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特許7187327ヒト化抗CD19キメラ抗原受容体を使用するがんの処置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】ヒト化抗CD19キメラ抗原受容体を使用するがんの処置
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20221205BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20221205BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221205BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221205BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221205BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20221205BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20221205BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221205BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20221205BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20221205BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221205BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20221205BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221205BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20221205BHJP
   C12N 15/867 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
A61K35/17 Z
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61K45/00
A61K48/00
A61P35/00
A61P35/02
C07K14/705
C07K14/725
C07K16/28
C07K16/46
C07K19/00
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/861 Z
C12N15/867 Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019001925
(22)【出願日】2019-01-09
(62)【分割の表示】P 2016503288の分割
【原出願日】2014-03-15
(65)【公開番号】P2019106995
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2019-01-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-22
(31)【優先権主張番号】61/838,537
(32)【優先日】2013-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/802,629
(32)【優先日】2013-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】500429103
【氏名又は名称】ザ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシティ オブ ペンシルバニア
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー・ブログドン
(72)【発明者】
【氏名】カール・エイチ・ジューン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・レーヴ
(72)【発明者】
【氏名】マルチェラ・モーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ショラー
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】上條 肇
【審判官】宮岡 真衣
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-518404(JP,A)
【文献】特開2012-95654(JP,A)
【文献】国際公開第2012/079000(WO,A1)
【文献】Hematology,2012,Vol.2012,Issue1,p.143-151
【文献】Molecular Immunology,1997,Vol.34,No.16-17,p.1157-1165
【文献】J Immunother.,2009,Vol.32,No.7,p.689-702
【文献】The Journal of Immunology,2009,Vol.183,p.5563-5574
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00 - 19/00
C12N 15/00 - 15/90
A61K 37/00 - 37/66
A61K 41/00 - 45/08
A61K 48/00
A61K 39/00 - 39/44
A61K 49/00 - 49/04
A61P 1/00 - 43/00
CAPlus/REGISTRY/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/WPIDS(STN)
UniProt/Geneseq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)、軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)、重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、および重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)を含む、ヒト化抗CD19結合ドメインであって、前記HC CDR1が、配列番号19のアミノ酸配列を含み、前記HC CDR2が、配列番号21~23から選択されるアミノ酸配列を含み、前記HC CDR3が、配列番号24のアミノ酸配列を含み、前記LC CDR1が、配列番号25のアミノ酸配列を含み、前記LC CDR2が、配列番号26のアミノ酸配列を含み、前記LC CDR3が、配列番号27のアミノ酸配列を含み、抗CD19結合ドメインが、
(i)示差走査蛍光測定法を使用して融解温度(Tm)を測定することによって検討されるとき、配列番号59のscFvよりも、摂氏5度以上高い熱安定性を有するscFvであり、そして
(ii)配列番号59のアミノ酸配列を有するscFvのヒトCD19に対する親和性を保持する、
ヒト化抗CD19結合ドメイン。
【請求項2】
ヒト化抗CD19結合ドメインが、
(a)(i)配列番号1~12のいずれかのアミノ酸配列に記載されているか、もしくは
(ii)配列番号1~12のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
軽鎖可変領域;ならびに/または
(b)(i)配列番号1~12のいずれかのアミノ酸配列に記載されているか、もしくは
(ii)配列番号1~12のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
重鎖可変領域
を含む、請求項1に記載のヒト化抗CD19結合ドメイン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヒト化抗CD19結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む、単離されたキメラ抗原受容体(CAR)分子。
【請求項4】
膜貫通ドメインが:
(i)T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137およびCD154からなる群より選択されるタンパク質である、
(ii)配列番号15の配列を含む;
(iii)配列番号15のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変であるが20、10もしくは5個以下の改変を有するアミノ酸配列、または配列番号15のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む;および/または
(iv)配列番号14または配列番号102、またはそれと95~99%の同一性を有する配列を含むヒンジ領域によって抗CD19結合ドメインに接続されている、
請求項に記載の単離されたCAR分子。
【請求項5】
(i)共刺激ドメインが、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、および4-1BB(CD137)からなる群より選択されるタンパク質の機能的なシグナル伝達ドメインを含み:
(ii)共刺激ドメインが、配列番号16のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
共刺激ドメインをさらに含む、請求項3または4に記載の単離されたCAR分子。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項に記載の単離されたCAR分子であって、
(i)細胞内シグナル伝達ドメインが、4-1BBの機能的なシグナル伝達ドメインおよび/またはCD3ゼータの機能的なシグナル伝達ドメインを含む;
(ii)細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号16のアミノ酸配列および/または配列番号17もしくは配列番号43のアミノ酸配列を含む;
(iii)細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号16もしくは配列番号51のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列および/もしくは配列番号17もしくは配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む;
(iv)細胞内シグナル伝達ドメインが、配列番号16もしくは配列番号51のアミノ酸配列および配列番号17もしくは配列番号43のアミノ酸配列を含み、細胞内シグナル伝達ドメインを含む配列が、同じフレーム中で単一のポリペプチド鎖として発現される;および/または
(v)単離されたCAR分子が、配列番号13のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むリーダー配列をさらに含む、
単離されたCAR分子。
【請求項7】
CAR分子が、配列番号13のリーダー配列を含まない、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、または配列番号42のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項3~6のいずれか一項に記載の単離されたCAR分子。
【請求項8】
請求項3~7のいずれか一項に記載のCAR分子をコードする単離された核酸分子。
【請求項9】
(i)膜貫通ドメインをコードする核酸配列が、配列番号56のヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む;
(ii)抗CD19結合ドメインが、ヒンジ領域によって膜貫通ドメインに接続されており、さらに、ヒンジ領域をコードする核酸配列が、配列番号55のヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む;
(iii)CAR分子が、共刺激ドメインをさらに含み、さらに、共刺激ドメインをコードする核酸配列が、配列番号60のヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む;および/または
(iv)細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列が、配列番号60のヌクレオチド配列、もしくはそれと少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、および/または配列番号101もしくは配列番号44のヌクレオチド配列、もしくはそれと少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む、
請求項に記載の単離された核酸分子。
【請求項10】
請求項8または9に記載の核酸分子によってコードされた単離されたポリペプチド。
【請求項11】
請求項3~7のいずれか一項に記載のCAR分子をコードする核酸分子を含むベクター。
【請求項12】
(i)ベクターが、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターからなる群より選択される;
(ii)ベクターが、配列番号100の配列を含むEF-1プロモーターをさらに含む;
(iii)ベクターが、インビトロで転写されたベクターである;
(iv)ベクター中の核酸配列が、ポリ(A)テールをさらに含む;および/または
(v)ベクター中の核酸配列が、3’UTRをさらに含む、
請求項11に記載のベクター。
【請求項13】
請求項11または12に記載のベクターを含む細胞。
【請求項14】
細胞が、ヒトT細胞である、請求項13に記載の細胞。
【請求項15】
阻害分子を阻害することによってCAR発現細胞の活性を強化する薬剤をさらに発現する請求項13または14に記載の細胞であって、前記薬剤が第二のポリペプチドと会合している第一のポリペプチドを含み、前記第一のポリペプチドがPD1、LAG3、CTLA4、CD160、BTLA、LAIR1、TIM3、2B4およびTIGIT、またはこれらのうちいずれかのフラグメントからなる群より選択される阻害分子を含み、前記第二のポリペプチドが細胞に陽性シグナルを提供する、細胞。
【請求項16】
(i)請求項11または12に記載のベクターでT細胞を形質導入することを含む、細胞を作製する;または
(ii)インビトロで転写されたRNAまたは合成RNAを細胞に導入することを含む、RNAが加工された細胞の集団を生成する、ここで、RNAは、請求項3~7のいずれか一項に記載のCAR分子をコードする核酸を含む、
インビトロで行われる、方法。
【請求項17】
CD19発現に関連する疾患を処置するための薬剤の製造における使用のための、請求項1または2に記載の抗CD19結合ドメイン、請求項3~7のいずれか一項に記載の単離されたCAR分子、請求項8または9に記載の単離された核酸分子、請求項10に記載の単離されたポリペプチド、請求項11または12に記載のベクター、請求項13~15のいずれか一項に記載の細胞または請求項3~7のいずれか一項に記載のCAR分子発現細胞の使用。
【請求項18】
CD19発現に関連する疾患が:
(i)がんもしくは悪性腫瘍、前がん状態、およびCD19の発現に関連する非がん関連の徴候からなる群より選択されるか;または
(ii)B細胞急性リンパ芽球性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ芽球性白血病(「TALL」)、急性リンパ芽球性白血病(ALL);慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL);B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞の新生物、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ヘアリーセル白血病、小細胞型または大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性のリンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、脊髄形成異常および骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽細胞リンパ腫、形質細胞様樹状細胞の新生物、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、および前白血病状態からなる群より選択される血液がん、ならびにそれらの組み合わせである、
請求項17に記載の使用。
【請求項19】
CD19発現に関連する疾患を処置するための薬剤の製造における使用のための、請求項13~15のいずれか一項に記載の細胞または請求項3~7のいずれか一項に記載のCAR分子発現細胞の使用であって、細胞が、
(i)CAR分子発現細胞の効能を増加させる;
(ii)CAR分子発現細胞の投与に関連する1つまたは複数の副作用を改善する;および/または
(iii)CD19発現に関連する疾患を処置する、
薬剤と組み合わせて投与される、使用。
【請求項20】
細胞が:
(i)PD1の細胞外ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインを含むPD1 CAR;
(ii)GITRアゴニスト;
(iii)PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160および2B4の1以上を阻害する薬剤;
(iv)IL-6阻害剤;または
(v)mTOR阻害剤
と組み合わせて投与される、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
CAR分子発現細胞の有効量を哺乳動物に投与することを含む哺乳動物において抗腫瘍免疫を提供する方法のための医薬の製造における使用のための、請求項13~15のいずれか一項に記載の細胞または請求項3~7のいずれか一項に記載のCAR分子発現細胞の使用。
【請求項22】
(i)細胞が自己T細胞である;
(ii)細胞が同種異系のT細胞である;および/または
(iii)細胞がヒトに投与される、
請求項17~21のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年3月16日付けで出願された米国特許出願第61/802,629号、および2013年6月24日付けで出願された米国特許出願第61/838,537号の優先権を主張するものであり、これらの出願それぞれの全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出された配列表を含有し、その全体は参照により組み入れられる。2014年3月14日に作成された前記ASCIIのコピーは、N2067-7002WO_SL.txtという名称であり、サイズは228,415バイトである。
【0003】
本発明は、一般的に、表面抗原分類19タンパク質(CD19)の発現に関連する疾患を処置するための、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように加工されたT細胞の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
B細胞悪性腫瘍を有する多くの患者は、標準的な治療では治療できない。加えて、従来の処置選択肢は、重篤な副作用があることが多い。がん免疫療法において臨床的な有効性を達成する試みがなされてきたが、数々の障害のために、それは極めて難しい目標になっている。何百種ものいわゆる腫瘍抗原が同定されてきたが、これらは一般的に自己由来であるため、免疫原性は低い。さらに、腫瘍は、免疫攻撃の開始および伝播に対して自分自身を敵にする数種のメカニズムを使用する。
【0005】
B細胞悪性腫瘍などのがん細胞上の好適な細胞表面分子にT細胞をリダイレクトすることに頼るキメラ抗原受容体(CAR)改変自己T細胞(CART)療法を使用した近年の開発は、B細胞悪性腫瘍および他のがんを処置するのに免疫系の力を利用することにおいて有望な結果を示している[例えば、Sadelain et al., Cancer Discovery 3:388-398 (2013)を参照]。マウス由来CART19(すなわち、「CTL019」)の臨床結果は、CLLに罹っている患者、加えて小児性ALL患者で完全寛解を確立することにおいて有望であることが示されている[例えば、Kalos et al., Sci Transl Med 3:95ra73 (2011), Porter et al., NEJM 365:725-733 (2011), Grupp et al., NEJM 368:1509-1518 (2013)を参照]。遺伝子改変されたT細胞上のキメラ抗原受容体の、標的化された細胞を認識して破壊する能力の他にも、治療的なT細胞治療の成功には、長期にわたり増殖し存在し続ける能力と、逃亡する白血病細胞をさらにモニターする能力を有することが必要である。T細胞の品質の変わりやすさは、それがアネルギー、抑制または消耗の結果かどうかにかかわらず、CARで形質転換したT細胞の性能に影響を与えると予想されるが、この段階において熟練した技術者は、それらを限定的にしか制御してこなかった。CARで形質転換した患者のT細胞が有効であるためには、それらが存在し続けて、CARの抗原に応答して増殖する能力を維持する必要がある。ALL患者のT細胞は、マウスscFvを含むCART19と共にこれを達成できることが示されている[例えば、Grupp et al., NEJM 368:1509-1518 (2013)を参照]。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、患者において免疫反応を惹起しないと予想され、長期使用しても安全であり、B細胞由来のがんを処置するための公知のCART療法と比較してより優れた臨床的な有効性を維持または保有する、キメラ抗原受容体(CAR)コンストラクトに統合された表面抗原分類19タンパク質(CD19)に結合する最適化されヒト化された抗体フラグメント(例えば、scFv)を提供することによって、患者における免疫反応を制御することに取り組むものである。本発明はさらに、CD19の発現に関連する血液がんを処置するための、CARに統合されたCD19に結合するヒト化抗体フラグメントを発現するように加工されたT細胞の使用に関する(OMIM受託番号107265、Swiss Prot受託番号P15391)。
【0007】
したがって、一態様において、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離された核酸分子であって、CARは、ヒト化抗CD19結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン)を包含する抗体または抗体フラグメントを含む、核酸分子に関する。一実施形態において、CARは、本明細書で説明されるヒト化抗CD19結合ドメイン、本明細書で説明される膜貫通ドメイン、および本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン)を包含する抗体または抗体フラグメントを含む。
【0008】
一実施形態において、コードされたヒト化抗CD19結合ドメインは、本明細書で説明されるヒト化抗CD19結合ドメインの1つもしくは複数の(例えば、3つ全ての)軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)、および軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)、ならびに/または本明細書で説明されるヒト化抗CD19結合ドメインの1つもしくは複数の(例えば、3つ全ての)重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、および重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)を含み、例えば、ヒト化抗CD19結合ドメインは、1つまたは複数の、例えば3つ全てのLC CDR、ならびに1つまたは複数の、例えば3つ全てのHC CDRを含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、少なくともHC CDR2を含む。一実施形態において、コードされたヒト化抗CD19結合ドメインは、本明細書で説明されるヒト化抗CD19結合ドメインの1つまたは複数の(例えば、3つ全ての)重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、および重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)を含み、例えば、コードされたヒト化抗CD19結合ドメインは、それぞれ本明細書で説明されるHC CDR1、HC CDR2およびHC CDR3を含む2つの可変重鎖領域を有する。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、少なくともHC CDR2を含む。一実施形態において、コードされた軽鎖可変領域は、VK3_L25生殖細胞系配列の1つ、2つ、3つまたは4つ全てのフレームワーク領域を含む。一実施形態において、コードされた軽鎖可変領域は、改変(例えば、置換、例えば、配列番号58の軽鎖可変領域における対応する位置で見出される1つまたは複数のアミノ酸の置換、例えば、71位および87位の1つまたは複数における置換)を有する。一実施形態において、コードされた重鎖可変領域は、VH4_4-59生殖細胞系配列の1つ、2つ、3つまたは4つ全てのフレームワーク領域を含む。一実施形態において、コードされた重鎖可変領域は、改変(例えば、置換、例えば、配列番号58の重鎖可変領域における対応する位置で見出される1つまたは複数のアミノ酸の置換、例えば、71位、73位および78位の1つまたは複数における置換)を有する。一実施形態において、コードされたヒト化抗CD19結合ドメインは、本明細書で説明される(例えば、表3に記載の)ヒト化軽鎖可変領域および/または本明細書で説明される(例えば、表3に記載の)ヒト化重鎖可変領域を含む。一実施形態において、コードされたヒト化抗CD19結合ドメインは、本明細書で説明される(例えば、表3に記載の)ヒト化重鎖可変領域、例えば、少なくとも2つの本明細書で説明される(例えば、表3に記載の)ヒト化重鎖可変領域を含む。一実施形態において、コードされた抗CD19結合ドメインは、表3のアミノ酸配列の軽鎖および重鎖を含むscFvである。ある実施形態において、抗CD19結合ドメイン(例えば、scFv)は、表3に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが30、20もしくは10個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、もしくは表3のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域;および/または表3に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが30、20もしくは10個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、もしくは表3のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態において、コードされたヒト化抗CD19結合ドメインは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択される配列、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインをコードする核酸配列は、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号70、配列番号71および配列番号72からなる群より選択される配列、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、コードされたヒト化抗CD19結合ドメインは、scFvであり、本明細書で説明される、例えば表3に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域は、本明細書で説明される、例えば表3に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域に、リンカー、例えば本明細書で説明されるリンカーを介して付着している。一実施形態において、コードされたヒト化抗CD19結合ドメインは、(Gly-Ser)nリンカーを包含し、ここでnは、1、2、3、4、5、または6であり、好ましくは3または4である(配列番号53)。scFvの軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、例えば、以下の配置:軽鎖可変領域-リンカー-重鎖可変領域または重鎖可変領域-リンカー-軽鎖可変領域のいずれであってもよい。
【0009】
一実施形態において、コードされた膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD27、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137およびCD154からなる群より選択されるタンパク質の膜貫通ドメインである。一実施形態において、コードされた膜貫通ドメインは、配列番号15の配列を含む。一実施形態において、コードされた膜貫通ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが20、10もしくは5個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、または配列番号15のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、膜貫通ドメインをコードする核酸配列は、配列番号56の配列、またはそれと95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0010】
一実施形態において、コードされた抗CD19結合ドメインは、ヒンジ領域、例えば本明細書で説明されるヒンジ領域によって膜貫通ドメインに接続されている。一実施形態において、コードされたヒンジ領域は、配列番号14もしくは配列番号45もしくは配列番号47、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、ヒンジ領域をコードする核酸配列は、配列番号55もしくは配列番号46もしくは配列番号48の配列、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0011】
一実施形態において、単離された核酸分子は、共刺激ドメインをコードする配列をさらに含む。一実施形態において、共刺激ドメインは、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、および4-1BB(CD137)からなる群より選択されるタンパク質から得られた機能的なシグナル伝達ドメインである。一実施形態において、コードされた共刺激ドメインは、配列番号16の配列を含む。一実施形態において、コードされた共刺激ドメインは、配列番号16のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが20、10または5個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、または配列番号16のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、共刺激ドメインをコードする核酸配列は、配列番号60の配列、またはそれと95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、単離された核酸分子は、細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメインをコードする配列をさらに含む。一実施形態において、コードされた細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BBの機能的なシグナル伝達ドメインおよび/またはCD3ゼータの機能的なシグナル伝達ドメインを含む。一実施形態において、コードされた細胞内シグナル伝達ドメインは、CD27の機能的なシグナル伝達ドメインおよび/またはCD3ゼータの機能的なシグナル伝達ドメインを含む。一実施形態において、コードされた細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号16もしくは配列番号51の配列、および/または配列番号17もしくは配列番号43の配列を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号16もしくは配列番号51のアミノ酸配列および/もしくは配列番号17もしくは配列番号43のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが20、10もしくは5個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、または配列番号16もしくは配列番号51のアミノ酸配列および/もしくは配列番号17もしくは配列番号43のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、コードされた細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号16または配列番号51の配列および配列番号17または配列番号43の配列を含み、ここで細胞内シグナル伝達ドメインを含む配列は、同じフレーム中で単一のポリペプチド鎖として発現される。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列は、配列番号60の配列、もしくはそれらと95~99%の同一性を有する配列、および/または配列番号101もしくは配列番号44の配列、もしくはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列は、配列番号52の配列、もしくはそれらと95~99%の同一性を有する配列、および/または配列番号101もしくは配列番号44の配列、もしくはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0012】
別の態様において、本発明は、リーダー配列、例えば、本明細書で説明されるリーダー配列、例えば、配列番号13のリーダー配列;本明細書で説明されるヒト化抗CD19結合ドメイン、例えば、本明細書で説明されるLC CDR1、LC CDR2、LC CDR3、HC CDR1、HC CDR2およびHC CDR3を含むヒト化抗CD19結合ドメイン、例えば表3に記載のヒト化抗CD19結合ドメイン、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列;本明細書で説明されるヒンジ領域、例えば、配列番号14または配列番号45のヒンジ領域;本明細書で説明される膜貫通ドメイン、例えば、配列番号15を含む膜貫通ドメイン;および細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメインを含む、CARコンストラクト(constuct)をコードする単離された核酸分子に関する。一実施形態において、コードされた細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメイン、例えば本明細書で説明される共刺激ドメイン、例えば配列番号16もしくは配列番号51の配列を有する4-1BB共刺激ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメイン、例えば本明細書で説明される一次シグナル伝達ドメイン、例えば、配列番号17もしくは配列番号43の配列を有するCD3ゼータ刺激ドメインを含む。一実施形態において、CARコンストラクトをコードする単離された核酸分子は、配列番号54の核酸配列、またはそれと95~99%の同一性を有する配列によってコードされたリーダー配列を包含する。一実施形態において、CARコンストラクトをコードする単離された核酸分子は、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号69、配列番号70、配列番号71、および配列番号72の核酸配列、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列によってコードされたヒト化抗CD19結合ドメイン配列を包含する。一実施形態において、CARコンストラクトをコードする単離された核酸分子は、配列番号56の核酸配列、またはそれと95~99%の同一性を有する配列によってコードされた膜貫通配列を包含する。一実施形態において、CARコンストラクトをコードする単離された核酸分子は、配列番号60の核酸配列、もしくはそれらと95~99%の同一性を有する配列および/または配列番号101もしくは配列番号44の核酸配列、もしくはそれらと95~99%の同一性を有する配列によってコードされた細胞内シグナル伝達ドメイン配列を包含する。
【0013】
一実施形態において、単離された核酸分子は、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41もしくは配列番号42のCARアミノ酸配列、または配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41もしくは配列番号42のアミノ酸配列のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、10、15、20もしくは30個の改変(例えば、置換)であるが60、50もしくは40個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、またはそれらと85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を含む(例えば、からなる)。
【0014】
一実施形態において、単離された核酸分子は、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、もしくは配列番号96の核酸配列、または配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、もしくは配列番号96の核酸配列と85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有する核酸配列を含む(例えば、からなる)。
【0015】
一態様において、本発明は、ヒト化抗CD19結合ドメインをコードする単離された核酸分子であって、抗CD19結合ドメインは、本明細書で説明される抗CD19結合ドメインの軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)、および軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)の1つまたは複数(例えば、3つ全て)、ならびに本明細書で説明される抗CD19結合ドメインの重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、および重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)の1つまたは複数(例えば、3つ全て)を含み、例えば、ヒト化抗CD19結合ドメインは、1つまたは複数の、例えば3つ全てのLC CDRおよび1つまたは複数の、例えば3つ全てのHC CDRを含む、核酸分子に関する。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、少なくともHC CDR2を含む。一実施形態において、軽鎖可変領域は、VK3_L25生殖細胞系配列の1つ、2つ、3つまたは4つ全てのフレームワーク領域を含む。一実施形態において、軽鎖可変領域は、改変(例えば、置換、例えば、配列番号58のマウス軽鎖可変領域における対応する位置で見出される1つまたは複数のアミノ酸の置換、例えば、71位および87位の1つまたは複数における置換)を有する。一実施形態において、重鎖可変領域は、VH4_4-59生殖細胞系配列の1つ、2つ、3つまたは4つ全てのフレームワーク領域を含む。一実施形態において、重鎖可変領域は、改変(例えば、置換、例えば、配列番号58のマウス重鎖可変領域における対応する位置で見出される1つまたは複数のアミノ酸の置換、例えば、71位、73位および78位の1つまたは複数における置換)を有する。一実施形態において、コードされたヒト化抗CD19結合ドメインは、本明細書で説明される(例えば、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12に記載の)軽鎖可変領域および/または本明細書で説明される(例えば、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12に記載の)重鎖可変領域を含む。一実施形態において、コードされたヒト化抗CD19結合ドメインは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12のアミノ酸配列の軽鎖および重鎖を含むscFvである。ある実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメイン(例えば、scFv)は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12で提供される軽鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが30、20もしくは10個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、もしくは配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域;および/または配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12で提供される重鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが30、20もしくは10個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、もしくは配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12からなる群より選択される配列、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインをコードする核酸配列は、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71および配列番号72からなる群より選択される配列、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0016】
別の態様において、本発明は、上記核酸配列によってコードされた単離されたポリペプチド分子に関する。一実施形態において、単離されたポリペプチド分子は、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、および配列番号42からなる群より選択される配列を含む。一実施形態において、単離されたポリペプチドは、配列番号31の配列を含む。一実施形態において、単離されたポリペプチドは、配列番号32の配列を含む。一実施形態において、単離されたポリペプチド分子は、配列番号35の配列を含む。一実施形態において、単離されたポリペプチド分子は、配列番号36の配列を含む。一実施形態において、単離されたポリペプチド分子は、配列番号37の配列を含む。
【0017】
別の態様において、本発明は、ヒト化抗CD19結合ドメイン(例えば、CD19に特異的に結合するヒト化抗体または抗体フラグメント)、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む、単離されたキメラ抗原受容体(CAR)分子に関する。一実施形態において、CARは、本明細書で説明されるヒト化抗CD19結合ドメイン(例えば、本明細書で説明されているようなCD19に特異的に結合するヒト化抗体または抗体フラグメント)、本明細書で説明される膜貫通ドメイン、および本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書で説明される共刺激ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン)を包含する抗体または抗体フラグメントを含む。
【0018】
一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、本明細書で説明されるヒト化抗CD19結合ドメインの軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)、および軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)の1つまたは複数(例えば、3つ全て)、および本明細書で説明されるヒト化抗CD19結合ドメインの重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、および重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)の1つまたは複数(例えば、3つ全て)を含み、例えば、ヒト化抗CD19結合ドメインは、1つまたは複数の、例えば3つ全てのLC CDRおよび1つまたは複数の、例えば3つ全てのHC CDRを含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、少なくともHC CDR2を含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、本明細書で説明されるヒト化抗CD19結合ドメインの重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、および重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)の1つまたは複数(例えば、3つ全て)を含み、例えば、ヒト化抗CD19結合ドメインは、それぞれ本明細書で説明されるHC CDR1、HC CDR2およびHC CDR3を含む2つの可変重鎖領域を有する。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、少なくともHC CDR2を含む。一実施形態において、軽鎖可変領域は、VK3_L25生殖細胞系配列の1つ、2つ、3つまたは4つ全てのフレームワーク領域を含む。一実施形態において、軽鎖可変領域は、改変(例えば、置換、例えば、配列番号58のマウス軽鎖可変領域における対応する位置で見出される1つまたは複数のアミノ酸の置換、例えば、71位および87位の1つまたは複数における置換)を有する。一実施形態において、重鎖可変領域は、VH4_4-59生殖細胞系配列の1つ、2つ、3つまたは4つ全てのフレームワーク領域を含む。一実施形態において、重鎖可変領域は、改変(例えば、置換、例えば、配列番号58のマウス重鎖可変領域における対応する位置で見出される1つまたは複数のアミノ酸の置換、例えば、71位、73位および78位の1つまたは複数における置換)を有する。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、本明細書で説明される(例えば、表3に記載の)軽鎖可変領域および/または本明細書で説明される(例えば、表3に記載の)重鎖可変領域を含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、表3のアミノ酸配列の軽鎖および重鎖を含むscFvである。ある実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメイン(例えば、scFv)は、表3に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが30、20もしくは10個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、もしくは表3のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域;および/または表3に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが30、20もしくは10個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、もしくは表3のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11および配列番号12からなる群より選択される配列、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、scFvであり、本明細書で説明される、例えば表3に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域は、本明細書で説明される、例えば表3に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域に、リンカー、例えば本明細書で説明されるリンカーを介して付着している。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、(Gly-Ser)nリンカーを包含し、ここでnは、1、2、3、4、5、または6であり、好ましくは3または4である(配列番号53)。scFvの軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、例えば、以下の配置:軽鎖可変領域-リンカー-重鎖可変領域または重鎖可変領域-リンカー-軽鎖可変領域のいずれであってもよい。
【0019】
一実施形態において、単離されたCAR分子は、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137およびCD154からなる群より選択されるタンパク質の膜貫通ドメインを含む。一実施形態において、膜貫通ドメインは、配列番号15の配列を含む。一実施形態において、膜貫通ドメインは、配列番号15のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが20、10もしくは5個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、または配列番号15のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0020】
一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、ヒンジ領域、例えば本明細書で説明されるヒンジ領域によって膜貫通ドメインに接続されている。一実施形態において、コードされたヒンジ領域は、配列番号14または配列番号45、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0021】
一実施形態において、単離されたCAR分子は、共刺激ドメイン、例えば本明細書で説明される共刺激ドメインをコードする配列をさらに含む。一実施形態において、共刺激ドメインは、OX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)および4-1BB(CD137)からなる群より選択されるタンパク質の機能的なシグナル伝達ドメインを含む。一実施形態において、共刺激ドメインは、配列番号16の配列を含む。一実施形態において、共刺激ドメインは、配列番号51の配列を含む。一実施形態において、共刺激ドメインは、配列番号16または配列番号51のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが20、10もしくは5個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、または配列番号16もしくは配列番号51のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0022】
一実施形態において、単離されたCAR分子は、細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメインをコードする配列をさらに含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BBの機能的なシグナル伝達ドメインおよび/またはCD3ゼータの機能的なシグナル伝達ドメインを含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号16の配列および/または配列番号17の配列を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号16の配列および/または配列番号43の配列を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD27の機能的なシグナル伝達ドメインおよび/またはCD3ゼータの機能的なシグナル伝達ドメインを含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号51の配列および/または配列番号17の配列を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号51の配列および/または配列番号43の配列を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号16もしくは配列番号51のアミノ酸配列および/もしくは配列番号17もしくは配列番号43のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが20、10もしくは5個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、または配列番号16もしくは配列番号51のアミノ酸配列および/もしくは配列番号17もしくは配列番号43のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号16または配列番号51の配列および配列番号17または配列番号43の配列を含み、ここで細胞内シグナル伝達ドメインを含む配列は、同じフレーム中で単一のポリペプチド鎖として発現される。
