(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】エレベータシステム用のベルト、およびエレベータシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 7/06 20060101AFI20221205BHJP
D07B 1/02 20060101ALI20221205BHJP
D07B 1/16 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
B66B7/06 A
D07B1/02
D07B1/16
(21)【出願番号】P 2018081037
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-04-07
(32)【優先日】2017-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Otis Elevator Company
【住所又は居所原語表記】One Carrier Place,Farmington,Connecticut,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】カイル ビー.マーティン
(72)【発明者】
【氏名】チェン チァン ジャオ
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-074871(JP,A)
【文献】特表2014-514226(JP,A)
【文献】特開2015-038005(JP,A)
【文献】特表2013-529163(JP,A)
【文献】特表2006-500303(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02860141(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第104555658(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/06
D07B 1/02
D07B 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータシステム用のベルトであって、
ベルト幅に沿って配置され、前記ベルトの長さに沿って長手方向に延在する複数の引張部材を備え、各引張部材は、
複数の荷重担持繊維から形成されるコア部材、
前記コア部材を囲む複数のオーバラップ部材、及び、
前記複数の引張部材を少なくとも部分的に封入するジャケット材料を含み
、
前記複数のオーバラップ部材は、前記コア部材の周りに巻付けられるまたは編まれる、ベルト。
【請求項2】
前記複数の荷重担持繊維は、マトリックス材料内に配設される、請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記荷重担持繊維は、炭素、ガラス、アラミド、ナイロン、及びポリマー繊維の1つまたは複数である、請求項2に記載のベルト。
【請求項4】
前記マトリックス材料は、ポリウレタン、ポリエステル、ビニルエステル、またはエポキシ材料である、請求項2に記載のベルト。
【請求項5】
前記複数のオーバラップ部材は合成繊維である、請求項1に記載のベルト。
【請求項6】
前記合成繊維は、Vectran(商標)またはDyneema(登録商標)またはZylon(登録商標)繊維の1つまたは複数である、請求項5に記載のベルト。
【請求項7】
前記複数のオーバラップ部材は金属ワイヤである、請求項1に記載のベルト。
【請求項8】
前記ジャケット材料は、ポリウレタン、ポリエステル、エチレン・プロピレン・ジエン・エラストマー、クロロプレン、クロロスルフォニル・ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド、ポリプロピレン、ブチルゴム、アクリロニトリル・ブタジエン・ゴム、スチレン・ブタジエン・ゴム、アクリルエラストマー、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、スチレンブロック及びジエンエラストマー、天然ゴム、またはその組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のベルト。
【請求項9】
エレベータシステムであって、
昇降路と、
前記昇降路内に配設され、前記昇降路内で移動可能なエレベータかごと、
前記昇降路に沿って前記エレベータかごを懸垂保持及び/または駆動するため、前記エレベータかごに動作可能に接続されるベルトと、
を備え、前記ベルトは、
