(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】ブレーキシステム用の位置センシングシステム
(51)【国際特許分類】
F16D 66/02 20060101AFI20221205BHJP
F16D 55/225 20060101ALI20221205BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20221205BHJP
H04B 1/59 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
F16D66/02 H
F16D55/225 102Z
G01B7/00 W
G01B7/00 101H
G01B7/00 101F
H04B1/59
(21)【出願番号】P 2018127356
(22)【出願日】2018-07-04
【審査請求日】2021-06-24
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506154029
【氏名又は名称】センサータ テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス ヘーダ―
(72)【発明者】
【氏名】エドワード オブライエン
(72)【発明者】
【氏名】アディティア バラスブラマニアン
(72)【発明者】
【氏名】ネヴィン モリニュー
(72)【発明者】
【氏名】マーク ダッフィー
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-025685(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0084714(US,A1)
【文献】特開2005-156336(JP,A)
【文献】特開2008-171403(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102005022597(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00 - 71/04
G01B 7/00 - 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキングシステムであって、
ロータと、
前記ロータのまわりに少なくとも部分的に配置され、前記ロータに対して停止する力を働かせるキャリパアッセンブリであって、当該キャリパアッセンブリは、固定されたマウントブラケットとフローティング部とを含む、前記キャリパアッセンブリと、
前記フローティング部の位置を示す信号を生成する前記固定されたマウントブラケットに取り外し可能に結合された感知素子を有するセンサアッセンブリであって、前記感知素子は、磁界を感知しかつ前記信号を生成する、前記センサアッセンブリと、
前記センサアッセンブリからの信号を、離れた電子部品へ送信するためのワイヤレストランスミッタと、
一緒に移動のために前記フローティング部に取り外し可能に結合された磁石と、
ハウジングと、
前記ハウジングに取り付けられ、電子部品モジュールアッセンブリを収容するチャンバを形成するカバーとを有し、
前記電子部品モジュールアッセンブリは、前記感知素子を含み、前記ハウジングが軸のまわりにチャンネルを形成し、前記磁石は、前記フローティング部の移動に応答して前記軸に沿って移動するように位置決めされ、前記磁石は、磁界を発生し、前記信号は、実際のブレーキパッドの摩耗の値を示す、ブレーキングシステム。
【請求項2】
ブレーキングシステムはさらに、前記信号を受け取り、かつ前記信号に基づき前記実際のブレーキパッドの摩耗の値を計算するように構成されたマイクロプロセッサを含み、前記キャリパアッセンブリは、前記フローティング部に取付けられた少なくとも1つのブレーキパッドを含む、請求項1に記載のブレーキングシステム。
【請求項3】
ブレーキングシステムはさらに、前記離れた電子部品に結合されたディスプレイを含み、実際のブレーキパッドの摩耗の値を表示する、請求項2に記載のブレーキングシステム。
【請求項4】
前記磁石および前記チャンネルは、円筒状である、請求項1に記載のブレーキングシステム。
【請求項5】
前記電子部品モジュールアッセンブリは、プリント回路基板と、アンテナと、バッテリと、前記
ワイヤレストランスミッタとを含む、請求項1に記載のブレーキングシステム。
【請求項6】
前記マイクロプロセッサは、
予想されるブレーキパッドの摩耗の値に関するデータを格納し、
予想されるブレーキパッドの摩耗の値を実際のブレーキパッドの摩耗の値と比較し、
実際のブレーキパッドの摩耗の値と予想されるブレーキパッドの摩耗の値との間の逸脱をユーザーに警告するように構成される、請求項2に記載のブレーキングシステム。
【請求項7】
ブレーキングシステムはさらに、
ユーザーによってブレーキが作動された度合を表すブレーキ圧力負荷の値を受け取り、
ブレーキ圧力負荷の値の少なくとも一部に基づき予想される信号の強度を計算し、
信号の強度と予想される信号の強度との間の逸脱をユーザーに警告するように構成されるマイクロプロセッサを含む、請求項1に記載のブレーキングシステム。
【請求項8】
前記マイクロプロセッサは、
実際のブレーキパッドの摩耗の値をブレーキパッドの摩耗の第2の値と比較し、当該ブレーキパッドの摩耗の第2の値は、離れたキャリパアッセンブリに対応するブレーキパッドの摩耗を表すものであり、
実際のブレーキパッドの摩耗の値とブレーキパッドの摩耗の第2の値との逸脱をユーザーに警告するように構成される、請求項2に記載のブレーキングシステム。
【請求項9】
ブレーキングシステムのための位置センシングシステムであって、当該ブレーキングシステムが、ロータ、前記