【0023】
一実施形態において、単離されたCAR分子は、リーダー配列、例えば、本明細書で説明されるリーダー配列をさらに含む。一実施形態において、リーダー配列は、配列番号13のアミノ酸配列、または配列番号13のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0024】
別の態様において、本発明は、リーダー配列、例えば、本明細書で説明されるリーダー配列、例えば、配列番号13のリーダー配列またはそれと95~99%の同一性を有するリーダー配列;本明細書で説明されるヒト化抗CD19結合ドメイン、例えば、本明細書で説明されるLC CDR1、LC CDR2、LC CDR3、HC CDR1、HC CDR2およびHC CDR3を含むヒト化抗CD19結合ドメイン、例えば表3に記載のヒト化抗CD19結合ドメイン、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列;ヒンジ領域、例えば本明細書で説明されるヒンジ領域、例えば、配列番号14のヒンジ領域またはそれらと95~99%の同一性を有するヒンジ領域;膜貫通ドメイン、例えば、本明細書で説明される膜貫通ドメイン、例えば、配列番号15の配列またはそれと95~99%の同一性を有する配列を有する膜貫通ドメイン;細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、共刺激ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン)を含む、単離されたCAR分子に関する。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメイン、例えば本明細書で説明される共刺激ドメイン、例えば配列番号16もしくは配列番号51の配列、もしくはそれらと95~99%同一性を有する配列を有する4-1BB共刺激ドメイン、および/または一次シグナル伝達ドメイン、例えば本明細書で説明される一次シグナル伝達ドメイン、例えば、配列番号17もしくは配列番号43の配列もしくはそれらと95~99%の同一性を有する配列を有するCD3ゼータ刺激ドメインを含む。
【0025】
一実施形態において、単離されたCAR分子は、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41もしくは配列番号42のアミノ酸配列、または配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41もしくは配列番号42のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、10、15、20もしくは30個の改変(例えば、置換)であるが60、50または40個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、または配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41もしくは配列番号42のアミノ酸配列と85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む(例えば、からなる)。
【0026】
一態様において、本発明は、本明細書で説明される抗CD19結合ドメインの軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)、および軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)の1つまたは複数(例えば、3つ全て)、ならびに本明細書で説明されるヒト化抗CD19結合ドメインの重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、および重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)の1つまたは複数(例えば、3つ全て)を含むヒト化抗CD19結合ドメイン、例えば、1つまたは複数の、例えば3つ全てのLC CDRおよび1つまたは複数の、例えば3つ全てのHC CDRを含むヒト化抗CD19結合ドメインに関する。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、少なくともHC CDR2を有する。一実施形態において、軽鎖可変領域は、VK3_L25生殖細胞系配列の1つ、2つ、3つまたは4つ全てのフレームワーク領域を含む。一実施形態において、軽鎖可変領域は、改変(例えば、置換、例えば、配列番号58のマウス軽鎖可変領域における対応する位置で見出される1つまたは複数のアミノ酸の置換、例えば、71位および87位の1つまたは複数における置換)を有する。一実施形態において、重鎖可変領域は、VH4_4-59生殖細胞系配列の1つ、2つ、3つまたは4つ全てのフレームワーク領域を含む。一実施形態において、重鎖可変領域は、改変(例えば、置換、例えば、配列番号58の重鎖可変領域における対応する位置で見出される1つまたは複数のアミノ酸の置換、例えば、71位、73位および78位の1つまたは複数における置換)を有する。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、本明細書で説明される(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12に記載の)軽鎖可変領域、および/または本明細書で説明される(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12に記載の)重鎖可変領域を含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12のアミノ酸配列の軽鎖および重鎖を含むscFvである。ある実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメイン(例えば、scFv)は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12で提供される軽鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが30、20もしくは10個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、または配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12におけるアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域;ならびに/または配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12で提供される重鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが30、20もしくは10個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、または配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12におけるアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0027】
別の態様において、本発明は、CARをコードする核酸配列を含むベクターに関する。一実施形態において、ベクターは、DNA、RNA、プラスミド、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターからなる群より選択される。
【0028】
一実施形態において、ベクターは、レンチウイルスベクターである。一実施形態において、ベクターは、プロモーターをさらに含む。一実施形態において、プロモーターは、EF-1プロモーターである。一実施形態において、EF-1プロモーターは、配列番号100の配列を含む。
【0029】
一実施形態において、ベクターは、インビトロで転写されたベクターであり、例えば、本明細書で説明される核酸分子のRNAを転写するベクターである。一実施形態において、ベクター中の核酸配列は、ポリ(A)テール、例えば本明細書で説明されるポリAテール、例えば、約150個のアデノシン塩基を含むポリAテール(配列番号104)をさらに含む。一実施形態において、ベクター中の核酸配列は、3’UTR、例えば本明細書で説明される3’UTR、例えば、ヒトベータ-グロブリン由来の3’UTRの少なくとも1つの反復を含む3’UTRをさらに含む。一実施形態において、ベクター中の核酸配列は、プロモーター、例えばT2Aプロモーターをさらに含む。
【0030】
別の態様において、本発明は、上記ベクターを含む細胞に関する。一実施形態において、細胞は、ヒトT細胞である。一実施形態において、細胞は、本明細書で説明される細胞、例えばヒトT細胞、例えば本明細書で説明されるヒトT細胞である。一実施形態において、ヒトT細胞は、CD8+T細胞である。
【0031】
別の実施形態において、本明細書で説明されるCAR発現細胞は、別の薬剤、例えばCAR発現細胞の活性を強化する薬剤をさらに発現していてもよい。例えば、一実施形態において、薬剤は、阻害分子を阻害する薬剤であってもよい。阻害分子の例としては、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータが挙げられる。一実施形態において、阻害分子を阻害する薬剤は、第一のポリペプチド、例えば阻害分子を含み、このようなポリペプチドは、細胞に陽性シグナルを提供する第二のポリペプチド、例えば、本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメインと会合している。一実施形態において、薬剤は、例えば、PD1、LAG3、CTLA4、CD160、BTLA、LAIR1、TIM3、2B4およびTIGITなどの阻害分子の第一のポリペプチド、またはこれらのうちいずれかのフラグメント(例えば、これらのうちいずれかの細胞外ドメインの少なくとも一部)、ならびに本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメインである[例えば、共刺激ドメイン(例えば、41BB、CD27またはCD28、例えば、本明細書で説明されているようなもの)および/または一次シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書で説明されるCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)を含む]第二のポリペプチドを含む。一実施形態において、薬剤は、PD1の第一のポリペプチドまたはそれらのフラグメント(例えば、PD1の細胞外ドメインの少なくとも一部)、ならびに本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書で説明されるCD28シグナル伝達ドメインおよび/または本明細書で説明されるCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)の第二のポリペプチドを含む。
【0032】
別の態様において、本発明は、CAR、例えば本明細書で説明されるCARをコードする核酸を含むベクターでT細胞を形質導入することを含む、細胞を作製する方法に関する。
【0033】
本発明はまた、RNAが加工された細胞の集団、例えば本明細書で説明される細胞の集団、例えば外因性RNAを一過性発現するT細胞の集団を生成する方法も提供する。本方法は、インビトロで転写されたRNAまたは合成RNAを細胞に導入することを含み、ここで該RNAは、本明細書で説明されるCAR分子をコードする核酸を含む。
【0034】
別の態様において、本発明は、哺乳動物において抗腫瘍免疫を提供する方法であって、CAR分子を含む細胞、例えば本明細書で説明されるCAR分子発現細胞の有効量を哺乳動物に投与することを含む、方法に関する。一実施形態において、細胞は、自己T細胞である。一実施形態において、細胞は、同種異系のT細胞である。一実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。
【0035】
別の態様において、本発明は、CD19の発現に関連する疾患を有する哺乳動物の処置方法であって、CAR分子、例えば本明細書で説明されるCAR分子を含む細胞の有効量を哺乳動物に投与することを含む、方法に関する。
【0036】
一実施形態において、CD19発現に関連する疾患は、がんもしくは悪性腫瘍などの増殖性疾患、または脊髄形成異常、骨髄異形成症候群もしくは前白血病状態などの前がん状態から選択されるか、またはCD19の発現に関連する非がん関連の徴候である。一実施形態において、上記疾患は、血液がんである。一実施形態において、血液がんは、白血病である。一実施形態において、がんは、これらに限定されないが、B細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)を包含する、1種または複数の急性白血病、;これらに限定されないが、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)を包含する、1種または複数の慢性白血病;これらに限定されないが、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞の新生物、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ヘアリーセル白血病、小細胞型または大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性のリンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、脊髄形成異常および骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽細胞リンパ腫、形質細胞様樹状細胞の新生物、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、および骨髄の血液細胞の効果が認められない産生(または異形成)に共通する様々な血液学的状態の一群である「前白血病状態」を包含する、追加の血液がんもしくは血液学的状態、ならびにこれらに限定されないが、非定型的および/もしくは非典型的な、CD19を発現するがん、悪性腫瘍、前がん状態または増殖性疾患を包含する、CD19発現に関連する疾患;ならびにそれらのあらゆる組み合わせからなる群より選択される。
【0037】
一実施形態において、リンパ球注入、例えば同種異系リンパ球注入ががんの処置に使用され、ここでリンパ球注入は、少なくとも1種のCD19CAR発現細胞を含む。一実施形態において、自己リンパ球注入ががんの処置に使用され、ここで自己リンパ球注入は、少なくとも1種のCD19発現細胞を含む。
【0038】
一実施形態において、CD19CAR発現細胞、例えばT細胞は、以前に幹細胞移植、例えば自己幹細胞移植を受けた対象に投与される。
【0039】
一実施形態において、CD19CAR発現細胞、例えばT細胞は、以前にメルファラン投与を受けた対象に投与される。
【0040】
一実施形態において、CAR分子、例えば本明細書で説明されるCAR分子発現細胞は、CAR分子発現細胞の効能を増加させる薬剤、例えば本明細書で説明される薬剤と組み合わせて投与される。
【0041】
一実施形態において、CAR分子、例えば本明細書で説明されるCAR分子発現細胞は、CAR分子発現細胞の投与に関連する1つまたは複数の副作用を改善する薬剤、例えば本明細書で説明される薬剤と組み合わせて投与される。
【0042】
一実施形態において、CAR分子、例えば本明細書で説明されるCAR分子発現細胞は、CD19に関連する疾患を処置する薬剤、例えば本明細書で説明される薬剤と組み合わせて投与される。
【0043】
一実施形態において、CAR分子、例えば本明細書で説明されるCAR分子発現細胞は、本明細書で説明される用量および/または投与スケジュールで投与される。
【0044】
一実施形態において、CAR分子は、例えばインビトロでの転写を使用してT細胞に導入され、対象(例えば、ヒト)は、CAR分子を含む細胞の最初の投与、およびそれに続く1回または複数のCAR分子を含む細胞の投与を受け、ここでそれに続く1回または複数の投与は、以前の投与の後、15日未満、例えば、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2日未満に投与される。一実施形態において、1週間あたり1回より多くのCAR分子を含む細胞の投与が対象(例えば、ヒト)に投与され、例えば1週間あたり2、3、または4回のCAR分子を含む細胞の投与が投与される。一実施形態において、対象(例えば、ヒト対象)は、1週間あたり1回より多くのCAR分子を含む細胞の投与(例えば、1週間あたり2、3または4回の投与)(また本明細書では、サイクルとも称される)を受け、それにCAR分子を含む細胞の投与なしの1週間が続き、次いで1回または複数の追加のCAR分子を含む細胞の投与(例えば、1週間あたり1回より多くのCAR分子を含む細胞の投与)が対象に投与される。別の実施形態において、対象(例えば、ヒト対象)は、CAR分子を含む細胞の1回より多くのサイクルを受け、各サイクル間の時間は、10、9、8、7、6、5、4、または3日未満である。一実施形態において、CAR分子を含む細胞は、1日おきに、1週間あたり3回の投与で投与される。一実施形態において、CAR分子を含む細胞は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8週またはそれより多くの週にわたり投与される。
【0045】
一実施形態において、CAR分子、例えば本明細書で説明されるCAR分子発現細胞は、疾患、例えばがん、例えば本明細書で説明されるがんのための第一選択の処置として投与される。別の実施形態において、CAR分子、例えば本明細書で説明されるCAR分子発現細胞は、疾患、例えばがん、例えば本明細書で説明されるがんのための第二、第三、第四選択の処置として投与される。
【0046】
一実施形態において、本明細書で説明される細胞の集団が、投与される。
【0047】
別の態様において、本発明は、医薬品として使用するための、本発明のCARをコードする単離された核酸分子、本発明のCARの単離されたポリペプチド分子、本発明のCARを含むベクター、および本発明のCARを含む細胞に関する。
【0048】
別の態様において、本発明は、CD19を発現する疾患の処置で使用するための、本発明のCARをコードする単離された核酸分子、本発明のCARの単離されたポリペプチド分子、本発明のCARを含むベクター、および本発明のCARを含む細胞に関する。
【0049】
一態様において、本発明は、例えば本明細書で説明されているようなCD19-CAR分子をコードする核酸分子を含むベクターでトランスフェクトまたは形質導入されている自己細胞の集団を包含する。一実施形態において、ベクターは、レトロウイルスベクターである。一実施形態において、ベクターは、本明細書の他所で説明したように、自己不活性化レンチウイルスベクターである。一実施形態において、ベクターは、細胞、例えばT細胞に(例えば、トランスフェクションまたはエレクトロポレーションによって)デリバリーされ、ここでベクターは、本明細書で説明されているようなCD19CAR分子をコードする核酸分子を含んでおり、この核酸分子がmRNA分子として転写され、RNA分子からCD19CAR分子が翻訳されて、細胞表面上に発現される。
【0050】
別の態様において、本発明は、CAR発現細胞、例えばCART細胞の集団を提供する。いくつかの実施形態において、CAR発現細胞の集団は、異なるCAR発現細胞の混合物を含む。例えば、一実施形態において、CART細胞の集団は、本明細書で説明される抗CD19結合ドメインを有する第一のCAR発現細胞、および異なる抗CD19結合ドメイン、例えば、第一の細胞によって発現されるCARにおける抗CD19結合ドメインとは異なる本明細書で説明される抗CD19結合ドメインを有する第二のCAR発現細胞を包含していてもよい。別の例として、CAR発現細胞の集団は、例えば本明細書で説明されているような抗CD19結合ドメインを包含する第一のCAR発現細胞、およびCD19以外の標的(例えば、CD123)に対する抗原結合ドメインを包含する第二のCAR発現細胞を包含していてもよい。一実施形態において、CAR発現細胞の集団は、例えば、一次細胞内シグナル伝達ドメインを包含する第一のCAR発現細胞、および二次シグナル伝達ドメインを包含する第二のCAR発現細胞を包含する。
【0051】
別の態様において、本発明は、細胞の集団であって、集団中の少なくとも1種の細胞が、本明細書で説明される抗CD19ドメインを有するCARを発現し、第二の細胞が、別の薬剤、例えばCAR発現細胞の活性を強化する薬剤を発現する、細胞の集団を提供する。例えば、一実施形態において、薬剤は、阻害分子を阻害する薬剤であってもよい。阻害分子の例としては、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータが挙げられる。一実施形態において、阻害分子を阻害する薬剤は、第一のポリペプチド、例えば阻害分子を含み、このようなポリペプチドは、細胞に陽性シグナルを提供する第二のポリペプチド、例えば、本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメインと会合している。一実施形態において、薬剤は、例えば、PD1、LAG3、CTLA4、CD160、BTLA、LAIR1、TIM3、2B4およびTIGITなどの阻害分子の第一のポリペプチド、またはこれらのうちいずれかのフラグメント(例えば、これらのうちいずれかの細胞外ドメインの少なくとも一部)、ならびに本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメインである[例えば、共刺激ドメイン(例えば、41BB、CD27またはCD28、例えば、本明細書で説明されているようなもの)および/または一次シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書で説明されるCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)を含む]第二のポリペプチドを含む。一実施形態において、薬剤は、PD1の第一のポリペプチドまたはそれらのフラグメント(例えば、PD1の細胞外ドメインの少なくとも一部)、ならびに本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書で説明されるCD28シグナル伝達ドメインおよび/または本明細書で説明されるCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)の第二のポリペプチドを含む。
【0052】
一実施形態において、例えば本明細書で説明されているようなCD19CAR分子をコードする核酸分子は、mRNA分子として発現される。一実施形態において、遺伝子改変されたCD19CAR発現細胞、例えばT細胞は、所望のCAR(例えば、ベクター配列を含まない)をコードするRNA分子を細胞にトランスフェクトまたはエレクトロポレーションすることによって生成することができる。一実施形態において、RNA分子が取り込まれると、RNA分子からCD19CAR分子が翻訳されて、組換え細胞の表面上に発現される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1A、1Bおよび1Cは、マウス抗CD19CARまたは本発明のヒト化抗CD19CARで形質導入され、図1Aで示されるようなCD19を発現しない対照K562細胞(K562cc)、図1Bで示されるようなCD19で形質転換されたK562細胞(K562.CD19)、または図1Cで示されるようなCLL患者から単離された悪性B細胞(Pt14B細胞単離物)のいずれかと共に培養した、ND317(正常なドナー)のT細胞においてアッセイした際の細胞毒性のグラフ表示である。
図2図2Aおよび2Bは、CD19+細胞に対するヒト化およびマウス抗CD19CAR発現細胞の増殖応答を示すグラフであり、ここで生存可能なCAR+T細胞数が多くなるほど、初代CLL細胞に対して最大のCD4+およびCD8+T細胞増殖を示す集団であることとの相関が示される。
図3図3は、本発明のscFvに関するデコンボリューションされたHPLCマススペクトルのグラフ表示であり、上の列は未処置のscFvを表し、下の列は、同起源の脱グリコシル化したscFvを表す。
図4図4は、示差走査蛍光測定法によって測定した場合のコンフォメーションの安定性のグラフ表示である。マウスscFvのTmは、57℃(太線)であった。全てのヒト化scFv変異体は、親のマウスscFvと比較した場合、約70℃でそれより高いTmを示す。ヒト化によって導入された残基は、10℃より高くTmを改善した。
図5図5は、CD19CARで形質導入されたT細胞の増殖のグラフ表示であり、CART19細胞は、(a)CD19の発現に関して陰性であることから陰性対照として使用される慢性骨髄性白血病(「CML」)細胞株;(b)CD19の発現に関して陽性であることから陽性対照として使用される組換えK562細胞;または(c)CLL患者から単離され、細胞表面上でCD19を発現するPt14B細胞のいずれかに方向付けられている。
図6図6Aおよび6Bは、代表的なCARの概略図である。
図7図7は、CD19で形質導入されたCART細胞での処置後のNSGマウスにおけるHALLX5447初代ALL疾患の進行を表す。CD19に特異的なCART細胞での処置後のNSGマウスにおける初代ヒトALL細胞の成長から、疾患の進行の制御が実証された。CD19ヒトALL細胞の平均パーセンテージは、腫瘍埋め込みから65日目まで、NSGマウスにおける末梢血液中の疾患負荷のインジケーターであった。黒色の丸:尾静脈を介して100μlのPBSで処置したマウス;赤色の四角:mockで形質導入されたT細胞で処置したマウス;青色の三角:マウスCD19CARで形質導入されたT細胞で処置したマウス;および紫色の逆三角:ヒト化CD19CARで形質導入されたT細胞で処置したマウス。ANOVAによって重要度を計算した;は、P<0.01を示す。
図8図8は、患者の腫瘍細胞におけるCD19発現を表す。CD138CD45dim腫瘍細胞を、CD19(x軸)およびCD38(y軸)に関して染色した。
【発明を実施するための形態】
【0054】
定義
特に他の指定がない限り、本明細書において使用される全ての専門用語や科学用語は、本発明が関連する当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0055】
用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、文法上の目的語である物品が1つであるか、または1つより多く(すなわち、少なくとも1つの)であることを指す。一例として、「要素(an element)」は、1つの要素または1つより多くの要素を意味する。
【0056】
用語「約」は、量、一時的な持続時間、および同種のものなどの測定可能な値を指す場合、規定された値から、±20%の変動、またはいくつかの場合において±10%の変動、またはいくつかの場合において±5%の変動、またはいくつかの場合において±1%の変動、またはいくつかの場合において±0.1%の変動を包含することを意味しており、これはなぜなら、このような変動は開示された方法を行うのに適切であるためである。
【0057】
用語「キメラ抗原受容体」またはその代わりに「CAR」は、少なくとも細胞外抗原結合ドメインと、膜貫通ドメインと、以下で定義されるような刺激分子由来の機能的なシグナル伝達ドメインを含む細胞質内シグナル伝達ドメイン(また本明細書では、「細胞内シグナル伝達ドメイン」とも称される)とを含む、組換えポリペプチドコンストラクトを指す。一態様において、刺激分子は、T細胞受容体複合体と会合したゼータ鎖である。一態様において、細胞質内シグナル伝達ドメインは、以下で定義されるような少なくとも1つの共刺激分子由来の1つまたは複数の機能的なシグナル伝達ドメインをさらに含む。一態様において、共刺激分子は、4-1BB(すなわち、CD137)、CD27および/またはCD28から選ばれる。一態様において、CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、刺激分子由来の機能的なシグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ融合タンパク質を含む。一態様において、CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、共刺激分子由来の機能的なシグナル伝達ドメインおよび刺激分子由来の機能的なシグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ融合タンパク質を含む。一態様において、CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、1つまたは複数の共刺激分子由来の2つの機能的なシグナル伝達ドメインおよび刺激分子由来の機能的なシグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ融合タンパク質を含む。一態様において、CARは、細胞外抗原認識ドメインと、膜貫通ドメインと、1つまたは複数の共刺激分子由来の少なくとも2つの機能的なシグナル伝達ドメインおよび刺激分子由来の機能的なシグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ融合タンパク質を含む。一態様において、CARは、CAR融合タンパク質のアミノ末端(N-ter)に任意のリーダー配列を含む。一態様において、CARは、細胞外抗原認識ドメインのN末端におけるリーダー配列をさらに含み、ここでリーダー配列は、細胞内プロセシングおよび細胞膜へのCARの局在化の間に、抗原認識ドメイン(例えば、scFvのアミノ酸)から切断されてもよい。
【0058】
用語「シグナル伝達ドメイン」は、第2メッセンジャーを生成したり、またはこのようなメッセンジャーに応答してエフェクターとして機能化したりすることにより規定のシグナル伝達経路を介して細胞活性を調節するために、細胞内の情報を伝えることによって作用するタンパク質の機能的な部分を指す。
【0059】
用語「CD19」は、本明細書で使用される場合、白血病前駆細胞において検出可能な抗原決定基である表面抗原分類19タンパク質を指す。ヒトおよびマウスのアミノ酸および核酸配列は、GenBank、UniProtおよびSwiss-Protなどの公開データベースで見出すことができる。例えば、ヒトCD19のアミノ酸配列は、UniProt/Swiss-Prot登録番号P15391として見出すことができ、ヒトCD19をコードするヌクレオチド配列は、登録番号NM_001178098で見出すことができる。CD19は、例えば、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病および非ホジキンリンパ腫などのほとんどのB細胞系統のがんで発現される。CD19を発現する他の細胞は、以下の「CD19の発現に関連する疾患」の定義で示す。CD19はまた、B細胞前駆体の初期マーカーでもある。例えば、Nicholson et al. Mol. Immun. 34 (16-17): 1157-1165 (1997)を参照されたい。一態様において、CARTの抗原結合部位は、CD19タンパク質の細胞外ドメイン内で抗原を認識してそれと結合する。一態様において、CD19タンパク質は、がん細胞で発現される。
【0060】
用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、抗原と特異的に結合する免疫グロブリン分子由来のタンパク質またはポリペプチド配列を指す。抗体は、ポリクローナルもしくはモノクローナルの、複数もしくは単一の鎖の、または無傷の免疫グロブリンであってもよく、自然源由来でもよいし、または組換え源由来でもよい。抗体は、免疫グロブリン分子の四量体であってもよい。
【0061】
用語「抗体フラグメント」は、無傷の抗体またはそれらの組換え変異体の少なくとも1つの部分を指し、さらに、抗体フラグメントの認識と抗原などの標的への特異的な結合をもたらすのに十分な程度の、抗原結合ドメイン、例えば無傷の抗体の抗原決定可変領域も指す。抗体フラグメントの例としては、これらに限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)、およびFvフラグメント、scFv抗体フラグメント、線状抗体、sdAbなどの単一ドメイン抗体(VLまたはVHのいずれか)、ラクダVHHドメイン、および抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体が挙げられる。用語「scFv」は、軽鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体フラグメントと重鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体フラグメントとを含む融合タンパク質であって、軽鎖および重鎖可変領域が、短いフレキシブルなポリペプチドリンカーを介して連続的に連結されており、単一鎖のポリペプチドとして発現することができ、さらにscFvが、その元となった無傷の抗体の特異性を保持している、上記融合タンパク質を指す。特段の規定がなければ、scFvは、本明細書で使用される場合、VLおよびVH可変領域をいずれの順番で有していてもよく、例えばポリペプチドのN末端およびC末端の終端に関して、scFvは、VL-リンカー-VHを含んでいてもよいし、またはVH-リンカー-VLを含んでいてもよい。
【0062】
抗体またはそれらの抗体フラグメントを含む本発明のCAR組成物の一部は、様々な形態で存在していてもよく、その場合、抗原結合ドメインは、例えば、単一ドメイン抗体フラグメント(sdAb)、単鎖抗体(scFv)およびヒト化抗体などの連続するポリペプチド鎖の一部として発現される(Harlow et al., 1999, In: Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY; Harlow et al., 1989, In: Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York; Houston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; Bird et al., 1988, Science 242:423-426)。一態様において、本発明のCAR組成物の抗原結合ドメインは、抗体フラグメントを含む。さらなる態様において、CARは、scFvを含む抗体フラグメントを含む。
【0063】
用語「抗体重鎖」は、それらの天然に存在するコンフォメーションの抗体分子中に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうち大きい方を指し、通常これが抗体が属するクラスを決定する。
【0064】
用語「抗体軽鎖」は、それらの天然に存在するコンフォメーションの抗体分子中に存在する2つのタイプのポリペプチド鎖のうち小さい方を指す。カッパ(κ)およびラムダ(λ)軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖アイソタイプを指す。
【0065】
用語「組換え抗体」は、例えばバクテリオファージまたは酵母発現系によって発現される抗体などの、組換えDNA技術を使用して生成される抗体を指す。この用語はまた、抗体をコードするDNA分子(このDNA分子は抗体タンパク質を発現する)、または抗体を指定するアミノ酸配列の合成によって生成された抗体も意味すると解釈されるものとし、この場合、DNAまたはアミノ酸配列は、当業界で利用可能であり周知の組換えDNAまたはアミノ酸配列技術を使用して得られたものである。
【0066】
用語「抗原」または「Ag」は、免疫反応を惹起する分子を指す。この免疫反応は、抗体産生または特異的な免疫担当細胞の活性化のいずれか、またはその両方を含み得る。当業者であれば、実質的に全てのタンパク質またはペプチドを包含するあらゆる高分子が抗原として役立つ可能性があることを理解しているものと予想される。さらに抗原は、組換えまたはゲノムDNA由来であってもよい。当業者であれば、免疫反応を惹起するタンパク質をコードするヌクレオチド配列または部分的なヌクレオチド配列を含むあらゆるDNAが、結果的に本明細書において抗原という用語が使用される場合と同様の「抗原」をコードすることを理解しているものと予想される。さらに当業者であれば、抗原は、必ずしも遺伝子の全長ヌクレオチド配列によってのみコードされるわけではないことを理解しているものと予想される。本発明は、これらに限定されないが、1つより多くの遺伝子の部分的なヌクレオチド配列の使用を包含すること、さらに望ましい免疫反応を惹起するポリペプチドがコードされるように、これらのヌクレオチド配列は様々な組み合わせで配置されることが容易に理解される。さらに当業者であれば、抗原は、必ずしも「遺伝子」によってコードされていなくてもよいことを理解しているものと予想される。抗原は、生成されるか合成されてもよく、または生体サンプル由来であってもよく、またはポリペプチド以外にも高分子であってもよいことが容易に理解される。このような生体サンプルとしては、これらに限定されないが、組織サンプル、腫瘍サンプル、細胞または他の生物学的成分を含む流体を挙げることができる。
【0067】
用語「抗腫瘍効果」は、これらに限定されないが、例えば、腫瘍容量の減少、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、期待寿命の増加、腫瘍細胞増殖の減少、腫瘍細胞生存の減少、またはがん性状態に関連する様々な生理学的な症状の改善などの様々な手段によって証明が可能な生物学的作用を指す。また「抗腫瘍効果」は、最初の場所における腫瘍の出現の予防における本発明のペプチド、ポリヌクレオチド、細胞および抗体の能力によっても証明することができる。
【0068】
用語「自己」は、のちに個体に再導入される予定の、同じ個体由来のあらゆる材料を指す。
【0069】
用語「同種異系」は、材料が導入される個体と同じ種の異なる動物由来のあらゆる材料を指す。2以上の個体は、1つまたは複数の遺伝子座における遺伝子が同一ではない場合、互いに同種異系といわれる。いくつかの態様において、同じ種の個体からの同種異系材料は、抗原的に相互作用するのに十分な程度、遺伝学的に異なっていてもよい。
【0070】
用語「異種」は、異なる種の動物由来の移植片を指す。
【0071】
用語「がん」は、急速で制御不能な異常な細胞成長を特徴とする疾患を指す。がん細胞は、局所的に拡がる可能性もあるし、または血流およびリンパ系を介して体の他の部分に拡がる可能性がある。様々ながんの例が本明細書で説明されており、例えば、これらに限定されないが、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、子宮頸がん、皮膚がん、膵臓がん、結腸直腸がん、腎臓がん、肝臓がん、脳がん、リンパ腫、白血病、肺がんおよび同種のものが挙げられる。
【0072】
成句「CD19の発現に関連する疾患」としては、これらに限定されないが、CD19の発現に関連する疾患もしくはCD19発現細胞に関連する状態、例えば、がんもしくは悪性腫瘍などの増殖性疾患、または脊髄形成異常、骨髄異形成症候群もしくは前白血病状態などの前がん状態;またはCD19を発現する細胞に関連する非がん関連の徴候などが挙げられる。一態様において、CD19の発現に関連するがんは、血液がん(hematolical cancer)である。一態様において、血液がんは、白血病またはリンパ腫である。一態様において、CD19の発現に関連するがんとしては、がんおよび悪性腫瘍、これらに限定されないが、例えば、1種または複数の急性白血病、これらに限定されないが、例えば、B細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)など;1種または複数の慢性白血病、これらに限定されないが、例えば、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)が挙げられる。CD19の発現に関連する追加のがんまたは血液学的状態としては、これらに限定されないが、例えば、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞の新生物、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ヘアリーセル白血病、小細胞型または大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性のリンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、脊髄形成異常および骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽細胞リンパ腫、形質細胞様樹状細胞の新生物、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、および骨髄の血液細胞の効果が認められない産生(または異形成)に共通する様々な血液学的状態の一群である「前白血病状態」、ならびに同種のものが挙げられる。さらなるCD19の発現に関連する疾患としては、これらに限定されないが、例えば、CD19の発現に関連する、非定型的および/または非典型的ながん、悪性腫瘍、前がん状態または増殖性疾患が挙げられる。CD19の発現に関連する非がん関連の徴候としては、これらに限定されないが、例えば、自己免疫疾患、(例えば、狼瘡)、炎症性疾患(アレルギーおよび喘息)および移植が挙げられる。
【0073】
用語「保存的配列改変」は、そのアミノ酸配列を含有する抗体または抗体フラグメントの結合特徴に有意に影響を与えたりまたは変更したりしないアミノ酸改変を指す。このような保存的改変としては、アミノ酸の置換、付加および欠失が挙げられる。改変は、部位特異的変異誘発およびPCR介在変異誘発などの当業界公知の標準的な技術によって本発明の抗体または抗体フラグメントに導入することができる。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当業界において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を包含する。したがって、本発明のCAR内の1つまたは複数のアミノ酸残基が、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置き換えられていてもよく、変更されたCARは、本明細書で説明される機能アッセイを使用してテストすることができる。
【0074】
用語「刺激」は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)とその同起源のリガンドとの結合により誘導された一次応答を指し、それによって、これらに限定されないが、TCR/CD3複合体を介したシグナル伝達などのシグナル伝達事象が媒介される。刺激は、TGF-βの下方調節、および/または細胞骨格構造の再構築、ならびに同種のものなどの所定の分子の変更された発現を媒介することができる。
【0075】
用語「刺激分子」は、T細胞のシグナル伝達経路の少なくともいくつかの態様に関して、刺激の形態でTCR複合体の一次的な活性化を調節する一次細胞質内シグナル伝達配列をもたらすT細胞によって発現される分子を指す。一態様において、例えば、TCR/CD3複合体とペプチドを提示したMHC分子との結合によって一次シグナルが始動し、それにより、これらに限定されないが、増殖、活性化、分化、および同種のものなどのT細胞応答の媒介が起こる。刺激の形態で作用する一次細胞質内シグナル伝達配列(また、「一次シグナル伝達ドメイン」とも称される)は、シグナル伝達モチーフを含有していてもよく、これは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして知られている。本発明において特定の用途を有する一次細胞質内シグナル伝達配列を含有するITAMの例としては、これらに限定されないが、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、CD278(また、「ICOS」としても知られている)およびCD66d由来のものが挙げられる。本発明の特定のCARにおいて、本発明のいずれか1つまたは複数のCARにおける細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞内シグナル伝達配列、例えばCD3-ゼータの一次シグナル伝達配列を含む。本発明の特定のCARにおいて、CD3-ゼータの一次シグナル伝達配列は、配列番号17として提供される配列であるか、または非ヒト種、例えばマウス、げっ歯類、サル、類人猿および同種のものからの等価の残基である。本発明の特定のCARにおいて、CD3-ゼータの一次シグナル伝達配列は、配列番号43で提供される配列であるか、または非ヒト種、例えばマウス、げっ歯類、サル、類人猿および同種のものからの等価の残基である。
【0076】
用語「抗原提示細胞」または「APC」は、その表面上に主要組織適合複合体(MHC)と複合体化した外来抗原を提示するアクセサリー細胞(例えば、B細胞、樹状細胞、および同種のもの)などの免疫系細胞を指す。T細胞は、それらのT細胞受容体(TCR)を使用してこれらの複合体を認識する可能性がある。APCは抗原をプロセシングし、それらをT細胞に提示させる。
【0077】
「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、この用語が本明細書で使用される場合、分子の細胞内の部分を指す。細胞内シグナル伝達ドメインは、CARを含有する細胞、例えばCART細胞の免疫エフェクター機能を促進するシグナルを生成する。例えばCART細胞における免疫エフェクター機能の例としては、細胞溶解活性およびヘルパー活性、例えばサイトカイン分泌などが挙げられる。
【0078】
ある実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、一次細胞内シグナル伝達ドメインを含んでいてもよい。典型的な一次細胞内シグナル伝達ドメインとしては、一次刺激、または抗原依存性刺激(antigen dependent simulation)に関与する分子由来のものが挙げられる。ある実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激細胞内ドメインを含んでいてもよい。典型的な共刺激細胞内シグナル伝達ドメインとしては、共刺激シグナル、または抗原非依存性刺激に関与する分子由来のものが挙げられる。例えば、CARTの場合において、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体の細胞質内配列を含んでいてもよいし、共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは、補助受容体または共刺激分子からの細胞質内配列を含んでいてもよい。
【0079】
一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして知られているシグナル伝達モチーフを含んでいてもよい。ITAMを含有する一次細胞質内シグナル伝達配列の例としては、これらに限定されないが、CD3ゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、ならびにCD66d DAP10およびDAP12由来のものが挙げられる。
【0080】
用語「ゼータ」またはその代わりに「ゼータ鎖」、「CD3-ゼータ」もしくは「TCR-ゼータ」は、GenBan受託番号BAG36664.1として提供されるタンパク質、または非ヒト種、例えばマウス、げっ歯類、サル、類人猿および同種のものからの等価の残基と定義され、「ゼータ刺激ドメイン」またはその代わりに「CD3-ゼータ刺激ドメイン」もしくは「TCR-ゼータ刺激ドメイン」は、T細胞の活性化に必要な最初のシグナルを機能的に伝えるのに十分な、ゼータ鎖の細胞質内ドメインからのアミノ酸残基と定義される。一態様において、ゼータの細胞質内ドメインは、GenBank受託番号BAG36664.1の残基52から164、またはそれらの機能的なオーソログである非ヒト種、例えばマウス、げっ歯類、サル、類人猿および同種のものからの等価の残基を含む。一態様において、「ゼータ刺激ドメイン」または「CD3-ゼータ刺激ドメイン」は、配列番号17として提供される配列である。一態様において、「ゼータ刺激ドメイン」または「CD3-ゼータ刺激ドメイン」は、配列番号43として提供される配列である。
【0081】
用語「共刺激分子」は、共刺激リガンドと特異的に結合することにより、これらに限定されないが増殖などのT細胞による共刺激応答を媒介する、T細胞上の同起源の結合パートナーを指す。共刺激分子は、効率的な免疫反応に必要な、抗原受容体以外の細胞表面分子またはそれらのリガンドである。共刺激分子としては、これらに限定されないが、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体、加えてOX40、CD2、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)および4-1BB(CD137)が挙げられる。
【0082】
共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内の部分であり得る。共刺激分子の代表例は、以下のタンパク質ファミリー:TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、および活性化NK細胞受容体で示すことができる。このような分子の例としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、GITR、CD30、CD40、ICOS、BAFFR、HVEM、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、SLAMF7、NKp80、CD160、B7-H3、およびCD83と特異的に結合するリガンド、ならびに同種のものが挙げられる。
【0083】
細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞内の部分全体、もしくはそれが得られた分子の天然型細胞内シグナル伝達ドメインの全体、またはそれらの機能的なフラグメントを含んでいてもよい。
【0084】
用語「4-1BB」は、GenBank受託番号AAA62478.2として提供される配列アミノ酸配列を有するTNFRスーパーファミリーの一員、または非ヒト種、例えばマウス、げっ歯類、サル、類人猿および同種のものからの等価の残基を指し、「4-1BB共刺激ドメイン」は、GenBank受託番号AAA62478.2のアミノ酸残基214~255、または非ヒト種、例えばマウス、げっ歯類、サル、類人猿および同種のものからの等価の残基と定義される。一態様において、「4-1BB共刺激ドメイン」は、配列番号16として提供される配列または非ヒト種、例えばマウス、げっ歯類、サル、類人猿および同種のものからの等価の残基である。
【0085】
用語「コード(すること)」は、ヌクレオチド(例えば、rRNA、tRNAおよびmRNA)の規定の配列またはアミノ酸の規定の配列のいずれかを有する、生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として役立つ、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特異的配列の固有の特性、およびそれにより生じる生物学的な特性を指す。したがって、細胞または他の生物系中で、遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳によりタンパク質が産生される場合、その遺伝子、cDNA、またはRNAは、タンパク質をコードする。そのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常配列表に示されるコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖はどちらも、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の生成物をコードすると称することができる。
【0086】
特に他の規定がない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いの縮重型であるヌクレオチド配列や同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列全てを包含する。また、タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列という成句は、いくつかの場合においてそのタンパク質をコードするヌクレオチド配列がイントロンを含有し得る程度にイントロンを包含していてもよい 。
【0087】
用語「有効量」または「治療有効量」は、本明細書では同義的に使用され、本明細書で説明されているような化合物、調合物、材料、または組成物の、特定の生物学的な結果を達成するのに有効な量を指す。
【0088】
用語「内因性」は、生物、細胞、組織または系由来の材料、またはそれらの内部で産生されたあらゆる材料を指す。
【0089】
用語「外因性」は、生物、細胞、組織または系の外部から導入された材料、またはそれらの外部で産生されたあらゆる材料を指す。
【0090】
用語「発現」は、プロモーターによって駆動される特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳を指す。
【0091】
用語「トランスファーベクター」は、単離された核酸を含み、細胞内部に単離された核酸をデリバリーするのに使用できるものの組成物を指す。多数のベクターが当業界公知であり、これらに限定されないが、直鎖状ポリヌクレオチド、イオン性または両親媒性化合物と結合したポリヌクレオチド、プラスミド、およびウイルスなどが挙げられる。したがって、用語「トランスファーベクター」は、自律複製型プラスミドまたはウイルスを包含する。この用語はまた、例えばポリリジン化合物、リポソーム、および同種のものなどの、細胞への核酸のトランスファーを容易にする非プラスミドおよび非ウイルス化合物をさらに包含するとも解釈されるものとする。ウイルストランスファーベクターの例としては、これらに限定されないが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、および同種のものが挙げられる。
【0092】
