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特許7187227硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20221205BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20221205BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
H05K1/03 610R
G03F7/004 512
G03F7/004 501
H05K3/38 A
H05K1/03 610H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018173048
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2020047654
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】嶋宮 歩
(72)【発明者】
【氏名】米田 直樹
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-009715(JP,A)
【文献】特開2005-047991(JP,A)
【文献】特開2017-068242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/03
G03F 7/004
H05K 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性樹脂と、
(B)光重合開始剤と、
(C)熱硬化性化合物と、
(D-1)粗化剤により分解または溶解する平均粒子径が0.5~3.6μmの無機フィラーと、
(D-2)粗化剤により分解または溶解しない球状の無機フィラーと、
を含むことを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D-2)粗化剤により分解または溶解しない球状の無機フィラーが、シリカおよび/またはアルミナであることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D-2)粗化剤により分解または溶解しない球状の無機フィラーの平均粒子径が、4μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物から得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物または請求項4記載のドライフィルムの樹脂層を、硬化して得られることを特徴とする硬化物。
【請求項6】
請求項5に記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造方法として、回路形成した基板上に熱硬化性樹脂組成物からなる層間絶縁層を形成し、この層間絶縁層に炭酸ガスレーザーなどにてビアホール用開口を設け、さらにめっき処理にてビアホールを含む導体回路を形成する方法が広く知られている。
このようなプリント配線板の製造方法において、昨今の電子機器の高機能化・小型軽量化に伴い、導体回路の高密度化も進み、層間絶縁層にはより小径のビアホール用開口を形成する必要があった。しかしながら、従来の炭酸ガスレーザー加工では、直径40μm以下の開口形成が難しく、一方で、より小径の開口形成が可能なUVレーザー加工も考えられるが、加工時間が長く、生産性に問題があった。
【0003】
これに対し従来、感光性の硬化性樹脂組成物によるフォトリソグラフィー技術を層間絶縁層へのビアホール用開口形成に適用する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
一方、プリント配線板の製造方法において、層間絶縁層上に形成される導体回路は、層間絶縁層との優れた密着性、いわゆるピール強度が要求される。そのため、層間絶縁層の表面やビアホール用開口部の側面を、水酸化ナトリウムや過マンガン酸カリウム、硫酸などの粗化剤により粗面化処理した後、無電解銅めっき処理、電解銅めっき処理の順にめっき処理を施し、導体回路を形成する方法が広く採用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、かかる導体回路の形成方法では、粗面化処理によって層間絶縁層と回路導体の接触面積が増大することで、伝送損失や絶縁性の悪化を招くという問題があった。
【0006】
特に、かかる導体回路の形成方法と上述したフォトリソグラフィー技術を利用した引用文献2に記載のプリント配線板の製造方法では、粗面化処理後に、ビアホール用開口部(ビア部)の表面と側面に亀裂が発生してしまうという新たな問題があることに、発明者らは気付いた。このような亀裂が発生すると、近接するビアホール間の絶縁信頼性が得られず、さらに回路導体と層間絶縁層との接触面積が増加することで、伝送損失が増加してしまうという問題となる。なお、このような粗面化処理後の亀裂は、熱硬化性樹脂組成物を用いて形成した層間絶縁層では生じない問題であった。
【0007】
また一方で、近年のビアホール用開口部は、小径化に加え、開口部のトップ径とボトム径の比(ボトム径÷トップ径)を実質1にするという高解像性の要求がある。しかしながら、引用文献1に記載されたような技術では、十分な解像性が得られないという問題があることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平10-142791号公報
【文献】特開2017-116652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の目的は、解像性に優れ、かつ、粗面化処理後にビアホール用開口部に亀裂が発生しにくい、回路導体との密着性および回路間の絶縁信頼性に優れた層間絶縁層を形成するのに有効な感光性の硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的実現に向け鋭意検討を行った。その結果、粗化剤により分解もしくは溶解する無機フィラーとして、特定の平均粒子径の無機フィラーを用い、かつ、粗化剤により分解または溶解しない球状の無機フィラーを併用することによって、上記目的が実現し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)熱硬化性化合物と、(D-1)粗化剤により分解または溶解する平均粒子径が0.5~6μmの無機フィラーと、(D-2)粗化剤により分解または溶解しない球状の無機フィラーと、を含むことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(D-2)粗化剤により分解または溶解しない球状の無機フィラーが、シリカおよび/またはアルミナであることが好ましい。
【0013】
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記(D-2)粗化剤により分解または溶解しない球状の無機フィラーの平均粒子径が、4μm以下であることが好ましい。
【0014】
本発明のドライフィルムは、前記硬化性樹脂組成物から得られる樹脂層を有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の硬化物は、前記硬化性樹脂組成物または前記ドライフィルムの樹脂層を、硬化して得られることを特徴とするものである。
【0016】
本発明のプリント配線板は、前記硬化物を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、解像性に優れ、かつ、粗面化処理後にビアホール用開口部に亀裂が発生しにくい、回路導体との密着性および回路間の絶縁信頼性に優れた層間絶縁層を形成するのに有効な感光性の硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光重合開始剤と、(C)熱硬化性化合物と、(D-1)粗化剤により分解または溶解する平均粒子径が0.5~6μmの無機フィラー(以下、「(D-1)の無機フィラー」とも称する)と、(D-2)粗化剤により分解または溶解しない球状の無機フィラー(以下、「(D-2)の無機フィラー」とも称する)と、を含むことを特徴とするものである。
