(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】めっきレジスト用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C25D 5/02 20060101AFI20221205BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20221205BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20221205BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20221205BHJP
H01G 9/20 20060101ALN20221205BHJP
H01L 31/0224 20060101ALN20221205BHJP
【FI】
C25D5/02 E
C08F2/50
C08F2/44 C
H05K3/18 D
H01G9/20 111D
H01G9/20 115A
H01L31/04 260
(21)【出願番号】P 2018243284
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】310024066
【氏名又は名称】太陽インキ製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】西尾 一則
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 俊春
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-324490(JP,A)
【文献】特開平09-043846(JP,A)
【文献】特表2017-533814(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/02
H05K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アルカリ可溶性ポリマー、(B)(メタ)アクリロイル基を有するモルフォリン化合物、(C)光重合開始剤、および、(D)シランカップリング処理されたタルクを含むことを特徴とするめっきレジスト用
紫外線硬化型樹脂組成物
であって、
前記(A)アルカリ可溶性ポリマーはロジン系樹脂、カルボキシル基を含有するアクリル共重合樹脂、フェノール系樹脂、クレゾール系樹脂のいずれか少なくとも一種を含み、
前記めっきレジスト用紫外線硬化型樹脂組成物中の不揮発分換算で、前記(A)アルカリ可溶性ポリマーと前記(B)(メタ)アクリロイル基を有するモルフォリン化合物の合計の配合量は、20~80質量%であり、
前記(B)(メタ)アクリロイル基を有するモルフォリン化合物の配合量は、前記(A)アルカリ可溶性ポリマーと前記(B)(メタ)アクリロイル基を有するモルフォリン化合物の総量100質量%中の比率で、25~80質量%であることを特徴とするめっきレジスト用紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
前記(D)シランカップリング処理されたタルクの配合量は、前記めっきレジスト用紫外線硬化型樹脂組成物中の不揮発分換算で20~70質量%であることを特徴とする請求項1記載のめっきレジスト用紫外線硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、多塩基酸無水物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単量体のハーフエステルを含むことを特徴とする請求項1
または2記載のめっきレジスト用
紫外線硬化型樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はめっきレジスト用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の電極形成において、従来から、銀ペーストを用いて、電極を形成する工法が一般的に行われている。
近年、生産のコストダウンを目的に従来の銀ペーストを用いる工法に変えて、めっきレジストを用いて、銅めっきにより電極を形成する工法が検討されている。
銅めっきから基材を保護するレジストには、ネガフィルムを用いて光で硬化させ、光が当たらない箇所をアルカリで現像してパターン形成する現像型レジスト、また、直接、パターンを印刷し、熱乾燥により溶剤を蒸発させてパターン形成する熱乾燥タイプのレジスト、熱乾燥を用いず、紫外線で硬化させるタイプのレジストがある。塗膜の剥離方法では、剥離液に有機溶剤を用いるものとアルカリ水溶液を用いるものとがある。上記の中で、現像型レジストは、パターン形成の工程が多く、生産性が悪い。直接パターンを印刷するレジストで、熱乾燥型は、乾燥に時間が掛かる、有機溶剤を使用している為環境負荷が大きいなどの問題がある。また、溶剤剥離タイプは、剥離液に有機溶剤を使用する為環境負荷が大きい。これらの事から、直接パターンを印刷し、紫外線で硬化し、アルカリ水溶液で剥離するタイプが好ましいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アルカリ水溶液による剥離が膨潤剥離になる場合、剥離した膜が基材や、剥離層内の送りロール、搾りロールに再付着し易い。送りロールや絞りロールに再付着した剥離膜は基材に付着しやすく、剥離不良の原因になる。その為、膨潤剥離した塗膜は、フィルター等で除去する必要がり、その為の設備を新たに設置することを要するため、設備費の負担も大きくなる。
【0005】
