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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】ターボ機械冷却システム
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/02 20060101AFI20221205BHJP
   F01D 5/18 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
F01D9/02 102
F01D5/18
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018093513
(22)【出願日】2018-05-15
(65)【公開番号】P2019002397
(43)【公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】15/599,912
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】サンディップ・ダッタ
(72)【発明者】
【氏名】スコット・フランシス・ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・アンソニー・ウェーバー
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-244103(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0068034(US,A1)
【文献】米国特許第08777569(US,B1)
【文献】特開2010-216471(JP,A)
【文献】特開昭57-083606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/18
F01D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械構成部品空洞(106)を画定するターボ機械構成部品(108)と、
前記ターボ機械構成部品(108)を冷却するために前記ターボ機械構成部品空洞(106)内に位置決めされたインサート(104)とを備え、前記インサート(104)は、前記インサート(104)の第1端と前記インサート(104)の第2端の間で半径方向(R)に沿って延び、前記インサート(104)が、
インサート本体(110)と、
熱を前記ターボ機械構成部品(108)から前記インサート本体(110)に伝えるためのばね体(124)であって、前記インサート本体(110)に固定結合された第1の部分(128)、前記ターボ機械構成部品(108)と滑動係合する第2の部分(130)、および前記インサート本体(110)と滑動係合する第3の部分(132)を含むばね体(124)と
を備え
前記ばね体(124)は、前記第1端に近い第1の位置と、前記第2端に近い第2の位置と、前記第1の位置と前記第2の位置の間の第3の位置にそれぞれ配置される、ターボ機械(10)のための冷却システム(100)。
【請求項2】
前記ばね体(124)が非穿孔である、請求項1記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記ばね体(124)の前記第2の部分(130)が、前記ばね体(124)の前記第1の部分(128)と前記ばね体(124)の前記第3の部分(132)との間に位置決めされる、請求項1または2に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記第3の部分(132)は、前記第1の部分(128)から半径方向に離れて配置され、前記ばね体(124)の前記第2の部分(130)が、前記ばね体(124)の前記第1の部分(128)よりも前記ばね体(124)の前記第3の部分(132)の近くに位置決めされる、請求項3記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記ばね体(124)の前記第1の部分(128)が、前記インサート本体(110)に一体結合される、請求項1乃至4のいずれかに記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記ばね体(124)の少なくとも一部分が弓状である、請求項1乃至5のいずれかに記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記ばね体(124)が、前記ターボ機械構成部品(108)と滑動係合する第4の部分(138)、および前記インサート本体(110)と滑動係合する第5の部分(140)を備える、請求項1乃至6のいずれかに記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記ばね体(124)が正弦波状である、請求項7記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記インサート本体(110)が、インサート本体空洞(112)、および前記インサート本体空洞(112)と前記ターボ機械構成部品空洞(106)とを流体結合するインピンジメント孔(120)を画定する、請求項1乃至8のいずれかに記載のシステム(100)。
