(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】タイヤ状態検出システム、タイヤ状態検出方法及びタイヤ状態検出プログラム
(51)【国際特許分類】
G01P 15/00 20060101AFI20221205BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
G01P15/00 A
B60C19/00 H
(21)【出願番号】P 2018159287
(22)【出願日】2018-08-28
【審査請求日】2021-07-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】本田 恭平
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-72396(JP,A)
【文献】特開2012-245888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0179113(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0082663(US,A1)
【文献】特表2002-511813(JP,A)
【文献】特開平9-21101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P15/00-21/02
B60C19/00-23/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのトレッドの内側面に取り付けられる加速度センサを用いたタイヤ状態検出システムであって、
前記加速度センサによって検出される加速度データを所定取得間隔毎に取得する加速度データ取得部と、
前記加速度データ取得部によって順次取得される3つ以上の前記加速度データのうち、少なくとも最大の加速度を示す最大加速度データ、及び最小の加速度を示す最小加速度データを除外した中間の加速度を示す中間加速度データを抽出する加速度データ抽出部と、
前記加速度データ抽出部によって抽出された前記中間加速度データを用いた演算を実行する演算部と
を備え
、
前記加速度データ取得部は、前記タイヤの径サイズに応じて、前記所定取得間隔を調整するタイヤ状態検出システム。
【請求項2】
前記加速度データ抽出部は、前記加速度データ取得部によって順次取得される連続した3つ以上の前記加速度データのうち、中央値に該当する中央値加速度データを抽出し、
前記演算部は、前記中央値加速度データを用いた演算を実行する請求項1に記載のタイヤ状態検出システム。
【請求項3】
前記所定取得間隔は、前記タイヤが一回転する時間よりも短い請求項1または2に記載のタイヤ状態検出システム。
【請求項4】
前記所定取得間隔は、前記加速度センサと対応するトレッドの部分の接地時間よりも長い請求項1乃至3の何れか一項に記載のタイヤ状態検出システム。
【請求項5】
前記演算部は、前記タイヤが装着された車両の速度または走行距離を演算する請求項1乃至
4の何れか一項に記載のタイヤ状態検出システム。
【請求項6】
タイヤのトレッドの内側面に取り付けられる加速度センサを用いたタイヤ状態検出方法であって、
前記加速度センサによって検出される加速度データを所定取得間隔毎に取得するステップと、
順次取得される3つ以上の前記加速度データのうち、少なくとも最大の加速度を示す最大加速度データ、及び最小の加速度を示す最小加速度データを除外した中間の加速度を示す中間加速度データを抽出するステップと、
抽出された前記中間加速度データを用いた演算を実行するステップと
を含
み、
前記加速度データを取得するステップでは、前記タイヤの径サイズに応じて、前記所定取得間隔を調整するタイヤ状態検出方法。
【請求項7】
タイヤのトレッドの内側面に取り付けられる加速度センサによって検出される加速度データを用いたタイヤ状態検出プログラムであって、
前記加速度データを所定取得間隔毎に取得する処理と、
順次取得される3つ以上の前記加速度データのうち、少なくとも最大の加速度を示す最大加速度データ、及び最小の加速度を示す最小加速度データを除外した中間の加速度を示す中間加速度データを抽出する処理と、
抽出された前記中間加速度データを用いた演算を実行する処理と
をコンピュータに実行させ
、