用語「発現ベクター」は、発現しようとするヌクレオチド配列に機能するように連結した発現制御配列を含む組換えポリヌクレオチドを含むベクターを指す。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用性要素を含み、発現のための他の要素は、宿主細胞によって供給されてもよいし、またはインビトロでの発現系中に供給されてもよい。発現ベクターは、当業界公知のあらゆるものを包含し、例えば、組換えポリヌクレオチドを取り込んでいる、コスミド、プラスミド(例えば、裸の状態の、またはリポソーム中に含有された)およびウイルス(例えば、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)が挙げられる。
【0093】
用語「レンチウイルス」は、レトロウイルス科の属の1つを指す。レンチウイルスは、レトロウイルスのなかでも非分裂細胞に感染することができるという点で独特であり、これらは、宿主細胞のDNAに相当な量の遺伝情報をデリバリーすることができることから、遺伝子デリバリーベクターの最も効率的な方法の1つである。HIV、SIV、およびFIVが、レンチウイルスの全ての例である。
【0094】
用語「レンチウイルスベクター」は、レンチウイルスゲノムの少なくとも一部に由来するベクターを指し、特に、Milone et al., Mol. Ther. 17(8): 1453-1464 (2009)で示されるような自己不活性化レンチウイルスベクターが挙げられる。診療施設で使用される可能性があるレンチウイルスベクターの他の例としては、これらに限定されないが、例えば、Oxford BioMedica製のLENTIVECTOR(登録商標)遺伝子デリバリー技術、Lentigen製のLENTIMAX(商標)ベクター系および同種のものが挙げられる。非臨床タイプのレンチウイルスベクターも利用可能であり、当業者公知であると予想される。
【0095】
用語「相同」または「同一性」は、2つの高分子間の、例えば2つの核酸分子間の、例えば2つのDNA分子もしくは2つのRNA分子間の、または2つのポリペプチド分子間のサブユニット配列の同一性を指す。2つの分子の両方におけるサブユニットの位置が同じモノマーのサブユニットで占められている場合、例えば、2つのDNA分子それぞれにおける位置がアデニンで占められている場合、それらは、その位置において相同または同一である。2つの配列間の相同性は、マッチした位置または相同な位置の数の一次関数であり、例えば、2つの配列中の位置の半分(例えば、ポリマーの長さが10個のサブユニット中の5個の位置)が相同である場合、2つの配列は50%相同であり、位置の90%(例えば、10個のうち9個)がマッチしているかまたは相同である場合、2つの配列は90%相同である。
【0096】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化された」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小の配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらのフラグメント[例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合部分配列]である。大抵の場合、ヒト化抗体およびそれらの抗体フラグメントは、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、望ましい特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラットまたはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基で置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエントの抗体または抗体フラグメント)である。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基で置き換えられている。さらに、ヒト化抗体/抗体フラグメントは、レシピエント抗体でも移入されたCDRまたはフレームワーク配列でも見出されない残基を含んでいてもよい。これらの改変は、抗体または抗体フラグメントの性能をさらに洗練させて最適化する可能性がある。一般的に、ヒト化抗体またはそれらの抗体フラグメントは、CDR領域の全部または実質的に全部が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に相当し、FR領域の全部のまたはかなりの部分がヒト免疫グロブリン配列のFR領域である、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含むと予想される。ヒト化抗体または抗体フラグメントはまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含んでいてもよい。さらなる詳細に関しては、Jones et al., Nature, 321: 522-525, 1986; Reichmann et al., Nature, 332: 323-329, 1988; Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2: 593-596, 1992を参照されたい。
【0097】
「完全にヒト」は、分子全体がヒト由来であるか、または抗体もしくは免疫グロブリンのヒト形態に同一なアミノ酸配列からなる場合の、免疫グロブリン、例えば抗体または抗体フラグメントを指す。
【0098】
用語「単離された」は、天然状態から変更された、または天然状態から除去されたことを意味する。例えば、生きた動物中に自然に存在する核酸またはペプチドは「単離されていない」が、同じ核酸またはペプチドでもその天然状態において共存する材料から部分的または完全に分離されていれば、「単離されている」。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在していてもよいし、または例えば宿主細胞などの非天然の環境中に存在していてもよい。
【0099】
本発明の内容では、以下に示す通常存在する核酸塩基の略語が使用される。「A」はアデノシンを指し、「C」は、シトシンを指し、「G」は、グアノシンを指し、「T」は、チミジンを指し、「U」は、ウリジンを指す。
【0100】
用語「機能するように連結した」または「転写制御」は、調節配列と異種核酸配列とが機能的に連結されて、結果として後者の発現をもたらすことを指す。例えば、第一の核酸配列が第二の核酸配列と機能的な関係で配置される場合、第一の核酸配列は第二の核酸配列と機能するように連結している。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を与える場合、プロモーターはコード配列に機能するように連結している。機能するように連結したDNA配列は、互いに連続していてもよく、例えば2つのタンパク質のコード領域を合体させることが必要な場合、同じリーディングフレーム内にあってもよい。
【0101】
免疫原性組成物の「非経口」投与という用語は、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)もしくは胸骨内注射、腫瘍内、または点滴技術を包含する。
【0102】
用語「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、および一本鎖または二本鎖いずれかの形態のそれらのポリマーを指す。特に限定されない限り、この用語は、参照核酸と類似の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと類似の方式で代謝される天然ヌクレオチドの公知の類似体を含有する核酸を包含する。特に他の指定がない限り、特定の核酸配列はまた、それらの保存的に改変された変異体(例えば、縮重コドンの置換)、対立遺伝子、オーソログ、SNP、および相補配列、加えて明確に提示された配列も事実上包含する。具体的に言えば、縮重コドンの置換は、1つまたは複数の選択された(または全ての)コドンの第三の位置が混成の塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって達成される可能性がある[Batzer et al., Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsuka et al., J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985); and Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994)]。
【0103】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」は、同義的に使用され、ペプチド結合により共有結合で連結されたアミノ酸残基で構成される化合物を指す。タンパク質またはペプチドは、少なくとも2つのアミノ酸を含有していなければならず、タンパク質またはペプチドの配列を構成し得るアミノ酸の最大数に制限はない。ポリペプチドは、互いにペプチド結合で合体した2つ以上のアミノ酸を含むあらゆるペプチドまたはタンパク質を包含する。この用語は、本明細書で使用される場合、当業界では一般的に例えばペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも称される短鎖と、当業界では一般的に多くのタイプが存在するタンパク質と称されるそれより長い鎖との両方を指す。「ポリペプチド」としては、例えば、なかでも生物学的に活性なフラグメント、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドの変異体、改変されたポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が挙げられる。ポリペプチドとしては、天然ペプチド、組換えペプチド、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0104】
用語「プロモーター」は、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始させるのに必要な、細胞の合成機構によって認識されるDNA配列、または導入された合成機構を指す。
【0105】
用語「プロモーター/調節配列」は、プロモーター/調節配列に機能するように連結した遺伝子産物の発現に必要な核酸配列を指す。いくつかの場合において、この配列はコアプロモーター配列であってもよく、他の例において、この配列はまた、遺伝子産物の発現に必要なエンハンサー配列および他の調節因子を包含していてもよい。プロモーター/調節配列は、例えば、組織特異的な方式で遺伝子産物を発現するプロモーター/調節配列であってもよい。
【0106】
用語「構成的」プロモーターは、遺伝子産物をコードするかまたは遺伝子産物を指定するポリヌクレオチドと機能するように連結している場合、細胞のほとんどまたは全ての生理学的条件下において細胞中で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列を指す。
【0107】
用語「誘導性」プロモーターは、遺伝子産物をコードするかまたは遺伝子産物を指定するポリヌクレオチドと機能するように連結している場合、実質的にプロモーターに対応する誘導物質が細胞中に存在するときだけ、細胞中で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列を指す。
【0108】
用語「組織特異的」プロモーターは、遺伝子をコードするかまたは遺伝子によって指定されたポリヌクレオチドと機能するように連結されている場合、実質的に細胞がプロモーターに対応する組織タイプの細胞であるときだけ、細胞中で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列を指す。
【0109】
用語「フレキシブルなポリペプチドリンカー」または「リンカー」は、scFvの状況で使用される場合、可変重鎖領域と可変軽鎖領域を一緒に連結するために、単独で、または組み合わせて使用されるグリシンおよび/またはセリン残基などのアミノ酸からなるペプチドリンカーを指す。一実施形態において、フレキシブルなポリペプチドリンカーは、Gly/Serリンカーであり、アミノ酸配列(Gly-Gly-Gly-Ser)nを含み、式中nは、1に等しいかまたは1より大きい正の整数である。例えば、n=1、n=2、n=3、n=4、n=5およびn=6、n=7、n=8、n=9およびn=10(配列番号105)である。一実施形態において、フレキシブルなポリペプチドリンカーとしては、これらに限定されないが、(GlySer)(配列番号106)または(GlySer)(配列番号107)が挙げられる。別の実施形態において、リンカーは、(GlySer)、(GlySer)または(GlySer)の複数の反復を包含する(配列番号108)。参照により本明細書に組み入れられるWO2012/138475で説明されているリンカーも本発明の範囲内に包含される)。
【0110】
5’キャップ(RNAキャップ、RNA7-メチルグアノシンキャップまたはRNAmGキャップともいう)は、本明細書で使用される場合、転写開始直後に真核性メッセンジャーRNAの「前部」または5’末端に付加された改変されたグアニンヌクレオチドである。5’キャップは、最初に転写されるヌクレオチドに連結される末端基からなる。その存在は、リボソームによる認識およびRNアーゼからの保護にとって重要である。キャップの付加は転写とカップリングされ、それぞれ他方に影響を与えるように共に転写されることによって実行される。転写開始直後、合成されているmRNAの5’末端は、RNAポリメラーゼと会合したキャップを合成する複合体に結合される。この酵素的な複合体は、mRNAのキャッピングに必要な化学反応を触媒する。合成は、多段階の生化学反応として進行する。キャッピング成分を改変して、その安定性または翻訳効率などのmRNAの機能性を調節してもよい。
【0111】
「インビトロで転写されたRNA」は、本明細書で使用される場合、インビトロで合成されたRNA、好ましくはmRNAを指す。一般的に、インビトロで転写されたRNAは、インビトロの転写ベクターから生成される。インビトロの転写ベクターは、インビトロで転写されたRNAを生成するのに使用される鋳型を含む。
【0112】
本明細書で使用される場合、「ポリ(A)」は、ポリアデニル化によってmRNAに付着した一連のアデノシンである。一過性発現のためのコンストラクトの好ましい実施形態において、ポリAは、50から5000個の間(配列番号109)であり、好ましくは64個より多く、より好ましくは100個より多く、最も好ましくは300または400個より多い。ポリ(A)配列を化学的または酵素的に改変して、局在化、安定性または翻訳効率などのmRNAの機能性を調節してもよい。
【0113】
「ポリアデニル化」は、本明細書で使用される場合、ポリアデニリル成分またはその改変された変異体をメッセンジャーRNA分子に共有結合で連結させることを指す。真核生物において、ほとんどのメッセンジャーRNA(mRNA)分子は、3’末端でポリアデニル化されている。3’ポリ(A)テールは、酵素のポリアデニル酸ポリメラーゼの作用を介してプレ-mRNAに付加されたアデニンヌクレオチドの長い配列(しばしば数百にもなる)である。より高次の真核生物において、ポリ(A)テールは、特異的配列であるポリアデニル化シグナルを含有する転写物上に付加される。ポリ(A)テールとそれに結合したタンパク質は、エキソヌクレアーゼによる分解からmRNAを保護するのに役立つ。またポリアデニル化は、転写終結、細胞核外へのmRNA輸送、および翻訳にとっても重要である。ポリアデニル化は、RNAへのDNA転写直後に細胞核で起こるが、それに加えて後に細胞質内でも起こる可能性がある。転写が終結した後、mRNA鎖は、RNAポリメラーゼと会合したエンドヌクレアーゼ複合体の作用を介して切断される。切断部位は通常、切断部位付近における塩基配列AAUAAAの存在を特徴とする。mRNAが切断された後、切断部位において遊離の3’末端にアデノシン残基が付加される。
【0114】
「一過性」は、本明細書で使用される場合、数時間、数日または数週間にわたり統合されていない導入遺伝子が発現されることを指し、ここで発現期間は、宿主細胞中でゲノムに統合されているかまたは安定なプラスミドレプリコン内に含有されている場合の遺伝子の発現期間より短い。
【0115】
用語「シグナル伝達経路」は、細胞のある部分から細胞の別の部分へのシグナル伝達において役割を果たす様々なシグナル伝達分子間の生化学的な関係を指す。成句「細胞表面受容体」は、シグナルを受けて細胞膜を通過してシグナルを伝えることができる分子および分子複合体を包含する。
【0116】
用語「対象」は、免疫反応を惹起させることができる生物(例えば、哺乳動物、ヒト)を包含することが意図される。
【0117】
用語「実質的に精製された」細胞は、他の細胞型を本質的に含まない細胞を指す。また実質的に精製された細胞は、通常その天然に存在する状況で共存する他の細胞型から分離された細胞も指す。いくつかの場合において、実質的に精製された細胞の集団は、細胞の同種の集団を指す。他の例において、この用語は単に、それらの天然の状態において自然に共存する細胞から分離された細胞を指す。いくつかの態様において、このような細胞は、インビトロで培養される。他の態様において、このような細胞は、インビトロで培養されない。
【0118】
用語「治療」は、本明細書で使用される場合、処置を意味する。治療効果は、病状の回復、抑制、寛解、または根絶により得られる。
【0119】
用語「予防」は、本明細書で使用される場合、疾患または病状の予防または予防的処置を意味する。
【0120】
本発明の内容において、「腫瘍抗原」または「過剰増殖性障害の抗原」または「過剰増殖性障害に関連する抗原」は、特定の過剰増殖性障害に共通の抗原を指す。所定の態様において、本発明の過剰増殖性障害の抗原は、例えば、これらに限定されないが、原発性または転移性黒色腫、胸腺腫、リンパ腫、肉腫、肺がん、肝臓がん、非ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、子宮がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、ならびに腺癌、例えば乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、および同種のものなどのがん由来である。
【0121】
用語「トランスフェクション」または「形質転換」または「形質導入」は、宿主細胞に外因性核酸を移入または導入させるプロセスを指す。「トランスフェクション」または「形質転換」または「形質導入」された細胞は、外因性核酸でトランスフェクトされた、形質転換した、または形質導入された細胞である。細胞は、対象の初代細胞およびその後代を包含する。
【0122】
用語「特異的に結合する」は、サンプル中に存在する同起源の結合パートナー(例えば、T細胞上に存在する刺激および/または共刺激分子)タンパク質を認識してそれと結合する抗体またはリガンドを指すが、これらの抗体またはリガンドは、サンプル中の他の分子を実質的に認識したりまたはそれと結合したりしない。
【0123】
範囲:本開示全体にわたり、本発明の様々な態様は、範囲の様式で示される場合がある。範囲の様式での記載は、単に利便性および簡潔さのためであり、本発明の範囲における柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことが理解されるものとする。したがって、範囲の記載は、全ての可能性のある部分範囲、加えてその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるものとする。例えば、1から6などの範囲の記載は、例えば1から3、1から4、1から5、2から4、2から6、3から6などの具体的に開示された部分範囲、加えてその範囲内の個々の数値、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を有するとみなされると予想される。別の例として、95~99%の同一性などの範囲は、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する何かを包含し、さらに、96~99%、96~98%、96~97%、97~99%、97~98%および98~99%の同一性などの部分範囲を包含する。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0124】
説明
ヒト化抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)を使用するがんなどの疾患を処置するための、物の組成物および使用方法が本明細書において提供される。
【0125】
一態様において、本発明は、CD19タンパク質への結合が強化されるように加工された抗体または抗体フラグメントを含む多数のキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。一態様において、本発明は、CARを発現するように加工された細胞(例えば、T細胞)を提供し、ここでCART細胞(「CART」)は抗腫瘍特性を示す。一態様において、細胞はCARで形質転換され、CARは細胞表面上に発現される。いくつかの実施形態において、細胞(例えば、T細胞)は、CARをコードするウイルスベクターで形質導入される。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターである。いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかのこのような実施形態において、細胞は、CARを安定して発現することができる。別の実施形態において、細胞(例えば、T細胞)は、CARをコードする、核酸、例えばmRNA、cDNA、DNAでトランスフェクトされる。いくつかのこのような実施形態において、細胞は、CARを一過性発現することができる。
【0126】
一態様において、抗CD19タンパク質のCAR結合部分は、scFv抗体フラグメントである。一態様において、このような抗体フラグメントは、それらが等価な結合親和性を保持する、例えばそれらがその元となったIgG抗体と同等の効能で同じ抗原と結合するという点において機能的である。一態様において、このような抗体フラグメントは、それらが、これらに限定されないが、当業者によって理解されると予想されるような免疫反応の活性化、その標的抗原からのシグナル伝達開始の阻害、キナーゼ活性の阻害、および同種のものなどの生体反応をもたらす点で機能的である。一態様において、CARの抗CD19抗原結合ドメインは、その元となったscFvのマウス配列と比較してヒト化されたscFv抗体フラグメントである。一態様において、親のマウスscFv配列は、PCT公開WO2012/079000で提供され、本明細書では配列番号58として提供される配列CAR19コンストラクトである。
【0127】
いくつかの態様において、本発明の抗体は、キメラ抗原受容体(CAR)に取り入れられる。一態様において、CARは、PCT公開WO2012/079000で配列番号12として提供され、本明細書では配列番号58として提供される配列ポリペプチド配列を含み、ここでscFvドメインは、配列番号1~12から選択される1つまたは複数の配列で置換されている。一態様において、配列番号1~12のscFvドメインは、配列番号59のscFvドメインのヒト化変異体であり、これは、ヒトCD19に特異的に結合するマウス由来のscFvフラグメントである。マウス特異的な残基が、CART19処置、例えばCAR19コンストラクトで形質導入されたT細胞での処置を受ける患者においてヒト抗マウス抗原(HAMA)応答を誘導する可能性がある臨床条件にとっては、このマウスscFvのヒト化が望ましい場合がある。
【0128】
一態様において、抗CD19結合ドメイン、例えば本発明のCARの一部であるヒト化scFvは、その配列のコドンが哺乳動物細胞での発現に最適化された導入遺伝子によってコードされている。一態様において、本発明のCARコンストラクト全体は、その配列全体のコドンが哺乳動物細胞での発現に最適化された導入遺伝子によってコードされている。コドンの最適化は、コードDNA中の同義コドン(すなわち、同じアミノ酸をコードするコドン)の出現頻度が異なる種で偏っているという発見を指す。このようなコドンの縮重は、同一なポリペプチドを様々なヌクレオチド配列でコードすることを可能にする。様々なコドン最適化方法が当業界公知であり、例えば、少なくとも米国特許第5,786,464号および6,114,148号で開示された方法が挙げられる。
【0129】
一態様において、ヒト化CAR19は、配列番号1で提供されるscFv部分を含む。一態様において、ヒト化CAR19は、配列番号2で提供されるscFv部分を含む。一態様において、ヒト化CAR19は、配列番号3で提供されるscFv部分を含む。一態様において、ヒト化CAR19は、配列番号4で提供されるscFv部分を含む。一態様において、ヒト化CAR19は、配列番号5で提供されるscFv部分を含む。一態様において、ヒト化CAR19は、配列番号6で提供されるscFv部分を含む。一態様において、ヒト化CAR19は、配列番号7で提供されるscFv部分を含む。一態様において、ヒト化CAR19は、配列番号8で提供されるscFv部分を含む。一態様において、ヒト化CAR19は、配列番号9で提供されるscFv部分を含む。一態様において、ヒト化CAR19は、配列番号10で提供されるscFv部分を含む。一態様において、ヒト化CAR19は、配列番号11で提供されるscFv部分を含む。一態様において、ヒト化CAR19は、配列番号12で提供されるscFv部分を含む。
【0130】
一態様において、本発明のCARは、特異的な抗体抗原結合ドメインを細胞内シグナル伝達分子と組み合わせている。例えば、いくつかの態様において、細胞内シグナル伝達分子としては、これらに限定されないが、CD3-ゼータ鎖、4-1BBおよびCD28シグナル伝達モジュールならびにそれらの組み合わせが挙げられる。一態様において、抗原結合ドメインは、CD19に結合する。一態様において、CD19CARは、配列番号31~42の1つまたは複数で提供される配列から選択されるCARを含む。一態様において、CD19CARは、配列番号31で提供される配列を含む。一態様において、CD19CARは、配列番号32で提供される配列を含む。一態様において、CD19CARは、配列番号33で提供される配列を含む。一態様において、CD19CARは、配列番号34で提供される配列を含む。一態様において、CD19CARは、配列番号35で提供される配列を含む。一態様において、CD19CARは、配列番号36で提供される配列を含む。一態様において、CD19CARは、配列番号37で提供される配列を含む。一態様において、CD19CARは、配列番号38で提供される配列を含む。一態様において、CD19CARは、配列番号39で提供される配列を含む。一態様において、CD19CARは、配列番号40で提供される配列を含む。一態様において、CD19CARは、配列番号41で提供される配列を含む。一態様において、CD19CARは、配列番号42で提供される配列を含む。
【0131】
さらに本発明は、疾患のなかでも、がんもしくはあらゆる悪性腫瘍、またはCD19を発現する細胞もしくは組織を伴う自己免疫疾患を処置するための医薬品または方法における、CD19CAR組成物およびそれらの使用を提供する。
【0132】
一態様において、本発明のCARは、CD19を発現する正常細胞を根絶するのに使用することができ、それによって細胞移植前の細胞調整療法(cellular conditioning therapy)として使用するために適用できる。一態様において、CD19を発現する正常細胞は、CD19を発現する正常幹細胞であり、細胞移植は、幹細胞移植である。
【0133】
一態様において、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように加工された細胞(例えば、T細胞)を提供し、ここでCART細胞(「CART」)は、抗腫瘍特性を示す。好ましい抗原は、CD19である。一態様において、CARの抗原結合ドメインは、部分的にヒト化された抗CD19抗体フラグメントを含む。一態様において、CARの抗原結合ドメインは、scFvを含む部分的にヒト化された抗CD19抗体フラグメントを含む。したがって、本発明は、ヒト化抗CD19結合ドメインを含み、T細胞に取り込ませたCD19-CAR、およびそれらを養子療法に使用する方法を提供する。
【0134】
一態様において、CD19-CARは、CD137(4-1BB)シグナル伝達ドメイン、CD28シグナル伝達ドメイン、CD3ゼータシグナルドメイン、およびそれらのあらゆる組み合わせの群より選択される少なくとも1つの細胞内ドメインを含む。一態様において、CD19-CARは、CD137(4-1BB)またはCD28以外の1つまたは複数の共刺激分子由来の少なくとも1つの細胞内シグナル伝達ドメインを含む。
【0135】
キメラ抗原受容体(CAR)
本発明は、CARをコードする配列を含む組換えDNAコンストラクトを包含し、ここでCARは、CD19、例えばヒトCD19に特異的に結合するヒト化抗体フラグメントを含み、該抗体フラグメントの配列は、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列と連続しておりそれと同じリーディングフレーム内にある。細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激シグナル伝達ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメイン、例えばゼータ鎖を含んでいてもよい。共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内ドメインの少なくとも一部を含むCARの一部を指す。
【0136】
具体的な態様において、本発明のCARコンストラクトは、配列番号1~12からなる群より選択されるscFvドメインを含み、ここでscFvの前に、配列番号13で提供されるもののような任意のリーダー配列、それに続いて配列番号14または配列番号45または配列番号47または配列番号49で提供されるもののような任意のヒンジ配列、配列番号15で提供されるもののような膜貫通領域、配列番号16または配列番号51などの細胞内シグナル伝達ドメイン、および配列番号17または配列番号43などのCD3ゼータ配列が存在していてもよく、ここでドメインは連続しており同じリーディングフレーム内にあり、単一の融合タンパク質を形成する。また本発明は、配列番号(SEQ IS NO:)1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11および配列番号12からなる群より選択されるscFvフラグメント(fratgments)のそれぞれのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列も包含する。また本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11および配列番号12からなる群より選択されるscFvフラグメントのそれぞれ、ならびに配列番号13~17のドメインのそれぞれのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、加えてコードされた本発明のCD19CAR融合タンパク質も包含する。一態様において、典型的なCD19CARコンストラクトは、任意のリーダー配列、細胞外抗原結合ドメイン、ヒンジ、膜貫通ドメイン、および細胞内刺激ドメインを含む。一態様において、典型的なCD19CARコンストラクトは、任意のリーダー配列、細胞外抗原結合ドメイン、ヒンジ、膜貫通ドメイン、細胞内共刺激ドメインおよび細胞内刺激ドメインを含む。本発明のヒト化scFvドメインを含有する具体的なCD19CARコンストラクトは、配列番号31~42として提供される。
【0137】
また全長CAR配列も、表3で示されるように、本明細書では配列番号31~42として提供される。
【0138】
典型的なリーダー配列は、配列番号13として提供される。典型的なヒンジ/スペーサー配列は、配列番号14または配列番号45または配列番号47または配列番号49として提供される。典型的な膜貫通ドメイン配列は、配列番号15として提供される。4-1BBタンパク質の細胞内シグナル伝達ドメインの典型的な配列は、配列番号16として提供される。CD27の細胞内シグナル伝達ドメインの典型的な配列は、配列番号51として提供される。典型的なCD3ゼータドメイン配列は、配列番号17または配列番号43として提供される。
【0139】
一態様において、本発明は、CARをコードする核酸分子を含む組換え核酸コンストラクトを包含し、ここで該核酸分子は、例えば本明細書で説明される、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列と連続しておりそれと同じリーディングフレーム内にある抗CD19結合ドメインをコードする核酸配列を含む。一態様において、抗CD19結合ドメインは、配列番号1~12の1つまたは複数から選択される。一態様において、抗CD19結合ドメインは、配列番号61~72の1つまたは複数で提供される配列のヌクレオチド残基64~813によってコードされている。一態様において、抗CD19結合ドメインは、配列番号61のヌクレオチド残基64~813によってコードされている。一態様において、抗CD19結合ドメインは、配列番号62のヌクレオチド残基64~813によってコードされている。一態様において、抗CD19結合ドメインは、配列番号63のヌクレオチド残基64~813によってコードされている。一態様において、抗CD19結合ドメインは、配列番号64のヌクレオチド残基64~813によってコードされている。一態様において、抗CD19結合ドメインは、配列番号65のヌクレオチド残基64~813によってコードされている。一態様において、抗CD19結合ドメインは、配列番号66のヌクレオチド残基64~813によってコードされている。一態様において、抗CD19結合ドメインは、配列番号67のヌクレオチド残基64~813によってコードされている。一態様において、抗CD19結合ドメインは、配列番号68のヌクレオチド残基64~813によってコードされている。一態様において、抗CD19結合ドメインは、配列番号69のヌクレオチド残基64~813によってコードされている。一態様において、抗CD19結合ドメインは、配列番号70のヌクレオチド残基64~813によってコードされている。一態様において、抗CD19結合ドメインは、配列番号71のヌクレオチド残基64~813によってコードされている。一態様において、抗CD19結合ドメインは、配列番号72のヌクレオチド残基64~813によってコードされている。
【0140】
一態様において、本発明は、CARをコードする導入遺伝子を含む組換え核酸コンストラクトを包含し、ここで該核酸分子は、配列番号61~72の1つまたは複数から選択される抗CD19結合ドメインをコードする核酸配列を含み、ここで該配列は、細胞内シグナル伝達ドメインをコードする核酸配列と連続しておりそれと同じリーディングフレーム内にある。CARにおいて使用できる典型的な細胞内シグナル伝達ドメインとしては、これらに限定されないが、例えば、CD3-ゼータ、CD28、4-1BB、および同種のものの1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインが挙げられる。いくつかの場合において、CARは、CD3-ゼータ、CD28、4-1BB、および同種のもののあらゆる組み合わせを含んでいてもよい。一態様において、本発明のCARコンストラクトの核酸配列は、配列番号85~96の1つまたは複数から選択される。一態様において、CARコンストラクトの核酸配列は、配列番号85である。一態様において、CARコンストラクトの核酸配列は、配列番号86である。一態様において、CARコンストラクトの核酸配列は、配列番号87である。一態様において、CARコンストラクトの核酸配列は、配列番号88である。一態様において、CARコンストラクトの核酸配列は、配列番号89である。一態様において、CARコンストラクトの核酸配列は、配列番号90である。一態様において、CARコンストラクトの核酸配列は、配列番号91である。一態様において、CARコンストラクトの核酸配列は、配列番号92である。一態様において、CARコンストラクトの核酸配列は、配列番号93である。一態様において、CARコンストラクトの核酸配列は、配列番号94である。一態様において、CARコンストラクトの核酸配列は、配列番号95である。一態様において、CARコンストラクトの核酸配列は、配列番号96である。一態様において、CARコンストラクトの核酸配列は、配列番号97である。一態様において、CARコンストラクトの核酸配列は、配列番号98である。一態様において、CARコンストラクトの核酸配列は、配列番号99である。
【0141】
所望の分子をコードする核酸配列は、当業界公知の組換え方法を使用して得ることができ、例えば遺伝子を発現する細胞からのライブラリーをスクリーニングすること、遺伝子を包含することがわかっているベクターからその遺伝子を抽出すること、またはその遺伝子を含有する細胞および組織から標準的な技術を使用して直接単離することなどによって得ることができる。その代わりに、対象の核酸は、クローニングされるのではなく合成的に産生されてもよい。
【0142】
本発明は、細胞に直接形質導入することができる、CARを発現するレトロウイルスおよびレンチウイルスベクターコンストラクトを包含する。
【0143】
本発明はまた、細胞に直接トランスフェクトすることができるRNAコンストラクトも包含する。トランスフェクションで使用するためのmRNAを生成するための方法は、長さが典型的には50~2000塩基の3’および5’非翻訳配列(「UTR」)、5’キャップおよび/または内部リボソーム侵入部位(IRES)、発現しようとする核酸、およびポリAテールを含有するコンストラクト(配列番号118)を産生するために、インビトロでの特別に設計されたプライマーを用いた鋳型の転写(IVT)、それに続くポリA付加を含む。このようにして産生されたRNAは、異なる種の細胞に効率的にトランスフェクトすることができる。一実施形態において、鋳型は、CARに関する配列を包含する。ある実施形態において、RNA CARベクターは、エレクトロポレーションによってT細胞に形質導入される。
【0144】
抗原結合ドメイン
一態様において、本発明のCARは、標的特異的な結合要素を含み、これはそれ以外にも抗原結合ドメインとも称される。成分の選択は、標的細胞表面を特徴付けるリガンドのタイプおよび数に依存する。例えば、抗原結合ドメインは、特定の病状に関連する標的細胞上の細胞表面マーカーとして作用するリガンドを認識するように選ぶことができる。したがって、本発明のCARにおける抗原結合ドメインのリガンドとして作用する可能性がある細胞表面マーカーの例としては、ウイルス、細菌および寄生虫感染、自己免疫疾患ならびにがん細胞に関連するものが挙げられる。
【0145】
一態様において、所望の抗原と特異的に結合する抗原結合ドメインをCARに取り込ませる目的で、CARが介在するT細胞応答は、対象の抗原に向けられていてもよい。
【0146】
一態様において、抗原結合ドメインを含むCARの一部は、CD19を標的とする抗原結合ドメインを含む。一態様において、抗原結合ドメインは、ヒトCD19を標的とする。一態様において、CARの抗原結合ドメインは、Nicholson et al. Mol. Immun. 34 (16-17): 1157-1165 (1997)で説明されているFMC63のscFvフラグメントと同じまたは類似の結合特異性を有する。
【0147】
抗原結合ドメインは、例えば、これらに限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、およびそれらの機能的なフラグメント、例えば、これらに限定されないが、単一ドメイン抗体、例えばラクダ由来のナノボディの重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)および可変ドメイン(VHH)など、ならびに抗原結合ドメインとして機能することが当業界公知の代替足場、例えば組換えフィブロネクチンドメイン、および同種のものなどの抗原に結合するあらゆるドメインであり得る。いくつかの場合において、抗原結合ドメインにとって、CARが最終的に使用されると予想される同じ種由来であることが有益である。例えば、ヒトで使用するためには、CARの抗原結合ドメインにとって、抗体または抗体フラグメントの抗原結合ドメインに関してヒトまたはヒト化残基を含むことが有益であり得る。
【0148】
したがって、一態様において、抗原結合ドメインは、ヒト化抗体または抗体フラグメントを含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、本明細書で説明されるヒト化抗CD19結合ドメインの軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)、および軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)の1つまたは複数(例えば、3つ全て)、および/または本明細書で説明されるヒト化抗CD19結合ドメインの重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、および重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)の1つまたは複数(例えば、3つ全て)を含み、例えば、ヒト化抗CD19結合ドメインは、1つまたは複数の、例えば3つ全てのLC CDRおよび1つまたは複数の、例えば3つ全てのHC CDRを含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、本明細書で説明されるヒト化抗CD19結合ドメインの重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、および重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)の1つまたは複数(例えば、3つ全て)を含み、例えば、ヒト化抗CD19結合ドメインは、それぞれ本明細書で説明されるHC CDR1、HC CDR2およびHC CDR3を含む2つの可変重鎖領域を有する。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、本明細書で説明される(例えば、表3に記載の)ヒト化軽鎖可変領域および/または本明細書で説明される(例えば、表3に記載の)ヒト化重鎖可変領域を含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、本明細書で説明される(例えば、表3に記載の)ヒト化重鎖可変領域、例えば、少なくとも2つの本明細書で説明される(例えば、表3に記載の)ヒト化重鎖可変領域を含む。一実施形態において、抗CD19結合ドメインは、表3のアミノ酸配列の軽鎖および重鎖を含むscFvである。ある実施形態において、抗CD19結合ドメイン(例えば、scFv)は、表3に示される軽鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが30、20もしくは10個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、もしくは表3のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域;および/または表3に示される重鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つもしくは3つの改変(例えば、置換)であるが30、20もしくは10個以下の改変(例えば、置換)を有するアミノ酸配列、もしくは表3のアミノ酸配列と95~99%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択される配列、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインをコードする核酸配列は、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号70、配列番号71および配列番号72からなる群より選択される配列、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、scFvであり、本明細書で説明される、例えば表3に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域は、本明細書で説明される、例えば表3に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域に、リンカー、例えば本明細書で説明されるリンカーを介して付着している。一実施形態において、ヒト化抗CD19結合ドメインは、(Gly-Ser)nリンカーを包含し、ここでnは、1、2、3、4、5、または6であり、好ましくは3または4である(配列番号53)。scFvの軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、例えば、以下の配置:軽鎖可変領域-リンカー-重鎖可変領域または重鎖可変領域-リンカー-軽鎖可変領域のいずれであってもよい。
【0149】
一態様において、抗原結合ドメイン部分は、配列番号1~12から選択される1つまたは複数の配列を含む。一態様において、ヒト化CARは、配列番号31~42から選択される1つまたは複数の配列から選択される。いくつかの態様において、非ヒト抗体は、ヒト化されており、この場合、該抗体の特異的な配列または領域は、ヒトにおいて自然に産生された抗体またはそれらのフラグメントに対する類似性が増加するように改変される。一態様において、抗原結合ドメインがヒト化されている。
【0150】
ヒト化抗体は、当業界公知の様々な技術を使用して産生することができ、このような技術としては、これらに限定されないが、CDRグラフティング(例えば、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み入れられる欧州特許EP239,400号;国際特許公開WO91/09967;および米国特許第5,225,539号、5,530,101号、および5,585,089号を参照)、ベニアリング(veneering)またはリサーフェイシング(resurfacing)[例えば、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み入れられる欧州特許EP592,106号およびEP519,596号;Padlan, 1991, Molecular Immunology, 28(4/5):489-498;Studnicka et al., 1994, Protein Engineering, 7(6):805-814;およびRoguska et al., 1994, PNAS, 91:969-973を参照]、チェーンシャッフリング(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第5,565,332号を参照)、ならびに例えば、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2005/0042664号、米国特許出願公開第2005/0048617号、米国特許第6,407,213号、米国特許第5,766,886号、国際特許公開WO9317105、Tan et al., J. Immunol., 169:1119-25 (2002)、Caldas et al., Protein Eng., 13(5):353-60 (2000)、Morea et al., Methods, 20(3):267-79 (2000)、Baca et al., J. Biol. Chem., 272(16):10678-84 (1997)、Roguska et al., Protein Eng., 9(10):895-904 (1996)、Couto et al., Cancer Res., 55 (23 Supp):5973s-5977s (1995)、Couto et al., Cancer Res., 55(8):1717-22 (1995)、Sandhu J S, Gene, 150(2):409-10 (1994)、およびPedersen et al., J. Mol. Biol., 235(3):959-73 (1994)で開示された技術などが挙げられる。抗原結合を変更する、例えば向上させるために、しばしばフレームワーク領域中のフレームワーク残基は、CDRドナー抗体からの対応する残基で置換されると予想される。これらのフレームワーク置換は、当業界周知の方法によって同定され、例えば、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定するための、CDRおよびフレームワーク残基の相互作用のモデリング、および特定の位置における異常なフレームワーク残基を同定するための配列比較によって同定される(例えば、参照によりそれらの全体が開示に組み入れられるQueen et alの米国特許第5,585,089号;およびRiechmann et al., 1988, Nature, 332:323を参照)。
【0151】
ヒト化抗体または抗体フラグメントは、その中に非ヒトである源からの残存する1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」残基と称されることが多く、これは、典型的には「移入」可変ドメインから採取される。本明細書で示したように、ヒト化抗体または抗体フラグメントは、非ヒト免疫グロブリン分子からの1つまたは複数のCDRおよびフレームワーク領域を含み、ここでフレームワークを含むアミノ酸残基は、完全にまたは大部分がヒト生殖細胞系由来である。抗体または抗体フラグメントのヒト化に関する複数の技術が当業界周知であり、本質的に、Winterおよび協同研究者の方法[Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature, 332:323-327 (1988);Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988)]に従って、げっ歯類CDRまたはヒト抗体の対応する配列に関するCDR配列を置換すること、すなわち、CDRグラフティング(その内容が参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられるEP239,400;PCT公開WO91/09967;および米国特許第4,816,567号;6,331,415号;5,225,539号;5,530,101号;5,585,089号;6,548,640号)によって行うことができる。このようなヒト化抗体および抗体フラグメントにおいて、無傷のヒト可変ドメインより実質的に小さい部分が、非ヒト種からの対応する配列で置換されている。ヒト化抗体は、いくつかのCDR残基および場合によってはいくつかのフレームワーク(FR)残基がげっ歯類抗体中の類似の部位からの残基で置換されているヒト抗体であることが多い。また抗体および抗体フラグメントのヒト化は、ベニアリングまたはリサーフェイシング[その内容が参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられるEP592,106;EP519,596;Padlan, 1991, Molecular Immunology, 28(4/5):489-498;Studnicka et al., Protein Engineering, 7(6):805-814 (1994);およびRoguska et al., PNAS, 91:969-973 (1994)]またはチェーンシャッフリング(米国特許第5,565,332号)によっても達成することができる。
【0152】
ヒト化抗体を作製するのに使用するために、軽鎖および重鎖の両方のヒト可変ドメインを選択することは、抗原性を低下させることになる。いわゆる「最良適合(best-fit)」法に従って、公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してげっ歯類抗体の可変ドメインの配列がスクリーニングされる。次いでげっ歯類配列に最も近いヒト配列がヒト化抗体のためのヒトフレームワーク(FR)として容認される[その内容が参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられるSims et al., J. Immunol., 151:2296 (1993);Chothia et al., J. Mol. Biol., 196:901 (1987)]。別の方法は、軽鎖または重鎖の特定のサブグループにおける全てのヒト抗体のコンセンサス配列由来の特定のフレームワークを使用する。様々な異なるヒト化抗体に同じフレームワークを使用することができる[例えば、その内容が参照によりそれらの全体として本明細書に組み入れられるNicholson et al. Mol. Immun. 34 (16-17): 1157-1165 (1997);Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);Presta et al., J. Immunol., 151:2623 (1993)を参照]。いくつかの実施形態において、フレームワーク領域、例えば重鎖可変領域の全ての4つのフレームワーク領域は、VH4_4-59生殖細胞系配列由来である。一実施形態において、フレームワーク領域は、例えば、対応するマウス配列(例えば、配列番号58の)におけるアミノ酸からの1、2、3、4または5つの改変、例えば置換を含んでいてもよい。一実施形態において、フレームワーク領域、例えば軽鎖可変領域の全ての4つのフレームワーク領域は、VK3_1.25生殖細胞系配列由来である。一実施形態において、フレームワーク領域は、例えば、対応するマウス配列(例えば、配列番号58の)におけるアミノ酸からの1、2、3、4または5つの改変、例えば置換を含んでいてもよい。
【0153】
いくつかの態様において、抗体フラグメントを含む本発明のCAR組成物の一部は、標的抗原への高親和性および他の好都合な生物学的特性を保持したままヒト化される。本発明の一態様によれば、ヒト化抗体および抗体フラグメントは、親の配列およびヒト化された配列の三次元モデルを使用して、親の配列および様々な概念的なヒト化生成物を分析するプロセスによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルが一般的に入手可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の可能性がある三次元立体配座構造を例示して表示するコンピュータープログラムが利用可能である。これらの表示を精査することで、候補免疫グロブリン配列の機能化において見込みのある残基の役割の分析、例えば、候補免疫グロブリンの標的抗原と結合する能力に影響を与える残基の分析が可能になる。この方法で、標的抗原に対する高い親和性などの所望の抗体または抗体フラグメントの特徴が達成されるように、レシピエントおよび移入配列からFR残基を選択して組み合わせることができる。一般的に、CDR残基が、直接的にかつ最も実質的に抗原結合への影響に関与する。
