(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】排水配管継手および排水配管の維持方法
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20221205BHJP
E03C 1/122 20060101ALI20221205BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20221205BHJP
F16L 41/08 20060101ALI20221205BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
E03C1/12 E
E03C1/122 Z
F16L55/00 G
F16L41/08
F16L1/00 D
(21)【出願番号】P 2018230697
(22)【出願日】2018-12-10
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】505142964
【氏名又は名称】株式会社クボタケミックス
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】八木 博史
(72)【発明者】
【氏名】安部 嘉孝
(72)【発明者】
【氏名】三浦 琢夢
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-196145(JP,A)
【文献】特開2007-092381(JP,A)
【文献】特開2016-069982(JP,A)
【文献】特開2011-111853(JP,A)
【文献】特開平10-114983(JP,A)
【文献】特開2005-113416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/126
F16L 55/00
F16L 41/08
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成され、建築物に施工された際に、床スラブの貫通孔に配置される管本体と、前記床スラブの上方に突出し上階からの排水を流入させる排水立管を接続する上立管接続部と、前記床スラブの下方に突出し下階に排水を流下させる排水立管を接続する下立管接続部と、前記床スラブの上方で排水横枝管からの排水を合流させる排水集合部とを備えた排水配管継手であって、
前記排水集合部は、前記排水横枝管からの排水が集まる集水室を備え、
前記集水室は、前記排水横枝管からの排水が流入する開口部を最大4つ備え、それぞれの前記開口部には前記排水横枝管が接続可能に構成された横枝管接続部材または前記排水横枝管が接続されずに前記開口部を封止する封止部材のいずれかが装着され、
前記横枝管接続部材および前記封止部材は、前記集水室とは別体の射出成形品であって、
前記集水室の開口部に装着されて前記排水配管継手を建築物に施工した後において、装着された横枝管接続部材および封止部材を、前記開口部から取り外して別の横枝管接続部材または別の封止部材と再度装着可能に、前記集水室に可逆的に装着可能に構成されたことを特徴とする、排水配管継手。
【請求項2】
前記集水室が、上下二段に設けられ、
下段の前記集水室は、上段からの排水が前記排水横枝管へ逆流することを防止する庇を、上段の前記集水室の前記横枝管接続部材の装着数にかかわらず、前記排水横枝管の方向に対応する3箇所に備えることを特徴とする、請求項1に記載の排水配管継手。
【請求項3】
前記庇は、下段の前記集水室と一体として成形された、または、前記集水室と別に成形されたことを特徴とする、請求項2に記載の排水配管継手。
【請求項4】
前記管本体は、前記排水集合部と前記下立管接続部との間における前記管本体の内面であって平面視における前記庇が存在しない方向に、前記排水配管継手内の排水の流れを変化させる部分を備えることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の排水配管継手。
【請求項5】
前記管本体は、前記排水集合部と前記下立管接続部との間における前記管本体の内面であって平面視における前記庇が存在しない方向に、前記排水配管継手内の排水の流れを変化させる部分
における上下方向の中央部付近を備えることを特徴とする、請求項2または請求項3に記載の排水配管継手。
【請求項6】
前記庇よりも下方に、前記排水配管継手内の排水の流れを変化させる部分を備えることを特徴とする、請求項5に記載の排水配管継手。
【請求項7】
請求項1~請求項
