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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】安全装置
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/10 20060101AFI20221205BHJP
   E05C 21/02 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
B60J5/10 A
E05C21/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019003658
(22)【出願日】2019-01-11
(65)【公開番号】P2020111199
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】712004783
【氏名又は名称】株式会社総合車両製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡 成豊
(72)【発明者】
【氏名】西村 哲
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-020077(JP,A)
【文献】実開昭57-135465(JP,U)
【文献】特開2013-119735(JP,A)
【文献】実開昭55-077660(JP,U)
【文献】登録実用新案第3126967(JP,U)
【文献】米国特許第7044512(US,B1)
【文献】米国特許第5938250(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0039765(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/10
E05C 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷箱に設けられた観音扉を閉扉状態に保持する安全装置であって、
前記観音扉の閉扉状態において、前記荷箱の下梁に形成され該下梁の側面に開放窓口を有する空間部に向かって、前記観音扉の下端近傍から延びるストッパ受け部と、
前記空間部において、前記ストッパ受け部に形成された開口部に挿入されるロック位置と前記開口部から離脱したロック解除位置との間を、変位可能に設けられたストッパ部と、
前記開口部に対する前記ストッパ部の離脱操作を行うための操作部と、を含み、
前記ストッパ部は、前記空間部で、前記観音扉の閉扉動作時における前記ストッパ受け部の前記空間部への挿入動作に伴い、前記ストッパ受け部の前記開口部に挿入されることを特徴とする安全装置。
【請求項2】
前記ストッパ部は、前記観音扉の閉扉状態時、該ストッパ部自身の自重によって、前記ストッパ受け部の前記開口部内で挿入状態に保持されるように、前記下梁に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の安全装置。
【請求項3】
前記ストッパ部は、前記空間部で前記観音扉の閉扉状態における扉面と平行かつ水平に延びる軸と、
前記ストッパ受け部の前記開口部と交差する位置にて前記軸に軸支され、前記軸周りの回動動作により前記開口部に対して挿入又は離脱可能な第1爪部と、前記ストッパ受け部から外れる位置にて前記軸に軸支される第2爪部と、を含み、前記ストッパ受け部に前記開口部が形成されており、前記第2爪部により前記操作部が構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の安全装置。
【請求項4】
前記ストッパ受け部は、前記観音扉の下端近傍に接合される接合部と、
前記接合部から延びて、前記下梁側面の前記空間部に挿入される挿入部と、を含み、
前記ストッパ受け部の前記開口部は、前記軸と直交する方向の寸法が、前記第1爪部の前記軸周りの回動軌跡よりも大きく、かつ、前記観音扉の閉扉状態で荷箱の中心方向への回動動作を阻害しない範囲に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の安全装置。
【請求項5】
前記軸は、前記空間部で前記観音扉の閉扉状態における前記ストッパ受け部の上方に位置しており、
