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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20210101AFI20221205BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20221205BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20221205BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
G03B5/00 J
G03B15/00 Q
H04N5/232 480
H04N5/225 300
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018118132
(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公開番号】P2019219579
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】木村 正史
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-151822(JP,A)
【文献】特開2014-056057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
H04N 5/222-5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を回転移動および並進移動させて像ブレを補正する撮像装置であって、
撮影光学系からの光に基づいて画像信号を出力する前記撮像素子と、
撮像装置に加わるブレにより生じる像ブレを補正する、回転方向の補正量と並進方向の補正量とを取得する補正量取得手段と、
前記補正量取得手段により取得された前記回転方向の補正量に基づいて、前記撮像素子を回転移動させ、且つ、前記補正量取得手段により取得された前記並進方向の補正量に基づいて、前記撮像素子を並進移動させる撮像素子駆動手段と、
前記撮像装置に加わるブレ量と、主被写体像の像高を示す情報と、前記撮影光学系の焦点距離を示す情報と、を取得する取得手段と、
を備え、
前記補正量取得手段は、
前記像高を示す情報と、前記ブレ量と、前記焦点距離を示す情報と、に基づいて、前記回転方向の補正量の上限値と前記並進方向の補正量の上限値との少なくともいずれかを決定し、
決定した前記上限値を超えないように前記回転方向の補正量と前記並進方向の補正量とを取得することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
撮像装置に加わる前記ブレ量を検出するブレ検出手段を備え、
前記ブレ検出手段は、撮影準備動作中に撮像装置の加わるブレの検出を行い、
前記補正量取得手段は、前記ブレ検出手段により前記撮影準備動作中に検出された検出結果に基づいて、前記回転方向の補正量の上限値と前記並進方向の補正量の上限値との少なくともいずれかを決定することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記取得手段は、
前記撮影光学系の光軸を中心とする前記撮像装置の回転角度である第1の回転角度と、
前記光軸と垂直に交差する第1の軸を中心とする前記撮像装置の回転角度である第2の回転角度とを前記ブレ量として取得し、
前記補正量取得手段は、前記ブレ量として、前記第1の回転角度と前記第2の回転角度とを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
撮像素子を回転移動および並進移動させて像ブレを補正する撮像装置であって、
撮影光学系からの光に基づいて画像信号を出力する前記撮像素子と、
撮像装置に加わるブレにより生じる像ブレを補正する、回転方向の補正量と並進方向の補正量とを取得する補正量取得手段と、
前記補正量取得手段により取得された前記回転方向の補正量に基づいて、前記撮像素子を回転移動させ、且つ、前記補正量取得手段により取得された前記並進方向の補正量に基づいて、前記撮像素子を並進移動させる撮像素子駆動手段と、
前記撮影光学系の焦点距離を示す情報と主被写体像の像高とを取得する取得手段と、
を備え、
前記補正量取得手段は、
前記主被写体像の像高と、前記焦点距離との比に基づいて、前記回転方向の補正量の上限値と前記並進方向の補正量の上限値との少なくともいずれかを決定し、
決定した前記上限値を超えないように前記回転方向の補正量と前記並進方向の補正量とを取得することを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
前記焦点距離が第1の距離の場合、
前記補正量取得手段は、
前記主被写体像の像高が第1の値のときの前記回転方向の上限値よりも、前記第1の値よりも小さい第2の値のときの前記回転方向の補正量の上限値を小さい値に決定することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記主被写体像の像高が第1の値の場合、
前記補正量取得手段は、
前記焦点距離が第1の距離のときの前記回転方向の上限値よりも、前記第1の距離よりも長い第2の距離のときの前記回転方向の補正量の上限値を小さい値に決定することを特徴とする請求項またはに記載の撮像装置。
【請求項7】
前記補正量取得手段は、
前記主被写体像の像高と、前記焦点距離との比に基づいて
前記回転方向の補正量の上限値と、前記並進方向の補正量の上限値との比率を決定することで、
前記回転方向の補正量の上限値と前記並進方向の補正量の上限値との少なくともいずれかを決定することを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
焦点検出領域に位置する被写体に対する、前記撮影光学系の焦点位置を検出する焦点検出手段を備え、