【請求項10】
前記インサート(104)が、半径方向に延在する数のばね体の列(126)に配設された複数のばね体(124)を備え
前記複数のばね体の列(126)の隣り合う2つの間に半径方向に延在するインピンジメント孔(120)の列が配置される、請求項9に記載のシステム(100)。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載のシステム(100)と、
タービンセクション(22)を備えるターボ機械(10)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般にターボ機械に関する。より詳細には、本開示はターボ機械のための冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは一般に、圧縮機セクション、燃焼セクション、およびタービンセクションを含む。圧縮機セクションは、ガスタービンエンジンに入る空気の圧力を漸進的に上昇させ、この圧縮空気を燃焼セクションに供給する。圧縮空気と燃料(例えば、天然ガス)とは燃焼セクション内で混合する。この混合物は燃焼室内で燃焼して高圧かつ高温の燃焼ガスを発生する。燃焼ガスは、燃焼セクションからタービンセクションに流入し、タービンセクションで膨張して仕事を行う。例えば、タービンセクションで燃焼ガスが膨張すると、発電機に接続されたロータシャフトを回転させて電力を発生させることができる。
【0003】
タービンセクションは1つまたは複数のタービンノズルを有し、タービンノズルは燃焼ガスの流れを1つまたは複数のタービンロータブレードに向ける。次に、1つまたは複数のタービンロータブレードは燃焼ガスから運動エネルギーおよび/または熱エネルギーを取り出し、それによってロータシャフトを駆動する。一般に、各タービンノズルは、内側壁、外側壁、および内側壁と外側壁との間を延在する1つまたは複数のエーロフォイルを含む。1つまたは複数のエーロフォイルは燃焼ガスと直接接触するので、エーロフォイルを冷却することが必要である場合がある。
【0004】
特定の構成では、冷却空気はタービンノズルによって画定された1つまたは複数の内部空洞を通るように導かれる。典型的には、この冷却空気は、圧縮機セクションから抜き取られた圧縮空気である。しかしながら、空気を圧縮機セクションから抜き取ると、燃焼に利用できる圧縮空気の量が減り、それによってガスタービンエンジンの効率が下がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2017/0067699号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術の態様および利点は、以下の説明で部分的に述べられ、あるいはその説明から明らかにされ、あるいは本技術の実施を通じて学ぶことができる。
【0007】
一実施形態では、本開示はターボ機械のための冷却システムを対象とする。冷却システムは、ターボ機械構成部品空洞を画定するターボ機械構成部品を含む。冷却システムはまた、ターボ機械構成部品を冷却するためにターボ機械構成部品空洞内に位置決めされたインサートを含む。インサートは、インサート本体およびばね体を含む。ばね体は、熱をターボ機械構成部品からインサート本体に伝える。ばね体は、インサート本体に固定結合された第1の部分、ターボ機械構成部品と滑動係合する第2の部分、およびインサート本体と滑動係合する第3の部分を含む。
【0008】
別の実施形態では、本開示はターボ機械を対象とする。ターボ機械は、タービンセクション構成部品空洞を画定するタービンセクション構成部品を有するタービンセクションを含む。インサートは、タービンセクション構成部品を冷却するためにタービンセクション構成部品空洞内に位置決めされる。インサートは、インサート本体およびばね体を含む。ばね体は、熱をタービンセクション構成部品からインサート本体に伝える。ばね体は、インサート本体に固定結合された第1の部分、タービンセクション構成部品と滑動係合する第2の部分、およびインサート本体と滑動係合する第3の部分を含む。
【0009】
本技術のこれらのおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照すれば、よりよく理解されるであろう。添付の図面は、この明細書に組み込まれ、その一部を構成するものであり、本技術の実施形態を例示して、本記述と併せて本技術の原理を説明する働きをしている。
【0010】
当業者を対象として、最良の態様を含む本技術の完全かつ有効な開示を、添付の図を参照して本明細書で記載する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施形態による例示的なガスタービンエンジンの概略図である。
図2】本開示の実施形態による例示的なタービンセクションの断面図である。
