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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/02 20060101AFI20221205BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
G03G15/02 101
G03G15/02 102
G03G15/00 303
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019006703
(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公開番号】P2020115198
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000165136
【氏名又は名称】桂川電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175536
【弁理士】
【氏名又は名称】高井 智之
(74)【代理人】
【識別番号】100075959
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 保
(72)【発明者】
【氏名】仁科 義治
(72)【発明者】
【氏名】藏本 伸也
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-091135(JP,A)
【文献】特開2007-178460(JP,A)
【文献】特開2001-194863(JP,A)
【文献】特開2009-244467(JP,A)
【文献】特開2006-145940(JP,A)
【文献】特開平06-194933(JP,A)
【文献】特開2015-152850(JP,A)
【文献】特開2012-163600(JP,A)
【文献】特開平08-305128(JP,A)
【文献】特開2007-171531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/02
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、該感光体の回転軸を中心とした回転動作によって移動される感光体表面に接触することによって該感光体表面を帯電させる帯電ローラを有する帯電部と、を備えた画像形成装置において、
前記帯電部は、
前記帯電ローラが、隣接する互いの帯電領域の端部が前記感光体表面の移動方向で重複するように前記感光体表面の移動方向に交差する方向に沿って複数設けられ、
複数の前記帯電ローラのうち、1つ以上の前記帯電ローラが回転軸方向を前記感光体表面の移動方向に直交する方向に対して傾斜角度をつけて設けられる
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記傾斜角度は、
0.2度以上、2度以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記複数の帯電ローラは、
前記傾斜角度を所定の範囲で調整可能に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記複数の帯電ローラから前記感光体への放電開始電圧を適時検出し、検出された前記放電開始電圧に、予め決められた電圧を加えた直流電圧を前記複数の帯電ローラに印加する制御を行う印加電圧自動制御部
を有する
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記複数の帯電ローラから前記感光体への放電開始電圧を適時検出し、検出された前記放電開始電圧の2倍以上の、予め決められた倍数のピーク間電圧を有する交流電圧を直流電圧に重畳した電圧を、前記複数の帯電ローラに印加する制御を行う印加電圧自動制御部
を有する
ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体表面に接触することによって感光体表面を帯電させる帯電ローラを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、感光体表面に静電潜像を形成するためには、感光体表面を予め帯電する必要がある。
このような画像形成装置は、従来から、装置に組み込まれたコロナ放電器によって感光体表面を帯電させるコロナ帯電方式がある。
このようなコロナ帯電方式の画像形成装置は、コロナ放電器への電源供給のため高電圧電源が必要であること、あるいは、放電によって有害なオゾンを発生する等多くの問題点があった。
【0003】
そこで、コロナ帯電方式の問題点を解消するため、帯電ローラを感光体に均一な接触圧で接触させることによって、感光体を帯電させる接触帯電方式の画像形成装置が用いられるようになった。
【0004】
このような接触帯電方式で大判の画像形成装置には、長尺の帯電ローラが必要になる。
しかしながら、長尺な帯電ローラは、たわみ、加工の難しさ等の問題から、感光体の幅方向の全長にわたって均一な接触圧で接触させることが困難である。
このようなことから、長尺な帯電ローラを用いた接触帯電方式の画像形成装置は、感光体に均一な接触圧で接触させて、均一に帯電することが難しいため、結果的に、実用に供し得るものではなかった。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1には、感光体の回転方向と直交する軸方向に感光体に対向する複数個の帯電ローラを設ける帯電装置が記載されている。
この特許文献1に記載の帯電装置は、感光体の回転方向と直交する方向に複数個の帯電ローラを備えているので、感光体の幅に対して大幅に短い複数の帯電ローラによって感光体の幅方向の全域をカバーすることができる。
このため、特許文献1に記載の帯電装置は、帯電ローラのたわみ、および、加工性の問題を解消することができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の帯電装置は、隣接する帯電ローラの重複部分の感光体の帯電位が、重複しない部分の帯電位よりも高くなり、結果的に、重複する部分の中間調画像濃度が薄く表現されてしまうという問題があった。
