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▶ ヴァクシン ユーケー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】B型肝炎ウイルスに対するワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/29 20060101AFI20221205BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20221205BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221205BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
A61K39/29 ZNA
A61K38/21
A61K39/39
A61K47/54
A61P1/16
A61P31/20
A61P37/04
C12N7/00
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018189011
(22)【出願日】2018-10-04
(62)【分割の表示】P 2015548778の分割
【原出願日】2013-12-20
(65)【公開番号】P2019034946
(43)【公開日】2019-03-07
【審査請求日】2018-11-02
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】1223386.2
(32)【優先日】2012-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515170539
【氏名又は名称】アルティミューン ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジュ,バートランド ヴィクター ギルバート
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,カールトン ブラッドリー
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】齋藤 恵
【審判官】井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-508320(JP,A)
【文献】特表2007-532614(JP,A)
【文献】Hong,S.Y. et al.,The effect of charge increase on the specificity and activity of a short antimicrobial peptide.,Peptides,2001年10月,Vol.22, No.10,pp.1669-1674
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00-38/58,C12N 15/00-15/90
MEDLINE,EMBASE,BIOSIS,CAPLUS
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号24の配列を有するペプチド、配列番号25の配列を有するペプチド、及び配列番号28の配列を有するペプチドの組み合わせを含む医薬組成物であって、配列番号24の配列を有するペプチド、配列番号25の配列を有するペプチド、及び配列番号28の配列を有するペプチドの各ペプチドが、少なくとも1つのCD8+ T細胞エピトープ及び/又は少なくとも1つのCD4+ T細胞エピトープを含み、配列番号24の配列を有するペプチド、配列番号25の配列を有するペプチド、及び配列番号28の配列を有するペプチドの各ペプチドが、in vitroアッセイにおいて、慢性HBV感染症の少なくとも1個体由来の末梢血単核細胞(PBMC)において応答を誘発する、医薬組成物。
【請求項2】
配列番号33の配列を有するペプチド、配列番号34の配列を有するペプチド、配列番号36の配列を有するペプチド、配列番号37の配列を有するペプチド、配列番号38の配列を有するペプチド、及び配列番号222の配列を有するペプチドをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のペプチドが、ペプチドの正味の正電荷を増加させるため、及び/又は疎水性を低下させるために、N末端及び/又はC末端に1つ以上の追加的なアミノ酸をさらに含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
民族性が異なる少なくとも2個体由来のPBMC及び感染しているHBV遺伝子型が異なる2個体由来のPBMCにおいて免疫応答を誘発できるものである、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
HBV遺伝子型Aに感染している個体、HBV遺伝子型Bに感染している個体、HBV遺伝子型Cに感染している個体、及びHBV遺伝子型Dに感染している個体のうちの2個体、3個体又は全個体由来のPBMCにおいて免疫応答を誘発できるものである、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
HBVに感染しているアジア人若しくはインド人の個体、HBVに感染している白人の個体、及びHBVに感染しているアフリカ人若しくはアラブ人の個体のうちの2個体、3個体又は全個体由来のPBMCにおいて免疫応答を誘発できるものである、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ペプチドがフルオロカーボンベクターと連結している、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
HBc抗原、HBe抗原、又はHBs抗原をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
アジュバントをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
HBV感染症の治療又は予防において使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
HBV感染症の治療又は予防において使用するためのものであり、かつHBeAg陰性患者の治療において使用するための、請求項に記載の組成物。
【請求項12】
HBV感染症の治療又は予防において使用するためのものであり、かつHBeAg陽性患者の治療において使用するための、請求項に記載の組成物。
【請求項13】
(i)インターフェロン-アルファ及び/若しくはヌクレオシド/ヌクレオチド類似体(NUC)、並びに/又は(ii)抗PD1遮断抗体、抗PD1L遮断抗体、抗LAG3遮断抗体、抗TIM3遮断抗体、抗CTLA4遮断抗体及び/若しくはシクロホスファミド、と組み合わせた、請求項7若しくは8に記載の組成物であって、請求項7~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記治療が、HBsAg消失又はHBsAgセロコンバージョンをもたらす、請求項10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫原性HBVペプチド組成物及び当該組成物を使用したHBVの治療に関する。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎ウイルス(HBV)感染は、ヨーロッパ及び世界中の肝臓に関連する罹患率及び死亡率の主要な原因である。毎年、推定で650,000個体が肝不全又は肝細胞癌により死亡している。多くの国においてワクチン接種プログラムによって新規のHBV感染の減退がもたらされてきたにもかかわらず、慢性B型肝炎(CHB)はヨーロッパにおいて流行地域からのHBVキャリアの入国が原因で急速に増えている問題である。
【0003】
概念的な観点から、慢性HBV感染症は、免疫寛容性、免疫活性及び免疫不活性の慢性キャリアの3つの期(又は免疫応答の種類)に分類することができる。これらの別個の慢性感染症の期は、特徴的な血清学的パターンと対応し、HBVに対する患者の免疫応答と相関する。一般に、持続性免疫活性慢性HBV感染を伴う患者はHBV療法を受ける。
【0004】
慢性B型肝炎(CHB)について利用可能な治療の選択肢は限られている。インターフェロン-アルファ及びヌクレオシド/ヌクレオチド類似体(NUC)などの抗ウイルス薬でウイルス複製を抑制することが、生存の改善を最終目的として慢性HBV感染の罹患率及び死亡率を低下させるための唯一の方途である。それにもかかわらず、血清HBsAgの消失及び抗HBs抗体の発生(セロコンバージョン)が、HBV感染症に対して免疫学的応答が成功したことの証明であり、また、臨床的治癒に最も近い転帰である。顕著なHBsAg消失を誘導することができているのはインターフェロン-アルファのみであるが、しかし、それは患者の比較的低い割合(<10%)におけるものである。インターフェロンは、費用が高く、忍容性が低く、また、いくつかのHBV遺伝子型は治療に対する反応が不十分のままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、NUCが依然として主要な治療戦略になっており、ヨーロッパにおいてCHBを治療するために5種のNUCが承認されている。最も強力且つ好ましい薬物であるテノホビル及びエンテカビルは、非常に都合のよい副作用プロファイルを有し、ほぼ全ての患者においてHBV DNA抑制を誘導することができる。しかしながら、大多数の患者について、大部分の国内外のガイドラインの下で生涯にわたる療法が必要とされる。NUC療法を数年行った後でさえ、HBsAgを取り除くことができるHBeAg陽性患者はほんの少数であり、また、それが可能なHBeAg陰性患者はいない。NUC療法の長期にわたる安全性は現在のところ不明である。したがって、NUC療法を適切な時期に休止することを可能にする構想が緊急に必要とされている。
【0006】
治療用ワクチン接種は、B型肝炎に対する免疫制御を誘導するための方法として有望な当該疾患に対する介入である。急性HBV感染のクリアランスのためにはT細胞応答が重要であることが示されている。しかしながら、HBsAgに基づく治療用HBVワクチンでは、有効な抗ウイルス治療の下でさえも、高レベルの循環HBsAgから誘導された免疫寛容による利益を示すことには失敗してきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、異なるHBV遺伝子型間での保存の程度が高く、他の同様に保存されたHBVタンパク質の領域と比較して予想外に良好な免疫原としての性質を有するHBVプロテオーム領域を同定した。特に、本発明者らは、予想外に、in vitroアッセイを使用して、HBVポリメラーゼの特定のドメイン及びHBVコアタンパク質内のペプチド配列が、感染しているHBV遺伝子型が異なる慢性感染HBV患者由来のPBMC及び/又は民族性が異なる慢性感染HBV患者由来のPBMCにおいて応答を誘発できることを示した。特に、本発明者らは、驚いたことに、HBVポリメラーゼの末端ドメイン内の免疫優勢領域を同定した。
【0008】
したがって、本発明は、配列番号1~4に示されている配列のうちの1つ又は配列番号1~4に示されている配列のうちの1つに対して少なくとも80%の同一性を有する配列の少なくとも15個の連続したアミノ酸の配列を含むペプチドから選択される、長さが15~60アミノ酸の少なくとも2種のペプチドを含む医薬組成物であって、各ペプチドが、少なくとも1つのCD8+ T細胞エピトープ及び/又は少なくとも1つのCD4+ T細胞エピトープを含み、各ペプチドが、in vitroアッセイにおいて、慢性HBV感染症の少なくとも1個体由来の末梢血単核細胞(PBMC)において応答を誘発する、医薬組成物を提供する。
【0009】
組成物は、配列番号1~3に示されている配列のうちの1つの少なくとも15個のアミノ酸を含む少なくとも1種のペプチド、及び配列番号4に示されている配列の少なくとも15個のアミノ酸を含む少なくとも1種のペプチドを含んでよい。
【0010】
ペプチドのうちの少なくとも1種は、配列番号24~33のうちの1つに示されている配列、又は配列番号24~33に示されている配列のうちの1つに対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含んでよい。ペプチドのうちの1種以上は、ペプチドの正味の正電荷を増加させるため、及び/又は疎水性を低下させるために、N末端及び/又はC末端に1つ以上のアミノ酸(複数可)を含んでよい。したがって、組成物は、配列番号34~38のうちの1つに示されている配列を含むペプチドを含んでよい。
【0011】
組成物は、HBV表面タンパク質に由来する少なくとも1種のペプチドをさらに含んでよい。HBV表面タンパク質に由来するペプチドは、長さが15~60アミノ酸であり、配列番号55に示されている配列の少なくとも15個の連続したアミノ酸の配列、又は配列番号55に示されている配列の少なくとも15個の連続したアミノ酸に対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含むものであってよく、ここで該ペプチドは、少なくとも1つのCD8+ T細胞エピトープ及び/又は少なくとも1つのCD4+ T細胞エピトープを含み、in vitroアッセイにおいて、慢性HBV感染症の少なくとも1個体由来の末梢血単核細胞(PBMC)において応答を誘発するものである。
【0012】
前記組成物は、民族性が異なる少なくとも2個体由来のPBMC及び感染しているHBV遺伝子型が異なる2個体由来のPBMCにおいて免疫応答を誘発できるものである。
【0013】
組成物は、(a)HBV遺伝子型Aに感染している個体、HBV遺伝子型Bに感染している個体、HBV遺伝子型Cに感染している個体、及びHBV遺伝子型Dに感染している個体のうちの2個体、3個体又は全個体由来のPBMC、並びに/又はHBVに感染しているアジア人若しくはインド人の個体、HBVに感染している白人の個体、及びHBVに感染しているアフリカ人若しくはアラブ人の個体のうちの2個体、3個体又は全個体由来のPBMCにおいて免疫応答を誘発でき得るものである。
【0014】
本発明の組成物中のペプチドは、フルオロカーボンベクターと連結していてよい。組成物は、HBc抗原、HBe抗原、若しくはHBs抗原及び/又はアジュバントをさらに含んでよい。
【0015】
本発明は、HBV感染症の治療又は予防において使用するため、特に、HBeAg陰性患者又はHBeAg陽性患者を治療するための、本発明の組成物を提供する。本発明の組成物は、(i)インターフェロン-アルファ及び/若しくはヌクレオシド/ヌクレオチド類似体(NUC)、並びに/又は(ii)抗PD1遮断抗体、抗CTLA4遮断抗体、抗PD1L遮断抗体、抗LAG3遮断抗体、抗TIM3遮断抗体及び/若しくはシクロホスファミド、と組み合わせて使用することができる。当該組成物を用いた治療は、HBsAg消失又はHBsAgセロコンバージョンをもたらし得る。
【0016】
本発明は、末期の肝疾患若しくは肝細胞癌の治療若しくは予防において使用するため、又はD型肝炎ウイルス(HDV)感染症の治療若しくは予防において使用するための本発明の組成物も提供する。
【0017】
HBV感染症を治療若しくは予防する方法であって、それを必要とする被験体に治療有効量の本発明による組成物を投与することを含む、方法、並びにHBVを治療若しくは予防するための医薬の製造における本発明による組成物の使用も提供される。
【0018】
さらに、本発明は、配列番号1~4のいずれか1つに示されている配列又は配列番号1~4に示されている配列のうちの1つに対して少なくとも80%の同一性を有する配列の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含む、長さが15~60アミノ酸のペプチドであって、少なくとも1つのCD8+ T細胞エピトープ及び/又は少なくとも1つのCD4+ T細胞エピトープを含み、in vitroアッセイにおいて、慢性HBV感染症の少なくとも1個体由来の末梢血単核細胞(PBMC)において応答を誘発できる、ペプチドを提供する。ペプチドは、配列番号5、6、14又は15に示されている配列の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含んでよい。
