(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】画像形成装置および結露対応システム
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20221205BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20221205BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
G03G21/00 530
G03G15/20 510
G03G21/16 104
G03G21/16 185
G03G21/16 195
(21)【出願番号】P 2018146489
(22)【出願日】2018-08-03
【審査請求日】2021-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 俊徳
(72)【発明者】
【氏名】中島 慶太
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-010167(JP,A)
【文献】特開2009-145729(JP,A)
【文献】特開2006-058695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/20
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材にトナー像を形成する画像形成部と、
前記記録材に形成されたトナー像を加熱し前記記録材に前記トナー像を定着させる定着部と、
前記定着部よりも上方に配置されており、前記定着部の筐体内にて生じ前記定着部の上方に対流する水蒸気の温度よりもダクト壁の温度を低い温度にする強制対流が流されるダクトと、
前記ダクト
の内部空間に前記強制対流を流すファンと、
前記ダクト
の外に
前記ダクトの前記内部空間と隔離されるように配設されており、鉛直方向に見た場合に、前記定着部と重なる位置に前記水蒸気が移動する第1孔と第2孔とを有する水蒸気移動部と、を備え、
前記第1孔と前記第2孔とは、
互いに隣接して設けられ、少なくとも前記第1孔を構成する第1孔壁の一部と前記第2孔を構成する第2孔壁の一部とは、前記ダクト
の前記内部空間と前記ダクトの外とを隔てる前記ダクト壁の一部であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記定着部よりも上方に配置され、記録材を画像形成装置の内部から外部に排出する排出口と、
前記定着部から上方に送り出された記録材を前記排出口に搬送する記録材搬送部と、を備え、
前記ダクトは前記記録材搬送部に隣設されて前記定着部の長手に沿って延在しており、前記記録材搬送部に対向する側に前記強制対流の出口部を有し、
前記水蒸気移動部は、前記記録材搬送部の側とは反対側の前記ダクトの
前記ダクト壁に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1孔と前記第2孔の平均開口面積が6mm2以上120mm2以下であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1孔と前記第2孔の平均開口面積が12mm2以上55mm2以下であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1孔と前記第2孔で捕集した結露水が垂れ落ちた先に前記結露水を貯水する貯水部材あるいは貯水形状部を有することを特徴とする請求項1乃至
4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1孔と前記第2孔で捕集した結露水が垂れ落ちた先に記録材の搬送経路が存在しないことを特徴とする請求項1乃至
4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記定着部は、記録材上のトナー像を加熱するためのニップ部を形成する第1及び第2の回転体と、それらを収容している前記筐体を有することを特徴とする請求項1乃至
6の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
水蒸気発生部と、
前記水蒸気発生部よりも上方に配置されており、前記水蒸気発生部から前記水蒸気発生部の上方に対流する水蒸気の温度よりもダクト壁の温度を低い温度にする強制対流が流れるダクトと、