6のいずれかに記載の排水配管継手が建築物に施工された後に、前記建築物の排水横枝管の配管状態の変更に対応して、前記横枝管接続部材または封止部材の装着位置を変更させることを特徴とする、排水配管の維持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の床スラブを貫通して設けられる排水配管継手およびその排水配管継手が建築物に施工された後の排水配管の維持方法に関し、特に、建築物の排水横枝管の配管状態の変更に容易に対応可能な樹脂製の排水配管継手および排水配管の維持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅やオフィスビルなどには、給水設備および排水設備が設けられる。このうちの排水設備は、建物の各階層を上下に貫く縦管と、各階層内に設置される横枝管と、これらを接続する排水配管継手とを備えた排水配管構造が代表的なものとして広く知られている。
そして、このような排水配管継手は、建築物に施工された際に、床スラブの貫通孔に配置される管本体と、床スラブの上方に突出し上階からの排水を流入させる排水立管を接続する上立管接続部と、床スラブの下方に突出し下階に排水を流下させる排水立管を接続する下立管接続部と、床スラブの上方で排水横枝管(単に横枝管と記載する場合がある)を接続する横枝管接続部とを備える。また、このような排水配管継手として、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成されたものが広く知られている。
【0003】
たとえば、特許第6391398号公報(特許文献1)は、このような排水配管継手を開示する。この特許文献1に開示された排水配管継手は、上段側継手部材(立管接続部および上段側の1箇所の横枝管接続部を含む)と、下段側継手部材(下段側の3箇所の横枝管接続部を含む)と、スラブ貫通部材と、下部筒部材と、によって主に構成され、これらは互いに嵌合されて接着固定されている。そして、下段側の横枝管接続部は、上段側の横枝管接続部からの排水が流れ込まないようにするために、上段側の横枝管接続部と周方向に180°反対側となる位置(対向する位置)には設けないように制限している(上段側の1箇所の横枝管接続部に対向する位置には下段側の横枝管接続部が存在しない)。そして、このような制限の元で、複数の横枝管接続部のうち横枝管を接続しない接続部は蓋や栓で閉じて使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような排水配管継手が施工された建築物(集合住宅やオフィスビルなど)において、たとえばリフォーム等を理由として施工後にトイレや浴室等を移設したり増設したりすることが考えられる。
しかしながら、上述した特許文献1に開示された排水配管継手は、当初に施工される建築物に対応して互いの部材が接着などによって固定されて製造されるために、建築物に施工された後において、たとえば上段側継手部材に1箇所設けられた横枝管接続部の周方向の位置を変更することも上段側継手部材に横枝管接続部を増設することもできない。また、下段側継手部材に3箇所の横枝管接続部が設けられているが当初の施工において横枝管が接続されない場所は蓋や栓で閉じられて製造されて施工されるために、建築物に施工された後において、新たに横枝管を接続することができない。
【0006】
さらに、下段側の横枝管接続部は、上段側の横枝管接続部からの排水が流れ込まないようにするために、上段側の横枝管接続部と周方向に180°反対側となる位置(対向する位置)には設けないという制限があるために、当初の施工においてもその後のリフォーム等においてもフレキシブルに対応することができない。
本発明は、上述の問題点に鑑みて開発されたものであり、その目的とするところは、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成された建築物の床スラブを貫通して設けられる排水配管継手であって、建築物に施工された後において建築物の排水横枝管の配管状態
の変更に容易に対応可能な排水配管継手、排水横枝管からの排水を合流させる排水集合部が上下2段に設けられる場合であっても排水配管の配置にフレキシブルに対応可能な排水配管継手およびこのような排水配管継手が建築物に施工された後の排水配管の維持方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のある局面に係る排水配管継手は以下の技術的手段を講じている。
