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特許7187324フィルタを利用した自己混合モジュールの改良
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】フィルタを利用した自己混合モジュールの改良
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20221205BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20221205BHJP
【FI】
G01H9/00 C
H01S5/022
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018566426
(86)(22)【出願日】2017-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 US2017037148
(87)【国際公開番号】W WO2017218467
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-15
(31)【優先権主張番号】62/349,123
(32)【優先日】2016-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518442860
【氏名又は名称】ヴィクサー,エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】515115873
【氏名又は名称】ヴォーカルズーム システムズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,クライン
(72)【発明者】
【氏名】フィッシュマン,タル
(72)【発明者】
【氏名】バキシュ,タル
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-510287(JP,A)
【文献】特表2013-508717(JP,A)
【文献】特開2001-330509(JP,A)
【文献】特開平10-115681(JP,A)
【文献】特開2000-012957(JP,A)
【文献】特開2002-040350(JP,A)
【文献】特開2011-181920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0196631(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
H01S 5/00-5/50
G01S 7/48-7/51
G01S 17/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ発光用センサ・デバイスであって、
少なくとも1つのアパーチャから光を放射する少なくとも1つの部分底面発光VCSELレーザであって、キャビティと、上面ミラーと、底面ミラーを含む、部分底面発光VCSELレーザと、
検出器と、
前記キャビティに対して固定位置にあるフィルタであって、前記フィルタが波長フィルタであるフィルタと、
前記レーザによって放射された光の一部を標的面上にほぼ合焦し、前記標的面から反射された任意の光の一部を戻して前記レーザ・キャビティ内に結合するための第1光学レンズと、
を含み、
第1光路が、前記レーザから放射された光の第1部分を、前記レーザと、前記第1光学レンズと、前記標的面との間で搬送し、第2光路が、前記レーザから放射された光の第2部分を、前記レーザと前記検出器との間で搬送し、
前記標的面が前記第1光路内のみに配置され、
前記フィルタが前記レーザと前記検出器との間における少なくとも前記第2光路内に配置され、前記フィルタは、前記光の前記第2部分における信号の振幅を強調させる、センサ・デバイス。
【請求項2】
請求項1記載のセンサ・デバイスにおいて、前記フィルタが、前記第1光路および前記第2光路内に配置される、センサ・デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2記載のセンサ・デバイスにおいて、前記検出器が、前記レーザと同じ基板上に成長する、センサ・デバイス。
【請求項4】
請求項1記載のセンサ・デバイスにおいて、前記フィルタが格子またはエタロンの内1つである、センサ・デバイス。
【請求項5】
請求項1記載のセンサ・デバイスにおいて、前記レーザが、光を放射するための複数のアパーチャを有する、センサ・デバイス。
【請求項6】
請求項1記載のセンサ・デバイスであって、更に、前記レーザ発光の一部をサンプリングし、それを前記検出器に向ける手段を含む、センサ・デバイス。
【請求項7】
請求項記載のセンサ・デバイスにおいて、前記サンプリング手段がビーム・スプリッタである、センサ・デバイス。
【請求項8】
請求項記載のセンサ・デバイスにおいて、前記ビーム・スプリッタが、前記レーザの光軸に対してある角度に位置付けられる、センサ・デバイス。
【請求項9】
パッケージ化センサ・デバイスであって、
筐体と、
少なくとも1つのミラーと基板とを有し、アパーチャから光を放射するVCSELレーザであって、前記光が波長を有少なくとも部分的に前記筐体に受容されているVCSELレーザと、
前記筐体の第1端において基板に搭載された検出器と、
前記レーザと前記検出器との間に配置されたフィルタであって、前記フィルタは波長フィルタであるフィルタと、
前記筐体の第2端にある少なくとも1つの光学レンズと、
を含
前記光の第1部分は、前記少なくとも1つの光学レンズを介して標的上に導かれ、前記光の第2部分は、前記フィルタを介して前記検出器上に導かれ、前記フィルタが、前記光の前記第2部分における信号の振幅を強調させる、パッケージ化センサ・デバイス。
【請求項10】
請求項記載のパッケージ化センサ・デバイスにおいて、前記フィルタがエタロンである、パッケージ化センサ・デバイス。
【請求項11】
請求項記載のパッケージ化センサ・デバイスにおいて、前記検出器が、光検出器、PINフォトダイオード、共振キャビティ光検出器、またはアバランシェ・フォトダイオードから成る一群から選択される、パッケージ化センサ・デバイス。
【請求項12】
請求項記載のパッケージ化センサ・デバイスにおいて、前記フィルタが、前記VCSELレーザの少なくとも1つのミラーと前記VCSELレーザの前記基板とを含むエタロンである、パッケージ化センサ・デバイス。
【請求項13】
請求項記載のパッケージ化センサ・デバイスにおいて、前記フィルタが平行な2つの面を有し、各面が、前記波長において反射性であるミラーを有する、パッケージ化センサ・デバイス。
【請求項14】
請求項記載のパッケージ化センサ・デバイスにおいて、前記筐体が、前記レーザおよび前記フィルタの無調芯実装および組み立てのための少なくとも1つの機構を有する、パッケージ化センサ・デバイス。
【請求項15】
請求項記載のパッケージ化センサ・デバイスにおいて、前記少なくとも1つの光学レンズが、前記光を平行化するために、前記レーザの底面発光面と前記フィルタとの間に配置される、パッケージ化センサ・デバイス。
【請求項16】
請求項記載のパッケージ化センサ・デバイスにおいて、前記VCSELレーザの前記基板が、自発発光抑制のために、少なくとも一方側に、アパーチャのパターンを有する、パッケージ化センサ・デバイス。
【請求項17】
レーザ発光用センサ・デバイスであって、
少なくとも1つのアパーチャから光を放射する少なくとも1つのレーザであって、キャビティと少なくとも1つのミラーとを含む、レーザと、
検出器と、
前記キャビティに対して固定位置にあるフィルタであって、前記フィルタは波長フィルタであり、前記検出器に導かれる光における信号の振幅を強調させるフィルタと、
前記レーザによって放射された光の第1部分を標的面上にほぼ合焦し、前記標的面から反射した任意の光の一部を戻して前記レーザ・キャビティに結合する第1光学レンズと、
前記第1光学レンズと前記レーザとの間にあるビーム・スプリッタであって、前記ビーム・スプリッタが、前記光の第2部分を前記ミラーから前記検出器上へ向け直すビーム・スプリッタと、
を含
第1光路は、前記光の前記第1部分を前記レーザと前記標的面上との間で搬送し、第2光路は、発光された前記光の前記第2部分を前記ビーム・スプリッタと前記検出器との間で搬送する、センサ・デバイス。
【請求項18】
請求項17記載のセンサ・デバイスにおいて、さらに、前記ビーム・スプリッタと前記検出器との間に第2光学レンズを備え、前記第2光学レンズは、前記ビーム・スプリッタからの光を略平行化して前記検出器上に導く、センサ・デバイス。
【請求項19】
請求項17記載のセンサ・デバイスにおいて、前記標的面は、前記第1光路内のみに配置されている、センサ・デバイス。
【請求項20】
請求項17記載のセンサ・デバイスにおいて、前記フィルタは、前記第2光路内のみに配置されている、センサ・デバイス。
【請求項21】
請求項20記載のセンサ・デバイスにおいて、前記ビーム・スプリッタが、前記レーザの光軸に対してある角度に位置付けられる、センサ・デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互引用
[001] 本願は、2016年6月13日に出願され "Improved Self-Mix Module Utilizing Filters"(フィルタを利用した自己混合モジュールの改良)と題する米国仮特許出願第62/349,123号の権利および優先権を主張する。この特許出願をここで引用したことにより、その内容全体が本願にも含まれるものとする。
【0002】
発明の分野
[002] 本発明の開示は、信号の処理、およびレーザ自己混合のメカニズムに基づくセンサに関する。また、センサのためにパッケージングを改良する手段も開示する。
【背景技術】
【0003】
[003] ここに示す背景の説明は、本開示のコンテキストを大まかに紹介することを目的とする。本願において名前が記された発明者の業績は、この背景の章において記載される限りは、更に、それ以外でも、出願の時点において先行技術としての適格性を得ることができない諸状況(aspects)にある記載も、明示または黙示を問わず、本開示に対する先行技術として、認められないこととする。
【0004】
[004] レーザまたはレーザ・ダイオードにおける自己混合(self-mixing)は、光フィードバック干渉(optical feedback interferometry)としても知られており、運動に関する物理現象を検知するための敏感なメカニズムである。この敏感さは、光フィードバックの小さなレベルに対してでさえも過度に敏感なレーザ、このフィードバックにおける相対位相変化、更にはこれらの位相変化が光自体の光波長程度の距離規模で起こるという事実に起因する。加えて、これらの変化に対するレーザの時間的応答は、極限では、レーザ・キャビティ内における光子の寿命によってのみ制限され、それ自体数十ピコ秒程度であるので、応答は非常に速くなることができる。つまり、高い速度、高い感度、および高い空間分解能が潜在的に可能であることから、自己混合は非常に魅力的なセンサ技術となる。
【0005】
[005] また、自己混合が魅力的な技術であるのは、その実施が最小限の外部コンポーネントだけを必要とし、ハードウェアの複雑さを比較的低くすることができるからである。更に他の利点は、この技術が本質的に自己整合型(self-aligned)であることである。また、これらのセンサは、ノイズ低減および情報抽出アルゴリズムというような、種々のレベルの信号処理を組み込むこともできるが、これらのアルゴリズムは、大抵の場合、特定の用途および対象の測定変量(measurand of interest)に合わせて高度にカスタム化されている。高速の特定用途回路(ASICS)が利用可能になれば、小型で高性能な自己混合センサを得ることができよう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[006] 自己混合に基づくレーザ・センサは以前からあり、主に、振動計、変位(displacement)、形状測定、および速度計に使用されている。"Laser Self-Mixing Measuring Device"(レーザ自己混合測定デバイス)と題する米国特許第8,416,424号に記載されているデバイスのような従来のデバイスは、このような自己混合測定デバイスの1つを開示しているように思われ、レーザと検出器との間にある光路内に移動回折格子を有する。この特許をここで引用したことにより、その内容全体が本願にも含まれるものとする。使用されるのは比較的短距離の工業用途が殆どであり、この用途においては、達成可能な信号レベルでも、信頼性のある検出およびセンサ感度にかろうじて適する程度に過ぎない(adequate)。つまり、達成可能な信号レベルを高めることができれば、この技術によって取り組むことができる用途空間の大きな拡大に繋がるであろう。