このような課題を解決するために、膨潤剥離ではなく、アルカリ水溶液に完全に溶解させることができるめっきレジストが求められている。また、めっきレジストには、電解めっき時のクラックを防止すること、および、硬化塗膜の指触乾燥性が良いことも求められる。しかしながら、従来より提案されている紫外線硬化型レジストを電解めっきの保護用途に用いた場合、これらの課題を同時に解決する事はできなかった。
【0006】
例えば、特許文献1ではハーフエステルオリゴマーとして、多塩基酸無水物とアクリルモノマーからなるハーフエステルを使用しているが、アルカリ水溶液で膨潤剥離になる。また、紫外線照射により硬化させた塗膜は、指触乾燥性が悪く、重ね合わせた時に張り付きやすく、作業性を著しく低下させる。従って、多塩基酸無水物とアクリレートのハーフエステルを使用した場合には、電解めっき時のクラックを防止することはできるが、アルカリ水溶液への溶解性および指触乾燥性を満足させることができなかった。
【0007】
そこで本発明の目的は、電解めっき時のクラックを抑制し、アルカリ水溶液への溶解性および指触乾燥性に優れた硬化塗膜が得られるめっきレジスト用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記に鑑み鋭意検討した結果、アルカリ可溶性ポリマー、(メタ)アクリロイル基を有するモルフォリン化合物、光重合開始剤、および、シランカップリング処理されたタルクを配合することによって、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性ポリマー、(B)(メタ)アクリロイル基を有するモルフォリン化合物、(C)光重合開始剤、および、(D)シランカップリング処理されたタルクを含むことを特徴とするものである。
【0010】
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、さらに、多塩基酸無水物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単量体のハーフエステルを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電解めっき時のクラックを抑制し、アルカリ水溶液への溶解性および指触乾燥性に優れた硬化塗膜が得られるめっきレジスト用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物が含有する成分について詳述する。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基、メタクリロイル基およびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0013】
[(A)アルカリ可溶性ポリマー]
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性ポリマーを含有する。本発明において、アルカリ可溶性ポリマーは、ロジン系樹脂、カルボキシル基を含有するアクリル共重合樹脂、フェノール系樹脂、および、クレゾール系樹脂等が挙げられる。アルカリ可溶性ポリマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。アルカリ可溶性ポリマーはエチレン性不飽和結合を有していてもよい。アルカリ可溶性ポリマーのなかでも、カルボキシル基を含有するアクリル共重合樹脂、その中でも特に重量平均分子量の範囲が、5,000~50,000、より好ましくは、7,000~20,000の範囲にあり、かつ酸価が、50~300mgKOH/gより好ましくは、80~220mgKOH/gの範囲に含まれるのが良い。重量平均分子量が5,000以上の場合、乾燥後の塗膜の指触乾燥性が良好であり、作業性に優れ、めっき耐性も向上する。重量平均分子量が50,000以下の場合、アルカリ溶解性が良好であり、また、(メタ)アクリレートとの相溶性も良好である。
【0014】
ロジン系樹脂としては、天然樹脂のガムロジン、ウッドロジン、化学変性した水添ロジン、重合ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等があげられる。これらロジン系樹脂の軟化点は、60℃以上が好ましい。60℃以上の場合、紫外線で硬化させた塗膜の指触乾燥性が良好である。酸価は、80~200mgKOH/gの範囲にある事が好ましい。80mgKOH/g以上の場合、アルカリ溶解性が良好であり、200mgKOH/g以下の場合、親水性も高くならず、めっき耐性も良好である。
【0015】
フェノール系樹脂、クレゾール系樹脂としては、ノボラック型が好ましく、本発明において、レゾール型や他のアルキルフェノール型と比べてアルカリ可溶性が良好となる。
【0016】
カルボキシル基を含有するアクリル共重合樹脂としては、(メタ)アクリル酸(以下、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸を意味する)共重合物、例えば、メタクリル酸メチル-メタクリル酸の共重合物のような二元共重合物や、スチレン-2-エチルヘキシルアクリレート-アクリル酸の共重合物のような三元共重合物等任意の(メタ)アクリロイル基含有単量体の組み合わせによって得られる共重合物があげられる。
【0017】
(A)アルカリ可溶性ポリマーの配合量は、(A)アルカリ可溶性ポリマーと(B)(メタ)アクリロイル基を有するモルフォリン化合物の総量100質量%中の比率で、好ましくは20~70質量%であり、より好ましくは40~60質量%である。20質量%以上だと、粘度が低くなり過ぎないためスクリーン印刷に適しており、アルカリ溶解性も良好である。70質量%以下だと、粘度が高くなり過ぎず作業性が良好であり、また、光硬化性も良好である。
【0018】
[(B)(メタ)アクリロイル基を有するモルフォリン化合物]