前記加速度データを取得するステップでは、前記タイヤの径サイズに応じて、前記所定取得間隔を調整するタイヤ状態検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤのトレッドの内側面に取り付けられる加速度センサを用いたタイヤ状態検出システム、タイヤ状態検出方法及びタイヤ状態検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リムホイールにタイヤが組み付けられたタイヤ・ホイール組立体の内部に加速度センサを取り付け、当該加速度センサが検出した加速度データに基づいて、タイヤ・ホイール組立体が装着された車両の速度及び走行距離を算出する装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、加速度センサを含むセンサユニットが、エアバルブと一体としてリムホイールに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今では、路面状態の検出にも加速度センサが用いられるが、このような場合、タイヤのトレッドの内側面に加速度センサを取り付けることが好ましい。
【0006】
トレッドの内側面に加速度センサに取り付けた場合、加速度センサの取り付け位置と対応するトレッドの部分が接地すると、当該トレッドの部分が変形するため、検出されるタイヤ径方向の加速度(遠心加速度)が瞬間的に大きく落ち込んでしまう。
【0007】
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、タイヤのトレッドの内側面に加速度センサに取り付けた場合でも、加速度センサの取り付け位置と対応するトレッドの部分の接地による影響を受けずにタイヤ状態を検出し得るタイヤ状態検出システム、タイヤ状態検出方法及びタイヤ状態検出プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、タイヤ(空気入りタイヤ10)のトレッド(トレッド20)の内側面に取り付けられる加速度センサ(加速度センサ111)を含むタイヤ状態検出システム(タイヤ状態検出システム100)であって、前記加速度センサによって検出される加速度データを所定取得間隔(取得間隔Tac)毎に取得する加速度データ取得部(加速度データ取得部123)と、前記加速度データ取得部によって順次取得される3つ以上の前記加速度データのうち、少なくとも最大の加速度を示す最大加速度データ、及び最小の加速度を示す最小加速度データを除外した中間の加速度を示す中間加速度データ(加速度データD3)を抽出する加速度データ抽出部(加速度データ抽出部125)と、前記加速度データ抽出部によって抽出された前記中間加速度データを用いた演算を実行する演算部(演算部127)とを備える。
【0009】
本発明の一態様は、タイヤのトレッドの内側面に取り付けられる加速度センサを用いたタイヤ状態検出方法であって、前記加速度センサによって検出される加速度データを所定取得間隔毎に取得するステップと、順次取得される3つ以上の前記加速度データのうち、少なくとも最大の加速度を示す最大加速度データ、及び最小の加速度を示す最小加速度データを除外した中間の加速度を示す中間加速度データを抽出するステップと、抽出された前記中間加速度データを用いた演算を実行するステップとを含む。
【0010】
本発明の一態様は、タイヤのトレッドの内側面に取り付けられる加速度センサによって検出される加速度データを用いたタイヤ状態検出プログラムであって、前記加速度データを所定取得間隔毎に取得する処理と、順次取得される3つ以上の前記加速度データのうち、少なくとも最大の加速度を示す最大加速度データ、及び最小の加速度を示す最小加速度データを除外した中間の加速度を示す中間加速度データを抽出する処理と、抽出された前記中間加速度データを用いた演算を実行する処理とをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
上述したタイヤ状態検出システム、タイヤ状態検出方法及びタイヤ状態検出プログラムによれば、タイヤのトレッドの内側面に加速度センサに取り付けた場合でも、加速度センサの取り付け位置と対応するトレッドの部分の接地による影響を受けずにタイヤ状態を検出し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、タイヤ状態検出システム100の全体概略構成図である。
【
図2】
図2は、タイヤ状態検出システム100の機能ブロック構成図である。
【
図3】
