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特許7187222機械式駐車装置及びその制御装置、制御方法、制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】機械式駐車装置及びその制御装置、制御方法、制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
E04H6/18 601A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018165862
(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2020037822
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】天野 信雄
(72)【発明者】
【氏名】福島 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 隼人
(72)【発明者】
【氏名】藤川 博康
(72)【発明者】
【氏名】原 和也
(72)【発明者】
【氏名】花島 陽
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-135042(JP,A)
【文献】特開平03-176570(JP,A)
【文献】特開2002-213096(JP,A)
【文献】特開2017-089165(JP,A)
【文献】特開2018-131864(JP,A)
【文献】特開2018-040131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/18
E04H 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の乗降室が一列に配置され、最前列の前記乗降室に設けられた出入口扉を通じて各前記乗降室への車両の乗り入れが可能とされるとともに、隣接する前記乗降室の間に開閉可能に設けられた区画扉を有する機械式駐車装置の制御装置であって、
前記出入口扉及び少なくとも一つの前記区画扉が開いている状態、かつ、入庫時においては入庫車両がいずれかの前記乗降室内に停車された状態、出庫時においては出庫車両がいずれの前記乗降室にも停車されていない状態で、前記出入口扉を閉める場合に、前記区画扉の閉扉完了タイミングが前記出入口扉の閉扉完了タイミングと同時または前記出入口扉の閉扉完了タイミングよりも遅くなるように前記区画扉の閉扉を制御する扉制御部を備える機械式駐車装置の制御装置。
【請求項2】
非常停止に関する情報が入力された場合に、前記扉制御部は、前記区画扉の開扉制御を行う請求項1に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項3】
前記非常停止に関する情報が入力された場合に、前記乗降室内の照明を点灯させる照明制御部を備える請求項2に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項4】
前記非常停止に関する情報が入力された場合に、場外への退避を誘導する誘導制御部を備える請求項2または3に記載の機械式駐車装置の制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の機械式駐車装置の制御装置を備える機械式駐車装置。
【請求項6】
複数の乗降室が一列に配置され、最前列の前記乗降室に設けられた出入口扉を通じて各前記乗降室への車両の乗入れが可能とされるとともに、隣接する前記乗降室の間に開閉可能に設けられた区画扉を有する機械式駐車装置の制御方法であって、
前記出入口扉及び少なくとも一つの前記区画扉が開いている状態、かつ、入庫時においては入庫車両がいずれかの前記乗降室内に停車された状態、出庫時においては出庫車両がいずれの前記乗降室にも停車されていない状態で、前記出入口扉を閉める場合に、前記区画扉の閉扉完了タイミングが前記出入口扉の閉扉完了タイミングと同時または前記出入口扉の閉扉完了タイミングよりも遅くなるように前記区画扉の閉扉を制御する機械式駐車装置の制御方法。
【請求項7】
複数の乗降室が一列に配置され、最前列の前記乗降室に設けられた出入口扉を通じて各前記乗降室への車両の乗入れが可能とされるとともに、隣接する前記乗降室の間に開閉可能に設けられた区画扉を有する機械式駐車装置に適用される制御プログラムであって、
