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特許7187229電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジおよび電子写真装置
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  • 特許-電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジおよび電子写真装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】電子写真感光体、電子写真感光体の製造方法、プロセスカートリッジおよび電子写真装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/147 20060101AFI20221205BHJP
   G03G 5/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
G03G5/147 502
G03G5/00 101
G03G5/147 504
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018176217
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020046575
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】野中 正樹
(72)【発明者】
【氏名】森 春樹
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-070023(JP,A)
【文献】特開2009-104145(JP,A)
【文献】特開2013-088714(JP,A)
【文献】特開2016-184059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/147
G03G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、感光層と、を有する電子写真感光体であって、
該電子写真感光体の表面層が、
フッ素原子を含む樹脂粒子と、
重合性官能基を2つ以上有する電荷輸送性化合物と、
下記一般式(1)で示される化合物と、
【化1】
(一般式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。Rは、炭素原子数3以上6以下のアルキル基を示す。)
下記一般式(2)で示される構造および下記一般式(3)で示される構造を有する樹脂と、
【化2】
(一般式(2)中、R11は、水素原子またはメチル基を示す。R12は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基を示す。aは、3~5のいずれかの整数である。)
【化3】
(一般式(3)中、R111は、水素原子またはメチル基を示す。R112は、炭素原子数1以上9以下のアルキル基を示す。)
を含有する組成物の共重合物を含有し、
前記電荷輸送性化合物が有する前記重合性官能基が、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基から選択され、
前記組成物中の、前記一般式(1)で示される化合物の含有量が、0.10質量%以上であることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記組成物中の、前記電荷輸送性化合物の含有量が、58.0質量%以上99.0質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記組成物が、さらにシロキサン変性アクリル樹脂を含有し、前記組成物中の、前記シロキサン変性アクリル樹脂の含有量が、0.10質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記組成物中の、前記一般式(1)で示される化合物の含有量が、0.10質量%以上10.0質量%以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記一般式(1)中、Rが、炭素原子数3のアルキル基であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記一般式(1)中、Rが、n-プロピル基であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
前記組成物が、さらに下記一般式(6)で示される化合物を含有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の電子写真感光体。
【化4】
(一般式(6)中、R1111は、水素原子またはメチル基を示す。)
【請求項8】
電子写真感光体の製造方法であって、
該製造方法が、
表面層用塗布液を調製する工程、
該表面層用塗布液の塗膜を形成する工程、ならびに、
該塗膜を硬化させることによって該電子写真感光体の表面層を形成する工程
を有し、
該表面層用塗布液が、
フッ素原子を含む樹脂粒子と、
重合性官能基を2つ以上有する電荷輸送性化合物と、
下記一般式(1)で示される化合物と、
【化5】
(一般式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。Rは、炭素原子数3以上6以下のアルキル基を示す。)
下記一般式(2)で示される構造および下記一般式(3)で示される構造を有する樹脂と、
【化6】
(一般式(2)中、R11は、水素原子またはメチル基を示す。R12は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基を示す。aは、3~5のいずれかの整数である。)
【化7】
(一般式(3)中、R111は、水素原子またはメチル基を示す。R112は、炭素原子数1以上9以下のアルキル基を示す。)
を含有する組成物を含有し、
前記電荷輸送性化合物が有する前記重合性官能基が、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基から選択され、
前記組成物中の、前記一般式(1)で示される化合物の含有量が、0.10質量%以上であり、
前記電子写真感光体の表面層が、前記組成物の共重合物を含有
とを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
請求項1~7のいずれか1項に記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、その製造方法ならびに、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機電子写真感光体(以下、単に「電子写真感光体」と称する。)の耐久性を高めるため、最表面の層(以下、「表面層」と称する。)に硬化性樹脂を用いることが行われている。
【0003】
特許文献1には、表面の滑り性や画像流れを改善するために、重合性官能基を有する電荷輸送性化合物から得られる硬化性樹脂に、撥水性および/または潤滑性を有する粒子および分散剤を含有させる技術が開示されている。
特許文献2には、フッ素原子を含む樹脂粒子の分散性を改良するために、特定の分散剤を用いる技術が開示されている。
特許文献3には、フッ素原子を含む樹脂粒子および特定の分散剤から得られる分散液を、硬化性樹脂からなる表面層に適用した例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-043818号公報
【文献】国際公開第2008/053904号
【文献】特開2018-077450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に記載の電子写真感光体では、電気特性の変動や、表面の潤滑性が十分満足なものではない場合があった。
【0006】
本発明の目的は、支持体および該支持体上に形成された感光層を有する電子写真感光体において、耐摩耗性、耐キズ性に優れ、電気特性が良好であり、画像不良を抑制できる電子写真感光体および、その製造方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明に係る電子写真感光体は、支持体と、感光層と、を有する電子写真感光体であって、該電子写真感光体の表面層が、フッ素原子を含む樹脂粒子と、重合性官能基を2つ以上有する電荷輸送性化合物と、下記一般式(1)で示される化合物と、
【化1】
(上記一般式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。Rは、炭素原子数3以上6以下のアルキル基を示す。)
下記一般式(2)で示される構造および下記一般式(3)で示される構造を有する樹脂と、
【化2】
(上記一般式(2)中、R11は、水素原子またはメチル基を示す。R12は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基を示す。aは、3~5のいずれかの整数である。)
【化3】
(上記一般式(3)中、R111は、水素原子またはメチル基を示す。R112は、炭素原子数1以上9以下のアルキル基を示す。)
を含有する組成物の共重合物を含有し、電荷輸送性化合物が有する重合性官能基が、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基から選択され、上記組成物中の、一般式(1)で示される化合物の含有量が、0.10質量%以上であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、電子写真感光体の製造方法であって、該製造方法が、表面層用塗布液を調製する工程、該表面層用塗布液の塗膜を形成する工程、ならびに、該塗膜を硬化させることによって該電子写真感光体の表面層を形成する工程を有し、該表面層用塗布液が、フッ素原子を含む樹脂粒子と、重合性官能基を2つ以上有する電荷輸送性化合物と、上記一般式(1)で示される化合物と、上記一般式(2)で示される構造および上記一般式(3)で示される構造を有する樹脂とを含有する組成物を含有し、電荷輸送性化合物が有する重合性官能基が、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基から選択され、上記組成物中の、一般式(1)で示される化合物の含有量が、0.10質量%以上であり、前記電子写真感光体の表面層が、前記組成物の共重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体の製造方法に関する。

【0009】
また、本発明は、電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジに関する。
【0010】
また、本発明は、電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有する電子写真装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、支持体と、感光層と、を有する電子写真感光体において、耐摩耗性、耐キズ性に優れ、電気特性が良好であり、画像不良を抑制できる電子写真感光体、およびその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ、および電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の層構成の例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の一例を示す図である。
図3】(a):電子写真感光体の表面加工に用いるモールドを示す上面図である。(b):図3(a)に示されたモールドにおける凸部のB-B断面図である。(c):図3(a)に示されたモールドにおける凸部のC-C断面図である。
図4】電子写真感光体の表面に凹部を形成するための圧接形状転写加工装置の一例を示す図である。
図5】研磨シートを用いた研磨機の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る電子写真感光体は、支持体と、感光層と、を有する電子写真感光体であって、該電子写真感光体の表面層が、フッ素原子を含む樹脂粒子と、重合性官能基を2つ以上有する電荷輸送性化合物と、下記一般式(1)で示される化合物と、
【化4】
(上記一般式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を示す。Rは、炭素原子数3以上6以下のアルキル基を示す。)
下記一般式(2)で示される構造および下記一般式(3)で示される構造を有する樹脂と、
【化5】
(上記一般式(2)中、R11は、水素原子またはメチル基を示す。R12は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基を示す。aは、3~5のいずれかの整数である。)
【化6】
(上記一般式(3)中、R111は、水素原子またはメチル基を示す。R112は、炭素原子数1以上9以下のアルキル基を示す。)
を含有する組成物の共重合物を含有し、電荷輸送性化合物が有する重合性官能基が、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基から選択され、上記組成物中の、下記一般式(1)で示される化合物の含有量が、0.10質量%以上であることを特徴とする。
