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  • 特許-トナー及びトナーの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】トナー及びトナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/09 20060101AFI20221205BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20221205BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
G03G9/09
G03G9/087 325
G03G9/087 331
G03G9/097 365
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018055535
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2018189947
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2017089856
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100131392
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100125357
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100131532
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 浩一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155871
【弁理士】
【氏名又は名称】森廣 亮太
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】池田 萌
(72)【発明者】
【氏名】菅野 伊知朗
(72)【発明者】
【氏名】小野▲崎▼ 裕斗
(72)【発明者】
【氏名】浜 雅之
(72)【発明者】
【氏名】小松 望
(72)【発明者】
【氏名】小堀 尚邦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 仁思
(72)【発明者】
【氏名】橋本 武
(72)【発明者】
【氏名】松原 諒文
(72)【発明者】
【氏名】藤川 博之
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特許第4270561(JP,B2)
【文献】特開2010-122370(JP,A)
【文献】特開2017-045048(JP,A)
【文献】特開2014-063155(JP,A)
【文献】特開平10-097102(JP,A)
【文献】特開2004-138923(JP,A)
【文献】特開2004-252227(JP,A)
【文献】特開2004-287313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該着色剤が、下記式(1)で表される化合物を含有し、
該トナー粒子が、結晶性ポリエステル樹脂を含有し、
該結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、結着樹脂100.0質量部に対して、5.0質量部以上30.0質量部以下であり、
該結着樹脂が、非晶性ポリエステル樹脂を含有し、
該トナー粒子中の該化合物の結晶は、CuKα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、回折角2θが5.0°以上6.0°以下の範囲に、半値幅が0.410°以上0.431°以下の回折ピークを有することを特徴とするトナー。
【化1】

(該式(1)中、X及びXは、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子又はメチル基を示す。)
【請求項2】
前記半値幅が0.410°以上0.430°以下である請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記半値幅が0.415°以上0.425°以下である請求項1又は2に記載のトナー。
【請求項4】
前記結晶性ポリエステル樹脂と前記式(1)で表される化合物の含有質量比(結晶性ポリエステル樹脂:式(1)で表される化合物)が、75:25~30:70である請求項1~3のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項5】
前記結晶性ポリエステル樹脂が、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸を含有するカルボン酸成分との縮重合体である、請求項1~4のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項6】
前記トナー粒子が、ポリオレフィンに飽和脂環式化合物由来の構造部位を有するスチレンアクリル樹脂がグラフト重合している重合体を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載のトナー。
【請求項7】
前記トナー粒子が、下記式(2)で表される化合物を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載のトナー。
【化2】

[式(2)中、R、R、R、Rは、それぞれ独立して炭素数1~20個のアルキル基又は炭素数6~10個のアリール基を示し、R、Rはそれぞれ独立して、炭素数6~10個のアリール基、炭素数1~30個のアシル基若しくは炭素数1~20個のアルキル基を示す、又は、RとRとが結合しており、RとRとが同時に結合している窒素原子と、Rと、Rと、が含まれる環式有機官能基を示す。]
【請求項8】
前記式(1)で表される化合物が、2,9-ジメチルキナクリドンと無置換のキナクリドンとの固溶体である、請求項1~のいずれか1項に記載のトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、及びトナージェット方式などに用いられるトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式によるカラー画像形成技術の発展に伴い、さらなる高画質化への要求はますます高まっている。高画質化を達成するためには、トナー粒子中での顔料の分散性を向上させ、トナー粒子中での顔料の着色能力を最大限に発揮させることが重要である。
一般的に有機顔料は、発色性や耐光性に優れる一方で、無機顔料と比較するとトナー粒子中で分散しにくい。そのため、有機顔料の分散性を高めるために顔料の一次粒径を大きくする検討が行われていたが、顔料の一次粒径を大きくすると顔料の着色能力を十分に発揮することが困難であった。
特にマゼンタトナーにおけるキナクリドン顔料は結晶性が極めて高く、顔料の一次粒子同士が凝集しやすいために、トナー粒子中での分散性が低く、色味変動が起こりやすく、十分な着色能力を発揮することができなかった。しかしながら、キナクリドン顔料は耐有機溶剤性及び耐光性に優れる有機顔料であるため、トナー粒子中に分散させる技術が必要とされている。
そこで、キナクリドン顔料を結着樹脂中に均一分散させる技術として、顔料分散剤を用いる方法や、予め顔料のマスターバッチ化を実施するなどの技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、キナクリドン顔料の分散性を高めるために、キナクリドン系の分子骨格と、トナーのバインダーとなる樹脂との親和性に優れたオリゴマー又はポリマーと、が共有結合した構造を有する化合物を添加する技術が提案されている。
また、特許文献2では、キナクリドン顔料と樹脂とを混合してマスターバッチ化工程を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-323414号公報
【文献】特開2008-285649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、いずれの方法においても顔料の着色能力を最大限に発揮するためには十分であるとはいえず、一次粒径の小さいキナクリドン顔料の分散性に優れ、高画質かつ、色味安定性に優れるトナーの開発が必要である。
本発明は、上記の課題を解決したトナーを提供することにある。具体的には、高画質かつ色味安定性に優れたトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該着色剤が、下記式(1)で表される化合物を含有し、
該トナー粒子が、結晶性ポリエステル樹脂を含有し、
該結晶性ポリエステル樹脂の含有量が、結着樹脂100.0質量部に対して、5.0質量部以上30.0質量部以下であり、
該結着樹脂が、非晶性ポリエステル樹脂を含有し、
該トナー粒子中の該化合物の結晶は、CuKα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、回折角2θが5.0°以上6.0°以下の範囲に、半値幅が0.410°以上0.431°以下の回折ピークを有することを特徴とするトナーに関する。

【0007】
【化1】

(該式(1)中、X及びXは、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子又はメチル基を示す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高画質かつ色味安定性に優れたトナーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】二軸混練装置の一例
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
また、モノマーユニットとは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。
さらに、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において吸熱ピークが観測される樹脂である。
【0011】
本発明のトナーは、
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該着色剤が、上記式(1)で表される化合物を含有し、
該トナー粒子中の該化合物の結晶は、CuKα線を用いたX線回折スペクトルにおいて、回折角2θが5.0°以上6.0°以下の範囲に、半値幅が0.400°以上0.440°以下の回折ピークを有することを特徴とする。
該化合物の特性を上記に制御することにより、トナー粒子中での顔料分散性に優れ、高画質かつ色味安定性に優れたトナーを得ることができる。
【0012】
マゼンタトナーに主に用いられる着色剤であるキナクリドン顔料のトナー粒子中での分散状態をコントロールする手法を以下のように考えている。
本発明者らは、キナクリドンの構造と結晶状態に着目し、結晶状態をコントロールすることで、色味安定性に優れるトナーが得られることを見出した。
具体的には、トナー粒子中の式(1)で表される化合物(以下単に、化合物(1)ともいう)の結晶の結晶子径を制御することによって達成できると考えている。
結晶子径は、最小微結晶単位の大きさを表し、X線回折分析において得られる、化合物(1)の結晶に由来する回折ピークの半値幅から算出できる。
なお、半値幅とは、回折ピーク強度の半分の強度におけるピーク幅である。結晶子径が大きくなればなるほど、回折ピークはシャープな形状となり、半値幅は小さくなる。