【0007】
[007] 垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)は、自己混合用半導体レーザに特に適した形態である可能性がある。VCSELにおける自己混合は知られている。しかしながら、VCSELには、従来のレーザと同じ多くの欠点がある。即ち、達成可能な信号レベルが低い。VCSEL自己混合性能を高めるために、VCSELを最適化する作業が行われてきたが、改善の度合いは、ここで想起される多数の興味深い消費者向け用途には十分ではない。恐らく、最も成功した用途、および比較的最近の開発は、目標距離がセンチメートル単位である光学マウス用の自己混合系センサ(self-mixing based sensors)におけるVCSELの使用である。更に、VCSEL主体の小型で低コストのパッケージング手法があれば、それらの利用によって多大な利益が得られる消費者向け用途および市場への自己混合センサの浸透(penetration)を増加させることができよう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[008] 以下に紹介するのは、本開示の1つ以上の実施形態の基本的な理解を得るために、このような実施形態を簡略化した摘要である。この摘要は、考えられる全ての実施形態の広範な全体像ではなく、全ての実施形態の鍵となる要素や重要な要素を特定することを意図するのでなく、任意のまたは全ての実施形態の範囲を正確に定めることを意図するのでもない。
【0009】
[009] 本開示のシステムおよび方法は、例えば、フィルタ、特に、ファブリ-ペロー・フィルタを利用することにより、自己混合を改良するためのシステム、デバイス、および方法を含むことができる。また、本開示のシステムおよび方法は、例えば、VCSEL、特に、底面発光(bottom emission)のレベル向上、またはエタロン(etalon)との統合のために設計されたVCSELを利用して、自己混合センサを改良するためのシステム、デバイス、および方法も含むことができる。本開示のシステムおよび方法は、その他のおよび/または追加の便益もしくは利点も提供することができる。
【0010】
[010] 以上で概説した自己混合センサのスケーラビリティおよび感度の欠点に鑑み、本開示の1つ以上の実施形態の目的は、自己混合デバイスからの出力信号を効果的に増幅するための手段を提供することである。本開示の少なくとも1つの実施形態は、波長フィルタ、好ましくは、ファブリ-ペロー・エタロンの使用に基づき、フィルタの通過帯域の1つのエッジにおける波長で動作させることによって、信号の振幅を増大させる。したがって、波長フィルタは、監視信号の光路において、検出器よりも前に設置される。本開示の1つ以上の実施形態の他の目的は、垂直共振器レーザの使用によって、自己混合センサの小型化および一層の価格効率化を可能にすることである。具体的には、VCSELからの基板側(背面)発光を利用することによって、別個のビーム・スプリッタ・コンポーネントが不要となり、効率的な垂直積層パッケージング構成を可能にすることができる。本開示の少なくとも1つの実施形態の更に他の目的は、フィルタをVCSEL構造自体に直接統合するために、VCSELの独特な構造を利用することである。
【0011】
[011] 本開示の1つ以上の実施形態において、レーザ自己混合デバイスを提供する。このレーザ自己混合デバイスは、レーザ・ビームを生成するレーザ、このビームの一部の強度を監視する検出器、レーザ光の前記部分を検出器に結合するための手段、およびレーザと検出器との間の光路内にある光学フィルタを含む。レーザ・ビームは、外部レンズによって、部分的に反射する標的(partially reflecting target)上に合焦することができ、このレンズは、反射光の一部を戻してレーザ・キャビティに結合する役割も果たす。光学フィルタは、通過帯域の急峻領域において動作するように、電流または温度あるいはその他の手段を使用してレーザをチューニングできるような狭い範囲および波長の少なくとも1つの通過帯域を有するとよい。フィルタと検出器との間の光路には、アパーチャ、ホール、スリット、またはその他の開口を配置してもよい。反射光の一部を戻してレーザ・キャビティに結合することによって、標的の反射面の相対的運動に関係する時間、周波数、および波長情報を有する自己混合信号を生成する。
【0012】
[012] 本開示の1つ以上の実施形態において、レーザ自己混合デバイスの動作は、レーザ内でレーザ光を生成し、この光の一部を部分的に反射する標的上に導くことを伴う。次いで、反射光の一部は、戻ってレーザ・キャビティに結合される。レーザ光の他の部分は標的には向かわず、代わりに検出器に向けて導かれる。このレーザ光のサンプルまたはその一部は、フィルタを通過した後またはフィルタから反射した後に、検出器に導かれる。検出器は、その表面に入射する光の量に比例する出力信号を生成する。この出力信号は、反射光の結合が原因となって生ずるレーザ内部の自己混合効果のために、時間的に変動する。標的に関する変位または運動に関する情報を抽出するために、出力信号を測定し処理する。
【0013】
[013] フィルタの目的は、信号を検出器に供給することであり、このフィルタは、サンプリングされたレーザ・ビームの波長に非常に敏感であり、非常に小さな波長変化が、フィルタの透過または反射特性の大きな変化を生ずる。言い換えると、サンプリングされた自己混合変調光がフィルタに遭遇した後に検出器に到達ときに、その内部に光子がある確率は、その波長に大きく依存する。振幅または強度変調と時間同期して波長変調を呈するのは、自己混合信号の物理的性質に入るので、フィルタは、検出に利用可能な信号を効果的に増幅または抑制するように作用することができる。
【0014】
[014] 放射光の波長が、フィルタの透過または反射特性において比較的急峻な変化領域に対応するように、レーザを動作させることができる。フィルタ特性の立ち上がりエッジにおいて動作させると、波長が高くなるにつれて透過または反射が増大し、更にサンプリングされた光信号の強度増大が長い方の波長へのシフトを伴う場合、効果は加算的(同相)となり、信号の見かけ上のピーク・ピーク変調は増加する。フィルタ特性の立ち下がりエッジにおいて動作させると、波長が高くなるにつれて透過または反射が減少し、更にサンプリングされた光信号の強度増大が長い方の波長へのシフトを伴う場合、効果は減算的(位相外れ)となり、信号の見かけ上のピーク・ピーク変調は減少する。フィルタ特性の立ち上がりエッジにおいて動作させると、波長が高くなるにつれて透過または反射が増大し、更にサンプリングされた光信号の強度増大が短い方の波長へのシフトを伴う場合、効果は減算的(位相外れ)となり、信号の見かけ上のピーク・ピーク変調は減少する。 フィルタ特性の立ち下がりエッジにおいて動作させると、波長が高くなるにつれて透過または反射が減少し、更にサンプリングされた光信号の強度増大が短い方の波長へのシフトを伴う場合、効果は加算的(同相)となり、信号の見かけ上のピーク・ピーク変調は増大する。
【0015】
[015] 原則的に、本明細書において開示する種々の実施形態のこの態様は、自己混合効果が発生することができるレーザであれば、全ての種類とでも有効に作用する。本明細書において開示する種々の実施形態は、標的に向けて導かれていないレーザ光をサンプリングするためにビーム・スプリッタを使用するシステムにおいて採用することができる。同様に、本明細書において開示する実施形態は、端面発光レーザの場合は後面(back facet)からの発光、またVCSELの場合は基板面からの発光から、レーザ光のサンプリングされる部分が導出されるシステムにおいても使用することができる。また、このフィルタ・エレメントは、フィルタおよびビーム・サンプリング・コンポーネント、即ち、ビーム・スピリッタの双方として、二重の機能を果たすことができることも可能である。
【0016】
[016] 本明細書において開示する種々の実施形態の更に他の態様は、基板発光VCSELレーザを使用することによるパッケージング・サイズの縮小および複雑さの低下である。典型的なVCSELは非常に高い反射率の底面ミラー(>99.9%)で設計され、したがって、光パワーの殆ど全ては、それよりも反射率が低い、通例では<99.6%の上面ミラーを通して放射される。底面ミラーの反射率を低下させることによって、基板を通して放射されるレーザ光の量を増やすことができる。したがって、VCSELが検出器よりも上の位置に搭載されると、この底面放射光は、自己混合信号を監視するために利用可能になる。つまり、ビーム・スプリッタが不要となる。VCSELを検出器上に直接積層することができ、または仲介空気間隙によって離して設定することができる。部分的底面発光VCSELは、エタロンと共にパッケージングするには有利である。好ましくは、VCSELは、基板側に、ホールまたはアパーチャによるパターン化金属を有し、ホールまたはアパーチャは、望ましくない自発放射光(spontaneous emission light)を抑制しつつ、レーザ光を通過させるように機能する。検出器における自発発光(spontaneous emission)の存在は、信号対ノイズ比を低下させる、望ましくない検出器信号を発生する可能性がある。また、基板発光面には、低反射コーティングを被覆することもでき、信号損失を低減し、レーザ・パワー放射の線形性を注入電流の関数として改善し、レーザ・キャビティ光(laser cavity light)自体に対する摂動を低減または極小化することができる。
【0017】
[017] 性能を高めつつ更にセンサ・サイズを縮小し、コストを削減し、パッケージングの複雑さを低減するために、本明細書において開示する実施形態は、エタロンと直接統合されたVCSELレーザを利用することができる。VCSELは、光透過性の基板に隣接する高反射ミラーを一部に含み、基板の最終面(substrate final surface)に高反射(HR)ミラー・コーティングを被覆することによって、エタロンのフィルタリング機能を組み込むことができる。このような場合、基板はそれ自体が、一方側にVCSELの底面DBRが接し(bounded)他方側にHRコーティングが接する、エタロンのキャビティ・スペーサ領域(cavity spacer region)となる。ビームの発散のために、そしてエタロン・キャビティ内におけるレーザ照明のビーム直径が小さいために、予期される性能は理想的とはならない可能性があるが、相当な信号強調(enhancement)を生ずるのに十分であることを立証することができる。
【0018】