【0019】
本発明は、配列番号24~38に示されている配列のうちの1つ又は配列番号24~38に示されている配列のうちの1つに対して少なくとも80%の同一性を有する配列を含むペプチドも提供する。
【0020】
本発明のペプチドは、フルオロカーボンベクターと共有結合により連結していてよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】免疫制御期にある又は積極的治療を受けている慢性HBV感染症の被験体におけるIFNγ応答の比較を示すグラフである。HBV由来の重複した短いペプチドプールライブラリー(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)と一緒に10日間培養した後、PBMCを、18時間IFNγ ELISpotアッセイにおいてHBVプロテオームの特定の領域を表す重複したペプチドのプール1~23のうちの1つを用いて再刺激した(1mL当たりペプチド当たり5μg)。
図2】感染しているHBV遺伝子型によって群分けした、HBV感染症の被験体におけるHBV由来の短いペプチドプールに対するIFNγ応答の特異性を示すグラフである。HBV由来の重複した短いペプチドプールライブラリー(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)と一緒に10日間培養した後、PBMCを、18時間IFNγ ELISpotアッセイにおいてHBVプロテオームの特定の領域を表す重複したペプチドのプール1~23のうちの1つを用いて再刺激した(1mL当たりペプチド当たり5μg)。
図3】民族的背景によって群分けした、慢性HBV感染症の被験体におけるHBV由来の短いペプチドプールに対するIFNγ応答を示すグラフである。HBV由来の重複した短いペプチドプールライブラリー(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)と一緒に10日間培養した後、PBMCを、18時間IFNγ ELISpotアッセイにおいてHBVプロテオームの特定の領域を表す重複したペプチドのプール1~23のうちの1つを用いて再刺激した(1mL当たりペプチド当たり5μg)。
図4】慢性HBV被験体由来のPBMC及び健康な対照の被験体由来のPBMCにおける、HBVのポリメラーゼ由来の短いペプチドプール及びコア由来の短いペプチドプールを用いて刺激した後のCD4 T細胞及びCD8 T細胞によるIFNγ産生の代表的なドットプロットである。被験体由来のPBMCを、短いペプチドプールライブラリー(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)を用いて10日間刺激し、その後、それぞれHBVのポリメラーゼの領域及びコアの領域を表すHBV由来の短いペプチドプール2又は14を用いて一晩刺激した(1mL当たりペプチド当たり5μg)。結果は、IFNγ産生細胞の親CD3/CD4 T細胞集団又は親CD3/CD8 T細胞集団に対する百分率として表されている。培養培地又はPMA/イオノマイシンでの刺激を、それぞれ陰性対照及び陽性対照として使用し、ゲーティング戦略は陰性対照のIFNγ産生に基づいた。
図5】健康な被験体由来のPBMC、及び免疫制御期にある若しくは積極的治療を受けている慢性HBV感染症のHBeAg陰性被験体由来のPBMCにおける35~40merのペプチドを表すHBV由来の短いペプチドプールに対するIFNγ応答の比較を示すグラフである。HBV由来の重複した短いペプチドプールライブラリー(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)と一緒に10日間培養した後、PBMCを、18時間IFNγ ELISpotアッセイにおいて、それぞれが35~40merのHBVプロテオーム領域を表す、重複したペプチドのプール24~46のうちの1つを用いて再刺激した(1mL当たりペプチド当たり5μg)。
図6】感染しているHBV遺伝子型によって群分けした、HBV感染症の被験体における、35~40merのペプチドを表すHBV由来の短いペプチドプールに対するIFNγ応答の特異性を示すグラフである。HBV由来の重複した短いペプチドプールライブラリー(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)と一緒に10日間培養した後、PBMCを、18時間IFNγ ELISpotアッセイにおいて、それぞれがHBVプロテオームの特定の領域を表す、重複したペプチドのプール24~46のうちの1つを用いて再刺激した。
図7】民族的背景によって群分けした、慢性HBV感染症のHBeAg陰性被験体における、35~40merのペプチドを表すHBV由来の短いペプチドプールに対するIFNγ応答を示すグラフである。HBV由来の重複した短いペプチドプールライブラリー(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)と一緒に10日間培養した後、PBMCを、18時間IFNγ ELISpotアッセイにおいて、それぞれが35~40merのHBVプロテオーム領域を表す、重複したペプチドのプール24~46のうちの1つを用いて再刺激した(1mL当たりペプチド当たり5μg)。
図8】35~40merのペプチドを表す個々の短いペプチドプールに対する、HBV感染症の被験体由来のPBMCによるサイトカイン応答の概略を示すグラフである。HBV由来の短いペプチドプールライブラリーと一緒に10日間短期培養した後、慢性HBV感染症のeAg陰性被験体由来のPBMC(n=7~14)を、HBVペプチドプール25、38、26、39、42、43、28及び31(ペプチドP113、P753、P151、P797、P856、P877、P277及びP376を示す)のうちの1つと一緒に最終濃度1mL当たりペプチド当たり5μgで一晩培養した。細胞を、CD3、CD4及びCD8の細胞外発現について、その後、IFNγ、IL-2及びTNFαの細胞内発現について染色した。細胞を、フローサイトメトリーによって評価した。サイトカインの発現を各被験体について培地陰性対照に対して正規化した。データは評価した各サイトカインについての平均発現を示す。積み重ねられた棒のそれぞれの上に応答の幅が示されている。
図9】慢性HBV感染症(HBeAg陰性の非活動性キャリア又は治療を受けているHBeAg陰性被験体のいずれか)由来のPBMCにおいて測定されたIFNγスポット形成細胞の数(平均値)を示すグラフである。コンジュゲートしていないHBVペプチド9種(NP113、NP151、NP277(K)、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)、NP877及びNP1266(K))(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)と一緒に10日間培養した後、PBMCを、18時間IFNγ ELISpotアッセイにおいて個々のペプチドを5μg/mlの濃度で用いて再刺激した。
図10】慢性HBV感染症(HBeAg陰性の非活動性キャリア又は治療を受けているHBeAg陰性被験体のいずれか)由来のPBMCにおいて測定された、HBVペプチドに応答するIFNγELISpotアッセイに対する応答者の頻度を示すグラフである。コンジュゲートしていないHBVペプチド9種(NP113、NP151、NP277(K)、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)、NP877及びNP1266(K))(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)と一緒に10日間培養した後、PBMCを、18時間IFNγ ELISpotアッセイにおいて個々のペプチドを5μg/mlの濃度で用いて再刺激した。
図11】感染しているHBV遺伝子型によって群分けした、慢性HBV感染症の被験体由来のPBMCにおいて測定されたIFNγスポット形成細胞の数(平均値)を示すグラフである。コンジュゲートしていないHBVペプチド9種(NP113、NP151、NP277(K)、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)、NP877及びNP1266(K))(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)と一緒に10日間培養した後、PBMCを、18時間IFNγ ELISpotアッセイにおいて個々のペプチドを5μg/mlの濃度で用いて再刺激した。
図12】民族的背景によって群分けした、慢性HBV感染症の被験体由来のPBMCにおいて測定されたIFNγスポット形成細胞の数(平均値)を示すグラフである。コンジュゲートしていないHBVペプチド9種(NP113、NP151、NP277(K)、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)、NP877及びNP1266(K))(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)と一緒に10日間培養した後、PBMCを、18時間IFNγ ELISpotアッセイにおいて個々のペプチドを5μg/mlの濃度で用いて再刺激した。
図13A】慢性HBV由来のPBMCにおける、HBV由来ペプチドを用いて刺激した後の、サイトカインを産生するCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞の頻度を示すグラフである。図13Aは、HBV遺伝子型Aに感染している個体の群について得られた結果に対応する。コンジュゲートしていないHBVペプチド9種(NP113、NP151、NP277(K)、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)、NP877及びNP1266(K))(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)と一緒に10日間培養した後、PBMCを、18時間IFNγ ELISpotアッセイにおいて個々のペプチドを5μg/mlの濃度で用いて再刺激した。結果は、サイトカインを産生する細胞の親CD3/CD4 T細胞集団又は親CD3/CD8 T細胞集団に対する百分率として表されている。培養培地又はPMA/イオノマイシンでの刺激を、それぞれ陰性対照及び陽性対照として使用し、ゲーティング戦略は、陰性対照のIFNγ産生に基づいた。
図13B】慢性HBV由来のPBMCにおける、HBV由来ペプチドを用いて刺激した後の、サイトカインを産生するCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞の頻度を示すグラフである。図13Bは、HBV遺伝子型Bに感染している個体の群について得られた結果に対応する。コンジュゲートしていないHBVペプチド9種(NP113、NP151、NP277(K)、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)、NP877及びNP1266(K))(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)と一緒に10日間培養した後、PBMCを、18時間IFNγ ELISpotアッセイにおいて個々のペプチドを5μg/mlの濃度で用いて再刺激した。結果は、サイトカインを産生する細胞の親CD3/CD4 T細胞集団又は親CD3/CD8 T細胞集団に対する百分率として表されている。培養培地又はPMA/イオノマイシンでの刺激を、それぞれ陰性対照及び陽性対照として使用し、ゲーティング戦略は、陰性対照のIFNγ産生に基づいた。
図13C】慢性HBV由来のPBMCにおける、HBV由来ペプチドを用いて刺激した後の、サイトカインを産生するCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞の頻度を示すグラフである。図13Cは、HBV遺伝子型Cに感染している個体の群について得られた結果に対応する。コンジュゲートしていないHBVペプチド9種(NP113、NP151、NP277(K)、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)、NP877及びNP1266(K))(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)と一緒に10日間培養した後、PBMCを、18時間IFNγ ELISpotアッセイにおいて個々のペプチドを5μg/mlの濃度で用いて再刺激した。結果は、サイトカインを産生する細胞の親CD3/CD4 T細胞集団又は親CD3/CD8 T細胞集団に対する百分率として表されている。培養培地又はPMA/イオノマイシンでの刺激を、それぞれ陰性対照及び陽性対照として使用し、ゲーティング戦略は、陰性対照のIFNγ産生に基づいた。
図13D】慢性HBV由来のPBMCにおける、HBV由来ペプチドを用いて刺激した後の、サイトカインを産生するCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞の頻度を示すグラフである。図13Dは、HBV遺伝子型Dに感染している個体の群について得られた結果に対応する。コンジュゲートしていないHBVペプチド9種(NP113、NP151、NP277(K)、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)、NP877及びNP1266(K))(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)と一緒に10日間培養した後、PBMCを、18時間IFNγ ELISpotアッセイにおいて個々のペプチドを5μg/mlの濃度で用いて再刺激した。結果は、サイトカインを産生する細胞の親CD3/CD4 T細胞集団又は親CD3/CD8 T細胞集団に対する百分率として表されている。培養培地又はPMA/イオノマイシンでの刺激を、それぞれ陰性対照及び陽性対照として使用し、ゲーティング戦略は、陰性対照のIFNγ産生に基づいた。
図13E】慢性HBV由来のPBMCにおける、HBV由来ペプチドを用いて刺激した後の、サイトカインを産生するCD4+ T細胞及びCD8+ T細胞の頻度を示すグラフである。図13Eは、HBV遺伝子型A/B/C/D以外に感染している個体の群について得られた結果に対応する。コンジュゲートしていないHBVペプチド9種(NP113、NP151、NP277(K)、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)、NP877及びNP1266(K))(1mL当たりペプチド当たり0.1μg)と一緒に10日間培養した後、PBMCを、18時間IFNγ ELISpotアッセイにおいて個々のペプチドを5μg/mlの濃度で用いて再刺激した。結果は、サイトカインを産生する細胞の親CD3/CD4 T細胞集団又は親CD3/CD8 T細胞集団に対する百分率として表されている。培養培地又はPMA/イオノマイシンでの刺激を、それぞれ陰性対照及び陽性対照として使用し、ゲーティング戦略は、陰性対照のIFNγ産生に基づいた。
図14】FP-02.1又はNP02.1を用いて免疫したBALB/cマウス(n=7)由来の脾細胞によるIFNγ産生を示すグラフである。このグラフには、ワクチンの9種のペプチド成分に応答して測定された脾細胞106個当たりのIFNγスポット形成細胞の数が示されている。対応のあるt検定を使用して統計解析を実施した。ns=有意でない。
図15】FP-02.1又はNP02.1を用いて免疫したBALB/cマウス(n=7)由来の脾細胞によるIFNγ産生を示すグラフである。グラフには、ワクチンの9種のペプチド成分のそれぞれに応答して測定された脾細胞106個当たりのIFNγスポット形成細胞の数が示されている。棒はそれぞれのペプチドに対する応答の累積中央値を示す。
図16】FP02.1により、単回免疫後のMHCクラスI分子によって制限されるCTLエピトープに対するT細胞応答が促進されることを示すグラフである。