したがって、X線回折によって得られる回折ピークの半値幅を上記範囲にすることで、トナー粒子中の化合物(1)の結晶子径が制御できる。
回折ピークの半値幅は、0.400°以上0.440°以下である。また、好ましくは、0.410°以上0.430°以下であり、より好ましくは、0.415°以上0.425°以下である。
回折ピークの半値幅が0.400°未満である場合、化合物(1)の結晶子が大きく成長し過ぎた状態であるため、化合物(1)同士の相互作用が大きくなり、トナー粒子中での分散状態が十分でなく、色味安定性が低下する。
一方、回折ピークの半値幅が0.440°を超える場合、トナー粒子中の化合物(1)の結晶性が崩れ、発色性が低下する。
【0013】
トナー粒子中の化合物(1)の結晶子径をコントロールするには、化合物(1)の分子同士の歪みに効果的に作用する化合物を添加し、さらに、機械的なせん断力やシェアを加える手法が一例として挙げられる。
従来のトナーでは、化合物(1)の結晶成長性が強いため、トナー粒子の製造工程において、化合物(1)の結晶子径が大きく成長することを抑制することが難しかった。
しかしながら、トナー粒子の製造工程において、化合物(1)とは異なる結晶子径を有する化合物、例えば、結晶性ポリエステル樹脂を添加することで、化合物(1)と結晶性ポリエステル樹脂との相互作用を生じさせ、化合物(1)の結晶成長性を弱めることができる。また、化合物(1)に、強い機械的なせん断力やシェアを加えることで、化合物(1)が所望の結晶子径を維持したまま、トナー粒子に含有させることができる。
【0014】
該トナー粒子は、下記式(2)で表される化合物(以下単に、化合物(2)ともいう)を含有することが、顔料の分散性及びトナーの色味安定性向上の観点から好ましい。
【化2】

[式(2)中、R、R、R、Rは、それぞれ独立してアルキル基又はアリール基を示し、R、Rはそれぞれ独立して、アリール基、アシル基若しくはアルキル基を示す、又は、RとRとが結合しており、RとRとが同時に結合している窒素原子と、Rと、Rと、が含まれる環式有機官能基を示す。]
【0015】
式(2)中、R及びRにおけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、2-エチルプロピル、2-エチルヘキシル基、シクロヘキセニルエチル基等の飽和、または、不飽和の直鎖状、分岐状、もしくは、環状の炭素数1~20個の1級~3級のアルキル基が挙げられる。
式(2)中、R及びRにおけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭素数6~10個の無置換フェニル基、置換フェニル基が挙げられる。置換基としては、アルキル基及びアルコキシ基等が挙げられる。なお、置換基を有する場合、上記炭素数は、該置換基の炭素数を含む数を表す。また、置換基は1つでも複数でもよい。具体例としては、フェニル基、4-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基等が挙げられる。
式(2)中、R及びRは、特に、2-エチルヘキシル基等の分岐状のアルキル基を用いる場合、結着樹脂との相溶性が良くなり、結晶性ポリエステルによるトナーのシャープメルト性を高めるため、好ましい。
【0016】
式(2)中、Rにおけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、2-メチルブチル基、2,3,3-トリメチルブチル基、オクチル基等の炭素数1~20個のアルキル基が挙げられる。
式(2)中、Rにおけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基等の炭素数6~10個のアリール基が挙げられる。
式(2)中、Rが、特に、メチル基、n-ブチル基、2-メチルブチル基、2,3,3-トリメチルブチル基等のアルキル基の場合、結着樹脂との相溶性が良くなり、化合物(1)の分散性が向上し、トナーの帯電安定性を高めるため、好ましい。
【0017】
式(2)中、Rにおけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等の炭素数1~20個の1級~3級のアルキル基が挙げられる。特に、Rが3級のアルキル基であるt-ブチル基の場合、化合物(1)の分散性が向上し、トナーの帯電安定性を高めるため、好ましい。
式(2)中、Rにおけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、下記式(3)で示される構造が好ましい。
【化3】

式(3)中、R、RおよびRは、水素原子、アルキル基、またはアルコキシ基を表す。
【0018】
及びRにおけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基などの炭素数1~4個のアルキル基が挙げられ、中でもメチル基であることが好ましい。
及びRにおけるアルコキシ基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、または、tert-ブトキシ基などの炭素数1~4個のアルコキシ基が挙げられる。
【0019】
式(3)中、Rにおけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、2-エチルプロピル基、2-エチルヘキシル基、シクロヘキセニルエチル基などの飽和、または、不飽和の直鎖状、分岐状、もしくは、環状の炭素数1個以上20個以下の1級~3級のアルキル基が挙げられる。
式(3)中、Rにおけるアルコキシ基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、または、tert-ブトキシ基などの炭素数1~20個のアルコキシ基が挙げられる。
【0020】
式(2)中、R及びRにおけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、2-エチルプロピル、2-エチルヘキシル基、シクロヘキセニルエチル基等の飽和、または、不飽和の直鎖状、分岐状、もしくは、環状の炭素数1個以上20個以下の1級~3級のアルキル基が挙げられる。
式(2)中、R及びRにおけるアシル基としては、特に限定されるものではないが、ホルミル基、炭素数2以上30以下の置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7以上30以下の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、ヘテロ環カルボニル基が挙げられる。具体的には、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、2-ピリジルカルボニル基、2-フリルカルボニル基等が挙げられる。
式(2)中、R及びRにおけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭素数6以上10以下の置換もしくは無置換のアリール基が挙げられる。置換基としては、アルキル基及びアルコキシ基等が挙げられる。なお、置換基を有する場合、上記炭素数は、該置換基の炭素数を含む数を表す。また、置換基は1つでも複数でもよい。炭素数6以上10以下の置換もしくは無置換のアリール基としては、具体的に、フェニル基、4-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基等が挙げられる。
式(2)中、RとRとが結合しており、R及びRとが同時に結合している窒素原子と、Rと、Rと、が含まれる環式有機官能基としては、特に限定されるものではないが、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルフォリニル基等が挙げられる。
式(2)中、特に、RとRのどちらか少なくとも一方が、アルキル基である場合、結着樹脂との相溶性が良くなり、化合物(1)の分散性が向上し、トナーの帯電安定性を高めるため、好ましい。
特に、RおよびRのうち少なくとも一方がメチル基の場合において、化合物(1)の分散性およびトナーの帯電安定性が優れたものとなる。
【0021】
本発明にかかる化合物(2)は、国際公開第92/19684号に記載されている公知の方法を参考にして合成することが可能である。
上記化合物(2)の製造方法について、以下に一態様を示すが、製造方法がこれに限定されるわけではない。
【0022】
【化4】
【0023】
なお、上記反応式中の各化合物、及び、化合物(2)中のR~Rは、前述したものと同義である。また、化合物(2)には、シス-トランス構造異性体があるが、該シス-トランス構造異性体も本発明の範疇である。更に、上記の2つの反応式において、ピリドン化合物(B)の構造が異なっているが、両者は平衡関係にある異性体であり、実質的に同じ化合物を意味する。
本発明にかかる化合物(2)は、アルデヒド化合物(A)とピリドン化合物(B)を縮合させることで製造することができる。
【0024】
また、本発明で用いられるアルデヒド化合物(A)は国際公開第92/19684号に記載されている公知の方法を参考にして合成することが可能である。アルデヒド化合物(A)の好ましい例として、アルデヒド化合物(1)~(5)を以下に示すが、下記の化合物に限定されるものではない。
【化5】
【0025】
ピリドン化合物(B)を得るための環化工程に関して説明する。
ピリドン化合物(B)は、ヒドラジン化合物、酢酸メチル化合物、および酢酸エチル化合物の3成分をカップリングさせる環化工程によって合成することができる。
この環化工程は無溶媒で行うことも可能であるが、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒としては反応に関与しないものであれば特に制限はなく、例えば、水、メタノール、エタノール、酢酸、トルエンが挙げられる。また、2種以上の溶媒を混合して用いることもでき、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶媒の使用量は、酢酸メチル化合物100質量部に対し、0.1質量部以上1000質量部以下の範囲で用いることが好ましく、より好ましくは1.0質量部以上150質量部以下である。
【0026】
また本環化工程では、塩基を使用すると反応を速やかに進行させることができるため、塩基を用いることが好ましい。用いることができる塩基としては、具体的には例えば、ピリジン、ピペリジン、2-メチルピリジン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、フェニルエチルアミン、イソプロピルエチルアミン、メチルアニリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、酢酸カリウムなどの有機塩基;n-ブチルリチウム、tert-ブチルマグネシウムクロリドなどの有機金属;水素化ホウ素ナトリウム、金属ナトリウム、水素化カリウム、酸化カルシウムなどの無機塩基;カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、及び、ナトリウムエトキシドなどの金属アルコキシドが挙げられる。この中で、好ましくはトリエチルアミンまたはピペリジンであり、より好ましくはトリエチルアミンである。
上記塩基の使用量は、酢酸メチル化合物100質量部に対し、0.01質量部以上100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上20質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以上5質量部以下の範囲である。反応終了後、蒸留、再結晶、シリカゲルクロマトグラフィーなどの精製を行なうことによって所望のピリドン化合
