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特許7187234三次元形状作成装置、三次元形状作成方法および三次元形状作成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】三次元形状作成装置、三次元形状作成方法および三次元形状作成プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/10 20200101AFI20221205BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20221205BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20221205BHJP
【FI】
G06F30/10 100
G01B11/00 B
G06F30/13
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018184782
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020052978
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】516070416
【氏名又は名称】エーティーラボ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593154436
【氏名又は名称】アイサンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中村 孝之
(72)【発明者】
【氏名】佐保田 遼
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-103134(JP,A)
【文献】特開2015-165420(JP,A)
【文献】特開2015-072176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
G01B 11/00
G06F 30/13
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元座標で表される座標点の集合により少なくとも1つの対象物における表面の三次元形状を示す座標点群のデータから、前記少なくとも1つの対象物の三次元形状を作成する三次元形状作成装置であって、
前記座標点群の中から、前記少なくとも1つの対象物の表面を形成する一つの平面に含まれる3つ以上の前記座標点の座標値を取得するように構成された座標値取得部と、
前記座標値取得部により取得された前記座標値に基づいて、3つ以上の前記座標点を含む前記平面の方程式である平面方程式を算出するように構成された平面算出部と、
前記平面算出部により算出された複数の前記平面方程式に基づいて、前記平面算出部により前記平面方程式が算出された複数の前記平面が交わる交線の方程式である交線方程式を算出するように構成された交線算出部と、
前記交線算出部により算出された複数の前記交線方程式に基づいて、前記交線算出部により前記交線方程式が算出された複数の前記交線が交わる交点の座標値を算出するように構成された交点算出部と、
前記平面算出部により前記平面方程式が算出された複数の前記平面のそれぞれについて、前記平面上に存在する複数の前記交線により囲まれる最大の領域を閉合領域として作成するように構成された閉合領域作成部と、
前記閉合領域作成部により作成された前記閉合領域を、前記平面上に存在する複数の前記交線により分割して、複数の分割領域を作成するように構成された分割領域作成部と、
前記分割領域作成部により作成された複数の前記分割領域のうち、前記座標値取得部により取得された前記座標値に対応する前記座標点を含む前記分割領域を有効分割領域として設定するように構成された有効設定部と、
前記有効設定部により設定された1または複数の前記有効分割領域を囲む線を、有効境界として設定するように構成された境界設定部と
を備える三次元形状作成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元形状作成装置であって、
前記交線算出部により前記交線方程式が算出された複数の前記交線のうち、前記境界設定部により前記有効境界に設定されなかった部分を無効に設定するように構成された無効設定部を備える三次元形状作成装置。
【請求項3】
三次元座標で表される座標点の集合により少なくとも1つの対象物における表面の三次元形状を示す座標点群のデータから、前記少なくとも1つの対象物の三次元形状を作成する三次元形状作成方法であって、
コンピュータが、前記座標点群の中から、前記少なくとも1つの対象物の表面を形成する一つの平面に含まれる3つ以上の前記座標点の座標値を取得する座標値取得手順と、
コンピュータが、前記座標値取得手順により取得された前記座標値に基づいて、3つ以上の前記座標点を含む前記平面の方程式である平面方程式を算出する平面算出手順と、
コンピュータが、前記平面算出手順により算出された複数の前記平面方程式に基づいて、前記平面算出手順により前記平面方程式が算出された複数の前記平面が交わる交線の方程式である交線方程式を算出する交線算出手順と、
コンピュータが、前記交線算出手順により算出された複数の前記交線方程式に基づいて、前記交線算出手順により前記交線方程式が算出された複数の前記交線が交わる交点の座標値を算出する交点算出手順と、
コンピュータが、前記平面算出手順により前記平面方程式が算出された複数の前記平面のそれぞれについて、前記平面上に存在する複数の前記交線により囲まれる最大の領域を閉合領域として作成する閉合領域作成手順と、
コンピュータが、前記閉合領域作成手順により作成された前記閉合領域を、前記平面上に存在する複数の前記交線により分割して、複数の分割領域を作成する分割領域作成手順と、
コンピュータが、前記分割領域作成手順により作成された複数の前記分割領域のうち、前記座標値取得手順により取得された前記座標値に対応する前記座標点を含む前記分割領域を有効分割領域として設定する有効設定手順と、
コンピュータが、前記有効設定手順により設定された1または複数の前記有効分割領域を囲む線を、有効境界として設定する境界設定手順と
を備える三次元形状作成方法。
【請求項4】
三次元座標で表される座標点の集合により少なくとも1つの対象物における表面の三次元形状を示す座標点群のデータから、前記少なくとも1つの対象物の三次元形状を作成するために、コンピュータを、