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、(B)(メタ)アクリロイル基を有するモルフォリン化合物を含有する。(メタ)アクリロイル基を有するモルフォリン化合物としては、例えば、N-アクリロイルモルフォリン、N-メタクリロイルモルフォリン等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有するモルフォリン化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
(B)(メタ)アクリロイル基を有するモルフォリン化合物の配合量は、(A)アルカリ可溶性ポリマーと(B)(メタ)アクリロイル基を有するモルフォリン化合物の総量100質量%中の比率で、好ましくは25~80質量%であり、より好ましくは35~60質量%である。25質量%以上だと、粘度が高くなり過ぎず、作業性が良好となり、また、光反応性が良好であり、生産性が向上する。80質量%以下だと、アルカリ溶解性がより良好となり、組成物残渣の発生がより抑制される。
【0020】
また、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物中に、不揮発分換算で、(A)アルカリ可溶性ポリマーと(B)(メタ)アクリロイル基を有するモルフォリン化合物は合計で、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは40~60質量%である。20質量%以上だと、アルカリ溶解性がより良好であり、組成物の残渣の発生がより抑制され、また、硬化性も良好であり、作業の効率性に優れる。80質量%以下だと、光硬化性も良好であり、作業の効率性に優れ、また、電解めっきによるクラックの発生をより抑制できる。
【0021】
[(C)光重合開始剤]
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、(C)光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、例えば、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGM社製Omnirad 819)等のビスアシルフォスフィンオキサイド類;2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィン酸メチルエステル、2-メチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ピバロイルフェニルフォスフィン酸イソプロピルエステル、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(IGM社製Omnirad TPO H)等のモノアシルフォスフィンオキサイド類;1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン等のヒドロキシアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)等のオキシムエステル類;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(2-(1-ピル-1-イル)エチル)フェニル]チタニウム等のチタノセン類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に好ましい開始剤として、ベンジルメチルケタール系ラジカル重合開始剤としては、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名Omnirad651、IGM Resins社製)等が挙げられ、α-ヒドロキシアルキルフェノン系ラジカル重合開始剤としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名Omnirad1173、IGM Resins社の登録商標)等が挙げられ、アシルフォスフィンオキサイド系ラジカル重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名OmniradTPO H、IGM Resins社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(商品名Omnirad819、IGM Resins社製)等が挙げられる。
【0022】
(C)光重合開始剤の配合量は、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物中に、不揮発分換算で、1~15質量%、より好ましくは、2~7質量%である。配合量が、1質量%以上の場合、硬化性が良好であり、めっき時の剥がれも生じない。配合量が、15質量%以下の場合、重合度は良好で、この場合もめっき時の剥がれは生じない。
【0023】
[(D)シランカップリング処理されたタルク]
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、(D)シランカップリング処理されたタルクを含有する。シランカップリング処理されたタルクの調整方法は特に限定されないが、表面処理剤として、ビニルシラン系カップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤等のシラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物等を用いて調整することができる。ビニルシラン系カップリング剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。アミノシラン系カップリング剤としては、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。エポキシシラン系カップリング剤としては、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。メルカプトシラン系カップリング剤としては、メルカトプロピルトリメトキシシラン、メルカトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。また、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン等の他のシラン系カップリング剤も用いることができる。オルガノシラザン化合物としては、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルシクロトリシラザン等が挙げられる。