【0007】
そこで、特許文献2には、隣接する接触帯電部材(帯電ローラ)の帯電領域の重複する部分となる端部の外径を、軸方向中央部分の外径に比較して小さく設定することによって、隣接する接触帯電部材(帯電ローラ)が重複する部分においても良好な画像品質を得ることができる画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平8-305128号公報
【文献】特開2007-178460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載の画像形成装置は、帯電ローラが、隣接する接触帯電部材(帯電ローラ)の帯電領域の重複する部分となる端部の外径を、軸方向中央部分の外径に比較して小さく設定する形状、いわゆるクラウン形状に限定されてしまうという問題や、個体差に対応できないという問題があった。
帯電ローラには、接触帯電方式の問題を解消するために、様々な形状のものが提案されていることを考えると、帯電ローラがクラウン形状に限定されることは、大きな問題である。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、長尺な感光体に対して均一に帯電させることができ、かつ、各種形状の異なる帯電ローラを個体差も込みで適用することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る画像形成装置は、感光体と、該感光体の回転軸を中心とした回転動作によって移動される感光体表面に接触することによって該感光体表面を帯電させる帯電ローラを有する帯電部と、を備えた画像形成装置において、前記帯電部は、前記帯電ローラが、隣接する互いの帯電領域の端部が前記感光体表面の移動方向で重複するように前記感光体表面の移動方向に交差する方向に沿って複数設けられ、複数の前記帯電ローラのうち、1つ以上の前記帯電ローラが回転軸方向を前記感光体表面の移動方向に直交する方向に対して傾斜角度をつけて設けられることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項2に係る画像形成装置は、上記の発明において、前記傾斜角度が、0.2度以上、2度以下であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項3に係る画像形成装置は、上記の発明において、前記複数の帯電ローラが、前記傾斜角度を所定の範囲で調整可能に設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項4に係る画像形成装置は、上記の発明において、前記複数の帯電ローラから前記感光体への放電開始電圧を適時検出し、検出された前記放電開始電圧に、予め決められた電圧を加えた直流電圧を前記複数の帯電ローラに印加する制御を行う印加電圧自動制御部を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項5に係る画像形成装置は、上記の発明において、前記複数の帯電ローラから前記感光体への放電開始電圧を適時検出し、検出された前記放電開始電圧の2倍以上の、予め決められた倍数のピーク間電圧を有する交流電圧を直流電圧に重畳した電圧を、前記複数の帯電ローラに印加する制御を行う印加電圧自動制御部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る画像形成装置は、前記帯電部に複数設けられた前記帯電ローラが、隣接する互いの帯電領域の端部が前記感光体表面の移動方向で重複するように前記感光体表面の移動方向に交差する方向に沿って設けられ、複数の前記帯電ローラのうち、1つ以上の前記帯電ローラが回転軸方向を前記感光体表面の移動方向に直交する方向に対して傾斜角度をつけて設けられている。
このため、本発明に係る画像形成装置は、各種形状の異なる帯電ローラに応じた前記傾斜角度が、個体差も込みで設定されることによって、前記帯電ローラの前記帯電領域の重複部分についても前記感光体を均一に帯電させることができる。
したがって、本発明に係る画像形成装置は、長尺な感光体に対して均一に帯電させることができ、かつ、各種形状の異なる帯電ローラを適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施例に係る画像形成装置の制御部を含めた全体構造を概略的に示した図である。
図2図2は、図1に示した画像形成装置の感光体周辺を拡大した図である。
図3図3は、感光体と3つの帯電ローラとの位置関係を説明するための図であり、クリーニングローラについても示した図である。
図4図4は、(a)が、3つの帯電ローラの各軸受け部が固定フレームに取り付けられた組立体の斜視図であり、(b)が、(a)に示した組立体に対して感光体を配置した図である。
図5図5は、帯電ローラおよびクリーニングローラを示した図である。
図6図6は、(a)が、図4に示した組立体を固定フレームの軸受け固定面に対して裏面側から視た図であり、(b)および(c)が、軸受け部をネジ止め固定する部分周辺を拡大した図である。
図7図7は、固定フレームに取り付けられた軸受け部周辺を軸方向から視た図であり、一部を断面で示した図である。
図8図8は、固定フレームに取り付けられた軸受け部周辺を軸方向に直交する方向から視た図であり、一部を断面で示した図である。
図9図9は、帯電ローラのクロス量および傾斜角度を説明するための図である。
図10図10は、図10(a)が、本特許出願人らの実験結果で、帯電ローラに直流電圧を印加したときの感光体帯電特性を説明するための図であり、図10(b)が、放電開始電圧の検出方法を説明するための図である。
図11図11は、クラウン形状および逆クラウン形状の帯電ローラについて説明するための図である。
図12図12は、変形例の画像形成装置の制御部を含めた全体構造を概略的に示した図である。
図13図13は、本特許出願人らの実験結果で、帯電ローラに直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加したときの感光体帯電特性を説明するための図である。
