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特許7187247医用画像処理装置、X線診断装置、および医用画像処理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、X線診断装置、および医用画像処理システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
A61B6/03 360G
A61B6/03 371
A61B6/03 360Q
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018192417
(22)【出願日】2018-10-11
(65)【公開番号】P2020058637
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】西岡 昂彦
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0289825(US,A1)
【文献】特開2003-153082(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199245(WO,A1)
【文献】特開2008-237906(JP,A)
【文献】特開2018-030027(JP,A)
【文献】特開2017-143872(JP,A)
【文献】特表2014-509239(JP,A)
【文献】特開2014-128649(JP,A)
【文献】特開2018-57835(JP,A)
【文献】特表2017-509425(JP,A)
【文献】特表2017-536212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1モダリティによる被検体の撮影により得られたボリュームデータから複数の第1ランドマークを取得する第1取得部と、
第2モダリティによる前記被検体の撮影により得られた投影画像であって、前記被検体の血管における流体指標を計測するために前記血管内に挿入されたデバイスの先端部分を含むデバイス領域を有する前記投影画像から複数の第2ランドマークを取得する第2取得部と、
複数の第2ランドマークと前記第1ランドマークとの位置比較により、ランドマーク間の差分を算出し、前記ランドマーク間の差分に基づいて、前記ボリュームデータを変形させた変形ボリュームを生成する変形部と、
前記変形ボリュームに基づいて透視画像を生成する画像生成部と、
前記透視画像における前記第1ランドマークと前記投影画像における前記第2ランドマークとを用いて前記透視画像と前記投影画像との位置合わせを実行することにより、前記透視画像において、前記先端部分の位置を示す先端位置を特定する特定部と、
前記ボリュームデータの血管領域における流体解析により、前記流体指標に対応し、前記血管領域における複数の位置にそれぞれ対応する複数の解析指標を算出する算出部と、
前記複数の解析指標のうち前記先端位置における解析指標と前記流体指標とを、前記透視画像における前記先端位置の近傍であって前記流体指標に関する血管に重複しない位置に重畳させて表示する表示部と、
を具備する医用画像処理装置。
【請求項2】
決定部を更に備え、
前記特定部は、前記複数の解析指標のうち前記先端位置に対応する解析指標を特定し、
前記決定部は、前記特定された解析指標と前記流体指標とを前記透視画像に重畳する位置を、前記先端位置の近傍であって前記流体指標に関する血管に重複しない位置に決定し、
前記表示部は、前記透視画像における前記決定された位置に、前記特定された解析指標と前記流体指標とを重畳させて表示する、
請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記特定部は、前記投影画像における前記デバイスの先端部分の位置を示す先端位置をセグメンテーション処理により特定し、前記位置合わせの結果と前記投影画像において特定された先端位置とを用いて、前記透視画像における前記先端位置を特定する、
請求項1または2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記特定部は、前記血管領域における血管径と前記デバイスの直径とに基づいて、前記血管において前記デバイスが挿入可能な限界位置を特定し、
前記表示部は、前記限界位置を前記透視画像にさらに重畳させて表示する、
請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記表示部は、前記複数の解析指標のうち、前記血管領域において前記限界位置より上流部分における解析指標を、前記透視画像に重畳させて表示する、
請求項4に記載の医用画像処理装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記透視画像において、前記限界位置を境界として前記複数の解析指標の表示態様を異ならせて表示する、
請求項4または5に記載の医用画像処理装置。
【請求項7】
前記表示部は、
前記透視画像に前記投影画像を重畳させて表示する、または前記流体指標が重畳された前記投影画像と前記複数の解析指標が重畳された前記透視画像とを並列表示する、
請求項乃至6のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項8】
前記ボリュームデータは、前記被検体における右冠動脈および左冠動脈に対応する冠動脈領域を有し、
前記算出部は、前記右冠動脈または前記左冠動脈に対する選択指示に応じて、選択された冠動脈に造影剤を流入させた計算を実行し、
前記画像生成部は、前記計算の結果を、前記透視画像に重畳させる、
請求項乃至7のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項9】
前記画像生成部は、前記投影画像の生成時に実施された画像処理を実行することにより前記透視画像を生成する、
請求項乃至8のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項10】
前記画像生成部は、
前記第1ランドマークを有する第1領域の大きさが前記第2ランドマークを有する第2領域の大きさに一致するように、前記透視画像を生成する、
請求項乃至9のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項11】
前記画像生成部は、
前記投影画像における臓器領域と骨領域との相対的な位置関係に基づいて、第1投影方向と視点とを決定し、
前記第1投影方向を基準として複数の第2投影方向各々と前記視点とを用いて前記ボリュームデータに対して最大値投影処理を実行することにより複数の最大値投影画像を生成し、
前記複数の最大値投影画像各々と前記投影画像とを比較することにより、前記複数の最大値投影画像のうち前記投影画像に最も整合する最大値投影画像を特定し、
前記特定された最大値投影画像に関する第2投影方向と前記視点とを用いて、前記透視画像を生成する、
請求項乃至10のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項12】
前記画像生成部は、
前記変形ボリュームから、前記第1ランドマークを含む骨領域と血管を含む臓器領域とを抽出し、
前記骨領域の透過度を、透視撮影に対応する透過度に変更し、
前記変更された透過度を有する前記骨領域と前記臓器領域とに対して最大値投影処理をそれぞれ実行することにより、骨投影画像と臓器投影画像とを生成し、
前記臓器投影画像に前記骨投影画像を重畳することにより、前記透視画像を生成する、
請求項1乃至10のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項13】
前記画像生成部は、前記骨領域における骨部の種類に応じて前記骨領域における複数の部分領域各々の透過度を変更して、前記透視画像を生成する、
請求項12に記載の医用画像処理装置。
【請求項14】
前記画像生成部は、
前記変形ボリュームから、プラーク領域と石灰化領域とのうち少なくともひとつの領域を抽出し、
前記抽出された領域が重畳された前記透視画像を生成する、
請求項1乃至13のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項15】
前記画像生成部は、前記被検体の血管内に挿入されるデバイスを示すモデルを前記透視画像に重畳させる指示に応答して、前記モデルを重畳させた前記透視画像を生成する、
請求項1乃至14のうちいずれか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項16】
前記変形部は、前記血管に前記デバイスのモデルが配置された場合における前記血管の蛇行の変化に応じて、前記透視画像における前記血管の領域を変形させる、
請求項15に記載の医用画像処理装置。
【請求項17】
第1モダリティによる被検体の撮影により得られたボリュームデータから複数の第1ランドマークを取得する第1取得部と、
前記被検体の撮影により得られた投影画像であって、前記被検体の血管における流体指標を計測するために前記血管内に挿入されたデバイスの先端部分を含むデバイス領域を有する前記投影画像から複数の第2ランドマークを取得する第2取得部と、
複数の第2ランドマークと前記第1ランドマークとの位置比較により、ランドマーク間の差分を算出し、前記ランドマーク間の差分に基づいて、前記ボリュームデータを変形させた変形ボリュームを生成する変形部と、
前記変形ボリュームに基づいて透視画像を生成する画像生成部と、
前記透視画像における前記第1ランドマークと前記投影画像における前記第2ランドマークとを用いて前記透視画像と前記投影画像との位置合わせを実行することにより、前記透視画像において、前記先端部分の位置を示す先端位置を特定する特定部と、
前記ボリュームデータの血管領域における流体解析により、前記流体指標に対応し、前記血管領域における複数の位置にそれぞれ対応する複数の解析指標を算出する算出部と、
前記複数の解析指標のうち前記先端位置における解析指標と前記流体指標とを、前記透視画像に重畳させて表示する表示部と、
を具備するX線診断装置。
【請求項18】
第1モダリティによる被検体の撮影により得られたボリュームデータから複数の第1ランドマークを取得する第1取得部と、
第2モダリティによる前記被検体の撮影により得られた投影画像であって、前記被検体の血管における流体指標を計測するために前記血管内に挿入されたデバイスの先端部分を含むデバイス領域を有する前記投影画像から複数の第2ランドマークを取得する第2取得部と、
複数の第2ランドマークと前記第1ランドマークとの位置比較により、ランドマーク間の差分を算出し、前記ランドマーク間の差分に基づいて、前記ボリュームデータを変形させた変形ボリュームを生成する変形部と、
前記変形ボリュームに基づいて透視画像を生成する画像生成部と、
前記透視画像における前記第1ランドマークと前記投影画像における前記第2ランドマークとを用いて前記透視画像と前記投影画像との位置合わせを実行することにより、前記透視画像において、前記先端部分の位置を示す先端位置を特定する特定部と、