前記ダクト
の内部空間に前記強制対流を流すファンと、
前記ダクト
の外に
前記ダクトの前記内部空間と隔離されるように配設されており、鉛直方向に見た場合に、前記水蒸気発生部と重なる位置に前記水蒸気が移動する第1孔と第2孔とを有する水蒸気移動部と、を備え、
前記第1孔と前記第2孔とは、
互いに隣接して設けられ、少なくとも前記第1孔を構成する第1孔壁の一部と前記第2孔を構成する第2孔壁の一部とが前記ダクト壁
の前記内部空間と前記ダクトの外とを隔てる前記ダクトの一部であることを特徴とする結露対応システム。
【請求項9】
前記第1孔と前記第2孔の平均開口面積が6mm2以上120mm2以下であることを特徴とする請求項
8に記載の結露対応システム。
【請求項10】
前記第1孔と前記第2孔の平均開口面積が12mm2以上55mm2以下であることを特徴とする請求項
8に記載の結露対応システム。
【請求項11】
前記第1孔と前記第2孔で捕集した結露水が垂れ落ちた先に前記結露水を貯水する貯水部材あるいは貯水形状部を有することを特徴とする請求項
8乃至
10の何れか1項に記載の結露対応システム。
【請求項12】
前記水蒸気発生部が記録材に形成されたトナー像を加熱し前記記録材に前記トナー像を定着させる定着装置であることを特徴とする請求項
8乃至
11の何れか1項に記載の結露対応システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び結露対応システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば電子写真画像形成装置においては、画像形成部で未定着トナー像が形成された用紙(記録材)が画像定着のために定着部(定着装置、定着器)で熱せられることで用紙の含有水分により定着部の筐体内に水蒸気が発生する。
【0003】
その水蒸気が筐体に設けられている用紙出口等の筐体開口部から定着部の外部に流出して自然対流にて定着部の上方に流れ、画像形成装置本体内において用紙搬送経路の構成部材によって冷やされて凝集し水滴となってこれらに付着する。即ち、結露が発生することがある。特に、高湿環境下での朝一ウォームアップ動作直後の連続通紙等の場合に上記の結露が発生しやすく、結露による水滴が用紙に付着することで画像や用紙搬送に影響がでることがある。
【0004】
この問題の解決手段として、しばしば排気ファン設置や装置外装のルーバ設置により水蒸気を画像形成装置本体の外に排気し、用紙搬送経路を除湿する。特許文献1においては、画像形成装置本体に対して定着装置の上部に蒸気排気用のルーバを設け、自然対流による排気経路を形成し、排気経路壁面に格子状のリブを設け結露水を捕集、乾燥させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、画像形成装置のプリントスピード高速化により、単位時間当たりの水蒸気発生量が増加している。しかし、製品の静音化が進み、転写ローラや、定着加圧ローラ等を回転させるためのモータの駆動音や、ファンの駆動音、風がルーバを通過した時に発生する風切り音などの騒音がルーバから漏れてしまうことを抑制することが望まれている。そのため、排気ルーバの設置が困難となっている。
【0007】
本発明は、定着部などの水蒸気発生部が存在しても排気ルーバを設置せずに装置内の結露を低減することができる装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、
記録材にトナー像を形成する画像形成部と、
前記記録材に形成されたトナー像を加熱し前記記録材に前記トナー像を定着させる定着部と、
前記定着部よりも上方に配置されており、前記定着部の筐体内にて生じ前記定着部の上方に対流する水蒸気の温度よりもダクト壁の温度を低い温度にする強制対流が流されるダクトと、
前記ダクトの内部空間に前記強制対流を流すファンと、
前記ダクトの外に前記ダクトの前記内部空間と隔離されるように配設されており、鉛直方向に見た場合に、前記定着部と重なる位置に前記水蒸気が移動する第1孔と第2孔とを有する水蒸気移動部と、を備え、