図17】FP-02.1又はNP02.1を用いて免疫したBALB/cマウスによるIFNγ産生を示すグラフである。各脾細胞集団について、9種のペプチドの混合物に応答して産生された脾細胞106個当たりのIFNγSFC数。
【発明を実施するための形態】
【0022】
配列表の簡単な説明
配列番号1~38及び配列番号40~72は、以下の表1に示されているHBVポリメラーゼの配列番号39に示されている参照HBV配列の領域のアミノ酸配列である。
【0023】
【表1】
【0024】
配列番号39は、ポリメラーゼの末端ドメイン(1位~181位)、ポリメラーゼの逆転写酵素ドメイン(182位~549位)、ポリメラーゼのRNaseドメインH(550位~702位)、コアタンパク質(703位~914位)、Xタンパク質(915位~1068位)及び表面タンパク質(1069位~1468位)を直鎖状に共集合させることによって構築された仮想HBVタンパク質配列である。プロテオーム配列を、遺伝子型A、B、C及びDのコンセンサス配列から生成したコンセンサス配列のコンセンサスから得た。
【0025】
配列番号73~219は、プール1~46のそれぞれの中の短いペプチドのアミノ酸配列である。配列番号220はプール5のアミノ酸配列である。
【0026】
ペプチド組成物
本発明は、集団カバレッジ及びHBV遺伝子型カバレッジに関して広範な適用性がある、多エピトープの(multiepitopic)CD4+ T細胞及びCD8+ T細胞免疫応答を誘発できる、広範な免疫原性を有するペプチド配列を含む組成物を提供する。本発明は、長さが15~60アミノ酸の少なくとも1種のペプチドを含む医薬組成物であって、前記ペプチドが、HBVポリメラーゼの末端ドメイン、HBVポリメラーゼの逆転写酵素ドメイン、HBVポリメラーゼのRNaseHドメイン配列又はHBVコアタンパク質、の少なくとも15個の連続したアミノ酸の断片を含む、医薬組成物を提供する。ペプチドは、長さが15~60アミノ酸であり、配列番号1~4に示されている配列のうちの1つの少なくとも15個の連続したアミノ酸の配列を含むペプチドから選択される。ペプチドは、少なくとも1つのCD8+ T細胞エピトープ及び/又は少なくとも1つのCD4+ T細胞エピトープを含む。ペプチドは、in vitroアッセイにおいて、慢性HBV感染症の少なくとも1個体由来の末梢血単核細胞(PBMC)において応答を誘発する。
【0027】
組成物は、上で定義されている性質を有する多数のペプチドを含んでよい。組成物は、民族性が異なる少なくとも2個体及び/又は感染しているHBV遺伝子型が異なる2個体由来の末梢血単核細胞(PBMC)において免疫応答を誘発でき得るものである。
【0028】
ペプチド配列
本発明の組成物は、配列番号1~4のうちの1つからの少なくとも15個の連続したアミノ酸、例えば、少なくとも20、25、29、30、31、32、33、34又は35アミノ酸を含む1種以上のペプチドを含んでよい。配列番号1、2及び3はHBVポリメラーゼ配列である。配列番号4はHBVコアタンパク質配列である。
【0029】
これらの領域は、本発明の組成物中に存在するペプチドが配列番号5~13のうちの1つからの少なくとも15、20、25、30、32、33、34又は35アミノ酸を含み得るようにさらに細分することができる。これらの小領域内のペプチドは配列番号14~23のうちの1つの内部の配列を含有することが好ましい。
【0030】
配列番号1~4内の例示的な短いペプチドは配列番号80~117及び配列番号142~184に示されている。好ましい例示的な短いペプチドは配列番号80~83、配列番号86~89、配列番号98~101、配列番号105~112、配列番号146~150、配列番号163~166及び配列番号169~181に示されている。本発明の組成物は、これらの短い配列の1つ以上を含むペプチドを含んでよい。
【0031】
これらのHBVポリメラーゼ配列由来の特に好ましいペプチドは、配列番号24~29に示されている配列のうちの1つを含む。配列番号24は、配列番号1、5及び14の好ましい領域である。配列番号25は、配列番号1、6及び15の好ましい領域である。配列番号26は、配列番号2、7及び16の好ましい領域である。配列番号27は、配列番号2、8及び17の好ましい領域である。配列番号28は、配列番号2、9及び18の好ましい領域である。配列番号29は、配列番号3及び19の好ましい領域である。
【0032】
上記のHBVコアタンパク質配列(配列番号4)由来の特に好ましいペプチドは、配列番号30~33に示されている配列のうちの1つを含む。配列番号30は、配列番号10及び20の好ましい領域である。配列番号31は、配列番号11及び21の好ましい領域である。配列番号32は、配列番号12及び22の好ましい領域である。配列番号33は、配列番号13及び23の好ましい領域である。
【0033】
他の好ましいペプチドは、配列番号24~33に示されている配列内に含まれるものであり、これらのうちの1つの配列内の少なくとも20個、例えば、25個、29個、30個、31個、32個、33個又は34個の連続したアミノ酸を含むペプチドを包含する。
【0034】
組成物は、長さが15~60アミノ酸の少なくとも1種のペプチドをさらに含んでよく、ここで前記ペプチドは、HBV表面タンパク質の少なくとも15個の連続したアミノ酸の断片を含む。HBV表面タンパク質ペプチドは、典型的には、長さが15~60アミノ酸のものであり、配列番号55に示されている配列の少なくとも15個の連続したアミノ酸の配列を含むペプチドから選択される。
【0035】
HBV表面タンパク質ペプチドは、配列番号55、好ましくは配列番号71のうちの1つ由来の少なくとも15、20、25、30、32、33、34又は35アミノ酸を含んでよい。
【0036】
配列番号55及び71内の例示的な短いペプチドがそれぞれ配列番号204~210及び205~209に示されている。本発明の組成物は、これらの短い配列の1つ以上を含むペプチドを含んでよい。
【0037】
これらのHBV表面タンパク質配列由来の特に好ましいペプチドは、配列番号221に示されている配列の1つを含む。配列番号221は、配列番号55及び71の好ましい領域である。
【0038】
本発明の組成物に含めることができるさらに別のペプチドは、配列番号1~33、55、71及び221のうちの1つに示されている配列の1つの内部に、1つ以上、例えば、2つ、3つ又は4つのアミノ酸の置換、付加又は欠失、好ましくは置換を含む配列を含むペプチドである。連続した配列内の1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のアミノ酸が置換されていてよい。指定の配列内の置換としては、システイン残基を除去するための変異が挙げられる。例えば、システイン残基をセリン残基で置換することができる。
【0039】
典型的には、そのようなペプチドは、配列番号1~33、55、71及び221のうちの1つの内部の少なくとも15個又は20個、例えば、25個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個又は40個、の連続したアミノ酸に対して、又は、配列番号24~33及び配列番号221に示されている配列のうちの1つの全長に対して、少なくとも80%、例えば、少なくとも85%、90%、95%又は98%の配列同一性を有する(例えば、National Center for Biotechnology Information(blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)において利用可能なBLASTプログラムを使用して決定される)。そのようなペプチドは、HBVポリメラーゼ又はコアタンパク質の同等の領域内のHBV遺伝子型A、B、C、D、E又はFのアミノ酸配列とマッチする配列を含む。
【0040】
ペプチドは、それらの全長が60アミノ酸を超えないのであれば、追加的な配列を含んでよい。例えば、ペプチドは、配列番号1~33、55、71及び221、好ましくは配列番号24~33及び配列番号221のうちの1つに示されている配列の1つの内部からの少なくとも20個、例えば、25個、29個、30個、31個、32個、33個、34個又は35個の連続したアミノ酸を含んでよく、長さが15アミノ酸、20アミノ酸又は25アミノ酸から、30アミノ酸、31アミノ酸、32アミノ酸、33アミノ酸、34アミノ酸、35アミノ酸、36アミノ酸、37アミノ酸、38アミノ酸、39アミノ酸、40アミノ酸、45アミノ酸、50アミノ酸、55アミノ酸又は60アミノ酸までであってよい。
【0041】
したがって、ペプチドは、典型的には、長さが15アミノ酸又は20アミノ酸から60アミノ酸まで、例えば、25~50アミノ酸、好ましくは30~40アミノ酸、例えば、31アミノ酸、32アミノ酸、33アミノ酸、34アミノ酸、35アミノ酸、36アミノ酸、37アミノ酸、38又は39アミノ酸である。
【0042】
ペプチドは、追加的な配列を含んでよい。追加的な配列により、ペプチドの製造若しくは製剤化を容易にすること又はペプチドの安定性を増強することができる。例えば、ペプチドは、ペプチドの正味の正電荷を増強するため、及び/又はペプチドの疎水性を低下させるために、典型的にはN末端及び/又はC末端に、1つ以上の追加的なアミノ酸を含んでよい。ペプチドの等電点が7以上になるように正味の正電荷を増大させてもよい。
【0043】
本発明の一態様では、1つ以上、例えば2つ又は3つの正に荷電したアミノ酸(アルギニン及び/又はリシン)を組成物中のペプチドのうちの1種以上のN末端及び/又はC末端に付加する。例えば、3つのリシン残基をペプチドのうちの1種以上のN末端及び/又はC末端に付加してよい。典型的には、全体的な疎水性が65%超であり、正味の電荷がゼロ未満であり、且つ/又は疎水性アミノ酸のクラスターを含むペプチドの末端(複数可)に正のアミノ酸を付加する。
【0044】
N末端及び/又はC末端にリシン残基を含むペプチドの特定の例が配列番号34~38及び222に示されている。
【0045】
ペプチドは、コンセンサスHBV配列には存在しない1種以上のエピトープを含んでよい。そのような例の1つは、柔軟な許容性を有する(promiscuous)Tヘルパーエピトープがコンセンサス配列に共有結合した(場合によってポリペプチドリンカー又はスペーサーを介して)、融合ペプチドの使用である。例として、柔軟な許容性を有するTヘルパーエピトープは、PADREペプチド、破傷風トキソイドペプチド(830-843)又はインフルエンザ赤血球凝集素、HA(307-319)であってよい。
【0046】
ペプチドがフルオロカーボンと連結している場合、例えば、ミセルの形成によってフルオロカーボン-ペプチド構築物の溶解性を促進するために、ペプチドの末端、例えばフルオロカーボン又は他の結合物とコンジュゲートしていない末端、を変更することができる。構築物の大規模合成を容易にするために、ペプチドのN末端又はC末端のアミノ酸残基を修飾することができる。所望のペプチドがペプチダーゼによる切断に対して特に感受性である場合、通常のペプチド結合を切断不可能なペプチド模倣物で置き換えることができる。そのような結合及び合成方法は当技術分野で周知である。
【0047】
ペプチドは、ネイティブなペプチドであってよい。ペプチドは、例えばin vivoにおけるペプチドの投与部位での半減期若しくは持続などの寿命を増大させるため、又はペプチドを抗原提示細胞に向けるために修飾してもよい。例えば、免疫原性ペプチドは、近接するアミノ酸と共有結合により接続するために、1つ以上の天然に存在しないアミノ酸及び/又は天然に存在しない共有結合を含有してよい。ある特定の実施形態では、標準ではない、天然に存在しないアミノ酸も、それらがMHC分子と相互作用するペプチドの能力に干渉せず、天然の配列を認識するT細胞と交差反応性のままであれば、免疫原性ペプチドに組み込むことができる。非天然アミノ酸を使用して、プロテアーゼに対するペプチド抵抗性又は化学的安定性を改善することができる。非天然アミノ酸の例としては、D-アミノ酸及びシステイン修飾が挙げられる。
【0048】
ペプチドをタンパク質担体又は送達ベクターなどの担体とカップリングしてもよい。適切な送達ベクターとしては、リポペプチド、例えば、モノパルミトイル鎖などの脂肪アシル鎖、ビロソーム、リポソーム及びペネトラチンなどの細胞透過性ペプチド、並びに転写のトランス活性化因子(TAT)が挙げられる。
【0049】
本発明の組成物中のHBVペプチドのうちの1種以上、好ましくは全てがフルオロカーボンベクターと共有結合により連結していることが好ましい。
【0050】
ペプチドの組合せ
本発明の組成物は、多数のペプチドを含んでよい。したがって、組成物は、少なくとも2種、例えば、少なくとも3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種又はそれ以上のペプチドを含んでよく、それぞれが、上記の通り配列番号1~4のうちの1つの少なくとも15個の連続したアミノ酸の配列を含む。組成物は、上記の通り配列番号55の少なくとも15個の連続したアミノ酸の配列を含むペプチドをさらに含んでよい。
【0051】
一態様では、組成物は、配列番号1~3に示されている配列のうちの1つの少なくとも15個のアミノ酸及び配列番号4に示されている配列の少なくとも15個のアミノ酸を含む少なくとも1種のペプチド、並びに場合によって、配列番号55に示されている配列のうちの1つの少なくとも15個のアミノ酸を含む少なくとも1種のペプチドを含んでよい。例えば、組成物は、配列番号24、25、26、27、28、29及び34に示されている配列の1つの少なくとも15個のアミノ酸並びに配列番号30~33及び配列番号35~38に示されている配列のうちの1つの少なくとも15個のアミノ酸を含む少なくとも1種のペプチドを含んでよい。
【0052】
別の態様では、組成物は、上記の通り配列番号1及び/又は2のうちの1つの少なくとも15個の連続したアミノ酸の配列を含む少なくとも1種のペプチド、並びに上記の通り配列番号3又は4の少なくとも15個の連続したアミノ酸の配列を含む少なくとも1種のペプチドを含んでよい。例えば、組成物は、上記の通り配列番号1又は2の少なくとも15個の連続したアミノ酸の配列を含むペプチド(又は配列番号5及び6の両方の配列を含むペプチド)、並びに上記の通り配列番号10~13のいずれか1つの少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチドを含んでよい。本発明は、上記の通り配列番号5、6、7、8及び9の任意の2つ、3つ、4つ、5つ又は全ての少なくとも15個の連続したアミノ酸の配列を含むペプチドを含んでよく、且つ/又は、上記の通り配列番号10~13の任意の2つ、3つ又は全ての少なくとも15個の連続したアミノ酸の配列を含むペプチドを含んでよい。
【0053】
本発明の組成物中に存在するペプチドは、配列番号24~38に示されている配列のうちの1つからなってもよく、それから本質的になってもよい。本発明の組成物中に存在するHBV表面タンパク質ペプチドは、配列番号221及び222に示されている配列のうちの1つからなってもよく、それから本質的になってもよい。したがって、本発明は、配列番号24~38のうちの1つに示されているアミノ酸配列からなる、それから本質的になる、若しくはそれを含む少なくとも1種のペプチド、例えば2種以上のそのようなペプチド、並びに場合によって、配列番号221若しくは222に示されているアミノ酸配列からなる、それから本質的になる、若しくはそれを含む少なくとも1種のペプチドを含む医薬組成物を提供する。組成物は、配列番号24~33及び配列番号221に示されている配列を含む少なくとも2種、例えば3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種又は10種のペプチドを含んでよい。一実施形態では、配列番号24~33及び配列番号221のうちの1つを含むペプチドのうちの1種以上は、N末端又はC末端にリシン残基を含んでよい。より詳細には、配列番号26、29、30、31、32及び221を含むペプチドはそれぞれ、配列番号34~38及び配列番号222に示されている配列を有してよい。
【0054】