前記ボリュームデータの血管領域における流体解析により、前記流体指標に対応し、前記血管領域における複数の位置にそれぞれ対応する複数の解析指標を算出する算出部と、
前記複数の解析指標のうち前記先端位置における解析指標と前記流体指標とを、前記透視画像に重畳させて表示する表示部と、
を具備する医用画像処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用画像処理装置、X線診断装置、および医用画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体への造影剤の投与後にX線コンピュータ断層撮影装置により得られたボリュームデータは、被検体への造影剤の投与後にX線診断装置により得られた画像(以下、アンギオ画像と呼ぶ)に類似した画像(例えば、アンギオグラフィックビューなど)に変換されて表示されることがある。アンギオ画像に類似したアンギオグラフィックビューは、例えば、被検体の心臓領域が抽出されたボリュームデータに対して、最大値投影(Maximum Intensity Projection:以下、MIPと呼ぶ)処理を実行することで、生成される。
【0003】
アンギオグラフィックビューは例えば心臓領域の抽出後のボリュームデータに対するMIP処理により生成されるため、被検体の背骨、胸骨、および肋骨等の骨領域は、アンギオグラフィックビューには映らない。また、骨領域を含むボリュームデータに対するMIP処理により、背骨、胸骨および肋骨を含む画像(以下、MIP画像と呼ぶ)が作成された場合、骨領域のCT値は他の組織より高いために、アンギオ画像と同様な画像は生成できない。
【0004】
また、X線診断装置とX線コンピュータ断層撮影装置とにおいて、造影剤を投与後の被検体に対する撮像の目的は同様であるにもかかわらず、アンギオ画像とアンギオグラフィックビューとは位置合わせが困難な場合がある。このため、例えば、これらの画像間において解剖学的な位置関係を直感的に操作者が把握しにくいという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
目的は、ボリュームデータに基づいて解剖学的な位置関係を容易に把握可能な画像を生成することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る医用画像処理装置は、取得部と、変形部と、画像生成部と、を有する。前記取得部は、第1モダリティによる被検体の撮影時における前記被検体の第1体位を取得する。前記変形部は、前記被検体に対して設定された目的の体位と前記第1体位との差分に基づいて、前記第1モダリティによる前記被検体の撮影により得られたボリュームデータにおける複数の第1ランドマークを基準として、前記ボリュームデータを変形させた変形ボリュームを生成する。前記画像生成部は、前記変形ボリュームに基づいて透視画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態における医用画像処理システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態において、透視画像生成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、第1の実施形態における透過度対応表の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態において、透過度を変更する前の骨MIP画像の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態において、透過度を変更後の骨MIP画像の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態において、撮影対象部位が心臓である場合の臓器MIP画像の一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態において、透視画像生成処理により生成された透視画像の一例を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態において、血管の性状が重畳された透視画像の一例を示す図である。
図9図9は、第1の実施形態の変形例における透視画像生成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、第1の実施形態の第1の応用例において生成された透視画像の一例を示す図である。
図11図11は、第1の実施形態の第2の応用例において、デバイスを血管に模擬的に挿入した場合の血管の蛇行の変化の一例を示す図である。
図12図12は、第2の実施形態におけるX線診断装置の構成の一例を示す図である。
図13図13は、第2の実施形態における透視画像生成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図14図14は、第2の実施形態において、透視画像生成処理により生成された透視画像と、投影画像とを並列表示した一例を示す図である。
図15図15は、第2の実施形態の変形例において、MIP処理に用いられる視線方向の決定に関する処理の概要の一例を示す概要図である。
図16図16は、第3の実施形態において、処理回路の構成の一例を示す図である。
図17図17は、第3の実施形態における流体指標重畳処理の手順の一例を示す図である。
図18図18は、第3の実施形態において、プレッシャワイヤと実測の流体指標とが重畳された投影画像の一例を示す図である。
図19図19は、第3の実施形態において、解析指標と流体指標とワイヤモデルとが重畳された透視画像の一例を示す図である。
図20図20は、第3の実施形態の第1の応用例において、デバイスを血管に挿入可能な限界を示す限界位置を透視画像に重畳した一例を示す図である。
図21図21は、第3の実施形態の第1の応用例において、限界位置を含む上流部分における複数の解析指標と限界位置とを重畳した透視画像の一例を示す図である。
図22図22は、第3の実施形態の第1の応用例において、限界位置と複数の解析指標とを、限界位置を境界として異なる表示態様で透視画像に重畳した一例を示す図である。
図23図23は、第3の実施形態の第1の応用例において、臓器領域に隣接する血管領域の複数点各々の近傍に解析指標を重畳した透視画像の一例を示す図である。
図24図24は、第3の実施形態の第2の応用例において、選択された冠動脈に造影剤を模擬的に流入させたシミュレーション結果が重畳された透視画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態に関する医用画像処理装置、X線診断装置、および医用画像処理システムについて説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は、適宜、必要に応じて行う。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態における医用画像処理システム100の構成の一例を示す図である。医用画像処理システム100は、複数の医用画像診断装置(モダリティ)10と画像保管装置20と、医用画像処理装置30とを有する。図1に示すように、医用画像診断装置10、画像保管装置20及び医用画像処理装置30は、無線、有線を問わず、ネットワークを介して相互に通信可能に接続される。ネットワークは、例えば、LAN(Local Area Network)である。なお、VPN(Virtual Private Network)等によりセキュリティが確保されるのであれば、接続される回線はLANに限定されない。このとき、ネットワークは、例えば、インターネット等、公衆の通信回線であってもよい。
【0010】
なお、医用画像処理システム100は、例えば、操作者により使用されるクライアント装置には必要最低限の処理を実行させ、大部分の処理をサーバ装置に実行させるシンクライアント(Thin Client)の形態で実施されてもよい。このとき、医用画像処理装置30は、サーバ装置として機能する。また、医用画像処理システム100がシンクライアントの形態で実施される場合、不図示のクライアント装置は、例えば、後述する入力インターフェースとディスプレイとメモリと制御機能を有する処理回路とを有する端末装置として、ネットワークに接続される。このとき、端末装置は、例えば、医用画像表示装置として機能してもよい。
【0011】
複数の医用画像診断装置10は、被検体Pに対して撮像を実行し、医用画像データを収集する。医用画像診断装置10は、例えば、被検体Pにおける血管が描出された医用画像データを収集する。医用画像診断装置は、収集された医用画像データを、画像保管装置20及び医用画像処理装置30に送信する。以下、説明を具体的にするために、複数の医用画像診断装置10は、X線コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:以下、CTと呼ぶ)装置(第1モダリティ)とX線診断装置(第2モダリティ)であるものとする。なお、第1モダリティは、X線CT装置に限定されず、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging)装置など、ボリュームデータを取得可能な他の撮像装置であってもよい。
【0012】
X線CT装置は、被検体Pに対するCTスキャンにより、被検体Pに関するボリュームデータを収集する。このとき、ボリュームデータには、スキャン条件が付帯される。CTスキャン条件は、例えば、撮影対象部位、スキャン方式、ビュー数、管電圧、管電流、CTスキャンの実行時における被検体Pの体位(姿勢)などを有する。
【0013】
X線診断装置は、被検体Pに対するX線撮影により、被検体Pに関する投影画像のデータを収集する。このとき、投影画像のデータには、X線撮影条件が付帯される。X線撮影条件は、例えば、撮影対象部位、管電圧、管電流、照射時間、管電流(mA)と照射時間(s)との積(以下、管電流時間積(mAs)と呼ぶ)、X線撮影の実行時における被検体Pの体位(姿勢)などを有する。スキャン条件およびX線撮影条件は、撮像条件に相当する。ボリュームデータおよび投影画像のデータは、医用画像データに相当する。体位とは、被検体Pに対する撮影時における被検体Pの姿勢である。例えば、スキャン条件における体位は、背臥位、両上肢挙上、仰臥位、側臥位、腹臥位などである。また、X線撮影条件における体位は、例えば、仰臥位、側臥位、両上肢下垂などである。なお、被検体Pの体位は、撮像条件に含まれなくてもよい。
【0014】
画像保管装置20は、医用画像診断装置10によって収集された医用画像データを保管する装置である。画像保管装置20は、ネットワークを介して医用画像診断装置10から医用画像データを取得し、取得した医用画像データを、装置内又は装置外に設けられたメモリに記憶させる。例えば、画像保管装置20は、サーバ装置等のコンピュータ機器によって実現される。
【0015】