前記第1爪部は、自重により前記軸から下方に垂下し、かつ、その下端部が前記下梁の側面に形成された前記空間部の開放窓口の下端縁よりも下方に位置していることを特徴とする請求項3又は4に記載の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨物用の荷箱に設けられる扉の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンテナ、トラックのバンボディ等貨物用の様々な荷箱に設けられる扉として、観音扉が用いられている。ところで、扉の開作業時において、コンテナやトラック等が傾斜地に停車した場合や風が強い場所に停車した場合には、扉が不用意に開放することがある。このため、観音扉には、意図しない扉の開放を防止するための安全装置が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたものは、一方の扉に固定され、その先端部が他方の扉まで扉と平行に延びる留め板が、他方の扉に設けられたブラケットの一対の突起部に装着された留めピンによって、扉の外側方向から抑え付けられることで、扉の不用意な開放を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-119735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような安全装置では、扉の開閉作業の度に、留めピンをブラケットの一対の突起部に脱着させる必要があるが、状況によっては開閉作業が煩雑するため、改善する余地があった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的にするところは、扉の開閉作業に伴う扉の安全装置の操作性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の態様を例示するものであり、本発明の多様な構成要素の理解を容易にするために、項分けして説明するものである。以下の各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、本発明を実施する最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、または、さらに他の構成要素を付加した態様についても、本発明の一態様になり得るものである。
【0008】
(1)荷箱に設けられた観音扉を閉扉状態に保持する安全装置であって、前記観音扉の閉扉状態において、前記荷箱の下梁に形成され該下梁の側面に開放窓口を有する空間部に向かって、前記観音扉の下端近傍から延びるストッパ受け部と、前記空間部において、前記ストッパ受け部に形成された開口部に挿入されるロック位置と前記開口部から離脱したロック解除位置との間を、変位可能に設けられたストッパ部と、前記開口部に対する前記ストッパ部の離脱操作を行うための操作部と、を含み、前記ストッパ部は、前記空間部で、前記観音扉の閉扉動作時における前記ストッパ受け部の前記空間部への挿入動作に伴い、前記ストッパ受け部の前記開口部に挿入される安全装置(請求項1)。
【0009】
本項に係る安全装置は、観音扉の閉扉状態において、荷箱の下梁に形成され下梁の側面に開放窓口を有する空間部に向かって、観音扉の下端近傍から延びるストッパ受け部と、空間部において、ストッパ受け部に形成された開口部に挿入されるロック位置と前記開口部から離脱したロック解除位置との間を、変位可能に設けられたストッパ部と、開口部に対するストッパ部の離脱操作を行うための操作部と、を含む。このような構成によれば、観音扉の閉扉状態において、観音扉の下端近傍から延びるストッパ部がストッパ受け部の開口部に挿入された状態で、ストッパ受け部がストッパ部に係合し、ストッパ受け部が空間部内に保持されて、下梁の側面に開放窓口を有する空間部から引き抜かれない状態(すなわち、ロック状態)となり、観音扉の閉扉状態を保持するものとなる。
一方、観音扉の開扉操作に先立ち、作業者が操作部を操作することで、ストッパ部がロック位置からロック解除位置に変位し、すなわち、ストッパ部がストッパ受け部の開口部から離脱し、ストッパ受け部を下梁の側面に開放窓口を有する空間部から引き抜かれることを許容する状態(すなわち、ロック解除状態)となり、観音扉の開扉動作が可能となる。
このように、観音扉の閉扉動作時では、観音扉を閉じることに伴い、自動的にストッパ受け部がストッパ部にロックされるので、作業者の閉作業負担が軽減されるものとなる。また、観音扉の開扉動作時では、作業者が操作部を操作することで、ストッパ受け部のロックを容易に解除することができるので、開扉作業に伴う作業者の作業負担が軽減されるものとなる。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記ストッパ部は、前記観音扉の閉扉状態時、該ストッパ部自身の自重によって、前記ストッパ受け部の前記開口部内で挿入状態に保持されるように、前記下梁に支持されている安全装置(請求項2)。
