IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許-車両用空調装置 図1
  • 特許-車両用空調装置 図2
  • 特許-車両用空調装置 図3
  • 特許-車両用空調装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/00 20060101AFI20221205BHJP
   F04D 29/44 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
B60H1/00 102E
F04D29/44 P
F04D29/44 X
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018223908
(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公開番号】P2020083202
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文人
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-037398(JP,A)
【文献】特開平10-018996(JP,A)
【文献】特開2000-291595(JP,A)
【文献】特開2007-127089(JP,A)
【文献】特開2017-044133(JP,A)
【文献】特開2019-019762(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0072131(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F04D 29/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、該ケーシングに設けられ空気を内部へと取り込む送風機と、該送風機の上流側に臨み前記空気の通過するフィルタとを備え、前記送風機が、通電作用下に回転するファンと、該ファンの径方向外側に設けられノーズ部から前記ファンの回転方向へ向かって徐々に断面積が拡大する通路を有したスクロールケースとを備える車両用空調装置において、
前記スクロールケースは、前記ファンの軸方向一方側に開口する断面円形状の吸入口と、前記通路の下流側に接続され前記スクロールケースの側部に開口した吐出口と、前記吸入口の外縁部に設けられ、前記吸入口の形成される前記スクロールケースの壁面から前記フィルタ側に向かって先端が突出して形成されるベルマウスとを備え、
前記ベルマウスは、前記スクロールケースのノーズ部と前記ファンの軸中心部とを結ぶ第1仮想線との交点をA点、前記スクロールケースの巻き終わり部と前記ファンの軸中心部とを結ぶ第2仮想線との交点をB点、前記ファンの回転方向において前記A点と前記B点との間となる任意の中間点をC点とした際、前記ファンの軸方向に沿った前記ベルマウスから前記フィルタまでの距離が、前記A点及び前記B点に対して前記C点の方が小さくなるように突出して形成され
前記スクロールケースは、前記通路が前記ファンの径方向外側に設けられノーズ部から前記ファンの回転方向へ向かって徐々に前記吸入口が形成された側の壁面が前記フィルタ側へと近づくように前記ファンの軸方向に拡大し、
前記B点における前記ベルマウスは、前記B点近傍における前記スクロールケースの前記吸入口が形成された側の壁面に対して前記フィルタから離れて形成される、車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記ベルマウスの高さは、前記C点から前記A点及び前記B点に向かって滑らかに変化する、車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記ベルマウスの高さは、前記C点に対して前記A点及び前記B点に向かって段状に変化する、車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
前記C点は、前記A点から前記スクロールケースの巻き終わり部側に向かって30°~210°の範囲内に設定される、車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、熱交換器によって温度調整のなされた空気を車室内へと送風して車室内の温度調整を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される車両用空調装置は、特許文献1に開示されるように、外気又は内気を取り込んで送風機で送風するための送風機ユニットを備えている。この送風機ユニットは、渦巻状のスクロールケースの中心に送風機が配置され、該送風機は、モータと、該モータに接続されて回転する羽根車とから構成され、前記羽根車の外周側がスクロールケースの通路に臨むように配置されている。
【0003】
また、スクロールケースには、送風機の軸線上となり空気を内部へと取り込む吸込口が開口し、その側壁の軸方向高さをノーズ部から羽根車の回転方向に向かって吹出口側へと徐々に増加させると共に、前記吸込口を構成するベルマウスを前記側壁と連続的な壁面として形成している。