例えば、組成物は、配列番号24、25、27、28、33、34、35、36、37及び38に示されている配列を含む、それからなる、若しくはそれから本質的になるペプチドのうちの少なくとも2種、例えば、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種若しくは10種、又は、配列番号24、25、28、33、34、36、37及び38を含む、それからなる、若しくはそれから本質的になるペプチドのうちの少なくとも2種、例えば、3種、4種、5種、6種、7種若しくは8種を含んでよい。これらのペプチドの任意の可能性のある組合せが本発明の組成物中に存在してよい。好ましい組合せとしては、配列番号24、25、28、33及び31/37のうちの1つ以上、例えば、任意の2つ、任意の3つ、任意の4つ又は全て、好ましくは配列番号24及び/又は25が挙げられる。例えば、配列番号24と配列番号33の組合せにより、7種のクラスI対立遺伝子及び7種のクラスII対立遺伝子に結合するエピトープを含有する組成物がもたらされる。組成物は、配列番号221又は222を含む、それからなる、又はそれから本質的になるペプチドをさらに含んでよい。
【0055】
例えば、組成物は、以下の配列:配列番号24、25、26、28、30、31、32及び33を含む8種のペプチド、並びに場合によって、配列番号222を含む第9のペプチドを含んでよい。
【0056】
ペプチドのうちの1種、例えば配列番号28を含むペプチドを、配列番号27を含むペプチドで置換することができ、且つ/又は1種のペプチドを、配列番号29を含むペプチドで置換することができる。ペプチドのうちの1種以上を、上記のより短いペプチド、例えば置換されるペプチドの少なくとも20個の連続したアミノ酸を有するペプチド、又は置換されるペプチドのアミノ酸配列に対して、その全長にわたって少なくとも80%の同一性を有するペプチドで置換することができる。
【0057】
組成物は、上記のHBVポリメラーゼ由来、より好ましくはHBVポリメラーゼの末端ドメイン由来の少なくとも1種のペプチドを含むことが好ましい。特に好ましい実施形態では、HBVポリメラーゼペプチドは、配列番号1内の少なくとも1つのアミノ酸配列、例えば、配列番号5、6、14、15、24又は25内の少なくとも1つの配列を含む。例えば、そのようなペプチドは、配列番号80、81、82、83、86、87、88、89、24又は25のうちの1つに示されているアミノ酸配列を含んでよい。
【0058】
HBV遺伝子型
組成物中のペプチド配列の組合せにより、多数のHBV遺伝子型に存在するエピトープ、好ましくはCD8+エピトープとCD4+エピトープの両方がもたらされる。HBV遺伝子型としては、遺伝子型A、B、C、D、E及びFが挙げられる。例えば、長いペプチドは、少なくとも2つのHBV遺伝子型、例えばA及びD(ヨーロッパにおいて最も大きく蔓延している遺伝子型)又はB及びC(アジアにおいて最も大きく蔓延している遺伝子型)などに由来するエピトープを含んでよい。組成物は、少なくとも3種のHBV遺伝子型、例えば、A、B及びC、A、B及びD、A、C及びD、又はB、C及びDなどに由来するエピトープを含むことがより好ましい。組成物は、少なくともHBV遺伝子型A、B、C及びDに由来するエピトープを含むことが最も好ましい。遺伝子型A、B、C及びDのうちの1種以上の任意の組合せに由来するエピトープの任意の組合せを含むことに加えて、組成物は、遺伝子型E、F及び/又はGに対するエピトープを含んでよい。これは、任意の適切な手段によって、例えば、本明細書に記載のin vitro PBMCアッセイを使用することによって決定することができる。
【0059】
したがって、本発明は、HBV遺伝子型Aに感染している個体、HBV遺伝子型Bに感染している個体、HBV遺伝子型Cに感染している個体、HBV遺伝子型Dに感染している個体及び別のHBV遺伝子型に感染している個体のうちの2個体、3個体、4個体、又は全個体由来のPBMCにおいて免疫応答を誘発できる組成物を提供する。
【0060】
HBV遺伝子型Aに感染している個体、HBV遺伝子型Bに感染している個体、HBV遺伝子型Cに感染している個体、及びHBV遺伝子型Dに感染している個体のうちの2個体、3個体又は全個体において免疫応答を誘発できる本発明の組成物は、以下の群の少なくとも2つ、好ましくは3つ又は全てから選択される少なくとも1種のペプチドを含んでよい:
(i)配列番号14、15、20、21、67、22又は23の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチド、
(ii)配列番号14、17、18、21又は67の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチド、
(iii)配列番号14、16、60、19、20又は22の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチド、及び
(iv)配列番号14、15、20、21、67、22又は23の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチド。
【0061】
組成物は、配列番号55又は配列番号71の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチドをさらに含んでよい。
【0062】
例えば、そのような組成物は、以下の群の少なくとも2つ、好ましくは3つ又は全てから選択されるペプチドを含んでよい:
(i)配列番号20、21、67、22又は23の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチド、
(ii)配列番号17又は18の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチド、
(iii)配列番号16、60又は19の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチド、及び
(iv)配列番号14又は15の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチド。
【0063】
組成物は、配列番号55又は配列番号71の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチドをさらに含んでよい。
【0064】
指定の配列の少なくとも15個のアミノ酸を含む適切なペプチドは、本明細書においてより詳細に記載されており、それらとして、特に、表4に記載されている配列番号24~38のペプチド、並びに配列番号221及び222のペプチドが挙げられる。
【0065】
一態様では、本発明の組成物は、HBV遺伝子型Aに慢性的に感染している少なくとも1個体、HBV遺伝子型Bに慢性的に感染している1個体、HBV遺伝子型Cに慢性的に感染している1個体及びHBV遺伝子型Dに慢性的に感染している1個体由来の末梢血単核細胞(PBMC)においてin vitro応答を誘発する。これは、本明細書において実施例に記載されている方法などの任意の適切な方法によって決定することができる。個体の民族性は同じであっても異なってもよく、少なくとも2種の異なる民族性であることが好ましい。個体のHLA亜型は同じであっても異なってもよく、少なくとも2種の異なるHLA亜型であることが好ましい。
【0066】
民族性
本発明は、少なくとも2種、例えば、3種又はそれ以上の異なる民族性の個体において免疫応答を誘発できる組成物を提供する。これは、実施例に記載のin vitro PBMCアッセイを使用して評価することができる。本発明の組成物は、HBVに感染しているアジア人若しくはインド人の個体、HBVに感染している白人の個体、及びHBVに感染しているアフリカ人若しくはアラブ人の個体のうちの2個体、3個体又は全個体由来のPBMCにおいて免疫応答を誘発でき得るものである。
【0067】
HBVに感染しているアジア人若しくはインド人の個体、HBVに感染している白人の個体、及びHBVに感染しているアフリカ人若しくはアラブ人の個体のうちの2個体、3個体又は全個体における免疫応答を誘発できる本発明の組成物は、以下の群の少なくとも2つ、好ましくは3つ又は全てから選択される少なくとも1種のペプチドを含んでよい:
(i)配列番号14、16、60、17、18、20、21、67又は22の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチド、
(ii)配列番号14、15、19、20、22又は23の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチド、及び
(iii)配列番号14、15、20、21、67、22又は23の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチド。
【0068】
組成物は、配列番号55又は配列番号71の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチドをさらに含んでよい。
【0069】
例えば、そのような組成物は、以下の群の少なくとも2つ、好ましくは3つ又は全てから選択されるペプチドを含んでよい:
(i)配列番号16、60、17、18の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチド、
(ii)配列番号14、15又は19の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチド、及び (iii)配列番号14、15、20、21、22又は23の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチド。
【0070】
組成物は、配列番号55又は配列番号71の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含むペプチドをさらに含んでよい。
【0071】
指定の配列の少なくとも15個のアミノ酸を含む適切なペプチドは、本明細書においてより詳細に記載されており、それらとして、特に、表4に記載されている配列番号24~38のペプチド、並びに配列番号221及び222のペプチドが挙げられる。
【0072】
エピトープ
HLAクラスI分子及びHLAクラスII分子は多型的であり、それらの頻度は民族グループの間で変動する。多型の大部分はペプチド結合性領域内に位置し、その結果として、各バリアントは独特のペプチドリガンドのレパートリーに結合すると考えられている。HLA多型は示差的なペプチド結合の基礎をなすので、HLA多型はワクチン設計者にとっての主要な問題を表す。さらに、特定のHLA対立遺伝子は、異なる民族性において劇的に異なる頻度で発現される。
【0073】
そのような多型にもかかわらず、HLA分子は、重複したペプチドのセットに結合し、したがって、それに応じてスーパータイプに群分けすることができる(Lundら(2004)Immunogenetics 55(12):797-810、Setteら(1999)Immunogenetics 50(3-4):201-212)。スーパータイプは、同様のペプチド結合レパートリーを有し、したがって、重複したペプチドのセットを共有する、異なるHLA分子のファミリーと定義される。言い換えれば、所与のスーパータイプに属するHLA対立遺伝子に結合するペプチドが他のスーパータイプメンバーに対する結合活性を示す可能性が高い。
【0074】
異なるHLAクラスII対立遺伝子に対するペプチドの結合能は、Texierら(2000)J Immunol 164:3177-3184、Texierら(2001)Eur J Immunol 31:1837-1846及びCastelliら(2002)J Immunol 169:6928-6934に記載の通り、各HLAクラスII対立遺伝子に対して特定のビオチン化トレーサーペプチドを使用する異種競合アッセイを使用して決定することができる。
【0075】
以下の9種のHLAクラスII対立遺伝子は、Lundら(2004)Immunogenetics 55(12):797-810及びGreenbaumら(2011)Immunogenetics 63(6):325-35に記載の配列解析及び結合モチーフ特異性に基づいた主要なスーパータイプ又はHLAクラスターを示す: HLA-DR1(α1*01:01;β1*01:01)、HLA-DR3(α1*01:01;β1*01:01)、HLA-DR4(α1*01:01;β1*04:01)、HLA-DR7(α1*01:01;β1*07:01)、HLA-DR11(α1*01:01;β1*11:01)、HLA-DR13(α1*01:01;β1*13:01)、HLA-DR15(α1*01:01;β1*15:01)、HLA-DR51(α1*01:01;β5*01:01)及びHLA-DP4(α1*01:03;β1*04:01)。これらの対立遺伝子は、異なる民族性にわたって高い分布率を有する(Wilsonら(2001)J Virol. 75(9):4195-4207を参照されたい)。
【0076】
本発明の組成物中に存在するペプチドは、典型的には、9種の主要なHLAクラスII対立遺伝子のうちの少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種、例えば、実施例10に記載の7種のHLAクラスII対立遺伝子のうちの少なくとも2種、好ましくは少なくとも3種に結合する。組成物中に存在するペプチドのうちの1種以上が、9種の主要なHLAクラスII対立遺伝子のうちの少なくとも4種、5種、6種、7種、8種若しくは全て、又は実施例10に記載の7種のHLAクラスII対立遺伝子のうちの少なくとも4種、5種、6種若しくは全てに結合し得る。本発明の組成物は、上記の主要なHLAクラスII対立遺伝子のうちの少なくとも7種、少なくとも8種又は9種全て、例えば、実施例10に記載の7種のHLAクラスII対立遺伝子の全てに結合することができるペプチドを含むことが好ましい。
【0077】
各ペプチドに含有されるHLAクラスI結合レジスター(binding register)の数は、様々な頻繁に生じるHLAクラスI分子と結合するペプチドの能力を決定することによって決定することができる。HLAクラスI結合は、ProImmune REVEAL(登録商標)MHC-peptide Binding Assay(ProImmune Ltd、Oxford、UK)を使用して測定してもよい。REVEAL(商標)MHC-peptide binding assayにより、主要なHLAクラスIスーパータイプを表すHLA-A*0101、HLA-A*0201、HLA-A*0301、HLA-A*2402、HLA-B*0702、HLA-B*0801、HLA-B*3501について三元(ternary)MHC-ペプチド複合体を安定化する各ペプチドの能力が測定される。試験された各ペプチドに、合否対照ペプチドに対するスコアが与えられ、また、陽性対照ペプチドと比較される。
【0078】
HLAクラスI分子は、長さが8アミノ酸から11アミノ酸まで様々である短いペプチドに結合する。理論的には、35merのペプチド配列から102種の短いペプチド(27×8mer、26×9mer、25×10mer及び24×11mer)を導くことができる。試験するペプチドの数を限定するために、公けに利用可能なアルゴリズムに基づいて良好な予測スコアを有する九量体ペプチド(HLAクラスI結合ペプチドに関して最も頻度の高い長さ)のみを使用して結合アッセイを行うことができる。
【0079】
以下のHLAクラスI対立遺伝子は、ヒト集団において高度に示され、(2)これらは、明確に定義されたHLAスーパータイプに属する(http://bioinformatics.nmdp.org/): HLA-A*0101、HLA-A*0201、HLA-A*0301、HLA-A*2402、HLA-B*0702、HLA-B*0801、HLA-B*3501及びHLA-A*1101。
【0080】
本発明の組成物中に存在するペプチドは、典型的には、これらのHLAクラスI対立遺伝子のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2種又は少なくとも3種、例えば、上に列挙されている最初の7種のクラスI対立遺伝子、好ましくは実施例9に記載されている7種のHLAクラスI対立遺伝子、に結合する短いペプチドを含む。組成物中に存在するペプチドのうちの1種以上は、7種のHLAクラスI対立遺伝子のうちの少なくとも4種、5種、6種又は全てに結合する短いペプチドを含んでよい。本発明の組成物は、上記のHLAクラスI対立遺伝子のうちの少なくとも5種、少なくとも6種、又は7種全てに結合することができる短いペプチドを含むペプチドを含むことが好ましい。