すなわち、本発明のある局面に係る排水配管継手は、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成され、建築物に施工された際に、床スラブの貫通孔に配置される管本体と、前記床スラブの上方に突出し上階からの排水を流入させる排水立管を接続する上立管接続部と、前記床スラブの下方に突出し下階に排水を流下させる排水立管を接続する下立管接続部と、前記床スラブの上方で排水横枝管からの排水を合流させる排水集合部とを備えた排水配管継手であって、前記排水集合部は、前記排水横枝管からの排水が集まる集水室を備え、前記集水室は、前記排水横枝管からの排水が流入する開口部を最大4つ備え、それぞれの前記開口部には前記排水横枝管が接続可能に構成された横枝管接続部材または前記排水横枝管が接続されずに前記開口部を封止する封止部材のいずれかが装着され、前記横枝管接続部材および前記封止部材は、前記集水室とは別体の射出成形品であって、前記集水室に可逆的に装着可能に構成されたことを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記集水室が、上下二段に設けられ、下段の前記集水室は、上段からの排水が前記排水横枝管へ逆流することを防止する庇を、上段の前記集水室の前記横枝管接続部材の装着数にかかわらず、前記排水横枝管の方向に対応する3箇所に備えるように構成することができる。
さらに好ましくは、前記庇は、下段の前記集水室と一体として成形された、または、前記集水室と別に成形されたように構成することができる。
【0009】
さらに好ましくは、前記管本体は、前記排水集合部と前記下立管接続部との間における前記管本体の内面であって平面視における前記庇が存在しない方向に、前記排水配管継手内の排水の流れを変化させる部分を備えるように構成することができる。
本発明の別の局面に係る排水配管の維持方法は、上述したいずれかの排水配管継手が建築物に施工された後に、前記建築物の排水横枝管の配管状態の変更に対応して、前記横枝管接続部材または封止部材の装着位置を変更させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成された建築物の床スラブを貫通して設けられる排水配管継手であって、建築物に施工された後において建築物の排水横枝管の配管状態の変更に容易に対応可能な排水配管継手、排水横枝管からの排水を合流させる排水集合部が上下2段に設けられる場合であっても排水配管の配置にフレキシブルに対応可能な排水配管継手およびこのような排水配管継手が建築物に施工された後の排水配管の維持方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る排水配管継手100が採用された排水配管構造を示す図であって、(A)ある方向から見た斜視図であって、(B)ある方向とは異なる方向から見た斜視図である。
【
図2】(A)
図1(B)の矢示2A方向から見た側面図であって、(B)
図2(A)の断面図である。
【
図3】(A)本発明の実施の形態に係る排水配管継手100が採用された排水配管構造の分解図であって、(B)管壁を透視した管本体110の斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る排水配管継手100の平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る排水配管継手100の斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る排水配管継手100において上下二段の集水室を備える場合の排水配管構造を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る排水配管継手100およびこの排水配管継手100を用いた排水配管の維持方法について、図面に基づき詳しく説明する。なお、以下において説明する排水配管継手100を用いた排水配管構造においては、排水横枝管からの排水が集まる集水室を上下二段に備えるが、本発明に係る排水配管継手はこのような段数に限定されるものではなく一段のみであっても構わない。
【0013】
図1および
図2に示すように、この排水配管継手100を用いた排水配管構造は、建築物における床スラブS(
図2(A)に2点鎖線の想像線で図示)を上下に貫通する貫通孔に設けられる非耐火性の樹脂製の排水配管継手100と、この排水配管継手100に接続される樹脂製の排水立管(上階からの排水を流入させる上階側排水立管220および下階に排水を流下させる下階側排水立管230)とを有している。ここで、上述したように本実施の形態に係る排水配管構造は集水室を上下二段に備えるために、より詳しくは、この排水配管構造は、排水配管継手100に加えて、上段排水集合部140Uおよび上立管接続部120ならびに集水室連結立管240をさらに有する。さらに、より詳しくは、これらの排水立管については、上階からの排水を流入させる上階側排水立管220が上段排水集合部140Uの上立管接続部120に接続され、下階に排水を流下させる下階側排水立管230が排水配管継手100の下立管接続部130に接続されている。
【0014】