[018] 本開示の一実施形態では、自己混合センサ・デバイスは、射出成形されたプラスチック筐体を含み、この筐体上に、一部底面発光VCSEL(partially bottom-emitting VCSEL)が、2:1の上面対底面発光比で取り付けられる(affix)。VCSELは、例えば、940nmの波長で光を放射する。VCSELの基板面は、パターン化された金属膜によってメタライズされ、このパターンは、例えば、VCSEL発光領域の中心に整列された直径20μmの一連のアパーチャである。アパーチャの内面には、窒化シリコンの1/4光波(1/4 optical wave of silicon nitride)のような、しかしこれには限定されない反射防止コーティングを被覆してもよい。VCSELは、VCSELチップの上面上に、陽極および陰極電気接点を有する。VCSELの直下には、射出成形筐体の一部を形成するレンズが配置されている。このレンズの目的は、レーザ発光を平行化し、ビーム・サイズを広げることである。レンズのVCSELとは逆側には、波長フィルタとして機能するエタロンがあり、これもプラスチック・パッケージに取り付けられている。一実施形態では、エタロンは、少なくとも一方側に被覆された溶融シリカの層を、少なくとも部分的に反射するミラーまたは部分的に反射するコーティングと共に含む。この実施形態は、更に、シリコン検出器およびプラスチック筐体が取り付けられる(attached)サブマウント(sub-mount)も含む。組み立てられると、検出器はエタロンの最終面に、仲介空気間隙を介して(with)面する。サブマウントは、更に、電気インターフェースをデバイスに設ける。即ち、レーザの陽極および陰極、ならびに検出器の陽極および陰極を設ける。筐体の外部には、標的においてレーザ・ビームを合焦し、反射した戻り光を収集するレンズがある。このレンズは、戻り光の一部をVCSELキャビティに結合する機能も果たす。
【0019】
[019] 本明細書において開示する種々の実施形態は、標的の運動、変位、振動、および関係するモーション・アーチファクトを測定するためにセンサにおいて使用することができる。ある実施形態では、約1メートル程度以上の距離において検知を必要とする用途に相応しい場合がある。ある実施形態では、1メートル未満の距離において検知を必要とする用途に相応しい場合がある。これらは、例えば、標的の運動、変位、振動、および関係するモーション・アーチファクトの検知を必要とする、任意の種類の産業用または民生用の用途とすることができる。
【0020】
[020] 本願において説明する自己混合センサの例では、単一モード・レーザ源が光ビームを発光し、レンズによってこの光ビームを標的に合焦させる、または導く。標的は、物体、形状、または表面でもよい。レーザ信号は標的から散乱され、一部がレーザに戻り、レーザのファセットを通ってレーザに再入射する。この戻り信号が出射(outgoing)信号と混合する。VCSELから標的までの往復距離が、出射信号および入射信号が同相となるような場合、これらは加算的に(constructively)干渉し、その結果レーザからの光出力が増大する。VCSELから標的までの往復距離が、出射ビームおよび入射ビームが位相はずれとなるような場合、これらは減算的に干渉し、その結果レーザからの光出力は減少する。標的が動くに連れ、戻りビームは送信ビームと同相および位相外れとなり、時間的変動または発振(oscillation)によって特徴付けられる自己混合信号を生成する。各発振は、1波長と同等の移動(movement)に対応する。
【0021】
[021] 1つ以上の実施形態において、レーザ発光用センサ・デバイスは、少なくとも1つのアパーチャから光を放射する少なくとも1つのレーザであって、キャビティと少なくとも1つのミラーとを含む、レーザと、検出器と、キャビティに対して固定位置にあるフィルタと、少なくとも1つの光学レンズとを含む。光学レンズは、レーザ発光の一部を標的の表面上にほぼ合焦し、標的の表面から反射した任意の光の一部を戻してレーザ・キャビティに結合する。第1光路は、レーザから発光された光の第1部分をレーザと標的の表面との間で伝達し(carry)、第2光路は、レーザから発光された光の第2部分をレーザと検出器との間で伝達する。標的面は第1光路内のみに配置され、フィルタは少なくとも第2光路内に配置される。フィルタは、第1光路および第2光路内に配置されてもよい。レーザはVCSELであってもよい。検出器は、レーザと同じ基板上で成長させてもよい。フィルタは、格子(grating)またはエタロンの内の1つであってもよい。レーザは、光を放射するために複数のアパーチャを有してもよい。センサ・デバイスは、更に、レーザ発光の一部をサンプリングし、それを検出器に向ける(present)手段を含むこともできる。このサンプリング手段は、ビーム・スプリッタであってもよい。ビーム・スプリッタは、レーザの光軸に対してある角度に位置付けられればよい。フィルタは、レーザ発光の内サンプリングされる部分の光路内にあってもよい。ある実施形態では、サンプリングされる部分は、レーザ発光の50%以下である。ある実施形態では、サンプリングされる部分はレーザ発光の10%以上である。レーザはVCSELであってもよく、光はこのVCSELの底面を通して放射されてもよい。レーザは、コーティングを有する底面発光面(bottom emitting surface)を含んでもよい。コーティングは、レーザ発光の波長において反射防止性または反射性であってもよい。検出器は、光検出器、PIN光検出器、共振キャビティ光検出器(resonant cavity photodetector)、またはアバランシェ・フォトダイオードから成る一群から選択されてもよい。レーザは、端面発光レーザ、VCSEL、ソリッド・ステート・レーザ、ガス・レーザ、または任意の他の適したレーザであってもよい。光は、ある実施形態では、約800nmおよび1000nmの間の波長を有してもよい。フィルタは、格子および空間フィルタまたはスリットで構成されてもよい。フィルタは、約5nm未満の自由スペクトル範囲(Free Spectral Range)を有するエタロンであってもよい。フィルタは、約1nm未満の自由スペクトル範囲を有するエタロンであってもよい。フィルタは、約5よりも大きいフィネス(finesse)を有するエタロンであってもよい。フィルタは、約10よりも大きいフィネスを有するエタロンであってもよい。フィルタは、送信ピークを有し、光の波長に最も近い送信ピークの半値全幅送信帯域幅(full width at half max transmission bandwidth)は1nm以下である。レーザは複数の発光アパーチャを有してもよい。ある実施形態では、レーザは、少なくとも1つのミラーと基板とを有するVCSELであってもよく、フィルタは、VCSELの少なくとも1つのミラーと基板とを有するエタロンである。レーザは、更に、基板上に反射コーティングを含んでもよい。ある実施形態では、フィルタは検出器に搭載される(mounted)。ある実施形態では、レーザはVCSELであり、レーザはフィルタに搭載される。ある実施形態では、レーザは、上面および底面を有するVCSELであり、上面から放射されるピーク光パワーの底面から放射されるピーク光パワーに対する比率は、1:1および10:1の間である。ある実施形態では、センサ・デバイスは更に筐体を含む。
【0022】
[022] 1つ以上の実施形態において、パッケージ化センサ・デバイスは、筐体と、アパーチャから光を放射するレーザであって、光が波長を有する、レーザと、筐体の第1端部において基板に搭載された検出器と、レーザと検出器との間に配置されたフィルタと、筐体の第2端部における少なくとも1つの光学レンズとを含む。少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つの光学レンズが、光を平行化するために、レーザの底面発光面とフィルタとの間に配置される。ある実施形態では、波長は約800nmおよび1000nmの間であってもよい。少なくとも1つの実施形態では、レーザはVCSELである。ある実施形態では、筐体は成形プラスチックで構成される。少なくとも筐体が成形プラスチックで構成される実施形態では、少なくとも1つの光学レンズを筐体内に一体的に形成してもよい。他の実施形態では、筐体は金属で構成してもよく、レンズは筐体に取り付けられた(affixed)プラスチック・インサート(plastic insert)であってもよい。ある実施形態では、少なくとも検出器およびフィルタは、筐体のキャビティ内に配置される。ある実施形態では、レーザは筐体の外面上にある凹陥(recess)内に搭載される。ある実施形態では、基板は筐体に搭載される。筐体は、レーザおよび検出器へのワイヤボンド相互接続のために十分な隙間(clearance)を許容する少なくとも1つの機構(feature)を有してもよい。筐体は、レーザおよびフィルタの無調芯実装(passive alignment)および組み立てのために少なくとも1つの機構を有してもよい。ある実施形態では、検出器は、光検出器、PIN光検出器、共振キャビティ光検出器、またはアバランシェ・フォトダイオードから成る一群から選択されてもよい。ある実施形態では、フィルタはエタロンであってもよい。ある実施形態では、フィルタは検出器に搭載されてもよい。フィルタは、ある実施形態では、レーザから離れていてもよい。フィルタおよびレーザは、モノリシック構造を形成してもよい。ある実施形態では、フィルタは、前述の波長において低い光損失を呈する材料を含んでもよい。少なくとも1つの実施形態では、フィルタは平行な2つの面を有し、各面は、前述の波長において非常に反射性が高いミラーを有する。ある実施形態では、フィルタは約5nm未満の自由スペクトル範囲を有してもよい。ある実施形態では、フィルタは約2nm未満の自由スペクトル範囲を有してもよい。フィルタは、5よりも大きいフィネスを有してもよい。ある実施形態では、フィルタは10よりも大きいフィネスを有してもよい。フィルタは、ある実施形態では、送信ピークを有し、光の波長に最も近い送信ピークの半値全幅送信帯域幅(full width at half max transmission bandwidth)は1nm以下である。レーザは、複数の発光アパーチャを有してもよい。ある実施形態では、レーザは、少なくとも1つのミラーと基板とを有するVCSELであってもよく、フィルタは、VCSELの少なくとも1つのミラーと基板とを含むエタロンであってもよい。ある実施形態では、基板上に反射コーティングがあってもよい。ある実施形態では、レーザはVCSELであってもよく、レーザはフィルタに搭載されてもよい。少なくとも1つの他の実施形態では、レーザは上面および底面を有するVCSELであり、上面から放射されるピーク光パワーの底面から放射されるピーク光パワーに対する比率は、1:1および10:1の間である。ある実施形態では、レーザは基板を有するVCSELであってもよく、基板は、光の自発発光の抑制のために、少なくとも一方側に、アパーチャのパターンを有する。
【0023】
[023] 1つ以上の実施形態において、レーザ発光(laser light emission)用センサ・デバイスは、少なくとも1つのアパーチャから光を放射する少なくとも1つのレーザを含んでもよく、このレーザは、キャビティおよび少なくとも1つのミラーと、検出器と、キャビティに対して固定位置にあるフィルタと、レーザ発光の一部を標的の表面上にほぼ合焦し、標的の表面から反射した任意の光の一部を戻してレーザ・キャビティに結合する少なくとも1つの光学レンズと、この光学レンズとレーザとの間にあるビーム・スプリッタとを含む。センサ・デバイスは、更に、レーザ発光の一部をサンプリングし、それを検出器に提示する手段を含んでもよい。サンプリング手段はビーム・スプリッタであってもよい。ビーム・スプリッタは、レーザの光軸に対してある角度で位置付けられればよい。フィルタは、レーザ発光のサンプリングされた部分の光路内にあってもよい。ある実施形態では、サンプリングされた部分は、レーザ発光の50%以下である。ある実施形態では、サンプリングされた部分はレーザ発光の10%以上である。レーザはVCSELであってもよく、光はこのVCSELの底面を通して発光されてもよい。レーザは、コーティングを有する底面発光面(bottom emitting surface)を含んでもよい。コーティングは、レーザ発光の波長において反射防止性または反射性であってもよい。検出器は、光検出器、PIN光検出器、共振キャビティ光検出器(resonant cavity photodetector)、またはアバランシェ・フォトダイオードから成る一群から選択されてもよい。レーザは、端面発光レーザ、VCSEL、ソリッド・ステート・レーザ、ガス・レーザ、または任意の他の適したレーザであってもよい。光は、ある実施形態では、約800nmおよび1000nmの間の波長を有してもよい。フィルタは、格子および空間フィルタまたはスリットで構成されてもよい。フィルタは、約5nm未満の自由スペクトル範囲(Free Spectral Range)を有するエタロンであってもよい。フィルタは、約1nm未満の自由スペクトル範囲を有するエタロンであってもよい。フィルタは、約5よりも大きいフィネス(finesse)を有するエタロンであってもよい。フィルタは、約10よりも大きいフィネスを有するエタロンであってもよい。フィルタは、送信ピークを有し、光の波長に最も近い送信ピークの半値全幅送信帯域幅(full width at half max transmission bandwidth)は1nm以下である。レーザは複数の発光アパーチャを有してもよい。ある実施形態では、レーザは、少なくとも1つのミラーと基板とを有するVCSELであってもよく、フィルタは、VCSELの少なくとも1つのミラーと基板とを有するエタロンである。レーザは、更に、基板上に反射コーティングを含んでもよい。ある実施形態では、フィルタは検出器に搭載される(mounted)。ある実施形態では、レーザはVCSELであり、レーザはフィルタに搭載される。ある実施形態では、レーザは、上面および底面を有するVCSELであり、上面から放射されるピーク光パワーの底面から放射されるピーク光パワーに対する比率は、1:1および10:1の間である。ある実施形態では、センサ・デバイスは更に筐体を含む。