物を得ることができる。
【0027】
ピリドン化合物(B)の好ましい例として、ピリドン化合物(1)~(6)を以下に示すが、下記の化合物に限定されるものではない。
【化6】
【0028】
次に、化合物(2)を得る縮合工程に関して説明する。
化合物(2)は、アルデヒド化合物(A)とピリドン化合物(B)を縮合させる縮合工程によって合成することができる。本縮合工程は無溶媒で行うことも可能であるが、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒としては反応に関与しないものであれば特に制限はなく、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、N,N-ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフランが挙げられる。また、2種以上の溶媒を混合して用いることもでき、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。
上記溶媒の使用量は、アルデヒド化合物(A)100質量部に対し、0.1質量部以上1000質量部以下の範囲で用いられることが好ましく、より好ましくは1.0質量部以上150質量部以下である。本縮合工程の反応温度は、-80℃以上250℃以下の範囲で行われることが好ましく、より好ましくは-20℃以上150℃以下である。この縮合工程の反応は通常24時間以内に完結する。
【0029】
また、本縮合工程では、酸または塩基を使用すると反応を速やかに進行させることがで
きるため好ましい。用いることができる酸としては、具体的には、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、p-トルエンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等の有機アンモニウム塩等が挙げられる。この中で好ましくは、p-トルエンスルホン酸、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウムである。
上記酸の使用量としては、アルデヒド化合物(A)100質量部に対し、0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは、0.1質量部以上5質量部以下の範囲である。
【0030】
本縮合工程では、塩基を使用してもよい。塩基としては、具体的には例えば、ピリジン、ピペリジン、2-メチルピリジン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、フェニルエチルアミン、イソプロピルエチルアミン、メチルアニリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン、酢酸カリウムなどの有機塩基;n-ブチルリチウム、tert-ブチルマグネシウムクロリドなどの有機金属;水素化ホウ素ナトリウム、金属ナトリウム、水素化カリウム、酸化カルシウムなどの無機塩基;カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、及び、ナトリウムエトキシドなどの金属アルコキシドが挙げられる。この中で、好ましくはトリエチルアミン、または、ピペリジンであり、より好ましくはトリエチルアミンである。
上記塩基の使用量は、アルデヒド化合物(A)100質量部に対し、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上5質量部以下の範囲である。
【0031】
得られた化合物(2)は、通常の有機合成反応の後処理方法に従って処理した後、分液操作、再結晶、再沈殿、カラムクロマトグラフィーなどの精製を行うことで高純度の化合物とすることができる。
【0032】
本発明で用いることができる化合物(2)は、使用する用途の目的に応じて、色調等を調整するために、単独、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、公知の顔料や染料を2種以上組み合わせて用いることもできる。本発明で用いることができる化合物(2)の好ましい例として、色素化合物(1)~(6)を以下に示すが、下記の化合物に限定されるものではない。
【化7】
【0033】
本発明で用いることができる化合物(2)は、各トナーの製造手段に応じて、色調等を調整するために、これらの化合物を単独で、あるいは公知の顔料、または、染料を2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0034】
該結着樹脂は、特に限定されず、下記に示す公知の重合体又は樹脂を含有させることができる。また、下記重合体又は樹脂は、一種単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
ポリスチレン、ポリ-p-クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体などのスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油系樹脂など。
これらの中で、色味安定性向上の観点から、結着樹脂は、ポリエステル樹脂、特に非晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
結着樹脂中の非晶性ポリエステル樹脂の含有量は、50質量%以上100質量%以下であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
非晶性ポリエステル樹脂は、「ポリエステル構造」を樹脂鎖中に有している樹脂である。
該非晶性ポリエステル構造を構成する成分としては、具体的には、2価以上のアルコール成分と、2価以上のカルボン酸、2価以上のカルボン酸無水物及び2価以上のカルボン酸エステルなどのカルボン酸成分とが挙げられる。
2価以上のアルコール成分として、以下のものが挙げられる。
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)-ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビット、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンなど。
これらの中で、芳香族ジオールが好ましい。
該非晶性ポリエステル樹脂において、該芳香族ジオールに由来するモノマーユニットの含有割合は、非晶性ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分に由来する全モノマーユニットに対して、80モル%以上100モル%以下であることが好ましい。
また、芳香族ジオールは、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であることが好ましい。
【0036】
一方、2価以上のカルボン酸、2価以上のカルボン酸無水物及び2価以上のカルボン酸エステルなどのカルボン酸成分として、以下のものが挙げられる。
フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸のような芳香族ジカルボン酸又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸のようなアルキルジカルボン酸又はその無水物;炭素数6~18のアルキル基若しくはアルケニル基で置換されたコハク酸又はその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸のような不飽和ジカルボン酸又はその無水物。
これらの中で、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそれらの無水物が好適に例示できる。
【0037】
該非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、顔料の分散性及び色味安定性向上の観点から、20mgKOH/g以下であることが好ましく、15mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価が上記範囲である場合、顔料の分散性がより向上し、トナーの色味安定性がより向上する。
なお、該酸価は、非晶性ポリエステル樹脂に用いるモノマーの種類や配合量を調整することにより、上記範囲とすることができる。具体的には、樹脂製造時のアルコールモノマーと酸モノマーの配合比、又は樹脂の分子量を調整することにより制御できる。また、アルコール成分とカルボン酸成分の縮重合後、縮重合体の末端に存在するヒドロキシ基に多価カルボン酸モノマー(例えば、トリメリット酸又はその無水物)を反応させることにより調整することができる。
【0038】
トナー粒子は、結晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
なお、本発明において、該結晶性ポリエステル樹脂はトナー粒子への添加剤であり、結着樹脂には該当しない。
該結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、5.0質
量部以上30.0質量部以下であることが好ましく、10.0質量部以上20.0質量部以下であることがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量が上記範囲である場合、化合物(1)の結晶に対する作用効果が十分に得られ、かつ、トナー粒子中に結晶性ポリエステル樹脂を微分散させやすく、トナーの色味安定性がより向上する。
また、結晶性ポリエステル樹脂と式(1)で表される化合物の含有質量比(結晶性ポリエステル樹脂:式(1)で表される化合物)は、75:25~30:70であることが好ましく、65:35~40:60であることがより好ましい。
含有質量比が上記範囲である場合、化合物(1)の結晶に対する結晶性ポリエステル樹脂の作用効果が十分に得られやすく、トナーの色味安定性がより向上する。
【0039】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、2価以上の多価カルボン酸とジオールの反応により得ることができる。
その中でも、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸との縮重合体であることが、結晶化度が高く、化合物(1)と相互作用しやすいために好ましい。
また、結晶性ポリエステル樹脂は、1種類のみを用いても、複数種を併用してもよい。
結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数2以上22以下の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1つの化合物を含有するアルコール成分と、炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1つの化合物を含有するカルボン酸成分との縮重合体であることが好ましい。
その中でも、結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1つの化合物を含有するアルコール成分と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1つの化合物を含有するカルボン酸成分との縮重合体であることが、色味安定性向上の観点からより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の脂肪族ジカルボン酸の分子量が大きいほど、結晶性ポリエステル樹脂の結晶性が強く働くため、化合物(1)との強い相互作用を示す。このため化合物(1)の結晶性の制御が行いやすくなる。
