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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】病原性微生物の核酸検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20221205BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20221205BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20221205BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z
C12N15/10 100Z
C12N15/10 120Z
C12Q1/686 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018092266
(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公開番号】P2019193607
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2018086508
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518150529
【氏名又は名称】公益財団法人筑波メディカルセンター
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 広道
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 洋介
【審査官】木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-073595(JP,A)
【文献】特開2008-122372(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168986(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
C12N 15/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原性微生物の核酸検出方法であって、
(1)対象から採取された生体試料をpHが6.0~8.5であり且つ比重が1.0~1.2である希釈液(但し、希釈液が10mMのTris-HCl(pH7.5)である場合を除く)に添加する工程、
(2)生体試料が添加された希釈液を攪拌する工程、
(3)攪拌された希釈液を3秒以上静置して静置液から上清を取得する工程、及び
(4)取得された上清を核酸増幅試料液として病原性微生物の核酸を増幅し、次いで検出する工程、
を含前記工程(1)で添加する希釈液の量が1mlより多い量であり、生体試料由来物質を含んだ核酸増幅試料液を用いた、方法。
【請求項2】
病原性微生物の核酸検出方法であって、
(1)対象から採取された生体試料をpHが6.0~8.5であり且つ比重が1.0~1.2である希釈液(但し、希釈液が10mMのTris-HCl(pH7.5)である場合を除く)に添加する工程、
(2)生体試料が添加された希釈液を攪拌する工程、
(3)攪拌された希釈液を3秒以上静置して静置液から上清を取得する工程、及び
(4)取得された上清を孔径が20μm~100μmの焼結フィルターで濾過して得られた濾液を核酸増幅試料液として病原性微生物の核酸を増幅し、次いで検出する工程、
を含み、前記工程(1)で添加する希釈液の量が1ml以上であり、生体試料由来物質を含んだ核酸増幅試料液を用いた、方法。
【請求項3】
焼結フィルターの素材がポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン及びポリメチルメタクリレートからなる群から選択されるものである、請求項に記載の方法。
【請求項4】
工程(3)において、上清が、静置液中、浮遊物を目視確認できない部分から取得されるものである、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
生体試料が、フロックスワブで対象から採取したものである、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程(4)において、核酸の増幅がα型DNAポリメラーゼを使用するものである、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程(4)において、核酸の増幅及び検出を、PCR法又はリアルタイムPCR法で行う、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
病原性微生物の核酸検出方法に供される核酸増幅試料液の調製方法であって、
(1)対象から採取された生体試料をpHが6.0~8.5であり且つ比重が1.0~1.2である希釈液(但し、希釈液が10mMのTris-HCl(pH7.5)である場合を除く)に添加する工程、
(2)生体試料が添加された希釈液を攪拌する工程、及び
(3)攪拌された希釈液を3秒以上静置して静置液から上清を取得する工程、
を含み、前記工程(1)で添加する希釈液の量が1mlより多い量である、方法。
【請求項9】
病原性微生物の核酸検出方法に供される核酸増幅試料液の調製方法であって、
(1)対象から採取された生体試料をpHが6.0~8.5であり且つ比重が1.0~1.2である希釈液(但し、希釈液が10mMのTris-HCl(pH7.5)である場合を除く)に添加する工程、
(2)生体試料が添加された希釈液を攪拌する工程、
(3)攪拌された希釈液を3秒以上静置して静置液から上清を取得する工程、及び
(4)取得された上清を孔径が20μm~100μmの焼結フィルターで濾過して濾液を取得する工程、
を含み、前記工程(1)で添加する希釈液の量が1ml以上である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原性微生物の核酸の検出方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
感染症の診断および治療においては、感染症の原因となる微生物を検出することが極めて重要である。そのため、臨床現場では様々な検査方法により感染症原因微生物の検出が行われている。試料中の微生物を検出する方法としては、微生物を増殖させる培養検査、微生物を抗原抗体反応で検出する抗原検査、微生物の核酸を検出する遺伝子検査が挙げられる。特に近年では高い感度と正確性を有する遺伝子検査に注目が集まっている。
【0003】
微生物の遺伝子検査においては、検査対象は生体試料である。生体試料にはヒト由来の成分を主とする様々な夾雑物が含まれ、核酸の増幅または検出が阻害される。α型DNAポリメラーゼを用いることにより夾雑物の存在下においても増幅・検出は可能との報告があるが、この報告において増幅及び検出の対象となる遺伝子は組織や血液から採取されたその生体自身の遺伝子であり、生体試料中に含まれる微生物の遺伝子を検出する場合には、依然として、夾雑物の分離、あるいは除去が必要である。