【0024】
[024] 複数の実施形態を開示するが、本開示の更に他の実施形態も、本発明の例示な実施形態を示し説明する以下の詳細な説明から、当業者には明白となるであろう。認められるであろうが、本開示の種々の実施形態は、種々の自明な態様において変更が可能であり、全て、本開示の主旨および範囲から逸脱することはない。したがって、図面および詳細な説明は、性質上限定ではなく例示と見なすこととする。
【0025】
[025] 本明細書は、本開示の種々の実施形態を形成すると見なされる主題を特定的に指摘し明白に特許請求する請求項で完結するが、以下の説明を添付図面と関連付けて検討することから、 本発明は一層深く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本開示の一実施形態による自己混合光学系の模式図である。
図2図2は、本開示の一実施形態にしたがって、レーザ光をサンプリングするビーム・スプリッタを有する自己混合構成の模式図である。
図3図3は、標的がレーザ自由空間波長の整数倍数分だけ変位するに連れて生成される、周期的な鋸歯状フリンジ(fringe)を示す自己混合信号を表すグラフである。
図4図4は、自己混合レーザ強度および波長信号の時間変動を表すグラフである。
図5図5は、ファブリ-ペロー・エタロン透過特性を入射光波長の関数として表すグラフである。
図6-1】図6A図6Dは、光路内のエタロンによる自己混合信号の強調を表すグラフである。
図6-2】Eは、光路内のエタロンによる自己混合信号の強調を表すグラフである。
図7図7は、底面発光VCSEL構造の模式図である。
図8図8は、レーザの1つのミラーの構造に基づくレーザの一実施形態から放射される全光パワーの割合(percent)を表すグラフである。
図9図9は、部分反射底面からの観察対象VCSEL出力を表すグラフである。
図10図10は、透過性基板上に製作されたVCSELに適したエタロン・フィルタおよび光検出器との積層VCSEL一体化(integration)の模式図である。
図11図11は、吸収基板(absorbing substrate)上に製作されたVCSELに適したエタロン・フィルタおよび光検出器との積層VCSEL一体化の模式図である。
図12図12は、VCSEL、エタロン、および光検出器の直接積層によるセンサ・パッケージングの模式図である。
図13図13は、エタロン・フィルタの前に平行化レンズがあるセンサ・パッケージングの模式図である。
図14図14は、8×8アレイの発光アパーチャを有するVCSELレーザ・ダイの模式図である。
図15図15は、本開示の一実施形態による自己混合光学系の模式図である。
図16図16は、本開示の一実施形態による自己混合光学系の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[042] 本開示は、信号の処理、およびレーザ自己混合のメカニズムに基づくセンサ、ならびにこのセンサ用のパッケージに関する。
【0028】
[043] 以下の詳細な説明では、いくつかの実施形態の完全な理解を得るために、多数の具体的な詳細について明記する。しかしながら、実施形態には、これらの具体的な詳細がなくても実施できるものもあることは、当業者には理解されよう。他方では、周知の方法、手順、コンポーネント、ユニット、および/または回路については、論述が曖昧にならないように、詳細には説明しない。
【0029】
[044] 本開示の1つ以上の実施形態を参照して本明細書において説明する機能、動作、コンポーネント、および/または特徴は、本開示の1つ以上の他の実施形態を参照して本明細書において説明する1つ以上の他の機能、動作、コンポーネント、および/または特徴と組み合わせることもでき、あるいはこれらと組み合わせて利用することもできる。つまり、本開示は、本明細書において説明するモジュールまたは機能またはコンポーネントが本論述の異なる場所または異なる章において論じられていても、もしくはこれらが異なる図面または複数の図面に跨がって示されていても、その一部あるいは全部のあらゆる可能な組み合わせまたは適した組み合わせ、再構成(re-arrangement)、組み立て(assembly)、再組み立て、もしくはその他の利用も含むことができる。
【0030】
[045] 本開示の特定の特徴については本明細書において図示および説明するが、多くの修正、交換、変更、および均等物も当業者には想起されよう。したがって、特許請求の範囲は、このような修正、交換、変更、および均等物の全てに該当することを意図している。
【0031】
[046] レーザ・ビームが外部標的から後方散乱されると、レーザ・ビームは、ある状況では、その反射パワーの一部を戻してレーザ・キャビティに結合することができる。この後方結合光(back-coupled light)は、キャビティ内において定在波と自然に干渉し、発光された光の光パワーおよび周波数(波長)に不安定さまたは変動を招く。この光パワーの変動は、光検出器によって光路における任意の地点において監視することができる。順方向伝搬光は、主レーザ・ビームから分割またはサンプリングし、検出器に導くことができる。代わりに、レーザから発光される副ビームの形態である後方伝搬光は、直接検出器に入射することができる。
【0032】
[047] 反射光が戻ってレーザ・キャビティに結合するとき、時間遅延および位相が伴う。したがって、定在波との相互作用は非常に複雑であり、レーザの閾値条件の修正が行われることになるのが通常である。電気バイアスまたは励起パワーが一定に保たれているとすると、この閾値条件の変化は、放射される光パワーの変化としてはっきりと現れる。これらのパワー変動を解釈することによって標的の動きおよび距離の具体的詳細を導き出すアルゴリズムを適用することができる。また、閾値条件の変化は、定常状態の搬送波密度(carrier density)の変化も伴うので、放射光の波長も、同じ時間依存性で影響を受ける。
【0033】
[048] レーザは光フィードバックに対して非常に敏感であるが、フィードバック下におけるレーザの出力の変化の絶対的な大きさ(magnitude)は小さく、ノイズを多く含む可能性がある。したがって、自己混合信号の強度は、理想的な条件下であっても、本来非常に低いので、信号対ノイズ比を高めることが望ましい。
【0034】
[049] 自己混合信号は、周期的な振幅のフリンジ(fringe)として現れ、これらのフリンジの各々は、1/2光波長、即ち、1/2波に等しい反射光における全位相シフトに対応する。フリンジの大きさは、レーザ設計の具体的詳細、およびフィードバックの強度(即ち、キャビティ内に戻って結合される光の量)に応じて異なる。結合が強い程、強い信号が得られるのが通常である。フィードバック結合の量を増やす方法には、アパーチャが大きいまたは開口数が大きい光学素子を使用すること、標的の組成または反射率を変化させること、あるいは標的までの距離を短くすることが含まれる。場合によっては、標的の組成(composition)を固定するか、そうでなければユーザの制御下に置かないこともあり、更にセンサ・サイズの縮小が重要になることもある。このような場合、信号強調の主要な手段は、自己混合に対する感度を高めるように、レーザ設計を最適化することである。どれくらい多くの改良を達成できるかについては限界がある。何故なら、あるフィードバックのレベルにおいて、レーザは不安定になり、自己混合は不規則になる(erratic)からである。
【0035】
[050] 自己混合信号は、通常、一定の背景信号レベル、即ち、バイアス上に重畳された、前述のフリンジまたは変調成分(信号)で構成される。変調成分(信号)のバイアス成分に対する比を変調深度mと呼んでもよい。安定動作領域(regime)では、典型的なレーザは、高いレベルの結合光フィードバックの下で、<0.5%程度の変調深度mを呈するとして差し支えない。レーザからの光パワーを最小に抑えることは、頻繁に要望されている。レーザが1mWの光パワーを放射している場合、近似信号は、したがって、約5μWピーク・ツー・ピークとなる。応答度が0.5A/Wの典型的なシリコン光検出器を使用する場合、これが意味するのは、電気的に変換された信号の値が2.5μAピーク・ツー・ピークになるということである。これは、検出回路において背景ノイズによって圧倒され得る小さい値である。光学素子の小型化によるフィードバック・レベルの低下、標的の反射率の低下、および/または標的距離の延長は、信号レベルにおいて対応する低下を招く可能性があり、問題を悪化させるおそれがある。したがって、この信号レベルを高めることは非常に重要である。
【0036】
[051] 自己混合変調下におけるレーザの光パワーの変化を検出する代わりに、内部接合電圧を監視することができる。これは、光検出器が不要になるという利点があるが、達成可能な信号が非常に低いため、この手法は本質的に利用が限られる。
【0037】
[052] これは、要求されるキャビティおよびミラーを形成するために活性結晶(active crystal)の端面を割ることによって形成される、一般的なFP、即ち、ファブリ・ペロー・レーザである。FPレーザは、この用途には便利である。何故なら、これらは、通例、いわゆるバック・ファセット・モニタ・フォトダイオード(back-facet monitor photodiode)と共に同じパッケージ内にパッケージングされるからである。つまり、端面発光レーザ(edge-emitting laser)が使用される場合、自己混合検出器は、レーザ・ダイオード自体と一緒にパッケージングされるバック・ファセット・モニタ・フォトダイオードにすることができる。
【0038】
[053] 自己混合センサにおいて使用されるレーザは、ガス・レーザ、ソリッド・ステート・レーザ、または半導体レーザであってもよい。多くの自己混合に基づくセンサは、端面発光レーザ・ダイオードを利用する。垂直共振器面発光型レーザー(VCSEL)は、自己混合には特に適した半導体レーザの形態であると言うことができる。VCSELは、基板を含む半導体レーザであり、基板の上に、第1底面分布ブラグ反射(DBR: Distributed Bragg Reflector)ミラー、キャビティと呼ばれる活性光生成活性領域(active light generating active region)、および第2上面DBRミラーが順次堆積される。光は、デバイスの上面に対して法線方向に放射される。
【0039】
[054] VCSELは、垂直発光という特性により、従来のレーザよりもはるかに高いパッケージング柔軟性をもたらし、LEDまたは半導体集積回路(IC)に利用可能な広範囲のパッケージの使用に道を開いた。VCSELアレイは、垂直積層構成で、光検出器または光学エレメントと共にパッケージングすることができる。プラスチックまたはセラミック製の表面実装パッケージングまたはチップ・オン・ボードという選択肢も、VCSELに利用可能である。
