(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】インプリント装置および物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20221205BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
H01L21/30 503G
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2018104911
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】寺島 茂
(72)【発明者】
【氏名】中山 貴博
(72)【発明者】
【氏名】松岡 洋一
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-169593(JP,A)
【文献】特開2013-026474(JP,A)
【文献】特開2013-175656(JP,A)
【文献】特開2017-069272(JP,A)
【文献】特開2017-157635(JP,A)
【文献】特開2018-006387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型を用いて基板の上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記型を保持する型保持部、
前記型保持部に設けられ、前記型と前記基板が対向する空間の気体を吸気口から吸引する吸引部、
前記吸引部で吸引された気体に含まれるパーティクルを検出する検出器、
前記検出器によって検出された結果に応じてエラー処理を実行する制御部、
前記型と前記基板が対向する空間にパーティクルが除去された気体を供給するための気体供給口、を備え、
前記気体供給口は、前記型を下方から見て前記型の周囲を囲むように配置され、
前記吸気口は、前記型を下方から見て前記気体供給口と前記型の間に配置されていることを特徴と
し、
前記検出器は、前記吸引部で吸引した気体中のパーティクルの数を計測するパーティクルカウンターを備え、
前記制御部は、前記パーティクルカウンターで計測されたパーティクルの数が第1の基準値より多い場合には、前記エラー処理として警報を発生する処理を実行させ、前記パーティクルの数が第1の基準値よりも多い第2の基準値より多い場合には、前記エラー処理として前記基板の上にインプリント材のパターンを形成する処理を停止させる処理を実行させる、ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記気体供給口は、気体を前記基板に向かって吹き付けるように配置され、
前記吸気口は、前記型の側面に向いて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記吸引部の吸気口は、前記型を下方から見て、前記型の周囲を囲むように複数配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記基板の上に未硬化のインプリント材を供給するインプリント材供給部を備え、
前記インプリント材供給部の位置から前記型保持部の位置の間を前記基板が走査する走査方向に対して、前記吸引部の吸気口は、前記型を挟むように配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記基板の上に未硬化のインプリント材を供給するインプリント材供給部を備え、
前記吸引部の吸気口は、前記インプリント材供給部と前記型の間に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記パーティクルカウンターで計測される、単位時間または単位容積の気体に含まれるパーティクルの
数の検出結果に応じてエラー処理を実行することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記検出器は、前記吸引部で吸引した気体に含まれるパーティクルの大きさを検出し、パーティクルの大きさに応じたパーティクルの数を検出し、
前記制御部は、検出されたパーティクルの大きさと数に応じて、インプリント装置の動作を制御する
ように設けられ、パーティクルが大きい場合の第1の基準値および第2の基準値は、パーティクルが小さい場合の第1の基準値および第2の基準値よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置であって、
前記型を保持する型保持部、
前記型保持部に設けられ、前記型と前記基板が対向する空間の気体を吸気口から吸引する吸引部、
前記吸引部で吸引された気体に含まれるパーティクルを検出する検出器、
前記検出器によって検出された結果に応じてインプリント装置の停止の処理を行う制御部、
前記型と前記基板が対向する空間にパーティクルが除去された気体を供給するための気体供給口、を備え、
前記気体供給口は、前記型を下方から見て前記型の周囲を囲むように配置され、
