(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】セルロース繊維の成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D21J 1/00 20060101AFI20221205BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20221205BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20221205BHJP
D21H 11/18 20060101ALI20221205BHJP
D21H 15/02 20060101ALI20221205BHJP
C08B 15/08 20060101ALN20221205BHJP
C08J 5/18 20060101ALN20221205BHJP
【FI】
D21J1/00
B82Y30/00
B82Y40/00
D21H11/18
D21H15/02
C08B15/08
C08J5/18
(21)【出願番号】P 2018190492
(22)【出願日】2018-10-05
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 貴章
(72)【発明者】
【氏名】三好 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】大川 淳也
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-311000(JP,A)
【文献】特開2013-076177(JP,A)
【文献】特開2018-066099(JP,A)
【文献】国際公開第2012/017953(WO,A1)
【文献】特開平08-158299(JP,A)
【文献】国際公開第2017/064559(WO,A1)
【文献】特開2019-031770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21J 1/00 - 7/00
B82Y 30/00
B82Y 40/00
C08B 15/08
C08J 5/18
D04H 1/00 - 18/04
D21B 1/00 - 1/38
D21C 1/00 - 11/14
D21D 1/00 - 99/00
D21F 1/00 - 13/12
D21G 1/00 - 9/00
D21H 11/00 - 27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維を主成分とし、
前記セルロース繊維がパルプ及び解繊繊維を含み、
前記解繊繊維がミクロフィブリル化セルロース
及びセルロースナノファイバーを含み、
前記パルプの平均繊維径が10~100μm、前記ミクロフィブリル化セルロースの平均繊維径が0.1~10μm、前記セルロースナノファイバーの平均繊維径が10~100nmであり、
前記セルロース繊維中の前記パルプの含有率が5~20質量%である、
ことを特徴とするセルロース繊維の成形体。
【請求項2】
前記成形体の密度が0.8~1.5g/cm
3
である、
請求項1に記載のセルロース繊維の成形体。
【請求項3】
前記セルロース繊維中の前記セルロースナノファイバーの含有率が0質量%を超え、かつ70質量%以下である、
請求項2に記載のセルロース繊維の成形体。
【請求項4】
前記セルロース繊維中の前記パルプの含有率は、前記セルロース繊維のスラリーの保水度比が0.50~0.99となる量である、
請求項
1~3のいずれか1項に記載のセルロース繊維の成形体。
【請求項5】
パルプ及び解繊繊維を使用してセルロース繊維のスラリーを調成し、このセルロース繊維のスラリーから湿紙を形成し、この湿紙を加圧加熱して成形体を作製し、
前記解繊繊維として
、ミクロフィブリル化セルロース及びセルロースナノファイバー使用
し、
前記パルプの平均繊維径を10~100μm、前記ミクロフィブリル化セルロースの平均繊維径を0.1~10μm、前記セルロースナノファイバーの平均繊維径を10~100nmとし、
前記セルロース繊維中の前記パルプの含有率を前記セルロース繊維のスラリーの保水度比が0.50~0.99となる量とする、
ことを特徴とするセルロース繊維成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維の成形体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セルロース繊維をナノレベルまで解繊して得られるセルロースナノファイバー(CNF)は、強度、弾性、熱安定性等に優れていることから、各種用途への活用が期待されている。その1つとしては、セルロースナノファイバーのスラリーを乾燥、成形等して得られるセルロースナノファイバーの成形体が存在する。例えば、特許文献1は、セルロースナノファイバーを主成分とする高強度材料(成形体)を提案している。同文献は、セルロースナノファイバーの物性を特定した様々な提案を行っている。
【0003】
