IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイガー・バイオファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】デルタ型肝炎ウイルス感染の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/427 20060101AFI20221205BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 38/21 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 9/24 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20221205BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
A61K31/427 ZMD
A61K31/4545
A61K38/21
A61K9/24
A61K9/14
A61K9/48
A61K47/60
A61P31/20
A61P31/14
A61P37/04
A61P43/00 121
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2018542682
(86)(22)【出願日】2016-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-08
(86)【国際出願番号】 US2016058937
(87)【国際公開番号】W WO2017079009
(87)【国際公開日】2017-05-11
【審査請求日】2019-10-25
(31)【優先権主張番号】62/251,026
(32)【優先日】2015-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/297,740
(32)【優先日】2016-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/321,623
(32)【優先日】2016-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516326575
【氏名又は名称】アイガー・バイオファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Eiger Biopharmaceuticals, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・エイ・コリー
(72)【発明者】
【氏名】イングリッド・チュン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・エス・グレン
【審査官】鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/088126(WO,A1)
【文献】Journal of Hepatology,2015年04月,Vol.62,No.Suppl.2,pp.S252
【文献】World J. Gastroenterol,2015年08月,Vol.21,No.32,pp.9461-9465
【文献】Gastroenterology,2007年,Vol.132,No.4,Suppl.2,pp.A765
【文献】Hepatology,2014年,Vol.60,No.Suppl.1,Sp.Iss.SI,pp.308A-309A
【文献】Bioanalysis,2015年05月,Vol.7,No.9,pp.1093-1106
【文献】Journal of Clinical Pharmacology,2014年,Vol.55,No.1,pp.63-72
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
A61K 38/00-38/58
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 31/20
A61P 31/14
A61P 37/04
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デルタ型肝炎ウイルス(HDV)感染を有するヒト患者のHDVウイルス量を減少させるための、ロナファルニブおよびリトナビルを含む医薬であって、ロナファルニブおよびリトナビルを、少なくとも12週間ロナファルニブ-リトナビル共治療として投与して、患者を処置し、患者が、処置の開始前に少なくとも10IU/mL血清のベースラインウイルス量を有し、処置が、10IU/mL血清未満へのウイルス量の減少を生じ、ロナファルニブが、50mg~150mgの範囲の合計1日用量で投与される、医薬。
【請求項2】
処置後に少なくとも1ヶ月間、HDVウイルス量が、10IU/mL血清未満のままである、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
処置が、検出レベル未満のHDVウイルス量を生じる、請求項1に記載の医薬。
【請求項4】
処置後に少なくとも1ヶ月間、HDVウイルス量が、検出レベル未満のままである、請求項3に記載の医薬。
【請求項5】
患者が、1mL血清当たり10HDV RNAコピー未満のウイルス量を有すると判定された後、ロナファルニブ-リトナビル共治療での処置を少なくとも30日間継続する、請求項1に記載の医薬。
【請求項6】
ロナファルニブが、25mgBIDの用量で投与され、リトナビルが、100mgBIDの用量で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項7】
患者が、少なくとも120日間ロナファルニブ-リトナビル共治療で処置される、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項8】
患者が、少なくとも180日間ロナファルニブ-リトナビル共治療で処置される、請求項7に記載の医薬。
【請求項9】
第1の用量でロナファルニブを投与した後、第2の用量でロナファルニブを投与し、第2の用量が、第1の用量より低い、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項10】
肝炎フレアの発生を検出しながら投与される、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項11】
肝炎フレアが、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の、200U/Lを超えるレベルへの急激な上昇を特徴とする、請求項10に記載の医薬。
【請求項12】
患者がB型肝炎ウイルス(HBV)にも感染しており、医薬が、患者のB型肝炎ウイルス(HBV)ウイルス量において、少なくとも3logの一過性の増加を検出しながら投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項13】
ロナファルニブ-リトナビル共治療が、肝炎フレアの発生を検出する前、または一過性の増加を検出する前に中止される、請求項10~12のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項14】
デルタ型肝炎ウイルス(HDV)およびB型肝炎ウイルス(HBV)に感染した患者における免疫再活性化を誘導するための、ロナファルニブおよびリトナビルを含む医薬であって、ロナファルニブおよびリトナビルを、少なくとも12週間および/または肝炎フレアが観察されるまで、ロナファルニブ-リトナビル共治療として投与し、ロナファルニブが、50mg~150mgの範囲の合計1日用量で投与され、リトナビルが、100mg~200mgの範囲の合計1日用量で投与される、医薬。
【請求項15】
ロナファルニブ-リトナビル共治療が、10~24週間の処置後に中止され、ロナファルニブ-リトナビル共治療が、少なくとも4週間患者に投与されない、請求項1~14のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項16】
ロナファルニブ-リトナビル共治療が、10~14週間の処置後に中止される、請求項15に記載の医薬。
【請求項17】
ロナファルニブ-リトナビル共治療が、12週間の処置後に中止される、請求項16に記載の医薬。
【請求項18】
肝炎フレアが、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の、200U/Lを超えるレベルへの急激な上昇を特徴とする、請求項14~17のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項19】
肝炎フレアが、患者のHBVウイルス量の一過性の増加を伴う、請求項14~18のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項20】
免疫再活性化の後、HDVウイルス量が、少なくとも3log減少する、請求項14~19のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項21】
免疫再活性化の後、HBVウイルス量が、少なくとも2log減少する、請求項14~20のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項22】
HDVウイルス量および/またはHBVウイルス量が、検出できないレベルに減少する、請求項20または21に記載の医薬。
【請求項23】
HDVおよびHBVに感染した患者の免疫再活性化の誘導において、第1の用量でロナファルニブを投与した後、第2の用量でロナファルニブを投与し、第2の用量が、第1の用量より低い、請求項14~22のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項24】
第1の用量が、少なくとも8週間投与され、第2の用量が、少なくとも2週間、および任意選択により少なくとも4週間投与される、請求項23に記載の医薬。
【請求項25】
ロナファルニブの第1の用量が、50mgBIDであり、ロナファルニブの第2の用量が、50mgQDである、請求項23または24に記載の医薬。
【請求項26】
ロナファルニブの第1の用量およびロナファルニブの第2の用量が、100mgBIDの用量でリトナビルと組み合わせて投与される、請求項25に記載の医薬。
【請求項27】
患者が、慢性HBV感染を有し、処置過程が、処置の開始時のベースラインレベルと比較して、患者のHBVウイルス量の減少を生じる、請求項1~26のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項28】
HBVおよびHDVに感染した患者におけるHBVウイルス量を減少させるための、ロナファルニブを含む医薬であって、ロナファルニブが、少なくとも12週間50mg~150mgの範囲の合計1日用量で投与され、HBVウイルス量の少なくとも1logの減少が検出される、医薬。
【請求項29】
患者が、リトナビルもまた投与される、請求項28に記載の医薬。
【請求項30】
患者が、抗ウイルスヌクレオチドまたはヌクレオシド類似体で処置されていない、請求項28または29に記載の医薬。
【請求項31】
処置が、HBVウイルス量の少なくとも2logの減少を生じる、請求項28~30のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項32】
患者が、インターフェロンもまた投与される、請求項1~31のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項33】
インターフェロンが、ペグ化インターフェロンラムダである、請求項32に記載の医薬。
【請求項34】
インターフェロンが、120mcgQWまたは180mcgQWの用量で投与される、請求項32または33に記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)感染により生じるウイルス性肝炎を処置するための方法を提供し、化学、薬化学、医学、分子生物学および薬理学の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
デルタ型肝炎ウイルス(HDV)は、ウイルス性肝炎の最も重篤な形態を引き起こし、有効な薬物療法がない(Lau,1999,Hepatology 30:546-549参照)。HDVは、常にB型肝炎ウイルス(HBV)との共感染として現れ、共感染した患者は、HBVのみに感染した患者より、ウイルス感染の合併症で死ぬ可能性が非常に大きい。
【0003】
HDVラージデルタ型抗原タンパク質は、プレニル脂質ファルネシルトランスフェラーゼにより(Glenn et al.,1992,Science 256:1331-1333、およびOtto and Casey,1996,J.Biol.Chem.271:4569-4572参照)それをプレニル化のための物質とする、CXXXボックス(Zhang and Casey,1996,Annu.Rev.Biochem.65:241-269参照)を含む。FTaseにより触媒されるタンパク質のファルネシル化は、様々なタンパク質のプロセシングに必須のステップであり、CAAXボックスと称されることのある構造モチーフ中のタンパク質のC末端テトラペプチドにおける、システインへのファルネシル二リン酸のファルネシル基の転移により生じる。さらに、CAAXボックスのシステイン残基におけるタンパク質分解切断およびシステインカルボキシルのメチル化を含む、ファルネシル化タンパク質の翻訳後修飾が、一般にファルネシル化に続く。分子の遺伝実験は、ラージデルタ型抗原中のプレニル化領域の特定の変異がプレニル化およびHDV粒子形成の両方を抑えることを示した(Glenn et al.,1992,上掲、Glenn et al.,1998 J.Virol.72(11):9303-9306、Bordier et al.,2002 J.Virol.76(20):10465-10472も参照)。引き続きHDV感染を処置する薬剤が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本発明は、CYP3A4阻害剤(例えば、リトナビルまたはコビシスタット)と組み合わせた、ロナファルニブの経口投与により、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)感染を処置するための方法を提供する。一態様において、本発明は、100mgBIDまたは100mgQDでのリトナビルの投与と組み合わせた、約25mgBIDまたは50mgBIDの用量でのロナファルニブの経口投与により、HDV感染を処置するための方法を提供する。一態様において、本発明は、治療上有効量でのリトナビルのQDまたはBID投与と組み合わせた、約25mgQDもしくはBID、50mgQDもしくはBID、75mgQDもしくはBIDの用量でのロナファルニブの経口投与により、HDV感染を処置するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、本発明は、治療上有効量でのリトナビルのQDまたはBID投与と組み合わせた、さらに、インターフェロン(例えば、非ペグ化またはペグ化インターフェロンアルファまたはインターフェロンラムダ)の治療上有効量でのQW投与と組み合わせた、約25mgQDもしくはBID、50mgQDもしくはBID、75mgQDもしくはBIDの用量でのロナファルニブの経口投与により、HDV感染を処置するための方法を提供する。
【0005】
別の態様において、ヒト患者におけるHDVウイルス量を減少させる方法が提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、患者をロナファルニブ-リトナビル共治療で少なくとも30日間処置することを含む。いくつかの実施形態において、患者は、慢性HDV感染を有する。いくつかの実施形態において、本方法は、少なくとも30日間、患者をロナファルニブ、リトナビル、およびインターフェロン(例えば、非ペグ化またはペグ化されたインターフェロンアルファまたはインターフェロンラムダ)で処置することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、少なくとも30日間、ロナファルニブ-リトナビル共治療で患者を処置することを含み、患者は、処置の開始前に少なくとも10IU/mL血清のベースラインウイルス量を有し、処置は、10IU/mL血清未満へのウイルス量の減少を生じる。
【0006】
いくつかの実施形態において、本方法は、ロナファルニブを50mg~150mgの範囲の1日用量で投与(例えば、経口投与)することを含む。いくつかの実施形態において、ロナファルニブは50mgの1日用量で投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブは100mgの1日用量で投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブは25mgBIDの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブは50mgQDの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブは50mgBIDの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブは75mgQDの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブは75mgBIDの用量で投与される。
【0007】
いくつかの実施形態において、患者は、少なくとも60日間、ロナファルニブ-リトナビル共治療で処置される。いくつかの実施形態において、患者は、少なくとも90日間、ロナファルニブ-リトナビル共治療で処置される。いくつかの実施形態において、患者は、少なくとも1年間、ロナファルニブ-リトナビル共治療で処置される。
【0008】
一実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療を受けている患者は、50mg/日~150mg/日の1日用量、または50mg/日~100mg/日の1日用量、例えば25mg/日、50mg/日、75mg/日または100mg/日でロナファルニブを投与され、好ましくは、ロナファルニブの各投与は75mg以下、例えば、25mgまたは50mgであり、リトナビルを100mg/日~200mg/日の1日用量で投与され、好ましくは、リトナビルの各投与が100mg以下である。
【0009】
一実施形態において、患者は、75mgロナファルニブBIDおよび100mgリトナビルBIDを投与され得る。
【0010】
一実施形態において、患者は、50mgロナファルニブBIDおよび100mgリトナビルBIDを投与され得る。
【0011】
一実施形態において、患者は、25mgロナファルニブBIDおよび100mgリトナビルBIDを投与され得る。
【0012】
一実施形態において、患者は、75mgロナファルニブBIDおよび100mgリトナビルQDを投与され得る。
【0013】
一実施形態において、患者は、100mgロナファルニブおよび200mgリトナビルの1日用量を投与される。例えば、患者は、50mgロナファルニブBIDおよび100mgリトナビルBIDを投与され得る。
【0014】
一実施形態において、患者は、75mgロナファルニブおよび100mgリトナビルの1日用量を投与される。例えば、患者は、75mgロナファルニブQDおよび100mgリトナビルQDを投与され得る。
【0015】
一実施形態において、患者は、50mgロナファルニブおよび100mgリトナビルの1日用量を投与される。例えば、患者は、50mgロナファルニブQDおよび100mgリトナビルQDを投与され得る。
【0016】
一実施形態において、患者は、50mgロナファルニブおよび200mgリトナビルの1日用量を投与される。例えば、患者は、25mgロナファルニブBIDおよび100mgリトナビルBIDを投与され得る。
【0017】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の処置では、ロナファルニブおよびリトナビルは、単一の単位剤形において一緒に投与される。いくつかの実施形態において、単位剤形は、非晶質ロナファルニブを含む。いくつかの実施形態において、単位剤形は、ロナファルニブ(例えば、非晶質ロナファルニブ)、リトナビル、およびコポリマーを含む。いくつかの実施態様において、コポリマーはポビドンである。
【0018】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の処置では、ロナファルニブおよびリトナビルは、別個の単位剤形として、ほぼ同時に投与される。
【0019】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の処置では、ロナファルニブおよびリトナビルは、ロナファルニブおよびリトナビルの両方を含有する液体製剤で一緒に投与される。
【0020】
一実施形態において、患者は、50mg/日、75mg/日、または100mg/日の用量でBIDまたはQD投与される経口のロナファルニブ、および100mg/日の1日用量でBIDまたはQD投与、例えば100mg/日で投与される経口のリトナビルを投与される。この処置は、2,000ng/mL超、好ましくは4,000ng/mL超、より好ましくは約3,500ng/mL~約7,500ng/mLの範囲の血清ロナファルニブ濃度を生じる。
【0021】
一実施形態において、患者は、任意選択により増強剤(boosting agent)と、50mg/日、75mg/日、または100mg/日の1日用量でBIDまたはQD投与される経口のロナファルニブを投与される。この処置は、2,000ng/mL超、好ましくは4,000ng/mL超、より好ましくは約3,500ng/mL~約7,500ng/mLの範囲の血清ロナファルニブ濃度を生じる。
【0022】
いくつかの実施形態において、患者は、処置前に1mL血清当たり少なくとも10HDV RNAコピーのベースラインウイルス量を有し、処置は、1mL血清当たり10HDV RNAコピー未満のウイルス量を生じる。いくつかの実施形態において、患者は、処置前に1mL血清当たり少なくとも10HDV RNAコピーのベースラインウイルス量を有し、処置は、1mL血清当たり10HDV RNAコピー未満のウイルス量を生じる。
【0023】
いくつかの実施形態において、処置は、1mL血清当たり10HDV RNAコピー未満のウイルス量をもたらし、患者は、ロナファルニブ-リトナビル共治療のさらなる処置過程を30日間受け、ウイルス量は、追加の処置過程後に1mLの血清あたり10HDV RNAコピー未満にとどまる。
【0024】
いくつかの実施形態において、処置は、インターフェロンを投与することをさらに含む。いくつかの実施形態において、インターフェロンは、インターフェロンアルファまたはインターフェロンラムダである。いくつかの実施態様において、インターフェロンは、ペグ化インターフェロンである。いくつかの実施形態において、インターフェロンは、ペグ化インターフェロンアルファ-2aまたはペグ化インターフェロンラムダ-1aである。
【0025】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブおよびリトナビルまたは同様の増強剤は、任意選択によりインターフェロンと組み合わせて、少なくとも30日間、より頻繁には少なくとも60日間または少なくとも90日間、さらにより頻繁には少なくとも120日間、時に少なくとも150日間、および時に少なくとも180日間に及ぶ治療過程において患者に投与される。いくつかの実施態様において、ロナファルニブおよびリトナビルまたは同様の増強剤は、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも15ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも24ヶ月、またはそれ以上に及ぶ治療過程において患者に投与される。いくつかの実施形態において、一定期間(1~3ヶ月以上など)、ウイルスレベルが3logHDV RNAコピー/mL未満(1,000コピー/mL未満)または検出レベル未満に低下した後、投与は中断される。
【0026】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示されている治療法は、1,000コピー/mL血清未満または1,000IU/mL血清未満のHDV RNAレベルをもたらし、いくつかの場合においては、少なくとも1ヶ月間低レベルのままであり得る。いくつかの実施形態において、HDV RNAレベルが閾値レベル未満(例えば、1,000コピー/mL血清未満または1,000IU/mL血清未満)であると判定された後、ロナファルニブ-リトナビル共治療が継続される。
【0027】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示されている治療法は、100コピー/mL血清未満または100IU/mL血清未満のHDV RNAレベルをもたらし、いくつかの場合においては、少なくとも1ヶ月間低レベルのままであり得る。いくつかの実施形態において、HDV RNAレベルが閾値レベル未満(例えば、100コピー/mL血清未満または100IU/mL血清未満)であると判定された後、ロナファルニブ-リトナビル共治療が継続される。
【0028】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示された治療アプローチは、検出レベル未満であるHDV RNAレベルをもたらし、いくつかの場合においては、少なくとも1ヶ月間低レベルのままであり得る。いくつかの実施形態において、HDV RNAレベルが閾値レベル未満(例えば、検出レベル未満)であると判定された後、ロナファルニブ-リトナビル共治療が継続される。
【0029】
いくつかの実施形態において、患者は、処置の開始前に、1mL血清あたり少なくとも10HDV RNAコピーのベースラインウイルス量を有し、処置は、1mL血清当たり10HDV RNAコピー未満へのウイルス量の減少を生じる。
【0030】
いくつかの実施形態において、患者は、処置の開始前に、少なくとも10IU/mL血清のベースラインウイルス量を有し、処置は、10IU/mL血清へのウイルス量の減少を生じる。
【0031】
いくつかの実施形態において、患者が1mL血清当たり10HDV RNAコピー未満(あるいは、10IU/mL血清未満)のウイルス量を有すると判定された後、ロナファルニブ-リトナビル-共治療は、少なくとも30日間継続する。
【0032】
いくつかの実施形態において、患者は、処置の開始に先立って、1mL血清あたり少なくとも10HDV RNAコピー(あるいは、10IU/mL血清未満)のベースラインウイルス量を有し、処置は、1mL血清当たり10HDV RNAコピー未満(あるいは、10IU/mL血清未満)のウイルス量を生じる。
【0033】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される治療手法は、第1の用量でロナファルニブを投与した後、第2の用量でロナファルニブを投与することを含み、第2の用量は第1の用量より低い。いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される治療手法は、第1の処置期間に第1の用量でロナファルニブを投与し、次いで、第2の処置期間に第1の用量よりも高い第2の用量のロナファルニブを投与することを含む、漸増投与レジメンを含む。いくつかの実施形態において、患者は、ロナファルニブを、第1の処置期間に25mgBIDの第1の用量で、続いてロナファルニブを、第2の処置期間に50mgBIDの第2の用量で、投与される。いくつかの実施形態において、治療手法は、第1の処置期間に第1の用量でロナファルニブを投与し、次いで、患者が第1の処置期間に許容できない消化管の副作用を経験しない場合、第2の処置期間に第1の用量よりも高い第2の用量のロナファルニブを投与すること、または第1の処置期間に第1の用量でロナファルニブを投与し、次いで、患者が第1の処置期間に許容できない消化管の副作用を経験した場合、第2の処置期間に第1の用量よりも低い第2の用量のロナファルニブを投与することを含む。
【0034】
別の態様において、HDVおよびHBVに感染した患者において免疫再活性化を誘導するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、本方法は、ロナファルニブを、50mg~150mgの範囲の合計1日用量で、少なくとも12週間、および/または肝炎フレアが観察されるまで投与することを含む。いくつかの実施形態において、肝炎フレアは、患者のHBVウイルス量の一過性の増加を伴う。いくつかの実施形態において、本方法は、リトナビルが100~200mgの合計1日用量で投与されるロナファルニブ-リトナビル共治療を投与することを含む。免疫再活性化の後、HDVウイルス量は、少なくとも3log、少なくとも2log減少させることができ、または検出できないレベルまで減少させることができる。
【0035】
