(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】管継手構造
(51)【国際特許分類】
E03C 1/02 20060101AFI20221205BHJP
F16L 53/38 20180101ALI20221205BHJP
E03B 9/10 20060101ALI20221205BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
E03C1/02
F16L53/38
E03B9/10 A
E03C1/042 E
(21)【出願番号】P 2019007118
(22)【出願日】2019-01-18
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(73)【特許権者】
【識別番号】500581009
【氏名又は名称】ブリヂストンタイヤ長野販売株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 健人
(72)【発明者】
【氏名】中山 涼志
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-3992(JP,A)
【文献】実開昭51-141966(JP,U)
【文献】特開平8-311939(JP,A)
【文献】特開昭60-192193(JP,A)
【文献】特開2018-91133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00-1/10
F16L 53/38
F16L 5/00
E03B 7/12
E03B 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流される送水管と、前記送水管の軸方向と交差する方向に取り付けられる水栓とを接続する管継手と、
前記管継手が収容される水栓ボックスと、
前記水栓ボックスの前記水栓側に設けられ、前記水栓を前記管継手に接続可能とする第1開口部が形成された平板と、
前記平板を前記水栓側から覆い、前記水栓を前記管継手に接続可能とする第2開口部が形成されると共に、正面視で前記管継手と重ならない位置に第3開口部が形成された化粧板と、
を備え、
前記第3開口部には、前記送水管に沿って設けられ内側にヒーター線を通すことが可能なヒーターガイド管を挿通可能とされ、
前記平板は、正面視で前記化粧板の第3開口部と重なる位置に切欠きを有すると共に、前記平板に対して前記水栓ボックスの内部へ向かって斜めに延び、前記ヒーターガイド管の前記管継手側の端部を前記第3開口部側に向けるガイドを有する、管継手構造。
【請求項2】
前記化粧板の前記第3開口部は、前記第2開口部よりも前記送水管に近い位置にある、請求項1に記載の管継手構造。
【請求項3】
前記ガイドは、前記平板に対し35~45°の角度で設けられている、請求項1又は請求項2に記載の管継手構造。
【請求項4】
前記平板における前記ガイドとは別の位置には、前記ヒーターガイド管の前記管継手側の端部を引掛け可能であり前記化粧板に覆われる引掛け部が設けられている、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の管継手構造。
【請求項5】
前記化粧板の前記第3開口部の少なくとも一部が、前記ヒーターガイド管が延びる方向に長い楕円形状となっている、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の管継手構造。
【請求項6】
前記化粧板の前記第3開口部を閉塞可能な蓋部材を有する、請求項1~請求項5の何れか1項に記載の管継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラーにヘッダーボックスを取り付け、空気の通る管をヘッダーボックス内のエアーヘッダーに接続し、該空気の通る管を給水管と共にサヤ管により被覆した構造が開示されている(特許文献1参照)。この構造では、建物内外の空気を送風機によって取り入れてヘッダーボックスの内のエアーヘッダーに通し、空気又は温風を空気の通る管に送ることによって、給水管の凍結を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、凍結防止のために空気や温風を用いることは、熱効率やコストの点で好ましくないと考えられる。
【0005】