前記出入口扉及び少なくとも一つの前記区画扉が開いている状態、かつ、入庫時においては入庫車両がいずれかの前記乗降室内に停車された状態、出庫時においては出庫車両がいずれの前記乗降室にも停車されていない状態で、前記出入口扉を閉める場合に、前記区画扉の閉扉完了タイミングが前記出入口扉の閉扉完了タイミングと同時または前記出入口扉の閉扉完了タイミングよりも遅くなるように前記区画扉の閉扉を制御する処理をコンピュータに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車装置及びその制御装置、制御方法、制御プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の機械式駐車装置が前後一列に併設された縦列式駐車装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、前側駐車装置と奥側駐車装置との間に、仕切りのための可動式案内装置を設けた縦列式駐車装置が開示されている。特許文献1には、この可動式案内装置が閉じた状態において、その下方に空隙を設けることとし、管理人がこの空隙を通じて奥側駐車装置に人がいるか否かを視認により確認することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公平4-46030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、機械式駐車装置の安全性向上を目的として、縦列式駐車装置において前側駐車装置(以下、「前側機」という。)及び奥側駐車装置(以下、「奥側機」という。)をそれぞれ1800mm以上の囲いで区画することが新たな認定基準における要求事項として追加された。
【0005】
新たな認定基準を遵守するためには、利用者が奥側機に閉じ込められたときの退避ルートを確保する必要がある。この解決策として、例えば、奥側機側に場外退避用の通路扉を設置することが考えられる。しかしながら、この対策では、建築条件等の理由により、奥側機に場外退出用の通路扉を設置できないおそれがある。
【0006】
また、他の対策として、前側機と奥側機との間に設けられた区画扉の横に退避扉を別途設け、退避扉を通じて奥側機側から前側機側へ退避させる退避ルートが考えられる。しかし、この場合、仮に区画扉が横引き扉であった場合には、間口寸法が大きくなり、建設コストが増大してしまう。また、区画扉を上下式扉とすれば間口寸法の増大は解消できるが、奥側機の上方には車両を格納する格納棚が収容されているため、格納棚との干渉により、区画扉を上下式扉にすることが困難な場合がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡易な方法により、奥側機からの退避ルートを確保することのできる機械式駐車装置及びその制御装置、制御方法、制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一態様は、複数の乗降室が一列に配置され、最前列の前記乗降室に設けられた出入口扉を通じて各前記乗降室への車両の乗り入れが可能とされるとともに、隣接する前記乗降室の間に開閉可能に設けられた区画扉を有する機械式駐車装置の制御装置であって、前記出入口扉及び少なくとも一つの前記区画扉が開いている状態、かつ、入庫時においては入庫車両がいずれかの前記乗降室内に停車された状態、出庫時においては出庫車両がいずれの前記乗降室にも停車されていない状態で、前記出入口扉を閉める場合に、前記区画扉の閉扉完了タイミングが前記出入口扉の閉扉完了タイミングと同時または前記出入口扉の閉扉完了タイミングよりも遅くなるように前記区画扉の閉扉を制御する扉制御部を備える機械式駐車装置の制御装置である
本発明の参考例としての他の態様は、複数の乗降室が一列に配置され、最前列の前記乗降室に設けられた出入口扉を通じて各前記乗降室への車両の乗入れが可能とされるとともに、隣接する前記乗降室の間に開閉可能に設けられた区画扉を有する機械式駐車装置の制御装置であって、前記出入口扉及び少なくとも一つの前記区画扉が開いている状態において、前記出入口扉の閉扉指示が入力された場合に、前記区画扉の閉扉完了タイミングが前記出入口扉の閉扉完了タイミングと同時または前記出入口扉の閉扉完了タイミングよりも遅くなるように前記区画扉の閉扉を制御する扉制御部を備える機械式駐車装置の制御装置である。
【0009】