【0004】
夾雑物の分離や除去については、例えばフィルター等を用いて夾雑物を濾過する方法が知られている(特許文献1)が、一般的な遺伝子検査では、試料から核酸のみを抽出・精製することによって、夾雑物が除去された検査に適したサンプルを調製することが行われている。核酸抽出方法としては、フェノール等の有機溶媒を使用する方法の他、カラムや磁性シリカ粒子を使用する方法が知られている。さらに、ビーズを用いて試料中の夾雑物を破砕し核酸を得る方法や(特許文献2)、加熱と遠心分離により夾雑物を局在化させる方法(特許文献3)、タンパク質変性剤などを加えて核酸を抽出する方法(特許文献4)、0.1%以上の界面活性剤を加えて微生物を含む血液試料から、夾雑物となりうる哺乳類の血液細胞を選択的に溶解させる方法も知られている(特許文献5)。
【0005】
従来の方法では試料の前処理には、煩雑な操作や特別な装置を必要としていた。具体的には、核酸抽出用の試薬および装置、あるいは加熱のためのヒートブロック、遠心分離機が必要となる。
【0006】
一方、フィルターによる濾過は簡便に実施できる方法であるが、夾雑物全てを取り除くためには、フィルターが目詰まりを起こし濾過できない、あるいは濾液に対象となる微生物が含まれない問題が生じる。また生体試料の成分はその由来によって均質ではないため、フィルターを用いた方法のみで夾雑物を除去し、検査に適した試料を十分量得ることは困難であると考えられていた。
【0007】
微生物を対象とする遺伝子検査においては、夾雑物が残存した試料では検査が不良、あるいは検査工程自体は実行可能であっても正しい結果が得られないため、核酸を抽出および精製する工程が必要であった。
【0008】
しかしながら、核酸抽出工程には時間を要することが課題の一つである。前述の通り、生体試料から核酸を抽出精製することは、遺伝子検査において標準的な工程であるが、この工程には数十分間の時間を要するため、本工程に要する時間が短縮されれば、遺伝子検査に要する時間を大幅に改善することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許4339906号
【文献】特開2006-141292
【文献】特開2006-187221
【文献】特開平07-236499
【文献】特許6153516号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、病原性微生物の核酸検出方法において、迅速で簡便な生体試料の前処理によって核酸増幅に適した核酸増幅試料液を調製し、この試料液を使用して核酸を増幅し、病原性微生物の核酸を検出する方法を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、生体試料を含む希釈液を攪拌及び静置して上清を得ることによって、又はさらに該上清を濾過して濾液を得ることによって、生体試料中の夾雑物を局在化及び除去でき、その結果、生体試料、生体試料採取具等に由来する核酸の増幅を阻害する物質(核酸増幅阻害物質)を低減でき、安定的に核酸の増幅及び検出が可能であることを見出し、下記に代表される本発明を完成させた。
【0012】
[項1]
病原性微生物の核酸検出方法であって、
(1)対象から採取された生体試料をpHが6.0~8.5であり且つ比重が1.0~1.2である希釈液に添加する工程、
(2)生体試料が添加された希釈液を攪拌する工程、
(3)攪拌された希釈液を3秒以上静置して静置液から上清を取得する工程、及び
(4)取得された上清を核酸増幅試料液として病原性微生物の核酸を増幅し、次いで検出する工程、
を含む、生体試料由来物質を含んだ核酸増幅試料液を用いた、方法。
[項2]
工程(4)において、取得された上清をさらに焼結フィルターで濾過して得られた濾液を核酸増幅試料液とする、項1に記載の方法。
[項3]
希釈液の量が1ml以上である項2に記載の方法。
[項4]
希釈液の量が1mlより多い量である項1または2に記載の方法。
[項5]
焼結フィルターの孔径が1μm~200μmである項2~4のいずれかに記載の方法。
[項6]
焼結フィルターの素材がポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン及びポリメチルメタクリレートからなる群から選択されるものである、項2~5のいずれかに記載の方法。
[項7]
工程(3)において、上清が、静置液中、浮遊物を目視確認できない部分から取得されるものである、項1~6いずれかに記載の方法。
[項8]
生体試料が、フロックスワブで対象から採取したものである、項1~7のいずれかに記載の方法。
[項9]
工程(4)において、核酸の増幅がα型DNAポリメラーゼを使用するものである、項1~8のいずれかに記載の方法。
[項10]
工程(4)において、核酸の増幅及び検出を、PCR法又はリアルタイムPCR法で行う、項1~9のいずれかに記載の方法。
[項11]
病原性微生物の核酸検出方法に供される核酸増幅試料液であって、pHが6.0~8.5であり且つ比重が1.0~1.2である生体試料含有希釈液の静置上清を含む試料液。
[項12]
病原性微生物の核酸検出方法に供される核酸増幅試料液の調製方法であって、
(1)対象から採取された生体試料をpHが6.0~8.5であり且つ比重が1.0~1.2である希釈液に添加する工程、
(2)生体試料が添加された希釈液を攪拌する工程、及び
(3)攪拌された希釈液を3秒以上静置して静置液から上清を取得する工程、
を含む、方法。
また、本発明は下記に代表される発明をさらに含みうる。
[項A]
生体試料に含まれる病原性微生物の核酸を生体試料と混合したまま検出する方法において、採取された生体試料に、pHが6.0~8.5であり且つ比重が1.0~1.2である溶液を添加し、攪拌後、3秒以上静置させ得られた上清を用い、試料中の病原性微生物の核酸を増幅させ、該増幅産物を検出することを特徴とする病原性微生物の核酸検出方法。
[項B]
生体試料が、フロッキングにより被着した親水性の繊維で覆われたスワブにより採取されることを特徴とする、項Aに記載の方法。
[項C]
更に、上清を焼結フィルターに通液する工程を含むことを特徴とする項A又はBに記載の方法。
[項D]
前記方法で用いられる焼結フィルターの素材が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンおよびポリメチルメタクリレートからなる群から選択される、項Cに記載の方法。
[項E]
前記方法で用いられる焼結フィルターの孔径が1~100μmであることを特徴とする、項C又はDに記載の方法。
[項F]
核酸増幅において、α型DNAポリメラーゼを用いることを特徴とする、項A~Eのいずれかに記載の方法。
[項G]
3秒以上静置後、溶液の上端から1/10の範囲に浮遊物が確認できない状態になった溶液から得られる上清を用いることを特徴とする、項A~Fのいずれかに記載の方法。
[項H]
pHが6.0~8.5であり且つ比重が1.0~1.2であることを特徴とし、採取された生体試料に添加して攪拌され、3秒以上静置させ得られた上清を用い、試料中の病原性微生物の核酸を増幅させ、該増幅産物を検出するために用いられる、病原性微生物の核酸検出用組成物。