図14図14は、1600VPP/1KHzの交流電圧を重畳した直流電圧を帯電ローラに印加した場合の帯電特性を示す図である。
図15図15は、感光体と3つの帯電ローラとの位置関係の変形例を説明するための図であり、クリーニングローラについても示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係る画像形成装置の好適な実施例を詳細に説明する。
【実施例
【0019】
図1は、本発明の実施例に係る画像形成装置1の制御部50を含めた全体構造を概略的に示した図である。図2は、図1に示した画像形成装置1の感光体11周辺を拡大した図である。図3は、感光体11と3つの帯電ローラ40との位置関係を説明するための図であり、クリーニングローラ60についても示した図である。図4は、(a)が、3つの帯電ローラ40の各軸受け部21が固定フレーム30に取り付けられた組立体の斜視図であり、(b)が、(a)に示した組立体に対して感光体11を配置した図である。図5は、帯電ローラ40およびクリーニングローラ60を示した図である。図6は、(a)が、図4に示した組立体を固定フレーム30の軸受け固定面32aに対して裏面側から視た図であり、(b)および(c)が、軸受け部21をネジ止め固定する部分周辺を拡大した図である。図7は、固定フレーム30に取り付けられた軸受け部21周辺を軸方向から視た図であり、一部を断面で示した図である。図8は、固定フレーム30に取り付けられた軸受け部21周辺を軸方向に直交する方向から視た図であり、一部を断面で示した図である。図9は、帯電ローラ40のクロス量Tおよび傾斜角度Aを説明するための図である。図10は、図10(a)が、本特許出願人らの実験結果で、帯電ローラ40に直流電圧を印加したときの感光体帯電特性を説明するための図であり、図10(b)が、放電開始電圧の検出方法を説明するための図である。図11は、クラウン形状および逆クラウン形状の帯電ローラ40について説明するための図である。
本発明の実施例に係る画像形成装置1は、トナーの色に対応して複数の感光体が配置されたタンデム式であり、感光体11と、回転軸を中心とした回転動作によって移動される感光体表面11aに均一な接触圧で接触することによって感光体表面11aを均一に帯電させる帯電ローラ40を備える接触帯電方式の帯電部20と、を有するものである。
【0020】
以下、画像形成装置1の全体構成について説明する。
この画像形成装置1は、シアンC、マゼンタM、イエローY、および、ブラックKの4原色のトナーの色に対応した四つの色別対応ユニット10と、トナー画像を転写材Pに転写する転写部15と、用紙等の転写材Pを搬送する搬送部16と、転写材Pに転写したトナー画像を定着させる定着部17と、画像形成装置1の各部の動作を制御する制御部50と、を有する。
【0021】
まず、色別対応ユニット10について説明する。
なお、4つの色別対応ユニット10は、トナーの色が異なる以外はいずれも略同じ構成であるため、個々の説明については省略する。
【0022】
色別対応ユニット10は、感光体11と、感光体11の表面を均一に帯電する帯電部20と、感光体11に静電潜像を形成する露光部12と、感光体11の静電潜像にトナーを現像して可視像化する現像部13と、不要な残留トナーを清掃する感光体クリーナ14と、を有する。
【0023】
感光体11は、ドラム状をなし、この実施例では、外径80mmに設定されている。
また、感光体11は、制御部50によって1次帯電位が約550Vに制御される。
【0024】
露光部12は、公知のLEDアレイと結像手段とを組み合わせたものである。なお、露光部12は、レーザー光源、ポリゴンミラー等を用いたレーザースキャン方式の露光装置を用いても構わない。
【0025】
現像部13は、所定の色のトナーが収容されたトナー収容部13aと、感光体11との間を所定の距離にしてフレームに支持され、かつ、実稼動時には感光体11に当接する現像ローラ13bと、を有する。
露光部12によって感光体11の表面に形成された静電潜像は、この現像部13によってトナーが現像されて可視像化される。
【0026】
感光体クリーナ14は、ゴムブレード等によって構成され、感光体11に残留する不要なトナー、あるいは、異物を除去するものである。
【0027】
帯電部20は、本発明の特徴部分であり、感光体11の回転軸を中心とした回転動作によって移動される感光体表面11aに接触することによって感光体表面11aを帯電させる3つの帯電ローラ40、および、各帯電ローラ40に付着するトナー、あるいは、異物を除去するように、各帯電ローラ40に対応して設けられた3つのクリーニングローラ60を有する。
【0028】
帯電ローラ40は、図3に示すように、隣接する互いの帯電領域(弾性接触部42)の端部が感光体表面11aの移動方向で重複するように感光体表面11aの移動方向に交差する方向に沿って複数設けられている。
なお、この実施例では、帯電部20は、3つの帯電ローラ40のうち、2つの帯電ローラ40が回転軸方向を感光体表面11aの移動方向に直交する方向に対して傾斜角度Aをつけて設けられている。
より具体的には、中央の1つの帯電ローラ40が回転軸方向を感光体表面11aの移動方向に直交する方向に向けて設けられ、両側の2つの帯電ローラ40が回転軸方向を感光体表面11aの移動方向に直交する方向に対して傾斜角度Aをつけて設けられている。
【0029】
各帯電ローラ40は、後述する弾性接触部42の外径寸法が軸方向で一定のストレート形状を適用している。
なお、帯電ローラ40は、弾性接触部42の中央部分が凸状となる、いわゆるクラウン形状、あるいは、弾性接触部42の中央部分が凹状となる逆クラウン形状であっても構わないが、弾性接触部42の外径偏差が0.2mm以下であるものが好ましい。
【0030】
帯電ローラ40は、金属軸部41に、感光体11に弾性的に接触される部分であり、かつ、帯電領域でもある弾性接触部42として、導電性弾性体層、導電性弾性体層からのオイル滲み出し防止層、抵抗調整層、表面保護層を順に被せた機能分離型ローラを適用している(例えば、特開平2-311868号公報参照)。