一実施形態において、HDVおよびHBVに感染した患者の免疫再活性化を誘導することは、第1の用量でロナファルニブを投与した後、第2の用量でロナファルニブを投与することを含み、第2の用量は第1の用量より低い。例えば、いくつかの場合において、第1の用量は少なくとも8週間投与され、第2の用量は少なくとも2週間、および任意選択により、少なくとも4週間投与される。いくつかの場合において、ロナファルニブの第1の用量は50mgBIDであり、ロナファルニブの第2の用量は50mgQDである。いくつかの場合において、ロナファルニブの第1の用量およびロナファルニブの第2の用量は、100mgBIDの用量でリトナビルと組み合わせて投与される。
【0036】
別の態様において、本明細書に記載されるロナファルニブ-リトナビル共治療は、10~24週間の処置期間後に中止され、ロナファルニブ-リトナビル共治療は少なくとも4週間患者に投与されない。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療は、10~14週間の処置期間後に中止され、またはロナファルニブリトナビル共治療は、12週間の処置で中止される。
【0037】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される治療手法は、肝炎フレアの発生を検出するステップ、および/または患者のB型肝炎ウイルス(HBV)のウイルス量において少なくとも3logの一過性の増加を検出するステップを含む。いくつかの実施形態において、肝炎フレアは、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の、200U/Lを超えるレベルへの急激な上昇を特徴とする。いくつかの実施形態において、肝炎フレアは、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の、800U/Lを超えるレベルへの急激な上昇を特徴とする。いくつかの実施形態において、治療は、肝炎フレア後25週間以内(例えば、20週間以内または12週間以内)に中断される。いくつかの実施形態において、治療は、12週間の治療で中止される。いくつかの実施形態において、治療は、10~14週間の処置後に中止される。いくつかの実施形態において、治療は、処置期間後(例えば、10~24週間の処置期間後、10~14週間の処置期間後、または12週間の処置期間後)に中止され、治療(例えば、ロナファルニブリトナビル共治療)は、少なくとも4週間、例えば、少なくとも8週間、少なくとも12週間、またはそれ以上にわたって、患者に投与されない。いくつかの実施形態において、治療は、肝炎フレアの発生を検出する前、および/または一過性の増加を検出する前に、中止される。
【0038】
さらに別の態様において、HBVおよびHDVに感染した患者のHBVウイルス量を減少させる方法が提供される。いくつかの実施形態において、患者は慢性HBV感染を有し、治療過程は、処置の開始時のベースラインレベルと比較して、患者のHBVウイルス量の減少を生じる。一手法において、本方法は、少なくとも12週間、50mg~150mgの範囲の合計1日用量でロナファルニブを投与し、任意選択によりロナファルニブおよびリトナビルを投与し、HBVウイルス量の少なくとも1logの減少を検出することを含む。いくつかの場合において、処置は、少なくとも2logのHBVウイルス量減少を生じる。いくつかの場合において、患者は、抗ウイルスヌクレオチドまたはヌクレオシド類似体で処置されていない。いくつかの実施形態において、患者はまた、ペグ化インターフェロンラムダであってもよく、120mcgQWまたは180mcgQWの用量で投与されてもよい、インターフェロンの投与によって治療される。
【0039】
さらに別の態様において、慢性HDV感染を有するヒト患者の肝炎デルタウイルス(HDV)のウイルス量を減少させる方法が提供され、この方法において患者はロナファルニブ-インターフェロン共治療を少なくとも30日間受け、ここで、共治療には、50mg~150mgの範囲の合計1日用量でのロナファルニブの経口投与、および120mcg~180mcgの範囲の合計週用量でのインターフェロンラムダ-1aの経口投与が含まれる。例示的なロナファルニブ用量は、25mgBIDおよび50mgBIDである。一定の実施形態において、インターフェロンラムダ-1aは、ペグ化インターフェロンラムダ-1aである。
【0040】
一態様において、ロナファルニブおよびリトナビルの経口投与の開始前に、患者は、少なくとも1つのGI改質薬(modifying agent)、および典型的には少なくとも2つのGI改質薬の組み合わせ(制吐薬、下痢止め薬および制酸薬の1つ以上)で予防的に処置される。
【0041】
別の態様において、GI改質薬は、ロナファルニブおよびリトナビルと同時に投与され、ロナファルニブは、遅放性製剤として投与され、GI改質薬が効果を発し始めた後まで放出されない。
【0042】
さらに別の態様において、ロナファルニブおよびリトナビルを含む単位剤形が提供される。いくつかの実施形態において、単位剤形は、経口投与のために製剤化される。いくつかの実施形態において、単位剤形は、約1:2(w/w)または約1:4(w/w)の比のロナファルニブおよびリトナビルを含み、単位剤形は経口投与用に製剤化される。いくつかの実施形態において、単位剤形は、ロナファルニブを約25mg~約100mgの量で含み、リトナビルを約50mg~約100mgの量で含む。いくつかの実施形態において、単位剤形は、非晶質ロナファルニブを含む。いくつかの実施形態において、単位剤形は、25mgの非晶質ロナファルニブおよび100mgのリトナビルを含む。いくつかの実施形態において、単位剤形は、50mgの非晶質ロナファルニブおよび100mgのリトナビルを含む。いくつかの実施形態において、単位剤形は、ロナファルニブとリトナビルとの混合物、多粒子製剤、または二層製剤を含む。いくつかの実施形態において、単位剤形は、さらにコポリマーを含む。いくつかの実施形態において、コポリマーは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒプロメロースフタレート、ポリビニルピロリドン-ビニルアセテートコポリマー、ヒプロメロース-アセテート-スクシネート、およびそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、コポリマーはポビドンではない。いくつかの実施態様において、コポリマーはポビドンである。いくつかの実施形態において、ポビドンは、ポピドンK30である。いくつかの実施形態において、単位剤形は、カプセル剤または錠剤として製剤化される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブおよびリトナビルの一方または両方は、即時放出のために製剤化される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブおよびリトナビルの一方または両方は、制御放出のために製剤化される。
【0043】
別の態様において、ロナファルニブおよびリトナビルを含む液体製剤が提供される。いくつかの実施形態において、液体製剤は、ロナファルニブおよびリトナビルを1:4または1:2の比で含む。
【0044】
さらに別の態様において、単位剤形のロナファルニブおよびリトナビルを含む医薬パッケージが提供される。
【0045】
本発明のこれらの態様および実施形態ならびに他の態様および実施形態は、以下により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】100mgロナファルニブBIDで28日間処置された患者のHDV RNAレベル(コピー/mL)の経時変化である。実施例1参照。
【0047】
図2】100mgロナファルニブBIDで28日間処置された患者におけるロナファルニブの血清レベルに対するHDV RNAウイルス量の変化である。実施例1参照。
【0048】
図3】200mgBIDまたは300mgBIDいずれかの用量のロナファルニブで28日間処置されたヒト患者におけるHDV RNAウイルス価である。実施例2参照。
【0049】
図4】実施例3に記載する用量のロナファルニブおよびインターフェロン(Pegasys)で処置された患者におけるHDV RNAウイルス価の変化である。
【0050】
図5】100mgBIDの用量のロナファルニブおよび100mgQDのリトナビルで28日間処置された患者におけるHDV RNAウイルス価である。実施例4参照。
【0051】
図6A-C】HDV RNAウイルス力価の変化である。図6Aは、実施例5に記載する用量のロナファルニブおよびリトナビルで28日間処置された患者において標準化されたベースラインからのHDV RNAウイルス価の変化をグラフに示す。図6Bは、実施例5に記載する用量のロナファルニブおよびリトナビルで56日間処置された患者におけるHDV RNAウイルス価の変化をグラフに示す。図6Cは、実施例5に記載する用量のロナファルニブおよびリトナビルで84日間処置された患者におけるHDV RNAウイルス価の変化をグラフに示す。
【0052】
図7】100mgロナファルニブBIDおよび100mgリトナビルQDを投与された患者における、より高いロナファルニブ血清レベルとHDVウイルス量との間の逆相関である。
【0053】
図8】150mgロナファルニブQDおよび100mgリトナビルQDを投与された患者における、より低いロナファルニブ血清レベルとHDVウイルス量との間の相関の低下である。
【0054】
図9】100mgロナファルニブBIDおよび100mgリトナビルQDを投与された患者における、ロナファルニブ血清濃度とウイルス量の変化との関係である。
【0055】
図10】ロナファルニブおよびペグ化インターフェロンまたはロナファルニブおよびリトナビルで処置された患者におけるHDV RNAウイルス価の変化である。
【0056】
図11】ロナファルニブおよびペグ化インターフェロンで処置された患者におけるALT値の変化である。
【0057】
図12】実施例6に記載する組み合わせ、用量およびスケジュールを用いて、ロナファルニブ、リトナビルおよびインターフェロンで処置された患者における、HDV RNAウイルス価の変化である。
【0058】
図13】実施例7に記載する組み合わせ、用量およびスケジュールを用いて、ロナファルニブ、リトナビルおよびインターフェロンで処置された患者における、HDV RNAウイルス価の変化である。
【0059】
図14】実施例8に記載する組み合わせ、用量およびスケジュールを用いて、ロナファルニブ、リトナビルおよびインターフェロンで処置された患者における、HDV RNAウイルス価の変化である。
【0060】
図15A-B】実施例12に記載する、ペグ化インターフェロン-αを用いてまたは用いずにロナファルニブ-リトナビル共治療で処置した患者における、HDV RNAウイルス力価の変化である。(A)4週間後に測定したHDV RNAウイルス力価の変化である。(B)8週間後に測定したHDV RNAウイルス力価の変化である。
【0061】
図16】実施例12に記載する、ペグ化インターフェロン-αを用いてまたは用いずにロナファルニブ-リトナビル共治療で処置した患者における、様々な時点でのHDV RNAウイルス力価の変化である。
【0062】
図17】実施例12に記載する、50mgBIDロナファルニブおよび100mgBIDリトナビルで処置された患者における、HDV RNAレベル(コピー/mL)の経時変化である。
【0063】
図18】実施例12に記載する、50mgBIDロナファルニブ、100mgBIDリトナビル、および180mcgQWペグ化インターフェロン-αで処置された患者における、HDV RNAレベル(コピー/mL)の経時変化である。
【0064】
図19】実施例12に記載する、25mgBIDロナファルニブおよび100mgBIDリトナビルで処置された患者における、HDV RNAレベル(コピー/mL)の経時変化である。
【0065】
図20】実施例12に記載する、25mgBIDロナファルニブ、100mgBIDリトナビル、および180mcgQWペグ化インターフェロン-αで処置された患者における、HDV RNAレベル(コピー/mL)の経時変化である。
【0066】
図21】実施例12に記載する、処置の12週目のALT値の変化である。
【0067】
図22】実施例14に記載する、ロナファルニブ/リトナビル共治療の24週間の処置による用量設定レジメンである。リトナビルの調整は示されていない。
【0068】
図23】実施例14に記載する組み合わせ、用量およびスケジュールを用いて、ロナファルニブおよびリトナビルで処置された患者における、HDV RNAウイルス価の変化である。
【0069】
図24】実施例14に記載する、ロナファルニブ/リトナビル共治療で処置された患者における、HDV RNAレベル(コピー/mL)およびALTレベル(U/L)の経時変化である。
【0070】
図25】実施例14に記載する、処置の24週目のALT値の変化である。
【0071】
図26】ALTフレアならびにHDV RNAおよびHBV DNAの抑制後のHDV-RNA陰性およびALT正常化を示す、実施例15に記載の200mgBIDロナファルニブで処置した患者A-001-5の処置後ALTフレアである。図26~30において、HDVのアッセイの定量限界(LOQ)は3.2logIU/mLであり、HBVのアッセイのLOQは2logIU/mLである。したがって、HDVについては、>0logおよび<3.2logとしてグラフ化された測定値は、0IU/mLを超え3.2loguL/mL未満の濃度でHDVの存在を示すと考えられるが、この範囲内で正確な量を示すものではない。同様に、HBVについては、>0logおよび<2logとしてグラフ化された測定値は、0IU/mLを超え2logIU/mL未満の濃度でHBVの存在を示すと考えられるが、この範囲内で正確な量を示すものではない。
【0072】
図27】ALTフレアならびにHDV RNAおよびHBV DNAの抑制後のHDV-RNA陰性およびALT正常化を示す、実施例15に記載の300mgBIDロナファルニブで処置した患者A-001-1の処置後ALTフレアである。
【0073】
図28】ALTフレアならびにHDV RNAおよびHBV DNAの平行した減少後のHDV-RNA陰性およびALT正常化を示す、実施例15に記載の、50mgBIDリトナビルと組み合わせた100mgBIDロナファルニブで約10週間、次いでロナファルニブ(150mgQD)およびリトナビル(50mgBID)で2週間処置した患者A-002-3の処置後ALTフレアである。
【0074】
図29】ALTフレアならびにHDV RNAおよびHBV DNAの抑制後のHDV-RNAおよびALTの減少を示す、実施例15に記載の100mgBIDリトナビルと組み合わせた75mgBIDロナファルニブで1~12週にかけて、100mgBIDリトナビルと組み合わせた50mgBIDロナファルニブで13~24週にかけて、およびペグ化インターフェロンアルファで16~24週にかけて処置した患者A-002-14の処置後ALTフレアである。
【0075】
図30】ALTフレアならびにHDV RNAおよびHBV DNAの抑制後のHDV-RNA陰性およびALT正常化を示す、実施例15に記載の100mgBIDリトナビルと組み合わせた50mgBIDロナファルニブで処置した患者A-002-23の処置後ALTフレアである。
【0076】
図31】実施例16に記載のように調製した、1:1:2(w/w)、1:2:3(w/w)、および1:1:5(w/w)の比でのリトナビル-ロナファルニブ-ポビドン組成物の特徴的な粉末X線回折(XRPD)パターンである。
【0077】
図32A-B】熱重量分析である。(A)実施例16に記載のように調製した、リトナビル-ポビドン(1:1)およびリトナビル-ロナファルニブ-ポビドン(1:1:2)、(1:2:3)および(1:1:5)共沈殿物の特徴的な粉末TGAサーモグラムである。(B)実施例16に記載のように調製した、リトナビル-ロナファルニブ-ポビドン(1:1:2)およびリトナビル-ロナファルニブ-HPMC(1:1:2)共沈殿物を比較する、特徴的な粉末TGAサーモグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本発明のこの詳細な説明は、読者の便宜のためにセクションに分割される。この開示を読むにおいて当業者に明白であろうように、本明細書に記載され、例示される個々の実施形態のそれぞれは、本開示の範囲または精神から外れることなく、個別の構成要素および、他のいくつかの実施形態(この開示において同一または異なるセクションに記載されているかにかかわらず)のいずれかの特徴から容易に分離されまたは組み合わされる特徴を有する。任意の記載の方法は、記載の事象の順でまたは理論上可能な他の順で実施され得る。本開示の実施形態は、他に断らない限り、本技術分野の範囲内である、有機合成化学、生化学、生物学、分子生物学、組換DNA技術、薬理学などの技術を用いる。そのような技術は、文献中で十分に説明されている。この開示は、記載される特定の実施形態に限定されず、実際の本発明の実施形態は、当然ながら本明細書に記載のものと異なってもよい。
【0079】
I.定義
本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、限定することを意図するものではない。他に定義しない限り、本明細書で用いられるすべての技術的および科学的用語は、この発明が属する技術分野の当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。この明細書および後に続く特許請求の範囲において、反対の意図が明らかでない限り以下の意味を有すると定義されるべき多くの用語につき言及する。いくつかの場合において、通常理解される意味を有する用語が明確性および/または即時参照のために本明細書で定義され、本明細書においてそのような定義が包含されることは、本技術分野において一般的に理解される用語の定義に対する本質的な違いを表すものとして解釈されるべきでない。
【0080】
本明細書に記載のものと同様または同等の任意の方法および物質が本発明の実施または試験において用いられ得るが、好ましい方法、デバイスおよび物質がここに記述される。本明細書で引用されるすべての技術文献および特許文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる記載も、本発明が先行発明によってそのような開示に先行する権利を有しないことを認めるものとして解釈されるべきでない。
【0081】
範囲を含むすべての数字表示、例えばpH、温度、時間、濃度および分子量は、必要に応じて、0.1または1.0の増分で(+)または(-)変化する近似値である。必ずしも明示的に示されていなくても、すべての数字表示は前に用語「約」が付くと解されるべきである。
【0082】
HDVレベルは、一般的に、ウイルス学の通常の慣習に従って、log10単位を用いて提示される。HDV RNAレベルは、「1mL当たりのRNAコピー」または「1mL当たりの国際単位(IU)」の単位で提示することができる。Chudy et al.,2013,核酸増幅技術(NAT)ベースのアッセイのためのD型肝炎ウイルスRNAにつき世界保健機構の国際規格を確立するための共同研究」 WHO Expert Committee on Biological Standardization WHO/BS/2013.2227を参照。両方の単位が本明細書で用いられる。本明細書で用いられる場合、「1mL当たりHDV RNAコピー」(例えば、実施例に示すように、臨床試験結果に関連する議論を含まない)の記載は、明細書の記載または基礎の目的のために、「HDV RNAコピー/mLまたはHDVIU/mL」として読まれるべきである。特定の量の1mL当たりのHDV RNAコピーが記載される場合、明細書の記載およびサポートのために、HDV RNAコピー/mLの量をIU/mLの量に変換するため1.2の乗数を適用することができる。例えば、“1mL当たり120HDV RNAコピー”は、“120コピー/mLまたは100IU/mL”と読まれるべきである。
【0083】
HBV DNAレベルは、IU規則(Saldanhaら、2001年、B型肝炎ウイルスDNA核酸増幅技術につき国際保健機関国際基準を確立するための国際共同研究、VoxSanguinis80(1)63-71参照)を用いて当技術分野で一般的に記載されている。
【0084】
HDV RNAレベルの変化は、ウイルス学の通常の慣習に従う「log減少」として表すことができる。例えば、ウイルス量における1log減少(すなわち、-1log)(例えば、7logから6log)は、10倍の減少であり、ウイルス量における2log減少(すなわち、-2log)である例えば、7logから5logまで)は、100倍の減少である。7logRNAコピー/mLから6logRNAコピー/mLへの減少は、7logIU/mLから6logIU/mLへの減少と同等である。HBV DNAレベルの変化は、同じ用語を使用して記述することができる。
【0085】
単数形「a」、「an」および「the」は、他に文脈により明らかに指示されない限り、複数の対象を含む。したがって、例えば「化合物」への言及は、複数の化合物を含む。
【0086】
用語「投与」は、ヒトなどの宿主へ本開示の化合物、組成物または薬剤を導入することを指す。薬剤の投与の1つの好ましい経路は、経口投与である。他の経路は、静脈内投与および皮下投与である。
【0087】
「下痢止め薬」は、2つのタイプ:便を濃くするものおよび腸の痙攣を遅くするもののいずれかであり得る。便を濃くする混合物(サイリウムなど)は水を吸収する。これは、便を塊にし、より固くするのに役立つ。抗痙攣性下痢止め製剤は、大腸の節層間神経叢中のμ-オピオイド受容体上で作用することにより、腸の痙攣を遅くする。腸筋神経叢の活性を低下させることにより、これは次に腸管壁の縦走平滑筋および環状平滑筋の緊張を低下させ、物質が腸管にとどまる時間を増加し、より多くの水分を糞便から吸収することを可能にする。抗痙攣剤はまた、結腸のマス運動を減少させ、胃結腸反射を抑制する。
【0088】
用語「制酸薬」は、胃酸分泌を低下させるかまたはその影響を低下させる薬剤を指し、H2-受容体アンタゴニストおよびプロトンポンプ阻害剤が含まれる。
【0089】
「ベースライン」という用語は、他に明記されていないか、または文脈から明らかでない限り、治療過程の前に行われた(例えば、ウイルス量、患者の状態、ALTレベルの)測定値を指す。
【0090】
用語「BID」(1日2回)、「QD」(1日1回)、「QW」(1週間に1回)などは医学分野における通常の意味を有する。
【0091】
用語「含む」は、化合物、組成物および方法が列挙される要素を含むが、他を除外しないことを意味することが意図される。「から本質的になる」は、化合物、組成物および方法を定義するために用いられる場合、特許請求の範囲に係る発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響するであろう他の要素を除外することを意味するものとする。「からなる」は、特許請求の範囲において特定されていない任意の要素、ステップまたは成分を除外することを意味するものとする。これらの移行句のそれぞれにより定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0092】
用語「処置過程」および「治療過程」は、本明細書では交換可能に使用され、患者が診断された後、例えば、HDVに感染し、医学的介入を必要とする場合の医療介入を指す。医学的介入には、一定期間、典型的には、HDV感染患者につき、少なくとも1ヶ月、数ヶ月、または何ヶ月も、または数年もの間の薬物の投与が含まれるが、これに限定されない。
【0093】
用語「GI不耐症」は、下痢、悪心および嘔吐のいずれか1つを個別に、またはその組み合わせを指す。
【0094】
「肝炎フレア」、「ALTフレア」および「免疫再活性化」という用語は交換可能に使用され、肝炎患者のベースラインALTの2倍を超えるレベルへの血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の急激な上昇を指す。いくつかの実施形態において、肝炎フレアは、正常上限(ULN)の5倍を超えるレベルへの血清ALTの急激な上昇を特徴とする。いくつかの場合において、血清ALTレベルは200U/L以上である。Liaw,Journal of Gastroenterology and Hepatology,2003,18:246-252を参照。血清ALTレベルを測定する方法は、当該分野で公知である。例えば、J.Clin.Chem.Clin.Biochem.,1986,24:481-495を参照。いくつかの実施形態において、肝炎フレアは、ロナファルニブによる治療を受けているHDV患者における治療効果を示し得る。
【0095】
ヒト血清または血漿試料の「HDV RNAウイルス量」または「ウイルス量」という用語は、所与の量のヒト血清または血漿試料におけるHDV RNAの量を指す。HDV RNAは、一般に、定量的リアルタイム逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)アッセイによって検出される。そのようなアッセイでは、アッセイ中に生成されるシグナル量は、試料中のHDV RNA量に比例する。試験試料からのシグナルは、定量されたデルタ型肝炎RNA標準の希釈系列のシグナルと比較され、ゲノムコピーのコピー数が計算される。例えば、Kodani et al.,2013,J.Virol.Methods,193(2),531;Karatayli et al.,2014,J.Clin.Virol,60(1),11参照。HDV RNAウイルス量は、1mL血清(または血漿)あたりのRNAコピー、または1mL血清(または血漿)あたりの国際単位(IU)を用いて報告され得る(Chudy et al,2013、上記を参照)。市販のアッセイは、ARUP Laboratories(Salt Lake City、UT)から入手可能である。ARUP HDV RNAアッセイの検出限界は31IU/mLと報告されている。Analytik Jena AG(ドイツ)は、抗ウイルス治療への反応を評価するために、WHO標準規格でCE-IVD認定を取得したRoboGene(登録商標)HDV RNA定量キット2.0を提供している。RoboGene(登録商標)アッセイの検出限界は6IU/mLであると報告されている。特定の単位のない「ウイルス量」(例えば、「ウイルス量が100未満」)とは、別段の指示がない限り、または文脈から明らかでない限り、1mL血清当たりのHDV RNAのコピーを指す。特に明記されていない限り、検出レベル未満への言及は6IU/mL未満を意味する。
【0096】
ヒト(宿主)に関して用語「HDV感染」は、宿主がHDV感染を患っているという事実を指す。典型的に、HDV感染ヒト宿主は、宿主血清もしくは血漿1mL当たり少なくとも約2logHDV RNAコピー、または宿主血清もしくは血漿1mL当たりHDV-RNAの10コピー、多くの場合、宿主血清もしくは血漿1mL当たり少なくとも約3logHDV RNAコピー、または宿主血清もしくは血漿1mL当たりHDV-RNAの10コピー、また、多くの場合、特にいずれの治療も受けていない患者について、宿主血清もしくは血漿1mL当たり少なくとも約4logHDV RNAコピー、または宿主血清もしくは血漿1mL当たりHDV-RNAの10コピー、例えば、宿主血清もしくは血漿1mL当たり約4logHDV RNAコピー~宿主血清もしくは血漿1mL当たり8logHDV RNAコピー、または宿主血清もしくは血漿1mL当たりHDV-RNAの10~10コピーなどのHDV RNAウイルス量を有する。本明細書で用いられる場合、ヒト宿主に関する用語「慢性HDV感染」は、陽性HDV抗体(Ab)試験により記述されるように、および/またはqRT-PCRにより検出可能なように、少なくとも6ヶ月間、ヒト宿主において持続したHDV感染を指す。HDVの診断および病因は、例えば、Wedemeyer et al.,Nat.Rev.Gastroenterol.Hepatol,2010,7:31-40に記載される。
【0097】
用語「HBV感染」は、B型肝炎(HBV)感染を指す。HDV感染がHBVにも感染した個体においてのみ起こり得ることは、当業者には理解されるであろう。したがって、HDV感染を有するヒト宿主はまた、HBV感染を有する。HBV感染の診断は、B型肝炎表面抗原(HBsAg)、B型肝炎コアIgM抗体(抗HBc IgM)、および/またはHBV DNAの存在などのHBV血清学的マーカーの存在に基づくことができる。HBV血清学的マーカーおよびHBV DNAを検出および定量する方法は、当技術分野において記載されている。例えば、Liu et al.,2015,World J Gastroenterol 21:11954-11963を参照。いくつかの実施形態において、HDV感染およびHBV感染を有するヒト宿主は、少なくとも約2logHBV DNAコピー/mL宿主血清もしくは血漿、または10コピーのHBV-DNA/mL宿主血清もしくは血漿のHBVウイルス量を有し、多くの場合、少なくとも約3logHBV DNAコピー/mL宿主血清もしくは血漿、または10コピーのHBV-DNA/mL宿主血清もしくは血漿、または少なくとも約4logHBV DNAコピー/mL宿主血清もしくは血漿、または10コピーのHBV-DNA/mL宿主血清もしくは血漿のウイルス量を有する。
【0098】