図3】本開示の実施形態による例示的なノズルの斜視図である。
図4】本開示の実施形態による、図3の線4-4で概ね切り取られたノズルの断面図である。
図5】本開示の実施形態による冷却システムの斜視図である。
図6】本開示の実施形態によるインサートの正面図である。
図7】本開示の実施形態によるばね体の実施形態の断面図である。
図8】本開示の実施形態によるばね体の別の実施形態の断面図である。
図9】本開示の実施形態によるばね体のさらなる実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書および図面において参照符号を繰り返し使用しているが、これは本技術の同じまたは類似の特徴または要素を表すことを意図している。
【0013】
次に、1つまたは複数の例が添付図面に示されている本技術の実施形態を詳細に参照する。詳細な説明では、図面内の要素を指すために数字表示および文字表示を使用する。図面および記述における類似または同様の表示は、本技術の類似または同様の部品を指すために使用される。用語「第1」、「第2」、および「第3」は、本明細書で使用するとき、1つの構成部品を別の構成部品と区別するために交換可能に使用される場合があり、個々の構成部品の位置または重要性を意味することを意図していない。用語「上流」および「下流」は、流体経路での流体の流れに関する相対的な方向を指す。例えば、「上流」は流体が流れて来る元の方向を指し、「下流」は流体が流れて行く先の方向を指す。
【0014】
それぞれの例は本技術を説明するために提示されており、本発明を限定するためのものではない。実際、本技術の範囲または精神から逸脱せずに、本技術において修正および変更を行うことができることは当業者には明らかであろう。例えば、一実施形態の一部分として例示または説明される特徴を、さらなる実施形態を得るために別の実施形態に使用することができる。したがって、本技術が、このような修正および変更を添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内にあるものとして包含することが意図されている。
【0015】
本明細書では、産業用または陸上用ガスタービンエンジンが示され、説明されているが、本明細書で示され、説明される本技術は、特許請求の範囲でそうでないと特記がなければ、陸上用および/または産業用ガスタービンに限定されるものではない。例えば、本明細書で説明される技術は、限定するものではないが、航空機用ガスタービン(例えば、ターボファンなど)、蒸気タービン、および舶用ガスタービンを含むいかなるタイプのターボ機械にも使用することができる。
【0016】
次に、図面を参照すると、図1は、例示的なガスタービンエンジン10の概略図である。図示のように、ガスタービンエンジン10は一般に、圧縮機16(例えば、軸流圧縮機)の上流端に配置された入口14を有する圧縮機セクション12を含む。ガスタービンエンジン10はさらに、圧縮機16の下流に位置決めされた1つまたは複数の燃焼器20を有する燃焼セクション18を含む。ガスタービンエンジン10はまた、燃焼セクション18の下流に配置されたタービン24(例えば、膨張タービン)を有するタービンセクション22を含む。シャフト26は、ガスタービンエンジン10の軸方向中心線28に沿って圧縮機16およびタービン24を通って軸方向に延在する。
【0017】
図2は、タービン24の断面側面図である。図示のように、タービン24は複数のタービン段を含むことがある。例えば、タービン24は、第1段30A、第2段30B、および第3段30Cを含むことがある。しかしながら、他の実施形態では、タービン24はこれより多い、または少ないタービン段を含むことがある。
【0018】
各段30A~30Cは、直列流れ順に、ロータシャフト26(図1)に沿って軸方向に間隔を置いた、対応するタービンノズル32A、32B、および32Cの列、ならびに対応するタービンロータブレード34A、34B、および34Cの列を含む。タービンノズル32A~32Cのそれぞれは、ガスタービンエンジン10の作動中、静止したままである。タービンノズル32B、32Cの列はそれぞれ、対応するダイアフラム42B、42Cに結合される。図2には示されていないが、タービンノズル32Aの列もまた、対応するダイアフラムに結合することができる。第1のタービンシュラウド44A、第2のタービンシュラウド44B、および第3のタービンシュラウド44Cは、対応するタービンブレード34A~34Cの列を周方向に取り囲む。ケーシングまたはシェル36は、タービンノズル32A~32Cおよびタービンロータブレード34A~34Cの各段30A~30Cを周方向に取り囲む。
【0019】
図1および2に示すように、圧縮機16は、圧縮空気38を燃焼器20に供給する。圧縮空気38は、燃焼器20内で燃料(例えば、天然ガス)と混合し、燃えて燃焼ガス40を生成し、燃焼ガス40はタービン24に流入する。タービンノズル32A~32Cは、燃焼ガスをタービンロータブレード34A~34Cに向け、タービンロータブレード34A~34Cは、燃焼ガス40から運動エネルギーおよび/または熱エネルギーを取り出す。この取り出されたエネルギーによってロータシャフト26が駆動される。次いで、燃焼ガス40はタービン24およびガスタービンエンジン10を出る。下記でより詳細に説明するように、圧縮空気38の一部分は、タービンノズル32A~32Cなどのタービン24の様々な構成部品を冷却するための冷却媒体として使用することができる。