【発明の効果】
【0013】
特別な機器や試薬を用いずに、核酸増幅工程に供するに適した(例えば、生体試料又は生体試料採取具に由来する核酸増幅に不適当な又は核酸増幅を阻害する夾雑物が低減された)核酸増幅試料液を簡便かつ迅速に調製できるため、核酸抽出及び精製に要する時間が不必要であり、病原性微生物の核酸検出に要する時間を短縮できる。また、一実施形態では、核酸増幅試料液を調製する過程において実効的なタンパク質変性剤が使用されないため、薬傷の危険性もない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例5の結果を表す図である。
図2】実施例6の結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、上述の代表的な発明を中心に説明する。
病原性微生物の核酸検出方法では、対象(例えば、病原性微生物の感染が疑われるヒト又は非ヒト動物)から採取された生体試料に種々の処理を施して核酸増幅試料液を調製し、この試料液を核酸増幅に供し、増幅産物中の病原性微生物の核酸を検出することが一般的に行われている。本発明の一実施形態は、病原性微生物の核酸検出方法であって、
(1)対象から採取された生体試料をpHが6.0~8.5であり且つ比重が1.0~1.2である希釈液に添加する工程、
(2)生体試料が添加された希釈液を攪拌する工程、
(3)攪拌された希釈液を3秒以上静置して静置液から上清を取得する工程、及び
(4)取得された上清を核酸増幅試料液として病原性微生物の核酸を増幅し、次いで検出する工程、
を含む、生体試料由来物質を含んだ核酸増幅試料液を用いた、方法、である。
【0016】
本発明では工程(3)で得られた上清を核酸増幅試料液として使用できる。従来は、核酸抽出工程及び核酸精製工程によって核酸以外の生体試料由来物質がほぼ完全に除去されていた。一方、前記上清は生体試料含有希釈液を攪拌及び静置することで得られるものであり生体試料が完全には除去されておらず、したがって生体由来試料を含んだままである。このように、本発明においては、核酸増幅に際して、生体試料由来物質を完全に除去する必要はない。本発明においては、簡便及び迅速な処理、すなわち工程(1)~(3)で得られる前記上清を核酸増幅に使用しうる。
【0017】
また、本発明の一実施形態は、工程(4)において、工程(3)で取得された上清をさらに焼結フィルターで濾過して得られた濾液を核酸増幅試料液とする。
【0018】
本発明における対象は、例えばヒト又は非ヒト動物である。非ヒト動物は非ヒト哺乳動物であり、例えばイヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギなどであり、好ましくはイヌ、ネコなどである。好ましい対象はヒト、より好ましくは病原性微生物の感染が疑われるヒトである。
【0019】
本発明における生体試料は、対象から採取された試料である。具体的には、咽頭拭い液、口腔拭い液、鼻腔(後鼻腔を含む)拭い液、鼻咽頭拭い液、鼓膜切開液、肺胞洗浄液、胃洗浄液、腸洗浄液、子宮頸管拭い液、尿道擦過物、喀痰、膿、便、直腸拭い液、尿、吐しゃ物、血漿、血清、唾液、羊水、髄液、臓器抽出液、組織抽出液などが挙げられ、この他、スワブに付着するヒト由来試料であれば、本発明における生体試料に含まれうる。本発明において特に好ましい生体試料は、咽頭拭い液、鼻腔(後鼻腔を含む)拭い液、鼻咽頭拭い液、喀痰である。
【0020】
対象から生体試料を採取する際に生体試料採取具を使用することができる。生体試料採取具は生体試料をヒト、その他の動物から採取するために使用されるものであり特に限定されない。例えば、スワブ、白金耳、スポイト、へら、さじなどであり、対象の状態、採取元となる生体の器官、組織などに応じて適宜選択できる。好ましい生体試料採取具はスワブである。一実施形態において、生体試料採取具の大きさは、希釈液の撹拌の際に支障の出ない大きさであればよく、例えば希釈液を収容する容器に収まる大きさである。希釈液の撹拌の際に大きすぎる場合は、生体試料採取後の生体試料採取具を変形する(例えば曲げる)、その一部を除去する(例えば切断する)等の加工により支障の出ない大きさに調整してもよい。例えば、ロッド状スワブを二つに切断し、生体試料を含む末端を有する切断されたロッドを収容容器に収まる大きさとしてもよい。
【0021】
本発明におけるスワブとは、生体試料が採取可能なスワブであり、好ましくはフロックスワブである。スワブは、ロッド状のものが医療分野において広く使用されており、本発明ではそれらも使用できる。通常、ロッド状スワブの先端は生体試料採取部であり、他端部は把持部である。スワブのロッドは中空であってもよい。スワブの生体試料採取部はチップと称されることもあり、その形状は例えば球状、楕円球状などである。スワブの把持部は特に制限されないが、扁平形状であれば把持に有利であり、希釈液の収容容器の蓋と一体となった構造であればスワブを希釈液に投入後の閉栓に便利である。また、スワブと収容容器の蓋とは一体構造ではないが、スワブの把持部を収容容器の蓋における収容スペース側に設けた挿入部に差し込むことで事後的に一体化できる把持部であってもよい。一実施形態において、生体試料採取具は、ロッド状であり、ロッドの一端が生体試料採取部で覆われたスワブである。好ましくは生体試料採取部が親水性の繊維で覆われたチップを端部に備えたロッド状スワブであり、さらに好ましくは、フロックスワブである。フロックスワブは、例えば、チップを端部に備えたロッドと、該チップの表面にロッド長手方向に対して垂直方向に繊維が配列した配置でフロッキングにより前記チップに被着した、均一な厚さを有する層として配置された親水性の繊維と、を含むスワブである。フロックスワブは採取した生体試料が希釈液中に放出されやすい点で有利である。
【0022】
一実施形態において、スワブのチップに使用される繊維の材質は、レーヨン、ポリエステル、ポリアミド、炭素繊維またはアルギネート等の合成または人工的な材料、または絹や綿などの天然繊維、またはそれらの混紡より適宜選択される。
【0023】
希釈液は、病原性微生物の核酸検出検査(遺伝子検査と一般に称されることもある)に使用されているものを広く使用でき、病原性微生物の種類、生体試料の種類、核酸増幅の種類などに応じて適宜選択できる。希釈液は、例えば緩衝液、水(例えば、精製水、脱イオン水、超純水等)、生理食塩水等である。また、希釈液は、病原性微生物の核酸検出に使用されている輸送培地であってもよい。希釈液は、界面活性剤を含まないものが好ましい。一実施形態において、希釈液は例えば緩衝液を含む水性組成物である。一実施形態において、緩衝液は、生化学分野で使用されえるものであり、例えばグッド緩衝液(例えばHEPESバッファー、ACESバッファー、PIPESバッファー、Bis-Trisバッファー、MOPSバッファー、HEPPSバッファー、TAPSバッファーなど)、Tris-HClバッファー、リン酸バッファー、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などである。
【0024】
