造なので、片持ち構造に比べてアーム部13,15の長さを長くでき、その分、接点部17,18の摺接パターン165に対する接触圧を弱くでき、摺接パターン165の寿命を長くすることができる。さらに各アーム部13,15には、一方の折り返し部13a,15a近傍から接点部17,18を分割して他方の折り返し部13a,15a近傍に至るスリット13c,15cを形成しているので、分割されたそれぞれの接点部17,18の摺接パターン165に対する接触圧をさらに小さくでき、さらに摺接パターン165の寿命を長くすることができると共に、その接触フィーリングを向上でき、さらに分割されたそれぞれの接点部17,18の内の少なくとも何れかが摺接パターン165に確実に摺接することで、接触安定性を向上することができる。
【0043】
また上記摺動子10においては、その折り返し部13a,15aとアーム部13,15と接点部17,18を、回転つまみ100の摺動子取付面113の回転中心線に直交する仮想仕切り線L1(
図1,
図2参照)によって二分割される片側の領域内に収まるように構成しているので、少なくとも一対の摺動子10をコンパクトに回転つまみ100の摺動子取付面113に設置することができる。
【0044】
一方、発光素子169を発光すれば、その光は
図8に一点鎖線で示すように、導光体190内に導入される。導光体190内に導入された光の一部は、光反射面199で反射されることで前記光出射面197に向かい、その面から放出され、前記第4ケース300の照光部307をその裏面側から明るく照らし出す。一方、発光素子169から導光体190内に導入された光の一部は、光反射面199で反射されることで、前記光出射面195に向かい、その面から放出され、回転つまみ100の光入射面117からつまみ用導光部A1内に導入される。つまみ用導光部A1内に導入された光は、導光軸部A13内を進み、光反射面110等で反射されることで、導光本体部A11内を進み、操作部101の外周面に導かれ、操作部101を明るく照らし出す。
【0045】
一方、この回転式電子部品1は、図示しない電子機器の操作パネルに装着され、その際、第4ケース300の化粧面303が、操作パネルの外部に露出する。そしてこの操作パネルの外部に露出した化粧面303に液体が降りかかることがある。降りかかった液体は、第4ケース300の開口305からその内部に浸入する。浸入した液体は、第4ケース300の内側面と、第1,第2ケース20,70の外側面との間の隙間から浸入しようとするが、その浸入は、パッキン250によって防止される。
【0046】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では、一対の摺動子10を回転つまみ100に取り付けたが、1つの摺動子10のみを取り付けても良い。またアーム部は、1本または3本以上であっても良い。
【0047】
また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
1 回転式電子部品
10 摺動子(回転式電子部品用摺動子)
11 基部
13,15 アーム部
13a,15a 折り返し部
13c,15c スリット
17,18 接点部
100 回転つまみ(回転体)
113 摺動子取付面
165 摺接パターン
L1 仮想仕切り線