【0081】
本発明の医薬組成物は、典型的には、広範な集団カバレッジをもたらすために、異なるMHC対立遺伝子に結合する1つ以上のT細胞エピトープを含む1種以上のペプチドを含む。組成物は、特定の民族グループ内で、又は多数の民族グループにわたって頻度が高いMHC対立遺伝子に関連する1つ以上のMHC結合モチーフを含有することが公知である又は予測されるペプチドを含んでよい。組成物は、2種以上の対立遺伝子バリアントに結合する、柔軟な許容性を有する1つ以上のCD4+ T細胞エピトープ及びCD8+ T細胞エピトープを含んでよい。組成物中のペプチド配列の組合せにより、異なるHLA亜型に結合するT細胞エピトープがもたらされる。
【0082】
一態様では、本発明の組成物は、HLA亜型が異なる少なくとも2個体由来の末梢血単核細胞(PBMC)においてin vitroで応答を誘発する。本組成物は、それぞれが異なるHLA遺伝子型を有し、民族性が異なる個体であってよい、少なくとも3個体、4個体、5個体、6個体又は7個体において免疫応答を誘発し得る。
【0083】
フルオロカーボン
フルオロカーボンは、ペルフルオロカーボン又は混合フルオロカーボン/炭化水素基に由来する1つ以上の鎖を含んでよく、飽和型であっても不飽和型であってもよく、各鎖が3~30個の炭素原子を有する。したがって、フルオロカーボン結合における鎖は、典型的には、飽和型又は不飽和型であり、飽和型であることが好ましい。フルオロカーボン結合における鎖は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。各鎖は、典型的には、3~30個の炭素原子、5~25個の炭素原子、又は8~20個の炭素原子を有する。フルオロカーボンベクターとペプチドを共有結合により連結するために、反応性基又はリガンド、例えば、-CO-、-NH-、S、O又は任意の他の適切な基をベクター内に含める。共有結合による連結を実現するための、そのようなリガンドの使用は当技術分野において周知である。反応性基は、フルオロカーボンベクター上の任意の位置に位置してよい。
【0084】
フルオロカーボンベクターとペプチドのカップリングは、ペプチドの任意の部位に天然に存在する又は導入された-OH、-SH、-COOH及び-NH2などの官能基を通じて実現してもよい。そのような連結の例としては、アミド結合、ヒドラゾン結合、ジスルフィド結合、チオエーテル結合及びオキシム結合が挙げられる。
【0085】
場合によって、スペーサーエレメント(ペプチド性又は非ペプチド性)を組み込んで、抗原提示細胞内でのプロセシング及びペプチドの立体的提示の最適化のためにフルオロカーボンエレメントからのペプチドの切断を可能にすることができる。分子の合成に役立てるため、及びその安定性及び/又は溶解性を改善するためにスペーサーを組み込むこともできる。スペーサーの例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、又はタンパク質分解酵素によって切断することができるリシン若しくはアルギニンなどのアミノ酸が挙げられる。
【0086】
一実施形態では、フルオロカーボンと連結したペプチドは、化学構造CmFn-CyHx-(Sp)-R又はその誘導体を有してよく、式中、m=3~30であり、n≦2m+1であり、y=0~15であり、x≦2yであり、(m+y)=3~30であり、Spは任意選択の化学的スペーサー部分であり、Rは免疫原性ペプチドである。典型的には、m及びnは、2m-1≦n≦2m+1、好ましくはn=2m+1の関係を満たす。典型的には、x及びyは、2y-2≦x≦2y、好ましくはx=2yの関係を満たす。CmFn-CyHx部分は直鎖状であることが好ましい。
【0087】
mは5~15であることが好ましく、8~12であることがより好ましい。同様にyは0~8であることが好ましく、0~6又は0~4であることがより好ましい。CmFn-CyHx部分が飽和した(すなわち、n=2m+1及びx=2y)、直鎖状であること、及びm=8~12であり、y=0~6又は0~4であることが好ましい。
【0088】
特定の例では、フルオロカーボンベクターは、次式:
【化1】
の2H, 2H, 3H, 3H-ペルフルオロウンデカン酸に由来する。
【0089】
したがって、好ましいフルオロカーボン結合は、C8F17(CH2)2COOHに由来する直鎖状の飽和型部分C8F17(CH2)2-である。
【0090】
フルオロカーボン結合のさらなる例は、それぞれC6F13(CH2)2COOH、C7F15(CH2)2COOH、C9F19(CH2)2COOH、C10F21(CH2)2COOH、C5F11(CH2)3COOH、C6F13(CH2)3COOH、C7F15(CH2)3COOH、C8F17(CH2)3COOH及びC9F19(CH2)3COOHに由来する次式: C6F13(CH2)2-、C7F15(CH2)2-、C9F19(CH2)2-、C10F21(CH2)2-、C5F11(CH2)3-、C6F13(CH2)3-、C7F15(CH2)3-、C8F17(CH2)3-及びC9F19(CH2)3-を有する。
【0091】
フルオロカーボンベクター-抗原構築物に適した構造の好ましい例は、式:
【化2】
を有し、式中、Sp及びRは上で定義された通りである。ある特定の実施形態では、Spはリシン残基に由来し、式-CONH-(CH2)4-CH(NH2)-CO-を有する。Rは配列番号1~14のうちの任意の1つであることが好ましく、Rは配列番号1~6のうちの任意の1つであることが好ましい。各ペプチド、例えば、配列番号1、2、3、4、5又は6のN末端アミノ酸のアミノ基は、式-CONH-(CH2)4-CH(NH2)-CO-のスペーサーのC末端カルボキシ基とアミド結合を形成する。
【0092】
本発明に関しては、生じる化合物がペプチドを依然として抗原提示細胞に送達することができるように、フルオロカーボン結合を修飾してもよい。したがって、例えば、いくつかのフッ素原子を塩素、臭素又はヨウ素などの他のハロゲン原子で置き換えてもよい。さらに、いくつかのフッ素原子をメチル基で置き換え、本明細書に記載の分子の性質を依然として保持することが可能である。
【0093】
ペプチドは、スペーサー部分を介してフルオロカーボンベクターと連結してもよい。スペーサー部分はリシン残基であることが好ましい。このスペーサー残基は、上記の任意の末端リシン残基に加えて存在してよく、したがって、ペプチドは、例えば、合計4つのN末端リシン残基を有し得る。したがって、本発明の好ましい製剤は、フルオロカーボンと連結したペプチドを含んでよく、ここで該ペプチドは、C末端又はN末端リシン残基、好ましくはN末端リシン残基を有する。ペプチド内の末端リシンは、式C8F17(CH2)2COOHを有するフルオロカーボンと連結していることが好ましい。フルオロカーボンは、N末端リシン残基のイプシロン鎖とカップリングしていることが好ましい。
【0094】
本明細書に記載の医薬組成物は、場合によってそれぞれが独自のフルオロカーボンベクターと共有結合により連結した、少なくとも1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種又は10種以上の免疫原性ペプチドを含むことが意図されている。
【0095】
ペプチド
本発明は、本発明の組成物に有用なペプチドも提供する。ペプチドは、上記のペプチドのうちのいずれか1つであってもよい。特に、本発明は、配列番号24~33及び配列番号221に示されている配列のうちの1つ、又は配列番号24~33及び配列番号221に示されている配列のうちの1つと少なくとも80%同一、例えば、少なくとも85%、90%、95%又は98%同一である配列を含む、長さが40アミノ酸、50アミノ酸又は60アミノ酸までのペプチドを提供する。ペプチドは、上記の通り追加的なアミノ酸を含んでよい。特定の一実施形態では、本発明は、配列番号34~38及び配列番号222のうちの1つに示されている配列を有するペプチドを提供する。本発明の特に好ましいペプチドは、配列番号24、25、28、30、31、32、33、34、36、37及び38に示されている配列を含む、それから本質的になる、又はそれからなる。
【0096】
本発明は、HBVポリメラーゼの末端ドメイン由来の高度に保存された免疫原性ペプチドも提供する。これらのペプチドは、上で本発明の組成物に関して記載されているHBVポリメラーゼペプチドのいずれかであってもよい。そのようなペプチドは、典型的には、長さが15~60アミノ酸であり、配列番号1又は2の少なくとも15個の連続したアミノ酸を含み、HBVに慢性的に感染している少なくとも1個体由来のPBMCにおいてin vitroで免疫応答を誘発するものである。
【0097】
ペプチドを上記の通り担体にカップリングしてもよい。好ましい一態様では、本発明のペプチドはフルオロカーボンベクターと共有結合により連結している。フルオロカーボンベクターは上記の通りであってよい。
【0098】
他の成分
本発明の組成物は、追加的な免疫原を含んでよい。免疫原は、B細胞抗原であってよい。B細胞抗原は、HBVに対する抗体応答を刺激するために役立ち得る。本発明の医薬組成物は、例えば、T細胞応答を刺激することができる、フルオロカーボンと連結した1種以上のペプチドと、B細胞抗原とを含んでよい。
【0099】
B細胞抗原としての機能を果たす適切な免疫原としては、B型肝炎表面抗原(HBsAg)又はB型肝炎コア抗原(HBcAg又はHBeAg)などのタンパク質抗原が挙げられる。
【0100】
一態様では、本発明は、フルオロカーボンと連結したペプチドなどの2種以上のペプチドを含み、アジュバント及び/又は場合によって薬学的に許容される担体若しくは賦形剤をさらに含む組成物を提供する。賦形剤は、効率的な凍結乾燥に必要な安定剤又は増量剤であってよい。例として、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルピロリドン、及びそれらの混合物、好ましくはマンニトールが挙げられる。存在してよい他の賦形剤としては、当技術分野で周知の、抗酸化剤などの防腐剤、滑沢剤、凍結保存剤及び結合剤が挙げられる。
【0101】
アジュバントは、それ自体を与えた場合に、たとえあるとしても、直接的な効果がわずかである、同時投与された抗原を対象とする免疫応答を調節することができる薬剤である。そのようなアジュバントにより、免疫応答を規模及び/又はサイトカインプロファイルに関して増強することができ得る。アジュバントの例としては、フロイントアジュバント及びその誘導体、ムラミルジペプチド(MDP)誘導体、CpG、モノホスホリルリピドAなどの天然の又は合成により誘導された細菌の天然成分の精製物(refinement); サポニン、アルミニウム塩及びサイトカインなどの他の公知のアジュバント又は増強剤; 水中油アジュバント、油中水アジュバント、免疫賦活性複合体(ISCOM)、リポソーム、製剤化されたナノ粒子及び微小粒子; 細菌毒素及びトキソイド; イヌリン、特にガンマイヌリン; 並びにTLRアゴニストが挙げられる。
【0102】
好ましくは、アジュバントは、ペプチドグリカン(例えば、TDM、MDP、ムラミルジペプチド、ムラブチド(Murabutide))、ミョウバン水(例えば、水酸化アルミニウム、ADJUMER(商標)(ポリホスファゼン)又はリン酸アルミニウムゲル)、グルカン、アルガムリン(algammulin)、界面活性物質(例えば、スクアラン、Tween 80、プルロニック又はスクアレン)、リン酸カルシウムゲル、細菌毒素又はトキソイド(例えば、コレラホロ毒素、コレラ毒素-A1-プロテインA-D-断片融合タンパク質、コレラ毒素のサブユニットB、又はブロック共重合体)、サイトカインを含有するリポソーム、油中水アジュバント(例えば、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント又はISA 51若しくはISA 720などのモンタニド(Montanide))、水中油アジュバント(例えば、MF-59)、イヌリンに基づくアジュバント、サイトカイン(例えば、インターフェロン-ガンマ、インターロイキン-1ベータ、インターロイキン-2、インターロイキン-7又はインターロイキン-12)、ISCOM(例えば、イスコマトリックス(iscomatrix))、任意の組成のミクロスフェア及び微小粒子、並びにToll様受容体アゴニスト(例えば、CpG、ヒトTLR 1-10のリガンド、マウスTLR 1-13のリガンド、ISS-1018、IC31、イミダゾキノリン、ポリ(I:C)、モノホスホリルリピドA、Ribi529、コレラ毒素、熱不安定性毒素、Pam3Cys又はフラジェリン)からなる群から選択することができる。
【0103】
医薬組成物の調製
本発明の医薬組成物は、医薬製品の製剤化の第1のステップとして、フルオロカーボンと連結したペプチドなどの少なくとも1種のペプチドを酢酸又は他の溶媒中に可溶化することによって調製することができる。フルオロカーボンと連結したペプチドの1つ以上をブレンド中に分散させるために使用し得る他の溶媒の例としては、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、プロパン-2-オール、tert-ブタノール、アセトン及び他の有機溶媒が挙げられる。フルオロカーボンベクター-ペプチドコンジュゲートを可溶化するための手法は、WO2012/090002に記載されている。
【0104】
出発材料として使用されるペプチド又はフルオロカーボンと連結したペプチドは、典型的には、乾燥したものである。20アミノ酸よりも短いペプチドを含み、且つ/又は50%未満の疎水性残基を有するペプチド及びフルオロカーボンと連結したペプチドは酢酸以外の溶媒中に可溶化することができる。酢酸は、典型的には、ペプチドが20アミノ酸超を有し、且つ/又は50%超の疎水性残基を有する場合に使用される。
【0105】
溶液中の、フルオロカーボンと連結したペプチドの濃度は、典型的には、約0.1mM~約10mM、例えば、約0.5mM、1mM、2mM、2.5mM又は5mMである。適切な濃度の例は約10mg/mLである。
【0106】
インプット成分を任意の凝集体が分散した所望の比率まで均一にブレンドし、滅菌し、投与に適した形式で提供することができる。そのような例としては、ブレンド後又は希釈後の段階でボルテックス及び/又は超音波処理を導入して可溶化を容易にすることを挙げることができる。製造プロセスフローの他の並び替えとしては、滅菌濾過を当該プロセスのより早い段階で実施すること、又は液体での最終的な提供を可能にするために凍結乾燥を省略することを挙げることができる。
【0107】
異なるペプチド又はフルオロカーボンと連結したペプチドを、例えば異なる溶媒中に又は濃度が異なる酢酸中に別々に可溶化する場合、可溶化したペプチド又はフルオロカーボンと連結したペプチドをブレンドしてペプチド又はフルオロカーボンと連結したペプチドの混合物を作出する。
【0108】
任意選択のアジュバント及び/又は1種以上の薬学的に許容される賦形剤も、可溶化したペプチド/フルオロカーボンと連結したペプチド、又はペプチド/フルオロカーボンと連結したペプチドの混合物に添加することができる。典型的には、可溶化したフルオロカーボンと連結したペプチドを賦形剤及び/又はアジュバントと混合する。
【0109】
フルオロカーボンと連結したペプチド(複数可)の溶液を可溶化及びブレンドした後、希釈してもよい。例えば、ブレンドを水中に希釈してよい。
【0110】
ペプチド又はフルオロカーボンと連結したペプチドを含有する溶液を滅菌することが好ましい。滅菌は製剤が全身に使用するためのものである場合に特に好ましい。UV滅菌又は濾過滅菌などの任意の適切な滅菌の手段を使用してよい。濾過滅菌を使用することが好ましい。滅菌濾過は、0.45μmのフィルター、その後の0.22μmの滅菌グレードのフィルターの連続を含んでよい。
【0111】
滅菌は、任意の賦形剤及び/又はアジュバントを添加する前、又はその後に行ってもよい。
【0112】
本発明の組成物は、凍結乾燥した形態などの乾燥した形態であってよい。本発明の組成物は、水溶液、例えば、凍結乾燥物又は他の乾燥製剤を水性媒体に溶解させることによって形成された水溶液であってよい。水溶液は、典型的には中性のpHである。
【0113】