ヒト血清または血漿試料の「HBVウイルス量」という用語は、所与の量のヒト血清または血漿試料におけるヒトHBV DNAのコピー数を指す。リアルタイムPCRを用いてHBV DNAを検出し、定量することができる。HBV DNAを定量するための市販のアッセイが利用可能である。米国では、Abbott社はヒト血清または血漿中のHBV DNAの定量のためのインビトロPCRアッセイであるリアルタイムHBVアッセイを提供している。HBVのリアルタイムPCRに基づく検出のためのCE認定キットは、Analytik Jena、Germany(RoboGene(登録商標)HBV DNA定量キット2.0)から市販されている。
【0099】
「H2-受容体アンタゴニスト」は、胃において壁細胞(具体的にはヒスタミンH2受容体)上でヒスタミンの作用をブロックするために用いられ、これらの細胞により酸の産生を低下させる薬物のクラスである。H2アンタゴニストは、消化不良の処置に用いられる。
【0100】
「5-HT3アンタゴニスト」は、迷走神経の求心神経を含む、嘔吐に関与するいくつかの重要な部位、孤束核(STN)および最後野自体において見られるセロトニン受容体のサブタイプである、5-HT3受容体において、受容体アンタゴニストとして作用する薬物のクラスである。5-HT3受容体アンタゴニストは、5-HT3受容体へのセロトニンの結合を阻害することにより嘔吐および悪心を抑制する。
【0101】
用語「ロナファルニブ」または「LNF」または「EBP994」は、商品名Sarasar(Schering)としても知られるが、以下に示す構造式を有する、FTase阻害剤4(2[4-[(11R)-3,10-ジブロモ-8-クロロ-6,11-ジヒドロ-5Hベンゾ[5,6]-シクロヘプタ[1,2b]ピリジン-11イル]-ピペリジノ]-2-オキソエチル]-1-ピペリジンカルボキサミド)(Sch-66336またはSCH 66336としても識別される)を指す。
【化1】
【0102】
ロナファルニブは、およそ200℃の融点を有する結晶性固体であり、非吸湿性である。その分子量は638.7である。固体状態において、この化合物は熱的に安定である。溶液において、ロナファルニブは中性pHで安定であるが、酸性または塩基性条件で加水分解される。ロナファルニブは、難水溶性の三環式化合物であり、これは結晶形態で製剤化されたとき、動物において低く可変なバイオアベイラビリティを生じる。経口バイオアベイラビリティを向上させるため、相当な努力が製剤開発に向けられてきた。原薬に加えて、カプセル剤における投与のためのロナファルニブの適切な医薬製剤は、ポビドン、ポロキサマー188、クロスカルメロースナトリウム、二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムを含有する。製品は、最適なバイオアベイラビリティを達成するために、薬物:ポビドン(1:1)共沈物で製剤化される。これらは、市販製品で一般に用いられる安全で十分試験された賦形剤である。
【0103】
1mL血清または血漿あたりのHDV RNAの量が、使用されたアッセイの検出限界未満である場合(すなわち、qRT-PCR)には、患者は「HDV-RNA陰性」、または同等に「HDVのクリア」とみなされるアッセイ)。1mL血清または血漿あたりのHDV RNAの量が1回のウイルス量測定で検出限界未満であり、その後、少なくとも6週間、少なくとも12週間、少なくとも24週間、少なくとも36週間、少なくとも48週間、または少なくとも1年間などの延長された期間にわたって行われたウイルス量測定または測定で検出限界未満のままである場合、患者は「持続的にHDV-RNA陰性」とみなされる。他に特定されていない場合、患者は、少なくとも24週間離れた2つのウイルス量測定値がHDVウイルスを検出せず、介在するウイルス量測定においてウイルスRNAが検出されない場合、「持続的にHDV-RNA陰性」とみなされる。血清試料からの得られた測定値は、肝細胞(「リザーバ」)における低レベルのウイルスの存在を検出しないことがあることは理解されよう。多くの場合、低レベルの存在はいかなる症状も引き起こさない。いくつかの例において、リザーバウイルスの集団が拡大して、患者が再発しさらなる処置を必要とする。
【0104】
「NK1」は、中枢および末梢神経系に位置するGタンパク質共役受容体である。この受容体は、サブスタンスP(SP)として知られる優性リガンドを有する。SPは、11アミノ酸から構成される神経ペプチドであり、これは脳からのインパルスおよびメッセージを送り、受け取る。これは脳の嘔吐中枢において高濃度で見られ、活性化されたときに嘔吐逆流を引き起こす。NK-1受容体アンタゴニストは、NK1受容体によって発せられるシグナルをブロックする。
【0105】
用語「経口剤形」は、本明細書で用いられる場合、錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、シロップ剤、エリキシル剤および懸濁剤などの経口投与に適した剤形を指す。「固形経口剤形」には、錠剤、カプセル剤、カプレット剤などが含まれる。
【0106】
用語「経口単位剤形」は、本明細書で用いられる場合、経口投与が意図された単位剤形を指す。
【0107】
用語「患者」、「宿主」または「対象」は、互換的に用いられ、以前にHDVに感染し、ウイルスがクリアされた患者を含む、HDVに感染したヒトを指す。
【0108】
用語「医薬組成物」は、対象への投与に適した組成物を包含することを意味する。一般的に「医薬組成物」は無菌で、対象内で所望しない反応を誘発し得る汚染物質を有しない(例えば、医薬組成物中の一または複数の化合物が医薬品グレードである)ことが好ましい。医薬組成物は、経口、静脈内、口腔、直腸、非経口、腹腔内、皮内、気管内、筋肉内、皮下、吸入などを含む多くの異なる投与経路により、それを必要とする対象または患者へ投与するために設計され得る。
【0109】
用語「薬理学的に許容される賦形剤」、「薬理学的に許容される希釈剤」、「薬理学的に許容される担体」または「薬理学的に許容されるアジュバント」は、一般的に安全で、無毒性であり、他の点でも生物学的に望ましくないものでない医薬組成物を製造するのに有用な賦形剤、希釈剤、担体および/またはアジュバントを意味し、獣医用および/またはヒトの医薬用に許容される賦形剤、希釈剤、担体およびアジュバントを含む。明細書および請求項で用いられる「医薬的に許容される賦形剤、希釈剤、担体および/またはアジュバント」は、1つ以上のそのような賦形剤、希釈剤、担体およびアジュバントを含む。多種多様の医薬的に許容される、ビヒクル、アジュバント、担体または希釈剤などの賦形剤、ならびにpH調整および緩衝剤、等張化剤、安定化剤、湿潤剤などの補助剤が、本技術分野において知られている。医薬的に許容される賦形剤は、様々な刊行物に広く記載されており、例えば、A.Gennaro (2000) “Remington:The Science and Practice of Pharmacy,” 20th edition,Lippincott,Williams,& Wilkins;Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems (1999) H.C.Ansel et al.,eds.,7th ed.,Lippincott,Williams,& Wilkins;およびHandbook of Pharmaceutical Excipients (2000) A.H.Kibbe et al.,eds.,3rd ed.Amer.Pharmaceutical Assocが含まれる。経口製剤について、ロナファルニブおよび/またはリトナビルは、単独、または錠剤、散剤、顆粒剤もしくはカプセル剤を作るための適切な添加剤、例えば、ラクトース、マンニトール、コーンスターチまたはポテトデンプンなどの従来の添加剤;結晶セルロース、セルロース誘導体、アラビアゴム、コーンスターチまたはゼラチンなどの結合剤;コーンスターチ、ポテトデンプンまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤;タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤;ならびに、所望により、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤および香料と組み合わせて、ロナファルニブを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる、本発明の医薬製剤において用いられ得る。
【0110】
用語「薬理学的に許容される塩」は、生物学的効果および任意選択により遊離塩の他の特性を保持する塩、ならびに無機または有機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸などのとの反応により得られるものを指す。開示の薬剤の実施形態が塩を形成する場合、これらの塩は本開示の範囲内である。本明細書の処方のうちいずれかの薬剤への言及は、他に断らない限り、その塩への言及を含むと解される。
【0111】
本明細書で用いられる場合、用語「ポリマー」は、共有結合で互いに結合した構造単位(モノマー単位)の複数の反復からなる有機物質を指す。用語「コポリマー」は、本明細書で用いられる場合、有機および無機ポリマーを包含する。いくつかの実施形態において、ポリマーは、天然起源の化合物(例えば、コラーゲン、アルブミンまたはゼラチンなどのタンパク質ベースのポリマー、またはアルギン酸、シクロデキストリン、デキストラン、アガロース、キトサン、ヒアルロン酸、デンプンまたはセルロースなどの多糖類)である。いくつかの実施形態において、ポリマーは、半合成化合物(例えば、セルロース誘導体)である。いくつかの実施形態において、ポリマーは合成化合物(例えば、ポリエチレングリコール、ポロキサマー、ポリラクチド、アクリル酸ポリマー、またはポリアミド)である。いくつかの実施形態において、ポリマーは、天然の生分解性ポリマー(例えば、アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、またはデンプン)である。いくつかの実施形態において、ポリマーは、合成生分解性ポリマー(例えば、ポリラクチド、ポリアミド)である。いくつかの実施形態において、ポリマーは、非生分解性ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルピロリジン、またはセルロース誘導体)である。
【0112】
「プロトンポンプ阻害剤」は、胃壁細胞の分泌表面においてH+/K+ATPase酵素系の特異的阻害により胃酸分泌を抑える抗分泌性化合物のクラスである。この酵素系が胃粘膜内で酸(プロトン)ポンプとしてみなされるため、この系の阻害剤は、それらが酸産生の最終ステップをブロックする点で胃酸ポンプ阻害剤として特徴付けられている。この効果は、用量依存性であり、刺激に関係なく基礎酸分泌および刺激酸分泌の阻害を引き起こす。
【0113】
用語「治療上有効量」は、本明細書で用いられる場合、疾患、障害または病態をある程度処置する、例えば処置されている疾患すなわち感染の症状の1つ以上を緩和する、投与される薬剤(化合物、阻害剤および/または薬物とも呼び得る)の実施形態の量、および/または処置されている対象が発症しているかまたは発症する危険性がある疾患すなわち感染の症状の1つ以上をある程度防止する量を指す。
【0114】
用語「処置」、「処置すること」および「処置する」は、疾患、障害もしくは病態の薬理学的および/もしくは生理的影響、ならびに/またはその症状を低下させるかまたは改善するために、薬剤を用いて疾患、障害または病態に対処することとして定義される。「処置」は、本明細書で用いられる場合、ヒト対象における疾患の任意の処置におよび、(a)疾患に罹患しやすいと判定されたが疾患に感染したとしてまだ診断されていない対象において疾患の発生の危険性を低下させること、(b)疾患の発現を妨害すること、および/または(c)疾患を緩和すること、すなわち疾患の退縮を引き起こすことおよび/または1つ以上の疾患症状を緩和すること、を包含する。「処置」はまた、疾患または病態の不存在下でも薬理効果を提供する抑制剤の送達を包含することを意味する。例えば「処置」は、対象において強化された効果または望ましい効果(例えば、病原ウイルス量の減少、疾患症状の低下など)を提供する疾患または病原体阻害剤の送達を包含する。
【0115】
HDV RNAレベルに関して使用される「検出できない」という用語は、使用されるアッセイ方法によってHDV RNAコピーが検出されないことを意味する。いくつかの実施形態において、アッセイは定量的RT-PCRである。HDV RNAレベルに関して使用される用語「本質的に検出できない」は、使用されるアッセイ方法(例えば、定量的RT-PCR)によって検出され得るHDV RNAコピー/mL血清または血漿が50未満であり、時には25HDV RNAコピー/mL未満、時には10HDV RNAコピー/mL未満であることを意味する。
【0116】
用語「許容できない消化管の副作用」は、患者が推奨される治療過程を完了することを妨げる消化管の副作用を指す。
【0117】
用語「単位剤形」は、本明細書で用いられる場合、ヒト対象のための単一の用量として適切である物理的に別個の単位を指し、各単位は、薬理学的に許容される希釈剤、担体またはビヒクルと関連して所望の処置効果を生じるのに十分な量において算出される一または複数の化合物(例えば、本明細書に記載されるような抗ウイルス化合物および/または増強剤)の所定量を含む。
【0118】
ロナファルニブ、および増強剤リトナビルおよびコビシスタットが挙げられるが、これらに限定されない、本明細書に記載の任意の活性医薬成分のすべての重水素化類似体(化合物が、1つ以上の重水素原子での1つ以上の水素原子の置き換えのみにより親化合物と異なる場合、別の化合物、「親化合物」の重水素化類似体である)は、本発明の目的において、親化合物の参照により包含される。
【0119】
ロナファルニブ、リトナビル、コビシスタットおよび本明細書に記載の任意の他の活性医薬物質を含むがこれらに限定されない、本明細書に記載の任意の薬剤のすべての立体異性体、例えば、エナンチオマー型(これは不斉炭素の不存在下でも存在し得る)およびジアステレオマー型を含む、様々な置換基上の不斉炭素のため存在し得る立体異性体は、本開示の範囲内に企図される。本開示の化合物の個々の立体異性体は、例えば、他の異性体を本質的に有しなくてもよく、または例えば、ラセミ体としてまたはすべての他の、もしくは他の選択された立体異性体と混合されてもよい。本開示の化合物の立体中心は、IUPAC 1974 Recommendationsによって定義されるとおりSまたはR配置を有し得る。
【0120】
II.序論
一態様において、本発明は、プレニルトランスフェラーゼ阻害剤のロナファルニブおよびCYP3A4阻害剤のリトナビルを共投与することによるD型肝炎ウイルス(HDV)に感染した患者の処置に関する。以下に記載するように、28日間の100mgBIDロナファルニブ投与がウイルス量を減少させることが見出されてきたが、この減少は治療として開発するに十分でなかった。より高用量のロナファルニブは、忍容性が低く、非許容レベルの有害事象を生じた。したがって、200mgBIDで投与されたとき、約1ヶ月の処置の後にロナファルニブの血清レベルが低下し、これは概して低い忍容性、低い患者コンプライアンス、およびGI管を通過する薬剤の損失に起因していると考えられる。300mgBIDで投与されたとき、ロナファルニブの血清レベルは予測より低く、これも、低い忍容性の結果と考えられる。例えば下記表11参照。このように、100mgBIDロナファルニブの投与が十分に効果的にでなかった一方で、より高い用量は、有意なGIに関連する有害作用を伴い、HDVに感染した患者の常用の治療として不適切な処置となった。
【0121】
本発明は、部分的に、本明細書に記載の投与計画に従ってリトナビルと組み合わせたロナファルニブの投与(「ロナファルニブ-リトナビル共治療」)が、HDVの処置に有効であり、ロナファルニブ単独治療と比較して優れた効果を生じるという発見に関する。驚くべきことに、100mgロナファルニブBIDおよび100mgリトナビルQDの投与は、56日間の処置後に測定されたロナファルニブ単独治療で見られたものより高いロナファルニブの血清濃度を生じたが、有害作用の頻度はより低かった(例えば下記表10および表11参照)。リトナビルと組み合わせて投与される低用量のロナファルニブ(例えば、25mgのロナファルニブBIDまたは50mgのロナファルニブBID)は、HDV RNAウイルス量の減少に有効であり、より忍容性が良好であることも発見されている(例えば、図15A~Bおよび下記表16参照)。
【0122】
また、ロナファルニブ-リトナビル共治療は、患者の治療効果を向上させるためにGI改質薬の予防的投与(特に、制吐薬、下痢止め薬および制酸薬の1つ以上の予防的投与)で補うかまたはそれと組み合わせ得ることを見出した。したがって、本発明の一態様は、GI改質薬の組み合わせの予防的投与と組み合わせたロナファルニブ-リトナビル共治療に関する。
【0123】
一実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療を受けている患者は、50~150mg/日、例えば、50mg/日、75mg/日、100mg/日または150mg/日の1日用量のロナファルニブを投与され、100mg~200mg/日、例えば100mg/日または200mg/日の1日用量のリトナビルを投与される。一定の上記の用量は、ロナファルニブをQDまたはBID投与することおよびリトナビルをQDまたはBID投与することにより達成され得る。好ましくは、ロナファルニブの各投与は、75mg以下、例えば、50mg以下であり、リトナビルの各投与は、100mg以下である。一手法において、ロナファルニブはBID投与され、リトナビルはQD投与される。一手法において、ロナファルニブおよびリトナビル両方がBID投与される。一手法において、ロナファルニブおよびリトナビルの両方がQD投与される。
【0124】
III.HDV処置
一態様において、本発明は、HDV感染患者がロナファルニブおよびリトナビルの経口投与(「ロナファルニブ投与」、「ロナファルニブ-リトナビル共治療」などとも称され得る)により処置される、HDV感染を処置するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、ロナファルニブおよびリトナビルは、本明細書に記載の用量および投与スケジュールに従って投与される。いくつかの実施形態において、HDV感染患者は、1、2もしくは3またはそれ以上のクラスの消化管(GI)改質薬で予防的処置を受ける。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療を受けている患者はまた、インターフェロン(例えば、非ペグ化またはペグ化されたインターフェロン-アルファまたはインターフェロン-ラムダ)で処置される。
【0125】
ロナファルニブは、固体および血液悪性腫瘍、ハッチンソン・ギルフォード早老症症候群および慢性デルタ型肝炎ウイルス感染の処置のために研究されてきたが、いずれの適応症についても承認されていない。ロナファルニブ投与に関する大多数の報告は、一または複数の抗新生物薬剤と組み合わせて癌の患者にロナファルニブを投与することに関連する。
【0126】
リトナビルは(CAS登録番号155213-67-5)AbbVie,Inc.により商品名Norvir(登録商標)で販売されており、HIV-1感染個体の処置のために他の抗ウイルス薬と組み合わせて抗レトロウィルス薬として投与されている。Miller et al.,2015,Infection and Drug Resistance,8:19-29参照。成人患者におけるHIV-1の処置のためのリトナビルの推奨用量は、食事と一緒に経口で600mg1日2回である。Norvir(登録商標)の添付文書参照。リトナビルはまた、薬理学的強化剤または増強剤として用いられる。薬物動態の「増強(boosting)」は、これらの薬物をより効果的にする薬理学的強化剤との共投与による経口投与薬の薬理学的強化を指す。リトナビルは、HIV感染を処置するのに用いられるプロテアーゼのCmaxを増強するために用いられる。リトナビルの増強効果は、薬物のいくつかの特性により生じる。リトナビルは、代謝の2つの重要な段階を阻害する。
【0127】
第1に、リトナビルは、吸収時の初回通過代謝を阻害する。腸管に並ぶ腸細胞は、薬物代謝に関連する重要なシトクロムP450アイソザイムの1つであるCYP3A4、および効果的に薬物を腸壁から汲み出して腸管内腔へ戻すことができる流出輸送体であるP-糖タンパク質の両方を含む。リトナビルは、これらのタンパク質の両方を阻害する。したがって、リトナビルとP-糖タンパク質により輸送されるおよび/または腸細胞CYP3A4により代謝される薬物との共投与は、共投与される薬物のCmaxを増加させ得る。第2に、リトナビルは、肝臓中のCYP3A4を阻害し、それにより、薬物の血漿半減期を維持する。
【0128】
いくつかの因子により、増強剤としての使用のために許容される用量のリトナビルが何であるかを予測することが不可能となり、その判断が難しくなる。
【0129】
第1に、リトナビルの増強効果は、第1の(すなわち、共投与される)薬物に応じて広くおよび予測不可能に変化する。これは、一次薬物とのリトナビルの共投与の効果が、一次薬物(プロピオン酸フルチカゾン、水溶性経鼻スプレーとして送達される)のAUCの350倍増加から、11倍増加(シデナフィル(sidenafil))、1.2倍増加(トリメトプリム)におよび得ることを示すNorvir(登録商標)の添付文書(FDAウェブサイトwww.rxabbvie.com/pdf/norvirtab_pi.pdfで入手可能)により示される。単一の薬物クラス内でも大きな差異が存在する。例えば、プロテアーゼ阻害剤の17の用量範囲薬物動態試験に関するメタ研究において、Hill et al.は、7つのプロテアーゼ阻害剤:アンプレナビル、アタザナビル、ダルナビル、インジナビル、ロピナビル、サキナビルおよびチプラナビルでの1日50~800mgの用量におけるリトナビル増強効果を評価した。Hillは、リトナビルがインジナビル、チプラナビルおよびロピナビルに対して用量依存的な増強効果を有するが、ダルナビルまたはサキナビルに対するリトナビルの増強効果は用量と相関しないと結論付けた。
【0130】
また、肝炎の患者におけるリトナビルの薬物動態は、他の処置集団と比較してより予測不可能である可能性が高い。Liらは、肝臓CYP3A4発現が慢性HBV感染の個体において低下することを報告した。HDVに共感染したHBV感染患者のサブ集団は別個に試験されなかったが、CYP3A4の低下がHDV陽性個体において生じる可能性が高い。Li et al.,2006,Zhonghua Yi Xue Za Zhi,86:2703-2706参照。
【0131】
リトナビルが末梢血リンパ球において見られるP-糖タンパク質を阻害し得ることもまた報告されている。Lucia et al.,2001,J Acquir Immune Defic Syndr.27:321-30参照。ロナファルニブがP-糖タンパク質の基質である場合、リトナビルの共投与は、細胞外へ戻って輸送されるロナファルニブをより少なくすることができ、それにより、薬物の細胞内半減期が増加する。
【0132】
さらに、HDV患者サブ集団は、HBVのみに感染した患者より高レベル(慢性D型肝炎の患者の約60~70%で発生する)の硬変により特徴付けられる。HDV患者集団におけるリトナビルの薬物動態は、より低レベルの硬変を有する、または硬変を有しない他の集団と比較して、より予測不可能である。
【0133】
慢性HDVの患者へのロナファルニブとリトナビルの共投与の治療効果は、本発明前に公知でなく、本発明前の医学文献には、HDVの患者および慢性HDV感染の患者を処置するのに安全、許容性、および有効である投与レジメン(例えば用量および投与スケジュール)は記載されていなかった。
【0134】
また、ロナファルニブの投与およびロナファルニブとリトナビルの共投与の副作用プロファイルは、これまでに測定されていない。下痢、悪心および嘔吐が、ロナファルニブ投与(Schering IB参照)およびリトナビル投与(Norvirの添付文書参照)両方の副作用として報告されている。癌患者において、200mgBIDロナファルニブの投与は、「忍容性良好」として特徴付けられた。Hanrahan et al.,2009,“A phase II study of Lonafarnib(SCH66336)in patients with chemorefractory,advanced squamous cell carcinoma of the head and neck,”Am J Clin Oncol.32:274-279(再発性SCCHNのための白金ベース治療後のロナファルニブ治療を記載している)およびList et al.,2002,Blood,100:789A(200mgBIDのロナファルニブ投与が進行した造血器腫瘍の患者において良好な忍容性を示した)参照。しかしながら、治療上有効なレベルのロナファルニブの慢性HDV感染の患者への投与の副作用プロファイルは知られておらず、ロナファルニブ-リトナビル共治療の副作用プロファイルはいずれの集団についても知られていなかった。
【0135】
HDV感染におけるロナファルニブ投与の影響
以下の実施例1に記載するように、慢性デルタ型肝炎(HDV)の患者のコホートは、28日間100mgロナファルニブBIDでの処置を受け、プラセボを投与された患者での-0.24logHDV RNAコピー/mLと比較して-0.74logHDV RNAコピー/mLのベースラインからナディアへのHDV RNAレベルの平均変化を示した。下記の表1も参照。ロナファルニブの血漿レベルは、処置中、200ng/mL~1,100ng/mLの範囲であり、より高いロナファルニブの血漿レベルを有する対象は、処置中、HDV RNA力価においてより大きな減少を経験した。図2参照。しかしながら、ウイルス量のより強い減少が望まれた。
【0136】
以下の実施例2に記載するように、HDV感染患者へのより高用量のロナファルニブの投与は、ウイルス量のより劇的な減少を生じたが、許容できない忍容性を有していた。28日間、200mgBIDロナファルニブを投与された患者において、ウイルス量の平均変化は-1.63logHDV RNAコピー/mLであった。28日間、300mgBIDロナファルニブを投与された患者において、ウイルス量の平均変化は-2.00logHDV RNAコピー/mLであった。下記の表1も参照。
【0137】
200mgまたは300mgBIDロナファルニブの毎日の投与は、100mgBIDロナファルニブの1日投与と比較してHDV患者において優れたウイルス量低下を生じたが、ロナファルニブ200mgBIDまたは300mgBIDの投与は有意な副作用を生じ、これにより、これらの投与レジメンは長期間の治療には適さない。
【0138】
HDV感染に対するロナファルニブ-共投与の影響
以下の実施例4~6および12に示すように、ロナファルニブ-リトナビル共治療は、異なる用量の組み合わせで患者のHDVウイルス量を実質的に減少させた。実施例4は、ロナファルニブ-リトナビル共治療で観察された、ロナファルニブ単独療法と比較して優れた有効性を記載する。28日間、100mgQDリトナビルと組み合わせて100mgBIDロナファルニブを投与された患者において、ウイルス量の平均変化は-2.2logHDV RNAコピー/mLであった。下記表1も参照。実施例12は、100mgのBIDリトナビルと組み合わせて25mgBIDまたは50mgBIDのロナファルニブを投与されている患者について、ロナファルニブ-リトナビル共治療においてより高用量のロナファルニブを投与されている患者と同等のHDV RNAウイルス量の低下が観察されたことを示す。さらに、いくつかの例では、ロナファルニブ-リトナビル共治療は、8週目にHDVウイルス量を検出できないレベルまで低下させた。図5および図17参照。したがって、本発明によれば、より低用量のロナファルニブを単独またはインターフェロンと組み合わせて、増強剤と共に使用することにより、患者は、100mgBIDリトナビルと組み合わせたロナファルニブ用量25mgQD~100mgBIDのより低い用量、および50mgBIDロナファルニブの好ましい用量で、有意な治療効果を達成することができる。
【表1】
【0139】
したがって、本発明の様々な方法において、ロナファルニブおよびリトナビルの各々は、他方と組み合わせて、継続的に、毎日、少なくとも1日1回(QD)、様々な実施形態においては1日2回(BID)、HDV患者に対して経口投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療は、少なくとも30日間連続して毎日投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療は、少なくとも数ヶ月にわたって毎日投与される。いくつかの実施形態において、患者は残りの人生の間、ロナファルニブ-リトナビル共治療を受けることができる。
【0140】
図2に示すように、HDVウイルス量は、ロナファルニブの血漿濃度が増加するとともに減少する。ロナファルニブ血清レベルとロナファルニブ-リトナビル共治療を受けている患者におけるウイルス量との間の相関はまた、約21日間、約3,500~5,000ng/mLの範囲で血清ロナファルニブ濃度を維持した患者のウイルス量(図7参照)を、約21日間、約1500~2500ng/mLの範囲で血清ロナファルニブ濃度を維持した患者のウイルス量(図7および8参照)と比較して、前者の患者が著しくより良い結果を出していることにより、見出される。表12も参照すると、共治療の4週間後に最も高いロナファルニブ血清レベルを有する患者がウイルス量の最も大きな減少を有すること、および2,000ng/mL超のロナファルニブ血清レベルを有する患者が、一般的に、2,000ng/mL未満の血清レベルを有する患者より劇的なウイルス量の減少を有することが示される(患者4はこの傾向の例外である)。