前記座標点群の中から、前記少なくとも1つの対象物の表面を形成する一つの平面に含まれる3つ以上の前記座標点の座標値を取得するように構成された座標値取得部、
前記座標値取得部により取得された前記座標値に基づいて、3つ以上の前記座標点を含む前記平面の方程式である平面方程式を算出するように構成された平面算出部、
前記平面算出部により算出された複数の前記平面方程式に基づいて、前記平面算出部により前記平面方程式が算出された複数の前記平面が交わる交線の方程式である交線方程式を算出するように構成された交線算出部
前記交線算出部により算出された複数の前記交線方程式に基づいて、前記交線算出部により前記交線方程式が算出された複数の前記交線が交わる交点の座標値を算出するように構成された交点算出部
前記平面算出部により前記平面方程式が算出された複数の前記平面のそれぞれについて、前記平面上に存在する複数の前記交線により囲まれる最大の領域を閉合領域として作成するように構成された閉合領域作成部、
前記閉合領域作成部により作成された前記閉合領域を、前記平面上に存在する複数の前記交線により分割して、複数の分割領域を作成するように構成された分割領域作成部、
前記分割領域作成部により作成された複数の前記分割領域のうち、前記座標値取得部により取得された前記座標値に対応する前記座標点を含む前記分割領域を有効分割領域として設定するように構成された有効設定部、及び、
前記有効設定部により設定された1または複数の前記有効分割領域を囲む線を、有効境界として設定するように構成された境界設定部
として機能させるための三次元形状作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体の表面の三次元形状を示す座標点群のデータから三次元形状を作成する三次元形状作成装置、方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、「3次元地理空間情報を活用した安全・安心・快適な社会実現」を目的として、3次元地図データの整備および更新が進められている。国家戦略として3次元地理空間情報を最重要基盤と位置づけ、国が主導してその整備の効率化および迅速化を図っている。こうして整備された3次元地図データは、高精度測位社会の発展とサービス展開のために必要不可欠である。
【0003】
また、建築分野のBIMおよび土木分野のCIMにおいても、3次元モデルを中心にデータの共有を行うことで、業務効率の改善および高度化が行われている。BIMは、Building Information Modelingの略である。CIMは、Construction Information Modelingの略である。
【0004】
2次元データのみでは調査、施工および維持管理について関係者間のイメージ共有が難しかった場面でも、3次元モデルであるならば完成図に近い形となるため、関係者間で認識の摺り合わせが行い易くなる。また、見えてこなかったものがより見えてくるため、トラブルの未然防止、および議論の活発化など、業務効率の改善に繋がっていく。
【0005】
こうした背景により、3次元地図データの需要が増加している。特許文献1には、レーザスキャナを用いて、対象物の座標点群データを取得する技術が記載されている。しかし、3次元地図の作成は、現状では時間および人的資源の面でコストが高く、整備がうまく進んでいない。
【0006】
屋内または屋外の建物形状の3次元モデルを作成する従来の手法として、2次元図面の作成に必要な情報を測量機で計測し、この計測データを用いて3次元モデルを作成する手法と、3次元空間情報をレーザスキャナなどで大量に取得し、3次元空間情報から必要な情報を抽出して3次元モデルを作成する手法とが挙げられる。測量機を用いる場合も、レーザスキャナを用いる場合も、3次元モデルを作成するために必要な情報は、建物形状の頂点であり、頂点を結線することで、3次元モデルを作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4344869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、建物形状の頂点の位置情報を取得するのは困難である。測量機などを使用して頂点を視準し座標値を取得する方法は、計測に用いるプリズムを頂点に設置することが困難であること、および、熟練者でないとレーザポインタを頂点に当てて正確な位置を測定するのが困難であることなど、複数の問題を有している。一方、レーザスキャナを用いて3次元空間の点群データを作成した場合には、点密度によっては、頂点の位置データを取得できないことがある。また、測量機およびレーザスキャナの両方において、障害物があり頂点が隠れてしまう場合には、頂点の位置データを取得できない。
【0009】
本開示は、三次元形状の作成を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様は、三次元座標で表される座標点の集合により少なくとも1つの対象物における表面の三次元形状を示す座標点群のデータから、少なくとも1つの対象物の三次元形状を作成する三次元形状作成装置である。
【0011】
そして、本開示の三次元形状作成装置は、座標値取得部と、平面算出部と、交線算出部と、交点算出部とを備える。
座標値取得部は、座標点群の中から、少なくとも1つの対象物の表面を形成する一つの平面に含まれる3つ以上の座標点の座標値を取得するように構成される。
【0012】
平面算出部は、座標値取得部により取得された座標値に基づいて、3つ以上の座標点を含む平面の方程式である平面方程式を算出するように構成される。
交線算出部は、平面算出部により算出された複数の平面方程式に基づいて、平面算出部により平面方程式が算出された複数の平面が交わる交線の方程式である交線方程式を算出するように構成される。
【0013】
交点算出部は、交線算出部により算出された複数の交線方程式に基づいて、交線算出部により交線方程式が算出された複数の交線が交わる交点の座標値を算出するように構成される。
【0014】
このように構成された本開示の三次元形状作成装置は、一つの平面について3つ以上の座標点の座標値を特定することにより、対象物の表面を形成する複数の平面を作成することができる。そして、本開示の三次元形状作成装置は、作成した複数の平面が交わる交線を作成することができる。これにより、本開示の三次元形状作成装置は、作成した複数の交線が交わる交点を特定することができる。
【0015】
このため、本開示の三次元形状作成装置は、対象物の頂点を実際に計測することなく、対象物の頂点の位置を特定することができ、対象物の三次元形状の作成を容易にすることができる。
【0016】
