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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】路面管理システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
E02F9/20 N
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018215633
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020084431
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】石本 英史
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-190134(JP,A)
【文献】特開2016-139412(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180136(WO,A1)
【文献】特開2019-152580(JP,A)
【文献】特開2016-024685(JP,A)
【文献】国際公開第2013/153863(WO,A1)
【文献】特開2002-243535(JP,A)
【文献】特開2010-242345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱山内の予め定められた走行経路に沿って走行する少なくとも一つの作業機械と、前記走行経路の路面状態を管理する路面管理サーバとを無線通信接続して構成された路面管理システムであって、
前記作業機械は、
前記作業機械が路面と接地する接地点よりも後方の路面状態を検出し、路面センサ情報を出力する路面センサと、
前記作業機械の位置を検出し、位置情報を出力する位置検出センサと、
前記路面管理サーバとの間で無線通信を行う端末側無線通信装置と、
第1プロセッサ及びクロックを内蔵した車載端末装置と、を備え、
前記車載端末装置は、
前記路面センサ、前記位置検出センサ、及び前記端末側無線通信装置の其々に接続され、
前記第1プロセッサは、前記路面センサが前記走行経路上の一つの地点の路面状態を検出して出力した前記路面センサ情報を取得すると、前記路面センサ情報を取得した時刻を前記クロックから取得して計測時刻を決定し、当該計測時刻と同一とみなせる時間範囲内に前記位置検出センサから取得した前記位置情報を選択し、前記路面センサ情報に前記計測時刻及び前記位置情報を付加して路面状態情報を生成して前記端末側無線通信装置を介して前記路面管理サーバに出力し、
前記作業機械が前記走行経路に沿って走行中に、前記路面センサが前記走行経路上の前記一つの地点とは異なる地点の路面状態を検出して出力した新たな路面センサ情報を取得すると、当該新たな路面センサ情報基づいて新たな前記路面状態情報を生成して前記端末側無線通信装置を介して前記路面管理サーバに送信し、
前記路面管理サーバは、第2プロセッサ及びストレージを含んで構成されると共に、前記車載端末装置との間で無線通信を行うサーバ側無線通信装置及び外部出力機器の其々に接続され、
前記ストレージは、前記サーバ側無線通信装置を介して前記車載端末装置から受信した複数の前記路面状態情報を蓄積記録し、
前記第2プロセッサは、前記ストレージから前記複数の路面状態情報を抽出し、抽出された複数の路面状態情報の其々に含まれる前記路面センサ情報を前記走行経路の路面に対して土埃抑制作業が必要であるか否かを判定するための土埃抑制作業判定閾値と比較し、前記走行経路の一部領域に含まれる複数地点において土埃抑制作業が必要であると判定した場合には前記走行経路の一部領域の路面に対する前記土埃抑制作業の実行指示信号を前記外部出力機器に出力する、
ことを特徴とする路面管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の路面管理システムにおいて、