【0141】
したがって、ある一定の実施形態において、ロナファルニブおよびリトナビルは、2,000ng/mL超、例えば4,000ng/mL超の血清ロナファルニブレベルを生じるスケジュールに従って共投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブおよびリトナビルは、約3,500ng/mL~約8,500ng/mL(例えば、約4,500ng/mL~約7,500ng/mL、約5,000ng/mL~約6,000ng/mL、約5,500ng/mL~約6,500ng/mL、約6,000ng/mL~約7,000ng/mLまたは6,500ng/mL~約7,500ng/mL)または約5,000ng/mL~約7,000ng/mLの範囲にある血清ロナファルニブレベルを生じるスケジュールに従って共投与される。
【0142】
本明細書で用いられる場合、血清ロナファルニブレベルまたは濃度は、定期的に(毎週、隔週、毎月または他のスケジュールに従って、など)対象から得られた血清試料から測定され得て、介在期間中のレベルは推定され得る。例えば、4,000ng/mLの測定値が4週間で得られ、6,000ng/mLの測定値が6週間で得られた場合、この分析の目的のために、介在する2週間の血清レベルは4,000~6,000ng/mLの範囲であったと結論付けられる。いくつかの実施形態において、最初の測定は、経口治療の開始後1週間以後になされる。
【0143】
ロナファルニブの血清レベルは、放射免疫アッセイ、クロマトグラフィーアッセイ、質量分析などを含む、本技術分野で公知の方法を用いて測定され得る。本発明のいくつかの実施形態において、タンパク質沈降法(アセトニトリル)を用いて患者血清試料を抽出した。その後、試料を、分離のためにWaters CSH C18、2.1x50mm、1.7μmカラムに充填し、続いてロナファルニブの検出のために陽イオンモードでLC-MS/MSに充填した。ロナファルニブのアッセイ範囲は1~2500ng/mLであった。
【0144】
ロナファルニブおよびリトナビル用量
いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療は、ロナファルニブを50mg~150mgの範囲の合計1日用量(例えば、約50mg、約75mg、約100mg、約125mg、または約150mgの合計1日用量)で投与すること、およびリトナビルを100mg~200mgの範囲の合計1日用量(例えば、約100mg、約150mg、または約200mgの合計1日用量)で投与することを含む。いくつかの実施形態において、ロナファルニブの合計1日用量は50mgであり、リトナビルの合計1日用量は200mgである。いくつかの実施形態において、ロナファルニブの合計1日用量は100mgであり、リトナビルの合計1日用量は200mgである。いくつかの実施形態において、ロナファルニブの合計1日用量は150mgであり、リトナビルの合計1日用量は200mgである。
【0145】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブはBID投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブはQD投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブは25mgBIDの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブは50mgBIDの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブは50mgQDの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブは75mgBIDの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブは75mgQDの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブは100mgQDの用量で投与される。
【0146】
いくつかの実施形態において、リトナビルはBID投与される。いくつかの実施形態において、リトナビルはQD投与される。いくつかの実施形態において、リトナビルは100mgBIDの用量で投与される。いくつかの実施形態において、リトナビルは100mgQDの用量で投与される。いくつかの実施形態において、リトナビルは75mgBIDの用量で投与される。いくつかの実施形態において、リトナビルは50mgBIDの用量で投与される。
【0147】
例示的な用量は、限定ではなく例示として、表2に提供される。通常、ロナファルニブおよびリトナビルは一緒に、ほぼ同時に(例えば、同時またはそれぞれの約15分以内に)投与される(例えば、患者により自己投与される)。
【表2】
【0148】
表2中の実施形態1~8はそれぞれ、予防的GI改質薬(例えば、制吐薬、下痢止め薬および制酸薬)および/またはインターフェロン(例えば、インターフェロンアルファまたはインターフェロンラムダ)と共に投与され得る。下記セクションVおよびセクションVI参照。
【0149】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブおよびリトナビル(またはコビシスタットなどの同様の増強剤)は患者に投与され、リトナビル用量およびロナファルニブ用量は両方、少なくとも30日間、通常少なくとも約60日、または6ヶ月~1年以上を含む90日以上の間、少なくとも50mgQDまたは少なくとも100mgQDである。いくつかの実施形態において、一定期間(1~3ヶ月以上など)、ウイルスレベルが検出できないレベルに低下した後、投与は中断される。一手法において、ロナファルニブ/リトナビルの適切な用量は、少なくとも30日間、より多くの場合、少なくとも60日間、および典型的には少なくとも90日間、または90日以上を含む。一手法において、ヒトにおけるデルタ型肝炎ウイルス(HDV)感染の処置は、少なくとも約30日間、約50mg/日、約100mg/日、または約150mg/日のロナファルニブの1日用量(例えば、約25mgBID、50mgBID、50mgQD、75mgBID、74mgQDまたは100mgQDのロナファルニブ)、および治療上有効量のCYP3A4阻害剤(例えば、リトナビルまたはコビシスタット)を投与し、それにより、HDV感染を処置することを含む。一手法において、リトナビルは100mgQDで投与される。
【0150】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療による処置は、4週間の処置後に測定した場合、2,000ng/mLを超える血清ロナファルニブ濃度を生じる。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療による処置は、4週間の処置後に測定した場合、3,000ng/mLを超える血清ロナファルニブ濃度を生じる。
【0151】
患者集団
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の共治療で処置される患者は、慢性HDV感染を有する患者である。いくつかの実施形態において、処置される患者は、陽性HDV抗体(Ab)試験および/またはqRT-PCRによる検出可能なHDV RNAにより記録される、少なくとも6ヶ月の持続性の慢性HDV感染を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の共治療方法で処置される患者は、新たに診断されたか、そうでなければ6ヶ月以上にわたってその患者において存在しなかったと考えられる、急性HDV感染を有する患者である。HDVの診断および病因は、例えば、Wedemeyer et al.,Nat.Rev.Gastroenterol.Hepatol,2010,7:31-40に記載される。HDVは、様々なサブタイプで存在することが知られている。本明細書に記載の方法は、HDVサブタイプにかかわらず、すべてのHDV患者を処置するのに適している。
【0152】
いくつかの実施形態において、処置される患者は、1mL血清当たり少なくとも10HDV RNAコピー、例えば1mL血清または血漿当たり少なくとも10HDV RNAコピー、1mL血清または血漿当たり少なくとも10HDV RNAコピー、1mL血清または血漿当たり少なくとも10HDV RNAコピー、または1mL血清または血漿当たり少なくとも10HDV RNAコピーのウイルス量を有する。いくつかの実施形態において、HDVウイルス量は、患者からの血清試料を用いて測定される。いくつかの実施形態において、HDVウイルス量は、患者からの血漿試料を用いて測定される。いくつかの実施形態において、ウイルス量は、定量的RT-PCRによって測定される。血清または血漿中のHDV RNAの定量のためのqRT-PCRアッセイは、例えば上記のように、当技術分野で公知である。
【0153】
いくつかの実施形態において、処置される患者は、肝機能障害の1つ以上の症状を示す。いくつかの実施形態において、患者は、健康な対照(例えば、HDVまたはHBVに感染していない対象)の正常なパラメータの外にある1つ以上の肝機能パラメータを示す。いくつかの実施形態において、肝機能パラメータは、血清アルブミン、ビリルビン、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、およびプロトロンビン活性からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、患者は、正常上限(ULN)の少なくとも2倍(例えば、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍またはそれ以上)の血清ALTレベルを有する。肝臓機能パラメータは当該技術分野において記載されている。例えば、Limdi et al.,Postgrad Med J,2003,79:307-312を参照。これらの肝機能パラメータを測定する方法は、当技術分野で公知であり、また、市販されている。
【0154】
用量漸増および用量減少
一実施形態において、HDV感染のために処置される患者は、1つ以上の後の用量が1つ以上のより先の用量よりも大きい用量である、ロナファルニブの漸増する投与レジメンを受ける。いくつかの実施形態において、漸増投与レジメンは、薬物に対する患者の耐性を高め、副作用を最小限に抑えることができる。いくつかの実施形態において、用量漸増は、ロナファルニブを第1の処置期間のための第1の用量で投与し、続いてロナファルニブを第2の処置期間の第1の用量よりも高い第2の用量で投与することを含む。いくつかの実施形態において、第1の処置期間の期間の長さは、第2の処置期間の期間の長さと同じである。いくつかの実施形態において、第1の処置期間および第2の処置期間は、異なる長さの期間である。いくつかの実施形態において、用量漸増は、1つ以上の追加の処置期間のための、ロナファルニブの1つ以上の追加の用量を投与することをさらに含む。
【0155】
いくつかの実施形態において、漸増レジメンにおける各用量の投与期間は、1~4週間以内である。各投与の期間は、患者の応答に基づいて臨床医によって調整(例えば、加速)されてもよい。例えば、限定されないが、患者は、所定の所望の最終用量に達するまで、最初の2週間でロナファルニブ25mgBIDを投与され、続いて次の2週間で50mgBIDを投与される。典型的には、漸増用量は、適切な用量、例えば100mgQDまたはBIDのリトナビルと共投与される。用量漸増は、100mgBID以上(例えば、100mgBID)を含む75mgBID以上(例えば、75mgBID)まで継続し得る。
【0156】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療は、第1の処置期間に第1の用量でロナファルニブを投与し、次いで、患者が第1の処置期間に許容できない消化管の副作用を経験しない場合、第2の処置期間に第1の用量よりも高い第2の用量のロナファルニブを投与することを含む。非限定的な例として、いくつかの実施形態において、ロナファルニブは、第1の処置期間に50mgBIDの第1の用量で投与され、患者が第1の処置期間中に許容できない消化管の副作用を経験しない場合、第2の処置期間に75mgBIDの第2の用量を投与される。
【0157】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療は、第1の処置期間に第1の用量でロナファルニブを投与し、次いで、患者が第1の処置期間に許容できない消化管の副作用を経験した場合、第2の処置期間に第1の用量よりも低い第2の用量のロナファルニブを投与することを含む。非限定的な例として、いくつかの実施形態において、ロナファルニブは、第1の処置期間に75mgBIDの第1の用量で投与され、患者が第1の処置期間中に許容できない消化管の副作用を経験した場合、第2の処置期間に50mgBIDの第2の用量を投与される。
【0158】
処置期間、免疫学的再活性化の誘導、および処置エンドポイント
患者は、所定の期間、不特定の期間、またはエンドポイントに達するまで、ロナファルニブ-リトナビル共治療を受け得る。処置は、少なくとも2~3ヶ月間毎日連続的に継続され得る。治療は、典型的には少なくとも30日間または1ヶ月間、より多くの場合、少なくとも60日間または2ヶ月間、もしくは少なくとも90日間または3ヶ月間、さらにより多くの場合、少なくとも120日間または4ヶ月間、時には少なくとも150日間または5ヶ月間、および時には少なくとも180日間または6ヶ月間である。いくつかの実施形態において、処置は、少なくとも6ヶ月から1年継続される。他の実施形態において、処置は、患者の残りの人生の間、または有意義な治療上の利益を提供する十分に低いレベルでウイルスを維持するにおいて投与がもはや有効でなくなるまで、継続される。
【0159】
本発明の方法によれば、一部のHDV患者は、多くの場合、肝炎フレアを経験した後、ウイルスを検出できないレベルまでクリアすることによって本明細書における共治療に応答し、その後、HDVレベルが検出可能なレベルに戻らない限り、および戻るまで、処置が中断され得る。他の患者は、ウイルス量の減少および症状の改善を経験するが、ウイルスを検出できないレベルまでクリアすることはないが、治療上の利益を提供する限り、「長期治療」にとどまる。
【0160】
いくつかの場合において、第1の治療過程において、患者は特定のエンドポイント(例えば、10または10未満のウイルス量、肝炎フレア、またはウイルスのクリアランス)へと処置される。患者がエンドポイントを達成したとき、医療提供者は、例えばロナファルニブ-リトナビル共治療などの治療を中断することを選択することができる。あるいは、患者がエンドポイントを達成したとき、医療提供者は、例えばロナファルニブ-リトナビル共治療などの治療を継続することを選択することができる。便宜上、エンドポイント後治療は、時に「第2の(または「付加的な」)処置過程」と称される。第1および第2の治療過程は、同じ投与レジメンの投与(すなわち、同じ用量および投与頻度)を含み得る(および典型的には含む)。用語法は時に便利であるが、疑義を避けるために、患者はエンドポイントまで延びる「単一の処置過程」を受け得る。
【0161】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療を受けている患者は、1mL血清当たり少なくとも10HDV RNAコピーのベースラインウイルス量を有し、処置は、1mL血清当たり10HDV RNAコピー未満のウイルス量を生じる。いくつかの実施形態において、1mL血清あたり少なくとも10HDV RNAコピーのベースラインウイルス量を有する患者は、1mL血清あたり10HDV RNAコピー未満のウイルス量を生じる第1の処置過程を受け、続いて付加的な処置過程を受け、ウイルス量は、追加の処置過程後に1mL血清当たり10HDV RNAコピー未満のままである。いくつかの実施形態において、処置は、検出レベル未満のHDVウイルス量を生じる。
【0162】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療を受けている患者は、1mL血清当たり少なくとも10HDV RNAコピーのベースラインウイルス量を有し、処置は、1mL血清当たり10HDV RNAコピー未満のウイルス量を生じる。いくつかの実施形態において、1mL血清あたり少なくとも10HDV RNAコピーのベースラインウイルス量を有する患者は、1mL血清あたり10HDV RNAコピー未満のウイルス量を生じる第1の処置過程を受け、続いて付加的な処置過程を受け、ウイルス量は、追加の処置過程後に1mL血清当たり10HDV RNAコピー未満のままである。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療を受けている患者は、1mL血清当たり少なくとも10HDV RNAコピーのベースラインウイルス量を有し、処置は、1mL血清当たり10HDV RNAコピー未満のウイルス量を生じる。いくつかの実施形態において、処置は、検出レベル未満のHDVウイルス量を生じる。
【0163】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療を受けている患者は、1mL血清当たり少なくとも10HDV RNAコピーのベースラインウイルス量を有し、処置は、1mL血清当たり10HDV RNAコピー未満、10HDV RNAコピー未満、または10HDV RNAコピー未満の減少したウイルス量を生じる。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療を受けている患者は、1mL血清当たり少なくとも10HDV RNAコピーのベースラインウイルス量を有し、処置は、1mL血清当たり10HDV RNAコピー未満、10HDV RNAコピー未満、10HDV RNAコピー未満、または10HDV RNAコピー未満の減少したウイルス量を生じる。いくつかの実施形態において、処置は、検出レベル未満のHDVウイルス量を生じる。
【0164】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療による処置は、8週間の治療後に測定した場合、患者において、少なくとも1.5logHDV RNAコピー/mL血清のHDVウイルス量の減少を生じる。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療による処置は、8週間の治療後に測定した場合、患者において、少なくとも2.0logHDV RNAコピー/mL血清のHDVウイルス量の減少を生じる。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療による処置は、8週間の治療後に測定した場合、患者において、少なくとも2.5logHDV RNAコピー/mL血清のHDVウイルス量の減少を生じる。
【0165】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療による処置は、処置の開始後、数週間(例えば、12、24、36、48、60、72または90週間測定した場合、患者において、少なくとも-1log、または少なくとも-2log、または少なくとも-3log、または少なくとも-5log、または少なくとも-6logのHDVウイルス量の減少を生じる。
【0166】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療による処置は、HDV RNAレベルの持続的な低下を生じる。例えば、いくつかの実施形態において、処置は、患者の血清または血漿中のHDV RNAレベルの低下を生じ、この低下したレベルは、一定期間(例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、またはそれ以上)持続する。いくつかの実施形態において、処置過程が終了した後、低下したHDV RNAレベルが一定期間(例えば、1ヶ月、3ヶ月、1年またはそれ以上)持続する。いくつかの実施形態において、処置過程が進行中である間、低下したHDV RNAレベルが一定期間(例えば、1ヶ月、3ヶ月、1年またはそれ以上)持続する。いくつかの実施形態において、治療過程は、1,000コピー/mL未満のHDV RNAレベル(例えば、血清HDV RNAレベルまたは血漿HDV RNAレベル)を生じる。いくつかの実施形態において、HDV RNAレベルは、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも1年またはそれ以上の間、1,000コピー/mL未満のままである。いくつかの実施形態において、治療過程は、100コピー/mL未満のHDV RNAレベル(例えば、血清HDV RNAレベルまたは血漿HDV RNAレベル)を生じる。いくつかの実施形態において、HDV RNAレベルは、少なくとも1ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも1年またはそれ以上の間、100コピー/mL未満のままである。1ヶ月間(または別の特定の期間)、初期測定値(例えば、100コピー/mLまたは100IU/mL)を「未満のままである」という語句は、初期測定値の測定後少なくとも1ヶ月間(または別の特定の期間)、行われたウイルス量測定値が初期値より高くないことを意味する。いくつかの実施形態において、患者は、特定の期間、ロナファルニブまたはロナファルニブ-リトナビル共治療を受けない。いくつかの実施形態において、患者は、特定の期間、いかなる抗HDV治療も受けない。
【0167】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の治療は、HDV RNAレベルが3logHDV RNAコピー/mL未満(1,000コピー/mL未満)となるまで、または時にHDV RNAレベルが2logHDV RNAコピー/mL未満(100コピー/mL未満)もしくは検出レベル未満となるまで、一定期間継続される。いくつかの場合において、治療は、ウイルス量が許容可能な低いレベル(例えば、検出できないレベル)に低下した後一定期間(1~3ヶ月以上など)継続され得る。いくつかの実施形態において、HDVウイルス量が検出できないレベルに低下するまで、治療は継続される。
【0168】
いくつかの場合において、治療は、「肝炎フレア」または「ALTフレア」が患者において観察されるまで継続される。肝炎フレア(または急性増悪)は、慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染において観察される、正常の上限である約40U/Lの5倍を超える血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の急激な上昇である。HBV患者におけるHBVフレアは、HLA-I制限性の、細胞毒性Tリンパ球(CTL)が介在する、HBVに対する免疫応答およびその下流機構により生じる。より高いALTレベルは、より強固なHBVの免疫クリアランスを反映する。Liaw,2003,“Hepatitis flares and hepatitis B e antigen seroconversion:implication in anti-hepatitis B virus therapy,”J Gastroenterol Hepatol18:246-52参照。肝炎フレアは、抗HDV処置への反応において以前に報告されていないが、本明細書に記載のロナファルニブ-リトナビル共治療への反応においてフレアの兆候が観察された。例えば、12週間経口投与されるロナファルニブ100mgBIDおよびリトナビル50mgBIDを受けた2人の患者は、正常な個体より10~20倍高いALTレベルにより特徴付けられるALTフレアを示した。ロナファルニブ200mgBIDまたは300mgBIDの単独治療を受けた一部の患者、およびロナファルニブ-リトナビル共治療(例えば100mgBIDリトナビルと組み合わせた75mgBIDロナファルニブ、および100mgBIDリトナビルと組み合わせた50mgBIDロナファルニブ)において、より低い用量のロナファルニブを投与された患者においてもALTフレアが観察された。下記実施例15参照。
【0169】
HDV患者におけるフレアの観察は、本明細書に記載の用量のリトナビルとロナファルニブでの共治療が、患者からHDVをクリアするにおいて前例のない有益な治療効果を有し得ることを示唆する。特定の理論またはメカニズムに拘束されるものではないが、少なくともHDV患者のサブセットにおいて、ロナファルニブまたはロナファルニブ-リトナビル共治療による処置は、HDVウイルス感染の結果として抑制されていた免疫系の再活性化を生じると考えられる。同時のHBV/HDV感染は、しばしば、ヒト患者におけるHBV複製の抑制を生じ、HDV患者の少なくとも一部において、本明細書に記載の方法を用いたHDV感染の抑制は、少なくとも一過性のHBVレベルの上昇を生じる。特定の理論に拘束されるものではないが、HDVはHBVの抑制と並行して患者の免疫応答を抑制するとも考えられている。ロナファルニブ治療によるHDVの抑制は、HBVおよびHBV複製の抑制を抑制する。免疫再活性化を経験し、抗HBV療法(例えば、抗ウイルスヌクレオチドまたはヌクレオシド類似体)を受けていない患者の中には、典型的に、治療開始から約12週間以内にHBV DNAレベルにおいて少なくとも3logの一過性の増加を示すことが見出されている。例えば、下記表15参照。本発明によれば、HBVの増加は、処置に応答した免疫再活性化の程度(例えば、抗HDV処置の有効性)をモニターする代理マーカーとして使用され得る。例えば以下の実施例15に記載されるように、HDV処置に応答して少なくとも1つのサブセットのHDV患者において観察されるALTフレアは、再活性化された免疫応答を示す。特定のメカニズムに拘束されるものではないが、免疫学的再活性化に際して、免疫系はHDV感染に応答してクリアし始め、ALTフレアとして現れる標的化HDV感染肝細胞からのALT放出を生じるものと考えられる。さらに、少なくとも一部の患者では、免疫学的再活性化は、HBVレベルの低下またはHBV感染のクリアランスを生じ得る。以下の実施例15に記載するように、ALTフレアを示した様々なロナファルニブ治療コホートからの患者は、その後、HDV感染の抑制またはクリアランスおよびHBV DNAレベルの抑制を示した。特定の理論に拘束されるものではないが、ALTフレアの存在によって証明されるように、免疫再活性化を経験している患者において、HBVの抑制は、少なくとも部分的に免疫媒介応答によるものであると考えられる。従って、LNF処置の前にHBVはしばしばHDVによって抑制されるが、免疫学的再活性化がHDVの抑制またはクリアランスを生じた後、観察される継続したまたはさらに顕著なHBVの抑制は、HBVに対する新たに改善された免疫媒介性応答を反映する。
【0170】
以下の実施例15に記載されるように、免疫学的再活性化を経験する患者は、HDV RNAレベルおよびHBV DNAレベルに関して特定の特徴を示すことが見出されている。例えば、免疫学的再活性化を経験する患者は、処置の最初の2週間以内にHDV RNAレベルの低下(例えば、少なくとも1log)を示し、その後、低下したHDV RNAレベルは、HDVレベルがナディアから少なくとも50%またはそれ以上増加する前の、少なくともさらに2週間の間、(さらに減少しなかったとしても)維持される。いくつかの実施形態において、免疫学的再活性化を経験する患者は、HBVウイルス量において少なくとも3logの一過性の増加を示す。
【0171】
いくつかの実施形態において、患者の免疫再活性化を誘導する方法は、第1の処置過程においてロナファルニブまたはロナファルニブ-リトナビル共治療を第1の用量で投与し、続いて第2の処置過程においてロナファルニブまたはロナファルニブ-リトナビル共治療を第2の用量で投与することを含み、第2の投与量は第1の投与量とは異なる。いくつかの実施形態において、第2の用量は、より低いロナファルニブ用量(「ステップダウン」)である。いくつかの実施形態において、第1の処置過程は、約4~12週間、例えば、約8~12週間の範囲である。いくつかの実施形態において、第2の処置過程は、約2~4週間である。いくつかの実施形態において、第1の処置過程は約8週間であり、第2の処置過程は約4週間である。
【0172】
いくつかの実施形態において、ALTフレアの発生後約12~24週間以内において、患者はHDV-RNA陰性である。いくつかの実施形態において、ALTフレアの発生後約12~24週間以内に、患者は、正常化されたALTレベル(すなわち、本技術分野で定義される正常上限内のALTレベル)を有する。いくつかの実施形態において、免疫再活性化の後、患者のHDVウイルス量は、処置の開始時の患者のベースラインレベルと比較して少なくとも3log減少する。いくつかの実施形態において、免疫再活性化の後、患者のHBVウイルス量は、処置の開始時の患者のベースラインレベルと比較して少なくとも2log減少する。いくつかの実施形態において、患者のHDVウイルス量および/またはHBVウイルス量が検出できないレベルに減少する。