製剤を乾燥することにより、長期保存が容易になる。任意の適切な乾燥方法を使用してよい。凍結乾燥が好ましいが、真空乾燥、噴霧乾燥、噴霧フリーズドライ又は流動層乾燥などの他の適切な乾燥方法を使用してよい。乾燥手順により、ペプチド又はフルオロカーボンと連結したペプチドが組み込まれた非結晶ケーキの形成がもたらされ得る。
【0114】
長期保存するために、滅菌組成物を凍結乾燥してもよい。凍結乾燥は、フリーズドライによって実現することができる。フリーズドライは、典型的には、凍結させ、次いで乾燥することを含む。例えば、フルオロカーボンと連結したペプチド混合物を-80℃で2時間にわたって凍結させ、フリーズドライ装置で24時間にわたってフリーズドライしてもよい。
【0115】
本発明の薬学的に許容される組成物は固体組成物であってよい。フルオロカーボンと連結したペプチド組成物を乾燥粉末の形態で得てよい。凍結乾燥によって生じるケーキを破砕して粉末の形態にすることができる。したがって、本発明による固体組成物は、さらさらした粒子の形態をとってよい。固体組成物は、典型的には、密閉されたバイアル、アンプル又はシリンジに入った散剤として提供される。吸入用の場合、散剤を乾燥粉末吸入器に入れて提供することができる。あるいは、固体マトリックスをパッチとして提供することができる。散剤を圧縮して錠剤の形態にしてもよい。
【0116】
乾燥、例えば凍結乾燥した、ペプチド又はフルオロカーボンと連結したペプチド組成物は、投与する前に再構成してよい。本明細書で使用される場合、「再構成」という用語は、使用前に乾燥したワクチン製品を溶解させることを意味するものと理解される。凍結乾燥などの乾燥を行った後、免疫原性ペプチド、例えば、フルオロカーボンと連結したペプチド製品を再構成して等張性、pH中性の均一な懸濁剤を形成することが好ましい。製剤は、典型的には、例えば、注射用水、ヒスチジン緩衝溶液(例えば、28mMのL-ヒスチジン緩衝液)、炭酸水素ナトリウム、トリス-HCl又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加えることによって水相中に再構成される。再構成された製剤は、典型的には、バイアル、シリンジなどの滅菌容器中又は任意の他の保存若しくは投与に適した形式に分配される。
【0117】
組成物は、使用する前には滅菌バイアル又はシリンジなどの容器中に保存してもよい。
【0118】
医学的使用
本発明は、療法によるヒト又は動物の体の治療において使用するための本発明の組成物を提供する。特に、HBV感染症を治療又は予防する方法において使用するための本発明の組成物が提供される。本発明の組成物は、HBV予防法においても有用であり得る免疫応答を誘発する。本発明の組成物は、HBVに感染している個体を治療するための治療用ワクチンとして使用するために好ましい。本発明の組成物は、持続性慢性HBV感染症の患者の治療において特に有用であるが、免疫寛容性患者又は非活動性慢性キャリアを治療するためにも使用することができる。
【0119】
本発明は、慢性HBV(CHB)を治療するための破壊的技術として治療用ワクチンを提供する。本発明の組成物は、抗ウイルスT細胞応答を増強し、HBV感染症の自発性免疫制御をもたらす。これにより、抗ウイルスNUC療法を休止することが可能になり、HBV感染症の血清学的治癒も潜在的にもたらされ得る。長期にわたる臨床転帰の改善の予測因子としてHBsAgの減退を使用する。HBsAgレベルは、HBVに感染している肝細胞の数と関連付けることができ、種々のサイトカインによって制御される肝内cccDNAの転写活性によって決定される。本発明の組成物を使用した治療は、HBsAg消失又はHBsAgセロコンバージョンをもたらし得る。
【0120】
本発明のペプチド及び組成物は、NUC治療を受けたCHB患者の治療において特に有用である。また、当該ペプチドにより、長期間にわたるNUC治療を利用することができない発展途上国のHBeAg陽性患者に利用可能な治療が示される。特にNUC治療を受けた、HBV-DNA抑制された、HBeAg陰性患者に本発明のペプチド組成物を用いてワクチン接種することにより、HBsAgクリアランスが容易になり、且つ加速される。HBeAg陽性患者も治療することができる。本発明の組成物は、HBVの非活動性キャリアを治療するためにも使用してよい。
【0121】
B型肝炎ウイルス(HBV)感染症は、肝臓に関連する罹患率及び死亡率の主要な原因である。本発明の組成物は、肝不全、末期肝疾患及び肝細胞癌の治療における使用のために提供される。
【0122】
本発明の組成物は、承認された療法が利用可能でなく、HBsAg陽性個体における同時感染としてのみ起こる、ウイルス性肝炎の最も重症の形態であるデルタ肝炎(HDV)の患者のワクチン接種において有用である。
【0123】
本発明は、HBV感染症、特にCHBを治療若しくは予防するため、肝不全、末期の肝疾患若しくは肝細胞癌を治療若しくは予防するため、又は、HDVを治療若しくは予防するための医薬の製造における本発明の医薬組成物の使用も提供する。
【0124】
同様に、本発明は、それを必要とする被験体におけるHBV感染症を治療又は予防する方法であって、予防量又は治療量の本発明の組成物を前記被験体に投与することを含む、方法を提供する。
【0125】
本発明の組成物は、第2の治療剤又は予防剤と組み合わせて投与してもよい。例えば、第2の薬剤は、免疫応答をさらに刺激するため、例えば、フルオロカーボンと連結したペプチドによりHBVに対する細胞性免疫応答が刺激される場合に、体液性免疫応答を刺激するために、さらなる免疫原(例えば、球状抗原又は組換え若しくは天然に存在する抗原)を含んでよい。第2の薬剤はB細胞抗原であってよいことが理解される。適切なB細胞抗原としては、HBsAg、HBcAg及びHBeAgが挙げられる。
【0126】
好ましい実施形態では、第2の薬剤は、現存するHBV治療的処置における使用について知られている薬剤である。現存するHBV治療剤は、インターフェロン-アルファなどのインターフェロン、又はエンテカビル及びテノホビルなどのNUCであってよい。HBV治療的処置は、抑制性の細胞型を遮断する治療であってよい。そのような遮断治療において有用な薬剤としては、抗PD1遮断抗体、抗PD1L遮断抗体、抗LAG3遮断抗体、抗TIM3遮断抗体、抗CTLA4遮断抗体及びシクロホスファミドが挙げられる。
【0127】
第2の治療剤又は予防剤を本発明の組成物と同時に使用する場合、投与は同時であっても時間を隔てたものであってもよい。本発明の組成物は、第2の治療剤の前、それと一緒に、又はその後に投与してもよい。
【0128】
本発明の組成物は、種々の公知の経路及び技法を使用してヒト被験体又は動物被験体にin vivoで投与することができる。例えば、組成物を注射用溶液、懸濁剤又は乳剤として提供し、非経口、皮下、経口、表皮、皮内、筋肉内、動脈内、腹腔内、静脈内注射により、従来の針及びシリンジを使用して、又は液体ジェット注射系を使用して投与してもよい。当該組成物は、皮膚又は粘膜組織に、例えば、経鼻的に、気管内に、腸に、舌下に、直腸に若しくは膣に局所的に投与してもよく、呼吸器への投与又は肺内投与に適した細かく分割された噴霧として提供してもよい。好ましい実施形態では、組成物を筋肉内に投与する。
【0129】
当該組成物は、投薬組成と適合し、予防的且つ/又は治療的に有効になる量で被験体に投与することができる。本発明の組成物の投与は、「予防」のため又は「治療」のためのいずれであってもよい。本明細書で使用される場合、「治療(therapeutic)」又は「治療(treatment)」という用語は、以下の任意の1つ以上を包含する:感染若しくは再感染の予防、症状の減少若しくは排除、並びに病原体の減少若しくは完全な排除。治療は、予防的に(感染する前に)又は治療的に(感染した後に)実施してよい。
【0130】
必要であれば、担体の選択は、組成物の送達経路に応じることが多い。本発明の範囲では、組成物を任意の適切な経路及び投与の手段のために製剤化してよい。薬学的に許容される担体又は希釈剤としては、経口投与、眼への投与、直腸への投与、鼻への投与、局所投与(口腔及び舌下を含む)、膣への投与又は非経口投与(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、経皮を含む)に適した組成物に使用されるものが挙げられる。
【0131】
当該組成物は、任意の適切な形態で、例えば、液体、固体又はエアロゾルとして投与してもよい。例えば、経口用製剤は、乳剤、シロップ剤又は液剤又は錠剤又はカプセル剤の形態をとってよく、これは、活性成分を胃内での分解から保護するために腸溶性にコーティングされてよい。鼻用製剤は噴霧剤又は液剤であってよい。経皮用製剤はそれらの特定の送達系に適するものであってよく、パッチを含んでよい。注射用の製剤は蒸留水又は別の薬学的に許容される溶媒又は懸濁化剤中の液剤又は懸濁剤であってよい。
【0132】
患者に投与する予防用ワクチン又は治療用ワクチンの適切な投与量は診療所で決定される。しかし、指針として、適切なヒト用量は、好ましい投与経路に左右され得、1~1000μg、例えば、約100μg、200μg又は500μgであり得る。免疫学的効果又は臨床効果を実現するために複数回投与が必要になる場合があり、これが必要な場合には、典型的には、2~12週間の間隔をあけて投与する。長期間にわたる免疫応答の追加刺激が必要である場合、1カ月~5年の間隔をあけた反復用量を適用してよい。
【実施例
【0133】
以下の実施例は本発明を例示するものである。
【0134】
[実施例1]
ヒトPBMCにおける、HBV由来の短いペプチドプールのex vivoにおける免疫原性の評価
方法及び材料
集団
HBV感染症の被験体
慢性HBV感染症であると臨床的に定義された99人の被験体を、Imperial Healthcare NHS Trust、Chelsea and Westminster Hospital NHS Foundation Trust、及びBarts and the London NHS Trust in Londonにおける、RECにより承認されたプロトコールに登録した。全ての被験体から書面でのインフォームドコンセントを得た後、新鮮な静脈血を採取し、PBMC及び血漿を単離し、血液採取の18時間以内に凍結保存した。これらの被験体は以下の基準に合致した:全体的な健康状態が良好であること、HBVに特異的な治療:抗ウイルスヌクレオシド(ヌクレオチド)類似体阻害剤及び/又はインターフェロン療法(臨床的に示された場合)、臨床的状態(慢性HBV感染症、HBeAg陰性、並びにALTの正常な、持続的若しくは断続的な上昇)、HIV陰性、HCV陰性及びHDV陰性。
【0135】
健康な対照被験体
17人の被験体由来の凍結保存されたPBMCをCTL Technologiesから得た。これらの被験体は以下の基準に合致した:全体的な健康状態が良好であること、HBVに対するワクチン接種を受けていないこと、HBV表面抗原陰性、HBVコア抗体陰性、HIV陰性及びHCV陰性。
【0136】
PBMCの短期培養
各被験体由来のPBMCのバイアル1つ(細胞1×107個を含有する)を解凍し、Scepter(商標)手持ち型自動細胞計数器を使用してリンパ球数を決定した。PBMCを、24ウェルの細胞培養プレートにおいて、2mLの培養培地(CM: 5%ヒトAB血清を補充したRPMI-1640 Glutamax)中、1mL当たり細胞1×106個の濃度で合計11日間培養した。細胞を、長さが15~20アミノ酸にわたり、10~13アミノ酸が重複している重複したHBV由来の短いペプチド144種(配列番号73~210及び配列番号214~219)を含有するペプチドプールを1mL当たりペプチド当たり0.1μgの最終濃度で用いて刺激した。4日目に、IL-2及びIL-15を、培養物にそれぞれ最終濃度10 IU/mL及び10ng/mLまで加えた。10日目に、細胞をCM中で2回洗浄し、10 IU/mLのIL-2と一緒にさらに1日培養した。11日目に、細胞をCM中で2回洗浄し、計数し、ヒトIFNγ ELISpotアッセイ又は細胞内サイトカイン染色に組み込んだ。
【0137】
ヒトIFNγ ELISpotアッセイ
96ウェルマルチスクリーンPVDFフィルタープレート(Millipore)を、100μl(1:80)の抗ヒトIFNγ捕捉mAb(R&D Systems)を用いて4℃で一晩コーティングした。次いで、プレートを、1% BSA及び5%スクロースを補充したPBSを用いて4℃で2時間ブロッキングした。細胞を、3連のウェルに、ウェル当たりPBMC 5×104個でプレーティングした。使用した最終的な抗原の濃度は、HBV由来の短いペプチドプール22種(以下を参照されたい、配列番号212及び213のペプチドとして調製することができなかったプール22は不溶性のために分散できなかった)及びHIV-3 35mer陰性ペプチド対照: 1mL当たりペプチド当たり5μg、PHA陽性対照: 1μg/mLであった。ELISpotプレートを、加湿した環境下、5% CO2、37℃で18時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、100μl(1:80)のビオチン化抗ヒトIFNγ検出用mAb(R&D Systems)と一緒に室温で2時間インキュベートした。洗浄後、プレートを、製造者(R&D Systems)の説明書に従って、ストレプトアビジンとコンジュゲートしたアルカリホスファターゼ(1:80)と一緒に1時間、その後、基質と一緒に(30分)インキュベートした。発生したスポットを、自動プレート計数システム(CTL Europe)を使用して計数した。
【0138】
【表2】
【0139】
細胞内サイトカイン染色アッセイ
細胞を、96ウェル丸底プレートにウェル当たりPBMC 5×105個でプレーティングし、HBV由来のペプチドプール、最終濃度1mL当たりペプチド当たり5μgによって刺激した。プレートを、5% CO2のインキュベーター中、37℃で20時間インキュベートした。アッセイの最後の3時間については、PMA/イオノマイシンをそれぞれのウェルに加え、ゴルジプラグ(Golgi plug)を全てのウェルに加えた。細胞を回収し、PBS+0.1% BSA(洗浄緩衝液)で洗浄し、抗CD3、抗CD4及び抗CD8(BD Biosciences)を用いて4℃で30分染色した。さらに洗浄した後、細胞を固定し、BD Cytofix/Cytoperm溶液100μLを用いて4℃で20分透過処理し、その後、1×BD Perm/Wash溶液で2回洗浄した。最後に、細胞を、抗IL-2-FITC、抗IFNγ-PE及び抗TNFα PerCP-Cy5.5(BD Biosciences)を用いて4℃で30分染色した。試料をFACSCanto IIフローサイトメーター(BD Biosciences)で取得した。ゲーティングは、各被験体についての培地で刺激した試料に基づいた。
【0140】
感染しているHBV遺伝子型の決定
HBV遺伝子型決定のために、ネステッドPCR法、その後に直接ヌクレオチド配列決定を最初に使用した。しかし、大多数の試料由来の血漿中のウイルス負荷量が低いことに起因して、この方法を使用してHBV遺伝子型を決定することはできなかった。その後、IMMUNIS(登録商標)HBV遺伝子型酵素イムノアッセイ(EIA)キットを使用した。このアッセイでは、HBsAgのPreS2領域内の4種の遺伝子型依存性エピトープを使用し、エピトープのそれぞれに特異的な4つのEIAの陽性/陰性の組合せによって遺伝子型を血清学的に決定した。
【0141】
結果
HBVプロテオーム内の対象領域を同定する最初のステップは、HBVに感染していない、ワクチン接種を受けていない健康な被験体由来のPBMCのIFNγ ELISpot応答と、疾患の持続的制御期(sustained control phase)にある慢性HBV感染症のHBeAg陰性の非活動性キャリア被験体由来のPBMCのIFNγ ELISpot応答、及び治療中の慢性HBV感染症のHBeAg陰性被験体由来のPBMCのIFNγ ELISpot応答を比較することであった。HBVプロテオームのおよそ70%を表す重複した短いペプチド(15~20mer、10~13アミノ酸が重複したもの)のライブラリーと一緒に短期培養した後、それぞれHBVのポリメラーゼ、コア、X及び表面抗原内の対象とする特定の領域を表すこれらの短いペプチドのプールを用いてPBMCを一晩再刺激した。次いで、これらのペプチドプールに対するIFNγ応答を、ヒトIFNγ ELISpotアッセイを使用して評価した。
【0142】