【0040】
炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、鎖状(好ましくは直鎖状)の脂肪族ジオールであることが、トナーの色味安定性を向上させる観点で好ましい。
例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブタジエングリコール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールが挙げられる。
これらの中でも、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールなどのような直鎖脂肪族α,ω-ジオールが好ましく例示される。
上記誘導体としては、縮重合により同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。例えば、ジオールをエステル化した誘導体が挙げられる。
【0041】
結晶性ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分において、炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1つの化合物が、結晶性ポリエステル樹脂を構成する全アルコール成分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
また、上記脂肪族ジオール以外の多価アルコールを用いることもできる。
該多価アルコールのうち、上記脂肪族ジオール以外のジオールとしては、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどの芳香族アルコール;1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
また、該多価アルコールのうち3価以上の多価アルコールとしては、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンなどの芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、及びトリメチロールプロパンなどの脂肪族アルコールなどが挙げられる。
【0042】
さらに、結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のアルコールを用いてもよい。該1価のアルコールとしては、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0043】
一方、上記炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、鎖状(好ましくは直鎖状)の脂肪族ジカルボン酸であるとよい。
例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸が挙げられる。
これらの酸無水物又は低級アルキルエステルを加水分解したものなども含まれる。
また、上記誘導体としては、縮重合により同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。例えば、ジカルボン酸成分の酸無水物、ジカルボン酸成分をメチルエステル化、エチルエステル化、又は酸クロライド化した誘導体が挙げられる。
【0044】
結晶性ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分において、炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1つの化合物が、結晶性ポリエステル樹脂を構成する全カルボン酸成分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
上記脂肪族ジカルボン酸以外の多価カルボン酸を用いることもできる。該多価カルボン酸のうち、上記脂肪族ジカルボン酸以外の2価のカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸;n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸などの脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物又は低級アルキルエステルなども含まれる。
また、その他の多価カルボン酸において、3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、及びピロメリット酸などの芳香族カルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパンなどの脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物又は低級アルキルエステルなどの誘導体なども含まれる。
さらに、結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のカルボン酸を用いてもよい。該1価のカルボン酸としては、安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4-メチル安息香酸、3-メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸などが挙げられる。
【0045】
結晶性ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。例えば、上記カルボン酸成分とアルコール成分とをエステル化反応、又はエステル交換反応させた後、減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って縮重合反応させることで結晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。
エステル化又はエステル交換反応は、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、2-エチルヘキサン酸錫、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、及び酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いて行うことができる。
また、縮重合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、2-エチルヘキサン酸錫、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、及び二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、適宜に決めればよい。
エステル化若しくはエステル交換反応、又は重縮合反応において、得られる結晶性ポリエステル樹脂の強度を上げるために全モノマーを一括に仕込むことや、低分子量成分を少なくするために2価のモノマーを先ず反応させた後、3価以上のモノマーを添加して反応させたりするなどの方法を用いてもよい。
【0046】
トナー粒子は、必要に応じてワックスを含有させることもできる。
具体的には、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの;が挙げられる。
さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸のような飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸のような不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのような飽和アルコール類;ソルビトールのような多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸のような脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールのようなアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムのような脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物。
これらのワックスの中でも、色味安定性を向上させるという観点で、フィッシャートロプシュワックスが好ましい。
【0047】
該ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以上12.0質量部以下であることがより好ましい。
また、トナーの色味安定性向上の観点から、ワックスの示差走査熱量分析装置(DSC)で測定される昇温時の吸熱曲線において、温度30℃以上200℃以下の範囲に存在す
る最大吸熱ピークのピーク温度が、50℃以上110℃以下であることが好ましい。また、該最大吸熱ピークのピーク温度は、70℃以上100℃以下であることがより好ましい。
【0048】
トナー粒子は、ポリオレフィンに飽和脂環式化合物由来の構造部位を有するスチレンアクリル樹脂がグラフト重合している重合体(以下単に、重合体ともいう)を含有することが好ましい。
なお、本発明において、該重合体はトナー粒子への添加剤であり、結着樹脂には該当しない。
トナー粒子が該重合体を含有することで、トナー粒子中の化合物(1)と相互作用し、化合物(1)の結晶性を弱め、色味安定性を向上させる効果が得られる。
該重合体の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、3.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましく、5.0質量部以上10.0質量部以下であることがより好ましい。
該ポリオレフィンは、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される最大吸熱ピークのピーク温度が60℃以上110℃以下であることが好ましい。
該ポリオレフィンの軟化温度は、70℃以上100℃以下であることが好ましい。
該ポリオレフィンは、重量平均分子量(Mw)が900以上50000以下であることが好ましい。
該ポリオレフィンの含有割合は、該重合体中に、5.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以上12.0質量%以下であることがより好ましい。
なお、ポリオレフィンにスチレンアクリル樹脂をグラフト重合させる方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
【0049】
該スチレンアクリル樹脂は、飽和脂環式化合物由来の構造部位を有する。
例えば、スチレンアクリル樹脂は、下記式(a)で表されるモノマーユニットを有する態様が挙げられる。
【0050】
【化8】

[前記式(a)中、R11は水素原子又はメチル基を表し、R12は飽和脂環式基を表す。]
【0051】
上記R12における飽和脂環式基としては、飽和脂環式炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数3以上18以下の飽和脂環式炭化水素基、さらに好ましくは炭素数4以上12以下の飽和脂環式炭化水素基である。
該飽和脂環式基としては、炭素数4以上12以下のシクロアルキル基が好ましく、炭素数6以上10以下のシクロアルキル基がより好ましい。
該飽和脂環式基の具体例として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などを挙げることができる。