上記構成によれば、出入口扉及び区画扉が開いている状態において、出入口扉の閉扉指示が入力された場合には、出入口扉の閉扉完了タイミングと同時またはそれよりも後に区画扉の閉扉が完了することとなる。これにより、奥側の乗降室に人が取り残されていた場合には、開いている区画扉を通じて前側の乗降室に移動することが可能となる。これにより、人が移動するための扉を新たに設置することなく、容易に退避ルートを確保することが可能となる。
【0010】
上記機械式駐車装置の制御装置において、非常停止に関する情報が入力された場合に、前記扉制御部は、前記区画扉の開扉制御を行うこととしてもよい。
【0011】
上記構成によれば、非常停止に関する情報が入力された場合には、区画扉が開かれるので、奥側の乗降室にいる人は、開いている区画扉を通じて前側の乗降室に移動することが可能となる。
【0012】
上記機械式駐車装置の制御装置は、前記非常停止に関する情報が入力された場合に、前記乗降室内の照明を点灯させる照明制御部を備えることとしてもよい。
【0013】
上記構成によれば、非常停止に関する情報が入力された場合には、乗降室内の照明が点灯するので、奥側の乗降室にいる人は場内の様子を確認しながら安全に移動を行うことができる。
【0014】
上記機械式駐車装置の制御装置は、非常停止に関する情報が入力された場合に、場外への退避を誘導する誘導制御部を備えることとしてもよい。
【0015】
上記構成によれば、非常停止に関する情報が入力された場合には、退避ルートが案内されるので、奥側の乗降室にいる人は案内に従って安全に場内を移動することが可能となる。
【0016】
本発明の第二態様は、上記いずれかの機械式駐車装置の制御装置を備える機械式駐車装置である。
【0017】
本発明の第三態様は、複数の乗降室が一列に配置され、最前列の前記乗降室に設けられた出入口扉を通じて各前記乗降室への車両の乗入れが可能とされるとともに、隣接する前記乗降室の間に開閉可能に設けられた区画扉を有する機械式駐車装置の制御方法であって、前記出入口扉及び少なくとも一つの前記区画扉が開いている状態、かつ、入庫時においては入庫車両がいずれかの前記乗降室内に停車された状態、出庫時においては出庫車両がいずれの前記乗降室にも停車されていない状態で、前記出入口扉を閉める場合に、前記区画扉の閉扉完了タイミングが前記出入口扉の閉扉完了タイミングと同時または前記出入口扉の閉扉完了タイミングよりも遅くなるように前記区画扉の閉扉を制御する機械式駐車装置の制御方法である。
本発明の参考例としての他の態様は、複数の乗降室が一列に配置され、最前列の前記乗降室に設けられた出入口扉を通じて各前記乗降室への車両の乗入れが可能とされるとともに、隣接する前記乗降室の間に開閉可能に設けられた区画扉を有する機械式駐車装置の制御方法であって、前記出入口扉及び少なくとも一つの前記区画扉が開いている状態において、前記出入口扉の閉扉指示が入力された場合に、前記区画扉の閉扉完了タイミングが前記出入口扉の閉扉完了タイミングと同時または前記出入口扉の閉扉完了タイミングよりも遅くなるように前記区画扉の閉扉を制御する機械式駐車装置の制御方法である。
【0018】
本発明の第四態様は、複数の乗降室が一列に配置され、最前列の前記乗降室に設けられた出入口扉を通じて各前記乗降室への車両の乗入れが可能とされるとともに、隣接する前記乗降室の間に開閉可能に設けられた区画扉を有する機械式駐車装置に適用される制御プログラムであって、前記出入口扉及び少なくとも一つの前記区画扉が開いている状態、かつ、入庫時においては入庫車両がいずれかの前記乗降室内に停車された状態、出庫時においては出庫車両がいずれの前記乗降室にも停車されていない状態で、前記出入口扉を閉める場合に、前記区画扉の閉扉完了タイミングが前記出入口扉の閉扉完了タイミングと同時または前記出入口扉の閉扉完了タイミングよりも遅くなるように前記区画扉の閉扉を制御する処理をコンピュータに実行させるための制御プログラムである。
本発明の参考例としての他の態様は、複数の乗降室が一列に配置され、最前列の前記乗降室に設けられた出入口扉を通じて各前記乗降室への車両の乗入れが可能とされるとともに、隣接する前記乗降室の間に開閉可能に設けられた区画扉を有する機械式駐車装置に適用される制御プログラムであって、前記出入口扉及び少なくとも一つの前記区画扉が開いている状態において、前記出入口扉の閉扉指示が入力された場合に、前記区画扉の閉扉完了タイミングが前記出入口扉の閉扉完了タイミングと同時または前記出入口扉の閉扉完了タイミングよりも遅くなるように前記区画扉の閉扉を制御する処理をコンピュータに実行させるための制御プログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡易な方法により、奥側機からの退避ルートを確保することのできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る機械式駐車装置の外観図である。