前記吸気口は、前記型を下方から見て前記気体供給口と前記型の間に配置されていることを特徴と
し、
前記検出器は、前記吸引部で吸引した気体中のパーティクルの数を計測するパーティクルカウンターを備え、
前記制御部は、前記パーティクルカウンターで計測されたパーティクルの数が第1の数値より多い場合には、前記エラー処理として警報を発生する処理を実行させ、前記パーティクルの数が第1の数値よりも多い第2の数値より多い場合には、前記エラー処理として前記基板の上にインプリント材のパターンを形成する処理を停止させる処理を実行させる、ことを特徴とする成形装置。
【請求項9】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて基板の上にパターンを形成する工程と、
前記工程であって前記パターンが形成された基板の処理を行う工程と、
を含み、前記処理が行われた前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置および物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSなどの物品を製造する方法として、型(モールド)を用いて基板上のインプリント材を成形するインプリント方法が知られている。インプリント方法は、基板上にインプリント材を供給し、供給されたインプリント材と型を接触させる(押印)。そして、インプリント材と型を接触させた状態でインプリント材を硬化させた後、硬化したインプリント材から型を引き離す(離型)ことにより、基板上にインプリント材のパターンが形成される。
【0003】
インプリント装置は、基板上に微細な構造物を形成する処理を行う基板処理装置であり、基板にパーティクルが付着することにより、パターン不良や型のパターン部の破損などの原因となり得る。また、基板処理装置内の気体に含まれるパーティクルが増加した場合、基板にパーティクルが付着する可能性が高くなる。そのため、基板にパーティクルが付着する可能性が高くなっているかを判定するために、基板処理装置内の気体に含まれるパーティクルを計測することが求められている。
【0004】
特許文献1には、インプリントシステムにインプリント処理がなされる空間のパーティクルの濃度を検出する検出器を設け、検出されたパーティクルの濃度が基準値を超えた際には気体供給量を増やしてパーティクルの濃度を低下させる方法が記載されている。また、インプリント装置では、型と基板が対向する空間にパーティクルが入りこみにくい構成を採っている。特許文献2には、型の周囲に型とほぼ同一の平面が構成されるような囲いを設け、型の周囲に設置された気体供給口からパーティクルの濃度が低減された気体を供給しながら基板を移動させるインプリント装置が記載されている。このような構成とすることで、型と基板の間にその外側の空間からパーティクルを含む気体が入りこみにくい構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-26474号公報
【文献】特開2016-111062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようにインプリント装置内のパーティクルを検出する方法では、型と基板が対向する空間やその周囲で発生したパーティクルを検出するまで時間がかかってしまう。また、この方法は、装置内に拡散して薄まった状態でパーティクルを検出するため、型と基板が対向する空間におけるパーティクルの発生状態を的確に検出できない。特許文献2に記載されたインプリント装置では、型と基板が対向する空間がその周囲よりもクリーンな状態に保たれている。そのため、周囲(外側空間)で発生したパーティクルは型と基板が対向する空間に侵入しにくく、外側空間でパーティクルを検出したとしてもパターン形成に影響がない場合もある。この外側空間でパーティクルを検出した場合に、装置を停止すると生産性を低下させてしまう。
【0007】
本発明は、インプリント装置において型と基板が対向する空間に発生したパーティクルを検出し、パーティクルによる不良品の発生を抑制するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインプリント装置は、型を用いて基板の上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、前記型を保持する型保持部、前記型保持部に設けられ、前記型と前記基板が対向する空間の気体を吸気口から吸引する吸引部、前記吸引部で吸引された気体に含まれるパーティクルを検出する検出器、前記検出器によって検出された結果に応じてエラー処理を実行する制御部、前記型と前記基板が対向する空間にパーティクルが除去された気体を供給するための気体供給口、を備え、前記気体供給口は、前記型を下方から見て前記型の周囲を囲むように配置され、前記吸気口は、前記型を下方から見て前記気体供給口と前記型の間に配置されていることを特徴とし、前記検出器は、前記吸引部で吸引した気体中のパーティクルの数を