本開示の一態様では、閉合領域作成部と、分割領域作成部と、有効設定部と、境界設定部とを備えるようにしてもよい。
閉合領域作成部は、平面算出部により平面方程式が算出された複数の平面のそれぞれについて、平面上に存在する複数の交線により囲まれる最大の領域を閉合領域として作成するように構成される。分割領域作成部は、閉合領域作成部により作成された閉合領域を、平面上に存在する複数の交線により分割して、複数の分割領域を作成するように構成される。
【0017】
有効設定部は、分割領域作成部により作成された複数の分割領域のうち、座標値取得部により取得された座標値に対応する座標点を含む分割領域を有効分割領域として設定するように構成される。境界設定部は、有効設定部により設定された1または複数の有効分割領域を囲む線を、有効境界として設定するように構成される。
【0018】
このように構成された本開示の三次元形状作成装置は、平面上に存在する複数の交線によって囲まれる領域(すなわち、分割領域)のうち、対象物の表面を形成する平面ではない領域が、対象物の表面を形成する平面であると特定されてしまう事態の発生を抑制することができる。
【0019】
本開示の一態様では、交線算出部により交線方程式が算出された複数の交線のうち、境界設定部により有効境界に設定されなかった部分を無効に設定するように構成された無効設定部を備えるようにしてもよい。
【0020】
このように構成された本開示の三次元形状作成装置は、交線算出部により交線方程式が算出された交線において、対象物の表面上に実際に存在していない部分を除外することができる。これにより、本開示の三次元形状作成装置は、有効境界の設定が行われていない平面において有効境界の設定を行う場合に、平面上に存在する複数の交線のうち、既に無効にされた部分を除外して、複数の分割領域を作成することができる。すなわち、本開示の三次元形状作成装置は、対象物の表面上に実際に存在していない線を用いて、分割領域を作成する頻度を低減することができる。このため、本開示の三次元形状作成装置は、平面上に存在する複数の交線によって囲まれる領域(すなわち、分割領域)のうち、対象物の表面を形成する平面ではない領域が、対象物の表面を形成する平面であると特定されてしまう事態の発生を更に抑制することができる。
【0021】
本開示の別の態様は、三次元座標で表される座標点の集合により少なくとも1つの対象物における表面の三次元形状を示す座標点群のデータから、少なくとも1つの対象物の三次元形状を作成する三次元形状作成方法である。
【0022】
そして、本開示の三次元形状作成方法は、座標値取得手順と、平面算出手順と、交線算出手順と、交点算出手順とを備える。
座標値取得手順は、座標点群の中から、少なくとも1つの対象物の表面を形成する一つの平面に含まれる3つ以上の座標点の座標値を取得する。
【0023】
平面算出手順は、座標値取得手順により取得された座標値に基づいて、3つ以上の座標点を含む平面の方程式である平面方程式を算出する。
交線算出手順は、平面算出手順により算出された複数の平面方程式に基づいて、平面算出手順により平面方程式が算出された複数の平面が交わる交線の方程式である交線方程式を算出する。
【0024】
交点算出手順は、交線算出手順により算出された複数の交線方程式に基づいて、交線算出手順により交線方程式が算出された複数の交線が交わる交点の座標値を算出する。
本開示の三次元形状作成方法は、本開示の三次元形状作成装置にて実行される方法であり、当該方法を実行することで、本開示の三次元形状作成装置と同様の効果を得ることができる。
【0025】
本開示の更に別の態様は、コンピュータを、座標値取得部、平面算出部、交線算出部、及び、交点算出部として機能させるための三次元形状作成プログラムである。
本開示の三次元形状作成プログラムによって制御されるコンピュータは、本開示の三次元形状作成装置の一部を構成することができ、本開示の三次元形状作成装置と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】三次元形状作成装置の構成を示すブロック図である。
図2】三次元形状作成処理を示すフローチャートである。
図3】平面作成処理を示すフローチャートである。
図4】平面の法線ベクトルと平面上のベクトルとを示す図である。
図5】視点座標値を示す図である。
図6】交線・交点算出処理を示すフローチャートである。
図7】作成平面と選択平面との交線を示す図である。
図8】交線と交線との交点を示す図である。
図9】最近傍点を示す図である。
図10】境界設定処理を示すフローチャートである。
図11】閉合領域を説明する図である。
図12】分割領域を示す図である。
図13】有効境界の第1の例を示す図である。
図14】有効境界の第2の例を示す図である。
図15】建築物の平面図、および、第1平面上の交線を示す図である。
図16】第1平面上の交線が無効に設定された後の第2平面上の交線を示す図である。
図17】交線と交点とに基づいて作成される三次元形状を示す図である。
図18】第1平面上の交線が無効に設定される前の第2平面上の交線を示す図である。
図19】有効境界の設定を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本開示の実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態の三次元形状作成装置1は、図1に示すように、表示部11と、操作入力部12と、データ記憶部13と、データ入出力部14と、制御部15とを備える。
【0028】
表示部11は、図示しない表示装置を備え、表示装置の表示画面に各種画像を表示する。
操作入力部12は、図示しないキーボードおよびマウスを介して使用者が行った入力操作を特定するための入力操作情報を出力する。
【0029】
データ記憶部13は、各種データを記憶するための記憶装置である。
データ入出力部14は、有線または無線で接続された外部機器との間でデータの入出力を行う。
【0030】
制御部15は、CPU、ROMおよびRAM等を備えた周知のマイクロコンピュータを中心に構成される。マイクロコンピュータの各種機能は、CPUが非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROMが、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPUが実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、制御部15を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。