前記第1孔と前記第2孔とは、互いに隣接して設けられ、少なくとも前記第1孔を構成する第1孔壁の一部と前記第2孔を構成する第2孔壁の一部とは、前記ダクトの前記内部空間と前記ダクトの外とを隔てる前記ダクト壁の一部であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水蒸気発生部である定着部が存在しても排気ルーバを設置せずに装置内の結露を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1における画像形成装置の要部の構成説明図
【
図2】同画像形成装置における定着装置(定着部)とその上方に配置されるダクトの外観斜視模式図
【
図3】シミュレーションによって導出した、水蒸気移動部における結露水捕集孔の開口面積と捕集水分量の関係グラフ
【
図4】実施例2における定着装置とその上方に配置されるダクトの外観斜視模式図
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記の実施の形態において、特に明記がない場合は、構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0012】
《実施例1》
[画像形成部]
図1は本実施例1における画像形成装置1の構成説明図であり、(a)は同装置1の要部の縦断正面模式図、(b)は同じく要部の縦断右側面模式図、(c)は同じく要部の横断平面模式図である。(d)は(a)における定着装置部分(定着部部分)の拡大図である。
【0013】
ここで、本実施例の画像形成装置1に関して、左右とは同装置1を正面側(
図1の(a))から見て左または右である。同装置1の正面側が手前側、同装置1の背面側が奥側である。上下とは重力方向において上又は下である。また上流側と下流側は記録材の搬送方向において上流側と下流側である。
【0014】
この画像形成装置1は電子写真方式のモノクロレーザービームプリンタであり、パソコン等の外部ホスト装置200から制御部100に電気的なプリントジョブ情報が入力する。当該画像形成装置1は入力するプリントジョブ情報に基づいて画像形成装置本体(以下、装置本体と記す)2の内部の画像形成部3が作像動作して記録材上にトナー像を形成する。記録材Pは画像形成装置によってトナー像が形成され得るシート状の記録媒体である。以下、便宜上、記録材Pを用紙或いは紙と記すが、記録材は紙に限定されるものではない。
【0015】
用紙Pに未定着のトナー像を形成する画像形成部3は、装置本体2内の所定の装着部に取り外し可能に装着されるプロセスカートリッジ4を有する。プロセスカートリッジ4は、回転駆動される感光ドラム(像担持体)5、帯電ローラ6、現像ローラ7等で構成されている。また、画像形成部3は、レーザースキャナユニット(画像露光手段)8、転写ローラ9を有する。上記のような構成の画像形成部3の電子写真プロセスや画像形成動作は周知であるからその詳細な説明は割愛する。
【0016】
画像形成部3の下方に配置されている給紙カセット11に収納されている用紙Pは給紙ローラ12及び分離パッド13によって1枚ずつ分離されてレジストローラ対14を含む縦搬送パス(縦パス)15により上方へ搬送される。そして、用紙Pは感光ドラム5と転写ローラ9との当接部である転写ニップ部10に導入され、転写ニップ部10で挟持搬送されていく過程で感光ドラム5側から未定着トナー像の転写を受ける。
【0017】
転写ニップ部10を通過した用紙Pは感光ドラム5から分離されて上方に搬送され、定着部である定着装置16に導入される。定着装置16は用紙に形成されたトナー像を加熱し用紙にトナー像を固着像として定着させる。
【0018】
[定着部]
定着部である定着装置16は、本実施例1のものはベルト(フィルム)加熱方式、加圧ローラ駆動式のオンデマンド定着装置である。この定着装置自体は公知に属するからその説明は簡単にとどめる。
【0019】
この定着装置16は、
図1の(d)を参照して、大別して、
a)定着部材としての円筒状で可撓性を有する定着ベルト(エンドレスベルト、第1の回転体:以下、ベルトと記す)21とその内側に固定して配置された熱源としての細長板状のセラミックヒータ22を含むベルトユニット(定着加熱部材)23と、
b)ベルトユニット23と共に用紙上のトナー像を加熱加圧して定着するニップ部(定着ニップ部、加熱ニップ部)Nを形成する加圧部材(定着加圧部材)としての弾性加圧ローラ(第2の回転体)24と、
c)上記のベルトユニット23と加圧ローラ24を収容している筐体(定着装置フレーム)25と、
を有する。
【0020】