該式(a)で表されるモノマーユニットの含有割合は、該スチレンアクリル樹脂を構成する全モノマーユニットを基準として、1.5mol%以上45.0mol%以下である
ことが好ましく、3.0mol%以上25.0mol%以下であることがより好ましい。
【0052】
該スチレンアクリル樹脂の具体例として、上記式(a)で表されるモノマーユニットと、下記モノマー由来のモノマーユニットとを有する樹脂が挙げられる。
スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、p-アセトキシスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、フェニルスチレン、ベンジルスチレンなどのスチレン系モノマー;
メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸のアルキルエステル(該アルキルの炭素数が1以上18以下)。
【0053】
該着色剤は、キナクリドン顔料である、下記式(1)で表される化合物を含有する。
【化9】

(該式(1)中、X及びXは、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子又はメチル基を示す。)
【0054】
該顔料の、トナー粒子中での分散性や色味安定性の向上という観点から、X及びXが、それぞれ独立して、水素原子、又はメチル基であることが好ましい。
上記式(1)で表される化合物は、単独又は複数を組み合わせて用いることができる。
また、2種類以上のキナクリドン化合物の固溶体であってもよい。
さらに、該化合物は、該結着樹脂中で分散しやすくするためにアビエチン酸などを含有するロジン化合物で処理してもよい。
着色剤は、本発明の特性を損なわない程度に、上記式(1)で表される化合物以外の顔料、又は染料を含有してもよい。
該化合物(1)以外に用いることのできるマゼンタ顔料としては、以下のものが挙げられる。
C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。これらは、単独で又は複数を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
該化合物(1)以外に用いることのできるマゼンタ染料としては、以下のものが挙げられる。
C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパースバイオレット1のような油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、
39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28のような塩基性染料。これらは、単独で又は複数を組み合わせて用いてもよい。
該着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
【0056】
トナー粒子は、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。
該荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩又はスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩又はカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンなどが挙げられる。
荷電制御剤はトナー粒子に対して内添してもよいし外添してもよい。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。
【0057】
トナーは、流動性向上や摩擦帯電量調整のために、必要に応じて外添剤を含有してもよい。
外添剤としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子、チタン酸ストロンチウム微粒子のような無機微粒子が好ましい。該無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化処理されていることが好ましい。
外添剤の比表面積は、10m/g以上50m/g以下であることが、外添剤の埋め込み抑制の観点から、好ましい。
外添剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。
トナー粒子と外添剤との混合は、特に限定されず、ヘンシェルミキサーのような公知の混合機を用いることができる。
【0058】
トナーは、長期にわたり安定した画像が得られるという観点から、磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として用いることが好ましい。
磁性キャリアとしては、例えば、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、希土類のような金属粒子、それらの合金粒子又はそれらの酸化物粒子;フェライトなどの磁性体;磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持する結着樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる、樹脂キャリア)など、一般に公知のものを使用できる。
【0059】
トナーの製造方法は、特に限定されることはないが、トナー粒子中の化合物(1)の結晶性の制御及び分散性向上の観点から、溶融混練法を用いることが好ましい。
すなわち、本発明のトナーの製造方法は、以下の通りである。
トナー粒子を有するトナーの製造方法であって、
非晶性ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂、式(1)で表される化合物を含有する着色剤、及び結晶性ポリエステル樹脂を含有する混合物を二軸押し出し機により溶融混練する溶融混練工程を含み、
該溶融混練工程における、該二軸押し出し機の溶融混練軸のニーディング部のバレル設定温度をTa(℃)とし、該結着樹脂の軟化温度をTm(℃)としたときに、該Ta及び該Tmが、下記式(4)を満たすことを特徴とするトナーの製造方法。
-10≦Tm-Ta≦30 (4)
【0060】
トナーが溶融混練工程を経て製造されることで、熱とシェアによって、化合物(1)の結晶性が変化する。その結果、トナー粒子中で化合物(1)が微分散し、色味安定性が向上する。
以下、溶融混練法を用いたトナーの製造手順について説明する。
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、結着樹脂及び着色剤、並びに必要に応じてワックス及び荷電制御剤などの他の成分を、所定量秤量して配合し、混合する。
混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
【0061】
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中に着色剤などの成分を分散させる。
溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーのようなバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、一軸又は二軸押し出し機が主流となっている。
例えば、KTK型二軸押し出し機(神戸製鋼所社製)、TEM型二軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、二軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
さらに、溶融混練することによって得られた混練物は、二本ロールなどで圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
【0062】
該混練機は、二軸押し出し機を用いるとよい。
該二軸押し出し機は、温度を一定に保つ加熱シリンダであるバレルの中に二本のパドルと呼ばれる溶融混練軸が通っている混練機である。
その一例を図1に示す。原料混合物は溶融混練軸の一端から供給され、加熱されて溶融状態になりつつ溶融混練軸の回転により混練されてもう一端より押し出される。
途中に脱気を主な目的とするベント孔を設置することもある。溶融混練軸の断面は、プロペラ状のものや、三角形のものなどが使用され、常に一方の先端が他方を擦るがごとく回転するように、位相をずらせてセットされている。この構造により、混練物を溶融混練軸及びバレル壁に付着することなしに、前方へ送るセルフクリーニング作用を持つ。
本発明では、二本の溶融混練軸の回転方向は同方向であることが好ましい。
溶融混練軸を同方向に回転させることで、適度なせん断力を加えることができ、化合物(1)の分散を均一に行い、かつ、化合物(1)の結晶成長を抑えることができる。
溶融部とは、材料供給口の次のバレル(C1)から押し出し口までの溶融混練軸の部分である。通常、材料供給口のバレル(C0)は、材料を溶融混練軸に食い込ませる必要があるため溶融させていない。そのため、溶融部としてはいない。
溶融混練軸の溶融部の長さが500mm以上1500mm以下であることが好ましい。
溶融部の長さが上記範囲である場合、混合物の溶融滞留時間が適切となるため、十分な混練を行うことができる。また、混練物に熱とシェアがかかり過ぎることが防止されるため、化合物(1)の結晶構造を適切に制御でき、高い色味安定性が得られる。
溶融混練軸は大別して二種類の部分から成り立っており、一つは送りスクリュー部で、もう一つは、ニーディング部である。スクリュー部とは、溶融混練物を加熱しつつ前方へ送る機能を持つ。シリンダ内における溶融混練物の粘度が高い場合には、スクリュー部の壁と溶融混練物との摩擦によるせん断力により混練される。一方、粘度が低い場合には、混練されにくい。また、ニーディング部は溶融混練物を前方へ送る効果はほとんどなく、混練物が滞留し充満する。
【0063】
トナーの製造方法の溶融混練工程において、該二軸押し出し機の溶融混練軸のニーディ
ング部のバレル設定温度をTa(℃)とし、トナーの結着樹脂の軟化温度をTm(℃)としたときに、該Ta及び該Tmが、下記式(4)を満たす。また、該Ta及び該Tmが、下記式(4)’を満たすことが好ましい。
-10≦Tm-Ta≦30 (4)
10≦Tm-Ta≦25 (4)’
【0064】
[Tm-Ta](℃)が30を超える場合、化合物(1)の結晶にかかるシェアが強すぎるため、結晶構造が崩れ、トナーの発色性が低下する。一方、[Tm-Ta](℃)が-10℃未満である場合、ニーディング部で行われる溶融混練軸の回転に伴う圧縮、延伸の効果が少ない。そのため、化合物(1)の結晶にかかるシェアが弱くなるため、色味安定性が低下する。
すなわち、[Tm-Ta](℃)を上記範囲に制御することで、ニーディング部の溶融混練時のシェアを効果的に得ることができる。
【0065】
ついで、混練物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕するとよい。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルのような粉砕機で粗粉砕した後、さらに、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕するとよい。
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)のような分級機や篩分機を用いて分級し、トナー粒子を得るとよい。
その後、必要に応じ選択された無機微粒子や樹脂粒子などの外添剤を加えて混合(外添)することにより、例えば、流動性を向上させ、トナーを得ることができる。