一実施形態において、希釈液は、塩、ウシ血清アルブミン(BSA)、ゼラチン、色素などを含んでもよい。また、希釈液は、糖を含有してもよく、例えばスクロース、マンノース及びイノシトールからなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはスクロースである。希釈液は標的微生物以外の微生物の静菌の点から、抗菌物質を含有してもよく、例えばバンコマイシン、アンホテリシンB、コリスチン、ポリミキシンB、メトロニダゾール、クロラムフェニコールが挙げられ、好ましくはバンコマイシン、アンホテリシンB及びコリスチンからなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはバンコマイシン、アンホテリシンB、及びコリスチンの併用である。希釈液は、アミノ酸を含有してもよく、例えばL-システイン及びL-グルタミン酸からなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはL-システイン及びL-グルタミン酸の併用である。一実施形態において、希釈液はスクロースを含有する緩衝液であり、好ましくは、スクロース、バンコマイシン、アンホテリシンB、コリスチン、L-システイン及びL-グルタミン酸を含む緩衝液であり、より好ましくは、UTM-RT培地(Copan Universal Transport Medium;Copan社製)である。
【0025】
希釈液の比重は、例えば、0.8以上、0.85以上、0.9以上、0.95以上、1.0以上、1.02以上、1.04以上、1.06以上又は1.08以上であり得、また1.4以下、1.35以下、1.3以下、1.25以下、1.2以下、1.18以下、1.16以下、1.14以下又は1.12以下であり得る。一実施形態において、希釈液の比重は例えば0.8~1.4、0.85~1.35、0.9~1.3、0.95~1.25、1.0~1.2であり、好ましくは1.04~1.16であり、より好ましくは1.06~1.14である。
【0026】
希釈液のpH(25℃)は、例えば、6.0以上、6.5以上、6.8以上、6.9以上、7.0以上又は7.1以上であり得、また8.5以下、8.0以下、7.8以下、7.6以下、7.5以下又は7.4以下であり得る。一実施形態において、希釈液のpHは、例えば6.0~8.5、6.5~8.0であり、好ましくは6.8~7.8であり、より好ましくは7.0~7.4である。pHが中性近傍にあることにより、夾雑物の一部の溶解、変性を抑制でき、結果として夾雑物の浮遊又は沈降による局在化の効率が向上する。
【0027】
希釈液の量は特に限定されないが、核酸増幅の安定性が向上する観点から、例えば1mlより多い量、1.2ml以上、好ましくは1.5ml以上、より好ましくは1.7ml以上、特に好ましくは2ml以上である。希釈液の量の上限は、核酸増幅が適切に行える限り特に制限されないが、例えば、10ml以下、好ましくは5ml以下とすることができる。一実施形態において、希釈液の量は例えば1mlより多い量~10ml、1.2ml~10ml、1.5ml~10ml、1.7ml~10ml、2ml~10ml、1.2ml~5ml、1.5ml~5ml、1.7ml~5ml、2ml~5mlである。
【0028】
また、上清を更に焼結フィルターで濾過した濾液を核酸増幅試料液とする場合には、核酸増幅試料液中の核酸増幅を阻害する物質がより低減されていることから、希釈液の量は、より少量でもよく、例えば0.8ml以上、1ml以上、1mlより多い量、1.2ml以上、好ましくは1.5ml以上、より好ましくは1.7ml以上、特に好ましくは2ml以上であり、希釈液の量の上限は、核酸増幅が適切に行える限り特に制限されないが、例えば10ml以下、好ましくは5ml以下とすることができる。一実施形態において、希釈液の量は例えば0.8ml~10ml、1.0ml~10ml、1mlより多い量~10ml、1.2ml~10ml、1.5ml~10ml、1.7ml~10ml、2ml~10ml、0.8ml~5ml、1.0ml~5ml、1mlより多い量~5ml、1.2ml~5ml、1.5ml~5ml、1.7ml~5ml、2ml~5mlである。
【0029】
希釈液は、通常、蓋部と本体部から構成された、密栓可能な容器に収容されているが、生体試料採取後、短時間かつ短い希釈液移動距離で攪拌工程に供される場合などの希釈液の漏れを考慮する必要がない場合には密栓は不要であり、したがってこの場合、密栓できない容器、蓋のない容器も使用できる。一実施形態において、希釈液を収容する容器は密栓可能なチューブである。一実施形態において、希釈液を収容する容器は、希釈液を、任意に生体試料採取具とともに、収容可能な形状及び大きさのチューブである。一実施形態において、チューブの口径は例えば10~30mm、好ましくは10~20mmであり、チューブの高さは30~150mm、好ましくは35~100mmである。チューブの底部の形状は底部に向かうにつれて細くなるテーパード形状であることが静置時の安定性、攪拌時の安定性の点で有利であり、好ましい。収容容器は攪拌に供され得るため、その材質は、攪拌中に変形または破損が生じないような材質が望ましい。前記条件であれば具体的な材質は特に限定されないが、硬質樹脂、具体的にはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS樹脂などが挙げられる。
【0030】
工程(1)では、対象から採取された生体試料を例えばpHが6.0~8.5であり且つ比重が1.0~1.2である希釈液に添加する。一実施形態において、生体試料を希釈液に添加する方法は、例えば、対象から生体試料採取具で生体試料を採取後、生体試料採取具の生体試料の付着した部分(生体試料採取部)を収容容器に収容された希釈液に接触させる方法である。また、一実施形態において、生体試料採取具を使用せずに生体試料を採取できる場合には、採取された生体試料をそのまま収容容器に収容された希釈液に添加する方法である。
【0031】
工程(2)では、工程(1)で得られた生体試料が添加された希釈液を攪拌する。攪拌の際、希釈液を収容した容器から攪拌のための攪拌用容器に希釈液を移し替えてもよいし、希釈液を収容した容器のまま攪拌してもよい。また、攪拌の際には、生体試料採取具の生体試料採取部を希釈液に入れたまま攪拌してもよい。例えば、スワブの生体試料採取部(通常はチップ)を希釈液に浸漬した状態でスワブと希釈液を収容した容器(例えばチューブ)ごと攪拌に供することができる。攪拌においては、スワブが入った状態のチューブは専用のキャップで密封されていてもよいし、チューブの上部が開放状態であってもよい。攪拌の方法としては、チューブの底部を例えばボルテックスミキサーなどで高速旋回することでチューブ内の希釈液をスワブ等の生体試料採取部ごと攪拌する方法や、チューブを振とうさせる方法や、スワブ等の生体試料採取部を振動させて希釈液を攪拌する方法が挙げられる。
【0032】
工程(2)における攪拌温度は、常温付近であればよく、例えば0℃以上、4℃以上又は15℃以上であり得、また40℃以下、35℃以下又は30℃以下であり得る。一実施形態において、攪拌温度は10℃~35℃であり、好ましくは15℃~30℃である。本工程における攪拌時間は、例えば3秒以上、5秒以上又は20秒以上であり得、また1分以下、45秒以下又は30秒以下であり得る。一実施形態において、攪拌時間は3秒~1分であり、好ましくは5秒~20秒である。