筐体25の下面側と上面側にはそれぞれ筐体25の長手に沿って細長いスリット状の下向きの用紙入口(開口部)25aと上向きの用紙出口(開口部)25bが設けられている。
【0021】
ベルトユニット23のヒータ22と加圧ローラ24はベルト21を挟んで所定の押圧力で圧接しており、ベルト21と加圧ローラ24との間に用紙搬送方向において所定幅のニップ部Nが形成される。即ち、一対の回転体としてのベルト21と加圧ローラ24との協働によりニップ部Nが形成される。
【0022】
加圧ローラ24が駆動回転体として
図1の(d)において矢印の時計方向に所定の周速度で回転駆動される。これに伴い、ニップ部Nにおいてベルト21に加圧ローラ24との摩擦力で回転トルクが作用し、ベルト21はその内面がヒータ22の面に密着して摺動しながら加圧ローラ24の回転に従動して矢印の反時計方向に回転する。また、ヒータ22が電力供給により急峻に発熱し、所定の定着可能温度に立ち上げられて温調される。
【0023】
この定着装置状態において、画像形成部3側から定着装置16に搬送される未定着トナー像が形成された用紙Pが下向きの入口25aから筐体25内に下から上に進入してニップ部Nに導入される。ベルト21はニップ部Nにおいて用紙Pのトナー像担持面と接触しつつ回転する。用紙Pはニップ部Nを下から上に挟持搬送される過程においてヒータ22で加熱されるベルト21の熱により加熱され、且つニップ圧を受ける。これにより、未定着トナー像が用紙P上に加熱加圧されて定着される。
【0024】
ニップ部Nを出た用紙Pは、定着装置16の上向きの出口25bから筐体25(又は定着装置16)の外部の上方に送り出される。そして、用紙Pは用紙搬送パス(記録材搬送部:排紙経路)17により排出口20へ搬送され、排出口20から装置本体2の上面の排出トレイ21上に成果物(画像形成物)として排出される。排出口20は定着装置16から上方に送り出された用紙Pを装置本体2の内部から外部に排出する用紙出口であり、定着装置16よりも上方に配置されている。
【0025】
排紙経路である用紙搬送パス17は定着装置16の上方に配設されており、カール抑制ローラ対18、用紙ガイド部材(不図示)、排出ローラ対19等により構成されている。カール抑制ローラ対18は定着装置16の上向きの用紙出口25bに近い位置に排出ローラ対19は排出口20に近い位置に配置されている。
【0026】
[結露対応システム]
定着装置16においては、導入された用紙Pがニップ部Nにて定着加熱部材であるベルトユニットで加熱された際に用紙Pが含有している水分により筐体25の内部に水蒸気が発生する。つまり、定着装置内に水蒸気が発生する。筐体内にて生じた水蒸気は本実施例においては主として上向きの用紙出口25bから筐体外(又は定着装置外)に流出して自然対流にて定着装置16の上方へ流れる。この水蒸気によって生じる問題は大きく分けて次の1)と2)の2つある。
【0027】
1)結露問題
水蒸気が定着装置内の構成部品の物体表面に結露(凝集)して水滴(結露水)を生じさせ、その水滴が用紙に付着し画像不良等を引き起こすことである。より具体的には、定着装置16の上方へ対流した水蒸気が定着装置16の上方において用紙搬送パス17を構成しているカール抑制ローラ対18、ガイド部材(不図示)、排出ローラ対19等によって冷やされて凝集しこれらに対して結露することがある。そして、その結露による水滴が用紙に付着することで画像や用紙搬送に影響がでることがある。
【0028】
2)煙誤認問題
画像形成装置1の装置本体2の排出口が小さい場合に、大量の水蒸気が外に排出されと、白い水蒸気が視認できることがある。この視覚できる水蒸気(湯気)を煙と誤認されてしまうことがある。
【0029】
1)の問題に対しては、結露箇所を限定しその箇所において結露を促進させることで、結露を生じさせたくない箇所(用紙搬送経路)に流入する水蒸気を抑えるか、水蒸気を積極的に装置本体2の外に排気することが必要である。2)の問題に対しては装置本体2の外には水蒸気を極力排出しないことが必要である。
【0030】
従って、この1)と2)の必要性を両立させるためには、結露箇所を限定し、用紙搬送経路(両面紙搬送路も含む)へ流入する水蒸気を抑える必要がある。そこで、本実施例1においては、結露箇所を限定する次のような構成を採っている。
【0031】
1)水蒸気発生部である定着装置(定着部)16よりも上方に、定着装置16の筐体内にて生じて筐体外に流出し定着装置16の上方に対流する水蒸気aの温度よりもダクト壁の温度を低い温度にする強制対流bが流されるダクト30を配置している。