【0020】
図3は、本業界では段2ノズルまたはS2Nとしても知られていることがある第2段30Bのタービンノズル32Bの斜視図である。他のタービンノズル32A、32Cは、タービンノズル32Bと同様な特徴を含む。図3に示すように、タービンノズル32Bは、内側壁46、および内側壁46から半径方向に間隔を置いた外側壁48を含む。一対のエーロフォイル50は、内側壁46から外側壁48までスパンにわたって延在する。これに関して、図3に示したタービンノズル32Bは、本業界ではダブレットと呼ばれる。しかしながら、タービンノズル32Bは、1つだけのエーロフォイル50(すなわち、シングレット)、3つのエーロフォイル50(すなわち、トリプレット)、またはそれより多くのエーロフォイル50を有することがある。
【0021】
図3に示すように、内側壁46および外側壁48は様々な面を含む。より詳細には、内側壁46は、半径方向外面52、および半径方向外面52から半径方向内側に位置決めされた半径方向内面54を含む。同様に、外側壁48は、半径方向内面56、および半径方向内面56から半径方向外側を向く半径方向外面58を含む。図2および3に示すように、外側壁48の半径方向内面56および内側壁46の半径方向外面52は、タービン24を通って流れる燃焼ガス40に対する半径方向内側および外側の流路境界をそれぞれ画定する。内側壁46はまた、前面60、および前面60の下流に位置決めされた後面62を含む。内側壁46はさらに、第1の周方向面64、および第1の周方向面64から周方向に間隔を置いた第2の周方向面66を含む。同様に、外側壁48は、前面68、および前面68の下流に位置決めされた後面70を含む。外側壁48はまた、第1の周方向面72、および第1の周方向面72から間隔を置いた第2の周方向面74を含む。
【0022】
上記のように2つのエーロフォイル50は、内側壁46から外側壁48に延在する。図3および4に示すように、各エーロフォイル50は、内側壁46および外側壁48の前面60、68に近接して配置された前縁76を含む。各エーロフォイル50はまた、内側壁46および外側壁48の後面62、70に近接して配置された後縁78を含む。さらに、各エーロフォイル50は、前縁76から後縁78へ延在する圧力側壁80およびその反対側の負圧側壁82を含む。
【0023】
各エーロフォイル50は、内部に1つまたは複数の内部空洞を画定することができる。エーロフォイル50の圧力側壁80および負圧側壁82に(例えば、インピンジメント冷却によって)圧縮空気38を供給するようにインサートが内部空洞のそれぞれに位置決めされることがある。図4に示した実施形態では、各エーロフォイル50は、内部に位置決めされた前方インサート88を有する前方内部空洞84、および内部に位置決めされた後方インサート90を有する後方内部空洞86を画定する。リブ92が前方内部空洞84と後方内部空洞86とを分離してもよい。しかしながら、代替の実施形態では、エーロフォイル50は、1つの内部空洞、3つの内部空洞、または4つ以上の内部空洞を画定することがある。さらに、特定の実施形態では、内部空洞のうちのいくつか、またはすべてがインサートを含まないことがある。
【0024】
図5~9は、ガスタービンエンジン10などのターボ機械のための冷却システム100の様々な実施形態を示す。図示のように、冷却システム100は、軸方向A、半径方向R、および周方向Cを定める。概して、軸方向Aは、軸方向中心線28に平行に延在し、半径方向Rは、軸方向中心線28から外向きに直交して延在し、周方向Cは、軸方向中心線28の周りを同心円状に延在する。
【0025】
冷却システム100は、ターボ機械構成部品108のターボ機械の空洞106内に位置決めされたインサート104を含む。いくつかの実施形態では、例えば、インサート104は、ノズル32Bの前方または後方内部空洞84、86のうちの1つに、図4に示すそれらに対応する前方または後方インサート88、90の代わりに位置決めすることができる。これに関して、ターボ機械構成部品空洞106は、前方または後方内部空洞84、86のうちの1つとすることができ、ターボ機械構成部品108はノズル32Bとすることができる。しかしながら、さらなる実施形態では、ターボ機械構成部品108は、他のノズル32A、32Cのうちの1つ、タービンシュラウド44A~44Cのうちの1つ、またはロータブレード34A~34Cのうちの1つとすることができる。このような実施形態では、ターボ機械構成部品空洞106は、これらの構成部品のうちの1つによって画定された任意の適切な空洞とすることができる。しかしながら、ターボ機械構成部品108は、ガスタービンエンジン10の任意の適切な構成部品とすることができる。
【0026】
ターボ機械構成部品108は、環状の断面を有するように図5~9に一般的に示されている。しかしながら、ターボ機械構成部品108は、任意の適切な断面および/または形状を有してもよい。