【0040】
[055] 同じチップ上に、複数のレーザを、別個の発光アパーチャと共に製作することができる。これらのアパーチャは、電気的に直列に、並列に、または個々にアドレス可能に接続することができる。同じVCSELチップ上に個々にアドレス可能なアパーチャのアレイがある場合、ビーム方向誘導(beam-steering)の効果は、1つ以上のアパーチャを選択的に照明することによって得ることができる。レンズと共に使用するとき、これは、機械的な動きを全く必要とせずに、視野内の領域を照明することを可能にする。また、自己混合センサの並列アレイも、VCSELで構築することができる。
【0041】
[056] 本開示は、1つ以上のフィルタを利用することによって、例えば、本明細書において説明するような、ファブリ・ペロー・フィルタおよび/または他の適したフィルタ(1つまたは複数)を使用することによって、自己混合(SM)信号を改良するおよび/または増大させるためのシステム、回路、方法、およびデバイスを含むことができる。システムは、少なくとも1つの実施形態では、レーザ主体の送信機と、対象エリアから学習した光フィードバックを捕捉する光センサと、光フィードバックを処理し、光フィードバックに対応する信号(例えば、データのストリーム、データ・ストリーム、オーディオ信号または音響信号に対応する、模擬する、またはエミュレートするデータ)を生成する光プロセッサとを含むのでもよい。
【0042】
[057] 「底面」(bottom)および「上面」(top)という用語は、レーザ構造を論ずるときには、自由に相互交換することができ、「底面」(bottom)という用語は、通常、光検出器に向かって面する副ミラーを引用するために使用される。VCSELの場合、これは、通常、デバイスの基板側と解釈される。端面発光ファブリ・ペロー・レーザ、ソリッド・ステート・レーザ、またはガス・レーザ、あるいは同様のものというような、任意のレーザ・キャビティ設計の場合、「底面」(bottom)および「上面」(top)という用語は、「左」(left)および「右」(right)または「主」(primary)および「副」(secondary)とすることも、等しい有効性で、可能であり、これらの用語は、レーザ・キャビティを構成する2つの一意の反射面を区別することを意図するに過ぎない。
【0043】
[058] 「フィルタ」(filter)および「波長選択エレメント」(wavelength selective element)という用語は、この論述では相互交換可能に使用することができる。フィルタは、エタロン(etalon)または格子でもよく、透過モードまたは反射モードの内少なくとも1つで動作することができる。
【0044】
[059] 殆どの商用センサの用途では、人の目には気付かれない光波長を使用することが望ましい。これは、スペクトルの近赤外線(NIR)範囲であり、最も一般的な対象範囲は835nm~980nmである。一実施形態では、940nmを好ましい波長にするとよい。何故なら、これは非常に低い視認性を与え、低コストのシリコンを使用する光検出器では最も高い感度に近いからである。
【0045】
[060] 図1は、一例として、自己混合センサ・デバイス100を示す。自己混合センサ・デバイス100は、第1ミラー104、光生成キャビティ106、および第2ミラー108を有するレーザ102と、前記第1ミラー104から放射された光112を標的114上に合焦する第1光学レンズ110と、前記第2ミラー108から放射された光118をほぼ平行化し、それを検出器120に向けて導く第2光学レンズ116とで構成されている。少なくとも1つの実施形態では、標的114は部分的に反射する標的であってもよい。少なくとも1つの実施形態では、標的114は移動標的であってもよい。1つの代替実施形態では、第2光学レンズ116は随意選択肢であってもよく、その場合、第2ミラー108からの光118は平行化されない。検出器120と第2ミラー108との間には、光学フィルタ122を配置してもよい。ある実施形態では、フィルタ122は、レーザ、検出器、または双方に対して固定位置にある。第2レンズ116がある場合、前記フィルタ122を第2レンズ116と検出器120との間に配置してもよい。したがって、このシステムでは2本の光路が定められる。即ち、第1ミラー104から標的114までの第1経路124、および第2ミラー108から検出器120への第2経路126である。つまり、フィルタ122は第2経路126内にあってもよい。少なくとも1つの実施形態では、このフィルタは固定位置にある。動作において、本明細書において論ずる実施形態の全てではないにしても、その多くでは、検出器端子にある信号は、本来のレーザ・キャビティ光と、静止標的または移動標的から反射または散乱された光とのキャビティ内混合によって生成される自己混合信号である。自己混合信号は、急峻に画成された通過帯域エッジを有する光学フィルタのような、しかしこれには限定されないフィルタの波長濾波作用によって、強調する(enhance)ことができる。ある実施形態では、レーザは約850nmおよび940nmの間の範囲で光を放射することができる。一実施形態では、レーザは約850nmまたはその付近で光を放射する。一実施形態では、レーザは約940nmまたはその付近で光を放射する。
【0046】
[061] 図2は、代替自己混合センサ・デバイス200の構成を示す。この場合も、自己混合センサ・デバイス200は、第1ミラー240、光生成キャビティ206、および第2ミラー208を有するレーザ202と、第1ミラー204から放射された光212を、部分的に反射する標的214に合焦する第1レンズ210と、ビーム・サンプリング・エレメント216とを含む。ビーム・サンプリング・エレメント216は、第1ミラー204からの光212の一部を第2レンズ218に向けて方向転換し、第2レンズ218はこの光をほぼ平行化し、それを検出器220に導く。一実施形態では、ビーム・サンプリング・エレメント216はビーム・スプリッタである。少なくとも1つの実施形態では、ビーム・スプリッタは、レーザ202の光軸に対してある角度で位置付けられる。第2レンズ218と検出器220との間の光路221には、光学フィルタ222を配置してもよい。他の実施形態では、第2レンズ218がなく、フィルタ222は、ビーム・スプリッタ216と検出器220との間に配置されてもよい。更に他の実施形態では、図2のビーム・サンプリング・エレメント216は、第1レンズ210と標的214との間に配置することができ、この場合、第2レンズ218を省略してもよい。他の実施形態では、ビーム・サンプリング・エレメントおよびフィルタが、複合サンプリング・コンポーネント(combined sampling component)を形成することができる。入射ビームの光軸に関してある角度に傾けられたエタロンが、このような複合サンプリング・コンポーネントの例であろう。このような実施形態では、傾けられた複合サンプリング・コンポーネントを、第1ミラー204と検出器220との間に配置することができる。ある実施形態では、検出器220およびフィルタ222をレーザ202の光軸と平行に位置付けることができる。ある実施形態では、検出器220およびフィルタ222を、レーザの光軸に対して垂直に位置付けることができる。
【0047】
[062] 図1および図2の双方において、レーザ102、202は、好ましくは、半導体レーザであるが、ガス・レーザまたはソリッド・ステート・レーザであってもよい。好ましい実施形態では、レーザはVCSELである。
【0048】
[063] 図1および図2の双方において、検出器120、220は、好ましくは、フォトダイオードであってもよい。検出器120、220は、広帯域光検出器、または共振キャビティ・フォトダイオード(resonant-cavity photodiode)であってもよい。検出器120、220は、光エネルギを、この光エネルギ、強度(intensity)、またはパワーに比例する電流のような、信号に変換する。この電流は、更なる信号処理のために増幅することができる。
【0049】
[064] 図3は、標的がレーザ・キャビティに対して動いているときに、標的から散乱または反射された光が、第1ミラーを介して第1レンズによって、レーザ・キャビティ内に結合されたときに検出器に現れる特性自己混合信号300を示す。信号300は、結合光の、キャビティ内にある、既存の定在波との干渉性混合(coherent mixing)のために、周期的な、またはそうでなければ時間依存の「鋸歯」フリンジ302を有する。「鋸歯」フリンジ302の形態および時間依存性が、標的の位置および動きの具体的詳細に関係する情報をエンコードする。更に、信号300は、図3に示すように、そのピーク-ピーク振幅およびDCオフセットによって特徴付けられる。ピーク-ピーク変動の振幅が重要となり得るのは、環境的外乱および電子部品の背景ノイズが原因となる、本質的にノイズが多い背景から、信号処理によって動きデータを抽出することができる信頼性に、ピーク-ピーク変動の振幅が影響を及ぼすからである。フリンジの時間周波数、形状、および傾斜から、標的の発光源(source)に対する相対的な動き、および標的までの絶対距離についての情報が得られる。
【0050】
[065] 図4は、自己混合信号400の振幅の時間変化に、レーザ波長の絶対値の同時および相関シフトがどのように付随するかを示す。1つの鋸波402の周期において、レーザ波長の絶対値は、量ΔλSMだけ変化する。ここで、ΔλSMはフィードバックの条件に依存し、ピコメートル程度またはそれ以上であればよい。自己混合信号が、ほぼステップ状の応答を有する光学フィルタを通過し、信号の中心波長が、ステップ応答の中点をほぼ中心とする場合、フィルタの透過によって信号のスペクトルおよび振幅成分を畳み込み、透過信号の著しい明白な増幅が生ずるに至り、これは検出器によって観察可能となる。
【0051】
[066] 光学フィルタは、非常に分散的な回折格子およびスリットを使用することによってというように、複数の方法で実現することができる。一実施形態では、フィルタはファブリ-ペロー・エタロンである。エタロンとは、透光性スペーサ・キャビティ領域によって分離された2枚の面平行ミラー(plane-parallel mirror)から成る光学素子(optical element)である。エタロン・キャビティ内部における複数の反射の加算的および減算的干渉のために、エタロンの透過特性は、共振が発生する波長において、複数の狭帯域ピークを呈することができる。
【0052】
[067] 図5は、このようなエタロンの透過特性対波長の一例を示す。透過500は、その自由スペクトル範囲(FSR)、通過帯の帯域幅(BW)、ピーク周波数、およびピーク透過率(peak transmission percent)によって特徴付けられる。エタロンの自由スペクトル範囲(FSR)は、エタロン透過における2つの隣接するピークの波長の差である。FSRは、主に、エタロンの厚さ、即ち、エタロンを構成するミラーの表面間の距離によって決定される。キャビティが厚い程、502において示す共振透過ピークが近づく。各透過ピークの帯域幅は、主として、構成ミラー反射率によって決定される。これは、通常、50%透過における通過帯の全幅として見なされる。反射率が高い程、帯域幅は狭くなる。原理上は、100%に近い反射率に対して、ほぼ無限に狭い帯域幅を達成することができる。全透過率(Total percent transmission)は、構造の品質および入力ビームの特性によって制限される。フィネス(finesse)fは、エタロンの性能の尺度であり、FSRの帯域幅に対する比に等しい(即ち、f=FSR/BW)。本明細書において説明するような使用のためには、エタロンは、レーザの同調可能な範囲内において複数の透過ピークを有することが望ましい。その理由は、504に示す通過帯の立ち上がりまたは立ち下がりエッジにおいて、レーザが動作しなければならないからである。自己混合信号の波長および振幅変化が同相か(相互に増大するまたは相互に減少する)、または位相外れか(逆方向に変化する)によって、正しい動作点がフィルタの通過帯の立ち上がりエッジになるか、または立ち下がりエッジになるか決定される。