図2】本発明の一実施形態に係る乗降室の上面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る乗降室の斜視透視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る制御装置が備える機能を示した機能ブロック図である。
図5】本発明の一実施形態に係る機械式駐車装置において、車両の入庫時に実行される入庫処理の手順を示したフローチャートである。
図6】扉制御部による区画扉の閉扉速度の一例を示した図である。
図7】扉制御部による区画扉の閉扉速度の他の一例を示した図である。
図8】本発明の一実施形態に係る機械式駐車装置において、車両の出庫時に実行される出庫処理の手順を示したフローチャートである。
図9】本発明の一実施形態に係る機械式駐車装置において非常停止時に実行される非常停止処理の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る機械式駐車装置及びその制御装置、制御方法、制御プログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る機械式駐車装置10の外観図である。機械式駐車装置10は、例えば地上に設けられた乗入階14から車両を入出庫させる。そして、機械式駐車装置10は、車両を載置したパレット16を、乗入階14と車両を格納する格納庫18との間で昇降させることで車両を搬送する。なお、図1に示す機械式駐車装置10の構成は、一例であり、乗入階14を格納庫18よりも上層とする等、他の構成であってもよい。本実施形態では、車両を搬送する搬送機をパレット式として説明するが、コンベア式、くし歯式(フォーク式)等の他の構成を適用することも可能である。
【0023】
乗入階14には、乗降室20が設けられている。図2は乗降室20の上面図、図3は乗降室の斜視透視図である。図2及び図3に示すように、本実施形態に係る機械式駐車装置10では、複数の乗降室20が一列に配置されている。本実施形態では、2つの乗降室20が一列に配置されている縦列式の機械式駐車装置を例示して説明するが、3つ以上の乗降室が一列に配置されていてもよい。また、本実施形態では、説明の便宜上、車両の入庫時における車両の進入方向(図2の矢印W1)に対して手前側に位置する乗降室20(最前列の乗降室)を「前側乗降室20a」といい、その奥側に位置する乗降室20を「奥側乗降室20b」という。以下、前側乗降室20aと奥側乗降室20bとをそれぞれ区別する必要がある場合には、「前側乗降室20a」、「奥側乗降室20b」と称し、区別する必要がない場合には、単に乗降室20と称する。
【0024】
図2及び図3に示すように、前側乗降室20aには、車両が移動するための出入口扉21が設けられている。すなわち、この出入口扉21を通じて前側乗降室20a及び奥側乗降室20bへの車両の乗り入れが可能とされている。出入口扉21は、乗降室20内への出入を行うための扉であり、車両の入庫または出庫を行う時に開閉される。出入口扉21は、後述する制御装置40によって制御される。出入口扉21は、上下昇降式の扉であってもよいし、横引き式の扉であってもよい。
また、前側乗降室20aには、人が移動するための通路扉28が設けられている。
【0025】
前側乗降室20aの外側であって、出入口扉21の周辺には、利用者によって操作される操作盤22が設けられている。操作盤22には、例えば、機械式駐車装置10の利用者によって操作されるタッチパネル、スイッチ、ICカードリーダ等が設けられている。利用者は、操作盤22のタッチパネルの表示に従って、あるいは、スピーカからのガイダンスに従って操作盤22から種々の入力操作を行うことで、入庫に関する各種指示及び出庫に関する各種指示を入力する。
【0026】