ここで、「非耐火性」とは、建築物内で火災が生じたときに、これによる熱によって変形、溶融または燃焼可能な性質をいい、たとえば樹脂製のものが該当する。この排水配管継手100(上段排水集合部140U、上立管接続部120、集水室連結立管240を含む)および排水立管(上階側排水立管220および下階側排水立管230)は、たとえば塩化ビニル、ポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレンあるいはナイロン等によって成形されている。なお、この排水配管構造が備え付けられた建築物において、階下にて火災等が発生した場合に火炎や煤煙、有毒ガスが排水配管構造の焼損部位または溶損部位を通じて上層階へ流出することを防止するために、排水配管継手100において床スラブSを上下に貫通する貫通孔の位置に対応する部分(後述する管本体110)には熱膨張性耐火材が設けられている。また、排水立管(集水室連結立管240を含む)には、たとえばいわゆる耐火2層管を用いてもよい。
【0015】
この排水配管継手100は、
図3(A)に示すように、ひとつまたは複数(ここでは一例ではあるが5つ)の樹脂製の射出成形品で形成されている。そして、この排水配管継手100は、
図2(A)に示すように、建築物に施工された際に、床スラブSの貫通孔に配置される管本体110と、床スラブSの上方に突出し上階からの排水を流入させる上階側排水立管220(または集水室連結立管240)を接続する上立管接続部120と、床スラブSの下方に突出し下階に排水を流下させる下階側排水立管230を接続する下立管接続部130と、床スラブSの上方で排水横枝管からの排水を合流させる排水集合部140とを備える。ここで、上述したように、この排水配管構造においては、集水室を上下二段に備えるために、この下段側の排水集合部140として下段排水集合部140Dに加えて、上段側の排水集合部140として上段排水集合部140Uとを備えるが、構造は同じであって、上段排水集合部140Uの上立管接続部120には上階側排水立管220が接続され下段排水集合部140Dの上立管接続部120には上階側排水立管220と同じ立管に分類される集水室連結立管240が接続されている点が異なるだけであるために、これらの下段排水集合部140Dおよび上段排水集合部140Uを排水集合部140として説明する場合がある。また、同様の理由により、後述する上段集水室142Uおよび下段集水室142Dを集水室142として説明する場合がある。
【0016】
特徴的であるのは、
図3(A)および
図3(B)に示すように、排水集合部140は、排水横枝管からの排水が集まる上下2段の集水室142(上段集水室142U、下段集水室142D)を備え、これらの集水室142は、いずれも排水横枝管からの排水が流入する開口部144を最大4つ備え(ここでは平面視で90°間隔の3つ)、それぞれの開口部144には排水横枝管が接続可能に構成された横枝管接続部材146、148または排水横枝管が接続されずに開口部144を封止する封止部材150のいずれかが装着される。さらに、これらの横枝管接続部材146、148および封止部材150は、集水室14
2とは別体の射出成形品であって、集水室142に可逆的に装着可能に構成される。この集水室142が開口部144を平面視で90°間隔で4つ備える場合には、
図3(A)に示す5つの樹脂製の射出成形品に、さらに、横枝管接続部材146、148および封止部材150のいずれか1つが加わる。ここで、たとえば、上段集水室142Uに設けられる上立管接続部120と上階側排水立管220との間の溝G、横枝管接続部材146、148と排水横枝管(図示せず)との間の溝Gには、ゴムパッキンが設けられる。
【0017】
なお、この集水室142に設けられる上立管接続部120は、上段排水集合部140Uのように上段集水室142Uとは別体の射出成形品であっても構わないし、下段排水集合部140Dのように下段集水室142Dと一体的に射出成形されたものであっても構わない。さらに、集水室142は管本体110と一体的に射出成形されたものであっても構わない。すなわち、
図3(A)に示す排水配管継手100において別体の部材として射出成形されるものは、横枝管接続部材146、148および封止部材150であって、その他の部材はどのように組み合わせて一体的に射出成形されたものであっても構わない。
【0018】
また、横枝管接続部材146は縮径して排水横枝管と接続され、横枝管接続部材148は縮径しないで排水横枝管と接続される点が異なる。さらに、横枝管接続部材146の縮径率は限定されない。
上述したように、この排水配管構造においては集水室142が上下二段に設けられており(集水室142を含む排水集合部140が上下二段に設けられており)、下段排水集合部140Dにおける下段集水室142Dは、
図2(B)、
図4および
図5に示すように、上段からの排水が下段の排水横枝管へ逆流することを防止する庇160を、上段排水集合部140Uにおける上段集水室142Uの横枝管接続部材146、148の装着数にかかわらず、排水横枝管の方向に対応する3箇所に備える。
【0019】
ここで、この庇160は、下段集水室142Dと一体として成形されたものであっても、別に成形されたものであっても構わない。