【0014】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、本発明の電子写真感光体において、耐摩耗性、耐キズ性に優れ、電気特性が良好であり、画像不良を抑制することを達成するためには、以下の点が重要であることを見出した。
【0015】
硬化性樹脂にフッ素原子を含む樹脂粒子および分散剤を含有させた表面層は、硬化性樹脂による優れた耐摩耗性と、膜中に良好に分散されたフッ素原子を含む樹脂粒子による優れた耐キズ性を有する。しかしながら、フッ素原子を含む樹脂粒子の分散性に寄与しない過剰となった分散剤が一部表面層膜中に残留しやすかった。この過剰となった分散剤が表面層膜中を自由に移動することで、膜中や表面近傍で凝集しやすかった。結果、膜中で局所的な電荷捕獲サイトを形成して電気特性を損ないやすく、また、表面近傍で表面潤滑性を悪化させてクリーニング不良を発生しやすい、などの課題の原因となっていたと考えられる。
【0016】
本発明では、一般式(1)で示される化合物をさらに硬化性樹脂中に共重合させることで、硬化性樹脂中の架橋網目構造を密にして、過剰となった分散剤が表面層膜中を自由に移動することを効果的に抑制する。その結果として、耐摩耗性、耐キズ性に優れ、電気特性が良好であり、表面潤滑性が良好である電子写真感光体が提供できることを本発明者らは見出した。
【0017】
[フッ素原子を含む樹脂粒子]
本発明で用いられるフッ素原子を含む樹脂粒子(フッ素原子含有樹脂粒子)としては、例えば、四フッ化エチレン樹脂粒子、三フッ化エチレン樹脂粒子、四フッ化エチレン六フッ化プロピレン樹脂粒子、フッ化ビニル樹脂粒子、フッ化ビニリデン樹脂粒子、二フッ化二塩化エチレン樹脂粒子などが挙げられる。また、それら樹脂の共重合体の粒子も挙げられる。これらの中でも、四フッ化エチレン樹脂粒子が好ましい。
【0018】
耐キズ性が良好である点で、フッ素原子含有樹脂粒子の一次粒子の平均粒径は0.4μm以下であることが好ましい。
【0019】
表面層中のフッ素原子含有樹脂粒子の含有量は、表面層の全質量に対して4.0質量%
以上40.0質量%以下であることが好ましい。
【0020】
[電荷輸送性化合物]
本発明において、重合性官能基を2つ以上有する電荷輸送性化合物としては、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物などが挙げられる。
【0021】
好ましくは下記一般式(4)もしくは下記一般式(5)で示される電荷輸送性化合物が挙げられる。
【0022】
【化7】
一般式(4)中、Ar、ArおよびArは、それぞれ独立に、下記式(M1)で示される1価の基、または、置換もしくは無置換のアリール基を示す。Arは、下記式(M2)で示される2価の基、または、置換もしくは無置換のアリーレン基を示す。ただし、Ar~Arの少なくとも2つは、下記式(M1)で示される1価の基、または、下記式(M2)で示される2価の基である。rは、0または1である。
【化8】
式(M1)中、R11111は、水素原子またはメチル基を示す。Ar11は、置換もしくは無置換のアリーレン基を示す。mは、1以上の整数である。
【化9】
式(M2)中、R11112は、水素原子またはメチル基を示す。Ar12は、置換もしくは無置換の3価の芳香族炭化水素基を示す。nは、1以上の整数である。
【0023】
【化10】
一般式(5)中、Ar、Ar、ArおよびAr10は、それぞれ独立に、下記式(M1)で示される1価の基、または、置換もしくは無置換のアリール基を示す。ArおよびArは、それぞれ独立に、下記式(M2)で示される2価の基、または、置換もしくは無置換のアリーレン基を示す。ただし、Ar~Ar10の少なくとも2つは、下記式(M1)で示される1価の基または下記式(M2)で示される2価の基である。Pは、酸素原子、シクロアルキリデン基、2つのフェニレン基が酸素原子を介して結合した2価の基、または、エチレン基を示す。sおよびtは、それぞれ独立に、0または1である。
【化11】
式(M1)中、R11111は、水素原子またはメチル基を示す。Ar11は、置換もしくは無置換のアリーレン基を示す。mは、1以上の整数である。
【化12】
式(M2)中、R11112は、水素原子またはメチル基を示す。Ar12は、置換もしくは無置換の3価の芳香族炭化水素基を示す。nは、1以上の整数である。
【0024】
より好ましくは、電気特性が良好な点から、一般式(4)で示される電荷輸送性化合物である。
【0025】
<電荷輸送性化合物の具体例>
以下に電荷輸送性化合物の具体例として、例示化合物(C-1)~(C-20)を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらは複数種類用いてもよい。
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
電気特性が良好な点で、上記組成物中の電荷輸送性化合物の含有量は、58.0質量%以上99.0質量%以下であることが好ましい。
【0026】
[一般式(1)で示される化合物]
一般式(1)で示される化合物について説明する。一般式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基であり、Rは、炭素原子数3以上6以下のアルキル基である。本発明において、以下に一般式(1)で示される化合物の具体例として、例示化合物(A-1)~(A-48)を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらは複数種類用いてもよい。一般式(1)で示される化合物の中でも、本発明の効果が大きい点から、Rの炭素原子数は3であることが好ましい。より好ましくは、例示化合物(A-1)または例示化合物(A-25)である。
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【0027】
本発明の効果が十分得られる点で、上記組成物中の一般式(1)で示される化合物の含有量は、0.10質量%以上である。含有量が0.10質量%未満であると、電気特性や表面潤滑性が十分満足できない場合がある。本発明の効果が十分に得られる点で、より好ましくは、上記組成物中の一般式(1)で示される化合物の含有量は、0.10質量%以上10.0質量%以下である。
【0028】
[一般式(2)で示される構造および一般式(3)で示される構造を有する樹脂]
一般式(2)で示される構造および一般式(3)で示される構造を有する樹脂について説明する。一般式(2)中、R11は、水素原子またはメチル基であり、R12は炭素原子数1以上4以下のアルキレン基であり、aは、3~5のいずれかの整数である。本発明において、以下に一般式(2)で示される樹脂の原料となるモノマーの化合物の具体例として、例示化合物(F-1)~(F-16)を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化21】
【化22】
【0029】
一般式(3)中、R111は、水素原子またはメチル基であり、R112は、炭素原子数1以上9以下のアルキル基である。R112のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基などが挙げられる。フッ素原子を含む樹脂粒子の分散性が良好な点から、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基であることが好ましい。
【0030】
本発明において、一般式(2)で示される構造および一般式(3)で示される構造を有する樹脂は、一般式(2)の繰り返し構造と、一般式(3)の繰り返し構造をもつ、「共重合樹脂」であることが好ましい。また、一般式(2)で示される構造および一般式(3)で示される構造を有する樹脂の含有量は、表面層中のフッ素原子含有樹脂粒子に対して3.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0031】
[一般式(6)で示される化合物]
本発明の効果がより高まる点で、上記組成物中にさらに下記一般式(6)で示される化合物を含有させることが好ましい。
【化23】
一般式(6)中、R1111は、水素原子またはメチル基を示す。
【0032】
表面の潤滑性がより高まる点で、上記組成物中にさらにシロキサン変性アクリル樹脂を含有させることが好ましい。
【0033】
[電子写真感光体]
次に、本発明の一態様に係る電子写真感光体の構成について述べる。図1(a)~(d)は、本発明の実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す図である。
【0034】
図1(a)に示すように、本実施形態に係る電子写真感光体の一例として、支持体101、感光層104、および硬化表面層(表面層)105をこの順に有する電子写真感光体が例示できる。また、図1(b)に示すように、本実施形態に係る電子写真感光体は、支持体101と感光層104との間に、導電層102や下引き層103を有してもよい。
【0035】
各層の形成方法としては、後述する各層の塗布液を調製し、所望の層の順番に塗布して、乾燥させる方法が挙げられる。このとき、塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、インクジェット塗布、ロール塗布、ダイ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、ワイヤーバー塗布、リング塗布などが挙げられる。これらの中でも、効率および生産性の観点から、浸漬塗布が好ましい。
以下、各層について説明する。
【0036】
<支持体>
図1(a)に示したように、本実施形態に係る電子写真感光体は、支持体101を有する。本実施形態において、支持体101は導電性を有する導電性支持体であることが好ましい。また、支持体101の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。中でも、円筒状支持体であることが好ましい。また、支持体101の表面に、陽極酸化などの電気化学的な処理や、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。
支持体の材質としては、金属、樹脂、ガラスなどが好ましい。
金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレスや、これらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。
また、樹脂やガラスには、導電性材料を混合または被覆するなどの処理によって、導電性を付与してもよい。
【0037】
<導電層>
図1(b)に示したように、本実施形態に係る電子写真感光体において、支持体101の上に、導電層102を設けてもよい。導電層102を設けることで、支持体101表面の傷や凹凸を隠蔽することや、支持体101表面における光の反射を制御することができる。
導電層は、導電性粒子と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0038】
導電性粒子の材質としては、金属酸化物、金属、カーボンブラックなどが挙げられる。
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などが挙げられる。
これらの中でも、導電性粒子として、金属酸化物を用いることが好ましく、特に、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0039】
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理したり、金属酸化物にリンやアルミニウムなど元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。
【0040】
また、導電性粒子は、芯材粒子と、その芯材粒子を被覆する被覆層とを有する積層構成としてもよい。芯材粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などが挙げられる。被覆層としては、酸化スズなどの金属酸化物が挙げられる。
【0041】
また、導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その体積平均粒子径が、1nm以上500nm以下であることが好ましく、3nm以上400nm以下であることがより好ましい。
【0042】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
また、導電層は、シリコーンオイル、樹脂粒子、酸化チタンなどの隠蔽剤などを更に含有してもよい。
【0043】
導電層の平均膜厚は、1μm以上50μm以下であることが好ましく、3μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
【0044】
導電層は、上述の各材料および溶剤を含有する導電層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。導電層用塗布液中で導電性粒子を分散させるための分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
【0045】
<下引き層>
図1(b)に示したように、本実施形態に係る電子写真感光体において、支持体101または導電層102の上に、下引き層103を設けてもよい。下引き層103を設けることで、層間の接着機能が高まり、電荷注入阻止機能を付与することができる。
【0046】
下引き層は、樹脂を含有することが好ましい。また、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0047】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