前記取得手段は、前記焦点検出領域の像高に基づいて前記主被写体像の像高を取得することを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記焦点検出手段が、複数の焦点検出領域の情報を用いて前記焦点位置を検出する場合、
前記取得手段は前記複数の焦点検出領域のうち、最も像高が高い焦点検出領域の像高に基づいて前記主被写体像の像高を取得することを特徴とする請求項に記載の撮像装置。
【請求項10】
補正量取得手段は、前記撮像装置に加わるブレ量に基づいて前記回転方向の補正量と前記並進方向の補正量とを取得することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記撮像装置に加わるブレ量を検出するブレ検出手段としてジャイロセンサを有し、
前記補正量取得手段は、前記ジャイロセンサにより検出された角速度に基づいて角度を取得し、前記角度に基づいて前記回転方向の補正量と前記並進方向の補正量とを取得することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
撮影光学系からの光に基づいて画像信号を出力する撮像素子を回転移動および並進移動させて像ブレを補正する撮像装置の制御方法であって、
前記撮像装置に加わるブレ量と、主被写体像の像高を示す情報と、前記撮影光学系の焦点距離を示す情報と、を取得する取得工程と、
撮像装置に加わるブレにより生じる像ブレを補正する、回転方向の補正量と並進方向の補正量とを取得する補正量取得工程と、
取得された前記回転方向の補正量に基づいて、前記撮像素子を回転移動させ、且つ、前記補正量取得工程により取得された前記並進方向の補正量に基づいて、前記撮像素子を並進移動させる撮像素子駆動工程と、を有し、
前記補正量取得工程において、
前記像高を示す情報と、前記ブレ量と、前記焦点距離を示す情報と、に基づいて、
前記回転方向の補正量の上限値と前記並進方向の補正量の上限値との少なくともいずれかを決定し、
決定した前記上限値を超えないように前記回転方向の補正量と前記並進方向の補正量とを取得することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項13】
撮像素子を回転移動および並進移動させて像ブレを補正する撮像装置の制御方法であって、
撮影光学系の焦点距離を示す情報と主被写体像の像高とを取得する取得工程と、
撮像装置に加わるブレにより生じる像ブレを補正する、回転方向の補正量と並進方向の補正量とを取得する補正量取得工程と、
取得された前記回転方向の補正量に基づいて、前記撮像素子を回転移動させ、且つ、前記補正量取得工程により取得された前記並進方向の補正量に基づいて、前記撮像素子を並進移動させる撮像素子駆動工程と、を有し、
前記補正量取得工程において、
前記像高と、前記焦点距離との比に基づいて、前記回転方向の補正量の上限値と前記並進方向の補正量の上限値との少なくともいずれかを決定し、
決定した前記上限値を超えないように前記回転方向の補正量と前記並進方向の補正量とを取得することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影時のブレを補正するために撮像素子を移動させるブレ補正手段を備えた撮像装置及び該撮像装置の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像装置の高性能化により、多くの撮像装置に撮像素子を移動させる手ブレ補正機構(像面防振機構)が搭載されている。光軸に垂直な平面内での並進移動に加えて光軸方向を中心とした回転移動が可能な機構が多く提案されている。
【0003】
特許文献1では、露光時間に応じて像面防振機構の制御方法を切り替える方法が開示されている。具体的には、長秒撮影においては、光軸方向を中心とする回転方向(ロール方向と呼ぶ)の補正量の上限を下げ、並進移動できる可動範囲を増やすとともに、光軸周りのブレ情報を表示することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-126164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によると、露光時間という撮影条件に応じて像面防振機構の制御が切り替えられ、長秒撮影時でもロール方向以外の手ブレ(ピッチ方向、ヨー方向と呼ばれる、光軸に垂直な軸を中心とする回転方向のブレと光軸に垂直な平面内でのブレ)が抑制される。
【0006】
しかしながら、ロール方向のブレについてはユーザの操作に依存しており、ロール方向の手ブレの影響が大きく影響する場合などがある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、撮像素子を並進移動及び回転移動させることで手ブレを補正することが可能な撮像装置において、撮像素子の可動範囲をより有効に活用して手ブレ補正を行う技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての撮像装置は、撮像素子を回転移動および並進移動させて像ブレを補正する撮像装置であって、撮影光学系からの光に基づいて画像信号を出力する前記撮像素子と、撮像装置に加わるブレにより生じる像ブレを補正する、回転方向の補正量と並進方向の補正量とを取得する補正量取得手段と、前記補正量取得手段により取得された前記回転方向の補正量に基づいて、前記撮像素子を回転移動させ、且つ、前記補正量取得手段により取得された前記並進方向の補正量に基づいて、前記撮像素子を並進移動させる撮像素子駆動手段と、前記撮像装置に加わるブレ量と、主被写体像の像高を示す情報と前記撮影光学系の焦点距離を示す情報とを取得する取得手段と、を備え、前記補正量取得手段は、前記像高を示す情報と、前記焦点距離を示す情報と、前記ブレ量と、に基づいて、前記回転方向の補正量の上限値と前記並進方向の補正量の上限値との少なくともいずれかを決定し、決定した前記上限値を超えないように前記回転方向の補正量と前記並進方向の補正量とを取得することを特徴とする。
【0009】