【0032】
2)ダクト30に強制対流を流すファン31を配置している。
【0033】
3)ダクト30に配設されており、鉛直方向に見た場合に、定着装置16と重なる位置に水蒸気が移動する結露水捕集孔32Aとしての少なくとも第1孔32A-1と第2孔32A-2とを有する水蒸気移動部32を配置している。
図2Aは
図1、
図2における水蒸気移動部32の部分的拡大模式図である。
【0034】
4)水蒸気移動部32の第1孔32A-1と第2孔32A-2とは隣接して設けられている。そして、少なくとも第1孔32A-1を構成する第1孔壁32A-1-aの一部と第2孔32A-2を構成する第2孔壁32A-2-aの一部とは、ダクト30のダクト壁34の一部である。
【0035】
以下、上記の構成をより具体的に説明する。本実施例において、ダクト30は、装置本体2内において、定着装置(定着部)16よりも上方であって、用紙搬送パス17の右側に隣設され、定着装置16の長手に沿って延在している。水蒸気移動部32は鉛直方向に垂直な平面において定着装置16が投影される範囲内に含まれる位置にある。
【0036】
少なくとも、水蒸気移動部32の鉛直方向下方には、貯水部(貯水部材、貯水形状部)40が配置されている。貯水部40は、水蒸気移動部32の結露水捕集孔32Aから結露水が垂れた場合にも、それが用紙搬送経路上に流れ落ち、画像不良等とならないように垂れた結露水を受けて貯留する機能部であり、例えば皿形容器など凹形状部である。スポンジなどの吸水部材等でも同様の効果が得られるため、凹形状部に限られたものではない。
【0037】
貯水部40は水蒸気移動部32の結露水捕集孔32Aで捕集した結露水が垂れ落ちた先に結露水を貯水することができる吸水部材あるいは容器形状部を有する構成であればよい。或いは、水蒸気移動部32の結露水捕集孔32Aで捕集した結露水が垂れ落ちた先に用紙Pの搬送経路が存在しない装置構成であればよい。
【0038】
本実施例1において、貯水部40は定着装置16の装置フレーム25の上面に配設した皿形容器部である。貯水部40は、水蒸気移動部32の鉛直方向下方と定着装置16の装置フレーム25の上面との間に配置することもできる。本実施例では、貯水部40を設けた実施例で説明しているが、結露水の垂れ落ちる量が少なく用紙搬送経路に垂れ落ちない構成であれ、貯水部40を設けなくてもよい。
【0039】
図2は本実施例における、定着装置(定着部)16と、水蒸気移動部32を具備させたダクト30の外観斜視図である。ダクト30は用紙搬送パス17の排出口20側とは反対側において用紙搬送パス17に隣設されて定着装置16の長手に沿って延在しており、用紙搬送パス17に対向する側が強制対流bの出口部33として開放されている。
【0040】
本実施例において、ファン31はダクト30の長手方向の一端側(手前側)の端部に接続されており、装置本体2の正面板2aに設けられた隙間(窓穴)2bから外気(室温空気)を吸気してダクト30の内部に強制対流bとして流す。本実施例の水蒸気移動部32は、定着装置の長手方向において、ファンの設置場所を上流とした場合に、下流側に配置されている。
【0041】
外気は定着装置16から流出して定着装置16の上方に対流する水蒸気aよりも温度が低い。従って、ダクト30のダクト壁はダクト内部を流れる強制対流bである外気により定着装置16の上方に対流する水蒸気aの温度よりも低い温度に冷却される。一般的に、強制対流(外気)bと水蒸気aとの温度差としては60℃程度、強制対流bで冷却されるダクト壁と水蒸気aとの温度差としては50℃程度である。
【0042】
ファン31は制御部100により駆動制御され、少なくとも、画像形成装置1の画像形成動作中は駆動状態にされる。ファン31によってダクト30の内部に流された強制対流bは用紙搬送パス17に面して開口しているダクト30の開口部33から用紙搬送パス17に向って流れる。これにより、用紙搬送パス17のカール抑制ローラ18等の構成部材はダクト30の開口部33から出る強制対流bで冷却される。そして、ダクト30の開口部33から用紙搬送パス17に向って流れる強制対流bは主として排出口20から装置本体2の外側へ抜け出る。
【0043】
また、定着装置16から送り出された用紙が用紙搬送パス17で搬送されているときは熱を帯びている用紙Pは用紙搬送パス17を搬送される過程でダクト30の開口部33から出る強制対流bにて冷却される。そして、強制対流bは用紙Pの裏面に沿って排出口20の側に流れて主として排出口20から装置本体2の外側へ抜け出る。
