(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
H01H 73/18 20060101AFI20221205BHJP
H01H 9/34 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
H01H73/18 Z
H01H9/34
(21)【出願番号】P 2018211081
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕明
(72)【発明者】
【氏名】山中 佑太
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-085366(JP,U)
【文献】特開平01-159926(JP,A)
【文献】実開平04-136842(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/268100(US,A1)
【文献】特開2016-033892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 73/18
H01H 9/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路遮断器であって、
固定接点が設けられ、基台
の取り付け部に取り付けられる固定接触子と、
前記固定接点と接触又は離隔するように動く可動接点が設けられた可動接触子と、
前記可動接点が前記固定接点と接触する導通状態と接触しない非導通状態との間を遷移するように、前記可動接触子を駆動する機構部と、を備え、
前記機構部は、前記可動接触子を保持するセパレータと、前記可動接点と前記固定接点との間に接点圧を発生させる接点圧スプリングと、を有し、
前記接点圧スプリングは、上端を前記可動接触子の下面に当接させ、且つ、下端を前記取り付け部に設けられた凹部内に差し込んだ状態で設置され、
更に、前記非導通状態において、前記固定接点と
前記接点圧スプリングとの間に介在する遮蔽部が設けられてい
て、
前記遮蔽部は、前記接点圧スプリング側から前記固定接点側へ向かうにつれて斜め上方へ傾斜する斜延伸部と、前記取り付け部と前記セパレータとに上下から挟まれた状態で、前記取り付け部上に配置される遮蔽取り付け部と、を有する回路遮断器。
【請求項2】
請求項1記載の回路遮断器であって、
前記遮蔽部の姿勢は、前記導通状態における前記固定接点と前記可動接点との接触を阻害しないように、前記導通状態と前記非導通状態とで変化する、回路遮断器。
【請求項3】
請求項
2記載の回路遮断器であって、
前記遮蔽部の姿勢は、前記可動接触子の駆動に連動して変化する、回路遮断器。
【請求項4】
請求項
3記載の回路遮断器であって、
前記遮蔽部の姿勢は、前記可動接触子が前記遮蔽部と接触することによって変化する、回路遮断器。
【請求項5】
請求項
4記載の回路遮断器であって、
前記遮蔽部は、前記可動接触子と接触し弾性変形することで姿勢が変化する、回路遮断器。
【請求項6】
請求項
5記載の回路遮断器であって、
前記遮蔽部は、前記固定接点側の端部が前記機構部側の端部よりも高くなるように傾斜している、回路遮断器。
【請求項7】
請求項
3記載の回路遮断器であって、
前記基台には、前記導通状態において前記遮蔽部を収容可能な逃がし部が設けられ、 前記遮蔽部は、前記可動接触子から前記逃がし部に向けて延びるように設けられている、回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器は、電気回路に過負荷電流や短絡電流が流れた場合に、回路を遮断するために用いられる機器である。下記特許文献1には、回路遮断の方法として、回路遮断器が、電源側に設けた固定接点と負荷側に設けた可動接点とを引き離すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
漏電等によって回路に短絡電流が流れた場合、固定接点と可動接点との接続部を大電流が流れる。回路遮断器は接点間の通電を停止するために、固定接点と可動接点とを引き離すように動作する。両接点が引き離される過程において、固定接点と可動接点との間の空気がアーク放電を行う。以降本明細書では、アーク放電を行っている気体を、アークガスと呼ぶ。
【0005】
アークガスは、高温高圧のプラズマ状態となっている。両接点間で発生したアークガスは回路遮断器内の部品に対して大きな熱量を与える。
【0006】