ロータのまわりの少なくとも一部に配置されかつ固定されたマウントブラケットおよびフローティング部を含むキャリパアッセンブリ、および前記フローティング部を介して第2の力に応答して前記ロータに抗する第1の力を付勢するように動作可能な前記フローティング部に取付けられた少なくとも1つのブレーキパッドを含んでおり、前記位置センシングシステムは、
磁界を発生する磁石であって、当該磁石は、前記フローティング部とともに移動のためのキャリアを介してキャリパスライドピンに取り外し可能に結合される、前記磁石と、
センサアッセンブリとを含み
当該センサアッセンブリは、
前記センサアッセンブリを前記固定されたマウントブラケットに取り外し可能に取り付けるように構成されたフランジを有するハウジングと、
前記磁石と前記センサアッセンブリとの相対的な位置に相関関係がある強度を有する信号を発生するために磁界を感知する感知素子を含む電子部品モジュールアッセンブリと、
前記センサアッセンブリから離れた電子部品に前記信号を送信する無線トランスミッタとを有し、
前記センサアッセンブリは、前記電子部品モジュールアッセンブリを収容するチャンバを形成するように前記ハウジングに取り付けられたカバーを含み、前記ハウジングは、軸のまわりにチャンネルを形成し、前記磁石は、前記フローティング部の移動に応答して前記軸に沿って移動するように位置決めされ、前記信号は、実際のブレーキパッドの摩耗の値を示す、位置センシングシステム。
【請求項10】
前記電子部品モジュールアッセンブリは、プリント回路基板、アンテナ、バッテリおよび前記
無線トランスミッタを有する電子部品モジュールアッセンブリを含む、請求項9に記載の位置センシングシステム。
【請求項11】
ブレーキングシステムのための位置センシングシステムであって、当該ブレーキングシステムが、ロータ、前記
ロータのまわりの少なくとも一部に配置されかつ固定されたマウントブラケットおよびフローティング部を含むキャリパアッセンブリ、および前記フローティング部を介して第2の力に応答して前記ロータに抗する第1の力を付勢するように動作可能な前記フローティング部に取付けられた少なくとも1つのブレーキパッドを含んでおり、前記位置センシングシステムは、
前記フローティング部に結合された金属性の参照部分であって、前記フローティング部の移動が前記金属性の参照部分の対応する移動を生じさせる、前記金属性の参照部分と、
前記固定されたマウントブラケットにハウジングによって取り外し可能に取付けられたインダクティブセンサアッセンブリとを含み、
前記インダクティブセンサアッセンブリは、前記センサアッセンブリと前記金属性の参照部分との間の変位距離に相関関係がある強度を有する信号を発生させるように構成されたインダクティブ感知素子と、
電子部品モジュールアッセンブリを収容するチャンバを形成するようにハウジングに取り付けられたカバーとを有し、前記カバーと前記電子部品モジュールアッセンブリとが面に平行に配置され、前記フローティング部の移動が前記金属製の参照部分を前記面に平行に移動させ、前記インダクティブセンサアッセンブリはさらに、前記センサアッセンブリから離間された電子部品に前記信号を送信する
ワイヤレストランスミッタを含み、前記信号は実際のブレーキパッドの摩耗を示す、位置センシングシステム。
【請求項12】
前記インダクティブセンサアッセンブリは、前記インダクティブ感知素子、プリント回路基板、アンテナ、バッテリおよび前記ワイヤレストランスミッタを含む前記電子部品モジュールアッセンブリを含む、請求項11に記載の位置センシングシステム。
【請求項13】
ハウジングは、ネジを受け取るためのねじ山が形成された軸方向の孔を有するフランジを含み、当該ハウジングを前記固定されたマウントブラケットに取外し可能に取付ける、請求項12に記載の位置センシングアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題の開示は、センシングテクノロジーに関し、特に、ブレーキシステム内のブレーキパッドの摩耗をセンシングするシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキパッドの摩耗または消耗を決定するためのセンサが無ければ、ドライバーは、ブレーキパッドの摩耗のレベルを判定するために、1つもしくはそれ以上のタイヤを車両から取り外すことを強いられる。ブレーキパッドの摩耗のセンシングのための典型的な現在の市場のアプリケーションは、いつ、交換を保証するべき十分な摩耗をパッドが有しているかを示すデバイスから構成される。“センサ”は、典型的に、ブレーキング中にワイヤが消費される、パッドの摩耗がセンサのポイントに到達したときに破断されるワイヤから構成され、回路がオープンになる。そして、回路のオープンは、ブレーキパッドの交換が必要であることを示す車両のダッシュボードのライトを表示するために使用される。センサは、ブレーキパッドの動作寿命中に消耗され、ブレーキパッドが交換されるときに、追加のオーナーのコストで交換されなければならない。さらに、上記のブレーキパッド摩耗センサのためのワイヤハーネスは、車両のアーキテクチャに包含されなければならない。
【発明の概要】
【0003】
市場では、現在のブレーキパッドの摩耗に関して、規則的に出力を提供するシステムを持つことが望まれている。さらに、ブレーキパッドの寿命ではなく車両の寿命のために設計されるシステムが必要である。さらに、車両の健康状態についての詳細な情報がドライバーおよび/または車両の製造者のために表示され、その結果、例えば、当該情報が、販売代理店のサービスのためにオーナーに送信される時間的なインセンティブに使用することができる、といった中央コンピュータシステムに接続され得るシステムが望まれる。例えば、自立したフリート共有車両では、ドライバーは、車両の健康状態についてあまり気にしない傾向があり得るので、例えば、ディスプレイは、特に重要なものであり得る。
【0004】