ベルト幅に沿って配置され、前記ベルトの長さに沿って長手方向に延在する複数の引張部材を含み、各引張部材は、
複数の荷重担持繊維から形成されるコア部材、
前記コア部材を囲む複数のオーバラップ部材、及び、
前記複数の引張部材を少なくとも部分的に封入するジャケット材料を含
み、
前記複数のオーバラップ部材は、前記コア部材の周りに巻付けられるまたは編まれる、エレベータシステム。
【請求項10】
前記複数の荷重担持繊維は、マトリックス材料内に配設される、請求項
9に記載のエレベータシステム。
【請求項11】
前記荷重担持繊維は、炭素、ガラス、アラミド、ナイロン、及びポリマー繊維の1つまたは複数である、請求項
10に記載のエレベータシステム。
【請求項12】
前記マトリックス材料は、ポリウレタン、ビニルエステル、ポリエステル、またはエポキシ材料である、請求項
10に記載のエレベータシステム。
【請求項13】
前記複数のオーバラップ部材は合成繊維である、請求項
9に記載のエレベータシステム。
【請求項14】
前記複数のオーバラップ部材は金属ワイヤである、請求項
9に記載のエレベータシステム。
【請求項15】
前記複数のオーバラップ部材は、前記コア部材が故障する場合に前記エレベータかごを懸垂保持するように構成される、請求項
9に記載のエレベータシステム。
【請求項16】
前記ジャケット材料は、ポリウレタン、ポリエステル、エチレン・プロピレン・ジエン・エラストマー、クロロプレン、クロロスルフォニル・ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド、ポリプロピレン、ブチルゴム、アクリロニトリル・ブタジエン・ゴム、スチレン・ブタジエン・ゴム、アクリルエラストマー、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、スチレンブロック及びジエンエラストマー、天然ゴム、またはその組合せからなる群から選択される、請求項
9に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される実施形態は、エレベータシステムに関し、より詳細には、エレベータシステムのエレベータかごを懸垂保持及び/または駆動する荷重担持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータシステムは、建物内の種々のレベルの間で、乗客、貨物、または両方を運ぶために有用である。一部のエレベータは、牽引に基づき、エレベータかごを支持し、エレベータかごの所望の移動及び位置決めを達成するためのベルト等の荷重担持部材を利用する。
【0003】
ベルトが荷重担持部材として使用される場合、複数の引張要素またはコードが、共通ジャケット内に埋め込まれる。ジャケットは、コードを所望の位置に保持し、摩擦荷重経路を提供する。例示的な牽引エレベータシステムにおいて、機械は、昇降路に沿ってエレベータかごを駆動するため、ベルトが相互作用する牽引シーブを駆動する。ベルトは、通常、鋼要素から形成される引張部材を利用するが、代替的に、合成繊維または炭素繊維複合材等の他の材料から形成される引張部材を利用する場合がある。
【0004】
炭素繊維複合材引張部材において、部材は、通常、屈曲が非常に困難であり、引張部材の断面エリアにおいて、選択された引張性能を提供することが所望され、引張部材は、屈曲下で損傷される場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、改善されたエレベータシステムベルト用の引張部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態において、エレベータシステム用のベルトは、ベルト幅に沿って配置され、ベルトの長さに沿って長手方向に延在する複数の張引部材を含む。各引張部材は、複数の荷重担持繊維から形成されるコア部材、及び、コア部材を囲む複数のオーバラップ部材を含む。ジャケット材料は、複数の張引部材を少なくとも部分的に封入する。
【0007】
付加的にまたは代替的に、このまたは他の実施形態において、複数の荷重担持繊維は、マトリックス材料内に位置決めされる。
【0008】
付加的にまたは代替的に、このまたは他の実施形態において、荷重担持繊維は、炭素、ガラス、アラミド、ナイロン、及びポリマー繊維の1つまたは複数である。
【0009】
付加的にまたは代替的に、このまたは他の実施形態において、マトリックス材料は、ポリウレタン、ポリエステル、ビニルエステル、またはエポキシ材料である。
【0010】
付加的にまたは代替的に、このまたは他の実施形態において、複数のオーバラップ部材は合成繊維である。
【0011】