本開示は、短絡電流が流れた際に生じるアークガスによる熱影響を低減する回路遮断器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る回路遮断器は、固定接点が設けられ、基台の取り付け部に取り付けられる固定接触子と、固定接点と接触又は離隔するように動く可動接点が設けられた可動接触子と、可動接点が固定接点と接触する導通状態と接触しない非導通状態との間を遷移するように、可動接触子を駆動する機構部と、を備え、機構部は、可動接触子を保持するセパレータと、可動接点と固定接点との間に接点圧を発生させる接点圧スプリングと、を有し、接点圧スプリングは、上端を可動接触子の下面に当接させ、且つ、下端を取り付け部に設けられた凹部内に差し込んだ状態で設置される。回路遮断器には更に、非導通状態において、固定接点と接点圧スプリングとの間に介在する遮蔽部が設けられてれていて、遮蔽部は、接点圧スプリング側から固定接点側へ向かうにつれて斜め上方へ傾斜する斜延伸部と、取り付け部とセパレータとに上下から挟まれた状態で、取り付け部上に配置される遮蔽取り付け部と、を有する。
【0008】
回路遮断器には、非導通状態において、固定接点と機構部の少なくとも一部との間に遮蔽部が配置されている。導通状態において、回路遮断器に短絡電流が流れると、非導通状態となるように可動接触子が移動する。このとき、可動接点と固定接点との間からアークガスが発生する。発生したアークガスは放射状に拡散する。遮蔽部は、固定接点から機構部へと向かうアークガスを遮る位置に設けられているため、アークガスによる機構部への熱影響が抑制される。
【0010】
また、アークガスが発生する非導通状態において、固定接点と接点圧スプリングとの間に遮蔽部が介在するので、アークガスによる接点圧スプリングへの熱影響が抑制される。接点圧スプリングへの熱影響を抑制することで、接点圧スプリングが発生する接点圧の変動を抑制することができる。
【0011】
本開示において、遮蔽部の姿勢は、導通状態における固定接点と可動接点との接触を阻害しないように、導通状態と非導通状態とで変化することも好ましい。
【0012】
この好ましい態様において遮蔽部は、導通状態と非導通状態とで姿勢を変化するにあたって、非導通状態では機構部へのアークガスの熱影響を抑制する姿勢となる一方で、導通状態では固定接点と可動接点との接触を阻害する姿勢となる。遮蔽部のこのような姿勢変化により、アークガスによる熱影響の抑制と導通性の確保とを両立させることができる。
【0013】
本開示において、遮蔽部の姿勢は、可動接触子の駆動に連動して変化することも好ましい。
【0014】
可動接触子が駆動されることで導通状態と非導通状態とを遷移するところ、この好ましい態様では、可動接触子の駆動に連動して遮蔽部の姿勢が変化するので、導通の状態変化に応じた遮蔽部の姿勢変化を実現することができる。
【0015】
本開示において、遮蔽部の姿勢は、可動接触子が遮蔽部と接触することによって変化することも好ましい。
【0016】
この好ましい態様では、可動接点が固定接点と接触する導通状態と接触しない非導通状態との間を遷移するように駆動される可動接触子の動きに連動して遮蔽部の姿勢を変化させることができ、可動接触子の駆動に連動した遮蔽部の姿勢変化を簡便な構成で実現することができる。
【0017】
本開示において、遮蔽部は、可動接触子と接触し弾性変形することで姿勢が変化することも好ましい。
【0018】
この好ましい態様では、可動接触子と接触して弾性変形した遮蔽部は、可動接触子が駆動されることで原形に復旧することができるので、姿勢変化させるための別途手段を設けることなく、可動接触子との接触という簡便な手段で姿勢変化を実現することができる。
【0019】
本開示において、遮蔽部は、固定接点側の端部が機構部側の端部よりも高くなるように傾斜していることも好ましい。
【0020】
この好ましい態様では、固定接点側の端部が機構部側の端部よりも高くなっているので、固定接点側で発生したアークガスによって固定接点側の端部が持ち上げられるように変形する。このような変形を生じさせることにより、アークガスが発生した場合でも確実に機構部側への熱影響を低減することができる。
【0021】
本開示において、基台には、導通状態において遮蔽部を収容可能な逃がし部が設けられ、遮蔽部は、可動接触子から逃がし部に向けて延びるように設けられている、ことも好ましい。
【0022】