前記第2プロセッサは、前記土埃抑制作業が実行された前記走行経路の一部領域を示す実行済信号を取得した後、更に前記作業機械から新たな路面状態情報を取得すると、前記新たな路面状態情報に含まれる位置情報が示す地点が前記一部領域に含まれるかを判定し、含まれる場合は、前記新たな路面状態情報に含まれる前記路面センサ情報に基づいて路面状態が回復したかを判定し、回復していないと判定した場合には、更なる実行指示信号を前記外部出力機器に対して出力する、
ことを特徴とする路面管理システム。
【請求項3】
請求項2に記載の路面管理システムにおいて、
前記外部出力機器は、前記サーバ側無線通信装置であり、
前記サーバ側無線通信装置は、前記土埃抑制作業を実行する散水車又はグレーダに対して前記実行指示信号を送信し、前記散水車又は前記グレーダから前記実行済信号を受信す
る、
ことを特徴とする路面管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の路面管理システムにおいて、
前記ストレージは、前記走行経路の部分区間を固有に示すエリア識別情報、当該部分区間の位置を示す位置情報、当該部分区間が往路又は復路のどちらに該当するかを示す往路復路特定情報、及び当該部分区間内で計測された路面センサ情報に基づく路面状態情報の其々を関連付けて蓄積記録する路面管理テーブルを記憶し、
前記第2プロセッサは、前記路面管理テーブルから複数の路面状態情報を抽出し、抽出された複数の路面状態情報の其々に含まれる前記路面センサ情報を比較した結果に基づいて、前記抽出された複数の路面状態情報に関連付けられた前記走行経路の部分区間に対して前記土埃抑制作業が必要であるか否かを判定し、必要があると判定した場合は、必要があると判定された前記走行経路の部分区間のエリア識別情報及び位置情報の少なくとも一つ、及び前記往路復路特定情報を含む前記実行指示信号を生成する、
ことを特徴とする路面管理システム。
【請求項5】
請求項1に記載の路面管理システムにおいて、
前記作業機械は、駆動輪と、前記駆動輪上に搭載された車体フレームと、前記車体フレームに設置され、前記駆動輪が路面に接地する車輪接地点よりも後ろの路面状態を検出する路面センサと、を備えたダンプトラックである、
ことを特徴とする路面管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路面管理システムに係り、特に鉱山で稼働するダンプトラック等の作業機械が走行する路面が、土埃が発生しやすい状態であるかを判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山では、ダンプトラック、散水車、ホイールローダ等の作業機械が走行すると、路面が車輪で削られ土埃が発生する。土埃は作業機械を運転するオペレータの視界を遮ったり、作業機械に搭載される外界センサの認識性能を劣化させたりする。
【0003】
そこで土埃が外界センサに与える影響を軽減するための技術として、特許文献1には「画像データの各画素の中から塵埃を特定するための輝度値よりも高い輝度値の画素を高輝度画素として検出し、画像データの1つの画素を中心画素として、その周囲の画素との間の輝度値の差異が地面のエッジとして検出される輝度値の差異よりも低い前記中心画素を非エッジ画素として検出し、高輝度画素と非エッジ画素とが重複している重複画素を検出し、重複画素により形成される領域を重複画素領域として、重複画素領域が塵埃と特定するための領域以上の大きさのときに重複画素領域を塵埃領域として生成し、画像データに対して塵埃領域を特定するように描画した画面を作成する(要約抜粋)」構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/153863号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダンプトラックの運搬作業を止めると鉱山自体の生産性の低下につながるので、なるべくダンプトラックの運搬作業を妨げないように土埃抑制作業を行う散水車やグレーダの割り込み運転の回数を減らしたいという鉱山特有の要望がある。一方、走行経路の路面状態は、勾配やカーブの手前など、ブレーキを多用する箇所と通常走行する箇所とでは土埃の発生しやすさが異なり、局地的な箇所で土埃の発生度を観測すると、散水車やグレーダの割り込み運転の回数が増えすぎる可能性がある。よって、土埃抑制作業をさせるか否かを判断するにあたっては、走行経路上の適度な広がりを持つ領域で判断を行った方が、割り込み運転の回数が減らせる可能性がある。