【0027】
特に図5および6を参照すると、インサート104は内部にインサート空洞112を画定するインサート本体110を含む。図5および6に示す実施形態では、インサート本体110は環状の断面を有する。したがって、インサート本体110は、インサート空洞112の外側境界を形成する内面114、および内面114から間隔を置いた外面116を含む。しかしながら、インサート本体110は、他の実施形態では板状または任意の適切な形状としてもよい。
【0028】
上記のように、インサート104はターボ機械構成部品108のターボ機械構成部品空洞106に位置決めされる。より詳細には、ターボ機械構成部品108の内面118は、ターボ機械構成部品空洞106の外側境界を形成する。インサート104は、インサート本体110の外面116がターボ機械構成部品108の内面118から間隔を置く(例えば、軸方向に間隔を置く)ように、ターボ機械構成部品空洞106内に位置決めされる。インサート本体110の外面116とターボ機械構成部品108の内面118との間の間隔は、ターボ機械構成部品108の内面118のインピンジメント冷却を促進するような寸法とすることができる。
【0029】
図5~6に示すように、インサート本体110は、1つまたは複数のインピンジメント孔120を画定することができる。具体的には、インピンジメント孔120は、インサート本体110の内面114から外面116までインサート本体110を貫通して延在する。インピンジメント孔120は、インサート空洞112とターボ機械構成部品空洞106との間を流体連通させる。図5および6に示す実施形態では、インピンジメント孔120は、円形の断面を有する。しかしながら、インピンジメント孔120は、任意の適切な断面(例えば、矩形、三角形、長円、楕円、5角形、6角形、星形など)を有してもよい。さらに、インピンジメント孔120は、ターボ機械構成部品108の内面118をインピンジメント冷却するような寸法とすることができる。
【0030】
図5および6に示す実施形態では、インピンジメント孔120は直線列122に配設される。インピンジメント孔120の直線列122は、インサート本体110の半径方向長さの実質的な全長、またはその一部分だけに沿って延在することができる。インピンジメント孔120は任意の適切な数の直線列122に配設することができる。しかしながら、複数のインピンジメント孔120を、ターボ機械構成部品108の内面118のインピンジメント冷却を促進するようにインサート本体110に配設することができる。
【0031】
図6を詳細に参照すると、インサート104はまた、インサート本体110の外面116から外向きに(例えば、軸方向外向きに)延在する1つまたは複数のばね体124を含む。図6に示す実施形態では、ばね体124は直線列126に配設される。ばね体124の直線列126は、インサート本体110の半径方向長さの実質的な全長、またはその一部分だけに沿って延在することができる。例えば、図6に示す実施形態では、ばね体124の1つの直線列126は、インピンジメント孔120の隣接する対の各直線列122の間に位置決めされる。しかしながら、ばね体124は、任意の適切な数の直線列126に配設してもよい。さらに、ばね体124は、任意の適切な態様でインサート本体110に配設してもよい。
【0032】
図7に示すように、ばね体124は、インサート本体110の外面116およびターボ機械構成部品108の内面118と接触している。この点で、ばね体124は、熱をターボ機械構成部品108からインサート本体110に伝えることができる。より具体的には、ばね体124は、インサート本体110の外面116に固定結合された第1の部分128を含む。ばね体124はまた、ターボ機械構成部品108の内面118と滑動係合する第2の部分130を含む。さらに、ばね体124は、インサート本体110の外面116と滑動係合する第3の部分132を含む。
【0033】
図7は、ばね体124の様々な部分128、130、132の配設の例示的な実施形態を示す。図示のように、ばね体124は、第1の部分128から第2の部分130に向かって、外向き(例えば、軸方向外向き)かつ上向き(例えば、半径方向上向き)に延在することができる。次いで、ばね体124は、第2の部分130から第3の部分132へ、内向き(例えば、軸方向内向き)かつ上向き(例えば、半径方向上向き)に延在することができる。この点で、ばね体124の第2の部分130は、ばね体124の第1の部分128とばね体124の第3の部分132との間の半径方向に位置決めすることができる。いくつかの実施形態では、ばね体124の第2の部分130は、ばね体124の第1の部分128よりも、半径方向にばね体124の第3の部分132の近くに位置決めされる。図示のように、ばね体124の少なくとも一部分は弓状とすることができる。しかしながら、代替の実施形態では、第1、第2、および第3の部分128、130、132は任意の適切な態様に配設することができる。
【0034】