隣接する乗降室20の間、すなわち、前側乗降室20aと奥側乗降室20bとの間には、開閉可能に設けられた区画扉30が設けられている。区画扉30は、車両を入庫または出庫させる場合に奥側乗降室20bへの出入を可能とする扉である。このため、区画扉30は、奥側乗降室20bへ車両を入庫または出庫させる場合に開とされ、前側乗降室20aのみにおいて車両を入庫または出庫させる場合(奥側乗降室20bには車両が進入しない場合)には、安全のため(例えば、奥側乗降室20bへの誤侵入等を防ぐため)に閉とされる。区画扉30は、後述する制御装置40によって開閉が制御される。区画扉30は、上下昇降式の扉であってもよいし、横引き式の扉であってもよい。
【0027】
また、各乗降室20内には、略中央に、車両を搬送するためのパレット16が配置される。パレット16に載置された車両は、乗降室20から格納庫18へ搬送される。ここで、前側乗降室20aから入庫された車両と、奥側乗降室20bから入庫された車両とはそれぞれ個別に設けられている格納庫18に格納されることとしてもよいし、共通の格納庫18に格納されることとしてもよい。前者の場合には、それぞれ単独に機能する複数の機械式駐車装置が縦一列に配置されている構成に近く、後者の場合には、一つの機械式駐車装置が入庫に用いる空間領域として複数の乗降室を有する構成に近い。
【0028】
各乗降室20内には、車両が適切な位置に停止されていることを検知するためのセンサ26や、人や動物を検知する人感センサ(図示略)等が設置されている。これらのセンサの検出結果は、機械式駐車装置10の制御装置40(図4参照)に出力される。
また、各乗降室20内には、異常発生時に人により操作される非常停止ボタン24が設けられている。非常停止ボタン24が操作された場合には、非常停止信号が制御装置40に出力される。
なお、図2に示すセンサ26や非常停止ボタン24の数や配置位置等は一例であり、適宜変更可能である。
また、乗降室20内には照明(図示略)及びスピーカ(図示略)が設けられている。
【0029】
図4は、機械式駐車装置10の制御装置40が備える機能を示した機能ブロック図である。制御装置40は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等から構成されている。後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0030】
図4に示されるように、制御装置40は、搬送機制御部41、扉制御部42、照明制御部43、及び誘導制御部44を備えている。搬送機制御部41は、主に搬送機の制御を行う機能を有し、例えば、搬送機を制御することで、入庫時において空きパレット16を乗降室20に搬送させるとともに、車両が載置されたパレット16を格納庫に格納させる。また、搬送機制御部41は、出庫時において、利用者の車両を載置したパレットを乗降室20に搬送させるとともに、出庫後における空きパレットを所定の格納庫に搬送させる。
【0031】
扉制御部42は、入庫時及び出庫時において、出入口扉21及び区画扉30の開閉を制御する。
照明制御部43は、乗降室20内に設けられた照明の点灯及び消灯を制御する。
誘導制御部44は、人感センサによって人等が検知された場合や非常停止ボタン24が操作された場合に、スピーカから誘導情報を報知することにより、乗降室20内にいる人を場外へ誘導する。
【0032】
次に、本実施形態に係る機械式駐車装置10の制御装置40による入庫処理について図5を参照して説明する。以下の説明では、奥側乗降室20bを用いた入庫を行う場合について説明する。
まず、操作盤22が利用者(運転手)によって操作され、入庫指示が入力されると(SA1)、搬送機制御部41は搬送機を制御することにより、空きパレット16を奥側乗降室20bに搬送する(SA2)。空きパレット16の搬送が完了すると(SA3)、扉制御部42は、出入口扉21及び区画扉30の開扉制御を行う(SA4)。
【0033】
出入口扉21及び区画扉30の開扉制御が完了し、出入口扉21及び区画扉30が完全に開かれると(SA5)、照明制御部43は、乗降室20内の照明を点灯させる(SA6)。なお、照明の点灯はこのタイミングに限定されず、例えば、入庫指示が入力されたときや、空きパレット16の搬送が完了したときに点灯させることとしてもよい。
利用者は開状態とされた出入口扉21から前側乗降室20a内に車両を進入させ、更に、区画扉30を通じて奥側乗降室20b内に進入させ、空きパレット16の上で停止させる。
【0034】
車両を停止させた運転手は、開状態とされている区画扉30を通じて奥側乗降室20bから前側乗降室20aに移動し、前側乗降室20aに設けられた通路扉28から場外へ退出する。