上記の必要性の観点において、少なくとも1つの態様では、車両の車輪を取り外すことなく、ユーザーがブレーキパッドの摩耗または消耗を識別することができるブレーキングシステム用のセンシングシステムが必要である。さらに、少なくとも1つの態様では、主題の技術は、ブレーキパッドの摩耗を定期的に測定することができ、かつワイヤレスでそれらの測定結果を伝送することができるブレーキングシステム用のセンシングシステムを提供する。さらに、少なくとも1つの態様では、主題の技術は、既存のブレーキングシステムを容易に一体化し、かつユーザーがそれらのブレーキを交換する時に取り外しの必要がないブレーキングシステム用のセンシングシステムを提供する。
【0005】
ある実施例では、主題の開示は、ロータ、ロータのまわりの少なくとも一部に配置されたキャリパアッセンブリを有するブレーキングシステム用の位置センシングシステムに関し、キャリパアッセンブリは、固定されたマウントブラケットとフローティング部とを含む。少なくとも2つのブレーキパッドがフローティング部に取付けられ、フローティング部を介しての力に応答してロータに抗する力を発揮するように動作可能である。第1の部分が固定されたマウントブラケットに結合される。第2の部分は、当該第2の部分がフローティング部の移動に応答して移動するように、フローティング部に結合される。センサアッセンブリは、第1の部分と第2の部分との間の距離を測定する。ワイヤレストランスミッタは、センサアッセンブリから、離れた電子部品に信号を送信し、当該信号は、測定された距離を表す。ある実施例では、離れた電子部品は、信号を受け取り、測定された距離に基づきブレーキパッドの摩耗の値を計算するように構成されたマイクロプロセッサを含む。位置センシングシステムはまた、ブレーキパッドの摩耗の値を示すディスプレイを含むことができる。
【0006】
ある実施例では、センサアッセンブリが第1の部分に取付け可能であり、磁石が第2の部分に取付け可能である。そして、センサアッセンブリは、磁石とセンサアッセンブリとの間の距離を感知することにより、第1の部分と第2の部分との間の距離を測定することができる。ある実施例では、磁石が第1の部分に取付けられ、センサアッセンブリが第2の部分に取付けられる。
【0007】
ある実施例では、センサアッセンブリは、第1の部分であり、センサアッセンブリは、固定されたマウントブラケットに取付けられる。第2の部分は、フローティング部に結合された金属製または金属性の参照部分であることができる。そして、センサアッセンブリは、インダクティブ感知素子と金属性の参照部分との間の距離を測定するためのインダクティブ感知素子を含むことができる。
【0008】
ある実施例では、センサアッセンブリは、感知素子、プリント回路基板、アンテナ、バッテリ、およびワイヤレストランスミッタを有する電子部品モジュールアッセンブリを含むことができる。センサアッセンブリは、ハウジングと、当該ハウジングに取付けられたカバーとを含むことができ、電子部品モジュールアッセンブリを収容するチャンバを形成する。ある実施例では、ハウジングは、軸の周囲にチャンネルを形成し、磁石は、フローティング部の移動に応答して軸に沿って移動するように位置決めされる。磁石およびチャンネルは、例えば、円筒状であるように、対応する形状であることができる。
【0009】
少なくとも1つの実施例では、主題の技術は、ブレーキングシステムのためのワイヤレスの線形位置センシングシステムに関する。ブレーキングシステムは、ロータと、ロータの少なくとも一部の周囲に配置されたキャリパアッセンブリとを含む。キャリパは、固定されたマウントブラケットとフローティング部とを含む。少なくとも2つのブレーキパッドがフローティング部に取付けられ、ブレーキパッドは、フローティング部を通じた力に応答して、ロータに抗する力を発揮させる。ワイヤレスの線形位置センシングは、キャリパアッセンブリの第1の部分に取付けられた磁石と、キャリパアッセンブリの第2の部分に取付けられたセンサアッセンブリとを含む。センサは、時h策とセンサとの間の距離を測定するように構成される。ワイヤレスの線形位置センサはまた、センサアッセンブリから、離間された電子部品に信号を送信するためのワイヤレストランスミッタを含み、当該信号は、測定された距離を表す。
【0010】
あるケースでは、キャリパアッセンブリの第1の部分は、フローティング部上に置かれ、キャリパアッセンブリの第2の部分は、固定されたマウントブラケット上に置かれる。他のケースでは、キャリパアッセンブリの第1の部分は、固定されたマウントブラケット上に置かれ、キャリパアッセンブリの第2の部分は、フローティング部上に置かれる。センサアッセンブリは、感知素子、プリント回路基板、アンテナ、バッテリおよびワイヤレス信号の送信器を有する電子部品モジュールアッセンブリを含むことができる。
【0011】
ある実施例では、主題の技術は、ブレーキングシステム用のワイヤレス線形位置センシングシステムに関する。ブレーキングシステムは、ロータと、固定されたマウントブラケットおよびフローティング部を有しロータのまわりの少なくとも一部に配置されるキャリパアッセンブリを含む。フローティング部は、ロータの周囲に配置された少なくとも端部と、フローティング部を介しての力に応答してロータに抗する力を発揮するように動作可能な各端部に取付けられたブレーキパッドとを有する。ワイヤレスの線形位置システムはまた、端部の1つに結合された金属性の参照部分を含み、端部の移動が金属性の参照部分の対応する移動を生じさせる。インダクティブ感知アッセンブリは、固定位されたマウントブラケットに取付けられ、かつ金属性の参照部分とインダクティブセンサアッセンブリとの間の距離を測定するように構成される。無線送信器は、センサアッセンブリから、離れた電子部品に信号を送信し、当該信号は、測定された距離を表す。
【0012】