【0044】
水蒸気移動部32は水蒸気が移動する結露水捕集孔32Aとしての少なくとも第1孔と第2孔とを有する。第1孔と第2孔とは、第1孔壁を介して隣接して設けられ、かつ第1孔壁の一部と第2孔壁の一部とがダクト壁の一部である。本実施例1において水蒸気移動部32は、ダクト30の背面側(開口部33の側とは反対側)の外壁面に縦向き格子型孔のカニカム形態で配設されている。即ち、結露水捕集孔32Aを複数、隣接するように形成してある。
【0045】
ダクト30の背面側において、強制対流bが流れるダクト30の壁面において、強制対流bが接する壁面を内壁、その壁面で隔てられた逆側を外壁としたときに、水蒸気移動部32の結露水捕集孔32Aはダクト30の外壁面を一部として構成されている。そのため、水蒸気移動部32における結露水捕集孔32Aの壁面は強制対流bにより冷却されるダクト30の壁面とほぼ同温度に冷却された状態になる。本実施例においては、水蒸気移動部32はダクト30の背面側において、ダクト長手のほぼ奥側半部に配設しているが、ダクト長手のほぼ全長部に渡って配設することもできる。
【0046】
上記の構成において、定着装置16に用紙Pが導入されることにより定着装置16の筐体25の内部に生じた水蒸気は本実施例においては主として上向きの用紙出口25bから筐体外に流出して自然対流にて定着装置16の鉛直方向上方(直上)へ流れる。
【0047】
本実施例においては、定着装置16の上方には用紙出口25bから出た用紙を排出口20に搬送する用紙搬送パス17が配設されており、用紙搬送パス17のカール抑制ローラ対18が用紙出口25bに近い位置に存在している。そのため、用紙出口25bから鉛直方向上方へ流れた水蒸気aはこのカール抑制ローラ対18が障害物となることで排出口20への経路の流れが実質遮断され、大部分がダクト30の下面と筐体25の上面との間に水平方向に進入して対流する。
【0048】
用紙が用紙搬送パス17で搬送されているとき、定着装置16の用紙出口25bから出た水蒸気の自然対流は用紙の表裏面において排紙経路に沿って排気されにくく、ダクト30の下面と筐体25の上面との間に対流する。また、用紙の表面の対流であっても、上部の排気経路はカール抑制ローラ対18によって実質塞がれているため、用紙を迂回して裏面の対流と合流する。また、強制対流bがカール抑制ローラ対18に吹き付けられていることで、カール抑制ローラ対18の近傍の圧力が高まるため、用紙出口25bから出て鉛直方向上方へ対流した水蒸気はカール抑制ローラ対18の方向には流れにくくなる。
【0049】
上記のことから、定着装置16の用紙出口25bから上方に出た水蒸気のうち、割合でいうと、ダクト30の下面と筐体25の上面との間の経路への対流量は8~9割程度、排出口20への経路の対流量は2~1割程度となる。
【0050】
自然対流は基本的には鉛直方向上方に流れるが、上部に障害物がある場合はそれを迂回しながら上方に流れる。この流れも風路によって流速方向が変動しても自然対流と呼称できる。本実施例においてはカール抑制ローラ対18が用紙搬送パス17の排紙経路をさえぎっている。即ち、排紙経路には障害物があり、用紙出口25bから出た水蒸気の流れはこれを迂回するようにダクト30の下面と筐体25の上面との間に水平方向に進入して対流する。
【0051】
ダクト30の下面と筐体25の上面との間に水平方向に進入して対流した水蒸気aは水蒸気移動部32における結露水捕集孔32Aの下向きの開口部に導かれ、結露水捕集孔32Aの内部を下から上に流れる。そして、結露水捕集孔32Aの内部を流れる水蒸気aが強制対流bにより冷却されているダクト30のダクト壁とほぼ同温度に冷却されている水蒸気移動部32における結露水捕集孔32Aの壁面との温度差(50℃程度)によって凝集して結露する。即ち、結露水捕集孔32Aによって水蒸気aを含む空気の除湿が行われる。
【0052】
そのため、結露水捕集孔32Aの上向きの開口部からは除湿された空気が抜け出てダクト30の上面と装置本体2の天井板の内面との間を通ってダクト30の開口部33側に回り込んで対流する。そして、開口部33から用紙搬送パス17に向って送り出される強制対流bに乗って強制対流bと共に排出口20から装置本体2の外部に排出される。この除湿された空気の流れは、自然対流と、ダクト30の開口部33から用紙搬送パス17に向って送り出される強制対流bの流れによる負圧による。