図6および7に示すように、ばね体124は、全体的に半径方向Rを向くようにインサート本体110に位置決めされる。代替の実施形態では、ばね体124は、全体的に軸方向Aを向く、または軸方向および半径方向A、Rに対してある角度となるように配設することができる。
【0035】
ばね体124は任意の適切な断面および/または形状を有してもよい。例えば、ばね体124は、円形の断面、矩形の断面、または楕円の断面を有してもよい。ばね体124は、その長さに沿って一定の厚さ/直径を有してもよい。あるいは、ばね体124は、先細(すなわち、第1の部分128よりも第3の部分132で細い)にしてもよい。
【0036】
図6および7をさらに参照すると、ばね体124は非穿孔とすることができる。すなわち、ばね体124には、開口、通路、チャネル、穴、または他のタイプの穿孔がなくてもよい。
【0037】
上記のように、ばね体124の第1の部分128は、インサート本体110に固定結合される。いくつかの実施形態では、図7に示すように、ばね体124の第1の部分128は、インサート本体110に一体形成することができる。しかしながら、代替の実施形態では、図8に示すように、ばね体124の第1の部分128は、インサート本体110とは別に形成されてから溶接またはロウ付けされてもよい。
【0038】
特定の実施形態では、インサート104は付加製造法によって形成することができる。用語「付加製造」は、本明細書で用いるとき、結果として有用な三次元物体を生じさせる任意のプロセスで、一度に物体の1つの層の形状を形成することを順次行うステップを含むプロセスを指す。付加製造プロセスは、三次元印刷(3DP:three-dimensional printing)プロセス、レーザネットシェイプ製造、直接金属レーザ焼結(DMLS:direct metal laser sintering)、直接金属レーザ溶解(DMLM:direct metal laser melting)、粉体プラズマアーク溶接、自由形状造形などを含む。特定のタイプの付加製造プロセスは、エネルギービーム、例えば、レーザビームなどの電子ビームまたは電磁放射を使用して粉末材料を焼結または溶解する。付加製造プロセスは典型的には、原材料として金属粉末材料または線材を用いる。しかしながら、インサート104は、任意の適切な製造プロセスを使って構築されてもよい。
【0039】
上記のようにばね体124は、第1の部分128から第2の部分130へ上向きかつ外向きに延在することができる。同様に、ばね体124は、第2の部分130から第3の部分132へ上向きかつ内向きに延在することができる。この点で、各部分128、130、132は、インサート本体110から離れて上方を向くように延在することができる。したがって、第1の部分128は、インサート本体110に対して第1の角度134を定め、第2の部分130は、ターボ機械構成部品108に対して第2の角度136を定める。第1および第2の角度134、136は、付加製造プロセスを使ってばね体124を形成するのに必要な支持を与える。いくつかの実施形態では、第1および第2の角度134、136は、30度から60度の間とすることができる。しかしながら、代替の実施形態では、ばね体124は、インサート本体110および/またはターボ機械構成部品108に対して任意の適切な角度を向いて延在してもよい。
【0040】
上記のように、インサート104はターボ機械構成部品空洞106内に挿入される。より具体的には、ばね体124の向きおよび固有の可撓性によって、インサート104をターボ機械構成部品空洞106内に挿入することを可能にすることができる。インサート104がターボ機械構成部品空洞106に入るとき、ばね体124の第2および第3の部分130、132はそれぞれ、インサート本体110の外面116およびターボ機械構成部品108の内面118に沿って滑る。このように滑って動くことによって、ばね体124を圧縮することができる(すなわち、軸方向Aおよび半径方向Rに撓むことができる)。このように圧縮されることによって、インサート104はターボ機械構成部品空洞106内に取り外し可能に保持される。
【0041】
ばね体124はまた、インサート本体110をターボ機械構成部品空洞106内に保持する。具体的には、ばね体124は、インサート本体110を定位置に保持する力をターボ機械構成部品108にかける。ばね体124はまた、上記のように、インサート本体110とターボ機械構成部品108との間の隙間を維持してインピンジメント冷却を促進する。この点で、ばね体124のいくつかまたはすべては、インサート本体110を定位置に保持し、インサート本体110がターボ機械構成部品空洞106内でがたつく、または振動することがないような十分な構造強度を有するような寸法にすべきである。
【0042】
図9はばね体124の代替の実施形態を示す。上記のように、ばね体124は、インサート本体110に固定結合された第1の部分128、ターボ機械構成部品108と滑動係合する第2の部分130、およびインサート本体110と滑動係合する第3の部分132を含む。図9に示すばね体124の実施形態はまた、ターボ機械構成部品108の内面118と滑動係合する第4の部分138を含む。図9に示すばね体124はさらに、インサート本体110の外面116と滑動係合する第5の部分140を含む。これに関して、ばね体124は正弦波状とすることができる。しかしながら、代替の実施形態では、ばね体124は、インサート本体110および/またはターボ機械構成部品108と滑動係合する任意の適切な数の部分を有してもよい。