さらに、管本体110は、下段排水集合部140Dと下立管接続部130との間における管本体110の内面であって平面視における庇160が存在しない方向に、排水配管継手100内の排水の流れを変化させる部分を備える。より詳しくは、この部分は、管本体110の内面に突出するたとえば旋回羽根114であって、管本体110の外面にはこの旋回羽根114に対応するくぼみ112が形成されている。この旋回羽根114は、建築物に施工された際に、少なくともその一部が床スラブSの上端から下端までの範囲の少なくとも一部に対応する位置に形成されている。なお、排水配管継手100内の排水の流れを変化させる部分であれば、旋回羽根114に限定されるものではなく、偏流板等であっても構わず、その他のものであっても構わない。
このような特徴を備えた排水配管継手100をさらに詳しく説明する。
【0020】
<可逆的に装着可能>
まず、横枝管接続部材146、148および封止部材150が集水室142に可逆的に装着可能に構成される点について、以下に詳しく説明する。
この排水配管継手100における排水集合部140を構成する集水室142は、上述したように開口部144を最大4つ備える。そして、それらの開口部144のうちの排水横枝管が接続される開口部144には排水横枝管が接続可能に構成された横枝管接続部材146、148が装着され、排水横枝管が接続されない開口部144にはその開口を封止する封止部材150が装着される。これらの横枝管接続部材146、148および封止部材150は、集水室142とは別体の射出成形品で構成されており、集水室142に可逆的に装着可能に構成される。ここで、可逆的に装着可能とは、このような排水配管継手100を建築物に施工した後において、集水室142の開口部144と横枝管接続部材146、148との間から水漏れすることなく、集水室142の開口部144と封止部材150との間から水漏れすることなく、かつ、このように水漏れすることなく集水室142の開口部144に装着された横枝管接続部材146、148および封止部材150を開口部144から取り外して別の横枝管接続部材146、148または封止部材150と再度水漏れすることなく装着できることを意味する。
【0021】
このように水漏れなく可逆的に装着可能であれば、その装着構造は限定されるものではなく、たとえば、ねじによる螺合、嵌め込みによる嵌合等の接合方法による装着が一例として挙げられる。さらに、これらの横枝管接続部材146、148または封止部材150を開口部144に可逆的に装着するタイミングは、この排水配管継手100の製造工場における製造時、製造工場からの出荷時、建物への施工時、その他の時のいずれであっても構わない。
<上下二段構成>
限定されるものではないが、集水室142を上下二段に備える場合について、以下に更に詳しく説明する。
【0022】
図2(B)、
図4および
図5に示す庇160は、上段からの排水が下段の排水横枝管へ逆流することを防止する機能を発現できれば限定されるものではないが、たとえば、以下のような構造を備える。
この庇160は、下段集水室142Dの開口部144の上側部分にほぼ沿った形状となるように設けられる。庇160は、排水横枝管への逆流を防止するためには下段集水室142Dの中心軸へ向かって張り出す形状が好ましいが、あまり張り出し部が大き過ぎると排水性能が低下するために、張り出し長さを抑えて、下側に傾斜させつつ、下側に行くに従って幅W(
図2(B)に図示)を狭めた形状を備えている。
【0023】
そして、上段排水集合部140Uにおける集水室142の横枝管接続部材146、148の装着数にかかわらず、下段排水集合部140Dにおける下段集水室142Dは、排水横枝管の方向に対応する3箇所に備える。この点について
図6を参照して詳しく説明する。
図6は、上段排水集合部140Uおよび下段排水集合部140Dを平面視した模式的な図である。集水室142における開口部144は最大4つ備えるが、ここでは、4つおよび3つの場合を示している。ただし、開口部が3つではなく開口部144を4つ設けてそのうちの1つの開口部144には封止部材150が可逆的に装着されていても構わない。しかしながら、後述する理由によりこの封止部材150を横枝管接続部材146、148へ変更して排水横枝管を接続することは好ましくない。
【0024】
第1のパターンにおいては、点線矢示で示すように、上段において、矢示C方向の排水横枝管が存在しないために(上段において矢示C方向からの排水が存在しないために)、下段において、矢示C方向に平面視で180°対向する矢示A方向への上段からの逆流も存在しない。このため、第1のパターンにおいては下段の矢示A方向に庇160は必要ではないので、その他の3方向に庇160が設けられる。
【0025】