図3は、車両の速度または走行距離の演算に用いられる変数と空気入りタイヤ10の側面とを模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、タイヤ状態検出システム100による車両速度(Vv)及び走行距離(L)の演算動作フローを示す図である。
【
図5】
図5は、センサユニット110によって取得された加速度データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0014】
(1)タイヤ状態検出システムの全体概略構成
図1は、本実施形態に係るタイヤ状態検出システム100の全体概略構成図である。
図1に示すように、タイヤ状態検出システム100は、センサユニット110及び処理装置120によって構成される。
【0015】
タイヤ状態検出システム100は、空気入りタイヤ10(タイヤ)のトレッド20の内側面に取り付けられる加速度センサを含む。
【0016】
具体的には、センサユニット110は、後述するように、タイヤ径方向など、所定方向の加速度を検出する各種センサ及びバッテリなどによって構成される。
【0017】
センサユニット110は、空気入りタイヤ10のトレッド20の内側面に取り付けられる。なお、
図1では、リムホイールに組み付けられた空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向に沿った断面形状が示されている。また、センサユニット110は、加速度以外に、温度や圧力(タイヤ内圧)を検出するセンサを含んでもよい。
【0018】
センサユニット110は、タイヤ周方向において一つ設けられていればよい。なお、車両が左右に旋回する際にトレッド20の接地面が変形することを考慮すると、センサユニット110の位置は、トレッド20のタイヤ幅方向の中央に設けることが好ましい。
【0019】
処理装置120は、センサユニット110との無線による通信を実現し、センサユニット110が検出したデータを取得する。処理装置120は、プロセッサ、メモリ、及びアンテナなどを含む通信モジュールなどのハードウェアによって実現される。
【0020】
なお、処理装置120は、通常、空気入りタイヤ10が装着される車両に設けられる。また、この場合、処理装置120は、車両に搭載されている電子制御ユニット(ECU)によって実現されてもよい。或いは、処理装置120は、車両ではなく、無線通信ネットワークを介して接続されるサーバコンピュータ上において実現されてもよい。
【0021】
(2)タイヤ状態検出システムの機能ブロック構成
図2は、タイヤ状態検出システム100の機能ブロック構成図である。
図2に示すように、センサユニット110は、加速度センサ111及び通信部113を備える。また、処理装置120は、通信部121、加速度データ取得部123、加速度データ抽出部125及び演算部127を備える。
【0022】
加速度センサ111は、空気入りタイヤ10の所定方向の加速度を検出する。本実施形態では、加速度センサ111は、空気入りタイヤ10のタイヤ径方向における加速度、具体的には、遠心加速度(遠心力と言い換えてもよい)を検出する。
【0023】
加速度センサ111としては、3軸加速度センサなど、汎用的な加速度センサを用い得る。
【0024】
また、本実施形態では、加速度センサ111は、必ずしも常時起動していなくてもよく、測定間隔T(
図5参照、例えば、4秒毎)に起動し、所定数の加速度を検出してもよい。
【0025】
通信部113及び通信部121は、センサユニット110と処理装置120との無線通信を実行する。通信部113による無線通信方式は、特に限定されない。例えば、通信方式としては、TPMS(tire pressure monitoring system)などに用いられている周波数(UHFなど)を利用する方式や、近距離無線通信の規格に沿った方式が挙げられる。
【0026】
また、通信部121は、空気入りタイヤ10が装着されている車両のECUなどの制御装置、或いは無線通信ネットワークを介した当該車両外との通信を実行できる。
【0027】
加速度データ取得部123は、加速度センサ111によって検出される加速度データを所得する。具体的には、加速度データ取得部123は、当該加速度データを所定取得間隔毎に取得する。
【0028】
図5は、センサユニット110によって取得された加速度データの一例を示す。具体的には、
図5は、加速度センサ111によって取得されたタイヤ径方向における加速度データの一例を示す。
【0029】
図5において加速度が大きく落ち込んでいる区間は、センサユニット110(加速度センサ111)の取り付け位置と対応するトレッド20の部分が路面R(