医用画像処理装置30は、ネットワークを介して、医用画像診断装置10または画像保管装置20から医用画像データを取得し、取得された医用画像データを用いて種々の処理を実行する。医用画像処理装置30は、例えば、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。なお、ネットワークを介して接続可能であれば、医用画像診断装置10、画像保管装置20及び医用画像処理装置30が設置される場所は任意である。例えば、医用画像処理装置30は、医用画像診断装置10と異なる施設、病院等に設置されてもよい。また、医用画像処理装置30は、X線診断装置などの医用画像診断装置10に搭載されてもよい。
【0016】
図1に示すように、医用画像処理装置30は、入力インターフェース31と、ディスプレイ32と、メモリ33と、処理回路34とを有する。
【0017】
入力インターフェース31は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換し、変換された電気信号を処理回路34に出力する。例えば、入力インターフェース31は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース31は、医用画像処理装置30と無線通信可能なタブレット端末等で構成されてもよい。また、入力インターフェース31は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用画像処理装置30とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路34へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース31の例に含まれる。入力インターフェース31は、入力部の実現手段の一例である。
【0018】
ディスプレイ32は、処理回路34における制御機能による制御のもとで、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ32は、処理回路34により生成された各種画像を表示する。また、ディスプレイ32は、入力インターフェース31を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。ディスプレイ32としては、種々の任意のディスプレイが、適宜使用可能である。例えば、ディスプレイ32としては、液晶ディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、またはプラズマディスプレイが使用可能である。ディスプレイ32は、デスクトップ型でもよいし、医用画像処理装置30と無線通信可能なタブレット端末等で構成されてもよい。ディスプレイ32は、表示部の実現手段の一例である。
【0019】
メモリ33は、例えば、各種情報を記憶するRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク(Hard Disk Drive)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive)、光ディスク等により実現される。なお、メモリ33は、ROM(Read Only Memory)などの非揮発性のメモリをさらに有していてもよい。また、メモリ33は、CD(Compact Disc)-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等で実現されてもよい。メモリ33は、医用画像診断装置10または画像保管装置20から取得した医用画像データを記憶する。メモリ33は、医用画像処理装置30に搭載された処理回路34における各種機能を実現するためのプログラムを記憶する。また、メモリ33は、処理回路34において実行される各種機能を実行するときに用いられる各種データを記憶する。メモリ33は、記憶部の実現手段の一例である。
【0020】
処理回路34は、医用画像処理装置30の中枢として機能する。処理回路34は、ハードウェア資源として図示していないプロセッサ、ROMやRAM等のメモリ等を有する。処理回路34は、取得機能34aと、変形機能34bと、画像生成機能34cと、不図示の制御機能とを有する。処理回路34は、制御機能により医用画像処理装置30における各種回路を制御する。例えば、処理回路34は、制御機能により、取得機能34aと、変形機能34bと、画像生成機能34cとを実行することで、医用画像処理装置30全体の動作を制御する。処理回路34は、処理部の実現手段の一例である。
【0021】
取得機能34aと、変形機能34bと、画像生成機能34cと、制御機能とは、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ33に記憶される。処理回路34は、これらの機能各々に対応するプログラムをメモリ33から読み出し、実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読みだした状態の処理回路34は、図1の処理回路34内に示された複数の機能各々を有することになる。ここで、取得機能34aを実現する処理回路34は、取得部の実現手段の一例である。また、変形機能34bを実現する処理回路34は、変形部の実現手段の一例である。また、画像生成機能34cを実現する処理回路34は、画像生成部の実現手段の一例である。また、制御機能を実現する処理回路34は、制御部の実現手段の一例である。
【0022】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、或いは、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0023】
なお、本実施形態では、単一のプロセッサによって、取得機能34aと、変形機能34bと、画像生成機能34cと、制御機能とが実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサが動作プログラムを実行することにより、取得機能34aと、変形機能34bと、画像生成機能34cと、制御機能とが実現されても構わない。
【0024】
処理回路34において実行される取得機能34aと、変形機能34bと、画像生成機能34cとに関する処理は、後述の透視画像生成処理の手順において説明する。透視画像生成処理とは、ボリュームデータの取得に関する撮影の実行時における被検体Pの体位と被検体Pに対して設定された目的の体位との差分と、ボリュームデータとに基づいて、X線診断装置による投影画像に類する透視画像を生成する処理である。
【0025】
以上が本実施形態における医用画像処理システム100に関する全体構成についての説明である。以下、本実施形態における医用画像処理装置30の処理回路34において実行される取得機能34aと、変形機能34bと、画像生成機能34cとに関する処理内容について、透視画像生成処理の手順とともに説明する。なお、本実施形態の処理回路34における各種機能は、例えばX線診断装置などの医用画像診断装置10に搭載されてもよい。
【0026】
(透視画像生成処理)
図2は、透視画像生成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
(ステップSa1)
処理回路34は、取得機能34aにより、第1モダリティによる被検体Pの撮影時における被検体Pの体位(以下、第1体位と呼ぶ)を取得する。以下、説明を具体的にするために、ボリュームデータは、被検体Pに対する血管造影を伴ったCTスキャンにより生成されたデータであるものとする。具体的には、処理回路34は、第1モダリティとしてのX線CT装置から被検体Pに関するボリュームデータを取得する。なお、処理回路34は、画像保管装置20からボリュームデータを取得してもよい。次いで、処理回路34は、ボリュームデータに付帯されたスキャン条件から第1体位を取得する。処理回路34は、既存の画像処理により、ボリュームデータから複数の解剖学的標識点(以下、第1ランドマークと呼ぶ)を取得する。第1ランドマークは、ボリュームデータに含まれる特徴的な局所構造を示す標認点に相当する。
【0027】
なお、スキャン条件において被検体Pの体位が含まれていない場合、処理回路34は、取得機能34aにより、スキャン条件から撮影対象部位を抽出する。次いで、処理回路34は、撮影対象部位に対する体位の対応表(以下、体位対応表と呼ぶ)を用いて、撮影対象部位に対応する体位を、第1体位として決定する。これらの処理により、処理回路34は、第1体位を取得する。体位対応表は、メモリ33に予め記憶され、ステップSa1の処理において処理回路34によりメモリ33から読み出される。以下、説明を具体的にするために、第1体位は仰臥位かつ両上肢挙上であって、ボリュームデータは被検体Pの心臓を撮影対象部位として有するものとする。
【0028】
(ステップSa2)
入力インターフェース31を介した操作者の指示により、被検体Pに対して目的の体位(以下、目的体位と呼ぶ)が入力される。これにより、被検体Pに対して目的体位が設定為れる。以下、説明を具体的にするために。目的体位は、仰臥位かつ両上肢下垂であるものとする。
【0029】
(ステップSa3)
処理回路34は、変形機能34bにより、目的体位と第1体位との差分に基づいて、ボリュームデータにおける複数の第1ランドマークを基準として、ボリュームデータを変形させた変形ボリュームを生成する。具体的には、処理回路34は、まず、目的体位と第1体位との差分を決定する。上記体位の例では、差分は、両上肢挙上と両上肢下垂とによるボリュームデータにおける骨の位置の変化を示す変位に相当する。なお、差分は、ボリュームデータにおける臓器の位置および臓器の形の変化を示す変位を有していてもよい。次いで、処理回路34は、ボリュームデータにおける複数の第1ランドマークを基準として、変位を用いてボリュームデータを変形させる。
【0030】
上記体位の例では、処理回路34は、両上肢挙上から両上肢下垂への体位の変化に応じた変位を用いて、変形ボリュームを生成する。このとき、変形ボリュームは、ボリュームデータにおける骨の位置を剛体変換として移動(変形)させたボリュームデータに相当する。なお、撮影対象部位が体位の差分に応じて変形する臓器(例えば、肝臓など)である場合、変形ボリュームは、ボリュームデータにおける骨の位置を剛体変換として移動(変形)させ、かつボリュームデータにおける臓器の形状および位置を非剛体変換として変形させたボリュームデータに相当する。
【0031】
例えば、メモリ33は、目的体位と第1体位との組み合わせに対する変位の対応表(以下、変位対応表と呼ぶ)を記憶する。変位対応表は、複数の組み合わせを複数の変位に対応付けた対応表である。処理回路34は、変形機能34bにより、メモリ33から変位対応表を読み出す。処理回路34は、目的体位と第1体位との組み合わせを変位対応表と照合することにより、変位を決定する。次いで、処理回路34は、決定された変位をボリュームデータに適用することにより、変形ボリュームを生成する。
【0032】