インダクティブセンサアッセンブリは、インダクティブ感知素子、プリント回路基板、アンテナ、バッテリ、および無線送信器を含む電子部品モジュールアッセンブリを含むことができる。ある実施例では、インダクティブセンサアッセンブリはまた、ハウジングおよびカバーを含むことができ、カバーがハウジングに取付けられて、電子部品モジュールアッセンブリを収容するチャンバを形成する。ハウジングは、ネジを受け取るためのネジ山が形成された軸方向の孔を有するフランジを含むことができ、固定されたマウントブラケットにハウジングを取り外し可能に取付ける。さらに、ある実施例では、カバーおよび電子部品モジュールアッセンブリは、面に平行に配置され、フローティング部の移動は、金属性の参照部分に当該面に平行な移動を生じさせる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
開示されたシステムに関係する当業者は、以下の図面を参照することで、当該システムをどのように製造しかつ使用するかをさらに容易に理解するであろう。
【0014】
【
図1】
図1は、典型的なブレーキングシステムの斜視図である。
【0015】
【
図2】
図2は、本主題の技術による位置センシングシステムを有するブレーキングシステムの平面図である。
【0016】
【
図3】
図3は、本手段の技術による位置センシングシステムの実施例を含むブレーキングシステムの斜視図である。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【
図6A】
図6Aは、本主題の技術による位置センシングシステムの実施例を含む他のブレーキングシステムの斜視図である。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【
図7A】
図7Aは、本主題の技術による電子部品モジュールアッセンブリとバッテリの電気的な構成を表す簡略化されたブロック図である。
【0026】
【
図7B】
図7Bは、本主題の技術による電子部品モジュールアッセンブリの電気的な構成を表す別の簡略化されたブロック図である。
【0027】
【
図8】
図8は、本主題の技術による位置センシングシステムの実施例を含むブレーキングシステムの斜視図である。
【0028】
【
図9】
図9は、本主題の技術による位置センシングシステムの実施例を含むブレーキングシステムの斜視図である。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【発明を実施するための形態】
【0033】
主題の技術は、ブレーキパッドの摩耗または消耗のトラッキングに関する従来の多くの問題を克服する。要約すると、主題の技術は、ワイヤレスの線形の位置センシングシステムのような位置感知システムであり、これは、システムの寿命の期間中、定期的にあるいは規則正しくブレーキの摩耗を追跡する。ここに開示されるシステムおよび方法の効果や他の特徴は、本発明の代表的な実施例から始まる、以下の図面とともにある好ましい実施例の詳細な記載から、当業者にとって容易に明らかになるであろう。ここでは、同様の部分を示すために同様の参照番号が用いられる。さらに、“上方(upper)”、“下方(lower)”、“先端(distal)”、“近接(proximate)”のような方位を示す単語は、単に、互いの部材間の位置を説明するのを助けるために使用される。例えば、部品の“上方”の面は、単に、同一部品の“下方”の面から隔てられた面を言葉で表すことを意味している。方位を示す単語は、絶対的な方位(すなわち、“上方”の部分は、常に頂部でなければならない)を言葉で表すために使用されていない。
【0034】
図1を参照すると、典型的な車両のブレーキングシステムが100で示されている。当該システム100は、ロータ104の周囲に部分的に配置されたキャリパアッセンブリ102を含んでいる。キャリパアッセンブリ102は、固定されたマウントブラケット106とフローティング部108とを含む。固定されたマウントブラケット106は、ブレーキシステム100の他の部材に静的に取付けられる。他方、フローティング部108は、キャリパスライドピン110を介して固定されたマウントブラケット106に結合され、ロータ104へ向かったりあるいはそこから離れる移動が可能である。フローティング部108の内側は、通常、ロータ104を取り囲む少なくとも2つのブレーキパッド(明確に示されていない)を含む。フローティング部108内にブレーキパッドを保持することは、その位置にブレーキパッドを保持するための留め具を有する、フローティング部108内の2つの端部に、ブレーキパッドを固定することにより実施され得る。どのような場合でも、例えば、車両内のブレーキペダルの圧縮に応答して提供される作動液または油圧液によって、荷重がフローティング部108に印加されたとき、フローティング部108は、ロータ104に対してブレーキパッドをクリンチする(しっかり固定させる)。そして、ブレーキパッドは、ロータ104に荷重を印加し、車両を減速させ、および/または停止させる。
【0035】
図2ないし4を参照すると、ブレーキングシステム100は、位置データを検出するセンサアッセンブリ212を含む。センサアセンブリ212は、好ましくは、磁石216を含み、その結果、動作は、後に詳述するように、非接触となる。
【0036】
位置データは、ブレーキパッドの摩耗を決定するためのキャリパアッセンブリ102の第1の部分201と第2の部分203との間の距離に関する。第1の部分201は、剛性のある外側のハウジング230を介して固定されたマウントブラケット106に搭載される。ハウジング230は、電子部品モジュールアッセンブリ224の周辺でカバー232に取付けられる。電子部品モジュールアッセンブリ224は、少なくとも1つの感知素子226(