【0033】
工程(3)では、工程(2)で得られた攪拌された希釈液を3秒以上静置して静置液から上清を取得する。本工程では、工程(2)によって希釈液中に放出された夾雑物を局在化、例えば沈降できる。静置は、液体培地中の夾雑物が局在化される限り特に制限されないが、例えば攪拌された希釈液を収容する容器を、机のような水平な面に置く方法、チューブラックのような収容容器保持具で保持する方法などにより実施され得る。
【0034】
本工程における静置時間の下限は、例えば3秒であり、好ましくは5秒である。静置時間の上限は、核酸増幅阻害物質の局在化の観点からは特に制限されないが、核酸検出までに要する時間を短縮する観点から適宜定めることができ、例えば15分、好ましくは1分、より好ましくは30秒である。一実施形態において、静置時間は例えば3秒~15分、3秒~1分、3秒~30秒、5秒~15分、好ましくは5秒~1分、より好ましくは5秒~30秒であり得る。
【0035】
本工程における静置温度は、常温付近であればよく、例えば0℃以上、4℃以上又は15℃以上であり得、また40℃以下、35℃以下又は30℃以下であり得る。一実施形態において、静置温度は4℃~35℃であり、好ましくは15℃~30℃であり得る。
【0036】
かかる方法において、静置に替えて遠心分離により沈殿させた場合、病原性微生物が沈殿し、上清に測定対象となる病原性微生物が含まれなくなるか、又は、病原性微生物の量が著しく減少してしまうため好ましくない。
【0037】
一実施形態において、夾雑物または核酸増幅阻害成分は、例えば、生体試料が付着したスワブに存在する、生体由来の物質またはスワブ由来の物質であって、核酸検出検査、特に核酸増幅の阻害要因となりうる物質を指す。該物質の例として、ヒト細胞、粘膜、鼻汁、唾液、痰、血液、歯垢、その他生体由来の粘性成分(例えば、ムチン等の粘液糖タンパク質)やタンパク質、ヘパリン等のグリコサミノグリカン、クエン酸等の金属キレート化合物、スワブの繊維等の水不溶性物質が挙げられる。
【0038】
なお、生体試料採取具は、工程(1)後工程(2)前に収容容器から除去してもよいし、除去しなくてもよい。工程(2)前に除去しない場合は工程(3)前に除去される。
【0039】
特定の実施形態においては、攪拌後の希釈液を静置して得られる静置液の上端から、静置液の高さに対して1/10の範囲に浮遊物が目視で確認できない状態(液面に目視で確認できる比重が非常に軽いもの(例えばスワブの繊維等)が浮いており、且つ液面を除く1/10の範囲に浮遊物が目視で確認できない状態を含む。以下の浮遊物が目視で確認できない状態についても同様である)になった静置液から上清を採取して、核酸の増幅及び検出を行う。好ましくは、攪拌後の希釈液を静置後、静置液の上端から1/5の範囲に浮遊物が目視で確認できない状態になった静置液から上清を採取するのがよく、更に好ましくは静置液の上端から1/3の範囲に浮遊物が目視で確認できない状態になった静置液から上清を採取するのがよい。
【0040】
より好ましくは、静置液中、浮遊物を目視確認できない部分から上清を取得する。
【0041】
また、上清を取得する方法としては、例えばスポイトで吸い取る、ピペットで吸引するなどの方法が挙げられる。取得する上清の量は、工程(4)における核酸増幅に必要な量であればよく特に制限されないが、例えば50μl~1000μl、好ましくは100μl~800μlである。
【0042】
工程(4)では工程(3)で取得された上清を核酸増幅試料液として病原性微生物の核酸を増幅し、次いで検出する。さらなる実施形態では、工程(4)において、工程(3)で取得された上清をさらに焼結フィルターで濾過し、得られた濾液を核酸増幅試料液とする。上清を焼結フィルターを用いて濾過することにより、希釈液がより少量の場合でも核酸増幅試料液中の核酸増幅阻害物質が低減されるため、より安定して核酸増幅が可能となり、より高い感度で核酸を検出することが可能となる。本発明の方法において生体試料の希釈液への添加から核酸増幅試料液の調製までに要する時間は特に制限されるものではないが、検査時間を短縮する点から、例えば15分間以下、好ましくは10分間以下、より好ましくは5分間以下とできる。
【0043】
本発明において用いられる焼結フィルターの素材は特に限定されず、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、アルミナ、ジルコニア等を挙げることができる。ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレートからなる群から選択される素材を使用することが成型が容易である点から好ましく、なかでもポリプロピレン又はポリエチレンが好ましい。
【0044】
焼結フィルターの孔径は、核酸増幅試料液を調製できる限り特に制限されないが、例えば、0.5μm以上、1μm以上又は3μm以上であり得、また200μm以下、100μm以下又は50μm以下であり得る。一実施形態において、孔径は、1μm~200μm以下、好ましくは1μm~100μm、より好ましくは5μm~50μmである。一実施形態においては、焼結フィルターは、その孔径が異なる複数のフィルターを重ねて構成されていてもよく、最小孔径を有するフィルターの孔径が、1μm以上であり、最大孔径を有するフィルターの孔径が200μm以下である濾過フィルターを用いることができる。一実施形態において、例えば孔径100μm~200μmの焼結フィルター、孔径1μm~100μmの焼結フィルターの順に濾過することができる。
【0045】
工程(4)では工程(3)で得られた上清又は上清を焼結フィルターで濾過した濾液を核酸増幅試料液として病原性微生物の核酸を増幅し、次いで検出する。当業者は、該上清又は濾液を従来の核酸抽出工程に供しうることを理解できるが、この場合核酸検出の時間を大きく短縮することはできない。本発明では核酸抽出工程を含まない実施形態が好ましい。
【0046】
本発明における核酸検出方法は特に限定されず、例えば遺伝子の配列情報を根拠に病気や感染などを検査できる方法であればよい。具体的には、例えば、微生物中の遺伝子の部分配列を検出する態様や、遺伝子中の変異を検出する態様が挙げられる。
【0047】
工程(4)において、核酸増幅に用いられる核酸増幅方法は特に限定されず、PCR法、リアルタイムPCR法、SDA法、ICAN法、LAMP法など種々の公知の方法を用いることができる。より好ましくはPCR法またはリアルタイムPCR法である。PCR法の核酸増幅工程で使用されるDNAポリメラーゼは特に限定されるものではないが、例えば、KOD DNA ポリメラーゼ、Pfu DNA ポリメラーゼ等のα型DNAポリメラーゼ;Taq DNA ポリメラーゼ、Tth DNA ポリメラーゼ等のPol I型DNAポリメラーゼ等を用いることができ、特定の実施形態では、正確性に優れたα型DNAポリメラーゼ(またはファミリーBに属するDNAポリメラーゼ)を用いることが好ましい。特に限定はされないが、α型DNAポリメラーゼとしては、KOD DNA ポリメラーゼ(東洋紡製)、Pfu DNA ポリメラーゼ(タカラバイオ社製)を用いることがさらに好ましい。