【0011】
本項に係る安全装置において、ストッパ部は、観音扉の閉扉状態時において、ストッパ部自身の自重によって、ストッパ受け部の開口部内で挿入状態に保持されるように、前記下梁に支持されている。この構成により、ストッパ部は、自身の自重により、ストッパ受け部の開口部内で挿入状態が保持され、ストッパ受け部とストッパ部とが係合する。この結果、ストッパ受け部がロック状態となり、観音扉の閉扉状態が保持されるものとなる。
【0012】
(3)上記(1)又は(2)項において、前記ストッパ部は、前記空間部で前記観音扉の閉扉状態における扉面と平行かつ水平に延びる軸と、前記ストッパ受け部の前記開口部と交差する位置にて前記軸に軸支され、前記軸周りの回動動作により前記開口部に対して挿入又は離脱可能な第1爪部と、前記ストッパ受け部から外れる位置にて前記軸に軸支される第2爪部と、を含み、前記ストッパ受け部に前記開口部が形成されており、前記第2爪部により前記操作部が構成される安全装置(請求項3)。
【0013】
本項に係る安全装置において、ストッパ部の第1爪部は、通常時には、その自重により観音扉の閉扉状態における扉面と平行かつ水平に延びる軸から自重により下方に延びた状態にある。そして、観音扉の閉扉動作時には、ストッパ受け部が下梁の側面に設けられた開放窓口から空間部へと挿入されることで、第1爪部はストッパ受け部に押されて、荷箱の中心方向へ向けて軸周りに回転する。観音扉の閉扉動作の進行に伴い、ストッパ受け部の、空間部への挿入量が増大することで、ストッパ受け部により荷箱の中心方向への、第1爪部の軸周りの回転角度が増大していく。そして、第1爪部がストッパ受け部により押し上げられ、ストッパ受け部に乗り上げる。さらに、ストッパ受け部の、空間部への挿入量が増大すると、ストッパ受け部に形成された開口部に第1爪部が差し掛かる。第1爪部は、ストッパ受け部の開口部と交差する位置にて軸に軸支されていることから、第1爪部は自重によりストッパ受け部の開口部に没入する。そして、第1爪部は、ストッパ受け部の開口部内に垂下し、ストッパ受け部と第1爪部とが係合したロック状態となる。
また、操作部を構成する第2爪部が、ストッパ受け部から外れる位置にて軸に軸支されていることから、操作者が下梁の側面に設けられた開放窓口から空間部へと手などを差し入れて、第2爪部を荷箱の中心方向へと押込むことで、軸が回転する。この軸の回転に伴い、第1爪部が荷箱の中心方向へ向けて回動することから、第1爪部は、ストッパ受け部の開口部に没入してストッパ受け部の開口部内で垂下したロック状態から、開口部から外れたアンロック状態となる。したがって、観音扉の開扉操作に先立ち、操作者が第2爪部を荷箱の中心方向に押込み、第1爪部をストッパ受け部の開口部から外す、いわゆる、アンロック操作を行うことで、本安全装置のロック状態が解除され、観音扉の開扉動作が可能となる。
【0014】
(4)上記(3)項において、前記ストッパ受け部は、前記観音扉の下端近傍に接合される接合部と、前記接合部から延びて、前記下梁側面の前記空間部に挿入される挿入部と、を含み、前記ストッパ受け部の前記開口部は、前記軸と直交する方向の寸法が、前記第1爪部の前記軸周りの回動軌跡よりも大きく、かつ、前記観音扉の閉扉状態で荷箱の中心方向への回動動作を阻害しない範囲に設けられている安全装置(請求項4)。
【0015】
本項に係る安全装置において、ストッパ受け部は、接合部によって観音扉の下端部近傍に接合され、観音扉と一体化されている。そして、観音扉の閉扉動作時には、接合部から延びて下梁側面の空間部に挿入される挿入部により、ストッパ部の第1爪部が、荷箱の中心部へ向けて押され、上記(3)項の作用が生じることとなる。
また、ストッパ受け部の開口部は、軸と直交する方向の寸法が、第1爪部の軸周りの回動軌跡より大きく、かつ、観音扉の閉扉状態で荷箱の中心方向への回動動作を阻害しない範囲に設けられていることから、第1爪部の動作が阻害されることなく、上記(3)項のロック操作、アンロック操作がなされるものとなる。
【0016】
(5)上記(3)又は(4)項において、前記軸は、前記空間部で前記観音扉の閉扉状態における前記ストッパ受け部の上方に位置しており、前記第1爪部は、自重により前記軸から下方に垂下し、かつ、その下端部が前記下梁の側面に形成された前記空間部の開放窓口の下端縁よりも下方に位置している安全装置(請求項5)。