【0019】
本発明においては、上記(D-1)と(D-2)の無機フィラーとを併用することで、上記のビアホール開口部における亀裂を抑制することができる。詳しいメカニズムは明らかではないが、粗面化処理工程にて生じた歪みから亀裂が発生しても、亀裂が進行した先で球状の無機フィラーが脱落し、亀裂の進行を抑制するものと推察される。さらに、上記(D-1)の無機フィラーの平均粒子径を0.5~6μmとすることにより、解像性に優れるだけでなく、銅めっき層との密着性および絶縁性に優れた硬化物を形成することが可能となる。
【0020】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物の各成分について詳述する。
【0021】
[(A)アルカリ可溶性樹脂]
本発明の硬化性樹脂組成物は(A)アルカリ可溶性樹脂を含む。このアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール性水酸基、チオール基、スルホニル基およびカルボキシル基のうちから選ばれる少なくとも1種の官能基を含有し、アルカリ溶液に可溶な樹脂であれば用いることができ、好ましくはフェノール性水酸基を2個以上有する化合物、カルボキシル基含有樹脂、フェノール性水酸基およびカルボキシル基を有する化合物、チオール基を2個以上有する化合物、スルホ基を有する化合物を用いることができる。特に、アルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基含有樹脂がより好ましい。
このカルボキシル基含有樹脂は、光硬化性や耐現像性の観点から、カルボキシル基の他に、分子内にエチレン性不飽和基を有することが好ましい。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタクリロイル基およびそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0022】
カルボキシル基含有樹脂としては、例えば、以下に列挙するような化合物(オリゴマーおよびポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。
【0023】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。
【0024】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0025】
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシル基およびアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0026】
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応による感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0027】
(5)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0028】
(6)上記(2)または(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0029】
(7)多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。
【0030】
(8)2官能エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させた感光性カルボキシル基含有樹脂。
【0031】
(9)多官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有ポリエステル樹脂。
【0032】
(10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0033】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0034】
(12)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。
【0035】
(13)上記(1)~(12)のいずれかの樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなる感光性カルボキシル基含有樹脂。
【0036】
(14)カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合樹脂に、1分子中にオキシラン環とエチレン性不飽和基を有する化合物との反応により得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂。
【0037】
(15)1分子中にそれぞれ1個のエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物と、不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した第2級の水酸基に飽和または不飽和多塩基酸無水物を反応させて得られる感光性のカルボキシル基含有樹脂。
【0038】
(16)水酸基含有ポリマーに、飽和または不飽和多塩基酸無水物を反応させた後、生成したカルボン酸に、1分子中にそれぞれ1個のエポキシ基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られる感光性の水酸基およびカルボキシル基含有樹脂。
【0039】
上記のようなカルボキシル基含有樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に多数のカルボキシル基を有するため、アルカリ水溶液による現像が可能になる。
【0040】
また、アルカリ可溶性樹脂として、下記式(a)または(b)で表される少なくとも一方のアミドイミド構造を有するアルカリ可溶性樹脂を好適に用いることができる。シクロヘキサン環またはベンゼン環に直結したイミド結合を有する樹脂を含むことによって、より強靭性および耐熱性に優れた硬化物を得ることができる。特に、下記(a)で表される構造を有するアミドイミド樹脂は、光の透過性に優れるため、樹脂組成物の解像性をより向上させることができる。下記式(a)または(b)で表される少なくとも一方のアミドイミド構造を有するアルカリ可溶性樹脂は、透明性を有することが好ましく、例えば、乾燥塗膜25μmにおいて、波長365nmの光の透過率は70%以上であることが好ましい。
【0041】
【0042】
上記アミドイミド構造を有するアルカリ可溶性樹脂における、式(a)および(b)の構造の含有量は、10~70質量%が好ましい。かかる樹脂を用いることで、溶剤溶解性に優れ、かつ、耐熱性、引張強度や伸度等の物性および寸法安定性に優れる硬化物が得られることになる。好ましくは10~60質量%であり、より好ましくは20~50質量%である。
【0043】
式(a)で表されるアミドイミド構造を有するアルカリ可溶性樹脂としては、特に、下記式(a1)または(a2)
(式(a1)および(a2)中、それぞれ、Rは1価の有機基であり、H、CFまたはCHであることが好ましく、Xは直接結合または2価の有機基であり、直接結合、CHまたはC(CH等のアルキレン基であることが好ましい。)で表される構造を有する樹脂が、引張強度や伸度等の物性および寸法安定性に優れるため好ましい。溶解性や機械物性の観点から、式(a)の構造を有するアミドイミド樹脂として、式(a1)および(a2)の構造を10~100質量%有する樹脂を好適に用いることができる。より好ましくは20~80質量%である。
【0044】
また、式(a)の構造を有するアミドイミド樹脂として、式(a1)および(a2)の構造を、5~100モル%含有するアミドイミド樹脂を、溶解性や機械物性の観点から好ましく用いることができる。より好ましくは5~98モル%であり、さらに好ましくは10~98モル%であり、特に好ましくは20~80モル%である。
【0045】
また、式(b)で表されるアミドイミド構造を有するアルカリ可溶性樹脂としては、特に、式(b1)または(b2)