なお、メモリ33は、変位対応表の代わりに、上記剛体変換と上記非剛体変換とを有するワープフィールド(歪み場)と複数の組み合わせと撮影対象部位とを対応付けたフィールド対応表を記憶してもよい。このとき、処理回路34は、変形機能34bにより、目的体位と第1体位との組み合わせと撮影対象部位とをフィールド対応表と照合することにより、ワープフィールドを決定する。次いで、処理回路34は、決定されたワープフィールドを、ボリュームデータに適用することにより、変形ボリュームを生成する。
【0033】
(ステップSa4)
処理回路34は、画像生成機能34cによるセグメンテーション処理(領域抽出処理)により、変形ボリュームから、第1ランドマークを含む骨領域と臓器領域とを抽出する。骨領域は、骨部に加えて軟骨を有していてもよい。臓器領域は、臓器に隣接する血管などの管腔を有していてもよい。臓器領域が血管である場合、臓器に隣接する血管は冠動脈に相当する。
【0034】
具体的には、処理回路34は、画像生成機能34cにより、変形ボリュームにおけるボクセル値(例えば、CT値)に対して複数の閾値を用いたセグメンテーション処理を実行することで、変形ボリュームから骨領域と臓器領域とを抽出する。複数の閾値は、骨領域と臓器領域とを変形ボリュームから弁別するための閾値であって、予めメモリ33に記憶される。なお、処理回路34によるセグメンテーションの対象領域は、骨領域と臓器領域とに限定されず、例えば、血管の性状を示す石灰化領域とプラーク領域とのうち少なくとも一つの領域(以下、血管性状領域と呼ぶ)を、変形ボリュームから抽出してもよい。また、処理回路34は、骨領域において、骨部の種類毎に領域を抽出してもよい。これらの場合、メモリ33は、血管の性状の種類と骨部の種類とに応じて、セグメンテーション処理に用いられる複数の閾値を記憶する。
【0035】
(ステップSa5)
処理回路34は、画像生成機能34cにより、抽出された骨領域の透過度を、透視撮影に対応する透過度(以下、透視透過度と呼ぶ)に変更する。石灰化領域とプラーク領域とのうち少なくとも一つの領域が血管性状領域として抽出された場合、処理回路34は、血管性状領域の透過度を、透視透過度に変更する。なお、処理回路34は、透視透過度の代わりに、透視撮影に対応する不透明度を用いてもよい。透視透過度とは、例えば、X線診断装置(第2モダリティ)により被検体Pに対して透視撮影が実行された場合において生成された画像(投影画像)における骨領域の透明度に相当する。具体的には、メモリ33は、透視透過度を記憶する。処理回路34は、透視透過度をメモリ33から読み出し、骨領域の透過度を、読み出された透視透過度に変更する。
【0036】
なお、メモリ33は、軟骨を含む骨部の種類に対する透視透過度の対応表(以下、透過度対応表と呼ぶ)を記憶してもよい。図3は、透過度対応表の一例を示す図である。図3に示すように、透過度対応表は、骨部の種類に対応する透視透過度を、リストとして有する。図3に示す透視透過度は、骨部の種類に応じた骨の厚みに対応する。すなわち、骨の厚みが厚いほどX線の減弱の割合は大きくなるため、透視透過度は、骨が厚いほど低下する。このとき、処理回路34は、画像生成機能34cにより、透過度対応表を用いて、骨領域における骨部の種類および軟骨の種類に応じて、骨領域における複数の部分領域各々の透過度を透視透過度に変更する。なお、軟骨の透視透過度には、種類によらず一つの透視透過度が割り当てられてもよい。
【0037】
また、メモリ33は、血管性状領域に対する透視透過度の対応表(以下、血管性状対応表と呼ぶ)を記憶してもよい。このとき、処理回路34は、血管性状対応表を用いて、石灰化領域およびプラーク領域の透過度を透視透過度に変更する。
【0038】
なお、処理回路34は、画像生成機能34cにより、血管性状領域の透過度を変更する代わりに、抽出された領域の表示態様を、石灰化およびプラーク各々に対応する表示態様に変更してもよい。表示態様とは、例えば、色相、ハッチングなどであって、臓器領域と骨領域と石灰化領域とプラーク領域とがそれぞれ識別可能であれば、どのような表示態様であってもよい。表示態様が色相である場合、メモリ33は、石灰化領域およびプラーク領域に対する色相の対応表(以下、色相対応表と呼ぶ)を記憶してもよい。このとき、処理回路34は、石灰化領域およびプラーク領域に、色相対応表における色相を割り当てる。
【0039】
(ステップSa6)
処理回路34は、画像生成機能34cにより、変更された透過度を有する骨領域に対して最大値投影処理(以下、MIP(Maximum Intensity Projection)処理と呼ぶ)を実行することにより、骨投影画像(以下、骨MIP画像と呼ぶ)を生成する。MIP処理に用いられる視点と視線方向とは、例えば、X線撮影のX線の焦点と撮影方向とにそれぞれ対応し、撮影対象部位に応じてあらかじめ設定されて、メモリ33に記憶される。
【0040】
図4は、透過度の変更前の骨MIP画像の一例を示す図である。図5は、透過度の変更後の骨MIP画像BMIPの一例を示す図である。図4および図5に示すように、透過度の変更により、本ステップにおいて生成された骨MIP画像BMIPにおける骨領域BRの透過度は大きくなる。
【0041】
処理回路34は、画像生成機能34cにより、臓器領域に対してMIP処理を実行することにより、臓器投影画像(以下、臓器MIP画像と呼ぶ)を生成する。図6は、撮影対象部位が心臓である場合の臓器MIP画像TMIPの一例を示す図である。なお、処理回路34は、透過度が変更された石灰化領域およびプラーク領域に対してMIP処理を実行することにより、石灰化領域およびプラーク領域に関する投影画像(以下、血管性状投影画像と呼ぶ)を生成してもよい。
【0042】
(ステップSa7)
処理回路34は、画像生成機能34cにより、骨MIP画像を臓器MIP画像に重畳することにより、重畳画像を生成する。なお、処理回路34は、重畳画像の生成前に、骨MIP画像と臓器MIP画像との位置合わせ(レジストレーション:registration)を実行してもよい。このとき、処理回路34は、位置合わせが実行された骨MIP画像と臓器MIP画像とを用いて、重畳画像を生成する。なお、処理回路34は、骨MIP画像と血管性状投影画像とを臓器MIP画像に重畳することにより、重畳画像を生成してもよい。
【0043】
(ステップSa8)
処理回路34は、画像生成機能34cにより、X線診断装置において投影画像の生成時に実行される画像処理(以下、後処理と呼ぶ)を重畳画像に対して実行することにより、透視画像を生成する。また、処理回路34は、後処理に加えて、階調反転の処理などの各種処理を実行する。後処理は、例えば、リカーシブフィルタなどのノイズ低減フィルタの適用、アーチファクト除去処理、オフセット補正、ゲイン補正、空間フィルタの適用、ダイナミックレンジ圧縮処理などである。なお、後処理は、第2モダリティにおける画像の生成時に実行される画像処理であれば、上記後処理の内容に限定されず、いずれのものであってもよい。ステップSa4乃至Sa8の処理により、処理回路34は、画像生成機能34cにより変形ボリュームに基づいて透視画像を生成する。
【0044】
(ステップSa9)
処理回路34は、制御機能により、透視画像をディスプレイ32に表示する。処理回路34は、生成された透視画像を、画像保管装置20などの各種外部の装置に出力する。図7は、透視画像FLIの一例を示す図である。図7に示すように、透視画像FLIは、被検体Pに造影剤を投与してX線診断装置による透視投影により得られた投影画像(以下、アンギオ画像と呼ぶ)に、アンギオグラフィックビューより類似した画像となる。図8は、骨MIP画像と血管性状投影画像とを臓器MIP画像に重畳した透視画像の一例を示す図である。図8に示すように、透視画像FLIにおいて、心臓に隣接する冠動脈には石灰化領域CALMEとプラーク領域PLREとが、血管とは異なる透過度で、異なるハッチングとして示されている。
【0045】
以上に述べた構成および動作によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態における医用画像処理装置30によれば、第1モダリティによる被検体Pの撮影時における被検体Pの第1体位を取得し、被検体Pに対して設定された目的の体位と第1体位との差分に基づいて、第1モダリティによる被検体Pの撮影により得られたボリュームデータにおける複数の第1ランドマークを基準として、ボリュームデータを変形させた変形ボリュームを生成し、変形ボリュームに基づいて透視画像を生成することができる。これにより、本医用画像処理装置30によれば、ボリュームデータの収集時における被検体Pの体位によらず、アンギオ画像に準拠した解剖学的ランドマークを有し、アンギオ画像に酷似した透視画像を生成することができる。
【0046】
また、本医用画像処理装置30によれば、X線診断装置などの第2モダリティによる投影画像の生成時に実施された画像処理を実行することにより透視画像を生成することができる。また、本医用画像処理装置30によれば、変形ボリュームから、第1ランドマークを含む骨領域と血管を含む臓器領域とを抽出し、骨領域の透過度を透視撮影に対応する透過度に変更し、変更された透過度を有する骨領域と臓器領域とに対して最大値投影処理をそれぞれ実行することにより、骨投影画像と臓器投影画像とを生成し、臓器投影画像に骨投影画像を重畳することにより、透視画像を生成することができる。また、本医用画像処理装置30によれば、骨領域における骨部の種類に応じて骨領域における複数の部分領域各々の透過度を変更して、透視画像を生成することができる。これらにより、本医用画像処理装置30によれば、アンギオ画像にさらに酷似した透視画像を生成することができる。
【0047】
以上のことから、本医用画像処理装置30によれば、血管造影に関する技師および医師にとって直感的に把握しやすい透視画像を、ボリュームデータに基づいて生成することができる。これにより、透視画像生成処理により生成された透視画像とX線診断装置による透視撮影により得られた投影画像との位置合わせが容易になり、診断効率を向上させることができる。
【0048】
また、本医用画像処理装置30によれば、変形ボリュームデータから、プラーク領域と石灰化領域とのうち少なくともひとつの領域を抽出し、抽出された血管性状領域が重畳された透視画像を生成することができる。これにより、ボリュームデータに特有であってアンギオ画像より多くの情報を付与した透視画像を生成することができ、診断効率を向上させることができる。
【0049】
(変形例)
本変形例と第1の実施形態との相違は、図2のステップSa3乃至ステップSa7において、透視画像生成処理の内容および手順が異なることにある。図9は、本変形例における透視画像生成処理の手順の一例を示す図である。ステップSa2の処理の後、以下のステップSb1の処理が実行される。
【0050】
(ステップSb1)
ステップSa2の後、処理回路34は、画像生成機能34cによるセグメンテーション処理により、ボリュームデータから骨領域と臓器領域とを抽出する。なお、処理回路34は、石灰化領域とプラーク領域とのうち少なくとも一つの領域を、ボリュームデータから抽出してもよい。セグメンテーション処理の内容は、ステップSa4に記載の処理内容と概ね同様なため、詳細な説明は省略する。