【0006】
特許文献1では、単に土埃による視界不良を軽減することしか考慮されておらず、上記した鉱山特有の要望に応えることはできない。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、鉱山に適した路面管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、鉱山内の予め定められた走行経路に沿って走行する少なくとも一つの作業機械と、前記走行経路の路面状態を管理する路面管理サーバとを無線通信接続して構成された路面管理システムであって、前記作業機械は、前記作業機械が路面と接地する接地点よりも後方の路面状態を検出し、路面センサ情報を出力する路面センサと、前記作業機械の位置を検出し、位置情報を出力する位置検出センサと、前記路面管理サーバとの間で無線通信を行う端末側無線通信装置と、第1プロセッサ及びクロックを内蔵した車載端末装置と、を備え、前記車載端末装置は、前記路面センサ、前記位置検出センサ、及び前記端末側無線通信装置の其々に接続され、前記第1プロセッサは、前記路面センサが前記走行経路上の一つの地点の路面状態を検出して出力した前記路面センサ情報を取得すると、前記路面センサ情報を取得した時刻を前記クロックから取得して計測時刻を決定し、当該計測時刻と同一とみなせる時間範囲内に前記位置検出センサから取得した前記位置情報を選択し、前記路面センサ情報に前記計測時刻及び前記位置情報を付加して路面状態情報を生成して前記端末側無線通信装置を介して前記路面管理サーバに出力し、前記作業機械が前記走行経路に沿って走行中に、前記路面センサが前記走行経路上の前記一つの地点とは異なる地点の路面状態を検出して出力した新たな路面センサ情報を取得すると、当該新たな路面センサ情報基づいて新たな前記路面状態情報を生成して前記端末側無線通信装置を介して前記路面管理サーバに送信し、前記路面管理サーバは、第2プロセッサ及びストレージを含んで構成されると共に、前記車載端末装置との間で無線通信を行うサーバ側無線通信装置及び外部出力機器の其々に接続され、前記ストレージは、前記サーバ側無線通信装置を介して前記車載端末装置から受信した複数の前記路面状態情報を蓄積記録し、前記第2プロセッサは、前記ストレージから前記複数の路面状態情報を抽出し、抽出された複数の路面状態情報の其々に含まれる前記路面センサ情報を前記走行経路の路面に対して土埃抑制作業が必要であるか否かを判定するための土埃抑制作業判定閾値と比較し、前記走行経路の一部領域に含まれる複数地点において土埃抑制作業が必要であると判定した場合には前記走行経路の一部領域の路面に対する前記土埃抑制作業の実行指示信号を前記外部出力機器に出力する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鉱山に適した路面管理システムを提供することができる。上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】路面管理システム1が適用される鉱山の概略構成を示す図
図2】第1ダンプトラックの外観図
図3】第1ダンプトラックが土埃を巻上げながら走行している状態を示す図
図4】路面管理システムのハードウェア構成図
図5】路面管理システムの機能ブロック図
図6】路面管理システムの動作シーケンスを示す図
図7】路面管理テーブルの一例を示す図
図8A】路面状態情報の一例を示す図
図8B】土埃抑制作業の実行指示信号の一例を示す図
図8C】土埃抑制作業の実行済信号の一例を示す図
図9】路面管理テーブルの更新処理の流れを示すフローチャート
図10】土埃抑制作業の進捗判定処理の流れを示すフローチャート
図11A】土埃抑制作業車両に搭載された表示装置の画面例(実行指示信号受信時)を示す図
図11B】土埃抑制作業車両に搭載された表示装置の画面例(作業完了時)を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面等を用いて、本発明の実施形態について説明する。本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものは、同一の符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0012】