【0048】
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基などが挙げられる。
【0049】
また、下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子などを更に含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
電子輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電子輸送物質として、重合性官能基を有する電子輸送物質を用い、上述の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。金属としては、金、銀、アルミなどが挙げられる。
また、下引き層は、添加剤を更に含有してもよい。
【0050】
下引き層の平均膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.2μm以上40μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0051】
下引き層は、上述の各材料および溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥および/または硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0052】
<感光層>
本実施形態に係る電子写真感光体の感光層は、主に、(1)積層型感光層と、(2)単層型感光層とに分類される。電子写真特性の観点からは積層型感光層が好ましい。
【0053】
(1)積層型感光層は、図1(c)および(d)に示すように、電荷発生物質を含有する電荷発生層1041と、電荷輸送性化合物を含有する電荷輸送層1042と、を有する積層型の感光層104である。積層型感光層は、図1(c)に示したように、支持体101側から電荷発生層1041、電荷輸送層1042の順に積層された順層型の感光層と、図1(d)に示したように、支持体101側から電荷輸送層1042、電荷発生層1041の順に積層された逆層型の感光層がある。電子写真特性の観点からは順層型の感光層が好ましい。(2)単層型感光層は、図1(a)および(b)に示したように、電荷発生物質と電荷輸送性化合物を共に同一の層に含有する単層型の感光層である。
【0054】
(1)積層型感光層
上述のように、積層型感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有する。
【0055】
(1-1)電荷発生層
電荷発生層は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0056】
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生層中の電荷発生物質の含有量は、電荷発生層の全質量に対して、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂がより好ましい。
【0058】
また、電荷発生層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤をさらに含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、などが挙げられる。
【0059】
電荷発生層の平均膜厚は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。
【0060】
電荷発生層は、上述の各材料および溶剤を含有する電荷発生層用塗布液を調製し、この電荷発生層用塗布液の塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。電荷発生層用塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0061】
(1-2)電荷輸送層
電荷輸送層は、電荷輸送性化合物と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0062】
電荷輸送性化合物としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
電荷輸送層中の電荷輸送性化合物の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【0063】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特にポリアリレート樹脂が好ましい。
電荷輸送性化合物と樹脂との含有量比(質量比)は、4:10~20:10が好ましく、5:10~12:10がより好ましい。
【0064】
また、電荷輸送層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0065】
電荷輸送層の平均膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、8μm以上40μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0066】
電荷輸送層は、上述の各材料および溶剤を含有する電荷輸送層用塗布液を調製し、この電荷輸送層用塗布液の塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤または芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
【0067】
(2)単層型感光層
上述のように、単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送性化合物を共に含有する。単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送性化合物、樹脂および溶剤を含有する感光層用塗布液を調製し、この感光層用塗布液の塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。電荷発生物質、電荷輸送性化合物および樹脂としては、上記「(1)積層型感光層」における材料の例示と同様である。
【0068】
<表面層>
上述のように、本実施形態に係る電子写真感光体の表面層は、重合性官能基を2つ以上有する電荷輸送性化合物と、一般式(1)で示される化合物と、フッ素原子を含む樹脂粒子と、一般式(2)で示される構造および一般式(3)で示される構造を有する樹脂とを含有する組成物の共重合物を含有し、電荷輸送性化合物が有する重合性官能基が、アクリロイルオキシ基およびメタクリロイルオキシ基から選択され、上記組成物中の、一般式(1)で示される化合物の含有量が、0.10質量%以上である。
【0069】
表面層は、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化性樹脂を形成して作製してもよい。その際の反応としては、熱重合反応、光重合反応、放射線重合反応などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーとして、電荷輸送能を有する材料を用いてもよい。
【0070】
表面層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0071】
表面層には、さらに、電荷輸送性化合物を添加することができる。電荷輸送性化合物として、トリアリールアミン化合物、ヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、オキサゾール化合物、チアゾール化合物、トリアリルメタン化合物などが挙げられる。
【0072】
表面層の平均膜厚は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上7μm以下であることが好ましい。
【0073】
表面層は、上述の各材料および溶剤を含有する表面層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥および/または硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、脂肪族ハロゲン化炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。下層の電荷輸送層を溶解しないという観点から、アルコール系溶剤が好ましい。
【0074】
表面層用塗布液の塗膜を硬化させる手段としては、熱、紫外線、および/または、電子線によって硬化させる方法などが挙げられる。電子写真感光体の表面層の強度、電子写真感光体の耐久性を向上させるためには、紫外線または電子線を用いて塗膜を硬化させることが好ましい。
【0075】
電子線を照射する場合、加速器としては、例えば、スキャニング型、エレクトロカーテン型、ブロードビーム型、パルス型、ラミナー型などが挙げられる。電子線の加速電圧は、重合効率を損なわずに電子線による材料特性の劣化を抑制できる観点から、120kV以下であることが好ましい。また、表面層用塗布液の塗膜の表面での電子線吸収線量は、5kGy以上50kGy以下であることが好ましく、1kGy以上10kGy以下であることがより好ましい。
【0076】
また、電子線を用いて上記組成物を硬化(重合)させる場合、酸素による重合阻害作用を抑制する観点から、不活性ガス雰囲気で電子線を照射した後、不活性ガス雰囲気で加熱することが好ましい。不活性ガスとしては、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられる。
【0077】
また、紫外線または電子線の照射後に、電子写真感光体を100℃以上140℃以下に加熱することが好ましい。こうすることで、さらに高い耐久性を有し、画像不良を抑制する表面層が得られる。
【0078】
[電子写真感光体の表面加工]
次に、本発明に用いられる電子写真感光体の表面加工について説明する。
表面層の表面には、研磨シート、形状転写型部材(モールド)、ガラスビーズ、ジルコニアビーズなど用いて表面加工を施してもよい。また、塗布液の構成材料を使って表面に凹凸を形成させてもよい。電子写真感光体に接触させるクリーニング手段(クリーニングブレード)の挙動をより安定化させる目的で、電子写真感光体の表面層に凹部または凸部を設けることができる。
【0079】
上記凹部または凸部は、電子写真感光体の表面の全域に形成されていてもよいし、電子写真感光体の表面の一部分に形成されていてもよい。凹部または凸部が電子写真感光体の表面の一部分に形成されている場合は、少なくともクリーニング手段(クリーニングブレード)との接触領域の全域には凹部または凸部が形成されていることが好ましい。
【0080】
凹部を形成する場合は、凹部に対応した凸部を有するモールドを電子写真感光体の表面に圧接し、形状転写を行うことにより、電子写真感光体の表面に凹部を形成することができる。
【0081】
凸部を形成する場合は、凸部に対応した凹部を有するモールドを電子写真感光体の表面に圧接し、形状転写を行うことにより、電子写真感光体の表面に凸部を形成することができる。
【0082】
<電子写真感光体の周面に凹部を形成する方法>
形成するべき凹部に対応した凸部を有するモールドを電子写真感光体の周面に圧接し、形状転写を行うことにより、電子写真感光体の周面に凹部を形成することができる。
【0083】
電子写真感光体の周面に凹部を形成する表面加工に用いるモールドの一例について説明する。図3に、電子写真感光体の表面加工に用いるモールドの一例を示す。図3(a)はモールドの概略を示す上面図、図3(b)はモールドの凸部の電子写真感光体の軸方向の概略断面図(図3(a)のB-B断面における断面図)である。図3(c)はモールドの凸部の電子写真感光体の周方向の断面図(図3(a)のC-C断面の断面図)である。モールドの凹凸形状は特に限定されるものではないが、例えば、最大幅(モールド上の凸部を上から見たときの電子写真感光体の軸方向の最大幅のこと。以下同じ。)X:10~300μm、最大長さ(モールド上の凸部を上から見たときの電子写真感光体の周方向の最大長さのこと。以下同じ。)Y:10~300μm、面積率1~80%、高さH:0.1~10μmの凸形状を有することができる。なお、面積率とは、モールドを上から見たときに表面全体に占める凸部の面積の比率である。
【0084】
次に、モールドを設置する圧接形状転写加工装置について説明する。図4に、電子写真感光体の周面に凹部を形成するための圧接形状転写加工装置の一例を示す。
図4に示す圧接形状転写加工装置400によれば、被加工物である電子写真感光体401を回転させながら、その周面に連続的にモールド402を接触させ、加圧することにより、電子写真感光体401の周面に凹部や平坦部を形成することができる。加圧時の圧力は特に限定されるものではないが、例えば、3.0~10.0MPaの圧力で電子写真感光体と加圧部材をモールドに押し付けながら、電子写真感光体を周方向に回転させて、電子写真感光体の表面層(周面)の全面に凹部を形成することができる。
【0085】
加圧部材403の材質としては、例えば、金属、金属酸化物、プラスチック、ガラスなどが挙げられる。これらの中でも、機械的強度、寸法精度、耐久性の観点から、ステンレス鋼(SUS)が好ましい。加圧部材403は、その上面にモールド402が設置される。また、下面側に設置される支持部材(不図示)および加圧システム(不図示)により、支持部材404に支持された電子写真感光体401の周面に、モールド402を所定の圧力で接触させることができる。また、支持部材404を加圧部材403に対して所定の圧力で押し付けてもよいし、支持部材404および加圧部材403を互いに押し付けてもよい。