しかしながら、本発明者等は、現時点においては同文献のようにセルロースナノファイバーの物性を改良するのみでは、成形体の引張弾性率を向上させるに限界が存在するのではないかと認識している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする主たる課題は、引張弾性率が向上したセルロース繊維の成形体、好ましくは引張強度も向上したセルロース繊維の成形体、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
セルロースナノファイバーは脱水性が悪く、乾燥に大きなエネルギーが必要になり、結果、乾燥の過程で繊維が熱劣化して得られる成形体の質が低下するおそれがある。このことから、本発明者等は、前述した文献のようにセルロースナノファイバーの物性を改良するのみでは限界があると考えた。一方、セルロース繊維の一部を解繊繊維としつつ、残部をパルプとすると、製造にとって好都合(脱水性の向上)であり、結果得られる成形体の質が向上し、また、引張弾性率も許容される範囲内に収まることを知見した。また、この場合、解繊繊維としては、全てをセルロースナノファイバーとするよりも一部又は全部をミクロフィブリル化セルロース(MFC)とする方が、成形体の質及び引張弾性率のバランスの点で優れることを知見した。さらに、解繊繊維としては、全て(全部)をミクロフィブリル化セルロースとするよりも当該ミクロフィブリル化セルロースの補完材として一部をセルロースナノファイバーとする方が引張強度に優れることを知見した。このような知見に基づいて想到するに至ったのが、次に示す手段である。
【0007】
(請求項1に記載の手段)
セルロース繊維を主成分とし、
前記セルロース繊維がパルプ及び解繊繊維を含み、
前記解繊繊維がミクロフィブリル化セルロース及びセルロースナノファイバーを含み、
前記パルプの平均繊維径が10~100μm、前記ミクロフィブリル化セルロースの平均繊維径が0.1~10μm、前記セルロースナノファイバーの平均繊維径が10~100nmであり、
前記セルロース繊維中の前記パルプの含有率が5~20質量%である、
ことを特徴とするセルロース繊維の成形体。
【0008】
(請求項2に記載の手段)
前記成形体の密度が0.8~1.5g/cm
3
である、
請求項1に記載のセルロース繊維の成形体。
【0009】
(請求項3に記載の手段)
前記セルロース繊維中の前記セルロースナノファイバーの含有率が0質量%を超え、かつ70質量%以下である、
請求項2に記載のセルロース繊維の成形体。
【0010】
(請求項4に記載の手段)
前記セルロース繊維中の前記パルプの含有率は、前記セルロース繊維のスラリーの保水度比が0.50~0.99となる量である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のセルロース繊維の成形体。
【0011】
(請求項5に記載の手段)
パルプ及び解繊繊維を使用してセルロース繊維のスラリーを調成し、このセルロース繊維のスラリーから湿紙を形成し、この湿紙を加圧加熱して成形体を作製し、
前記解繊繊維として、ミクロフィブリル化セルロース及びセルロースナノファイバー使用し、
前記パルプの平均繊維径を10~100μm、前記ミクロフィブリル化セルロースの平均繊維径を0.1~10μm、前記セルロースナノファイバーの平均繊維径を10~100nmとし、
前記セルロース繊維中の前記パルプの含有率を前記セルロース繊維のスラリーの保水度比が0.50~0.99となる量とする、
ことを特徴とするセルロース繊維成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、引張弾性率が向上したセルロース繊維の成形体、好ましくは引張強度も向上したセルロース繊維の成形体、及びその製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本実施の形態は本発明の一例である。本発明の範囲は、本実施の形態の範囲に限定されない。
【0015】
本形態のセルロース繊維の成形体は、セルロース繊維を主成分とする。また、このセルロース繊維は、パルプ及び解繊繊維を含む。さらに、この解繊繊維はミクロフィブリル化セルロースを含み、好ましくは更に当該ミクロフィブリル化セルロースの補完材としてセルロースナノファイバーを含む。
【0016】
本形態のセルロース繊維の成形体は、例えば、パルプ及び解繊繊維を使用してセルロース繊維のスラリーを調成し、このセルロース繊維のスラリーから湿紙を形成し、この湿紙を加圧加熱することで得られる。以下、順に説明する。
【0017】
(セルロースナノファイバー)
本形態においてセルロースナノファイバーは、ミクロフィブリル化セルロースの補完材として用いられるものであり、ミクロフィブリル化セルロースの役割を補うものである。この点、解繊繊維としてミクロフィブリル化セルロースを使用すると引張弾性率が向上するが、引張強度が弱まる。しかるに、解繊繊維としてセルロースナノファイバーも含ませると、引張強度も十分なものとなる。したがって、本形態のセルロース繊維は、ミクロフィブリル化セルロースの含有が前提になり、ミクロフィブリル化セルロースを含有することなく、セルロースナノファイバーのみを含有する形態によっては、本発明の作用効果が得られない。