【0154】
ヒト化抗体または抗体フラグメントは、元の抗体と類似の抗原特異性、例えば、本発明においてはヒトCD19と結合する能力を保持している可能性がある。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体または抗体フラグメントは、ヒトCD19への結合の向上した親和性および/または特異性を有する可能性がある。
【0155】
一態様において、抗CD19結合ドメインは、抗体または抗体フラグメントの特定の機能的な特徴または特性を特徴とする。例えば、一態様において、抗原結合ドメインを含む本発明のCAR組成物の一部は、ヒトCD19に特異的に結合する。一態様において、抗原結合ドメインは、Nicholson et al. Mol. Immun. 34 (16-17): 1157-1165 (1997)で説明されているFMC63scFvと同じまたは類似した、ヒトCD19への結合特異性を有する。一態様において、本発明は、抗体または抗体フラグメントを含む抗原結合ドメインであって、ここで抗体結合ドメインは、CD19タンパク質またはそれらのフラグメントに特異的に結合し、抗体または抗体フラグメントは、配列番号1~12のアミノ酸配列を包含する可変軽鎖および/または可変重鎖を含む、ドメインに関する。一態様において、抗原結合ドメインは、配列番号1~12から選択されるscFvのアミノ酸配列を含む。所定の態様において、scFvは、リーダー配列と連続しておりそれと同じリーディングフレーム内にある。一態様において、リーダー配列は、配列番号13として提供されるポリペプチド配列である。
【0156】
一態様において、抗CD19結合ドメインは、フラグメント、例えば単鎖可変フラグメント(scFv)である。一態様において、抗CD19結合ドメインは、Fv、Fab、a(Fab’)2、または二機能性(例えば二重特異的)ハイブリッド抗体[例えば、Lanzavecchia et al., Eur. J. Immunol. 17, 105 (1987)]である。一態様において、本発明の抗体およびそれらのフラグメントは、野生型の、または強化された親和性でCD19タンパク質と結合する。
【0157】
いくつかの場合において、scFvは、当業界公知の方法に従って調製できる[例えば、Bird et al., (1988) Science 242:423-426およびHuston et al., (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照]。scFv分子は、フレキシブルなポリペプチドリンカーを使用してVHおよびVL領域を一緒に連結することによって産生することができる。scFv分子は、長さおよび/またはアミノ酸組成が最適化されたリンカー(例えば、Ser-Glyリンカー)を含む。リンカーの長さは、scFvの可変領域がどのようにフォールディングして相互作用するかに大きく影響を与える可能性がある。実際、短いポリペプチドリンカーが採用される場合(例えば、5~10アミノ酸の間)、鎖内のフォールディングが予防される。鎖間のフォールディングは、2つの可変領域を一緒に架橋して機能的なエピトープ結合部位を形成するのにも必要である。リンカーの方向およびサイズの例に関しては、例えば、参照により本明細書に組み入れられるHollinger et al. 1993 Proc Natl Acad. Sci. U.S.A. 90:6444-6448、米国特許出願公開第2005/0100543号、2005/0175606号、2007/0014794号、およびPCT公開WO2006/020258およびWO2007/024715を参照されたい。
【0158】
scFvは、そのVLとVH領域との間に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50アミノ酸残基、またはそれより多くのアミノ酸残基のリンカーを含んでいてもよい。リンカー配列は、あらゆる天然に存在するアミノ酸を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、リンカー配列は、アミノ酸であるグリシンおよびセリンを含む。別の実施形態において、リンカー配列は、一連のグリシンおよびセリン反復を含み、例えば(GlySer)nを含み、ここで式中nは、1以上の正の整数である(配列番号18)。一実施形態において、リンカーは、(GlySer)(配列番号106)または(GlySer)(配列番号107)であってもよい。リンカーの長さを変化させることで、活性を保持したりまたは強化したりすることが可能であり、それにより活性研究において優れた効能がもたらされる。
【0159】
安定性および突然変異
抗CD19結合ドメイン、例えばscFv分子(例えば、可溶性scFv)の安定性は、従来の対照scFv分子または全長抗体の生物物理学的特性(例えば、熱安定性)を参照して評価することができる。一実施形態において、ヒト化scFvは、説明されているアッセイにおいて、対照結合分子(例えば従来のscFv分子)よりも、摂氏約0.1、約0.25、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約1.75、約2、約2.5、約3、約3.5、約4、約4.5、約5、約5.5、約6、約6.5、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5、約10度、約11度、約12度、約13度、約14度、または約15度高い熱安定性を有する。
【0160】
抗CD19結合ドメイン、例えばscFvの熱安定性の向上は、続いてCART19コンストラクト全体にも付与されることから、CART19コンストラクトの治療特性の向上がもたらされる。抗CD19結合ドメイン、例えばscFvの熱安定性は、従来の抗体と比較して少なくとも約2℃または3℃向上させることができる。一実施形態において、抗CD19結合ドメイン、例えばscFvは、従来の抗体と比較して1℃向上した熱安定性を有する。別の実施形態において、抗CD19結合ドメイン、例えばscFvは、従来の抗体と比較して2℃向上した熱安定性を有する。別の実施形態において、scFvは、従来の抗体と比較して4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15℃向上した熱安定性を有する。比較は、例えば、本明細書で開示されたscFv分子と、scFvのVHおよびVLを得た抗体のscFv分子またはFabフラグメントとの間で行うことができる。熱安定性は、当業界公知の方法を使用して測定できる。例えば、一実施形態において、Tmを測定してもよい。以下で、Tmの測定方法および他のタンパク質の安定性の決定方法をより詳細に説明する。
【0161】
scFvにおける突然変異(可溶性scFvのヒト化または直接の変異誘発を介して生じた)は、scFvの安定性を変更し、scFvおよびCART19コンストラクトの全体的な安定性を向上させる。ヒト化scFvの安定性は、Tm、温度による変性および温度による凝集などの測定を使用してマウスscFvと比較される。
【0162】
突然変異scFvの結合能力は、実施例で説明されるアッセイを使用して決定することができる。
【0163】
一実施形態において、突然変異したscFvによってCART19コンストラクトに安定性の向上が付与されるように、抗CD19結合ドメイン、例えばscFvは、ヒト化プロセスから生じる少なくとも1つの突然変異を含む。別の実施形態において、突然変異したscFvによってCART19コンストラクトに安定性の向上が付与されるように、抗CD19結合ドメイン、例えばscFvは、ヒト化プロセスから生じる少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の突然変異を含む。
【0164】
タンパク質の安定性を評価する方法
抗原結合ドメインの安定性は、例えば後述される方法を使用して検討してもよい。このような方法によれば、最も安定でないドメインがそもそもフォールディングしないか、または協調的にフォールディングしないマルチドメインユニット(例えば、単一のアンフォールディング転移を示すマルチドメインタンパク質)の全体的な安定性の限界を制限するかのいずれかである複数の熱的アンフォールディング転移(thermal unfolding transition)を決定することができる。最も安定でないドメインは、多数の追加の方法で同定することができる。どのドメインが全体的な安定性を制限するのかを探査するために、変異誘発を行うことができる。加えて、マルチドメインタンパク質のプロテアーゼ耐性は、最も安定でないドメインが本質的にフォールディングされないことがわかっている条件下で、DSCまたは他の分光分析方法を介して達成することができる[Fontana, et al., (1997) Fold. Des., 2: R17-26; Dimasi et al. (2009) J. Mol. Biol. 393: 672-692]。最も安定でないドメインが同定されたら、このドメイン(またはそれらの一部)をコードする配列が、本方法におけるテスト配列として採用される可能性がある。
【0165】
a)熱安定性
組成物の熱安定性は、多数の非限定的な生物物理学的または生化学的な当業界公知の技術を使用して分析することができる。所定の実施形態において、熱安定性は、解析的分光分析によって評価される。
【0166】
典型的な解析的分光分析方法は、示差走査熱量測定(DSC)である。DSCは、大部分のタンパク質またはタンパク質ドメインのアンフォールディングに伴う吸熱に感受性を有する熱量計を採用する(例えば、Sanchez-Ruiz, et al., Biochemistry, 27: 1648-52, 1988を参照)。タンパク質の熱安定性を決定するためには、熱量計にタンパク質のサンプルを挿入し、FabまたはscFvがフォールディングしなくなるまで温度を上げる。タンパク質がフォールディングしない温度が、全体的なタンパク質の安定性の指標である。
【0167】
別の典型的な解析的分光分析方法は、円偏光二色性(CD)分光法である。CD分光分析は、組成物の光学活性を、温度上昇の関数として測定する。円偏光二色性(CD)分光法は、構造的な非対称によって生じる左回り偏光と右回り偏光との吸収の差を測定する。無秩序な、またはフォールディングしていない構造は、規則正しい、またはフォールディングしている構造のCDスペクトルとは極めて異なるCDスペクトルをもたらす。CDスペクトルは、温度上昇による変性作用に対するタンパク質の感受性を反映することから、タンパク質の熱安定性の指標である[van Mierlo and Steemsma, J. Biotechnol., 79(3):281-98, 2000を参照]。
【0168】
熱安定性を測定するための別の典型的な解析的分光分析方法は、蛍光発光分光法である(上記のvan Mierlo and Steemsmaを参照)。熱安定性を測定するためのさらに別の典型的な解析的分光分析方法は、核磁気共鳴(NMR)分光法である(例えば上記のvan Mierlo and Steemsmaを参照)。
【0169】
組成物の熱安定性は、生化学的に測定することができる。熱安定性を検討するための典型的な生化学的方法は、熱的誘発アッセイ(thermal challenge assay)である。「熱的誘発アッセイ」において、組成物は、設定された期間にわたり一連の温度上昇に晒される。例えば、一実施形態において、テストscFv分子またはscFv分子を含む分子は、例えば1~1.5時間にわたり一連の温度上昇に晒される。次いでタンパク質の活性が、適切な生化学アッセイによってアッセイされる。例えば、タンパク質が結合タンパク質(例えばscFvまたはscFv含有ポリペプチド)である場合、結合タンパク質の結合活性は、機能的または定量的ELISAによって決定することができる。
【0170】
このようなアッセイは、ハイスループット様式で行ってもよいし、E.コリ(E.coli)とハイスループットスクリーニングを使用した実施例で開示された様式で行ってもよい。抗CD19結合ドメイン、例えばscFv変異体のライブラリーは、当業界公知の方法を使用して作り出すこともできる。抗CD19結合ドメイン、例えばscFvの発現を誘導してもよいし、抗CD19結合ドメイン、例えばscFvを熱的誘発に晒してもよい。誘発されたテストサンプルを結合に関してアッセイしてもよく、そのうち安定な抗CD19結合ドメイン、例えばscFvをスケールアップしてさらに特徴付けてもよい。
【0171】
熱安定性は、上記の技術のいずれか(例えば解析的分光法技術)を使用して組成物の融解温度(Tm)を測定することによって評価される。融解温度とは、組成物の分子の50%がフォールディングした状況である温度遷移曲線の中点における温度である[例えば、Dimasi et al. (2009) J. Mol Biol. 393: 672-692を参照]。一実施形態において、抗CD19結合ドメイン、例えばscFvのTm値は、約40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃である。一実施形態において、IgGのTm値は、約40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃である。一実施形態において、多価抗体のTm値は、約40℃、41℃、42℃、43℃、44℃、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃、80℃、81℃、82℃、83℃、84℃、85℃、86℃、87℃、88℃、89℃、90℃、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃である。
【0172】
また熱安定性は、分析的な熱量測定技術(例えばDSC)を使用して組成物の比熱または熱容量(Cp)を測定することによっても評価される。組成物の比熱とは、1molの水の温度を1℃上昇させるのに必要なエネルギー(例えばkcal/molで示される)である。Cpが大きいほど、変性タンパク質または不活性なタンパク質の組成物であることの品質証明になる。組成物の熱容量(ΔCp)の変化は、その温度遷移の前と後に組成物の比熱を決定することによって測定される。また熱安定性は、アンフォールディングのギブスの自由エネルギー(ΔG)、アンフォールディングのエンタルピー(ΔH)、またはアンフォールディングのエントロピー(ΔS)などの熱力学的な安定性の他のパラメーターを測定または決定することによっても評価できる。上記の生化学アッセイの1種または複数(例えば熱的誘発アッセイ)を使用して、組成物の50%がその活性(例えば結合活性)を保持する温度(すなわちT値)が決定される。
【0173】
加えて、抗CD19結合ドメイン、例えばscFvへの突然変異により、抗CD19結合ドメイン、例えばscFvの熱安定性は、突然変異していない抗CD19結合ドメイン、例えばscFvと比較して変化する。ヒト化抗CD19結合ドメイン、例えばscFvがCART19コンストラクトに取り入れられると、抗CD19結合ドメイン、例えばヒト化scFvは、抗CD19CARTコンストラクト全体に熱安定性を付与する。一実施形態において、抗CD19結合ドメイン、例えばscFvは、抗CD19結合ドメイン、例えばscFvに熱安定性を付与する単一の突然変異を含む。別の実施形態において、抗CD19結合ドメイン、例えばscFvは、抗CD19結合ドメイン、例えばscFvに熱安定性を付与する複数の突然変異を含む。一実施形態において、抗CD19結合ドメイン、例えばscFv中の複数の突然変異は、抗CD19結合ドメイン、例えばscFvの熱安定性に対する相加効果を有する。
【0174】
b)凝集%
組成物の安定性は、その凝集する性質を測定することによって決定することができる。凝集は、多数の非限定的な生化学的または生物物理学技術によって測定できる。例えば、組成物の凝集は、クロマトグラフィー、例えばサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して評価してもよい。SECは、サイズに基づき分子を分離する。カラムは、イオンや小分子はそれらの内部に通すが大きいものは通さないと予想される高分子ゲルの半固体のビーズで充填されている。タンパク質組成物がカラム上部に適用されると、小型のフォールディングしたタンパク質(すなわち凝集していないタンパク質)は、大きいタンパク質凝集体を受け入れられる容量より大きい容量の溶媒中に分散される。結果的に大きい凝集体はカラムをより迅速に移動するので、このようにして混合物を分離したり、またはその構成要素に分画したりすることが可能になる。各画分は、ゲルから溶出したときに別々に定量することができる(例えば光散乱によって)。したがって、組成物の凝集%は、画分の濃度をゲルに適用されたタンパク質の総濃度と比較することによって決定することができる。安定な組成物は、本質的に単一の画分としてカラムから溶出して、溶出プロファイルまたはクロマトグラムにおいて本質的に単一のピークとして出現する。
【0175】
c)結合親和性
組成物の安定性は、その目標とする結合親和性を決定することによって検討することができる。結合親和性を決定するための多種多様の方法が当業界公知である。結合親和性を決定するための典型的な方法は、表面プラズモン共鳴を採用するものである。表面プラズモン共鳴とは、例えばBIAcoreのシステム(Pharmacia Biosensor AB、Uppsala、SwedenおよびPiscataway、N.J.)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度変化を検出することにより、リアルタイムの生体特異的な相互作用の分析を可能にする光学現象である。さらなる説明については、Jonsson, U., et al. (1993) Ann. Biol. Clin. 51:19-26;Jonsson, U., i (1991) Biotechniques 11:620-627;Johnsson, B., et al. (1995) J. Mol. Recognit. 8:125-131;およびJohnnson, B., et al. (1991) Anal. Biochem. 198:268-277を参照されたい。
【0176】
一態様において、CARの抗原結合ドメインは、本明細書で説明される抗原結合ドメインのアミノ酸配列に相同なアミノ酸配列を含み、抗原結合ドメインは、本明細書で説明される抗CD19抗体フラグメントの所望の機能特性を保持する。具体的な一態様において、本発明のCAR組成物は、抗体フラグメントを含む。さらなる態様において、その抗体フラグメントは、scFvを含む。
【0177】
様々な態様において、CARの抗原結合ドメインは、一方または両方の可変領域(例えば、VHおよび/またはVL)内、例えば1つもしくは複数のCDR領域内および/または1つもしくは複数のフレームワーク領域内の、1つまたは複数のアミノ酸を改変することによって加工される。具体的な一態様において、本発明のCAR組成物は、抗体フラグメントを含む。さらなる態様において、その抗体フラグメントは、scFvを含む。
【0178】
本発明の抗体または抗体フラグメントは、それらの所望の活性は変化させずにアミノ酸配列が変化するように(例えば、野生型から)さらに改変されてもよいことは、当業者には理解されるものと予想される。例えば、「非必須」アミノ酸残基においてアミノ酸置換をもたらす追加のヌクレオチド置換がタンパク質になされてもよい。例えば、分子中の非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置き換えられていてもよい。別の実施形態において、アミノ酸の鎖が、側鎖ファミリーの一員の、順番および/または組成において異なる構造的に類似した鎖で置き換えられていてもよく、例えば、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられる保存的置換がなされてもよい。
【0179】
類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当業界において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を包含する。
【0180】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の状況における完全同一(Percent identity)とは、2つ以上の配列が同一であることを指す。以下の配列比較アルゴリズムの1つを使用して、または手作業でのアライメントと目視検査により測定する場合、比較ウィンドウ、または指示された領域にわたり最大限一致するように比較して並べたときに、2つの配列が、同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドの特定のパーセンテージ(例えば、特定の領域にわたり、または特に指定されない場合は配列全体にわたり、60%の同一性であり、70%、71%。72%。73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%,81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性であってもよい)を有する場合、その2つの配列は「実質的に同一」である。同一性は、長さが少なくとも約50ヌクレオチド(または10アミノ酸)の領域にわたり、またはより好ましくは長さが100から500もしくは1000以上のヌクレオチド(または20、50、200以上のアミノ酸)の領域にわたり存在してもよい。
【0181】
配列の比較のために、典型的には1つの配列が、テスト配列と比較される参照配列として作用する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、テストおよび参照配列をコンピューターに入力し、部分配列の座標を指定し、必要に応じて配列アルゴリズムのプログラムパラメーターを指定する。デフォルトプログラムのパラメーターを使用してもよいし、または代替パラメーターを指定してもよい。次いで配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメーターに基づき参照配列に対するテスト配列のパーセント配列同一性を計算する。比較のための配列のアライメント方法は当業界周知である。比較のための最適な配列のアライメントは、例えば、Smith and Waterman, (1970) Adv. Appl. Math. 2:482cのローカルホモロジーアルゴリズムによって、Needleman and Wunsch, (1970) J. Mol. Biol. 48:443のホモロジーアライメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman, (1988) Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性検索方法によって、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実行(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、WIにおける、GAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)によって、または手作業でのアライメントと目視検査[例えば、Brent et al., (2003) Current Protocols in Molecular Biologyを参照]によって行うことができる。
【0182】
パーセント配列同一性および配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの2つの例は、BLASTおよびBLAST2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれ、Altschul et al., (1977) Nuc. Acids Res. 25:3389-3402;およびAltschul et al., (1990) J. Mol. Biol. 215:403-410で説明されている。BLAST分析を行うためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)を介して公共的に利用可能である。
【0183】
また2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれ、PAM120重量残基表、12のギャップの伸長ペナルティーおよび4のギャップペナルティーを使用するE.MeyersおよびW.Miller[(1988) Comput. Appl. Biosci. 4:11-17]のアルゴリズムを使用しても決定することができる。加えて、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム(www.gcg.comで利用可能)に組み込まれ、Blossom62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップウェイトおよび1、2、3、4、5、または6のレングスウェイトを使用するNeedlemanおよびWunsch[(1970) J. Mol. Biol. 48:444-453]のアルゴリズムを使用して決定することもできる。
【0184】
一態様において、本発明は、機能的に同等な分子を生成する開始時の抗体またはフラグメント(例えば、scFv)のアミノ酸配列の改変を意図している。例えば、CARに含まれる、抗CD19結合ドメイン、例えばscFvのVHまたはVLは、抗CD19結合ドメイン、例えばscFvの開始時のVHまたはVLフレームワーク領域の、少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%,81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性が保持されるように改変してもよい。本発明は、機能的に同等な分子を生成するために、CARコンストラクト全体の改変、例えば、CARコンストラクトの様々なドメインの1つまたは複数のアミノ酸配列における改変を意図している。CARコンストラクトは、開始時のCARコンストラクトの、少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%,81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性が保持されるように改変してもよい。
【0185】
膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインに関して、様々な実施形態において、CARの細胞外ドメインに付着した膜貫通ドメインが含まれるように、CARを設計することができる。膜貫通ドメインは、膜貫通領域に隣接する1つまたは複数の追加のアミノ酸、例えば、膜貫通が誘導されたタンパク質の細胞外領域と会合する1つまたは複数のアミノ酸(例えば、細胞外領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10から最大15のアミノ酸)、および/または膜貫通タンパク質が誘導されたタンパク質の細胞内領域に会合した1つまたは複数の追加のアミノ酸(例えば、細胞内領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10から最大15のアミノ酸)を包含していてもよい。一態様において、膜貫通ドメインは、使用されるCARの他のドメインの1つと会合しているドメインである。いくつかの場合において、膜貫通ドメインが同一または異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインと結合しないように、例えば、受容体複合体の他の一員との相互作用が最小化されるように、膜貫通ドメインを選択してもよいし、またはアミノ酸置換によって改変してもよい。一態様において、膜貫通ドメインは、CART細胞表面上の別のCARとのホモ二量体化であってもよい。異なる態様において、同じCARTに存在する天然の結合パートナーの結合ドメインとの相互作用が最小化されるように、膜貫通ドメインのアミノ酸配列を改変または置換してもよい。
【0186】
膜貫通ドメインは、天然源から得てもよいし、または組換え源から得てもよい。源が天然である場合、そのドメインは、あらゆる膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来するものであってもよい。一態様において、膜貫通ドメインは、CARが標的に結合したときはいつでも細胞内ドメインにシグナル伝達することができる。本発明において特に有用な膜貫通ドメインは、少なくとも、例えばT細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖の膜貫通領域、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154を包含し得る。
【0187】
いくつかの場合において、膜貫通ドメインは、ヒンジ、例えばヒトタンパク質由来のヒンジを介して、CARの細胞外領域、例えばCARの抗原結合ドメインに付着することができる。例えば、一実施形態において、ヒンジは、ヒトIg(免疫グロブリン)のヒンジ、例えばIgG4ヒンジ、またはCD8aヒンジであってもよい。一実施形態において、ヒンジまたはスペーサーは、配列番号14のアミノ酸配列を含む(例えば、からなる)。一態様において、膜貫通ドメインは、配列番号15の膜貫通ドメインを含む(例えば、からなる)。
【0188】
一態様において、ヒンジまたはスペーサーは、IgG4ヒンジを含む。例えば、一実施形態において、ヒンジまたはスペーサーは、アミノ酸配列ESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGKM(配列番号45)のヒンジを含む。いくつかの実施形態において、ヒンジまたはスペーサーは、GAGAGCAAGTACGGCCCTCCCTGCCCCCCTTGCCCTGCCCCCGAGTTCCTGGGCGGACCCAGCGTGTTCCTGTTCCCCCCCAAGCCCAAGGACACCCTGATGATCAGCCGGACCCCCGAGGTGACCTGTGTGGTGGTGGACGTGTCCCAGGAGGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCACAACGCCAAGACCAAGCCCCGGGAGGAGCAGTTCAATAGCACCTACCGGGTGGTGTCCGTGCTGACCGTGCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAATACAAGTGTAAGGTGTCCAACAAGGGCCTGCCCAGCAGCATCGAGAAAACCATCAGCAAGGCCAAGGGCCAGCCTCGGGAGCCCCAGGTGTACACCCTGCCCCCTAGCCAAGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTGGTGAAGGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAACGGCCAGCCCGAGAACAACTACAAGACCACCCCCCCTGTGCTGGACAGCGACGGCAGCTTCTTCCTGTACAGCCGGCTGACCGTGGACAAGAGCCGGTGGCAGGAGGGCAACGTCTTTAGCTGCTCCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAACCACTACACCCAGAAGAGCCTGAGCCTGTCCCTGGGCAAGATG(配列番号46)のヌクレオチド配列によってコードされたヒンジを含む。
【0189】
一態様において、ヒンジまたはスペーサーは、IgDヒンジを含む。例えば、一実施形態において、ヒンジまたはスペーサーは、アミノ酸配列RWPESPKAQASSVPTAQPQAEGSLAKATTAPATTRNTGRGGEEKKKEKEKEEQEERETKTPECPSHTQPLGVYLLTPAVQDLWLRDKATFTCFVVGSDLKDAHLTWEVAGKVPTGGVEEGLLERHSNGSQSQHSRLTLPRSLWNAGTSVTCTLNHPSLPPQRLMALREPAAQAPVKLSLNLLASSDPPEAASWLLCEVSGFSPPNILLMWLEDQREVNTSGFAPARPPPQPGSTTFWAWSVLRVPAPPSPQPATYTCVVSHEDSRTLLNASRSLEVSYVTDH(配列番号47)のヒンジを含む。いくつかの実施形態において、ヒンジまたはスペーサーは、ヌクレオチド配列AGGTGGCCCGAAAGTCCCAAGGCCCAGGCATCTAGTGTTCCTACTGCACAGCCCCAGGCAGAAGGCAGCCTAGCCAAAGCTACTACTGCACCTGCCACTACGCGCAATACTGGCCGTGGCGGGGAGGAGAAGAAAAAGGAGAAAGAGAAAGAAGAACAGGAAGAGAGGGAGACCAAGACCCCTGAATGTCCATCCCATACCCAGCCGCTGGGCGTCTATCTCTTGACTCCCGCAGTACAGGACTTGTGGCTTAGAGATAAGGCCACCTTTACATGTTTCGTCGTGGGCTCTGACCTGAAGGATGCCCATTTGACTTGGGAGGTTGCCGGAAAGGTACCCACAGGGGGGGTTGAGGAAGGGTTGCTGGAGCGCCATTCCAATGGCTCTCAGAGCCAGCACTCAAGACTCACCCTTCCGAGATCCCTGTGGAACGCCGGGACCTCTGTCACATGTACTCTAAATCATCCTAGCCTGCCCCCACAGCGTCTGATGGCCCTTAGAGAGCCAGCCGCCCAGGCACCAGTTAAGCTTAGCCTGAATCTGCTCGCCAGTAGTGATCCCCCAGAGGCCGCCAGCTGGCTCTTATGCGAAGTGTCCGGCTTTAGCCCGCCCAACATCTTGCTCATGTGGCTGGAGGACCAGCGAGAAGTGAACACCAGCGGCTTCGCTCCAGCCCGGCCCCCACCCCAGCCGGGTTCTACCACATTCTGGGCCTGGAGTGTCTTAAGGGTCCCAGCACCACCTAGCCCCCAGCCAGCCACATACACCTGTGTTGTGTCCCATGAAGATAGCAGGACCCTGCTAAATGCTTCTAGGAGTCTGGAGGTTTCCTACGTGACTGACCATT(配列番号48)によってコードされたヒンジを含む。
【0190】
一態様において、膜貫通ドメインは組換えであってもよく、その場合、膜貫通ドメインは、主としてロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を含むと予想される。一態様において、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンの三つ組は、組換え膜貫通ドメインのそれぞれの末端で見出すことができる。
【0191】
CARの膜貫通ドメインと細胞質内領域との間で、長さが2から10アミノ酸の間の短いオリゴリンカーまたはポリペプチドリンカーが連結を形成していてもよい。グリシン-セリンの二つ組が特に好適なリンカーを付与する。例えば、一態様において、リンカーは、GGGGSGGGGS(配列番号49)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、GGTGGCGGAGGTTCTGGAGGTGGAGGTTCC(配列番号50)のヌクレオチド配列によってコードされている。
【0192】
細胞質内ドメイン
CARの細胞質内ドメインまたは細胞質内領域は、細胞内シグナル伝達ドメインを包含する。細胞内シグナル伝達ドメインは、一般的に、CARが導入されている免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つの活性化に関与する。用語「エフェクター機能」は、細胞の特殊化した機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、細胞溶解活性、またはサイトカインの分泌などのヘルパー活性であり得る。したがって、用語「細胞内シグナル伝達ドメイン」は、エフェクター機能のシグナルを変換して細胞に特殊化した機能を実行させるタンパク質の一部を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメインの全体が採用され得るが、多くの場合において、必ずしも鎖の全体が使用される必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインのトランケートされた部分が使用される範囲内において、エフェクター機能のシグナルを変換する限り、このようなトランケートされた部分を無傷の鎖の代わりに使用することができる。したがって細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能のシグナルを変換するのに十分な、細胞内シグナル伝達ドメインのあらゆるトランケートされた部分を包含することを意味する。
【0193】
本発明のCARで使用するための細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、抗原受容体と接触した後にシグナル伝達を開始させるように協同して作用するT細胞受容体(TCR)および補助受容体の細胞質内配列、加えて同じ機能的な能力を有するこれらの配列およびあらゆる組換え配列のあらゆる誘導体または変異体が挙げられる。
【0194】
TCR単独により生成されたシグナルは、T細胞を完全に活性化させるには不十分であり、さらに二次的および/または共刺激シグナルも必要であることが知られている。したがって、T細胞の活性化は、細胞質内シグナル伝達配列の2つの別個のクラス:TCRを介した抗原依存性の一次活性化を開始させるクラス(一次細胞内シグナル伝達ドメイン)および抗原非依存性の方式で作用して二次シグナルまたは共刺激シグナルを提供するクラス(二次細胞質内ドメイン、例えば共刺激ドメイン)によって媒介されるということができる。
【0195】
一次シグナル伝達ドメインは、刺激による方式または阻害による方式のいずれかでTCR複合体の一次的な活性化を調節する。刺激による方式で作用する一次細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして知られるシグナル伝達モチーフを含有していてもよい 。
【0196】
本発明において特に有用なITAMを含有する一次細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dの上記ドメインが挙げられる。一実施形態において、本発明のCARは、細胞内シグナル伝達ドメイン、例えばCD3-ゼータの一次シグナル伝達ドメインを含む。
【0197】
一実施形態において、一次シグナル伝達ドメインは、改変されたITAMドメイン、例えば、天然ITAMドメインと比較して活性が変更された(例えば、増加または減少した)、突然変異したITAMドメインを含む。一実施形態において、一次シグナル伝達ドメインは、改変されたITAMを含有する一次細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、最適化および/またはトランケートされたITAMを含有する一次細胞内シグナル伝達ドメインを含む。ある実施形態において、一次シグナル伝達ドメインは、1つ、2つ、3つ、4つまたはそれより多くのITAMモチーフを含む。
【0198】
CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータシグナル伝達ドメインを単独で含んでいてもよいし、または本発明のCARの状況において有用な他のあらゆる所望の細胞内シグナル伝達ドメインと組み合わせられていてもよい。例えば、CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ鎖部分および共刺激シグナル伝達ドメインを含んでいてもよい。共刺激シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内ドメインを含むCARの一部を指す。共刺激分子とは、抗原に対する効率的なリンパ球応答に必要な、抗原受容体以外の細胞表面分子またはそのリガンドである。このような分子の例としては、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、およびCD83と特異的に結合するリガンド、ならびに同種のものが挙げられる。例えば、CD27の共刺激は、インビトロにおけるヒトCART細胞の拡大、エフェクター機能、および生存を強化し、インビボにおけるヒトT細胞の持続性および抗腫瘍活性を増大させることが実証されている[Song et al. Blood. 2012; 119(3):696-706]。
【0199】
本発明のCARの細胞質内部分内の細胞内シグナル伝達配列は、ランダムな順番または特定の順番で互いに連結されていてもよい。例えば長さが2から10アミノ酸の間(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10アミノ酸)の短いオリゴリンカーまたはポリペプチドリンカーが、細胞内シグナル伝達配列間の連結を形成していてもよい。一実施形態において、好適なリンカーとして、グリシン-セリンの二つ組を使用することができる。一実施形態において、好適なリンカーとして、単一のアミノ酸、例えばアラニン、グリシンを使用することができる。
【0200】
一態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、2つ以上、例えば、2、3、4、5、またはそれより多くの共刺激シグナル伝達ドメインが含まれるように設計される。ある実施形態において、2つ以上、例えば、2、3、4、5、またはそれより多くの共刺激シグナル伝達ドメインは、リンカー分子、例えば本明細書で説明されるリンカー分子によって隔てられる。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、2つの共刺激シグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態において、リンカー分子は、グリシン残基である。いくつかの実施形態において、リンカーは、アラニン残基である。
【0201】
一態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメインおよびCD28のシグナル伝達ドメインが含まれるように設計される。一態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメインおよび4-1BBのシグナル伝達ドメインが含まれるように設計される。一態様において、4-1BBのシグナル伝達ドメインは、配列番号16のシグナル伝達ドメインである。一態様において、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメインは、配列番号17のシグナル伝達ドメインである。
【0202】
一態様において、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメインおよびCD27のシグナル伝達ドメインが含まれるように設計される。一態様において、CD27のシグナル伝達ドメインは、QRRKYRSNKGESPVEPAEPCRYSCPREEEGSTIPIQEDYRKPEPACSP(配列番号51)のアミノ酸配列を含む。一態様において、CD27のシグナル伝達ドメインは、AGGAGTAAGAGGAGCAGGCTCCTGCACAGTGACTACATGAACATGACTCCCCGCCGCCCCGGGCCCACCCGCAAGCATTACCAGCCCTATGCCCCACCACGCGACTTCGCAGCCTATCGCTCC(配列番号52)の核酸配列によってコードされている。
【0203】
一態様において、本明細書で説明されるCAR発現細胞は、第二のCARをさらに含んでいてもよく、例えば、例えば同じ標的(CD19)または異なる標的(例えば、CD123)に対する異なる抗原結合ドメインを包含する第二のCARをさらに含んでいてもよい。一実施形態において、CAR発現細胞が2種以上の異なるCARを含む場合、異なるCARの抗原結合ドメインは、抗原結合ドメインが互いに相互作用しないようになっていてもよい。例えば、第一および第二のCARを発現する細胞は、例えばフラグメント、例えばscFvとして、第二のCARの抗原結合ドメインとの会合を形成しない第一のCARの抗原結合ドメインを有していてもよく、例えば、第二のCARの抗原結合ドメインは、VHHである。
【0204】
別の態様において、本明細書で説明されるCAR発現細胞は、別の薬剤、例えばCAR発現細胞の活性を強化する薬剤をさらに発現していてもよい。例えば、一実施形態において、薬剤は、阻害分子を阻害する薬剤であってもよい。いくつかの実施形態において、阻害分子、例えばPD1は、免疫エフェクター応答を仕掛けるCAR発現細胞の能力を減少させることができる。阻害分子の例としては、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータが挙げられる。一実施形態において、阻害分子を阻害する薬剤は、第一のポリペプチド、例えば阻害分子を含み、このようなポリペプチドは、細胞に陽性シグナルを提供する第二のポリペプチド、例えば、本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメインと会合している。一実施形態において、薬剤は、例えば、PD1、LAG3、CTLA4、CD160、BTLA、LAIR1、TIM3、2B4およびTIGITなどの阻害分子の第一のポリペプチド、またはこれらのうちいずれかのフラグメント(例えば、これらのうちいずれかの細胞外ドメインの少なくとも一部)、ならびに本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメインである[例えば、共刺激ドメイン(例えば、41BB、CD27またはCD28、例えば、本明細書で説明されているようなもの)および/または一次シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書で説明されるCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)を含む]第二のポリペプチドを含む。一実施形態において、薬剤は、PD1の第一のポリペプチドまたはそれらのフラグメント(例えば、PD1の細胞外ドメインの少なくとも一部)、ならびに本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書で説明されるCD28シグナル伝達ドメインおよび/または本明細書で説明されるCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)の第二のポリペプチドを含む。PD1は、CD28、CTLA-4、ICOS、およびBTLAも包含するCD28受容体ファミリーの阻害性の一員である。PD-1は、活性化されたB細胞、T細胞および骨髄細胞で発現される(Agata et al. 1996 Int. Immunol 8:765-75)。PD1、PD-L1およびPD-L2に対する2つのリガンドは、PD1に結合したときのT細胞の活性化を下方調節することが示されている(Freeman et a. 2000 J Exp Med 192:1027-34;Latchman et al.2001 Nat Immunol 2:261-8; Carter et al.2002 Eur J Immunol 32:634-43)。PD-L1は、ヒトがんにおいて豊富である(Dong et al. 2003 J Mol Med 81:281-7;Blank et al. 2005 Cancer Immunol. Immunother 54:307-314;Konishi et al. 2004 Clin Cancer Res 10:5094)。免疫抑制は、PD1とPD-L1との局所的な相互作用を阻害することによって、回復させることができる。
【0205】
一実施形態において、薬剤は、阻害分子、例えばプログラム死1(PD1:Programmed Death 1)の細胞外ドメイン(ECD)を含み、41BBおよびCD3ゼータなどの膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインに融合させることができる(また本明細書では、PD1CARとも称される)。一実施形態において、PD1CARは、本明細書で説明されるCD19CARと組み合わせて使用される場合、T細胞の持続性を向上させる。一実施形態において、CARは、配列番号121において下線で示されたPD1の細胞外ドメインを含むPD1CARである。一実施形態において、PD1CARは、配列番号121のアミノ酸配列を含む。
【0206】
Malpvtalllplalllhaarppgwfldspdrpwnpptfspallvvtegdnatftcsfsntsesfvlnwyrmspsnqtdklaafpedrsqpgqdcrfrvtqlpngrdfhmsvvrarrndsgtylcgaislapkaqikeslraelrvterraevptahpspsprpagqfqtlvtttpaprpptpaptiasqplslrpeacrpaaggavhtrgldfacdiyiwaplagtcgvlllslvitlyckrgrkkllyifkqpfmrpvqttqeedgcscrfpeeeeggcelrvkfsrsadapaykqgqnqlynelnlgrreeydvldkrrgrdpemggkprrknpqeglynelqkdkmaeayseigmkgerrrgkghdglyqglstatkdtydalhmqalppr(配列番号121)。
【0207】
一実施形態において、PD1CARは、以下に示すアミノ酸配列(配列番号119)を含む。
【0208】
pgwfldspdrpwnpptfspallvvtegdnatftcsfsntsesfvlnwyrmspsnqtdklaafpedrsqpgqdcrfrvtqlpngrdfhmsvvrarrndsgtylcgaislapkaqikeslraelrvterraevptahpspsprpagqfqtlvtttpaprpptpaptiasqplslrpeacrpaaggavhtrgldfacdiyiwaplagtcgvlllslvitlyckrgrkkllyifkqpfmrpvqttqeedgcscrfpeeeeggcelrvkfsrsadapaykqgqnqlynelnlgrreeydvldkrrgrdpemggkprrknpqeglynelqkdkmaeayseigmkgerrrgkghdglyqglstatkdtydalhmqalppr(配列番号119)。
【0209】
一実施形態において、薬剤は、PD1CAR、例えば本明細書で説明されるPD1CARをコードする核酸配列を含む。一実施形態において、以下にPD1CARの核酸配列を示し、以下の配列番号120においてPD1 ECDを下線で示した。
【0210】
atggccctccctgtcactgccctgcttctccccctcgcactcctgctccacgccgctagaccacccggatggtttctggactctccggatcgcccgtggaatcccccaaccttctcaccggcactcttggttgtgactgagggcgataatgcgaccttcacgtgctcgttctccaacacctccgaatcattcgtgctgaactggtaccgcatgagcccgtcaaaccagaccgacaagctcgccgcgtttccggaagatcggtcgcaaccgggacaggattgtcggttccgcgtgactcaactgccgaatggcagagacttccacatgagcgtggtccgcgctaggcgaaacgactccgggacctacctgtgcggagccatctcgctggcgcctaaggcccaaatcaaagagagcttgagggccgaactgagagtgaccgagcgcagagctgaggtgccaactgcacatccatccccatcgcctcggcctgcggggcagtttcagaccctggtcacgaccactccggcgccgcgcccaccgactccggccccaactatcgcgagccagcccctgtcgctgaggccggaagcatgccgccctgccgccggaggtgctgtgcatacccggggattggacttcgcatgcgacatctacatttgggctcctctcgccggaacttgtggcgtgctccttctgtccctggtcatcaccctgtactgcaagcggggtcggaaaaagcttctgtacattttcaagcagcccttcatgaggcccgtgcaaaccacccaggaggaggacggttgctcctgccggttccccgaagaggaagaaggaggttgcgagctgcgcgtgaagttctcccggagcgccgacgcccccgcctataagcagggccagaaccagctgtacaacgaactgaacctgggacggcgggaagagtacgatgtgctggacaagcggcgcggccgggaccccgaaatgggcgggaagcctagaagaaagaaccctcaggaaggcctgtataacgagctgcagaaggacaagatggccgaggcctactccgaaattgggatgaagggagagcggcggaggggaaaggggcacgacggcctgtaccaaggactgtccaccgccaccaaggacacatacgatgccctgcacatgcaggcccttccccctcgc(配列番号120)。
【0211】
別の態様において、本発明は、CAR発現細胞、例えばCART細胞の集団を提供する。いくつかの実施形態において、CAR発現細胞の集団は、異なるCAR発現細胞の混合物を含む。例えば、一実施形態において、CART細胞の集団は、本明細書で説明される抗CD19結合ドメインを有する第一のCAR発現細胞、および異なる抗CD19結合ドメイン、例えば、第一の細胞によって発現されるCARにおける抗CD19結合ドメインとは異なる本明細書で説明される抗CD19結合ドメインを有する第二のCAR発現細胞を包含していてもよい。別の例として、CAR発現細胞の集団は、例えば本明細書で説明されているような抗CD19結合ドメインを包含する第一のCAR発現細胞、およびCD19以外の標的(例えば、CD123)に対する抗原結合ドメインを包含する第二のCAR発現細胞を包含していてもよい。一実施形態において、CAR発現細胞の集団は、例えば、一次細胞内シグナル伝達ドメインを包含する第一のCAR発現細胞、および二次シグナル伝達ドメインを包含する第二のCAR発現細胞を包含する。
【0212】