混合装置としては、攪拌部材を有する回転体と、攪拌部材と間隙を有して設けられた本体ケーシングとを有する装置を用いるとよい。
該混合装置の一例としては、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウタミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)などが挙げられる。トナー粒子と外添剤を均一に混合し、外添剤をほぐすためには、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いるとよい。
混合条件としては、外添剤の処理量、撹拌軸回転数、撹拌時間、撹拌羽根形状、装置内温度などを、所望のトナー性能を達成するために適宜選定するとよい。
また、添加剤の粗大凝集物が、得られたトナー中に遊離して存在する場合などには、必要に応じて篩分機などを用いてもよい。
【0066】
以下、トナー及び原材料の各種物性の測定方法について説明する。
<樹脂のピーク分子量(Mp)、数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)の測定方法>
樹脂のピーク分子量(Mp)、数平均分子量(Mn)、及び重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、試料(樹脂)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。なお、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置 :HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム :Shodex KF-801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)
流速 :1.0mL/min
オーブン温度 :40.0℃
試料注入量 :0.10mL
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F-850、F-450、F-288、F-128、F-80、F-40、F-20、F-10、F-4、F-2、F-1、A-5000、A-2500、A-1000、A-500」、東ソー社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0067】
<樹脂の軟化温度の測定方法>
樹脂の軟化温度(Tm)の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行う。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT-500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化温度とする。
なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。
まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax-Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
測定試料は、約1.0gの樹脂を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(NT-100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT-500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
開始温度:40℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
昇温速度:4.0℃/min
ピストン断面積:1.000cm
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
【0068】
<樹脂の酸価の測定方法>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。結着樹脂の酸価はJIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカ
リ性の容器に保管する。
水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、フェノールフタレイン溶液を数滴加え、水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した水酸化カリウム溶液の量から求める。0.1モル/L塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作製されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴加え、水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
【0069】
<樹脂の水酸基価の測定方法>
水酸基価とは、試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。結着樹脂の水酸基価はJIS K 0070-1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
特級無水酢酸25gをメスフラスコ100mLに入れ、ピリジンを加えて全量を100mLにし、十分に振りまぜてアセチル化試薬を得る。得られたアセチル化試薬は、湿気、炭酸ガスなどに触れないように、褐色びんにて保存する。
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム35gを20mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。水酸化カリウム溶液のファクターは、0.5モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、フェノールフタレイン溶液を数滴加え、水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した水酸化カリウム溶液の量から求める。0.5モル/L塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作製されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した樹脂の試料1.0gを200mL丸底フラスコに精秤し、これにアセチル化試薬5.0mLを、ホールピペットを用いて正確に加える。この際、試料がアセチル化試薬に溶解しにくいときは、特級トルエンを少量加えて溶解する。
フラスコの口に小さな漏斗をのせ、約97℃のグリセリン浴中にフラスコ底部約1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首の温度が浴の熱を受けて上昇するのを防ぐため、丸い穴をあけた厚紙をフラスコの首の付根にかぶせることが好ましい。
1時間後、グリセリン浴からフラスコを取り出して放冷する。放冷後、漏斗から水1mLを加えて振り動かして無水酢酸を加水分解する。さらに完全に加水分解するため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱する。放冷後、エチルアルコール5mLで漏斗及びフラスコの壁を洗う。
指示薬としてフェノールフタレイン溶液を数滴加え、水酸化カリウム溶液で滴定する。
なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、水酸基価を算出する。
A=[{(B-C)×28.05×f}/S]+D
ここで、A:水酸基価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)、D:樹脂の酸価(mgKOH/g)である。
【0070】
[トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法]
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整す
る。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0071】
<ワックス及び結晶性ポリエステル樹脂の最大吸熱ピークのピーク温度の測定方法>
ワックス及び結晶性ポリエステル樹脂の最大吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418-82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いる。
30℃以上200℃以下の温度範囲において、昇温速度10℃/minで測定を行う。
なお、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温する。その後、30℃から200℃まで昇温速度10℃/minで再度昇温を行う。
この2度目の昇温過程のDSC曲線における最大吸熱ピークのピーク温度を、試料の最大吸熱ピークのピーク温度とする。
【0072】
<X線回折の測定方法>
X線回折測定は、測定装置「RINT-TTRII」(株式会社リガク社製)と、装置付属の制御ソフト及び解析ソフトを用いる。
測定条件は以下の通りである。
X線:Cu/50kV/300mA
ゴニオメータ:ローター水平ゴニオメータ(TTR-2)
アタッチメント:標準試料ホルダー
発散スリット:解放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
カウンタ:シンチレーションカウンタ
走査モード:連続
スキャンスピード:4.0000°/min.
サンプリング幅:0.0200°
走査軸:2θ/θ
走査範囲:10.0000°~40.0000°
続いて試料板にトナーをセットして測定を開始する。
CuKα特性X線において、ブラッグ角をθとし、回折角を2θとして、2θが3°以上35°以下の範囲で、回折角2θを横軸とし、X線強度を縦軸としたX線回折スペクトルを得る。
得られたX線回折スペクトル中、2θが5.0°以上6.0°以下の範囲に存在する回折ピークにおいて、回折ピークのX線強度の半分の強度におけるピーク幅を半値幅とする。
なお、当該範囲に回折ピークが複数存在する場合は、X線強度の最も大きい回折ピークの半値幅を求める。
【実施例
【0073】
以下、本発明を製造例及び実施例によりさらに具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下の配合における部数及び%は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
【0074】
<化合物1-1の製造例>
【化10】

で示される化合物をリン酸中で環化して2,9-ジメチルキナクリドンを生成した。
2,9-ジメチルキナクリドンを有するリン酸を水へ分散し、次いで2,9-ジメチルキナクリドンをろ別し、水に湿潤している粗製の2,9-ジメチルキナクリドン(C.I.Pigment Red 122)を調製した。又、他方で、
【化11】

で示される化合物をリン酸中で環化して無置換のキナクリドンを生成した。
該無置換のキナクリドンを有するリン酸を水へ分散し、次いで無置換のキナクリドンをろ別し、水に湿潤している粗製の無置換のキナクリドン(C.I.Pigment Violet 19)を調製した。
【0075】