【0051】
(ステップSb2)
処理回路34は、画像生成機能34cにより、例えば透過度対応表を用いて、抽出された骨領域の透過度を、透視透過度に変更する。なお、処理回路34は、血管性状対応表を用いて、石灰化領域およびプラーク領域の透過度を透視透過度に変更してもよい。本ステップの処理内容は、ステップSa5に記載の処理内容と概ね同様なため、詳細な説明は省略する。
【0052】
(ステップSb3)
処理回路34は、画像生成機能34cにより、変更された透過度を有する骨領域に対してMIP処理を実行することにより、第1MIP画像を生成する。処理回路34は、臓器領域に対してMIP処理を実行することにより、第2MIP画像を生成する。なお、処理回路34は、透過度が変更された石灰化領域およびプラーク領域に対してMIP処理を実行することにより、石灰化領域およびプラーク領域に関する第3MIP画像を生成してもよい。本ステップの処理内容は、ステップSa6に記載の処理内容と概ね同様なため、詳細な説明は省略する。
【0053】
(ステップSb4)
処理回路34は、変形機能34bにより、目的体位と第1体位との差分に基づいて、第1MIP画像を移動させる移動量を決定する。具体的には、処理回路34は、目的体位と第1体位との組み合わせを変位対応表と照合することにより変位を決定する。次いで、処理回路34は、決定された変位を、第2MIP画像に対して第1MIP画像を移動させる移動量として決定する。決定された移動量は、例えば、第1MIP画像に対する剛体変換を示す変換量に相当する。
【0054】
なお、撮影対象部位が体位の差分に応じて変形する臓器である場合、処理回路34は、変形機能34bにより、決定された変位を用いて、第2MIP画像を変形させる変形量を決定してもよい。決定された変形量は、例えば、第2MIP画像に対する非剛体変換を示す変換量に相当する。また、処理回路34は、目的体位と第1体位との差分に基づいて、第3MIP画像を移動させる移動量を決定してもよい。なお、処理回路34は、目的体位と第1体位との組み合わせと撮影対象部位とをフィールド対応表と照合することにより、第1乃至第3MIP画像にそれぞれ対応するワープフィールドを決定してもよい。このとき、第1MIP画像および第3MIP画像に対応するワープフィールドは、剛体変換を示すマップに相当する。
【0055】
(ステップSb5)
処理回路34は、画像生成機能34cにより、決定された移動量に従って第1MIP画像を移動し、移動された第1MIP画像(以下、移動後第1MIP画像と呼ぶ)を第2MIP画像に重畳することにより、重畳画像を生成する。なお、処理回路34は、決定された変換量に従って第2MIP画像に対して非剛体変換を実行し、非剛体変換が実行された第2MIP画像(以下、変換後第2MIP画像と呼ぶ)に移動後第1MIP画像を重畳することにより、重畳画像を生成してもよい。
【0056】
また、処理回路34は、決定された移動量に従って第3MIP画像を移動し、移動された第3MIP画像(以下、移動後第3MIP画像と呼ぶ)と移動後第1MIP画像とを第2MIP画像に重畳することにより、重畳画像を生成してもよい。また、処理回路34は、移動後第1MIP画像と移動後第3MIP画像とを変換後第2MIP画像に重畳することにより、重畳画像を生成してもよい。
【0057】
ステップSb5の処理後、ステップSa8以降の処理が実行され、透視画像が生成される。生成された透視画像は、第1の実施形態と同様なものとなる。このため、本変形例における効果は第1の実施形態における効果と同様なため、本変形例における効果の説明は省略する。
【0058】
(第1の応用例)
本応用例は、被検体Pの血管内に挿入されるデバイスを示すモデル(以下、デバイスモデルと呼ぶ)を透視画像に重畳させる指示(以下、デバイス表示指示と呼ぶ)に応答して、デバイスモデルを重畳させた透視画像を生成することにある。以下、説明を具体的にするために、デバイスモデルは、造影剤を吐出するためのカテーテルのモデル(以下、カテーテルモデルと呼ぶ)であるものとして説明する。なお、デバイスモデルは、カテーテルモデルに限定されず、例えば、血流予備量比(Fractional Flow Reserve:以下、FFRと呼ぶ)を計測するためのプレッシャワイヤのモデル(以下、ワイヤモデルと呼ぶ)、ステントのモデル、バルーンカテーテルのモデル、IVUS(Intervascular Ultrasound:血管内超音波)カテーテルのモデルなど、被検体P内に挿入可能な手術デバイスのモデルであれば、いずれのものであってもよい。これらのデバイスモデルは、例えば3次元的なデータとして、メモリ33に記憶される。
【0059】
入力インターフェース31は、デバイス表示指示を、操作者による操作に従って入力する。入力インターフェース31は、デバイス表示指示に関する信号を、処理回路34に出力する。デバイス表示指示の入力は、例えば、デバイスの種類に応じてデバイスモデルを示したボタンの押下などである。
【0060】
処理回路34は、デバイス表示指示に応答して、画像生成機能34cにおけるセグメンテーション処理により、臓器領域における大動脈と冠動脈との境界位置と境界位置から上流の大動脈とを特定する。処理回路34は、カテーテルモデルをメモリ33から読み出す。処理回路34は、大動脈から境界位置を通過して、境界位置から所定の長さ(例えば、1~2cm)だけ冠動脈に挿入した位置まで、読み出されたカテーテルモデルをボリュームデータに配置する。処理回路34は、カテーテルモデルが配置されたボリュームデータを用いて透視画像生成処理を実行することで、カテーテルモデルが重畳された透視画像を生成する。
【0061】
図10は、本応用例で生成された透視画像FLIの一例を示す図である。図10に示すように、カテーテルモデルVcathは、図7に示す透視画像に重畳された状態で、ディスプレイ32に表示される。
【0062】
なお、本応用例における透視画像の生成に関する処理は、上記に限定されず、以下のような処理の手順により生成されてもよい。ステップSa8の処理またはステップSa9の処理の後、デバイス表示指示に応答して、処理回路34は、変形機能34bにより、境界位置と大動脈の形状と冠動脈の形状とに応じて、デバイスモデルを変形する。処理回路34は、画像生成機能34cにより、変形されたデバイスモデルに対してMIP処理を実行し、デバイスモデルのMIP画像(以下、デバイスMIP画像と呼ぶ)を生成する。処理回路34は、デバイスMIP画像に対して後処理を実行し、後処理が実行されたデバイスMIP画像を、第1の実施形態または変形例により生成された透視画像に重畳させる。これにより、図10に示す透視画像と同様な透視画像を生成することができる。
【0063】
以上に述べた構成および動作によれば、第1の実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
本応用例における医用画像処理装置30によれば、被検体Pの血管内に挿入されるデバイスを示すモデルを透視画像に重畳させる指示に応答して、モデルを重畳させた透視画像を生成することができる。これにより、本医用画像処理装置30によれば、デバイスを被検体Pに挿入した場合における模擬的な透視画像を生成することができ、操作者は透視撮影の実行前に透視画像におけるデバイスの位置を解剖学的な位置関係に従って直感的に把握することができる。
【0064】
(第2の応用例)
本応用例は、血管へのデバイスの挿入による血管の蛇行の変化に応じて、透視画像における血管の領域を変形させることにある。以下、説明を具体的にするために、透視画像に表示されるデバイスモデルは、ワイヤモデルであるものとして説明する。本応用例における処理は、例えば、ステップSa9の後に実行される。
【0065】
入力インターフェース31は、デバイス表示指示に続いて、操作者の指示により、血管に配置されるワイヤモデルの先端部分の位置(以下、先端位置と呼ぶ)を、透視画像に対して入力する。入力インターフェース31は、透視画像における先端位置の情報を、処理回路34に出力する。
【0066】
処理回路34は、画像生成機能34cにおけるセグメンテーション処理により、臓器領域から大動脈と冠動脈とを抽出する。処理回路34は、大動脈および冠動脈の領域と先端位置とに基づいて、臓器領域においてワイヤモデルが配置される血管の経路(以下、配置経路と呼ぶ)を特定する。処理回路34は、配置経路における血管の構造情報を、既存の手法により取得する。血管の構造情報とは、例えば、配置経路に沿った血管の太さ、血管の長さ、血管壁の厚さ、血管の曲率、血管の捩率、血管の性状、血管の硬さなどである。処理回路34は、既存の手法により、血管の構造情報を用いて、配置経路に対応する血管の蛇行の変化を決定する。なお、処理回路34は、プレッシャワイヤなどのデバイスの構造情報をさらに用いて、血管の蛇行の変化を決定してもよい。プレッシャワイヤの構造情報とは、例えば、プレッシャワイヤの太さ、プレッシャワイヤの長さ、プレッシャワイヤの硬さ、プレッシャワイヤの応力、プレッシャワイヤの可動範囲などである。このとき、プレッシャワイヤの構造情報は、予めメモリ33に記憶される。
【0067】
処理回路34は、変形機能34bにより、決定された蛇行の変化に応じて、透視画像における血管の領域を変形させる。図11は、デバイスを血管に模擬的に挿入した場合の血管の蛇行の変化の一例を示す図である。図11に示すように、ワイヤモデルWMが配置経路PRに配置される前の状態BAPにおいて、配置経路PRは蛇行している。ワイヤモデルWMが配置経路PRに配置された状態AAPにおいて、配置経路PRの蛇行は、アコーディオン現象により、低減する。
【0068】
以上に述べた構成および動作によれば、第1の実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
本応用例における医用画像処理装置30によれば、血管にデバイスのモデルが配置された場合における血管の蛇行の変化に応じて、透視画像における血管の領域を変形させることができる。これにより、本医用画像処理装置30によれば、デバイスを被検体Pに挿入した場合における血管の変形を伴った模擬的な透視画像を生成することができ、操作者は透視撮影の実行前に血管の変形を直感的に把握することができる。
【0069】
(第2の実施形態)
本実施形態と第1の実施形態との相違は、X線診断装置により得られた投影画像を用いて透視画像を生成することにある。
【0070】
図12は、本実施形態におけるX線診断装置10の構成の一例を示す図である。図12に示すように、X線診断装置10は、高電圧発生器11と、X線管13と、X線絞り装置15と、X線検出器17と、支持フレーム19と、天板21を有する不図示の寝台と、入力インターフェース31と、ディスプレイ32と、メモリ33と、処理回路34とを有する。
【0071】