以下の説明において、作業機械の例として鉱山内を走行するダンプトラック用いて説明するが、作業機械はダンプトラックに限定されず、ホイールローダ等でもよい。
【0013】
図1は、路面管理システム1が適用される鉱山の概略構成を示す図である。鉱山には、油圧ショベル10が掘削作業を行う積込場61と、放土場62と、積込場61及び放土場62を連結する搬送路60が設置される。
【0014】
搬送路60は積込場61から放土場62に向かう往路411(図11A参照)の走行経路と、放土場62から積込場61へ向かう復路412(図11A参照)の走行経路とが設置される。
【0015】
第1ダンプトラック20-1及び第2ダンプトラック20-2は、搬送路60上の走行経路に沿って積込場61と放土場62との間を往復走行する。以下、二台のダンプトラック、すなわち第1ダンプトラック20-1及び第2ダンプトラック20-2を用いて説明するが、ダンプトラックは1台また3台以上でもよい。また第1ダンプトラック20-1、第2ダンプトラック20-2はオペレータが搭乗して走行する、所謂有人ダンプトラックでもよいし、管制局からの管制情報に従って自律走行する、所謂無人ダンプトラックでもよい。
【0016】
鉱山には、搬送路60の路面状態を管理する路面管理サーバ31が設置される。路面管理サーバ31は、第1ダンプトラック20-1及び第2ダンプトラック20-2の其々と無線通信回線40を介して接続される。
【0017】
第1ダンプトラック20-1及び第2ダンプトラック20-2の其々は、走行経路に沿って走行しながら、走行経路上の複数の地点で路面Aの土埃発生状態を検出し、その結果を含む路面状態情報を路面管理サーバ31に送信する。
【0018】
路面管理サーバ31は、路面状態情報を用いて土埃抑制作業の要否を判断し、必要と判断すると土埃抑制作業の実行指示信号を出力する。例えば、土埃抑制作業の例として、散水車70(図4参照)による散水作業や、グレーダ80(図4参照)による地均し作業がある。路面管理サーバ31は、散水車70に対して散水指示信号(土埃抑制作業の実行指示信号に相当)を送信したり、またグレーダ80に対して地均し指示信号(土埃抑制作業の実行指示信号に相当)を送信したりする。
【0019】
第1ダンプトラック20-1及び第2ダンプトラック20-2の其々は、路面状態を検出すると共に、これに同期して現在位置を算出し、路面状態情報に含めて路面管理サーバ31に送信する。よって路面管理サーバ31は、第1ダンプトラック20-1及び第2ダンプトラック20-2の現在位置を取得できるので、これを用いて鉱山内のどの位置に第1ダンプトラック20-1及び第2ダンプトラック20-2が存在しているかを監視してもよい。その場合、路面管理サーバ31は、第1ダンプトラック20-1及び第2ダンプトラック20-2の運行を管理する管制サーバとしての機能も実行できる。
【0020】
次に図2を参照して第1ダンプトラック20-1、第2ダンプトラック20-2の構成について説明する。第2ダンプトラック20-2の構成は、第1ダンプトラック20-1と同様なので第1ダンプトラック20-1について説明し、重複説明を省略する。図2は、第1ダンプトラック20-1の外観図である。図3は、第1ダンプトラック20-1が土埃Cを巻上げながら走行している状態を示す図である。
【0021】
図2に示すように、第1ダンプトラック20-1は、左前輪5FL、右前輪5FR、左後輪6RL、及び右後輪を備え、これらの車輪上にサスペンションを介して車体フレーム(vehicle frame)2と、車体フレーム2上に起伏可能に設けられたベッセル3とが搭載される。更に車体フレーム2の前側上方に運転室4が設けられている。また、車体フレーム2の前方上部にあるデッキにGPSアンテナ7が備えられる。第1ダンプトラック20-1は、後輪駆動車両であり、左前輪5FL、右前輪5FRが従動輪、左後輪6RL、及び右後輪が駆動輪である。
【0022】