(式(b1)および(b2)中、それぞれ、Rは1価の有機基であり、H、CFまたはCHであることが好ましく、Xは直接結合または2価の有機基であり、直接結合、CHまたはC(CHなどのアルキレン基であることが好ましい。)で表される構造を有する樹脂が、引張強度や伸度等の機械的物性に優れる硬化物が得られることから好ましい。溶解性や機械物性の観点から、式(b)の構造を有するアミドイミド樹脂として、式(b1)および(b2)の構造を10~100質量%有する樹脂を好適に用いることができる。より好ましくは20~80質量%である。
【0046】
式(b)の構造を有するアミドイミド樹脂として、式(b1)および(b2)の構造を2~95モル%含有するアミドイミド樹脂も、良好な機械物性を発現する理由から好ましく用いることができる。より好ましくは10~80モル%である。
【0047】
アミドイミド構造を有するアルカリ可溶性樹脂は、公知の方法により得ることができる。式(a)の構造を有するアミドイミド樹脂は、例えば、ビフェニル骨格を有するジイソシアネート化合物とシクロヘキサンポリカルボン酸無水物を用いて得ることができる。
【0048】
ビフェニル骨格を有するジイソシアネート化合物としては、4,4’-ジイソシアネート-3,3’-ジメチル-1,1’-ビフェニル、4,4’-ジイソシアネート-3,3’-ジエチル-1,1’-ビフェニル、4,4’-ジイソシアネート-2,2’-ジメチル-1,1’-ビフェニル、4,4’-ジイソシアネート-2,2’-ジエチル-1,1’-ビフェニル、4,4’-ジイソシアネート-3,3’-ジトリフロロメチル-1,1’-ビフェニル、4,4’-ジイソシアネート-2,2’-ジトリフロロメチル-1,1’-ビフェニルなどが挙げられる。その他、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート化合物などを使用してもよい。
【0049】
シクロヘキサンポリカルボン酸無水物としては、シクロヘキサントリカルボン酸無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸無水物などが挙げられる。
【0050】
また、式(b)の構造を有するアミドイミド樹脂は、例えば、上記ビフェニル骨格を有するジイソシアネート化合物と2個の酸無水物基を有するポリカルボン酸水物を用いて得ることができる。
【0051】
2個の酸無水物基を有するポリカルボン酸水物としては、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ベンゼン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート等のアルキレングリコールビスアンヒドロキシトリメリテート等が挙げられる。
【0052】
なお、上記アミドイミド構造を有するアルカリ可溶性樹脂の具体例としては、DIC社製ユニディックV-8000シリーズ、ニッポン高度紙工業社製SOXR-Uが挙げられる。
【0053】
以上説明したような(A)アルカリ可溶性樹脂は、1種を単独または2種以上を組み合わせた混合物を用いてもよい。
このようなアルカリ可溶性樹脂は、その酸価は、20~120mgKOH/gの範囲にあることが好ましく、より好ましくは30~100mgKOH/gの範囲である。アルカリ可溶性樹脂の酸価を上記範囲とすることで、良好にアルカリ現像が可能となり、正常な硬化物のパターンを形成することができる。
また、このようなアルカリ可溶性樹脂は、その重量平均分子量は、その樹脂骨格により異なるが、一般的には1,500~150,000であることが好ましい。その重量平均分子量が1,500以上であると、乾燥塗膜のタックフリー性、露光後の塗膜の耐湿性が良好であり、解像性もより良好となる。一方、重量平均分子量が150,000以下であると、現像性と、貯蔵安定性が良好である。より好ましくは1,500~50,000である。
【0054】
(エチレン性不飽和基を有する化合物)
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)成分に加えて、エチレン性不飽和基を有する化合物を含有することができる。なお、本明細書において、(A)成分を含む他の成分がエチレン性不飽和基を有する場合、このような成分は「エチレン性不飽和基を有する化合物」から除くこととする。
【0055】
このエチレン性不飽和基を有する化合物としては、公知慣用の光重合性オリゴマーや光重合性ビニルモノマーなどを用いることができる。
光重合性オリゴマーとしては、例えば、不飽和ポリエステル系オリゴマー、(メタ)アクリレート系オリゴマー等が挙げられる。(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、フェノールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラックエポキシ(メタ)アクリレート、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
光重合性ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、クロロスチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン誘導体;酢酸ビニル、酪酸ビニルまたは安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルイソブチルエーテル、ビニル-n-ブチルエーテル、ビニル-t-ブチルエーテル、ビニル-n-アミルエーテル、ビニルイソアミルエーテル、ビニル-n-オクタデシルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド、N-ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類;トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリルなどのアリル化合物;2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のエステル類;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート類、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールポリ(メタ)アクリレート類;ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレートなどのポリ(メタ)アクリレート類;トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレートなどのイソシアヌルレート型ポリ(メタ)アクリレート類などが挙げられる。
【0057】
このようなエチレン性不飽和基を有する化合物は、なかでも(メタ)アクリロイル基を有する化合物、即ち(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。また、(メタ)アクリレート化合物は、耐熱性がより良好となるため、2官能以上であることが好ましい。また、(メタ)アクリレート化合物は、アクリル当量が100以上であると、伸び率がより良好となり、ハレーションをより抑制し、さらに硬化物の反りが生じにくくなるため好ましい。
【0058】
このようなエチレン性不飽和基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エチレン性不飽和基を有する化合物の配合量は、固形分換算で、(A)アルカリ可溶性樹脂 100質量部に対して1~80質量部、より好ましくは2~70質量部である。
【0059】
[(B)光重合開始剤]
光重合開始剤としては、公知慣用の光重合開始剤であれば、いずれのものを用いることもできる。
【0060】
光重合開始剤としては、例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGM社製、Omnirad 819)等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(IGM社製、Omnirad TPO)等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(IGM社製、Omnirad 369)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(BASFジャパン社製、IRGACURE OXE-02)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。この光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