【0086】
図4に示す例は、加圧部材403を電子写真感光体401の軸方向と垂直な方向に移動させることにより、電子写真感光体401が従動または駆動回転しながら、その周面を連続的に加工する例である。さらに、加圧部材403を固定し、支持部材404を電子写真感光体401の軸方向と垂直な方向に移動させることにより、または、支持部材404および加圧部材403の両者を移動させることにより、電子写真感光体401の周面を連続的に加工することもできる。
【0087】
なお、形状転写を効率的に行う観点から、モールド402や電子写真感光体401を加熱することができる。加熱温度は特に限定されるものではないが、例えば、電子写真感光体の表面の温度が30~200℃になるように電子写真感光体およびモールドの温度を制御することができる。
【0088】
モールド402としては、例えば、微細な表面加工された金属や樹脂フィルムや、シリコンウエハーなどの表面にレジストによりパターニングをしたものや、微粒子が分散された樹脂フィルムや、微細な表面形状を有する樹脂フィルムに金属コーティングを施したものなどが挙げられる。
【0089】
また、電子写真感光体401に押し付けられる圧力を均一にする観点から、モールド402と加圧部材403との間に弾性体を設置することができる。
【0090】
電子写真感光体の周面の凹部や平坦部や凸部などは、例えば、レーザー顕微鏡、光学顕微鏡、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡などの顕微鏡を用いて観察することができる。
【0091】
<機械的研磨>
電子写真感光体の表面層を研磨し粗さを付与する場合は、電子写真感光体に研磨具を当接させ、いずれか一方あるいは両方を相対的に移動させて電子写真感光体の表面を研磨することにより、粗さを付与することができる。研磨具としては、基材上に研磨砥粒が結着樹脂中に分散された層を設けてなる研磨部材などが挙げられる。
【0092】
機械的研磨は公知の手段を利用できる。一般的には、電子写真感光体に研磨具を当接させ、いずれか一方あるいは両方を相対的に移動させて電子写真感光体の表面を研磨する。研磨具は、基材上に研磨砥粒が結着樹脂中に分散された層を設けてなる研磨部材である。
【0093】
砥粒としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化クロム、ダイヤモンド、酸化鉄、酸化セリウム、コランダム、珪石、窒化珪素、窒化硼素、炭化モリブデン、炭化珪素、炭化タングステン、チタンカーバイトおよび酸化珪素などの粒子が挙げられる。砥粒の粒子径は、0.01μm以上50μm以下であることが好ましい。砥粒の粒子径が小さすぎると、研磨力が弱くなり、電子写真感光体の最表面のF/C比を増加させにくくなる。これらの砥粒は、1種類あるいは2種類以上を混合して用いることができる。2種類以上を混合する場合は、材質や粒子径が異なっていても同じでもよい。
【0094】
研磨具に用いられる砥粒を分散させる結着樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂、電子線硬化樹脂、紫外線硬化樹脂、可視光硬化樹脂および防黴性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アミノ樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、ウレタンエラストマーおよびポリアミド-シリコーン樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂およびアルキッド樹脂が挙げられる。また、熱可塑性樹脂にイソシアネート系の硬化剤を添加してもよい。
【0095】
研磨具の結着樹脂中に砥粒を分散させてなる層の膜厚は、例えば1μm以上1000μm以下である。膜厚が厚すぎると膜厚ムラが生じやすく、結果、被研磨体の表面粗さのムラが問題となる。一方、膜厚が薄すぎると砥粒の脱落が起こりやすくなる。
【0096】
研磨具の基材の形状は特に制限されない。本例の実施形態では、円筒状の電子写真感光体を効率的に研磨するためにシート状の基材を用いたが、他の形状でもよい。(以下、本例の研磨具を研磨シートとも記載する)研磨具の基材の材質も特に制限されない。例えば、シート状の基材の材質としては、紙、織布、不織布、プラスチックフィルムが挙げられる。
【0097】
研磨具は、上記の砥粒、結着樹脂、結着樹脂を溶解可能な溶剤を混合し分散させた塗布液を、基材上に塗布、乾燥して得ることができる。
【0098】
<研磨装置>
本実施形態に係る電子写真感光体を研磨する研磨装置の一例について説明する。図5は、研磨シートを用いて円筒状の電子写真感光体を研磨する装置である。図5中、研磨シート501は中空の軸506に巻かれており、軸506に研磨シート501が送られる方向と逆方向に、研磨シート501に張力が与えられるようモーター(不図示)が配置されている。研磨シート501は矢印方向に送られ、ガイドローラー502a,502bを介してバックアップローラー503を通り、研磨後の研磨シート501はガイドローラー502c,502dを介してモーター(不図示)により巻き取り手段505に巻き取られる。研磨は、研磨シート501を被処理体(研磨を行う前の電子写真感光体)504に常時圧接して行われる。研磨シート501は絶縁性であることが多いため、研磨シート501の接する部位には、アースに接地されたものまたは導電性を有するものを用いることが好ましい。
【0099】
研磨シート501の送りスピードは、例えば10mm/min以上1000mm/min以下である。送り量が少ないと、研磨シート501表面への結着樹脂の付着、これに起因して被処理体504表面に深傷が生じる場合がある。
【0100】
被処理体504は、研磨シート501を介してバックアップローラー503と対向した位置に置かれる。バックアップローラー503は被処理体504の表面粗さの均一性を向上させる観点から、弾性体を用いてもよい。この際、研磨シート501を介して被処理体504とバックアップローラー503が所望の設定値で所定の時間押し当てられ、被処理体504の表面が研磨される。被処理体504の回転方向は、研磨シート501の送られる方向と同一であってもよいし、対向であってもよい。また、研磨の途中で回転方向を変更してもよい。
【0101】
バックアップローラー503の被処理体504に対する押し当て圧は、バックアップローラー503の硬度や研磨時間にもよるが、例えば0.005N/m以上15N/m以下である。
【0102】
電子写真感光体の表面粗さは、研磨シート501の送りスピード、バックアップローラー503の押し当て圧、研磨シートの砥粒種、研磨シートの結着樹脂の膜厚、基材の厚みなどを適宜選択することにより調整できる。
【0103】
[プロセスカートリッジ、電子写真装置]
本発明の一態様に係るプロセスカートリッジは、上述した電子写真感光体と、帯電手段、現像手段およびクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とする。
【0104】
また、本発明の一態様に係る電子写真装置は、上述した電子写真感光体、ならびに、帯電手段、露光手段、現像手段および転写手段を有することを特徴とする。
【0105】
図2に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。図2に示すように、円筒状の電子写真感光体201は、軸202を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体201の表面は、帯電手段203により、正または負の所定電位に帯電される。尚、図2においては、ローラー型帯電部材によるローラー帯電方式を示しているが、コロナ帯電方式、近接帯電方式、注入帯電方式などの帯電方式を採用してもよい。ローラー帯電方式の場合、ローラー型帯電部材に印加する電圧を直流電圧のみにしたDC帯電方式と、直流電圧に交流電圧を重畳したAC/DC帯電方式があるが、装置コスト削減、装置小型化などの観点からはDC帯電方式が好ましい。帯電された電子写真感光体201の表面には、露光手段(不図示)から露光光204が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。電子写真感光体201の表面に形成された静電潜像は、現像手段205内に収容されたトナーで現像され、電子写真感光体201の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体201の表面に形成されたトナー像は、転写手段206により、転写材207に転写される。トナー像が転写された転写材207は、定着手段208へ搬送され、トナー像の定着処理を受け、電子写真装置200の外へプリントアウトされる。電子写真装置200は、転写後の電子写真感光体201の表面に残ったトナーなどの付着物を除去するための、クリーニング手段9を有していてもよい。また、クリーニング手段を別途設けず、上記付着物を現像手段などで除去する、所謂、クリーナーレスシステムを用いてもよい。電子写真装置200は、電子写真感光体201の表面を、前露光手段(不図示)からの前露光光210により除電処理する除電機構を有していてもよい。また、本発明のプロセスカートリッジ211を電子写真装置200本体に着脱するために、レールなどの案内手段212を設けてもよい。
【0106】
本発明の電子写真感光体は、レーザービームプリンター、LEDプリンター、複写機、ファクシミリ、および、これらの複合機などに用いることができる。
【実施例
【0107】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0108】
[樹脂の製造方法]
(製造例1)
特許第4436456号明細書の「合成例(E-3)」に記載の方法により、例示化合物(F-10)で示される化合物が主成分である生成物を得た。
【0109】
続いて、特許第4436456号明細書の「製造例(E-1)」に記載の方法で、下記式(7)で示される化合物を得た。
【化24】
【0110】
次に、撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計およびガス吹込口を取り付けたガラスフラスコに、以下の各成分を導入した。
式(7)で示される化合物 70部
例示化合物(F-10)で示される化合物が主成分である生成物 30部
トリフルオロトルエン 270部
アゾビスイソブチロニトリル 0.35部
上記各成分を導入した上記フラスコに窒素ガスを導入し、還流下(約100℃に加熱)に、14時間反応させた。この反応液を10倍量のメタノール中に投入、沈澱させ、濾過を行った。
【0111】
得られた濾物1部を、メタノール43部およびイオン交換水17部の混合溶液中にて10℃で15分撹拌した後、ポリプロピレンフィルターにて遠心濾過を行った。得られた濾物にさらにメタノール40部を加え、10℃で40分撹拌した後、ポリプロピレンフィルターにて遠心濾過を行った。得られた濾物を8時間以上風乾した後、撹拌機付き減圧乾燥機にて、70℃、内圧260mmHg以下で3時間、減圧乾燥した。このようにして、例示化合物(F-10)に由来する繰り返し構造単位、および、式(7)で示される化合物に由来する繰り返し構造単位を有する樹脂(P-1)を得た。
【0112】
(製造例2)
製造例1において、例示化合物(F-10)を下記式(8)に変更した以外は製造例1と同様にして樹脂(P-2)を得た。
【化25】
【0113】
(実施例A1)
直径30mm、長さ357.5mm、肉厚0.7mmのアルミニウムシリンダーを支持体(導電性支持体)とした。
【0114】
次に、酸化亜鉛粒子(比表面積:19m/g、粉体抵抗:4.7×10Ω・cm)100部をトルエン500部と撹拌混合した。これにシランカップリング剤0.8部を添加し、6時間攪拌した。その後、トルエンを減圧留去して、130℃で6時間加熱して乾燥させることによって、表面処理された酸化亜鉛粒子を得た。シランカップリング剤としては、信越化学工業株式会社製のKBM-602(商品名)(化合物名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)を用いた。
【0115】
次に、ポリオールとしてのポリビニルブチラール(重量平均分子量:40000、商品名:BM-1、積水化学工業株式会社製)15部、および、ブロック化イソシアネート(商品名:スミジュール3175、住化コベストロウレタン株式会社製)15部を、メチルエチルケトン73.5部および1-ブタノール73.5部の混合溶剤に溶解させて溶解液を得た。この溶解液に上記表面処理された酸化亜鉛粒子80.8部、および、2,3,4-トリヒドロキシベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)0.8部を加えた。これらを直径0.8mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、23±3℃の雰囲気下で3時間分散処理した。
【0116】
分散処理後、シリコーンオイル(商品名:SH28PA、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.01部、および、架橋ポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子(商品名:TECHPOLYMER SSX-103、積水化成品工業株式会社製、一次粒子の平均粒径:3μm)5.6部、を加えて攪拌し、下引き層用塗布液を調製した。