【0173】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療による処置は、患者の肝機能の改善を生じる。いくつかの実施形態において、改善した肝機能は、血清アルブミン、ビリルビン、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、およびプロトロンビン活性からなる群から選択される1つ以上の肝機能パラメータ(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上のパラメータ)の改善である。いくつかの実施形態において、処置は、血清アルブミン、ビリルビン、ALT、AST、およびプロトロンビン活性からなる群から選択される肝機能パラメータの1つ以上における、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、またはそれ以上の改善を生じる。いくつかの実施形態において、処置は、血清アルブミン、ビリルビン、ALT、AST、およびプロトロンビン活性からなる群から選択される1つ以上の肝機能パラメータの、HDVまたはHBVに感染していない健康なコントロール対象のレベルまでの改善を生じる。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療による処置は、改善された肝生検(例えば、組織学的染色、免疫組織化学染色および/または線維化グレーディングによって評価される)を生じる。
【0174】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療による処置は、患者における肝臓移植の必要性を遅らせる。いくつかの実施形態において、処置は、少なくとも3ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも9ヶ月間、または少なくとも12ヶ月間、肝臓移植の必要性を遅らせる。いくつかの実施形態において、処置は無期限に肝臓移植の必要性を遅らせる。
【0175】
ALTフレアの誘導およびその後のHDV抑制
一態様において、HDVに感染した患者においてALTフレアを誘導するための方法が提供される。本明細書で説明されるように、ロナファルニブ治療(例えば、ロナファルニブ単独治療またはロナファルニブおよびリトナビルでの共治療)で治療される慢性HDVを有する少なくとも一部の患者では、ALTフレアが誘導され、続いてHDV RNA力価の有意な減少が起こる(例えば、図26~30参照)。ALTフレアの発生後約12~24週以内の少なくとも一部の患者では、患者はHDV RNAについて陰性と検査される。一部の患者では、HDV RNA陰性の期間後、続いてHDV RNAレベルの上昇が観察される。特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、一定のアッセイを用いてHDV RNAについて陰性であると試験した患者の「ウイルスリザーバ」に低レベルのウイルスが残存すると考えられる。一部の状況では、持続性ウイルスが拡大する可能性があり(例えば、図26参照)、患者の免疫応答によって排除されない場合、さらなる抗ウイルス処置が必要とされ得る。このさらなる抗ウイルス処置は、典型的には、ロナファルニブによる治療であり、任意選択により、リトナビルおよび/またはインターフェロンとの共治療として行われる。一般的に、さらなる治療は、初期のフレア前治療レジメンよりも低用量および/または短期間で、任意選択によりリトナビルおよび/またはインターフェロンとの共治療として、ロナファルニブを投与することを含む。
【0176】
例示であって限定するものではないが、表3は、例示的な治療プロトコルを示す。
【表3】
【0177】
上記のように、ALTフレアのモニタリングに加えて、またはその代替として、HBV DNAレベルを使用して初期治療の有効性を評価することができる。一例として、慢性HDVおよび≦F3の線維症スコアを有する患者に、50mgBIDロナファルニブを100mgBIDリトナビルと組み合わせて8週間(1~8週)の第1の処置過程で投与する。次いで、患者に、100mgBIDリトナビルと組み合わせた50mgQDロナファルニブを4週間(9~12週目)の第2の処置過程で投与する。12週目に、患者のHBV DNAレベルを測定する。一手法において、患者が3logより大きいHBV DNAの増加を有する場合、36週間(13~48週)にわたる抗HBV治療(例えば、ETVまたはTNFを使用)が開始される。
【0178】
患者が免疫学的再活性化の証拠を示さない場合(例えば、HBV DNAの増加が<3logである)、患者は、50mgBIDロナファルニブおよび100mgのBIDリトナビルと組み合わせて抗HBV治療(例えば、ETV(またはTNF))の処置過程を36週間(13~48週目)受ける。
【0179】
B型肝炎ウイルス(HBV)ウイルス量の減少
一態様において、本発明は、ロナファルニブ処置またはロナファルニブ-リトナビル処置(本明細書に記載されるような)の過程が、処置の開始時のベースラインレベルと比較して、および/または患者のHDVウイルス量を減少させるのに効果的な処置を受けていない、同様に感染した患者と比較して、患者のHBVウイルスの減少を生じる、慢性B型肝炎ウイルス(HBV)に感染した患者の治療に関する。下記実施例15参照。いくつかの実施形態において、HBVおよびHDVに感染した患者のHBVウイルス量を減少させる方法は、本明細書に記載されるロナファルニブ治療を投与すること、およびHBVウイルス量の少なくとも1logの減少を検出することを含む。いくつかの実施形態において、処置は、HBVウイルス量の少なくとも2log減少を生じる。いくつかの実施形態において、患者は、抗ウイルスヌクレオチドまたはヌクレオシド類似体で処置されていない。
【0180】
いかなる理論にも拘束されることを意図するものではないが、少なくとも一部の患者は、本発明による治療を受けるにおいてHBVウイルス量の低下を経験し、一部の患者はウイルスをクリアできないものの、治療を受けていない場合に比べて、より低いレベルでウイルスを維持し、結果として健康上の利益を経験するであろう。
【0181】
IV.医薬組成物および単位剤形
別の態様において、本発明は、ロナファルニブおよびリトナビル共治療を提供するための単位剤形および医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、単位剤形のロナファルニブまたは医薬組成物は非晶質ロナファルニブである。他の実施形態において、ロナファルニブは結晶性である。いくつかの実施形態において、単位剤形のリトナビルまたは医薬組成物は、非晶質リトナビルである。他の実施形態において、リトナビルは結晶性である。いくつかの実施形態において、ロナファルニブおよびリトナビル共投与は、下記セクションVIで述べるように、1つ、2つまたは3つのGI安定化剤の予防的投与と組み合わされる。いくつかの実施形態において、ロナファルニブおよびリトナビル共投与は、下記セクションVで述べるように、インターフェロン共治療と組み合わされる。
【0182】
一般的に、便宜上、ロナファルニブおよびリトナビルは、経口投与用に製剤化され、経口投与される。しかしながら、いくつかの実施形態においては他の経路が好ましく、そこで本発明は、静脈内(IV)投与または皮下(SQ)製剤などの1つ以上の他の経路を用いた、HDV感染の処置のためのヒトへのロナファルニブおよび/またはリトナビルの投与のための方法および組成物を提供する。別の例として、本発明の方法は、薬物を皮下投与するために、パッチ技術、特にマイクロニードルを使用するパッチ技術を用いて実施され得る。非経口投与は、GIおよび他の副作用を回避または少なくとも軽減し得る。全身および局所投与経路を含む薬物送達に適切な他の経路が用いられ得る。
【0183】
しかしながら、多くの実施形態において、ロナファルニブおよび/またはリトナビルは、固形剤形(例えば、カプセル剤、カプレット剤、錠剤など)で経口投与される。一定の実施形態において、ロナファルニブおよび/またはリトナビルは、液体を含む軟ゲルカプセル剤として経口投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブおよび/またはリトナビルは、液体剤形(経口懸濁液、シロップまたはエリキシル剤)として投与される。各単位用量、例えば、ティースプーン、テーブルスプーン、ミリリットルなどが、ロナファルニブおよび/またはリトナビルを含む所定の量の組成物を含む、経口投与のための液体剤形が提供され得る。いくつかの実施形態において、ロナファルニブおよびリトナビルは、2つの異なる剤形(例えば、ロナファルニブ錠およびリトナビル溶液)の組み合わせとして投与される。
【0184】
ロナファルニブおよびリトナビルは、本明細書に記載の方法の実施において、別々に(個別の単位剤形として)共投与され得るか、またはロナファルニブおよびリトナビル両方を含む経口単位剤形において組み合され得る。別個の単位形態として投与される場合、典型的には、ロナファルニブおよびリトナビル用量は、ほぼ同時に、例えば、同時またはそれぞれの約3分以内に、あるいは、それぞれの約10、30または60分以内に、投与(例えば、自己投与)される。いくつかの実施形態において、リトナビルは、ロナファルニブが投与される前に投与される。
【0185】
ロナファルニブは、50mgおよび75mgのカプセル剤として製造されているが、異なる量のロナファルニブおよびリトナビルの活性成分で剤形を調製することは、本発明が提供し、および本開示に鑑みた当業者の能力の範囲内である。一実施形態において、本発明の医薬製剤は、50~100mgのリトナビルも存在する形態を含む、25mg、50mg、または75mgのロナファルニブを含有する単位剤形として、経口投与のために製剤化されたロナファルニブを含有する。塩または溶媒和物が用いられる場合、当業者に容易に理解されるように、同等の量が用いられることが要求される。
【0186】
リトナビルは、100mg錠、100mg軟ゼラチンカプセル剤および80mg/mL経口液剤として市販されているが、異なる量の活性成分および剤形を調製することは、本開示に鑑みた当業者の能力の範囲内である。様々な実施形態において、本発明の方法において有用な単位剤形は、50mgもしくは100mg、または50mg~100mgのいくらかのリトナビルを含む。塩または溶媒和物が用いられる場合、当業者に容易に理解されるように、同等の量が用いられる。
【0187】
経口投与に適する医薬製剤および単位剤形は、特に、患者が薬物を自己投与する慢性病態および治療の処置において有用である。しかしながら、上記のように、いくつかの場合(急性感染症および生命の危機にある状態、特に入院を要求するものが挙げられるがこれらに限定されない)において、静脈内製剤が望ましく、本発明はそのような製剤も提供する。本発明は、植物または他の同様の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルまたはプロピレングリコールなどの水性または非水性溶媒中に、および所望により、可溶化剤、等張化剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤および防腐剤などの従来の添加剤と共に、活性医薬物質を溶解、懸濁または乳化させることにより、ロナファルニブおよび/またはリトナビルが本発明による注射用調製物へ製剤化され得る、医薬製剤を提供する。注射または静脈内投与のための単位剤形は、組成物中に、滅菌水、生理食塩水または別の薬理学的に許容される担体中の溶液として含み得る。ロナファルニブおよび/またはリトナビルの単位剤形のための活性医薬成分の適切な量は本明細書で提供される。
【0188】
ロナファルニブ-リトナビル共製剤
本発明のいくつかの実施形態において、ロナファルニブおよびリトナビルは、同じ単位剤形において患者に送達される(すなわち「共製剤化される」)。例えば、剤形は、ロナファルニブおよびリトナビル(賦形剤および補助剤と共に)を含み得る。限定されないが、ロナファルニブおよびリトナビルは、混合物、多粒子製剤(これはリトナビルを含むマトリックス中でロナファルニブの小さな粒子を含み得る)、二層製剤、錠剤内錠剤製剤などとして提供され得る。共投与のためのそのような形態は、他の薬物(例えば、米国特許出願公開第2009/0142393号明細書および米国特許出願第2008/0021078号明細書、および国際特許公開WO2009/042960号パンフレット参照、それぞれは参照により本明細書に組み込まれる)についてよく知られており、そのような方法論は、適切な単位剤形を調製するために本開示に従って使用することができる。本明細書において提供されるロナファルニブおよびリトナビルを含む液剤製剤はまた、共投与のために用いられ得る。
【0189】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブおよびリトナビルは、コポリマーで製剤化される。いくつかの実施形態において、コポリマーは、ポビドン(ポリビニルピロリドン)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒプロメロースフタレート、ポリビニルピロリドン-ビニルアセテートコポリマー、ヒプロメロース-アセテート-スクシネート、およびそれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、コポリマーは、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、HPMC、ヒプロメロースフタレート、ポリビニルピロリドン-ビニルアセテートコポリマー、またはヒプロメロース-アセテート-スクシネートのいずれか1つである。いくつかの実施形態において、コポリマーは、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、HPMC、ヒプロメロースフタレート、ポリビニルピロリドン-ビニルアセテートコポリマーおよびヒプロメロース-アセテート-スクシネートの2つ以上の混合物である。いくつかの実施形態において、コポリマーは、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。いくつかの実施形態において、コポリマーは、ポリビニルピロリドン-ビニルアセテートコポリマーである。いくつかの実施態様において、コポリマーはポビドンではない。
【0190】
いくつかの実施形態において、コポリマーはポビドン(ポリビニルピロリドンまたはPVPとしても知られている)である。いくつかの実施形態において、コポリマーは、ポリビニルピロリドンK12(ポビドンK12)、ポリビニルピロリドンK17(ポビドンK17)、ポリビニルピロリドンK25(ポビドンK25)、ポリビニルピロリドンK30(ポビドンK30)またはポリビニルピロリドンK90(ポビドンK90)である。いくつかの実施形態において、ポリビニルピロリドンはポリビニルピロリドンK30である。いくつかの実施形態において、コポリマーは、ポリビニルピロリドン-ビニルアセテートコポリマーである。いくつかの実施形態において、ポリビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、Kollidon(登録商標)VA64コポビドンである。
【0191】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブおよびリトナビルを含む単位剤形または医薬組成物は、約20mg~約100mg、例えば、約25mg~約100mg、または約50mg~約100mgの量でロナファルニブを含み、約50mg~約100mgの量でリトナビルを含む。いくつかの実施形態において、ロナファルニブは約25mg、約50mg、約75mgまたは約100mgの量で存在し、リトナビルは約50mg、約75mgまたは約100mgの量で存在する。
【0192】
いくつかの実施形態において、単位剤形または医薬組成物は、経口投与のために製剤化され、約1:2(w/w)または約1:4(w/w)の比のロナファルニブおよびリトナビルを含む。いくつかの実施形態において、単位剤形または医薬組成物は、約1:2(w/w)の比のロナファルニブおよびリトナビルを含む。いくつかの実施形態において、単位剤形または医薬組成物は、約1:4(w/w)の比のロナファルニブおよびリトナビルを含む。いくつかの実施形態において、単位剤形または医薬組成物は、約0.75:1(w/w)の比のロナファルニブおよびリトナビルを含む。
【0193】
いくつかの実施形態において、単位剤形または医薬組成物は、約1:1:2(w/w)、1:2:3(w/w)、または1:1:5(w/w)の比のロナファルニブ、リトナビルおよびコポリマーを含む。
【0194】
いくつかの実施形態において、ロナファルニブ、リトナビルおよびコポリマーを含む単位剤形または医薬組成物は、参照により本明細書に組み込まれる、国際出願番号PCT/US2016/028651号に記載の方法に従って調製される。いくつかの実施形態において、単位剤形または医薬組成物は、溶媒(例えば、有機溶媒、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトン、DMSO、水、またはそれらの混合物)中でロナファルニブ、リトナビル、およびコポリマーの噴霧溶液を提供すること;任意選択により噴霧溶液を濾過して不溶物を除去すること;および噴霧溶液から溶媒を実質的に除去すること、を含む工程によって調製される。いくつかの実施形態において、溶媒は、溶媒の蒸留もしくは完全蒸発、噴霧乾燥、真空乾燥、トレイ乾燥、凍結乾燥もしくは冷凍乾燥、撹拌薄膜乾燥、またはそれらの組み合わせによって除去される。
【0195】
特定の放出製剤
ロナファルニブおよびリトナビルを含む共製剤を含む、ロナファルニブおよび/またはリトナビル剤形は、速放性および制御放出(例えば、遅放性または徐放性)を含む所定の溶出プロファイルのために製剤化され得る。例えば、ロナファルニブは、遅放性のために処方されてもよく、リトナビルは速放性のために処方されてもよい(別個の剤形として投与されるか組み合わせ剤形(単数または複数)として投与されるかに関わらず。
【0196】
いくつかの実施形態において、共製剤としてのロナファルニブ、リトナビル、またはロナファルニブおよびリトナビルを含む単位剤形または医薬組成物は、制御放出製剤または遅延放出製剤として製剤化される。制御または遅放性製剤を作製するための方法は、本技術分野において公知である。例示であって限定するものではないが、いくつかの場合において、ロナファルニブ、および任意選択によりリトナビルは、放出遅延剤と製剤化され得る。この製剤中のロナファルニブは、対象への投与後の遅滞期中、ゼロまたは比較的低い薬物の放出を有し、次いで、遅滞期の終了後、薬物の急速な放出(「バースト」)を達成してもよい。遅滞期は、典型的には約0.25~3時間の範囲、より多くの場合、約0.5~2時間の範囲である。拡散、膨潤、浸透バーストまたは浸食(例えば薬剤および組み込まれる賦形剤の固有の溶解に基づく)によるものなどの遅延バースト放出を提供するための多くの方法が本技術分野において公知である。米国特許出願公開第2011/0313009号明細書参照、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0197】
いくつかの場合において、例示であって限定するものではないが、放出遅延剤は、体内の所定の病態への曝露の際にロナファルニブおよび/またはリトナビルを放出させることができるように設計される。一実施形態において、放出遅延剤は、消化管の特有の態様への曝露の際に薬物を放出させることができる腸溶性放出剤である。ある実施形態において、腸溶性放出剤は、pH感受性であり、消化管内で遭遇するpHの変化によって影響を受ける(pH感受性放出)。腸溶性物質は、典型的に胃のpHにおいて不溶性のままであり、その後、下流消化管(例えば、多くの場合、十二指腸、または時に結腸)のより高いpH環境において活性成分の放出を可能にする。別の実施形態において、腸溶性物質は、下部消化管、特に結腸に存在する細菌酵素により分解される酵素分解性ポリマーを含む。任意選択により、単位剤形は、特定のpHにおいてまたはそれを越えるとき、約0.25~2時間以内の放出を生じるように設計されたpH感受性腸溶性物質と製剤化される。様々な実施形態において、特定のpHは、例えば約4.5、5、5.5、6または6.5であり得る。特定の実施形態において、pH感受性物質は、約5.5またはそれ以上のpHへ曝露されたとき1時間以内に薬物の少なくとも80%の放出を可能にする。別の実施形態において、pH感受性物質は、約6またはそれ以上のpHへ曝露されたとき1時間以内に薬物の少なくとも80%の放出を可能にする。
【0198】
例えばコーティング剤として、腸溶性放出製剤のために用いられる物質は、本技術分野において公知であり、例えば米国特許出願公開第2011/0313009号明細書に記載されるものである。異なる腸溶性物質の組み合わせも用いられ得る。異なるポリマーを用いる多層コーティングも適用され得る。いくつかの例において、腸溶性物質は、約0.25~約3時間、時に約0.5~約4時間の範囲で薬物放出の遅延を生じる。
【0199】
当業者は、腸溶性層のコーティング重量および組成を変化させることにより、腸溶性コーティングされた多粒子からの遅延バースト放出前の遅滞期を調節し得る。例えば、胃中での時間が4時間未満であり、剤形が胃を離れた後ある程度の保護(1~3時間)が望まれる場合、投与と薬物放出間の4時間までの保護を提供する適切なレベルのコーティングを調製し得る。正確なコーティング重量を特定するために、多粒子の試料は、コーティング重量の範囲にわたって流動床コーターから引き出され、適切なコーティングレベルを特定するためにインビトロ溶出によって試験されるだろう。これらの結果に基づいて、正確なコーティング重量が選択されるだろう。腸溶性コーティングされた多粒子の例は、米国特許第6,627,223号に見出すことができる。
【0200】
ロナファルニブおよび/またはリトナビルは、1つ以上の放出遅延剤と混合(mix)(例えば、ブレンド、混合(intermix)または連続相中)されてもよく、および/またはその中に含有され(例えば、その中に封入され、またはそれでコーティングされ)てもよい。例えば、遅延バースト放出製剤は、ロナファルニブおよび/またはリトナビルを含む1つ以上のカプセル剤の形態であり得る。他の例において、ロナファルニブおよび/またはリトナビルは、放出遅延剤でコーティングされた、顆粒、マイクロ粒子(ビーズ)またはナノ粒子などの多粒子形態であってもよい。
【0201】
セクションVIで下記されるように、一手法において、ロナファルニブを受けている患者は、GI改質薬の1つまたは組み合わせの予防的投与を受けるであろうことが企図される。一手法において、1つ以上のGI改質薬は、ロナファルニブおよび/またはリトナビルとの共製剤として提供される。例えば、限定されないが、ロナファルニブ、リトナビルおよびGI改質薬は三層錠剤として製剤化され得る。別の手法において、1つ以上のGI改質薬は、以下のセクションVIIに記載のように、一般的な医薬品包装(「共包装」)で提供される。一手法において、1つ以上のGI改質薬は、速放性製剤として提供され、ロナファルニブ(および任意選択によりリトナビル)は、制御放出製剤として提供される。少なくとも1つのGI改質薬が速放性のために製剤化され、ロナファルニブが制御放出(例えば遅放性)のために製剤化される限り、異なる放出を有する製剤化された薬剤は、様々な組み合わせで共包装および/または共製剤化され得る。好ましい実施形態において、製剤は、患者が、ロナファルニブの放出前にGI改質薬が効くことを可能にする製剤を用いて、ロナファルニブおよび少なくとも1つのGI改質薬を実質的に同時に(例えば、同時にまたはそれぞれの約5分以内に)自己投与することを可能にする。この手法を用いて、患者は、患者が治療薬を自己投与しなければならない1日当たりの回数を増加させることなく、GI改質薬の放出前の利益を受け得る。
【0202】
V.インターフェロン共治療
いくつかの実施形態において、HDV感染(すなわち、HBVおよびHDV同時感染)を処置するため、またはHDVウイルス量を減少させるために、インターフェロンと組み合わせてロナファルニブが使用される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ-リトナビル共治療は、HDV感染を処置するために、またはHDVウイルス量を減少させるために、インターフェロンと組み合わせて使用される。
【0203】
それらが介してシグナル伝達する受容体のタイプに基づいて、ヒトインターフェロンは3つの主要な型に分類される。様々な実施形態において、I~III型いずれかのインターフェロンは、HDV感染を処置するために、ロナファルニブと組み合わせて用いられる。すべてのI型IFNは、IFNAR1およびIFNAR2鎖からなるIFN-アルファ受容体(IFNAR)として知られる特定の細胞表面受容体複合体に結合する。ヒトに存在するI型インターフェロンは、IFN-アルファ、IFN-ベータ、IFN-イプシロンおよびIFN-オメガである。II型IFNは、IFNGR1およびIFNGR2鎖からなるIFN-ガンマ受容体(IFNGR)に結合する。ヒトにおけるII型インターフェロンは、IFN-ガンマである。最近分類されたIII型インターフェロン群は、IFN-ラムダ1、IFN-ラムダ2およびIFN-ラムダ3と呼ばれる(それぞれIL29、IL28AおよびIL28Bとも呼ばれる)、3つのIFN-ラムダ分子からなる。これらのIFNは、IL10R2(CRF2-4とも呼ばれる)およびIFNLR1(CRF2-12とも呼ばれる)からなる受容体複合体を介してシグナル伝達する。本明細書に記載の処置方法での使用に適切なインターフェロンは、以下に記載される。
【0204】
一実施形態において、ロナファルニブは、100mgQD以下のロナファルニブ用量で他の薬剤(インターフェロンアルファまたはインターフェロンラムダ、および任意選択によりリトナビル、など)と組み合わせ投与される。一実施形態において、本発明は、少なくとも50mg/日のロナファルニブ(例えば、25mgBID、50mgBID、75mgBID、100mgBID、50mgQD、75mgQD、または100mgQDのロナファルニブ)リトナビルおよび/またはインターフェロンと組み合わせて投与することによってHDV感染を処置する方法を提供する。一実施形態において、本発明は、インターフェロンおよび/またはリトナビルと組み合わせた、少なくとも100mgロナファルニブQDまたはBIDの投与による、HDV感染を処置するための方法を提供する。
【0205】
一手法において、ロナファルニブ(単独で、またはリトナビルなどの増強剤(booster)と組み合わせて)を受けている患者はまた、インターフェロン(例えば、インターフェロンアルファまたはインターフェロンラムダ)で処置される。いくつかの実施態様において、ロナファルニブおよびインターフェロン(例えば、インターフェロンアルファまたはインターフェロンラムダ)の両方が患者に投与され、ロナファルニブ用量は少なくとも約50mgBIDもしくはQD、少なくとも約75mgBIDもしくはQD、または約100mgBIDもしくはQDである。いくつかの実施態様において、ロナファルニブおよびインターフェロン(例えば、インターフェロンアルファまたはインターフェロンラムダ)の投与は同時である。いくつかの実施態様において、ロナファルニブおよびインターフェロン(例えば、インターフェロンアルファまたはインターフェロンラムダ)の投与は連続的である。いくつかの実施形態において、インターフェロンは、インターフェロンアルファである。いくつかの実施形態において、インターフェロンアルファは、ペグ化インターフェロンアルファ(例えば、ペグ化インターフェロンアルファ-2a、本明細書では「Pegasys」とも称される)である。いくつかの実施形態において、インターフェロンは、インターフェロンラムダである。いくつかの実施形態において、インターフェロンラムダは、ペグ化インターフェロンラムダ(例えば、ペグ化インターフェロンラムダ-1a)である。したがって、ロナファルニブ-リトナビル共治療を受けているHDV感染した患者は、インターフェロンでも処置され得ることが企図される。
【0206】
インターフェロン(例えば、インターフェロンアルファまたはインターフェロンラムダ)およびリトナビル(Norvir)などの他の薬剤と組み合わせたロナファルニブの投与は、より低い用量および/または減少した投与頻度での有効な治療を提供する。いくつかの場合において、患者は、ロナファルニブ、リトナビルおよびインターフェロン(例えば、インターフェロンアルファまたはインターフェロンラムダ)を投与される。いくつかの実施形態において、インターフェロンは、1週間当たり120マイクログラム(mcg)または1週間当たり180mcgの用量で、毎週投与される。
【0207】
いくつかの実施形態において、インターフェロンアルファ(例えば、Pegasys(登録商標)、Genentech社)は毎週投与される。いくつかの実施形態において、インターフェロンアルファは、120mcgQWまたは180mcgQWの用量で投与される。いくつかの実施形態において、ペグ化インターフェロン(Pegasys(登録商標))は、1週間当たり180μgの用量で投与される。
【0208】
いくつかの実施形態において、インターフェロンラムダ(例えば、ペグ化ラムダ、例えば、ペグ化ラムダ-1a)が毎週投与される。いくつかの実施形態において、インターフェロンラムダは、120mcgQWまたは180mcgQWの用量で投与される。いくつかの実施形態において、インターフェロンラムダは、1週間当たり120μgの用量で投与される。