光重合開始剤の配合量は、固形分換算で(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.01~50質量部が好ましく、0.1~30質量部がより好ましい。
【0062】
(光重合禁止剤)
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分に加えて、光重合禁止剤を含有することが好ましく、露光時の光の散乱(いわゆるハレーション)を抑制し、解像性を向上させることができる。
【0063】
この光重合禁止剤としては、特に限定されず、公知慣用のものを用いることができる。
具体的には、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、ジ-t-ブチル・パラクレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトール、アセトアミジンアセテート、ヒドラジン塩酸塩、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジニトロベンゼン、ピクリン酸、キノンジオキシム、ピロガロール、タンニン酸、レゾルジン、クペロン、フェノチアジンなどが挙げられる。なかでもp-ベンゾキノン、ナフトキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、キノンジオキシムなどのキノン系光重合禁止剤、α-ナフトール、4-メトキシ-1-ナフトールのナフトール系光重合禁止剤が好ましい。光重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
光重合禁止剤の配合量は、固形分換算で、(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.005~20質量部、より好ましくは、0.01~10質量部である。
【0065】
[(C)熱硬化性化合物]
本発明の硬化性樹脂組成物は、(C)熱硬化性化合物を含有する。この熱硬化性化合物は、光硬化された組成物を更に熱硬化することにより、硬化物の耐熱性や絶縁信頼性等の諸特性を向上させることができる。このような熱硬化性化合物としては、アミノ樹脂、メラミン樹脂、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート化合物、エポキシ化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂等の公知慣用の熱硬化性化合物を用いることができる。なかでも、エポキシ化合物、オキセタン化合物およびマレイミド化合物が好適に用いられ、これらは併用してもよい。
【0066】
エポキシ化合物としては、1個以上のエポキシ基を有する公知慣用の化合物を使用することができ、なかでも、2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。例えば、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなどのモノエポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、フェニル-1,3-ジグリシジルエーテル、ビフェニル-4,4’-ジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールまたはプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等の1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
【0067】
オキセタン化合物としては、オキセタニル基を有する公知慣用の化合物を使用することができ、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成社製OXT-101)、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成社製OXT-211)、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成社製OXT-212)、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(東亞合成社製OXT-121)、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成社製OXT-221)などが挙げられる。さらに、フェノールノボラックタイプのオキセタン化合物なども挙げられる。オキセタン化合物は、上記エポキシ化合物と併用してもよく、また、単独で使用してもよい。
【0068】
マレイミド化合物としては、多官能脂肪族/脂環族マレイミド、多官能芳香族マレイミドなど公知慣用の化合物を使用することができ、なかでも2官能以上のマレイミド化合物(多官能マレイミド化合物)が好ましい。
多官能脂肪族/脂環族マレイミドとしては、例えば、N,N’-メチレンビスマレイミド、N,N’-エチレンビスマレイミド、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートと脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸とを脱水エステル化して得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドエステル化合物;トリス(カーバメートヘキシル)イソシアヌレートと脂肪族/脂環族マレイミドアルコールとをウレタン化して得られるイソシアヌレート骨格のマレイミドウレタン化合物等のイソシアヌル骨格ポリマレイミド類;イソホロンビスウレタンビス(N-エチルマレイミド)、トリエチレングリコールビス(マレイミドエチルカーボネート)、脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸と各種脂肪族/脂環族ポリオールとを脱水エステル化、又は脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸エステルと各種脂肪族/脂環族ポリオールとをエステル交換反応して得られる脂肪族/脂環族ポリマレイミドエステル化合物類;脂肪族/脂環族マレイミドカルボン酸と各種脂肪族/脂環族ポリエポキシドとをエーテル開環反応して得られる脂肪族/脂環族ポリマレイミドエステル化合物類;脂肪族/脂環族マレイミドアルコールと各種脂肪族/脂環族ポリイソシアネートとをウレタン化反応して得られる脂肪族/脂環族ポリマレイミドウレタン化合物類等がある。
【0069】
多官能芳香族マレイミドとしては、マレイミドカルボン酸と各種芳香族ポリオールとを脱水エステル化、又はマレイミドカルボン酸エステルと各種芳香族ポリオールとをエステル交換反応して得られる芳香族ポリマレイミドエステル化合物類;マレイミドカルボン酸と各種芳香族ポリエポキシドとをエーテル開環反応して得られる芳香族ポリマレイミドエステル化合物類;マレイミドアルコールと各種芳香族ポリイソシアネートとをウレタン化反応して得られる芳香族ポリマレイミドウレタン化合物類等の芳香族多官能マレイミド類等がある。
このような多官能芳香族マレイミドの中でも、液状の多官能芳香族マレイミドは、伸び率がより良好となる点でより好ましい。ここで、液状の多官能芳香族マレイミドとは、60℃、5rpmにおける粘度をコーンプレート型粘度計(東機産業社製TVH-33H)にて測定し、50,000cp以下である多官能芳香族マレイミドをいう。
【0070】
以上説明したような熱硬化性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。熱硬化性化合物の配合量は、固形分換算で(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、0.1~100質量部が好ましく、0.5~100質量部がより好ましく、1~60質量部がさらに好ましい。特に、熱硬化性化合物としてマレイミド化合物を配合する場合には、マレイミド化合物の配合量は、固形分換算で(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1~50質量部、より好ましくは0.2~20質量部である。