更に第1ダンプトラック20-1は、車体フレーム2の左側面における左後輪6RL付近であって、左後輪接地点C_RLを基準としてそれよりも前から後ろまでの路面Aがスキャン範囲に含まれる位置に左LIDAR10Lを備える。左LIDAR10Lは路面Aが土埃Cを発生しやすい状態であるかを検出する路面センサに相当する。路面センサは、第1ダンプトラック20-1に1つ備えてもよいが、本実施形態では、車体フレーム2の右側面における右後輪付近であって、右後輪の車輪接地点を規準としてそれよりも前から後ろまでの路面Aがスキャン範囲に含まれる位置に右LIDAR10R(図4参照)を更に備える。
【0023】
路面センサは、LIDARだけでなく、カメラ、また距離画像センサでもよい。
【0024】
図3に示すように、路面Aが乾いた土であると、左LIDAR10Lと路面Aとの間に左後輪6RLの回転によって土埃Cが撒きあげられる。土埃Cは、従動輪である左前輪5FLの回転によっても巻き上げられるが、より多くの土埃Cが駆動輪である左後輪6RL及び右後輪によって巻き上げられる。つまり、駆動輪の車輪接地点、即ち左後輪接地点C_RL(図2参照)よりも後方により多くの土埃Cが巻き上がる。よって、本実施形態では、左後輪接地点C_RLの前後における左LIDAR10Lの出力差に基づいて土埃Cの発生を判断する。
【0025】
左LIDAR10Lは、左LIDAR10Lのレーザ照射面からなるスキャン面11Lと路面Aとの交線からなる左路面直線XLの前端が、左後輪接地点C_RLよりも前にあり、後端が左後輪接地点C_RLよりも後ろにあるように車体フレーム2に取り付けられる。左後輪接地点C_RLよりも前方の前方左計測点11L_iは前方計測点に相当し、左後輪接地点C_RLよりも後方の後方左計測点11L_i+mは後方計測点に相当する。
【0026】
これにより、1台の左LIDAR10Lにより、左後輪接地点C_RLよりも前の土埃Cの影響が少ない又は影響がない路面Aを計測し、左後輪接地点C_RLよりも後ろであって、第1ダンプトラック20-1が走行することで巻き上がった土埃Cを通して路面Aを計測することができる。
【0027】
右LIDAR10Rも同様に、右路面直線XRが、右前輪5FRが路面Aに接する右車輪接地点よりも前の右前方計測点11R_iから右車輪接地点よりも第1ダンプトラック20-1の進行方向後方の右後方計測点11R_i+mまでを含む位置とスキャン角度を有するように、車体フレーム2に取り付けられる。
【0028】
図4は、路面管理システム1のハードウェア構成図である。
【0029】
第1ダンプトラック20-1は、車載端末装置100と、この入力I/F105に接続された左LIDAR10L、右LIDAR10R、車速センサ20、及びGPS121(Global Positioning System:位置検出センサの一例に相当する)と、車載端末装置100の端末側通信I/F106に接続された端末側無線通信装置130とを備える。
【0030】
車載端末装置100は、CPU101(第1プロセッサに相当する)、ROM102、RAM103、HDD104、入力I/F105、端末側通信I/F106を含み、これらがバス107を介して互いに接続されたコンピュータを用いて構成される。RAM103、HDD104はストレージに相当する。
【0031】
更に、本実施形態では、車載端末装置100のハードウェア構成としてクロック108を含む。クロック108は、レーザの照射時刻を計測できればよく、例えばRTC(Real-Time Clock)を用いて構成し、時刻データとして協定世界時刻を用いてもよい。
【0032】
路面管理サーバ31は、CPU301(第2プロセッサに相当する)、ROM302、RAM303、HDD304(ストレージに相当する)、サーバ側通信I/F305を含み、これらがバス306を介して互いに接続されたコンピュータを用いて構成される。サーバ側通信I/F305には、サーバ側無線通信装置32が接続される。サーバ側無線通信装置32は、無線通信回線40(図1参照)を介して第1ダンプトラック20-1、第2ダンプトラック20-2、散水車70、及びグレーダ80の其々に接続される。そして、無線通信回線40を経由して第1ダンプトラック20-1及び第2ダンプトラック20-2の其々に搭載された車載端末装置100から路面状態情報を受信し、散水車70、及びグレーダ80の其々に対して土埃抑制作業の実行指示信号を送信し、実行済信号を受信する。