第2のパターンにおいては、点線矢示で示すように、下段において、矢示A方向の排水横枝管が存在しないために、上段における矢示C方向の排水横枝管からの排水が存在するものの、下段における逆流が存在しない。このため、第2のパターンにおいては下段の矢示A方向に庇160は必要ではないので、その他の3方向に庇160が設けられる。
第3のパターンにおいては、点線矢示で示すように、上段において、矢示C方向の排水横枝管が存在しないために(上段において矢示C方向からの排水が存在しないために)、かつ、下段において、矢示A方向の排水横枝管が存在しないために、逆流が存在しない。このため、第3のパターンにおいては下段の矢示A方向に庇160は必要ではないので、その他の3方向に庇160が設けられる。
【0026】
そして、
図6に示すように、平面視における庇160が存在しない方向に、排水配管継手100内の排水の流れを変化させる部分の一例として旋回羽根114を備える。このように平面視において旋回羽根114は庇160に重ならないために、旋回羽根114の機能を十分に発現させることができる。
このようにして、旋回羽根114の機能を十分に発現させつつ、上段側の排水が流れ込まないようにするために下段側の排水横枝管を上段側の排水横枝管と周方向に180°反対側となる位置(対向する位置)には設けないという制限を受けない。
【0027】
なお、
図6に点線矢示で示す位置に排水横枝管を接続すると、平面視で旋回羽根114に重なる位置に庇160を設けて上段からの逆流を防止しなければならず、旋回羽根11
4への流れを阻害して旋回羽根114の機能を十分に発現させることができなくなるために好ましくない。このため、上述したように、開口部144を4つ設けてそのうちの1つの開口部144には封止部材150を可逆的に装着されていたとしても、この封止部材150を横枝管接続部材146、148へ変更して排水横枝管を接続することは好ましくない。
【0028】
<維持方法>
以下において、本実施の形態に係る排水配管継手100を採用した排水配管の維持方法について詳しく説明する。
この維持方法は、上述した排水配管継手100が建築物に施工された後に、建築物の排水横枝管の配管状態の変更に対応して、横枝管接続部材146、148または封止部材150の装着位置を変更させることを特徴とする。
たとえば、新規に建築される建築物(集合住宅など)において、上述したような排水配管継手100を採用して
図1および
図2に示す排水配管構造を備えた排水配管が構築される。これらの図に示すように構築された排水配管を備えた建築物において、リフォーム等を理由としてトイレを増設して、浴室を移設する場合を想定する。
【0029】
トイレの増設に対しては、増設するトイレに接続される排水横枝管の増設状態に対応して、たとえば、排水集合部140の集水室142に可逆的に装着可能に構成された封止部材150を横枝管接続部材146、148に交換して増設するトイレに接続される排水横枝管を接続する。
浴室の移設に対しては、移設元の浴室に接続されていた排水横枝管から移設先の浴室に接続される排水横枝管の変更状態に対応して、たとえば、移設元の浴室に接続されていた排水横枝管が接続されていた排水集合部140の集水室142に可逆的に装着可能に構成された横枝管接続部材146、148を封止部材150に交換して、移設後の浴室に接続される排水横枝管の増設状態に対応して、排水集合部140の集水室142に可逆的に装着可能に構成された封止部材150を横枝管接続部材146、148に交換して移設する浴室に接続される排水横枝管を接続する。
【0030】
以上のようにして、本実施の形態に係る排水配管継手によると、ひとつまたは複数の樹脂製の射出成形品で形成された建築物の床スラブを貫通して設けられる排水配管継手であって、建築物に施工された後において建築物の排水横枝管の配管状態の変更に容易に対応可能な排水配管継手、排水横枝管からの排水を合流させる排水集合部が上下2段に設けられる場合であっても排水配管の配置にフレキシブルに対応可能な排水配管継手を提供することができる。さらに、本実施の形態に係る排水配管の維持方法により、建築物に施工された後において建築物の排水横枝管の配管状態の変更に容易に対応することが可能になる。
【0031】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、建築物の床スラブを貫通して設けられる排水配管継手に好ましく、建築物に施工された後において建築物の排水横枝管の配管状態の変更に容易に対応可能である点で特に好ましい。
【符号の説明】
【0033】
100 排水配管継手
110 管本体
112 くぼみ
114 旋回羽根
120 上立管接続部
130 下立管接続部
140 排水集合部(上段排水集合部140U、下段排水集合部140D)
142 集水室(上段集水室142U、下段集水室142D)
144 開口部
146、148 横枝管接続部材
150 封止部材
160 庇
220 上階側排水立管
230 下階側排水立管
240 集水室接続立管