なお、帯電ローラ40が、金属軸部41に半導電性ゴムを被せただけの単層、或いは、半導電性ゴム層に表面保護層を追加しただけの二層ローラでは、帯電ローラ40の電気抵抗成分に担持される電圧降下分が無視できず、感光体11の1回転目とそれ以降の帯電位に段差が生じ易く、また、隣接する帯電ローラの重複部分の感光体の帯電位にも段差が生じ易いので、機能分離型ローラを適用するのが好ましい。
帯電ローラ40の電気抵抗成分に担持される電圧降下分をできるだけ小さくするには、単に電気抵抗を小さくすれば良い訳でない。感光体11の耐電圧不足によるピンホールの発生を避けるには、帯電ローラ40の電気抵抗成分を実質的に支配する抵抗調整層の体積抵抗率を1×10の7乗[Ω・cm]程度とし、厚みが耐電圧不良を起こさない範囲でできるだけ薄い層にするのが好ましい。
【0031】
ここで、帯電ローラ40のより具体的な構成例について説明する。
この実施例では、弾性接触部42の外径が12mm、長さが322mmとしている。
金属軸部・・・直径8mm、
導電性弾性体層・・・厚さ略2mm、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、SBR、NR等に、カーボンブラック等の電子導電剤を配合して、体積抵抗率が1×10の3乗[Ω・cm]以下で、低硬度30度(Hs:JIS A)としている。
導電性弾性体層からのオイル滲み出し防止層・・・厚さ10μm
抵抗調整層・・・耐電圧性(耐リーク性)を高めるイオン伝導層とし、絶縁破壊電圧を満足させる最低限の厚みとして50μm以上としている。
なお、抵抗調整層に含まれるカーボンブラック等の電子導電剤はゴムに対して10容量%以下としている。
具体例として、厚さ160μm、エーテル結合を有する高分子化合物である、エピクロルヒドリン‐エチレンオキサイド共重合ゴム(CHC)や水素化ニトリルゴム等に、イオン導電剤としての過塩素酸塩(第4級アンモニウム塩)、帯電防止剤等を配合して、体積抵抗率を1×10の7乗[Ω・cm]としている。
表面保護層・・・厚さ10μm、フッ素系樹脂(フッ化ビニリデン‐四フッ化エチレン共重合樹脂)に電子導電粒子(マグネタイトまたはチタンブラック)を配合して、体積抵抗率を10の7乗~10の10乗、ショアー硬さ(D形)65度以下としている。
なお、表面保護層は、粗面形成用粒子に起因する凸部を分布形成し、粗面形成用粒子の外径が13μm、凸部以外の厚みが10μmとしている(特開2007-178559号公報、特開2007-264491号公報参照)。
このような表面保護層を適用することによって、感光体11と帯電ローラ40との接触面積を減少させて、その空隙において一定の放電領域を確保することによって、帯電性能を向上させることができる。したがって、低コスト化に有利な直流電圧方式も視野に入れることができ、交流電圧方式では、発生しがちな振動音を軽減することもできる。
【0032】
帯電ローラ40は、感光体11に接触しているので、長期間使用すると、感光体表面11aに付着したトナーや異物が付着することによって、帯電性能の低下、帯電ムラ等の問題が発生する。
このような問題を解消するために、この実施例では、クリーニングローラ60は、例えば、特開平8-137208号公報に開示されたクリーニングローラ60を適用する。
このクリーニングローラ60により、上記帯電性能の低下、帯電ムラ等の問題を解消できる。
【0033】
このクリーニングローラ60は、図5に示すように、金属軸部61と、金属軸部61に対して螺旋状に巻き付けられたクリーニング材62と、を有し、帯電ローラ40に接触しつつ従動して回転されるようになっている。
【0034】
クリーニング材62は、発泡ポリウレタン等からなる帯状部材であり、金属軸部61に螺旋状に巻き付けられることによって、クリーニング材62がある凸部と、その間の軸部が露出される凹部とで目詰まりを防止することができるようになっている。
なお、クリーニング材62は、特開2012-103641号公報に開示されているように、金属軸部61に沿う部分の幅が5mm~24mm、厚みが1.9mm~3.6mmにするとよい。
【0035】
また、帯電部20は、3つの帯電ローラ40の金属軸部41の軸受け部21と、3つの帯電ローラ40の各軸受け部21が固定される固定フレーム30と、を有する。
【0036】
軸受け部21は、各帯電ローラ40のそれぞれの両端部を軸支するように一対ずつ設けられ、図7および図8に示すように、固定フレーム30に固定される部分となる被固定部22と、被固定部22に対して帯電ローラ40が感光体11方向に加圧可能に取り付けられた可動軸受け部23と、を有する。
【0037】
被固定部22は、絶縁性の材料からなり、可動軸受け部23を付勢することによって帯電ローラ40の弾性接触部42を感光体1に加圧するためのバネSが収容されたバネ収容部22aと、可動軸受け部23を付勢方向にガイドするガイド壁部22bと、を有する。
【0038】
可動軸受け部23は、帯電ローラ40に電圧を印加するための電極板Eが保持される電極保持部24と、帯電ローラ40の金属軸部41が回動可能に支持される軸端回動支持部26と、を有する。
【0039】
電極保持部24は、絶縁性の材料からなり、電極板Eを保持するとともに金属軸部41の端面を軸方向に付勢する軸方向付勢部材25aを保持する軸方向付勢部材保持部25が、金属軸部41の軸方向に沿って軸端回動支持部26に連接するように形成されている。
【0040】
軸方向付勢部材保持部25は、電極板Eに接続された導電性の軸方向付勢部材25aを、帯電ローラ40の金属軸部41の端面を軸方向に金属バネSで付勢することができるように保持している。
【0041】
軸端回動支持部26は、導電性の樹脂材からなり、特に、金属軸部41の回転方向、および、軸方向での滑り性を考慮して、摺動性の良い材料を適用している。
この軸端回動支持部26は、金属軸部41の軸方向に沿って電極保持部24から連接されるように形成された金属軸部保持凹部27が形成されている。
金属軸部保持凹部27は、内径が金属軸部41の外径より僅かに大きく設定されている。
また、金属軸部保持凹部27は、軸方向の深さが、金属軸部41が軸方向付勢部材25aによる付勢力を受けつつ軸方向に滑ることができるように設定されている。