付加的にまたは代替的に、このまたは他の実施形態において、合成繊維は、Vectran(登録商標)またはDyneema(登録商標)またはZylon(登録商標)繊維の1つまたは複数である。
【0012】
付加的にまたは代替的に、このまたは他の実施形態において、複数のオーバラップ部材は金属ワイヤである。
【0013】
付加的にまたは代替的に、このまたは他の実施形態において、複数のオーバラップ部材は、コア部材の周りに巻付けられるまたは編まれる。付加的にまたは代替的に、このまたは他の実施形態において、ジャケット材料は、ポリウレタン、ポリエステル、エチレン・プロピレン・ジエン・エラストマー、クロロプレン、クロロスルフォニル・ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド、ポリプロピレン、ブチルゴム、アクリロニトリル・ブタジエン・ゴム、スチレン・ブタジエン・ゴム、アクリルエラストマー、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、スチレンブロック及びジエンエラストマー、天然ゴム、またはその組合せからなる群から選択される。
【0014】
別の実施形態において、エレベータシステムは、昇降路と、昇降路内に配設され、昇降路内で移動可能なエレベータかごと、昇降路に沿ってエレベータかごを懸垂保持及び/または駆動するため、エレベータかごに動作可能に接続されるベルトとを含む。ベルトは、ベルト幅に沿って配置され、ベルトの長さに沿って長手方向に延在する複数の張引部材を含む。各引張部材は、複数の荷重担持繊維から形成されるコア部材、及び、コア部材を囲む複数のオーバラップ部材を含む。ジャケット材料は、複数の張引部材を少なくとも部分的に封入する。
【0015】
付加的にまたは代替的に、このまたは他の実施形態において、複数の荷重担持繊維は、マトリックス材料内に位置決めされる。
【0016】
付加的にまたは代替的に、このまたは他の実施形態において、荷重担持繊維は、炭素、ガラス、アラミド、ナイロン、及びポリマー繊維の1つまたは複数である。
【0017】
付加的にまたは代替的に、このまたは他の実施形態において、マトリックス材料は、ポリウレタン、ビニルエステル、ポリエステル、またはエポキシ材料である。
【0018】
付加的にまたは代替的に、このまたは他の実施形態において、複数のオーバラップ部材は合成繊維である。
【0019】
付加的にまたは代替的に、このまたは他の実施形態において、複数のオーバラップ部材は金属ワイヤである。
【0020】
付加的にまたは代替的に、このまたは他の実施形態において、複数のオーバラップ部材は、コア部材が故障する場合にエレベータかごを懸垂保持するように構成される。
【0021】
付加的にまたは代替的に、このまたは他の実施形態において、ジャケット材料は、ポリウレタン、ポリエステル、エチレン・プロピレン・ジエン・エラストマー、クロロプレン、クロロスルフォニル・ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド、ポリプロピレン、ブチルゴム、アクリロニトリル・ブタジエン・ゴム、スチレン・ブタジエン・ゴム、アクリルエラストマー、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、スチレンブロック及びジエンエラストマー、天然ゴム、またはその組合せからなる群から選択される。
【0022】
以下の説明は、いずれの点でも制限的であると考えられるべきでない。添付図面を参照して、同様の要素は同様に番号付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】エレベータシステムの一実施形態の略図である。
【
図2】エレベータシステムベルトの一実施形態の略断面図である。
【
図3】エレベータベルト用の引張部材の一実施形態の断面図である。
【
図4】エレベータベルト用の引張部材の一実施形態の別の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
開示される装置及び方法の1つまたは複数の実施形態の詳細な説明は、図を参照して、制限ではなく例証として本明細書で提示される。
【0025】
図1には、例示的な牽引エレベータシステム10の概略図が示される。本発明の理解のために必要とされないエレベータシステム10の(ガイドレール、安全装置等のような)特徴部は、本明細書で論じられない。エレベータシステム10は、1つまたは複数のベルト16によって昇降路12内で動作可能に懸垂保持または支持されるエレベータかご14を含む。1つまたは複数のベルト16は、エレベータシステム10の種々の構成要素の周りにルーティングされる1つまたは複数のシーブ18と相互作用する。1つまたは複数のベルト16は、同様に、釣り合い錘22に接続され得、釣り合い錘22は、エレベータシステム10のバランスを助け、動作中に牽引シーブの両側のベルト張力の差を減少させるために使用される。