場外へ退出した利用者は、操作盤22から無人確認や安全確認等の所定の入力操作を行った後、閉扉指示を入力する(SA7)。
【0035】
閉扉指示が入力されると、扉制御部42は、出入口扉21及び区画扉30の閉扉制御を開始する(SA8)。具体的には、扉制御部42は、区画扉30の閉扉完了タイミングが出入口扉21の閉扉完了タイミングと同時または出入口扉21の閉扉完了タイミングよりも遅くなるように、出入口扉21及び区画扉30の閉扉を制御する。
扉制御部42は、例えば、出入口扉21の閉扉制御開始から所定期間経過後に区画扉30の閉扉制御を開始してもよい。また、出入口扉21と区画扉30との閉扉開始タイミングを同時とした場合には、区画扉30の閉まる速度を出入口扉21の閉まる速度よりも遅く制御することで、区画扉30の閉扉完了タイミングが出入口扉21の閉扉完了タイミングよりも遅くなるようにしてもよい。
【0036】
区画扉30の閉扉制御は、例えば、図6に示すように区画扉30の閉扉開始から閉扉完了まで連続的に区画扉30を作動させることとしてもよいし、図7に示すように、区画扉30を一定の場所、あるいは、一定の時間経過するまで移動させた後に、一旦停止または停止に近い速度で作動させ、その後、通常の速度によって開扉動作を再開させることによって閉扉を完了させることとしてもよい。
【0037】
このように、区画扉30の閉扉完了タイミングが出入口扉21の閉扉完了タイミングと同時またはそれよりも遅くなれば、両者の閉扉開始タイミングやその途中における扉の移動速度については特に限定されず、各機械式駐車装置10の運用に合わせて適宜設定することができる。
そして、出入口扉21及び区画扉30が完全に閉まると(SA9)、搬送機制御部41は、搬送機を制御することにより、車両が載置されたパレット16を所定の格納庫18に格納させ(SA10)、照明制御部43は照明を消灯する(SA11)。
【0038】
次に、本実施形態に係る機械式駐車装置10の制御装置40による出庫処理について図8を参照して説明する。以下の説明では、奥側乗降室20bから出庫を行う場合について説明する。
まず、操作盤22が利用者(運転手)によって操作され、出庫指示が入力されると(SB1)、搬送機制御部41は搬送機を制御することにより、利用者の車両が載置されたパレット16を奥側乗降室20bに搬送する(SB2)。パレット16の搬送が完了すると(SB3)、扉制御部42は、出入口扉21及び区画扉30の開扉制御を行う(SB4)。
【0039】
出入口扉21及び区画扉30の開扉制御が完了し、出入口扉21及び区画扉30が完全に開かれると(SB5)、照明制御部43は、乗降室20内の照明を点灯させる(SB6)。なお、照明の点灯はこのタイミングに限定されず、例えば、出庫指示が入力されたときや、パレット16の搬送が完了したときに点灯させることとしてもよい。
【0040】
利用者は開状態とされた出入口扉21から前側乗降室20a内に進入し、更に、区画扉30を通じて奥側乗降室20b内に進入し、パレット上の車両に乗り込む。
乗車した運転手は、開状態とされている区画扉30を通じて奥側乗降室20bから前側乗降室20aに車両を移動させ、更に、前側乗降室20aに設けられた出入口扉21から車両を場外へ退出させる。
場外へ車両を退出させた利用者は、操作盤22から無人確認や安全確認等の所定の入力操作を行った後、閉扉指示を入力する(SB7)。
【0041】
閉扉指示が入力されると、扉制御部42は、出入口扉21及び区画扉30の閉扉制御を開始する(SB8)。この閉扉制御は、上述した入庫処理の場合と同様である。
そして、出入口扉21及び区画扉30が完全に閉まると(SB9)、搬送機制御部41は、搬送機を制御することにより、空きパレット16を所定の格納庫に格納させ(SB10)、照明制御部43は、照明を消灯する(SB11)。
【0042】
次に、上述した入庫処理または出庫処理において操作盤22から閉扉指示が入力された後、あるいは、入庫処理または出庫処理が終了した後において、乗降室に設けられたセンサによって人が検知された場合、または、非常停止ボタン24が操作された場合に実行される非常停止処理について図9を参照して説明する。
具体的には、非常停止ボタン24が操作された場合や、センサによって人が検知された場合には、非常停止信号(非常停止に関する情報)が制御装置40に送信される。制御装置40は、非常停止信号を受信すると、以下の非常停止処理を実行する。
【0043】