【0031】
次に、制御部15が実行する三次元形状作成処理の手順を説明する。三次元形状作成処理は、三次元形状作成処理を実行するために制御部15に記憶された三次元形状作成プログラム20を使用者の入力操作により起動することで実行される。なお、三次元形状作成プログラム20は、三次元形状作成装置1に予めインストールされていてもよいし、記録媒体またはネットワークを介してインストールされるようにしてもよい。記録媒体としては、例えば光ディスク、磁気ディスクおよび半導体メモリなどが挙げられる。
【0032】
三次元形状作成処理が実行されると、制御部15は、図2に示すように、まず、S10にて、三次元形状を作成する対象となる建築物(以下、対象建築物)を選択するための画像(以下、対象建築物選択画像)を表示部11の表示画面に表示する。
【0033】
その後S20にて、使用者により選択された対象建築物を特定する対象建築物特定情報が操作入力部12から入力されたか否かを判断する。ここで、対象建築物情報が入力されていない場合には、S20の処理を繰り返すことにより、対象建築物特定情報が入力されるまで待機する。そして、対象建築物特定情報が入力されると、S30にて、対象建築物特定情報により特定される対象建築物の座標点群データをデータ記憶部13から取得する。なお、対象建築物の座標点群データは、三次元形状作成処理を開始する前に予めデータ記憶部13に記憶される。
【0034】
対象建築物の座標点群データは、対象建築物の三次元形状を表す複数地点の三次元座標の集合であり、レーザスキャナを利用して取得される。以下、S30で取得した座標点群データにより表される座標点群を構成する複数の点のそれぞれを座標点という。なお、対象建築物の座標点群データは、対象建築物の外側の形状、または、対象建築物の内側の形状を示す。
【0035】
そしてS40にて、表示部11の表示画面に、S30で取得した座標点群データを構成する複数の座標点の位置を立体的に表示する。なお、制御部15は、キーボードおよびマウスを介して使用者が行う入力操作により、複数の座標点の位置を立体的に表示している画像を拡大したり、縮小したりすることができる。同様に、制御部15は、キーボードおよびマウスを介して使用者が行う入力操作により、複数の座標点の位置を立体的に表示しているときの視点を移動させたり、回転させたりすることができる。
【0036】
次にS50にて、後述する平面作成処理を実行する。平面作成処理が終了すると、S60にて、後述する交線・交点算出処理を実行する。交線・交点算出処理が終了すると、S70にて、後述する境界設定処理を実行する。境界設定処理が終了すると、S80にて、S70にて設定された境界を示すデータをデータ記憶部13に記憶する。
【0037】
そしてS90にて、未登録平面確認画像を表示部11の表示画面に表示する。未登録平面確認画像は、対象建築物を構成する壁、天井および床等のうち、平面作成処理において平面として登録されていないものが残っているか否かを選択するための画像である。
【0038】
その後S100にて、使用者により選択された選択結果を示す未登録平面確認情報が操作入力部12から入力されたか否かを判断する。
ここで、未登録平面確認情報が入力されていない場合には、S100の処理を繰り返すことにより、未登録平面確認情報が入力されるまで待機する。そして、未登録平面確認情報が入力されると、S110にて、未登録平面確認情報に基づいて、未登録平面が残っているか否かを判断する。具体的には、平面作成処理において平面として登録されていないものが残っていることを未登録平面確認情報が示す場合には、未登録平面が残っていると判断する。一方、平面作成処理において平面として登録されていないものが残っていないことを未登録平面確認情報が示す場合には、未登録平面が残っていないと判断する。
【0039】
ここで、未登録平面が残っている場合には、S50に移行する。一方、未登録平面が残っていない場合には、三次元形状作成処理を終了する。
次に、S50で実行される平面作成処理の手順を説明する。
【0040】
平面作成処理が実行されると、制御部15は、図3に示すように、まず、S210にて、3点の座標値が入力されたか否かを判断する。なお、座標値の入力は、使用者がマウスを操作することにより、表示部11の表示画面上において所望の座標点をカーソルで指定することにより行われる。使用者は、同一平面上に存在していると使用者が考える3つの座標点をカーソルで指定する。3つの座標点を指定する場合は、3つの座標点で囲まれた領域が可能な限り広く、且つ、3つの座標点で囲まれた領域の縦横比が均等であることが望ましい。
【0041】
ここで、3点の座標値が入力されていない場合には、S210の処理を繰り返すことにより、3点の座標値が入力されるまで待機する。そして、3点の座標値が入力されると、S220にて、入力された3つの座標点が同一直線上に存在しているか否かを判断する。ここで、3つの座標点が同一直線上に存在している場合には、S210に移行する。
【0042】
一方、3つの座標点が同一直線上に存在していない場合には、S230にて、入力された3つの座標点を含む平面の方程式を算出する。
平面の方程式は、式(1)で表される。
【0043】
【数1】

S210で入力された3点を、図4に示すように、点P1,点P2および点P3とする。そして、点P1,P2,P3の座標値を、それぞれ式(2),(3),(4)で表す。
【0044】
P1=(x,y,z) ・・・(2)
P2=(x,y,z) ・・・(3)
P3=(x,y,z) ・・・(4)
点P1、点P2および点P3を含む平面の法線ベクトルをnとする。点P1を始点とし、点P2を終点とするベクトルをV12とする。点P1を始点とし、点P3を終点とするベクトルをV13とする。
【0045】
法線ベクトルnは、ベクトルV12およびベクトルV13に対して垂直であるため、式(5)に示すように、ベクトルV12とベクトルV13との外積により算出することができる。
【0046】
【数2】

そして、法線ベクトルnと、点P1の座標値とにより、平面の方程式のパラメータa,b,c,dは、それぞれ式(6),(7),(8),(9)で算出される。
【0047】
【数3】

S230の処理が終了すると、図3に示すように、S240にて、視点座標値を入力する。視点座標値とは、平面を作成する際に使用した3つの座標点を直接目視することができる座標値である。視点座標値は、壁などの障害物に遮られないように設定される。例えば、図5に示すように、壁WL1,WL2,WL3に囲まれた点Paから、壁WL1の平面を作成する際に使用した3つの座標点Pu1,Pu2,Pu3を直接目視することができる。このため、点Paの座標値を視点座標値とすることができる。一方、壁WL1,WL2,WL3に囲まれた領域外に配置されている点Pbと座標点Pu1,Pu2,Pu3との間は壁WL2で遮られているため、点Pbから、座標点Pu1,Pu2,Pu3を直接目視することができない。このため、点Pbの座標値を視点座標値とすることができない。