【0042】
このような軸受け部21によって金属軸部41の両端を軸支された帯電ローラ40には、感光体11に接触する方向のみならず、金属軸部41の軸方向にも適度な付勢力が作用されるようになっている。
このため、帯電ローラは、回転軸方向を感光体表面11aの移動方向に直交する方向に対して傾斜角度Aをつけて設けられていても、感光体11に圧接しながら安定して回転することができるようになっている。
【0043】
なお、電極板Eは、一対の軸受け部21の両方に設けても良いし、一方の軸受け部21のみに設けるようにしても構わない。
【0044】
また、この実施例では、クリーニングローラ60についても、軸受け部21が帯電ローラ40と同様に回転可能に軸支する。
すなわち、可動軸受け部23は、電極保持部24がクリーニングローラ60に対応した位置にも、電極板Eを保持している。
また、軸端回動支持部26は、帯電ローラ40に対応した金属軸部保持凹部27に並ぶように、クリーニングローラ60に対応した金属軸部保持凹部28が形成されている。
金属軸部保持凹部28は、軸方向の深さが、クリーニングローラ60の金属軸部61が軸方向付勢部材25bによる付勢力を受けつつ軸方向に滑ることができるように設定されている。
【0045】
固定フレーム30は、感光体11の幅方向に沿って延在するように画像形成装置1の不図示の筐体あるいは不図示のフレームに固定されている。
この固定フレーム30は、図6に示すように、画像形成装置1の筐体、あるいは、フレームに固定される固定部31と、感光体11の幅方向に沿って延在するように配置され、3つの帯電ローラ40の各軸受け部21が固定される軸受け固定面32aが形成された複数帯電ローラ配置部32と、を有する。
【0046】
複数帯電ローラ配置部32は、軸受け固定面32aに3つの帯電ローラ40に対応した各軸受け部21の複数のネジ止め固定部33、および、各軸受け部21をネジ止め固定部33によって固定する際に、帯電ローラ40の回転軸方向を感光体表面11aの移動方向に直交する方向に対して傾斜角度Aをつけて固定する際のガイド部分となる複数の角度調整ガイドスリット34が形成されている。
【0047】
ネジ止め固定部33は、各軸受け部21に対応して2カ所ずつ設けられている。より具体的には、ネジ止め固定部33は、各軸受け部21の被固定部22に2カ所ずつ形成された不図示のネジ穴に対応して設けられたネジ挿通孔になっている。
【0048】
角度調整ガイドスリット34は、軸受け固定面32aに形成された長孔であり、各軸受け部21に対応して1カ所ずつ設けられている。
より具体的には、角度調整ガイドスリット34は、各軸受け部21の被固定部22に1カ所ずつ形成されたガイド突起22cのスライドガイドになっている。
【0049】
なお、この実施例では、3つの帯電ローラ40は、上述した具体的な構成において、感光体11とのクロス量Tが、帯電ローラ40の中央部で0.1mmになるように設定され、感光体11に従動して回転されるようになっている。
ここで、クロス量Tとは、[クロス量T=感光体の半径R1+帯電ローラの半径R2-感光体11と帯電ローラ40の軸中心間距離D]によって算出される値である(図9参照)。
【0050】
また、帯電ローラ40が、隣接する互いの帯電領域としての弾性接触部42の端部が感光体表面11aの移動方向で重複するように感光体表面11aの移動方向に交差する方向に沿って3つ設けられ、各帯電ローラ40が感光体表面11aの移動方向に直交する方向に対して傾斜角度Aを0.2度以上2度以下の範囲で調整可能に設定されている。
このような傾斜角度Aの調整範囲では、各帯電ローラ40は、上述した寸法に設定にした場合、帯電ローラ40の弾性接触部42の両端位置での軸中心位置の差B(図9参照)が1.1mm以上、11.2mm以下の範囲で傾斜角度Aが調整される。
【0051】
なお、傾斜角度Aを0.2度以上2度以下の範囲とした理由は、本特許出願人らが実施した実験の結果に基づいている。
すなわち、傾斜角度Aが、0.2度未満である場合、隣接する2つの帯電ローラ40の重複する部分の感光体11の帯電位が、重複していない部分の感光体11の帯電位よりも高くなることによって、帯電ローラ40が重複する部分の感光体11の中間調画像濃度が薄く表現されてしまう。
一方、傾斜角度Aが、2度を超える場合、感光体11への圧力分布の偏差が大きくなりすぎて、正しい帯電分布が得られず、画像ムラが発生してしまう。
【0052】
このような構成の帯電部20は、傾斜角度Aを所定の範囲(この実施例では、0.2度以上2度以下の範囲)内で容易に調整することができるようになっている。
すなわち、帯電部20は、一対の軸受け部21の被固定部22に1カ所ずつ形成されたガイド突起22cを固定フレーム30の対応する各角度調整ガイドスリット34に嵌め込んだ後、各角度調整ガイドスリット34内で各ガイド突起22cを動かして、所定の範囲で傾斜角度Aを調整した後に、被固定部22を固定フレーム30にネジ止め固定する。
【0053】
ところで、本特許出願人らは、上述した特許文献2(特開2007-178460号公報)に記載のクラウン形状の帯電ローラを用いた画像形成装置が、初期的には、隣接する帯電ローラの重複部分における濃度段差を軽減することができるが、耐久するにつれて濃度段差が発生してしまうことを実験により確認した。
これは、耐久で感光体の膜厚が薄くなったことや、感光体層内の空間電荷が多くなったこと等が影響したことによるものと、本特許出願人らは推察している。
また、本特許出願人らは、隣接する帯電ローラ40の重複部分における濃度段差の程度は、感光体11や帯電ローラ40の個体差、接触圧差、寸法誤差、環境差等で、必ずしも同じにはならないことも、実験により確認した。
【0054】
この実施例の画像形成装置1は、帯電部20が、傾斜角度Aを調整することができるようになっているので、感光体11や帯電ローラ40の個体差、接触圧差、寸法誤差、環境差、あるいは、耐久差に応じて傾斜角度Aを調整することによって、帯電ローラ40の重複部分Wにおける濃度段差を安定して軽減することができるようになっている。
【0055】
次に、転写部15について説明する。
転写部15は、転写ベルト15aと、ベルト駆動ローラ15bと、ベルトテンションローラ15cと、一次転写ローラ15dと、ベルトクリーナ15eと、を有する。