【0048】
また、核酸増幅工程に供される核酸増幅試料液は核酸増幅の対象となる病原性微生物の核酸源である。このため、核酸増幅試料液には、病原性微生物や適用される核酸増幅方法に応じた適切な試薬等(例えばDNAポリメラーゼ、核酸プライマー対、核酸プローブ(例えばQProbe、TaqmanProbe)等)が適宜添加されて、核酸増幅に使用される。
【0049】
また、工程(4)において、病原性微生物の核酸の検出に用いられる方法は特に限定されず、アガロースゲル電気泳動法、RFLP法、インターカレーターを用いて増幅核酸を検出する方法、増幅された核酸の塩基配列に特異的に結合する核酸プローブを用いて増幅核酸を検出する方法が挙げられる。より好ましくは核酸プローブを用いて増幅核酸を検出する方法であり、当該核酸プローブとして、例えばTaqMqnプローブや消光プローブ(Quenching Probe;QProbe)、MolecularBeaconが挙げられる。工程(4)の核酸増幅及び核酸検出におけるその他の条件は公知の核酸増幅及び核酸検出技術を考慮して適宜選択することができる。
【0050】
本発明における核酸検出方法では、核酸の抽出精製を行わないことを特徴とする。本発明においては、生体試料を含む希釈液にスワブを入れたまま攪拌後に3秒以上静置して上清を採取し、そのまま核酸増幅・検出に供するあるいは、上清を焼結フィルターで濾過することによって、核酸の抽出精製を行うことなく被検試料中の微生物遺伝子を対象とした核酸増幅および検出が可能となる。本発明における「核酸の抽出精製」とは、被検対象とする核酸のみを生体試料から抽出し精製する工程を指す。具体的にはシリカカラムや磁性ビーズに生体試料中の核酸のみを吸着させて、他成分から核酸を分離した後、カラムやビーズから核酸を溶出させて核酸のみの試料を得る工程、または有機溶媒により核酸を含む画分を調製した後、アルコールにより核酸のみを沈殿・残留させる工程が挙げられる。
【0051】
本発明における病原性微生物については特に限定されず、呼吸器感染症原因微生物、胃腸感染症原因微生物、性感染症原因微生物、日和見感染症原因微生物が挙げられる。好ましくは呼吸器感染症原因微生物(例えば、マイコプラズマ等の呼吸器感染の原因となる真正細菌等)である。感染症原因微生物は、例えば、インフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、肺炎球菌、マイコプラズマ属に属する細菌、クラミドフィラニューモニエ、クラミドフィラシッタシ、百日咳菌、パラ百日咳菌、レジオネラなどの呼吸器感染症原因微生物、ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、下痢症アデノウイルスなどの下痢症原因微生物が挙げられる。マイコプラズマ属に属する細菌は、例えば、マイコプラズマ・アルギニニ(Mycoplasma arginini)、マイコプラズマ・ブカーレ(Mycoplasma buccale)、マイコプラズマ・ファウシウム(Mycoplasma faucium)、マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)、マイコプラズマ・オラーレ(Mycoplasma orale)、マイコプラズマ・サリバリウム(Mycoplasma salivarium)、マイコプラズマ・フェルメンタンス(Mycoplasma fermentans)、マイコプラズマ・リポフィラム(Mycoplasma lipophilum)、マイコプラズマ・プリマタム(Mycoplasma primatum)、マイコプラズマ・ハイオリニス(Mycoplasma hyorhinis)、マイコプラズマ・シノビアエ(Mycoplasma synoviae)、マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitalium)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、マイコプラズマ・ガリセプティカム(Mycoplasma gallisepticum)が挙げられる。一実施形態において、病原性微生物は、呼吸器感染症原因微生物から選択される1種以上であり、好ましくはインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、肺炎球菌、マイコプラズマ属に属する細菌、クラミドフィラニューモニエ、クラミドフィラシッタシ、百日咳菌、パラ百日咳菌又はレジオネラであり、より好ましくはマイコプラズマ属に属する細菌から選択される1種以上であり、より一層好ましくはマイコプラズマニューモニエである。
【0052】
本発明の一実施形態は、病原性微生物の核酸検出方法に供される核酸増幅試料液であって、pHが6.0~8.5であり且つ比重が1.0~1.2である生体試料含有希釈液の静置上清を含む試料液、である。本核酸増幅試料液は、典型的には前記工程(1)~(3)によって調製される。さらに、前記工程(4)において上清をさらに焼結フィルターで濾過して得られた濾液を本核酸増幅試料液とすることもできる。本核酸増幅試料液は、核酸抽出工程を経ていないため、生体由来試料を含有しているが、核酸増幅阻害物質は核酸増幅に適する程度又はそれ以上に低減されている。本核酸増幅試料液は従来法、例えば核酸抽出法により調製される従来の核酸増幅試料液より簡便及び迅速に調製できる。本核酸増幅試料液のその他の事項については、本発明の核酸検出方法の対応する事項に関する上記記載が適用される。
【0053】
また、本発明の一実施形態は、病原性微生物の核酸検出方法に供される核酸増幅試料液の調製方法であって、
(1)対象から採取された生体試料をpHが6.0~8.5であり且つ比重が1.0~1.2である希釈液に添加する工程、
(2)生体試料が添加された希釈液を攪拌する工程、及び
(3)攪拌された希釈液を3秒以上静置して静置液から上清を取得する工程、
を含む、方法、である。
【0054】
さらに、前記工程(4)において上清をさらに焼結フィルターで濾過して得られた濾液を本核酸増幅試料液とすることもできる。本核酸増幅試料液の調製方法では、簡便な操作により短時間で、核酸増幅阻害物質が核酸増幅に適する程度又はそれ以上に低減された核酸増幅試料液を調製できる。本核酸増幅試料液の調製方法のその他の事項については、本発明の核酸検出方法の対応する事項に関する上記記載が適用される。
【0055】
本発明は、一つの実施形態として、生体試料に含まれる病原性微生物の核酸を生体試料と混合したまま検出する方法において、採取された生体試料に、pHが6.0~8.5であり且つ比重が1.0~1.2である溶液を添加し、攪拌後、3秒以上静置させ得られた上清を用い、試料中の病原性微生物の核酸を増幅させ、該増幅産物を検出することを特徴とする病原性微生物の核酸検出方法に関する。
【0056】
また、本発明の一実施形態は、前記病原性微生物の核酸検出方法であって、核酸抽出工程を含まない方法である。
【0057】