計測するパーティクルカウンターを備え、前記制御部は、前記パーティクルカウンターで計測されたパーティクルの数が第1の数値より多い場合には、前記エラー処理として警報を発生する処理を実行させ、前記パーティクルの数が第1の数値よりも多い第2の数値より多い場合には、前記エラー処理として前記基板の上にインプリント材のパターンを形成する処理を停止させる処理を実行させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インプリント装置においてパーティクルによる不良品の発生を抑制するために有利な技術が提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るインプリント装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の型保持部の平面図と断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態の型保持部の平面図である。
【
図4】本発明の第3実施形態の型保持部の平面図と断面図である。
【
図5】本発明のパーティクルの検出を示すフローチャートである。
【
図6】本発明のパーティクルの検出を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。以下の説明では、インプリント装置について詳述するが、本発明は、ウエハ周辺のステージ部材にパーティクルが付着する課題を有するリソグラフィ装置であれば、インプリント装置に限らず、他のリソグラフィ装置でも適用可能である。
【0012】
(第1実施形態)
図1には、第1実施形態に係るインプリント装置IMPの構成が模式的に示されている。インプリント装置IMPは、型1を用いて基板2にパターンを形成する。より具体的には、インプリント装置IMPは、基板2の上のインプリント材に型1を接触させ、インプリント材を硬化させることによってインプリント材の硬化物からなるパターンを形成する。その後、インプリント装置IMPは、インプリント材の硬化物からなるパターンと型1とを分離する。このように、インプリント装置IMPは、基板上に供給されたインプリント材を型と接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型の凹凸パターンが転写された硬化物のパターンを形成する装置である。
【0013】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に付与されてもよい。また、インプリント材は、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。
【0014】
基板2の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0015】
型1は、基板上のインプリント材を成形するために用いられる。型1は、モールド、テンプレートまたは原版とも呼ばれうる。型1は、矩形の外形形状を有し、基板2の上のインプリント材に転写すべきパターン(凹凸パターン、回路パターン)が形成されたパターン領域を有する。型1は、基板上のインプリント材を硬化させるための硬化エネルギーを透過する材料、例えば、石英などで構成されている。また、型1には、基板2とのアライメントに用いるアライメントマークが形成されている。
【0016】
本明細書および添付図面では、基板2の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸の値で特定されうる情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。位置合わせは、基板および型の少なくとも一方の位置および/または姿勢の制御を含みうる。
【0017】
インプリント装置IMPは、基板2の駆動(位置決め)に関して、基板保持部3、基板周辺部材17(17a、17b)、微動ステージ18、粗動ステージ19、ステージ支持体20、計測器23および基板駆動制御部35を備えうる。この例では、微動ステージ18および粗動ステージ19によってステージが構成される。粗動ステージ19は、ステージ支持体20によって支持され、不図示ステージ駆動部によって駆動される。微動ステージ18は、粗動ステージ19によって支持され、不図示の微動機構によって駆動される。基板保持部3は、微動ステージ18に搭載される。基板保持部3は、基板2を保持する。基板周辺部材17は、基板保持部3または基板2の周辺に配置されていて、微動ステージ18によって支持される。基板周辺部材17は、基板2の周囲に基板2の表面とほぼ同じ高さで配置されている。微動ステージ18の位置および姿勢は、計測器23によって計測されうる。基板駆動制御部35は、計測器23によって計測される微動ステージ18の位置および姿勢に基づいて、ステージ駆動部および微動機構を制御し、これによって微動ステージ18(基板2)の位置および姿勢を制御しうる。微動ステージ18(基板2)は、複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動されうる。