図3参照)に接地している接地時間Tcと概ね一致する。回転周期Trは、空気入りタイヤ10が一回転する時間を示している。
【0030】
加速度データ取得部123は、取得間隔Tac(所定取得間隔)毎に加速度データを取得し、加速度センサ111によって検出されたタイヤ径方向の加速度の値を取得する。
【0031】
取得間隔Tacは、任意だが、加速度センサ111の消費電力、及び演算部127によって演算される車両速度・走行距離の精度を考慮すると、以下のように設定することが好ましい。
【0032】
・取得間隔Tac<回転周期Tr ...(式1)
・接地時間Tc<取得間隔Tac ...(式2)
(式1)に示されるように、取得間隔Tacは、回転周期Trよりも短いことが好ましい。つまり、空気入りタイヤ10(センサユニット110)が装着される車両の速度に応じて、取得間隔Tacは変化してもよい。
【0033】
また、取得間隔Tacは、接地時間Tcよりも長いことが好ましい。(式1)及び(式2)を満たすことによって、空気入りタイヤ10が一回転する中で必ず加速度データを取得しつつ、センサユニット110の取り付け位置と対応するトレッド20の部分が接地している状態で取得される加速度データを1回に抑えることができる。
【0034】
なお、必ずしも(式1)及び(式2)の両方を満たす必要はなく、何れか一方のみを満たすようにしてもよい。
【0035】
さらに、加速度データ取得部123は、取得間隔Tac毎(例えば、0.1秒)に連続して取得される3つ以上の加速度データの取得を、測定間隔T毎(
図5参照、例えば、4秒毎)に繰り返してもよい。つまり、加速度データ取得部123は、3つ以上の所定数の加速度データの取得を測定間隔T毎に繰り返してもよい。
【0036】
また、加速度データ取得部123は、空気入りタイヤ10の径サイズに応じて、取得間隔Tacを調整することができる。具体的には、加速度データ取得部123は、空気入りタイヤ10の径サイズが大きくなるに連れて、取得間隔Tacを長くし、空気入りタイヤ10の径サイズが小さくなるに連れて、取得間隔Tacを短くする。これにより、空気入りタイヤ10の径サイズ(タイヤサイズ)に応じた適切なタイミングにおいて加速度データを取得し得る。
【0037】
加速度データ抽出部125は、加速度データ取得部123によって取得される複数の加速度データの中から、演算部127での演算用として適切な加速度データを抽出する。
【0038】
具体的には、加速度データ抽出部125は、加速度データ取得部123によって順次取得される連続した3つ以上の加速度データのうち、中間加速度データを抽出する。
【0039】
中間加速度データとは、少なくとも最大の加速度を示す最大加速度データ、及び最小の加速度を示す最小加速度データを除外した中間の加速度を示す、一つまたは複数の加速度データである。
【0040】
加速度データ抽出部125は、このように加速度データを抽出することによって、離散的な加速度データの集合を生成する。
【0041】
より具体的には、加速度データ抽出部125は、加速度データ取得部123によって順次取得される連続した3つ以上の加速度データのうち、中央値(メディアン)に該当する中央値加速度データを抽出することが好ましい。
【0042】
複数の加速度データの平均値ではなく、加速度データの中央値を用いることによって、トレッド20の接地による加速度の瞬間的な落ち込みによる影響を排除できる。
【0043】
演算部127は、加速度データ抽出部125によって抽出された中間加速度データを用いた演算を実行する。具体的には、演算部127は、中央値加速度データを用いた演算を実行する。
【0044】
本実施形態では、演算部127は、空気入りタイヤ10が装着された車両の速度または走行距離を演算する。
【0045】
ここで、
図3は、車両の速度または走行距離の演算に用いられる変数と空気入りタイヤ10の側面とを模式的に示す図である。
【0046】
図3に示すように、空気入りタイヤ10のタイヤ外側面10aは、路面Rに接した状態で転動する。また、空気入りタイヤ10のタイヤ内側面10bには、センサユニット110が取り付けられている。上述したように、センサユニット110内には、加速度センサ111(
図2参照)が設けられている。
【0047】
演算部127は、加速度データ抽出部125によって抽出された加速度データに基づく加速度(a)を用いて、タイヤ内側面10bの回転速度(Vi)、つまり、加速度センサ111の回転速度を演算する。
【0048】