【0053】
[068] 例示の目的のために簡略化した仮定では、エタロンのピーク通過帯透過を100%であると仮定することができ、各透過通過帯は、底辺の幅が2×BWの三角形によって近似することができる。この仮定の下で、透過は、Δλ=BWの波長シフトのスペクトル範囲において、ほぼゼロから100%に達する。更に、自己混合鋸波の1周期における全波長シフトΔλSMは、20ピコメートル、即ち、0.02nmであると仮定することができる。少なくとも、信号レベルの50%強調(enhancement)を達成することを望む場合、これは、BW=2×ΔλSM=0.04nmの帯域幅が必要であることを暗示する。すると、必要とされるエタロンのフィネスは、近似的に、f=15となり、これは実際のエタロンにとって達成可能な性能目標である。通過帯の帯域幅を更に狭くすると、比例して、信号強調の程度が大きくなる。つまり、フィネスを一層高くすることが望まれることもあり得る。FSR<1nmの場合、5の最小フィネスによって、識別できる強調が得られるのが通例であり、f~10によって、著しい強調が得られるのが通例である。
【0054】
[069] 図6A図6Eは、f~15のエタロンを使用して、エタロンのフィルタをかけた自己混合信号の出力例を示す。図6Eは、明確にするために倍率調整した透過曲線を示すのであり、f=15のエタロンの正確な表現であることは意図していない。エタロン透過が最小になる図6E上の点「A」において、図6Aに示すようにエタロンに入射する光が全くなくなることにより、全信号は消滅する(extinguished)。図6E上の点「C」において、エタロン透過は最大になり、変曲点において傾斜がゼロになるので、図6Cに示すように、信号は比較的変化しない。図6E上の点「D」において、透過傾斜変化の絶対値は高いが、振幅変化の方向に対して位相外れとなるので、図6Dに示すように、信号変調は消滅する。通常最適な動作点であると言える図6E上の点「B」において、振幅および波長変化は同相となり、その結果、図6Bに示すように、著しい信号強調(enhancement)が得られる。
【0055】
[070] 一実施形態では、VCSEL主体の自己混合センサは、小さなパッケージ内でエタロンと密接に一体化され、底面から大部分の光を放射するVCSELを使用する。この問題を図示するために、図7は、VCSELの一例700の断面図であり、一例として、本明細書において開示するVCSELおよびVCSELアレイの実施形態に利用することができる、全体的な構造的エレメントおよびコンポーネントを含む。本明細書における開示は、いずれの特定のVCSEL、VCSEL構成、またはVCSELアレイにも限定されることは意図しておらず、あらゆるVCSEL、修正されたものまたは未修正のもの、現在知られているもの、あるいは今後開発されるものにも適用可能であるのはもっともである。図7は、光キャビティ・スペーサ領域704内に位置する量子井戸活性領域702を含む包括的なVCSEL構造(generic VCSEL structure 700)を示す。キャビティ領域704の隣りには、第1DBRミラー706が一方側に配置されており、これ自体は多数の高/低屈折率層の対707で構成されている。この第1DBRミラー706上には、キャビティ704とは逆側に、第1孔またはアパーチャ710を有する第1部分的金属層708が配置されており、アパーチャ710を通過して、レーザ光はキャビティ704から脱出することができる。キャビティの第1DBRミラーとは逆側には、第2DBRミラー712があり、これ自体は、多数の高/低屈折率層の対713で構成されている。第2DBRミラー712は、レーザの発光波長において高い透過度を有することができる材料の基板層714上に配置されている。この基板層714上には、第2DBRミラーとは逆側に、発光(light emission)の軸に沿って第2孔またはアパーチャ720を有する第2部分的金属層718が配置されており、アパーチャ720を通過して、レーザ光はキャビティから脱出することができる。この第2金属層において第2孔を定める領域内では、基板の表面に、コーティング層722のような、追加の1つまたは複数の材料で被覆してもまたは被覆しなくてもよい。被覆する場合、この1つまたは複数の追加材料は、基板の最終表面の反射特性を低反射率(reflectance)または高反射率にするように変更することができる。一実施形態では、この表面を低反射率にするための材料でこの表面を被覆する。少なくとも1つの実施形態では、コーティング材料は窒化シリコンとしてもよい。少なくとも1つの実施形態では、コーティングは、レーザ動作波長において約1/4光波の厚さを有するとしてもよい。他の材料および他の厚さも本開示の範囲内に該当する。
【0056】
[071] 更に具体的には、とは言っても通常のレベルで、GaAs基板のような基板材料上には、通例、VCSELのエピタキシャル層を形成することができる。この基板上では、単結晶の厚さ1/4波長の半導体層が「成長」して、量子井戸に基づく活性領域の周囲にミラー(例えば、n-およびp-分布ブラグ反射器(DBR:Bragg reflector)を形成し、垂直方向にレーザ・キャビティを作成すると言うことができる。本明細書において使用する場合、「成長させる」(grown)という用語は、「生成する」(generated)、「形成した」(formする)、または「製造する」(produced)、あるいはその他の同様の用語と同様の意味を有すると考えてもよい。同様に、本明細書において使用する場合、「形成する」(formed)という用語は、「生成する」(generated)または「製造する」(produced)、あるいはその他の同様の用語と類似であると考えてもよい。例えば、基板上では、AlGaAs n-DBRを形成する層のような、しかしこれに限定されない第1ミラー層を成長させることができる。ここで、n-はn型ドーピングを示す。AlGaAsのような、しかしこれに限定されないスペーサを、第1ミラー層の上方に形成、製造、または生成することができる。次いで、AlGaAs/InGaAs多重量子井戸(MQW)活性領域のような、しかしこれには限定されない量子井戸に基づく活性領域を、AlGaAsスペーサのような、しかしこれには限定されない他のスペーサ層に沿って、形成、製造、または生成することができる。その上方に、AlGaAs p-DBRを形成する層のような、しかしこれには限定されない第2ミラー層を成長させることができる。ここで、p-はp型ドーピングを示す。その上方に、AlGaAs/GaAs電流拡散/キャップ層(current spreader/cap layer)のような、しかしこれには限定されない電流拡散/キャップ層を形成することができる。キャップ層の上方に接触金属層を形成し、通例では、概略的にVCSELの軸を中心に据え所望の直径を有する円形のアパーチャを残す。ある実施形態では、アパーチャ内部に誘電体キャップを形成してもよい。VCSEL構造および製作、ならびに追加のVCSELの実施形態、更にはVCSELの製造および使用方法に関する更に具体的な詳細は、例えば、"Push-Pull Modulated Coupled Vertical-Cavity Surface-Emitting Lasers and Method"(プッシュ-プル変調結合垂直共振器面発光レーザおよび方法)と題する米国特許第8,249,121号、"Direct Modulated Modified Vertical-Cavity Surface-Emitting Lasers and Method"(直接変調変更垂直共振器面発光レーザおよび方法)と題する米国特許第8,494,018号、"Push-Pull Modulated Coupled Vertical-Cavity Surface-Emitting Lasers and Method"(プッシュ-プル変調結合垂直共振器面発光レーザおよび方法)と題する米国特許第8,660,161号、"Method and Apparatus Including Movable-Mirror MEMS-Tuned Surface-Emitting Lasers"(可動ミラーMEM-同調面発光レーザを含む方法および装置)と題する米国特許第8,989,230号、"Method and Apparatus Including Improved Vertical-Cavity Surface-Emitting Lasers"(改良した垂直共振器面発光レーザを含む方法および装置)と題する米国特許第9,088,134号、"Red Light Laser"(赤色レーザ)と題する米国再発行特許第RE41/738号、"Method and Apparatus Including Improved Vertical-Cavity Surface-Emitting Lasers"(改良した垂直共振器面発光レーザを含む方法および装置)と題する米国公開第2015/0380901号、および"VCSELS and VCSEL Arrays Designed for Improved Performance as Illumination Sources and Sensors"(照明源およびセンサとして、性能向上のために設計されたVCSELおよびVCSEアレイL)と題する米国公開第2016/0352074号に開示されている。これら各々の内容は、これらの文献をここで引用したことにより、その全体が本願にも含まれるものとする。本明細書における開示は、いずれの特定のVCSEL、VCSEL構成、またはVCSELアレイにも限定されることは意図しておらず、以上で挙げた特許または特許出願の内任意のもののあらゆるVCSEL、修正されたものまたは未修正のもの、更には現在知られているまたは今後開発されるあらゆるその他のVCSELにも適用可能であるのはもっとももである。以上で挙げた特許または特許出願の内任意のものにおいて記載されているVCSELのみに限定されるのではなく、本開示の種々の実施形態に適したVCSEL、および本開示にしたがって適切に修正可能なVCSELには、以上で挙げた特許または特許出願において開示されたVCSELが含まれ、その中における先行技術のVCSELについてのあらゆる論述や、以上で挙げた特許または特許出願の内任意のものの審査中に引用された先行技術の参考文献のいずれかに開示されたVCSELも含まれる。更に一般的には、特に具体的にまたは明示的に記載されていないならば、現在知られているVCSELまたは今後開発されるVCSELはいずれも、本開示の種々の実施形態に相応しいとしてもよく、あるいは本開示にしたがって適切に修正可能であるとしてもよい。
【0057】
[072] 各VCSELは、1つ以上のDBRミラーを有することができ、ある実施形態では、各VCSELが2つのDBRミラーを有する。各VCSELが1つ以上のDBRミラー対を有することもできる。構成要素である1/4波長ミラー層の数、およびこれらを構成する材料によって決定される2つのDBRミラーの相対的反射率(reflectivity)に応じて、最上位の第1面から放射されるパワー量の、最下位の第2面から放射されるパワー量に対する比は、様々に変化することができる。以上のVCSEL構造では、第1ミラーおよび第2ミラーにおけるDBRミラー対の数が、総合的に、第1アパーチャおよび第2アパーチャから放射される光パワー量を決定し、その合計が全レーザ・パワーとなる。伝達行列モデルを使用すると、第1アパーチャからの発光パワーの第2アパーチャからの発光パワーに対する比を決定することができる。図8は、パワーとミラー対との間の比を表し、第2DBRにおけるミラー対の数が19から37の範囲である場合、第2アパーチャから放射される全レーザ・パワーの比率は、単調に約65%から約0%まで変動することがわかる。
【0058】