【0071】
(熱硬化触媒)
本発明の硬化性樹脂組成物は、(C)熱硬化性化合物に加えて、熱硬化触媒を含有することができる。この熱硬化触媒としては、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などを使用することができる。
【0072】
また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体等の密着性付与剤としても機能する熱硬化触媒も使用することができる。
【0073】
市販品としては、例えば、四国化成工業社製の2MZ-AP、2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU-CAT3503N、U-CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CATSA102、U-CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物およびその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ化合物やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくは他の熱硬化成分の反応を促進するものであればよく、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0074】
熱硬化触媒の配合量は、固形分換算で(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.2~20質量部である。熱硬化触媒の配合量が0.1~20質量部の範囲内であると保存安定性と硬化性のバランスに優れる。
【0075】
[(D-1)粗化剤により分解または溶解する平均粒子径が0.5~6μmの無機フィラー]
本発明の硬化性樹脂組成物は(D-1)粗化剤により分解または溶解する平均粒子径が0.5~6μmの無機フィラーを含む。本明細書において、粗化剤としては、酸、アルカリ、酸化剤、および、有機溶剤の中から選ばれた少なくとも1種が用いられる。また、粗面化処理がデスミア処理を兼ねてもよい。ここで、酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられる。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。酸化剤としては、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウム、オゾン等が挙げられる。有機溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メトキシプロパノール、ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。
【0076】
粗化剤により分解または溶解する無機フィラーとしては、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、珪酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、水酸化カルシウムなどが挙げられるが、特に炭酸カルシウムが好ましい。
【0077】
(D-1)の無機フィラーの平均粒子径は、0.5~6μmである必要があり、0.5~5μmであることが好ましい。0.5μm以上だと、導体回路との密着性が向上する。6μm以下だと、解像性が良好となり、微細な導体回路形成や伝送損失の低減が可能となる。
【0078】
(D-1)の無機フィラーの平均粒子径とは、一次粒子の粒子径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒子径も含めた平均粒子径(D50)であり、レーザー回折法により測定されたD50の値である。レーザー回折法による測定装置としては、日機装社製のMicrotrac MT3300EXIIが挙げられる。後述する(D-2)の無機フィラーの平均粒子径も同様である。
【0079】
(D-1)の無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(D-1)の無機フィラーの配合量は、固形分換算で(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、好ましくは10~200質量部、より好ましくは20~100質量部である。
【0080】
[(D-2)粗化剤により分解または溶解しない球状の無機フィラー]
本発明の硬化性樹脂組成物は(D-2)粗化剤により分解または溶解しない球状の無機フィラーを含む。
【0081】
粗化剤により分解または溶解しない球状の無機フィラーとしては、シリカ、アルミナなどが挙げられるが、特にシリカが好ましい。
【0082】
(D-2)の無機フィラーは、球状であればよく、真球のものに限定されるものではない。例えば、以下のように測定される真球度が0.8以上のものが好適であるが、これに限定されるものではない。
【0083】
真球度は以下のように測定される。すなわち、まず、走査型電子顕微鏡(SEM)で球状シリカの写真を撮影し、その写真上で観察される粒子の面積および周囲長から、(真球度)={4π×(面積)÷(周囲長)}で算出される値として算出する。具体的には、画像処理装置を用いて、100個の粒子について測定した平均値を採用することができる。
【0084】
(D-2)の無機フィラーの平均粒子径は、4μm以下であることが好ましい。4μm以下だと、解像性がより良好となる。より好ましくは、1μm以下である。
【0085】
(D-2)の無機フィラーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(D-2)の無機フィラーの配合量は、(D-1)の無機フィラー100質量部あたり、2~60質量部であることが好ましい。60質量部以下だと、解像性がより良好となる。2質量部以上だと、粗面化処理後のビアホール用開口部の亀裂が抑制される。より好ましくは、5~50質量部であることが好ましい。
【0086】
(カップリング剤)
本発明の硬化性樹脂組成物は、カップリング剤を含有することができる。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤やチタン系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等を用いることができる。中でも、シラン系カップリング剤が好ましい。カップリング剤が有する有機反応基としては、ビニル基、(メタ)アクリル基等のエチレン性不飽和基(不飽和炭化水素基)、アルコシキ基、エポキシ基、アミノ基、チオウレア基、メルカプト基、イソシアネート基、イミダゾール基、チアゾール基、トリアゾール基等が挙げられるが、特に、チオウレア基、および、ビニル基、(メタ)アクリル基等のエチレン性不飽和基(不飽和炭化水素基)が好ましい。カップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0087】
シランカップリング剤の配合量は、固形分換算で、固形分換算で(A)アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1~20質量部、より好ましくは0.2~10質量部である。
【0088】
(添加剤)
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、公知慣用の添加剤を配合することができる。この添加剤としては、(D-1)および(D-2)以外の無機フィラー、有機フィラー、密着性付与剤、アクリル系やシリコーン系のレベリング剤、消泡剤、熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、チキソ性付与剤等が挙げられる。また、必要に応じて、酸化チタンや金属酸化物、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物を、光反射性や難燃性の付与を目的に、体質顔料として配合することができる。さらに、赤、青、緑、黄、白、黒などの公知慣用の着色剤を配合することができる。この着色剤としては、顔料、染料、色素のいずれでもよい。