高電圧発生器11は、X線管13に供給する管電流と、X線管13に印加する管電圧(高電圧)とを発生する。高電圧発生器11は、処理回路34におけるシステム制御機能341による制御のもとで、X線撮影条件に従って、X線撮影およびX線透視にそれぞれ適した管電流をX線管13に供給する。高電圧発生器11は、システム制御機能341による制御のもとで、X線撮影条件に従って、X線撮影およびX線透視各々にそれぞれ適した管電圧をX線管13に印加する。なお、高電圧発生器11による管電圧の印加は、時間的に連続してX線管13に管電圧を印加する方式でもよいし、高電圧のスイッチングによりパルス状の高電圧をX線管13に印加する方式(以下、高電圧パルス印加方式と呼ぶ)であってもよい。以下、高電圧発生器11は、高電圧パルス印加方式を用いて、X線透視を行うものとして説明する。
【0072】
X線管13は、高電圧発生器11から供給された管電流と、高電圧発生器11により印加された管電圧とに基づいて、X線の焦点(以下、管球焦点と呼ぶ)から、X線を発生する。管球焦点から発生されたX線は、X線絞り装置15により不要な領域のX線が遮蔽された状態で、被検体Pに照射される。X線の最大照射範囲131は、点線で示されている。本実施形態におけるX線管13は、回転陽極型のX線管であるとして説明する。なお、本実施形態におけるX線管13は、固定陽極型X線管などの他の型のX線管でもよい。X線管13は、高電圧のスイッチングによるパルス状の高電圧の印加に伴って、所定の時間間隔で離散したパルスX線を発生する。X線管13のX線放射窓には、管球焦点以外で発生した焦点外X線を遮断する鉛コーン(lead cone)が取り付けられる。
【0073】
X線絞り装置15は、X線管13のX線放射窓に隣接して、X線管13の前面に設けられる。X線絞り装置15は、管球焦点で発生したX線の照射範囲を限定する。なお、X線絞り装置15は、X線フィルタの他に各種フィルタ(線質調整フィルタ、付加フィルタ、線量低減フィルタなど)を有していてもよい。
【0074】
X線検出器17は、X線管13に対向し、X線管13から発生されたX線を検出する。X線検出器17は、例えば、フラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector:以下、FPDと呼ぶ)により構成される。FPDは、複数の半導体検出素子を有する。なお、X線検出器17として、イメージインテンシファイア(Imageintensifier)が用いられてもよい。X線の入射に伴って複数の半導体検出素子で発生された電気信号は、図示していないアナログディジタル変換器(Analog to Digital converter:以下、A/D変換器と呼ぶ)に出力される。A/D変換器は、電気信号をディジタルデータに変換する。A/D変換器は、ディジタルデータを、処理回路34に出力する。
【0075】
支持フレーム19は、X線管13とX線検出器17とを移動可能に支持する。具体的には、支持フレーム19は、Cアームである。Cアームは、X線管13とX線検出器17とを、互いに向き合うように搭載する。図示していない支柱は、CアームのC形状に沿う方向(以下、第1方向と呼ぶ)に、ガイドレールおよび直動軸受等を介して、Cアームをスライド可能に支持する。支柱は、検査室の床面に設けられる。支柱は、ベアリング等を介して、第1方向に直交する方向(以下、第2方向と呼ぶ)に回転可能にCアームを支持する。なお、支柱は、ベアリング等を介して、天板21の短軸方向(のX軸)と長軸方向(Y軸)とに平行移動可能に、Cアームを支持することも可能である。また、Cアームは、X線管13における管球焦点135とX線検出器17の中心との距離(線源受像面間距離(Source Image Distance:以下、SIDと呼ぶ))を変更可能に、例えばガイドレールおよび直動軸受等を介して、X線管13とX線検出器17とを支持する。
【0076】
なお、支持フレーム19として、Cアームの代わりに、Ωアームが用いられてもよいし、例えばX線管13およびX線検出器17をそれぞれ独立に支持する2つのアーム(例えばロボットアームなど)が用いられてもよい。また、支持フレーム19は、CアームとΩアームとによるバイプレーン構造などを有していてもよい。
【0077】
図示していない寝台は、被検体Pが載置される天板21(臥位テーブルとも言う)を移動可能に支持する。天板21には、被検体Pが載置される。
【0078】
図示していない駆動装置は、例えば、支持フレーム19と寝台とを駆動する。駆動装置は、例えば、モータと、モータで発生した力を駆動対象の各種ユニットに伝達する伝達機構(例えば、チェーンドライブ、ベルトドライブ、ボールねじなど)とを有する。駆動装置は、処理回路34から出力された制御信号に応じた駆動信号に従って、支持フレーム19を第1方向にスライド、第2方向に回転させる。なお、駆動装置は、システム制御機能341による制御のもとで、SIDを回転軸として、X線検出器17を回転させてもよい。
【0079】
駆動装置は、システム制御機能341による制御のもとで、天板21を駆動することにより、天板21を移動させる。これにより、X線透視時およびX線撮影時においては、X線管13とX線検出器17との間に、天板21に載置された被検体Pが配置される。具体的には、駆動装置は、処理回路34から出力された制御信号に基づいて、天板21の短軸方向(X軸方向)、および天板21の長軸方向(Y軸方向)に、ベアリング、ガイドレール、直動軸受等を介して天板21をスライドさせる。また、駆動装置は、鉛直方向(Z軸方向)に関して、ベアリング、ガイドレール、直動軸受等を介して天板21を昇降する。加えて、駆動装置は、長軸方向と短軸方向とのうち少なくとも一つの方向を回転軸として天板21を傾けるために、ベアリング、ガイドレール、直動軸受等を介して、天板21を回転してもよい。
【0080】
入力インターフェース31は、X線撮影条件、透視・撮影位置、X線の照射範囲(撮像視野)、X線画像における関心領域の位置および大きさなどを、操作者の指示により入力する。
【0081】
処理回路34は、本X線診断装置10における各種回路、駆動装置等を制御するための各種プログラムをメモリ33から読み出して、読み出したプログラムを実行することで、各種機能を実現する。処理回路34は、入力インターフェース31から送られてくる操作者の指示、撮影条件・透視条件などのX線撮影条件などの情報を、図示していなメモリに一時的に記憶する。処理回路34は、システム制御機能341により、メモリに記憶された操作者の指示、透視・撮影位置、X線撮影条件などに従って、X線撮影・X線透視(パルスX線撮影)を実行するために、高電圧発生器11、X線絞り装置15、駆動装置などを制御する。
【0082】
処理回路34は、画像生成機能34cにより、X線検出器17からの出力に基づいて投影画像を生成する。処理回路34は、投影画像にX線撮影条件を付帯させる。処理回路34は、発生した投影画像を、例えば、ディスプレイ32およびメモリ33等に出力する。また、処理回路34は、投影画像を、ネットワークを介して、画像保管装置20および医用画像処理装置30などの他の装置に転送する。
【0083】
以上が本実施形態におけるX線診断装置10の全体構成についての説明である。以下、本実施形態における処理回路34において実行される取得機能34aと、変形機能34bと、画像生成機能34cとに関する処理内容について、透視画像生成処理の手順とともに説明する。
【0084】
(透視画像生成処理)
図13は、透視画像生成処理の手順の一例を示すフローチャートである。
(ステップSc1)
処理回路34は、システム制御機能341により、被検体Pに対して透視撮影を実行する。処理回路34は、画像生成機能34cにより、透視撮影によりX線検出器17から出されたデータに対して後処理を実行し、投影画像を生成する。このとき、投影画像には、X線撮影条件が付帯される。
【0085】
(ステップSc2)
処理回路34は、取得機能34aにより、被検体Pの患者情報を用いて、被検体Pのボリュームデータを画像保管装置20などから取得する。処理回路34は、取得されたボリュームデータに付帯されたスキャン条件に基づいて第1体位を取得する。
【0086】
(ステップSc3)
処理回路34は、取得機能34aにより、X線撮影条件から、投影画像における被検体の体位(以下、第2体位と呼ぶ)を取得する。なお、X線撮影条件において被検体Pの体位が含まれていない場合、処理回路34は、X線撮影条件から撮影対象部位を抽出する。次いで、処理回路34は、体位対応表を用いて、撮影対象部位に対応する体位を、第2体位として決定する。これらの処理により、処理回路34は、第2体位を取得する。以下、説明を具体的にするために、第2体位は仰臥位かつ両上肢下垂であって、投影画像は被検体Pの心臓を撮影対象部位として有するものとする。
【0087】
処理回路34は、取得機能34aにより、既存の画像処理を用いて、ボリュームデータから複数の第1ランドマークを取得する。処理回路34は、既存の画像処理により、投影画像から複数の解剖学的標識点(以下、第2ランドマークと呼ぶ)を取得する。第2ランドマークは、投影画像に含まれる特徴的な局所構造を示す標認点に相当する。
【0088】
(ステップSc4)
処理回路34は、変形機能34bにより、第1ランドマークと第2ランドマークとの位置比較を実行し、ランドマーク間の差分を算出する。ランドマーク間の差分は、ボリュームデータと投影画像とにおいて、両上肢挙上と両上肢下垂とによる骨の位置の変化を示す変位に相当する。なお、ランドマーク間の差分は、ボリュームデータにおける臓器の位置および臓器の形の変化を示す変位を有していてもよい。
【0089】
(ステップSc5)
処理回路34は、変形機能34bにより、ランドマーク間の差分に基づいて、第1ランドマークを基準として、ボリュームデータを変形させた変形ボリュームを生成する。上記体位の例では、処理回路34は、両上肢挙上から両上肢下垂への体位の変化に応じた変位を用いて、ボリュームデータから変形ボリュームを生成する。
【0090】
(ステップSc6)
処理回路34は、画像生成機能34cによるセグメンテーション処理により、変形ボリュームから、第1ランドマークを含む骨領域と臓器領域とを抽出する。本ステップにおける処理内容はステップSa4と同様なため、説明は省略する。
【0091】
(ステップSc7)
処理回路34は、取得機能34aにより、投影画像における骨領域の画素値を用いて、投影画像における骨領域の透過度を取得する。具体的には、処理回路34は、投影画像に対するセグメンテーション処理により、投影画像から骨領域を抽出する。次いで、処理回路34は、骨領域に含まれる複数の画素値の代表値を透過度に変換する透過度変換処理を実行することにより、骨領域における透過度を決定する。代表値は、例えば、骨領域に含まれる複数の画素値の平均値、最頻値などである。透過度変換処理は、代表値に対する透過度の対応表、または代表値を透過度に変換する変換式を用いた処理である。これにより、処理回路34は、透視撮影に対応する透過度を決定する。最後に、処理回路34は、画像生成機能34cにより、変形ボリュームから抽出された骨領域の透過度を、透視撮影に対応する透過度に変更する。
【0092】