【0048】
S240では、表示部11の表示画面に座標点群データを表示している表示ソフトウェアのカメラポジションを表示ソフトウェアから取得し、このカメラポジションを視点座標値として入力する。視点座標値は、以降の処理において、平面がどこから視準できるのかという情報として扱うことができる。
【0049】
S240の処理が終了すると、図3に示すように、S250にて、S230で算出された平面の方程式を、既に算出が終了した平面(以下、既存平面)として登録し、平面作成処理を終了する。具体的には、S230で算出された平面の方程式と、S240で入力された視点座標値とを対応付けた状態で、データ記憶部13に記憶する。
【0050】
次に、S60で実行される交線・交点算出処理の手順を説明する。
交線・交点算出処理が実行されると、制御部15は、図6に示すように、まず、S310にて、登録された既存平面のうち、直近で方程式が算出された既存平面(以下、作成平面)と、未だ交差判定が行われていない既存平面の中から選択された1つの既存平面(選択平面)とが交差しているか否かを判断する。以下に、作成平面と選択平面との交差判定の方法を説明する。
【0051】
互いに平行な2つの平面は交わらないため、この2つの平面が交わる交線を求めることはできない。互いに平行な2つの平面の法線ベクトルを、それぞれn1,n2とすると、式(10)が成立する。
【0052】
しかし、式(10)が成立することは稀である。このため、1未満であり且つ1に略等しくなるように予め設定された平行判定値αを用いて、式(11)が成立した場合に、2つの平面が互いに平行であると判断する。
【0053】
【数4】

そしてS320にて、S310における判定結果に基づいて、作成平面と選択平面とが交差しているか否かを判断する。ここで、作成平面と選択平面とが交差していない場合には、S380に移行する。一方、作成平面と選択平面とが交差している場合には、S330にて、作成平面と選択平面との交線の方程式を算出する。
【0054】
例えば、図7に示すように、作成平面Spと選択平面Ssとの交線Liの方程式を、式(12)で表す。式(12)におけるベクトルAは、三次元直交座標系における原点を始点とし、交線Li上の点の位置を終点とするベクトルである。すなわち、ベクトルAは、終点の位置により、交線Li上の点の位置を示す。式(12)におけるベクトルeは交線Liの方向ベクトルである。式(12)におけるtは、媒介変数である。また、作成平面Spの方程式を式(13)、選択平面Ssの方程式を式(14)で表す。
【0055】
【数5】

方向ベクトルeは、作成平面Spの法線ベクトルと選択平面Ssの法線ベクトルとに対して垂直である。このため、方向ベクトルeは、上記2つの法線ベクトルの外積を用いて、式(15)で算出することができる。式(15)におけるベクトルnは作成平面Spの法線ベクトルである。式(15)におけるベクトルnは選択平面Ssの法線ベクトルである。
【0056】
【数6】

次に、交線Li上の点の位置を示すベクトルAを算出する方法を説明する。
【0057】
交線Li上の点は、式(13)および式(14)の方程式を満たすx、y、zの組となる。但し、x、y、zの組を算出するためには、連立3元1次方程式である必要がある。このため、まず、式(13),(14)においてz=0とすることにより、連立2元1次方程式として、x,yを算出する。
【0058】
式(13),(14)においてz=0とすることにより式(16),(17)が得られる。これにより、式(18),(19)に示すように、x,yが算出される。式(18),(19)における右辺の分母は、方向ベクトルeのz成分である。方向ベクトルeのz成分をeと表記すると、式(18),(19)はそれぞれ、式(20),(21)で表される。このため、方向ベクトルeのz成分が0でない場合には、ベクトルAの終点(すなわち、交線Li上の点)は、(x,y,0)と算出される。
【0059】
【数7】

一方、方向ベクトルeのz成分が0である場合には、式(13),(14)においてy=0とすることにより、上記と同様にして、式(22),(23)に示すように、x,zを算出する。式(22),(23)におけるeは、方向ベクトルeのy成分である。このため、方向ベクトルeのy成分が0でない場合には、ベクトルAの終点(すなわち、交線Li上の点)は、(x,0,z)と算出される。
【0060】
【数8】

また、方向ベクトルeのx成分が0である場合には、式(13),(14)においてx=0とすることにより、上記と同様にして、式(24),(25)に示すように、y,zを算出する。式(24),(25)におけるeは、方向ベクトルeのx成分である。このため、方向ベクトルeのx成分が0でない場合には、ベクトルAの終点(すなわち、交線Li上の点)は、(0,y,z)と算出される。
【0061】
【数9】

方向ベクトルeの全ての成分が0である場合には、作成平面Spと選択平面Ssは互いに平行であり、交線を求めることができない。
【0062】
そして、S330の処理が終了すると、S340にて、S330で算出された交線の方程式を、既に算出が終了した交線(以下、既存交線)として登録する。具体的には、S330で算出された交線の方程式を、データ記憶部13に記憶する。
【0063】
次にS350にて、登録された既存交線のうち、直近で方程式が算出された既存交線(以下、作成交線)と、未だ交差判定が行われていない既存交線の中から選択された1つの既存交線(選択交線)との交点を算出する。例えば、図8に示すように、既存平面Se1と既存平面Se2との交線Li12と、既存平面Se1,Se2と交差する既存平面Se3と既存平面Se1との交線Li31との交点Pi1が算出される。
【0064】
以下に、作成交線と選択交線との交点を算出する方法を説明する。
作成交線lの方程式を式(26)で表し、選択交線mの方程式を式(27)で表す。
式(26)におけるベクトルpは、三次元直交座標系における原点を始点とし、作成交線l上の点の位置を終点とするベクトルである。すなわち、ベクトルpは、終点の位置により、作成交線l上の点の位置を示す。式(26)におけるベクトルuは作成交線lの方向ベクトルである。式(26)におけるsは、媒介変数である。
【0065】