粗製の2,9-ジメチルキナクリドン80部と、粗製の無置換のキナクリドン20部を、水600部とエタノール300部からなる混合液を有する、コンデンサーを具備した容器に添加し、2,9-ジメチルキナクリドン及び無置換のキナクリドンを磨砕しながら混合液を5時間加熱し還流した。
冷却後、固溶体顔料をろ別、洗浄した後、再度、水2000部に再分散させ、さらにアビエチン酸ナトリウム水溶液を添加した。十分に撹拌した後、塩化カルシウム水溶液を添加し、撹拌しながら90℃で加熱処理後、濾別、洗浄を繰り返して行い、これを乾燥後に粉砕してロジン化合物で処理されたキナクリドン固溶体顔料である化合物1-1を得た。
【0076】
<化合物1-2及び1-3の製造例>
化合物1-1の製造例において、2、9-ジメチルキナクリドン(化合物α)及び無置換のキナクリドン(化合物β)の混合質量比(化合物α:化合物β)を表1に示すように変更する以外は同様にして、化合物1-2及び1-3を得た。
【0077】
<化合物1-4の製造例>
化合物1-1の製造例と同様に、水に湿潤している粗製の2,9-ジメチルキナクリドン(C.I.Pigment Red 122)を調製した。
該粗製の2,9-ジメチルキナクリドン100部を、水600部とエタノール300部からなる混合液を有する、コンデンサーを具備した容器に添加し、2,9-ジメチルキナクリドンを磨砕しながら混合液を5時間加熱し還流した。
冷却後、顔料をろ別、洗浄した後、再度、水2000部に再分散させ、さらにアビエチン酸ナトリウム水溶液を添加した。十分に撹拌した後、塩化カルシウム水溶液を添加し、撹拌しながら90℃で加熱処理後、濾別、洗浄を繰り返して行い、これを乾燥後に粉砕し
てロジン化合物で処理されたキナクリドン顔料である化合物1-4を得た。
【0078】
<化合物1-5及び1-6の製造例>
化合物1-4の製造例において、2、9-ジメチルキナクリドンの組成を表1に示すように変更する以外は同様にして、化合物1-5及び1-6を得た。
【0079】
【表1】
【0080】
[化合物2-1の製造例]
上記式(2)で表される化合物は、公知の方法によって合成することが可能である
。以下に記載する方法で、式(2)で表される化合物を製造した。
アルデヒド化合物(1)10mmol及びピリドン化合物(1)10mmolのメタノール50mL溶液を室温で3日間撹拌した。反応終了後、イソプロパノールで希釈し、ろ過を行った。その後、150℃に昇温し、5分間保持した後に、10℃/minの速度で0℃まで冷却し、化合物2-1を得た。
【0081】
[化合物2-2~2-6の製造例]
化合物2-1の製造例において、アルデヒド化合物及びピリドン化合物の組成を表2に示すように変更する以外は同様にして製造し、化合物2-2~2-6を得た。
【0082】
【表2】
【0083】
<結着樹脂1の製造例>
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン76.9部(0.167モル部;アルコール成分の総モル数に対して100.0mol%)、テレフタル酸24.1部(0.145モル部)、アジピン酸8.0部(0.054モル部)及びチタンテトラブトキシド0.5部をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。
次に、フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた(第1反応工程)。
その後、無水トリメリット酸1.2部(0.006モル部)を添加し、180℃で1時間反応させ(第2反応工程)、非晶性ポリエステル樹脂である結着樹脂1を得た。
得られた結着樹脂1の酸価は5mgKOH/gであり、水酸基価は65mgKOH/gであった。また、該樹脂の分子量は、重量平均分子量(Mw)が8,000、数平均分子量(Mn)が3,500、ピーク分子量(Mp)が5,700であった。さらに、該樹脂の軟化温度(Tm)は90℃であった。
【0084】
<結着樹脂2の製造例>
結着樹脂1の製造例において、アルコール成分の材料を表3に記載となるように変更した以外は、結着樹脂1の製造例と同様の操作を行い、結着樹脂2を得た。
【0085】
【表3】

表3中、BPA-POは、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを表し、BPA-EOは、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを表す。
【0086】
<結着樹脂3の製造例>
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン71.3部(0.155モル部)、テレフタル酸24.1部(0.145モル部)、及びチタンテトラブトキシド0.6部をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。
次に、フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた(第1反応工程)。
その後、無水トリメリット酸5.8部(0.030モル部)を添加し、180℃で10時間反応させ(第2反応工程)、非晶性ポリエステル樹脂である結着樹脂3を得た。
得られた結着樹脂3の酸価は15mgKOH/gであり、水酸基価は7mgKOH/gである。また、該樹脂の分子量は、重量平均分子量(Mw)が200,000、数平均分子量(Mn)が5,000、ピーク分子量(Mp)が10,000であった。さらに、該樹脂の軟化温度は130℃であった。
【0087】
<結着樹脂4の製造例>
・スチレン 80.0部
・アクリル酸-n-ブチル 20.0部
・2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロへキシル)プロパン
0.8部
上記各成分を、4つ口フラスコ内に入れ、容器内を十分に窒素で置換し、130℃に昇温させた後、キシレン200部を撹拌しながら3時間かけて滴下した。
さらに、キシレン還流後下で重合を完了し、減圧下で溶媒を蒸留除去して、結着樹脂4を得た。
得られた結着樹脂4の酸価は検出下限未満であった。
また、樹脂のガラス転移温度(Tg)は56℃であった。
さらに、樹脂の分子量は、重量平均分子量(Mw)が50,000、数平均分子量(Mn)が10,000、ピーク分子量(Mp)が18,000であり、樹脂の軟化温度は108℃であった。
【0088】
<結晶性ポリエステル樹脂1の製造例>
・ヘキサンジオール 33.9部
(0.29モル;多価アルコールの総モル数に対して100.0mol%)
・ドデカン二酸 66.1部
(0.29モル;多価カルボン酸の総モル数に対して100.0mol%)
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついたフラスコに、上記材料を秤量した。
次に、フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
その後、2-エチルヘキサン酸錫0.5部を加え、フラスコ内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させた。
その後、フラスコ内を5kPa以下へ減圧して200℃で3時間反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂1を得た。なお、結晶性ポリエステル樹脂1は結晶構造に由来する吸熱ピークが観測された。
【0089】
<結晶性ポリエステル樹脂2~5の製造例>
結晶性ポリエステル樹脂1の製造例において、脂肪族ジオール及び脂肪族ジカルボン酸が表4の記載となるように変更した以外は、結晶性ポリエステル樹脂1の製造例と同様の操作を行い、結晶性ポリエステル樹脂2~5を得た。なお、結晶性ポリエステル樹脂2~5は結晶構造に由来する吸熱ピークが観測された。
【0090】
【表4】
【0091】
<重合体1の製造例>
温度計及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン300部、炭化水素ワックス(フィッシャートロプシュワックス;軟化温度:90℃)10部を入れ、充分溶解した。
反応槽内を窒素置換後、スチレン68.9部、α-メチルスチレン7.65部、メタクリル酸シクロヘキシル13.5部、及びキシレン250部の混合溶液を180℃で3時間滴下し重合し、さらにこの温度で30分間保持した。次いで、脱溶剤を行い、重合体1を得た。
【0092】
<重合体2及び3の製造例>
重合体1の製造例において、メタクリル酸シクロヘキシルを表5に記載された化合物に変更した以外は同様の操作を行い、重合体2及び3を得た。
【0093】
【表5】
【0094】
<トナー1の製造例>
・結着樹脂1 70.0部
・結着樹脂3 30.0部
・結晶性ポリエステル樹脂1 10.0部
・フィッシャートロプシュワックス 5.0部
(最大吸熱ピークのピーク温度:90℃)
・重合体1 5.0部
・化合物1-1 9.2部
上記原材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した。
その後、溶融混練軸のバレル設定温度を、C0:30℃、C1:70℃、C2:80℃、C3=ニーディング部のバレル設定温度(Ta):80℃、C4:80℃とし、溶融混練軸の回転数を400rpm、供給量を20kg/hになるように設定した二軸混練機(PCM-70型、株式会社池貝製、図1参照)にて混練した。
混練物の温度を、安立計器社製ハンディタイプ温度計HA-200Eを用い直接計測し、溶融混練軸のバレル設定温度と、それぞれのバレルにおける混練物の温度が合致していることを確認した。
得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。
得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。さらに、回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子を得た。なお、該回転型分級機の運転条件は、分級ローター回転数を50.0s-1であった。得られたトナー粒子の重量平均粒径(D4)は6.2μmであった。
なお、該トナー粒子を構成する結着樹脂の軟化温度(Tm)は、102℃であった。
該トナー粒子100.0部に、ヘキサメチルジシラザン20質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径が10nmの疎水性シリカ微粒子0.8部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用い、回転数30s-1、回転時間10minで混合して、トナー1を得た。
【0095】
<トナー2~16及び18~30の製造例>
トナー1の製造例において、溶融混練条件(条件の内容は表6に記載)、結着樹脂の種類、結晶性ポリエステル樹脂の種類及び添加量、化合物の種類、並びに重合体の種類を表7の記載となるように変更した以外はトナー1の製造例と同様の操作を行い、トナー2~16及び18~30を得た。
なお、トナー2では、結着樹脂3の代わりに、結着樹脂2を使用した。
【0096】
<トナー17の製造例>
(結着樹脂分散液の調製)
結着樹脂1および3を、イオン交換水80%、結着樹脂1の濃度が14%、結着樹脂3の濃度が6%の組成比で調合し、アンモニアによりpHを8.5に調整し、150℃の加熱条件でキャビトロンを運転し、結着樹脂1,3の分散液(固形分:20%)を得た。
(結晶性ポリエステル樹脂分散液の調製)
80部の結晶性ポリエステル樹脂5及び720部のイオン交換水をステンレスビーカーに入れ、99℃に加熱した。結晶性ポリエステル樹脂5が溶融した時点で、ホモジナイザーを用いて攪拌した。次いで、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)、ネオゲンRK、固形分:20%)2.0部を滴下しながら、乳化分散を行い、結晶性ポリエステル樹脂5の分散液(固形分:10%)を得た。