本ステップによる処理の後、処理回路34は、ステップSa6乃至ステップSa8の処理を実行することにより、透視画像を生成する。なお、処理回路34は、画像生成機能34cにより、第1ランドマークを有する骨領域(第1領域)の大きさが第2ランドマークを有する骨領域(第2領域)の大きさに一致するように透視画像を生成してもよい。このとき、投影画像における撮像視野(以下、FOV(Field Of View)と呼ぶ)と透視画像におけるFOVとは、同じ大きさとなる。例えば、処理回路34は、ステップSa6の処理において、投影画像におけるFOVと同じ大きさになるようにMIP処理を実行する。なお、処理回路34は、投影画像におけるFOVより大きなFOVとなるようにMIP処理を実行し、ステップSa8で生成された透視画像のFOVが投影画像におけるFOVに一致するように、透視画像をトリミングしてもよい。また、本実施形態における透視画像の生成において、第1の実施形態の変形例に記載の手法が用いられてもよい。
【0093】
処理回路34は、透視画像とともに投影画像をディスプレイ32に表示する。図14は、投影画像PIと透視画像生成処理において生成された透視画像FLIとを並列表示した一例を示す図である。このとき、操作者は、投影画像PIにおけるランドマークと透視画像FLIにおけるランドマークとの解剖学的な位置関係に基づいて、両者の画像を容易に比較することができる。なお、処理回路34は、画像生成機能34cにより、投影画像PIにおけるランドマークと透視画像FLIにおけるランドマークとを用いて、投影画像PIに透視画像FLIを重畳させてディスプレイ32に表示してもよいし、透視画像FLIに投影画像PIを重畳させてディスプレイ32に表示してもよい。
【0094】
以上に述べた構成および動作によれば、第1の実施形態の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
本実施形態におけるX線診断装置10によれば、第2モダリティによる被検体の撮影時における被検体の第2体位を取得し、第2モダリティによる被検体の撮影により生成された投影画像における複数の第2ランドマークと第1ランドマークとの位置比較により、ランドマーク間の差分を算出し、ランドマーク間の差分に基づいて変形ボリュームを生成することにより、透視画像を生成することができる。これにより、本医用画像処理装置30によれば、ボリュームデータの収集時における被検体Pの体位によらず、投影画像(アンギオ画像)により類似した透視画像を生成することができる。
【0095】
また、本X線診断装置10によれば、第1ランドマークを有する第1領域の大きさが第2ランドマークを有する第2領域の大きさに一致するように、透視画像を生成することができる。また、本X線診断装置10によれば、透視画像に投影画像を重畳させて表示することができる。これらにより、本医用画像処理装置30によれば、投影画像におけるFOVと同様なFOVを有する透視画像を生成することができ、血管造影に関する技師および医師に、解剖学的ランドマークを基準として直感的に把握しやすい透視画像を表示することができる。
【0096】
(変形例)
本変形例と第2の実施形態との相違は、ステップSa6におけるMIP処理に用いられる視線方向を決定することにある。図15は、MIP処理に用いられる視線方向の決定に関する処理の概要の一例を示す概要図である。
【0097】
処理回路34は、画像生成機能34cにより、投影画像における臓器領域と骨領域との相対的な位置関係に基づいて、第1投影方向と視点とを決定する。第1投影方向は、本X線診断装置10により被検体Pを撮影した撮影方向に対応する。視点は、管球焦点に対応する。処理回路34は、第1投影方向を基準として、複数の第2投影方向(1乃至n:nは自然数)を設定する。複数の第2投影方向は、第1投影方向を中心とした所定の立体角に含まれる異なる投影方向である。なお、複数の第2投影方向は、第1投影方向を有していてもよい。
【0098】
処理回路34は、画像生成機能34cにより、複数の第2投影方向各々と視点とを用いてボリュームデータBDに対してMIP処理を実行することにより、複数のMIP画像(SI1、・・・、SIm、・・・、SIn)を生成する。MIP画像SImは、第1投影方向に最も近い第2投影方向に対応する。例えば、MIP画像SI1およびMIP画像SInは、第1投影方向から-1°離れた方向、第1投影方向から+1°離れた方向に対応する。例えば、nが11であって、複数の第2投影方向が等角度ずつ離れている場合、SI6(m=6)は、第1投影方向に対応するMIP画像となる。処理回路34は、生成された複数の最大値投影画像(SI1、・・・、SIm、・・・、SIn)各々と投影画像PIとを比較することにより、複数の最大値投影画像のうち投影画像に最も整合する最大値投影画像(以下、最大整合画像と呼ぶ)を特定する。
【0099】
具体的には、処理回路34は、画像生成機能34cにより、複数のMIP画像各々における複数の第1ランドマーク(1LM1、・・・、1LMm、・・・、1LMn)と投影画像PIにおける複数の第2ランドマーク2LMとのマッチングにより、最大整合画像を特定する。図15における最大整合画像は、SImのMIP画像である。処理回路34は、特定された最大整合画像に対応する第2投影方向を特定する。処理回路34は、ステップSa6において、特定された最大整合画像に関する第2投影方向と視点とを用いたMIP処理により、骨MIP画像と臓器MIP画像とを生成する。なお、最大整合画像に対応する第2投影方向の特定は、上記処理に限定されない。
【0100】
以上に述べた構成および動作によれば、第1の実施形態および第2の実施形態の効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
本変形例におけるX線診断装置10によれば、投影画像における臓器領域と骨領域との相対的な位置関係に基づいて第1投影方向と視点とを決定し、第1投影方向を基準として複数の第2投影方向各々と視点とを用いてボリュームデータに対して最大値投影処理を実行することにより複数の最大値投影画像を生成し、複数の最大値投影画像各々と投影画像とを比較することにより、複数の最大値投影画像のうち投影画像に最も整合する最大値投影画像を特定し、特定された最大値投影画像に関する第2投影方向と視点とを用いて透視画像を生成することができる。これにより、本X線診断装置10によれば、投影画像により類似した透視画像を生成することができ、血管造影に関する技師および医師にとって直感的に見やすい透視画像を、提供することができる。
【0101】
なお、第2の実施形態および第2の実施形態の変形例に関する上記技術的思想は、画像保管装置20またはX線診断装置10から投影画像を取得機能34aにより取得することで、医用画像処理装置30および医用画像処理システム100において実現することができる。
【0102】
(第3の実施形態)
第1の実施形態および第2の実施形態との相違は、ボリュームデータの血管領域における流体解析により、血管領域における複数の位置にそれぞれ対応する複数の解析指標を算出し、算出された複数の解析指標のうち、被検体Pの血管内に挿入されたデバイスの先端位置における解析指標と、デバイスにより計測された血管の流体指標とを、透視画像に重畳させて表示することにある。以下、説明を具体的にするために、被検体Pの結果に挿入されたデバイスは、プレッシャワイヤであって、デバイスにより計測された血管の流体指標は、血流予備量比(Fractional Flow Reserve:FFRと呼ぶ)であるものとする。また、算出機能34eにより計算された解析指標は、FFRに相当する流体指標である。以下、説明を具体的にするために、プレッシャワイヤにより計測されたFFRを実測FFRと呼び、算出機能34eにより算出されたFFRを解析FFRと呼ぶ。
【0103】
図16は、本実施形態における医用画像処理システム100における医用画像処理装置30に搭載された処理回路34の構成の一例を示す図である。なお、図16に示す処理回路34は、X線診断装置などの医用画像診断装置10に搭載されてもよい。図16に示す処理回路34は、図1に示す処理回路34における各種機能に加えて、特定機能34dと算出機能34eとをさらに有する。特定機能34dを実現する処理回路34は、特定部の実現手段の一例である。算出機能34eを実現する処理回路34は、算出部の実現手段の一例である。
【0104】
図17は、解析FFRと実測FFRとを透視画像に重畳する処理(以下、流体指標重畳処理と呼ぶ)の手順の一例を示す図である。
【0105】
(流体指標重畳処理)
(ステップSd1)
処理回路34は、算出機能34eにより、被検体Pの血管(例えば、冠動脈)に挿入されたプレッシャワイヤを用いて、流体指標(実測FFR)を計測する。なお、実測FFRが予め計測され、投影画像に付帯されている場合、処理回路34は、取得機能34aにより、X線診断装置などの医用画像診断装置10または画像保管装置20から投影画像を読み出すとともに、投影画像から実測FFRを取得する。実測FFRの計測に関する投影画像は、被検体Pの血管における流体指標を計測するために血管内に挿入されたデバイス(プレッシャワイヤ)の先端部分を含むデバイス領域を有する。
【0106】
(ステップSd2)
処理回路34は、特定機能34dにより、第1ランドマークと第2ランドマークとの位置あわせを実行することにより、透視画像においてプレッシャワイヤの先端位置を特定する。具体的には、処理回路34は、まず、投影画像におけるプレッシャワイヤの先端部分の位置を示す先端位置を、セグメンテーション処理により特定する。
【0107】
図18は、投影画像PIにおけるプレッシャワイヤPWと実測FFRとの一例を示す図である。図18におけるTIPは、プレッシャワイヤPWの先端位置を示している。図18におけるFFR:0.6は、実測FFRの値を示している。
【0108】
次いで、処理回路34は、透視画像における第1ランドマークと、投影画像における第2ランドマークとを用いて、透視画像と投影画像との位置合わせを実行する。続いて、処理回路34は、位置合わせの結果と投影画像において特定された先端位置TIPとを用いて、透視画像における先端位置を特定する。
【0109】
(ステップSd3)
処理回路34は、算出機能34eにより、ボリュームデータの臓器領域における血管領域に対する流体解析を実行し、血管領域における複数の位置にそれぞれ対応する複数の解析指標(解析FFR)を算出する。流体解析は、例えば、計算流体力学によるシミュレーションに対応し、既存の方法で計算される。
【0110】
(ステップSd4)
ディスプレイ32は、複数の解析指標のうち先端位置における解析指標と、流体指標とを、透視画像に重畳させて表示する。具体的には、処理回路34は、特定機能34dにより、複数の解析FFRのうち先端位置に対応する解析FFRを特定する。次いで、処理回路34は、透視画像において、特定された解析FFRと指標と実測FFRとを透視画像に重畳する位置(以下、FFR重畳位置と呼ぶ)を決定する。FFR重畳位置は、例えば、先端位置の近傍であって、実測FFRに関する血管に重複しない位置である。ディスプレイ32は、制御機能による制御のもとで、透視画像におけるFFR重畳位置に、解析FFRと実測FFRとを重畳させて表示する。このとき、透視画像には、図10に示すように、デバイスとしてプレッシャワイヤのモデル(以下、ワイヤモデルと呼ぶ)が重畳されてもよい。