【0056】
転写ベルト15aは、無端状のベルトであり、ベルト駆動ローラ15b、ベルトテンションローラ15c、および、一次転写ローラ15dに掛け回されることによって張架される。
【0057】
ベルト駆動ローラ15bは、不図示の駆動部によって駆動され、従動回転するベルトテンションローラ15c、および、一次転写ローラ15dによって掛け回された状態の転写ベルト15aを回動させる。
【0058】
ベルトテンションローラ15cは、転写ベルト15aの張力を調整するものであり、転写ベルト15aの蛇行を防止する。
【0059】
一次転写ローラ15dは、各色別対応ユニット10の感光体11に対して転写ベルト15aを挟んで対向配置され、トナーの帯電極性とは異なる極性のバイアスが印加されることによって、感光体11に現像されたトナー像を転写ベルト15aに静電的に転写する。
【0060】
ベルトクリーナ15eは、転写ベルト15aに残留する不要なトナー、あるいは、異物を除去する。
【0061】
次に、搬送部16について説明する。
搬送部16は、供給部からの紙等の転写材Pをトナー像が転写された状態で定着器まで、搬送する。
この搬送部16は、搬送方向に並べられた複数の搬送ローラ16aと、搬送ローラ16aを駆動する不図示のローラ駆動部と、を有し、搬送ローラ16aの一つとして二次転写ローラ16bが設けられている。
二次転写ローラ16bは、転写ベルト15aに対して紙等の転写材Pを挟んで対向配置され、トナーの帯電極性とは異なる極性のバイアスが印加されることによって、転写ベルト15a上に転写されたトナー像を紙等の転写材Pに転写する。
【0062】
定着部17は、紙等の転写材Pに転写されたトナー像を熱によって定着させる。
【0063】
制御部50は、CPU等によって実現され、画像形成装置1の各部に電気的に接続されている。
この制御部50は、各帯電ローラ40に印加する直流電圧を自動で制御する印加電圧自動制御部50aを有する。
【0064】
ここで、各帯電ローラ40に印加する直流電圧について詳細に説明する。
本特許出願人らは、実施例のように、弾性接触部42が半導電性弾性体層および表面保護層を含む帯電ローラ40を用いて、帯電ローラ40に直流電圧を印加したときの感光体11の帯電位を確認した。
感光体11と帯電ローラ40のニップ入口側では、帯電ローラ40~感光体11間の空隙が徐々に狭くなり、帯電ローラ40~感光体11間の電位差ΔVが放電開始電圧よりも大きくなると放電が発生し、帯電ローラ40~感光体11の電位差ΔVが放電開始電圧と同値になるまで、感光体11を帯電させ、放電開始電圧以上になると、傾き1の帯電特性を示すことを実験によって確認した(図10(a)参照)。
一方、放電開始電圧は、環境(温度・気圧)や耐久で大きく変動するので、帯電位も大きく変動してしまうことも実験によって確認した。
【0065】
そこで、各帯電ローラ40に印加する直流電圧は、印加電圧自動制御部50aによって自動で印加されるようになっている。
より具体的には、印加電圧自動制御部50aは、各帯電ローラ40から感光体11への放電開始電圧を適時検出し、検出された放電開始電圧に予め決められた、例えば、580Vの電圧を上乗せした直流電圧を各帯電ローラ40に印加する。
【0066】
なお、放電開始電圧を検出するには、直流電圧を印加したときの直流電流を測定する。
例えば、図10(b)のグラフに示すように、-800VDCと-1100VDCの2通りの直流電圧を印加したときの、直流電流を測定する。
直流電流と直流電圧の関係は、図10(b)のグラフに示すように、一次関数(y=12.931x-536.21)で表されるので、放電開始電圧は、約536Vとなる。
【0067】
このように印加電圧自動制御部50aによって、各帯電ローラ40に、環境や耐久、すなわち、帯電ローラ40の耐久による汚れ、さらには、感光体11の耐久による膜厚の変化等にも対応した最適な直流電圧を、その都度検出して印加することによって、感光体表面11aを常に安定して帯電させることができる。
また、交流電圧を重畳していないので、帯電ローラ40の重複部分Wにおける感光体表面11aのフィルミングも防止することができ、長時間にわたって高品位な画像を得ることができる。
【0068】
なお、実施例では、ストレート形状の帯電ローラ40を例示したが、帯電ローラ40の形状は、これに限らず、傾斜角度Aを調整することによってその他の形状を適用することができる。例えば、図11に示すように、クラウン形状(図11(a)参照)、あるいは、逆クラウン形状(図11(b)参照)も適用することができる。
【0069】
以下に、実施例の画像形成装置1に、クラウン形状、ストレート形状、逆クラウン形状のそれぞれの帯電ローラ40を適用し、それぞれの形状の帯電ローラ40に対応した傾斜角度Aで、A0判用紙で50Kmの耐久試験を行った結果を表1に示す。
なお、表1中の画質の判定結果の「◎」は、フィルミング、濃度段差ともに良好であることを示す。
また、クラウン形状および逆クラウン形状の帯電ローラ40は、弾性接触部42の外径偏差が0.1mmとする。
この耐久試験の結果から、画像形成装置1は、傾斜角度Aを調整することによって、クラウン形状、ストレート形状、逆クラウン形状のそれぞれの帯電ローラ40を適用できることがわかる。
【表1】
【0070】
本発明の実施例に係る画像形成装置1は、帯電部20に3つ設けられた帯電ローラ40が、隣接する互いの帯電領域として弾性接触部42の端部が感光体表面11aの移動方向で重複するように感光体表面11aの移動方向に交差する方向に沿って設けられ、3つの帯電ローラ40のうち、2つの帯電ローラ40が回転軸方向を感光体表面11aの移動方向に直交する方向に対して傾斜角度Aをつけて設けられている。
このため、本発明の実施例に係る画像形成装置1は、各種形状の異なる帯電ローラ40に応じた傾斜角度Aが個体差も込みで設定されることによって、帯電ローラ40の帯電領域42の重複部分Wについても感光体11を均一に帯電させることができる。
したがって、本発明の実施例に係る画像形成装置1は、長尺な感光体11に対して均一に帯電させることができ、かつ、各種形状の異なる帯電ローラ40を適用することができる。