いくつかの抗原性領域を表すプールにより、慢性HBV被験体に特異的なIFNγ応答が刺激されることが見いだされた。特に、HBVポリメラーゼの末端領域を表すプール(プール2及びプール3)及びHBVコアの領域を表すプール(プール14~17)を用いた刺激により、HBV感染症の被験体において最大の規模及び集団カバレッジのIFNγ応答がもたらされた(図1)。より少ない程度に、プール4~9及びプール11~13でもHBV特異的T細胞応答を促進する傾向が見られた。
【0143】
短いペプチドプールに対するHBV特異的応答の性質に対する、感染しているHBV遺伝子型の役割を確立するために、各被験体について、感染しているHBV遺伝子型を決定した。これは、血漿試料中のHBV表面抗原エピトープ評価の手段により決定した。その後、免疫制御されているHBV感染症の被験体由来のPBMCのIFNγ応答と、治療を受けているHBV感染症の被験体由来のPBMCのIFNγ応答の両方をHBV遺伝子型A、B、C及びDに応じて群分けした。一部の被験体は、アッセイの感度の限界及び評価された血清が稀なものである可能性に起因して、これらの遺伝子型に分類されなかった。したがって、これらの被験体はこの評価に含めなかった。4種の遺伝子型の間の応答プロファイルには、最大規模のIFNγ応答を示す領域が概してHBVプロテオームの末端ポリメラーゼ領域及びコア領域にあったという点で類似性が示された(図2)。プール2、3、10、12、14、15、16及び17により、多数の遺伝子型に対する応答がもたらされると思われる。
【0144】
短いペプチドプールに対するHBV特異的応答の性質に対する宿主被験体の遺伝的背景の役割を確立するために、試験における被験体をその民族性に応じて群分けした。その後、免疫制御されているHBV感染症の被験体由来のPBMCのIFNγ応答と、治療を受けているHBV感染症の被験体由来のPBMCのIFNγ応答の両方を3種の広範な民族グループ、すなわちアフリカ人/アラブ人、白人及びアジア人/インド人で比較した。民族グループの間の応答プロファイルには、再度、関連する高い集団カバレッジを伴う最大規模のIFNγ応答がHBVプロテオームの末端ポリメラーゼ領域及びコア領域の由来のプールに対して見いだされたことにより類似性が示された(図3)。白人群は他の2種の民族グループとは、いくつかのプールに対する応答の平均規模が、治療群の被験体において、免疫制御下にある被験体と比較して最も高いことが見いだされたという点でわずかに異なると思われた。プール2、3、10、14、15、16、17及び21では、多数の民族グループにおける応答が促進される傾向が見られる。
【0145】
最後に、短いペプチドプールに対するPBMCによるIFNγ応答の種類をさらに説明するために、短期培養細胞を、細胞内サイトカイン染色のために一晩再刺激した。次いで、細胞をCD3、CD4、CD8及びIFNγの発現についてフローサイトメトリーによって評価した。健康な被験体由来のPBMC及び慢性HBV感染症の被験体由来のPBMCにおける短いペプチドプール2及び14に対するIFNγ応答の比較を行った(図4)。これらは、IFNγ ELISpotアッセイにおいて最も強力なHBV特異的応答を誘発したペプチドプールのうちの2つであった。IFNγ ELISpotアッセイと一致して、慢性HBV感染症の被験体由来のPBMCにおいてIFNγ発現の増大が特異的に見いだされた。さらに、これは、二重のCD4 T細胞応答及びCD8 T細胞応答であることが見いだされた。
【0146】
[実施例2]
ヒトPBMCにおける、HBV由来のDensigenに関連する短いペプチドプールのex vivoにおける免疫原性の評価
方法及び材料
集団
HBV感染症の被験体
慢性HBV感染症であると臨床的に定義された104人の被験体を、Imperial Healthcare NHS Trust、Chelsea and Westminster Hospital NHS Foundation Trust、及びBarts and the London NHS Trust in Londonにおける、RECにより承認されたプロトコールに登録した。全ての被験体から書面でのインフォームドコンセントを得た後、新鮮な静脈血を採取し、PBMC及び血漿を単離し、血液採取の18時間以内に凍結保存した。これらの被験体は以下の基準に合致した:全体的な健康状態が良好であること、HBVに特異的な治療:抗ウイルスヌクレオシド(ヌクレオチド)類似体阻害剤及び/又はインターフェロン療法(臨床的に示された場合)、臨床的状態(慢性HBV感染症、HBeAg陰性、並びにALTの正常な、持続的若しくは断続的な上昇)、HIV陰性、HCV陰性及びHDV陰性。
【0147】
健康な対照被験体
17人の被験体由来の凍結保存されたPBMCをCTL Technologiesから得た。これらの被験体は以下の基準に合致した:全体的な健康状態が良好であること、HBVに対するワクチン接種を受けていないこと、HBV表面抗原陰性、HBVコア抗体陰性、HIV陰性及びHCV陰性。
【0148】
PBMCの短期培養
各被験体由来のPBMCのバイアル1つ(細胞1×107個を含有する)を解凍し、Scepter(商標)手持ち型自動細胞計数器を使用してリンパ球数を決定した。PBMCを、24ウェルの細胞培養プレートにおいて、2mLの培養培地(CM: 5%ヒトAB血清を補充したRPMI-1640 Glutamax)中、1mL当たり細胞1×106個の濃度で合計11日間培養した。細胞を、長さが15~20アミノ酸にわたり、10~13アミノ酸が重複している、重複したHBV由来の短いペプチド144種(配列番号73~210及び配列番号142~147)を含有するペプチドプールを1mL当たりペプチド当たり0.1μgの最終濃度で用いて刺激した。4日目に、IL-2及びIL-15を、培養物にそれぞれ最終濃度10 IU/mL及び10ng/mLまで加えた。10日目に、細胞をCM中で2回洗浄し、10 IU/mLのIL-2と一緒にさらに1日培養した。11日目に、細胞をCM中で2回洗浄し、計数し、ヒトIFNγ ELISpotアッセイ又は細胞内サイトカイン染色に組み込んだ。
【0149】
ヒトIFNγ ELISpotアッセイ
96ウェルマルチスクリーンPVDFフィルタープレート(Millipore)を、100μl(1:80)の抗ヒトIFNγ捕捉mAb(R&D Systems)を用いて4℃で一晩コーティングした。次いで、プレートを、1% BSA及び5%スクロースを補充したPBSを用いて4℃で2時間ブロッキングした。細胞を、3連のウェルに、ウェル当たりPBMC 5×104個でプレーティングした。使用した最終的な抗原の濃度は、HBV由来のDensigenに関連する短いペプチドプール23種(以下を参照されたい): 1mL当たりペプチド当たり5μg、 CEFペプチドプール陽性対照: 1mL当たりペプチド当たり1μg、 PHA陽性対照: 1μg/mLであった。ELISpotプレートを、加湿した環境下、5% CO2、37℃で18時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、100μl(1:80)のビオチン化抗ヒトIFNγ検出用mAb(R&D Systems)と一緒に室温で2時間インキュベートした。洗浄後、プレートを、製造者(R&D Systems)の説明書に従って、ストレプトアビジンとコンジュゲートしたアルカリホスファターゼ(1:80)と一緒に1時間、その後、基質と一緒に(30分)インキュベートした。発生したスポットを、自動プレート計数システム(CTL Europe)を使用して計数した。
【0150】
【表3】
【0151】
細胞内サイトカイン染色(ICS)アッセイ
細胞を、96ウェル丸底プレートにウェル当たりPBMC 5×105個でプレーティングし、最終濃度1mL当たりペプチド当たり5μgのHBV由来のペプチドプールによって刺激した。プレートを、5% CO2のインキュベーター中、37℃で20時間インキュベートした。アッセイの最後の3時間については、PMA/イオノマイシンをそれぞれのウェルに加え、ゴルジプラグ(Golgi plug)を全てのウェルに加えた。細胞を回収し、PBS+0.1% BSA(洗浄緩衝液)で洗浄し、抗CD3、抗CD4及び抗CD8(BD Biosciences)を用いて4℃で30分染色した。さらに洗浄した後、細胞を固定し、BD Cytofix/Cytoperm溶液100μLを用いて4℃で20分透過処理し、その後、1×BD Perm/Wash溶液で2回洗浄した。最後に、細胞を、抗IL-2-FITC、抗IFNγ-PE及び抗TNFα PerCP-Cy5.5(BD Biosciences)を用いて4℃で30分染色した。試料をFACSCanto IIフローサイトメーター(BD Biosciences)で取得した。ゲーティングは、各被験体についての培地で刺激した試料に基づいた。
【0152】
感染しているHBV遺伝子型の決定
HBV遺伝子型決定のために、ネステッドPCR法、その後に直接ヌクレオチド配列決定を最初に使用した。しかし、大多数の試料由来の血漿中のウイルス負荷量が低いことに起因して、この方法を使用してHBV遺伝子型を決定することはできなかった。その後、IMMUNIS(登録商標) HBV遺伝子型酵素イムノアッセイ(EIA)キットを使用した。このアッセイでは、HBsAgのPreS2領域内の4種の遺伝子型依存性エピトープを使用し、エピトープのそれぞれに特異的な4つのEIAの陽性/陰性の組合せによって遺伝子型を血清学的に決定した。
【0153】
結果
HBV由来の短いペプチドプールに対する応答のスクリーニングの後に、35~40merの対象領域が同定された。これらの領域を、35~40merのペプチドをワクチンに使用することを目的としてさらに評価した。さらなる評価には、短期培養した後の再刺激のため以前使用した短いペプチドプールの再設計が伴った。ワクチンに使用するペプチドをより正確に反映するために、35~40merの対象領域を超えて伸長した末端の短いペプチドをプールから除去した。前と同様にペプチドライブラリーと一緒に短期培養した後、次いで、これらの短いペプチドプールをヒトIFNγ ELISpotアッセイ及びICSアッセイにおける再刺激のために使用した。
【0154】
プール24~46を用いた再刺激により、HBVプロテオームの末端ポリメラーゼ由来の領域(プール25及びプール26)及びコア(プール38及び39及びプール41~43)領域に対する優勢HBV特異的T細胞応答が示された(図5)。表面領域プール45を用いた刺激後にもHBV特異的応答が見いだされた。プール28、プール32、プール33、プール36及びプール37に対応するポリメラーゼの領域でも顕著なT細胞応答が生じた。
【0155】
プール24~46に対するIFNγ ELISpot応答を感染しているHBV遺伝子型に応じて群分けした(図6)。プール27、28、29、32、35、36のそれぞれにより、遺伝子型Cに対する優勢な応答が生じる。プール25及び26により、遺伝子型Dに対する優勢な応答が生じる。プール30及び31により、遺伝子型Bに対する優勢な応答が生じる。プール38、42、43及び44により、遺伝子型Aに対する優勢な応答が生じる。いくつかのプールには、2種以上の遺伝子型:プール26、32、33、36及び43については2種の遺伝子型、プール37、38、41及び42については3種の遺伝子型、又はプール25については4種の遺伝子型、に対する応答を促進する傾向が見られる。
【0156】
プール24~46に対するIFNγ ELISpot応答を、感染しているHBV遺伝子型に応じて群分けした(図7)。プール28、29及び30により、アジア人/インド人の民族性において優勢な応答が生じる。プール25、33、34、35及び37により、白人において優勢な応答が生じる。プール38、39、41、42及び43により、アフリカ人/アラブ人の民族性において優勢な応答が生じる。いくつかのプールには、2種以上の民族グループ:プール26、39及び43のそれぞれについては2種の民族グループ、又はプール25、38及び42のそれぞれについては3種の民族グループ、における応答を促進する傾向が見られる。
【0157】
結果が以下の表4に要約されている。
【0158】
【表4】
【0159】
細胞内サイトカイン染色によってT細胞応答をさらに分析するために8種のプールを選択した。7~14人(IFNγ ELISpotアッセイ後に入手可能な細胞の数に応じて)の被験体由来のPBMCを、8種のプールのうちの1種を用いて一晩刺激し、細胞を、表面CD3、CD4及びCD8の発現について、細胞内IFNγ、TNFα及びIL-2の発現についてと一緒に、染色した(図8)。IFNγ発現はCD8 T細胞集団とCD4 T細胞集団の両方において見いだされ、評価されたペプチドプールの5/8及び8/8までのそれぞれの応答の幅であった。同様に、TNFα発現はCD8 T細胞集団とCD4 T細胞集団の両方において見いだされ、ペプチドプール応答の幅はそれぞれ3/8及び6/8であった。CD8 T細胞ではペプチドプールによる刺激後にIL-2が発現されないが、CD4 T細胞では8種のプールのうちの7種での刺激後にIL-2が発現されることが見いだされた。
【0160】
[実施例3]
フルオロカーボンと連結したHBVペプチドの構築
配列番号24、25、28、33、34、36、37及び38及び222に示されているアミノ酸配列を有するペプチドをFMOC(フルオレニルメチルオキシカルボニルクロリド)固相合成によって合成した。次いで、フルオロカーボン鎖(C8F17(CH2)2COOH)を各ペプチドの追加的なN末端リシンのイプシロン鎖に組み込んでフルオロカーボンと連結したペプチドを誘導した。トリフルオロ酢酸(TFA)の存在下での切断及び逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)による最終的な精製により、精製された、フルオロカーボンと連結したペプチド又は修飾されていないペプチドを得た。全ての調製物の純度は90%以上であった。
FA-P113: K(FA)-VGPLTVNEKRRLKLIMPARFYPNVTKYLPLDKGIK-NH2 (配列番号24);
FA-P151: K(FA)-PEHVVNHYFQTRHYLHTLWKAGILYKRETTRSASF-NH2(配列番号25);
FA-P376: K(FA)-KLHLYSHPIILGFRKIPMGVGLSPFLLAQFTSAISSVVRR-NH2 (配列番号28);
FA-753(K): K(FA)-KKKEFGATVELLSFLPSDFFPSVRDLLDTASALYRKKK-NH2 (配列番号36);
FA-P856(K): K(FA)-LTFGRETVLEYLVSFGVWIRTPPAYRPPNAPILSTKKK-NH2 (配列番号38);
FA-P877: K(FA)-PPAYRPPNAPILSTLPETTVVRRRGRSPRRR-NH2(配列番号33);
FA-P277(K): K(FA)-RVSWPKFAVPNLQSLTNLLSSNLSWLSLDVSAAFYHKKK-NH2 (配列番号34),
FA-P797(K): K(FA)-SPHHTALRQAILSWGELMTLATWVGSNLEDPASRDKKK-NH2 (配列番号37);
FA-P1266(K): K(FA)-KKKGPLLVLQAGFFLLTRILTIPQSLDSW WTSLNFLKKK-NH2 (配列番号222)
NP113: VGPLTVNEKRRLKLIMPARFYPNVTKYLPLDKGIK (配列番号24);
NP151: PEHVVNHYFQTRHYLHTLWKAGILYKRETTRSASF (配列番号25);
NP376: KLHLYSHPIILGFRKIPMGVGLSPFLLAQFTSAISSVVRR (配列番号28);
NP753(K): KKKEFGATVELLSFLPSDFFPSVRDLLDTASALYRKKK (配列番号36);
NP856(K): LTFGRETVLEYLVSFGVWIRTPPAYRPPNAPILSTKKK (配列番号38);
NP877: PPAYRPPNAPILSTLPETTVVRRRGRSPRRR (配列番号33);
NP277(K): RVSWPKFAVPNLQSLTNLLSSNLSWLSLDVSAAFYHKKK (配列番号34),
NP797(K): SPHHTALRQAILSWGELMTLATWVGSNLEDPASRDKKK (配列番号37);
NP1266(K): KKKGPLLVLQAGFFLLTRILTIPQSLDSWWTSLNFLKKK (配列番号222).