【0033】
図5は、路面管理システム1の機能ブロック図である。
【0034】
車載端末装置100のCPU101は、ROM102に記憶された路面検出プログラムをRAM103にロードして実行することにより、センサ出力取得部111、出力差算出部113、及び路面状態情報生成部114を構成する。路面センサ情報記憶部112は、RAM103又はHDD104の記憶領域を用いて構成される。
【0035】
路面管理サーバ31のCPU301は、ROM302に記憶された路面管理プログラムをRAM303にロードして実行することにより、路面管理テーブル編集部212及び路面管理部214を構成する。路面管理テーブル記憶部213は、HDD304の記憶領域を用いて構成される。
【0036】
図6図11Bを参照して、路面管理システム1の動作の概要について説明する。図6は、路面管理システム1の動作シーケンスを示す図である。なお、第2ダンプトラック20-2は第1ダンプトラック20-1と同様の動作を実行するので、図6では図示を省略する。図7は、路面管理テーブル300の一例を示す図である。図8Aは、路面状態情報の一例を示す図、図8Bは、土埃抑制作業の実行指示信号の一例を示す図、図8Cは、土埃抑制作業の実行済信号の一例を示す図である。図9は、路面管理テーブル300の更新処理の流れを示すフローチャートである。図10は、土埃抑制作業の進捗判定処理の流れを示すフローチャートである。図11Aは、土埃抑制作業車両に搭載された表示装置の画面例(実行指示信号受信時)を示す図である。図11Bは、土埃抑制作業車両に搭載された表示装置の画面例(作業完了時)を示す図である。
【0037】
第1ダンプトラック20-1が搬送路60の走行経路に沿って走行中、左LIDAR10Lは、同一スキャン周期内において前方左計測点11L_i、及び後方左計測点11L_i+mの其々について路面Aを計測し(S01)、路面センサ情報を出力する。ここでいう「同一スキャン周期内」とは、基準角度からレーザ光を360度走査する間を意味する。
【0038】
センサ出力取得部111は、路面センサ情報を取得し、クロック108からの時刻データを計測時刻として路面センサ情報に付加すると共に、第1ダンプトラック20-1の現在位置を示す位置情報、及び計測時刻を付加して路面センサ情報記憶部112に記憶する。
【0039】
出力差算出部113は、同一周期内で計測された前方左計測点11L_iで得られたレーザ光の反射強度と後方左計測点11L_i+mで得られた反射強度と出力差を演算し、この出力差に計測時刻及び位置情報を付加して路面状態情報を生成し(図8A参照)、路面管理サーバ31に対して路面状態情報を送信する(S02)。路面状態情報に付加する計測時刻及び位置情報は、前方左計測点11L_i又は後方左計測点11L_i+mの路面センサ情報と同一の計測時刻又は同一と見做せる許容時間内に取得されたデータを用いる。
【0040】
本例では、車載端末装置100が前方左計測点11L_i、及び後方左計測点11L_i+mの出力差を演算し、演算値を路面状態情報に含めて路面管理サーバ31に送信するが、後方左計測点11L_i+mのみを計測しその反射強度を示す路面センサ情報、所謂rawデータを路面状態情報に含めて路面管理サーバ31に送信してもよい。この場合のデータの流れを、図5において矢印Dで示す。
【0041】
路面管理サーバ31は、路面状態情報を蓄積記録する(S03)。本例では、蓄積記録の一態様として、図7に示す路面管理テーブル300に書き込む。
【0042】
路面管理テーブル300は、走行経路の部分区間を固有に示す「エリアID」(エリア識別情報に相当する)、「エリアID」に含まれる各地点を座標で定義した「位置情報」、エリアが往路411(図11A参照)か復路412(図11A参照)かのどちらにあるかを示す「往路復路特定情報」、路面状態情報に含まれる「反射強度(出力差)」及び「計測時刻」、各エリアに対して最後に土埃抑制作業が行われた時刻「土埃抑制作業終了時刻」の各レコードを含む。
【0043】
図9に示すように、路面管理テーブル編集部212は、路面状態情報を受信すると路面状態情報に含まれる現在位置を示す位置情報が含まれるエリアの登録データが路面管理テーブル300に既にあるかを判定する(S031)。既に存在しており(S031/Yes)、かつ登録データの計測時刻よりも受信した路面状態情報の計測時間が新しければ(S032/Yes)、路面管理テーブル300における該当データを更新し(S033)、処理を終了する。