式(27)におけるベクトルqは、三次元直交座標系における原点を始点とし、選択交線m上の点の位置を終点とするベクトルである。すなわち、ベクトルqは、終点の位置により、選択交線m上の点の位置を示す。式(27)におけるベクトルvは選択交線mの方向ベクトルである。式(27)におけるtは、媒介変数である。
【0066】
【数10】

まず、作成交線lと選択交線mとの最近傍点を求める。三次元空間では、最近傍点が2つ求まる可能性があり、図9に示すように、2つの最近傍点をl(σ),m(τ)と表記する。
【0067】
最近傍点同士を連結するベクトルは、作成交線lおよび選択交線mの方向ベクトルと垂直であるため、内積を用いて、式(28),(29)が成立する。
【0068】
【数11】

そして、式(28),(29)に式(26),(27)を代入した式を解くことにより、式(30),(31)に示すように、作成交線lにおける最近傍点l(σ)のパラメータσと、作成交線mにおける最近傍点m(τ)のパラメータτとが得られる。なお、式(30),(31)におけるrとαはそれぞれ、式(32)と式(33)で表される。
【0069】
【数12】

なお、式(33)で示すαが1である場合には、式(30),(31)における右辺の分母が0になり、パラメータσ,τを求めることができない。αは、式(33)に示すように、作成交線lの方向ベクトルと選択交線mの方向ベクトルとの内積であるため、α=1は、作成交線lと選択交線mとが互いに平行であることを示す。すなわち、α=1である場合には、交点が存在しないと判断する。
【0070】
また、最近傍点l(σ)と最近傍点m(τ)とが一致しない場合にも、交点が存在しないと判断する。一方、最近傍点l(σ)と最近傍点m(τ)とが一致する場合には、交点が存在すると判断し、最近傍点l(σ)および最近傍点m(τ)が示す座標値を、作成交線lと選択交線mとの交点の座標値として採用する。
【0071】
そして、S350の処理が終了すると、図6に示すように、S360にて、S350で算出された交点の座標値を登録する。具体的には、350で算出された交点の座標値を、データ記憶部13に記憶する。
【0072】
さらにS370にて、作成交線と、作成交線以外の全ての既存交線との間で交点の算出が行われたか否かを判断する。ここで、全ての既存交線との間で交点の算出が行われていない場合には、S350に移行する。一方、全ての既存交線との間で交点の算出が行われた場合には、S380に移行する。
【0073】
そしてS380に移行すると、作成平面と、作成平面以外の全ての既存平面との間で交差判定が行われたか否かを判断する。ここで、全ての既存平面との間で交差判定が行われていない場合には、S310に移行する。一方、全ての既存平面との間で交差判定が行われた場合には、交線・交点算出処理を終了する。
【0074】
次に、S70で実行される境界設定処理の手順を説明する。
境界設定処理が実行されると、制御部15は、図10に示すように、まず、S510にて、登録された既存平面のうち、今回の境界設定処理において選択されていない既存平面を1つ選択する。
【0075】
そしてS520にて、S510で選択された既存平面(以下、選択平面)の境界が確定しているか否かを判断する。具体的には、選択平面が、後述する境界確定平面として登録されている場合には、選択平面の境界が確定していると判断し、選択平面が境界確定平面として登録されていない場合には、選択平面の境界が確定していないと判断する。但し、選択平面が境界確定平面として登録されている場合であっても、直近の交線・交点算出処理で算出された交線が選択平面に含まれる場合には、S520にて、選択平面の境界が確定していないと判断する。
【0076】
ここで、選択平面の境界が確定している場合には、S600に移行する。一方、選択平面の境界が確定していない場合には、S530にて、選択平面の境界を設定する。以下に、選択平面の境界を設定する方法を説明する。
【0077】
平面のままでは、三次元の面図形として扱うことができない。このため、平面上に存在する交線および交点に基づいて、閉じた領域(以下、閉合領域)となるように境界を設定する。
【0078】
例えば、図11に示すように、平面Sb1上には、交線Lb1,Lb2,Lb3が存在している。そして、平面Sb1上には、交線Lb1と交線Lb2との交点Pb1と、交線Lb2と交線Lb3との交点Pb2とが存在している。しかし、交線Lb1,Lb2,Lb3は、閉合領域を形成していない。このため、境界を設定することはできない。
【0079】
また、平面Sb2上には、交線Lb11,Lb12,Lb13,Lb14が存在している。そして、平面Sb2上には、交点Pb11,Pb12,Pb13,Pb14が存在している。交点Pb11は、交線Lb11と交線Lb12との交点である。交点Pb12は、交線Lb12と交線Lb13との交点である。交点Pb13は、交線Lb13と交線Lb14との交点である。交点Pb14は、交線Lb14と交線Lb11との交点である。この場合には、交線Lb11,Lb12,Lb13,Lb14は、閉合領域Rb1を形成している。このため、境界を設定することができる。
【0080】
また、平面Sb3上には、交線Lb21,Lb22,Lb23,Lb24,Lb25,Lb26が存在している。そして、平面Sb3上には、交点Pb21,Pb22,Pb23,Pb24,Pb25,Pb26,Pb27,Pb28,Pb29が存在している。
【0081】
交点Pb21は、交線Lb21と交線Lb22との交点である。交点Pb22は、交線Lb22と交線Lb23との交点である。交点Pb23は、交線Lb23と交線Lb24との交点である。交点Pb24は、交線Lb24と交線Lb21との交点である。
【0082】
交点Pb25は、交線Lb21と交線Lb25との交点である。交点Pb26は、交線Lb22と交線Lb26との交点である。交点Pb27は、交線Lb23と交線Lb25との交点である。交点Pb28は、交線Lb24と交線Lb26との交点である。交点Pb29は、交線Lb25と交線Lb26との交点である。
【0083】
この場合には、交線Lb21,Lb22,Lb23,Lb24は、閉合領域Rb2を形成している。このため、境界を設定することができる。但し、閉合領域Rb2内を通る交線Lb25,Lb26が存在しているため、境界を一つに決めることができない。
【0084】
境界を設定するには、まず、平面上に存在する交線から、交線上に存在する交点に基づいて線分を抽出する。具体的には、交線上に存在する複数の交点のうち、2交点間の距離が最も長くなる2つの交点を選択し、選択した2つの交点を結ぶ直線を線分とする。なお、交点の接合関係に応じて、閉合領域が最も大きくなるように、境界を設定する。
【0085】