本発明は、水栓と送水管とを接続する管継手が水栓ボックスに収容された構造において、水栓ボックスを大きくすることなく、水栓側から、給水管に沿うヒーターガイド管へヒーター線を挿通し易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る管継手構造は、液体が流される送水管と、前記送水管の軸方向と交差する方向に取り付けられる水栓とを接続する管継手と、前記管継手が収容される水栓ボックスと、前記水栓ボックスの前記水栓側に設けられ、前記水栓を前記管継手に接続可能とする第1開口部が形成された平板と、前記平板を前記水栓側から覆い、前記水栓を前記管継手に接続可能とする第2開口部が形成されると共に、正面視で前記管継手と重ならない位置に第3開口部が形成された化粧板と、を備え、前記第3開口部には、前記送水管に沿って設けられ内側にヒーター線を通すことが可能なヒーターガイド管を挿通可能とされ、前記平板は、正面視で前記化粧板の第3開口部と重なる位置に切欠きを有すると共に、前記平板に対して前記水栓ボックスの内部へ向かって斜めに延び、前記ヒーターガイド管の前記管継手側の端部を前記第3開口部側に向けるガイドを有する。
【0007】
この管継手構造では、水栓ボックスに設けられる化粧板の第3開口部にヒーターガイド管を挿通可能である。ヒーターガイド管は、送水管に沿って設けられ、内部にヒーター線を挿通可能である。このヒーターガイド管の端部を、平板の第1開口部及び化粧板の第3開口部を通じて、化粧板の手前に容易に引き出すことができる。第3開口部は、正面視で管継手と重ならない位置に形成されているので、管継手に接続される水栓とヒーターガイド管とが干渉し難い。したがって、水栓ボックスの大きさを大きくしなくても、ヒーターガイド管の内側にヒーター線を通し易い。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係る管継手構造において、前記化粧板の前記第3開口部が、前記第2開口部よりも前記送水管に近い位置にある。
【0009】
第3開口部が第2開口部に対し送水管から遠い側にあると、管継手をよけながらヒーターガイド管を通すことになるので、その部位にヒーター線を通し難くなる。この管継手構造では、第3開口部が第2開口部よりも送水管に近い位置にあるので、ヒーターガイド管にヒーター線を通し易くなるように、該ヒーターガイド管を水栓ボックスに取り付けることができる。
【0010】
第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る管継手構造において、前記ガイドが、前記平板に対し35~45°の角度で設けられている。
【0011】
この管継手構造では、ガイドが平板に対し35~45°の角度で設けられているので、ヒーターガイド管の管継手側の端部を、化粧板の第3開口部を通じて化粧板の手前に引き出したときに、ヒーターガイド管を大きな曲率半径で湾曲させることができる。このため、ヒーターガイド管にヒーター線を更に通し易くなる。
【0012】
第4の態様は、第1~第3の態様の何れか1態様に係る管継手構造において、前記平板における前記ガイドとは別の位置には、前記ヒーターガイド管の前記管継手側の端部を引掛け可能であり前記化粧板に覆われる引掛け部が設けられている。
【0013】
ヒーターガイド管にヒーター線を通さない場合、つまりヒーターガイド管の非使用時には、ヒーターガイド管が化粧板の第3開口部から見えていると見栄えが良くない。この管継手構造では、平板に設けられた引掛け部に、ヒーターガイド管の管継手側の端部を引掛け可能であるので、ヒーターガイド管の非使用時に、ヒーターガイド管の管継手側の端部を水栓ボックス内に容易に収めることができる。また、ヒーターガイド管の使用時には、化粧板を水栓ボックスから外し、ヒーターガイド管の端部を引掛け部から外し、化粧板の第3開口部に通しつつ、化粧板を水栓ボックスに取り付けることで、ヒーターガイド管の端部を容易に引き出すことができる。
【0014】
第5の態様は、第1~第4の態様の何れか1態様に係る管継手構造において、前記化粧板の前記第3開口部の少なくとも一部が、前記ヒーターガイド管が延びる方向に長い楕円形状となっている。
【0015】
この管継手構造では、化粧板の第3開口部の少なくとも一部が、ヒーターガイド管が延びる方向に長い楕円形状となっているので、ヒーターガイド管の管継手側の端部が化粧板に対して傾いた状態でも、該端部を第3開口部に通し易い。
【0016】
第6の態様は、第1~第5の態様の何れか1態様に係る管継手構造において、前記化粧板の前記第3開口部を閉塞可能な蓋部材を有する。
【0017】