【0024】
表面処理剤の中でも、シラン系カップリング剤が好ましく、ビニルシラン系カップリング剤がより好ましく、メタクリロキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリロキシシラン系カップリング剤がさらに好ましい。
【0025】
(D)シランカップリング処理されたタルクは、市販品のタルクを処理したものであってもよく、例えば、日本タルク社製ミクロエースK1をビニルシラン系カップリング剤で処理したタルク等を用いてもよい。
【0026】
(D)シランカップリング処理されたタルクの平均一次粒径は、0.1~20μmであることが好ましく、0.5~15μmであることがより好ましい。
【0027】
(D)シランカップリング処理されたタルクは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(D)シランカップリング処理されたタルクの配合量は、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物中に、不揮発分換算で、20~70質量%、より好ましくは、30~60質量%である。20質量%以上だと、クラック防止効果がより良好となる。70質量%以下だと、剥離工程でより溶解させやすく、残渣がより生じにくい。
【0028】
(多塩基酸無水物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単量体のハーフエステル)
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、多塩基酸無水物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単量体のハーフエステルを含有することが好ましく、電解めっき時のめっき液のレジスト塗膜への染み込みがより抑制され、剥離残渣を低減することができる。
【0029】
多塩基酸無水物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単量体のハーフエステルとしては、レジスト用組成物に用いることができる慣用公知のものを用いればよい。ここでハーフエステルとは、多塩基酸無水物1モルに対し(メタ)アクリレート単量体1モルとで合成するのが前提であるが、(メタ)アクリレート単量体を過剰に用いてもよい。多塩基酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、3-メチル無水テトラヒドロフタル酸、4-メチル無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、3-メチル無水ヘキサヒドロフタル酸、4-メチル無水ヘキサヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ドデセシルコハク酸、無水ハイミック酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。また、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メチル)アクリレート等が挙げられる。前記ハーフエステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
前記ハーフエステルは、多塩基酸無水物とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート単量体とを通常のエステル化反応させた構造を有するハーフエステルであればよく、例えば、多塩基酸無水物に代えて多塩基酸を用いて得られたハーフエステルであってもよい。
【0031】
前記ハーフエステルの配合量は、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物中に、不揮発分換算で、10~60質量%、より好ましくは15~50質量%。10質量%以上の場合は、硬化性が良好であり、塗膜へのめっき液の染み込みが抑制される。60質量%以下の場合、剥離時の溶解性により優れ、又硬化塗膜のべた付きが抑制され、作業性が良好となる。
【0032】
(光反応性モノマー)
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、前記課題を解決できる範囲内であれば、光反応性モノマーを適宜含有してもよい。光反応性モノマーとしては、活性エネルギー線照射により硬化する樹脂であればよく、特に、本発明においては、分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましく用いられる。光反応性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