この好ましい態様では、遮蔽部を収容可能な逃がし部に向けて、遮蔽部が可動接触子から延びるように設けられているので、可動接触子が導通状態になるように駆動されると遮蔽部はその動きに伴って姿勢変化し、一部が逃がし部に収容される。逃がし部に収容されない遮蔽部の残りの部分は、可動接点が接触している固定接点と機構部との間に配置されることになり、可動接点が固定接点から離れる際に確実に固定接点と機構部との間に位置することができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、短絡電流が流れた際に生じるアークガスによる熱影響を低減する回路遮断器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る回路遮断器が非導通状態の場合の断面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る回路遮断器が導通状態の場合の断面図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る回路遮断器が非導通状態の場合における可動接触子周辺の断面図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る回路遮断器が導通状態における可動接触子周辺の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0026】
第1実施形態に係る回路遮断器について説明する。
図1を参照しながら、本実施形態である回路遮断器10の構成について説明する。回路遮断器10は、ハウジング20、電源側端子金具30、負荷側端子金具40、可動接触子50、セパレータ60、接点圧スプリング64、ハンドル70、遮蔽部80、及び磁気式引き外し装置90を備えている。
【0027】
ハウジング20は、基台21と、カバー22と、を備えている。基台21とカバー22とが組み立てられることで、内部空間が設けられたハウジング20が形成される。基台21には、電源側端子金具30、負荷側端子金具40、可動接触子50、セパレータ60、接点圧スプリング64、ハンドル70、遮蔽部80、及び磁気式引き外し装置90が各組付位置に組み付けられている。カバー22は、基台21に組付けられ、基台21に設けられた各種部品を外部環境から保護する。
【0028】
ハウジング20は、第1壁部201と、第2壁部202と、第3壁部203と、第4壁部204と、を備えている。第1壁部201と第2壁部202とは、互いに対向するように配置されている。第3壁部203と第4壁部204とは、互いに対向するように配置されている。
【0029】
回路遮断器10が分電盤のベース板といった取り付け部分に取り付けられた場合に、第1壁部201は電路の電源側に配置され、第2壁部202は電路の負荷側に配置され、第4壁部204はベース板側に配置される。第3壁部203及び第4壁部204は、第1壁部201と第2壁部202とを繋ぐように設けられている。
【0030】
電源側端子金具30は、電路の電源側配線(不図示)が繋がれる端子金具である。負荷側端子金具40は、電路の負荷側配線(不図示)が繋がれる端子金具である。電源側端子金具30及び負荷側端子金具40は、それぞれハウジング20の電源側端部及び負荷側端部において露出するように設けられている。
【0031】
電源側端子金具30は、電源側端子座31と、固定接触子32と、接続部分33と、を備えている。電源側端子座31は、電源側配線と繋がる座部分を構成している。固定接触子32は、可動接触子50との接点となる固定接触子部分を構成する。接続部分33は、電源側端子座31と固定接触子32とを接続する部分である。固定接触子32は、基台21の取り付け部211に取り付けられている。電源側端子座31、固定接触子32、及び接続部分33は、例えば導電性の板状の金属部材により一体的に形成されている。
【0032】
電源側端子金具30は、ハウジング20の第1壁部201からハウジング20の内部に向かうように配置される。固定接触子32には、固定接点321が設けられる。
【0033】
負荷側端子金具40は、負荷側端子座41を有する。負荷側端子金具40は、ハウジング20の第2壁部202からハウジング20の内部に向かうように配置される。負荷側端子座41は、第2壁部202において外部に露出するように、負荷側端子金具40の一端部に設けられる。負荷側端子座41には負荷側配線(不図示)が接続される。
【0034】
回路遮断器10は、電源側端子座31と負荷側端子座41とが、電気的に接続されている状態と、電気的に遮断されている状態とを切り替えることにより、電源側配線と負荷側配線との電気的な接続を切り替えることの可能な装置である。