【0053】
水蒸気aを含む空気の除湿は、水蒸気移動部32における結露水捕集孔32Aに限られず、強制対流bにより冷却されているダクト30の下面、背面、上面のダクト壁においてもダクト壁と水蒸気aとの温度差による水蒸気の凝集結露によってもなされる。特に、水蒸気移動部32における結露水捕集孔32Aを水蒸気aが移動することで効率的な結露と結露捕集がなされて除湿が行われる。
【0054】
なお、
図1の(b)において、水蒸気移動部32の結露水捕集孔32Aに流れる水蒸気aの上方への流れに対して、定着装置16とその上のダクト30との間で水蒸気移動部32に非対応の部分の水蒸気は流れが水蒸気移動部32に向う方向に描いてある。これは抜け道排気経路が限られているからである。上記の水蒸気移動部32が非対応の部分においてはダクト30の背面側を流れる水蒸気もある。しかし、水蒸気の一部は図示したように流れるため、分かり易さの観点からダクト背面側を上方に流れる水蒸気の流れは図には省略してある。
【0055】
前記のように、結露水捕集孔32Aから結露水が垂れた場合にも、それが用紙搬送経路上に流れ落ち、画像不良等とならないように、少なくとも水蒸気移動部32の下方には貯水部40が用意されている。
【0056】
次に水蒸気が通過する結露水捕集孔32Aの1個当たりの平均開口面積(結露水捕集孔32Aの横断面の1個当たりの開口面積)について説明する。
図3にシミュレーションによって導出した、本実施例1に係るダクト30の結露水捕集孔1つ当たりの平均開口面積と、結露水捕集孔32Aの捕集水分量を示す。
図3によれば、結露水捕集孔1つ当たりの開口面積と孔壁面で捕集できる水分量の関係にはピークが存在する。結露水捕集孔32Aにおいて
図3における捕集水分量が0よりも大きければ結露が発生する。
【0057】
結露水捕集孔32Aの開口面積は水蒸気aを流入させる観点からは大きい方が良く、孔の数は結露水を捕集する面積を大きくするために多い方が良い。しかし、画像形成装置1において、結露水捕集孔32Aを設置できる領域は有限であるため、孔の開口面積を大きくしていくと、孔の設置数が減少し、結露水を捕集する面積が小さくなり捕集水分量も減少する。一方で、結露水捕集面積を増やそうとすると、孔の設置数を増やすと、孔の開口面積が小さくなり、水蒸気が孔に流入しにくくなるため、捕集水分量が減少してしまう。
【0058】
なお、
図3に関して、縦軸の結露水捕集孔壁面の捕集水分量[mg/s]に関与するファクターは横軸の孔1個当たりの平均開口面積の他にも、水蒸気の濃度、水蒸気と壁面との温度差、水蒸気の流速、孔の長さ等もある。
図3は他のファクターは全て一定とし、平均開口面積のみを変動させて得られた捕集水分量[mg/s]である。ただし、流速に関しては孔開口面積を変動させているため多少変動がある。
【0059】
以上から、1つの結露水捕集孔32Aの平均開口面積は、
図3で捕集水分量が5mg/s以上に対応した6mm
2以上120mm
2以下が、結露水の捕集効率が高い状態であると言える。就中、捕集水分量が10mg/s以上に対応した12mm
2以上55mm
2以下がより好ましい範囲である。
【0060】
なお、結露水捕集孔32Aの形状は実施例の格子に限らず、円状、三角形状、その他の多角形状等でも同様の捕集効果が得られる。
【0061】
以上説明したように、本実施例の画像形成装置1においては、定着装置16から上方に対流した水蒸気の大部分は強制対流aによって冷やされたダクト30と水蒸気移動部32における結露水捕集孔32Aにより結露水として除湿(脱水)される。つまり、定着装置16から上方に対流した水蒸気の結露箇所が上記のダクト30と水蒸気移動部32に限定され、この箇所において結露が促進されることで、結露を生じさせたくない用紙搬送経路である用紙搬送パス17に流入する水蒸気が抑えられる。
【0062】
そのため、水蒸気を装置本体外に排気するための排気口は実施例のように用紙Pの排出口20に兼用させることで足り、専用の排気ルーバを設置する必要性が無くなる。そして、排気のためのファン31としては、排気量が少なく、そのために駆動音も小さいファンを用いることが可能であり、画像形成装置の静音化が可能となる。
【0063】