この管継手構造では、ヒーターガイド管の非使用時に、化粧板の第3開口部を蓋部材により閉塞できる。このため、ヒーターガイド管の非使用時における化粧板の見栄えを向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る管継手構造によれば、水栓と送水管とを接続する管継手が水栓ボックスに収容された構造において、水栓ボックスを大きくすることなく、水栓側から、給水管に沿うヒーターガイド管へヒーター線を挿通し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る管継手構造において、ヒーターガイド管が第3開口部に露出した状態を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る管継手構造において、第3開口部が蓋部材により閉塞された状態を示す斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る管継手構造を示す分解斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る管継手構造において、化粧板を取り外した状態を示す正面図である。
【
図5】
図4において、化粧板固定枠を取り外した状態を示す正面図である。
【
図6】本実施形態に係る管継手構造を示す、
図1における6-6矢視拡大断面図(水栓は省略)である。
【
図7】ヒーターガイド管の管継手側の端部がガイドの位置まで押し込まれ、第3開口部が蓋部材により閉塞された状態を示す拡大断面図である。
【
図8】第3開口部が蓋部材により閉塞され、第3開口部の奥にヒーターガイド管の管継手側の端部が位置している状態を示す、部分破断拡大正面図である。
【
図9】ヒーターガイド管の管継手側の端部に抜止め部材が取り付けられ、該抜止め部材によって該端部がガイドに係止されている状態を示す部分拡大正面図である。
【
図10】ヒーターガイド管の管継手側の端部が、平板の引掛け部に引っ掛けられている状態を示す部分拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
図1、
図2において、本実施形態に係る管継手構造10は、建物の壁12における例えば室内側に水栓14を接続するために用いられる。
図3において、管継手構造10は、管継手16と、水栓ボックス18と、平板20と、化粧板22と、を有している。壁12には、略矩形の貫通部12Aが形成されている。貫通部12Aの縦横寸法は、例えば平板20の縦横寸法よりも若干小さく設定されている。なお、
図4、
図5、
図9、
図10では、壁12の図示が省略されている。
【0021】
図6において、管継手16は、液体が流される送水管24と、送水管24の軸方向と交差する方向に取り付けられる水栓14(
図1)とを接続する配管部材である。この管継手16は、L字形に形成された所謂エルボであるが、他の各種形状であってもよい。
【0022】
送水管24は、壁12に沿って略鉛直方向に延び、上端が管継手16の一端16Aに接続された、例えば樹脂管である。送水管24の樹脂材料としては、例えば、ポリブテン、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、及びポリプロピレン等のポリオレフィン、並びに塩化ビニル等が挙げられる。樹脂は1種のみを用いても2種以上を併用してもよい。樹脂の中でも、ポリブテンが好適に用いられ、ポリブテンを主成分として含むことが好ましい。例えば、送水管24を構成する樹脂材料中において、ポリブテンを85質量%以上含むことがより好ましい。また、送水管24を構成する樹脂材料には、他に添加剤が含有されてもよい。
【0023】
送水管24の外径は、特に限定されるものではないが、例えば10mm~100mmの範囲に設定されている。最も好ましい送水管24の外径は12mm~35mmの範囲である。
【0024】
また、送水管24の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば1.0mm~5.0mmに設定されている。最も好ましい送水管24の厚さは1.4mm~3.2mmの範囲である。
【0025】
管継手16の他端16Bは、壁12と直交する方向に向けられると共に、該壁12、平板20及び化粧板22を通じて室内側に開口している。管継手16の他端16Bの端面は、例えば化粧板22の表面と略面一となるように配置されている。
図1において、水栓14は、管継手16に直接接続されているが、これに限られず、水栓14と管継手16との間に他の配管が接続されていてもよい。また、水栓14の構成は、図示のものに限られない。