本発明のその他の側面については、以下で説明する実施の形態で明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮像素子を並進移動及び回転移動させることで手ブレを補正することが可能な撮像装置において、撮像素子の可動範囲を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の動作を説明するフローチャート
図2】本発明の撮像装置の中央断面図および電気的構成を示すブロック図
図3】防振機構の分解斜視図
図4】防振機構のロールと並進の関係を説明する図
図5】像高とロールによるブレの大きさの関係を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する一実施形態は、レンズユニットをカメラに装着することで撮像可能なレンズ交換式のデジタルカメラに本発明を適用した例を説明する。しかし、本発明は、撮像素子を撮影光学系の光軸に垂直な平面内において回転移動及び並進移動させることで、撮像装置に生じたブレに起因する撮像画像への影響を低減することが可能な任意の機器に適用可能である。以下、図1から図5を参照して、本実施形態の撮像装置について説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図2(a)は本実施形態に係る撮像システムの中央断面図、図2(b)は電気的構成を示すブロック図である。本実施形態では、説明を簡単にするために図2(a)に示されるように、撮影光学系の光軸方向と平行な方向をz軸とし、z軸に垂直に交差する2つの軸をx軸、y軸と座標系を定義している。
【0014】
図2((a)、(b))において、撮像システムは、カメラ1と、カメラ1に装着されたレンズユニット2とを備え、レンズユニット2は、マウント(機械接点)を介してカメラ1に着脱可能に取り付けられている。
【0015】
レンズユニット2は、複数のレンズからなる撮影光学系3と、撮影光学系3を構成するレンズを駆動するレンズ駆動手段13と、レンズ駆動手段13によるレンズの駆動を制御するレンズシステム制御回路12と、撮像装置との電気接点11aとを備える。電気接点11aは、カメラ側に設けられた電気接点11bと接続されることにより、カメラ1とレンズユニット2との間で種々の信号を通信することができる。レンズ駆動手段13は、各種モータ等のアクチュエータで構成することができ、撮影光学系を構成する焦点レンズ、ブレ補正レンズ等を駆動することができる。また、レンズシステム制御回路12は電気回路とCPUなどのプロセッサとを組み合わせて構成することもできる。
【0016】
カメラ1は、カメラ全体の処理を制御するカメラシステム制御回路5を備える。また、カメラ1は、撮影光学系からの光を光電変換して画像信号を出力する撮像素子(イメージセンサ)6と、画像信号に画像処理を施すことにより記録用の画像を生成する画像処理部7と、記録用の画像を記録するメモリ手段8とを備える。また、カメラ1は、背面表示装置9aと電子ビューファインダ(EVF)9bとを備え、撮像範囲を確認しながら撮影することができる。また、本実施形態において、背面表示装置9aはタッチパネルになっており、操作検出部10に接続されている。
【0017】
カメラ1は、不図示の操作部材を備えており、操作検出部10は操作部材の操作を検出すると、操作信号をカメラシステム制御回路5へ出力する。カメラシステム制御部は、入力された操作信号に基づいてカメラ1の各部の動作を制御することで、静止画および動画の撮影が可能となっている。つまり、操作検出部10は、ユーザーの撮影準備指示および撮影指示を受け付ける、撮影指示入力手段として機能する。
【0018】
さらに、カメラ1は撮像素子を撮影光学系3の光軸4に垂直な平面(xy平面)において並進移動及び回転移動させることが可能な撮像素子駆動部14と、カメラ1に加わるブレを検出するブレ検出手段15と、シャッタ機構16とを備える。カメラシステム制御回路5は、電気回路とCPUなどのプロセッサと組み合わせて構成することもできる。撮像素子駆動部14は各種モータなどのアクチュエータを有し、撮像素子6をxy平面内で並進移動させるとともにz軸を中心として回転移動させる機構であり、具体的な構造については後述する。
【0019】
ブレ検出手段15は光軸4を中心とする回転ブレを回転角度として検出可能であり、角速度を検出するジャイロセンサなどを用いることが出来る。光軸(z軸)を中心とする回転ブレのほか、光軸と垂直な軸(x軸、y軸)を中心とする回転ブレを検出してもよい。尚、z軸を中心とする回転ブレをロールブレ、x軸を中心とする回転ブレをピッチブレ、y軸を中心とする回転ブレをヨーブレと呼ぶ。また、x軸方向、y軸方向に水平な方向におけるブレを、シフトブレと呼ぶ。
【0020】
カメラ1とレンズユニット2は、撮像手段、画像処理手段、記録再生手段、及び制御手段を構成する。撮像手段は、撮影光学系3、撮像素子6、シャッタ機構16を有し、画像処理手段は、画像処理部7を有する。また、記録再生手段は、メモリ手段8、表示手段9(表示手段9は背面表示装置9a、EVF9bを包含する)を有する。制御手段は、カメラシステム制御回路5、操作検出部10、レンズシステム制御回路12、レンズ駆動手段13、防振機構14、およびブレ検出手段15を有する。
【0021】
撮像手段は、物体からの光を、撮影光学系3を介して撮像素子6の撮像面に結像する光学処理系である。撮像素子6からピント評価量/適当な露光量が得られるので、この信号に基づいて適切に撮影光学系3が調整されることで、適切な光量の物体光を撮像素子6に露光するとともに、撮像素子6近傍で主被写体像が結像する。また、シャッタ機構16はシャッタ幕を走行させることで撮像素子6に被写体像が届くか否かを制御する。少なくとも被写体像を遮るための幕(メカ後幕)を備えており、露光の完了はシャッタ機構16によってなされる。また本実施形態では撮像素子6がシャッタ機構16の後幕走行に先だって、ラインごとに電荷をリセットすることによって露光開始のタイミングを制御するモード(電子先幕)を備えている。電子先幕のモードでは、前述した撮像素子6の電荷リセット(電子先幕)とシャッタ機構16の後幕を同期させて動作させることで露出制御を行う。
【0022】