【0071】
また、本発明の実施例に係る画像形成装置1は、傾斜角度Aが0.2度以上、2度以下であるので、狭い調整角度の範囲であっても、各種形状の異なる帯電ローラ40を適用することができる。
【0072】
また、本発明の実施例に係る画像形成装置1は、3つの帯電ローラが傾斜角度Aを所定の範囲で調整可能に設けられているので、初期から個々の帯電ローラに対する最適角度Aに、機械差や個体差も込みで調整可能で、仮に、耐久で、初期の傾斜角度Aでは発生しなかった帯電段差が、帯電ローラ40の帯電領域42の重複部分Wに発生した場合であっても、傾斜角度Aを再調整することによって、容易に問題を改善することができる。結果的に、本発明の実施例に係る画像形成装置1は、長尺な感光体11に対して、長期使用においても安定的に、均一に帯電させることができる。
【0073】
また、本発明の実施例に係る画像形成装置1は、印加電圧自動制御部50aが、3つの帯電ローラ40から感光体11への放電開始電圧を適時検出し、検出された放電開始電圧に、予め決められた電圧を加えた直流電圧を3つの帯電ローラ40に印加するようになっているので、各帯電ローラ40に適時最適な直流電圧を印加されることによって、感光体表面11aを常に安定して帯電させることができるとともに、帯電ローラ40の重複部分Wにおける感光体表面11aのフィルミングも防止することができ、長時間にわたって高品位な画像を得ることができる。
(変形例)
【0074】
次に、図12図14を用いて、本発明の実施例に係る画像形成装置1の変形例の画像形成装置2について説明する。
図12は、変形例の画像形成装置2の制御部50を含めた全体構造を概略的に示した図である。図13は、本特許出願人らの実験結果を説明するための図である。図14は、1600VPP/1KHzの交流電圧を重畳した直流電圧を帯電ローラ40に印加した場合の帯電特性を示す図である。
【0075】
この変形例の画像形成装置2は、各帯電ローラ40に印加する電圧が、直流電圧に放電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧VPPを有する交流電圧を重畳した電圧である点で、実施例の画像形成装置1と異なる。
なお、その他の構成は実施例と同様であり、実施例と同一構成部分には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
ところで、特開昭63-149668号公報に開示された技術によると、帯電ローラ40に「低温低湿環境の放電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧VPPを有する交流電圧」を直流電圧に重畳した電圧を印加すれば、環境に関わらず直流成分(厳密には、正尖頭値と負尖頭値の平均値)と同値の帯電位を安定して得ることができる。
また、帯電ローラ40に印加する電圧が直流電圧のみでは、反転現像のカブリを回避することが困難であったが、交流電圧を重畳することでカブリを回避できる。
また、帯電ローラ40に印加する電圧が直流電圧のみでは、微視的に視た帯電位がギザギザな状態であったが、交流電圧を重畳することで帯電位が微視的に視ても均一化される。
【0077】
本特許出願人らは、実施例のように、弾性接触部42が半導電性弾性体層および表面保護層を含む帯電ローラ40を用いて、帯電ローラ40に直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加したときの感光体11の帯電位を確認した。本特許出願人らは、正尖頭値を0Vの一定値に固定し、負尖頭値のみ変更した場合、負尖頭値が放電開始電圧(約550V)に達するまでは、直流電圧のみを印加する場合と同様に放電しない(帯電しない)ことを実験によって確認した(図13参照)。
負尖頭値が放電開始電圧(約550V)に達してから放電開始電圧の2倍(約1100V)に達すると、感光体11の帯電位と正尖頭値(=0V)との電位差△Vが放電開始電圧以上になるので、正尖頭値の微視的タイミングでは逆放電が発生開始する。
一方、負尖頭値の微視的タイミングでは通常の放電が発生するので、トータル的な帯電位は、正負微視的タイミングでの帯電位の平均値になる(図14参照)。
帯電ローラ40に直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加する方式は、直流電圧のみを印加する場合の問題点を解決しつつ、接触帯電方式の最大の利点であるオゾンの発生を抑える効果についても、直流電圧のみを印加する場合に比較してオゾンの発生量が増加するものの、コロナ帯電方式に比較すれば、オゾンの発生量を桁違いに少なくすることができる。
理想的には、「低温低湿環境の放電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧VPPを有する交流電圧」を直流電圧に重畳した電圧を帯電ローラに印加すれば、環境に関わらず、原点を通る傾き1の帯電特性になる。
帯電ローラ40に、直流電圧のみ印加する場合であっても、放電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧VPPを有する交流電圧を直流電圧に重畳した電圧を印加する場合であっても、理想的には傾き1の帯電特性になるべきだが、実際には、露光による感光体11層内の空間電荷や、帯電ローラ40の電気抵抗成分に担持される電圧降下分の影響があるので、理論値と実験値に少しのズレが存在する。
一方で、帯電ローラ40に直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加する場合は、直流電圧のみを印加する場合に比較して、感光体11へのフィルミングが発生し易くなる傾向がある。交流電圧の弊害であるフィルミングを軽減する方法は、必要以上に交流電流を流さないことに集約される。(例えば、特開平9-218560号公報を参照)
このようなことから、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を帯電ローラ40に印加する場合、一定のピーク間電圧VPPを印加するのではなく、環境や耐久、すなわち、帯電ローラ40の耐久による汚れ、さらには、感光体11の耐久による膜厚の変化等に対応できる必要最低限度のピーク間電圧VPPをその都度検出して、その都度の必要最低限度のピーク間電圧VPPを印加することが重要である。