更なる本発明の実施形態のひとつは、生体試料に含まれる病原性微生物由来の核酸を検出する方法において、上記希釈液が入った収容容器(例えばチューブ)に、検体採取に用いた生体試料が付着した生体試料採取具を浸漬したまま撹拌をし、撹拌後に3秒間以上静置することによって、生体試料または生体試料採取具に由来する夾雑物を希釈液内で局在化させ、さらに該希釈液の上清を一部採取して、生体成分から分離することなくあるいは、焼結フィルターで濾過することにより、核酸抽出及び精製をすることなく核酸増幅阻害成分を除去することを特徴とする、病原性微生物の核酸検出方法である。
【0058】
本発明に用いるpHが6.0~8.0であり且つ比重が1.0~1.2である溶液は、pHと比重が上記の範囲内である限り特に限定されない。例えば、本発明に用いる上記の溶液は、当該分野で公知の任意の緩衝剤(例えば、グッド緩衝液)であってもよいし、水(例えば、精製水、脱イオン水、超純水等)や生理食塩水等であってもよいし、上記の希釈液であってもよい。
【0059】
本発明は、採取された生体試料を溶液に添加して前処理を行うことを特徴の一つとする。ここで使用される溶液の量は特に限定されないが、より安定して高い効果が得られ易いという観点から、好ましくは1mlより多い量、1.2ml以上、より好ましくは1.5ml以上、更に好ましくは1.7ml以上、特に好ましくは2ml以上の溶液を用いることができる。なお、本発明の方法において、溶液に添加し撹拌後、3秒以上静置してから、更に焼結フィルターで処理を行う場合には、使用する溶液の量は少量でもよく、例えば1mlであっても病原性微生物の検出が可能であり得る。本発明に用いる溶液の量の上限値は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、一例として、10ml以下、好ましくは5ml以下とすることができる。
【0060】
本発明における溶液又は希釈液の一態様は、実効的なタンパク質変性剤を含まない溶液である。タンパク質変性剤とは、生体試料や被検対象となる微生物のタンパク質を変性させる目的で添加される物質のことを指す。具体的な物質名としては尿素、塩酸グアニジン、グアニジンチオシアネートが挙げられる。この他、硝酸や硫酸などの酸や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ性物質も該当する。ただしタンパク質変性剤として作用しうる物質であっても、溶液又は希釈液中に含まれる濃度が低いなどの理由で実質的にタンパク質変性が生じない条件である場合には、本発明で定義する実効的なタンパク質変性剤には該当しない。
【0061】
溶液又は希釈液中に有効濃度のタンパク質変性剤が含まれると、変性剤の作用によってヒト由来のタンパク質が変性して局在化の効率への影響および核酸増幅工程が阻害されるため、溶液にタンパク質変性剤を含まないことで、本発明における工程(1)~(4)、前処理(例えば工程(1)~(3))または核酸検出検査をより安定的に実施できる。
【0062】
また、溶液又は希釈液には微生物を保存するための栄養成分、無機塩が含まれてもよく、前述した性質の溶液又は希釈液であれば、特に限定されるものではない。
【実施例
【0063】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0064】
[実施例1:本発明方法による微生物核酸の検出]
マイコプラズマ感染が確認されている患者由来の咽頭拭い液が付着したFLOQSwab(コパン社)を用いて検討を行った。
[試料処理]
前記スワブ5本を、チューブ(ザルスタット製10ml 60.9921.819S)に入れ、pH7.2のBuffer(HEPESバッファー;比重1.01)を0.5ml、1ml、2ml、3ml、5mlの量で添加しボルテックスミキサーを用いてスワブごと攪拌した。攪拌後、5秒間静置し本実施例の試料とした。なお、静置後の溶液は、溶液の上端から1/3の範囲では浮遊物を目視で確認できない状態になったことを確認してから、上清を採取した。
[遺伝子検査条件]
マイコプラズマ・ニューモニエDNAの検出には全自動遺伝子解析装置GENECUBEおよびジーンキューブ マイコプラズマ・ニューモニエ(共に東洋紡社製)を用いた。ジーンキューブ マイコプラズマ・ニューモニエはα型ポリメラーゼ(KOD DNA Polymerase)および核酸プローブを使用し、PCR法による核酸増幅と融解曲線解析による核酸検出が可能な遺伝子検査試薬である。核酸の抽出精製は行わず、上清をそのまま核酸増幅試料液とし核酸増幅工程に供した。
[PCR条件]
ジーンキューブ マイコプラズマ添付文書記載の反応条件で増幅検出を実施した。
[結果]
検出結果を以下に示す。
【表1】
【0065】
上記結果に示されるように、1mlを超える量の溶液を用いた場合では、陽性の結果が得られたが、1ml以下では、増幅不良のため結果が得られなかった。
【0066】
[実施例2:本発明方法による微生物核酸の検出]
マイコプラズマ感染が確認されている患者由来の咽頭拭い液が付着したFLOQSwab(コパン社)を用いて検討を行った。
[試料処理]
前記スワブ5本を、チューブ(ザルスタット製10ml 60.9921.819S)に入れ、pH7.2のBuffer(HEPESバッファー;比重1.01)を0.5ml、1ml、2ml、3ml、5mlの量で添加しボルテックスミキサーを用いてスワブごと攪拌した。攪拌後、5秒間静置し、焼結フィルター(ポリプロピレン製、孔径20μm)で濾過して得られた濾液を核酸増幅工程用の試料とした。
[遺伝子検査条件]
マイコプラズマ・ニューモニエDNAの検出には全自動遺伝子解析装置GENECUBEおよびジーンキューブ マイコプラズマ・ニューモニエ(共に東洋紡社製)を用いた。ジーンキューブ マイコプラズマ・ニューモニエはα型ポリメラーゼ(KOD DNA Polymerase)および核酸プローブを使用し、PCR法による核酸増幅と融解曲線解析による核酸検出が可能な遺伝子検査試薬である。核酸の抽出精製は行わず、濾液をそのまま核酸増幅試料液とし核酸増幅工程に供した。
[PCR条件]
ジーンキューブ・マイコプラズマ添付文書記載の反応条件で増幅検出を実施した。
[結果]
検出結果を以下に示す。
【表2】
【0067】
上記結果に示されるように、焼結フィルターでの通液処理を行うことにより、1ml以上では、陽性の結果が得られたが、0.5mlでは、増幅不良のため結果が得られなかった。
【0068】
[実施例3:本発明方法による微生物核酸の検出]
マイコプラズマ感染が確認されている患者由来の咽頭拭い液が付着したFLOQSwab(コパン社)を用いて検討を行った。
[試料処理]
前記スワブ5本を、チューブ(ザルスタット製10ml 60.9921.819S)に入れ、pH5.5(ACESバッファー;比重1.01)、pH6.0(PIPESバッファー;比重1.01)、pH7.2(HEPESバッファー;比重1.01)、pH8.5(Trisバッファー;比重1.01)、pH9.0(Bis-Trisバッファー;比重1.01)の各Bufferを各2ml添加しボルテックスミキサーを用いてスワブごと攪拌した。攪拌後、5秒間静置し、焼結フィルター(ポリプロピレン製、孔径20μm)で濾過して得られた濾液を核酸増幅工程用の試料とした。
[遺伝子検査条件]