【0043】
作動時、ターボ機械構成部品108はインサート104によって対流冷却および伝導冷却される。より具体的には、冷却空気(例えば、圧縮空気38の一部分)はインサート空洞112を通って半径方向に流れる。インピンジメント孔120は、冷却空気の一部分を、インサート104を通ってターボ機械構成部品108の内面118に当たって流れるように向ける。すなわち、冷却空気は、インピンジメント孔120およびターボ機械構成部品空洞106を通って流れて、ターボ機械構成部品108の内面118に衝突する。したがって、インピンジメント孔120は、ターボ機械構成部品108を対流冷却(すなわち、インピンジメント冷却)する。ばね体124はまた、ターボ機械構成部品空洞106内の空気を乱して、対流熱伝達率をさらに上昇させる。上記のように、ばね体124は、インサート本体110の外面116およびターボ機械構成部品108の内面118の両方に接触する。この点で、熱は、ターボ機械構成部品108からばね体124を通ってインサート本体110に伝わることができる。インサート空洞112を通って流れる冷却空気は、ばね体124によってインサート本体110に伝導伝達された熱を吸収することができる。
【0044】
上記でより詳細に説明したように、インピンジメント孔120はターボ機械構成部品108を対流冷却し、ばね体124はターボ機械構成部品108を伝導冷却する。インサート104は、ターボ機械構成部品108に対して対流冷却および伝導冷却の両方をするので、インサート104は、従来のインサートよりターボ機械構成部品108をより強く冷却する。したがって、インサート104が画定するインピンジメント孔120を、従来のインサートより少なくすることができる。したがって、インサート104では、圧縮機セクション12(図1)から流用される圧縮空気38は従来のインサートより少なく、それによってガスタービンエンジン10の効率を上昇させる。
【0045】
本明細書では、最良の態様を含む例を用いて本技術を開示し、また、任意の装置またはシステムの作製および使用、ならびに任意の組み入れられた方法の実施を含め、当業者が本技術を実施できるようにしている。本技術の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者が想到する他の例を含むことができる。このような他の例は、特許請求の範囲の文言と相違ない構成要素を含む場合、または特許請求の範囲の文言と実質的に相違ない等価の構成要素を含む場合、特許請求の範囲内であることを意図されている。
【0046】
最後に、代表的な実施態様を以下に示す。
[実施態様1]
ターボ機械構成部品空洞(106)を画定するターボ機械構成部品(108)と、
前記ターボ機械構成部品(108)を冷却するために前記ターボ機械構成部品空洞(106)内に位置決めされたインサート(104)とを備え、前記インサート(104)が、
インサート本体(110)と、
熱を前記ターボ機械構成部品(108)から前記インサート本体(110)に伝えるためのばね体(124)であって、前記インサート本体(110)に固定結合された第1の部分(128)、前記ターボ機械構成部品(108)と滑動係合する第2の部分(130)、および前記インサート本体(110)と滑動係合する第3の部分(132)を含むばね体(124)と
を備える、ターボ機械(10)のための冷却システム(100)。
[実施態様2]
前記ばね体(124)が非穿孔である、実施態様1に記載のシステム(100)。
[実施態様3]
前記ばね体(124)の前記第2の部分(130)が、前記ばね体(124)の前記第1の部分(128)と前記ばね体(124)の前記第3の部分(132)との間に位置決めされる、実施態様1に記載のシステム(100)。
[実施態様4]
前記ばね体(124)の前記第2の部分(130)が、前記ばね体(124)の前記第1の部分(128)よりも前記ばね体(124)の前記第3の部分(132)の近くに位置決めされる、実施態様3に記載のシステム(100)。
[実施態様5]
前記ばね体(124)の前記第1の部分(128)が、前記インサート本体(110)に一体結合される、実施態様1に記載のシステム(100)。
[実施態様6]
前記ばね体(124)の少なくとも一部分が弓状である、実施態様1に記載のシステム(100)。
[実施態様7]
前記ばね体(124)が、前記ターボ機械構成部品(108)と滑動係合する第4の部分(138)、および前記インサート本体(110)と滑動係合する第5の部分(140)を備える、実施態様1に記載のシステム(100)。
[実施態様8]
前記ばね体(124)が正弦波状である、実施態様7に記載のシステム(100)。
[実施態様9]
前記インサート(104)が、半径方向に延在する1つまたは複数の列(126)に配設された複数のばね体(124)を備える、実施態様1に記載のシステム(100)。