【0018】
インプリント装置IMPは、型1の駆動に関して、型駆動部10および型駆動制御部34を備えうる。型駆動部10は、型1を保持し、型1を複数の軸(例えば、Z軸、θX軸、θY軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。型駆動制御部34は、型駆動部10による型1の駆動を制御しうる。型駆動制御部34は、例えば、基板2のショット領域の上のインプリント材と型1のパターン領域(基板あるいはインプリント材に転写すべきパターンが形成された領域)との接触がなされるように、型駆動部10を制御しうる。また、型駆動制御部34は、例えば、インプリント材の硬化物からなるパターンと型1のパターン領域との分離がなされるように、型駆動部10を制御しうる。
【0019】
インプリント装置IMPは、基板2(のショット領域)と型1との位置合わせ用の計測に関して、アライメントスコープ8、アライメントスコープ11およびスコープ制御部32を備えうる。アライメントスコープ8は、インプリントヘッド7に搭載され、型1のマークと基板2のショット領域のマークとの相対位置および相対姿勢を検出しうる。アライメントスコープ11は、オフアクシスのアライメントスコープであり、基板2のショット領域のマークの位置を検出しうる。アライメントスコープ11によって基板2の複数のショット領域のマークの位置を検出することによって、基板2の上のショット領域配列を計測することができる。アライメントスコープ8は型1を介して基板2のマークを検出し、アライメントスコープ11は型1を介さずに基板2のマークを検出するスコープである。アライメントスコープ8およびアライメントスコープ11は、基板2を保持する基板ステージに設けられた不図示の基準マークを検出することができる。スコープ制御部32は、アライメントスコープ8およびアライメントスコープ11を制御しうる。インプリント装置IMPは、カメラ4を備えうる。カメラ4は、例えば、基板2のショット領域の上のインプリント材と型1のパターン領域との接触状態を観察するために使用されうる。
【0020】
インプリント装置IMPは、基板2の上にインプリント材を配置するための構成として、ディスペンサ12(インプリント材供給部)およびディスペンサ制御部33を備えうる。ディスペンサ12は、インプリント材を基板2に向けて吐出しうる。基板2がステージ駆動部および微動機構によって走査駆動されながらディスペンサ12からインプリント材が吐出されることによって基板2の上にインプリント材が配置されうる。ディスペンサ制御部33は、ディスペンサ12からのインプリント材の吐出を制御しうる。基板2の複数のショット領域ごとにパターンを形成するインプリント装置IMPの場合、基板駆動制御部35は、基板2を型1とディスペンサ12の間で走査方向(X方向)に走査駆動させる。
【0021】
インプリント装置IMPは、インプリント材の硬化に関して、硬化部5、光学系6および硬化制御部31を備えうる。硬化部5は、基板2のショット領域の上のインプリント材と型1のパターン領域とが接触し、パターン領域の凹部にインプリント材が充填された状態で、インプリント材に硬化用のエネルギーを照射することによってインプリント材を硬化させる。硬化部5は、硬化用のエネルギーとして紫外光等の光エネルギーをインプリント材に照射するように構成されうる。例えば、硬化部5は、紫外光を照射する光源である。光学系6は、硬化部5から射出された硬化用エネルギーをインプリント材に照射する。例えば、光学系6は硬化部5からの光は反射し、カメラ4からの光は透過する性質を有する光学素子(ビームスプリッタ)である。硬化制御部31は、硬化部5を制御する。
【0022】
インプリント装置IMPは、型1と基板2が対向する空間(型1と基板2で挟まれた空間)に気体を供給する構成として、気体供給部13を備えうる。気体供給部13の気体供給口は、型1の周囲に配置されており、パーティクルが除去された清浄な気体をインプリント装置IMPの稼働中に供給することができる。気体供給部13の気体供給口は、不図示の清浄空気供給系に接続されている。
【0023】
インプリント装置IMPは、型1の外側に型1の周囲の気体を吸引する吸引部14(14a、14b)が設けられている。吸引部14は型1の外側の気体に含まれるパーティクルを計測するために、型1の周囲の気体を吸引することができる。
【0024】
インプリント装置IMPは、吸引部14(14a、14b)で吸引された気体を、パーティクルカウンター21、22(パーティクル検出器)に導くための配管15(15a、15b)が設けられている。配管15に接続されたパーティクルカウンター21、22は、吸引部14で吸引された気体に存在するパーティクルの数を計測する。パーティクルカウンター21、22は、パーティクルカウンター制御部36によって制御され、設定された時間毎(単位時間)または設定された吸引気体容積毎(単位容積)のパーティクルの数を計測する。
【0025】