【0209】
これらの実施形態において、ロナファルニブ(例えば、単独またはリトナビルと組み合わせて)およびインターフェロンの投与は、少なくとも30日間、通常少なくとも約60日間、または6ヶ月~1年以上を含む、90日以上でも継続される。ある手法において、投与は、約30日間、より典型的には、30または60日間、および多くの場合、6ヶ月間、9ヶ月間および12ヶ月間の間継続される。いくつかの実施形態において、一定期間(1~3ヶ月以上など)、ウイルスレベルが検出できないレベルに低下した後、投与は中断される。
【0210】
インターフェロン
一態様において、本発明は、インターフェロン-アルファまたはインターフェロン-ラムダがロナファルニブと組み合わせて用いられる組み合わせ治療を提供する。用語「インターフェロン-アルファ」または「IFN-α」および「インターフェロン-ラムダ」または「IFN-λ」は、本明細書で用いられる場合、ウイルス複製および細胞増殖を阻害し、免疫反応を調節する関連ポリペプチドのファミリーを指す。本発明の目的のために適切なインターフェロンには、ペグ化IFN-α-2a、ペグ化IFN-α-2b、コンセンサスIFN、IFN-λ(例えば、IFN-λ1aなどのIFN-λ1)、またはペグ化IFN-λ(例えば、ペグ化IFN-λ1aなどのペグ化IFN-λ1)が含まれるが、これらに限定されない。
【0211】
インターフェロンアルファ
用語「IFN-α」は、天然IFN-α;合成IFN-α;誘導体化IFN-α(例えば、ペグ化IFN-α、グリコシル化IFN-αなど);および天然または合成IFN-αの類似体を含む。用語「IFN-α」はまた、コンセンサスIFN-αを包含する。したがって、本質的に、天然IFN-αについて説明されるように、抗ウイルス特性を有する任意のIFN-αまたはIFN-λは、本発明の組み合わせ治療において用いられ得る。
【0212】
用語「IFN-α」は、血清半減期などの一定の特性を変更するために誘導体化された(例えば天然ペプチドと比較して化学的に修飾された)IFN-αの誘導体を包含する。すなわち、用語「IFN-α」は、ポリエチレングリコールで誘導体化されたIFN-α(「ペグ化IFN-α」)などを含む。ペグ化IFN-α、およびその作製方法は、例えば米国特許第5,382,657号;第5,951,974号;および第5,981,709号に記載される。ペグ化IFN-αは、PEGと上記IFN-α分子のいずれかのコンジュゲートを包含し、インターフェロンアルファ-2a(Roferon、Hoffman La-Roche、Nutley、N.J.)、インターフェロンアルファ-2b(Intron、Schering-Plough、Madison、N.J.)、インターフェロンアルファ-2c(Berofor Alpha、Boehringer Ingelheim、Ingelheim、Germany);および天然インターフェロンアルファのコンセンサス配列の決定により定義されるコンセンサスインターフェロン(Infergen(登録商標)、InterMune、Inc.、Brisbane、CA.)へコンジュゲートされたPEGが挙げられるが、これらに限定されない。
【0213】
したがって、本発明の組み合わせ治療のいくつかの実施形態において、IFN-αは、1つ以上のポリエチレングリコール部分で修飾、すなわちペグ化されている。ペグ化インターフェロンの2つの形態である、ペグインターフェロンα-2a(40kD)(Pegasys(登録商標)、Genentech社)およびペグインターフェロンα-2b(12kD)(PegIntron(登録商標)、Merck)は市販されており、これらは薬物動態、ウイルス動態、忍容性プロファイル、ひいては投与の点で異なっている。
【0214】
ペグインターフェロンα-2a(Pegasys)は、40kDの分岐鎖ポリエチレングリコール(PEG)に共有結合したインターフェロンα-2a(約20kD)からなる。PEG部分は、リシンへの安定なアミド結合によりインターフェロンアルファ部分へ単一の部位において結合される。ペグインターフェロンアルファ-2aは、60,000ダルトンのおよその分子量を有する。ペグインターフェロン-アルファ-2aの生物活性は、ある特定のウイルスに対する適応性および先天性免疫反応両方に影響を与えるそのインターフェロンアルファ-2a部分に由来する。このアルファインターフェロンは、ウイルスのタンパク質合成の遮断およびウイルスのRNA変異誘発の誘導などの、一連の抗ウイルス作用を生じるインターフェロン刺激遺伝子の発現を最大にする複数の細胞内シグナル伝達経路を活性化する、肝細胞上のヒト1型インターフェロン受容体に結合し、それを活性化する。天然インターフェロンアルファ-2aと比較して、ペグインターフェロンアルファ-2aは、持続的な吸収および遅延したクリアを有する。ペグインターフェロンアルファ-2aは、固定の週用量として用いられる。ペグインターフェロンアルファ-2aは、注射後、比較的一定の吸収を有し、大部分が血液および臓器に分布する。
【0215】
ペグインターフェロンアルファ-2b(PegIntron)は、12kD直鎖ポリエチレングリコール(PEG)に共有結合したインターフェロンアルファ-2bからなる。この分子の平均分子量はおよそ31,300ダルトンである。ペグインターフェロンアルファ-2bは、主にモノペグ化種(1つのPEG分子が1つのインターフェロン分子と結合する)と少量のジペグ化種からできている。インターフェロン分子上の14の異なるPEG結合部位が同定されている。ペグインターフェロンアルファ-2bの生物活性は、一定のウイルスに対する適応性免疫応答および先天性免疫応答の両方に影響を与えるインターフェロンアルファ-2b部分に由来する。このアルファインターフェロンは、ウイルスのタンパク質合成の遮断およびウイルスのRNA変異誘発の誘導などの、一連の抗ウイルス作用を生じるインターフェロン刺激遺伝子の発現を最大にする複数の細胞内シグナル伝達経路を活性化する、肝細胞上のヒト1型インターフェロン受容体に結合し、それを活性化する。天然インターフェロンアルファ-2bと比較して、ペグインターフェロンアルファ-2bは、持続的な吸収、遅延したクリアランス、および半減期延長を有する。ペグインターフェロンアルファ-2bは、患者の体重に基づく週用量として用いられる。ペグインターフェロンアルファ-2bは、体内において急速な吸収およびより広い分布を有する。
【0216】
ペグ化IFN-αポリペプチドのPEG分子は、IFN-αポリペプチドの1つ以上のアミノ酸側鎖とコンジュゲートする。ある実施形態において、ペグ化IFN-αは、1のアミノ酸のみにPEG部分を含む。別の実施形態において、ペグ化IFN-αは、2以上のアミノ酸にPEG部分を含み、例えば、IFN-αは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14個の異なるアミノ酸残基と結合するPEG部分を含む。IFN-αは、アミノ基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基またはカルボキシル基によって直接(すなわち、連結基無しで)PEGと共役し得る。
【0217】
用語「IFN-α」はまた、コンセンサスIFN-αを包含する。コンセンサスIFN-α(「CIFN」および「IFN-con」および「コンセンサスインターフェロン」とも呼ばれる)は、米国特許第4,695,623号および第4,897,471号で開示されるIFN-con1、IFN-con2およびIFN-con3に指定されたアミノ酸配列ならびに天然インターフェロンアルファのコンセンサス配列の決定により定義されるコンセンサスインターフェロン(例えば、Infergen(登録商標)、Three Rivers Pharmaceuticals、Warrendale、PA)を包含するが、これに限定されない。IFN-con1は、Infergen(登録商標)alfacon-1製剤中のコンセンサスインターフェロン剤である。Infergen(登録商標)コンセンサスインターフェロン製剤は、本明細書でその商品名(Infergen(登録商標))またはその一般名(インターフェロンalfacon-1)で称する。IFN-conをコードするDNA配列は、上記特許または他の標準的方法に記載のように合成され得る。ある実施形態において、少なくとも1つの付加的な治療薬はCIFNである。
【0218】
本発明の組み合わせ治療の様々な実施形態において、IFN-αおよび異種ポリペプチドを含む融合ポリペプチドが用いられる。適切なIFN-α融合ポリペプチドには、Albuferon-alfaTM(ヒトアルブミンおよびIFN-αの融合産物;Human Genome Sciences;例えば、Osborn et al.,2002,J.Pharmacol.Exp.Therap.303:540-548参照)が含まれるが、これに限定されない。また、本方法において用いるのに適切なものは、IFN-αの遺伝子シャッフル型である。例えば、Masci et al.,2003,Curr.Oncol.Rep.5:108-113参照。他の適切なインターフェロンにはMultiferon(Viragen)、Medusa Interferon(Flamel Technology)、Locteron(Octopus)およびOmega Interferon(Intarcia/Boehringer Ingelheim)が含まれる。
【0219】
これらの組み合わせ治療の一実施形態において、ペグ化インターフェロンアルファ-2a(Pegasys)を180マイクログラム(mcg)または120mgまたは135mcg(より高い用量に陰性反応を示す患者のために用いられる)の用量で毎週皮下(SQ)投与する。これらの組み合わせ治療の別の実施形態において、ペグ化インターフェロンアルファ-2b(PegIntron)を1.5mcg/kg/wkの用量で毎週SQ投与する。これらの方法の他の実施形態において、アルファ-インターフェロンは、次のように用いられる:9mcg~15mcgで毎日または週3回SQ投与されるコンセンサスインターフェロン(Infergen);MIU~9MIUで週3回SQ投与されるインターフェロン-アルファ2a組換え型;3MIU~25MIUで週3回SQ投与されるインターフェロン-アルファ2b(Intron A)組換え型;および80mcg~240mcgで毎週SQ投与されるペグ化インターフェロンラムダ(IL-28)。
【0220】
いくつかの実施形態において、インターフェロンは、ペグ化IFN-アルファ2aまたはペグ化IFN-アルファ2bである。ロナファルニブ/ペグ化IFN-アルファ2aの適切な用量には、100mgBID/180mcgQW;75mgBID/180mcgQW;50mgBID/180mcgQW;または25mgBID/180mcgQWが含まれるが、これに限定されない。ロナファルニブ/ペグ化IFN-アルファ2bの適切な用量には、100mgBID/1.5mcg/kg患者体重QW;75mgBID/1.5mcg/kg患者体重QW;50mgBID/1.5mcg/kg患者体重QW;または25mgBID/1.5mcg/kg患者体重QWが含まれるが、これに限定されない。
【0221】
インターフェロンラムダ
用語「IFN-λ」は、IFN-ラムダ-1(IFN-ラムダ-1aを含む)、IFN-ラムダ-2およびIFN-ラムダ-3を包含する。これらのタンパク質は、それぞれインターロイキン-29(IL-29)、IL-28AおよびIL-28Bとしても知られる。集合的に、これら3つのサイトカインは、IFNのIII型サブセットを含む。それらは、I型またはII型IFNにより用いられる受容体と異なるヘテロ二量体受容体複合体を介してシグナル伝達するという事実を含む、多くの理由から、I型およびII型IFNの両方と区別される。I型IFN(IFN-アルファ/ベータ)およびIII型IFN(IFN-ラムダ)は別個の受容体複合体を介してシグナル伝達するが、それらは、多種多様の標的細胞において同じ細胞内シグナル伝達経路および抗ウイルス活性を含む同じ生物学的活性の多くを活性化する。インターフェロンラムダは、限定されないが、80、120または180mcgQWを含む、任意の治療上適切な用量で投与され得る。いくつかの実施形態において、成人のための用量は、週に1回120マイクログラムである。
【0222】
いくつかの実施形態において、インターフェロンラムダ(例えば、インターフェロンラムダ-1またはインターフェロンラムダ-1a)は、患者のHDV感染を処置するために、ロナファルニブおよび任意選択によりリトナビルと共に投与される。いくつかの実施形態において、インターフェロンラムダは、インターフェロンラムダのペグ化形態(例えば、ペグ化インターフェロンラムダ-1またはペグ化インターフェロンラムダ-1a)である。いくつかの実施形態において、インターフェロンラムダは、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7157559号に開示されるインターフェロンである。いくつかの実施態様において、インターフェロンラムダは、1週間当たり120μgの用量で投与される。いくつかの実施態様において、インターフェロンラムダは、1週間当たり180μgの用量で投与される。いくつかの実施形態において、インターフェロンラムダは、皮下投与される。いくつかの実施形態において、インターフェロンラムダ治療は、少なくとも1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、またはそれ以上の間、患者のHDV感染を処置するために、ロナファルニブおよび任意選択によりリトナビルと共に投与される。実施例15は、ロナファルニブおよび任意選択によりリトナビルと組み合わせたインターフェロンラムダ投与の予測的実施例を記述する。
【0223】
いくつかの実施形態において、インターフェロンは、ペグ化IFNラムダ-1aである。ロナファルニブ/ペグ化IFNラムダ-1aの適切な用量には、100mgBID/180mcgQW;75mgBID/180mcgQW;50mgBID/180mcgQW;25mgBID/180mcgQW;100mgBID/120mcgQW;75mgBID/120mcgQW;50mgBID/120mcgQW;または25mgBID/120mcgQWが含まれるが、これに限定されない。
【0224】
三剤共治療
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のインターフェロンラムダは、患者のHDV感染を処置するために、ロナファルニブおよびリトナビルと組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ用量は50mgBIDであり、リトナビル用量は100mgBIDであり、インターフェロンラムダ用量は120mcgQWである。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ用量は50mgBIDであり、リトナビル用量は100mgBIDであり、インターフェロンラムダ用量は180mcgQWである。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ用量は25mgBIDであり、リトナビル用量は100mgBIDであり、インターフェロンラムダ用量は120mcgQWである。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ用量は25mgBIDであり、リトナビル用量は100mgBIDであり、インターフェロンラムダ用量は180mcgQWである。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ用量は75mgBIDであり、リトナビル用量は100mgBIDであり、インターフェロンラムダ用量は120mcgQWである。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ用量は75mgBIDであり、リトナビル用量は100mgBIDであり、インターフェロンラムダ用量は180mcgQWである。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ用量は50mgQDであり、リトナビル用量は100mgQDであり、インターフェロンラムダ用量は120mcgQWである。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ用量は50mgQDであり、リトナビル用量は100mgQDであり、インターフェロンラムダ用量は180mcgQWである。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ用量は75mgQDであり、リトナビル用量は100mgQDであり、インターフェロンラムダ用量は120mcgQWである。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ用量は75mgQDであり、リトナビル用量は100mgQDであり、インターフェロンラムダ用量は180mcgQWである。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ用量は100mgQDであり、リトナビル用量は100mgQDであり、インターフェロンラムダ用量は120mcgQWである。いくつかの実施形態において、ロナファルニブ用量は100mgQDであり、リトナビル用量は100mgQDであり、インターフェロンラムダ用量は180mcgQWである。
【0225】
VI.消化管改質治療での予防
下記実施例2および実施例4に記載のように、いくつかのロナファルニブ単独治療およびロナファルニブ-リトナビル共治療を受けるHDV感染患者は、消化管(GI)副作用を経験した。GI副作用は、ファルネシルトランスフェラーゼクラスにおける化合物につき予想外ではない。GI不耐症はまた、プロテアーゼ阻害剤として用いられる場合、リトナビルは1200mg/日ほどの高用量で投与され得るにもかかわらず、リトナビルの公知の副作用である。しかしながら、比較的適度な用量のロナファルニブおよびリトナビルが投与された、ロナファルニブを投与されるHDV患者におけるこれらの症状の重症度および持続性は、予想外であった。消化管刺激の処置のための薬剤には制吐薬、制酸薬(H2-受容体アンタゴニストおよびプロトンポンプ阻害剤)および下痢止め薬が含まれる。例示的な薬剤(例示であって限定するものではない)は、下記表4に列挙される。
【0226】
本発明の方法によれば、ロナファルニブは、制吐薬、制酸薬(H2-受容体アンタゴニストまたはプロトンポンプ阻害剤)および/または下痢止め薬の少なくとも1つ、少なくとも2つまたは少なくとも3つと組み合わせて用いられ、ロナファルニブ治療中の患者の継続的な適応性を可能にする。一実施形態において、下痢止め薬が投与される。一実施形態において、下痢止め薬および制酸薬が投与される。一実施形態において、下痢止め薬および制吐薬を投与する。一実施形態において、下痢止め薬、制酸薬および制吐薬を投与する。一実施形態において、下痢止め薬はロモティル(アトロピン/ジフェノキシレート)であり、および/または制酸薬はファモチジンであり、および/または制吐薬はオンダンセトロンである。
【表4】
【0227】
一手法において、GI改質治療は、必要に応じて(症状に応じて)施される。一手法において、GI改質治療は予防的に投与される。この文脈において本明細書で用いられる場合、「予防的に」は、症状の不存在下または発症前の患者への投与を指す。典型的に、予防的処置は、ロナファルニブ処置過程において、固定スケジュール(例えば毎日)に従った投与を要する。
【0228】
一手法において、予防的処置は、オンダンセトロン(制吐薬)、ロモティル(アトロピン/ジフェノキシレート)(下痢止め薬)およびファモチジン(制酸薬)の投与を含む。例えば、オンダンセトロン8mgBIDが投与されてもよく、ロモティル(アトロピン/ジフェノキシレート)5mgQIDまたは5mgBIDが投与されてもよく、ファモチジン20mgBIDが投与されてもよい。
【0229】
一手法において、GI改質薬がロナファルニブの投与前に毎日投与される。一手法において、GI改質薬がロナファルニブ治療の投与30分~2時間前に投与される。
【0230】
一手法において、GI改質薬は、ロナファルニブが投与されるのと毎日同時に投与されるが、ロナファルニブ(および適宜リトナビル)は、GI改質薬がロナファルニブ放出前に効き始めるように遅放性製剤(例えば腸溶コーティングを含む)として投与される。
【0231】
GI改質薬の予防的投与は、一般的にロナファルニブ治療期間中継続される。
【0232】
一手法において、GI改質薬の予防的投与は、ロナファルニブ投与の第1日目に始まる。別の手法において、1つ以上のGI改質薬の投与は、経口ロナファルニブ-リトナビル治療の開始前に始まる。例えば、一実施形態において、患者は、ロナファルニブ処置の開始前日にオンダンセトロンを投与される。一手法において、1つ以上のGI改質薬は、経口ロナファルニブ-リトナビル処置の開始の2日以上前に始まり、毎日投与される。
【0233】
好ましい実施形態において、GI改質薬は、BIDまたはQDスケジュールに従って投与される。
【0234】
H2-受容体アンタゴニスト
GI改質治療の一実施形態において、GI改質治療は、H2-受容体アンタゴニストである。GI改質治療の一実施形態において、ラニチジン(Zantac(登録商標))は、150mg1日2回、150mg1日4回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。GI改質治療の別の一実施形態において、ファモチジン(Pepcid(登録商標))は、40mg1日1回、20mg1日2回まで、40mg1日2回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。GI改質治療の別の一実施形態において、シメチジン(Tagamet(登録商標))は、400mg1日1回、800mg1日1回まで、1600mg1日1回まで、800mg1日2回まで、300mg1日4回まで、400mg1日4回まで、600mg1日4回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。GI改質治療の別の一実施形態において、ニザチジン(Axid)は、150mg1日1回、300mg1日1回まで、150mg1日2回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。
【0235】
5-HTアンタゴニスト
GI改質治療の一実施形態において、治療は、5-HT受容体アンタゴニストである。GI改質治療の一実施形態において、オンダンセトロン(Zofran(登録商標))は、ロナファルニブ治療の開始の30分~2時間前に8mg1日1回、8mg1日2回まで、8mg1日3回までで投与される。この実施形態において、投与は、少なくともロナファルニブ処置期間中継続される。GI改質治療の別の一実施形態において、グラニセトロン(経口Kytril(登録商標))は、ロナファルニブ治療の開始の1時間前までに与えられる2mgまたは1mg1日2回で投与される。この実施形態において、投与は、少なくともロナファルニブ処置期間中継続される。
【0236】
NK-1受容体アンタゴニスト
GI改質治療の一実施形態において、GI改質治療は、NK-1受容体アンタゴニストである。GI改質治療の一実施形態において、アプレピタント(Emend(登録商標))は、ロナファルニブ治療の開始の1時間前に与えられる1日目における125mg用量、続いて2日目および3日目における80mg用量からなる3日間の処置として、5-HT3受容体アンタゴニストおよびコルチコステロイドと組み合わせて投与される。これらのGI改質治療の別の一実施形態において、ロナファルニブ治療開始の30分前までに与えられる単回150mg用量のホスアプレピタント、続いて単回12mg用量のデキサメサゾンおよび単回用量の5-HT3受容体アンタゴニスト(オンダンセトロンなど)、ロナファルニブ治療の開始30分前までに与えられる単回150mg用量までのホスアプレピタント、続いて1日目に単回8mg用量のデキサメサゾンおよび単回用量の5-HT3受容体アンタゴニスト(オンダンセトロンなど)、2~4日目に単回8mg用量のデキサメサゾン、からなる1日の処置として、ホスアプレピタント(Emend(登録商標)IV)は、5-HT3受容体アンタゴニストおよびコルチコステロイド(デキサメサゾン)と組み合わせて投与される。
【0237】
プロトンポンプ阻害剤
GI改質治療の一実施形態において、GI改質治療は、プロトンポンプ阻害剤(PPI)である。GI改質治療の一実施形態において、オメプラゾール(Prilosec(登録商標))は、制酸薬と組み合わせてロナファルニブ治療の開始の4日前までに20mg1日1回、40mg1日1回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。GI改質治療の別の一実施形態において、オメプラゾール/重炭酸ナトリウム(Zegerid(登録商標))は、食事およびロナファルニブ治療の開始の少なくとも1時間前に20mg1日1回、40mg1日1回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。GI改質治療の別の一実施形態において、エソメプラゾールマグネシウム(Nexium(登録商標))は、ロナファルニブ処置の開始の少なくとも1時間前に20mg1日1回、40mg1日1回まで、40mg1日2回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。GI改質治療の別の一実施形態において、エソメプラゾールストロンチウムは、ロナファルニブ処置の少なくとも1時間前に24.65mg1日1回、49.3mg1日1回まで、49.3mg1日2回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。GI改質治療の別の一実施形態において、ランソプラゾール(Prevacid(登録商標))は、14日までの間、ロナファルニブ治療の2時間前までにランソプラゾール15mg1日1回、30mg1日1回まで、60mg1日1回まで、30mg1日2回までの用量で投与され、ロナファルニブ治療期間中、30mg1日3回までの用量で投与される。GI改質治療の別の一実施形態において、デクスランソプラゾール(Dexilant(登録商標))は、ロナファルニブ治療期間中デクスランソプラゾールの30mg1日1回、60mg1日1回までの用量でロナファルニブ治療の2時間前までに投与される。GI改質治療の別の一実施形態において、パントプラゾールナトリウム(Protonix(登録商標))は、ロナファルニブ治療の7日前までに40mg1日1回、40mg1日2回までの用量でロナファルニブ治療期間中投与される。
【0238】
本発明のいくつかの実施形態において、GI改質治療は、CYP3A4に対する阻害効果により選択されるプロトンポンプ阻害剤(PPI)を含む。PPI介在性阻害は、治療上有効なロナファルニブ血清レベルを維持するのを助け得る。そのような阻害性PPIにはオメプラゾールおよびレベプラゾールが含まれるが、これらに限定されない。
【0239】
下痢止め薬
GI改質治療の一実施形態において、治療は、下痢止め薬である。GI改質治療の一実施形態において、アトロピン/ジフェノキシレート(Lomotil(登録商標)、Lonox(登録商標))は、Lomotil錠剤2つ1日4回またはLomotil(登録商標)液剤10ml1日4回(20mg/日)の用量で最初のコントロールが達成されるまで投与され、この後用量は1日5mg(錠剤2つまたは液剤10ml)程度まで減少され得る。GI改質治療の別の一実施形態において、ロペラミドHCl(Imodium(登録商標))は、4mg(カプセル剤2つ)、続いて軟便が出るたびに2mg(カプセル剤1つ)、16mg(カプセル剤8つ)までの用量で投与される。GI改質治療の別の一実施形態において、次サリチル酸ビスマス(Kaopectate(登録商標)、Pepto-Bismol(登録商標))は、必要に応じて30分~1時間ごとに錠剤2つまたは30mLとして、24時間中8用量まで投与される。
【0240】
VI.キットおよび包装
HDV患者を処置するのに用いられる、ロナファルニブ、および/またはリトナビル、および/またはインターフェロンおよび/または1つ以上のGI改質薬は、医師および患者、例えばHDV患者へ、医薬包装またはキットで送達され得る。そのような包装は、患者の利便性および処置計画への適応性を改善することが意図される。典型的に、包装は、紙(厚紙)またはプラスチックを含む。いくつかの実施形態において、キットまたは医薬パッケージは、(例えば、本明細書に記載の方法に従って投与するための)使用説明書をさらに含む。
【0241】
いくつかの実施形態において、医薬パッケージまたはキットは、単位用量当たり25、50、75、または100mgのロナファルニブ、または単位用量あたり25mg~100mgの量のロナファルニブを含む単位剤形のロナファルニブ、および単位用量当たり50mgまたは100mgのリトナビル、または単位用量あたり50mg~100mgの量のリトナビルを含む単位剤形のリトナビルを含む。いくつかの実施形態において、医薬パッケージまたはキットは、インターフェロンの単位剤形を、さらに、またはリトナビルの代わりに、含む。いくつかの実施形態において、薬学的パッケージまたはキットは、単位用量当たり120mcgまたは180mcgインターフェロン(例えば、ペグ化インターフェロンラムダ-1a)を含むインターフェロンの単位剤形を含む。いくつかの実施形態において、医薬パッケージまたはキットは、1つ以上のGI改質薬(例えば、1つ以上の制吐薬、制酸薬(H2受容体アンタゴニストおよびプロトンポンプ阻害剤)または下痢止め薬)の単位剤形をさらに含む。