【0026】
水栓ボックス18は、管継手16が収容される部材である。
図3に示されるように、水栓ボックス18は、例えば上壁18A、一対の側壁18B、奥壁18Cを有している。奥壁18Cには、複数の雌ねじ18Dが形成されている。管継手16には、貫通孔16Dを有する取付け座16Cが設けられている。取付け座16Cは、管継手16の水栓ボックス18への取付け時に奥壁18Cと対向する部位である。この貫通孔16Dにねじ26を通し、該ねじ26を奥壁18Cの雌ねじ18Dに螺合させることにより、取付け座16Cが奥壁18Cに固定される。このようにして、管継手16が水栓ボックス18に締結されている。
【0027】
管継手16には、奥壁18Cと対向する取付け座16Cだけでなく、上壁18Aと対向する取付け座16Eも設けられている。図示は省略するが、上壁18Aに雌ねじを設けておき、管継手16を水栓ボックス18に締結する際に、取付け座16Eを上壁18Aに固定することも可能である。
【0028】
側壁18Bの壁12側の端部には、雌ねじ18Eが形成された取付け座18Fが設けられている。
図6に示されるように、取付け座18Fは、両側の側壁18Bの端縁をそれぞれ折り曲げて形成されている。雌ねじ18Eは、取付け座18Fの上端部と下端部にそれぞれ設けられている。この取付け座18Fの少なくとも一部は、水栓ボックス18の壁12への取付け時Fに、該壁12の室外側に当接するようになっている。
【0029】
図2、
図5に示されるように、平板20は、水栓ボックス18の水栓14(
図1)側に設けられている。具体的には、水栓ボックス18が壁12の室外側に設けられるのに対し、平板20は、水栓14(
図1)が設けられる側、つまり壁12の室内側に設けられている。換言すれば、壁12は、平板20と水栓ボックス18とによって挟まれている。
【0030】
平板20の四隅には、ねじ28が挿通される貫通孔20Aが形成されている。ねじ28は、室内側から貫通孔20Aに差し込まれ、壁12の貫通部12Aを通じて室外側へ達し、水栓ボックス18の雌ねじ18Eに螺合している。これにより、平板20と水栓ボックス18とが締結されている。
【0031】
図3から
図6において、平板20には、水栓14(
図1)を管継手16に接続可能とする第1開口部31が形成されている。この第1開口部31は、例えば切欠きであり、管継手16の他端16Bが挿通可能なように、該他端16Bの外径よりも一回り大きく形成されている。平板20のうち、正面視で化粧板22の第3開口部33(後述)と重なる位置には、後述するヒーターガイド管30を通すための切欠き20Bが形成されている。切欠き20Bは、鉛直方向に長い略矩形に形成されている。切欠き20Bは、第1開口部31に連なっており、例えば打抜き加工により第1開口部31及び切欠き20Bを一度に成形可能である。
【0032】
図6に示されるように、平板20における例えば切欠き20Bの下端には、ガイド34が一体的に設けられている。このガイド34は、平板20に対して水栓ボックス18の内部へ向かって、例えば斜め上方に延び、ヒーターガイド管30の管継手16側の端部30A(以下、単に「ヒーターガイド管30の端部30A」と称する。)を、化粧板22の第3開口部33(後述)側に向ける部位である。ガイド34は、例えばプレス成形により平板20に一体成形され、平板20に対し、例えば35~45°の角度で設けられている。換言すれば、ガイド34と平板20とがなす角度θが、35~45°である。
【0033】
図3、
図5に示されるように、ガイド34には、ヒーターガイド管30を挿通可能な例えば貫通孔34Aが形成されている。
図3において、貫通孔34Aは、貫通孔20Aよりも平板20の幅方向内側で、かつ雌ねじ20Cよりも平板20の幅方向外側に設けられている。このガイド34により、ヒーターガイド管30の端部30Aが下側のねじ28と干渉せずに(
図4)、化粧板22の第3開口部33に案内されるようになっている。なお、貫通孔34Aの代わりに切欠き(図示せず)がガイド34に形成されていてもよい。
【0034】
図5、
図10に示されるように、平板20におけるガイド34とは別の位置には、引掛け部36が設けられている。この引掛け部36は、ヒーターガイド管30の端部30Aを引掛け可能である。また、引掛け部36は、通常時は化粧板22に覆われている。引掛け部36は、例えば、平板20の正面視において、切欠き20Bの左上の隅部に形成された矩形の張出し部である。引掛け部36には、上側のねじ28が挿通される貫通孔20A(