さらに、インプリント装置IMPは、型保持部の周囲に型周辺部材16(16a、16b)が設けられている。型周辺部材16は、基板2が型1のパターン面に沿って移動することにより型1と基板2の相対的な位置が変化し、基板2に対向する位置に型1がいない時でも、基板2と型周辺部材16によって、基板2に対向する型1と概ね同じ隙間を形成する。型周辺部材16は、基板2の上に順次インプリントによりパターンを形成する間に基板2が移動する領域を覆うように設けられている。
【0026】
その他、インプリント装置IMPは、アライメントスコープ11、ディスペンサ12、型駆動部10、アライメントスコープ8、硬化部5、光学系6およびカメラ4等を支持する上部支持体9を備えうる。また、上部支持体9には、気体供給部13、吸引部14、配管15、パーティクルカウンター21、22が設けられていてもよい。インプリント装置IMPは、硬化制御部31、スコープ制御部32、ディスペンサ制御部33、型駆動制御部34、基板駆動制御部35およびパーティクルカウンター制御部36を制御する主制御部30(制御部)を備えうる。硬化制御部31、スコープ制御部32、ディスペンサ制御部33、型駆動制御部34、基板駆動制御部35およびパーティクルカウンター制御部36の少なくとも一部は、主制御部30に組み込まれてもよい。主制御部30は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。主制御部30は、インプリント装置IMP内に設けてもよいし、インプリント装置IMPとは別の場所に設置し遠隔で制御しても良い。
【0027】
第1実施形態のパーティクルの検出方法について、
図1および
図2を用いて説明する。
図2は、型1の周囲の型保持部を示しており、
図2(a)は、型1と型保持部の断面図を、
図2(b)は、型の下方から型1と型保持部を見上げた平面図を示している。
図2(a)は
図2(b)のP1-P2部の断面を示している。
図2(a)および
図2(b)に示すように、型1の周囲には気体供給部13から供給される空気を基板2に向かって吹付ける気体供給口41が備えられている。気体供給口41は、
図2(b)に示すように型1を囲むように配置されている。気体供給口41は基板2に対向する面に、多数の小孔42が形成されており、パーティクルが除去された清浄な空気を分散させて基板2の表面に吹付ける構造となっている。小孔42の径は直径0.01mmから2mm程度の大きさで、気体供給口41の全面からなるべく均等に吹き出すよう配置されている。
【0028】
また、型1の側面には、型1の形状(例えば倍率)を補正するために、型1の側面に力を加える型変形機構43が配置されている。型変形機構43は、例えばピエゾアクチュエータからなり、型保持部の一部である支持部44によって支持されている。吸引部14(14a1、14a2、14a3)は、型変形機構43(43a1、43a2、43a3、43a4)の間に複数配置されており、開口(吸気口)は型1の側面に向いている。吸引部14(14a1、14a2、14a3)から吸引された気体は、連通管45で一本にまとめられて配管15aによってパーティクルカウンター21に運ばれる。吸引部14(14b1、14b2、14b3)も同様に、複数の型変形機構43(43b1、43b2、43b3、43b4)の間に設置されている。吸引部14(14b1、14b2、14b3)から吸引された気体は配管15bによってパーティクルカウンター22に運ばれる。
【0029】
第1実施形態のパーティクルカウンター21、22に接続される吸引部14(14a、14b)は、型1を挟むように左右に配置されている。基板2は、基板2のショット領域にインプリント材を供給するディスペンサ12(供給部)の下まで左方向(-X方向)に移動し、インプリント材が供給された後に型1の下まで右方向(+X方向)に移動する。インプリント装置IMPは、基板2上の複数のショット領域に対して、インプリント材の供給とパターンの形成を繰り返す。ここでは、型1とディスペンサ12が配置されている方向を走査方向(X方向)とする。上記の吸引部14は走査方向に沿って配置されているのが望ましい。
【0030】
基板2の移動に伴って、インプリントヘッド7の周囲の気体は、基板2に巻き込まれて型1と基板2の隙間に侵入してくる。走査方向に沿って吸引部14が配置されていることによって、基板2に巻き込まれて型1と基板2の隙間に侵入してくる気体にパーティクルが含まれているかどうかを迅速に把握することができる。このように、走査方向に沿って型1を挟むように吸引部14が配置されていることが望ましいが、
図1において型1の左側で、ディスペンサ12と型1との間に少なくとも吸引部14を配置すればよい。ディスペンサ12と型1との間に吸引部14を配置することによって、基板2によって巻き込まれた気体のパーティクルを検出することができる。
【0031】
また、
図1、