【0017】
本項に係る安全装置において、軸は、空間部で観音扉の閉扉状態におけるストッパ受け部の上方に位置しており、第1爪部は、自重により軸から下方に垂下していることで、上記(3)項の作用が得られるものである。また、第1爪部の下端部が下梁の側面に形成された空間部の開放窓口の下端縁よりも下方に位置していることから、第1爪部が荷箱の外側へ向けて回動しても、下梁の側面に形成された空間部の開放窓口の下端縁に当接することで、それ以上の角度の回転(回動)は阻止される。すなわち、空間部の開放窓口の下端縁に当接した位置が、下梁の外側方向への回動限度位置となる。ここで、ストッパ受け部と第1爪部とが係合したロック状態にあるとき、第1爪部は、自重によりストッパ受け部の開口に没入している。この状態で、第1爪部はストッパ受け部の開口部内で垂下しているが、観音扉の開扉動作が生じて、ストッパ受け部が下梁の側面に設けられた開放窓口から空間部の外側へと引き抜かれると、ストッパ受け部の開口部の、荷箱の中心側の端縁部が第1爪部に当接し、第1爪部がストッパ受け部により空間部の外側方向へ押される。そして、第1爪部の回動動作は、上述した回動限度位置で妨げられ、ストッパ受け部が空間部の外側へと引き抜かれることを阻止するものとなる。すなわち、作業者が意図的に上述したアンロック操作を行わない限り、観音扉の開扉動作が生じてもロック状態は維持され、観音扉の開扉動作は阻止される。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、以上のように構成したことにより、扉の開閉作業に伴う扉の安全装置の操作性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るコンテナを示す図であり、(a)は、コンテナの上面図であり、(b)は、コンテナの左側面図であり、(c)は、コンテナの右側面図である。
図2図1に示すコンテナであり、(a)は、コンテナの前妻面の図であり、(b)は、コンテナの後妻面の図である。
図3図1(b)及び図1(c)に示す安全装置の拡大図である。
図4図3に示すA-A線に沿う断面図である。
図5図3に示すストッパ受け部であり、(a)は、ストッパ受け部の正面図であり、(b)は、ストッパ受け部の底面図であり、(c)は、図5(a)に示すB-B線に沿う断面図である。
図6図3に示すストッパ部であり、(a)は、ストッパ部の正面図であり、(b)は、図6(a)に示すC-C線に沿う断面図であり、(c)は、図6(a)に示すD-D線に沿う断面図である。
図7図6に示すストッパ部の軸、第1爪部及び第2爪部の概略図であり、(a)は、ストッパ部の軸、第1爪部及び第2爪部の正面図であり、(b)は、ストッパ部の軸、第1爪部及び第2爪部のの背面図であり、(c)は、図7(a)に示すE-E線に沿う断面図である。
図8】安全装置の動作図であり、(a)は、安全装置のロック状態を示す図であり、(b)は、安全装置のロック解除状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る安全装置の構成を図1図8に基づいて詳細に説明する。ここで、以下の説明では、安全装置の一例として、鉄道コンテナに用いられる安全装置について説明する。
【0021】
まず、鉄道コンテナの構成を図1及び図2に基づいて説明する。
図1及び図2に示すように、鉄道コンテナ1は、一方の妻面3(前妻面)の面が壁構造をなし(図2(a)参照)、他方の妻面5(後妻面、図2(b)参照)及び両側面7L,7R(図1(b)及び図1(c)参照)の三面が開口部(図示せず)を有するコンテナ本体9と、開口部に設けられる観音扉11L,11R,11B(扉)と、を含む。また、鉄道コンテナ1には、意図しない観音扉11L,11Rの開放を防止するための安全装置31L,31Rが設けられている(図1(b)及び図1(c)参照)。観音扉11L,11R,11Bには、扉11L,11R,11Bをロックするための扉ロック装置13L,13R,13Bが設けられている。鉄道コンテナ1のコンテナ本体9は、上梁15、下梁17、一対の前妻柱19,19及び一対の後妻柱21,21から構成される。下梁17の側面には、フォークリフト(図示せず)の爪(図示せず)を挿入するための挿入部23,23が設けられ、さらに、この挿入部23,23の間に位置する開放窓口27,27(図3参照)を有する空間部25,25が設けられている(本実施形態では、2つ、図1(b)及び図1(c)参照)。