【0242】
一実施形態において、キットまたは医薬包装は、単回単位剤形に組み合わせて、または個別の単位用量として、所定の治療上有効な用量でロナファルニブおよびリトナビルを含む。各薬物の用量(例えば、mg単位)および単位用量の形態(例えば、錠剤、カプセル剤、速放性、遅放性など)は、本明細書に記載されるような任意の用量または形態であり得る(例えば、セクションIV)。
【0243】
一実施形態において、キットまたは医薬品パッケージは、1週間、1ヶ月または3ヶ月などの複数日投与に適した用量を含む。好ましい手法において、数日分の包装では、各投与(例えば、QD投与のための1日1回、BID投与のための1日2回など)のための用量(例えば、錠剤)は、異なる日または異なる時間に投与されるために用量から分割される。
【0244】
別の実施形態において、包装は、所定の治療上有効な用量のロナファルニブ、リトナビルまたはロナファルニブおよびリトナビルの組み合わせ、ならびに単一の包装に組み合される1つ以上のGI改質薬を含むが、前記包装内の互いに別個の区画に分離される。
【0245】
VIII.他の抗ウイルス治療
ロナファルニブ-リトナビル共治療を受けているHDV感染した患者はまた、ヌクレオシドおよびヌクレオチド類似体などの他の抗ウイルス剤、HBV感染を処置するのに用いられる化合物ならびに他の薬剤で処置され得ることが企図される。
【0246】
ヌクレオシドおよびヌクレオチド類似体
本明細書に記載のロナファルニブ-リトナビル共治療と組み合わせて用いられ得る抗ウイルスヌクレオシドまたはヌクレオチド類似体には、アデフォビル(Hepsera(登録商標))、エンテカビル(Baraclude(登録商標))、ラミブジン(Epivir-HBV(登録商標)、Heptovir(登録商標)、Heptodin(登録商標))、テルビブジン(Tyzeka(登録商標))、テノフォビル(Viread(登録商標))およびリバビリン(Rebetol(登録商標)またはCopegus(登録商標)など)などが含まれる。
【0247】
HBVを処置するために用いられる化合物
本発明の様々な組み合わせ治療において、HDVの処置のために、ロナファルニブはHBVに対する抗ウイルス薬と組み合される。インターフェロンを除く、現在承認されている抗HBV薬は、逆転写酵素を阻害し、ヌクレオシドまたはヌクレオチド類似体である。これらの薬剤は、HBVに対し有効であるが、HDVが複製する必要があるHBsAgをクリアしないため、HDVに対し効果的でない。しかしながら本発明の組み合わせ治療において用いられる場合、患者の治療効果の改善が達成され得る。現在、承認された抗HBV薬には、インターフェロンアルファ(Intron A(登録商標))、ペグ化インターフェロン(Pegasys(登録商標))、ラミブジン(Epivir-HBV(登録商標)、Zeffix(登録商標)またはHeptodin(登録商標))、アデフォビルピボキシル(Hepsera(登録商標))、エンテカビル(Baraclude(登録商標))、テルビブジン(Tyzeka(登録商標)、Sebivo(登録商標))、クレブジン(韓国/アジア)、テノフォビル(Viread(登録商標))が含まれる。Truvada(登録商標)は、テノフォビルおよびエムトリシタビンの組み合わせであり、まだ承認されていないが、初期の臨床試験においてHBVウイルス価を低下させるのに有効であることが示されており、本発明の組み合わせ治療において有用である。
【0248】
他の治療化合物
本発明に従って処置されているHDV感染患者に有益な効果を有して投与され得る他の治療化合物には、ヌクレオシドまたはヌクレオチド類似体;チアゾリド;プロテアーゼ阻害剤;ポリメラーゼ阻害剤;ヘリカーゼ阻害剤;クラスC CpGトール様受容体7および/または9アンタゴニスト;両親媒性ヘリックスかく乱物質またはNS4B阻害剤;スタチンまたは他のHMGCoAレダクターゼ阻害剤;免疫調節剤;抗炎症剤;二次プレニル化阻害剤;シクロフィリン阻害剤;およびアルファ-グルコシダーゼ阻害剤が含まれる。
【0249】
他の治療モジュール
経口のロナファルニブ-リトナビル共治療は、HDV感染の迅速で完全なクリアランスのための治療過程における1つのモジュールであり得る。したがって、本明細書に記載の処置レジメンは、補完的な治療が先に行われてもよく、続いて行われてもよい。
【0250】
一例として、一部の患者は、薬物の高血中レベルを迅速に達成するためにロナファルニブの最初のIV点滴から利益を受け得る。このレベルは、患者が本明細書により具体的に記載される経口治療に置かれる前の、ある期間(1~数日間またはおそらく1週間)の連続または定期的なIV点滴により維持され得る。これらの実施形態において、患者は、50mgBID投与(およびより高い用量)で達成される血清レベルに関連する治療効果を達成するために薬物を点滴され得る。IV投与は、医師、その他の訓練された医療専門家のケアの下で(例えば、病院において)予防的治療、およびこれらの高用量で経口投与することに関連するAEを回避もしくは改善するため、または必要であればIV投与を中断するためのモニタリングとともになされる。他の実施形態において、数日間または数週間、薬物を治療上有効な血中レベルに維持する、薬物のデポー形態を提供するための皮下注入は、経口治療のために本明細書に記載されるものと同様の治療上有効な結果を達成するために用いられ得る。
【0251】
IX.増強剤としてのコビシスタットの使用
リトナビルが最も広く用いられているCYP3A4阻害剤であるが、本発明はまた、他のCYP3A4阻害剤とのロナファルニブの組み合わせ処置および治療を提供する。一つの代替において、本発明は、本明細書の他の箇所にも記載の、薬物動態増強剤コビシスタットがリトナビルの代わりにロナファルニブと組み合わせて用いられる実施形態を提供する。
【0252】
コビシスタット(商品名Tybost(登録商標)でGilead Sciencesにより販売される)は、CYP3Aの強力な阻害剤である。リトナビルと同様、コビシスタットは、この酵素の他の基質の血中レベルを「増強する」が、リトナビルと異なり、抗ウイルス活性を有しない。また、それはある特定の薬物を分解するのに関与している酵素系(CYP3A)に対して明白な効果を有するが、それは、多数の潜在的に有害な薬物相互作用に寄与し得る多くの他の薬剤により用いられる他の酵素系に影響を及ぼさない。
【0253】
一態様において、本発明は、リトナビル以外の増強剤が用いられることを除く、本明細書に記載の方法および組成物を用いるHDV患者の処置を提供する。一実施形態において、増強剤コビシスタットは、本明細書に記載の方法および組成物において使用される。コビシスタットは、本明細書に記載の任意の用量および投与頻度でのロナファルニブと組み合わせたその承認された用量、または任意のより低い用量において本発明の組み合わせ治療に有用である。代替的な実施形態において、コビシスタットは、HIV感染の治療に使用することが認可された用量よりも低い(例えば、75mg)および/またはより頻繁な(例えば、BID)用量で投与される。いくつかの実施形態において、コビシスタットのより低い用量が用いられる(例えば、50mgQDまたは50mgBID)。
【0254】
ロナファルニブ-コビシスタット共治療の例示的な用量は、限定ではなく例示として、表5に提供される。いくつかの実施形態において、ロナファルニブは、100mgQDまたは100mgBIDで投与され、コビシスタット(Tybost(登録商標))は、150mgで1日1回投与される。
【0255】
投与スケジュールA~Gはそれぞれ、予防的GI改質薬(例えば、制吐薬、下痢止め薬、および制酸薬)、および/またはインターフェロン(例えば、インターフェロンアルファまたはインターフェロンラムダ)と共に投与され得る。上記セクションVおよびセクションVI参照。一実施形態において、ロナファルニブ-コビシスタット共治療は、インターフェロンと組み合わせて投与される。
【表5】
【実施例
【0256】
X.実施例
以下の例は、特許請求の範囲に係る発明を例示するために提供されるものであって、限定するものではない。
【0257】
実施例1.BID投与される100mgロナファルニブでのHDV患者の処置
この実施例は、慢性HDVの患者においてHDV RNAレベルを低下させるロナファルニブの有効性を実証する。8人のグループ1の患者(すべて慢性HDVを有する)を次のように処置した:慢性デルタ型肝炎(HDV)を有する6人の患者(患者1、2、4、5、6および8)はロナファルニブで処置され、2人の患者(患者3および7)は28日間プラセボを投与された。積極的処置群における6人の患者は28日間100mgBIDで(経口投与)投与された。ロナファルニブ積極的処置群におけるベースラインからナディアへのHDV RNAレベルの平均変化は、-0.74logHDV RNAコピー/mLであり、プラセボ群では、-0.24logHDV RNAコピー/mLであった。
【0258】
患者4、5、6および8は、積極的処置中にベースラインからナディアへの量的血清HDV RNAレベルの0.5logHDV RNAコピー/mL以上の低下により定義されるように、治療に応答性であった。表6(処置中および処置後の各患者についてのHDV RNAウイルス量における変化を示す)および図1(患者4、5および6のlogHDV RNAコピー/mLレベルの経時変化を示す)参照。ベースラインから処置の終了(EOT)への患者4のHDV RNAレベルの変化は、-1.34logHDV RNAコピー/mLであった。ベースラインからEOTへの患者5のHDV RNAレベルの変化は、-0.82logHDV RNAコピー/mLであった。ベースラインからEOTへの患者6のHDV RNAレベルの変化は、-1.41logHDV RNAコピー/mLであった。
【表6】
【0259】
HDV RNAウイルス量はロナファルニブの血漿濃度と相関する。
図2は、ロナファルニブの血漿レベルとウイルス量との間の相関を示す。より高いロナファルニブの血漿レベルを有する対象は、処置中HDV RNA力価においてより大きな低下を経験した。処置中の血漿レベルは200ng/mL~1,100ng/mLの範囲であった。
【0260】
処置後のウイルスリバウンド
患者4、5および6は、ロナファルニブ治療を28日目に中断した後、ウイルスリバウンドまたは血清HDV RNAレベルの増加を示した。ロナファルニブ中止後、患者4のHDV RNAレベルは、1.7logHDV RNAコピー/mL増加した。ロナファルニブ中止後、患者5のHDV RNAレベルは、1.4logHDV RNAコピー/mL増加した。患者6のHDV RNAレベルは、ロナファルニブの中止後に増加した。患者4、5および6は、ロナファルニブ治療が中断されてから約4~8週間後に始まる、HDV RNAレベルの後続的な低下を示し、これは、HDV RNAとHBV DNAとの間のウイルスダイナミクスへのウイルスに起因すると考えられる。
【0261】
実施例2.BID投与される200mgおよび300mgロナファルニブでのHDV患者の処置
5.8logHDV RNAコピー/mL~8.78logHDV RNAコピー/mLの範囲のベースラインHDV RNAウイルス価により記録されるように、HDVに感染したことが分かっている6人のヒト対象を、84日間、200mgBIDまたは300mgBIDいずれかの用量のロナファルニブで処置した。
【0262】
28日間の処置の効果
28日間の処置の終わりに、ベースラインから28日目への6人の対象にわたるウイルス量の平均変化は、200mgBID群については-1.63logコピー/mLであり、300mgBID群については-2.00logコピー/mLであった。表7および図3参照。
【表7】
【0263】
28日目の結果は、100mgBID投与スケジュールに対し、200mgBIDおよび300mgのBID投与スケジュールの優れた有効性を示した。しかしながら、副作用のより少ない付加的な有効性は、有意な治療上の利益のために必要とされると考えられていた。
【0264】
56~84日の処置の効果
200mgBIDおよび300mgBID投与が56日間(29~56日目を2ヶ月と称し得る)および84日間(57~84日目を3ヶ月と称し得る)継続されたとき、6人の患者にわたるウイルス量の変化は、28日間のウイルス量レベルからプラトーに達した、または増加した。ウイルス量におけるこの変化なしまたは増加は、ロナファルニブへの低い消化管忍容性に起因し、低い適応性をプロトコルと関連させた。これら6人の患者は、消化管の苦痛を緩和するための予防的なGI改質薬を受けなかった。適応症または薬物吸収またはその両方が、GI不耐症および付随する副作用のために準最適であると考えられる。
【0265】
実施例3.100mgBIDロナファルニブおよびインターフェロンでのHDV患者の組み合わせ処置
HDVに感染したと分かっている3人のヒト対象は、4.34logHDV RNAコピー/mL~5.15logHDV RNAコピー/mLの範囲のベースラインHDV RNAウイルス価、および155~174IU/Lの範囲のALT値により述べられるように、56日間(2ヶ月)1週間当たり180μgのPegasys(PEGインターフェロンα-2a)と組み合わせて100mgBIDの用量のロナファルニブで処置された。
【0266】
28日間の終わりに、3人の患者すべてのHDV RNAウイルス価は、HDV-RNAにおいて-1.04logHDV RNAコピー/mL~-2.00logHDV RNAコピー/mLの低下の範囲でベースラインから低下し、3人の対象での平均低下は、-1.8logHDV RNAコピー/mLであった。56日間の終わりに、3人の患者すべてのHDV RNAウイルス価は、56日目における3logコピー/mLの平均ウイルス量低下で、低下し続けた。また、3人の患者すべてのALT値は、56日を通じてベースラインから低下し、治療を中止した後に低下し続け、3人の患者のうち2人について処置中止後4週までに正常化した。ALT値の正常値上限は、40U/Lであると推定される。
【0267】
各患者についてのHDV RNAウイルス量およびALT値の変化を以下の表8に示す。図4も参照。
【表8】
【0268】
これらのウイルス量の結果は、200mgBIDロナファルニブレジメンと同等の有効性、および100mgBIDロナファルニブレジメンより優れた有効性、および200mgBIDロナファルニブと比較してより少ないグレード2の有害事象(AE)を示す。
【0269】
実施例4.100mgBIDロナファルニブおよび100mgQDリトナビルでのHDV患者の組み合わせ処置
HDVに感染したと分かっている3人のヒト対象は、5.14logHDV RNAコピー/mL~6.83logHDV RNAコピー/mLの範囲のベースラインHDV RNAウイルス価、および84~195U/LのALT値により述べられるように、実質的に他は実施例1に記載のとおり、8週間、100mgQDのリトナビルと組み合わせて、100mgBIDの用量のロナファルニブで処置された。
【0270】
4週目の終わりに、3人の患者すべてのHDV RNAウイルス価は、HDV-RNAにおいて-1.71logHDV RNAコピー/mL~少なくとも-2.76logHDV RNAコピー/mLの低下の範囲でベースラインから低下し、3人の患者にわたる平均低下は、-2.2logHDV RNAコピー/mLであった。8週目の終わりに、3人の患者すべてのHDV RNAウイルス価は低下し続け、患者2のウイルス価は検出できなかった。図5参照。8週目における3人の患者の平均ウイルス量低下は、-3.2logHDV-RNAであった。
【0271】
また、3人の対象すべてのALT値は、35-50 U/Lの範囲でベースラインから低下した。ALT値の正常値上限は、40U/Lであると推定される。各患者のHDV RNAウイルス量の変化も示す表9参照。
【表9】
【0272】
これらの結果は、200mgBIDおよび300mgBIDロナファルニブ単独治療と比較して、ならびに100mgBIDロナファルニブおよび1週間当たり180μgPegasys(PEGインターフェロンα-2a)の組み合わせ処置よりも、優れた有効性を示す。また、200mgBIDロナファルニブと比較して、観察されたグレード2のAEはより少なかった。表10参照。
【表10】
【0273】
以下の表11は、特定の時点におけるロナファルニブ単独治療(200mgBIDまたは300mgBID)、ロナファルニブ-リトナビル共治療(100mgQDリトナビルと組み合わせた100mgBIDロナファニブ)、およびロナファニブ-リトナビル共治療(180mcgQWペグ化インターフェロンと組み合わせた100mgBIDロナファルニブ)で得られた平均血清濃度を示す。
【表11】
【0274】
実施例5.ロナファルニブおよびリトナビルでのHDV患者の処置
実施例では、ロナファルニブおよびリトナビルの組み合わせ治療の抗HDV効果が示される。慢性HDV感染の8人の患者は、表12に概括されるレジメンの下、84日間のロナファルニブおよびリトナビルの4つの異なる用量の組み合わせ(経口投与)で処置される。
【0275】
結果
ベースラインからの患者のHDV RNAレベルの変化は、ロナファルニブおよびリトナビルの組み合わせ治療の結果として、以下の表12に概括される。
【表12】
【0276】
28日目、56日目および84日目を通じた患者1~8におけるHDV RNAレベルの変化を示す経時変化は、それぞれ図6A、6B、および6Cに示される(標準化されたベースラインと比較した変化)。logウイルス量の平均変化は、28日目の後に-1.89、56日目の後に-1.86、84日目の後に-1.62であった。ナディアには4~6週間で到達し、その後、ウイルス量(VL)は、プラトーになるか、またはいくつかの場合において、わずかに上昇した。グループ4は、可飽和吸収点に到達した可能性があり、これは、より低いロナファルニブ用量の、より大きな有効性を潜在的にサポートする。
【0277】
グループ1および2は最も高いCminを維持した。これら2つのグループは、BIDロナファルニブ(グループ1)またはBIDリトナビル(グループ2)のいずれかを投与された。これらの結果は、より高いまたはより頻繁なリトナビル用量、例えばBID投与が有益であるという結論をサポートする。図10は、リトナビルのQD投与(グラフに示される)が、2500~3500ng/mLの範囲のロナファルニブ(LNF)血清濃度を提供することを示す。患者におけるBIDでのリトナビル投与の増加は、>5000ng/mLのより高いロナファルニブ血清濃度を達成し得る。
【0278】
ロナファルニブ-リトナビル共治療で処置されるデルタ型肝炎感染患者におけるHDV RNAレベル低下とロナファルニブの血清レベルの増加の相関は、患者2(図7)および患者8(図8)に例示される。例えば患者8など、血清ロナファルニブレベル2000ng/mL未満の患者は、ロナファルニブレベルが5,000ng/mLに近い、またはそれを越える患者(>2logHDV-RNA)と比較して、ウイルス量の減少がより低い(<1.5logHDV-RNA)可能性がある。
【0279】
有害作用
表13は、治療の最初の6週間における患者の有害事象を概括し、試験での患者の75%(8人の患者のうち6人)が、7~10週目において少なくとも1つの用量減少を要したことを示す。用量減少は、しばしばHDV RNAレベルの上昇またはプラトーを生じた。
【表13】
【0280】
副作用のため、8人の患者のうち6人(患者1、2、3、4、5、8)においてロナファルニブ用量を減少させた。用量減少は、ウイルス量プラトーまたは増加と相関していた。ロモティルおよびオンダンセトロンは、8人の患者のうち3人で用いられた(4週目に開始)。この3人の患者のうち2人はロナファルニブの用量減少を必要としなかった。
【0281】
実施例6.低用量ロナファルニブ-リトナビル共治療およびロナファルニブ-リトナビル-ペグ化インターフェロンアルファ三剤共治療でのHDV患者の処置
図12は、12週間、リトナビル(100mgBID)を組み合わせたロナファルニブ(75mgBID)で処置した、慢性HDV感染患者3人(患者13,14および15)のHDV値を示す。12週目に、リトナビルの投与を中断し、PEG-IFN-αを投与した(180mcgQW)。16週目に、リトナビル(100mgBID)投与を再開した。
【0282】
結果
患者13、14、および15におけるHDV RNAレベルの変化を示す経時変化は、図12に示される(標準化されたベースラインと比較した変化)。12週目と16週目(ロナファルニブ-インターフェロン共治療)のウイルス量はほぼ一定(患者13および15)または増加した(患者14)。16週から20週まで、患者は三剤共治療を受け、ウイルス量の有意な減少を生じた(患者13および14)。
【0283】
実施例7.低用量(50mgBID)ロナファルニブの三剤共治療
慢性HDV感染患者3人(患者25,26および27)を、ロナファルニブ(50mgBID)、リトナビル(100mgBID)およびペグ化インターフェロンアルファ(180mcgQW)で4週間処置した。図13参照。2週間でウイルス量の有意な減少が見られた。4週間で、すべての患者はベースラインに対してウイルス量を有意に低下させた。これらの結果は、低用量のロナファルニブを、患者が有意な治療利益を達成することを可能にする増強剤(例えば、リトナビル)およびインターフェロン(例えば、インターフェロンアルファまたはインターフェロンラムダ)と組み合わせて投与できるという結論をサポートする。
【0284】
実施例8.低用量(50mgBID)および非常に低用量(50mgQD)のロナファルニブによる三剤共治療
図14は、慢性HDV感染患者3人における三剤共治療のウイルス量に対する効果を示す。患者2および3は、50mgのBIDロナファルニブ、100mgのBIDリトナビルおよび180mcgのQWペグ化インターフェロンアルファを8週間投与された。患者1は50mgのBIDロナファルニブ、100mgのBIDリトナビル、および180mcgのQWペグ化インターフェロンアルファをほぼ3週間投与され、その時点でロナファルニブの用量が50mgQDに減少された(50mgBIDが投与された8週目の1日を除く)。患者は、プロトンポンプ阻害剤(エソメプラゾールまたはラベプラゾールをQDベースで)および下痢止め薬(ロモティルまたはロペラミドBIDまたはTID)を投与された。
【0285】
図14に示されるように、50mgBID用量で8週間の後、logHDVウイルス量の平均減少は2より大きく(患者3)、または3より大きく(患者2)、50mgQD用量では、3より大きかった(患者1)。本治療は忍容性が良好で、下痢が最も顕著な副作用であり、三剤共治療は長期治療(6ヶ月以上)に良好に適していることが示される。
【0286】
実施例9:例示的な処置レジメン
この予測的実施例は、以下の表14に開示されるように、ロナファルニブおよびリトナビルの様々な用量の投与により、HDV感染を処置することを記述する。HDVに感染した患者は、90~180日間、毎日以下のレジメンを自己投与する:処置過程において、患者のロナファルニブ血清レベルおよびHDVウイルス量を定期的に測定する。90日間の処置後、患者のウイルス量はベースラインを越えて減少する。
【表14】
【0287】
実施例10.慢性D型肝炎ウイルス感染患者におけるペグ化インターフェロンラムダ-1a(PEG-IFN-λ)単独治療の安全性、忍容性、および薬力学を評価するフェーズ2試験
この予測的実施例は、慢性HDV感染患者におけるペグ化インターフェロンラムダ単独治療の安全性、忍容性、および薬力学を評価するためのフェーズ2臨床試験プロトコルを記述する。このプロトコルにおけるインターフェロンラムダ単独治療によって示された有効性は、ロナファルニブと組み合わせた、および任意選択によりリトナビルのなどの追加の増強剤と組み合わせた、インターフェロンラムダ治療が、HDV感染の治療に有効であることを示す。
【0288】
PEG-IFN-λ(1週間当たり120μgまたは1週間あたり180μgの2つの用量レベルが48週間の処置期間にわたって皮下注射により投与され、HDVレベル、ALTレベル、およびB型肝炎表面抗原(HBsAg)レベルに基づいて処置の安全性および忍容性が評価される。
【0289】
48週間の処置期間全体にわたって合計試験薬物用量の少なくとも80%を受け、1日目(ベースライン)および処置の終わり(48週)のHDVウイルス量データが入手可能である患者のコホートからの少なくとも1人の患者は、試験来院では、プロトコルに記載されている1つ以上のエンドポイントの改善が示される。いくつかの実施形態において、インターフェロンラムダ単独治療による処置を受けている患者は、ベースラインと比較して、治療終了時にHDVウイルス量の減少を示す。いくつかの実施形態において、インターフェロンラムダ単独治療による処置を受けている患者は、ベースラインと比較して、治療終了時にHBVウイルス量の減少を示す。いくつかの実施形態において、インターフェロンラムダ単独治療による処置を受けている患者は、ベースラインと比較して、治療終了時にHBsAgレベルの減少を示す。いくつかの実施形態において、インターフェロンラムダ単独治療による処置を受けている患者は、HBsAg抗原の改善されたクリアランスを示す。
【0290】
実施例11.三剤共治療
この予測的実施例は、ロナファルニブおよびリトナビルと組み合わせたインターフェロンラムダの投与により、HDV感染を処置することを記述する。ロナファルニブおよびリトナビルと組み合わせたペグ化インターフェロンラムダの投与は、より低い用量における有効な治療および/または投与頻度の減少を提供する。
【0291】
HDVに感染した患者は、以下のロナファルニブ+リトナビル用量の組み合わせのうち1つと組み合わせて、120mcgQWまたは180mcgQWでペグ化インターフェロンラムダが投与される。
ロナファルニブ50mgBID+リトナビル100mgBID
ロナファルニブ25mgBID+リトナビル100mgBID
ロナファルニブ75mgBID+リトナビル100mgBID
ロナファルニブ50mgQD+リトナビル100mgQD
ロナファルニブ75mgQD+リトナビル100mgQD
ロナファルニブ100mgQD+リトナビル100mgQD
ロナファルニブ50mgQD+リトナビル100mgBID
ロナファルニブ75mgQD+リトナビル100mgBID
ロナファルニブ100mgQD+リトナビル100mgBID
【0292】
処置過程において、患者のHDVウイルス量を定期的に測定する。90日間の処置後、患者のウイルス量はベースラインを越えて減少する。
【0293】
実施例12.ロナファルニブ-リトナビル共治療の組み合わせレジメン
この実施例は、HDVに感染することが知られている患者において、ペグ化インターフェロン-αの有無にかかわらず、ロナファルニブおよびリトナビルの様々な組み合わせレジメンの有効性および忍容性を示す。38人の患者は以下の表15に示すように投与された。処置期間は12~24週間であった。処置の1日目および28日目に、72時間の薬物動態学(PK)および薬力学(PD)評価を行った。さらに、処置の間に、1、2、3、7、14および28日目に、次いでその後4週間ごとに、生化学的パラメータおよびHDV RNAレベル(定量的リアルタイムPCRによって測定される)を測定した。
【表15】
【0294】
すべての処置群について、HDV RNAウイルス量を4週間および8週間の治療後に測定し、ベースラインHDV RNAウイルス量と比較した。図15Aに示されるように、HDV RNAウイルス量を4週間後に測定したとき、ペグ化インターフェロン-αを伴う、または伴わない、100mgBIDリトナビルと組み合わせた25mgBIDまたは50mgBIDのロナファルニブが投与されていた患者について、ロナファルニブ-リトナビル共治療においてより高い用量を投与されていた患者と比較して同等のウイルス量の減少が観察された。図15Bに示されるように、HDV RNAウイルス量を8週間後に測定したとき、ペグ化インターフェロン-αを伴う、または伴わない、100mgBIDリトナビルと組み合わせた25mgBIDまたは50BIDのロナファルニブが投与されていた患者について、ロナファルニブ-リトナビル共治療においてより高い用量を投与されていた患者と比較して同等のウイルス量が観察された。
【0295】
図16は、ペグ化インターフェロン-αを伴う、または伴わない、100mgBIDリトナビルと組み合わせた25mgBIDまたは50mgBIDロナファルニブを投与されていた患者において、HDVウイルスレベルの急速な低下が観察されたことを示す。さらに、100mgBIDリトナビルと組み合わせた50mgBIDロナファルニブを投与されていた患者、および100mgBIDリトナビルおよび180mcgQW PEG IFN-aと組み合わせた50mgBIDロナファルニブを投与されていた患者について、8週間後のHDV RNAウイルス量は、テノフォビルと組み合わせた180mcgQW PEG IFN-αでの48週間の処置後のHDV RNAウイルス量における変化と同等であった。さらに、100mgBIDリトナビルと組み合わせた50mgBIDロナファルニブ、100mgBIDリトナビルおよび180mcgQW PEG IFN-aと組み合わせた50mgBIDロナファルニブ、または100mgBIDリトナビルおよび180mcgQW PEG IFN-αと組み合わせた25mgBIDロナファルニブを投与される患者のサブセットについては、HDV RNAウイルス陰性(クリアランス)が観察された。図17および図18参照。