【0044】
路面状態情報の計測時間の方が古ければ(S032/No)、路面状態情報を破棄して路面管理テーブル300を更新することなく処理を終了する。
【0045】
路面状態情報に含まれる現在位置が一致する登録データが路面管理テーブル300になければ(S031/No)、路面管理テーブル300に路面状態情報を登録するための登録データを追加し(S034)、処理を終了する。
【0046】
図6に戻り、路面管理サーバ31は路面状態情報の蓄積記録処理が終了すると、土埃抑制作業の要否判定を行う(S04)。
【0047】
路面管理部214は、路面管理テーブル300の「反射強度(出力差)」の値を予め定められた土埃抑制作業判定閾値と比較し、土埃抑制作業判定閾値を超える反射強度(出力差)を示すエリアIDを特定する。
【0048】
本実施形態では、S04において、路面管理部214は、同一エリア内の複数地点で得られた「反射強度(出力差)」が土埃判定閾値以上となった場合に、実行済信号を送信するように構成する。その際、路面状態情報を受信すると、一旦、RAM103に一時保存しておく。そして、ある特定のエリアについて、路面状態情報が蓄積された状態、換言すると、複数地点の路面状態情報の反射強度(出力差)が土埃抑制作業判定閾値を超えると、そのエリアIDを土埃抑制作業の対象エリアとして特定する。
【0049】
そして特定したエリアIDを含む土埃抑制作業の実行指示信号を生成し(図8B参照)、外部出力機器、本実施形態ではサーバ側無線通信装置32に出力し、散水車70又はグレーダ80に向けて送信する(S05)。本実施形態では、実行指示信号に「エリアID」及び「位置情報」の少なくとも一つ、及び「往路復路特定情報」を付加する。散水車70又はグレーダ80のオペレータは、「エリアID」及び「位置情報」の少なくとも一つを用いて、土埃抑制作業が必要であると判定された走行経路の部分区間の位置を特定できる。更に、往路411(図11A参照)と復路412(図11A参照)とでは進行方向が異なるので、「往路復路特定情報」を付加することで、散水車70又はグレーダ80のオペレータが単に「エリアID」や「位置情報」を示すよりも、土埃抑制作業が必要であると判定された部分区間へのアプローチルートを考えやすくなる。
【0050】
散水車70又はグレーダ80は、実行指示信号を受信すると、搬送路60を走行中の第1ダンプトラック20-1や第2ダンプトラック20-2の交通妨害にならないように搬送路60に割り込み運転を行い、散水作業や地均し作業といった土埃抑制作業を実行する(S06)。
【0051】
散水車70又はグレーダ80は、ディスプレイを予め備えておき、実行指示信号を受信すると、実行指示信号に含まれるエリアID、例えばエリア9の場所を示すマーク413を搬送路60、例えば復路412の地図に重畳表示した画面410(図11A参照)を表示して、オペレータに対して土埃抑制作業を行う箇所について情報提供してもよい。
【0052】
復路412の地図は、復路412上にある各地点を示すノードの座標、例えば(x14,y14)、(x15,y15)、(x16,y16)と、隣接するノードを連結するリンクとにより定義される。往路411の地図も同様である。各エリアは、当該エリアに含まれるノードの座標を用いて定義された範囲で表される。
【0053】
散水車70又はグレーダ80は、土埃抑制作業を実行すると、実行した位置を示す位置情報と終了時刻を含む実行済信号(図8C参照)を路面管理サーバ31に送信する(S07)。
【0054】
路面管理部214は、土埃抑制作業の進捗判定処理を実行する(S08)。第1ダンプトラック20-1や第2ダンプトラック20-2が、土埃抑制作業が実行されたエリア内を再度通過しながら路面Aを計測すると(S09-1)、新たな路面状態情報を路面管理サーバ31に送信する(S09-2)。図10に示すように、路面管理サーバ31は、新たな路面状態情報を受信すると(S081/Yes)、路面管理テーブル編集部212が路面管理テーブル300を更新し(S082)、路面管理部214が新たな路面状態情報に含まれる出力差を土埃抑制作業判定閾値と比較する(S083)。路面管理サーバ31は、新たな路面状態情報を受信するまでは(S081/No)、待機する。