【0022】
安全装置31L,31Rは、図1(b)及び図1(c)に示すように、鉄道コンテナ1の両側面7L,7R側に設けられており、両側面7L,7R側に設けられる安全装置31L,31Rは同一の構造となっているので、ここでは、安全装置31Lを例にして、以下に説明し、安全装置31Rの説明は省略する。
安全装置31Lは、ストッパ受け部41と、ストッパ部61と、操作部81とを含む。ストッパ受け部41は、断面視L字状をなしており(図5(c)参照)、接合部43と、挿入部45とを含む。接合部43は、その一端(先端)が扉11Lの下端近傍に接合されている(図3及び図4参照)。また、接合部43には、その幅方向一端側(図3の紙面左側)に設けられ、接合部43の高さ方向(図3の紙面上下方向)に延びる補強部材47が設けられている。この補強部材47は、接合部43の基端(図4の下側)から先端(図4の上側)に向かって高さが減少する態様で楔状に延びている。挿入部45は、平面視矩形状をなしており、接合部43の他端(基端)から、鉄道コンテナ1の下梁17に形成され、下梁17の側面に開放窓口27を有する空間部25に向かって延びている。挿入部45には、開口部49と、補強部材51とを有する。開口部49は、ストッパ部61の軸63(後述参照)と直交する方向の寸法が、ストッパ部61の第1爪部65(後述参照)の軸63周りの回動軌跡よりも大きく、かつ、扉11Lの閉扉状態で鉄道コンテナ1の中心方向への回動動作を阻害しない範囲に設定されている(図4及び図5(b)参照)。補強部材51は、挿入部45の上面の開口部49を避ける位置に、接合部43と挿入部45とをつなぐように設けられている(図5(c)参照)。具体的には、補強部材51は、挿入部45の上面に、挿入部45の幅方向一端側(図5(b)の紙面左側)に設けられ、かつ、挿入部45の基端から先端に向かって高さが減少する態様で楔状に延びている(図5(c)参照)。
【0023】
ストッパ部61は、鉄道コンテナ1の下梁17に形成され下梁17の側面に開放窓口27を有する空間部25に設けられ(図3参照)、軸63と、第1爪部65と、第2爪部67と、連結部69とを含む。軸63は、棒状部材71と、中空部材73とから構成されている。軸63の棒状部材71及び中空部材73は、空間部25で扉11Lの閉扉状態における扉面と平行かつ水平に延び(図3参照)、かつ、空間部25で扉11Lの閉扉状態におけるストッパ受け部41の上方に位置している(図4参照)。中空部材73は、棒状部材71に対して回転可能に取付けられている。第1爪部65は、正面視矩形状であり、扉11Lの閉扉状態において、ストッパ受け部41の開口部49と交差する位置にて、自重により軸63の中空部材73から下方に垂下し、中空部材73に軸支されている。また、第1爪部65は、その下端部が下梁17の側面に形成された空間部25の開放窓口27の下端縁よりも下方に位置するように設けられている(図4参照)。第2爪部67は、正面視矩形状であり、ストッパ受け部41の開口部49から第1爪部65の離脱操作を行うための操作部81である。この第2爪部67は、扉11Lの閉扉状態において、ストッパ受け部41から外れる位置にて、自重により軸63の中空部材73から下方に垂下し、中空部材73に軸支されている。連結部69は、背面視L字状をなし(7(b)参照)、第1爪部65の回動動作と第2爪部67の回動動作とを同期させ、かつ、補強するためのものであり、L字状を構成する一方の脚部75Aが第1爪部65に接合され、他方の脚部75Bが第2爪部67に接合されている(図7(a)及び図7(b)参照)。
【0024】
次に、一実施形態に係る安全装置31L,31Rの動作について、図8を参照しながら以下に説明する。
扉11Lの閉扉動作において、扉11Lを閉じた際、ストッパ受け部41の挿入部45が下梁17の側面に設けられた開放窓口27から空間部25へと挿入される。この挿入により、挿入部45の先端が第1爪部65に当接し、扉11Lの閉扉動作の進行に伴い、挿入部45の、空間部25への挿入量が増大する。これにより、挿入部45によって第1爪部65が押されて、鉄道コンテナ1の中心方向へ向けて軸周りに回転する。そして、挿入部45が、空間部25の奥側(すなわち、鉄道コンテナ1の中心側)に挿入されることで、第1爪部65の軸周りの回転角度が増大し、第1爪部65が挿入部45により押し上げられ、挿入部45に乗り上げる。その後、ストッパ受け部41に形成された開口部49に第1爪部65が差し掛かり、第1爪部65は自重によりストッパ受け部41の開口部49に自動的に没入される。これにより、第1爪部65は、ストッパ受け部41の開口部49内に垂下し、ストッパ受け部41と第1爪部65とが係合したロック状態となる(図8(a)参照)。その結果、ストッパ受け部41の挿入部45を空間部25から引き抜くことができず、扉11Lの閉扉状態が保持される。