かくして、定着装置16から発生する水蒸気の専用排気ルーバを設置せずとも、画像形成装置内を除湿して用紙紙搬送経路上での結露を抑制することができ、結露による水滴が用紙に付着することで画像や用紙搬送に影響がでることが抑制される。また、画像形成装置1の装置本体2の外部に排出される水蒸気の量は少ないものとなるから、煙誤認問題も解消される。
【0064】
《実施例2》
図4は本実施例2における、定着装置16と、その上方に配置されるダクト30の外観斜視模式図、
図4Aは
図4のダクト30の縦断平面模式図である。このダクト30は
図1の画像形成装置1において、実施例1のダクト30と同様に配置されるため、重複する説明は省略し、ここでは本実施例2の特徴となる構成について説明する。
【0065】
本実施例2においては、結露水捕集孔32Aを有する水蒸気移動部32はダクト30の強制対流bが流れる風路内に配置されている。本実施例では、結露水捕集孔32Aを有する水蒸気移動部32は、ダクト30の内部(風路内)に複数列配置させた形態で具備させている。各列の水蒸気移動部32はダクト30の縦断平面においてダクト長手方向に長く、ダクト短手方向に間隔をあけて配設されている。本実施例では3列配設されている。各列の水蒸気移動部32は長手にそって複数個の結露水捕集孔32Aが連設されている。各結露水捕集孔32Aはダクト32の底面から上面に貫通している。
【0066】
ファン31の駆動によりダクト30内に流される強制対流bはダクト30内の各列の水蒸気移動部32の間およびダクト30の背面板と水蒸気移動部32の間を通ってダクト30内を流れ、開口部33から出る。各列の水蒸気移動部32の結露水捕集孔32Aの壁面はダクト30のダクト壁34で構成されている。
【0067】
結露水捕集孔32Aを構成するダクト壁面の割合は実施例1の結露水捕集孔32Aよりも大きい。結露水捕集孔32Aを構成するダクト壁面の内壁側は強制対流aで冷却されているため、結露水捕集孔32Aの平均壁面温度が実施例1の結露水捕集孔32Aの平均壁面温度よりも低くなり、結露が促進され、結露水の捕集も促進される。結露水捕集孔32Aの形状は格子に限らず、円状、三角形状等でも同様の捕集効果が得られる。
【0068】
結露水捕集孔32Aを有する水蒸気移動部32は実施例1のようにダクト30の外側と実施例2のようにダクト30の内側(風路内)の両方に配設した構成にすることもできる。
【0069】
《比較例》
図5は比較例の画像形成装置1Aの構成模式図である。実施例1(
図1)の画像形成装置1と共通する構成部材・部分には同一の符号を付して再度の説明を省略する。この画像形成装置1Aはファン設置と外装のルーバ設置により水蒸気を排気し、用紙搬送経路を除湿する構成である。
【0070】
即ち、定着装置16で発生した水蒸気aを上記実施例1や2のようにダクト30と結露水捕集孔32Aを有する水蒸気移動部32により結露水として除湿(脱水)することなしに装置外へ排気するために、排気ファン901や排気ルーバ923を配設している。この場合に使用する排気ファン901には排気量の大きいものが求められる。
【0071】
そのため、比較例の画像形成装置1Aは、ファン901の駆動音、風がルーバ923を通過した時に発生する風切り音などの騒音がルーバ923から漏れてしまい、これを抑制することが難しい。比較例の画像形成装置1Aにおいてルーバを閉じる前後の騒音レベルの差は約0.04[B]であった。
【0072】
《その他の事項》
(1)定着部としての定着装置16は実施例のベルト加熱方式・加圧ローラ駆動式の定着装置に限られない。熱ローラタイプ、熱チャンバータイプ、熱板タイプ、赤外線照射タイプなど従来公知の各種加熱方式の定着装置を採択可能である。
【0073】
(2)定着装置には、記録材に一旦定着された或いは仮定着された画像(定着済み画像或いはあるいk半定着画像)の光沢度などを改質する画像改質装置も含まれる(この場合も定着装置と呼ぶ)。
【0074】
(3)プリンタを例に説明した画像形成装置1は、モノクロの画像を形成する画像形成装置に限られず、カラーの画像を形成する画像形成装置でもよい。また画像形成装置は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、複写機、FAX、及び、これらの機能を複数備えた複合機等、種々の用途で実施できる。
【符号の説明】
【0075】
1・・画像形成装置、16・・定着装置(水蒸気発生部)、30・・ダクト、31・・ファン、32・・水蒸気移動部、32A・・結露水捕集孔(水蒸気が移動する第1孔と第2孔)、a・・水蒸気、b・・強制対流