図2では型1の左右(走査方向に沿って型1を挟んだ位置)の吸引部14a、14bから続く配管15a、15bのそれぞれが別のパーティクルカウンター21、22に接続されている。しかしながら、配管15a、15bをまとめて一つのパーティクルカウンターで計測する構成でも良い。更に、本実施形態では型1の一辺の側面に3か所の吸引部(14a1、14a2、14a3)が配置されているが、これに限るものではなく中央付近の1か所だけでもよいし、その他の数の吸引部が配置されていてもよい。
【0032】
図5に、本実施形態のパーティクルの検出を示すフローチャートを示す。パーティクルカウンター21、22は、インプリント装置IMPの稼働中に型1の周囲(インプリント空間)の気体に存在するパーティクルの数を計測する(カウントする)。インプリント装置IMPは、ステップ50でパーティクルカウンターの計測値を取り込む。パーティクルカウンターは、予め設定された時間毎、あるいは予め設定された吸引気体容積毎に計測したパーティクルの数値(検出結果)をパーティクルカウンター制御部36に送る。ステップ51でパーティクルカウンター制御部36内の判定部(不図示)では、予め設定された数値と比較してその数値よりも多いパーティクル数がカウントされた場合には異常発塵と判定し、主制御部30に異常発塵を知らせる。ステップ52で異常発塵の知らせを受けた主制御部30は、装置異常事態発生との警告を発する(エラー処理を実行する)。例えば、インプリント装置IMPに設けられた操作画面等の表示手段に警告内容を表示する。
【0033】
その後、インプリント装置IMPはステップ53で速やかに処理中のインプリントシーケンスを停止して基板を基板チャックから他の場所に移動させるなどの停止作業(エラー処理を実行する)を行う。そして、ステップ54では、インプリント装置IMPの外に基板を搬出して、ステップ55では、インプリント装置によるインプリント動作を一時停止させる。インプリント装置のオペレータは、警告が発せられた際に処理された基板のパターン状態を確認したり、型を装置から取り出してパターンの確認をしたりすることができる。このように、インプリント装置を一時停止して型や基板に付着したパーティクルの状態を確認する等のパーティクル発生状態の調査を行い、必要に応じて装置を洗浄するなどパーティクルを除くための対処をする。
【0034】
これによって、本実施形態のインプリント装置は、パターン形成に影響を与える型の付近に発生したパーティクルを検出することが可能になり、インプリント動作を停止して、パーティクルによるパターン欠陥の発生を低減することができる。
【0035】
(第2実施形態)
図3に第2実施形態のインプリント装置IMPに設けられた吸引部14を示す。ここでは、第1実施形態の吸引部と異なる構成について説明する。本実施形態のインプリント装置の他の構成については、上述の第1実施形態のインプリント装置と同様であるため説明を省略する。
【0036】
図3に示すように、第2実施形態の吸引部14は、型1を囲むように配置されている。第2実施形態のパーティクルカウンター21、22に接続される吸引部14は、走査方向(X方向)に沿って配置されている吸引部(14a1、14a2、14a3および14b1、14b2、14b3)に加えて、Y方向に沿って配置されている。型1を挟むようにY方向に沿って上下に吸引部(14c1、14c2、14c3および14d1、14d2、14d3)が配置されている。このように、第2実施形態のインプリント装置の吸引部14は、型1の4側面それぞれに対向する位置に配置されている。
【0037】
基板2が型1に対して走査方向と直交する方向に移動する場合にも、基板2の移動に伴って、基板2に巻き込まれて型1と基板2の隙間に侵入してくる気体にパーティクルが含まれているかどうかを迅速に把握することができる。
【0038】
(第3実施形態)
図4に第3実施形態のインプリント装置IMPに設けられた吸引部46を示す。ここでは、第1実施形態の吸引部と異なる構成について説明する。本実施形態のインプリント装置の他の構成については、上述の第1実施形態のインプリント装置と同様であるため説明を省略する。
【0039】
図2及び
図3に示した吸引部14は、型1の側面に対向するように気体を吸引する開口(吸気口)が形成されている。これに対して、第3実施形態の吸引部46は、基板2の表面に対向するように気体を吸引する開口が形成されている。
図4(a)は、
図4(b)に示した型保持部の平面図のP1-P2で示した個所の断面図である。
図4(b)は、基板保持部に保持された型1を基板2側から見た図である。第3実施形態の吸引部46(46a1、46a2、46a)は、型1の周囲に配置されている。吸引部46には、基板2の表面に対向するように多数の小孔からなる吸気口(気体を吸引する開口)が形成されている。吸引部46の吸引口を基板2に対向して設置する場合は、吸引部46(吸引口)を一か所あるいは数か所にすると、気体を吸引する吸気口の近傍では気流が速くなるおそれがある。そのため、基板2に塗布したインプリント材に影響が生じる可能性があるため、吸引部は多数の小孔に分散させた方が良い。
【0040】