図3)が形成されているが、引掛け部36は、ねじ28よりも下方に張り出している。したがって、ねじ28が存在していても、ヒーターガイド管30の端部30Aを引掛け部36に引掛け可能である。なお、引掛け部36の位置はこれに限られず、切欠き20Bの上下方向の中央部等、他の位置に設けられていてもよい。
【0035】
引掛け部36を設ける代わりに、
図9に示されるように、ヒーターガイド管30のうちガイド34より上方に、抜止め部材46が取り付けられていてもよい。抜止め部材46はヒーターガイド管30に嵌め込まれる例えばリングである。抜止め部材46の内径は、ヒーターガイド管30の外径よりわずかに小さい。これにより、抜止め部材46がヒーターガイド管30から容易に離脱することがないようになっている。また、抜止め部材46の外径は、ガイド34の貫通孔34Aの直径より大きい。これにより、抜止め部材46が貫通孔34Aを通過しないようになっている。
【0036】
図3に示されるように、平板20における例えば上下2箇所の左右方向中央部には、雌ねじ20Cが設けられている。この雌ねじ20Cは、化粧板固定枠38を平板20に締結するためのねじ部である。化粧板固定枠38における上下2箇所の左右方向中央部には、ねじ41が挿通される貫通孔38Aが形成されている。ねじ41は、室内側から貫通孔38Aに差し込まれ、平板20の雌ねじ20Cに螺合している。これにより、化粧板固定枠38と平板20とが締結されている。
図6に示されるように、化粧板固定枠38は、平板20の周囲を囲むようにして、壁12に当接又は近接している。
【0037】
図4に示されるように、化粧板固定枠38の左側には、矩形の張出し部38Bが設けられている。この張出し部38Bには、例えば楕円孔38Cが形成されている。この楕円孔38Cには、ヒーターガイド管30が挿通されるようになっている。
【0038】
図1から
図3、
図6、
図7において、化粧板22は、平板20を水栓14(
図1)側から覆う部材である。具体的には、化粧板22は、化粧板固定枠38に、例えば爪嵌合により着脱自在に嵌め込まれている。化粧板22には、水栓14を管継手16に接続可能とする第2開口部32が形成されると共に、正面視で管継手16と重ならない位置に第3開口部33が形成されている。
【0039】
第2開口部32は例えば円孔であり、管継手16の他端16Bが挿通可能なように、該他端16Bの外径よりも一回り大きく形成されている(
図6)。他端16Bが化粧板22より水栓ボックス18側に奥まっている場合には、第2開口部32を通じて水栓14を他端16Bに接続可能であればよい。この場合、第2開口部32が他端16Bの外径より小さくてもよい。
【0040】
第3開口部33には、ヒーターガイド管30を挿通可能とされている。ヒーターガイド管30は、送水管24に沿って設けられ、内側にヒーター線40(
図1)を通すことが可能な、可撓性を有する例えば樹脂管である。
図4、
図5に示されるように、送水管24とヒーターガイド管30は、樹脂製の被覆層44により覆われ、互いに密着した状態で束ねられている。これにより、複合管50が構成されている。
【0041】
被覆層44としての樹脂には、例えば、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びエチレンプロピレンジエンゴム、並びにこれらの樹脂の混合物が挙げられる。樹脂の中でも、ポリウレタンが好ましい。被覆層44はポリウレタンを主成分として含む層(すなわち、多孔質ウレタン層)であることが好ましい。例えば、被覆層44の構成成分中において、ポリウレタンを80質量%以上含むことが好ましく、90質量%以上含むことがより好ましい。なお、被覆層44としての多孔質樹脂層には、他の添加剤が含有されてもよい。
【0042】
被覆層44における孔の存在比率(例えば、発泡体の場合であれば発泡率)はJIS-K6400-1(2012年)の付属書1に記載の方法を用いて測定することができる。ここでは、25個/25mm以上の存在比率であることが好ましく、更に45個/25mm以下の存在比率であることがより好ましい。被覆層44は発泡体であることが好ましい。
【0043】
また、被覆層44としての多孔質樹脂層の密度は12kg/m3~22kg/m3の範囲に設定されている。
【0044】
送水管24の端部を管継手16の一端16Aに接続するときに、被覆層44の端部を送水管24の軸方向に沿って短縮変形させてずらすと、送水管24の端部が露出する。多孔質樹脂層の密度が22kg/m3以下に設定されることにより、被覆層44は適度な柔軟性を有している。したがって、複合管50における被覆層44の端部を容易に短縮変形させて送水管24の端部を露出させることができる。