【0018】
セルロースナノファイバーは、セルロース繊維の水素結合点を増やし、もって成形体等の強度発現を補う役割を有する。セルロースナノファイバーは、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができる。
【0019】
セルロースナノファイバーの原料パルプとしては、例えば、広葉樹、針葉樹等を原料とする木材パルプ、ワラ・バガス・綿・麻・じん皮繊維等を原料とする非木材パルプ、回収古紙、損紙等を原料とする古紙パルプ(DIP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。なお、以上の各種原料は、例えば、セルロース系パウダーなどと言われる粉砕物の状態等であってもよい。
【0020】
ただし、不純物の混入を可及的に避けるために、木材パルプを使用するのが好ましい。木材パルプとしては、例えば、広葉樹クラフトパルプ(LKP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)等の化学パルプ、機械パルプ(TMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0021】
広葉樹クラフトパルプは、広葉樹晒クラフトパルプであっても、広葉樹未晒クラフトパルプであっても、広葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。同様に、針葉樹クラフトパルプは、針葉樹晒クラフトパルプであっても、針葉樹未晒クラフトパルプであっても、針葉樹半晒クラフトパルプであってもよい。
【0022】
機械パルプとしては、例えば、ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモグランドパルプ(TGP)、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、漂白サーモメカニカルパルプ(BTMP)等の中から1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0023】
セルロースナノファイバーの解繊に先立っては、化学的手法によって前処理することもできる。化学的手法による前処理としては、例えば、酸による多糖の加水分解(酸処理)、酵素による多糖の加水分解(酵素処理)、アルカリによる多糖の膨潤(アルカリ処理)、酸化剤による多糖の酸化(酸化処理)、還元剤による多糖の還元(還元処理)等を例示することができる。
【0024】
解繊に先立ってアルカリ処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの水酸基が一部解離し、分子がアニオン化することで分子内及び分子間水素結合が弱まり、解繊におけるセルロース繊維の分散が促進される。
【0025】
アルカリ処理に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム等の有機アルカリ等を使用することができる。ただし、製造コストの観点からは、水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。
【0026】
解繊に先立って酵素処理や酸処理、酸化処理を施すと、セルロースナノファイバーの保水度を低く、結晶化度を高くすることができ、かつ均質性を高くすることができる。この点、セルロースナノファイバーの保水度が低いと脱水し易くなり、セルロース繊維スラリーの脱水性が向上する。
【0027】
原料パルプを酵素処理や酸処理、酸化処理すると、パルプが持つヘミセルロースやセルロースの非晶領域が分解され、結果、微細化処理のエネルギーを低減することができ、セルロース繊維の均一性や分散性を向上することができる。セルロース繊維の分散性は、例えば、セルロース繊維スラリーから成形体等を製造する場合等において、当該成形体等の均質性に資する。ただし、前処理は、セルロースナノファイバーのアスペクト比を低下させるため、過度の前処理は避けるのが好ましい。
【0028】
原料パルプの解繊は、例えば、ビーター、高圧ホモジナイザー、高圧均質化装置等のホモジナイザー、グラインダー、摩砕機等の石臼式摩擦機、単軸混練機、多軸混練機、ニーダーリファイナー、ジェットミル等を使用して原料パルプを叩解することによって行うことができる。ただし、リファイナーやジェットミルを使用して行うのが好ましい。
【0029】
原料パルプの解繊は、得られるセルロースナノファイバーの平均繊維径、平均繊維長、保水度、結晶化度、擬似粒度分布のピーク値、パルプ粘度、分散液のB型粘度が、以下に示すような所望の値又は評価となるように行うのが好ましい。
【0030】
セルロースナノファイバーの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、好ましくは10~100nm、より好ましくは15~90nm、特に好ましくは20~80nmである。セルロースナノファイバーの平均繊維径が10nmを下回ると、脱水性が悪化するおそれがある。また、成形体等が緻密になり過ぎ、乾燥性が悪化するおそれがある。