[073] センサ検出器に結合される、第2アパーチャ放射の所望量は、下端では、受信機の電子部品の感度およびノイズに対する限度によって拘束され、上端では、標的を照明し、レーザ内部における自己混合に導くのに適した反射戻り信号を生成するように、適正な第1アパーチャ放射を有することによって拘束される。第2アパーチャから放射される全レーザ・パワーの10%から50%の範囲においてサンプリングされる部分は、適正に、対象の用途の範囲を捕らえる。ある実施形態では、サンプリングされる部分が、10から50パーセントの範囲、または15から49パーセントの範囲、または20から50パーセントの範囲、または25から50パーセントの範囲、または50パーセント未満、または50パーセント以下、または10パーセント以上、または18パーセント以上、または40パーセント以下、または12および33パーセントの間であってもよく、他の適した範囲または値を使用してもよい。任意の所与の用途に対して、そしてこの特定のVCSEL設計に対して、第2DBR内に可能なミラー対の数は、ある実施形態では、21から29までの範囲を取ることができるが、任意の数のミラーを使用してもよい。
【0059】
[074] レーザ光は、自発発光および刺激発光で構成される。刺激発光は、望まれる高指向性レーザ・ビームである。自発発光は、多くの方向に広く放射される等方性光であり、変調レーザ・ビームの情報コンテンツを含まない。したがって、検出システム内に結合される自発光は、センサ性能を劣化させる、望ましくないDCオフセットおよびノイズ源を表す。第2部分的金属層の第2アパーチャをパターン化すると、光遮断メカニズム、または空間フィルタとして機能し、自発光の大部分が検出器の表面に達するのを阻止する。
【0060】
[075] 以上で説明したように、エタロンは、共面平面(co-planar surfaces)を有し、本質的に平坦な透光性基板で構成され、2つの表面の各々の上にミラーが配置される。図7に示すVCSELは、部分的に、平面透過性基板上に配置されたDBRミラーで構成され、構成によっては、透過性材料を利用することができる。具体的には、GaAsは940nmにおいて本質的に透過性である。この基板のDBRと逆側の面は、VCSELを製作する手段のために、全体的に非常に平坦であり、DBRに平行である。したがって、DBRと逆側の基板面に多重高反射性コーティングを被覆することによって、低コストおよび複雑さで直接VCSELと一体化されるエタロンを形成することができる。一体形成されたエタロンの性能は、ビーム・サイズおよび分散(divergence)のために、平行化ビームおよび外部エタロンによって達成可能な性能よりも低いが、それでもなお、自己混合信号を著しく強調する(enhance)には適した性能を得ることができる。例示するために、図9は、デバイス駆動電流を掃引し、厚さ約100μmのVCSEL基板を有する光検出器を使用して底面放射光を監視することによって得られた、約30%基板発光に合わせて設計されたVCSELからの底面側発光を示す。光出力における周期的な上下、即ち、フリンジは、VCSEL底面DBR、およびシリコン検出器の表面によって形成されるエタロンの特徴であり、シリコン検出器の表面上に、25μm未満の厚さの接合線でVCSELが貼り付けられる。VCSELの底面には、反射防止(AR)コーティングが被覆され、したがって、5%未満と推定される反射率を有することができる。一方シリコン検出器の反射率は10%以下と推定される。一方、DBRミラーは99.9%よりも高い反射率を有することができる。駆動電流によるVCSEL波長の既知の同調特性(tuning characteristic)に基づいて、VCSEL-基板エタロンのFSRは、約0.180nmと推定することができ、一方フィネスは<1である。多層誘電体コーティングによって基板-空気界面の反射率を高めて、好ましくは50%反射率よりも高くすることによって、そして基板の厚さを200μmよりも厚くすることによって、自己混合強調のためには望ましいレベルのエタロン性能、即ち、FSRが約0.6nm未満、フィネスが5よりも大きいエタロン性能を達成することができる。
【0061】
[076] 図10および図11は、デバイス1000、1100に対するチップ規模の混成手法(chip-scale hybrid approach)において、ファブリ-ペロー・エタロン・フィルタのようなフィルタを、フォトダイオードおよび部分的底面発光VCSELと一緒に一体化するための2つの手法を示す。図10は、VCSEL基板がVSCEL波長を透過する場合を示す。この手法は、900nmから1300nmの範囲の波長に相応しく、GaAs基板上にVCSELを堆積できることに変わりはないが、GaAsは、VCSELから放射される光の波長に対して透過性となる。勿論、この手法は他の波長における発光にも使用することができる。図10はVCSEL1020を含むデバイス1000を示し、VCSEL1020は、上面DBRミラー1022、底面DBRミラー1024、および透過性基板1026を有する。VCSEL1020は、フィルタ1030の上面上に直接搭載されており、一方、フィルタ1030は、PINフォトダイオード、即ち、p-i-nフォトダイオードのような、しかしこれに限定されないフォトダイオード1040の上面上に直接搭載されている。図11は、VCSEL基板が、VCSELによって放射される波長に対して吸収性となる場合を示す。これは、680nmから900nmの範囲の波長に適した手法であろう。この範囲では、これらの波長において吸収性であるGaAs基板上に、VCSELを正常に成長させることができる。勿論、この手法は他の波長における発光にも使用することができる。図11は、VCSEL1120を含むデバイス1100を示し、VCSEL1120は、上面DBRミラー1122、底面DBRミラー1124、および基板1126を有する。基板1126は、この基板内にエッチングされたチャネル1128を有することができる。少なくとも1つの実施形態では、チャネル1128は、VCSELのエピタキシャル層または底面DBRミラー1124まで通してエッチングすることができる。少なくとも1つの実施形態では、チャネル1128は、図示のようにV字状としてもよく、またはチャネル1128は他の形状を有してもよい。チャネル1128は、基板の長さ全体にわたって軸方向に延びることができ、または基板の一部にだけ延びるのでもよい。VCSEL1120はフィルタ1130の上面上に直接搭載され、一方、フィルタ1130は、PINフォトダイオード、即ち、p-i-nフォトダイオードのような、しかしこれに限定されないフォトダイオード1040の上面上に直接搭載される。図10または図11のいずれの場合においても、フィルタ1030、1130を完全に省略することができ、VCSELレーザをフォトダイオード1040、1140または検出器に直接搭載できることは注記してしかるべきである。これは、エタロン・フィルタの信号強調機構を必要としない自己混合センサの場合に、望ましいと言えよう。
【0062】
[077] 図12は、VCSEL、フィルタ、および検出器の直接積層によって、本開示の1つ以上の実施形態のセンサ・デバイス1200をパッケージングするための一実施形態を示す。1つ以上の実施形態において、デバイス1200は、筐体1210と、上面1222および底面1224を有するVCSEL1220と、フィルタまたはエタロン1230と、検出器1240と、複数の接点1260と、レンズ1270と、基板1280とを含む。少なくとも1つの実施形態では、VCSEL1220は、部分的底面発光VCSELであってもよい。VCSEL1220の底面1224は、フィルタまたはエタロン1230上に直接搭載することもでき、フィルタまたはエタロン1230を検出器1240に直接搭載して、デバイス・アセンブリ1250を形成することもできる。フィルタ1230は、検出器1240よりも物理的広がりが小さく、空隙が光学面(optical surfaces)間に、またはその他の適した手段によって維持されるように、接着剤を使用して検出器1240に搭載することができる。ある実施形態では、VCSEL1220も同様に、光学面間に空隙が維持されるように、エタロン・フィルタ1230の上面上に搭載することができる。デバイス・アセンブリ1250は、筐体1210内部に位置付けることができ、筐体1210は、この筐体の一端においてVCSEL1220付近にレンズ1270を含み、レンズ1270とは逆側の筐体の一端において、複数の接触パッド1260を有する基板1280を含む。レンズは、筐体1210内に一体的に形成するか、または筐体の開口において筐体1210に取り付けてもよい。検出器1240は、接着剤またはその他の適した手段によって、基板1280上に搭載することができ、少なくとも1つの接触パッド1260に検出器1240を電気的に接続することができる。基板1280は、ワイヤボンディングまたは導電性接着剤によって検出器1240および/またはVCSEL1220への電気接触を行う機構を内蔵することができる。フォトダイオードまたは検出器1240への電気接触を行わなければならない。フォトダイオードまたは検出器1240もp-n接合である。フォトダイオードが導電性基板上に製作される場合、接合部の一方側には、基板側に金属接点を堆積することによって、到達する(access)ことができ、一方基板側は、アセンブリが実装されるボードまたはサブマウント(sub-mount)上の導電性パッドに取り付けられる。電気的な取り付けは、はんだまたは導電性エポキシ材料を使用することによって、あるいは取り付けに相応しい他の手段によって行われる。フォトダイオードをフィルタよりも多少大きくして、周辺部においてワイヤボンディングすることによって、p-nフォトダイオードの他方側に接触を行う。少なくとも1つの実施形態では、VCSEL1220は接触パッド1260と電気的に連通する。
【0063】
[078] フィルタ1230がファブリ-ペロー・エタロン・フィルタである場合、フィルタ1230は、VCSEL1220によって放射された光を透過する。一実施形態では、フィルタ1230は、実質的に互いに平行な上面および底面を有することができる。フィルタ1230の波長依存性に対する制御を行うためには、フィルタ1230は、ガラス、サファイア、またはクオーツのようなシート材料で作られ、いずれかの側に、モデリングによって指定できるような、要求反射率を達成するように設計された反射性コーティングを有するものになる可能性が高い。ファブリ-ペロー・フィルタ用のこれらの材料は通例絶縁性であるので、VCSELに共平面接点(co-planar contact)1290を形成する(fabricate)ことができる。すなわち、p-n接合の両側への接触は、VCSELダイの上面1222から行われる。これは、チップの上面側から接合部のn-側にエッチングで掘り進み、VCSELダイの上面から下ってエッチングされた領域まで導かれる(routed)金属接点をパターニングすることによって行われるのが一般的(commonly)である。VCSELへの電気接点は、上面側処理陽極および陰極接続(topside processed anode and cathode connections)、または前面側および背面側接続の組み合わせ、ならびにエタロン表面上のパターン化メタライゼーションのいずれかを使用し、導電性エポキシによってワイヤボンディングすることができる。接点は、フィルタおよびVCSELのフットプリントの外側に位置するフォトダイオード・チップ上に金属接点パッドを有することにより、「デイジーチェーン接続」(daisy-chained)することができる。次いで、ワイヤボンディングによって、これに電気的に到達する(access)ことができる。基板、パッケージ、または担体1280を筐体1210にはめ込み、筐体1210は、デバイス・アセンブリ1250に対して環境保護または密閉保護を設ける。筐体1210は、VCSEL光を標的に導き、戻り反射光を収集してレーザ・キャビティに戻して結合する、平行化または合焦レンズ1270を取り付けるための備え(provisions)を有することができる。
【0064】