(化合物分散液の調製)
・化合物1-4 1000部
・アニオン界面活性剤 150部
・イオン交換水 9000部
以上を混合し、溶解した後、高圧衝撃式分散機を用いて分散した。
得られた化合物分散液における化合物粒子の体積平均粒径(D50)は0.16μm、化合物濃度は23%であった。
(ワックス分散液の調製)
・フィッシャートロプシュワックス 45部
(最大吸熱ピークのピーク温度90℃)
・アニオン性界面活性剤 5部
・イオン交換水 150部
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径(D50)が210nmであるワックス粒子を分散させてなるワックス分散液(ワックス濃度:20%)を調製した。
【0097】
・結着樹脂1,3の分散液 500.0部
・結晶性ポリエステル樹脂5の分散液 100.0部
・着色剤分散液 30.5部
・ワックス分散液 25.0部
・1.5質量%硫酸マグネシウム水溶液 50.0部
上記材料を、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させた。続いて、0.1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpHを8.1に調整した。
その後、加熱用ウォーターバス中で45℃まで撹拌翼にて撹拌しながら加熱した。45℃で1時間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると、平均粒径が約5.5μmである凝集粒子が形成されていることが確認された。
5質量%クエン酸三ナトリウム水溶液40.0部加えた後、撹拌を継続しながら85℃まで昇温して120分間保持し樹脂粒子を融合させた。
次いで、撹拌を継続しながら、ウォーターバス内に水を入れ、25℃まで冷却した。また、樹脂粒子の粒径をコールター法による粒度分布解析装置(コールターマルチサイザーIII:コールター社製)で測定したところ、体積基準のメジアン径は5.5μmであった。
その後、ろ過・固液分離した後、上記水酸化ナトリウムでpHを8.0に調整した800.0部のイオン交換水を固形分に加え、30分間撹拌洗浄した。
その後、再びろ過・固液分離を行った。続いて、800.0部のイオン交換水を固形分に加え30分間撹拌洗浄した。その後、再びろ過・固液分離を行い、これを5回繰り返した。
次に、得られた固形分を乾燥させることにより、トナー粒子を得た。
得られたトナー粒子100.0部に、ヘキサメチルジシラザン20質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径が10nmの疎水性シリカ微粒子0.8部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用い、回転数30s-1、回転時間10minで混合して、トナー17を得た。
得られたトナー17のDSC測定において、結晶性樹脂に由来する吸熱ピークが観察された。
【0098】
<トナー31の製造例>
トナー1の製造例において、70.0部の結着樹脂1及び30.0部の結着樹脂3の代わりに、100.0部の結着樹脂4を使用した以外はトナー1の製造例と同様の操作を行い、トナー31を得た。
【0099】
【表6】

なお、表6中の、C0、C1、C2、C3及びC4については、図1を参照。
【0100】
【表7】

表7中、*aは、トナー粒子の製造方法が乳化凝集法であることを示す。
【0101】
<磁性コア粒子1の製造例>
・工程1(秤量・混合工程):
Fe 62.7部
MnCO 29.5部
Mg(OH) 6.8部
SrCO 1.0部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕・混合した。
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微
粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記の通りである。
(MnO)(MgO)(SrO)(Fe
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393・工程3(粉砕工程):
該仮焼フェライトをクラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。得られたスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
・工程4(造粒工程):
該フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0部、結着樹脂としてポリビニルアルコール2.0部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤や結着樹脂の有機成分を除去した。
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)が37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
【0102】
<被覆樹脂1の調製>
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3質量%
メチルエチルケトン 31.3質量%
アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、及びメチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした。
その後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥して被覆樹脂1を得た。得られた被覆樹脂1の30部を、トルエン40部及びメチルエチルケトン30部の混合液に溶解させて、重合体溶液1(固形分30質量%)を得た。
【0103】
<被覆樹脂溶液1の調製>
重合体溶液1(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量%
トルエン 66.4質量%
カーボンブラック(Regal330;キャボット社製) 0.3質量%
(一次粒径25nm、窒素吸着比表面積:94m/g、DBP吸油量:75mL/10
0g)
上記材料を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散をおこなった。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過をおこない、被覆樹脂溶液1を得た。
【0104】
<磁性キャリア1の製造例>
(樹脂被覆工程):
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに被覆樹脂溶液1を、100部の磁性コア粒子1に対して、樹脂成分として2.5部になるように投入した。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発させた。
その後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後、冷却した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)が38.2μmの磁性キャリア1を得た。
【0105】
<実施例1~28、及び、比較例1~3>
トナー1及び磁性キャリア1を、トナー濃度が9質量%になるように配合し、V型混合機(V-10型:株式会社徳寿工作所)を用いて0.5s -1 、回転時間5minで混合し、二成分現像剤1を得た。
また、トナーと磁性キャリアの組み合わせを表8のように変更して、二成分現像剤2~31を得た。そして、実施例1~28、及び、比較例1~3の二成分現像剤として以下に示す評価を行った。尚、実施例12及び15~17は参考例として評価を行った。実施例1~28、及び、比較例1~3の評価結果を表9に示す。
【0106】
【表8】
【0107】
<トナーの着色力の評価方法>
画像形成装置として、キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C5255を用い、マゼンタステーションの現像器に二成分系現像剤を投入して、評価を行った。
評価環境は、常温常湿環境下(23℃、50%RH)とし、評価紙は、コピー用普通紙CS-680(A4紙、坪量:68g/m、キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)を用いた。
まず、該評価環境において、現像バイアスが一定の状態で画像出力を行い、出力画像の画像濃度を調べた。
画像濃度は、X-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を使用して測定した。
X-Riteカラー反射濃度計の結果から、下記の基準でトナーの着色力を評価した。評価結果を表9に示す。
(評価基準)
A:1.30以上
B:1.25以上、1.30未満
C:1.20以上、1.25未満
D:1.20未満
【0108】
<トナーの明度、彩度及び色味変動の評価方法>
画像形成装置として、キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C5255を用い、マゼンタステーションの現像器に二成分系現像剤を投入して、評価を行った。
評価環境は、常温常湿環境下(23℃、50%RH)とし、評価紙は、コピー用普通紙CS-680(A4紙、坪量:68g/m、キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)を用いた。
まず、該評価環境において、紙上のトナー乗り量を変化させて、画像濃度と、紙上のトナー載り量との関係を調べた。
次いで、FFH画像(ベタ部)の画像濃度が1.40になるように調整し、ベタ画像を出力した。
SpectroScan Transmission(Gretag Macbeth社製)(測定条件:D50、視野角2°)を用いてベタ画像のL 、a 、b を測定した。
が大きいほど高明度であり、下記の基準で評価を行った。評価結果を表9に示す。
(評価基準)
A:54.0以上
B:52.0以上54.0未満
C:50.0以上52.0未満
D:50.0未満
【0109】
また、下記の式から各階調のC1を求めた。
={(a +(b 0.5
が大きいほど高彩度であり、下記の基準で評価を行った。評価結果を表9に示す。
(評価基準)
A:70.0以上
B:65.0以上70.0未満
C:60.0以上65.0未満
D:60.0未満
【0110】
次に、印字比率1%の画像にて、トナー濃度が一定となるよう定量補給し、5000枚(5k)画像出力を行った。
5k耐久出力の終了後、紙上のトナー乗り量を変化させて、画像濃度と、紙上のトナー載り量との関係を調べた。
次いで、FFH画像(ベタ部)の画像濃度が1.40になるように調整し、ベタ画像を出力した。
SpectroScan Transmission(Gretag Macbeth社製)(測定条件:D50、視野角2°)を用いてベタ画像のL 、a 、b を測定した。
初期画像及び5k耐久出力後の画像のL、a、bの値からΔEを算出した。評価
結果を表9に示す。
ΔE={(L -L +(a -a +(b -b 0.5(評価基準)
A:ΔEが小さく、目視で色味変動を確認できない
B:ΔEが評価「A」より大きいが、目視では色味変動を確認できない
C:ΔEが評価「B」より大きいが、目視で色味変動がわずかにしか確認できない
D:ΔEが評価「C」より大きく、色味変動が目視で確認できる
【0111】
【表9】

図1