【0025】
ここで、扉11Lの閉扉状態において、扉11Lが意図せずに開放した場合、扉11Lの開扉動作に伴い、ストッパ受け部41の挿入部45が下梁17の空間部25の外側へと引き抜かれる。その後、ストッパ受け部41の開口部49の、鉄道コンテナ1の中心側の端縁部49aが第1爪部65に当接する。この当接によって、第1爪部65がストッパ受け部41により空間部25の外側方向へ押され、第1爪部65が鉄道コンテナ1の外側へ向けて回動する。このとき、第1爪部65の下端部が下梁17の空間部25の開放窓口27の下端縁よりも下方に位置していることから、第1爪部65が開放窓口27の下端縁に当接して、回動が阻止される。これにより、第1爪部65がストッパ受け部41の開口部49の、鉄道コンテナ1の中心側の端縁部49aに引掛り、挿入部45が空間部25の外側へと引き抜かれなくなる。その結果、扉11Lの意図しない開扉動作が阻止される。
【0026】
一方、扉11Lを開放させる場合(開扉動作)では、扉11Lが閉扉された状態において、まず、扉ロック装置13L(図1(b)参照)のロックを解除する。その後、操作者が、下梁17の側面に設けられた開放窓口27から空間部25へと手や道具などを差し入れて、第2爪部67を鉄道コンテナ1の中心方向へと押込む(図8(b)参照)。これにより、第2爪部67が、鉄道コンテナ1の中心方向へ向けて回動し、この回動により、第1爪部65も鉄道コンテナ1の中心方向へ向けて回動する。すなわち、第1爪部65は、連結部69によって第2爪部67と連結されているため、第2爪部67が回動することで、第2爪部67の回動と同期して回動し、かつ、第2爪部67の回動角度と同等の回動角度で回動される。そして、第1爪部65の回動により、第1爪部65は、ストッパ受け部41の開口部49に没入して開口部49内で垂下した状態から、開口部49から離脱された状態(ロック解除状態)となる。そして、ストッパ受け部41の挿入部45を空間部25から引き抜くことにより、扉11Lが開放される。
【0027】
以上、上記構成を有する一実施形態の安全装置31L,31Rによれば、次のような作用効果を得ることができる。
扉11L,11Rの閉扉動作時において、ストッパ受け部41の挿入部45が下梁17の側面に開放窓口27を有する空間部25へ挿入された際、ストッパ部61の第1爪部65がストッパ受け部41の開口部49に挿入され、第1爪部65自身の自重によって、開口部49内で保持される。これにより、ストッパ受け部41がロックされ、扉11L,11Rの閉扉状態が保持される。一方、扉11L,11Rの開扉操作に先立ち、作業者が操作部81(第2爪部67)を操作することで、第1爪部65がストッパ受け部41の開口部49から離脱し、ストッパ受け部41を空間部25から引き抜かれることを許容する状態となり、扉11L,11Rの開扉動作が可能となる。
このように、扉11L,11Rの閉扉動作時では、扉11L,11Rを閉じることに伴い、自動的にストッパ受け部41がストッパ部61にロックされるので、作業者の閉作業負担が軽減されることが可能となる。また、扉11L,11Rの開扉動作時では、作業者が第2爪部67を操作することで、ストッパ受け部41のロックを容易に解除することができるので、開扉作業に伴う作業者の作業負担が軽減されることが可能となる。
【0028】
また、安全装置31L,31Rにおいて、ストッパ受け部41の開口部49は、軸63(棒状部材71及び中空部材73)と直交する方向の寸法が、第1爪部65の軸63周りの回動軌跡(図4参照)より大きく、かつ、扉11L,11Rの閉扉状態で鉄道コンテナ1の中心方向への回動動作を阻害しない範囲に設定されているため、第1爪部65の動作が阻害されることなく、適切にロック操作、ロック解除操作を行うことが可能となる。
【0029】
さらに、安全装置31L,31Rにおいて、第1爪部65の、鉄道コンテナ1の外側に向かう回動動作は、下梁17の空間部25の開放窓口27の下端縁よって阻止されるので、ストッパ部61とストッパ受け部41の挿入部45との係合状態が維持されて、ストッパ受け部41が空間部25の外側へと引き抜かれることを阻止することが可能となる。これにより、作業者が意図的にアンロック操作を行わない限り、扉11L,11Rの閉扉動作が生じてもロック状態は維持され、扉11L,11Rの開扉動作は阻止されることが可能となる。