この下引き層用塗布液を上記支持体上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を40分間160℃で乾燥させることによって、膜厚が18μmの下引き層を形成した。
【0117】
次に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角2θ±0.2°の7.4°および28.1°に強いピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン結晶(電荷発生物質)4部、および、下記式(9)で示される化合物0.04部を、シクロヘキサノン100部にポリビニルブチラール(商品名:エスレックBX-1、積水化学工業株式会社製)2部を溶解させた液に加えた。これらを直径1mmのガラスビーズを用いたサンドミルに入れ、23±3℃の雰囲気下で1時間分散処理した。
分散処理後、酢酸エチル100部を加えることによって、電荷発生層用塗布液を調製した。
この電荷発生層用塗布液を上記下引き層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を10分間90℃で乾燥させることによって、膜厚が0.19μmの電荷発生層を形成した。
【化26】
【0118】
次に、下記式(10)で示される化合物60部(電荷輸送性化合物)、下記式(11)で示される化合物30部(電荷輸送性化合物)、下記式(12)で示される化合物(電荷輸送性化合物)10部、ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ビスフェノールZ型のポリカーボネート)100部、下記式(13)で示される構造単位を有する樹脂(粘度平均分子量Mv:20000)0.2部を、o-キシレン260部、安息香酸メチル240部およびジメトキシメタン260部の混合溶剤に溶解させることによって、電荷輸送層用塗布液を調製した。
この電荷輸送層用塗布液を上記電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を60分間120℃で乾燥させることによって、膜厚18μmの電荷輸送層を形成した。
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【0119】
次に、樹脂(P-1)2.0部を、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン株式会社製)42部および1-プロパノール48部の混合溶剤に溶解させた。その後、四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:ルブロンL-2、ダイキン工業株式会社製)28部を加えた液を、高圧分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM-110EH、米国Microfluidics社製)に入れた。そして、40MPaの圧力で6回通過させて、フッ素原子を含む樹脂粒子の分散液を得た。得られた分散液中のフッ素原子を含む樹脂粒子の平均粒径は、0.20μmであった。
【0120】
続いて、例示化合物(C-2)で示される電荷輸送性化合物69.8部、例示化合物(A-1)で示される化合物0.10部、シロキサン変性アクリル樹脂(商品名:サイマックUS-270、東亞合成株式会社製)0.10部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン18部および1-プロパノール32部を上記分散液に加えた。そして、ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過を行うことによって、表面層用塗布液を調製した。
【0121】
この表面層用塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を5分間40℃で乾燥させた。乾燥後、窒素雰囲気下にて、加速電圧70kV、吸収線量15kGyの条件で1.6秒間電子線を塗膜に照射した。その後、窒素雰囲気下にて、塗膜の温度が135℃になる条件で10秒間加熱処理を行った。なお、電子線の照射から10秒間の加熱処理までの酸素濃度は10ppmであった。次に、大気中において、塗膜が100℃になる条件で1時間加熱処理を行い、膜厚5μmである表面層を形成した。
【0122】
このようにして、導電性支持体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および表面層を有する実施例A1の電子写真感光体を磨耗量評価用、傷画像評価用、17階調画像評価用、および電位変動量評価用にそれぞれ1本ずつ作製した。
【0123】
〔摩耗量評価〕
評価用の電子写真装置として、キヤノン株式会社製の複写機(商品名:imageRUNNER iR-ADVC5051)の改造機を使用した。
各実施例および比較例の電子写真感光体を上記複写機とともに温度15℃/湿度10%RHの環境下で3日間放置した後、使用した。
初期の画像は、各実施例の電子写真感光体をブラック用のプロセスカートリッジに装着し、これを本体のブラックのステーションにセットし、その画像比率5%の画像をA4縦サイズ紙にて20万枚出力した。20万枚の画像出力前後の感光層の膜厚変化分を摩耗量として評価した。評価結果を表1に示す。なお、摩耗量が2.0μm以下の場合、耐摩耗性が良好であると判断できる。
【0124】
〔傷画像評価〕
評価用の電子写真装置として、キヤノン株式会社製の複写機(商品名:imageRUNNER iR-ADVC5051)の改造機を使用した。
各実施例および比較例の電子写真感光体を上記複写機とともに温度15℃/湿度10%RHの環境下で3日間放置した後、使用した。
初期の画像は、各実施例の電子写真感光体をブラック用のプロセスカートリッジに装着し、これを本体のブラックのステーションにセットし、その画像比率5%の画像をA4縦サイズ紙にて20万枚出力した。目視にて、1万枚ごとの、電子写真感光体の表面の傷の発生に起因する画像欠陥(傷画像)の有無を確認した。評価結果を表1に示す。なお、20万枚の通紙を通して傷画像が発生しない場合、耐キズ性が良好であると判断できる。
【0125】
〔17階調画像評価〕
評価用の電子写真装置として、キヤノン株式会社製の複写機(商品名:imageRUNNER iR-ADVC5051)の改造機を使用した。
各実施例および比較例の電子写真感光体を上記複写機とともに温度15℃/湿度10%RHの環境下で3日間放置した後、使用した。
初期の画像は、各実施例の電子写真感光体をブラック用のプロセスカートリッジに装着し、これを本体のブラックのステーションにセットし、その画像比率5%の画像をA4縦サイズ紙にて20万枚出力した。次に、17階調の画像形成を行い、得られたA4全面の画像を以下の判断基準で画像ランク評価した。
A:縦スジが無く、画像再現性が良好である。
B:わずかに縦スジが見られるが、その他の部分については画像再現性が良好である。
C:拡大観察した際にやや不良が見られるが、画像再現性が良好である。
D:明確な縦スジが発生しており、画像再現性が低い。
評価結果を表1に示す。なお、画像ランクA~Bの場合、クリーニング性が良好であると判断できる。
【0126】
〔電位変動量評価〕
電子写真感光体の表面電位の測定は、評価装置から現像用カートリッジを抜き取り、そこに電位測定装置を挿入することで行った。電位測定装置は、現像用カートリッジの現像位置に電位測定プローブを配置することで構成されており、電位測定プローブの位置は、電子写真感光体の母線方向の中央とした。
電位の測定は、まず、初期暗部電位が-700Vとなるように印加電圧を調整した。一定の露光量にて780nmレーザー露光照射を行い、初期明部電位(「初期VL」と表記する。)を測定した。
続いて、現像用カートリッジを上記評価装置に取り付け、1000枚の画像出力を行った。1000枚の画像出力後、5分間放置し、現像用カートリッジを電位測定装置に付け替え、繰り返し使用後における各電子写真感光体の明部電位(「耐久後VL」と表記する。)を測定した。「耐久後VL」と「初期VL」との電位差の絶対値を電位変動量として算出した。評価結果を表1に示す。なお、電変動量が25V以下の場合、電位変動量が良好であると判断できる。
【0127】
(実施例A2)
実施例A1において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物を、例示化合物(C-4)に変更した以外は、実施例A1と同様にして、実施例A2の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0128】
(実施例A3)
実施例A1において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物を、例示化合物(C-17)に変更した以外は、実施例A1と同様にして、実施例A3の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0129】
(実施例A4)
実施例A1において、表面層用塗布液に用いた例示化合物(A-1)で示される化合物を、例示化合物(A-25)に変更した以外は、実施例A1と同様にして、実施例A4の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0130】
(実施例A5)
電荷輸送層の形成までは、実施例A1と同様に行った。
【0131】
次に、樹脂(P-1)0.4部を、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン株式会社製)8部および1-プロパノール10部の混合溶剤に溶解させた。その後、四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:ルブロンL-2、ダイキン工業株式会社製)6部を加えた液を、高圧分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM-110EH、米国Microfluidics社製)に入れた。そして、40MPaの圧力で6回通過させて、フッ素原子を含む樹脂粒子の分散液を得た。得られた分散液中のフッ素原子を含む樹脂粒子の平均粒径は、0.20μmであった。
【0132】
続いて、例示化合物(C-2)で示される電荷輸送性化合物93.4部、例示化合物(A-1)で示される化合物0.10部、シロキサン変性アクリル樹脂(商品名:サイマックUS-270、東亞合成株式会社製)0.10部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン52部および1-プロパノール70部を上記分散液に加えた。そして、ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過を行うことによって、表面層用塗布液を調製した。
この表面層用塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、実施例A1と同様にして膜厚5μmの表面層を形成した。
【0133】
このようにして、支持体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および表面層を有する実施例A5の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0134】
(実施例A6)
電荷輸送層の形成までは、実施例A1と同様に行った。
【0135】
次に、樹脂(P-1)1.5部を、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン株式会社製)42部および1-プロパノール48部の混合溶剤に溶解させた。その後、四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:ルブロンL-2、ダイキン工業株式会社製)28部を加えた液を、高圧分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM-110EH、米国Microfluidics社製)に入れた。そして、40MPaの圧力で6回通過させて、フッ素原子を含む樹脂粒子の分散液を得た。得られた分散液中のフッ素原子を含む樹脂粒子の平均粒径は、0.20μmであった。
【0136】
続いて、例示化合物(C-2)で示される電荷輸送性化合物70.3部、例示化合物(A-1)で示される化合物0.10部、シロキサン変性アクリル樹脂(商品名:サイマックUS-270、東亞合成株式会社製)0.10部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン18部および1-プロパノール32部を上記分散液に加えた。そして、ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過を行うことによって、表面層用塗布液を調製した。
この表面層用塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、実施例A1と同様にして膜厚5μmの表面層を形成した。
【0137】
このようにして、支持体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および表面層を有する実施例A6の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0138】
(実施例A7)
電荷輸送層の形成までは、実施例A1と同様に行った。
【0139】