【0161】
[実施例4]
長いHBVペプチド製剤
実施例3に記載の通り調製した、フルオロカーボンとコンジュゲートしたHBV由来のペプチド9種で構成されるワクチン候補FP02.1を下記の通り製剤化した。ペプチド可溶化の条件は表5に記載されている。簡単に述べると、フルオロカーボンとコンジュゲートしたペプチド9種のそれぞれを秤量して5mlのガラスバイアルに入れた。次いで、水中2~12%の酢酸溶液を用いて各ペプチドを可溶化して10mgのペプチド濃度を実現した。ペプチド溶液(各ペプチドについて3.9ml)を150mlの滅菌容器中にブレンドした後に、水中10%酢酸溶液3.9mlを加えた。磁気撹拌器を用いて2分撹拌した後、水中9.0%マンニトール溶液39mLを加えた。磁気撹拌器を用いてさらに2分撹拌した後、溶液を、0.22μm 33mm Millexフィルターを使用して濾過した。濾過された溶液1.2mLをオートクレーブ処理した2mlのガラスバイアル中に送り出した。RP-HPLCによって測定された濾過回収率は>95%であった。バイアルを-80℃で1時間にわたって凍結させた。次いで、試料を36時間にわたってフリーズドライした。窒素下でフリーズドライ換気を実施し、400~600mbarの圧力でバイアルの栓止めを行った。ペプチドの量は、バイアル当たりペプチド当たり600μgであり、1.2mLで再構成した際、最終濃度は1ml当たりペプチド当たり500μgであった。
【0162】
【表5】
【0163】
[実施例5]
好ましいHBVペプチド及び混合物は、慢性HBVキャリアにおいて、疾患の病期、HBVウイルスの遺伝子型及び被験体の民族性に関係なく免疫原性である
方法及び材料
集団
慢性HBV感染症であると臨床的に定義された40人の被験体を、Imperial Healthcare NHS Trust、Chelsea and Westminster Hospital NHS Foundation Trust、及びBarts and the London NHS Trust in Londonにおける、RECにより承認されたプロトコールに登録した。全ての被験体から書面でのインフォームドコンセントを得た後、新鮮な静脈血を採取し、PBMC及び血漿を単離し、血液採取の18時間以内に凍結保存した。これらの被験体は以下の基準に合致した:全体的な健康状態が良好であること、HBVに特異的な治療:抗ウイルスヌクレオシド(ヌクレオチド)類似体阻害剤及び/又はインターフェロン療法(臨床的に示された場合)、臨床的状態(慢性HBV感染症、HBeAg陰性、並びにALTの正常な、持続的若しくは断続的な上昇)、HIV陰性、HCV陰性及びHDV陰性。
【0164】
PBMCの短期培養
各被験体由来のPBMCのバイアル1つ(細胞1×107個を含有する)を解凍し、Scepter(商標)手持ち型自動細胞計数器を使用してリンパ球数を決定した。PBMCを、24ウェルの細胞培養プレートにおいて、2mLの培養培地(CM: 5%ヒトAB血清を補充したRPMI-1640 Glutamax)中、1mL当たり細胞1×106個の濃度で合計11日間培養した。細胞を、実施例3に記載のHBV由来の長いペプチド9種の混合物を用いて刺激した。
【0165】
各ペプチドを1mL当たりペプチド当たり0.1μgの最終濃度で使用した。4日目に、IL-2及びIL-15を、培養物にそれぞれ最終濃度10 IU/mL及び10ng/mLまで加えた。10日目に、細胞をCM中で2回洗浄し、10 IU/mLのIL-2と一緒にさらに1日培養した。11日目に、細胞をCM中で2回洗浄し、計数し、ヒトIFNγ(インターフェロン-ガンマ)ELISpotアッセイ又は細胞内サイトカイン染色に組み込んだ。
【0166】
ヒトIFNγ ELISpotアッセイ
96ウェルマルチスクリーンPVDFフィルタープレート(Millipore)を、100μl(1:80)の抗ヒトIFNγ捕捉mAb(R&D Systems)を用いて4℃で一晩コーティングした。次いで、プレートを、1% BSA及び5%スクロースを補充したPBSを用いて4℃で2時間ブロッキングした。短期培養物由来の細胞を、3連のウェルに、ウェル当たりPBMC 5×104個でプレーティングした。使用した最終的な抗原の濃度は、それぞれのペプチドについて5μg/mL、 PHA陽性対照: 1μg/mLであった。ELISpotプレートを、加湿した環境下、5% CO2、37℃で18時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、100μl(1:80)のビオチン化抗ヒトIFNγ検出用mAb(R&D Systems)と一緒に室温で2時間インキュベートした。洗浄後、プレートを、製造者(R&D Systems)の説明書に従って、ストレプトアビジンとコンジュゲートしたアルカリホスファターゼ(1:80)と一緒に1時間、その後、基質と一緒に(30分)インキュベートした。発生したスポットを、自動プレート計数システム(CTL Europe)を使用して計数した。
【0167】
細胞内サイトカイン染色アッセイ
短期培養物由来の細胞を、96ウェル丸底プレートにウェル当たりPBMC 5×105個でプレーティングし、HBV由来の長いペプチド9種(NP113、NP151、NP277(K)、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)、NP877及びNP1266(K))、最終濃度5μg/mLによって刺激した。プレートを、5% CO2のインキュベーター中、37℃で20時間インキュベートした。アッセイの最後の3時間については、PMA/イオノマイシンをそれぞれのウェルに加え、ゴルジプラグ(Golgi plug)を全てのウェルに加えた。細胞を回収し、PBS+0.1% BSA(洗浄緩衝液)で洗浄し、抗CD3、抗CD4及び抗CD8(BD Biosciences)を用いて4℃で30分染色した。さらに洗浄した後、細胞を固定し、BD Cytofix/Cytoperm溶液100μLを用いて4℃で20分透過処理し、その後、1×BD Perm/Wash溶液で2回洗浄した。最後に、細胞を、抗IL-2-FITC、抗IFNγ-PE及び抗TNFα PerCP-Cy5.5(BD Biosciences)を用いて4℃で30分染色した。試料をFACSCanto IIフローサイトメーター(BD Biosciences)で取得した。ゲーティングは、各被験体についての培地で刺激した試料に基づいた。
【0168】
感染しているHBV遺伝子型の決定
HBV遺伝子型決定のために、ネステッドPCR法、その後に直接ヌクレオチド配列決定を最初に使用した。しかし、大多数の試料由来の血漿中のウイルス負荷量が低いことに起因して、この方法を使用してHBV遺伝子型を決定することはできなかった。その後、IMMUNIS(登録商標) HBV遺伝子型酵素イムノアッセイ(EIA)キットを使用した。このアッセイでは、HBsAgのPreS2領域内の4種の遺伝子型依存性エピトープを使用し、エピトープのそれぞれに特異的な4つのEIAの陽性/陰性の組合せによって遺伝子型を血清学的に決定した。
【0169】
結果
全てのペプチドにより、HBeAg陰性の非活動性キャリア及びHBeAg陰性の治療を受けている被験体のいずれのHBVキャリアにおいても検出可能なT細胞応答が促進された(図9及び10参照)。種々の試験されたペプチドの中でも、NP113、NP151、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)及びNP877により、両方の患者集団において、且つ最高の割合の被験体で最高レベルの応答が促進される。驚いたことに、NP113及びNP151に対する累積的な応答は、両方の集団において、試験された2種のペプチドの他の組合せのいずれと比較しても高い。さらに、NP113、NP151及びNP376に対する累積的な応答により、両方の集団において、試験された3種のペプチドの他の組合せのいずれと比較しても、最高レベルの応答が誘導される。図11に示されている通り、試験されたペプチドの全てにより、4種のHBV遺伝子型の全てにわたって交差反応性T細胞応答が促進される。ペプチドNP113、NP151、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)及びNP877により、4種の遺伝子型A、B、C 及びD全てにわたって、ペプチドNP2777(K)及びNP1226(K)と比較して最も高い応答が促進される。驚いたことに、P113により、4種の遺伝子型全てにわたって、他の全てのペプチドと比較して最も高いT細胞応答が促進される。
【0170】
図12には、全てのペプチドにより、試験された民族グループ全てにわたってT細胞応答が促進されることが示されている。ペプチドNP113、NP151、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)及びNP877により、3種の民族グループ全てにわたって、NP277(K)及びNP1266(K)と比較して、最も高い応答が促進される。
【0171】
さらに、9種全てのペプチドが、HBV遺伝子型全てにわたって、細胞内サイトカイン染色によって測定されるTh1サイトカインを産生するCD4及び/又はCD8 T細胞応答を促進する能力を示す(図13)。
【0172】
[実施例6]
フルオロカーボンとコンジュゲートしたペプチドの、コンジュゲートしていないペプチドと比較した、in vivoでT細胞応答を促進するそれらの能力における優位性
方法及び材料
FP02.1(フルオロカーボンとコンジュゲートしたペプチド9種を含有する)のマウスにおける免疫原性をNP02.1(同等のコンジュゲートしていないペプチド9種を含有する)と比較した。雌BALB/cマウス(群当たりn=7)を、FP02.1を体積50μL中ペプチド当たり50μgの用量で用いて、又はNP02.1(コンジュゲートしていないHBVペプチド(NP113、NP151、NP277(K)、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)、NP877及びNP1266(K)を含有する)を体積50μL中ペプチド当たり43.8μgの等モル用量(FP02.1と比較して)で用いて筋肉内に免疫した。マウスを0日目に免疫し、14日目に屠殺した。脾細胞を、実施例3に記載の9種のHBVペプチドのそれぞれの混合物をペプチド当たり1mL当たり5μgで用いてELISpotアッセイにおいて18時間にわたってin vitroで刺激した。
【0173】
あるいは、脾細胞を、9種の個々のペプチドをペプチド当たり1mL当たり5μgで用いてELISpotアッセイにおいて18時間にわたってin vitroで刺激した。IFNγ+スポット形成細胞(SFC)の数を計数した。次いで、プレートをPBSで洗浄し、製造者の説明書に従って、IFNγ検出用ペルオキシダーゼ標識抗体と一緒にインキュベートし、その後、基質と一緒にインキュベートした。発生したスポットを、自動プレート計数システム(CTL Europe)を使用して計数して、IFNγ+SFCの数を数量化した。
【0174】
結果
フルオロカーボンとコンジュゲートしたペプチドの混合物(FP02.1)を用いて免疫したマウスにおいて、コンジュゲートしていないペプチドの同等の混合物(NP02.1)を用いて免疫したマウスと比較して、有意に大きな規模のT細胞応答が観察された(図14参照)。同系BALC/CモデルにおけるMHC拘束性に起因して、免疫応答は、ワクチンに含有された9種のペプチドのうちの4種によるものが優位を占めた(ペプチドNP113、NP151、NP376及びNP1266(K)、図15参照)。
【0175】
FP02.1によって誘導される応答は、ペプチドNP113、NP151、NP376及びNP1266(K)によるものが優位を占めた。驚いたことに、ペプチドP113及びP376に対する免疫応答は、フルオロカーボンとコンジュゲートしたペプチドを含有する製剤を用いた場合にのみ観察された(図15参照)。
【0176】
結論として、フルオロカーボンベクターとHBV由来ペプチド配列のコンジュゲーションにより、同等のコンジュゲートしていないペプチドと比較して高く、且つ広範なT細胞応答が促進される。
【0177】
[実施例7]
フルオロカーボンとコンジュゲートしたペプチドにより、CTL/CD8+ T細胞応答が促進される
方法及び材料
FP02.1(フルオロカーボンとコンジュゲートしたペプチド9種を含有する)によって誘導される免疫応答の質をマウスにおいて評価した。雌BALB/cマウス(群当たりn=7)を、FP02.1を体積50μL中ペプチド当たり25μgの用量で用いて筋肉内に免疫した。マウスを0日目に免疫し、14日目に屠殺した。
【0178】
脾細胞を、ペプチドNP113(CTL1 KYLPLDKGI)に由来するCTLエピトープ又はNP151(CTL2 HYFQTRHYL)に由来するCTLエピトープのいずれかを101~10-9μg/mlの濃度で用いてELISpotアッセイにおいて18時間にわたってin vitroで刺激した。IFNγ+SFCの数を計数した。次いで、プレートをPBSで洗浄し、製造者の説明書に従って、IFNγ検出用ペルオキシダーゼ標識抗体と一緒にインキュベートし、その後、基質と一緒にインキュベートした。発生したスポットを、自動プレート計数システム(CTL Europe)を使用して計数して、IFNγ+SFCの数を数量化した。
【0179】
結果
図16に示されている通り、FP02.1により、単回免疫後のMHCクラスI分子によって制限されるCTLエピトープに対するT細胞応答が促進される。
【0180】
[実施例8]
同じ製剤に含有されるフルオロカーボン-ペプチド間の相乗作用
方法及び材料
マウスに単独で、又は他のフルオロカーボンとコンジュゲートしたペプチドとの共製剤(co-formulation)の一部として(FP02.1)投与したFA-P113の免疫原性をマウスにおいて評価した。雌BALB/cマウス(群当たりn=7)を、FA-P113を25μgの用量で用いて、又はFP02.1を体積50μL中ペプチド当たり25μgの用量で用いて筋肉内に免疫した。マウスを0日目に免疫し、14日目に屠殺した。脾細胞を、5μg/mLのNP113(フルオロカーボンベクターとコンジュゲートしていない)を用いてELISpotアッセイにおいて18時間にわたってin vitroで刺激した。IFNγ+SFCの数を計数した。次いで、プレートをPBSで洗浄し、製造者の説明書に従って、IFNγ検出用ペルオキシダーゼ標識抗体と一緒にインキュベートし、その後、基質と一緒にインキュベートした。発生したスポットを、自動プレート計数システム(CTL Europe)を使用して計数して、IFNγ+SFCの数を数量化した。
【0181】
結果
フルオロカーボンとコンジュゲートしたペプチドの混合物(FP02.1)を用いて免疫したマウスにおいて、FA-P113を単独で用いて免疫したマウスよりも大規模のNP-113特異的T細胞応答が観察された(図17参照)。
【0182】
[実施例9]
好ましいHBVペプチド及び組合せは、広範囲のHLAクラスI分子に結合する能力を有するエピトープを含有する
方法及び材料
ProImmune REVEAL結合アッセイを使用して、9アミノ酸の短いペプチド(HBVの長いペプチドNP113、NP151、NP277(K)、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)、NP877及びNP1266(K)に由来する)の、1種以上のMHCクラスI対立遺伝子に結合し、MHC-ペプチド複合体を安定化する能力を決定した。検出は、MHC-ペプチド複合体のネイティブなコンフォメーションの有無に基づく。頻度が高いHLAクラスI対立遺伝子(HLA-A*0201、A*0301、A*1101、A*2402、B*0702、B*0801、及びB*3501)を選択した。MHC分子への結合を、非常に強力な結合特性を有する陽性対照ペプチドである公知のT細胞エピトープの結合と比較した。コンセンサスHBV配列に存在しない余分のリシンを含有するもの以外の、各HBVペプチド(NP113、NP151、NP277(K)、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)、NP877及びNP1266(K))についての全ての潜在的な九量体を>90%の純度で合成した。試験ペプチドのスコアは陽性対照ペプチドによって生成されるシグナルに対する百分率として定量的に報告され、ペプチドは推定される合否結果を有すると示される。良好な結合性物質は、ProImmuneによって定義される陽性対照に対するスコアが45%であるペプチドであるとみなされる。
【0183】
結果
表6に示されている結果には、各HLA対立遺伝子に対して結合スコア≧45%を有する、HBVの長いペプチドのそれぞれ(NP113、NP151、NP277、NP376、NP753、NP797、NP856、NP877及びNP1266)に由来する九量体の数が示されている。全ての長いHBVペプチドは、少なくとも4種の対立遺伝子に結合する能力を有する少なくとも6個のエピトープを含有する。6種の長いペプチドの任意の組合せは、試験した全ての対立遺伝子に結合する能力を有する九量体エピトープを含有する。
【0184】
【表6】
【0185】
[実施例10]
好ましいHBVペプチド及び組合せは、広範囲のHLAクラスII分子に結合する能力を有するエピトープを含有する
方法
ProImmune REVEAL(登録商標)MHC-ペプチド結合アッセイを使用して、HBVの長いペプチドのそれぞれ(NP113、NP151、NP277(K)、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)、NP877及びNP1266(K))の、1種以上のMHCクラスII対立遺伝子に結合し、MHC-ペプチド複合体を安定化する能力を決定した。頻度が高いHLAクラスII対立遺伝子HLA-DR1(α1*01:01;β1*01:01)、HLA-DR15(α1*01:01;β1*15:01)、HLA-DR3(α1*01:01;β1*01:01)、HLA-DR4(α1*01:01;β1*04:01)、HLA-DR11(α1*01:01;β1*11:01)、HLA-DR13(α1*01:01;β1*13:01)及びHLA-DR7(α1*01:01;β1*07:01)を選択した。各ペプチドに、公知のT細胞エピトープである陽性対照ペプチドと比較したスコアを与えた。試験ペプチドのスコアは陽性対照ペプチドによって生成されるシグナルに対する百分率として定量的に報告され、ペプチドは推定される合否結果を有すると示される。良好な結合性物質は、Proimmuneによって定義されるスコアが陽性対照に対して≧15%であるペプチドであるとみなされる。
【0186】
結果
表7の結果には、HBVの長いペプチドのそれぞれ(NP113、NP151、NP277(K)、NP376、NP753(K)、NP797(K)、NP856(K)、NP877及びNP1266(K))のHLAクラスII対立遺伝子の範囲にわたる結合スコアが示されている。HBVペプチド9種のうち6種が少なくとも1種のHLA対立遺伝子に≧15%のスコアで結合する。NP113、NP151及びNP376は、4種以上の異なるHLAクラスII対立遺伝子に結合する。驚いたことに、P113は、全部で6種の対立遺伝子に結合する。ペプチドNP113とNP877の組合せは、試験したHLAクラスII対立遺伝子の全てに結合する。
【0187】
【表7】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図14
図15
図16
図17
【配列表】
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