別の態様において、本発明は、細胞の集団であって、集団中の少なくとも1種の細胞が、本明細書で説明される抗CD19ドメインを有するCARを発現し、第二の細胞が、別の薬剤、例えばCAR発現細胞の活性を強化する薬剤を発現する、細胞の集団を提供する。例えば、一実施形態において、薬剤は、阻害分子を阻害する薬剤であってもよい。いくつかの実施形態において、阻害分子は、例えば、免疫エフェクター応答を仕掛けるCAR発現細胞の能力を減少させることができる。阻害分子の例としては、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータが挙げられる。一実施形態において、阻害分子を阻害する薬剤は、第一のポリペプチド、例えば阻害分子を含み、このようなポリペプチドは、細胞に陽性シグナルを提供する第二のポリペプチド、例えば、本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメインと会合している。一実施形態において、薬剤は、例えば、PD1、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータなどの阻害分子の第一のポリペプチド、またはこれらのうちいずれかのフラグメント(例えば、これらのうちいずれかの細胞外ドメインの少なくとも一部)、ならびに本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメインである[例えば、共刺激ドメイン(例えば、41BB、CD27またはCD28、例えば、本明細書で説明されているようなもの)および/または一次シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書で説明されるCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)を含む]第二のポリペプチドを含む。一実施形態において、薬剤は、PD1の第一のポリペプチドまたはそれらのフラグメント(例えば、PD1の細胞外ドメインの少なくとも一部)、ならびに本明細書で説明される細胞内シグナル伝達ドメイン(例えば、本明細書で説明されるCD28シグナル伝達ドメインおよび/または本明細書で説明されるCD3ゼータシグナル伝達ドメイン)の第二のポリペプチドを含む。
【0213】
RNAトランスフェクション
本明細書において、インビトロで転写されたRNA CARを産生する方法が開示される。本発明はまた、細胞に直接トランスフェクトすることができる、CARをコードするRNAコンストラクトも包含する。トランスフェクションで使用するためのmRNAを生成するための方法は、長さが典型的には50~2000塩基の3’および5’非翻訳配列(「UTR」)、5’キャップおよび/または内部リボソーム侵入部位(IRES)、発現しようとする核酸、およびポリAテールを含有するコンストラクト(配列番号118)を産生するために、インビトロでの特別に設計されたプライマーを用いた鋳型の転写(IVT)、それに続くポリA付加を含んでいてもよい。このようにして産生されたRNAは、異なる種の細胞に効率的にトランスフェクトすることができる。一態様において、鋳型は、CARに関する配列を包含する。
【0214】
一態様において、抗CD19CARは、メッセンジャーRNA(mRNA)によってコードされている。一態様において、抗CD19CARをコードするmRNAは、CART細胞産生のためにT細胞に導入される。
【0215】
一実施形態において、インビトロで転写されたRNA CARは、一過性トランスフェクションの形態として細胞に導入することができる。RNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で生成した鋳型を使用したインビトロでの転写によって産生される。あらゆる源からの対象のDNAを、インビトロでの適切なプライマーおよびRNAポリメラーゼを使用したmRNA合成のための鋳型に直接PCRで変換させることができる。DNA源は、例えば、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ファージDNA、cDNA、合成DNA配列または他のあらゆる適切なDNA源であってもよい。インビトロでの転写のための所望の鋳型(temple)は、本発明のCARである。例えば、RNA CARのための鋳型は、抗腫瘍抗体の単一の鎖可変ドメインを含む細胞外領域;ヒンジ領域、膜貫通ドメイン(例えば、CD8aの膜貫通ドメイン);ならびに細胞内シグナル伝達ドメインを包含する細胞質内領域、例えば、CD3-ゼータのシグナル伝達ドメインおよび4-1BBのシグナル伝達ドメインを含む細胞質内領域を含む。
【0216】
一実施形態において、PCRに使用しようとするDNAは、オープンリーディングフレームを含有する。DNAは、生物のゲノムからの天然に存在するDNA配列由来であってもよい。一実施形態において、核酸は、5’および/または3’非翻訳領域(UTR)の一部または全部を包含していてもよい。核酸は、エキソンおよびイントロンを包含していてもよい。一実施形態において、PCRに使用しようとするDNAは、ヒト核酸配列である。別の実施形態において、PCRに使用しようとするDNAは、5’および3’UTRを包含するヒト核酸配列である。その代わりにDNAは、天然に存在する生物では通常発現されない人工DNA配列であってもよい。典型的な人工DNA配列は、一緒にライゲートして融合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを形成する遺伝子の一部を含有する配列である。一緒にライゲートされるDNAの一部は、単一の生物由来であってもよいし、または1種より多くの生物由来であってもよい。
【0217】
PCRは、トランスフェクションに使用されるmRNAのインビトロでの転写のための鋳型を生成するために使用される。PCRを行う方法は当業界周知である。PCRで使用するためのプライマーは、PCRのための鋳型として使用しようとするDNAの領域に実質的に相補的な領域が含まれるように設計される。「実質的に相補的」は、本明細書で使用される場合、プライマー配列中の塩基の大部分または全部が相補的であるか、または1つもしくは複数の塩基が非相補的であるかもしくはミスマッチのヌクレオチド配列を指す。実質的に相補的な配列は、PCRに使用されるアニーリング条件下で、意図したDNA標的にアニールしたり、または意図したDNA標的とハイブリダイズしたりすることが可能である。プライマーは、DNA鋳型のいずれかの部分に実質的に相補的になるように設計することができる。例えば、プライマーは、5’および3’UTRを包含する細胞中で正常に転写される核酸(オープンリーディングフレーム)の一部が増幅されるように設計することができる。またプライマーは、対象の特定のドメインをコードする核酸の一部が増幅されるように設計することもできる。一実施形態において、プライマーは、5’および3’UTRの全部または一部を包含するヒトcDNAのコード領域が増幅されるように設計される。PCRに有用なプライマーは、当業界周知の合成方法によって生成することができる。「フォワードプライマー」は、増幅されるべきDNA配列の上流でDNA鋳型におけるヌクレオチドに実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含有するプライマーである。「上流」は、本明細書において、コード鎖に関して増幅しようとするDNA配列の5位を指すものとして使用される。「リバースプライマー」は、増幅されるべきDNA配列の下流で二本鎖DNA鋳型に実質的に相補的なヌクレオチドの領域を含有するプライマーである。「下流」は、本明細書において、コード鎖に関して増幅しようとするDNA配列の3’位を指すものとして使用される。
【0218】
本明細書で開示された方法において、PCRに有用なあらゆるDNAポリメラーゼを使用することができる。試薬およびポリメラーゼは、多数の供給元から市販されている。
【0219】
安定性および/または翻訳効率を促進する能力を有する化学構造も使用が可能である。RNAは、好ましくは5’および3’UTRを有する。一実施形態において、5’UTRは、長さが1から3000ヌクレオチドの間である。コード領域に付加しようとする5’および3’UTR配列の長さは、これらに限定されないが、UTRの異なる領域にアニールするPCRのためのプライマーを設計することなど様々な方法によって変更することができる。このアプローチを使用すれば、当業者は、転写されたRNAのトランスフェクション後に最適な翻訳効率を達成するのに必要な5’および3’UTRの長さを改変することができる。
【0220】
5’および3’UTRは、対象の核酸にとって、天然に存在する内因性5’および3’UTRであってもよい。その代わりに、フォワードおよびリバースプライマーにUTR配列を取り入れることによって、または鋳型の他のあらゆる改変によって、対象の核酸にとって内因性ではないUTR配列を付加してもよい。対象の核酸にとって内因性ではないUTR配列の使用は、RNAの安定性および/または翻訳効率を改変するのに有用な可能性がある。例えば、3’UTR配列中のAUリッチ要素は、mRNAの安定性を減少させる可能性があることが知られている。それゆえに、当業界周知のUTRの特性に基づき転写されたRNAの安定性を増加させるには、3’UTRを選択または設計することができる。
【0221】
一実施形態において、5’UTRは、内因性核酸のコザック配列を含有していてもよい。その代わりに、対象の核酸にとって内因性ではない5’UTRを上述したようにPCRによって付加しようとする場合、5’UTR配列を付加することによってコンセンサスコザック配列の設計を改めてもよい。コザック配列は一部のRNA転写物の翻訳効率を増加させることができるが、効率的な翻訳を可能にするために全てのRNAに必要であるとは考えられていない。多くのmRNAにとってのコザック配列の必要条件は当業界公知である。他の実施形態において、5’UTRは、RNAのゲノムが細胞中で安定であるRNAウイルスの5’UTRであってもよい。他の実施形態において、様々なヌクレオチド類似体は、3’または5’UTRにおいて、エキソヌクレアーゼによるmRNAの分解を妨害するのに使用できる。
【0222】
遺伝子クローニングを必要とすることなくDNA鋳型からのRNAの合成を可能にするためには、転写プロモーターは、転写しようとする配列の上流でDNA鋳型に付着すると予想される。RNAポリメラーゼのプロモーターとして機能する配列がフォワードプライマーの5’末端に付加される場合、RNAポリメラーゼのプロモーターは、転写しようとするオープンリーディングフレームの上流でPCR産物に取り入れられるようになる。好ましい一実施形態において、プロモーターは、本明細書の他所で説明したように、T7ポリメラーゼプロモーターである。他の有用なプロモーターとしては、これらに限定されないが、T3およびSP6 RNAポリメラーゼプロモーターが挙げられる。T7、T3およびSP6プロモーターのコンセンサスヌクレオチド配列は、当業界公知である。
【0223】
好ましい実施形態において、mRNAは、5’末端上のキャップと3’ポリ(A)テールの両方を有しており、これらがリボソーム結合、翻訳開始および細胞中でのmRNAの安定性を決定する。環状DNA鋳型、例えばプラスミドDNAにおいて、RNAポリメラーゼは、真核細胞での発現には好適ではない長いコンカテマー様の生成物を産生する。3’UTRの末端で直線化したプラスミドDNAの転写は、正常なサイズのmRNAをもたらすが、これは転写後にポリアデニル化されたとしても真核性のトランスフェクションにおいて有効ではない。
【0224】
直鎖状DNA鋳型において、ファージT7RNAポリメラーゼは、鋳型の最後の塩基を過ぎても転写物の3’末端を伸長することができる[(Schenborn and Mierendorf, Nuc Acids Res., 13:6223-36 (1985);Nacheva and Berzal-Herranz, Eur. J. Biochem., 270:1485-65 (2003)]。
【0225】
ポリA/TストレッチをDNA鋳型に統合する従来の方法は、分子クローニングである。しかしながら、プラスミドDNAに統合されたポリA/T配列は、プラスミドを不安定化する可能性があり、これが、なぜ細菌細胞から得られたプラスミドのDNA鋳型に、欠失や他の異常が高度に混入していることが多いのかの理由である。そのため、クローニング手法は面倒で時間がかかるだけでなく、信頼できないものになっている。これが、クローニングを用いずにポリA/T3’ストレッチを有するDNA鋳型の構築が可能になる方法が極めて望ましい理由である。
【0226】
転写のDNA鋳型のポリA/Tセグメントは、PCR中に、ポリTテール、例えば100Tテール(配列番号110)[サイズは、50~5000のTであってもよい(配列番号111)]を含有するリバースプライマーを使用することによって、またはPCR後に、これらに限定されないが、DNAライゲーションまたはインビトロでの組換えなどの他のあらゆる方法によって産生することができる。またポリ(A)テールは、RNAに安定性ももたらし、それらの分解を少なくする。一般的に、ポリ(A)テールの長さは、転写されたRNAの安定性と正の相関がある。一実施形態において、ポリ(A)テールは、100から5000アデノシンの間である(配列番号112)。
【0227】
RNAのポリ(A)テールは、E.コリのポリAポリメラーゼ(E-PAP)などのポリ(A)ポリメラーゼを使用して、インビトロでの転写の後にさらに伸長させることができる。一実施形態において、ポリ(A)テールの長さを100ヌクレオチドから、300~400ヌクレオチド(配列番号113)に増加させることにより、RNAの翻訳効率約2倍の増加がもたらされる。加えて、3’末端への異なる化学基の付着は、mRNAの安定性を増加させることができる。このような付着は、改変された/人工ヌクレオチド、アプタマーおよび他の化合物を含有していてもよい。例えば、ATP類似体は、ポリ(A)ポリメラーゼを使用してポリ(A)テールに取り入れられてもよい。ATP類似体は、RNAの安定性をさらに増加させることができる。
【0228】
また5’キャップは、RNA分子に安定性ももたらす。好ましい実施形態において、本明細書で開示された方法によって産生されたRNAは、5’キャップを包含する。5’キャップは、当業界公知の技術や本明細書で説明される技術を使用してもたらされる[Cougot, et al., Trends in Biochem. Sci., 29:436-444 (2001);Stepinski, et al., RNA, 7:1468-95 (2001);Elango, et al., Biochim. Biophys. Res. Commun., 330:958-966 (2005)]。
【0229】
本明細書で開示された方法によって産生されたRNAはまた、内部リボソーム侵入部位(IRES)配列を含有していてもよい。IRES配列は、あらゆるウイルス配列、染色体配列または人工的に設計された配列であってもよく、これは、キャップ非依存性のmRNAへのリボソーム結合を開始させて翻訳開始を容易にするものである。細胞のエレクトロポレーションに好適なあらゆる溶質、すなわち糖、ペプチド、脂質、タンパク質、抗酸化剤、および界面活性剤などの細胞の透過性および生存能力を助長する因子を含有し得る溶質が包含されていてもよい。
【0230】
RNAは、多数の異なる方法、例えば市販の方法のいずれかを使用して標的細胞に導入することができ、このような方法としては、これらに限定されないが、エレクトロポレーション[Amaxa Nucleofector-II(Amaxa Biosystems、Cologne、Germany)]、[ECM830(BTX)(Harvard Instruments、Boston,Mass.]またはジーンパルサーII(BioRad、Denver、Colo.)、マルチポレーター(Eppendort、Hamburg Germany)、リポフェクションを使用したカチオン性リポソーム介在トランスフェクション、ポリマーのカプセル封入、ペプチド介在トランスフェクション、または遺伝子銃粒子デリバリー系、例えば「ジーンガン」[例えば、Nishikawa, et al. Hum Gene Ther., 12(8):861-70 (2001)を参照]が挙げられる。
【0231】
CARをコードする核酸コンストラクト
本発明はまた、本明細書で説明される1種または複数のCARコンストラクトをコードする核酸分子も提供する。一態様において、核酸分子は、メッセンジャーRNAの転写物として提供される。一態様において、核酸分子は、DNAコンストラクトとして提供される。
【0232】
したがって、一態様において、本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)をコードする単離された核酸分子であって、CARは、抗CD19結合ドメイン(例えば、ヒト化抗CD19結合ドメイン)、膜貫通ドメイン、ならびに刺激ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメイン、例えば、共刺激シグナル伝達ドメインおよび/または一次シグナル伝達ドメイン、例えばゼータ鎖を含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む、核酸分子に関する。一実施形態において、抗CD19結合ドメインは、本明細書で説明される抗CD19結合ドメインであり、例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択される配列、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む抗CD19結合ドメインである。一実施形態において、膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137およびCD154からなる群より選択されるタンパク質の膜貫通ドメインである。一実施形態において、膜貫通ドメインは、配列番号15の配列、またはそれと95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、抗CD19結合ドメインは、ヒンジ領域、例えば本明細書で説明されるヒンジによって膜貫通ドメインに接続されている。一実施形態において、ヒンジ領域は、配列番号14もしくは配列番号45もしくは配列番号47もしくは配列番号49、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、単離された核酸分子は、共刺激ドメインをコードする配列をさらに含む。一実施形態において、共刺激ドメインは、OX40、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、および4-1BB(CD137)からなる群より選択されるタンパク質の機能的なシグナル伝達ドメインである。一実施形態において、共刺激ドメインは、配列番号16の配列、またはそれと95~99%の同一性を有する配列を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BBの機能的なシグナル伝達ドメインおよびCD3ゼータの機能的なシグナル伝達ドメインを含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号16もしくは配列番号51の配列、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列、および配列番号17もしくは配列番号43の配列、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含み、ここで細胞内シグナル伝達ドメインを含む配列は、同じフレーム中で単一のポリペプチド鎖として発現される。
【0233】
別の態様において、本発明は、配列番号13のリーダー配列、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択される配列(またはそれらと95~99%の同一性を有する配列)を有するscFvドメイン、配列番号14もしくは配列番号45もしくは配列番号47もしくは配列番号49(またはそれらと95~99%の同一性を有する配列)のヒンジ領域、配列番号15の配列(またはそれらと95~99%の同一性を有する配列)を有する膜貫通ドメイン、配列番号16の配列を有する4-1BB共刺激ドメインもしくは配列番号51の配列(またはそれらと95~99%の同一性を有する配列)を有するCD27共刺激ドメイン、および配列番号17もしくは配列番号43の配列(またはそれらと95~99%の同一性を有する配列)を有するCD3ゼータ刺激ドメインを含む、CARコンストラクトをコードする単離された核酸分子に関する。
【0234】
別の態様において、本発明は、上記核酸分子によってコードされた単離されたポリペプチド分子に関する。一実施形態において、単離されたポリペプチド分子は、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41および配列番号42からなる群より選択される配列またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0235】
別の態様において、本発明は、抗CD19結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および刺激ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)分子をコードする核酸分子であって、前記抗CD19結合ドメインは、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択される配列、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む、核酸分子に関する。
【0236】
一実施形態において、コードされたCAR分子は、共刺激ドメインをコードする配列をさらに含む。一実施形態において、共刺激ドメインは、OX40、CD27、CD28、CDS、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)および4-1BB(CD137)からなる群より選択されるタンパク質の機能的なシグナル伝達ドメインである。一実施形態において、共刺激ドメインは、配列番号16の配列を含む。一実施形態において、膜貫通ドメインは、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137およびCD154からなる群より選択されるタンパク質の膜貫通ドメインである。一実施形態において、膜貫通ドメインは、配列番号15の配列を含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、4-1BBの機能的なシグナル伝達ドメインおよびゼータの機能的なシグナル伝達ドメインを含む。一実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、配列番号16の配列および配列番号17の配列を含み、ここで細胞内シグナル伝達ドメインを含む配列は、同じフレーム中で単一のポリペプチド鎖として発現される。一実施形態において、抗CD19結合ドメインは、ヒンジ領域によって膜貫通ドメインに接続されている。一実施形態において、ヒンジ領域は、配列番号14を含む。一実施形態において、ヒンジ領域は、配列番号45または配列番号47または配列番号49を含む。
【0237】
別の態様において、本発明は、配列番号13のリーダー配列、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、および配列番号12からなる群より選択される配列、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を有するscFvドメイン、配列番号14または配列番号45または配列番号47または配列番号49のヒンジ領域、配列番号15の配列を有する膜貫通ドメイン、配列番号16の配列を有する4-1BB共刺激ドメインまたは配列番号51の配列を有するCD27共刺激ドメイン、および配列番号17または配列番号43の配列を有するCD3ゼータ刺激ドメインを含むコードされたCAR分子に関する。一実施形態において、コードされたCAR分子は、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41および配列番号42からなる群より選択される配列、またはそれらと95~99%の同一性を有する配列を含む。
【0238】
所望の分子をコードする核酸配列は、当業界公知の組換え方法を使用して得ることができ、例えば遺伝子を発現する細胞からのライブラリーをスクリーニングすること、遺伝子それを包含することがわかっているベクターからその遺伝子を抽出すること、またはその遺伝子を含有する細胞および組織から標準的な技術を使用して直接単離することなどによって得ることができる。その代わりに、対象の遺伝子は、クローニングされるのではなく合成的に産生されてもよい。
【0239】
本発明はまた、本発明のDNAが挿入されるベクターも提供する。レンチウイルスなどのレトロウイルス由来ベクターは、導入遺伝子の長期にわたり安定な統合および娘細胞中でのその増殖を可能にすることから、長期にわたる遺伝子移入を達成するためのツールとして好適である。レンチウイルスベクターは、肝細胞などの非増殖細胞に形質導入することができるという点で、マウス白血病ウイルスなどのオンコレトロウイルス由来のベクターに勝る追加の利点を有する。またレンチウイルスベクターは、低い免疫原性という追加の利点も有する。
【0240】
別の実施形態において、本発明の所望のCARをコードする核酸を含むベクターは、アデノウイルスベクター(A5/35)である。別の実施形態において、CARをコードする核酸の発現は、スリーピングビューティー、クリスパー、CAS9、およびジンクフィンガーヌクレアーゼなどのトランスポゾンを使用して達成することができる。以下の、参照により本明細書に組み入れられるJune et al. 2009 Nature Reviews Immunology 9.10: 704-716を参照されたい。
【0241】
簡単にまとめると、CARをコードする天然または合成核酸の発現は、典型的には、CARポリペプチドまたはそれらの一部をコードする核酸をプロモーターに機能するように連結して、そのコンストラクトを発現ベクターに取り入れることによって達成される。ベクターは、真核生物の複製および統合に好適であってもよい。典型的なクローニングベクターは、転写および翻訳ターミネーター、開始配列、ならびに所望の核酸配列の発現の調節に有用なプロモーターを含有する。
【0242】
発明の発現コンストラクトは、標準的な遺伝子デリバリープロトコールを使用して核酸の免疫化および遺伝子治療にも使用することができる。遺伝子デリバリー方法は、当業界公知である。例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる米国特許第5,399,346号、5,580,859号、5,589,466号を参照されたい。別の実施形態において、本発明は、遺伝子治療用ベクターを提供する。
【0243】
核酸は、多数のタイプのベクターにクローニングすることができる。例えば、核酸は、これらに限定されないが、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス、およびコスミドなどのベクターにクローニングすることができる。特に興味深いベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター(probe generation vector)、および配列決定ベクターが挙げられる。
【0244】
さらに、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に供給されてもよい。ウイルスベクター技術は当業界周知であり、例えば、Sambrook et al., 2012, MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL, volumes 1-4, Cold Spring Harbor Press, NYや他のウイルス学および分子生物学マニュアルで説明されている。ベクターとして有用なウイルスとしては、これらに限定されないが、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、およびレンチウイルスが挙げられる。一般的に、好適なベクターは、少なくとも1種の生物において機能的な複製起点、プロモーター配列、便利な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つまたは複数の選択マーカーを含有する(例えば、WO01/96584;WO01/29058;および米国特許第6,326,193号)。
【0245】
哺乳動物細胞への遺伝子移入のための多数のウイルスベース系が開発されてきた。例えば、レトロウイルスは、遺伝子デリバリー系に便利なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子を、当業界公知の技術を使用してベクターに挿入し、レトロウイルス粒子中にパッケージ化してもよい。次いで組換えウイルスを単離して、インビボまたはエクスビボのいずれかで対象の細胞にデリバリーしてもよい。多数のレトロウイルス系が当業界公知である。いくつかの実施形態において、アデノウイルスベクターが使用される。多数のアデノウイルスベクターが当業界公知である。一実施形態において、レンチウイルスベクターが使用される。
【0246】
追加のプロモーター要素、例えばエンハンサーは、転写開始の頻度を調節する。これらは、典型的には開始部位上流の領域30~110bpに配置されるが、多数のプロモーターが開始部位の下流に同様に機能的な要素を含有することが示されている。要素が互いに逆転または移動したときにプロモーターの機能が保存されるように、プロモーター要素間の間隔はフレキシブルであることが多い。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターにおいて、プロモーター要素間の間隔は、活性が衰退し始める手前の50bpの間隔まで大きくすることができる。個々の要素は、転写を活性化するために、プロモーターに応じて協調的または独立的のいずれかによって機能する可能性があることが考えられる。
【0247】
哺乳動物のT細胞においてCARの導入遺伝子を発現することができるプロモーターの例は、EF1aプロモーターである。天然型のEF1aプロモーターは、アミノアシルtRNAのリボソームへの酵素によるデリバリーに関与する延長因子-1複合体のアルファサブユニットの発現を駆動する。EF1aプロモーターは、哺乳動物の発現プラスミドにおいて広く使用されおり、レンチウイルスベクターにクローニングした導入遺伝子からのCAR発現の駆動において有効であることが示されてきた。例えば、Milone et al., Mol. Ther. 17(8): 1453-1464 (2009)を参照されたい。一態様において、EF1aプロモーターは、配列番号100として提供される配列を含む。
【0248】
プロモーターの別の例は、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに機能するように連結したあらゆるポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動することができる強い構成的プロモーター配列である。しかしながら他の構成的プロモーター配列も使用が可能であり、このような構成的プロモーター配列としては、これらに限定されないが、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ロングターミナルリピート(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス前初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、加えてヒト遺伝子プロモーター、例えば、これらに限定されないが、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、延長因子-1αプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターなどが挙げられる。さらに本発明は、構成的プロモーターの使用に限定されないものとする。誘導性プロモーターも、本発明の一部として意図される。誘導性プロモーターの使用は、分子スイッチを提供し、このような分子スイッチは、分子スイッチが機能するように連結したポリヌクレオチド配列の発現が望ましい場合に、そのポリヌクレオチド配列の発現を開始させ、または発現が望ましくない場合に、その発現を停止させることができる。誘導性プロモーターの例としては、これらに限定されないが、メタロチオネインプロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、およびテトラサイクリンプロモーターが挙げられる。
【0249】
CARポリペプチドまたはそれらの一部の発現を検討するために、細胞に導入しようとする発現ベクターはまた、ウイルスベクターを介してトランスフェクトまたは感染させたようとする細胞の集団から発現する細胞を同定および選択しやすくするために、選択マーカー遺伝子もしくはレポーター遺伝子のいずれかまたはその両方を含有していてもよい。他の態様において、選択マーカーは、DNAの別の断片に搭載させてコトランスフェクション手法で使用されてもよい。選択マーカーおよびレポーター遺伝子はどちらも、宿主細胞で発現できるように適切な調節配列を端部に有していてもよい。有用な選択マーカーとしては、例えば、neoなどの抗生物質耐性遺伝子および同種のものが挙げられる。
【0250】
レポーター遺伝子は、トランスフェクトされる可能性がある細胞を同定するために、さらには調節配列の機能性を評価するために使用することができる。一般的に、レポーター遺伝子は、レシピエント生物または組織に存在しないかまたはそれらによって発現されない遺伝子であり、さらに、その発現がいくつかの容易に検出可能な特性、例えば酵素活性によって証明されるポリペプチドをコードする遺伝子である。レポーター遺伝子の発現は、DNAがレシピエントの細胞に導入された後の好適な時間にアッセイされる。好適なレポーター遺伝子としては、ルシフェラーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼをコードする遺伝子、または緑色蛍光タンパク質遺伝子を挙げることができる(例えば、Ui-Tei et al., 2000 FEBS Letters 479: 79-82)。好適な発現系は周知であり、公知の技術を使用して調製してもよいし、または商業的に入手してもよい。一般的に、レポーター遺伝子の最大レベルの発現を示す最小の5’フランキング領域を有するコンストラクトは、プロモーターとして同定される。このようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結されて、プロモーターによって駆動された転写を調整する能力に関して薬剤を評価するために使用することができる。
【0251】
遺伝子を細胞に導入して発現させる方法は当業界公知である。発現ベクターの場合において、ベクターは、当業界におけるあらゆる方法によって宿主細胞、例えば哺乳動物、細菌、酵母、または昆虫細胞に容易に導入することができる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的、または生物学的な手段によって宿主細胞に移入させることができる。
【0252】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入する物理的な方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝撃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、および同種のものが挙げられる。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を産生する方法は当業界周知である。例えば、Sambrook et al., 2012, MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, volumes 1-4, Cold Spring Harbor Press, NYを参照されたい。宿主細胞にポリヌクレオチドを導入する好ましい方法は、リン酸カルシウムトランスフェクションである。
【0253】
宿主細胞に対象のポリヌクレオチドを導入する生物学的な方法としては、DNAおよびRNAベクターの使用が挙げられる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えばヒト細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使用されている方法になりつつある。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純疱疹ウイルスI、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス、ならびに同種のもの由来のものであってもよい。例えば、米国特許第5,350,674号および5,585,362号を参照されたい。
【0254】
宿主細胞にポリヌクレオチドを導入するための化学的手段としては、例えば高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズなどのコロイド分散系、ならびに水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームなどの脂質ベースの系が挙げられる。インビトロおよびインビボでのデリバリー媒体として使用するための典型的なコロイド系は、リポソーム(例えば人工膜小胞)である。最先端の核酸の標的化デリバリーの他の方法が利用可能であり、例えば、標的化ナノ粒子を用いたポリヌクレオチドのデリバリー、または他の好適なサブミクロンサイズのデリバリーシステムなどが挙げられる。
【0255】
非ウイルスデリバリーシステムが利用されるケースにおいて、典型的なデリバリー媒体は、リポソームである。脂質調合物の使用は、宿主細胞への核酸の導入(インビトロ、エクスビボまたはインビボ)を意図している。別の態様において、核酸は、脂質と会合していてもよい。脂質に会合した核酸は、リポソームの水性の内部に封入されていてもよいし、リポソームの脂質二重層内に点在させてもよいし、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方と会合する連結分子を介してリポソームに付着していてもよいし、リポソーム中に閉じ込められていてもよいし、リポソームと複合体化していてもよいし、脂質を含有する溶液中に分散されていてもよいし、脂質と混合されてもよいし、脂質と組み合わされていてもよいし、脂質中の懸濁液として含有されてもよいし、ミセルと共に含有されるかもしくはミセルと複合体化していてもよいし、またはそれ以外の方法で脂質と会合していてもよい。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクターが会合した組成物は、溶液中におけるいかなる特定の構造にも限定されない。例えば、上記組成物は、二重層構造で、ミセルとして、または「崩壊した」構造で存在していてもよい。また上記組成物は、単に溶液中に点在した状態であってもよく、サイズまたは形状が均一でない凝集体を形成する可能性もある。脂質は、天然に存在する可能性がある脂肪性の物質であるか、または合成脂質である。例えば、脂質としては、細胞質中で自然に発生する脂肪の小滴、加えて長鎖脂肪族炭化水素およびそれらの誘導体、例えば脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、ならびにアルデヒドなどを含有する化合物のクラスが挙げられる。
【0256】
使用に好適な脂質は、商業的な供給源から得ることができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)は、Sigma、St.Louis、MOから得ることができ、リン酸ジセチル(「DCP」)は、K&K Laboratories(Plainview、NY)から得ることができ、コレステロール(「Choi」)は、Calbiochem-Behringから得ることができ、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)および他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(Birmingham、AL)から得ることができる。クロロホルムまたはクロロホルム/メタノール中の脂質のストック溶液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムは、メタノールより容易に蒸発するため、唯一の溶媒として使用される。「リポソーム」は、封入された脂質二重層または凝集体の生成によって形成された様々な単層および多層の脂質小胞(lipid vehicles)を包括する一般名称である。リポソームは、リン脂質二重層膜と内部の水性媒体とを有する小胞構造を有することを特徴とすることができる。多重膜リポソームは、水性媒体によって隔てられた複数の脂質層を有する。これらは、リン脂質が過量の水溶液中に懸濁されると自発的に形成される。脂質成分は、閉じた構造が形成される前に自己再構成を経て、水を閉じ込め、脂質二重層の間に溶質を溶解させる(Ghosh et al., 1991 Glycobiology 5: 505-10)。しかしながら、溶液中で通常の小胞構造とは異なる構造を有する組成物も包括される。例えば、脂質は、ミセル構造であると推定することができ、または単に脂質分子の不均一な凝集体として存在する可能性もある。また、リポフェクトアミン-核酸複合体も考慮される。
【0257】
宿主細胞に外因性核酸を導入するのに使用される方法、またはそれとは別に細胞を本発明の阻害剤に晒す方法にかかわらず、宿主細胞中の組換えDNA配列の存在を確認するために様々なアッセイを行うことができる。このようなアッセイとしては、例えば、当業者周知の「分子生物学的な」アッセイ、例えばサザンおよびノーザンブロッティング、RT-PCRおよびPCR;「生化学的な」アッセイ、例えば、免疫学的な手段(ELISAおよびウェスタンブロット)による、または本発明の範囲内に含まれる薬剤を同定するための本明細書で説明されるアッセイによる、特定のペプチドの存在または非存在の検出などが挙げられる。
【0258】
本発明はさらに、CARをコードする核酸分子を含むベクターを提供する。一態様において、CARベクターは、細胞、例えばT細胞に直接形質導入することができる。一態様において、ベクターは、クローニングまたは発現ベクターであり、例えば、これらに限定されないが、1つまたは複数のプラスミド(例えば、発現プラスミド、クローニングベクター、ミニサークル、ミニベクター、二重微小染色体)、レトロウイルスおよびレンチウイルスベクターコンストラクトなどのベクターである。一態様において、ベクターは、哺乳動物のT細胞中でCARコンストラクトを発現することができる。一態様において、哺乳動物のT細胞は、ヒトT細胞である。
【0259】
T細胞源
T細胞源は、拡大および遺伝学的改変の前に、対象から得られる。用語「対象」は、免疫反応を惹起させることができる生物(例えば、哺乳動物)を包含することが意図される。対象の例としては、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、およびそれらのトランスジェニック種が挙げられる。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位からの組織、腹水、胸膜滲出、脾臓組織、および腫瘍などの多数の源から得ることができる。本発明の所定の態様において、当業界において利用可能な多数のT細胞株を使用することができる。本発明の所定の態様において、T細胞は、Ficoll(商標)セパレーションなどの当業者公知の多数の技術を使用して対象から収集された血液のユニットから得ることができる。好ましい一態様において、個体の循環血液からの細胞は、アフェレーシスによって得られる。アフェレーシス産物は、典型的には、T細胞などのリンパ球、単球、顆粒球、B細胞、他の有核の白血球、赤血球、および血小板を含有する。一態様において、アフェレーシスによって収集された細胞を洗浄して血漿画分を除去し、それに続く処理工程のために細胞を適切な緩衝液または培地中に置くことができる。本発明の一態様において、細胞は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄される。代替の態様において、洗浄溶液はカルシウムを含まず、マグネシウムを含んでいなくもよく、または2価カチオンの全てとはいかないまでもその多くを含んでいなくてもよい。カルシウムの非存在下における初期の活性化工程により、活性化を増大させることができる。当業者であれば容易に認識するものと予想されるが、洗浄工程は、当業者公知の方法によって、例えば半自動の「流水式」遠心分離機(例えば、Cobe 2991細胞処理装置、Baxter CytoMate、またはHaemonetics Cell Saver 5)を製造元の説明書に従って使用することによって達成されてもよい。洗浄後、細胞は、様々な生体適合性緩衝液、例えばCa非含有、Mg非含有PBS、PlasmaLyte Aなど、または他の緩衝液含有または非含有食塩水に再懸濁されもよい。その代わりに、アフェレーシスサンプルの望ましくない成分を除去し、細胞を培養培地に直接再懸濁させてもよい。
【0260】
一態様において、T細胞は、例えば、PERCOLL(商標)の勾配を介した遠心分離によって、または対向流遠心溶出法によって赤血球を溶解させ単球を枯渇させることにより末梢血リンパ球から単離される。陽性または陰性選択技術によって、特定のT細胞部分集団、例えばCD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+、およびCD45RO+T細胞をさらに単離することができる。例えば、一態様において、所望のT細胞の陽性選択に十分な期間にわたり、抗CD3/抗CD28(例えば、3×28)がコンジュゲートしたビーズ、例えばDYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28Tとインキュベートすることによって、T細胞が単離される。一態様において、期間は、約30分である。さらなる態様において、期間は、30分から36時間の範囲またはそれより長く、およびその間の全ての整数値である。さらなる態様において、期間は、少なくとも1、2、3、4、5、または6時間である。さらに別の好ましい態様において、期間は、10から24時間である。一態様において、インキュベート期間は、24時間である。腫瘍組織または免疫不全個体から腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を単離する場合のように、他の細胞型と比較してT細胞がわずかしかないあらゆる状況においてT細胞を単離するためには、より長いインキュベート時間が使用される可能性がある。さらに、より長いインキュベート時間の使用は、CD8+T細胞の捕獲効率を増加させることができる。したがって、時間を単に短くしたりまたは長くしたりすることによって、T細胞をCD3/CD28ビーズに結合させることができ、および/またはT細胞に対するビーズの比率(本明細書でさらに説明されるように)を増加または減少させることによって、培養開始時またはプロセス中の他のタイムポイントで、T細胞の部分集団を可否に応じて優先的に選択することができる。加えて、ビーズまたは他の表面に対する抗CD3および/または抗CD28抗体の比率を増加または減少させることによって、培養開始時または他の所望のタイムポイントで、T細胞の部分集団を可否に応じて優先的に選択することができる。当業者であれば、本発明の状況において複数回の選択も使用できるということを認識しているものと予想される。所定の態様において、活性化および拡大プロセス中に、選択手法を行って「任意抽出の」細胞を使用することが望ましい場合がある。また「任意抽出の」細胞は、追加の回の選択で処理してもよい。
【0261】
陰性選択によるT細胞集団の濃縮は、陰性選択された細胞に独特な表面マーカーに向けられた抗体の組み合わせを用いて達成することができる。1つの方法は、セルソーティングおよび/もしくは負磁気免疫接着(negative magnetic immunoadherence)を介した選択、または陰性選択された細胞に存在する細胞表面マーカーに向けられたモノクローナル抗体のカクテルを使用するフローサイトメトリーである。例えば、陰性選択によってCD4+細胞を濃縮するためには、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、およびCD8に対する抗体を包含する。所定の態様において、典型的にはCD4+、CD25+、CD62Lhi、GITR+、およびFoxP3+を発現する制御性T細胞を濃縮するかまたは陽性選択することが望ましい場合がある。その代わりに、所定の態様において、抗C25がコンジュゲートしたビーズまたは他の類似の選択方法によって、制御性T細胞を枯渇させる。
【0262】
一実施形態において、IFN-γ、TNFα、IL-17A、IL-2、IL-3、IL-4、GM-CSF、IL-10、IL-13、グランザイムB、およびパーフォリンの1種または複数、または他の適切な分子、例えば他のサイトカインを発現するT細胞集団を選択する場合がある。細胞発現に関してスクリーニングする方法は、例えば、PCT公開WO2013/126712で説明されている方法によって決定することができる。
【0263】
陽性または陰性選択によって細胞の所望の集団を単離するために、細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の濃度は様々であってもよい。所定の態様において、細胞およびビーズの接触を最大にするために、ビーズおよび細胞が一緒に混合される容量を有意に減少させる(例えば、細胞濃度を増加させる)ことが望ましい場合がある。例えば、一態様において、細胞20億個/mlの濃度が使用される。一態様において、細胞10億個/mlの濃度が使用される。さらなる態様において、1mlあたり細胞100万個より多くが使用される。さらなる態様において、1mlあたり、細胞1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万、または5000万個の細胞濃度が使用される。さらなる一態様において、1mlあたり、細胞7500万個以上、8000万個以上、8500万個以上、9000万個以上、9500万個以上、または1億個の細胞濃度が使用される。さらなる態様において、1mlあたり細胞1億2500万または1億5000万個の濃度が使用できる。高濃度の使用は、細胞収量、細胞の活性化、および細胞拡大の増加をもたらすことができる。さらに、高い細胞濃度の使用は、CD28陰性T細胞などの対象の標的抗原の発現が弱い可能性がある細胞、または多くの腫瘍細胞が存在するサンプル(例えば、白血病の血液、腫瘍組織など)からの細胞のより効率的な捕獲を可能にする。このような細胞集団は治療的価値を有する可能性があり、取得が望ましいと予想される。例えば、高濃度の細胞の使用は、通常のCD28発現が比較的弱いCD8+T細胞のより効率的な選択を可能にする。
【0264】
関連する態様において、より低い細胞の濃度を使用することが望ましい場合がある。T細胞および表面(例えば、ビーズなどの粒子)の混合物を相当に希釈することによって、粒子と細胞との相互作用を最小化する。それにより、粒子に結合させるために、大量の所望の抗原を発現する細胞が選択される。例えば、CD4+T細胞は、より高レベルのCD28を発現するが、薄い濃度でCD8+T細胞より効率的に捕捉される。一態様において、使用される細胞の濃度は、5×10e6/mlである。他の態様において、使用される濃度は、約1×10/mlから1×10/mlまで、およびその間のあらゆる整数値であってもよい。
【0265】
他の態様において、細胞は、回転器で、様々な長さの時間にわたり、様々な速度、2~10℃または室温のいずれかでインキュベートすることができる。
【0266】
刺激のためのT細胞を洗浄工程後に凍結してもよい。理論に縛られるつもりはないが、凍結工程とそれに続く融解工程は、細胞集団中の顆粒球とある程度の単球を除去することによってより均一な生成物をもたらす。血漿と血小板を除去する洗浄工程の後、細胞を凍結溶液に懸濁してもよい。多くの凍結のための溶液およびパラメーターが当業界公知であり、この状況において有用であると予想されるが、1つの方法は、20%DMSOおよび8%ヒト血清アルブミンを含有するPBS、または10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミンならびに7.5%DMSOを含有する培養培地、または31.25%Plasmalyte-A、31.25%デキストロース5%、0.45%NaCl、10%デキストラン40および5%デキストロース、20%ヒト血清アルブミン、および7.5%DMSOを含有する培養培地、または例えばヘスパンおよびPlasmaLyte Aを含有する他の好適な細胞凍結媒体を使用し、次いで細胞を1度/分の速度で-80℃に凍結させ、液体窒素貯蔵タンクの蒸気相中で保存することを含む。他の制御冷凍方法を使用してもよいし、同様に-20℃で即座に、または液体窒素中で非制御冷凍してもよい。
【0267】
所定の態様において、低温保存した細胞を融解させて、本明細書で説明したようにして洗浄し、本発明の方法を使用して活性化する前に室温で1時間そのまま置く。
【0268】
また、本発明の状況では、本明細書で説明したようにして拡大させた細胞が必要になるかもしれないときの前の期間に、対象から血液サンプルまたはアフェレーシス産物を収集することも考慮される。そのようなものとして、拡大させようとする細胞の源を必要なあらゆる時点で収集することができ、さらに、本明細書で説明されるものなどのT細胞治療によって利益を得ると予想される多数の疾患または状態のためのT細胞治療で後に使用するために、T細胞などの所望の細胞を単離して凍結してもよい。一態様において、血液サンプルまたはアフェレーシスは、全般的に健康な対象から採取される。所定の態様において、血液サンプルまたはアフェレーシスは、疾患を発症させる危険性があるが、まだ疾患を発症させていない、全般的に健康な対象から採取され、さらに、後の使用のために対象の細胞を単離して凍結してもよい。所定の態様において、T細胞は、後の時点で拡大、凍結、および使用されてもよい。所定の態様において、本明細書で説明したような特定の疾患の診断の直後に、ただしいかなる処置の前に、サンプルが患者から収集される。さらなる態様において、これらに限定されないが、ナタリズマブ、エファリズマブなどの薬剤、抗ウイルス剤、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸塩、およびFK506、抗体、または他の免疫除去剤(immunoablative agents)、例えばCAMPATH、抗CD3抗体、シトキサン、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、マイコフェノール酸、ステロイド、FR901228、および放射線照射での処置などの多数の関連する処置様式の前に、細胞が、対象からの血液サンプルまたはアフェレーシスから単離される。