【0089】
(有機溶剤)
本発明の硬化性樹脂組成物は、組成物の調製や、支持フィルムに塗布して樹脂層を形成する際の粘度調整等の目的で、有機溶剤を含有させることができる。
この有機溶剤としては、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸プロピレン等のエステル類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤など、公知慣用の有機溶剤が使用できる。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
本発明の硬化性樹脂組成物は、ドライフィルム化して用いても液状として用いてもよい。また、液状として用いる場合は、1液性でも2液性以上でもよい。
【0091】
[ドライフィルム]
本発明の硬化性樹脂組成物は、支持(キャリア)フィルムと、この支持フィルム上に形成された上記硬化性樹脂組成物からなる乾燥した樹脂層とを備えたドライフィルムの形態とすることもできる。
【0092】
このような支持フィルムとしては、プラスチックフィルムが用いられ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等を用いることができる。この支持フィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10~150μmの範囲で適宜選択される。
【0093】
本発明のドライフィルムは、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、本発明のドライフィルムを構成する前述した硬化性樹脂組成物を、有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整した上で、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、スプレーコーター等により、支持フィルム上に均一な厚さに塗布する。
次いで、支持フィルム上に塗布された硬化性樹脂組成物の塗膜を、50~130℃の温度で1~30分間乾燥することで、乾燥塗膜からなる樹脂層を支持フィルム上に形成したドライフィルムを製造することができる。ここで、塗布膜厚については特に制限はないが、一般に、乾燥後の膜厚で10~150μm、好ましくは15~60μmの範囲で適宜選択される。
【0094】
このようにして製造した本発明のドライフィルムは、膜厚30~50μmのPETフィルムと樹脂層の膜厚15μmの硬化性樹脂組成物の層(樹脂層)とからなる前記ドライフィルムの、波長365nmにおける光透過率が90%以下であることが好ましい。このような光透過性を有することで、樹脂層の光硬化性が安定し解像性が向上する。
【0095】
本発明のドライフィルムは、70℃から120℃における樹脂層の溶融粘度の最低値が10~2000dPa・sであることが好ましい。このような溶融粘度を有することで、ラミネートにおいて回路の凹凸に十分な充填性が得られる。
【0096】
本発明のドライフィルムは、支持フィルム上に硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を形成した後に、樹脂層の表面に塵が付着することを防ぐ等の目的で、樹脂層の表面に、さらに、剥離可能な保護(カバー)フィルムを積層することが好ましい。
この剥離可能な保護フィルムとしては、樹脂層と支持フィルムとの接着力よりも小さいものであればよく、例えば、ポリエチレンフィルムやポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等を用いることができる。
【0097】
なお、本発明のドライフィルムは、前記保護フィルム上に硬化性樹脂組成物を塗布、乾燥させることにより樹脂層を形成し、この樹脂層表面に前記支持フィルムを積層するものであってもよい。すなわち、本発明において、ドライフィルムを製造する際に硬化性樹脂組成物を塗布するフィルムとしては、支持フィルムおよび保護フィルムのいずれを用いてもよい。
【0098】
[硬化物]
本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物、または、上記本発明のドライフィルムの樹脂層を硬化して得られるものである。
【0099】
[プリント配線板]
本発明のプリント配線板は、本発明の硬化性樹脂組成物、または、本発明のドライフィルム樹脂層の硬化物を有するものである。本発明のプリント配線板は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、本発明のドライフィルムを、回路が形成された配線基板上に、ラミネーター等を用いて樹脂層が基板側になるように貼り合わせる。なお、この工程では、本発明のドライフィルムを積層する代わりに、本発明の硬化性樹脂組成物を回路が形成された配線基板上に塗布し、乾燥してタックフリーの樹脂層を形成してもよい。
ここで、配線基板としては、ガラス布エポキシや不織布エポキシなどの各種基材に予め銅等の回路が形成されたプリント配線板やフレキシブルプリント配線板等を挙げることができる。
【0100】
次に、配線基板上に形成した樹脂層に対し、支持フィルムを剥離してから、もしくは、支持フィルム上から、所定のパターンを有するフォトマスクを介して活性エネルギー線を照射し、パターン露光する。
ここで、活性エネルギー線の照射に用いられる露光機としては、光源として、高圧水銀灯ランプやメタルハライドランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、直接描画(ダイレクトイメージング露光)装置も用いることができる。また、露光量は、膜厚等によって異なるが、一般には10~1000mJ/cm、好ましくは20~800mJ/cmの範囲内とする。
【0101】
次に、未露光部をアルカリ水溶液(例えば、0.3~3質量%炭酸ソーダ水溶液)により現像してパターン状の光硬化物を形成する。
ここで、現像方法としては、ディッピング法やシャワー法、スプレー法等を用いることができ、現像液としては、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ水溶液を使用することができる。
【0102】
さらに、得られたパターン状の硬化物に対し、加熱硬化(例えば、100~180℃)、もしくは活性エネルギー線の照射による硬化を行うことにより、密着性や硬度等の諸特性に優れた硬化膜を形成することができる。このようにして、配線基板上により微細な小径のビアホール用開口を有する層間絶縁層を形成することができる。
ここで、加熱硬化等の加熱処理は、熱風循環式乾燥炉やIR炉等を用いて行うことができる。
【0103】
そしてさらに、必要に応じて、ビアホールを含む導体回路と層間絶縁層を交互にビルドアップし、最終的にソルダーレジストを形成し、プリント配線板を製造する。
【0104】
以上説明したように、本発明の硬化性樹脂組成物は、層間絶縁層の材料として有用であるが、その他、ソルダーレジストやカバーレイ等のプリント配線板の永久被膜としてのパターン層を形成する用途にも用いることができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、解像性に優れ、しかも表面粗度が小さいながらも、銅めっきにより形成される導体回路との優れた密着性(高いピール強度)が得られることから、微細な回路形成や伝送損失の低減が求められる半導体パッケージの層間絶縁材料にも好適に用いることができる。また、本発明の硬化性樹脂組成物は、粗面化処理後のビアホール開口部の亀裂が抑制され、ビアホール間の絶縁性が向上することから、高密度配線のプリント配線板にも好適に用いることができる。
【実施例
【0105】
以下、本発明を、実施例および比較例を示して具体的に説明するが、本発明は下記実施例および比較例に限定されるものではない。尚、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0106】