【0031】
他方、セルロースナノファイバーの平均繊維径が100nmを上回ると、水素結合点の増加効果が得られないおそれがある。
【0032】
セルロースナノファイバーの平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0033】
セルロースナノファイバーの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%のセルロースナノファイバーの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて3,000倍~30,000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
【0034】
セルロースナノファイバーの平均繊維長(単繊維の長さ)は、好ましくは0.3~2000μm、より好ましくは0.4~200μm、特に好ましくは0.5~20μmである。セルロースナノファイバーの平均繊維長が0.3μmを下回ると、成形体等を製造する場合において、脱水の過程で流出する繊維の割合が多くなり、また、成形体等の強度を担保することができなくなるおそれがある。
【0035】
他方、セルロースナノファイバーの平均繊維長が2000μmを上回ると、繊維同士が絡み易くなり、また、成形体等の表面性が悪化するおそれがある。
【0036】
セルロースナノファイバーの平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0037】
セルロースナノファイバーの平均繊維長の測定方法は、平均繊維径の場合と同様にして、各繊維の長さを目視で計測する。計測値の中位長を平均繊維長とする。
【0038】
セルロースナノファイバーの保水度は、例えば90~600%、好ましくは220~500%、より好ましくは240~460%である。セルロースナノファイバーの保水度が200%を下回ると、セルロースナノファイバーの分散性が悪化し、パルプと均一に混合することができなくなるおそれがある。
【0039】
他方、セルロースナノファイバーの保水度が600%を上回ると、セルロースナノファイバー自体の保水力が高くなり、セルロース繊維スラリーの脱水性が悪化するおそれがある。
【0040】
セルロースナノファイバーの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0041】
セルロースナノファイバーの保水度は、JAPAN TAPPI No.26(2000)に準拠して測定した値である。
【0042】
セルロースナノファイバー結晶化度は、好ましくは45~90%、より好ましくは55~88%、特に好ましくは60~86%である。セルロースナノファイバーの結晶化度が以上の範囲内であれば、成形体等の強度を担保することができる。
【0043】
結晶化度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整することができる。
【0044】
セルロースナノファイバーの擬似粒度分布曲線におけるピーク値は、1つのピークであるのが好ましい。1つのピークである場合、セルロースナノファイバーは、繊維長及び繊維径の均一性が高く、セルロース繊維スラリーの脱水性に優れる。
【0045】
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば1~100μm、好ましくは3~800μm、より好ましくは5~60μmである。
【0046】
セルロースナノファイバーのピーク値は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等によって調整することができる。
【0047】
セルロースナノファイバーのピーク値は、ISO-13320(2009)に準拠して測定した値である。より詳細には、まず、粒度分布測定装置(株式会社セイシン企業のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器)を使用してセルロースナノファイバーの水分散液の体積基準粒度分布を調べる。次に、この分布からセルロースナノファイバーの中位径を測定する。この中位径をピーク値とする。
【0048】
セルロースナノファイバーのパルプ粘度は、好ましくは1~10cps、より好ましくは1~9cps、特に好ましくは1~8cpsである。パルプ粘度は、セルロースを銅エチレンジアミン液に溶解させた後の溶解液の粘度であり、パルプ粘度が大きいほどセルロースの重合度が大きいことを示している。パルプ粘度が以上の範囲内であれば、スラリーに脱水性を付与しつつ、成形体としたときの機械的物性を保持できる。
【0049】