このように、第3実施形態のインプリント装置の吸引部46は、型1の4側面それぞれ配置されており、気体を吸引する気体吸引口は基板2に対向する位置に形成されている。基板2が型1に対して走査方向や直交する方向に移動する場合にも、基板2の移動に伴って、基板2に巻き込まれて型1と基板2の隙間に侵入してくる気体にパーティクルが含まれているかどうかを迅速に把握することができる。
【0041】
(第4実施形態)
図6に第4実施形態のパーティクルの検出を示すフローチャートを示す。第4実施形態では、パーティクルカウンター21、22において計測した結果の判定基準について、
図5で説明した判定基準とは異なる実施例を説明する。インプリント装置の構成は第1実施形態に記載されたものと同じである。
【0042】
パーティクルカウンター21、22は、インプリント装置IMPの稼働中に型1の周囲(インプリント空間)の気体に存在するパーティクルの数を計測する(カウントする)。パーティクルカウンター21、22はその機能の一つとして、気体に含まれるパーティクルを大きさ別にカウントする機能を持っている。例えば、パーティクルカウンターによって計測されたパーティクルが、0.1μm以上0.5μm未満が何個、0.5μm以上1μm未満が何個、1μm以上が何個という分類ができる。この機能を利用した判定基準を設定することで、より最適な判定ができるようになる。気体中に含まれるパーティクルは、小さいものが多く、大きいものが少ないという傾向となることが多い。パーティクルの大きさを区別せずに、例えば10個/分で警告を出して装置を停止すると、停止回数が多くなり、深刻な影響がない(パーティクルのサイズが小さい)場合でも停止することがありうる。
【0043】
以下に、パーティクルカウンターで検出されたパーティクルの大きさ別に判定基準を設ける実施形態を説明する。型1と基板2上のインプリント材が接触する時にパーティクルを挟むことで型1が破壊する状況は、気体中に含まれるパーティクルが型1のパターン面に付着するか、基板2のパターンが形成される面に付着するか、またはその両方のいずれかである。流れのある気体中のパーティクルが清浄な表面に付着する確率は、パーティクルの粒径(サイズ)に依存することが実験結果から得られている。例えば、パーティクルの粒径が0.5μm未満のパーティクルの付着確率は1%以下であるが、0、5μm以上1μm未満の範囲では2%程度、1μm以上5μm未満の範囲では10%程度、5μmから10μm未満では30%程度である。インプリントシーケンスの際には基板2が装置内で移動を繰り返すために基板2面上の気体は流れていると同じ状態であり、型1に接する気体は基板2の移動に伴って動かされているために、上記の付着確率に従うと考えられる。
【0044】
次に、型と基板の間にパーティクルを挟んだ際に型のパターンが破壊される確率もパーティクルの大きさによって異なることが経験から得られている。粒径が0.5μm未満のパーティクルでは破壊確率は20%以下であるが、5μm以上の大きさのパーティクルでは80%以上の確率でパターンが破壊される。大きいパーティクルでは、パターンの破壊領域も広くなるため、致命的な欠陥になる可能性も高くなる。逆に小さなパーティクルによるパターンの破壊では、その欠陥が容認できる場合がある。これらの重みづけも加えた例として、パーティクルの粒径別の判定基準を表1に示す。この粒径別判定基準のいずれか一つに該当した場合に警報を発生させる。この時の警報の判定基準も、警報のみの判定基準Aと、警報に加えて装置を自動停止する判定基準Bの2段階にする。2段階とは、型のパターンを破壊する可能性が比較的低いレベルであれば警報のみでインプリント作業を継続しながら状況を確認する場合と、型のパターンを破壊する可能性が高い場合にはインプリント作業を停止させる場合とに分けられる。
【0045】
【0046】
このようなパーティクル検出の判定方法について、
図6に示したフローチャートを用いて説明する。インプリント装置IMPは、ステップ60でパーティクルカウンターの計測値(検出結果)を取り込む。パーティクルカウンターは、予め設定された時間毎(単位時間)、あるいは予め設定された吸引気体容積毎(単位容積)に計測したパーティクルの数値をパーティクルカウンター制御部36に送る。ステップ61でパーティクルカウンター制御部36内の判定部(不図示)では、予め設定された判定基準Bと比較してその数値よりも多いパーティクル数がカウントされた場合には異常発塵と判定し、主制御部30に異常発塵を知らせる。ステップ62で異常発塵の知らせを受けた主制御部30は、装置異常事態発生との警告を発する(エラー処理を実行する)。例えば、インプリント装置IMPに設けられた操作画面等の表示手段に警告内容を表示する。その後、インプリント装置IMPはステップ66で速やかに処理中のインプリントシーケンスを停止して基板を基板チャックから他の場所に移動させるなどの停止作業を行う(エラー処理を実行する)。
【0047】