例えば、平面Sb2では、交線Lb11から、交点Pb11と交点Pb14とを結ぶ線分が抽出される。同様に、交線Lb12から、交点Pb11と交点Pb12とを結ぶ線分が抽出される。また、交線Lb13から、交点Pb12と交点Pb13とを結ぶ線分が抽出される。また、交線Lb14から、交点Pb13と交点Pb14とを結ぶ線分が抽出される。そして、抽出された4つの線分を境界として設定する。
【0086】
また、平面Sb3では、交線Lb21上に交点Pb21,Pb24,Pb25が存在している。そして、交点Pb21,Pb24,Pb25のうち、2交点間の距離が最も長くなる交点Pb21とPb24とを結ぶ線分が抽出される。同様に、交線Lb22から、交点Pb21と交点Pb22とを結ぶ線分が抽出される。また、交線Lb23から、交点Pb22と交点Pb23とを結ぶ線分が抽出される。また、交線Lb24から、交点Pb23と交点Pb24とを結ぶ線分が抽出される。そして、抽出された4つの線分を境界として設定する。
【0087】
そして、S530の処理が終了すると、図10に示すように、S540にて、S530の処理で境界を設定することができたか否かを判断する。ここで、境界を設定することができなかった場合には、S550にて、選択平面を、境界が確定していない平面(以下、境界未確定平面)として登録し、S600に移行する。
【0088】
一方、境界を設定することができた場合には、S560にて、選択平面を、境界が確定した平面(以下、境界確定平面)として登録する。そしてS570にて、選択平面上に、境界に使用された交線以外の交線(以下、未使用交線)が存在するか否かを判断する。ここで、未使用交線が存在しない場合には、S600に移行する。一方、未使用交線が存在する場合には、S580にて、選択平面の閉合領域を未使用交線により分割する。
【0089】
例えば、図12に示すように、平面Sb3の閉合領域Rb2は、交線Lb25,Lb26によって、分割領域Rd21,Rd22,Rd23,Rd24に分割される。分割領域Rd21は、交線Lb21,Lb22,Lb25,Lb26により囲まれる領域である。分割領域Rd22は、交線Lb22,Lb23,Lb25,Lb26により囲まれる領域である。分割領域Rd23は、交線Lb23,Lb24,Lb25,Lb26により囲まれる領域である。分割領域Rd24は、交線Lb21,Lb24,Lb25,Lb26により囲まれる領域である。
【0090】
そして、S580の処理が終了すると、図10に示すように、S590にて、境界の有効または無効を設定する。具体的には、まず、S580で形成された複数の分割領域のうち、選択平面に対応してS210で入力された座標値により特定される3つの座標点を含む分割領域を、有効分割領域とする。そして、1または複数の有効分割領域で形成される領域を囲む線を有効境界とする。また、分割領域を囲む線のうち、有効境界に設定されなかった線を無効境界とする。
【0091】
例えば、図13に示すように、平面Sb3の分割領域Rd21,Rd22,Rd23,Rd24のうち、分割領域Rd22に、選択平面に対応する3つの座標点Pc1,Pc2,Pc3が含まれる場合には、分割領域Rd22を囲む4つの線分が有効境界に設定される。図13における有効境界は、以下の4つの線分である。第1の線分は、交点Pb22と交点Pb26とを結ぶ線分である。第2の線分は、交点Pb22と交点Pb27とを結ぶ線分である。第3の線分は、交点Pb27と交点Pb29とを結ぶ線分である。第4の線分は、交点Pb26と交点Pb29とを結ぶ線分である。
【0092】
また、図14に示すように、平面Sb3の分割領域Rd21,Rd22,Rd23,Rd24のうち、分割領域Rd22,Rd23,Rd24に、3つの座標点Pc1,Pc2,Pc3が含まれる場合には、分割領域Rd22,Rd23,Rd24を囲む6つの線分が有効境界に設定される。図14における有効境界は、以下の6つの線分である。第1の線分は、交点Pb22と交点Pb26とを結ぶ線分である。第2の線分は、交点Pb22と交点Pb23とを結ぶ線分である。第3の線分は、交点Pb23と交点Pb24とを結ぶ線分である。第4の線分は、交点Pb24と交点Pb25とを結ぶ線分である。第5の線分は、交点Pb25と交点Pb29とを結ぶ線分である。第6の線分は、交点Pb26と交点Pb29とを結ぶ線分である。
【0093】
次に、図15に示すように、壁WL11,WL12,WL13,WL14,WL15,WL16,WL17,WL18で形成された建築物BL1では、平面Sw11,Sw12,Sw13,Sw14,Sw15,Sw16,Sw17,Sw18が算出される。平面Sw11,Sw12,Sw13,Sw14,Sw15,Sw16,Sw17,Sw18はそれぞれ、壁WL11,WL12,WL13,WL14,WL15,WL16,WL17,WL18を含む平面である。
【0094】
そして、平面Sw13において、壁WL13を画定する有効境界は、天井を含む平面との交線、床を含む平面との交線と、平面Sw12との交線と、平面Sw14との交線とにより囲まれる領域を示すように設定される。
【0095】
このようにして、平面Sw13において有効境界が設定されると、平面Sw13における他の境界は無効に設定されるため、図16に示すように、平面Sw18と平面Sw13とが交差しなくなる。この状態では、平面Sw18において、平面Sw11との交線と平面Sw17との交線との間に、平面Sw13との交線が配置されない。これにより、壁WL18を画定する有効境界の誤設定を抑制することができる。
【0096】
そして、S590の処理が終了すると、図10に示すように、S600にて、S510において全ての既存平面が選択されたか否かを判断する。ここで、選択されていない既存平面が存在する場合には、S510に移行する。一方、全ての既存平面が選択された場合には、境界設定処理を終了する。
【0097】
このように構成された三次元形状作成装置1は、三次元座標で表される座標点の集合により少なくとも1つの対象建築物における表面の三次元形状を示す座標点群データから、少なくとも1つの対象建築物の三次元形状を作成する。
【0098】
まず、制御部15は、座標点群の中から、少なくとも1つの対象建築物の表面を形成する一つの平面に含まれる3つの座標点の座標値を取得する。
また制御部15は、取得された座標値に基づいて、3つの座標点を含む平面の方程式で(以下、平面方程式)を算出する。
【0099】
また制御部15は、算出された複数の平面方程式に基づいて、平面方程式が算出された複数の平面が交わる交線の方程式(以下、交線方程式)を算出する。
そして制御部15は、算出された複数の交線方程式に基づいて、交線方程式が算出された複数の交線が交わる交点の座標値を算出する。