【0004】
さらに、ベルマウスは、吸入口から径方向外側へと延在する断面円弧状の壁面を有し、この壁面の曲率半径を、吸入口における側壁の軸方向高さが増加するのに対応させて比例的に大きくすることで、前記ベルマウス近傍における空気の流れの干渉を抑制して騒音の低減を図っている。
【0005】
一方、特許文献2に開示された車両用空調装置では、送風機の収納される送風機ケースの上部にカバー部材が設けられ、前記カバー部材には、上方へと突出した複数の支柱が形成されフィルタの下面を保持する構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-127089号公報
【文献】特開2012-158218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、上述した特許文献1における送風機ユニットの構造を、送風機の上方にフィルタを配置している特許文献2の車両用空調装置へと適用した場合、空気を外部へと吐出させるスクロールケースの吹出口が、上方に配置されたフィルタ側に向かって徐々に接近してしまう。そのため、吹出口とフィルタとが近接することで空気の流れが乱れて騒音発生の原因となる。
【0008】
また、ベルマウスと羽根車の軸方向先端との軸方向の距離が拡大してしまうことで、両者の間を通じて通路内の空気がファン側へと逆流しやすくなり、送風効率の低下を招くと共に騒音が増加してしまうこととなる。
【0009】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、吸入された空気の流れを安定化させつつ、作動時における騒音の低減及び送風効率の向上を図ることが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明の態様は、ケーシングと、ケーシングに設けられ空気を内部へと取り込む送風機と、送風機の上流側に臨み空気の通過するフィルタとを備え、送風機が、通電作用下に回転するファンと、ファンの径方向外側に設けられノーズ部からファンの回転方向へ向かって徐々に断面積が拡大する通路を有したスクロールケースとを備える車両用空調装置において、
スクロールケースは、ファンの軸方向一方側に開口する断面円形状の吸入口と、通路の下流側に接続されスクロールケースの側部に開口した吐出口と、吸入口の外縁部に設けられ、吸入口の形成されるスクロールケースの壁面からフィルタ側に向かって先端が突出して形成されるベルマウスとを備え、
ベルマウスは、スクロールケースのノーズ部とファンの軸中心部とを結ぶ第1仮想線との交点をA点、スクロールケースの巻き終わり部とファンの軸中心部とを結ぶ第2仮想線との交点をB点、ファンの回転方向においてA点とB点との間となる任意の中間点をC点とした際、ファンの軸方向に沿ったベルマウスからフィルタまでの距離が、A点及びB点に対してC点の方が小さくなるように突出して形成され
スクロールケースは、通路がファンの径方向外側に設けられノーズ部からファンの回転方向へ向かって徐々に吸入口が形成された側の壁面が前記フィルタ側へと近づくようにファンの軸方向に拡大し、
B点におけるベルマウスは、B点近傍におけるスクロールケースの吸入口が形成された側の壁面に対してフィルタから離れて形成される
【0011】
本発明によれば、車両用空調装置を構成する送風機は、ノーズ部からファンの回転方向へ向かって徐々に断面積の拡大する通路を有したスクロールケースを備え、このスクロールケースには、ファンの軸方向一方側に開口した吸入口の外縁部にベルマウスが形成され、スクロールケースの壁面からフィルタ側へと突出して形成される。
【0012】
そして、ベルマウスは、スクロールケースのノーズ部とファンの軸中心部とを結ぶ第1仮想線との交点をA点、スクロールケースの巻き終わり部とファンの軸中心部とを結ぶ第2仮想線との交点をB点、ファンの回転方向においてA点とB点との間となる任意の中間点をC点とした際、ファンの軸方向に沿ったベルマウスからフィルタまでの距離が、A点及びB点と比較してC点の方が小さくなるように設定されている。
【0013】
従って、スクロールケースの通路内において、空気の圧力が高いノーズ部に隣接したA点近傍では、ファンの軸方向上端とベルマウスとの間の軸方向に沿った距離を狭くすることで空気の逆流を防止することができ、通路の巻角が大きくなるにつれて、C点近傍においてベルマウスをフィルタ側への距離が小さくなるように形成することで、フィルタを通過した空気を吸入口へと好適に案内できるため、空気の流れを均一化することができる。
【0014】
また、吐出口近傍となるB点近傍では、ファンの軸方向における通路高さが高くなりフィルタに近づくが、フィルタに対するベルマウスの距離をC点を有した部位と比較して十分に確保することができる。
【0015】