【0035】
可動接触子50は、可動接点51と突出部52とを有する。可動接触子50は、後述するセパレータ60によって保持された状態で、回路遮断器10内部に配置される。可動接点51は、固定接点321と対向可能に、可動接触子50の電源側端子座31側に設けられる。突出部52は、可動接触子50が取り付け部211と対向する面から取り付け部211へ向かうように設けられる。突出部52は、電源側端子座31よりは負荷側端子座41側に位置するように設けられる。
【0036】
セパレータ60は、先端部61、軸部62、及び内壁面63を有する。セパレータ60は、回路遮断器10の内部に組み付けられている。先端部61は、後述する押圧部材71と当接するように形成されている。軸部62は、セパレータ60がハウジング20に支持されるように、セパレータ60の一端部に設けられる。セパレータ60は、軸部62の中心軸である回転軸mを中心に回転可能である。内壁面63は、可動接触子50と当接するように形成されている。
【0037】
接点圧スプリング64が、取り付け部211と可動接触子50との間に配置されている。接点圧スプリング64は、突出部52に対して嵌め合わされている。接点圧スプリング64は圧縮された状態に保たれている。接点圧スプリング64が可動接触子50を内壁面63に対して押し付けることで、可動接触子50はセパレータ60に保持される。本実施形態では、セパレータ60及び接点圧スプリング64が機構部に相当する。
【0038】
ハンドル70は、ハウジング20の第3壁部203から突出するように設けられる。押圧部材71は、先端部61に当接するように配置されている。ハンドル70の移動によって、ハウジング20内部のリンク機構(不図示)が押圧部材71を駆動する。押圧部材71は、セパレータ60を押し付けつつ移動することで、可動接触子50を駆動する。押圧部材71は、非導通状態から導通状態へ遷移した場合、ハウジング20内部のリンク機構によって、移動が制限されたロック状態となる。
【0039】
遮蔽部80は、斜延伸部81と取り付け部82とを有している。遮蔽部80は、絶縁性を有する材料からなる。遮蔽部80は、取り付け部211とセパレータ60とに挟まれて、取り付け部211上に配置される。
【0040】
斜延伸部81は、固定接点321側の端部811を有している。斜延伸部81は、端部811が高くなり、取り付け部82側が低くなるように傾斜して配置されている。取り付け部82は、遮蔽部80の負荷側端子座41側に設けられている。取り付け部82において、遮蔽部80は、セパレータ60と取り付け部211とに挟まれる。遮蔽部80は、弾性変形を行い、主に斜延伸部81の姿勢が変化する。
【0041】
磁気式引き外し装置90は、電磁コイル91、可動磁気片92、オイルダッシュポット93、継鉄94、スプリング95、及び掛合片96を有する。磁気式引き外し装置90は、ハウジング20内部に収容される。
【0042】
電磁コイル91は、可動接触子50と負荷側端子座41との間に配置されている。電磁コイル91は、配線(不図示)を通して、可動接触子50と電気的に接続されている。電磁コイル91は、可動接触子50から負荷側端子座41に流れる電流に基づいて磁気を形成する。
【0043】
可動磁気片92は、一辺920と他辺921を有する。可動磁気片92は、後述する継鉄94によって、ハウジング20内部に保持される。一辺920は、電磁コイル91と第3壁部203との間に配置される。一辺920と他辺921は角部922によって、機械的に接続されている。他辺921は角部922から、第1壁部201に沿って基台21側へ延びている。
【0044】
オイルダッシュポット93は端面930を有する。オイルダッシュポット93は、電磁コイル91が作る内側面に沿うように、電磁コイル91に挿入される。オイルダッシュポット93は、後述する継鉄94によって、ハウジング20に固定されている。オイルダッシュポット93内部には、オイルと、オイルダッシュポット93内部を移動可能な鉄心とが収容されている。オイルダッシュポット93の端面930は、一辺920に対向している。
【0045】
継鉄94は、一端がハウジング20の第3壁部203側の内壁面に取り付けられている。継鉄94は、この取り付け位置からオイルダッシュポット93に沿って、ハウジング20の内部に延びている。継鉄94は、可動磁気片92を、角部922を軸として回転運動が可能な状態に支持している。継鉄の他端部は、負荷側端子座41側に折り曲げられている。継鉄94は、他端部に、オイルダッシュポット93を保持する。
【0046】