次に、樹脂(P-1)3.0部を、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン株式会社製)42部および1-プロパノール48部の混合溶剤に溶解させた。その後、四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:ルブロンL-2、ダイキン工業株式会社製)28部を加えた液を、高圧分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM-110EH、米国Microfluidics社製)に入れた。そして、40MPaの圧力で6回通過させて、フッ素原子を含む樹脂粒子の分散液を得た。得られた分散液中のフッ素原子を含む樹脂粒子の平均粒径は、0.20μmであった。
【0140】
続いて、例示化合物(C-2)で示される電荷輸送性化合物68.8部、例示化合物(A-1)で示される化合物0.10部、シロキサン変性アクリル樹脂(商品名:サイマックUS-270、東亞合成株式会社製)0.10部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン18部および1-プロパノール32部を上記分散液に加えた。そして、ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過を行うことによって、表面層用塗布液を調製した。
この表面層用塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、実施例A1と同様にして膜厚5μmの表面層を形成した。
【0141】
このようにして、支持体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および表面層を有する実施例A7の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0142】
(実施例A8)
表面層の形成までは、実施例A1と同様に行った。
【0143】
次に、電子写真感光体の表面を研磨粗面化した。
本実施例における研磨は、概ね図5に示す研磨装置を用い、以下の条件で行った。
研磨シートの送りスピード;400mm/分
電子写真感光体の回転数;450rpm
電子写真感光体のバックアップローラーへの押し込み;3.5mm
研磨シートと電子写真感光体の回転方向;ウィズ
バックアップローラー;外径100mm、アスカーC硬度25
研磨装置に装着する研磨シートは理研コランダム株式会社製の研磨シートGC3000(研磨シート表面粗さRa0.83μm)を用いた。
上記条件にて表面研磨を10秒間行い、研磨粗面化された表面を有する実施例A8の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0144】
(実施例A9)
表面層の形成までは、実施例A1と同様に行った。
次に、電子写真感光体の表面を加工した。
概ね図4に示す構成の圧接形状転写加工装置に、モールドとして概ね図3に示す形状のモールド(本例においては、最大幅X:30μm、最大長さY:75μm、面積率60%、高さH:1.6μmの凸部)を設置し、作製した凹部形成前の電子写真感光体の周面に対して加工形成を行った。
以上のようにして、凹部が加工形成された表面を有する実施例A9の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0145】
(実施例A10)
実施例A1において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を68.9部に変更し、さらに、例示化合物(A-1)の量を1.00部に変更した以外は、実施例A1と同様にして、実施例A10の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0146】
(実施例A11)
電荷輸送層の形成までは、実施例A1と同様に行った。
次に、実施例A1と同様にしてフッ素原子を含む樹脂粒子の分散液を得た。
続いて、例示化合物(C-2)で示される電荷輸送性化合物58.0部、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、東京化成工業株式会社製)10.9部、例示化合物(A-1)で示される化合物1.00部、シロキサン変性アクリル樹脂(商品名:サイマックUS-270、東亞合成株式会社製)0.10部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン52部および1-プロパノール70部を上記分散液に加えた。そして、ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過を行うことによって、表面層用塗布液を調製した。
この表面層用塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、実施例A1と同様にして膜厚5μmの表面層を形成した。
このようにして、支持体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および表面層を有する実施例A11の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0147】
(実施例A12)
実施例A11において、表面層用塗布液に用いたトリメチロールプロパントリアクリレートの量を1.9部に変更し、さらに、例示化合物(A-1)の量を10.00部に変更した以外は、実施例A11と同様にして、実施例A12の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0148】
(実施例A13)
実施例A1において、表面層用塗布液に用いた例示化合物(A-1)で示される化合物を、例示化合物(A-2)に変更した以外は、実施例A1と同様にして、実施例A13の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0149】
(実施例A14)
実施例A1において、表面層用塗布液に用いた例示化合物(A-1)で示される化合物を、例示化合物(A-14)に変更した以外は、実施例A1と同様にして、実施例A14の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0150】
(実施例A15)
実施例A1において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を58.0部に変更し、さらに、例示化合物(A-1)の量を11.90部に変更した以外は、実施例A1と同様にして、実施例A15の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0151】
(実施例A16)
電荷輸送層の形成までは、実施例A1と同様に行った。
【0152】
次に、実施例A1と同様にしてフッ素原子を含む樹脂粒子の分散液を得た。
続いて、例示化合物(C-2)で示される電荷輸送性化合物69.7部、例示化合物(A-1)で示される化合物0.10部、下記式(14)で示される化合物0.10部、シロキサン変性アクリル樹脂(商品名:サイマックUS-270、東亞合成株式会社製)0.10部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン52部および1-プロパノール70部を上記分散液に加えた。そして、ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過を行うことによって、表面層用塗布液を調製した。
この表面層用塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、実施例A1と同様にして膜厚5μmの表面層を形成した。
【0153】
このようにして、支持体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および表面層を有する実施例A16の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【化31】
【0154】
(実施例A17)
実施例A1において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を68.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂の量を1.00部に変更した以外は、実施例A1と同様にして、実施例A17の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0155】
(実施例A18)
実施例A17において、表面層用塗布液に用いたシロキサン変性アクリル樹脂をシロキサン変性アクリル樹脂(商品名:BYK-3550、ビックケミー・ジャパン株式会社製)に変更した以外は、実施例A17と同様にして、実施例A18の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0156】
(実施例B1)
実施例A1において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を69.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A1と同様にして、実施例B1の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0157】
(実施例B2)
実施例A2において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-4))の量を69.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A2と同様にして、実施例B2の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0158】
(実施例B3)
実施例A3において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-17))の量を69.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A3と同様にして、実施例B3の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0159】
(実施例B4)
実施例A4において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を69.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A4と同様にして、実施例B4の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0160】
(実施例B5)
実施例A5において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を93.5部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A5と同様にして、実施例B5の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0161】
(実施例B6)
実施例A6において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を70.4部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A6と同様にして、実施例B6の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0162】
(実施例B7)
実施例A7において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を68.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A7と同様にして、実施例B7の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0163】
(実施例B8)
実施例A8において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を69.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A8と同様にして、実施例B8の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0164】
(実施例B9)
実施例A9において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を69.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A9と同様にして、実施例B9の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0165】
(実施例B10)
実施例A10において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を69.0部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A10と同様にして、実施例B10の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0166】
(実施例B11)