[アルカリ可溶性樹脂の合成]
(合成例1:アルカリ可溶性アクリレート付加アミドイミド樹脂(アルカリ可溶性樹脂A-1))
攪拌装置、温度計、コンデンサーを付けた4口フラスコに、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート103.5gとイソホロンジイソシアネート222.0g、トリメリット酸無水物192.0gを仕込み、攪拌を行いながら120℃まで昇温した。60℃付近から激しく発泡しはじめ、フラスコ内容物は徐々に透明となった。120℃で5時間反応を行い系内のNCO%が9.0質量%になった点で40℃まで冷却した。さらにジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート166.4g、メチルハイドロキノン1.0gを加え、その中に、アロニックスM-305(東亜合成社製、OH当量:467.5)234.7gを加え、発熱に注意しながら80℃に昇温した。80℃で9時間反応させた後、赤外線吸収スペクトルにて2270cm-1のイソシアネートの吸収が消失している事を確認し薄黄色透明液体のアルカリ可溶性樹脂A-1の樹脂溶液を得た。不揮発分は42%、固形分の酸価は68.4mgKOH/g、重量平均分子量は約1,524(ポリスチレン換算)であった。
【0107】
(合成例2:フェノール出発型カルボキシル基含有感光性樹脂(アルカリ可溶性樹脂A-2))
温度計、窒素導入装置兼アルキレンオキシド導入装置および撹拌装置を備えたオートクレーブに、ノボラック型クレゾール樹脂(昭和電工社製ショウノールCRG951、OH当量:119.4)119.4g、水酸化カリウム1.19gおよびトルエン119.4gを仕込み、撹拌しつつ系内を窒素置換し、加熱昇温した。次に、プロピレンオキシド63.8gを徐々に滴下し、125~132℃、0~4.8kg/cmで16時間反応させた。その後、室温まで冷却し、この反応溶液に89%リン酸1.56gを添加混合して水酸化カリウムを中和し、不揮発分62.1%、水酸基価が182.2g/eq.であるノボラック型クレゾール樹脂のプロピレンオキシド反応溶液を得た。これは、フェノール性水酸基1当量当りアルキレンオキシドが平均1.08モル付加しているものであった。
次いで、得られたノボラック型クレゾール樹脂のアルキレンオキシド反応溶液293.0g、アクリル酸43.2g、メタンスルホン酸11.53g、メチルハイドロキノン0.18gおよびトルエン252.9gを、撹拌機、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、110℃で12時間反応させた。反応により生成した水は、トルエンとの共沸混合物として、12.6gの水が留出した。その後、室温まで冷却し、得られた反応溶液を15%水酸化ナトリウム水溶液35.35gで中和し、次いで水洗した。その後、エバポレーターにてトルエンをジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート118.1gで置換しつつ留去し、ノボラック型アクリレート樹脂溶液を得た。次に、得られたノボラック型アクリレート樹脂溶液332.5gおよびトリフェニルホスフィン1.22gを、撹拌器、温度計および空気吹き込み管を備えた反応器に仕込み、空気を10ml/分の速度で吹き込み、撹拌しながら、テトラヒドロフタル酸無水物60.8gを徐々に加え、95~101℃で6時間反応させ、カルボキシル基含有感光性樹脂A-2の樹脂溶液を得た。不揮発分は65%、固形分の酸価は88mgKOH/g、重量平均分子量は約8,000(ポリスチレン換算)であった。
【0108】
(合成例3:エポキシ出発型カルボキシル基含有感光性樹脂(アルカリ可溶性樹脂A-3))
撹拌機及び還流冷却器の付いた四つ口フラスコに、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、エピクロンN-695、エポキシ当量:220)220gを入れ、カルビトールアセテート214gを加え、加熱溶解した。次に、重合禁止剤としてハイドロキノン0.1gと、反応触媒としてジメチルベンジルアミン2.0gを加えた。この混合物を95~105℃に加熱し、アクリル酸72gを徐々に滴下し、16時間反応させた。この反応生成物を80~90℃まで冷却し、テトラヒドロフタル酸無水物106gを加え、8時間反応させ、冷却後、取り出した。
このようにして得られたカルボキシル基含有感光性樹脂A-3の樹脂溶液を得た。不揮発分は65%、固形分の酸価は100mgKOH/g、重量平均分子量は約3,500(ポリスチレン換算)であった。
【0109】
(合成例4:カルボキシル基含有共重合感光性樹脂(アルカリ可溶性樹脂A-4))
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えた2リットル容セパラブルフラスコに、ジエチレングリコールジメチルエーテル900g、およびt-ブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(日油社製パーブチルO)21.4gを仕込み、90℃に昇温後、メタクリル酸309.9g、メタクリル酸メチル116.4g、及びラクトン変性2-ヒドロキシエチルメタクリレート(ダイセル化学工業社製プラクセルFM1)109.8gをビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(日油社製パーロイルTCP)21.4gと共にジエチレングリコールジメチルエーテル中に3時間かけて滴下し、さらに6時間熟成することによってカルボキシル基含有共重合樹脂溶液を得た。反応は、窒素雰囲気下で行った。
次に上記カルボキシル基含有共重合樹脂溶液に、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート(ダイセル化学社製サイクロマーA200)363.9g、ジメチルベンジルアミン3.6g、ハイドロキノンモノメチルエーテル1.80gを加え、100℃に昇温し、撹拌することによってエポキシの開環付加反応を行った。16時間後、カルボキシル基含有共重合感光性樹脂A-4の樹脂溶液を得た。不揮発分は53.8%、固形分の酸価は108.9mgKOH/g、重量平均分子量は25,000(ポリスチレン換算)であった。
【0110】
(実施例1~4、6~12、参考例5、比較例1~4)
下記の表1、2に示す配合に従い、各成分を配合し、攪拌機にて予備混合した後、3本ロールミルで混練して分散させ、実施例1~4、6~12、参考例5、比較例1~4の硬化性樹脂組成物を調製した。なお、表中の配合量は、質量部を示す。
【0111】
【表1】
【0112】
*1:上記合成例1で合成したアルカリ可溶性樹脂A-1
*2:上記合成例1で合成したアルカリ可溶性樹脂A-2
*3:上記合成例1で合成したアルカリ可溶性樹脂A-3
*4:上記合成例1で合成したアルカリ可溶性樹脂A-4
*5:IGM社製Omnirad TPO(アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤)
*6:DIC社製HP-7200(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)
*7:白石カルシウム社製ブリリアント1500(平均粒子径0.15μm)
*8:白石カルシウム社製ソフトン3200(平均粒子径0.70μm)
*9:白石カルシウム社製ソフトン2600(平均粒子径0.85μm)
*10:白石カルシウム社製ソフトン2200(平均粒子径1.0μm)
*11:白石カルシウム社製BF-100(平均粒子径3.6μm)
*12:白石カルシウム社製BF-200(平均粒子径5.0μm)
*13:白石カルシウム社製BF-300(平均粒子径8.0μm)
*14:アドマテックス社製SO-E2(平均粒子径0.55μm)
*15:アドマテックス社製SO-E6(平均粒子径2.0μm)
*16:デンカ社製DAW-03(平均粒子径4.0μm)
*17:龍森社製ヒューズレックスWX(平均粒子径1.0μm)
*18:信越化学工業社製X-12-1116(チオウレア骨格含有シランカップリング剤)
*19:信越化学工業社製KBM-503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)
*20:川崎化成工業社製QS-30(4-メトキシ-1-ナフトール)