解繊して得られたセルロースナノファイバーは、必要により、ミクロフィブリル化セルロースやパルプと混合するに先立って水系媒体中に分散して分散液としておくことができる。水系媒体は、全量が水であるのが特に好ましい(水溶液)。ただし、水系媒体は、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類等を使用することができる。
【0050】
セルロースナノファイバーの分散液(濃度1%)のB型粘度は、好ましくは10~4000cps、より好ましくは80~3000cps、特に好ましくは100~2000cpsである。分散液のB型粘度を以上の範囲内にすると、ミクロフィブリル化セルロースやパルプとの混合が容易になり、また、セルロース繊維スラリーの脱水性が向上する。
【0051】
セルロースナノファイバーの分散液のB型粘度(固形分濃度1%)は、JIS-Z8803(2011)の「液体の粘度測定方法」に準拠して測定した値である。B型粘度は分散液を攪拌したときの抵抗トルクであり、高いほど攪拌に必要なエネルギーが多くなることを意味する。
【0052】
(ミクロフィブリル化セルロース)
本形態において、ミクロフィブリル化セルロースは、脱水性を担保しつつ、水素結合点を増加し、成形体の引張弾性率を向上させる役割を有する。
【0053】
ミクロフィブリル化セルロースは、セルロースナノファイバーよりも平均繊維径の太い繊維を意味する。具体的には、例えば0.1~10μm、好ましくは0.3~5μm、より好ましくは0.5~2μmである。
【0054】
ミクロフィブリル化セルロースの平均繊維径が0.1μmを下回ると、セルロースナノファイバーであるのと変わらなくなり、強度(特に曲げ弾性率)増加効果が十分に得られなくなる。また、解繊時間が長くなり、大きなエネルギーが必要になる。さらに、セルロース繊維スラリーの脱水性が悪化する。脱水性が悪化すると、セルロース繊維スラリーから成形体等を製造する場合において、成形体等の乾燥に大きなエネルギーが必要になり、乾燥に大きなエネルギーをかけるとミクロフィブリル化セルロースが熱劣化して、強度が低下するおそれがある。
【0055】
他方、ミクロフィブリル化セルロースの平均繊維径が10μmを上回ると、分散性に劣る傾向があり、パルプやセルロースナノファイバーとの混合が困難になるおそれがある。
【0056】
ミクロフィブリル化セルロースは、原料パルプを解繊(微細化)することで得ることができる。原料パルプとしては、セルロースナノファイバーと同様のものを使用することができ、セルロースナノファイバーと同じものを使用するのが好ましい。
【0057】
また、ミクロフィブリル化セルロースの原料パルプは、セルロースナノファイバーの場合と同様の方法で前処理や解繊をすることができる。ただし、解繊の程度は異なり、例えば、平均繊維径が0.1μm以上に留まる範囲で行う必要がある。以下、セルロースナノファイバーの場合と異なる点を中心に説明する。
【0058】
ミクロフィブリル化セルロースの平均繊維長(単繊維の長さの平均)は、例えば0.01~1mm、好ましくは0.03~0.7mm、より好ましくは0.05~0.5mmである。平均繊維長が0.01mm未満であると、繊維同士の三次元ネットワークを形成できず、補強効果が低下するおそれがある。
【0059】
平均繊維長は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
【0060】
ミクロフィブリル化セルロースの繊維長は、0.2mm以下の割合が60%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましく、75%以上であるのが特に好ましい。当該割合が60%未満であると、十分な補強効果を得られない可能性がある。他方、ミクロフィブリル化セルロースの繊維長は、0.2mm以下の割合の上限がなく、全て0.2mm以下であっても良い。
【0061】
ミクロフィブリル化セルロースのアスペクト比は、セルロース繊維スラリーから成形体等を製造する場合において、当該成形体等の延性をある程度保持しつつ強度を向上させる必要がある場合においては、1~10000であるのが好ましく、5~5000であるのがより好ましい。
【0062】
なお、アスペクト比とは、平均繊維長を平均繊維幅で除した値である。アスペクト比が大きいほどパルプ中において引っかかりが生じる箇所が多くなるため補強効果が上がるが、他方で引っかかりが多い分成形体等の延性が低下するものと考えられる。
【0063】
ミクロフィブリル化セルロースのフィブリル化率は、0.5%以上であるのが好ましく、1.0%以上であるのがより好ましく、1.5%以上であるのが特に好ましい。また、フィブリル化率は、10%以下であるのが好ましく、9%以下であるのがより好ましく、8%以下であるのが特に好ましい。フィブリル化率が10%を超えると、水との接触面積が広くなり過ぎるため、たとえ平均繊維幅が0.1μm以上に留まる範囲で解繊できたとしても、脱水が困難になる可能性がある。
【0064】
他方、フィブリル化率が0.5%未満では、フィブリル同士の水素結合が少なく、強硬な三次元ネットワークを形成することができなくなるおそれがある。
【0065】