図5B)を含む。概ね、感知素子226は、感知素子226と、第2の部分203に固定された磁石216との間の距離を示す信号を生成する。信号強度は、距離に比例して変化し、それ故、信号強度の変化が距離の変化を表すようにキャリブレーションされる。感知素子226は、ホール効果型のセンサ、半導体ベースの磁界センサ、公知のものあるいは今後開発される他のタイプのものであることができる。他の実施例では、センサアッセンブリ212は、距離を決定するために、例えば、光学デバイス、キャパシティブセンサ、インダクティブセンサ、ソナー、レーダー等の非接触技術を利用することができる。
【0037】
感知素子226は、固定された磁気位置感知素子であり、これは、移動する磁石216の位置を感知する。ここで、磁石216は、センサアッセンブリ212の第2の部分203の一部である。磁石216は、キャリア228を介してフローティング部108に結合される。磁気キャリア228は、キャリパスライドピン110の1つに結合される。ブレーキパッドが使用されていないとき、フローティング部108は、第1の固定された位置にあり、これは、ブレーキパッドの最も内側の位置間の距離“L”であり、かつ各ブレーキパッドの最も内側の位置とローラ104との間の距離“D”である(
図2を参照)。特に、ブレーキパッドが使用されるとき、ブレーキパッドはロータ104に抗することを強いられ、それ故、ブレーキパッドをロータ104に接触させるべく、おおよそ“D”に等しい距離だけ変位される。作動された位置において、フローティング部108がロータ104に向けて移動するとき、キャリパピン110のまわりの外側のナット135は、磁気キャリア228と磁石216とを、フローティング部108の移動に従い強制的に移動させる。
【0038】
上記実施例は、磁石216をフローティング部108に取付けるための1つの効果的な方法を示すが、主題の技術はまた、ブレーキシステム100が作動するとき(すなわち、フローティング部108が移動するとき)、磁石216の位置が変化する限りは、磁石216とフローティング部108とが他の方法で結合されて実施可能であることに留意すべきである。ここに示された特定の実施例では、磁石216は、フローティング部108の移動に平行であり、かつ各ハウジング230の長さに平行である、磁石の軸“a”に沿って移動する。
【0039】
ブレーキパッドが擦り減るにつれて、ブレーキの印加は、フローティング部108をロータ104により近づくように移動させ(ロータ104とフローティング部108との間のブレーキパッドの幅が減少されるので)、ブレーキが印加されたときにフローティング部108の変位する距離“D”が大きくなる。そして、ブレーキが摩耗するにつれ、これが、ブレーキが印加されたときの感知素子226に対する磁石216の位置の変化になる。センサアッセンブリ212は、磁石216と感知素子226との相対的な位置に依存して変化される、例えば、感知素子226によって感知された磁界の角度および/または強度に基づく強度を有する信号を生成するように構成される。それ故、信号強度は、磁石216と感知素子226との間の相対的な位置に相関関係がある。そして、この信号の強度は、ブレーキが印加さないときに対するブレーキが印加されたときのブレーキパッドの相対的な位置(これは、ブレーキパッドの摩耗を示す)を決定することに信頼し得るものである。
【0040】
位置データは、電子部品モジュールアッセンブリ224によって処理され、このアセンブリは、ASIC、マイクロプロセッサ等を含むことができ、磁石216に対する距離(または変位)に関する感知素子226から受け取ったデータを、ブレーキパッドの摩耗を表す値に変換する。電子部品モジュールアッセンブリ224はまた、位置データを部分的に処理することもでき、処理の大部分が遠隔的に実施される。
【0041】
ブレーキパッドの与えられた摩耗値は、キャリパアッセンブリ102とロータ104との間のブレーキパッドの幅を表すことができる。ワイヤレストランスミッタはまた、距離“D”(および/またはブレーキパッドの摩耗の値)の代表値である信号を、車両内の離間された電子部品に伝送することができる。例えば、信号は、乗り物の内部のディスプレイにワイヤレスで伝送されることが可能であり、その結果、ユーザーは、ブレーキが印加されるたびに、あるいは決められた時間ベースの間隔で周期的となるように(例えば、5分おきに)、持続的にブレーキパッドの摩耗を追跡することができる。ブレーキパッドが擦り減ったときに、ブレーキパッドの摩耗の値をディスプレイ(表示)することによって、ユーザーは、ブレーキパッドが交換しなければならなくなる時期を容易に予想することができる。この情報はまた、ブレーキパッドの寿命中のブレーキパッドの健康状態の正確な予想および評価を提供することができる。さらに、特定のドライバー、旅行等によって引き起こされるブレーキパッドの摩耗量は、乗り物が使用される前後で、ブレーキパッドの摩耗値を見ることによって認識することができる。メンテナンスの技術者はまた、ブレーキパッドを交換する等の推奨されかつ要求されるメンテナンス活動をアクセスするためのメンテナンスデバイスを介して位置データ/ブレーキ摩耗の指示を利用することができる。
【0042】