【0113】
【表2】
【0114】
(ドライフィルムの作製)
得られた各実施例、参考例および各比較例の光硬化性樹脂組成物を、支持フィルム(PETフィルム 東洋紡社製コスモシャインA4100 厚み50μm)上に塗布し、80℃で20分間乾燥し、厚さ20μmの光硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を形成した。次いで、この樹脂層上に、保護フィルムを貼り合わせて評価試験用ドライフィルムを作製した。
【0115】
(解像性)
各実施例、参考例および各比較例で得られた評価試験用ドライフィルムの保護フィルムを剥離し、銅べた基板上に、ニッコー・マテリアル社製CVP-300を用いて、温度70℃でラミネートし、評価試験基板を作製した。
この評価試験基板に対し、高圧水銀灯を搭載したダイレクトイメージング露光装置を用い、開口径25μmφのパターンを露光量170mJ/cmで露光し、次いで、支持フィルムを剥離した後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液の現像液を用いてスプレー圧0.2MPaの条件で100秒間現像した。その後、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cmの条件で紫外線照射し、さらに180℃で60分間加熱硬化することで、解像性評価用基板を作製した。
このようにして開口径25μmφのパターンを有する樹脂層を形成した解像性評価用基板について、開口部のトップ径とボトム径をSEMにより角度45度にて観察、計測し、解像性を評価した。この評価基準は以下の通りである。
◎:(ボトム径÷トップ径)が0.8以上0.9未満。
〇:(ボトム径÷トップ径)が0.7以上0.8未満。
△:(ボトム径÷トップ径)が0.6以上0.7未満。
×:(ボトム径÷トップ径)が0.6未満。
【0116】
(ビア周辺のクラック評価)
前記解像性の評価にて作製した解像性評価用基板に対し、さらに後述する粗面化処理を行うことで、ビア周辺のクラック評価用基板を作製した。このビア周辺のクラック評価用基板の粗面化処理された開口径25μmφのパターンをSEMにより角度45度にて観察し、開口部周辺のクラック(亀裂)の有無を評価した。この評価基準は以下の通りである。
◎:開口部のクラックが無い。
〇:開口部に僅かにクラックが確認される。
×:開口部周辺に多くのクラックが確認される。
【0117】
(ピール強度)
前記解像性の評価にて作製した評価試験基板に対し、高圧水銀灯を搭載したダイレクトイメージング露光装置を用い、露光量170mJ/cmで全面露光し、次いで、支持フィルムを剥離した後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液の現像液を用いてスプレー圧0.2MPaの条件で100秒間現像した。その後、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cmの条件で紫外線照射し、さらに180℃で60分間加熱硬化した。
このようにして硬化樹脂層を全面に形成した配線基板(硬化樹脂層形成基板)に対し、さらに後述する粗化処理をしてから導体層を形成し、ピール強度測定用基板(銅めっき基板)を作製し、次いで、このピール強度測定用基板の導体層に幅10mm、長さ100mmの形状で切込みをいれ、この切込みの一端を一部剥がし、引張試験機(島津製作所社製AGS-G100W)を用いて、JISK7127に準拠して、引張速度1.0mm/分、23℃の条件にて測定した時の荷重(kgf/cm)をピール強度とし、密着性を評価した。この評価基準は以下の通りである。
○:ピール強度が0.3kgf/cm以上のもの。
△:ピール強度が0.15kgf/cm以上0.3kgf/cm未満のもの。
×:ピール強度が0.15kgf/cm未満のもの。
【0118】
・粗化処理
上記硬化樹脂層形成基板を、膨潤液であるアトテックジャパン社製のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(グリコールエーテル類、水酸化ナトリウムの水溶液)に、60℃で5分間浸漬した。次に、粗化液として、アトテックジャパン社製のコンセントレート・コンパクトP(KMnO:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)を用い、60℃で10分間浸漬した。最後に、中和液として、アトテックジャパン社製のリダクションショリューシン・セキュリガントP(硫酸の水溶液)を用い、60℃で5分間浸漬した。その後、80℃で30分乾燥を行った。
【0119】
・導体層の形成
まず、粗化処理を終えた硬化樹脂層形成基板に対し、下記1~6の工程(アトテックジャパン社製の薬液を使用した銅めっき工程)にて、無電解銅めっきを施した。形成された無電解銅めっき層の厚さは1μmであった。次いで、無電解銅めっき層を形成した評価試験基板に対し、150℃にて30分間の加熱処理を行った後に、硫酸銅電解めっきを行い、厚さ25μmの導体層を形成した。最後に、アニール処理を180℃にて60分間行い、密着性の評価に供した。
1.アルカリクリーニング(絶縁層の表面の洗浄と電荷調整)工程
Cleaning Cleaner Securiganth 902(商品名)を用いて、60℃で5分間洗浄した。
2.ソフトエッチング工程
硫酸酸性ペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液を用いて、30℃で1分間処理した。
3.プレディップ(Pd付与のための絶縁層の表面の電荷の調整)工程
Pre. Dip Neoganth B(商品名)を用い、室温で1分間処理した。4.アクティヴェーター付与(絶縁層の表面へのPdの付与)工程
Activator Neoganth 834(商品名)を用い、35℃で5分間処理した。
5.還元(絶縁層に付与されたPdを還元)工程
Reducer Neoganth WA(商品名)とReducer Acceralator 810 mod.(商品名)との混合液を用い、30℃で5分間処理した。6.無電解銅めっき(Cuを絶縁層の表面(Pd表面)に析出)工程
Basic Solution Printganth MSK-DK(商品名)と、Copper solution Printganth MSK(商品名)と、Stabilizer Printganth MSK-DK(商品名)と、Reducer Cu(商品名)との混合液を用いて、35℃で20分間処理した。
【0120】
(B-HAST耐性)
各実施例、参考例および各比較例で得られた評価試験用ドライフィルムの保護フィルムを剥離し、クシ型電極(ライン/スペース=12μm/13μm)が形成されたBT基板に、ニッコー・マテリアル社製CVP-300を用いて、温度70℃でラミネートした後、高圧水銀灯を搭載したダイレクトイメージング露光装置を用い、露光量170mJ/cmで電極端子部以外を露光し、次いで、支持フィルムを剥離した後、1質量%の炭酸ナトリウム水溶液の現像液を用いてスプレー圧0.2MPaの条件で100秒間現像した。その後、UVコンベア炉にて積算露光量1000mJ/cmの条件で紫外線照射し、さらに180℃で60分間加熱硬化することで、B-HAST耐性評価基板を作製した。このB-HAST耐性評価基板の電極端子から電圧5Vをかけ、130℃、湿度85%の雰囲気下の高温高湿槽に入れ、槽内HAST試験を行った。槽内絶縁抵抗値が10Ω未満になった際の経過時間を、下記の判断基準に従い評価した。
◎:400時間超
〇:200~400時間
×:200時間未満
【0121】
表1に示す結果から明らかなように、本発明のドライフィルムを用いた実施例1~4、6~12に関しては、解像性、ピール強度、ビア周辺のクラック抑制、B-HAST耐性を全て満足する結果となった。一方、粗化剤により分解または溶解する無機フィラーの平均粒子径が0.5μmを下回る比較例1については、充分なピール強度が得られず、また、平均粒子径が6μmを上回る比較例2については、クラックが顕著に発生し、また、解像性とB-HAST耐性が悪かった。粗化剤により分解または溶解しない無機フィラーが球状ではない場合、比較例3に示すとおり、クラックが顕著に発生し、また、解像性とB-HAST耐性が悪かった。(D-2)の無機フィラーを含有しない比較例4は、ビア周辺のクラックが顕著に発生した。