【0030】
なお、一実施形態に係る安全装置31L,31Rは、両側面7L,7R側に設けられているが、後妻面5側にも設けてもよい。また、安全装置31L,31Rは、三方開きの鉄道コンテナ1に用いられているが、後妻面5及び両側面7L,7Rのうちいずれか一方が開口部を有する二方開きの鉄道コンテナや、両側面7L、7Rのみに開口部を有する二方開きの鉄道コンテナや、後妻面5のみが開口部を有する一方開きのコンテナ等の、開口部の配置が異なる他の鉄道コンテナにも本実施の形態を適用することが可能である。一実施形態に係る安全装置31L,31Rは、31ft.級コンテナ、40ft.級コンテナ等の長尺コンテナ、及び、12ft.級コンテナ、20ft.級コンテナ等の短尺コンテナ等の、全長が異なる鉄道コンテナに適用することが可能である。さらに、安全装置31L,31Rは、鉄道コンテナに限らず、トラックのバンボディ等貨物用の様々な荷箱に適用してもよい。
【0031】
また、一実施形態に係る安全装置31L,31Rでは、第1爪部65は、正面視矩形状の板状部材であるが、ストッパ受け部41の開口部49に挿入及び離脱可能であり、第1爪部65の下端部が下梁17の空間部25の開放窓口27の下端縁よりも下方に位置しているのであれば、正面視三角形、台形等の他の形状にしてもよい。また、第2爪部67は、正面視矩形状の板状部材であるが、手や道具など押すことができるのであれば、正面視三角形、台形等の他の形状にしてもよい。
【0032】
さらに、一実施形態に係る安全装置31L,31Rにおいて、第1爪部65は、扉11Lの閉扉状態において、第1爪部65自身の自重によって、開口部49内で保持されているが、ばね、ゴム等の弾性部材を用いて、開口部49内で保持されるようにしてもよい。この構成において、扉11L,11Rの閉扉時、第1爪部65は、ばね、ゴム等の弾性部材の付勢力によって、開口部49内で保持され、ストッパ受け部41と第1爪部65とが係合したロック状態となる。このとき、ストッパ受け部41の挿入部45を空間部25から引き抜くことができず、扉11L,11Rの閉扉状態が保持されることとなる。一方、扉11L,11Rを開放させる場合、操作者が、下梁17の側面に設けられた開放窓口27から空間部25へと手や道具などを差し入れて、第2爪部67を鉄道コンテナ1の中心方向へと押込んだ際、第1爪部65がばね、ゴム等の弾性部材の付勢力に抗して、鉄道コンテナ1の中心方向へ向けて回動される。この結果、第1爪部65が開口部49から離脱された状態なり、ストッパ受け部41の挿入部45を空間部25から引き抜くことで、扉11L,11Rが開放されることなる。
【0033】
一実施形態に係る安全装置31L,31Rにおいて、ストッパ部61の軸63(棒状部材71及び中空部材73)が空間部25で扉11Lの閉扉状態におけるストッパ受け部41の上方に位置し、第1爪部65及び第2爪部67が軸63(中空部材73)から下方に垂下するように設けらている。しかし、ストッパ部61の軸63(棒状部材71及び中空部材73)を、空間部25の下部、すなわち、空間部25で扉11Lの閉扉状態におけるストッパ受け部41の下方に位置させ、第1爪部65及び第2爪部67を軸63(中空部材73)から上方に立設させるように構成してもよい。このとき、第1爪部65の上端部は、空間部25の開放窓口27の上端縁よりも上方に位置するように設け、第2爪部67の上端部は、空間部25の開放窓口27の下端縁より上方に位置するように設ける。この結果、第1爪部65の、鉄道コンテナ1の外側に向かう回動動作時、第1爪部65が開放窓口27の上端縁に当接して、回動が阻止されることとなる。さらに、操作者が、下梁17の側面に設けられた開放窓口27から空間部25へと手や道具などを差し入れて、第2爪部67を鉄道コンテナ1の中心方向へと押込むことが可能となる。
【0034】
さらに、ストッパ受け部41の開口部49は、平面視矩形状であるが、第1爪部65の軸63周りの回動軌跡より大きく、かつ、扉11L,11Rの閉扉状態で鉄道コンテナ1の中心方向への回動動作を阻害しない範囲に設定される長円状等の他の形状にしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…鉄道コンテナ(荷箱)、11L,11R…扉(観音扉)、17…下梁、25…開口部、27…開放窓部、31L,31R…安全装置、41…ストッパ受け部、61…ストッパ部、81…操作部、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8