[実施態様10]
前記インサート本体(110)が、インサート本体空洞(112)、および前記インサート本体空洞(112)と前記ターボ機械構成部品空洞(106)とを流体結合するインピンジメント孔(120)を画定する、実施態様1に記載のシステム(100)。
[実施態様11]
タービンセクション(22)を備えるターボ機械(10)であって、前記タービンセクション(22)が、
タービンセクション構成部品空洞(106)を画定するタービンセクション構成部品(108)と、
前記タービンセクション構成部品(108)を冷却するために前記タービンセクション構成部品空洞(106)内に位置決めされたインサート(104)とを備え、前記インサート(104)が、
インサート本体(110)と、
熱を前記タービンセクション構成部品(108)から前記インサート本体(110)に伝えるためのばね体(124)であって、前記インサート本体(110)に固定結合された第1の部分(128)、前記タービンセクション構成部品と滑動係合する第2の部分(130)、および前記インサート本体(110)と滑動係合する第3の部分(132)を含むばね体(124)と
を備える、ターボ機械(10)。
[実施態様12]
前記ばね体(124)が非穿孔である、実施態様11に記載のターボ機械(10)。
[実施態様13]
前記ばね体(124)の前記第2の部分(130)が、前記ばね体(124)の前記第1の部分(128)と前記ばね体(124)の前記第3の部分(132)との間に位置決めされる、実施態様11に記載のターボ機械(10)。
[実施態様14]
前記ばね体(124)の前記第2の部分(130)が、前記ばね体(124)の前記第1の部分(128)よりも前記ばね体(124)の前記第3の部分(132)の近くに位置決めされる、実施態様13に記載のターボ機械(10)。
[実施態様15]
前記ばね体(124)の前記第1の部分(128)が、前記インサート本体(110)に一体結合される、実施態様11に記載のターボ機械(10)。
[実施態様16]
前記ばね体(124)の少なくとも一部分が弓状である、実施態様11に記載のターボ機械(10)。
[実施態様17]
前記ばね体(124)が、前記タービンセクション構成部品(108)と滑動係合する第4の部分(138)、および前記インサート本体(110)と滑動係合する第5の部分(140)を備える、実施態様11に記載のターボ機械(10)。
[実施態様18]
前記ばね体(124)が正弦波状である、実施態様17に記載のターボ機械(10)。
[実施態様19]
前記インサート(104)が、半径方向に延在する1つまたは複数の列(126)に配設された複数のばね体(124)を備える、実施態様11に記載のターボ機械(10)。
[実施態様20]
前記インサート本体(110)が、インサート本体空洞(112)、および前記インサート本体空洞(112)と前記タービンセクション構成部品空洞(106)とを流体結合するインピンジメント孔(120)を画定する、実施態様11に記載のターボ機械(10)。
【符号の説明】
【0047】
10 ガスタービンエンジン
12 圧縮機セクション
14 入口
16 圧縮機
18 燃焼セクション
20 燃焼器
22 タービンセクション
24 タービン
26 ロータシャフト
28 軸方向中心線
30A 第1タービン段
30B 第2タービン段
30C 第3タービン段
32A タービンノズル
32B タービンノズル
32C タービンノズル
34A タービンロータブレード
34B タービンロータブレード
34C タービンロータブレード
36 シェル/ケーシング
38 圧縮空気
40 燃焼ガス
42B ダイアフラム
42C ダイアフラム
44A タービンシュラウド
44B タービンシュラウド
44C タービンシュラウド
46 内側壁
48 外側壁
50 エーロフォイル
52 内側壁の半径方向外面
54 内側壁の半径方向内面
56 外側壁の半径方向内面
58 外側壁の半径方向外面
60 内側壁の前面
62 内側壁の後面
64 内側壁の第1の周方向面
66 内側壁の第2の周方向面
68 外側壁の前面
70 外側壁の後面
72 外側壁の第1の周方向面
74 外側壁の第2の周方向面
76 前縁
78 後縁
80 圧力側壁
82 負圧側壁
84 前方内部空洞
86 後方内部空洞
88 前方インサート
90 後方インサート
92 リブ
100 インピンジメント冷却システム
104 インサート
106 ターボ機械構成部品空洞
108 ターボ機械構成部品
110 インサート本体
112 インサート空洞
114 インサート本体の内面
116 インサート本体の外面
118 ターボ機械構成部品の内面
120 インピンジメント孔
122 インピンジメント孔の直線列
124 ばね体
126 ばね体の直線列
128 ばね体の第1の部分
130 ばね体の第2の部分
132 ばね体の第3の部分
134 第1の角度
136 第2の角度
138 ばね体の第4の部分
140 ばね体の第5の部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9