具体的には、演算部127は、(式3)を用いて回転速度(Vi)を演算し、さらに、角速度(ω)を演算する。riは、空気入りタイヤ10の中心からタイヤ内側面10bまでの半径である。
【0049】
【0050】
また、演算部127は、(式4)を用いて、タイヤ外側面10aの回転速度(Vo)及び車両速度(Vv)を演算する。
【0051】
【0052】
ここで、車両の走行距離(L)は、一般的には、(式5)を用いて演算することができるが、上述したように、トレッド20の接地による加速度の瞬間的な落ち込みによる影響を受けるとともに、加速度センサ111を常時起動させておく必要があるため、消費電力も高くなる。
【0053】
【0054】
そこで、本実施形態では、演算部127は、上述したように、取得間隔Tac(
図5参照)毎に取得された少なくとも連続した3つ以上の加速度データによって示される加速度の中央値(a
n)を用いて、車両速度(Vv)及び走行距離(L)を演算する。
【0055】
具体的には、演算部127は、(式6)を用いて、車両速度(Vv)及び走行距離(L)を演算する。
【0056】
【0057】
演算部127は、測定間隔T毎に取得される複数の加速度の中央値(an)を用いて、車両速度(Vv)及び走行距離(L)を演算する。
【0058】
演算部127は、測定間隔T(例えば、上述したように4秒間)の間は、同じ速度で走行したと仮定することによって、走行距離(L)を算出する。
【0059】
(3)タイヤ状態検出システムの動作
次に、タイヤ状態検出システム100の動作について説明する。具体的には、タイヤ状態検出システム100による車両速度(Vv)及び走行距離(L)の演算動作について説明する。
【0060】
図4は、タイヤ状態検出システム100による車両速度(Vv)及び走行距離(L)の演算動作フローを示す。
【0061】
図4に示すように、タイヤ状態検出システム100(具体的には、処理装置120、以下同)は、所定の取得間隔毎に加速度データを取得する(S10)。
【0062】
具体的には、
図5に示すように、タイヤ状態検出システム100は、取得間隔Tac毎に加速度データを複数取得する。より具体的には、タイヤ状態検出システム100は、連続した3つ以上の加速度データを取得する。
【0063】
図5に示す例では、加速度データD1、加速度データD2及び加速度データD3が取得される。上述したように、加速度データD1、加速度データD2及び加速度データD3は、タイヤ径方向における加速度(遠心加速度)を示す。
【0064】
タイヤ状態検出システム100は、取得した複数の加速度データの中から、加速度の大きさが中間となる中間加速度データを抽出する(S20)。
【0065】
具体的には、タイヤ状態検出システム100は、加速度データD1、加速度データD2及び加速度データD3のうち、中央値に相当する加速度データD3を抽出する。
【0066】
つまり、タイヤ状態検出システム100は、加速度データD1、加速度データD2及び加速度データD3のうち、最大の加速度を示す加速度データD2(最大加速度データ)、及び最小の加速度を示す加速度データD1(最小加速度データ)を除外し、加速度データD3(中間加速度データ)を抽出する。
【0067】
タイヤ状態検出システム100は、抽出した加速度データを用いて空気入りタイヤ10の回転速度(Vo)を演算する(S30)。
【0068】
具体的には、タイヤ状態検出システム100は、加速度データD3(中央値)を上述した(式4)に適用し、回転速度(Vo)を演算する。
【0069】
タイヤ状態検出システム100は、演算した回転速度(Vo)を用いて空気入りタイヤ10が装着されている車両の速度(車両速度(Vv))及び走行距離(L)を演算する(S40)。
【0070】
具体的には、タイヤ状態検出システム100は、演算した回転速度(Vo)を上述した(式6)に適用し、車両速度(Vv)及び走行距離(L)を算出する。
【0071】
(4)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。具体的には、タイヤ状態検出システム100によれば、順次取得される3つ以上の加速度データのうち、最大加速度データ及び最小加速度データを除外した中間加速度データが抽出される。さらに、抽出された中間加速度データを用いて、車両速度(Vv)または走行距離(L)が演算される。
【0072】
このため、加速度センサ111(センサユニット110)がトレッド20の内側面に取り付けられていることによって、検出されるタイヤ径方向の加速度(遠心加速度)が瞬間的に大きく落ち込む場合でも、空気入りタイヤ10の回転速度(Vo)など、加速度センサ111の取り付け位置と対応するトレッド20の部分の接地による影響を受けずにタイヤ状態を検出できる。