スプリング95は、他辺921と第3壁部203との間に配置される。スプリング95は、一辺920が端面930から離れるように、他辺921に弾性力を加える。また、スプリング95は、他辺921を掛合片96から離れた位置で保持している。
【0047】
掛合片96は、可動磁気片92と押圧部材71の間に配置されている。掛合片96は、他辺921によって押されることで変位可能である。掛合片96が変位すると、押圧部材71がロック状態にある場合、ロック状態を解除することができる。
【0048】
続いて、
図1及び
図2を参照して、回路遮断器10の動作について説明する。
図1は、回路遮断器10が非導通状態の場合の断面図である。
図2は、回路遮断器10が導通状態の場合の断面図である。回路遮断器10が、非導通状態から導通状態を経て、再び非導通状態になるまでの動作について説明する。
【0049】
図1を参照して、非導通状態及び非導通状態から導通状態への遷移について説明する。
図1に示すように、非導通状態では、セパレータ60が、固定接点321と可動接点51とが接触しないように、可動接触子50を保持している。セパレータ60には、接点圧スプリング64による弾性力によって、矢印c2で示される方向の力が働いている。
【0050】
ハンドル70が操作されることによって、押圧部材71が基台21側に変位する。押圧部材71の変位により、先端部61が基台21側に押圧される。接点圧スプリング64の弾性力に抗するように先端部61が押圧されることで、セパレータ60は、矢印c1で示される方向に、回転軸mを中心に回転運動を行う。
【0051】
セパレータ60の回転運動により、可動接触子50は、可動接点51が固定接点321に接触するように回転運動を行う。接点圧スプリング64は、可動接触子50の回転運動によって、圧縮される。
【0052】
可動接触子50が接点圧スプリング64を圧縮するように回転運動すると、可動接触子50は遮蔽部80に接近し、遮蔽部80と接触しながら移動する。可動接触子50は、端部811を押圧するように移動する。端部811が押圧されると、遮蔽部80が弾性変形を行う。遮蔽部80の弾性変形によって、斜延伸部81の姿勢は、取り付け部211に対して平行に近い姿勢となるように変化する。斜延伸部81は、可動接触子50の移動に応じて姿勢を変化するため、可動接点51と固定接点321との接触を妨げることがない。
【0053】
可動接点51が固定接点321に接触することで、回路遮断器10は非導通状態から導通状態へ遷移する。
【0054】
図2を参照して、導通状態について説明する。ハンドル70が
図2に示される位置まで操作されると、押圧部材71が
図2に示される位置に保持される。押圧部材71はロック状態となる。これにより、導通状態が保持される。すなわち、電源側端子座31及び負荷側端子座41の間の電路が接続された状態となる。
【0055】
接点圧スプリング64は、可動接触子50による圧縮状態が保持されている。圧縮された接点圧スプリング64は、可動接点51を固定接点321に押し付ける接点圧を発生させる。
【0056】
斜延伸部81は、可動接点51と固定接点321との接触を妨げない位置にある。斜延伸部81は、端部811にて、可動接触子50を押圧している。
【0057】
導通状態から非導通状態へ遷移する動作について述べる。ここでは、配線の短絡によって回路遮断器10に大電流である短絡電流が流れる場合を想定する。短絡電流が流れると、電路を遮断するように、磁気式引き外し装置90が作動する。
【0058】
短絡による過電流が流れた場合、電磁コイル91が強い磁界を瞬時に発生する。電磁コイル91が強い磁界を生じさせることで、オイルダッシュポット93の端面930に磁力が発生する。端面930が生じる磁力によって、可動磁気片92の一辺920が端面930へ吸引される。
【0059】
一辺920が端面930へ近づくと、可動磁気片92が角部922を軸として回転運動を行う。回転運動によって、他辺921が掛合片96へと移動する。他辺921の移動によって、他辺921が掛合片96と接触する。掛合片96は他辺921によって押圧され、変位する。掛合片96が変位すると、押圧部材71のロック状態が解除される。ロック状態が解除された押圧部材71は、第3壁部203側へ移動可能となる。
【0060】
押圧部材71が移動可能となるため、セパレータ60が、接点圧スプリング64による弾性力を受けて、回転運動を行う。セパレータ60は、固定接点321と可動接点51を引き離すように可動接触子50を駆動する。
【0061】