【0045】
一方、多孔質樹脂層の密度が12kg/m3以上に設定されることにより、被覆層44は適度な強度を有し、送水管24とヒーターガイド管30を含む複合管50の製造等の加工時における被覆層44の破れや破損の発生を効果的に抑制することができる。
【0046】
ここで、多孔質樹脂層の密度はJIS-K7222(2005年)に規定の方法により測定することができる。なお、測定環境は温度23℃、相対湿度45%である。
【0047】
多孔質樹脂層の密度を上記範囲に制御する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば孔の存在比率(例えば、発泡体である場合であれば発泡率)を調整する方法、樹脂の分子構造を調整する方法等が挙げられる。樹脂の分子構造を調整する方法として、樹脂の原料となるモノマーの分子構造や、それらの架橋構造を調整する方法を実用的に使用することができる。
【0048】
ヒーターガイド管30は、ポリエチレン、ポリプロピレン又は脂肪族ポリアミドを主素材とする合成樹脂材により形成された管であり、可撓性を有している。また、ヒーターガイド管30は、例えば送水管24よりも小径で、表面に凹凸のない円管である。ヒーターガイド管30は、一般的には、5mmから20mmの外径を有し、内部にヒーター線40を挿通して、その発熱を外部に十分伝えられる部材である。なお、ヒーターガイド管30が、山部と谷部を有する蛇腹状の管、所謂コルゲート管であってもよい。ヒーターガイド管30が送水管24よりも小径であることから、
図3に示されるように、ヒーターガイド管30が挿通される第3開口部33は、管継手16の他端16Bが挿通される第2開口部32より小さい。
【0049】
ヒーター線40としては、サーモスタット付ヒーター若しくは自己制御型ヒーターのどちらのヒーター線でも良いが、好ましくは、自己制御型ヒーターがよい。自己制御型ヒーターを使用することで、特に凍結が予想される部分にのみヒーターガイド管30を配管するなど、送水管24を効率よく暖めることができる。
【0050】
第3開口部33は、第2開口部32よりも送水管24に近い位置にある。具体的には、化粧板22の正面視において、第3開口部33は、水栓14のフランジ14Aと干渉しない位置、例えば第2開口部32の左下に位置している。水栓14の種類によっては、フランジ14Aでなく椀座(図示せず)が用いられることがあるが、第3開口部33は、この椀座とも干渉しないように配置されている。
【0051】
第3開口部33の少なくとも一部は、ヒーターガイド管30が延びる方向に長い楕円形状となっている。
図1、
図3、
図8に示されるように、第3開口部33の室内側には、断面U字状の案内部22Aが張り出している。
図6に示されるように、案内部22Aは、室内側に向かって斜め上方に張り出している。
【0052】
一方、第3開口部33の裏側には、室外側に向かって斜め下方に延びる案内部22Bが張り出している。案内部22Bは、第3開口部33における案内部22Aの反対側に位置している。案内部22A,22Bは、筒状に構成されている。
【0053】
上記の案内部22A,22Bは、化粧板22に一体成形されている。ヒーターガイド管30の端部30Aは、案内部22A,22Bに案内されることで、室内側の斜め上方に開口した状態とされる。
【0054】
図2、
図8に示されるように、本実施形態では、ヒーターガイド管30の非使用時には、化粧板22の第3開口部33に蓋部材42を取り付けて閉塞可能とされている。蓋部材42は、蓋本体42Aと、嵌合部42Bとを有している。蓋本体42Aは、蓋部材42の取付け時に室内側に露出する部位である。嵌合部42Bは、筒状の案内部22A,22Bに嵌め込まれる部位である。
【0055】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。
図1、
図6において、本実施形態に係る管継手構造10では、水栓ボックス18に設けられる化粧板22の第3開口部33にヒーターガイド管30を挿通可能である。
図4、
図5に示されるように、ヒーターガイド管30は、送水管24に沿って設けられ、内部にヒーター線40を挿通可能である。このヒーターガイド管30の端部30Aを、平板20の第1開口部31及び化粧板22の第3開口部33を通じて、化粧板22の手前に容易に引き出すことができる。第3開口部33は、正面視で管継手16と重ならない位置に形成されているので、管継手16に接続される水栓14とヒーターガイド管30とが干渉し難い。したがって、水栓ボックス18の大きさを大きくしなくても、ヒーターガイド管30の内側にヒーター線40を通し易い。