【0026】
シーブ18はそれぞれ、エレベータシステム10内の他のシーブ18の径と同じかまたは異なる場合がある径20を有する。シーブのうちの少なくとも1つのシーブは、牽引シーブ52であり得る。牽引シーブ52は、機械50によって駆動される。機械50による駆動シーブの移動は、牽引シーブ52の周りにルーティングされる1つまたは複数のベルト16を(牽引によって)駆動する、移動させる、及び/または推進させる。シーブ18のうちの少なくとも1つは、ダイバータ、デフレクタ、またはアイドラシーブであり得る。ダイバータ、デフレクタ、またはアイドラシーブは、機械50によって駆動されるのではなく、エレベータシステム10の種々の構成要素の周りで1つまたは複数のベルト16を誘導するのを助ける。
【0027】
幾つかの実施形態において、エレベータシステム10は、エレベータかご14を懸垂保持及び/または駆動するための2つ以上のベルト16を使用し得る。更に、エレベータシステム10は、種々の構成を有し得、それにより、1つまたは複数のベルト16の両側が1つまたは複数のシーブ18に係合する、または、1つまたは複数のベルト16の一方の側だけが1つまたは複数のシーブ18に係合する。
図1の実施形態は、1つまたは複数のベルト16がかご14及び釣り合い錘22で終端する1:1ローピング配置構成を示すが、他の実施形態は、他のローピング配置構成を利用する場合がある。
【0028】
ベルト16は、エレベータかご14を懸垂保持及び/または駆動するための強度要件を満たすことが可能であるのに十分に強くありながら、低い曲げ応力を提供し、ベルト寿命要件を満たし、また、スムーズな動作を有するために、1つまたは複数のシーブ18を通過するときに十分な柔軟性を有するために構築される。
【0029】
図2は、例示的なベルト16構成または設計の断面略図を提供する。ベルト16は、ベルト16に沿って長手方向に延在し、ベルト幅26に沿って配置される複数の引張部材24を含む。引張部材24は、ジャケット材料28内に少なくとも部分的に閉囲されて、ベルト16内での引張部材24の移動を制限し、引張部材24を保護する。ジャケット材料28は、牽引シーブ52の対応する表面と相互作用するように構成される牽引側30を画定する。ジャケット材料28用の例示的な材料は、例えば、熱可塑性及び熱硬化性ポリウレタンのエラストマー、ポリアミド、熱可塑性ポリエステルエラストマー、及びゴムを含む。幾つかの実施形態において、ジャケット材料28は、ポリウレタン、ポリエステル、エチレン・プロピレン・ジエン・エラストマー、クロロプレン、クロロスルフォニル・ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリアミド、ポリプロピレン、ブチルゴム、アクリロニトリル・ブタジエン・ゴム、スチレン・ブタジエン・ゴム、アクリルエラストマー、フルオロエラストマー、シリコーンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、スチレンブロック及びジエンエラストマー、天然ゴム、またはその組合せからなる群から選択される。他の材料がベルト16の要求機能を満たすために適切である場合、他の材料がジャケット材料28を形成するために使用されてもよい。例えば、ジャケット材料28の主要な機能は、ベルト16と牽引シーブ52との間に十分な摩擦係数を提供して、両者の間に所望の量の牽引力を生成することである。ジャケット材料28は、同様に、牽引負荷を引張部材24に伝達すべきである。更に、ジャケット材料28は、耐摩耗性があり、また、引張部材24を、例えば、衝撃損傷、化学物質等の環境因子に対する暴露から保護すべきである。
【0030】
ベルト16は、ベルト幅26及びベルト厚32を有し、ベルト幅26とベルト厚32とのアスペクト比は1より大きい。ベルト16は、牽引側30に対向する後側34、及び、牽引側30と後側34との間に延在するベルト縁36を更に含む。8つの引張部材24が
図2の実施形態において示されるが、他の実施形態は、他の数の引張部材24、例えば、6つ、10、または12の引張部材24を含んでもよい。更に、
図2の実施形態の引張部材24は、実質的に同一であるが、他の実施形態では、引張部材24は、互いに異なってもよい。
【0031】
図3に示すように、引張部材24はそれぞれ、合成繊維から、または、複数の荷重担持繊維(load-carrying fibers)42等の複合構造から形成されるコア部材40を含み、荷重担持繊維42は、幾つかの実施形態において、マトリックス材料44内に配設される。他の実施形態において、マトリックス材料は使用されず、引張部材24はいわゆる「乾式繊維(dry fiber)」構造から形成される。