他の応用では、センサアッセンブリ212によって発生されたブレーキパッドのデータは、例えば、不適当なキャリパ機能/動作、ドライバーの行為の事前の洞察、あるいは可能性のあるブレーキ故障などを検出するような、安全の測定のために信頼されるものであり得る。例えば、各キャリパアッセンブリ102のセンサアッセンブリ212は、ブレーキが使用中でないときに第1のセンサ読出しを生成する。各キャリパアッセンブリ102の各センサアッセンブリ212はまた、ブレーキが使用中であるときに第2のセンサ読出しを生成し、第1のセンサ読出しと第2のセンサ読出しとの間の差は、ブレーキが動作されたとき、そして最終的にブレーキパッドが摩耗したときにフローティング部108が移動した量を計算する上で信頼できるものであり得る。しかしながら、もし、他の車輪と比較された1つの車輪のために決定された信号の差の逸脱が大きい場合には、これは、潜在的に、ドライバーに、キャリパアッセンブリ102の問題やブレーキングシステム100の故障を警告し得る。さらに、第2のセンサ読出しの可能性のある範囲は、キャリパアッセンブリ102のフローティング部108とロータ104との間の既知の距離、現在のブレーキパッドの摩耗、およびブレーキが印加されたときにブレーキパッド圧力負荷または度合が与えられた予想されるブレーキパッドの圧縮、に基づき生成され得る(例えば、ブレーキパッドは、ユーザーが軽くブレーキをタップしたときとユーザーが緊急停止のためにブレーキを強く踏んだときとでは、異なる度合で圧縮することが予想される)。本例が、1つまたは複数のブレーキング事象の間にブレーキが印加された度合に関するある入力を必要とすることにも留意される。そして、第2のセンサ読出しは、もし、重大な逸脱がある場合には、予想される第2のセンサ読出しと比較されることができる。特定の逸脱が重大であるか否かは、特定の車両からまたは複数の車両からの過去の既知の逸脱(偏差)について集計されたデータに基づきまたはそれを基準にケースバイケースで決定され得る。
【0043】
センサアッセンブリ212によって追跡され、かつ報告されたデータは、ブレーキング事象中のブレーキパッドの差動やキャリパ移動のような診断情報のための信頼され得るものである。このデータは、例えば、ブレーキングシステム100の可能性のある問題を検出したり、特定のブレーキングシステム100の性能を報告したり、あるいは与えられたユーザーまたは車両のブレーキの使用を追跡するために使用することができる。
【0044】
上記実施例は、説明の目的で与えられたものであるが、種々の実施例では、第1の部分201よび第2の部分203に関する構成要素は、入れ替える(逆にする)ことが可能であることに留意すべきである。例えば、センサアッセンブリ212は、第2の部分203の一部であることができ、かつ、フローティング部108の移動に応答して移動することが可能である。他方、磁石216は、第1の部分201の一部であることができ、かつ、固定されたマウントブラケット106に動くことができないように取付けられることが可能である。全体のアッセンブリは、ブレーキパッドの摩耗を決定するために使用されるであろう感知素子226が各磁石216までの距離(すなわち、感知素子226によって読み取られる磁界)を識別するように、
図2ないし4に与えられた例と同様に機能するであろう。
【0045】
次に、
図5Aおよび5Bを参照すると、センサアッセンブリ212の種々の構成要素が示されている。センサアッセンブリ212は、互いに取り付けられた、電子部品モジュールアッセンブリ224を保護するためのチャンバ234を形成するハウジング230およびカバー232を含む。ハウジング230、カバー232、および電子部品モジュールアッセンブリ224は、全て、軸方向に整合される穴が開けられた孔236を含む。ネジが形成された留め具238は、孔236内に挿入され、カバー232、ハウジング230および電子部品モジュールアッセンブリ224を互いにしっかりと保持する。ハウジング230およびカバー232は、プラスチック、アルミニウム等の材料から構成することができ、これは、剛性であり、電子部品モジュールアッセンブリ224を保護するのに十分な耐久性を有し、他方、感知素子226のような電子部品モジュールアッセンブリ224の構成部品と干渉をしない。エポキシポッテイング243が、カバー232と電子部品モジュールアッセンブリ224との間にディスペンスされ、電子部品モジュールアッセンブリ224上の構成部品の保護を助ける(しかしながら、エポキシポッテイング243は、含まれないようにしてもよい)。
【0046】
電子部品モジュールアッセンブリ224は、センシング、信号処理、伝送に関する種々の構成部品を備えた印刷回路基板を含む(それらの全ては、明確に示され、記載されていない)。電子部品モジュールアッセンブリ224は、内部のバッテリ240からの電力を駆動し、かつワイヤレス信号の伝送のためのアンテナを含む。全体のセンサアッセンブリ212は、ハウジング230のフランジ242をキャリパアッセンブリ102に固定することにより、
図2ないし4に示されるように、典型的なブレーキシステム100のキャリパアッセンブリ102にボルト留めすることができる。
【0047】
センシングアッセンブリ212の磁石216は、磁石キャリア228によってキャリパアッセンブリ102の離間された部分に取付けられる。ある実施例では、磁石216は、矩形状であることができ、磁石の軸“a”に沿う移動は、ハウジング230の側壁217に平行であることができる。しかしながら、磁石216は、特定の形状である必要はなく、センシングアッセンブリ212と磁石216の相対的な位置が移動によって変化される限り、センシングアッセンブリ212に対してあらゆる方向(例えば、垂直、または、垂直でも平行でもない方向)に移動することが可能である。磁石216は、アルニコ(ALnico)合金のような、感知素子226に影響を与えるのに理想的に適している材料から構成される。磁石216は、マウンティングフランジ244に垂直である磁石キャリア228内に保持される。磁石キャリア228は、マウンティングフランジ244を貫通するキャリパボルト110によって、その位置に固定される。その結果、磁石216は、実質的に平行な方向(すなわち、軸“a”に平行)のフローティング部108の移動に応答して磁石216の移動を可能にする方法で、キャリパアッセンブリ102に結合される。
【0048】