ミクロフィブリル化セルロースの結晶化度は、45%以上であるのが好ましく、55%以上であるのがより好ましく、60%以上であるのが特に好ましい。結晶化度が50%未満であると、パルプやセルロースナノファイバーとの混合性は向上するものの、繊維自体の強度が低下するため、強度を担保することができなくなるおそれがある。
【0066】
他方、ミクロフィブリル化セルロースの結晶化度は、90%以下であるのが好ましく、88%以下であるのがより好ましく、86%以下であるのが特に好ましい。結晶化度が90%を超えると、分子内の強固な水素結合割合が多くなり繊維自体が剛直となるため、パルプとの水素結合点が十分に増加せず、セルロース繊維スラリーから成形体等を製造する場合において、当該成形体等の強度が十分に向上しないおそれがある。
【0067】
ミクロフィブリル化セルロースの結晶化度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、微細化処理で任意に調整可能である。
【0068】
ミクロフィブリル化セルロースのパルプ粘度は、1cps以上であるのが好ましく、2cps以上であるのがより好ましい。パルプ粘度が1cps未満であると、ミクロフィブリル化セルロースの凝集を十分に抑制することができないおそれがある。
【0069】
ミクロフィブリル化セルロースのフリーネスは、200cc以下が好ましく、150cc以下がより好ましく、100cc以下が特に好ましい。ミクロフィブリル化セルロースのフリーネスが200ccを超えるとミクロフィブリル化セルロースの平均繊維径が10μmを超え、強度に関する効果が十分に得られないおそれがある。
【0070】
ミクロフィブリル化セルロースの保水度は、500%以下であるのが好ましく、450%以下であるのがより好ましく、400%以下であるのが特に好ましい。ミクロフィブリル化セルロースの保水度が500%を超えると、脱水性が劣る傾向にあり、また、凝集する可能性がある。
【0071】
ミクロフィブリル化セルロースの保水度は、例えば、原料パルプの選定、前処理、解繊等で任意に調整可能である。
【0072】
セルロース繊維中におけるミクロフィブリル化セルロースの含有率は、好ましくは1~90質量%、より好ましくは5~80質量%、特に好ましくは10~50質量%である。ミクロフィブリル化セルロースの含有率が1質量%を下回ると、十分な補強効果が得られないおそれがある。
【0073】
他方、ミクロフィブリル化セルロースの含有率が90質量%を超えると、相対的にパルプやセルロースナノファイバーの含有率が減ることになり、パルプやセルロースナノファイバーを含有することによる効果が得られないおそれがある。
【0074】
ミクロフィブリル化セルロースの各種物性の測定方法は、特にこれに反する記載のない限り、セルロースナノファイバーやパルプの場合と同様である。
【0075】
(パルプ)
本形態においてパルプは、セルロース繊維スラリーの脱水性を大幅に向上する役割を有する。また、パルプは、ミクロフィブリル化セルロースと共に使用する場合においては、成形体の強度を向上する役割を有する。
【0076】
ただし、パルプは、含有率を所定の範囲内(後述)とするのが好ましく、保水度比(セルロース繊維スラリーの保水度をセルロースナノファイバーの保水度で除した値)及びセルロース繊維スラリーの自重脱水性が所定の範囲内(後述)になるように含ませるのがより好ましい。このような限定を加えることで、セルロース繊維スラリーから成形体等を製造した場合において、当該成形体等の強度が担保される。なお、保水度比及び自重脱水性の詳細については、後述する。
【0077】
ミクロフィブリル化セルロース、パルプ、及びセルロースナノファイバーの平均繊維径を特定の範囲とした場合において、セルロース繊維中におけるパルプの含有率は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは3~40質量%、特に好ましくは5~20質量%である。パルプの含有率が1質量%を下回ると、セルロース繊維スラリーの脱水性が十分に向上しないおそれがある。また、パルプの含有率が1質量%を下回ると、セルロース繊維スラリーから成形体等を製造する場合において、当該成形体等の強度が担保されないおそれがある。
【0078】
他方、パルプの含有率が50質量%を上回ると、結果的にミクロフィブリル化セルロース等の含有率が減るため、たとえセルロースナノファイバーの補完効果を期待するとしても、上記成形体等の強度が担保されないおそれがある。
【0079】
パルプとしては、ミクロフィブリル化セルロースやセルロースナノファイバーの原料パルプと同様のものを使用することができる。ただし、パルプとしては、ミクロフィブリル化セルロースやセルロースナノファイバーの原料パルプと同じものを使用するのが好ましい。パルプとしてミクロフィブリル化セルロースやセルロースナノファイバーの原料パルプと同じものを使用すると、セルロース繊維の親和性が向上し、結果、セルロース繊維スラリーや成形体等の均質性が向上する。
【0080】
また、パルプとしては、リグニンを含有するパルプを使用するのが好ましく、機械パルプを使用するのがより好ましく、BTMPを使用するのが特に好ましい。これらのパルプを使用すると、セルロース繊維スラリーの脱水性がより向上する。