【0073】
本実施形態では、順次取得される連続した3つ以上の加速度データのうち、中央値(メディアン)に該当する中央値加速度データが抽出される。
【0074】
このため、トレッド20の接地による加速度の瞬間的な落ち込みによる影響を排除しつつ、回転速度(Vo)を高い精度で推定し得る。これにより、車両速度(Vv)及び走行距離(L)をさらに正確に算出できる。
【0075】
本実施形態では、取得間隔Tac(所定取得間隔)は、空気入りタイヤ10が一回転する時間(回転周期Tr)よりも短くすることができる。
【0076】
このため、空気入りタイヤ10が一回転する中で必ず加速度データが取得されるため、回転速度(Vo)をさらに高い精度で推定し得る。これにより、車両速度(Vv)及び走行距離(L)をさらに正確に算出できる。
【0077】
本実施形態では、取得間隔Tacは、加速度センサ111(センサユニット110)と対応するトレッド20の部分の接地時間Tcよりも長くすることができる。
【0078】
このため、空気入りタイヤ10が一回転する中で、センサユニット110の取り付け位置と対応するトレッド20の部分が接地している状態で取得される加速度データを多くとも1回に抑えることができる。これにより当該加速度データが中央値(中間加速度データ)として抽出される可能性を排除し得る。これにより、車両速度(Vv)及び走行距離(L)をさらに正確に算出できる。
【0079】
本実施形態では、空気入りタイヤ10の径サイズに応じて、取得間隔Tacを調整することができる。
【0080】
このため、空気入りタイヤ10の径サイズ(タイヤサイズ)に応じた適切なタイミングにおいて加速度データを取得し得る。これにより、結果的に車両速度(Vv)及び走行距離(L)をさらに正確に算出できる。
【0081】
本実施形態では、加速度センサ111は、必ずしも常時起動していなくてもよく、測定間隔T(
図5参照)に起動し、所定数の加速度を検出してもよい。
【0082】
このため、トレッド20の接地による加速度の瞬間的な落ち込みによる影響がある場合において、センサユニット110の消費電力を抑制、つまり、バッテリの消耗を抑制しつつ、車両速度(Vv)及び走行距離(L)の精度を維持し得る。
【0083】
(5)その他の実施形態
以上、実施例に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0084】
例えば、上述した実施形態では、3つ以上の加速度データのうち、中央値が用いられていたが、タイヤ状態検出システム100は、さらに多くの加速度データを取得した場合、必ずしも中央値を用いなくても構わない。具体的には、タイヤ状態検出システム100は、最大加速度データ及び最小加速度データを除外した中間加速度データを用いればよい。
【0085】
さらに、3つ以上の加速度データは、必ずしも順次取得される連続したものでなくても構わない。つまり、3つ以上の加速度データは、上述した(式1)及び(式2)を満たしていれば、必ずしも連続して取得されたものでなくても構わない。
【0086】
上述した実施形態では、車両速度(Vv)及び走行距離(L)が演算されていたが、何れか一方のみが演算されてもよい。また、回転速度(Vo)を用いた演算であれば、車両速度(Vv)及び走行距離(L)以外、例えば、車両の加速度または減速度などを演算してもよい。
【0087】
上述した実施形態では、加速度センサ111は、タイヤ径方向における加速度を検出していたが、タイヤ周方向における加速度を検出してもよい。この場合、処理装置120は、タイヤ周方向における加速度に基づいて、回転速度(Vo)を演算すればよい。
【0088】
上述した実施形態では、処理装置120において加速度データの抽出と、車両速度(Vv)及び走行距離(L)の演算とが実行されていたが、当該処理は、センサユニット110において実行されてもよいし、ネットワーククラウド上のリソースを用いて分散的に実行されてもよい。
【0089】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0090】
10 空気入りタイヤ
10a タイヤ外側面
10b タイヤ内側面
20 トレッド
100 タイヤ状態検出システム
110 センサユニット
111 加速度センサ
113 通信部
120 処理装置
121 通信部
123 加速度データ取得部
125 加速度データ抽出部
127 演算部