固定接点321と可動接点51が引き離されるとき、固定接点321と可動接点51との間の空気がアーク放電を行い、アークガスが発生する。
【0062】
斜延伸部81は、遮蔽部80の弾性変形に起因する復元力を受けている。斜延伸部81は、可動接触子50が固定接点321と可動接点51を引き離すように駆動されると、可動接点51の移動に追従して姿勢を変化する。斜延伸部81は、固定接点321と可動接点51が離れた時、すなわち、アークガスの発生開始時から姿勢変化を開始する。
【0063】
斜延伸部81の姿勢は、取り付け部211に対して平行に近い姿勢から、取り付け部211に対する傾斜が増加するように変化する。このように変化することで、姿勢変化の過程において、斜延伸部81は、固定接点321と接点圧スプリング64との間に介在しつつ姿勢を変化する。
【0064】
アークガスはハウジング20の内部に放射状に拡散する。発生したアークガスのうち、接点圧スプリング64の方に向かうものは、固定接点321と接点圧スプリング64との間に介在する斜延伸部81によって遮られる。したがって、接点圧スプリング64に到達するアークガスが減少する。
【0065】
回路が遮断されると、電磁コイル91に電流が流れなくなるため、電磁コイル91によって発生した磁力も消失する。磁力の消失によって、可動磁気片92、オイルダッシュポット93、スプリング95、及び掛合片96は
図1に示す状態となる。
【0066】
押圧部材71が、
図1に示される位置まで移動し、第3壁部203側への移動が停止すると、セパレータ60、可動接触子50、遮蔽部80の移動もしくは姿勢変化が停止する。導通状態から非導通状態へ遷移した後のセパレータ60、可動接触子50、及び遮蔽部80は
図1に示す状態になる。また、ハンドル70は、ロック状態が解除されて、
図1に示す状態になる。
【0067】
第1実施形態に係る回路遮断器10では、可動接触子50と基台21との間に設けられ、可動接点51と固定接点321との間に接点圧を発生させる接点圧スプリング64が機構部として設けられ、斜延伸部81を有する遮蔽部80が、固定接点321と接点圧スプリング64との間に斜延伸部81が介在するように配置される。
【0068】
斜延伸部81によって、固定接点321から接点圧スプリング64へと向かうアークガスを遮ることができる。アークガスによる接点圧スプリング64の劣化を抑制できるため、接点圧を十分に発生できないことによる回路遮断器10の導通不良を抑制できる。
【0069】
第1実施形態に係る回路遮断器10では、斜延伸部81の姿勢は、導通状態における固定接点321と可動接点51との接触を阻害しないように、導通状態と非導通状態とで変化する。これにより、斜延伸部81が遮蔽機能を確保しつつも、回路遮断器10の機能を損なわずに、アークガスの遮蔽を行うことができる。
【0070】
第1実施形態に係る回路遮断器10では、斜延伸部81の姿勢は、可動接触子50の駆動に連動して変化する。これにより、斜延伸部81の姿勢を、可動接触子50の駆動による導通状態と非導通状態の切り替えに対して適切に変化させることができる。
【0071】
第1実施形態に係る回路遮断器10では、斜延伸部81の姿勢は、可動接触子50が斜延伸部81と接触することによって変化する。これにより、非導通状態から導通状態へ遷移する時、可動接触子50が、可動接点51と固定接点321とが接触する方向に駆動される。可動接触子50は、斜延伸部81を押し付けながら移動する。よって、斜延伸部81の姿勢を変化させるための機構を新たに導入することなく、斜延伸部81の姿勢を変化させることができる。
【0072】
第1実施形態に係る回路遮断器10では、斜延伸部81を含む遮蔽部80は、可動接触子50と接触することで弾性変形し、斜延伸部81を含む遮蔽部80の姿勢は、弾性力により変化する。
【0073】
これにより、導通状態から非導通状態へと遷移すると、斜延伸部81を含む遮蔽部80は、弾性変形に起因する復元力を受ける。斜延伸部81は可動接触子50の移動に応じて、固定接点321と接点圧スプリング64との間に介在し、アークガスを遮るように姿勢を変化することができる。よって、アークガスによる熱の接点圧スプリング64への伝達が抑制される。
【0074】
第1実施形態に係る回路遮断器10では、斜延伸部81は、固定接点321側の端部811が高くなり、取り付け部82側が低くなるように傾斜している。これにより、斜延伸部81はアークガスによる圧力を受けて端部811側が持ち上げられたとしても、アークガスの遮蔽状態を維持することができる。
【0075】