【0100】
このように三次元形状作成装置1は、一つの平面について3つの座標点の座標値を特定することにより、対象建築物の表面を形成する複数の平面を作成することができる。そして、三次元形状作成装置1は、作成した複数の平面が交わる交線を作成することができる。これにより、三次元形状作成装置1は、作成した複数の交線が交わる交点を特定することができる。
【0101】
このため、三次元形状作成装置1は、対象建築物の頂点を実際に計測することなく、対象物の頂点の位置を特定することができ、対象建築物の三次元形状の作成を容易にすることができる。
【0102】
また制御部15は、平面方程式が算出された複数の平面のそれぞれについて、平面上に存在する複数の交線により囲まれる最大の領域を閉合領域として作成する。さらに制御部15は、作成された閉合領域を、平面上に存在する複数の交線により分割して、複数の分割領域を作成する。
【0103】
また制御部15は、作成された複数の分割領域のうち、取得された座標値に対応する座標点を含む分割領域を有効分割領域として設定する。そして制御部15は、設定された1または複数の有効分割領域を囲む線を、有効境界として設定する。
【0104】
このように三次元形状作成装置1は、平面上に存在する複数の交線によって囲まれる領域(すなわち、分割領域)のうち、対象建築物の表面を形成する平面ではない領域が、対象建築物の表面を形成する平面であると特定されてしまう事態の発生を抑制することができる。
【0105】
また制御部15は、交線方程式が算出された複数の交線のうち、有効境界に設定されなかった部分を無効に設定する。
このように三次元形状作成装置1は、交線方程式が算出された交線において、対象建築物の表面上に実際に存在していない部分を除外することができる。これにより、三次元形状作成装置1は、有効境界の設定が行われていない平面において有効境界の設定を行う場合に、平面上に存在する複数の交線のうち、既に無効にされた部分を除外して、複数の分割領域を作成することができる。すなわち、三次元形状作成装置1は、対象建築物の表面上に実際に存在していない線を用いて、分割領域を作成する頻度を低減することができる。このため、三次元形状作成装置1は、平面上に存在する複数の交線によって囲まれる領域(すなわち、分割領域)のうち、対象建築物の表面を形成する平面ではない領域が、対象建築物の表面を形成する平面であると特定されてしまう事態の発生を更に抑制することができる。
【0106】
このようにして、三次元形状作成装置1は、図17に示すように、複数の平面が交わる交線と、複数の交線が交わる交点とに基づいて、対象建築物の表面を示す三次元形状を作成することができる。
【0107】
以上説明した実施形態において、S210は座標値取得部としての処理に相当し、S230は平面算出部としての処理に相当し、S330は交線算出部としての処理に相当し、S350は交点算出部としての処理に相当し、対象建築物は対象物に相当する。
【0108】
また、S530は閉合領域作成部としての処理に相当し、S580は分割領域作成部としての処理に相当し、S590は有効設定部、無効設定部および境界設定部としての処理に相当する。
【0109】
また、S210は座標値取得手順としての処理に相当し、S230は平面算出手順としての処理に相当し、S330は交線算出手順としての処理に相当し、S350は交点算出手順としての処理に相当し、三次元形状作成プログラム20は三次元形状作成プログラムに相当する。
【0110】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
例えば上記実施形態では、3点の座標値が入力される形態を示したが、4点以上の座標値が入力されるようにしてもよい。
【0111】
上記実施形態では、対象建築物の座標点群データがレーザスキャナを利用して取得された形態を示したが、座標点群データが測量機を利用して取得されるようにしてもよい。
上記実施形態では、表示ソフトウェアのカメラポジションを表示ソフトウェアから自動的に取得して視点座標値として入力する形態を示した。しかし、座標点群データが測量機を利用して取得される場合には、測量機が設置された位置を視点座標値として手動で入力するようにするとよい。
【0112】
また、例えば図18に示すように、壁WL11~WL18で形成された建築物BL1では、平面Sw11~Sw18が算出される。そして、平面Sw18上には、天井を含む平面との交線、床を含む平面との交線と、平面Sw11との交線と、平面Sw13との交線と、平面Sw17との交線と、平面Sw15とが存在する。なお、壁WL18に対応する領域は、天井を含む平面との交線、床を含む平面との交線と、平面Sw11との交線と、平面Sw17との交線とにより囲まれる領域である。
【0113】
これに対して、図19に示すように、平面Sw18に対応する3つの座標点が、天井を含む平面との交線、床を含む平面との交線と、平面Sw11との交線と、平面Sw13との交線とにより囲まれる領域Re1内に含まれると、壁WL18を有効境界によって正しく設定することができない。
【0114】
また、平面Sw18に対応する3つの座標点が、天井を含む平面との交線、床を含む平面との交線と、平面Sw13との交線と、平面Sw17との交線とにより囲まれる領域Re2内に含まれると、壁WL18を有効境界によって正しく設定することができない。
【0115】
一方、平面Sw18に対応する3つの座標点が、天井を含む平面との交線、床を含む平面との交線と、平面Sw11との交線と、平面Sw17との交線とにより囲まれる領域Re3内に含まれると、壁WL18を有効境界によって正しく設定することができる。
【0116】
このため、有効境界を正しく設定することができない場合には、三次元形状作成装置1の使用者が、キーボードおよびマウスを介した入力操作により手動で、境界の有効または無効を設定することができるようにしてもよい。
【0117】
また、上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0118】
上述した三次元形状作成装置1の他、当該三次元形状作成装置1を構成要素とするシステム、当該三次元形状作成装置1としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した媒体、三次元形状作成方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0119】
1…三次元形状作成装置、15…制御部、20…三次元形状作成プログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19