実施例A11において、表面層用塗布液に用いたトリメチロールプロパントリアクリレートの量を11.0部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A11と同様にして、実施例B11の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0167】
(実施例B12)
実施例A12において、表面層用塗布液に用いたトリメチロールプロパントリアクリレートの量を2.0部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A12と同様にして、実施例B12の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0168】
(実施例B13)
実施例A13において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を69.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A13と同様にして、実施例B13の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0169】
(実施例B14)
実施例A14において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を69.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A14と同様にして、実施例B14の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0170】
(実施例B15)
実施例A15において、表面層用塗布液に用いた例示化合物(A-1)の量を12.00部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A15と同様にして、実施例B15の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0171】
(実施例B16)
実施例A16において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を69.8部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例A16と同様にして、実施例B16の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表1に示す。
【0172】
【表1】
【0173】
(実施例C1)
電荷輸送層の形成までは、実施例A1と同様に行った。
【0174】
次に、実施例A1と同様にしてフッ素原子を含む樹脂粒子の分散液を得た。
続いて、例示化合物(C-2)で示される電荷輸送性化合物57.8部、トリメチロールプロパントリアクリレート12.0部、例示化合物(A-1)で示される化合物0.10部、シロキサン変性アクリル樹脂(商品名:サイマックUS-270、東亞合成株式会社製)0.10部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン52部および1-プロパノール70部を上記分散液に加えた。そして、ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過を行うことによって、表面層用塗布液を調製した。
この表面層用塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、実施例A1と同様にして膜厚5μmの表面層を形成した。
【0175】
このようにして、支持体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および表面層を有する実施例C1の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0176】
(実施例C2)
実施例C1において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物を、例示化合物(C-4)に変更した以外は、実施例C1と同様にして、実施例C2の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0177】
(実施例C3)
実施例C1において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物を、例示化合物(C-17)に変更した以外は、実施例C1と同様にして、実施例C3の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0178】
(実施例C4)
実施例C1において、表面層用塗布液に用いた例示化合物(A-1)で示される化合物を、例示化合物(A-25)に変更した以外は、実施例C1と同様にして、実施例C4の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0179】
(実施例C5)
電荷輸送層の形成までは、実施例A1と同様に行った。
【0180】
次に、樹脂(P-1)0.4部を、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン株式会社製)8部および1-プロパノール10部の混合溶剤に溶解させた。その後、四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:ルブロンL-2、ダイキン工業株式会社製)6部を加えた液を、高圧分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM-110EH、米国Microfluidics社製)に入れた。そして、40MPaの圧力で6回通過させて、フッ素原子を含む樹脂粒子の分散液を得た。得られた分散液中のフッ素原子を含む樹脂粒子の平均粒径は、0.20μmであった。
【0181】
続いて、例示化合物(C-2)で示される電荷輸送性化合物57.8部、トリメチロールプロパントリアクリレート35.6部、例示化合物(A-1)で示される化合物0.10部、シロキサン変性アクリル樹脂(商品名:サイマックUS-270、東亞合成株式会社製)0.10部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン52部および1-プロパノール70部を上記分散液に加えた。そして、ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過を行うことによって、表面層用塗布液を調製した。
この表面層用塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、実施例A1と同様にして膜厚5μmの表面層を形成した。
【0182】
このようにして、支持体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および表面層を有する実施例C5の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0183】
(実施例C6)
電荷輸送層の形成までは、実施例A1と同様に行った。
【0184】
次に、樹脂(P-1)0.4部を、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン株式会社製)8部および1-プロパノール10部の混合溶剤に溶解させた。その後、四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:ルブロンL-2、ダイキン工業株式会社製)6部を加えた液を、高圧分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM-110EH、米国Microfluidics社製)に入れた。そして、40MPaの圧力で6回通過させて、フッ素原子を含む樹脂粒子の分散液を得た。得られた分散液中のフッ素原子を含む樹脂粒子の平均粒径は、0.20μmであった。
【0185】
続いて、例示化合物(C-2)で示される電荷輸送性化合物57.8部、トリメチロールプロパントリアクリレート12.5部、例示化合物(A-1)で示される化合物0.10部、シロキサン変性アクリル樹脂(商品名:サイマックUS-270、東亞合成株式会社製)0.10部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン52部および1-プロパノール70部を上記分散液に加えた。そして、ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過を行うことによって、表面層用塗布液を調製した。
この表面層用塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、実施例A1と同様にして膜厚5μmの表面層を形成した。
【0186】
このようにして、支持体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および表面層を有する実施例C6の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0187】
(実施例C7)
電荷輸送層の形成までは、実施例A1と同様に行った。
【0188】
次に、樹脂(P-1)3.0部を、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン株式会社製)42部および1-プロパノール48部の混合溶剤に溶解させた。その後、四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:ルブロンL-2、ダイキン工業株式会社製)28部を加えた液を、高圧分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM-110EH、米国Microfluidics社製)に入れた。そして、40MPaの圧力で6回通過させて、フッ素原子を含む樹脂粒子の分散液を得た。得られた分散液中のフッ素原子を含む樹脂粒子の平均粒径は、0.20μmであった。
【0189】
続いて、例示化合物(C-2)で示される電荷輸送性化合物57.8部、トリメチロールプロパントリアクリレート11.0部、例示化合物(A-1)で示される化合物0.10部、シロキサン変性アクリル樹脂(商品名:サイマックUS-270、東亞合成株式会社製)0.10部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン18部および1-プロパノール32部を上記分散液に加えた。そして、ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過を行うことによって、表面層用塗布液を調製した。
この表面層用塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、実施例A1と同様にして膜厚5μmの表面層を形成した。
【0190】
このようにして、支持体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および表面層を有する実施例C7の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0191】
(実施例C8)
表面層の形成までは、実施例C1と同様に行った。
【0192】
次に、電子写真感光体の表面を研磨粗面化した。研磨は図1の研磨装置を用い、以下の条件で行った。
研磨シートの送りスピード;400mm/分
電子写真感光体の回転数;450rpm
電子写真感光体のバックアップローラーへの押し込み;3.5mm
研磨シートと電子写真感光体の回転方向;ウィズ
バックアップローラー;外径100mm、アスカーC硬度25
研磨装置に装着する研磨シートは理研コランダム株式会社製の研磨シートGC3000(研磨シート表面粗さRa0.83μm)を用いた。
【0193】
上記条件にて表面研磨を10秒間行い、研磨粗面化された表面を有する実施例C8の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0194】
(実施例C9)
表面層の形成までは、実施例C1と同様に行った。
【0195】
次に、電子写真感光体の表面を加工した。概ね図2に示す構成の圧接形状転写加工装置に、モールドとして概ね図3に示す形状のモールド(本例においては、最大幅(モールド上の凸部を上から見たときの軸方向の最大幅のこと。以下同じ。)X´:30μm、最大長さ(モールド上の凸部を上から見たときの周方向の最大長さのこと。以下同じ。)Y:75μm、面積率60%、高さH:1.6μmの凸部)を設置し、作製した凹部形成前の電子写真感光体の周面に対して加工形成を行った。
【0196】
以上のようにして、凹部が加工形成された表面を有する実施例C9の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0197】
(実施例C10)
実施例C1において、表面層用塗布液に用いたトリメチロールプロパントリアクリレートの量を11.1部に変更し、さらに、例示化合物(A-1)の量を1.00部に変更した以外は、実施例C1と同様にして、実施例C10の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0198】
(実施例C11)
実施例C1において、表面層用塗布液に用いたトリメチロールプロパントリアクリレートの量を2.1部に変更し、さらに、例示化合物(A-1)の量を10.00部に変更した以外は、実施例C1と同様にして、実施例C11の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0199】