画像処理部7は、内部にA/D変換器、ホワイトバランス調整回路、ガンマ補正回路、補間演算回路等を有しており、記録用の画像を生成することができる。色補間処理手段はこの画像処理部7に備えられており、ベイヤ配列の信号から色補間(デモザイキング)処理を施してカラー画像を生成する。また、画像処理部7は、予め定められた方法を用いて画像、動画、音声などの圧縮を行う。
【0023】
記録再生手段は、画像処理部7により作成された記録用の画像の記録と再生を行う。メモリ手段8は不揮発性メモリを備え、不揮発性メモリへの記録を行う。不揮発性メモリとして、カメラ1に脱着(挿抜)可能な記録媒体を用いることもできる。カメラシステム制御回路5により、メモリ手段8の不揮発性メモリへ出力を行うとともに、表示手段9にユーザーに提示する像を表示する。
【0024】
制御手段は、ユーザの操作に応じて撮像システム全体の制御を行い、手ブレ補正を伴う撮影動作を制御する。カメラシステム制御回路5は、撮像の際のタイミング信号などを生成して出力する。外部操作に応動して撮像系、画像処理系、記録再生系をそれぞれ制御する。例えば、不図示のシャッターレリーズボタンの押下を操作検出部10が検出すると、カメラシステム制御回路5は、撮像素子駆動部14、撮像素子6、画像処理部7を制御し、手ブレ補正を伴う撮影動作を制御する。さらにカメラシステム制御回路5は、表示手段9による表示動作を制御する。また、カメラシステム制御回路5は電気接点11を介してレンズシステム制御回路12に指令を出し、レンズシステム制御回路12はレンズ駆動手段13を制御する。
【0025】
制御手段による撮影光学系の調整動作について説明する。カメラシステム制御回路5には画像処理部7が接続されており、撮像素子6からの信号に基づいて、主被写体が位置する焦点検出領域に対して焦点検出を行い、更に、主被写体の撮影に適した絞り値を求める。つまり、カメラシステム制御回路5は撮像素子6の信号をもとに測光・測距動作を行い、露出条件(Fナンバーやシャッタ速度等)及び焦点位置を決定する。すなわちカメラ1の露出制御部及び焦点検出部として機能する。
【0026】
カメラシステム制御回路5は、電気接点11を介してレンズシステム制御回路12に指令を出し、レンズシステム制御回路12はレンズ駆動手段13を制御する。これにより、主被写体像に合焦するように、焦点位置が調整される。
【0027】
さらに、ブレ補正レンズを移動させることにより手ブレ補正を行うモード(レンズ防振モード)においては、後述する撮像素子6から得られた信号に基づいてレンズ駆動手段13を介してブレ補正レンズを移動させ、手ブレを補正する。
【0028】
また、カメラシステム制御回路5は、ブレ検出手段15からの検出信号に基づいて、カメラ1に加わるブレにより生じる像ブレを補正する補正量を取得する補正量取得手段として機能する。さらに、カメラシステム制御回路5は、取得した補正量に基づいて撮像素子駆動部14による撮像素子6の駆動を制御する。尚、補正量として、撮像素子を光軸4に垂直な軸(z軸)を中心として回転移動させるための回転方向の補正量(第1の補正量)と、撮像素子を光軸4に垂直な平面(xy平面)上で並進移動させるための並進方向の補正量(第2の補正量)とを取得する。並進方向の補正量としては、光軸に垂直な第1の軸(x軸)方向に移動させるための補正量と、光軸と第1の軸とに垂直な第2の軸(y軸)方向に移動させるための補正量とがあるが、本明細書では、両方を並進方向の補正量とみなす。
【0029】
カメラシステム制御回路5は、ユーザにより不図示のシャッターレリーズボタンを半分押し下げられた(S1操作)ことが操作検出部10で検出されると、構図決めを容易にするために、撮像素子駆動部14を制御して手ブレ補正を行う。すなわち、カメラシステム制御回路5は、ブレ検出手段15からの信号に基づいて補正量を取得し、取得した補正量に基づいて撮像素子駆動部14を制御する。その後、シャッターレリーズボタンが完全に押し下げられた(SW2操作)が操作検出部10で検出されると、記録される画像の被写体像のブレを抑制するために、撮像素子駆動部14を制御して手ブレ補正を行う。すなわち、カメラシステム制御回路5は、ブレ検出手段15からの信号に基づいて補正量を取得し、取得した補正量に基づいて撮像素子駆動部14を制御する。カメラシステム制御回路5による、手ブレ補正を伴う撮像動作の詳細は、図1のフローチャートに基づいて後述する。
【0030】
また、カメラシステム制御回路5は撮像素子6からの情報をもとに撮像素子6上の主被写体の位置を検出する、被写体検出手段としても機能する。例としては、測距動作においてピント合わせを行った位置に主被写体があるとして、当該位置を被写体の位置として出力する。別の方法としては、顔検出などのいわゆる被写体検出動作を行い、その位置を主被写体の位置としてもよい。
【0031】
図3を用いて本実施形態の撮像素子駆動部14の構成について説明する。図3は撮像素子駆動部14の分解斜視図である。なお、簡単のため、制御を行う電気的な仕組みは図示していない。図3において縦の線は撮影光学系3の光軸4と平行な線である。図3において、100番台の番号が付された部材は移動しない部材(固定部材)であり、200番台の番号が付された部材は移動する部材(可動部材)である。また、300番台の番号が付された部材は、固定部材と可動部材との間で挟持されるボールである。
【0032】
図3において、上部ヨーク101、上部磁石103a,103b,103c,103d,103e,103f、下部磁石107a,107b,107c,107d,107e,107f、下部ヨーク108が磁気回路を形成しており、いわゆる閉磁路をなしている。上部磁石103a,103b,103c,103d,103e,103fは上部ヨーク101に吸着した状態で接着固定されている。下部磁石107a,107b,107c,107d,107e,107fは、下部ヨーク108に吸着した状態で接着固定されている。上部磁石103a,103b,103c,103d,103e,103fおよび下部磁石107a,107b,107c,107d,107e,107fはそれぞれ光軸方向(図3の上下方向)に沿って着磁されている。隣接する磁石(例えば、上部磁石103a、103b)は互いに異なる向きに着磁されている。また、対向する磁石(例えば、上部磁石103a、107a)は互いに同じ向きに着磁されている。これにより、上部ヨーク101と下部ヨーク108との間には光軸方向に沿って強い磁束密度が生じる。