【0269】
本発明のさらなる態様において、対象に機能的なT細胞を残す処置の後に、患者から直接T細胞を得る。これに関して、所定のがん処置の後、特定には、免疫系にダメージを与える薬物での処置の後、患者が通常処置から回復すると予想される期間中の処置の直後に、得られたT細胞の品質が、エクスビボで拡大するそれらの能力に関して最適であるかまたは向上している可能性があることが観察されている。同様に、本明細書で説明される方法を使用したエクスビボでの操作の後、これらの細胞は、生着およびインビボでの拡大の強化にとって好ましい状況にある可能性がある。したがって、本発明の内容において、この回収期間中に、T細胞、樹状細胞、または造血細胞系の他の細胞を包含する血液細胞を収集することが考慮される。さらに、所定の態様において、動員(例えば、GM-CSFを用いた動員)および前処置レジメン(conditioning regimen)を使用して、特に療法後の規定の時間帯中に、特定の細胞型の再増殖、再循環、再生、および/または拡大にとって好都合な対象における状態を作り出すことができる。例示的な細胞型としては、T細胞、B細胞、樹状細胞、および他の免疫系細胞が挙げられる。
【0270】
T細胞の活性化および拡大
T細胞は、一般的に、例えば米国特許第6,352,694号;6,534,055号:6,905,680号:6,692,964号:5,858,358号:6,887,466号:6,905,681号:7,144,575号:7,067,318号:7,172,869号:7,232,566号:7,175,843号:5,883,223号:6,905,874号:6,797,514号:6,867,041号:および米国特許出願公開第20060121005号で説明されているような方法を使用して活性化させて拡大させてもよい。
【0271】
一般的に、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤と、T細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドとを付着させた表面と接触させることによって、本発明のT細胞を拡大させることができる。特定には、本明細書で説明したようにして、例えば、表面上に固定された抗CD3抗体もしくはそれらの抗原結合フラグメント、または抗CD2抗体と接触させることによって、またはカルシウムイオノフォアと共にプロテインキナーゼC活性化剤(例えば、ブリオスタチン)と接触させることによって、T細胞集団を刺激してもよい。T細胞表面上のアクセサリー分子の共刺激のために、アクセサリー分子に結合するリガンドが使用される。例えば、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下で、T細胞の集団を抗CD3抗体および抗CD28抗体と接触させてもよい。CD4+T細胞またはCD8+T細胞のいずれかの増殖を刺激するため、抗CD3抗体および抗CD28抗体。抗CD28抗体の例としては、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone、Besancon、France)が挙げられ、これらは、一般的に当業界で知られている他の方法と同様にして使用することができる[Berg et al., Transplant Proc. 30(8):3975-3977, 1998;Haanen et al., J. Exp. Med. 190(9):13191328, 1999;Garland et al., J. Immunol Meth. 227(1-2):53-63, 1999]。
【0272】
所定の態様において、T細胞に関する一次刺激シグナルおよび共刺激シグナルは、様々なプロトコールによって供給することができる。例えば、各シグナルを供給する薬剤は、溶解した状態かまたは表面にカップリングされていてもよい。表面にカップリングされる場合、薬剤は、同じ表面にカップリングされてもよいし(すなわち、「シス」形成)、または別の表面に(すなわち、「トランス」形成)カップリングされてもよい。その代わりに、1種の薬剤が表面にカップリングされ、他の薬剤が溶解した状態であってもよい。一態様において、共刺激シグナルを供給する薬剤が細胞表面に結合しており、一次活性化シグナルを供給する薬剤が、溶解した状態かまたは表面にカップリングされていてもよい。所定の態様において、両方の薬剤が溶解した状態であってもよい。一態様において、薬剤は、可溶性の形態であってもよく、次いで、Fc受容体を発現する細胞などの表面に、または薬剤に結合すると予想される抗体もしくは他の結合剤に架橋されていてもよい。これに関して、例えば、本発明においてT細胞を活性化して拡大させることに使用することが意図された人工抗原提示細胞(aAPC)に関する米国特許出願公開第20040101519号および20060034810号を参照されたい。
【0273】
一態様において、2種の薬剤が、同じビーズ上、すなわち「シス」、または別のビーズ上、すなわち「トランス」のいずれかでビーズ上に固定される。一例として、一次活性化シグナルを供給する薬剤は、抗CD3抗体またはそれらの抗原結合フラグメントであり、共刺激シグナルを供給する薬剤は、抗CD28抗体またはそれらの抗原結合フラグメントであり、どちらの薬剤も、等しい分子の量で同じビーズに共に固定される。一態様において、CD4+T細胞の拡大およびT細胞成長のために、ビーズに結合した1:1の比率の各抗体が使用される。本発明の所定の態様において、1:1の比率を使用して観察された拡大と比較してT細胞拡大の増加が観察されるような、ビーズに結合した抗CD3:CD28抗体の比率が使用される。特定の一態様において、1:1の比率を使用して観察された拡大と比較して、約1から約3倍の増加が観察される。一態様において、ビーズに結合したCD3:CD28抗体の比率は、100:1から1:100の範囲、およびその間の全ての整数値である。本発明の一態様において、抗CD3抗体より多くの抗CD28抗体が、粒子に結合しており、すなわちCD3:CD28の比率は1未満である。本発明の所定の態様において、ビーズに結合した抗CD28抗体と抗CD3抗体との比率は、2:1より大きい。特定の一態様において、1:100のCD3:CD28の比率のビーズに結合した抗体が使用される。一態様において、1:75のCD3:CD28の比率のビーズに結合した抗体が使用される。さらなる態様において、1:50のCD3:CD28の比率のビーズに結合した抗体が使用される。一態様において、1:30のCD3:CD28の比率のビーズに結合した抗体が使用される。好ましい一態様において、1:10のCD3:CD28の比率のビーズに結合した抗体が使用される。一態様において、1:3のCD3:CD28の比率のビーズに結合した抗体が使用される。さらなる一態様において、3:1のCD3:CD28の比率のビーズに結合した抗体が使用される。
【0274】
T細胞または他の標的細胞を刺激するために、1:500から500:1まで、およびその間のあらゆる整数値の粒子と細胞との比率を使用することができる。当業者であれば容易に認識できるように、粒子と細胞との比率は、標的細胞に対する粒度によって決まる可能性がある。例えば、小さいサイズのビーズは、わずかな数の細胞としか結合できないが、より大きいビーズは多くと結合できる。所定の態様において、細胞と粒子との比率は、1:100から100:1の範囲、およびその間のあらゆる整数値であり、さらなる態様において、この比率は、1:9から9:1、およびその間のあらゆる整数値を含み、T細胞を刺激するのにも使用することができる。抗CD3および抗CD28がカップリングされた粒子とT細胞との、T細胞の刺激をもたらす比率は上述したように様々なであってよいが、所定の好ましい値としては、1:100、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、および15:1が挙げられ、1つの好ましい比率は、粒子とT細胞とが少なくとも1:1である。一態様において、1:1またはそれ未満の粒子と細胞との比率が使用される。特定の一態様において、好ましい粒子:細胞の比率は、1:5である。さらなる態様において、粒子と細胞との比率は、刺激の日に応じて変更することができる。例えば、一態様において、粒子と細胞との比率は、1日目では1:1から10:1であり、その後、毎日または1日おきに最大10日まで細胞に追加の粒子が添加され、最終的には1:1から1:10の比率である(添加した日の細胞数に基づく)。特定の一態様において、粒子と細胞との比率は、刺激の1日目には1:1であり、刺激の3日目および5日目には1:5に調整される。一態様において、粒子は、毎日または1日おきに添加して、1日目に最終的な1:1の比率にし、刺激の3日目および5日目に1:5にする。一態様において、粒子と細胞との比率は、刺激の1日目には2:1であり、刺激の3日目および5日目には1:10に調整される。一態様において、粒子は、毎日または1日おきに添加して、1日目に最終的な1:1の比率にし、刺激の3日目および5日目に1:10にする。当業者であれば、様々な他の比率が本発明で使用するのに適している可能性があることを認識するものと予想される。特定には、比率は、粒度ならびに細胞のサイズおよびタイプに応じて様々であると予想される。一態様において、使用のための最も典型的な比率は、1日目に1:1、2:1および3:1の付近である。
【0275】
本発明のさらなる態様において、T細胞などの細胞は、薬剤でコーティングされたビーズと組み合わされ、その後ビーズおよび細胞を分離して、次いで細胞を培養する。代替の態様において、培養の前に薬剤でコーティングしたビーズと細胞とを分離せずに、一緒に培養する。さらなる態様において、まず磁力などの力の適用によってビーズおよび細胞を濃縮し、その結果として細胞表面マーカーのライゲーションを増加させることにより、細胞の刺激を誘導する。
【0276】
一例として、抗CD3および抗CD28が付着している常磁性ビーズ(3×28個のビーズ)をT細胞に接触させることによって、細胞表面タンパク質をライゲートさせることができる。一態様において、細胞(例えば、10から10個のT細胞)およびビーズ[例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450CD3/CD28T常磁性ビーズを1:1の比率で]を、緩衝液、例えばPBS(カルシウムおよびマグネシウムなどの2価カチオンを含まない)中で組み合わせる。ここでも、あらゆる細胞濃度が使用できることは、当業者であれば容易に認識することができる。例えば、標的細胞は、サンプル中で極めて希少であってもよいし、サンプルのわずか0.01%しか含んでいなくてもよいし、またはサンプル全体(すなわち、100%)が対象の標的細胞を構成していてもよい。したがって、あらゆる細胞数が本発明の内容に含まれる。所定の態様において、細胞と粒子とが最大限に接触するように、粒子および細胞が一緒に混合されている容量を有意に減少させること(すなわち、細胞の濃度を増加させること)が望ましい場合がある。例えば、一態様において、細胞約20億個/mlの濃度が使用される。一態様において、1mlあたり1億個より多くの細胞が使用される。さらなる態様において、1mlあたり細胞1000万、1500万、2000万、2500万、3000万、3500万、4000万、4500万、または5000万個の細胞の濃度が使用される。さらなる一態様において、1mlあたり細胞7500万、8000万、8500万、9000万、9500万、または1億個の細胞の濃度が使用される。さらなる態様において、細胞1億2500万または1億5000万個/mlの濃度が使用できる。高濃度の使用は、細胞収量、細胞の活性化、および細胞拡大の増加をもたらすことができる。さらに、高い細胞濃度の使用は、CD28陰性T細胞などの対象の標的抗原の発現が弱い可能性がある細胞のより効率的な捕獲を可能にする。所定の態様において、このような細胞集団は治療的価値を有する可能性があり、取得が望ましいと予想される。例えば、高濃度の細胞の使用は、通常のCD28発現が比較的弱いCD8+T細胞のより効率的な選択を可能にする。
【0277】
本発明の一態様において、混合物は、数時間(約3時間)から約14日間、またはその間の1時間毎のあらゆる整数値の時間、培養されてもよい。一態様において、混合物は、21日間培養されてもよい。本発明の一態様において、ビーズおよびT細胞は、約8日間、一緒に培養される。一態様において、ビーズおよびT細胞は、2~3日間、一緒に培養される。またT細胞の培養時間が60日間またはそれより長くなるように、数サイクルの刺激が望ましい場合がある。T細胞培養に適切な条件としては、血清(例えば、ウシ胎児またはヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-12、IL-15、TGFβ、およびTNF-αなどの増殖および生存能力に必要な因子、または当業者公知の細胞成長に関する他のあらゆる添加剤を含有していてもよい適切な培地[例えば、最小必須培地またはRPMI培地1640または、X-vivo 15、(Lonza)]が挙げられる。細胞成長に関する他の添加剤としては、これらに限定されないが、界面活性剤、プラスマネート、ならびにN-アセチル-システインおよび2-メルカプトエタノールなどの還元剤が挙げられる。培地としては、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、およびビタミンが添加され、無血清であるか、または適切な量の血清(または血漿)または規定された一連のホルモン、および/またはT細胞の成長および拡大に十分な量のサイトカインが補充されたかのいずれかの、RPMI1640、AIM-V、DMEM、MEM、α-MEM、F-12、X-Vivo 15、およびX-Vivo 20、Optimizerを挙げることができる。抗生物質、例えばペニシリンおよびストレプトマイシンは、実験的培養の場合のみに包含され、対象に注入しようとする細胞の培養の場合は包含されない。標的細胞は、例えば、適切な温度(例えば、37℃)および雰囲気(例えば、空気および5%CO)などの成長を支持するのに必要な条件下で維持される。
【0278】
様々な刺激時間に晒されたT細胞は、異なる特徴を示す可能性がある。例えば、典型的な血液またはアフェレーシスで得られた末梢血単核細胞産物は、細胞毒性またはサプレッサーT細胞集団(TC、CD8+)より大きいヘルパーT細胞集団(TH、CD4+)を有する。エクスビボでのCD3およびCD28受容体を刺激することによるT細胞拡大は、約8~9日目の前には主としてTH細胞からなるT細胞集団を産生するが、約8~9日目の後、T細胞の集団は、よりいっそう多くのTC細胞集団を含む。したがって、処置目的に応じて、主としてTH細胞を含むT細胞集団を対象に注入することが有利な場合がある。同様に、TC細胞の抗原特異的なサブセットが単離された場合、このようなサブセットは、このサブセットをより高度に拡大させるのに有益な場合がある。
【0279】
さらに、CD4およびCD8マーカーに加えて、細胞拡大プロセスの経過中、他の表現型マーカーが有意に、ただし大部分は再生可能に変化する。したがって、このような再現性は、活性化されたT細胞産物を特定の目的に合わせる能力を可能にする。
【0280】
CD19CARが構築されたら、これらに限定されないが、抗原刺激後にT細胞を拡大させて再刺激の非存在下でT細胞の拡大を維持する能力、および適切なインビトロおよび動物モデルにおける抗癌活性などの分子の活性を評価するために、様々なアッセイを使用することができる。CD19CARの作用を評価するためのアッセイは、以下のさらなる詳細で説明される。
【0281】
初代T細胞におけるCAR発現のウェスタンブロット分析は、単量体および二量体の存在を検出するのに使用できる。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009)を参照されたい。極めて簡単に言えば、CARを発現するT細胞(CD4およびCD8T細胞の1:1混合物)を、インビトロで10日より長く拡大させ、続いて溶解させて還元条件下でSDS-PAGEを行う。全長TCR-ζ細胞質内ドメインおよび内因性TCR-ζ鎖を含有するCARを、TCR-ζ鎖に対する抗体を使用するウェスタンブロッティングによって検出する。同じT細胞サブセットを、共有結合による二量体形成の評価を許容する非還元条件下でSDS-PAGE分析に使用する。
【0282】
インビトロにおける抗原刺激後のCAR+T細胞拡大は、フローサイトメトリーによって測定することができる。例えば、CD4およびCD8T細胞の混合物を、αCD3/αCD28のaAPCで刺激し、続いて分析しようとするプロモーターの制御下でGFPを発現するレンチウイルスベクターを移入させる。典型的なプロモーターとしては、CMV IE遺伝子、EF-1α、ユビキチンC、またはホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーターが挙げられる。培養から6日目に、CD4および/またはCD8T細胞サブセットにおいてGFP蛍光をフローサイトメトリーによって評価する。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464 (2009)を参照されたい。その代わりに、0日目に、CD4およびCD8T細胞の混合物を、αCD3/αCD28でコーティングされた磁気ビーズで刺激し、1日目に、2Aリボゾームスキッピング配列(ribosomal skipping sequence)を使用してeGFPと共にCARを発現するバイシストロン性のレンチウイルスベクターを使用して、CARで形質導入する。洗浄後に、抗CD3および抗CD28抗体(K562-BBL-3/28)の存在下で、hCD32および4-1BBLを発現するCD19K562細胞(K562-CD19)、野生型K562細胞(K562野生型)またはK562細胞のいずれかで培養を再刺激する。1日おきに外因性IL-2を100IU/mlで培養に添加する。GFPT細胞は、ビーズベースの計数を使用するフローサイトメトリーによって数えられる。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464(2009)を参照されたい。
【0283】
また再刺激の非存在下での持続的なCAR+T細胞拡大を測定することもできる。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464(2009)を参照されたい。簡単に言えば、0日目にαCD3/αCD28でコーティングされた磁気ビーズで刺激し、1日目に提示されたCARで形質移入した後、培養から8日目に、CoulterのマルチサイザーIII粒子カウンターを使用して平均のT細胞容量(fl)を測定する。
【0284】
またCART活性を測定するのに動物モデルを使用することもできる。例えば、免疫不全マウスにおける初代ヒトプレ-B ALLを処置するための、ヒトCD19特異的なCAR+T細胞を使用した異種移植片モデルを使用することができる。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464(2009)を参照されたい。極めて簡単に言えば、ALLの確立後、マウスを処置群としてランダム化する。B-ALLを有するNOD-SCID-γ-/-マウスに、異なる多数のαCD19-ζおよびαCD19-BB-ζで加工されたT細胞を1:1の比率で共に注射する。T細胞注射後の様々な時間で、マウスからの脾臓DNA中のαCD19-ζおよびαCD19-BB-ζベクターのコピー数を評価する。1週間おきに白血病に関して動物を検討する。αCD19-ζCAR+T細胞またはmock形質導入T細胞を注射したマウスにおいて、末梢血液CD19B-ALL芽細胞の数を測定する。ログランク検定を使用してグループごとの生存曲線を比較する。加えて、T細胞注射から4週間後のNOD-SCID-γ-/-マウスにおける末梢血液CD4およびCD8T細胞の絶対数も分析する。マウスに白血病細胞を注射し、3週間後、eGFPに連結されたCARをコードするバイシストロン性のレンチウイルスベクターによってCARを発現するように加工されたT細胞を注射する。注射前にmock形質導入細胞と混合することによって、T細胞を45~50%の投入されたGFPT細胞に対して正規化し、フローサイトメトリーによって確認する。1週間おきに白血病に関して動物を検討する。ログランク検定を使用してCAR+T細胞グループごとの生存曲線を比較する。
【0285】
用量依存性のCAR処置応答を評価することができる。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464(2009)を参照されたい。例えば、21日目にCART細胞、同数のmock形質導入T細胞、またはT細胞非含有を注射したマウスにおいて白血病が確立されてから35~70日後に、末梢血液を得る。末梢血液CD19ALL芽細胞数を決定するために各グループのマウスからランダムに採血し、次いで35および49日目に殺す。57および70日目に残りの動物を評価する。
【0286】
細胞増殖およびサイトカイン産生の検討は、例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464(2009)で、すでに説明されている。簡単に言えば、CARが介在する増殖の検討は、マイクロタイタープレート中で、洗浄したT細胞と、CD19(K19)またはCD32およびCD137(KT32-BBL)を発現するK562細胞とを、2:1の最終的なT細胞:K562の比率で混合することによって行われる。使用前、K562細胞にガンマ放射線を照射する。T細胞増殖の刺激に関する陽性対照として機能させるために、抗CD3(クローンOKT3)および抗CD28(クローン9.3)モノクローナル抗体を、KT32-BBL細胞を含む培養物に添加するが、これは、これらのシグナルがエクスビボで長期にわたりCD8T細胞拡大を支持するためである。培養中に、T細胞は、CountBright(商標)蛍光ビーズ(Invitrogen、Carlsbad、CA)およびフローサイトメトリーを製造元により説明されているように使用して数えられる。eGFP-2Aが連結されたCAR発現レンチウイルスベクターで加工されたT細胞を使用したGFP発現によって、CAR+T細胞を同定する。GFPを発現しないCAR+T細胞の場合、ビオチン化組換えCD19タンパク質および二次アビジン-PEコンジュゲートを用いて、CAR+T細胞を検出する。またT細胞におけるCD4+およびCD8発現も、特異的なモノクローナル抗体(BD Biosciences)を用いて同時に検出する。ヒトTH1/TH2サイトカインサイトメトリー用ビーズアレイキット(BD Biosciences、San Diego、CA)を製造元の説明書に従って使用して、再刺激から24時間後に収集された上清に対してサイトカイン測定を行う。FACScaliburフローサイトメーターを使用して蛍光を検討し、製造元の説明書に従ってデータを分析する。
【0287】
細胞毒性は、標準的な51Cr-放出アッセイによって検討することができる。例えば、Milone et al., Molecular Therapy 17(8): 1453-1464(2009)を参照されたい。簡単に言えば、標的細胞(K562系および初代プロ-B-ALL細胞)に51Cr(NaCrO4として、New England Nuclear、Boston、MA)を頻繁にかき混ぜながら37℃で2時間充填し、完全RPMIで2回洗浄し、マイクロタイタープレートに平板培養する。完全RPMI中で、エフェクターT細胞とウェル中の標的細胞とを、エフェクター細胞:標的細胞(E:T)の様々な比率で混合する。さらに、培地のみ(自発的な放出、SR)またはトリトン-X100洗浄剤の1%溶液(合計の放出、TR)を含有する追加のウェルも調製する。37℃で4時間インキュベートした後、各ウェルからの上清を回収する。次いでガンマ粒子カウンター(Packard Instrument Co.、Waltham、MA)を使用して放出された51Crを測定する。各条件を少なくとも3連で行い、式:%溶解物=(ER-SR)/(TR-SR)を使用して溶解物のパーセンテージを計算し、ここで式中、ERは、各実験条件で放出された平均51Crを表す。
【0288】
腫瘍を有する動物モデルにおけるCARの特異的なトラフィッキングおよび増殖を評価するために、イメージング技術を使用することができる。このようなアッセイは、例えば、Barrett et al., Human Gene Therapy 22:1575-1586 (2011)で説明されている。簡単に言えば、NOD/SCID/γc-/-(NSG)マウスにNalm-6細胞をIV注射し、それから7日後、CARコンストラクトでのエレクトロポレーションの4時間後にT細胞を注射する。T細胞をレンチウイルスコンストラクトで安定してトランスフェクトし、ホタルルシフェラーゼを発現させ、生物発光に関してマウスを画像化する。その代わりに、Nalm-6異種移植片モデルにおける1回のCAR+T細胞注射の治療効能および特異性は、以下のように測定することができる。ホタルルシフェラーゼを安定して発現するように形質導入したNalm-6をNSGマウスに注射して、続いて7日後、CD19CARでエレクトロポレーションしたT細胞を1回尾静脈注射する。注射後の様々なタイムポイントで動物を画像化する。例えば、5日目(処置の2日前)および8日目(CARPBLから24時間後)の代表的なマウスにおけるホタルルシフェラーゼ陽性白血病の光子密度のヒートマップを作製することができる。
【0289】
また、他のアッセイ、例えば本明細書における実施例の章で説明されているアッセイ、同様に当業界公知のアッセイなども、本発明のCD19CARコンストラクトを評価するのに使用することができる。
【0290】
治療的適用
CD19関連疾患および/または障害
一態様において、本発明は、CD19発現に関連する疾患を処置するための方法を提供する。一態様において、本発明は、腫瘍の一部がCD19に関して陰性であり、腫瘍の一部がCD19に関して陽性である疾患を処置するための方法を提供する。例えば、本発明のCARは、上昇したCD19の発現に関連する疾患に関する処置を受けた対象を処置するのに有用であり、ここで上昇したCD19のレベルに関する処置を受けた対象は、上昇したCD19のレベルに関連する疾患を示す。
【0291】
一態様において、本発明は、哺乳動物のT細胞での発現のためのプロモーターに機能するように連結したCD19CARを含むベクターに関する。一態様において、本発明は、CD19を発現する腫瘍の処置において使用するためのCD19CARを発現する組換えT細胞を提供し、ここでCD19CARを発現する組換えT細胞は、CD19 CARTと名付けられる。一態様において、本発明のCD19 CARTは、CARTが腫瘍細胞を標的として腫瘍の成長が阻害されるように、腫瘍細胞を、その表面上で発現される少なくとも1種の本発明のCD19CARと接触させることができる。
【0292】
一態様において、本発明は、CD19を発現する腫瘍細胞の成長を阻害する方法であって、抗原に応答してCARTが活性化されてがん細胞を標的とするように、腫瘍細胞を本発明のCD19CART細胞と接触させることを含み、ここで腫瘍の成長が阻害される、方法に関する。
【0293】
一態様において、本発明は、対象におけるがんの処置方法に関する。本方法は、対象においてがんが処置されるように、本発明のCD19CART細胞を対象に投与することを含む。本発明のCD19CART細胞によって処置可能であるがんの例は、CD19の発現に関連するがんである。一態様において、CD19の発現に関連するがんは、血液がん(hematolical cancer)である。一態様において、血液がんは、白血病またはリンパ腫である。一態様において、CD19の発現に関連するがんとしては、これらに限定されないが、例えばがんおよび悪性腫瘍が挙げられ、それらとしては、これらに限定されないが、例えば、B細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)を包含する、1種または複数の急性白血病;これらに限定されないが、例えば、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)などを包含する、1種または複数の慢性白血病が挙げられる。CD19の発現に関連する追加のがんまたは血液学的状態としては、これらに限定されないが、例えば、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞の新生物、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ヘアリーセル白血病、小細胞型または大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性のリンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、脊髄形成異常および骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽細胞リンパ腫、形質細胞様樹状細胞の新生物、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、および骨髄の血液細胞の効果が認められない産生(または異形成)に共通する様々な血液学的状態の一群である「前白血病状態」、ならびに同種のものが挙げられる。さらなるCD19発現に関連する疾患としては、これらに限定されないが、例えば、CD19の発現に関連する、非定型的および/または非典型的ながん、悪性腫瘍、前がん状態または増殖性疾患が挙げられる。
【0294】
いくつかの実施形態において、CD19CAR、例えば本明細書で説明されるCD19CARで処置される可能性があるがんは、多発性骨髄腫である。多発性骨髄腫は、骨髄中の形質細胞クローンの蓄積を特徴とする血液のがんである。現在の多発性骨髄腫の療法としては、これらに限定されないが、サリドマイドの類似体であるレナリドマイドでの処置が挙げられる。レナリドマイドは、抗腫瘍活性、血管新生阻害、および免疫修飾などの活性を有する。一般的に、骨髄腫細胞は、フローサイトメトリーによりCD19発現に関して陰性であると考えられる。本発明は、実施例6で実証されたように、CD19を発現する骨髄腫の腫瘍細胞はわずか数パーセントであるという認識を包含する。したがって、いくつかの実施形態において、例えば本明細書で説明されるようなC19CARは、骨髄腫細胞を標的とするのに使用することができる。いくつかの実施形態において、CD19CAR療法は、1種または複数の追加の療法、例えばレナリドマイド処置と組み合わせて使用することができる。
【0295】
本発明は、T細胞が、キメラ抗原受容体(CAR)が発現されるように遺伝子改変されており、CART細胞がそれらを必要とするレシピエントに注入されるタイプの細胞療法を包含する。注入された細胞は、レシピエント中の腫瘍細胞を殺すことができる。抗体療法とは異なり、CARで改変されたT細胞はインビボでの複製が可能であり、その結果として、持続的な腫瘍制御をもたらす長期にわたる持続性が達成される。様々な態様において、患者に投与されるT細胞、またはそれらの後代は、患者にT細胞を投与した後、少なくとも4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月、2年、3年、4年、または5年、患者中に存在し続ける。
【0296】
本発明はまた、T細胞が、例えばキメラ抗原受容体(CAR)が一過性発現されるようにインビトロで転写されたRNAによって改変されており、CART細胞がそれらを必要とするレシピエントに注入されるタイプの細胞療法も包含する。注入された細胞は、レシピエント中の腫瘍細胞を殺すことができる。したがって、様々な態様において、患者に投与されるT細胞は、患者にT細胞を投与した後、1ヶ月未満、例えば3週間、2週間、1週間、存在する。
【0297】
いかなる特定の理論にも縛られることは望まないが、CARで改変されたT細胞によって惹起された抗腫瘍免疫反応は、能動または受動免疫反応である可能性があり、またはその代わりに、直接対間接的な免疫反応に起因する可能性がある。一態様において、CARが形質導入されたT細胞は、特異的な炎症促進性サイトカイン分泌を示し、CD19を発現するヒトがん細胞に応答する強い細胞溶解活性は、溶解性CD19阻害に耐性を有し、バイスタンダーによる死滅を媒介し、確立されたヒト腫瘍の退縮を媒介する。例えば、CD19を発現する腫瘍のヘテロジニアスな場内の抗原がより少ない腫瘍細胞は、これまでは隣接する抗原陽性がん細胞に反応していたCD19にリダイレクトしたT細胞による間接的な破壊を受けやすい。
【0298】
一態様において、本発明の完全ヒトCARで改変されたT細胞は、エクスビボでの免疫化および/または哺乳動物におけるインビボでの療法用のタイプのワクチンであってもよい。一態様において、哺乳動物は、ヒトである。
【0299】
エクスビボでの免疫化に関して、哺乳動物に細胞を投与する前に、インビトロで、以下:i)細胞の拡大、ii)細胞へのCARをコードする核酸の導入、またはiii)細胞の低温保存のうち少なくとも1つが行われる。
【0300】
エクスビボの手法は当業界周知であり、以下でより詳細に論じられる。簡単に言えば、哺乳動物(例えば、ヒト)から細胞を単離し、本明細書で開示されたCARを発現するベクターで遺伝子改変する(すなわち、インビトロで形質導入またはトランスフェクトする)。CARで改変された細胞を哺乳動物のレシピエントに投与することによって、治療的利益をもたらすことができる。哺乳動物のレシピエントはヒトであってもよいし、CARで改変された細胞はレシピエントにとって自己であってもよい。その代わりに、細胞は、レシピエントにとって同種異系、同系または異種であってもよい。
【0301】
エクスビボで造血幹および前駆細胞を拡大させる手法は、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,199,942号で説明されており、本発明の細胞に適用することができる。他の好適な方法が当業界公知であり、それゆえに本発明は、いかなる特定のエクスビボでの細胞拡大方法にも限定されない。簡単に言えば、エクスビボでのT細胞の培養および拡大は、(1)末梢血液の回収物または骨髄外植片から、哺乳動物由来のCD34+造血幹および前駆細胞を収集すること;および(2)このような細胞をエクスビボで拡大させることを含む。米国特許第5,199,942号で説明されている細胞成長因子に加えて、flt3-L、IL-1、IL-3およびc-kitリガンドなどの他の因子を細胞の培養および拡大に使用することができる。
【0302】
エクスビボでの免疫化に関して細胞ベースのワクチンを使用することに加えて、本発明はまた、患者中の抗原に対して向けられた免疫反応を惹起するための、インビボでの免疫化のための組成物および方法も提供する。
【0303】
一般的に、本明細書で説明したようにして活性化され拡大させた細胞は、免疫不全の個体において生じた疾患の処置および予防で利用することができる。特定には、本発明のCARで改変されたT細胞は、CD19の発現に関連する疾患、障害および状態の処置に使用される。所定の態様において、本発明の細胞は、CD19の発現に関連する疾患、障害および状態を発症する危険性がある患者の処置に使用することができる。したがって、本発明は、CD19の発現に関連する疾患、障害および状態を処置または予防するための方法であって、本発明のCARで改変されたT細胞の治療有効量をそれらを必要とする対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0304】
一態様において、本発明のCART細胞は、がんもしくは悪性腫瘍などの増殖性疾患、または脊髄形成異常、骨髄異形成症候群または前白血病状態などの前がん状態を処置するのに使用できる。一態様において、がんは、血液がんである。一態様において、血液がんは、白血病またはリンパ腫である。一態様において、本発明のCART細胞は、がんおよび悪性腫瘍を処置するのに使用でき、限定されるものではないが、がんおよび悪性腫瘍としては、これらに限定されないが、例えば、B細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)を包含する、急性白血病;これらに限定されないが、例えば、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)を包含する、1種または複数の慢性白血病;これらに限定されないが、例えば、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞の新生物、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ヘアリーセル白血病、小細胞型または大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性のリンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、脊髄形成異常および骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽細胞リンパ腫、形質細胞様樹状細胞の新生物、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、および骨髄の血液細胞の効果が認められない産生(または異形成)に共通する様々な血液学的状態の一群である「前白血病状態」を包含する、追加の血液がんまたは血液学的状態、ならびに同種のものなどが挙げられる。さらなるCD19発現に関連する疾患としては、これらに限定されないが、例えば、非定型的および/もしくは非典型的な、CD19を発現するがん、悪性腫瘍、前がん状態または増殖性疾患が挙げられる。CD19の発現に関連する非がん関連の徴候としては、これらに限定されないが、例えば、自己免疫疾患、(例えば、狼瘡)、炎症性疾患(アレルギーおよび喘息)および移植が挙げられる。
【0305】
本発明のCARで改変されたT細胞は、単独で投与されてもよいし、または希釈剤と、および/またはIL-2もしくは他のサイトカインなどの他の成分もしくは細胞集団と組み合わせた医薬組成物として投与されてもよい。
【0306】
血液がん
血液がんの状態は、白血病、ならびに血液、骨髄およびリンパ系に影響を与える悪性のリンパ増殖性状態などのタイプのがんである。
【0307】
白血病は、急性白血病および慢性白血病として分類できる。急性白血病はさらに、急性骨髄性白血病(AML)および急性リンパ性白血病(ALL)として分類できる。慢性白血病としては、慢性骨髄性白血病(CML)および慢性リンパ性白血病(CLL)が挙げられる。他の関連の状態としては、骨髄の血液細胞の効果が認められない産生(または異形成)に共通する様々な血液学的状態の一群である骨髄異形成症候群(MDS、以前は「前白血病状態」として知られていた)、およびAMLに転換する危険が挙げられる。
【0308】
本発明は、がんを処置するための組成物および方法を提供する。一態様において、がんは、血液がんであり、血液がんは、これらに限定されないが、白血病またはリンパ腫である。一態様において、本発明のCART細胞は、がんおよび悪性腫瘍を処置するのに使用でき、限定されるものではないが、がんおよび悪性腫瘍としては、これらに限定されないが、例えば、B細胞急性リンパ性白血病(「BALL」)、T細胞急性リンパ性白血病(「TALL」)、急性リンパ性白血病(ALL)を包含する、急性白血病;これらに限定されないが、例えば、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)を包含する、1種または複数の慢性白血病;これらに限定されないが、例えば、B細胞前リンパ球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞の新生物、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ヘアリーセル白血病、小細胞型または大細胞型濾胞性リンパ腫、悪性のリンパ増殖性状態、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、脊髄形成異常および骨髄異形成症候群、非ホジキンリンパ腫、形質芽細胞リンパ腫、形質細胞様樹状細胞の新生物、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、および骨髄の血液細胞の効果が認められない産生(または異形成)に共通する様々な血液学的状態の一群である「前白血病状態」を包含する、追加の血液がんまたは血液学的状態、ならびに同種のものなどが挙げられる。さらなるCD19発現に関連する疾患としては、これらに限定されないが、例えば、非定型的および/もしくは非典型的な、CD19を発現するがん、悪性腫瘍、前がん状態または増殖性疾患が挙げられる。
【0309】
本発明はまた、CD19発現細胞集団の増殖を阻害または低減する方法も提供し、該方法は、CD19発現細胞を含む細胞の集団を、本発明のCD19発現細胞に結合する抗CD19CART細胞と接触させることを含む。具体的な態様において、本発明は、CD19を発現するがん細胞の集団の増殖を阻害または低減する方法を提供し、該方法は、CD19を発現するがん細胞集団を、本発明のCD19発現細胞に結合する抗CD19CART細胞と接触させることを含む。一態様において、本発明は、CD19を発現するがん細胞の集団の増殖を阻害または低減する方法を提供し、該方法は、CD19を発現するがん細胞集団を、本発明のCD19発現細胞に結合する抗CD19CART細胞と接触させることを含む。所定の態様において、本発明の抗CD19CART細胞は、骨髄性白血病もしくはCD19発現細胞に関連する別のがんを有する対象またはそれらに関する動物モデルにおいて、細胞および/またはがん細胞の量、数、数量またはパーセンテージを、陰性対照と比較して、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも95%、または少なくとも99%低減する。一態様において、対象は、ヒトである。
【0310】
本発明はまた、CD19を発現する細胞に関連する疾患(例えば、血液がんまたは非定型的なCD19を発現するがん)を予防、処置および/または管理する方法も提供し、該方法は、本発明のCD19発現細胞に結合する抗CD19CART細胞を、それらを必要とする対象に投与することを含む。一態様において、対象は、ヒトである。CD19発現細胞に関連する障害の非限定的な例としては、自己免疫障害(例えば狼瘡)、炎症性疾患(例えばアレルギーおよび喘息)、およびがん(例えば血液がんまたは非定型的なCD19を発現するがん)が挙げられる。
【0311】
本発明はまた、CD19を発現する細胞に関連する疾患を予防、処置および/または管理する方法も提供し、該方法は、本発明のCD19発現細胞に結合する抗CD19CART細胞を、それらを必要とする対象に投与することを含む。一態様において、対象は、ヒトである。
【0312】
本発明は、CD19発現細胞に関連するがんの再発を予防するための方法を提供し、該方法は、本発明のCD19発現細胞に結合する抗CD19CART細胞を、それらを必要とする対象に投与することを含む。一態様において、該方法は、本明細書で説明されるCD19発現細胞に結合する抗CD19CART細胞の有効量を、別の療法の有効量と組み合わせてそれらを必要とする対象に投与することを含む。
【0313】
併用療法
本明細書で説明されるCAR発現細胞は、他の公知の薬剤および療法と組み合わせて使用してもよい。「組み合わせて」投与されるとは、本明細書で使用される場合、対象が障害に罹っている間に、2種の(またはそれより多くの)異なる処置が対象にデリバリーされることを意味し、例えば、対象が障害を有すると診断された後、かつ障害が治癒もしくは除去されたり、または他の理由で処置が中止されたりする前に、2種以上の処置がデリバリーされる。いくつかの実施形態において、投与に関して重複があるように、1種の処置のデリバリーが、第二のデリバリーが始まるときもなお行われている。これは、本明細書では「同時」または「並列デリバリー」とも称されることもある。他の実施形態において、1つの処置のデリバリーは、他の処置のデリバリーが始まる前に終わる。いずれのケースのいくつかの実施形態において、投与を組み合わせることによって、処置はより有効である。例えば、第二の処置を行わなかった場合と等しい作用が見られるか、または第一の処置の非存在下で第二の処置が投与された場合に見られると予想される程度、もしくは第一の処置を用いて類似の状況が見られる程度より大きい程度に、第二の処置が症状を低減する場合、例えば、第二の処置はより有効である。いくつかの実施形態において、デリバリーは、症状、または障害に関する他のパラメーターの低減が、他方の非存在下でデリバリーされた一方の処置で観察されると予想されるパラメーターの低減より大きくなるようなデリバリーである。2つの処置の作用は、部分的に相加的、全体的に相加的、またはそれより大きく相加的であってもよい。デリバリーは、デリバリーされた第一の処置の作用が、第二がデリバリーされたときもなお検出可能になるようなデリバリーであってもよい。
【0314】
本明細書で説明されるCAR発現細胞および少なくとも1種の追加の治療剤は、同じまたは別の組成物で同時に投与されてもよいし、または逐次的に投与されてもよい。逐次的な投与の場合、本明細書で説明されるCAR発現細胞を最初に投与し、2番目に追加の薬剤を投与してもよいし、または投与順はその逆でもよい。
【0315】
さらなる態様において、本明細書で説明されるCAR発現細胞は、外科手術、化学療法、放射線、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキセート、ミコフェノール酸塩、およびFK506、抗体、または他の免疫除去剤、例えばCAMPATH、抗CD3抗体もしくは他の抗体療法、シトキサン(cytoxin)、フルダラビン、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、マイコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、ならびに放射線照射、ペプチドワクチン、例えばIzumoto et al. 2008 J Neurosurg 108:963-971で説明されているものと組み合わせた処置レジメンで使用することができる。
【0316】
一実施形態において、本明細書で説明されるCAR発現細胞は、化学療法剤と組み合わせて使用することができる。典型的な化学療法剤としては、アントラサイクリン[例えば、ドキソルビシン(例えば、リポソーマルドキソルビシン(liposomal doxorubicin))]、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、ダカルバジン(decarbazine)、メルファラン、イフォスファミド、テモゾロマイド)、免疫細胞抗体(例えば、アレムツズマブ(alemtuzamab)、ゲムツズマブ、リツキシマブ、トシツモマブ)、代謝拮抗物質(例えば、葉酸アンタゴニスト、ピリミジン類似体、プリン類似体およびアデノシン-デアミナーゼ阻害剤(例えば、フルダラビン)など)、mTOR阻害剤、TNFRグルココルチコイド誘導性TNFR関連タンパク質(GITR)アゴニスト、プロテアソーム阻害剤(例えば、アクラシノマイシンA、グリオトキシンまたはボルテゾミブ)、イムノモジュレーター、例えばサリドマイドまたはサリドマイド誘導体(例えば、レナリドマイド)が挙げられる。
【0317】
併用療法で使用するために考慮される一般的な化学療法剤としては、アナストロゾール[Arimidex(登録商標)]、ビカルタミド[Casodex(登録商標)]、硫酸ブレオマイシン[Blenoxane(登録商標)]、ブスルファン[Myleran(登録商標)]、ブスルファン注射剤[Busulfex(登録商標)]、カペシタビン[Xeloda(登録商標)]、N4-ペントキシカルボニル-5-デオキシ-5-フルオロシチジン、カルボプラチン[Paraplatin(登録商標)]、カルムスチン[BiCNU(登録商標)]、クロラムブシル[Leukeran(登録商標)]、シスプラチン[Platinol(登録商標)]、クラドリビン[Leustatin(登録商標)]、シクロホスファミド[Cytoxan(登録商標)またはNeosar(登録商標)]、シタラビン、シトシンアラビノシド[Cytosar-U(登録商標)]、シタラビンリポソーム注射剤[DepoCyt(登録商標)]、ダカルバジン[DTIC-Dome(登録商標)]、ダクチノマイシン[アクチノマイシンD、コスメガン(Cosmegan)]、塩酸ダウノルビシン[Cerubidine(登録商標)]、クエン酸ダウノルビシンリポソーム注射剤[DaunoXome(登録商標)]、デキサメタゾン、ドセタキセル[Taxotere(登録商標)]、塩酸ドキソルビシン[Adriamycin(登録商標)、Rubex(登録商標)]、エトポシド[Vepesid(登録商標)]、リン酸フルダラビン[Fludara(登録商標)]、5-フルオロウラシル[Adrucil(登録商標)、Efudex(登録商標)]、フルタミド[Eulexin(登録商標)]、テザシチビン(tezacitibine)、ゲムシタビン(ジフルオロデオキシシチジン)、ヒドロキシ尿素[Hydrea(登録商標)]、イダルビシン[Idamycin(登録商標)]、イフォスファミド[IFEX(登録商標)]、イリノテカン[Camptosar(登録商標)]、L-アスパラギナーゼ[ELSPAR(登録商標)]、ロイコボリンカルシウム、メルファラン[Alkeran(登録商標)]、6-メルカプトプリン[Purinethol(登録商標)]、メトトレキセート[Folex(登録商標)]、ミトキサントロン[Novantrone(登録商標)]、マイロターグ、パクリタキセル[Taxol(登録商標)]、フェニックス(イットリウム90/MX-DTPA)、ペントスタチン、カルムスチンインプラント含有ポリフェプロサン20[Gliadel(登録商標)]、クエン酸タモキシフェン[Nolvadex(登録商標)]、テニポシド[Vumon(登録商標)]、6-チオグアニン、チオテパ、チラパザミン[Tirazone(登録商標)]、注射用の塩酸トポテカン[Hycamptin(登録商標)]、ビンブラスチン[Velban(登録商標)]、ビンクリスチン[Oncovin(登録商標)]、およびビノレルビン[Navelbine(登録商標)]が挙げられる。
【0318】
典型的なアルキル化剤としては、これらに限定されないが、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソウレアおよびトリアゼン):ウラシルマスタード[Aminouracil Mustard(登録商標)、Chlorethaminacil(登録商標)、Demethyldopan(登録商標)、Desmethyldopan(登録商標)、Haemanthamine(登録商標)、Nordopan(登録商標)、Uracil nitrogen mustard(登録商標)、Uracillost(登録商標)、Uracilmostaza(登録商標)、Uramustin(登録商標)、Uramustine(登録商標)]、chlormethine[Mustargen(登録商標)]、シクロホスファミド(Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Clafen(登録商標)、Endoxan(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(商標))、イフォスファミド[Mitoxana(登録商標)]、メルファラン[Alkeran(登録商標)]、クロラムブシル[Leukeran(登録商標)]、ピポブロマン[Amedel(登録商標)、Vercyte(登録商標)]、トリエチレンメラミン[Hemel(登録商標)、Hexalen(登録商標)、Hexastat(登録商標)]、トリエチレンチオホスファラミン、テモゾロマイド[Temodar(登録商標)]、チオテパ[Thioplex(登録商標)]、ブスルファン[Busilvex(登録商標)、Myleran(登録商標)]、カルムスチン[BiCNU(登録商標)]、ロムスチン[CeeNU(登録商標)]、ストレプトゾシン[Zanosar(登録商標)]、およびダカルバジン[DTIC-Dome(登録商標)]が挙げられる。追加の典型的なアルキル化剤としては、これらに限定されないが、オキサリプラチン[Eloxatin(登録商標)];テモゾロマイド[Temodar(登録商標)およびTemodal(登録商標)];ダクチノマイシン[また、アクチノマイシン-Dとしても公知、Cosmegen(登録商標)];メルファラン[また、L-PAM、L-サルコリシン、およびフェニルアラニンマスタードとしても公知、Alkeran(登録商標)];アルトレタミン[また、ヘキサメチルメラミン(HMM)としても公知、Hexalen(登録商標)];カルムスチン[BiCNU(登録商標)];ベンダムスチン[Treanda(登録商標)];ブスルファン[Busulfex(登録商標)およびMyleran(登録商標)];カルボプラチン[Paraplatin(登録商標)];ロムスチン[また、CCNUとしても公知、CeeNU(登録商標)];シスプラチン(また、CDDPとしても公知、Platinol(登録商標)およびPlatinol(登録商標)-AQ);クロラムブシル[Leukeran(登録商標)];シクロホスファミド[Cytoxan(登録商標)およびNeosar(登録商標)];ダカルバジン[また、DTIC、DICおよびイミダゾールカルボキサミドとしても公知、DTIC-Dome(登録商標)];アルトレタミン[また、ヘキサメチルメラミン(HMM)としても公知、Hexalen(登録商標)];イフォスファミド[Ifex(登録商標)];プレドニマスチン(prednumustine);プロカルバジン[Matulane(登録商標)];メクロレタミン[また、ナイトロジェンマスタード、ムスチンおよび塩酸メクロレタミン(mechloroethamine)としても公知、Mustargen(登録商標)];ストレプトゾシン[Zanosar(登録商標)];チオテパ[また、チオホスファミド(thiophosphoamide)、TESPAおよびTSPAとしても公知、Thioplex(登録商標)];シクロホスファミド[Endoxan(登録商標)、Cytoxan(登録商標)、Neosar(登録商標)、Procytox(登録商標)、Revimmune(登録商標)];およびベンダムスチンHCl[Treanda(登録商標)]が挙げられる。
【0319】