(実施例C12)
実施例C1において、表面層用塗布液に用いた例示化合物(A-1)で示される化合物を、例示化合物(A-2)に変更した以外は、実施例C1と同様にして、実施例C12の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0200】
(実施例C13)
実施例C1において、表面層用塗布液に用いた例示化合物(A-1)で示される化合物を、例示化合物(A-14)に変更した以外は、実施例C1と同様にして、実施例C13の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0201】
(実施例C14)
実施例C1において、表面層用塗布液に用いたトリメチロールプロパントリアクリレートの量を0.2部に変更し、さらに、例示化合物(A-1)の量を11.90部に変更した以外は、実施例C1と同様にして、実施例C14の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0202】
(実施例C15)
電荷輸送層の形成までは、実施例A1と同様に行った。
【0203】
次に、実施例A1と同様にしてフッ素原子を含む樹脂粒子の分散液を得た。
続いて、例示化合物(C-2)で示される電荷輸送性化合物57.8部、トリメチロールプロパントリアクリレート11.9部、例示化合物(A-1)で示される化合物0.10部、式(13)で示される化合物0.10部、シロキサン変性アクリル樹脂(商品名:サイマックUS-270、東亞合成株式会社製)0.10部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン52部および1-プロパノール70部を上記分散液に加えた。そして、ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過を行うことによって、表面層用塗布液を調製した。
この表面層用塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、実施例A1と同様にして膜厚5μmの表面層を形成した。
【0204】
このようにして、支持体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および表面層を有する実施例C15の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0205】
(実施例C16)
実施例C1において、表面層用塗布液に用いたトリメチロールプロパントリアクリレートの量を11.1部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂の量を1.00部に変更した以外は、実施例C1と同様にして、実施例C16の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0206】
(実施例C17)
実施例C16において、表面層用塗布液に用いたシロキサン変性アクリル樹脂をシロキサン変性アクリル樹脂(商品名:BYK-3550、ビックケミー・ジャパン株式会社製)に変更した以外は、実施例C16と同様にして、実施例C17の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0207】
(実施例D1)
実施例C1において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を57.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例C1と同様にして、実施例D1の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0208】
(実施例D2)
実施例C2において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-4))の量を57.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例C2と同様にして、実施例D2の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0209】
(実施例D3)
実施例C3において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-17))の量を57.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例C3と同様にして、実施例D3の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0210】
(実施例D4)
実施例C4において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を57.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例C4と同様にして、実施例D4の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0211】
(実施例D5)
実施例C5において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を57.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例C5と同様にして、実施例D5の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0212】
(実施例D6)
実施例C6において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を57.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例C6と同様にして、実施例D6の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0213】
(実施例D7)
実施例C7において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を57.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例C7と同様にして、実施例D7の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0214】
(実施例D8)
実施例C8において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を57.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例C8と同様にして、実施例D8の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0215】
(実施例D9)
実施例C9において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を57.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例C9と同様にして、実施例D9の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0216】
(実施例D10)
実施例C10において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を57.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例C10と同様にして、実施例D10の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0217】
(実施例D11)
実施例C11において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を57.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例C11と同様にして、実施例D11の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0218】
(実施例D12)
実施例C12において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を57.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例C12と同様にして、実施例D12の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0219】
(実施例D13)
実施例C13において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を57.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例C13と同様にして、実施例D13の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0220】
(実施例D14)
実施例C14において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を57.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例C14と同様にして、実施例D14の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0221】
(実施例D15)
実施例C15において、表面層用塗布液に用いた電荷輸送性化合物(例示化合物(C-2))の量を57.9部に変更し、さらに、シロキサン変性アクリル樹脂を用いなかった以外は、実施例C15と同様にして、実施例D15の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0222】
(比較例E1)
実施例D1において、表面層用塗布液に用いたトリメチロールプロパントリアクリレートの量を12.05部に変更し、さらに、例示化合物(A-1)の量を0.05部に変更した以外は、実施例D1と同様にして、比較例E1の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0223】
(比較例E2)
実施例D1において、表面層用塗布液に用いた例示化合物(A-1)を下記式(15)で示される化合物に変更した以外は、実施例D1と同様にして、比較例E2の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【化32】
【0224】
(比較例E3)
電荷輸送層の形成までは、実施例A1と同様に行った。
【0225】
次に、樹脂(P-2)2.0部を、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン8部および1-プロパノール10部の混合溶剤に溶解させた。その後、四フッ化エチレン樹脂粒子(商品名:ルブロンL-2、ダイキン工業株式会社製)28部を加えた液を、高圧分散機(商品名:マイクロフルイダイザーM-110EH、米国Microfluidics社製)に入れた。そして、40MPaの圧力で6回通過させて、フッ素原子を含む樹脂粒子の分散液を得た。得られた分散液中のフッ素原子を含む樹脂粒子の平均粒径は、0.45μmであった。
【0226】
続いて、例示化合物(C-2)で示される電荷輸送性化合物57.9部、トリメチロールプロパントリアクリレート12.0部、例示化合物(A-1)で示される化合物0.10部、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン52部および1-プロパノール70部を上記分散液に加えた。そして、ポリフロンフィルター(商品名:PF-040、アドバンテック東洋株式会社製)で濾過を行うことによって、表面層用塗布液を調製した。
この表面層用塗布液を上記電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、実施例A1と同様にして膜厚5μmの表面層を形成した。
【0227】
このようにして、支持体上に下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および表面層を有する比較例E3の電子写真感光体を作製し、磨耗量評価、傷画像評価、17階調画像評価、および電位変動量評価を行った。結果を表2に示す。
【0228】
【表2】
【符号の説明】
【0229】
101…支持体
102…導電層
103…下引き層
104…感光層
1041…電荷発生層
1042…電荷輸送層
105…表面層

200…電子写真装置
201…電子写真感光体
202…軸
203…帯電手段
204…露光光
205…現像手段
206…転写手段
207…転写材
208…定着手段
209…クリーニング手段
210…前露光光
211…プロセスカートリッジ
212…案内手段

400…圧接形状転写加工装置
401 電子写真感光体
402 モールド
403 加圧部材
404 支持部材

500…研磨装置
501…研磨シート
502a~502d…ガイドローラー
503…バックアップローラー
504…被処理体
505…巻き取り手段
506…中空の軸
図1
図2
図3
図4
図5