【0033】
上部ヨーク101と下部ヨーク108との間には強い吸引力が生じるので、上部ヨーク101と下部ヨーク108との間が適当な間隔になるように、メインスペーサ105a,105b,105cおよび補助スペーサ104a,104bが設けられている。なお、適当な間隔とは、上部磁石と下部磁石との間にコイル205a,205b,205cおよびFPC201を配置した上で適当な空隙を確保可能な間隔である。メインスペーサ105a,105b,105cにはネジ穴が設けられており、ビス102a,102b,102cによって上部ヨーク101がメインスペーサ105a,105b,105cに固定されている。また、メインスペーサ105a,105b,105cの胴部には、可動部材の機械的端部、いわゆるストッパーを形成しているゴムが設置されている。ヨーク108は、ビス109a,109b,109cによってベース板110に固定されている。ベース板110には下部磁石107(a~f)をよけるように穴が設けられている。下部磁石107a,107b,107c,107d,107e,107fは、ベース板110よりも厚み方向の寸法が大きいため、ベース板110に設けられた穴から突出する。
【0034】
可動枠206は、マグネシウムダイキャストまたはアルミダイキャストで形成されており、軽量で剛性が高い。可動枠206には、可動部の各要素が固定されている。FPC201の位置202a、202b,202cには、位置検出素子が取り付けられている。本実施形態では、前述した磁気回路を利用して位置を検出できるように、位置検出素子として一例としてホール素子が用いられている。ホール素子は小型なので、コイル205a,205b,205cの巻き線の内側に入れ子になるように配置される。可動PCB203には撮像素子6、コイル205a,205b,205cおよびホール素子が接続されている。これらの部材は、可動PCB203上のコネクタを介して外部との電気的なやり取りを行う。
【0035】
ベース板110には固定部転動板106a,106b,106cが接着固定されている。また、可動枠206には可動部転動板204a,204b,204cが接着固定されている。固定部転動板106a,106b,106cおよび可動部転動板204a,204b,204cは、ボール301a,301b,301cの転動面を形成する。このように、転動板を別途設けることで、表面粗さや硬さなどを好ましい状態に設計することが容易となる。
【0036】
上述した構成でコイル205a,205b,205cに電流を流すことで、フレミング左手の法則に従った力が発生し可動部材を移動させることができる。また、ホール素子の信号を用いることでフィードバック制御を行うことができる。ホール素子の信号の値を適当に制御することで、撮影光学系3の光軸4に直交する平面内で可動枠206を並進移動及びロール方向への回転移動させることができる。また、位置202aに取り付けられているホール素子の信号を一定に保ったまま、位置202b、202cに取り付けられているホール素子の信号を逆位相で駆動することで、撮影光学系3の光軸4周りの回転運動を生み出すことができる。そのため、可動枠206を撮影光学系3の光軸4周りに回転させることができる。
【0037】
位置202a、202b,202cでは、光軸方向の磁束密度が検出される。上部磁石103a,103b,103c,103d,103e,103fと下部磁石107a,107b,107c,107d,107e,107fなどからなる磁気回路の特性は一般的に非線形である。そのため、位置202a、202b,202cで検出される磁束密度は、必ずしも駆動範囲のすべてで一定の分解能を持っていない(検出分解能が変化する)。具体的には、磁束密度の変化が急峻な位置となだらかな位置があり、急峻な位置ほど検出分解能が高い(移動量に対する磁束密度変化が大きい)。上述した磁気回路では、磁石の境界位置(例えば、上部磁石103a,103bの境界位置)において、磁束密度の変化がもっとも大きく、検出分解能が高い。
【0038】
図4を用いて本発明の撮像素子駆動部14のロール方向への駆動とxy平面内における並進方向への駆動の関係について述べる。図4は撮像素子駆動部14を撮影光学系3の光軸4方向から見た図である。また、図4右下の座標系は図4(a),(b),(c)で共通している。図4(a)は可動枠206が移動していない状態、つまり、可動枠206が基準位置に位置する状態を示す。また、図4(b)は可動枠206がロール方向への移動を伴わずにXの正方向に移動した状態を、図4(c)は可動枠206がロール方向への移動を伴ってXの正方向に移動した状態をそれぞれ示している。
【0039】
線70は固定部のX方向における基準を示す線(基準線と呼ぶ)であり、線71は固定部のY方向における基準線である。線72はXの正方向に可動枠206が移動した後の可動枠206のX方向における基準線を、線73は可動枠206の回転後のy方向における基準線を、線74は可動枠206が回転しながらXの正方向に移動した後のx方向における基準線をそれぞれ示している。図4(a)において、可動枠206の基準線は固定部の基準線と重なった状態にある。可動枠206のx方向における基準線と、固定部のx方向における基準線が一致し、可動枠206のy方向における基準線と、固定部のy方向における基準線が一致する位置を、可動枠206の基準位置とする。
【0040】
図4(b)は、可動枠206を回転させることなくメインスペーサ105aに接触するまで可動枠206をXの正方向に移動させた状態を示している。可動枠206の移動量は線70と線72の間隔に相当する量である。つまり、可動枠206のXの正方向における可動範囲は図中のαに相当する量である。
【0041】
一方、図4(c)は、可動枠206を回転させてメインスペーサ105aに接触するまで可動枠206をXの正方向に移動させた状態を示している。回転量は線71と線73がなす角度θで示されている。この場合、可動枠206の移動量は、線70と線74の間隔に相当する量である。つまり、可動枠206のXの正方向における可動範囲は図中のβに相当する量である。