典型的なmTOR阻害剤としては、例えば、テムシロリムス;リダフォロリムス(公式には、デフォロリムス(deferolimus)、(1R,2R,4S)-4-[(2R)-2[(1R,9S,12S,15R,16E,18R,19R,21R、23S,24E,26E,28Z,30S,32S,35R)-1,18-ジヒドロキシ-19,30-ジメトキシ-15,17,21,23、29,35-ヘキサメチル-2,3,10,14,20-ペンタオキソ-11,36-ジオキサ-4-アザトリシクロ[30.3.1.04,9]ヘキサトリアコンタ-16,24,26,28-テトラエン-12-イル]プロピル]-2-メトキシシクロヘキシルジメチルホスフィネートとして公知であり、また、AP23573およびMK8669としても公知であり、PCT公開WO03/064383で説明されている);エベロリムス(Afinitor(登録商標)またはRAD001);ラパマイシン[AY22989、Sirolimus(登録商標)];セマピモド(simapimod)(CAS164301-51-3);テムシロリムス(emsirolimus)、(5-{2,4-ビス[(3S)-3-メチルモルホリン-4-イル]ピリド[2,3-d]ピリミジン-7-イル}-2-メトキシフェニル)メタノール(AZD8055);2-アミノ-8-[トランス-4-(2-ヒドロキシエトキシ)シクロヘキシル]-6-(6-メトキシ-3-ピリジニル)-4-メチル-ピリド[2,3-d]ピリミジン-7(8H)-オン(PF04691502、CAS1013101-36-4);およびN-[1,4-ジオキソ-4-[[4-(4-オキソ-8-フェニル-4H-1-ベンゾピラン-2-イル)モルホリニウム-4-イル]メトキシ]ブチル]-L-アルギニルグリシル-L-α-アスパルチルL-セリン-、分子内塩(SF1126、CAS936487-67-1)、およびXL765が挙げられる。
【0320】
典型的なイムノモジュレーターとしては、例えば、アフツズマブ(Roche(登録商標)より入手可能);ペグフィルグラスチム[Neulasta(登録商標)];レナリドマイド[CC-5013、Revlimid(登録商標)];サリドマイド[Thalomid(登録商標)]、アクチミド(CC4047);およびIRX-2(インターロイキン1、インターロイキン2、およびインターフェロンγなどのヒトサイトカインの混合物、CAS951209-71-5、IRX Therapeuticsより入手可能)が挙げられる。
【0321】
典型的なアントラサイクリンとしては、例えば、ドキソルビシン[Adriamycin(登録商標)およびRubex(登録商標)];ブレオマイシン[lenoxane(登録商標)];ダウノルビシン[塩酸ダウノルビシン(dauorubicin hydrochloride)、ダウノマイシン、および塩酸ルビドマイシン、Cerubidine(登録商標)];ダウノルビシンリポソーム[クエン酸ダウノルビシンリポソーム、DaunoXome(登録商標)];ミトキサントロン[DHAD、Novantrone(登録商標)];エピルビシン[Ellence(商標)];イダルビシン[Idamycin(登録商標)、Idamycin PFS(登録商標)];マイトマイシンC[Mutamycin(登録商標)];ゲルダナマイシン;ハービマイシン;ラビドマイシン;およびデスアセチルラビドマイシンが挙げられる。
【0322】
典型的なビンカアルカロイドとしては、例えば、酒石酸ビノレルビン[Navelbine(登録商標)]、ビンクリスチン[Oncovin(登録商標)]、およびビンデシン[Eldisine(登録商標)];ビンブラスチン[また、硫酸ビンブラスチン、ビンカロイコブラスチンおよびVLBとしても公知、Alkaban-AQ(登録商標)およびVelban(登録商標)];およびビノレルビン[Navelbine(登録商標)]が挙げられる。
【0323】
典型的なプロテオソーム阻害剤としては、ボルテゾミブ[Velcade(登録商標)];カーフィルゾミブ(PX-171-007、(S)-4-メチル-N-((S)-1-(((S)-4-メチル-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソペンタン-2-イル)アミノ)-1-オキソ-3-フェニルプロパン-2-イル)-2-((S)-2-(2-モルホリノアセトアミド)-4-フェニルブタンアミド)-ペンタンアミド);マリゾミブ(NPI-0052);クエン酸イキサゾミブ(MLN-9708);デランゾミブ(CEP-18770);およびO-メチル-N-[(2-メチル-5-チアゾリル)カルボニル]-L-セリル-O-メチル-N-[(1S)-2-[(2R)-2-メチル-2-オキシラニル]-2-オキソ-1-(フェニルメチル)エチル]-L-セリンアミド(ONX-0912)が挙げられる。
【0324】
典型的なGITRアゴニストとしては、例えば、GITR融合タンパク質および抗GITR抗体(例えば、2価抗GITR抗体)、例えば、米国特許第6,111,090号、欧州特許第090505号B1、米国特許第8,586,023号、PCT公開WO2010/003118および2011/090754で説明されているGITR融合タンパク質、または例えば米国特許第7,025,962号、欧州特許第1947183号B1、米国特許第7,812,135号、米国特許第8,388,967号、米国特許第8,591,886号、欧州特許EP1866339号、PCT公開WO2011/028683、PCT公開WO2013/039954、PCT公開WO2005/007190、PCT公開WO2007/133822、PCT公開WO2005/055808、PCT公開WO99/40196、PCT公開WO2001/03720、PCT公開WO99/20758、PCT公開WO2006/083289、PCT公開WO2005/115451、米国特許第7,618,632号、およびPCT公開WO2011/051726で説明されている抗GITR抗体が挙げられる。
【0325】
一実施形態において、本明細書で説明されるCARを発現する細胞は、mTOR阻害剤、例えば本明細書で説明されるmTOR阻害剤、例えばエベロリムスなどのラパログと組み合わせて対象に投与される。一実施形態において、mTOR阻害剤は、CAR発現細胞の前に投与される。例えば、一実施形態において、mTOR阻害剤は、細胞のアフェレーシスの前に投与されてもよい。一実施形態において、対象は、CLLを有する。
【0326】
一実施形態において、本明細書で説明されるCARを発現する細胞は、GITRアゴニスト、例えば本明細書で説明されるGITRアゴニストと組み合わせて対象に投与される。一実施形態において、GITRアゴニストは、CAR発現細胞の前に投与される。例えば、一実施形態において、GITRアゴニストは、細胞のアフェレーシスの前に投与されてもよい。一実施形態において、対象は、CLLを有する。
【0327】
カルシウム依存性ホスファターゼであるカルシニューリンを阻害する薬物(サイクロスポリンおよびFK506)、または増殖因子によって誘導されたシグナル伝達に重要なp70S6キナーゼを阻害する薬物(ラパマイシン)(Liu et al., Cell 66:807-815, 1991;Henderson et al., Immun. 73:316-321, 1991;Bierer et al., Curr. Opin. Immun. 5:763-773, 1993)のいずれかも使用することができる。さらなる態様において、本発明の細胞組成物は、骨髄移植、フルダラビンなどの化学療法剤を使用したT細胞除去療法、外部ビーム放射線療法(XRT)、シクロホスファミド、および/またはOKT3もしくはCAMPATHなどの抗体と共に(例えば、その前、それと同時またはその後に)患者に投与することができる。一態様において、本発明の細胞組成物は、CD20と反応する薬剤、例えばリツキサンなどのB細胞除去療法の後に投与される。例えば、一実施形態において、対象は、高用量化学療法、それに続いて末梢血幹細胞移植での標準的な処置を受けてもよい。所定の実施形態において、移植後、対象は、本発明の拡大させた免疫細胞の注入を受ける。さらなる実施形態において、拡大させた細胞は、外科手術の前に、またはその後に投与される。
【0328】
一実施形態において、対象は、CAR発現細胞の投与に関連する副作用を低減または改善する薬剤を投与されてもよい。CAR発現細胞の投与に関連する副作用としては、これらに限定されないが、CRS、およびマクロファージ活性化症候群(MAS)とも称される血球貪食性リンパ組織球症(HLH)が挙げられる。CRSの症状としては、高熱、吐き気、一過性の低血圧、低酸素症、および同種のものが挙げられる。したがって、本明細書で説明される方法は、本明細書で説明されるCAR発現細胞を対象に投与すること、およびCAR発現細胞での処置の結果起こる可溶性因子の上昇したレベルを管理するための薬剤をさらに投与することを含んでいてもよい。一実施形態において、対象において上昇した可溶性因子は、IFN-γ、TNFα、IL-2およびIL-6の1つまたは複数である。それゆえに、この副作用を処置するために投与される薬剤は、これらの可溶性因子の1つまたは複数を中和する薬剤であってもよい。このような薬剤としては、これらに限定されないが、ステロイド、TNFα阻害剤、およびIL-6阻害剤が挙げられる。TNFα阻害剤の例は、エタネルセプト(entanercept)である。IL-6阻害剤の例は、トシリズマブ(toc)である。
【0329】
一実施形態において、対象は、CAR発現細胞の活性を強化する薬剤を投与されてもよい。例えば、一実施形態において、薬剤は、阻害分子を阻害する薬剤であってもよい。いくつかの実施形態において、阻害分子、例えばプログラム死1(PD1)は、免疫エフェクター応答を仕掛けるCAR発現細胞の能力を減少させることができる。阻害分子の例としては、PD1、PD-L1、CTLA4、TIM3、LAG3、VISTA、BTLA、TIGIT、LAIR1、CD160、2B4およびTGFRベータが挙げられる。阻害分子の阻害、例えばDNA、RNAまたはタンパク質レベルでの阻害による阻害は、CAR発現細胞の性能を最適化することができる。実施形態において、阻害核酸、例えばdsRNA、例えばsiRNAまたはshRNAなどの阻害核酸は、CAR発現細胞において阻害分子の発現を阻害するのに使用できる。一実施形態において、阻害剤は、shRNAである。ある実施形態において、阻害分子は、CAR発現細胞内で阻害される。これらの実施形態において、阻害分子の発現を阻害するdsRNA分子は、構成要素、例えばCARの構成要素の全てをコードする核酸に連結されている。一実施形態において、阻害シグナルの阻害剤は、例えば阻害分子に結合する抗体または抗体フラグメントであってもよい。例えば、薬剤は、PD1、PD-L1、PD-L2またはCTLA4に結合する抗体または抗体フラグメントであってもよい[例えば、イピリムマブ(また、MDX-010およびMDX-101とも称され、Yervoy(登録商標)として販売されている;Bristol-Myers Squibb;トレメリムマブ(Pfizerより入手可能なIgG2モノクローナル抗体、以前はチシリムマブとして公知、CP-675,206)。]。ある実施形態において、薬剤は、TIM3に結合する抗体または抗体フラグメントである。ある実施形態において、薬剤は、LAG3に結合する抗体または抗体フラグメントである。
【0330】
PD1は、CD28、CTLA-4、ICOS、およびBTLAも包含する受容体のCD28ファミリーの阻害性の一員である。PD1は、活性化されたB細胞、T細胞および骨髄細胞で発現される(Agata et al. 1996 Int. Immunol 8:765-75)。PD1、PD-L1およびPD-L2に関する2つのリガンドは、PD1に結合する際にT細胞の活性化を下方調節することが示されている(Freeman et a.2000 J Exp Med 192:1027-34;Latchman et al.2001 Nat Immunol 2:261-8; Carter et al.2002 Eur J Immunol 32:634-43)。PD-L1は、ヒトがんにおいて豊富である(Dong et al. 2003 J Mol Med 81:281-7;Blank et al. 2005 Cancer Immunol. Immunother 54:307-314;Konishi et al. 2004 Clin Cancer Res 10:5094)。免疫抑制は、PD1とPD-L1との局所的な相互作用を阻害することによって、回復させることができる。PD1、PD-L1およびPD-L2の抗体、抗体フラグメント、および他の阻害剤が当業界において利用可能であり、本明細書で説明されるCD19CARと組み合わせて使用することができる。例えば、ニボルマブ(また、BMS-936558またはMDX1106とも称される;Bristol-Myers Squibb)は、PD1を特異的にブロックする完全ヒトIgG4 モノクローナル抗体である。PD1に特異的に結合するニボルマブ(クローン5C4)および他のヒトモノクローナル抗体は、US8,008,449およびWO2006/121168に開示されている。ピジリズマブ(Pidilizumab)(CT-011;Cure Tech)は、PD1ピジリズマブに結合するヒト化IgG1kモノクローナル抗体であり、他のヒト化抗PD1モノクローナル抗体は、WO2009/101611に開示されている。ラムブロリズマブ(Lambrolizumab)(また、MK03475とも称される;Merck)は、PD1に結合するヒト化IgG4モノクローナル抗体である。ラムブロリズマブおよび他のヒト化抗PD1抗体は、US8,354,509およびWO2009/114335に開示されている。MDPL3280A(Genentech/Roche)は、PD-L1に結合するヒトFcに最適化されたIgG1モノクローナル抗体である。MDPL3280Aおよび他のPD-L1に対するヒトモノクローナル抗体は、米国特許第7,943,743号および米国特許出願公開第20120039906号に開示されている。他の抗PD-L1結合剤としては、YW243.55.S70(WO2010/077634において、重鎖および軽鎖可変領域は、配列番号20および21に示される)およびMDX-1 105(また、BMS-936559とも称され、例えばWO2007/005874で開示された抗PD-L1結合剤である)が挙げられる。AMP-224(B7-DCIg;アンプリミューン;例えば、WO2010/027827およびWO2011/066342で開示されたもの)は、PD1とB7-H1との相互作用をブロックするPD-L2Fc融合可溶性受容体である。他の抗PD1抗体としては、なかでもAMP514(アンプリミューン)が挙げられ、例えば、US8,609,089、US2010028330、および/またはUS20120114649で開示された抗PD1抗体である。
【0331】
いくつかの実施形態において、CAR発現細胞の活性を強化する薬剤は、例えば、第一のドメインおよび第二のドメインを含む融合タンパク質であってもよく、ここで第一のドメインは阻害分子またはそれらのフラグメントであり、第二のドメインは、陽性シグナルと会合するポリペプチドであり、例えば、本明細書で説明したような細胞内(antracellular)シグナル伝達ドメインを含む(comrpsing)ポリペプチドである。いくつかの実施形態において、陽性シグナルと会合するポリペプチドとしては、CD28、CD27、ICOSの共刺激ドメイン、例えば、CD28、CD27および/またはICOSの細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または例えば、本明細書で説明されたような、例えばCD3ゼータの一次シグナル伝達ドメインを挙げることができる。一実施形態において、融合タンパク質は、CARを発現した同じ細胞によって発現される。別の実施形態において、融合タンパク質は、細胞、例えば抗CD19CARを発現しないT細胞によって発現される。
【0332】
一実施形態において、本明細書で説明されるCAR発現細胞の活性を強化する薬剤は、miR-17-92である。
【0333】
医薬組成物および処置
本発明の医薬組成物は、CAR発現細胞、例えば本明細書で説明したような複数のCAR発現細胞を、1つまたは複数の薬学的または生理学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤と組み合わせて含んでいてもよい。このような組成物は、緩衝液、例えば中性緩衝食塩水、リン酸緩衝生理食塩水および同種のもの;炭水化物、例えばグルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン、マンニトール;タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸、例えばグリシン;抗酸化剤;キレート剤、例えばEDTAまたはグルタチオン;アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム);および保存剤を含んでいてもよい。一態様において、本発明の組成物は、静脈内投与用に製剤化される。
【0334】
本発明の医薬組成物は、処置しようとする(または予防しようとする)疾患に適切な方式で投与されてもよい。投与の量および頻度は、患者の状態、ならびに患者の疾患のタイプおよび重症度のような要素によって決定されると予想されるが、適切な投薬は臨床試験によって決定してもよい。
【0335】
一実施形態において、医薬組成物は、例えば、内毒素、マイコプラスマ、複製能を有するレンチウイルス(RCL)、p24、VSV-G核酸、HIV gag、残留した抗CD3/抗CD28でコーティングされたビーズ、マウス抗体、プールされたヒト血清、ウシ血清アルブミン、ウシ血清、培養培地の成分、ベクターのパッケージング細胞またはプラスミド成分、細菌および真菌からなる群より選択される汚染物質を実質的に含まず、例えば、それらのレベルが検出可能ではない。一実施形態において、細菌は、アルカリゲネス・フェカーリス(Alcaligenes faecalis)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitides)、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumonia)、およびストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)A群からなる群より選択される少なくとも1つである。
【0336】
「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」、または「治療量」が提示される場合、投与しようとする本発明の組成物の正確な量は、患者(対象)の年齢、体重、腫瘍のサイズ、感染または転移の程度、および状態の個体差を医師が検討することによって決定することができる。一般的に、本明細書で説明されるT細胞を含む医薬組成物は、範囲内の全ての整数値を含め、細胞10から10個/kg体重の投薬量、いくつかの場合において細胞10から10個/kg体重の投薬量で投与されてもよいと概説することができる。またT細胞組成物は、これらの投薬量で複数回投与してもよい。細胞は、免疫療法で一般的によく知られている注入技術を使用することによって投与してもよい(例えば、Rosenberg et al., New Eng. J. of Med. 319:1676, 1988を参照)。
【0337】
所定の態様において、対象に活性化されたT細胞を投与し、その後続いて再度採血し(またはアフェレーシスが行われ)、それからのT細胞を本発明に従って活性化し、これらの活性化され拡大したT細胞を患者に再注入することが望ましい場合がある。このプロセスは、数週間に複数回実行してもよい。所定の態様において、10ccから400ccの採取された血液から、T細胞を活性化することができる。所定の態様において、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、70cc、80cc、90cc、または100ccの採取された血液から、T細胞を活性化する。
【0338】
本組成物の投与は、例えばエアロゾル吸入法、注射、取り込み、輸注、埋め込みまたは移植などによるあらゆる便利な方式で実行することができる。本明細書で説明される組成物は、動脈経由、皮下、皮内、腫瘍内、リンパ節経由(intranodally)、髄内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射で、または腹腔内で、患者に投与されてもよい。一態様において、本発明のT細胞組成物は、皮内または皮下注射によって患者に投与される。一態様において、本発明のT細胞組成物は、i.v.注射によって投与される。T細胞の組成物は、腫瘍、リンパ節、または感染部位に直接注射されてもよい。
【0339】
特定の典型的な態様において、対象は、白血球除去血輸血を受けてもよく、その際、対象の細胞、例えばT細胞を選択および/または単離するために、エクスビボで白血球を収集したり、高濃度化したり、または枯渇させたりする。これらのT細胞単離物を当業界公知の方法で拡大させて、1つまたは複数の本発明のCARコンストラクトが導入されることにより本発明のCART細胞が作り出されるように処置することができる。それらを必要とする対象は、その後、高用量化学療法、それに続く末梢血幹細胞移植を用いた標準的な処置を受けてもよい。所定の態様において、移植に続いて、またはそれと並列して、対象は、拡大させた本発明のCART細胞の注入を受ける。追加の態様において、拡大させた細胞は、外科手術の前に、またはその後に投与される。
【0340】
患者に投与しようとする上記の処置の投与は、処置される状態の正確な性質および処置を受けるレシピエントに応じて様々であると予想される。ヒトへの投与に関する投薬量の尺度化は、当業界で容認された実施に従って行うことができる。例えばCAMPATHに関する用量は、一般的に、成人の患者の場合、1mgから約100mgの範囲であり、通常1日から30日までの期間毎日投与されると予想される。好ましい1日用量は、1mgから10mg/1日であるが、いくつかの場合において、それより多くの最大40mg/日の用量が使用される場合もある(米国特許第6,120,766号で説明されている)。
【0341】
一実施形態において、CARは、例えばインビトロでの転写を使用してT細胞に導入され、対象(例えば、ヒト)は、本発明のCART細胞の最初の投与、およびそれに続く1回または複数の本発明のCART細胞の投与を受け、ここでそれに続く1回または複数の投与は、以前の投与の後、15日未満、例えば、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、または2日未満に投与される。一実施形態において、1週間あたり1回より多くの本発明のCART細胞の投与が、対象(例えば、ヒト)に投与され、例えば1週間あたり2、3、または4回の本発明のCART細胞の投与が投与される。一実施形態において、対象(例えば、ヒト対象)は、1週間あたり1回より多くのCART細胞の投与(例えば、1週間あたり2、3または4回の投与)(また本明細書では、サイクルとも称される)を受け、それにCART細胞の投与なしの1週間が続き、次いで1回または複数の追加のCART細胞の投与(例えば、1週間あたり1回より多くのCART細胞の投与)が対象に投与される。別の実施形態において、対象(例えば、ヒト対象)は、CART細胞の1回より多くのサイクルを受け、各サイクル間の時間は、10、9、8、7、6、5、4、または3日未満である。一実施形態において、CART細胞は、1日おきに、1週間あたり3回の投与で投与される。一実施形態において、本発明のCART細胞は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8またはそれより多くの週にわたり投与される。
【0342】
一態様において、CD19 CARTは、レンチウイルスウイルスベクター、例えばレンチウイルスを使用して生成される。このようにして生成したCARTは、安定なCAR発現を有すると予想される。
【0343】
一態様において、CARTは、形質移入から4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15日後にCARベクターを一過性発現する。CARの一過性発現は、RNA CARベクターデリバリーによって実行することができる。一態様において、CAR RNAは、エレクトロポレーションによってT細胞に形質導入される。
【0344】
CART細胞の一過性発現を使用して(特にマウスscFvが結合しているCARTを用いて)処置される患者において生じる可能性がある潜在的な問題は、複数回の処置後のアナフィラキシーである。
【0345】
この理論に縛られることは望まないが、このようなアナフィラキシー応答は、患者が体液性抗CAR応答、すなわち抗IgEアイソタイプを有する抗CAR抗体を発生させることによって引き起こされる可能性があると考えられる。抗原曝露が10日から14日中断されると、患者の抗体産生細胞が、IgGアイソタイプ(アナフィラキシーを引き起こさない)からIgEアイソタイプへのクラススイッチを経ると考えられる。
【0346】
患者が、一過性のCAR療法(例えばRNAの形質移入によって起こるもの)の経過中に抗CAR抗体反応を生成する高い危険を有する場合、CART注入の中断は、10日から14日より長く継続すべきではない。
【実施例
【0347】
以下の実施例を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は単に例示のために示されたものであり、特に他の規定がない限り限定を意図していない。したがって、本発明は、以下の実施例に限定されると決して解釈されず、本明細書で示された教示の結果として明らかになるありとあらゆるバリエーションを包含すると解釈されるものとする。
【0348】
当業者は、さらなる説明がなくても、前述の説明および以下の説明に役立つ例を使用して、本発明の化合物を作製し利用して、特許請求された方法を実施することができると考えられる。以下の実施例は、本発明の様々な態様を具体的に指摘するが、開示のその他の部分を限定すると決して解釈されないものとする。
【実施例1】
【0349】
マウス抗CD19抗体のヒト化
マウス特異的な残基が、CART19処置、すなわちCAR19コンストラクトで形質導入されたT細胞での処置を受ける患者においてヒト抗マウス抗原(HAMA)応答を誘導する可能性がある臨床条件にとっては、マウスCD19抗体のヒト化が望ましい。ハイブリドーマ由来マウスCD19抗体のVHおよびVL配列を公開された文献(Nicholson et al, 1997、上記)から得た。ヒト生殖細胞系のアクセプターフレームワークVH4_4-59およびVK3_L25(vBASEデータベース)上にマウスCD19抗体からのCDR領域をグラフト化することによって、ヒト化を達成した。CDR領域に加えて、CDR領域の構造的な完全性を支持すると考えられる5つのフレームワーク残基、すなわちVH71番、73番、78番およびVL71番、87番をマウス配列から保持させた。さらに、重鎖および軽鎖それぞれにヒトJ要素であるJH4およびJK2を使用した。ヒト化抗体の結果得られたアミノ酸配列をそれぞれFMC63_VL_hzおよびFMC63_VH_hz1と名付け、以下の表1に示す。残基の番号付けはKabatに従った(Kabat E.A. et al, 1991、上記)。CDR定義に関しては、KabatとChothiaら(1987、上記)の両方を使用した。マウスCD19由来の残基は、太字/イタリックで示される。ボックスで囲まれた位置番号60/61/62は、HCDR2とも称されるCDR H2における潜在的な翻訳後修飾(PTM)部位を示す。
【0350】
【表1】
【0351】
これらのヒト化CD19IgGを使用して、発現をテストするための可溶性scFv、および完全CART CD19コンストラクトのためのscFvを生成した(以下の実施例を参照)。興味深いことに、ヒト化中、CDRH2領域における62位は、マウスCDRH2中に存在するアラニンではなくセリン残基のほうを選択した。マウス配列は翻訳後修飾(PTM)を欠失しており、CDRH2中の60/61/62位それぞれにアスパラギン-セリン-アラニンを有する。これは、ヒト化の経過中に、潜在的なPTMモチーフ(CDRH2中のボックスで囲まれた部位として提示)を生成する。ヒト化プロセス中に生成したPTM部位が、実際に「真の」PTM部位なのかまたは単に理論上のものかをテストした。アミノ酸モチーフであるアスパラギンとそれに続くセリン(NS)は、翻訳後脱アミドを受けやすい可能性があるが、発見が容易というほどのものではないという仮説を立てた。また、アスパラギンとそれに続くプロリンを除いたあらゆるアミノ酸、次いでそれに続くセリン(NxS、xはPではない)は、翻訳後N-グリコシル化を受けやすい可能性があるという仮説も立てた。この仮説をテストするために、60位(グリコシル化部位であることが公知)のアスパラギンをセリンまたはグルタミンに突然変異させた2種のIgG変異体を生成し、これらをそれぞれFMC63_VH_hz2(N60S)およびFMC63_VH_hz2(N60Q)と名付けた。これらのコンストラクトは、潜在的な翻訳後修飾部位(PTM)を除去して、保持された活性に関してテストするために生成した(以下の実施例2を参照)。
【0352】
クローニング:
マウスおよびヒト化VLおよびVHドメインをコードするDNA配列を得て、ヒト由来細胞で発現させるためにコンストラクトに関するコドンを最適化した。
【0353】
VLおよびVHドメインをコードする配列を、クローニングベクターから哺乳動物細胞中での分泌に好適な発現ベクターにサブクローニングした。重鎖および軽鎖が共にトランスフェクションされるように、それらを個々の発現ベクターにクローニングした。発現ベクターの要素は、プロモーター(サイトメガロウイルス(CMV)エンハンサー-プロモーター)、分泌を容易にするためのシグナル配列、ポリアデニル化シグナルおよび転写ターミネーター(ウシ成長ホルモン(BGH)遺伝子)、エピソーム複製および原核生物での複製を可能にする要素(例えばSV40由来およびColE1または当業界公知のその他のもの)、および選択を可能にする要素(アンピシリン耐性遺伝子およびゼオシンマーカー)を包含する。
【0354】
発現:
キメラおよびヒト化IgG候補を、1mlのスケールでHEK293F哺乳動物細胞で発現させた。排除した上清をFACS結合研究に使用した。より正確に言えば、HEK293F細胞を、ペニシリン/ストレプトマイシンが補充されたFreeStyle培地で細胞5E5個/mlに希釈し、1mlを24個の丸底ディープウェルプレートに移した。0.5μgの軽鎖および0.5μgの重鎖哺乳動物発現プラスミドを、同じ培地で、4μlのFuGENE HD(Roche REF 04709705001)と共に希釈した。室温で15分インキュベートした後、DNA/FuGENEのミックスを細胞に一滴ずつ添加し、5%COインキュベーター中に、250rpm、37℃で5日置いた。次いで遠心分離によって細胞から上清を分離した。IgG含量を測定するために、200μLのアリコートを、96-ウェルマイクロタイタープレートのウェル中に置いた。全てのサンプルおよび標準をプロテインAディップおよび読取りバイオセンサー(Fortebio、カタログ番号18-5010)を使用して2連で測定した。プレートをOctet機器(ForteBio)中に置き、サーモスタットで調節したチャンバー中でそのまま27℃に平衡化した。Octetユーザーソフトウェアのバージョン3.0を使用してデータを自動処理し、IgG標準曲線と比較することによって濃度を決定した。
【0355】
FACSによる結合分析:
細胞株300.19-hsCD19FLを使用したフローサイトメトリー結合アッセイによってヒト化およびキメラ抗体を評価した。この細胞株は、全長ヒトCD19をコードする配列および天然プロモーター、加えてゼオシン耐性遺伝子をコードするベクター(hCD19 FL/pEF4-myc-His A)でマウスプレB細胞株300.19をトランスフェクトすることによって生成された。簡単に言えば、300.19細胞を直線化したプラスミドでエレクトロポレーションし、次いでAPCとコンジュゲートした抗ヒトCD19Ab(BDからのクローンHIB19555415)を使用して高レベルのhsCD19を発現する細胞を同定し、その後FACS Ariaフローサイトメーターを使用してソートした。ソートしたhsCD19+細胞を培養し、高レベルのhsCD19を安定して発現することを確認した。
【0356】
結合アッセイは、発現されたIgGを含有する血清非含有の培養培地を用いて直接行うことができた。全ての評価したIgGを同じ濃度(85nM)に正規化し、その後1.4pMまで3倍連続希釈することにより希釈した。次いで、96-ウェルプレートで、細胞5×10個/ウェルのアリコートを、希釈したIgGと共に4℃で30分間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液(PBS中の0.5%BSA)で2回洗浄し、その後、検出抗体であるAPCとコンジュゲートしたヤギ抗huIgGの特異的なFcフラグメント(Dianova番号109-136-098)を添加し、FACS緩衝液で1:1000に希釈した。細胞を4℃でさらに30分間インキュベートし、次いでFACS緩衝液で2回洗浄し、FACSキャリバー(BD Bioscience)を使用してアッセイした。結合曲線のプロット(IgG濃度に対する蛍光強度の中央値)およびEC50決定を、GraphPad Prism(商標)3.0ソフトウェアを用いて、非線形回帰分析、S字状用量応答(変数傾斜)で行った。
【0357】
FACS分析から、評価した全てのIgGに関する見かけの結合は、広範囲に変動する可能性があり、いくつかのコンストラクトは、IgG対scFvとしてのEC50において5から10倍のシフトを示すことが示される。EC50値に基づいて、参照キメラと比較して2倍またはそれより優れた結合親和性を有するリード候補が選ばれる。
【実施例2】
【0358】
ヒト化CD19IgG抗体由来の抗CD19可溶性scFvフラグメントの特徴付け
可溶性scFvフラグメントを、標準的な分子生物学技術を使用して実施例1で説明したヒト化CD19IgGから生成した。これらの可溶性scFvを、安定性、細胞表面発現、およびscFvの結合特性を試験するための特徴付け研究に使用した。加えて、ヒト化プロセス中に導入された潜在的なPTMの影響を調査するための実験も行った。
【0359】
scFvの発現および精製
各scFvコンストラクトのトランスフェクションのために、トランスフェクション試薬としてPEIを3:1(PEI:DNA)の比率で使用して、約3e8の293F細胞を100μgのプラスミドでトランスフェクトした。振盪フラスコ中の100mlのEXPi293発現培地(Invitrogen)中、37℃、125rpm、8%COで細胞を成長させた。6日後に培養物を回収し、タンパク質精製に使用した。
【0360】
3500gで20分間遠沈させることによって、293F細胞を回収した。上清を収集し、VacuCap90PFフィルターユニット(w/0.8/0.2μmのスーパーメンブレン、PALL)を通過させて濾過した。上清に約400μl400μlのNi-NTAアガロースビーズ(Qiagen)を添加した。混合物を回転させて4℃で4時間インキュベートした。それを精製カラムにローディングし、20mMヒスチジンを含む洗浄緩衝液で洗浄した。タンパク質を300mMヒスチジンを含む500μlの溶出緩衝液で溶出させた。サンプルをPBS緩衝液に対して4Cで一晩透析した。ナノドロップ2000cを使用してタンパク質サンプルを定量した。
【0361】
scFvのコンフォメーションおよびコロイド安定性の分析
scFvの熱安定性を、DSFによって決定した:PBS中25μlの総容量の最終的な希釈度1:1000の色素のシプロオレンジ(Invitrogen、カタログ番号S6650)を含むミックス10~20μlのタンパク質サンプルを、BioRad CFX1000(25℃で2分間、次いで30秒毎に0.5℃上昇させて25℃から95℃まで)で処理した。
【0362】
分析的SEC実験のために、20μlのPBS中の約15~20μgのscFvタンパク質サンプルを、n Agilent1100シリーズで、0.3ml/分の流速でTSKgel Super SW2000に注入した。
【0363】
FACS結合によるEC50
マウス細胞株300.CD19を、0.5mg/mlゼオシンを含むRPMI1640中で成長させた。細胞約5e5個/ウェルをBD Falconの96ウェルプレートに移した。細胞を900rpm(Sorval Legend XT遠心分離機)で3分間遠沈した。上清を除去した。抗CD19scFvタンパク質サンプルを5%FBSを含むDPBSで希釈した。ウェルにサンプルを添加し、細胞と共に十分混合し、1時間インキュベートした。細胞を5%FBSを含むDPBSで2回洗浄した。細胞を抗ポリHis PE(R&D)と共に1時間インキュベートし、2回洗浄し、その後、FACS分析(BD Biosciences製のLSRII)を行った。
【0364】
Proteonによる反応速度論分析
Bio-RadのProteonを使用して速度論を決定した。標準的なGLCセンサーチップ上でのアミンカップリングを使用して固定を行った。scFvサンプルをpH4.5の酢酸塩で0.03mg/mLに希釈し、30μL/分の流速で300秒間チップに適用した。次いでCD19リガンドをPBS-Tweenで連続希釈し、50μL/分の流速で120秒間注入し、解離時間は480秒間とした。チップ表面をpH2.5のグリシンで再生した。1:1のラングミュアモデルを使用してデータをフィッティングした。
【0365】
表面におけるCART19コンストラクトの発現およびFACSによる染色
異なる抗hCD19 CARTを一過性トランスフェクトしたHEK293F懸濁細胞をトランスフェクションの2日後に回収した。V型96ウェルプレート(Greiner Bio-One、Germany)の各ウェルに約1e6個の細胞を置き、0.2mlのFACS緩衝液(4%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有する1×PBS(BSAフラクションV、Roche Diagnostics、Indianapolis、IN)で3回洗浄した。0.2μgのビオチン化プロテインL(GenScript、Piscataway、NJ)または100nMのhCD19(AA1~291)-hIgG1 Fc(NIBRI製)のいずれかを含む0.2mlのFCAS緩衝液中に細胞を再懸濁し、4℃で30分間インキュベートした。次いで細胞を0.2mlのFACS緩衝液で3回洗浄し、プロテインLを含むサンプルには0.2mlのFACS緩衝液中の1μlストレプトアビジンAlexa Fluor488(Life Technologies、Grand Island、NY)、またはhCD19-hIgG1 Fcを含むサンプルには0.2mlのFACS緩衝液中の2μlのPE抗ヒトFcγ(Jackson ImmunoResearch Laboratories、West Grove、PA)と共に、4℃で30分間、暗所でインキュベートした。0.2mlのFACS緩衝液で3回洗浄した後、細胞を、LSRII(BD Biosciences、San Jose、CA)装置で、FACSDivaソフトウェア(BD Biosciences、San Jose、CA)を使用して分析した。免疫蛍光法による染色を生細胞の相対的な蛍光対数値として分析し、Alexa Fluor488陽性またはPE陽性細胞のパーセンテージを測定した。
【0366】
ヒト化プロセス中に生成した潜在的なPMTの分析
興味深いことに、実施例1で説明したように、ヒト化中、CDRH2領域の62位は、マウスCDRH2中に存在するアラニンではなくセリン残基のほうを選択する。ヒト化プロセス中に生成したPTM部位が、実際に「真の」PTM部位なのかまたは単に理論上のものなのかをテストした。60位のアスパラギン(グリコシル化部位であることが公知)をセリンまたはグルタミンに突然変異させ、それぞれFMC63_VH_hz2(N60S)およびFMC63_VH_hz2(N60Q)と名付けた2種のIgG変異体を生成した。これらのコンストラクトは、潜在的な翻訳後修飾部位(PTM)を除去して、保持された活性に関してテストするために生成した。
【0367】
結果
抗CD19のヒト化scFvおよびマウスscFvを293F細胞で発現させ、Hisタグにより精製した。全てのヒト化scFvの発現および収量は、元のマウスscFvよりもかなり高かった(データ示さず)。
【0368】
同一性を確認して完全性を検討するために、N-グリカナーゼF(PNGaseF)とのインキュベートを行うかまたは行わずに、続いて高性能高速液体クロマトグラフィー質量分析(HPLC-MS)(図3を参照)およびSDS-PAGE(データ示さず)の両方を用いて、scFVコンストラクトを分析する。PNGaseFは、コンセンサス配列N-X-S/T/C(式中、Xは、プロリン以外のあらゆるアミノ酸である)からのN-結合型グリカン構造の除去に特異的な酵素である。簡単に言えば、サンプルを水で0.1μg/μLに希釈し、未処置のままにするか、または1:2(w/w)のPNGaseF:scFVの比率でPNGaseFと37℃で3時間インキュベートする。
【0369】
SDS-PAGE分析は、Novex製のNuPAGE4~12%ビストリスゲルを使用して行われる。各レーンにおよそ2μgのscFVをローディングし、一定の200Vで40分間電気泳動を行う。電気泳動後、PhastGelブルーR250染色(Amersham Pharmacia)を使用してゲルを染色し、10%酢酸、30%メタノールで脱色する。
【0370】
HPLC-MS分析は、Xevo-Tofマススペクトロメーターと組み合わされたWatersのAcquity UPLCシステムで行われる。0.5mL/分の流速で60℃に設定されたR1/10、2.1×100mm、10μmのPOROSカラム(Applied Biosciences)に、およそ1μgの各サンプルをローディングする。移動相は、0.1%ギ酸(A)および0.1%ギ酸、75%イソプロパノール、25%アセトニトリル(B)で構成される。12分間の25%~90%Bの逆相勾配でカラムからタンパク質を溶出させる。600~4000Daの範囲のm/z、20~50Vの傾斜のソースコーン電圧で、エレクトロスプレーポジティブスキャンを使用して、捕捉を行う。結果得られたスペクトルを、MaxEnt1を使用してデコンボリューションする。
【0371】
ヒト化プロセス中にグリコシル化部位を導入した。非PTM変異体(VH:N60SまたはN60Q)はこの追加の形態を有さなかった。このコンストラクトが、HC CDR2におけるN-結合型グリコシル化のコンセンサス部位を有する唯一のものであった。SDS-PAGE分析から、未処置サンプルが単一のバンドとして移動し、二つ組が観察された103101-WT(S/N)を除いて全てのコンストラクトに関する配列のおよその分子量と一致していた。このコンストラクトは、H-CDR2におけるN-結合型グリコシル化のコンセンサス部位を有する唯一のものである。PNGaseFで処置したところ、二つ組のより高分子量のバンドは存在しなくなることから、この部位は部分的な占有であることが示唆される。同様に、デコンボリューションされたマススペクトルから観察された分子量は、アミノ酸配列から予測されたものと一致する。しかしながら、他のコンストラクトは単一の一次分子種を実証したが、103101-WT(S/N)は、PNGaseFで処置した後に存在しなくなった配列から予測されたものより1217ダルトン大きい集団も有していた。これは、質量に基づきオリゴマンノース5の可能性がある単一の優勢なN-結合型グリコフォームの存在と一致する。グリコシル化形態の存在は、図3で示したようなMS分析によって確認された。
【0372】
コンフォメーションの安定性を、示差走査蛍光測定法(DSF)によって測定した。図4で示したように、マウスscFvのTmは57℃であったが、ヒト変異体は約70℃でより高いTmを示した。全てのヒト化scFvに関するTmは、マウスscFvよりもかなり優れており、これから明らかに、全てのヒト化scFvはマウスscFvより安定であることが示される。この安定性が、CART19コンストラクトにとって向上した治療特性をもたらす可能性につながると予想される。
【0373】
精製されたscFvの活性を、SPRベースの検出方法を使用して、hCD19発現細胞に結合させること、加えてhCD19抗原に結合させることによって測定した。マウス細胞株300を使用して、scFvの結合を決定した。hCD19に関するマウスscFvのEC50は、約06~1.6nMであった。ヒト化変異体は、低い、またはnM未満のEC50範囲において同じ範囲のEC50を示した。
【実施例3】
【0374】
CD19CARコンストラクト
最終的なCARコンストラクトで使用しようとするscFvを、実施例1で説明したヒト化IgGから得た。scFvにおいてVLおよびVHドメインが出現する順番を変更して(すなわち、VL-VH、またはVH-VLの配置)、各サブユニットが配列GGGGS(配列番号18)を含む「G4S」(配列番号18)サブユニットの3つまたは4つのコピー[例えば、(G4S)(配列番号107)または(G4S)(配列番号106)]のいずれかを可変ドメインに接続させて、表2で示されるようなscFvドメイン全体を作り出した。
【0375】
【表2】
【0376】
以下の表3に、ヒト化scFvフラグメントの配列(配列番号1~12)を示す。配列番号1~12を使用して完全CARコンストラクトを生成し、以下に示す追加の配列の配列番号13~17から、配列番号31~42を有する完全CARコンストラクトを生成した。
【0377】
・リーダー(アミノ酸配列)(配列番号13)
MALPVTALLLPLALLLHAARP
【0378】
・リーダー(核酸配列)(配列番号54)
ATGGCCCTGCCTGTGACAGCCCTGCTGCTGCCTCTGGCTCTGCTGCTGCATGCCGCTAGACCC
【0379】
・CD8ヒンジ(アミノ酸配列)(配列番号14)
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD
【0380】
・CD8ヒンジ(核酸配列)(配列番号55)
ACCACGACGCCAGCGCCGCGACCACCAACACCGGCGCCCACCATCGCGTCGCAGCCCCTGTCCCTGCGCCCAGAGGCGTGCCGGCCAGCGGCGGGGGGCGCAGTGCACACGAGGGGGCTGGACTTCGCCTGTGAT
【0381】
・CD8膜貫通(アミノ酸配列)(配列番号15)
IYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC
【0382】
・膜貫通(核酸配列)(配列番号56)
ATCTACATCTGGGCGCCCTTGGCCGGGACTTGTGGGGTCCTTCTCCTGTCACTGGTTATCACCCTTTACTGC
【0383】
・4-1BB細胞内ドメイン(アミノ酸配列)(配列番号16)
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL
【0384】
・4-1BB細胞内ドメイン(核酸配列)(配列番号60)
AAACGGGGCAGAAAGAAACTCCTGTATATATTCAAACAACCATTTATGAGACCAGTACAAACTACTCAAGAGGAAGATGGCTGTAGCTGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAGGAGGATGTGAACTG
【0385】
・CD3ゼータドメイン(アミノ酸配列)(配列番号17)
RVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0386】
・CD3ゼータ(核酸配列)(配列番号101)
AGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACAAGCAGGGCCAGAACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTTTGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGAAGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGGAGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGCACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGCCCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGC
【0387】
・CD3ゼータドメイン(アミノ酸配列;NCBI参照配列NM_000734.3)(配列番号43)
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0388】
・CD3ゼータ(核酸配列;NCBI参照配列NM_000734.3);(配列番号44)
AGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCAGACGCCCCCGCGTACCAGCAGGGCCAG
AACCAGCTCTATAACGAGCTCAATCTAGGACGAAGAGAGGAGTACGATGTTT
TGGACAAGAGACGTGGCCGGGACCCTGAGATGGGGGGAAAGCCGAGAAGGA
AGAACCCTCAGGAAGGCCTGTACAATGAACTGCAGAAAGATAAGATGGCGG
AGGCCTACAGTGAGATTGGGATGAAAGGCGAGCGCCGGAGGGGCAAGGGGC
ACGATGGCCTTTACCAGGGTCTCAGTACAGCCACCAAGGACACCTACGACGC
CCTTCACATGCAGGCCCTGCCCCCTCGC
【0389】
IgG4ヒンジ(アミノ酸配列)(配列番号102)
ESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGKM
【0390】
IgG4ヒンジ(ヌクレオチド配列)(配列番号103)
GAGAGCAAGTACGGCCCTCCCTGCCCCCCTTGCCCTGCCCCCGAGTTCCTGGGCGGACCCAGCGTGTTCCTGTTCCCCCCCAAGCCCAAGGACACCCTGATGATCAGCCGGACCCCCGAGGTGACCTGTGTGGTGGTGGACGTGTCCCAGGAGGACCCCGAGGTCCAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCACAACGCCAAGACCAAGCCCCGGGAGGAGCAGTTCAATAGCACCTACCGGGTGGTGTCCGTGCTGACCGTGCTGCACCAGGACTGGCTGAACGGCAAGGAATACAAGTGTAAGGTGTCCAACAAGGGCCTGCCCAGCAGCATCGAGAAAACCATCAGCAAGGCCAAGGGCCAGCCTCGGGAGCCCCAGGTGTACACCCTGCCCCCTAGCCAAGAGGAGATGACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTGGTGAAGGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAACGGCCAGCCCGAGAACAACTACAAGACCACCCCCCCTGTGCTGGACAGCGACGGCAGCTTCTTCCTGTACAGCCGGCTGACCGTGGACAAGAGCCGGTGGCAGGAGGGCAACGTCTTTAGCTGCTCCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAACCACTACACCCAGAAGAGCCTGAGCCTGTCCCTGGGCAAGATG
【0391】
これらのクローンは全て、4-1BB由来共刺激ドメインのシグナルドメインにおいてQ/Kの残基の変化を含有していた。
【0392】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
【表3-8】
【表3-9】
【表3-10】
【表3-11】
【表3-12】
【表3-13】
【0393】
scFvドメインのヒト化CDR配列の配列を、重鎖可変ドメインに関しては表4に、軽鎖可変ドメインに関しては表5に示す。「ID」は、各CDRそれぞれの配列番号を意味する。
【0394】
【表4】
【0395】
【表5】
【0396】
表6は、CD19コンストラクトの数字による名称と、scFvの軽鎖および重鎖の具体的な配置、重鎖と軽鎖とを隔てるリンカー単位[すなわち、(G4S)(配列番号107)または(G4S)4(配列番号106)]の数、および重鎖CDR2における特徴的なアミノ酸配列との関係を示す検索表である。
【0397】
【表6】
【0398】
次いでCARのscFvフラグメントをレンチウイルスベクターにクローニングして、単一のコードフレームで、発現のためのEF1アルファプロモーターを使用して全長CARコンストラクトを作り出した(配列番号100)。
【0399】
EF1アルファプロモーター
CGTGAGGCTCCGGTGCCCGTCAGTGGGCAGAGCGCACATCGCCCACAGTCCCCGAGAAGTTGGGGGGAGGGGTCGGCAATTGAACCGGTGCCTAGAGAAGGTGGCGCGGGGTAAACTGGGAAAGTGATGTCGTGTACTGGCTCCGCCTTTTTCCCGAGGGTGGGGGAGAACCGTATATAAGTGCAGTAGTCGCCGTGAACGTTCTTTTTCGCAACGGGTTTGCCGCCAGAACACAGGTAAGTGCCGTGTGTGGTTCCCGCGGGCCTGGCCTCTTTACGGGTTATGGCCCTTGCGTGCCTTGAATTACTTCCACCTGGCTGCAGTACGTGATTCTTGATCCCGAGCTTCGGGTTGGAAGTGGGTGGGAGAGTTCGAGGCCTTGCGCTTAAGGAGCCCCTTCGCCTCGTGCTTGAGTTGAGGCCTGGCCTGGGCGCTGGGGCCGCCGCGTGCGAATCTGGTGGCACCTTCGCGCCTGTCTCGCTGCTTTCGATAAGTCTCTAGCCATTTAAAATTTTTGATGACCTGCTGCGACGCTTTTTTTCTGGCAAGATAGTCTTGTAAATGCGGGCCAAGATCTGCACACTGGTATTTCGGTTTTTGGGGCCGCGGGCGGCGACGGGGCCCGTGCGTCCCAGCGCACATGTTCGGCGAGGCGGGGCCTGCGAGCGCGGCCACCGAGAATCGGACGGGGGTAGTCTCAAGCTGGCCGGCCTGCTCTGGTGCCTGGCCTCGCGCCGCCGTGTATCGCCCCGCCCTGGGCGGCAAGGCTGGCCCGGTCGGCACCAGTTGCGTGAGCGGAAAGATGGCCGCTTCCCGGCCCTGCTGCAGGGAGCTCAAAATGGAGGACGCGGCGCTCGGGAGAGCGGGCGGGTGAGTCACCCACACAAAGGAAAAGGGCCTTTCCGTCCTCAGCCGTCGCTTCATGTGACTCCACGGAGTACCGGGCGCCGTCCAGGCACCTCGATTAGTTCTCGAGCTTTTGGAGTACGTCGTCTTTAGGTTGGGGGGAGGGGTTTTATGCGATGGAGTTTCCCCACACTGAGTGGGTGGAGACTGAAGTTAGGCCAGCTTGGCACTTGATGTAATTCTCCTTGGAATTTGCCCTTTTTGAGTTTGGATCTTGGTTCATTCTCAAGCCTCAGACAGTGGTTCAAAGTTTTTTTCTTCCATTTCAGGTGTCGTGA(配列番号100)。