ある実施例では、電子部品モジュールアッセンブリ224はまた、温度センサ(明示されない)を含むことができる。温度センサは、感知素子226内に収容されるか、電子部品モジュールアッセンブリの他の位置に配置され得る。温度センサは、ブレーキが印加されたときのブレーキパッドの温度に関する情報を追跡することを助ける。ブレーキパッドの温度に関するデータは、その後、例えば、ディスプレイを介してユーザーに提供され、それによって、ドライバーには、オーバーヒートの状態が警告され得る。同様に、ブレーキパッドの温度情報は、追跡され、蓄積され、および/または出力に送信され、特定のドライバーまたはブレーキ性能によるブレーキパッド使用を追跡する。
【0049】
図6Aないし6Eを参照すると、別のブレーキアッセンブリ100およびセンサアッセンブリ312の種々の図が示されている。このブレーキアッセンブリおよびセンサアッセンブリ312は、上記した実施例に非常に類似しており、それ故、同様の構成部品は、可能であるときは、“200”シリーズの代わりに“300”シリーズにおいて、同一の参照番号または類似の参照番号を有する。以下の記載は、センサアッセンブリ212と312との違いに対して向けられたものである。主な違いは、磁石316が円筒型であり、ハウジング330の円筒状のチャンネル314内で磁石の軸“a”に沿った移動を可能にする。円筒形状は、製造および組立を容易にする。さらに、円筒状に形成された磁石316の、円筒状に形成されたチャンネル314を通る磁石の軸“a”に沿った移動は、ブレーキシステム100のストロークの全体にわたり、センサアッセンブリ312の磁界において、読取られる変化を最適化する。さらに、改良された精度の結果はまた、磁石316を、ブレーキシステム100を取り巻く過酷な環境の影響から保護する。
【0050】
図7Aを参照すると、ブロック400は、電子部品モジュールアッセンブリ424の回路の1つの例と対応する電源410を示す。この場合、電源410は、乗り物の内部であり、電子部品モジュールアッセンブリ424の外部であるバッテリ440からの電力を供給する。しかしながら、他の実施例では、内部バッテリは、電子部品モジュールアッセンブリ424の一部として包含され、乗り物に電力を供給する。電源410は、3Vレギュレータ450aと5Vレギュレータ450bに結合されたバッテリ440を含み、電子部品モジュールアッセンブリ424上の種々の構成部品に電力を供給する。バッテリ440からの電力は、各々の特定の構成部品の要求に依存する特定のレギュレータ450a、450bを通過する。ここに示す例では、電力は、5Vのレギュレータ450bを通り、感知素子426と信号を条件付けするオペアンプ452に供給される。3Vのレギュレータ450aを通る電力は、マイクロコントローラ454とRFトランスミッタ456に供給される。
【0051】
感知素子426は、各マグネット216、316の位置を検出し、磁石216、316の位置を表す信号を生成する。もし、システムが適切に構成されていれば、この信号は、車両のブレーキパッドの全体の摩耗に対する関係を有する。そして、信号は、オペアンプ452に送られ、オペアンプ452はマイクロコントローラ454に信号を提供する。マイクロコントローラ454はさらに信号を処理する。そして、信号は、車両のディスプレイまたは他のデバイスへの無線伝送のためにRFトランスミッタ456に提供される。LFレシーバ457はまた、マイクロコントローラ454や電子部品モジュールアッセンブリ424内の他の構成部品への一方通行の通信チャンネルを提供する。LFレシーバ457は、電子部品モジュールアッセンブリや対応するセンサアッセンブリを初期化し、テストし、キャリブレーションする手段を提供する。好ましくは、LFレシーバ457は、このような初期化、テスト、キャリブレーションを可能にするため、ワイヤレスで種々の動作モードにセットされることができる。
【0052】
図7Bを参照すると、電子部品モジュールアッセンブリ424の回路の他の例のブロック
図400bが示されている。本例では、電子部品モジュールアッセンブリは、内部のバッテリ440bを含み、バッテリ440bは、ブロック
図400bに示されるある構成部品あるいは全ての構成部品に電力を供給する。感知素子426bは、上記したように信号を生成し、当該信号を、信号条件付け電子部品452bに提供する。信号条件付け電子部品452bは、種々の電子部品を含むことができ、感知素子426bによって生成された信号を処理し、伝送し、変更し、あるいは格納する。例えば、信号条件付け電子部品452bは、オペアンプ、マイクロコントローラ、あるいは、ある範囲内に降下する信号が受け取られたときに特定の動作を採るようにプログラムされた特定用途集積回路(ASIC)を含むことができる。そして、信号条件付け電子部品452bは、アンテナ441を介して車両のディスプレイまたは他のデバイスに無線伝送するために、信号をRFトランスミッタ456へ提供する。上記したLFレシーバ457と同様に、LFレシーバ457bはまた、電子部品モジュールアッセンブリや他の対応するセンサアッセンブリの構成部品の初期化、テスト、キャリブレーションをする。ここには明確に示されないが、電子部品モジュールアッセンブリ424はまた、温度センサを含むことができることに留意される。温度センサは、感知素子426bの一部であることができ、あるいは、内部のバッテリ440bおよび信号条件付け電子部品452bと同様にインターフェースすることができる。
【0053】
図8ないし
図10Dを参照すると、ブレーキングシステムの位置センシングシステムの他の実施例が示される。位置センシングシステムは、ここに記載された他のシステムと同様の多数の構成部品を有し、全ての構成部品は、別段ここに示されないか記載されなければ、同一であると仮定される。凡そ、ここに示される他の実施例は、磁気の位置センサおよび磁石を利用するが、本実施例は、インダクティブ位置センサアッセンブリ512と金属の参照部分560とを利用する。特に、センサアッセンブリ512は、金属の参照部分560とセンサアッセンブリ512(あるいは、感知素子526のようなセンサアッセンブリ512の一部)との間の変位距離に相関関係のある強度を有する信号を生成するように構成される。