【0081】
パルプの平均繊維径(平均繊維幅。単繊維の直径平均。)は、好ましくは10~100μm、より好ましくは10~80μm、特に好ましくは10~60μmである。パルプの平均繊維径が以上の範囲内であれば、パルプの含有率を前述した範囲内とすることで、セルロース繊維スラリーの脱水性がより向上する。
【0082】
パルプの平均繊維径は、例えば、原料パルプの選定、軽い解繊等によって調整することができる。
【0083】
パルプの平均繊維径の測定方法は、次のとおりである。
まず、固形分濃度0.01~0.1質量%のパルプの水分散液100mlをテフロン(登録商標)製メンブレンフィルターでろ過し、エタノール100mlで1回、t-ブタノール20mlで3回溶媒置換する。次に、凍結乾燥し、オスミウムコーティングして試料とする。この試料について、構成する繊維の幅に応じて100倍~1000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡SEM画像による観察を行う。具体的には、観察画像に二本の対角線を引き、対角線の交点を通過する直線を任意に三本引く。さらに、この三本の直線と交錯する合計100本の繊維の幅を目視で計測する。そして、計測値の中位径を平均繊維径とする。
【0084】
パルプのフリーネスは、好ましくは10~800ml、より好ましくは200~780ml、特に好ましくは400~750mlである。パルプのフリーネスが800mlを上回ると、セルロース繊維スラリーの脱水性は向上できるものの、成形体等とした際に表面に凹凸ができ易くなり、また、繊維が剛直になってミクロフィブリル化セルロースやセルロースナノファイバーと一体化せず、密度が向上しないおそれがある。
【0085】
他方、パルプのフリーネスが10mlを下回ると、セルロース繊維スラリーの脱水性が十分に向上しないおそれがあり、また、パルプ繊維自体の剛直性が低下し、成形体等を支持する繊維として機能しなくなるおそれがある。
【0086】
パルプのフリーネスは、JIS P8121-2(2012)に準拠して測定した値である。
【0087】
(スラリーの調成)
図1に示すように、微細繊維(ミクロフィブリル化セルロース、又はミクロフィブリル化セルロース及びセルロースナノファイバー)C及びパルプPは、所定の割合で混合し、好ましくはパルプPの含有率が前述した範囲内となるように混合し、もってセルロース繊維のスラリーSを調成する(スラリー調成工程10)。微細繊維C及びパルプPは、それぞれを分散液の状態で混合することもできる。
【0088】
微細繊維C及びパルプPの混合に際しては、水等の媒体Wを加える等して、セルロース繊維スラリーS中におけるセルロース繊維の固形分濃度を調節すると好適である。セルロース繊維の固形分濃度は、好ましくは1~15質量%、より好ましくは1~7質量%、特に好ましくは1~5質量%である。セルロース繊維の固形分濃度が1質量%を下回ると、流動性が高く、脱水工程30においてセルロース繊維が流出してしまうおそれが高くなる。
【0089】
他方、セルロース繊維の固形分濃度が15質量%を上回ると、流動性が著しく低下し、加工性が悪化するため、例えば、成形体を製造する工程において厚みのむらが発生し易くなり、均質な成形体を得ることが困難になるおそれがある。
【0090】
水等の媒体(水系媒体)Wは、全量が水であるのが好ましい。ただし、水系媒体Wは、一部が水と相溶性を有する他の液体であってもよい。他の液体としては、例えば、炭素数3以下の低級アルコール類や、炭素数5以下のケトン類等を使用することができる。
【0091】
セルロース繊維のスラリーは、パルプの含有率を適宜調節することで、保水度比が0.50~0.99となるようにするのが好ましく、0.55~0.98となるようにするのがより好ましく、0.60~0.97となるようにするのが特に好ましい。
【0092】
以上に加えて、セルロース繊維のスラリーは、パルプの種類や含有率を適宜調節することで、自重脱水性が1.1~3.0となるようにするのが好ましく、1.2~2.0となるようにするのがより好ましく、1.3~1.8となるようにするのが特に好ましい。
【0093】
セルロース繊維スラリーSの保水度比0.50以上に、また、自重脱水性を3.0以下にすることで、最終的に得られる成形体(最終製品)Xの強度を担保することができる。
【0094】
セルロース繊維スラリーSの保水度は、以下の方法によって測定した値である。
まず、セルロース繊維のスラリー(濃度2質量%)を遠心分離機(条件:3000G、15分)によって脱水し、得られた脱水物の質量を測定する。次に、当該脱水物を完全に乾燥し、得られた乾燥物の質量を測定する。そして、保水度(%)=(脱水物の質量-乾燥物の質量)/セルロース繊維スラリーの質量×100とする。
【0095】
保水度は一定の遠心力をかけた後にスラリーに残存する水量のことであり、保水度が低いほど脱水性が良好であることを示す。また、保水度比が低いほど、元々のセルロースナノファイバースラリーから保水度が減少したことを示し、脱水性が増加したことを示す。
【0096】