その結果、送風機におけるノーズ部近傍の空気の逆流を防止し、且つ、フィルタから吸入口への空気の流れをガイドして均一化することで、空気の流れを安定化させて送風効率を高めつつ、ファンの回転時における騒音の低減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0017】
すなわち、車両用空調装置を構成する送風機のスクロールケースにおいて、フィルタに対するベルマウスの距離が、スクロールケースのノーズ部とファンの軸中心部とを結ぶ第1仮想線との交点となるA点と、スクロールケースの巻き終わり部とファンの軸中心部とを結ぶ第2仮想線との交点となるB点に対し、ファンの回転方向においてA点とB点との間となる任意の中間点をC点の方が小さくなるように設定するとよい。
【0018】
これにより、空気の圧力が高いノーズ部に隣接したA点近傍において、ファンとベルマウスとを接近させて配置することで空気の逆流を防止することができ、A点から通路の巻角が大きくなったC点近傍では、ベルマウスをフィルタ側へと接近させて配置することで、フィルタからの空気を好適に吸入口へと案内して空気の流れを均一化することができる。また、吐出口近傍となるB点近傍においても、フィルタに対するベルマウスの距離を十分に確保することができる。
【0019】
その結果、送風機におけるノーズ部近傍の空気の逆流を防止し、且つ、フィルタから吸入口へと空気の流れを導くことで均一化できるため、空気の流れを安定化させて送風効率を高めつつ、ファンの回転作動時における騒音を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を構成する内外気切替ユニットの一部省略断面図である。
図2図1に示す送風機ユニットのスクロールケース及びファンを上方から見た平面図である。
図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4Aは、ベルマウスの周方向に沿った高さ変化を模式化した模式図であり、図4Bは、変形例に係る送風機ユニットのベルマウスの高さ変化を模式化した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る車両用空調装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す。
【0022】
この車両用空調装置10は、図1に示されるように、空気の各通路を構成する空調ケース(図示せず)の側部に連結され外気及び内気を取り込む内外気切替ユニット12を有し、該内外気切替ユニット12から取り込んだ空気を前記空調ケースへと供給している。
【0023】
この内外気切替ユニット12は、図1及び図2に示されるように、送風機ユニット14と、該送風機ユニット14の上部に接続され図示しない切替ダンパを有したケーシング16と、前記ケーシング16内において前記送風機ユニット14に臨むように設けられたフィルタ18とを含む。このケーシング16には、外気及び内気を導入するための導入口20(図1参照)が開口している。
【0024】
そして、フィルタ18は、送風機ユニット14の接続されるケーシング16の下部に設けられ、ケーシング16の高さ方向と略直交するように水平方向(矢印A方向)に配置される。
【0025】
送風機ユニット14は、例えば、駆動モータ22と、該駆動モータ22の駆動作用下に回転するファン24と、該駆動モータ22及びファン24が収納され空気の流れる通路部26を有したスクロールケース28とを含む。
【0026】
駆動モータ22は、例えば、スクロールケース28の略中央下部に設けられ、その回転軸30が前記スクロールケース28内で上方(矢印B1方向)に向かって突出するように固定されている。そして、回転軸30は、ファン24の中心部に対して連結され、駆動モータ22への通電作用下に一体的に回転する。
【0027】
ファン24は、スクロールケース28の略中央に収納され、周方向に沿って等間隔離間した複数のブレード32と、該ブレード32の上端部に設けられた環状のシュラウド34と、前記ブレード32の下端部から中央に向かって上端側へと延在したボス部36とを備える。そして、ファン24は、ボス部36がその中心から外周側に向かい且つ下方(矢印B2方向)へ向かって傾斜し、前記中心が駆動モータ22の回転軸30と連結される。
【0028】
スクロールケース28は、例えば、略中央部に形成されファン24の収納されるケース本体38と、該ケース本体38の略中央下部に設けられ駆動モータ22の収納されるホルダ40とを含む。
【0029】
このケース本体38には、内部に収納されるファン24の外周側を囲むように通路部26が形成され、軸方向に沿った上部に設けられるアッパーケース42と、該アッパーケース42の下方(矢印B2方向)に接続されるロアケース44とから上下(矢印B1、B2方向)に分割可能に形成されている。
【0030】
通路部26は、アッパーケース42とロアケース44とに跨るように形成され、図2に示されるように、その外周壁が巻き始めC1から巻き終わりC2に向かって徐々にファン24から離間するように径方向外側、且つ、ファン24の軸線方向(矢印B1、B2方向)へと拡大しながら螺旋状に形成された渦巻通路46と、該渦巻通路46の巻き終わりC2から接線方向に向かって直線状に延在した吐出通路48とを有している。そして、吐出通路48の下流側端部には、吐出口50が開口し、該吐出口50は、図示しない連結ダクトを介して空調ケースへと連結されている。