【0055】
土埃抑制作業判定閾値未満であれば(S083/Yes)、路面状態が回復したと判断し、散水車70やグレーダ80に対して作業完了信号を送信する(S10-1)。そして、路面管理テーブル300にS07で受信した実行済信号の作業終了時間を書き込む(S10-2)。
【0056】
散水車70又はグレーダ80は、作業完了信号を受信すると、ディスプレイの画面410を往路411及び復路412の各地図のみが表示された通常画面420(図11B)に遷移させてもよい。これにより、土埃抑制作業をすべきエリアがなくなった、すなわち、土埃抑制作業が完了し路面状態が回復したことをオペレータに通知することができる。
【0057】
新たな路面状態情報に含まれる出力差が土埃抑制作業判定閾値以上であれば(S083/No)、路面状態が未回復と判断し、散水車70やグレーダ80に対して再度実行指示信号を送信する(S10-3)。その際、新たな路面状態情報に含まれる出力差と、路面管理テーブル300に登録中の出力差(作業前の出力差に相当する)との変化量や各出力差を作業続行信号に含めてもよい。これにより、追加でどの程度土埃抑制作業をすればよいかの目安を、散水車70やグレーダ80のオペレータに対して提供できる。その後、ステップS06へ戻り、土埃抑制作業を再実行する。新たな路面状態情報に含まれる出力差が土埃抑制作業判定閾値未満となると(S083/Yes)、作業完了信号を送信し(S10-1)、作業終了時刻を更新し(S10-2)、処理を終了する。
【0058】
本実施形態によれば、鉱山内を走行する作業機械が、走行経路上の複数の地点で計測した路面センサ情報を用いて、走行経路の部分区間からなるエリアを特定し、土埃抑制作業を実行することができる。その際、作業機械としてダンプトラックを用いる場合は、ダンプトラックの本来的な作業である運搬作業中に路面状態の計測を行うので、路面状態を計測するためにダンプトラックの走行の妨げとなるような割り込み運転を発生させることが無い。
【0059】
また本実施形態では、S04において、複数地点における路面検出結果を基に土埃抑制作業を行うエリアを特定するので、例えば直前を走行する第2ダンプトラック20-2から荷こぼれが発生して、偶発的に1回の計測(1地点の計測)で反射強度(出力差)が高くなっても、偶発的な事象による影響を排除し、土埃抑制作業車両の不要な割り込み運転を避けることができる。
【0060】
また、特にグレーダ80による地均し作業は、路面Aを削る作業を繰り返すことがある。その際、グレーダ80が一旦地均し作業を中断して道路わきによけ、第1ダンプトラック20-1や第2ダンプトラック20-2が作業後の路面Aを計測した結果を確認し、路面Aが回復したことを確認してから駐機場のグレーダ80が戻ればよく、作業途中で戻ったことにより再度の出直しを防ぎ、割り込み運転の回数を減らすことができる。
【0061】
上記の説明は本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更及び修正が可能である。
【0062】
例えば、第1ダンプトラック20-1に代えてホイールローダや航測車のように、搬送路60を走行する車両に路面検出処理を実行させてもよい。また、出力差ではなく、路面センサ情報の計測値そのものと、土埃抑制作業判定閾値とを比較してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 :路面管理システム
2 :車体フレーム
3 :ベッセル
4 :運転室
5FL :左前輪
5FR :右前輪
6RL :左後輪
7 :GPSアンテナ
9 :エリア
10 :油圧ショベル
20 :車速センサ
20-1 :第1ダンプトラック
20-2 :第2ダンプトラック
31 :路面管理サーバ
32 :サーバ側無線通信装置
40 :無線通信回線
60 :搬送路
61 :積込場
62 :放土場
70 :散水車
80 :グレーダ
100 :車載端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11A
図11B