光反応性モノマーは、反応性希釈剤であることが好ましく、1分子中に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基と少なくとも1個のカルボン酸基を有する光重合性モノマーであることが好ましい。具体的には、(メタ)アクリレート単量体および、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどの2官能性不飽和化合物が好ましい。なお、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物には、光反応性モノマーとして3官能以上の(メタ)アクリレートを含まないことが好ましく、めっきレジスト膜を剥離工程でアルカリ水溶液により容易に溶解させることができ、剥離残渣をより容易に抑制することができる。
【0034】
光反応性モノマーの配合量は、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物中に、不揮発分換算で、1~30質量%を配合されることが好ましく、より好ましくは、2~15%である。1質量%以上の配合で希釈効果が得られ、好ましいスクリーン印刷に適した粘度に調整する事ができる。30質量%以内であれば、スクリーン印刷に適した粘度を保持できる。
【0035】
(揺変剤)
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、シランカップリング処理されたタルク以外の揺変剤を含有してもよい。揺変剤は、樹脂組成物に添加することによりチキソトロピー的挙動を付与する作用を有する。チキソトロピー的挙動とは、樹脂組成物にせん断応力を与えると粘度が低下し、応力が無くなると粘度が上昇する挙動である。チキソトロピー的挙動は、フィラーや顔料を配合する場合はそれらの沈降防止に役立つ。揺変剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
揺変剤としては、無機揺変剤と有機系揺変剤が挙げられ、前記課題を解決できる範囲内
であれば、適宜、含有してもよい。
無機揺変剤としては、シリカ、特に一次粒子径が5~50nmで比表面積が30m2/g以上の超微粉シリカが好ましい。超微粉シリカの具体例としては、日本エアロジル社製のAEROSIL 90、AEROSIL 130、AEROSIL 150、AEROSIL 200、AEROSIL 255、AEROSIL 300、AEROSIL 380、AEROSIL RY50、AEROSIL RY200、AEROSIL RX200、AEROSIL R540、東ソー・シリカ社製のNipsil L-250、Nipsil L-300、Nipsil E-200A、Nipsil E-220A、Nipsil N-300Aなどが挙げられる。超微粉シリカの配合量は、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物中に、不揮発分換算で、好ましくは1~15質量%、より好ましくは2~5質量%である。1質量%以上の場合は、チキソ性が良好となり、パターンの再現性が良好となる。15質量%以下の場合、チキソ性が高くなりすぎず、消泡性が良好であり、レベリングが良く、ピンホールやかすれが発生しにくく、又パターンの再現性も良好となる。
【0037】
その他の無機揺変剤としては、ベントナイト類等の粘土鉱物が挙げられる。粘土鉱物の具体例としては、ホージュン社製のエスベン、エスベンE、エスベンWX、エスベンC、エスベンW、白石工業社製のオルベン、オルベンA、オルベンP等が挙げられる。
【0038】
有機系揺変剤としては、カルボン酸を含む植物油、合成油、ポリマー等とアミンを反応させたアミド系、植物油を主体とする油脂に水素添加した水添油脂系、ポリエチレンを酸化処理し、極性基を導入した酸化ポリエチレン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、フッ素系、界面活性剤系等があり、また、これらを2種以上併用した複合系がある。有機系揺変剤の具体例としては、共栄社化学社製のターレン2000、ターレン2450、ターレン7200、ターレン7500、ターレン8700、ターレン8900、ターレンKY-2000、ターレンM-1021B、フローノンRCM-210、フローノンSH-290、フローノンSA-300、楠本化成社製のDISPARLON 3600、DISPARLON 3900、DISPARLON 4200、DISPARLON 4401、DISPARLON 6500、DISPARLON 6810、DISPARLON 6900、ビックケミー社製のBYK-405、BYK-410、BYK-411、BYK-430、BYK-431等が挙げられる。
【0039】
(その他の添加剤)
この他、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物には、レジストの分野において公知慣用の他の添加剤を配合してもよい。他の添加剤としては、例えば、カップリング剤、表面張力調整剤、界面活性剤、マット剤、熱重合禁止剤、酸化防止剤、防錆剤、無機フィラー、有機フィラー、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の公知慣用の着色剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤およびレベリング剤等が挙げられる。このような添加剤は、本発明の効果を損なわず、添加剤の所望の効果が得られる範囲で、適宜使用量を調節して配合すればよい。
【0040】
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、有機溶剤を含んでもよいが、光硬化性の観点から、有機溶剤を含まないことが好ましく、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物中に3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