【0056】
第3開口部33が第2開口部32に対し送水管24から遠い側にあると、管継手16をよけながらヒーターガイド管30を通すことになるので、その部位にヒーター線40を通し難くなる。本実施形態では、第3開口部33が第2開口部32よりも送水管24に近い位置にあるので、ヒーターガイド管30にヒーター線40を通し易くなるように、該ヒーターガイド管30を水栓ボックス18に取り付けることができる。
【0057】
また、
図6に示されるように、本実施形態では、ガイド34が平板20に対し35~45°の角度θで設けられている。したがって、ヒーターガイド管30の端部30Aを、化粧板22の第3開口部33を通じて化粧板22の手前に引き出したときに、ヒーターガイド管30を大きな曲率半径Rで湾曲させることができる。曲率半径Rは、例えば130mm以上であることが望ましい。このため、ヒーターガイド管30にヒーター線40を更に通し易くなる。ヒーターガイド管30に通したヒーター線40に電力を供給することにより、送水管24内の液体の凍結を防止できる。
【0058】
ヒーターガイド管30にヒーター線40を通さない場合、つまりヒーターガイド管30の非使用時には、ヒーターガイド管30が化粧板22の第3開口部33から見えていると見栄えが良くない。本実施形態では、
図10に示されるように、平板20に設けられた引掛け部36に、ヒーターガイド管30の端部30Aを引掛け可能である。したがって、ヒーターガイド管30の非使用時に、ヒーターガイド管30の端部30Aを水栓ボックス18内に容易に収めることができる。引掛け部36の代わりに、
図9に示されるように、抜止め部材46を用いて、ヒーターガイド管30の端部30Aを水栓ボックス18内に収めてもよい。
【0059】
ヒーターガイド管30を再度使用する時には、化粧板22を水栓ボックス18から外し、ヒーターガイド管30の端部30Aを引掛け部36から外し、化粧板22の第3開口部33に通しつつ、化粧板22を水栓ボックス18に取り付ける。これにより、ヒーターガイド管30の端部30Aを容易に室内側に引き出すことができる。
【0060】
本実施形態では、化粧板22の第3開口部33の少なくとも一部が、ヒーターガイド管30が延びる方向に長い楕円形状となっているので、ヒーターガイド管30の端部30Aが化粧板22に対して傾いた状態でも、該端部30Aを第3開口部33に通し易い。
【0061】
また、
図2、
図8に示されるように、本実施形態では、ヒーターガイド管30の非使用時に、化粧板22の第3開口部33を蓋部材42により閉塞できる。このため、ヒーターガイド管30の非使用時における化粧板22の見栄えを向上させることができる。
【0062】
このように、本実施形態によれば、水栓14と送水管24とを接続する管継手16が水栓ボックス18に収容された構造において、水栓ボックス18を大きくすることなく、水栓14側から、給水管に沿うヒーターガイド管30へヒーター線40を挿通し易くすることができる。
【0063】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0064】
平板20における第1開口部31が切欠きであるものとしたが、第1開口部31は貫通孔であってもよい。また、化粧板22の第3開口部33が、第2開口部32よりも送水管24に近い位置にあるものとしたが、第3開口部33の位置はこれに限られない。
【0065】
ガイド34が、平板20に対し35~45°の角度θで設けられているものとしたが、角度θはこれに限られない。
【0066】
平板20におけるガイド34とは別の位置に、ヒーターガイド管30の端部30Aを引掛け可能な引掛け部36が設けられるものとしたが、引掛け部36が設けられない構成であってもよい。
【0067】
第3開口部33の少なくとも一部が、ヒーターガイド管30が延びる方向に長い楕円形状となっているものとしたが、第3開口部33の形状はこれに限られない。
【0068】
化粧板22の第3開口部33を閉塞可能な蓋部材42を用いない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10…管継手構造、14…水栓、16…管継手、16A…一端、16B…他端、18…水栓ボックス、20…平板、22…化粧板、24…送水管、30…ヒーターガイド管、30A…端部、31…第1開口部、32…第2開口部、33…第3開口部、34…ガイド、36…引掛け部、40…ヒーター線、42…蓋部材