【0032】
例示的な荷重担持繊維42は、例えば、炭素、ガラス、アラミド、ナイロン、及びポリマー繊維を含むが、それに限定されない。荷重担持繊維42のそれぞれは、実質的に同一であってもよい、または、異なってもよい。更に、マトリックス材料44は、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、ビニルエステル、及びエポキシ等の任意の適した材料から形成されてもよい。荷重担持繊維42の材料及びマトリックス材料44は、引張部材24の所望の剛性及び強度を達成するように選択される。
【0033】
コア部材40は、幾つかの実施形態において、引出し成形法(pultrusion)によって薄層として形成されてもよい。標準的な引出し成形法において、荷重担持繊維42は、マトリックス材料44と共に含浸され、加熱式ダイ、及び、マトリックス材料44が架橋結合を受ける更なる硬化加熱器を通して引出される。引出される荷重担持繊維42の制御された移動及び支持は、コア部材40の所望の直線または曲線プロファイルを形成するために使用されてもよいことを当業者は理解するであろう。例示的な実施形態において、コア部材40は、約0.5ミリメートル~約4ミリメートルの断面厚を有する。別の実施形態において、コア部材40は、1ミリメートルの断面厚を有する。更に、幾つかの実施形態において、コア部材40は円形断面を有し、一方、他の実施形態において、コア部材40は、長方形または楕円等の他の断面形状を有してもよい。他の実施形態において、コア部材40は、単一または複数材料の乾式繊維コア構成であってもよい。
【0034】
引張部材24は、コア部材40の外周に配設される複数のオーバラップ(overwrap)要素46を更に含む。オーバラップ要素46は、引張部材24に沿って全体的に長手の方向に延在し、幾つかの実施形態では、コア部材40の周りに巻付けられるまたは編まれる。幾つかの実施形態において、オーバラップ要素46は、Vectran(商標)またはDyneema(登録商標)またはZylon(登録商標)等の複数の合成繊維である。挙げた材料が例示に過ぎないこと、及び、他の材料が利用されてもよいことを当業者は容易に認識するであろう。オーバラップ要素46は、コア部材40に対して減少した曲げ剛性を有するが、荷重担持繊維42と比較して同様の引張強度を持つように構成される。その結果は、同等の引張強度を有する全コア引張部材と比較すると、減少した曲げ剛性を有する引張部材24になる。
【0035】
図4に示す代替の実施形態において、オーバラップ要素は、鋼ワイヤ等の複数の金属ワイヤ48、または、複数の金属ワイヤ48から形成されるストランドである。幾つかの実施形態において、金属ワイヤ48は、例えば、破断または熱事象によってコア部材40が損傷または故障する場合に、昇降路12内でエレベータかご14を支持するのに十分である。
【0036】
用語「about(約)」は、出願時に入手可能な機器に基づく特定の量の測定値に関連する誤差の程度を含むことを意図される。例えば、「約」は、所与の値の±8%または5%または2%の範囲を含み得る。
【0037】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を述べるためのものに過ぎず、本開示を制限することを意図されない。本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数形を同様に含むことを意図される。用語「comprises(備える)」及び/または「comprising(備えている)」が、本明細書で使用されるとき、述べた特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素構成要素、及び/またはその群の存在または追加を排除しないことが更に理解されるであろう。
【0038】
本開示は例示的な1つまたは複数の実施形態を参照して述べられたが、本開示の範囲から逸脱することなく、種々の変更が行われてもよく、その要素が等価物と交換されてもよいことが当業者によって理解されるであろう。更に、本開示の教示に従って、本開示の本質的範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料に適合するため多くの修正が行われてもよい。したがって、本開示が、本開示を実施するために企図されるベストモードとして開示される特定の実施形態に限定されるのではなく、本開示が、特許請求の範囲内に入る全ての実施形態を含むことになることが意図される。