【0041】
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、1液性でも2液性以上でもよい。
【0042】
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物を用いて、めっきレジスト膜を形成する方法としては特に限定されず、慣用公知の印刷法、例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等で印刷して、所望のパターン状のめっきレジストを形成すればよい。
【0043】
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物で形成しためっきレジスト膜は希アルカリ水溶液により溶解可能であり、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等の公知の剥離液にて容易に除去できる。水酸化ナトリウム等のアルカリ物質の濃度は、例えば1~5質量%である。
【0044】
本発明のめっきレジスト用樹脂組成物で形成するめっきレジストは特に限定されず、例えば、太陽電池の電極形成におけるめっきレジスト、プリント配線板のめっきレジストなどが挙げられる。また、めっきレジスト用樹脂組成物で形成するめっきレジストが曝されるめっき処理は特に限定されず、例えば、電解銅めっき、電解はんだめっき、電解すずめっきなどのめっき処理に用いることができる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。尚、以下において「部」および「%」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0046】
(樹脂組成物の調製)
下記表1に記載の実施例および比較例で示した各成分を配合後、撹拌により混合した。その後3本ロールで2回練り、樹脂組成物を調製した。
【0047】
(試験基板の作製)
酸処理後バフ研磨した銅張積層板の上に400メッシュのステンレス製のバイアススクリーンを用いて印刷した。その時の塗膜厚みは、12μmであった。メタルハライドランプを光源とするUV照射機を使用して、1000mJ/cm2の光量で塗膜を硬化させた。
【0048】
(指触乾燥性)
硬化後、室温まで冷却した塗膜どうしを張り合わせ、1kgの荷重をかけ、6時間放置後の張り付き度合いを確認した。
評価方法:
〇:引き離しても、塗膜に異常がなかった。
△:引き離し時に、塗膜に後が付いた。
×:引き離し時に、塗膜が剥がれた。
【0049】
(印刷性)
解像線幅100μmの箇所のにじみ幅を測定した。
◎:30%未満
〇:にじみ幅が30~50%。
×:にじみ幅が50%超。
【0050】
(電解めっき後の評価)
電解硫酸銅めっき後に、目視にて塗膜の外観を確認し、光学顕微鏡でレジスト塗膜上のクラックの有無を確認した。
電解硫酸銅めっき条件:
液温30℃、処理時間30分
めっき液耐性:
◎:テープピーリングで剥がれ無し。
〇:外観異常なし。
×:めっき液のレジスト塗膜への染み込み有り。
クラック耐性:
○:クラックの発生無し。
△:塗膜表面のみにクラックが発生。塗膜下の銅面までは達していない。
×:塗膜下の銅面まで達するクラックが発生。
【0051】
(剥離状態の確認)
50℃に加温した3%水酸化ナトリウム水溶液に試験基板を30秒間浸漬し、剥離状態を確認した。
○:溶解。
×:膨潤。
【0052】
(剥離残渣の確認)
50℃に加温した3%水酸化ナトリウム水溶液に試験基板を30秒間浸漬した後、0.1MPaの圧力で20秒間シャワーで水洗し、60℃1分間乾燥させた後、アルコールを染み込ませたペーパーで拭き取りペーパーにレジスト残渣が付着するかを目視で確認した。
◎:水酸化ナトリウムの浸漬時間が20秒で残渣なく剥離ができた。
〇:剥離残渣なし。
△:剥離残渣が印刷面積の50%以下。
×:印刷面積の50%以上で剥離残渣あり。
【0053】
【0054】
*1:スチレン、アクリル酸共重合樹脂(BASFジャパン社製ジョンクリル67)
*2:フェノールノボラック樹脂(アイカ工業社製BRG-557)
*3:多塩基酸無水物のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのハーフエステル(共栄社化学社製HOA-MPL)
*4:アクリロイルモルフォリン(KJケミカル社製ACMO)
*5:2-ヒドロキシエチルメタクリレート(共栄社化学社製ライトエステルHO-250)
*6:ジメチルポリシロキサン(信越化学工業社製KS-66)
*7:カーボンブラック(黒色着色剤)
*8:光重合開始剤(IGM社製Omnirad 651)
*9:揺変剤(日本アエロジル社製アエロジル#200(微粉末シリカ))
*10:シランカップリング処理されたタルク(パウデックス社製スペクトラK)
*11:無処理タルク(富士タルク社製ミクロエースK-1)
【0055】
上記表中に示すように、本発明のめっきレジスト用樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性ポリマー、(B)(メタ)アクリロイル基を有するモルフォリン化合物、(C)光重合開始剤、および、(D)シランカップリング処理されたタルクを含むめっきレジスト用樹脂組成物を用いて形成しためっきレジスト膜は、指触乾燥性に優れ、電解めっき時のクラックを抑制し、アルカリ水溶液に完全に溶解し、レジスト膜の残渣が無く剥離できることがわかる。一方、比較例1の樹脂組成物を用いて形成しためっきレジスト膜は、電解めっき時のクラックが発生し、また、アルカリ水溶液処理では残渣が生じた。比較例2の樹脂組成物を用いて形成しためっきレジスト膜は、膨潤剥離し、剥離残渣も生じた。