マイコプラズマ・ニューモニエDNAの検出には全自動遺伝子解析装置GENECUBEおよびジーンキューブ マイコプラズマ・ニューモニエ(共に東洋紡社製)を用いたジーンキューブ マイコプラズマ・ニューモニエはα型ポリメラーゼ(KOD DNA Polymerase)および核酸プローブを使用し、PCR法による核酸増幅と融解曲線解析による核酸検出が可能な遺伝子検査試薬である。核酸の抽出精製は行わず、濾液をそのまま核酸増幅試料液とし核酸増幅工程に供した。
[PCR条件]
ジーンキューブ マイコプラズマ添付文書記載の反応条件で増幅検出を実施した。
[結果]
検出結果を以下に示す。
【表3】
【0069】
上記結果に示されるように、pH6.0~pH8.5の溶液を用いた場合では、陽性の結果が得られたが、pH5.0、pH9.0では陰性の結果であった。
【0070】
[実施例4:本発明方法による微生物核酸の検出]
マイコプラズマ感染が確認されている患者由来の咽頭拭い液が付着したFLOQSwab(コパン社)を用いて検討を行った。
[試料処理]
前記スワブ5本を、チューブ(ザルスタット製10ml 60.9921.819S)に入れ、pH7.2のBuffer(リン酸バッファー)の混合物および、NaClを添加し比重を1.0、1.1、1.2、1.5に調整した試薬各2ml添加しボルテックスミキサーを用いてスワブごと攪拌した。攪拌後、5秒間静置し、焼結フィルター(ポリプロピレン製、孔径20μm)で濾過して得られた濾液を核酸増幅工程用の試料とした。
[遺伝子検査条件]
マイコプラズマ・ニューモニエDNAの検出には全自動遺伝子解析装置GENECUBEおよびジーンキューブ マイコプラズマ・ニューモニエ(共に東洋紡社製)を用いたジーンキューブ マイコプラズマ・ニューモニエはα型ポリメラーゼ(KOD DNA Polymerase)および核酸プローブを使用し、PCR法による核酸増幅と融解曲線解析による核酸検出が可能な遺伝子検査試薬である。核酸の抽出精製は行わず、濾液をそのまま核酸増幅試料液とし核酸増幅工程に供した。
[PCR条件]
ジーンキューブ マイコプラズマ添付文書記載の反応条件で増幅検出を実施した。
[結果]
検出結果を以下に示す。
【表4】
【0071】
上記結果に示されるように、比重が1.0~1.2の溶液を用いた場合では、陽性の結果が得られたが、1.5では陰性の結果であった。
【0072】
[実施例5:本発明方法による核酸の検出]
マイコプラズマ・ニューモニエに罹患したヒトから採取した咽頭拭い液が付着したFLOQSwab(コパン社)を用いて検討を行った。本実施例において該咽頭拭い液が付着したスワブを陽性スワブと称する。
[試料処理]
陽性スワブ2本および未使用のスワブ2本を、付属のチューブに充填されているコパン社製輸送培地(製品名:UTM液体培地3ml;比重1.02;pH7.3)に入れ、ボルテックスミキサーを用いて培地をスワブごと撹拌した。UTM液体培地は、スクロース、バンコマイシン、アンホテリシンB、コリスチン、ウシ血清アルブミン、L-システイン、L-グルタミン酸等を含む緩衝液である。撹拌後、5秒間静置し、静置液の上清を焼結フィルター(ポリエチレン製、孔径20μm)で濾過して得られた濾液を核酸増幅工程用の試料とした。
[遺伝子検査条件]
マイコプラズマ・ニューモニエDNAの検出には全自動遺伝子解析装置GENECUBEおよびジーンキューブ マイコプラズマ・ニューモニエ(共に東洋紡社製)を用いた。ジーンキューブ マイコプラズマ・ニューモニエはα型ポリメラーゼ(KOD DNA Polymerase)および核酸プローブ(QProbe)を使用し、リアルタイムPCR法による核酸増幅と融解曲線解析による核酸検出が可能な遺伝子検査試薬である。核酸の抽出精製は行わず、濾液をそのまま核酸増幅工程に供した。
[リアルタイムPCR条件]
ジーンキューブ マイコプラズマ添付文書記載の反応条件で増幅検出を実施した。
[結果]
実験の結果を図1として示す。
図1は、リアルタイム検出された蛍光強度の変化を、グラフの横軸をサイクル数、縦軸を蛍光シグナルとして結果を表したグラフである。このグラフでは、マイコプラズマDNAが検出された場合は、蛍光量の低下が現れる。
【0073】
図1では陽性スワブについて明確な蛍光強度の減少が示されており、試料中のマイコプラズマDNAが検出されたことを示している。未使用スワブでは蛍光量の変化は観察されず、マイコプラズマDNAが検出されなかったことを示している。
【0074】
以上の結果から、本発明の方法により、簡便な方法でありながら、生体成分由来の夾雑物の影響を受けずに安定してDNAの検出が可能であることが明らかとなった。
【0075】
[実施例6:本発明方法による核酸の検出]
ヒトから採取した咽頭拭い液が付着したFLOQSwab(コパン社)およびマイコプラズマDNAを用いて検討を行った。なお、本実施例に用いた咽頭拭い液からはマイコプラズマ・ニューモニエが検出されていないため、本実施例において該咽頭拭い液が付着したスワブを陰性スワブと称する。
[試料処理]
陰性スワブ8本を、付属のチューブに充填されているコパン社製輸送培地(製品名:UTM液体培地3ml;比重1.02;pH7.3)に入れ、ボルテックスミキサーを用いて培地をスワブごと攪拌した。攪拌後、5秒間静置し、焼結フィルター(ポリエチレン製、孔径20μm)で濾過した。濾過後の溶液に、マイコプラズマ・ニューモニエDNAを、終濃度が25コピー/μLになるように加えて、核酸増幅工程用の試料とした。
[遺伝子検査条件]
マイコプラズマ・ニューモニエDNAの検出には全自動遺伝子解析装置GENECUBEおよびジーンキューブ マイコプラズマ・ニューモニエ(共に東洋紡社製)を用いたジーンキューブ マイコプラズマ・ニューモニエはα型ポリメラーゼ(KOD DNA Polymerase)および核酸プローブを使用し、PCR法による核酸増幅と融解曲線解析による核酸検出が可能な遺伝子検査試薬である。核酸の抽出精製は行わず、濾液をそのまま核酸増幅工程に供した。
[PCR条件]
ジーンキューブ マイコプラズマ添付文書記載の反応条件で増幅検出を実施した。
[結果]
実験の結果を図2として示す。
図2は、融解曲線解析において検出された蛍光強度の変化を、グラフの横軸を温度、縦軸を蛍光シグナルの微分値として解析結果を表した図である。マイコプラズマDNAが検出された場合は、融解曲線解析工程において蛍光量の変化が検出され、蛍光変化量は前記グラフにピークとして現れる。
【0076】
図2では明確なピークが示されており、試料中のマイコプラズマDNAが検出されたことを示している。陰性スワブに含まれる生体成分の影響を受けずにDNAの検出が可能であることが示された。
【0077】
更に、8本のスワブを用いて得られた各試験結果を表5に示す。いずれも30前後の蛍光変化量を示しており、各スワブ間での蛍光変化量の差は殆ど認められず、また、内部コントロールも安定して検出されていることから、本発明の方法によって生体成分由来の夾雑物の影響を受けずに安定してDNAの検出が可能であることが明らかとなった。
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明により、生体試料が付着したスワブから簡便、安全かつ迅速な遺伝子検査が可能である。感染症外来診療において迅速に結果が得られることは、適切な診断および治療につながることが期待される。
図1
図2