次に、第2実施形態に係る回路遮断器について
図3、
図4を参照して説明する。第2実施形態に係る回路遮断器の構成のうち、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0076】
第2実施形態に係る回路遮断器では、
図3に示す遮蔽部80Aを備えること、及び取り付け部211Aに逃がし部212Aが設けられていることが第1実施形態に係る回路遮断器10との相違点である。逃がし部212Aは、取り付け部211Aの一部を切り欠くことによって形成されている。
【0077】
図3に示す非導通状態において、可動接触子50、セパレータ60、接点圧スプリング64、押圧部材71は第1実施形態と同様の状態となっている。
【0078】
遮蔽部80Aは、斜延伸部81Aと取り付け部82Aとを有する。遮蔽部80Aは絶縁性を有する材料からなる。遮蔽部80Aは、可動接触子50と取り付け部211Aとの間に配置される。取り付け部82Aは、可動接触子50の取り付け部211A側の面に沿って配置される。取り付け部82Aは、突出部52と干渉しないように形成されている。斜延伸部81Aは、固定接点321と接点圧スプリング64との間に配置される。斜延伸部81Aは、取り付け部82Aから固定接点321側へ延びるように形成されている。
【0079】
続いて、第2実施形態に係る回路遮断器の動作について説明する。まず、
図3の非導通状態から
図4の導通状態への遷移について説明する。
【0080】
ハンドル操作によって、押圧部材71が取り付け部211A側へ移動すると、セパレータ60及び可動接触子50が、可動接点51と固定接点321が接触するように回転運動を行う。
【0081】
セパレータ60及び可動接触子50の移動によって、遮蔽部80Aも回転運動を行う。斜延伸部81Aは、
図3における姿勢から、
図4における姿勢となるように、可動接触子50の移動に応じて、回転運動を行い、姿勢を変化する。このとき斜延伸部81Aは、可動接触子50に対する相対的な姿勢が保たれている。
【0082】
姿勢変化時に、斜延伸部81Aの一部は、逃がし部212Aに収容されるように姿勢を変化する。このため、斜延伸部81Aは取り付け部211Aと接触することがない。
【0083】
固定接点321と可動接点51が接触し、押圧部材71がロック状態となることで、非導通状態から導通状態への遷移が終了する。
【0084】
続いて、
図4の導通状態から
図3の非導通状態へ遷移する時の動作について説明する。短絡電流が流れた場合、回路遮断器が、固定接点321と可動接点51を引き離すような動作を行う。導通状態から非導通状態へ遷移するとき、可動接触子50及びセパレータ60は固定接点321と可動接点51を引き離す動作を行う。このとき、固定接点321と可動接点51の間にアークガスが発生する。
【0085】
可動接触子50及びセパレータ60の移動に伴って、遮蔽部80Aの姿勢が変化する。斜延伸部81Aは、回転運動を行い、その姿勢が変化する。具体的には、逃がし部212Aに収容されていた部分が、固定接点321と接点圧スプリング64の間に介在する状態となるように、姿勢が変化する。斜延伸部81Aは、可動接触子50に対する相対的な姿勢が保たれている。
【0086】
アークガスはハウジング20の内部に放射状に拡散する。発生したアークガスのうち、接点圧スプリング64の方に向かうものは、固定接点321と接点圧スプリング64との間に介在する斜延伸部81Aによって遮られる。したがって、接点圧スプリング64に到達するアークガスが減少する。
【0087】
押圧部材71が
図3に示される位置まで移動し、押圧部材71の移動が停止すると、セパレータ60、可動接触子50、遮蔽部80Aの移動及び姿勢変化が停止する。導通状態から非導通状態へ遷移した後のセパレータ60、可動接触子50、及び遮蔽部80Aは
図3に示す状態になる。
【0088】
第2実施形態に係る回路遮断器では、導通状態において斜延伸部81Aを収容可能な逃がし部212Aが設けられている。これにより、斜延伸部81Aの遮蔽能力は確保されつつも、斜延伸部81Aは取り付け部211Aと接触することがない。斜延伸部81Aによっては可動接触子50の移動は妨げられないため、固定接点321と可動接点51との接触が妨げられないように、斜延伸部81Aの姿勢を変化させることができる。
【0089】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0090】
10:回路遮断器
21:基台
32:固定接触子
50:可動接触子
64:接点圧スプリング
80:遮蔽部