[079] 図13は、自己混合センサ・デバイス1300の他の実施形態を示す。自己混合センサ・デバイス1300は、内部キャビティ1312を定める筐体1310、VCSEL1320、フィルタ1330、VCSELの1つのアパーチャから放射された光に応答して光電流を生成する検出器1340、他のアパーチャから放射されたVCSEL光を標的(図示せず)に合焦する第1レンズ1350、およびフィルタ1330に入射する前に光を調整または平行化する第2レンズ1360を含む。VCSEL1320は、以上の実施形態の内いくつかにおいて説明したような、部分的底面発光VCSELであってもよく、または本開示の任意の他のVCSELであってもよい。フィルタ1330は、本明細書において説明したようなエタロンまたはその他のフィルタであってもよい。検出器1340は、本明細書において説明したような任意の形式の検出器とすればよく、自己混合変調の作用を受ける(imposed)シリコン光検出器、および第2レンズを含む。少なくとも1つの実施形態では、検出器1340を基板1370に搭載する。VCSEL1320、フィルタ1330、検出器1340、および少なくとも1つの第2レンズ1360は、成型または打ち抜きプラスチック、有機、あるいは金属製筐体1310内に組み込むことができる。筐体1310は、能動的な位置合わせを必要としない、位置合わせおよび受動組み立て(alignment and passive assembly)のための手段を備えている。種々のコンポーネントを筐体に取り付け(affix)、筐体によってそして筐体内で位置合わせすることができる。少なくとも1つの実施形態では、少なくともフィルタ1330および検出器1340が、筐体のキャビティ1312内に配置される。第2レンズ1360は、ガラスまたはプラスチックで作られた別個のコンポーネントとすることができ、あるいは、望ましくは、筐体1310の一体部分として成型する。少なくとも1つの実施形態では、筐体1310も基板1370に取り付けることができる。基板1370は、ワイヤボンディングまたは導電性接着剤によって、検出器1340および/またはVCSEL1320に電気的に接触するための機構を内蔵することができる。筐体1310は、ある実施形態では、ワイヤボンディングまたは導電性接着剤による、VCSEL1320および/または検出器1340との電気接続のための電気相互接続機構を組み込むこともできる。これらの電気相互接続機構は、ボンディング・「ランド」、ファンアウト、またはメタライズ基板(metallized substrate)を有する印刷配線ボード(PWB:printed wiring board)を含むことができるが、これに限定されるのではない。筐体1310は、ワイヤボンド用切り欠き(cutout)のような、隙間構造(clearance features)を組み込むこともできる。
【0065】
[080] 図13に示す本開示の一実施形態では、自己混合センサ・デバイス1300は射出成型プラスチック筐体1310を含み、その上に、部分的底面発光VCSEL1320が取り付けられている。VCSEL1320は、2:1の上面対底面発光比、またはその他の発光比を有することができる。少なくとも図13に示す実施形態では、筐体1310は、VCSEL1320を受容するために、リセスまたはその他の開口1314を有することができる。VCSELは、940nmの波長で光を放射する。しかしながら、他の波長も適している。VCSELの基板面には、パターン化金属膜を用いてメタライズすることができる。パターンは、VCSEL発光領域の中心上に位置合わせされた、例えば、直径20μmの一連のアパーチャである。直径20μmのアパーチャの内面には、窒化シリコンの1/4光波から成る反射防止コーティングを被覆してもよい。VCSELは、VCSELチップの上面上に、陽極および陰極電気接点を有することができる。VCSEL1320の直下には、射出成型筐体1310の一部として形成されたレンズ1360を配置することができる。レンズ1360の目的は、レーザ発光を平行化し、ビーム・サイズを広げることとして差し支えない。レンズ1360のVCSEL1320からの反対側には、波長フィルタとして機能するエタロン1330を設け、これも筐体1310に取り付けることができる。一例として、エタロン1330は、厚さが約500μmの溶融シリカとしてもよく、いずれかの側面に80%反射ミラーが被覆され、13.8のフィネス、0.04nmの帯域幅、および0.6nmの自由スペクトル範囲が得られる。この実施形態は、更に、シリコン検出器1340およびプラスチック筐体1310が取り付けられるサブマウントまたは基板1370も含む。組み立てるとき、検出器1340は、空隙を介在させて、エタロン1330の最終面と対面するようにするとよい。更に、基板1370は、デバイス、すなわち、レーザの陽極および陰極、ならびに検出器の陽極および陰極に対する電気インターフェースを備える。筐体の外部には、レーザ・ビームを標的において合焦させ、反射した戻り光を収集するレンズ1350があってもよい。レンズ1350は、戻り光の一部をVCSELキャビティ内に結合する役割も果たす。
【0066】
[081] 他の実施形態は、並列接続された、または個々にアドレス可能なVCSELデバイスのアレイを使用する。VCSEL、例えば、図7に示すものは、同じ基板上に個々にアドレス可能なレーザのアレイという形で製造することができ、あるいはチップ・レベルまたはパッケージ・レベルで並列に接続することができる。図14は、同じダイまたはチップ上に8×8アレイの個々にアドレス可能なVCSELレーザ1420を有するチップ1400のレイアウトである。外部レンズと共に使用するとき、この構成は、ビーム方向制御の一形態を実施するときに使用する(with which)手段を表す。ビーム方向制御は、移動部分がないセンサの視野において、センサの再方位付けを行わずに、1つまたは複数の空間的に分離した場所あるいは標的を探査するのは有利であろう。ビーム方向制御は、アレイにおける1つ以上のレーザを選択的にオンに切り替えることによって行うことができる。このアレイ構成は、本開示の他の実施形態および革新的な態様の多くと両立することができ、特に、基板発光によるフォトダイオードの統合、およびエタロン・フィルタを使用する自己混合強調と両立することができる。
【0067】
[082] 図15および図16は、図10および図11に示したものと同様である、モノリシック・アセンブリ(monolithic assembly)を採用した実施形態を示す。図15に示すように、自己混合センサ・デバイス1500は、第1ミラー1522、光生成キャビティ1524、および第2ミラー1528を有するレーザ1520と、前記第1ミラー1522から放射された光1532を部分的に反射性の標的1540上に合焦する第1光学レンズ1530と、モノリシック・フォトダイオード1550とを含む。モノリシック・フォトダイオード1550と第2ミラー1528との間には、光学フィルタ1560が配置されている。図16は、代替自己混合センサ・デバイス200の構成を示す。この場合も、自己混合センサ・デバイス200は、第1ミラー1622、光生成キャビティ1624、および第2ミラー1628を有するレーザ1620と、前記第1ミラー1622から放射された光1632を部分的に反射性の標的1640上に合焦する第1レンズ1630と、モノリシック・フォトダイオード1650と、ビーム・サンプリング・エレメント1660とを含む。ビーム・サンプリング・エレメント1660は、第1ミラー1622からの光1632の一部を、モノリシック・フォトダイオード1650に向けて方向転換する。一実施形態では、ビーム・サンプリング・エレメント1660をビーム・スプリッタとしてもよい。少なくとも1つの実施形態では、ビーム・スプリッタはレーザ1620の光軸に対してある角度で位置付けられる。少なくとも図示する実施形態では、フィルタ1670はレーザ1620およびモノリシック・フォトダイオード1650に接続されている。少なくとも1つの実施形態では、レーザ1620およびモノリシック・フォトダイオード1650は、フィルタ1670の同一側において、平行に位置付けられる。
【0068】
[083] 明確化のために、ある実施形態では、連続的に動作させなければならない訳ではなく、また放射されたレーザ・ビームが連続的に意図する標的に衝突または到達しなければならない訳でもない。むしろ、ある実施形態は、このように放射されたレーザが実際に意図する標的に衝突したときだけ、または衝突した場合にのみ、あるいはこのように放射されたレーザ・ビームが実際に自己混合信号を生成させる時間スロットの間だけ、動作して、改良自己混合信号(1つまたは複数)を供給するのでもよい。他の実施形態では、必要に応じて、手動で、例えば、人間の操作員によって、意図する標的に向けてレーザ・ビームを誘導してもよく、または、例えば、傾斜メカニズム(slanting mechanism)(例えば、モータまたは機械式アームを有する)によって、意図する標的に向けてレーザ・ビームを自動的に誘導するのでもよい。
【0069】
[084] ある実施形態では、利用されるレーザ(1つまたは複数)は、レーザから放射されたレーザ・ビームまたは光が人間の身体、顔面、または目に当たっても、このようなレーザが危害や損傷をその人間に与えることがないように、「安全レーザ」(safe laser)だけとする。ある実施形態では、人間が安全ゴーグルまたは安全めがね、あるいはその他の身体被覆器具(body-covering gear)を装着して特定の身体部分を保護しなければ、レーザを使用できなくすることもできるが、これは必ずしも他の実施形態では要求されない場合もある。加えてまたは代わりに、ある実施形態では、例えば、自動照準メカニズムを使用することによって、あるいは手動でレーザ・ビームを安全なまたは安全性が高い身体部分、もしくは標的に向けて照準を定めることによって、人間以外の標的(1つまたは複数)に向けて、または狙っても安全なまたは安全性が高い(safe or safer)人間の領域に向けてレーザの照準が定められる場合でなければ、または定められるときでなければ、レーザを利用できなくすることもできる。
【0070】
[085] 本明細書において説明したいずれの実施形態のいずれの特徴であっても、いずれの実施形態においても使用することができ、他のいずれの実施形態のいずれの特徴とでも一緒に使用することができる。
【0071】
[086] 本明細書において使用する場合、「実質的に」(substantially)または「概略的に」(generally)という用語は、アクション、特徴(characteristic)、特性(property)、状態、構造、品目、または結果の完全なあるいはほぼ完全な範囲(extent)もしくは度合い(degree)を指す。例えば、「実質的に」または「概略的に」包囲されている物体とは、その物体が完全に包囲されている、またはほぼ完全に包囲されていることを意味する。絶対的な完全さからの逸脱の正確に許容可能な度合いは、場合によっては、個々のコンテキストに依存することもある。しかしながら、一般的に言って、完全に近い(nearness of completion)とは、絶対的かつ総合的な完全が得られる場合と、概略的に同じ全体的な結果が得られるような場合である。「実質的に」または「概略的に」の使用は、アクション、特徴、特性、状態、構造、項目、または結果の完全なあるいはほぼ完全な欠如を指す否定的な含意で使用されるときも、等しく適用可能である。例えば、「ある要素が実質的にないまたは概略的にない」要素、組み合わせ、実施形態、または組成であっても、その重要な影響が全般的にない限り、そのような要素を実際には含有してもよい。
【0072】
[087] 以上の説明では、例示および説明の目的に限って、本開示の種々の実施形態を紹介した。これらは、網羅的であることも、開示した形態そのものに本発明を限定することも意図していない。以上の教示を考慮すれば、明白な変更または変形が可能である。種々の実施形態は、本開示の主題(principal)およびそれらの実際の応用の裁量の例示を提供するため、そして当業者が、種々の実施形態を、想定される特定の使用に適するように種々の変更を加えて、利用することを可能にするために、選択および説明されたものである。このような変更および変形の全ては、公正に、合法的に、そして公平に権利が与えられる広さにしたがって解釈するときの、添付した特許請求の範囲によって決定される、本開示の範囲内に入るものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16