【0400】
ヒト化CARコンストラクトの分析を実施例4で説明されているようにして行った。
【実施例4】
【0401】
CART中のヒト化CD19コンストラクトの分析
CAR技術を介したCD19の標的化の実行可能性を評価するために、抗CD19抗体に関する単一の鎖の可変フラグメントを4つの異なる立体配置でCD3ゼータ鎖および4-1BB共刺激分子を有するCAR発現レンチウイルスベクターにクローニングし、CD19CARで形質導入されたT細胞(「CART19」または「CART19のT細胞」)のCD19+標的に応答してなされるエフェクターT細胞応答の量および品質に基づき、最適なコンストラクトを選択する。エフェクターT細胞応答としては、これらに限定されないが、細胞の拡大、成長、二倍化、サイトカイン産生および標的細胞の死滅または細胞溶解活性(脱顆粒)が挙げられる。
【0402】
材料および方法
リダイレクトされたヒト化CART19のT細胞の生成
ヒト化CART19レンチウイルストランスファーベクターを使用して、VSVg偽型レンチウイルス粒子にパッケージ化されたゲノム材料を産生する。レンチウイルストランスファーベクターDNAを、VSVgの3つのパッケージング成分であるgag/polおよびrevと、それらを一緒に293T細胞にトランスフェクションするためのリポフェクトアミン試薬と組み合わせて混合する。24および48時間後、培地を収集し、濾過し、超遠心分離法によって濃縮する。結果得られたウイルス調製物を-80℃で保存する。形質導入単位の数を、SupT1細胞での滴定によって決定する。CD3×28ビーズと24時間接触させ、次いで形質導入されたT細胞の所望のパーセンテージを得るのに適した数の形質導入単位を添加することによって新しいナイーブT細胞を活性化することにより、リダイレクトされたCART19のT細胞を産生する。これらの改変されたT細胞は、休止状態になるまでそのまま拡大させて、所定サイズにまで落ち着いたら、後の分析のために低温保存する。細胞数およびサイズは、CoulterのマルチサイザーIIIを使用して測定する。低温保存の前に、形質導入された(細胞表面でCART19を発現する)細胞のパーセンテージおよびその発現のそれらの相対的な蛍光強度を、LSRIIでのフローサイトメトリー分析によって決定する。ヒストグラムプロットから、形質導入されたパーセンテージをそれらの相対的な蛍光強度と比較することによって、CARの相対的な発現レベルを試験することができる。
【0403】
リダイレクトされたT細胞のヒト化CART19の細胞溶解活性、増殖性能およびサイトカイン分泌の評価
ヒト化CAR19T細胞の、殺す、増殖する、およびサイトカインを分泌する機能的な能力を評価するために、細胞を融解させ、一晩回復させる。ヒト化CART19に加えて、比較目的でマウスCART19を使用し、一方で、バックグラウンドのCAR/T細胞の作用に関して、SS1-BBzを標的化以外で発現されたCARとして使用した。全てのアッセイにおいて、アッセイのバリエーションを比較するために、「対照」のゴールドスタンダード(GS)CART19を使用した。重要なことには、GSのCART19は、調査グレードの(すなわち、臨床グレードではない)製造条件で産生された細胞であり、成長培養物へのIL-2の添加を包含する。これは、これらの細胞の全体的な生存能力および機能性に影響を与える可能性があり、他の形質導入されたT細胞集団の調査グレード生産との直接の比較として評価されるべきではない。CD19を発現するかもしくは発現しない慢性骨髄性白血病細胞株であるK562、またはCLL患者から単離されたB細胞であるPt14に、T細胞の死滅を方向付けた。このフローベースの細胞毒性アッセイの場合、標的細胞をCSFEで染色することにより、それらの存在が定量される。類似の標的抗原のレベルを確認するために、標的細胞をCD19発現に関して染色した。CAR19のT細胞の細胞溶解性活性は、エフェクター:標的細胞の比率が10:1、3:1、1:1、0.3:1および0:1の滴定で測定され、ここでエフェクターは、抗CD19キメラ受容体を発現するT細胞と定義された。適切な数のT細胞を一定数の標的細胞と混合することによってアッセイを開始させた。16時間後、各混合物の全容量を取り除き、各ウェルを洗浄して適切に組み合わせた。T細胞をCD2に関して染色し、全ての細胞を生/死マーカー7AADで染色した。最後の洗浄後、ペレット化した細胞を、予め決められた数の計数ビーズと共に特定の容量で再懸濁した。LSRIIフローサイトメトリーによって細胞染色データを収集し、結果を定量化するためのビーズを使用したFloJoソフトウェアで分析した。
【0404】
ヒト化CAR19のT細胞の細胞増殖およびサイトカイン産生を測定するために、細胞を融解させ、一晩回復させる。ヒト化CART19に加えて、比較目的でマウスCART19を使用し、一方で、バックグラウンドのCAR/T細胞の作用に関して、SS1-BBzを標的化以外で発現されたCARとして使用した。全てのアッセイにおいて、アッセイのバリエーションを比較するために、「対照」のゴールドスタンダード(GS)CART19を使用した。CD19を発現するかもしくは発現しない慢性骨髄性白血病細胞株であるK562、またはCLL患者から単離されたB細胞であるPt14のどちらかに、T細胞を方向付けた。加えて、CD3×28ビーズを使用して、T細胞が内因性の免疫学的なシグナルに応答する可能性を評価した。増殖を分析するために、T細胞をCSFEで染色した。増殖は、親が持つ標識がちょうど2つの娘細胞に分けられることを反映してCSFE染色が薄くなることである。このアッセイは、1:1および1:0のエフェクター:標的の比率のみをテストしており、この場合エフェクターは、抗CD19キメラ受容体を発現するT細胞と定義された。アッセイは細胞を混合してから24時間後に2連で行われ、ヒトサイトカイン検出のLuminexの10単位のパネルを使用したサイトカイン分析のために培地の50%が除去/交換される。5日後、T細胞をCAR発現に関して染色し、CD4またはCD8細胞のいずれかとして表現型を決定し、7AADで生/死に関して染色した。最後の洗浄後、ペレット化した細胞を、予め決められた数のBD計数ビーズと共に特定の容量で再懸濁した。LSRIIフローサイトメトリーによって細胞染色データを収集し、結果を定量化するためのビーズを使用したFloJoソフトウェアで分析した。特定の数のビーズに関して計数された細胞の数に、まだ計数されていないビーズの分数を掛けることによって、総細胞数を決定した。
【0405】
ヒト化CART19細胞が現在成功しているマウスCART19と同様に機能する可能性を評価するために、本発明者らは、インビトロで、標的化細胞を殺す、標的化抗原に応答して増殖する、および持続性の徴候を示すそれらの能力を検討することを目的とした。ヒト化CART19レンチウイルスコンストラクトのそれぞれをパッケージングし、それらのSupT1細胞における力価を測定することによって、本発明者らは、形質移入を約50%に正規化するためのウイルス量を決定することができる。これは、細胞あたりの類似の平均組込み部位数から開始した活性のより直接的な比較を可能にする。
【0406】
ナイーブT細胞がT細胞、CD4+およびCD8+リンパ球に関する陰性選択により得られる正常なアフェレーシス処理されたドナーからの血液から開始して治療的なCAR19のT細胞を生成させる。これらの細胞を、10%RPMI中のCD3×28ビーズによって、37℃、5%COで活性化する
【0407】
24時間後、T細胞を枯渇させて、正規化されたウイルス量を添加する。T細胞が分割し始めて、対数成長パターンになり、1mlあたりの細胞数および細胞のサイズを測定することによってこれをモニターする。T細胞が活動を休止し始めると、対数成長が弱くなり、細胞のサイズが縮む。成長速度が遅くなり、同時にT細胞のサイズが約300flに近づいたら、T細胞を低温保存するか、または再び刺激するかの状況が判断される。
【0408】
サイズからわかるようにT細胞が活動を休止するという極めて類似の傾向がある。ヒト化CART細胞と現行のマウスCART19およびUTD集団とでほとんど重複するパターンは、活性化後の、正常なT細胞拡大に対するヒト化CAR19の異常な作用を示す。対照として、不要な抗原非依存性CAR活性を定義するのにSS1-BBzが使用される。総細胞数における拡大プロファイルは、個々の拡大における実際の数の差は、主として細胞の開始時の数が異なることに起因する可能性があることを示す。開始時のT細胞数を正規化することによって、全てのCART19細胞でタイトなクラスターが見られる。加えて、抗原非依存性CAR活性化の不要な作用は、そのグループから下の離れたところで泳動するラインで検出される。
【0409】
これらのCAR19を発現する細胞それぞれの表面発現のレベルを決定した。形質移入に関して正規化したウイルス力価は、形質導入された細胞のパーセントである形質移入効率と相関する匹敵する発現レベルを示す。いくつかのCARは、初期のパッケージングから推定されたそれらの力価を有しており、それらの形質導入のパーセンテージがより低ければ、それらのMFIも予想通りに低下した。この結果から、UTDおよびマウスCAR19のT細胞と比較して、正常に拡大する細胞の能力へのヒト化CAR19の検出可能な負の作用はないことが示される。
【0410】
細胞で発現される細胞表面特異的なエピトープを選択的に識別してそれらを破壊するヒト化CART19細胞の能力を分析する。野生型K562細胞は、CD19を発現しないが、形質導入されてCD19を発現する可能性がある。これらの死滅曲線を比較して、エフェクター細胞の量を滴定したところ、このようなCD19を発現する細胞は破壊されることが示される。同じドナーからの、ヒト化CART19細胞または現行の臨床用マウスCART19細胞のいずれかで改変されたリダイレクトされたT細胞は、それらの死滅能力について差を示さない。死滅曲線から、極めて類似の死滅能力が、患者14からのCD19+CLL細胞を標的とするヒト化CART19細胞との間で見出されることが示される。興味深いことに、特にGS CART19において全体的な細胞溶解活性の減少がみられ、これは、これらの細胞が特異的な阻害特性を有する可能性があることを示唆している。標的細胞で発現されたCD19の類似のレベルから、発現レベルは、細胞の死滅における差の理由にはならないことが示される。
【0411】
対照CD3×28ビーズおよびCD19を発現する標的によって刺激された後に、標的細胞を認識した後増殖するのに必要なヒト化CART19細胞の特性は、全てのコンストラクトで見出される。Pt14 CLL細胞の標的化は、3×または4×GGGGS連結(それぞれ配列番号107および106)を有する場合に見られるバイアスのない軽鎖から重鎖への配置のscFvでよりわずかに大きい増殖率を示すようである。増殖に関する結果は、5日にわたり蓄積した細胞の総数を反映しており、ヒト化CART19である、2146、2144、2136、2141および2137が、より多くの増殖性シグナルをT細胞に送ることを示す。印象深いことに、これは、Pt14 CLL細胞を標的とするヒト化CART19細胞で検出された。
【0412】
全体的にみれば、ヒト化CART19コンストラクトは、抗原特異的な標的に対する細胞溶解活性、増殖応答およびサイトカイン分泌において現行のマウスCART19と極めて類似した特徴を示す。ヒト化CART19細胞(2146、2144、2136、2141および2137)の、標的の活性化の際にT細胞により多くの増殖性シグナルを駆動させる可能性は、治療応答を潜在的に強化するこれらの新しいコンストラクトの追加の利益のようである。
【0413】
結果
脱顆粒およびサイトカイン産生アッセイの両方を使用すれば、加工されたCART19T細胞はCD19+細胞を特異的に標的とすることが実証される。
【0414】
本発明のヒト化CD19CARコンストラクトで形質導入されたND317細胞(別名「huCART19」)を分析した。CD3×28活性化とヒト化CART19候補での形質移入の後のそれらの拡大中に、マウスCART19および未改変の(UTD)T細胞と比べてT細胞のサイズにおいて厳密な類似性がみられた。
【0415】
CD3×28活性化と異なるヒト化CART19候補での形質移入の後のそれらの拡大中に蓄積したT細胞の数に、マウスCART19および未改変の(UTD)T細胞と比べてほとんど差がないことが実験から示された。
【0416】
ヒト化CART19の細胞表面での発現は、マウスCART19に匹敵し、それらの発現レベルはマウスCART19に極めて類似している。各ヒト化CART19が形質導入されたT細胞の細胞表面での発現の染色パターンをプロットしたヒストグラムのオーバーレイと、これらのプロファイルから計算した平均蛍光強度(MFI)は、形質導入された細胞のパーセンテージと十分な相関を示している。
【0417】
さらにヒト化CART19は、CD19を発現する標的細胞の標的化において、マウスCART19に匹敵する類似の特異的な細胞毒性活性を有する。16時間のフローベースの死滅アッセイからのプロットは、CSFEで標識されたK562cc(図1A、非発現CD19対照)、K562.CD19(図1B、CD19が発現されるように形質導入されたK562細胞)またはPt14(図1C、CLL患者からのB細胞)を標的とするエフェクターヒト化CART19細胞を用いた、エフェクター対標的(E:T)の比率の滴定を使用する。全てのヒト化CART19細胞の細胞溶解性活性は、マウスCART19と類似しており、それに匹敵する。様々な標的間での細胞溶解活性の差は、マウスCART19の活性の提示と類似しており、それに匹敵しており、CART19のヒト化された形態において保存されている。
【0418】
標的細胞と混合してから6日後のCFSEで標識したヒト化CART19細胞のヒストグラムのオーバーレイは、それらの増殖能を示す(図5)。CAR19からデリバリーされる増殖応答は、陽性の臨床応答を発生させるために、標的細胞と接触してそれらが死滅した後に必要な応答である。SS1-BBzのCSFE染色の希釈は、分割した娘細胞が親細胞の染色を薄めることのインジケーターであり、標的とする独立したメカニズムにおいて休止状態ではないT細胞が分割を維持した結果である。
【0419】
細胞集団の全体的な増殖能力は、TCRおよび共刺激因子CD28の内因性の接触の関与を模擬するCD3×28ビーズを用いて評価される。データから、各細胞集団は匹敵する増殖可能性を有することが示される。全てのヒト化およびマウスCART19細胞は、CD19を発現するK562細胞と接触した際に強くかつ同等に増殖する。またヒト化CART19細胞は、一部はわずかに低い応答を示したようであるが、CLL患者から得られたB細胞にも十分な応答を示した。図2Aおよび2Bで示されるように、ヒト化CART19細胞である2136、2137、2140、2141、2144および2146は、CSFE染色の希釈がより大きいことによって証明されるように、よりわずかに高い強健な増殖を有するようであるといえる。これらのコンストラクトは全て、同じ軽鎖から重度の可変鎖の配置を有することから、これは、最適な配置であることが示される。重鎖CDR2部位(heavy CDR2 site)におけるアミノ酸の変化の詳細な調査(表1)から、3つのバリエーション、YSSSL、YQSSLおよびYNSSL(それぞれ配列番号28、29および30)のそれぞれは、標的を認識した後より強健な増殖を有するようにみえるコンストラクトで示されることが解明される。加えて、これらの観察されたコンストラクトは、サブユニットの3つのコピーを含有するG4Sリンカー(3G4S)(配列番号107)およびサブユニットの4つのコピーを含有するG4Sリンカー(4G4S)(配列番号106)の両方を有することから、リンカーのサイズは機能に影響を与えないことが示される。
【0420】
腫瘍との接触から5日後の総細胞数を、上述した増殖性の拡大から決定する。初期に植え付けられたときよりも細胞の数が減少しており、これは、生存を維持するのに活性化が必要であることを示す。内因性の活性化の制御を分析したところ、6日間の最後における総細胞数が類似していたことが示される。CD19を発現するK562細胞を標的とするヒト化CART19細胞は、2種のマウスCART19細胞はどちらもより多くの細胞数で終わり、2146が、類似の値を有する他の全てのコンストラクトよりもわずかに多いことを示す。患者14(pt14)からのB細胞への曝露から6日後に総細胞数も分析したところ、興味深いことに、事前に選択されたヒト化CART19コンストラクトである2146、2144、2136、2141および2137は、これらは全て軽鎖から重鎖への配置を有し、3つのアミノ酸バリエーション、YSSSL、YQSSLおよびYNSSL(それぞれ配列番号28、29および30)を表すものであり、より高い総細胞数、マウスCART19より高い総細胞数に至ったことが示された。この予想外の様々なヒト化抗CD19CARクローン間の差が、これらのコンストラクトで形質導入されたCART細胞のより優れた臨床的な効能につながる可能性がある。
【0421】
CD19を発現しない対照K562細胞に曝露された後のヒト化CART19細胞から産生されたサイトカインのバックグラウンドレベルを分析した。Luminexの30単位のパネルを使用して24時間の上清を分析した。CD3×28ビーズを用いた内因性免疫系の刺激からの潜在的なサイトカインプロファイルから、細胞集団のそれぞれが匹敵するサイトカインプロファイルを有することが示される。
【0422】
また、ヒト化CART19およびマウスCART19は、同じ標的に応答するときに、類似のレベルで類似のサイトカインプロファイルを生じることもデータから示される。Pt14標的細胞を標的とした場合、サイトカインプロファイルはそれより低いが類似していた。
【実施例5】
【0423】
インビボでの全モデルにおけるヒト化CD19CART細胞の処置
初代ヒトALL細胞は、インビトロでそれらを培養する必要がない免疫不全マウス中で成長させることができる。これらのマウスは、診療施設で見出されると予想される患者集団の代表的なモデルでキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の効能をテストするために使用することができる。ここで使用されるモデル、HALLX5447を、CART細胞の効能をテストする研究で使用する前に、NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスで2回継代させた。
【0424】
マウスCD19CART細胞はこれまでに、初代ヒトALLのNSGマウスモデルにおいて白血病細胞を標的としてそれらを殺すことが示されてきた。CD19scFv(単一鎖のFc可変フラグメント)はヒト化されており、本発明の実施例は、ヒト化CD19CAR(CAR2)を発現するT細胞の、インビボでALL腫瘍細胞を除去する能力を、マウスCD19CART細胞のその能力と比較するものである。ここで、これらの細胞の効能は、初代ヒトALLを確立したマウスにおいて、ヒトCD19細胞の末梢血液FACS分析によってアッセイした場合と直接比較された。1.5×10個の一次ALL細胞を静脈内に植え付けた後、腫瘍埋め込みから2週間後までに、血液中2.5~4%のCD19ヒト細胞の疾患負荷が達成された。このCD19のパーセンテージは、マウスの血液中の総細胞に対するものである。CART細胞での処置前のマウスにおけるヒト細胞の100%が、腫瘍細胞である。末梢血液中、CD19ヒト細胞のパーセンテージが2%を超えると、このモデルにおいてヒトALL疾患が確立されたとみなされる。マウスにおいて白血病が確立されたら、白血病を有するマウスを、腫瘍埋め込み後のおよそ2から3週間、CART細胞で処置した。各グループ中のマウスを、5×10個の総ヒトT細胞で処置した。ドナーのヒトT細胞におけるCARを発現するレンチウイルスでの形質移入効率は、40~60%の間であった。疾患の進行のバイオマーカーとして血液中のCD19ヒト細胞のパーセンテージを分析するために、T細胞での処置後、毎週マウスから採血した。
【0425】
材料および方法:
初代ヒトALL細胞:初代細胞は、埋め込み前にインビトロで培養しなかった。これらの細胞は、ALLを有する患者から回収され、次いで確立および拡大のためにマウスに移された。マウス中で腫瘍細胞を拡大させた後、骨髄および脾細胞を回収し、再埋め込みのために別のバッチで生存可能なように凍結した。1ミリリットルあたり細胞5×10個の最小濃度で、細胞を90%DMSOおよび10%FBS中で凍結した。ヒト化CD19CART細胞およびマウスCD19CART細胞の抗腫瘍的な効能を比較するのに使用されると予想されるALLを有するマウスを生成するために、再埋め込みのために、凍結したALL細胞を融解させ、次いでNSGマウスに静脈内注射した。
【0426】
マウス:6週齢のNSG(NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ)マウスをJackson Laboratory(ストック番号005557)から受け取った。実験前の少なくとも3日間にわたり動物をそのままNovartisのNIBRI動物施設に順応させた。動物は、NovartisのACUCの規則とガイドラインに従って扱われた。
【0427】
腫瘍の埋め込み:インビボで初代ヒトALL細胞を連続的に継代させ、37℃の水浴でモデルHALLX5447を融解した。次いで細胞を15mlコニカルチューブに移し、滅菌冷PBSで2回洗浄した。次いで初代ALL細胞を計数し、1ミリリットルのPBSあたり細胞15×10個の濃度で再懸濁した。細胞を氷上に置き、即座に(1時間以内に)マウスに埋め込んだ。ALL細胞を、合計でマウス1匹あたり細胞1.5×10個を容量100μlで、尾静脈を介して静脈内注射した。
【0428】
CART細胞の投与:腫瘍埋め込みの16日後に、マウスに5×10個のT細胞を投与した。摂氏37度の水浴中で細胞を部分的に融解させ、次いで細胞を含有するチューブに1mlの滅菌冷PBSを添加することによって完全に融解させた。融解させた細胞を15mlのファルコンチューブに移し、PBSで10mlの最終的な容量に調整した。細胞を、洗浄ごとに1000rpmで10分間で2回洗浄し、次いで血球計算器で計数した。次いでT細胞を、1mlの冷PBSあたり細胞50×10個の濃度に再懸濁し、マウスに投与するまで氷上で維持した。マウス1匹あたり5×10個のT細胞の用量にあたる100μlのCART細胞を、尾静脈を介してマウスに静脈内注射した。1グループあたり5匹のマウスを、100μlのPBS単独(PBS)、形質移入されていないT細胞(Mock)、マウスCD19CART細胞(muCTL019)、またはヒト化CD19CART細胞(huCTL019)のいずれかで処置した。形質移入されていないT細胞、muCTL019T細胞、およびhuCTL019T細胞は全て、同じヒトドナーから平行して調製された。
【0429】
動物のモニター:マウスの健康状態を、週2回の体重測定などにより毎日モニターした。体重のパーセントの変化を、(BW現在-BW初期)/(BW初期)×100%として計算した。腫瘍の負荷を、末梢血液FACS分析によって毎週モニターした。毎週、マウスの尾静脈から氷上で維持されたEDTAでコーティングされたチューブに採血した。氷上で、チューブから96ウェルプレートに10~20μlの血液を塗布した。赤血球をACK赤血球溶解緩衝液(Life Technologies、カタログ番号A10492-01)で溶解させ、次いで冷PBSで2回洗浄した。細胞をヒトおよびマウスFcブロックのFcブロッキングミックス(Miltenyi Biotec、カタログ番号130-059-901および130-092-575)と共に30分間インキュベートし、次いで抗ヒトCD19抗体と共に30分間インキュベートした。細胞を2%パラホルムアルデヒド溶液で20分間固定し、洗浄し、PBS+2%FBS中で一晩保存し、その後、BD CantoまたはFortessaで分析し、続いてFlowJo FACS分析ソフトウェアを使用してさらに分析した。細胞を分析して、ヒトHALLX5447 ALL腫瘍を有するNSGマウスの血液中のヒトCD19細胞におけるパーセントを決定した。血液中のCD19のパーセンテージは、平均±標準誤差(SEM)として報告される。
【0430】
処置/対照(T/C)値のパーセントを以下の式:
ΔT≧0の場合、T/C%=100×ΔT/ΔC;
ΔT<0の場合、退縮%=100×ΔT/T初日
を使用して計算し、式中、T=研究の最終日におけるの薬物処置グループ平均の末梢血液CD19のパーセンテージ;T初日=最初の投与日における薬物処置グループの末梢血液CD19のパーセンテージ;ΔT=研究の最終日における薬物処置グループの平均の末梢血液CD19のパーセンテージ-最初の投与日における薬物処置グループの平均の末梢血液CD19のパーセンテージ;C=研究の最終日における対照グループの平均の末梢血液CD19のパーセンテージ;およびΔC=研究の最終日における対照グループの平均の末梢血液CD19のパーセンテージ-最初の投与日における対照グループの平均の末梢血液CD19のパーセンテージである。
【0431】
100%から42%の範囲のT/C値は、抗腫瘍活性がないかまたは最小であると解釈される;≦42%および>10%のT/C値は、抗腫瘍活性または腫瘍増殖抑制を有すると解釈される。≦10%のT/C値または≧-10%の回帰値は、腫瘍の停滞と解釈される。<-10%の回帰値は、退縮として報告される。
【0432】
結果:
マウスおよびヒト化CD19CART細胞の抗腫瘍活性を評価し、ヒトALLの初代モデルと直接比較した。0日目の腫瘍埋め込み後、マウスをランダム化に処置群に分け、5×10個のT細胞で16日目に静脈内で処置した。動物がエンドポイントに達するまでALL疾患負荷および動物衛生をモニターした。腫瘍埋め込みから65日目、対照グループにおける疾患負荷が末梢血液中のヒトCD19細胞の80%を超えたときに全グループのマウスを安楽死させた。
【0433】
腫瘍埋め込み後の24日目から、対照グループとマウスまたはヒト化CD19CART細胞のいずれかで処置したグループとの間に疾患負荷の明らかな差がP<0.01で見られ、65日目の研究の最後まで継続した。マウスおよびヒトCD19CART細胞は、NSGマウスにおいてヒトHALLX5447のALL腫瘍細胞の成長を制御する類似の能力を実証する。どちらのグループも、HALLX5447埋め込み後の21日目に、12~15%のヒトCD19細胞のピーク末梢血液疾患レベルを示した。腫瘍細胞埋め込みから42日後、huCTL019グループではヒトCD19細胞は検出できなかったが、muCTL019グループにおけるヒトCD19細胞のパーセンテージは約1%に低下した。マウスおよびヒト化CD19CART細胞はどちらも、このモデルにおける初代ヒトALL細胞の拡大を制御する同等の能力を獲得した(P>0.05)。mockで形質導入されたT細胞のグループの%T/C値が94.40%であったことから、mockで形質導入されたT細胞は抗腫瘍活性を有していなかったことが実証される。muCTL019グループの退縮のパーセントは、-89.75%であり、huCTL019グループでは-90.46%であったことから、これらの処置はどちらも、HALLX5447腫瘍モデルの退縮を引き起こすことができることが実証される。図7に、これらのマウスにおける疾患負荷の尺度としての末梢血液ヒトCD19細胞のパーセンテージを示す。T細胞をまったく受けなかったPBS処置群は、静脈内に埋め込まれたNSGマウスにおけるベースラインとなる初代ALL腫瘍増殖の速度論を実証した。mock処置群は、CART細胞として同じインビトロでの拡大プロセスを経た形質移入されていないT細胞を受けた。これらの細胞は、この腫瘍モデルにおけるT細胞の非特異的な応答を示すT細胞の対照として役立つ。PBSおよびmockで形質導入されたT細胞処置群はどちらも、実験中ずっと連続的な腫瘍の進行を実証した。マウスおよびヒト化CD19CART細胞はどちらも、5×10個のT細胞の注射から1週間以内に疾患の進行を制御したことから、この65日の研究経過にわたり疾患の制御を維持する類似の能力が実証される。
【0434】
初代ヒトALLモデルであるHALLX5447を有するNSGマウスにおける効能研究において、マウスおよびヒト化CD19CARで形質導入されたT細胞の抗腫瘍活性を検討した。この研究から、マウスおよびヒト化CD19CART細胞(muCTL019およびhuCTL019)はどちらも、ヒトALLの初代モデルにおける抗腫瘍応答を仕掛けることができることが実証された。加えて、この応答は、末梢血液疾患負荷によってアッセイした場合、muCTL019およびhuCTL019細胞で同じである。マウスおよびヒト化CD19CART細胞はどちらも、マウスにT細胞が投与されてから1週間以内に初代ALLの成長を制御する。処置後の初期は、疾患負荷は増加し続け、その後、実際上検出不可能なレベルに減少した。対照の処置済みマウスにおいて、マウスまたはヒト化CART細胞のいずれかでの1回の処置は、65日の疾患の進行の経過にわたり持続的な抗腫瘍応答をもたらした。ヒト化CD19CART細胞は、マウスCD19CART細胞で見られたのと類似の、有効な抗CD19腫瘍応答および対照のALL疾患負荷を仕掛ける能力を実証した。
【実施例6】
【0435】
多発性骨髄腫の処置において使用するためのCD19CART細胞
化学療法、標的化療法、および自己幹細胞移植の現行のレジメンを用いてさえも、骨髄腫は治療不能の疾患とみなされている。本発明の実施例は、キメラ抗原受容体(レンチウイルス/CD19:4-1BB:CD3ゼータ;「CART19」またはCTL019としても知られている)を有するCD19に向けられた自己T細胞での多発性骨髄腫(MM)の処置を説明する。この実施例から、CD19を対象とするCAR療法は、極めて低い(ほとんどの方法で検出不可能な)レベルのCD19しか発現しない骨髄腫幹細胞および/または腫瘍細胞の標的化に基づいて、深く長期的に持続する寛解を確立する可能性を有することが実証される。
【0436】
侵攻性二次プラズマ細胞性白血病を有する患者の処置において、本発明者らは、サルベージ自己幹細胞移植から2日後に投与されたCART19は、複数のラインの化学療法を経て進行している患者において、プラズマ細胞性白血病の急速なクリアランスと極めて優れた部分応答を引き起こしたことを見出した。処置前の数か月間、この患者は輸血依存性であった。処置の2ヶ月後、彼女は彼女の血球数を回復しており(正常な範囲の血小板数および白血球数を有しており)、自身の処置のために入院していた病院から退院したために輸血は必要ではなかった。
【0437】
骨髄腫細胞はCD19を自然に発現しないため、この腫瘍においてCART19処置が急速で有意な腫瘍応答を誘導したという発見は驚くべきことであった。特定の理論に縛られることは望まないが、骨髄腫を処置するのにCART19を使用することができるというのは、以下の理由:(1)骨髄腫細胞は従来、フローサイトメトリーによりCD19発現に関して陰性であると考えられているが、骨髄腫細胞は、RNAによっては発現が検出可能であるがフローサイトメトリーまたは免疫組織化学によっては検出不可能であるような極めて低いレベルのCD19を発現する場合があることを示すデータがあり;さらに(2)多発性骨髄腫を引き起こし、特に化学療法に耐性のがん性幹細胞であると考えられる、クローン型B細胞を標的化する概念であることから、理にかなっている。B細胞と骨髄腫腫瘍細胞とはクローンの関係であるが、従来の骨髄腫療法は、B細胞よりも悪性形質細胞を目的としている。それゆえに骨髄腫を処置するためのCART19は、ほとんどの骨髄腫療法とは異なる細胞集団を標的とする。
【0438】
本発明者らの一人の患者の経験において、患者は循環する形質細胞を有しており、本発明者らは、彼女の腫瘍細胞をCD19の発現に関してテストすることができた。彼女の腫瘍細胞のおよそ1~2%がCD19抗原を発現した(図8)。したがって、彼女の腫瘍細胞の極めて小さい集団にCART19が直接的な作用を有する可能性があるということは理にかなっているが、極めて優れた部分応答は、CD19+腫瘍細胞の極めて小さい集団だけを標的化することに基づき予測されなかった。
【0439】
このケースでは、高用量のメルファラン後の自己幹細胞移植レスキューに続いてCART19が投与された。これは骨髄腫において標準的な療法であるが、治療効果はない。さらにこの患者は以前にタンデム自己幹細胞移植を受けており、移植後の初期(<6ヶ月)に再発していた。特定の理論に縛られることは望まないが、本発明の実施例で説明されるようなCART19細胞の使用は、サルベージ自己幹細胞移植と組み合わせた場合、骨髄腫の処置において重複しないメカニズムを有する可能性がある。
【0440】
10人の追加の多発性骨髄腫患者は、第I相試験においてCART19で処置される。
【0441】
用量の論理的説明および危険/利益
本発明者らは、このプロトコールに関して静脈内投与経路を介した一律の投与を使用することを選んだ。このプロトコールの主な目的は、多発性骨髄腫を有する患者にCART-19細胞を投与することにおける安全性および実行可能性をテストすることである。予想された主要な毒性は、(I)CARが悪性または正常B細胞上のそれらのサロゲートであるCD19抗原に遭遇したときのサイトカイン放出;(2)リツキシマブ療法と同様に、正常B細胞の枯渇;(3)以前に拡大/共刺激した自己T細胞がMMに関してASCTと組み合わされたときに見られたような移植片対宿主疾患に似た、ステロイド応答性の皮膚および胃腸症候群である。理論上の懸念は、CART-19T細胞の形質転換または制御不能な増殖が、高レベルのCD19に応答して起こる可能性があるかどうかであった。この懸念は、別のCLL患者研究と比較して、本出願ではより低く、これは、MMにおけるクローン型B細胞の負荷は、その研究で処置された難治性CLL患者における悪性B細胞の負荷よりもずっと低いと予測されるためである。
【0442】
用量の論理的説明
第一の3人の患者で、本発明者らは、1.4×10から1.1×10個のCART-19細胞の範囲の用量で臨床活性を観察した。この観察から、少なくとも処置された第一の3人の患者において、明白な用量応答関係はなかったことが実証される。用量において2の対数倍数差で投与された患者において、完全応答が観察された。したがって、代謝される標準的な薬物とは異なり、CART細胞は、広範な用量応答範囲を有する可能性がある。CART細胞は患者において広範にわたり増殖することができるために、これは最も可能性がある。それゆえに本発明者らは、注入の場合、1~5×10個のCART-19細胞の用量範囲を設定した。範囲外使用に基づき提供されたこの一人の患者の研究において、患者に最大5×10個のCART19細胞が提供され、用量の下限は設けなかった。患者10人のトライアルの場合、患者には、1~5×10個のCART-19細胞が提供されると予想される。
【0443】
一般的な設計
これは、範囲外使用に基づき提供された一人の患者の研究であった;これは、CART-19が発現されるように形質導入された自己T細胞の注入が安全であるかどうかを決定するための第I相研究の後にモデル化された。この研究の主な目的は、1回目のASCTに続く初期の再発後にサルベージASCTを受けた患者におけるCART-19T細胞の安全性、忍容性および生着可能性を決定することであった。そのプロトコールは、非盲検の予備的研究からなる。
【0444】
登録時に、対象は、骨髄生検と、それらのMMの慣例的な実験的およびイメージングの検討を受ける。適格の対象は、CART-19製造のための膨大な数の末梢血単核細胞(PBMC)を得るために、定常状態のアフェレーシスを受ける。TCRζ/4-1BBレンチウイルスベクターで形質導入されたPBMCからT細胞を精製し、インビトロで拡大させ、次いで将来的な投与のために凍結する。T細胞がうまく製造された患者の数と比較して、T細胞の収集、拡大または製造が不十分な患者の数を記録する;この患者集団において、生成物製造の実行可能性は、問題があるとは予測されない。
【0445】
対象は、一般的に、追加の2回のASCTを行うためにそれらの1回目のASCTのための調製で行われた動員/収集から保存されたままの十分な末梢血幹細胞を有していたとされる。そうではない対象は、処置を行う医師の選択に従ったレジメンを用いたそれらの定常状態のアフェレーシスの前または後のいずれかに2回目の動員/収集手法を受ける。最初の白血球除去血輸血からおよそ2週間後、対象は病院に入院して、高用量のメルファラン(-2日目)、それに続いて2日日後(0日目)に自己幹細胞の注入を受け、全ての対象は、4日後(+2日目)にCART-19細胞の注入を受ける。最大10人の患者が登録される。
【0446】
全ての対象は、CART-19細胞の安全性、および生着および持続性を検討するために、研究の4週目を過ぎたら定期的に血液テストを受ける。+42日目および+100日目に、骨髄の形質細胞の負荷およびCART-19細胞の骨髄へのトラフィッキングを検討するために、対象は骨髄穿刺液/生検を受ける。100日目に、国際骨髄腫作業部会(IMWG:International Myeloma Working Group)の基準136に従って形式的な応答の検討を行い、多発性骨髄腫を有する患者に関する慣例的な臨床実践に従ってTTPをモニターする。この研究で測定された主要な効能の結果は、患者の最初のASCT後のTTPと、この研究でのASCT後のTTPとの比較である。
【0447】
この研究の主要評価項目が、ASCTによるCART-19細胞注入の安全性および実行可能性であるため、この研究は、早期中止ルールを採用する。簡単に言えば、処置された第一の5人の対象のうち重度で予想外の有害反応を起こしたものが2人未満の場合、目標とする10人の登録を目指して追加の5人の対象を研究に追加する。本発明者らは、処置された対象を、それに続く対象を登録する前に、5人の対象が登録されて同様に観察されるまで、CART-19注入後の40日間(すなわち、42日目に第一の公式の応答検討を介して)観察する。5人の患者の第二のグループを処置する場合、対象間で待機期間は必要ではない。
【0448】
6ヶ月の集中的な経過観察後、2年にわたり少なくとも年4回、病歴、身体検査、および血液テストに関して対象を評価する。この評価後、対象は、新しい悪性腫瘍の発生などの長期にわたる健康問題の診断について検討するために、最大で追加の13年間、電話や質問表によって年1回の経過観察のためのロールオーバー研究に登録される。
【0449】
主要研究評価項目
この予備的試験は、1回目のASCTに続く初期の再発後にMMのためのサルベージASCTを受けた患者におけるCD19TCRζ/4-1BBで形質導入された自己T細胞の安全性および実行可能性をテストするために設計される。
【0450】
主要な安全性および実行可能性の評価項目は、以下を包含する。
【0451】
注入から24週目までのあらゆる時点で処置を研究するために、研究関連有害事象の出現は、NCJCTC2:グレード3と定義され、これは、関連があるかもしれない、関連性がある、または明らかに関連する徴候/症状、実験毒性および臨床事象である。これは、輸注毒性およびCART-19細胞に関連する可能性があるあらゆる毒性を包含し、このような毒性としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:
a.発熱
b.発疹
c.好中球減少症、血小板減少症、貧血、骨髄形成不全
d.肝機能障害
e.肺浸潤または他の肺毒性
f.消化管または皮膚に影響を及ぼすGVHD様症候群。
【0452】
患者のアフェレーシス産物からCART-19細胞を製造する実行可能性。ベクターの形質移入効率、T細胞純度、生存能力、滅菌状態および腫瘍汚染に関するリリース基準を満たさない製造品の数を決定する。
【0453】
CART19を有する自己幹細胞移植後の応答の深さおよび持続時間を、各患者において標準的な自己幹細胞移植後の初期に達成された応答の深さおよび持続時間と比較する。
【0454】
対象の選択および除外
組み入れ基準
対象は、先にMMのためのASCTを受けており、幹細胞注入から365日以内に進行した対象でなければならない。計画されたタンデムASCT併用レジメンの一環として2回の先行するASCTを受けた対象を適格とする。進行は、CRからの再発に関する基準である、進行性の疾患に関する、または最初のASCT後にCRもしくはsCRを達成した患者に関するIMWG基準に従って定義される(Durie et al. Leukemia 2006;20(9):1467-1473)。注:患者が先行のASCTから365日以内に登録されなければならないという必要条件はなく、さらに患者は、先行のASCT後、この研究への登録前における再発/進行に続いて、実験的薬剤などの他の薬剤で処置されていてもよい。
【0455】
対象は、インフォームドコンセントに署名しなければならない。
【0456】
対象は、以下の基準で定義されるように、メルファラン注入の日付の12週前までに測定された、高用量のメルファランを受けられる程度に十分な生命の維持に必要な臓器の機能を有していなければならない。a.血清(Senun)クレアチニン≦2.5または推定のクレアチニンクリアランス≧30ml/分および非透析依存性。b.SGOT≦正常値上限の3倍および総ビリルビン≦2.0mg/dl(ただしギルバート症候群に起因するビリルビン過剰血症を有する患者を除く)。c.左心室駆出分画(LVEF)≧45%、または臨床的に有意な心臓血管機能障害がないと確認する心臓病専門医による形式的な評価によりLVEFが<45%である場合。LVEF検討が、登録から6週間以内に行われなければならない。d.FEV1、FVC、TLC、DLCOによる十分な肺機能(肺容量およびヘモグロビン濃度について適切に調節した後)≧予測された値の40%。肺機能のテストは、登録から6週間以内に行われなければならない。
【0457】
対象は、より高いパフォーマンスステータスが単に骨の痛みに起因するのではない限り、0~2のECOGパフォーマンスステータスを有していなければならない。
【0458】
除外基準
対象は、以下の通りでなければならない:
あらゆる活性で制御不能な感染がまったくない。
【0459】
活性なB型肝炎、C型肝炎、またはHIV感染を有さない。
【0460】
概説したように参加を不可能にすると予想される制御不能な医学的障害をまったく有さない。
【0461】
処置レジメン
再発した/進行性多発性骨髄腫のための療法
患者は、登録前に、それらの処置を行う医師の選択に従って再発した/進行性の多発性骨髄腫のための療法を受けていてもよい。療法は、登録時に継続していてもよい。
【0462】
患者は、アフェレーシスの2週間前および高用量のメルファランの2週間前に全ての療法を止めなければならない。アフェレーシスと高用量のメルファランとの間の中断が2週間より長いと予想される場合、患者は、それらの処置を行う医師の裁量でアフェレーシス後に療法を再開してもよい。
【0463】
高用量のメルファラン(-2日目)
-3日目または-2日目に患者は病院に入院して、処置プロトコール開始の前に、腫瘍溶解症候群に関するパラメーターをモニターすることを包含する主治医による試験と慣例的な実験室検査を受ける。MMをモニターする実験室検査(SPEP、定量的な免疫グロブリン、および無血清の軽鎖分析)のための血液は、このような検査で承認から7日以内に採血されなかった場合、療法開始前に採取する。
【0464】
高用量療法は、-2日目に、200mg/mの用量のメルファランをおよそ20分かけて静脈内投与することからなる。メルファランの用量は、70歳より高齢の患者か、または処置を行う医師の裁量で200mg/mの用量に耐えられない可能性があるあらゆる年齢の患者である場合、140mg/mに下げる。全ての患者は、標準的な制吐剤の予防的投与を受け、このような予防的投与としては、デキサメタゾンおよび標準的な抗生物質の予防的投与を挙げることができる。
【0465】
幹細胞の再注入(0日目)
幹細胞の注入は、0日目に、高用量メルファランの投与から少なくとも18時間後に行われる。幹細胞(Stern cells)は、標準的な規格化された実施に従って、前投与の後におよそ20~60分間かけて静脈内注入される。少なくとも2×10個のCD34+前駆体/kg体重が注入されると予想される。加えて、少なくとも1×10個のCD34+前駆体/kg体重が、生着の遅延のまたは後の移植片失敗の場合に注入され得るバックアップ用の幹細胞生成物として利用可能であると予想される。G-CSFは、+5日目から開始してSQ投与され、標準的な規格化された実施に従って投薬されると予想される。輸注サポートなどの他の支持療法の測定が、標準的な規格化されたガイドラインに従って行われると予想される。
【0466】
CART19細胞の注入(+2日目)
CART-19で形質導入したT細胞の単回用量は、最大5×10個のCART-19細胞からなる用量で与えられると予想される。この一人の患者用のプロトコールにおいて、CD19TCRζ4-1BBベクターで形質導入された細胞の注入に許容できる最小用量はない。CART-19細胞は、幹細胞注入後の+2日目における急速なi.v.注入による単回用量として与えられると予想される。
【0467】
維持的なレナリドマイド
それらの1回目のASCTの後に維持的なレナリドマイドを受けてそれに耐えた対象は、処置を行う医師の判断で禁忌がないと仮定しておよそ+100日目に、レナリドマイド維持療法を再開させる。
【0468】
研究薬物の調製および投与
CART-19T細胞をCVPF中で調製し、FDAによって承認された、注入される細胞に関するリリース基準(例えば、細胞の用量、細胞純度、滅菌状態、ベクター/細胞の平均コピー数など)が満たされるまで、CVPFから放出させない。放出させたら、投与のために細胞をベッドのそばまで運ぶ。
【0469】
細胞の融解。凍結した細胞は、対象のベッドのそばまでドライアイス中で輸送される。細胞は、36℃から38℃に維持した水浴を使用してベッドのそばで融解させる。細胞がちょうど融解するまでバッグを穏やかにもむ。容器中に凍結した凝集塊が残っていないものとする。CART-19細胞生成物が、ダメージを受けているかもしくはバッグが漏れているような場合、またはそれ以外に品質が危ういような場合、注入されないものとし、以下で特定されるようなCVPFに戻されるものとする。
【0470】
前投与。T細胞注入後の副作用としては、一過性の発熱、寒気、および/または吐き気が挙げられる;総論については、Cruz et al.[Cytotherapy 2010;12(6):743-749]を参照されたい。CART-19細胞注入前にアセトアミノフェンおよび塩酸ジフェンヒドラミンを対象に前投与することが推奨されている。必要に応じて、これらの薬物療法を6時間毎に繰り返してもよい。患者においてアセトアミノフェンでは緩和されない発熱が続く場合、非ステロイド性抗炎症薬療法が処方されてもよい。患者は、生命を脅かす緊急事態の場合を除きいかなる時にも、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロンまたはデキサメタゾンなどの全身性コルチコステロイドを受けないことが推奨されており、これは、T細胞に対して逆効果を有する可能性があるためである。急性輸注反応のためにコルチコステロイドが必要な場合、100mgのヒドロコルチゾンの初回用量が推奨されている。
【0471】
発熱反応。対象がCART細胞注入後に敗血症または全身性菌血症を発症させるという起こりそうにない事象においては、適切な培養と医学的管理が開始されると予想される。汚染されたCART-19T細胞生成物が疑わしい場合、CVPF中に保存された保管サンプルを使用して、その生成物の滅菌状態を再テストしてもよい。
【0472】
投与。注入は、免疫抑制患者のための予防措置を使用してRhoads内の隔離室で行われる。形質導入されたT細胞は、三方栓を有する18ゲージのラテックス非含有Y-タイプ血液セットを介した、およそ10mLから20ml/分の流速での急速な静脈内注入によって投与される。注入期間は、およそ2~20分間である。各注入バッグは、以下:「自己使用のみ」と記されたラベルが添付されている。加えてラベルには、対象のイニシャル、生年月日、および研究番号などの少なくとも2つの固有の識別子が記載されている。注入前、2人の人が独立して、対象立ち会いのもとでこの情報の全てを検証することにより、情報が参加者と正確に合致していることを確認する。
【0473】
対象がアレルギー性応答、または深刻な低血圧の危機、または他のあらゆる注入に対する反応を有する場合の注入の際には、緊急用の医療器具[すなわち、緊急搬送用ストレッチャー(emergency trolley)]が利用可能である。注入の前および後、次いで少なくとも1時間にわたり15分毎にバイタルサイン(温度、呼吸数、脈拍、および血圧)を取り、これらの徴候が適切に安定するまで続ける。対象が場を離れても安全であると医師が認めるまでは、彼または彼女は、その場を離れないように求められる。
【0474】
パッケージング
注入は、1~5×10個のCA T19で形質導入された細胞の単回用量で構成され、注入にとって許容できる最小用量は1×10個のCART-19細胞である。各バッグは、以下の注入可能グレードの試薬(%v/v):31.25%plasmalyte-A、31.25%デキストロース(5%)、0.45%NaCl、最大7.5%DMSO、1%デキストラン40、5%ヒト血清アルブミンを含有する低温保存用媒体(cryomedia)のアリコート(容量は用量によって決まる)を含有する。
【0475】
アフェレーシス
アフェレーシスセンターで、大容量(12~15リットルまたは血液容量の4~6倍)のアフェレーシス手法を実行する。この手法の間にCART-19のためのPBMCを得る。目的は、1回の白血球除去血輸血で、CART-19T細胞を製造するために少なくとも50×10個の白血球を回収することである。FDAの遡及要件および調査のためのベースラインの血液白血球も得て、低温保存する。細胞生成物は、およそ2~4週間後のリリースの準備ができていることが予測される。フローサイトメトリーによるリンパ球サブセットの定量は、CD19およびCD20B細胞の決定を包含する。ベースラインの検討は、ヒト抗VSV-Gおよび抗マウス抗体(HAMA)に関して行われる。対象がこれまでに、現行の臨床用細胞およびワクチン生産施設における適正製造基準(Good Manufacturing Practices at the Clinical Cell and Vaccine Production Facility)に従って保存された十分なアフェレーシス(apberesis)採血を受けていた場合、これらの細胞は、CART-19製造のための細胞源として使用することができる。保存されたアフェレーシス産物の使用は、対象にとって追加のアフェレーシス採血(apheresis collection)を受ける費用、時間、および危険を回避すると予想される。
【0476】
腫瘍縮小化学療法(cytoreductive chemotherapy)
リンパ球枯渇化学療法(lymphodepleting chemotherapy)は、本明細書で説明したような高用量のメルファランである。
【0477】
CART-19注入
幹細胞再注入後の+2日目に、注入を開始させると予想される。
【0478】
化学療法の投与が部分的にリンパ球減少症を誘導する原因となるため、第一の注入前の+2日目に、患者は、CD3、CD4およびCD8数の差とそれらの検討に関するCBCを受ける。
【0479】
第一の用量は、単回用量を使用して投与される。患者のベッドのそばで細胞を融解させる。融解させた細胞を、注入期間がおよそ10~15分間になるように、耐えられる限り速い注入速度で与える。混合を容易にするために、細胞は、Y-アダプターを使用して同時に投与される。本明細書で説明したようにして、対象は注入を受けて前投与される。対象のバイタルサインを検討し、投与前に、注入の最後に、その後1時間にわたり15分毎に、これらが安定して問題のない状態になるまで、パルスオキシメトリーを行う。第一の注入前のあらゆる時間と各注入後に20分から4時間まで、ベースラインのCART-19レベルを決定するための血液サンプルを得る(続いてTCSLに送る)。
【0480】
高用量のメルファランに関する毒性を経験した患者は、これらの毒性が解消されるまで、それらの注入スケジュールを遅らせる。T細胞注入を遅らせることの理由となる具体的な毒性としては、1)肺に関して:95%より高い飽和を維持するための酸素補充の必要性、または胸部X線における進行性の放射線学的異常(abnonnalities)の存在、2)心臓に関して:医学的管理で制御不能な新規の心不整脈、3)昇圧薬の助けを必要とする低血圧、4)活動性感染:T細胞注入から48時間以内に血液培養が細菌、真菌、またはウイルスに関して陽性であることが挙げられる。
【0481】
毒性の管理
制御不能なT細胞の増殖。同種異系または自己T細胞注入に関連する毒性は、薬理学的な免疫抑制過程で管理されてきた。T体(T body)関連毒性は、全身性コルチコステロイドに応答することが報告されている。制御不能なT細胞の増殖が起こる場合(CART-19細胞に関してグレード3または4の毒性)、対象はコルチコステロイドで処置することができる。対象は、パルスメチルプレドニゾロン(2mg/kg i.v.を分割して8時間毎×2日)、続いて急速な漸減で処置される。
【0482】
加えて、別のプロトコールで処置した対象の観察に基づき、マクロファージ活性化症候群(MAS)に関する懸念が多少あるが、CD19+腫瘍負荷は、CLLを有する患者の場合よりも、骨髄腫を有する患者においてかなり低いと予測される。この毒性の処置および処置のタイミングは、患者の医師および研究の研究員の裁量に任せられる。提案された管理としては、以下を挙げることができる:対象が、連続2日より長く継続して101°Fを超えて発熱しており、感染の証拠がない場合(血液培養、CXRまたは他の源が陰性)、4mg/kgのトシリズマブを考慮することができる。医師の裁量で、コルチコステロイドおよび抗TNF療法の追加を考慮することができる。
【0483】
B細胞の枯渇。B細胞の枯渇および低ガンマグロブリン血症が起こる可能性がある。これは、抗CD20を対象とする療法に一般的なことである。臨床的に有意な低ガンマグロブリン血症(すなわち全身感染)の場合には、リツキシマブを用いてなされてきたように、免疫グロブリンの血清レベルを正常なレベルに戻すために確立された臨床的な投与ガイドラインによって、静脈内免疫グロブリン(IVIG)が対象に与えられる。
【0484】
一次生着不全。一次生着不全(すなわち、生着しないこと)が、1回目のASCTと比較して2回目のASCTの後に多く起こる可能性がある。適格基準によれば、一次生着不全の場合には、処置を行う医師の裁量で、レスキュー的な再注入のために十分な幹細胞を入手可能にしなければならないと規定されている。
【0485】
等価体
本明細書において引用されたありとあらゆる特許、特許出願、および出版物の開示は、それによってそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。本発明を具体的な態様を参照しながら開示してきたが、本発明の他の態様およびバリエーションが、本発明の真の本質および範囲から逸脱することなく当業者によって考え出され得ることは明らかである。添付の特許請求の範囲は、このような態様および等価なバリエーションの全てを包含するものと解釈されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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