【0031】
また、通路部26には、その渦巻通路46の巻き始めC1と吐出通路48の内周壁とを接合するノーズ部52が形成される。すなわち、通路部26は、その巻き始めC1となるノーズ部52から巻き終わりC2側に向かって徐々に断面積が拡大するように形成されている。
【0032】
アッパーケース42は、図1及び図3に示されるように、その上壁(壁面)54の中央部に吸入口56が開口し、該吸入口56は、例えば、断面略円形状に形成されケーシング16の下端部及びフィルタ18に臨むと共に、前記スクロールケース28の内部とケーシング16の内部とを連通させている。
【0033】
また、アッパーケース42には、吸入口56の外周縁部に内側に向かって断面円弧状に折り返されたベルマウス58が形成される。このベルマウス58は、吸入口56に沿って円環状に形成されアッパーケース42の上壁54に接続され、その軸方向に沿った上方(矢印B1方向)への高さが周方向で異なるように形成されている。
【0034】
具体的には、スクロールケース28の軸方向(図1中、矢印B1、B2方向)から見た状態で、図2に示されるそのノーズ部52とファン24の軸中心P(回転軸30の中心)とを結ぶ第1仮想線D1とベルマウス58との交点を点Pa(A点)、渦巻通路46の巻き終わりC2と前記軸中心Pとを結ぶ第2仮想線D2と前記ベルマウス58との交点を点Pb(B点)、前記ファン24の回転方向において前記点Paと前記点Pbとの間となる任意の中間点を点Pc(C点)とした際、前記点Pcを中心としたベルマウス58の所定範囲が、前記点Paとなる第1リング部60及び前記点Pbを中心とした第2リング部62に対して高く形成された突出リング部64となる。
【0035】
また、第1及び第2リング部60、62は、送風機ユニット14の軸方向(矢印B1、B2方向)において略同一高さとなるように形成される。
【0036】
さらに、上述した点Pcは、例えば、点Paを通る第1仮想線D1を基準として巻き終わりC2側に向かった30°~210°の角度θ内に設定される。
【0037】
この突出リング部64は、図1図4Aに示されるように、上記の角度θの範囲となるようにベルマウス58の周方向に沿って所定長さで形成され、略一定高さで形成された頂部66と、第1リング部60から前記頂部66に向けて上方(矢印B1方向)へと突出するように高さが徐々に変化する第1徐変部68と、前記頂部66に対して第2リング部62側に向けて下方(矢印B2方向)へと高さが徐々に変化する第2徐変部70とから形成される。すなわち、突出リング部64は、頂部66、第1及び第2徐変部68、70とから断面略台形状に形成される(図4A参照)。
【0038】
図4Aに示されるように、ファン24の軸方向(矢印B1、B2方向)に沿ったベルマウス58からフィルタ18までの距離Lが、点Paを含む第1リング部60及び点Pbを含む第2リング部62に対して前記点Pcを含む突出リング部64の方が短くなるように前記ベルマウス58が上方(矢印B1方向)へと突出して形成されている。
【0039】
換言すれば、ベルマウス58は、突出リング部64が第1及び第2リング部60、62に対してよりフィルタ18側へと近接して設けられる。
【0040】
本発明の実施の形態に係る車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0041】
先ず、図示しないコントローラからの制御信号に基づき、内外気切替ユニット12の駆動モータ22が駆動し、該駆動モータ22の駆動作用下に回転軸30を介してファン24が回転することで、ケーシング16の導入口20からケーシング16の内部へと空気が吸い込まれる。
【0042】
そして、ケーシング16内へ取り込まれた空気は、フィルタ18を通過した後に送風機ユニット14におけるスクロールケース28の吸入口56からシュラウド34を通じてファン24の内側へと吸い込まれ、ボス部36に沿って下方(矢印B2方向)且つ外周側へと導かれた後、各ブレード32の間を通じて外周側へと送出される。
【0043】
この通路部26へと送出された空気は、渦巻通路46に沿って巻き始めC1から反時計回りに流れて巻き終わりC2側まで到達した後、吐出通路48から吐出口50まで流れて図示しない空調ケース側へと送出される。
【0044】
また、上述した通路部26を流れる空気は、渦巻通路46の巻き始めC1から吐出通路48へと旋回するように流れることで徐々に圧力が上昇し、その空気の一部が、ノーズ部52の近傍において高圧となった前記吐出通路48から、隣接して低圧である渦巻通路46の巻き始めC1側へと流入することがある。
【0045】
そのため、スクロールケース28において、圧力の高いノーズ部52近傍となる点Pa近傍では、ベルマウス58の第1リング部60とファン24の軸方向に沿った上端24aとの間隔を狭くしておくことで、前記ベルマウス58とファン24との間を通じた空気の径方向内側への逆流を防止している。