一方、セルロース繊維スラリーの自重脱水性は、以下の方法によって測定した値である。
セルロース繊維のスラリーを吸水基材の上の金網(300メッシュ、幅10cm×長さ10cm×厚さ2mm)に塗工し、2分間放置する。そして、自重脱水性=2分間放置後の固形分濃度/塗工前の固形分濃度とする。
【0097】
(成形体)
以上のようにして得たスラリーは、適宜、湿紙形成20、脱水30及び加圧加熱40等することで成形体Xを得ることができる。スラリーSから成形体Xを製造する方法は様々存在するが、例えば、特開2018-62727号公報(セルロースナノファイバー成形体)に記載の方法によると好適である。なお、湿紙の形成方法について、前述したのは好適な例であり、本形態の製造方法をこれに限定する趣旨ではない。
【0098】
以上のようにして得られた成形体Xは、密度が、好ましくは0.8~1.5g/cm
3
、より好ましくは0.9~1.4g/cm
3
、特に好ましくは1.0~1.3g/cm
3
である。成形体Xの密度が0.8g/cm
3
を下回ると、水素結合点の減少を原因として強度が十分であるとされるおそれがある。
【0099】
成形体Xの密度は、JIS-P-8118:1998に準拠して測定した値である。
【0100】
成形体Xの引張破壊ひずみは、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、4%以下が特に好ましく、3%以下が最も好ましい。引用破壊ひずみが上記上限を超えると、ひずみが大きく用途が限られることがある。他方、成形体Xの引張破壊ひずみは、0%が最もよいが、例えば、1~3%であっても許容される。
【0101】
成形体Xの引張破壊ひずみは、JIS K7127:1999に準拠し、温度23℃の環境下、試験片をJIS-K6251で定める引張2号型ダンベル状とし、試験速度を10mm/分として測定した値である。
【0102】
(その他)
セルロース繊維のスラリーSには、必要により、例えば、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、分散剤、消泡剤、スライムコントロール剤、防腐剤等の添加剤を添加することができる。
【実施例】
【0103】
次に、本発明の実施例について説明する。
まず、セルロース繊維としてミクロフィブリル化セルロース、パルプ、及びセルロースナノファイバーを用いてセルロース繊維のスラリーを作製した。ミクロフィブリル化セルロース及びセルロースナノファイバーの原料パルプ及びパルプとしては、紙パルプであるLBKPを使用した。ミクロフィブリル化セルロースは、原料パルプ(水分率98質量%)をリファイナーで予備叩解することで得た。このミクロフィブリル化セルロースは、濃度2.5質量%の水分散液であった。得られたミクロフィブリル化セルロースは、平均繊維径1μm、保水度296%、結晶化度75%であった。一方、セルロースナノファイバーは、以上のミクロフィブリル化セルロースを高圧ホモジナイザーで解繊して得た。このセルロースナノファイバーは、濃度2.0質量%の水分散液であった。得られたセルロースナノファイバーは、平均繊維径30nm、保水度348%、結晶化度75%であった。ミクロフィブリル化セルロース、パルプ、及びセルロースナノファイバーは、表1に示す割合で混合し、固形分濃度を2.0質量%とした。
【0104】
次に、得られたセルロース繊維のスラリーを、厚さ100μmのシート(成形体)を作製し、当該成形体について引張弾性率及び引張強度を調べる試験を行った。具体的には、まず、セルロース繊維のスラリーから湿紙を作製し、この湿紙を加圧脱水及び加圧加熱して成形体を作製した。加圧脱水は、25℃、2MPaで5分間行った。また、加圧加熱は、120℃、2MPaで5分間行った。得られた成形体の密度は、1.0g/m3であった。
【0105】
結果を表1に示した。なお、引張弾性率及び引張強度の測定方法は、次のとおりである。
【0106】
引張弾性率は、JIS K7127:1999に準拠して測定した。試験片(シート)は、JIS-K6251で定める引張2号型ダンベル状とした。試験速度は、10mm/分とした。また、温度23℃、湿度50%の環境下で測定した。
【0107】
引張強度は、JIS K7127:1999に準拠して測定した。試験片(シート)は、JIS-K6251で定める引張2号型ダンベル状とした。試験速度は、10mm/分とした。また、温度23℃、湿度50%の環境下で測定した。
【0108】
【0109】
(考察)
表1から、セルロース繊維がパルプと共にミクロフィブリル化セルロースを含むと、引張弾性率が向上することが分かる。また、この場合において、更にセルロース繊維が含有率70質量%以下の割合でセルロースナノファイバーを含むと、引張強度も向上することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、セルロース繊維の成形体及びその製造方法として利用可能である。
【符号の説明】
【0111】
10 スラリー調成工程
20 湿紙形成工程
30 脱水工程
40 加圧加熱工程
C 微細繊維
P パルプ
W 水等の媒体
X 成形体