非常停止処理において、搬送機制御部41は搬送機の動作を停止させる(SC1)。
続いて、扉制御部42は区画扉30の開扉制御を行う(SC2)。これにより、例えば、区画扉30が完全に閉められていた場合には区画扉30が開けられ、閉扉制御の途中であった場合には、閉扉制御から開扉制御に切り替えられ、区画扉30が途中から開く方向に移動する。なお、異常停止処理における開扉の移動速度は、正常運転時における開扉の移動速度や閉扉の移動速度よりも早くしてもよい。これにより、より迅速に区画扉30を開けることができ、奥側乗降室20b内に取り残されている利用者をより早く退避させることが可能となる。
【0044】
また、照明制御部43は、場内の照明が消灯していた場合には照明を点灯させる(SC3)。
また、誘導制御部44は、場内のスピーカから乗降室20内に取り残された人を場外へ退避させるための誘導案内を行う(SC4)。これにより、例えば、奥側乗降室20b内に取り残された人は、誘導案内に従って開状態とされた区画扉30から前側乗降室20aに安全に移動でき、前側乗降室20aに設けられた通路扉28から場外に退避することができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る機械式駐車装置及びその制御装置、制御方法、制御プログラムによれば、出入口扉21及び区画扉30が開いている状態において、出入口扉21の閉扉指示が入力された場合には、出入口扉21の閉扉完了タイミングと同時またはそれに遅れて、区画扉30の閉扉が完了することとなる。これにより、仮に、奥側乗降室20bに人が取り残されていた場合には、開いている区画扉30を通じて前側乗降室20aに移動することが可能となる。これにより、人が移動するための扉を新たに設置することなく、容易に退避ルートを確保することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態によれば、制御装置40が非常停止信号を受信した場合には、扉制御部42によって区画扉30の開扉制御が行われ、照明制御部43によって場内の照明が点灯され、更に、誘導制御部44による誘導が行われる。
これにより、奥側乗降室20bにいる人を開状態とされた区画扉30を通じて前側乗降室20aに安全に移動させることが可能となる。
【0047】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0048】
例えば、機械式駐車装置10は、上記例に限られず、垂直循環方式、多層階循環方式、水平循環方式、エレベータ方式、エレベータ・スライド方式、平面往復方式、二・多段昇降方式(ピット式)、昇降横行式(ピット式)等さまざまな方式の機械式駐車装置とすることが可能である。
また、上記実施形態では、人を場外へ導くための誘導手段としてスピーカを例示して説明したが、例えば、スピーカなどのように聴覚的に人を誘導する構成に代えて、誘導ライトなどのように視覚的に人を誘導する構成を採用してもよい。また、乗降室内に設けられるこれらの機器の他、予め登録されているユーザの携帯端末のアドレスに対して誘導情報を送信するような手段を採用してもよく、また、誘導手段はこれらの組み合わせであってもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、前側乗降室20aと奥側乗降室20bとからなる2つの乗降室20を有する場合を例示して説明したが、奥側乗降室20bは複数設けられていてもよい。この場合、奥側乗降室20b間に設けられた区画扉30は上記区画扉30と同様の開閉制御が行われる。
【0050】
また、上記実施形態で説明した入庫処理、出庫処理、及び非常停止処理の処理手順も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
例えば、図9に示した非常停止処理における各ステップは各制御部が同時に平行して実行することとしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 :機械式駐車装置
20 :乗降室
20a :前側乗降室
20b :奥側乗降室
21 :出入口扉
22 :操作盤
24 :非常停止ボタン
26 :センサ
28 :通路扉
30 :区画扉
40 :制御装置
41 :搬送機制御部
42 :扉制御部
43 :照明制御部
44 :誘導制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9