ステップ61で判定基準Bと比較した結果、判定基準Bの数値以下の場合は、ステップ63でパーティクルカウンター制御部36内の判定部では、予め設定された判定基準Aと比較することができる。ステップ63で判定基準Aと判定した結果、判定基準Aの数値以下の場合は、ステップ60に戻ってパーティクルカウンターで新たな計測値を取り込む。ステップ63で判定基準Aと判定した結果、判定基準Aの数値よりも多いパーティクル数がカウントされた場合には異常発塵と判定し、ステップ64で異常発塵の知らせを受けた主制御部30は、装置異常事態発生との警告を発する(エラー処理を実行する)。判定基準Aと比較した場合は、基本的には警告を発するのみである。
【0048】
但し、警報のみの場合でも、それが連続する場合や頻発する場合はインプリント動作停止と判定することができる。例えば、ステップ65では、ステップ64で装置異常事態発生を警告してから、その後30分の間にもう2回判定基準Aのレベルであった時は、インプリント装置IMPはステップ66で速やかに処理中のインプリントシーケンスを停止する。ステップ65での判定基準はこの例に限らない。例えば、判定基準Aレベルが発生したらそれを含めて10分間の累積で判定基準Bの数に達した時もインプリント動作を停止して調べた方が良い。このように2段階の基準を設けると、より適切な運用ができる。
【0049】
ステップ66でインプリントシーケンスを停止した後、ステップ67でインプリント装置IMPの外に基板を搬出して、ステップ68では、インプリント装置によるインプリント動作を一時停止させる。インプリント装置のオペレータは、警告が発せられた際に処理された基板のパターン状態を確認したり、型を装置から取り出してパターンの確認をしたりすることができる。このように、インプリント装置を一時停止して型や基板に付着したパーティクルの状態を確認する等のパーティクル発生状態の調査を行い、必要に応じて装置を洗浄するなどパーティクルを除くための対処をする。
【0050】
これによって、本実施形態のインプリント装置は、型の欠陥に影響を与えそうなパーティクルが発生した場合はすぐにインプリント動作を停止することにより、型の破損を低減することができる。また、パターン形成に影響を与える型の付近に発生したパーティクルを検出することが可能になり、インプリント動作を停止して、パーティクルによるパターン欠陥の発生を低減することができる。
【0051】
なお、上記の実施形態では、型1として、凹凸状のパターンが設けられたパターン転写用の型について述べたが、凹凸状のパターンが設けられていない平面部を有する型(ブランクテンプレート)であってもよい。ブランクテンプレートは、平面部によって基板上の組成物を平坦化するように成形する平坦化装置に用いられる。つまり、上記の何れの実施形態においても、型を用いて基板上の組成物を成形する成形装置に適用することができる。
【0052】
また、上述の実施形態ではエラー処理として、警告を発生する処理や基板の上にパターンを形成する処理を停止させる処理を行うものについて説明した。しかし、エラー処理としては、これらに限らずインプリント装置内に供給される清浄な気体の供給量を変化させる処理を行い、パーティクルを除去する処理を行ってもよい。
【0053】
上記のインプリント装置は、光硬化法を用いてインプリント材を硬化させるインプリント方法について説明したが、本実施形態は光硬化法に限らず、熱を用いてインプリント材を硬化させる方法でもよい。光硬化法では、紫外線硬化樹脂を使用し、樹脂を介して基板に型を押し付けた状態で紫外光を照射して樹脂を硬化させた後、硬化した樹脂から型を引き離すことによりパターンが形成される。本実施形態は硬化光として紫外線を照射するものとしたが、光の波長は、基板上に供給されるインプリント材に応じて適宜決めることができる。これに対し、熱を用いた方法では、熱可塑性樹脂をガラス転移温度以上の温度に加熱し、樹脂の流動性を高めた状態で樹脂を介して基板に型を押し付け、冷却した後に樹脂から型を引き離すことによりパターンが形成される。
【0054】
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0055】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0056】
次に、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。
図7(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0057】
図7(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図7(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0058】
図7(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0059】
図7(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図7(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 型
2 基板
3 基板保持部
14、46 吸引部
21、22 パーティクルカウンター