【0046】
さらに、スクロールケース28において、渦巻通路46の巻角が大きくなる点Pc近傍において、突出リング部64を設けることでベルマウス58を上方(矢印B1方向)へと突出させ、フィルタ18へと接近させることで該フィルタ18を通過した空気を吸入口56側へと導いている。
【0047】
そして、空気は、内外気切替ユニット12の送風機ユニット14から図示しない空調ケースへと送出された空気は、前記空調ケース内で所望の温度へと温度調整がなされた後に、送風口を通じて車室内へと送風される。
【0048】
以上のように、本実施の形態では、車両用空調装置10を構成する内外気切替ユニット12の送風機ユニット14において、スクロールケース28のベルマウス58が、フィルタ18側に向かって軸方向(矢印B1方向)に突出し、その突出高さは、前記スクロールケース28のノーズ部52と前記ファン24の軸中心部とを結ぶ第1仮想線D1との交点である点Pa、前記スクロールケース28の巻き終わりC2と前記ファン24の軸中心部とを結ぶ第2仮想線D2との交点である点Pb、前記点Paと前記点Pbとの前記ファン24の回転方向における任意の中間点を点Pcとした場合に、前記ファン24の軸方向(矢印B1、B2方向)に沿った前記ベルマウス58から前記フィルタ18までの距離Lが、前記点Pa及び前記点Pbに対して前記点Pcの方が短くなるように設定されている。
【0049】
従って、スクロールケース28の通路部26内において、点Pa近傍である空気の圧力が高いノーズ部52近傍では、ファン24の軸方向に沿った上端24aとベルマウス58の第1リング部60との間の軸方向に沿った距離を小さくすることで両者の間を通じた前記空気の逆流を防止できる。
【0050】
また、通路部26の巻き始めC1から巻角が大きくなるにつれて、上方へ突出させた突出リング部64をベルマウス58に設けることで、フィルタ18を通過して吸入口56へと取り込まれる空気を好適に案内して流れを均一化することができる。
【0051】
さらに、ベルマウス58は、点Pb近傍において吐出口50に近づくにつれて通路部26の高さが高くなるため、フィルタ18との軸方向の距離Lを確保できるように突出リング部64よりも低い第2リング部62を設けている。そのため、吐出口50近傍においても、フィルタ18に対するベルマウス58の距離Lを十分に確保することで騒音の発生を抑制することができる。
【0052】
その結果、送風機ユニット14におけるノーズ部52近傍におけるファン24側への空気の逆流を防止し、且つ、フィルタ18から吸入口56へと空気の流れを案内して均一化させることで、前記空気の流れを安定化させて送風効率を高めつつ、ファン24の回転作動時における騒音の低減を図ることが可能となる。
【0053】
また、ベルマウス58における第2リング部62を、該第2リング部62近傍において吸入口56の開口したスクロールケース28の上壁54に対してファン24側(矢印B2方向)となるように形成することで、前記第2リング部62をフィルタ18から十分に離して配置することができる。
【0054】
その結果、スクロールケース28において、軸方向上方(矢印B1方向)へと拡大しフィルタ18との離間距離が小さくなる吐出口50近傍において、ベルマウス58を前記フィルタ18から離間させることで、騒音の発生をより効果的に低減させることができる。
【0055】
さらに、ベルマウス58において、点Paを通る第1仮想線D1を基準として点Pcを30°~210°の角度θ内に設定することにより(30°≦θ≦210°)、ノーズ部52近傍における空気の逆流防止と、巻き始めC1と巻き終わりC2との間となる中間部位及び吐出口50における騒音低減とをバランスよく両立させることができる。
【0056】
一方、ベルマウス58における突出リング部64は、第1リング部60側から頂部66に向けて滑らかに高さが高くなる第1徐変部68と、前記頂部66から滑らかに高さの低くなる第2徐変部70とから構成される場合に限定されるものではない。
【0057】
例えば、図4Bに示されるベルマウス80のように、第1リング部82に対して段状に形成された第1頂部84と、該第1頂部84に接続され若干だけ低い第2頂部86と、前記第2頂部86に対して段状に低く形成された第2リング部88とから段付状となるように形成してもよい。
【0058】
この場合、第1及び第2頂部84、86は、例えば、点Paを通る第1仮想線D1を基準として巻き終わりC2側に向かった30°~210°の範囲内に設定されていればよい。また、段状となる頂部の数量は適宜設定されればよい。
【0059】
なお、本発明に係る車両用空調装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0060】
10…車両用空調装置 12…内外気切替ユニット
14…送風機ユニット 18…フィルタ
24…ファン 26…通路部
28…スクロールケース 30…回転軸
42…アッパーケース 52…ノーズ部
56…吸入口 58、80…ベルマウス
64…突出リング部 66…頂部
84…第1頂部 86…第2頂部
図1
図2
図3
図4