【0054】
上記した他の実施例と同様に、センサアッセンブリ512は、互いに結合された、電子部品モジュールアッセンブリ524を収容するチャンバ534を形成するカバー532およびハウジング530を含む。電子部品モジュールアッセンブリ524は、対応する金属性の参照部分560の位置までの距離を検出する送信および受信のインダクティブコイルを配置する形態で、インダクティブ感知素子526を有する。ここに示す例では、金属性の参照部分560は、キャリパアッセンブリ102のフローティング部108に一体化された一部である。あるいは、またはさらに、金属性の参照部分560は、フローティング部108に取り付けられた別体の金属性の突起であることができ、これは、インダクティブ感知素子526によって容易に検出されることが可能である。概して、カバー532の正面562は、金属性の参照部分560に近接して存在する(すなわち、約2mm離れている)。
【0055】
ブレーキが印加されていないとき。金属性の参照部分560は、
図9に示すように、第1のデフォルト位置にある。一旦、ブレーキが印加されると、
図8に示すように、フローティング部108がロータ104に抗するブレーキパッドをしっかり止めるので、フローティング部108が第1のデフォルト位置から第2の動作位置に移動する。この距離は、ブレーキが印加されたときと印加されないときとの間のフローティング部108(および対応する金属性の参照部分560)の走行を表す、変位線“D”によって表される。
図9において、センサアッセンブリ512がキャリパアッセンブリ102から後方に移動され、変位距離“D”を分かり易く例示していることに留意されたい。しかしながら、センサアッセンブリ512は、
図8に示すように依然としてキャリパアッセンブリ102に固定されていることを理解されるべきである。本例では、インダクティブ感知素子526は、特に電子部品モジュールアッセンブリ524上に構成され、それ故、電子部品モジュールアッセンブリ524がフローティングのキャリパアッセンブリ102の変位“D”の方向に平行な面に沿って位置決めされる。ブレーキパッドの摩耗として、ブレーキの変位“D”は、ブレーキパッドが消耗した度合に比例して増加する。それ故、金属性の参照部分560の移動に対応する変位“D”を保証することによって、センサアッセンブリ512は、ブレーキバッドが消耗した度合を判定するように構成され得る。センサアッセンブリ512の正面562に平行に走行する金属性の参照部分560を持つことは利点であると理解されるが、他の実施例では、金属性の参照部分560は、ブレーキが作動されたときに金属性の参照部分560とセンサアッセンブリ512の相対的な位置が変化する方向においてのみの走行を必要とすることに留意されたい。
【0056】
本実施例の電子部品モジュールアッセンブリ524はまた、インダクティブ感知素子526からの信号を処理し、伝送し、解析するための種々の構成部品を包含する。例えば、電子部品モジュールアッセンブリ524は、プリント回路基板、インダクティブ感知素子526(対応する伝送および受信用のインダクティブコイル)、RFアンテナ、ワイヤレストランスミッタ、および他の受動的な電子構成部品などを含むことができる。電子部品モジュールアッセンブリ524はまた、ハウジング530とカバー532との間に形成されたチャンバ534内にさらに収容される内部のバッテリ540を含む。バッテリ540は、電子部品モジュールアッセンブリ524に電力を供給し、電子部品モジュールアッセンブリ524を乗り物内の他の電力供給へ接続する必要性を取り除く。
【0057】
ハウジング530は、固定されたマウントブラケット106へのセンサアッセンブリ512の取付けを容易にさせるフランジ542を含む。例えば、フランジ542は、内側にネジ山が形成された、軸方向に穴を開けられた孔572を含むことができる。ネジ574は、軸方向の孔572を介して、直接的に固定されたマウントブラケット106に締め付けることができ、その位置にセンサアッセンブリ512をしっかりと保持させる。同様に、ネジ574は、例えば、キャリパ102を交換するとき、センサアッセンブリ512を点検するとき、あるいはその他必要があるとき、センサアッセンブリ512を取り外すために容易に取り外される。ここに示される2つの穴を開けられた孔572は、センサアッセンブリ512がキャリパアッセンブリ102に固定されるとき、センシングアッセンブリ512の改善された安定性のためにフランジ542の対向する側に位置決めされる。ある実施例では、ハウジング530および/またはカバー532は、固いプラスチック部材である必要はなく、その代わりに、柔らかいエポキシ層から形成され得ることに留意すべきである。この柔らかいエポキシ層は、センサアッセンブリ512へのおよび/またはそこからの改善されたワイヤレス信号を可能しつつ、電子部品モジュールアッセンブリ524を、ブレーキングシステムを取り巻く過酷な環境から保護する。
【0058】
この技術分野に関連する当業者によって、幾つかの素子の機能は、代替の実施例において、より少ない数の素子または1つの素子によって実施され得ることが理解されよう。同様に、ある実施例では、機能的な素子は、例示した実施例に関して記載する動作よりも少ない動作あるいは異なる動作を実施し得る。また、例示の目的のために明確に示された機能的な素子(例えば、電子部品、感知素子、トランスミッタなど)は、特定の実施において、他の機能的な素子内に包含されることも可能である。
【0059】
主題の技術は、好ましい実施例に関連して説明されたが、当業者は、種々の交換および/または変更が、主題の技術の精神または範囲を逸脱することなく主題の技術に成し得ることを容易に理解するであろう。例えば、各請求項は、たとえそれらが当初から請求されていない場合でも、多数従属方式においていずれかの請求項または全ての請求項から従属することができる。