【0042】
図4(b)と図4(c)を比較すると明らかなように、可動枠206は、回転を伴うとX方向への並進移動可能な可動量が減少する。現象を抑えるためには撮影光学系3の光軸4上に可動部の機械的端部を設ければよいが、撮像素子6やその背後の処理基板などがあり容易ではない。そのため一般的には、図3および4に示すように光軸4とは異なる位置に可動部の機械的端部(メインスペーサ105a、105b,105c)が設けられている。
【0043】
また、図4(c)を見ると明らかなように、メインスペーサ105cと可動枠206のY方向の隙間は、可動枠206が回転移動しない場合の隙間よりも小さい。すなわち、可動枠206が回転移動することで、Yの正方向の可動量も減少することが分かる。
【0044】
このように、図4(b),(c)から、回転移動量が増加すると並進移動できる可動量は減少する関係にあることは明らかである。つまり、回転移動量と並進移動量が相反の関係にある。回転移動量と並進移動量に対して余裕を持つためには、メインスペーサ105a、105b,105cを可動枠206から遠ざけて設計を行えばよいが、装置の大型化につながるため、好ましくないことがある。
【0045】
そこで、本実施形態のカメラ1は、主被写体像に生じる像ブレ量を推定し、推定した像ブレ量に基づいて、可動枠206、つまり、撮像素子6の、回転方向の補正量の上限値と並進方向の補正量の上限値とを決定する。回転方向の補正量の上限値は回転方向の可動量に対応し、並進方向の補正量の上限値は、並進方向の可動量に対応する。
【0046】
具体的には、ロール方向の像ブレ量の推定値とピッチ・ヨー方向の像ブレ量の推定値とを比較し、ロール方向の像ブレ量の推定値がピッチ、ヨー方向の像ブレ量の推定値に対して大きい場合には回転方向の補正量の上限値を大きくする。反対に、ロール方向の像ブレ量の推定値がピッチ、ヨー方向の像ブレ量の推定値に対して小さい場合には回転方向の補正量の上限値を小さくし、並進方向の補正量の上限値を大きくする。主被写体像に生じるロール方向の像ブレ量は、主被写体像の像高、ブレ検出手段15により撮影前に検出されたロール方向のブレ角度(ロールブレ角)Φに基づいて推定できる。また、ピッチ方向の像ぶれ量は、撮影光学系3の焦点距離、ブレ検出手段15により撮影前に検出されたピッチ方向のブレ角度に基づいて推定できる。ヨー方向の像ぶれ量は、撮影光学系3の焦点距離、ブレ検出手段15により撮影前に検出されたヨー方向のブレ角度に基づいて推定できる。
【0047】
図5を用いて像高とロール方向のブレの影響度の大きさについて説明する。図5(a)は像高とロールブレの大きさの関係を説明する図であり、撮影範囲31に、点41,42,43、44を示す。尚、理解のために、撮影範囲の中心線32a,32及び撮影範囲の中心33を示してある。
【0048】
図5(a)に示すように、撮影範囲の中心33にある点41はロールブレによって移動しない。すなわちブレが生じない。一方で、像高が高くなるにつれて点42、点43、点44と順にブレが大きくなる。一方で、当該箇所の点はぼけてくるのでその様子を濃さの異なる線で示した。すなわちロールブレが与える被写体像へのブレの影響度(ロール方向の像ブレ量)は式1に示すような関係がある。
(ロール方向の像ブレ量)=HΦ (式1)
【0049】
但し、Hはロールブレ量を求めたい場所(例えば、点42)の像高を、Φはロールブレ角度を示している。式1および図5の点41~点44の比較から明らかなように、像高が高いほどカメラの加わるロール方向のブレによる像ブレの影響は大きくなる。
【0050】
次に主被写体の位置を決める方法の一例を、図5(b)を用いて説明する。図5(b)には撮影範囲31に焦点検出領域51を重ねて示した。焦点検出領域51とは、その領域内の信号を用いて焦点検出を行う領域を示したものである。図5(b)には31の焦点検出領域があるように図示した。
【0051】
上述のように、カメラシステム制御回路5は撮像素子6の信号をもとに測光・測距動作を行う。この時、図5(b)に示した焦点検出領域の信号を解析してピントの状態を求めるとともに、ピント合わせの動作を行う。その際に、公知の技術を用いて、複数ある焦点検出領域から信号の特性(コントラスト、光量など)を考慮して主被写体が存在すると思われる焦点検出領域の選択が行われる。本実施形態では選択された焦点検出領域の位置を主被写体の位置として利用し、当該位置の像高を求める。すなわち、図5(b)においては選択された焦点検出領域52を参照して、焦点検出領域52の像高H(中心33と焦点検出領域52の中心までの距離)を求める。焦点検出領域が複数選択された場合(多点で焦点検出を行って複数の焦点検出領域でピントがあったと判断された場合)はもっとも像高が高い主横転検出領域の中心までの距離を像高とする。図5(b)では、測距枠を利用して主被写体位置を検出する方法について述べたが、別の方法として、被写体検出技術を利用してもよい。被写体検出技術を用いて主被写体を検出した場合、主被写体が位置し、ピントがあっている位置のうち最も像高が高い位置の像高を主被写体の像高とする。若しくは顔/瞳等の被写体を検出した任意の位置を利用しても良い。さらには、被写体を検出したのちもっとも顕著な被写体の位置を選択しても良い。ここでいう顕著なものを選択するとは、コントラストや被写体の大きさなどあらかじめ決められた基準によって測れる尺度で被写体を計測したときに、主被写体に近いと思われるものを選択することに対応する。
【0052】
図5で説明したように、カメラ1に加わるロールブレの影響は式1のように、被写体の像高とカメラ1のロールブレ量で決めることができる。その他の軸(z軸に直交するX軸若しくはY軸)周りの回転によるブレは、式2のように示すことができる。
(ピッチ・ヨー方向の像ブレ量)=f tanθ (式2)
【0053】
但しfは撮影光学系3の焦点距離であり、θは当該軸周りの回転量(ブレ量)である。θが十分に小さい場合は、tanθをθで近似することもできる。式2で示したロール以外の回転ブレ(X軸またはY軸を中心とする周りの回転によるブレ)を抑制するためには、撮像素子駆動部14を光軸4に直交するxy平面内で並進動作させればよい。