【0111】
図19は、解析FFRと実測FFRとワイヤモデルWMとが重畳された透視画像FLIの一例を示す図である。図19に示すように、透視画像FLIにおいて、先端位置TIPの近傍には、実測FFR(FFR:0.6)と、解析FFR(CT-FFR:0.62)とが表示される。
【0112】
以上に述べた構成および動作によれば、第1の実施形態および第2の実施形態における効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
本実施形態における医用画像処理装置30によれば、投影画像は被検体Pの血管における流体指標を計測するために血管内に挿入されたデバイスの先端部分を含むデバイス領域を有し、透視画像における第1ランドマークと投影画像における第2ランドマークとを用いて透視画像と投影画像との位置合わせを実行することにより、透視画像において先端部分の位置を示す先端位置を特定し、ボリュームデータの血管領域における流体解析により、流体指標に対応し血管領域における複数の位置にそれぞれ対応する複数の解析指標を算出し、複数の解析指標のうち先端位置における解析指標と流体指標とを、透視画像に重畳させて表示することができる。
【0113】
これにより、本医用画像処理装置30によれば、アンギオ画像に類似した透視画像の先端位置において、解剖学的ランドマークを基準として、操作者は実測された流体指標と算出された解析指標とをより容易に把握することができ、診断効率を向上させることができる。
【0114】
(第1の応用例)
本応用例は、血管領域においてデバイスを挿入可能な限界位置を特定し、特定された限界位置を透視画像に重畳させてディスプレイ32に表示することにある。
【0115】
入力インターフェース31は、操作者の指示により、透視画像の血管領域に対して、デバイスが血管に挿入される限界を示す位置(以下、限界位置と呼ぶ)を入力する。なお、限界位置の入力の代わりに、血管領域の下流の先端近傍などの位置(以下、指定位置と呼ぶ)が入力されてもよい。このとき、処理回路34は、特定機能34dにより、ボリュームデータの血管領域のうち、指定位置から境界位置までの経路(以下、指定経路と呼ぶ)に亘る血管径とデバイスの直径とに基づいて、指定経路における被検体Pの血管において限界位置を特定する。以下、説明を具体的にするために、デバイスは、プレッシャワイヤであるものとして説明する。
【0116】
ディスプレイ32は、入力された限界位置または特定された限界位置を透視画像に重畳させて表示する。図20は、透視画像FLIに限界位置LIPが重畳された一例を示す図である。なお、ディスプレイ32は、算出機能34eにより算出された複数の解析指標のうち、血管領域において限界位置より上流部分および限界位置における解析指標を、透視画像にさらに重畳させて表示してもよい。図21は、限界位置LIPを含む上流部分における複数の解析FFR(CT-FFR)と限界位置LIPとが透視画像FLIに重畳された一例を示す図である。図21に示すように、解析FFRは、解析FFRの値の大きさに対応する丸印の数で、限界位置LIPを含む血管の上流部分において透視画像FLIに重畳されて表示される。
【0117】
なお、透視画像FLIに重畳される解析FFRは、透視画像FLIにおいて、限界位置LIPを境界として複数の解析指標の表示態様を異ならせてディスプレイ32に表示されてもよい。図22は、透視画像FLIに重畳された限界位置LIPと解析FFR(CT-FFR)との一例を示す図である。図22に示すように、限界位置LIPより下流の位置における解析FFRは、限界位置LIPを境界として異なる表示態様(丸印と三角印)とで表されている。なお、異なる表示態様は、印の形状に限定されず、色相などであってもよい。
【0118】
また、解析FFRは、血管領域の複数の位置各々において、透視画像FLIに重畳されてもよい。図23は、臓器領域に隣接する血管領域の複数点各々の近傍に解析FFRを重畳した透視画像FLIの一例を示す図である。図23に示すように、透視画像FLIにおける血管領域において、算出された複数の解析FFRは、解析FFRの値に応じた丸印の数で透視画像FLIに重畳されてディスプレイ32に表示される。透視画像FLIにおける解析FFRの値を示す印(丸印および三角印)の位置は、図21乃至図23に示す位置に限定されず、例えば、入力インターフェース31を介した操作者の指示により、任意に設定可能である。
【0119】
なお、ディスプレイ32は、解析FFRが重畳された透視画像に、実測FFRが重畳された投影画像を重畳させて表示してもよい。また、ディスプレイ32は、実測FFRが重畳された投影画像に解析FFRが重畳された透視画像を重畳させて表示してもよい。また、ディスプレイ32は、実測FFRが重畳された投影画像と解析FFRが重畳された透視画像とを並列表示してもよい。このとき、ディスプレイ32は、実測FFRが重畳された投影画像PIと解析FFRが重畳された透視画像FLIとを、図14のように並列表示する。
【0120】
以上に述べた構成および動作によれば、第1乃至第3の実施形態における以下の効果を得ることができる。
本応用例における医用画像処理装置30によれば、血管領域における血管径とデバイスの直径とに基づいて、血管においてデバイスが挿入可能な限界位置LIPを特定し、限界位置LIPを透視画像FLIに重畳させて表示することができる。また、本医用画像処理装置30によれば、算出された複数の解析指標のうち、血管領域において限界位置LIPより上流部分における解析指標を、透視画像FLIに重畳させて表示することができる。また、本医用画像処理装置30によれば、透視画像FLIにおいて、限界位置LIPを境界として複数の解析指標の表示態様を異ならせて表示することができる。また、透視画像FLIに投影画像PIを重畳させて表示する、または流体指標が重畳された投影画像PIと複数の解析指標が重畳された透視画像FLIとを並列表示することができる。
【0121】
これらのことから、本医用画像処理装置30によれば、透視撮影に準拠した解剖学的ランドマークを有する透視画像に解析指標およびデバイスの限界挿入位置が重畳されるため、被検体Pに対する透視撮影のもとでの画像下治療(Interventional radiology:以下、IVRと呼ぶ)の実行の有無に対する医師の判断に寄与することができる。これにより、本医用画像処理装置30によれば、不要なIVRの実行を避けることができ、被検体Pに対する被爆の低減すること、および検査効率を向上させることができる。
【0122】
(第2の応用例)
本応用例は、透視画像における右冠動脈と左冠動脈とのうち選択されたいずれか一方の冠動脈に造影剤を流入させた計算結果を透視画像に重畳させて表示することにある。本応用例において、ボリュームデータは、被検体Pにおける右冠動脈および左冠動脈に対応する冠動脈領域を有する。なお、冠動脈領域における右冠動脈および左冠動脈各々は、特定機能34dにおけるセグメンテーション処理およびアトラスとの比較等により、透視画像において他の領域と弁別されて特定されてもよい。
【0123】
入力インターフェース31は、操作者に指示により、透視画像における右冠動脈と左冠動脈とのうちいずれか一方の冠動脈を選択する指示(以下、冠動脈選択指示と呼ぶ)を入力する。冠動脈選択指示の入力は、例えば、透視画像における冠動脈を指定することに相当する。なお、冠動脈選択指示として、透視画像における冠動脈の指定に限定されず、例えば、「左冠動脈」または「右冠動脈」などの冠動脈の名称が操作者により入力されてもよい。このとき、処理回路34は、特定機能34dにより、入力された冠動脈の名称に対応する冠動脈の領域を、透視画像において特定する。
【0124】
処理回路34は、算出機能34eにより、冠動脈選択指示に応じて、選択された冠動脈に造影剤を流入させた計算を実行する。この計算は、例えば、ボリュームデータを用いて冠動脈に造影剤を流入させた流体解析のシミュレーションに相当する。処理回路34は、画像生成機能34cにより、計算の結果すなわちシミュレーション結果を、透視画像に重畳させる。
【0125】
ディスプレイ32は、シミュレーション結果が重畳された透視画像を表示する。図24は、シミュレーション結果に対応する領域(以下、シミュレーション領域と呼ぶ)SRが重畳された透視画像FLIの一例を示す図である。図24に示すように、選択された一方の冠動脈に対するシミュレーション領域SRが重畳された透視画像FLIは、図18に示す投影画像PIに類似する画像としてディスプレイ32に表示される。
【0126】
以上に述べた構成および動作によれば、第1乃至第3の実施形態に加えて、以下の効果を得ることができる。
本応用例における医用画像処理装置30によれば、ボリュームデータは被検体Pにおける右冠動脈および左冠動脈に対応する冠動脈領域を有し、右冠動脈または左冠動脈に対する選択指示に応じて、選択された冠動脈に造影剤を流入させた計算を実行し、計算の結果を、透視画像に重畳させることができる。これにより、本医用画像処理装置30によれば、透視撮影に準拠した解剖学的ランドマークを有する透視画像に造影剤の流入よるシミュレーション結果が重畳されるため、医師等の操作者は、被検体Pに対する透視撮影下における造影剤の流入の状態を、透視撮影を行うことなく把握することができ、IVRの実行の有無に対する医師の判断に寄与することができる。これにより、本医用画像処理装置30によれば、不要なIVRの実行を避けることができ、被検体Pに対する被爆の低減すること、および検査効率を向上させることができる。
【0127】
以上に説明した実施形態、変形例、応用例等の医用画像処理装置30によれば、ボリュームデータに基づいて解剖学的な位置関係を容易に把握可能な画像を生成することができる。これにより、検査効率を向上させることができる。
【0128】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0129】
10…医用画像診断装置(X線診断装置)
11…高電圧発生器
13…X線管
15…X線絞り装置
17…X線検出器
19…支持フレーム
20…画像保管装置
21…天板
30…医用画像処理装置
31…入力インターフェース
32…ディスプレイ
33…メモリ
34…処理回路
34a…取得機能
34b…変形機能
34c…画像生成機能
34d…特定機能
34e…算出機能
100…医用画像処理システム
131…最大照射範囲
135…管球焦点
341…システム制御機能
1LM1、1LMm、1LMn…第1ランドマーク
2LM…第2ランドマーク
BD…ボリュームデータ
BMIP…骨MIP画像
BR…骨領域
CALME…石灰化領域
FLI…透視画像
LIP…限界位置
PI…投影画像
PLRE…プラーク領域
PR…配置経路
PW…プレッシャワイヤ
SR…シミュレーション領域
TIP…先端位置
TMIP…臓器MIP画像
Vcath…カテーテルモデル
WM…ワイヤモデル
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