【0296】
100mgBIDリトナビルと組み合わせて50mgBIDロナファルニブを受ける患者のグループについて、患者2、3、4および5は、積極的処置中におけるベースラインからナディアへの定量的血清HDV RNAレベルの0.5logHDV RNAコピー/mL以上の低下により定義されるように、治療に応答性であった。図17(処置の12週間にわたるHDVIU/mLの経時変化を示す)を参照。
【0297】
100mgBIDリトナビルおよび180mcgQW PEG IFN-αと組み合わせて50mgBIDロナファルニブを受ける患者のグループについて、患者7および8は、積極的処置中におけるベースラインからナディアへの定量的血清HDV RNAレベルの0.5logHDV RNAコピー/mL以上の低下により定義されるように、治療に応答性であった。図18(治療の32週間にわたるHDVIU/mLの経時変化を示す)を参照。
【0298】
100mgBIDリトナビルと組み合わせて25mgBIDロナファルニブを受ける患者のグループについて、患者9、10、11、12、13および14は、積極的処置中におけるベースラインからナディアへの定量的血清HDV RNAレベルの0.5logHDV RNAコピー/mL以上の低下により定義されるように、治療に応答性であった。図19(8週間の処置にわたるlogHDVIU/mLの経時変化を示す)を参照。
【0299】
100mgBIDリトナビルおよび180mcgQW PEG IFN-αと組み合わせて25mgBIDロナファルニブを受ける患者のグループについて、患者15、16、17、19および20は、積極的処置中におけるベースラインからナディアへの定量的血清HDV RNAレベルの0.5logHDV RNAコピー/mL以上の低下により定義されるように、治療に応答性であった。図20(20週間の処置にわたるlogHDVIU/mLの経時変化を示す)を参照。
【0300】
さらに、12週目に患者の65%でALT値の正常化が観察された。図21に示すように、ベースラインで17人の患者が上昇したALT値を有したが、12週においては6人の患者のみが上昇したALT値を有した。ALT値の正常上限は、男性は45、女性は34であった。
【0301】
以下の表16に示すように、より少ない投薬量を有する投与レジメンもより良好に許容される。表中の数字は、有害事象を経験している患者の数を示す。大部分がグレード1の消化管AEが低用量で観察された。
【表16】
【0302】
実施例13.ロナファルニブ-リトナビル共治療期間試験
この例は、12または24週間にわたって、1日1回投与されるロナファルニブの、それぞれ1日1回投与されるリトナビルと組み合わせた、3用量(50mg、75mgおよび100mg)の有効性および忍容性を示す。慢性HDV感染を有する21人の患者を、以下の表17に概括したように、6つの処置グループの1つに無作為化した:
【表17】
【0303】
ロナファルニブ/リトナビル共治療は、12週間の共治療後に2logの平均HDV-RNA低下を生じると予想される。100mgのQDリトナビルと組み合わせた50mgのQDのロナファルニブ、および100mgのQDリトナビルと組み合わせた75mgのQDのロナファルニブの用量は、24週間を超えた投与を可能にする忍容性であることが予想される。24週間を超えたインターフェロン(例えば、ペグ化インターフェロンアルファまたはペグ化インターフェロンラムダ)の添加は、患者のサブセットにおいてHDV-RNA陰性を達成することが予想される。
【0304】
実施例14.ロナファルニブ-リトナビル共治療用量設定試験
この実施例は、1日2回投与されるロナファルニブおよびリトナビル共治療の有効性、安全性および忍容性を示す。15人の患者(男性11人)が、研究者の裁量で用量漸増の選択肢が含まれた、24週間の非盲検試験に登録された。試験は、HDVに慢性的に感染した患者におけるロナファルニブ/リトナビルの用量設定レジメンによる24週間の処置のフェーズ2試験であった。ロナファルニブは、100mgBIDで投与されるリトナビルと組み合わせて、50mgBIDで開始し、75mgBIDまで、次いで100mgBIDまで、忍容性に応じて投与した。ロナファルニブ(50mgBID)およびリトナビル(100mgBID)の初期用量を少なくとも4週間維持した。その後の用量漸増は、患者が最初に特定の用量を投与された後2週間以上の間隔で発生した。
【0305】
ベースライン(BL)では、患者の平均HDV RNAウイルス量は、6.53log10IU/mL(4.43~8.31log10IU/mLの範囲)であった。平均血清ALTレベルは111U/L(53~362U/Lの範囲)であった。肝臓の硬さ(線維症)もFibroScan(登録商標)によって評価した。生検で2人の患者が硬変性であった。11人の患者がBLでヌクレオシドまたはヌクレオチド類似体(NUC)を投与された。
【0306】
治療8週目までに、15人の患者のうち10人(66%)が、リトナビルと組み合わせて100mgBIDロナファルニブへ用量漸増できた。すべての患者は、1.87log10IU/mL(0.88~3.13log10IU/mLの範囲)のBLから8週までの平均低下を有する、HDV RNAウイルス量の低下を示した。3人の患者がHDV RNA減少に関連したHBV DNAリバウンドを示し、2人の患者が抗HBV薬テノフォビルによる治療を開始した。AEは主にグレード1~2の間欠性下痢症であった。3人の患者はグレード3のAE(下痢2例、無力症1例)であり、すべて一過性かつ非再発性であった。グレード4のAEを有する患者はいなかった。8週間の処置からのこのデータは、リトナビルと組み合わせたロナファルニブの用量漸増が実現可能であり、すべての患者においてHDV RNAの早期低下につながることを示している。HDV RNAの減少は、NUCを受けていない患者におけるHBV DNAのリバウンドと関連しており、HBV複製に対するHDVの抑制効果を示唆している。これらのデータは、より長い治療期間の使用をサポートする。
【0307】
24週間の処置による用量設定レジメンの概略を図22に示す。図22に示すように、24週間の治療後、15人の患者のうち5人(33%)は、24週まで100mgBIDロナファルニブの組み合わせを維持した(EOT)。リトナビルと組み合わせて100mgBIDロナファルニブの用量を維持した患者は、BLから24週まで、2.9log10IU/mLのHDV RNAウイルス量の平均低下を示した。図23参照。これらの5人の患者のうち、1人の患者(患者3)が24週にHDV-RNA陰性を達成し、1人の患者が24週にHDV-RNAウイルス量を32IU/mL(すなわち、1.5log10IU/mL)に減少させた(検出下限は14IU/mLである)。図24参照。
【0308】
処置の8週までにリトナビル100mgBIDロナファルニブへと用量を段階的に漸増した10人の患者のうち、5人の患者がより低い用量へと漸減した。図23参照。これらの患者は、24週までリトナビルと組み合わせて100mgBIDロナファルニブの用量を維持した患者よりもHDV-RNAウイルス量の低下が少なかった。残りの5人の患者は、リトナビルと組み合わせた50mgBIDロナファルニブからの「部分的」用量漸増(患者は100mgロナファルニブBIDへの漸増に成功しなかった)を受け、または用量の漸増を受けず、平均HDV RNAウイルス量のBLから24週の2.3log10IU/mLまでの低下を示した。
【0309】
ALT値の正常化は、24週目の患者の53%で観察された。図25に示すように、ベースラインで15人すべての患者が上昇したALT値を有したが、24週においては7人の患者のみが上昇したALT値を有した。以下の表18に示すように、患者は主にグレード1~2GIの有害事象を経験した。表18は、24週の研究の間に少なくとも1回、特定のグレードのAEを経験している患者の数を示す。最も一般的なAEはグレード1~2の断続的な下痢であった。グレード4のAEは観察されなかった。
【表18】
【0310】
実施例15.ロナファルニブ療法による処置後ALTフレアの誘発
この実施例は、上記実施例12に記載されているレジメンのような、様々な処置レジメンで12または24週間のロナファルニブで処置された患者における、処置後ALTフレアおよびその治療効果を記載する。いくつかの場合においては、リトナビルおよび/またはペグ化インターフェロンαと組み合わせて、ロナファルニブの様々な用量で12または24週間ロナファルニブを投与された後、検出可能なHDV RNAを有していた、27人の患者を分析した。処置後ALTフレアは、ベースラインALTレベルの2倍より大きいALTの上昇として定義された。
【0311】
現在までに、試験された患者27人中5人(18.5%)が処置後ALTフレアを経験している。これらの処置後フレア(中央値ALT190U/L、範囲110~1355U/L)は、12~24週間以内にALT正常化およびHDV RNA陰性をもたらした。これら5人の患者は、以下のロナファルニブ処置コホートから来た:
患者A-001-5.12週間のBIDロナファルニブ200mg投与(図26);
患者A-001-1.12週間のBIDロナファルニブ300mg投与(図27);
患者A-002-3.12週間の50mgBIDリトナビルと組み合わせたBIDロナファルニブ100mg投与(図28);
患者A-002-14.12週間の100mgBIDリトナビルと組み合わせたBIDロナファルニブ75mg投与、続いて12週間のペグ化インターフェロンアルファの追加(図29);および
患者A-002-23.24週間の100mgBIDリトナビルと組み合わせたBIDロナファルニブ50mg投与(図30);
【0312】
1人の患者(患者A-002-3)がHBV DNAをクリアし、続いてHBsAgをクリアした。図28参照。他の2人の患者(患者A-001-5および患者A-002-23)は、2log以上のHBV DNAの減少を示した。図26および図30参照。5人すべての患者は、ロナファルニブ治療の開始時にHDV RNAの急速な初期低下を示した。これらの急速な初期低下の後に、(用量の減少または過剰なGI副作用による)ロナファルニブ曝露の減少に関する治療時に、徐々に上昇した。
【0313】
患者A-001-5について図26に示されるように、ロナファルニブ(200mgBID)による12週間の処置過程は、ALTフレアおよびHDV RNAの検出できないレベルへの抑制をもたらした。その後のHDVウイルス量の上昇(約50週目)は、ロナファルニブ(50mgBID)およびリトナビル(100mgBID)による第2の処置過程によって抑制された。図26に示すように、この患者ではHDVは検出されなくなり、132週で測定したとき、患者は明らかにウイルスフリーのままであった。驚くべきことに、HBV VL(すなわち、HBV DNAレベル)も、約4logIU/mLのベースラインから、約1.5logIU/mL(すなわち、LOQ未満)へと抑制された。図26参照。
【0314】
患者A-001-1について図27に示されるように、ロナファルニブ(300mgBID)による12週間の処置過程は、ALTフレアおよびHDV RNAの約3log以下の抑制をもたらした(30~54週)。HDV VLの上昇が観察され(例えば、78週)、これは低用量のロナファルニブ治療(50mgBID)およびリトナビル(100mgBID)を用いた第2の処置過程によって抑制された。HBV DNAレベルの一過性の上昇も、ALTフレア後に抑制された。125週間で測定したとき、患者は明らかにウイルスフリーのままであった。
【0315】
患者A-002-3について図28に示されるように、ロナファルニブ(100mgBID)およびリトナビル(50mgBID)で約10週間、続いてロナファルニブ(150mgQD)およびリトナビル(50mgBID)で2週間の処置は、ALTフレアを生じた。HDV RNAおよびHBV DNAレベルは検出できないレベルまで低下した。95週間で測定したとき、患者は明らかにウイルスフリーのままであった。
【0316】
患者A-002-14について図29に示されるように、ロナファルニブ、リトナビルおよびペグ化インターフェロンアルファによる24週間の処置過程は、図に示されるように、ALTフレア、および6logIU/mL超からアッセイの定量限界未満(すなわち、3.2logIU/mL未満)までのHDV RNA VLの抑制を生じた。
【0317】
患者A-002-23について図30に示されるように、ロナファルニブ(50mgBID)およびリトナビル(100mgBID)による24週間の処置過程は、ALTフレア、および約0logIU/mLへのHDV RNAの抑制を生じた。
【0318】
本明細書で提示されるデータは、ロナファルニブの短い過程が、慢性デルタ肝炎における免疫応答の効果的なリセットおよび活性化に寄与し得ることを示唆しており、これは、驚くべきことに、幾つかの場合にはHBVに広がる可能性がある。このように、ロナファルニブ治療でHDV陰性を達成するためには少なくとも2つの経路があると考えられる。第1には、治療過程におけるALT正常化による、HDV陰性に対するロナファルニブ誘発性の漸進的抑制(より古典的な抗ウイルス手法)、および第2には、治療後に発生し、HDVクリアランスを生じる、ロナファルニブ誘発性の抗HDV ALTフレアである。
【0319】
実施例16.ロナファルニブ-リトナビル-コポリマー組成物の調製
(A)1:1:2共沈物
5.0グラムのリトナビル、5.47グラムのロナファルニブ、および10.0グラムのポビドンK30を600mLのジクロロメタンに室温で撹拌して溶解した。この溶液を、Model GB22 Yamato Lab噴霧乾燥機を使用して以下の操作パラメータで噴霧乾燥させた:内部ノズル直径711μm;ポンプ速度12~14mL/分;入口温度60℃;出口温度NMT45℃;噴霧空気圧0.15MPaおよび空気流0.5m/分。噴霧溶液中の20.47gの固体のうち、収率77%で15.9gが受けフラスコに収集された。スプレー溶液中の合計固形分は3%(w/v)であった。
【0320】
(B)1:2:3共沈物
6.5グラムの(A)(1.6グラムのリトナビル、1.6グラムのロナファルニブ、および3.3グラムのポビドンK30に対応する)のリトナビル-ロナファルニブ-プロビドン(providone)(1:1:2)共沈殿物、追加の1.6グラムのリトナビル(リトナビルの合計量は3.2グラム)、および追加の1.5グラムのポビドンK30(ポビドンK30の合計量は4.8グラム)を300mLのジクロロメタンに室温で撹拌して溶解した。この溶液を、Model GB22 Yamato Lab噴霧乾燥機を使用して以下の操作パラメータで噴霧乾燥させた:内部ノズル直径711μm;ポンプ速度12~14mL/分;入口温度60℃;出口温度NMT45℃;噴霧空気圧0.15MPaおよび空気流0.5m/分。噴霧溶液中の9.6gの固体のうち、収率58%で5.6gが受けフラスコに収集された。スプレー溶液中の合計固形分は3%(w/v)であった。
【0321】
(C)1:1:5共沈物
7.5グラムの(A)(1.9グラムのリトナビル、1.9グラムのロナファルニブ、および3.8グラムのポビドンK30に対応する)のリトナビル-ロナファルニブ-プロビドン(providone)(1:1:2)共沈殿物、および追加の5.0グラムのポビドンK30(ポビドンK30の合計量は8.8グラム)を390mLのジクロロメタンに室温で撹拌して溶解した。この溶液を、Model GB22 Yamato Lab噴霧乾燥機を使用して以下の操作パラメータで噴霧乾燥させた:内部ノズル直径711μm;ポンプ速度12~14mL/分;入口温度60℃;出口温度NMT45℃;噴霧空気圧0.15MPaおよび空気流0.5m/分。噴霧溶液中の12.5gの固体のうち、収率70%で8.8gが受けフラスコに収集された。スプレー溶液中の合計固形分は3%(w/v)であった。
【0322】
(D)HPMCポリマーを有する1:1:2共沈物
2.5グラムのリトナビル、2.61グラムのロナファルニブ、および5.0グラムのヒドロキシメチルセルロース(HPMC)を340mLのジクロロメタンに室温で撹拌して溶解した。この溶液を、Model GB22 Yamato Lab噴霧乾燥機を使用して以下の操作パラメータで噴霧乾燥させた:内部ノズル直径711μm;ポンプ速度12~14mL/分;入口温度60℃;出口温度NMT45℃;噴霧空気圧0.15MPaおよび空気流0.5m/分。噴霧溶液中の10.1gの固体のうち、収率71%で7.2gが受けフラスコに収集された。スプレー溶液中の合計固形分は3%(w/v)であった。
【0323】
ロナファルニブ-リトナビル-コポリマー組成物の分析
X線粉末回折(XRPD)により、(A)~(D)の各共沈物の非晶質状態を確認した。回折パターンは、Lynxeye検出器を備えたBruker D2 Phaser X線回折装置、CuKα線(λ=1.5406Å)を用いたX線回折によって確認した。取得は、5~55°2θの範囲、0.05°2θの増分、1.0秒のステップ時間、および0.6mmの開口スリット、および2.5mmの検出窓で行われた。試料を低容量の試料ホルダーを用いて分析し、分析中に15rpmの一定の回転下に保った。図31は、ポビドンをコポリマーとした、非晶質1:1:2、1:2:3、および1:1:5リトナビル-ロナファルニブ-コポリマー共沈物の粉末X線パターンである。非晶質固体形態の特性と一致して、非晶質1:1:2、1:2:3、および1:1:5共沈殿物は結晶回折ピークを示さない。HPMCとの非晶質1:1:2共沈殿物もまた、結晶回折ピークを示さない(データは示さず)。
【0324】
噴霧乾燥した材料からの残留溶媒を、熱重量分析(TGA)によって確認した。分析は、TA Instrument Q50熱重量分析計を用いて、25℃~200℃の温度範囲にわたって10℃/分の走査速度で行った。試料を、窒素パージ(60mL/分)下、白金オープンパン内で加熱した。
【0325】
図32Aは、温度の関数としての試料重量(元の重量の百分率)を示す。この物質は明確な減量段階を示した。25~100℃の温度での第1のステップ(4.8~5.6%減量)は、揮発性化合物(水およびジクロロメタン)の減失に続いて、約180℃で開始される物質分解に対応する。より洗練された技術を使用した残留溶媒の同定および定量は、ICH Q3Cガイドラインの遵守を確実にするために採用すべきである。
【0326】
図32Bは、類似のAPI(活性医薬成分)組成物を有する試料であるが異なるポリマーである、1:1:2リトナビル-ロナファルニブ-ポビドン含有試料、および1:1:2リトナビル-ロナファルニブ-HPMC含有試料を比較する。図23Bに示すように、HPMC含有試料は1.7%の揮発性物質を含有し、これはポビドン含有試料の4.8%と比較してはるかに低い。この差は、ポビドン対HPMCの高い吸湿性および/またはジクロロメタン親和性と関連しているものと考えられる。
【0327】
実施例17:例示的な共治療の用量
例示であって限定するものではないが、この実施例は、ロナファルニブ-リトナビル共治療およびロナファルニブ-インターフェロンラムダ共治療の例示的な用量を提供する。ロナファルニブ-リトナビル共治療につき、例示的な用量には以下の組み合わせが含まれる(表19を参照):L1+(R1またはR2またはR3)、ここでL1およびRは同じ行からのものである。
【表19】
【0328】
ロナファルニブ-インターフェロンラムダ共治療では、例示的な用量は、例示であって限定するものではないが、以下の組み合わせを含む(表20を参照):
【表20】
【0329】
本明細書で引用されるすべての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように参照により本明細書に組み込まれ、そして、刊行物と共に引用される方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0330】
本発明は一定の態様、実施形態および任意選択による特徴により具体的に開示されるが、当業者であれば、そのような態様、実施形態および任意選択による特徴の改変、改良および変形が当業者によって行われることができ、そのような改変、改良および変形は、本開示の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。
【0331】
本発明は、本明細書に広く一般的に記載されている。一般的な開示の範囲内である、より狭い種および亜属のグループもそれぞれ、本発明の一部を形成する。また、本発明の特徴または態様がマーカッシュグループに関して記載される場合、当業者は、本発明はまた、それにより、マーカッシュグループの任意の個別の構成要素、または構成要素の下位グループに関する、と認識するであろう。
本開示は、以下の態様および実施態様を包含する。
[1]
デルタ肝炎ウイルス(HDV)感染を有するヒト患者のHDVウイルス量を減少させる方法であって、少なくとも30日間、ロナファルニブ-リトナビル共治療で患者を処置することを含み、患者が、処置の開始前に少なくとも10 IU/mL血清のベースラインウイルス量を有し、処置が、10 IU/mL血清未満へのウイルス量の減少を生じる、方法。
[2]
処置後に少なくとも1ヶ月間、HDVウイルス量が、10 IU/mL血清未満のままである、[1]に記載の方法。
[3]
処置が、検出レベル未満のHDVウイルス量を生じる、[1]に記載の方法。
[4]
処置後に少なくとも1ヶ月間、HDVウイルス量が、検出レベル未満のままである、[3]に記載の方法。
[5]
患者が、1mL血清当たり10 HDV RNAコピー未満のウイルス量を有すると判定された後、ロナファルニブ-リトナビル共治療での処置が、少なくとも30日間継続する、[1]に記載の方法。
[6]
ロナファルニブが、25mgBIDの用量で投与され、リトナビルが、100mgBIDの用量で投与される、[1]~[5]]のいずれか一項に記載の方法。
[7]
患者が、少なくとも60日間ロナファルニブ-リトナビル共治療で処置される、[1]~[6]のいずれか一項に記載の方法。
[8]
患者が、少なくとも90日間ロナファルニブ-リトナビル共治療で処置される、[7]に記載の方法。
[9]
第1の用量でロナファルニブを投与した後、第2の用量でロナファルニブを投与することを含み、第2の用量が第1の用量より低い、[1]~[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10]
肝炎フレアの発生を検出するステップを含む、[1]~[9]のいずれか一項に記載の方法。
[11]
肝炎フレアが、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の、200U/Lを超えるレベルへの急激な上昇を特徴とする、[10]に記載の方法。
[12]
患者のB型肝炎ウイルス(HBV)ウイルス量において、少なくとも3logの一過性の増加を検出することを含む、[1]~[11]のいずれか一項に記載の方法。
[13]
ロナファルニブ-リトナビル共治療が、肝炎フレアの発生を検出する前、または一過性の増加を検出する前に中止される、[10]~[12]のいずれか一項に記載の方法。
[14]
デルタ型肝炎ウイルス(HDV)およびB型肝炎ウイルス(HBV)に感染した患者における免疫再活性化を誘導する方法であって、少なくとも12週間および/または肝炎フレアが観察されるまで、ロナファルニブ-リトナビル共治療を投与することを含み、ロナファルニブが、50mg~150mgの範囲の合計1日用量で投与され、リトナビルが100mg~200mgの範囲の合計1日用量で投与される、方法。
[15]
ロナファルニブ-リトナビル共治療が、10~24週間の処置後に中止され、ロナファルニブ-リトナビル共治療は少なくとも4週間患者に投与されない、[1]~[14]のいずれか一項に記載の方法。
[16]
ロナファルニブ-リトナビル共治療が、10~14週間の処置後に中止される、[15]に記載の方法。
[17]
ロナファルニブ-リトナビル共治療が、12週間の処置後に中止される、[16]に記載の方法。
[18]
肝炎フレアが、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の、200U/Lを超えるレベルへの急激な上昇を特徴とする、[14]~[17]のいずれか一項に記載の方法。
[19]
肝炎フレアが、患者のHBVウイルス量の一過性の増加を伴う、[14]~[18]のいずれか一項に記載の方法。
[20]
免疫再活性化の後、HDVウイルス量が、少なくとも3log減少する、[14]~[19]のいずれか一項に記載の方法。
[21]
免疫再活性化の後、HBVウイルス量が、少なくとも2log減少する、[14]~[20]のいずれか一項に記載の方法。
[22]
HDVウイルス量および/またはHBVウイルス量が、検出できないレベルに減少する、[20]または[21]に記載の方法。
[23]
HDVおよびHBVに感染した患者の免疫再活性化を誘導することが、第1の用量でロナファルニブを投与した後、第2の用量でロナファルニブを投与することを含み、第2の用量が、第1の用量より低い、[14]~[22]のいずれか一項に記載の方法。
[24]
第1の用量が、少なくとも8週間投与され、第2の用量が、少なくとも2週間、および任意選択により少なくとも4週間投与される、[23]に記載の方法。
[25]
ロナファルニブの第1の用量が、50mgBIDであり、ロナファルニブの第2の用量が、50mgQDである、[23]または[24]に記載の方法。
[26]
ロナファルニブの第1の用量およびロナファルニブの第2の用量が、100mgBIDの用量でリトナビルと組み合わせて投与される、[25]に記載の方法。
[27]
患者が、慢性HBV感染を有し、処置過程が、処置の開始時のベースラインレベルと比較して、患者のHBVウイルス量の減少を生じる、[1]~[26]のいずれか一項に記載の方法。
[28]
HBVおよびHDVに感染した患者におけるHBVウイルス量を減少させる方法であって、少なくとも12週間、50mg~150mgの範囲の合計1日用量でロナファルニブを投与し、HBVウイルス量の少なくとも1logの減少を検出することを含む、方法。
[29]
ロナファルニブおよびリトナビルを投与することを含む、[28]に記載の方法。
[30]
患者が、抗ウイルスヌクレオチドまたはヌクレオシド類似体で処置されていない、[28]または[29]に記載の方法。
[31]
処置が、HBVウイルス量の少なくとも2log減少を生じる、[28]~[30]のいずれか一項に記載の方法。
[32]
患者にインターフェロンを投与することをさらに含む、[1]~[31]のいずれか一項に記載の方法。
[33]
インターフェロンが、ペグ化インターフェロンラムダである、[32]に記載の方法。
[34]
インターフェロンが、120mcgQWまたは180mcgQWの用量で投与される、[32]または[33]に記載の方法。
[35]
慢性HDV感染を有するヒト患者の肝炎デルタウイルス(HDV)のウイルス量を減少させる方法であって、方法が、患者をロナファルニブ-インターフェロン共治療で少なくとも30日間処置することを含み、共治療が、50mg~150mgの範囲の合計1日用量でのロナファルニブの経口投与、および120mcg~180mcgの範囲の合計週用量でのインターフェロンラムダ-1aの経口投与を含む、方法。
[36]
インターフェロンラムダ-1aが、ペグ化インターフェロンラムダ-1aである、[35]に記載の方法。
[37]
ロナファルニブが、25mgBIDの用量で投与される、[35]または[36]に記載の方法。
[38]
ロナファルニブが、50mgBIDの用量で投与される、[35]または[36]に記載の方法。
[39]
処置が、患者の肝機能の改善を生じる、[1]~[38]のいずれか一項に記載の方法。
[40]
改善された肝機能が、血清アルブミンレベル、ビリルビンレベル、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベル、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)レベル、およびプロトロンビン活性からなる群から選択される1つ以上の肝機能パラメータの改善である、[39]に記載の方法。
[41]
処置が、1つ以上の肝機能パラメータにおいて、HDVまたはB型肝炎ウイルス(HBV)に感染していない健康な対象に特有のレベルへの改善を生じる、[39]または[40]に記載の方法。
[42]
処置が、患者の肝臓移植の必要性を遅らせる、[1]~[38]のいずれか一項に記載の方法。
[43]
ロナファルニブおよびリトナビルを含む単位剤形であって、ロナファルニブおよびリトナビルが、約1:2(w/w)または約1:4(w/w)の比で存在し、単位剤形が経口投与用に製剤化される、単位剤形。
[44]
ロナファルニブを約25mg~約100mgの量で含み、リトナビルを約50mg~約100mgの量で含む、[43]に記載の単位剤形。
[45]
ロナファルニブとリトナビルとの混合物、多粒子製剤、または二層製剤を含む、[43]または[44]に記載の単位剤形。
[46]
カプセル剤または錠剤として製剤化される、[43]~[45]のいずれか一項に記載の単位剤形。
[47]
ロナファルニブおよびリトナビルの一方または両方が、即時放出のために製剤化される、[43]~[46]のいずれか一項に記載の単位剤形。
[48]
ロナファルニブおよびリトナビルの一方または両方が、制御放出のために製剤化される、[43]~[46]のいずれか一項に記載の単位剤形。
[49]
ロナファルニブおよびリトナビルを1:4または1:2の比で含む、液体製剤。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32A
図32B