【0054】
図4で説明したように撮像素子駆動部14の回転移動の可動量と並進移動の可動量には相反の関係がある。そこで、本実施形態は、式1で算出されたロール方向の像ブレ量と式2で算出されたピッチ・ヨー方向の像ブレ量を比較してロールブレとピッチ・ヨーブレが主被写体像に与える影響の大きさを比較する。さらに比較に基づいて、光軸4を中心とした回転方向の補正量の上限値を変化させることで、撮像素子6の可動範囲を有効に利用することができる。分かりやすい例としては、主被写体が画面中心にある場合(H=0の場合)にはロールブレの影響はほぼ無視することができる。そのため、カメラシステム制御回路5が、撮像素子の回転方向の補正量の上限値を小さくする。その分、光軸4に直交する平面内での並進方向の補正量の上限値が大きくなるため、大きなブレがカメラ1に加わった場合でも、像ブレを小さくすることができる。つまり、カメラシステム制御回路5は、カメラ1のロールブレにより生じる主被写体の像ブレ量が無視できる場合は、撮像素子駆動部14と機械的端部(メインスペーサ105a~105c)との関係で決まる撮像素子の可動範囲を、並進移動のために割り当てる。このように、カメラシステム制御回路5は、回転方向の補正量と並進方向の補正量との上限値を決定する決定手段としても機能する。ここでは、説明を分かりやすくするために像高H=0の場合について例示したが、主被写体の像高が低いほうが回転方向の補正量の上限値が小さくなるように連続的に変化させてもよい。
【0055】
前述の関係は、2値的なものではなく式1と式2で取得される主被写体の像ブレ量を比較して適宜回転方向の補正量と並進方向の補正量の上限値の比率を調整すればよい。つまり、カメラシステム制御回路5は、カメラ1に加わるブレによる主被写体像の像ブレへの影響度に基づいて、回転方向の補正量と並進方向の補正量の上限値の比率を決定する。
【0056】
式1のHの求め方は前述した。式2のfは撮影光学系3の焦点距離のため容易に取得することができる。一方で、θとΦの値についてはブレが発生した後でなければ正確な値を知ることができない。よって、カメラシステム制御回路5は、カメラ1に加わるブレによる主被写体像の像ブレへの影響度を推定し、推定結果に基づいて回転移動量と並進移動量の上限値を決定してもよい。
【0057】
推定方法の例について説明をする。経験的に、ロールブレ量Φはその他の軸(x軸、y軸)周りの回転ブレ量θの6-8割程度であることが知られている。このように経験的に得られた情報に基づいて、式1、式2で取得される像ブレ量を評価することができる。つまり、主被写体像の像高Hと撮影光学系の焦点距離fとに基づいて、ロールブレとピッチ・ヨーブレが与える主被写体像への影響を推定し、推定結果に基づいて回転方向の補正量と並進方向の補正量の上限値の比率を決定することができる。言い換えると、カメラシステム制御回路5は、主被写体像の像高Hと撮影光学系の焦点距離fとに基づいて、回転方向の補正量と並進方向の補正量の上限値の比率を決定することができる。像高Hが大きいときはロールブレが主被写体像に与える影響が大きくなりやすく、焦点距離が大きいときはピッチ・ヨーブレが主被写体像に与える影響が大きくなりやすい。よって、像高H/焦点距離fが第1の値のときよりも、像高H/焦点距離fが第2の値のとき(第1の値<第2の値)の方が、回転方向の補正量の上限値/並進方向の補正量の上限値が大きくなるように補正量の上限値の比率を決定する。尚、上述のように可動範囲は機械的な構造により決まっているため、回転方向の補正量の上限値と並進方向の補正量の上限値とのいずれか一方を決定すればよい。
【0058】
別の推定方法としては、撮影準備動作中(S1を押している間)に取得したブレ角度θ、Φと像高H,焦点距離fとに基づいて、撮影中のブレの影響度を推定する方法がある。
【0059】
撮影準備動作中もカメラ1は撮影動作中と同様にしっかりと構えていると想定できる。よって、撮影準備動作中に、ブレ検出手段15により、ブレ角度θとΦを検出し、撮影準備動作中に検出されたブレ検出結果を用いて、撮影動作中のブレの影響度を推定し、推定結果に基づいて回転方向の補正量と並進方向の補正量の上限値の比率を求めてもよい。
【0060】
図1のフローチャートを用いて本実施形態の撮像装置の撮影動作の流れを説明する。
【0061】
ステップS100は動作を開始するステップである。カメラ1の電源ONや、再生モードから撮影モードへの変更などが対応する。その後ステップS110に進む。
【0062】
ステップS110は、カメラシステム制御回路5がカメラ1の撮影モードがOFFになったか否かを判断するステップである。撮影モードOFFは、カメラ1の電源OFFも含むものとする。つまり、カメラシステム制御回路5が、カメラ1の電源OFFまたは撮影モードから非撮影モードへのモード変更があったと判定すると、ステップS130に進み撮影動作を終了する。そうでない場合はステップS120に進む。
【0063】
ステップS120は、カメラシステム制御回路5が撮影光学系3の焦点距離の情報を取得するステップである。その後ステップS140に進む。
【0064】
ステップS140は、カメラシステム制御回路5が、S1、つまり撮影準備指示が入力されたか否かを判断するステップである。S1が入力された場合にはステップS150に進み、そうでない場合はステップS145に進む。
【0065】
ステップS145はS1ではない状態が一定時間継続したか否かを判断するステップである。一定時間以上S1ではない状態が継続した場合はステップS146に進み、そうでない場合はステップS110に戻る。
【0066】
ステップS146は防振制御を停止するステップである。
【0067】
ステップS150は、カメラシステム制御回路5によって自焦点調節及び自動露出調節(AF/AE)がなされるステップである。その後ステップS160に進む。
【0068】
ステップS160は、カメラシステム制御回路5が主被写体像の像高(式1のH)を取得するステップである。図5(b)を利用して前述したように、焦点検出領域に連動して主被写体像の像高を取得すればよい。その後ステップS170に進む。
【0069】
ステップS170は、撮像素子の、ロール方向の可動範囲とシフト方向の可動範囲(ロール/シフト可動範囲)を決定するステップである。本ステップでは、カメラシステム制御回路5が、z軸を中心とする回転方向の補正量の上限値(ロール方向の可動範囲)とxy平面上での並進方向の補正量の上限値(ピッチ・ヨー方向の可動範囲)を決定する。図4図5、式1および式2を用いて説明したように、回転移動量の可動範囲と並進移動量の可動範囲には相反の関係があるとともに、撮影条件によって重視する比率が異なる。すなわち、ステップS160で取得した像高HとステップS130で取得した焦点距離の情報をもとに式1と式2の比較を行い、適宜割り付けを行えばよい。本フローでは、ロールブレ量Φとピッチ/ヨーブレ量θとを取得する前にロール/シフト可動範囲を決定する。そのため、ロールブレ量Φをピッチ/ヨーブレ量θの6割とし、ロールブレ量としてH×0.6θ、ピッチ/ヨーブレ量としてf×θを用いる。そして、0.6Hとfとの比に基づいて、ロール方向の可動範囲とシフト方向の可動範囲の比(βの上限値とtanγの上限値の比)を決定する。具体的には、焦点距離が長いときのロール方向の可動範囲を焦点距離が短い時のロール方向の可動範囲よりも小さくし、像高が低いときのロール方向の可動範囲を像高が高い時のロール方向の可動範囲よりも小さくする。ここでは、ロールブレ量Φをピッチ/ヨーブレ量θの6割というような経験的な値を用いた。この比率は実験的に定めてあらかじめ設定すればよい。さらに好ましい方法についてはステップS190で説明する。このように設定することで、限られた可動範囲を撮像素子の回転方向の補正量と並進方向の補正量とに適当に割り付けて、高い防振効果を得ることができる。さらには、ストロークを有効活用することで装置の大型化を抑制することができる。その後ステップS180に進む。
【0070】
ステップS180は、カメラシステム制御回路5が、ブレ検出手段15にロールブレ量Φ及びピッチ・ヨーブレ量θを検出させ、検出結果に基づいて像ブレ補正量を取得する補正量を取得するステップである。そして更に、撮像素子駆動部14に補正量に基づく撮像素子の移動を行わせることで、S1防振動作を開始するステップである。既に開始されている場合にはS1防振動作を継続する。尚、本フローでは、ユーザからのS1の指示を受けてS1防振動作を行うが、電源ONと同時、または、再生モードから撮影モードへの切り替え時にS1防振動作を開始してもよい。
【0071】
補正量は、ステップS170で割りつけられた回転方向の補正量の上限値および並進方向の補正量の上限値以下となるように取得される。検出されたブレ量Φ、θに基づいて取得された補正量が補正量の上限値を超えた場合は、補正量の上限値を補正量とする。例えば、上限値がαであり、ブレ量θに基づいて取得された補正量がα+ηの場合、補正量をαに制限する。
【0072】
また、ブレ検出手段が、ピッチブレ量とヨーブレ量をそれぞれ検出する場合は、それぞれのブレ量に基づいて2つの補正量を取得するが、このとき、それぞれの補正量が並進方向の補正量の上限値を超えないようにする。つまり、いずれかが超えた場合は、補正量の上限値を、超えたほうの補正量とする。この時はいわゆる撮影予備動作中なので、それに適した特性で防振がなされる。次にステップS190に進む。
【0073】
ステップS190は、カメラシステム制御回路5がステップS180中に検出されたブレ量の評価値を取得するステップである。ステップS180に示すようにS1中は防振動作がなされている。すなわち、ブレ検出手段15が動作している。そこで、ロール方向のブレ量Φとピッチ・ヨー方向のブレ量θの比較を行う。例としては一定時間での標準偏差などを計算することで、当該軸周りのブレ量の評価値とすることができる。このブレ量の評価値は、次にステップS170を行うときに活用される。具体的には、この評価値を式1および式2のΦまたはθとして用いることで、0.6という固定値ではなく、撮影者のブレの特性に合わせてロールブレ量とピッチ・ヨーブレ量の評価を行うことができる。
【0074】
そして、この評価に基づいて回転方向の補正量と並進方向の補正量の上限値を決めることで、より適当な割り付けを実現することができる。次にステップS200に進む。
【0075】
ステップS200は、カメラシステム制御回路5がS2、つまり撮影指示が入力されたか否かを判断するステップである。S2が指示された場合にはステップS210に進み、そうでない場合はステップS110に戻る。
【0076】
ステップS210は、ブレ補正制御部が撮像素子駆動部14を使ってS2防振動作への切り替えを行うステップである。本ステップでは、カメラシステム制御回路5が、ブレ検出手段15にロールブレ量Φ及びピッチ・ヨーブレ量θを検出させ、検出結果に基づいて像ブレ補正量を取得する補正量を取得するステップである。補正量の取得方法はステップS180と同様であるが、取得した補正量に基づく撮像素子の駆動は、露光中のものに切り替わっている。
【0077】
次にステップS220に進む。
【0078】
ステップS220はカメラシステム制御回路5の指示によりシャッタ機構16、撮像素子6、画像処理部7、メモリ手段8などを連動させて被写体像を露光して記録するステップである。
【0079】
ステップS230は、ブレ補正制御部が撮像素子駆動部14を用いた防振動作を、S2防振動作からS1防振動作への切り替えを行うステップである。S1防振動作については、ステップS180で説明したため、ここでは説明を省略する。
【0080】
以上に説明したように本実施形態によれば、装置を大型化することなく、ストロークを有効に活用してロールを含む防振を行う装置を提供することができる。
【0081】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
4 光軸
5 カメラシステム制御回路
6 撮像素子
9a 背面表示手段
11 電気接点
12 レンズシステム制御回路
14 撮像素子駆動部
15 ブレ検出手段
16 シャッタ機構
図1
図2
図3
図4
図5