【0078】
上述した事情に考慮して、この変形例の画像形成装置2は、各帯電ローラ40に印加する電圧を自動で制御する印加電圧自動制御部50bを有する。
印加電圧自動制御部50bは、各帯電ローラ40から感光体11への放電開始電圧を適時検出し、直流電圧に、検出された放電開始電圧の2.2倍のピーク間電圧VPPを有する交流電圧を重畳した電圧を各帯電ローラ40に印加する。
なお、この実施例では、直流電圧に、検出された放電開始電圧の2.2倍のピーク間電圧VPPを有する交流電圧を重畳した電圧を各帯電ローラ40に印加するとしているが、検出された放電開始電圧の2倍値に任意の値を加えたピーク間電圧VPPを有する交流電圧(2倍以上の予め決められた倍数の交流電圧)を重畳した電圧を各帯電ローラ40に印加してもよい。
【0079】
このような印加電圧自動制御部50bは、より具体的には、580Vの直流電圧に、自動制御された交流電圧を重畳した電圧を各帯電ローラ40に印加することによって、感光体表面11aを常に安定して約550Vに帯電させることができる。
【0080】
なお、放電開始電圧を検出するには、実施例の直流電圧を印加する場合と同様に、直流成分の電流を測定すればよい。
【0081】
このように、印加電圧自動制御部50bが、各帯電ローラ40に直流電圧に放電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧VPPを有する交流電圧を重畳した電圧を印加することによって、直流電圧のみを各帯電ローラ40に印加する場合に比較して、隣接する帯電ローラ40の重複部分Wにおける感光体表面11aのフィルミングが若干発生し易くなり、オゾンの発生量も若干多くなるものの、長期間にわたってより高品位な画像を得ることができる。
【0082】
以下に、変形例の画像形成装置2に、クラウン形状、ストレート形状、逆クラウン形状のそれぞれの帯電ローラ40を適用し、それぞれの形状の帯電ローラ40に対応した傾斜角度Aで、AO判用紙で50Kmの耐久試験を行った結果を表2に示す。
なお、表2中の画質の判定結果の「○」は、極僅かなフィルミングが発生するが、画像段差には至らないことを示す。
また、クラウン形状および逆クラウン形状の帯電ローラ40は、弾性接触部42の外径偏差が0.1mmとする。
この耐久試験の結果から、画像形成装置2は、傾斜角度Aを調整することによって、クラウン形状、ストレート形状、逆クラウン形状のそれぞれの帯電ローラ40を適用できることがわかる。
【表2】
【0083】
この変形例に係る画像形成装置2は、印加電圧自動制御部50bが、3つの帯電ローラ40から感光体11への放電開始電圧を適時検出し、検出された放電開始電圧の2倍以上の、予め決められた倍数のピーク間電圧VPPを有する交流電圧を直流電圧に重畳した電圧を、3つの帯電ローラに印加するようになっているので、長時間にわたって高品位な画像を得ることができる。
【0084】
なお、本発明の実施例および変形例に係る画像形成装置1、2は、中央の1つの帯電ローラ40が回転軸方向を感光体表面11aの移動方向に直交する方向に向けて設けられ、両側の2つの帯電ローラ40が回転軸方向を感光体表面11aの移動方向に直交する方向に対して傾斜角度Aをつけて設けられているものを例示したが、これに限らず、例えば、図15に示すように、3つの帯電ローラ40の全てが傾斜角度Aを付けて設けられても構わないし(図15(a)参照)、中央の1つの帯電ローラ40が回転軸方向を感光体表面11aの移動方向に直交する方向に対して傾斜角度Aをつけて設けられ、両側の2つの帯電ローラ40が回転軸方向を感光体表面11aの移動方向に直交する方向に向けて設けられるようにしても構わない(図15(b)参照)。
【0085】
また、本発明の実施例および変形例に係る画像形成装置1、2は、帯電部20が3つの帯電ローラ40を有するものを例示したが、帯電ローラ40は、3つに限らず、複数あればよい。例えば、帯電ローラ40は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0086】
また、本発明の実施例および変形例に係る画像形成装置1、2は、帯電ローラ40の傾斜角度Aを所定の範囲で調整できるものを例示したが、傾斜角度Aは一つの値に固定されていてもよい。
例えば、クラウン形状、ストレート形状、逆クラウン形状というような帯電ローラ40の形状に対応した最適な傾斜角度Aを定めることによって、その定められた傾斜角度Aに固定した装置仕様であっても構わない。
【0087】
最後に参考資料として、以下の表3に、帯電ローラ40の弾性接触部42の両端位置での軸中心位置の差B、および、傾斜角度Aの関係を示す。
なお、クラウン形状および逆クラウン形状の帯電ローラ40は、弾性接触部42の外径偏差が0.1mmとする。
【表3】
【0088】
以上、本発明者によってなされた発明を、上述した発明の実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上述した発明の実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0089】
1、2 画像形成装置
10 色別対応ユニット
11 感光体
11a 感光体表面
12 露光部
13 現像部
13a トナー収容部
13b 現像ローラ
14 感光体クリーナ
15 転写部
15a 転写ベルト
15b ベルト駆動ローラ
15c ベルトテンションローラ
15d 一次転写ローラ
15e ベルトクリーナ
16 搬送部
16a 搬送ローラ
16b 二次転写ローラ
17 定着部
20 帯電部
21 軸受け部
22 被固定部
22a バネ収容部
22b ガイド壁部
22c ガイド突起
23 可動軸受け部
24 電極保持部
25 軸方向付勢部材保持部
25a、25b 軸方向付勢部材
26 軸端回動支持部
27、28 金属軸部保持凹部
30 固定フレーム
31 固定部
32 複数帯電ローラ配置部
32a 軸受け固定面
33 ネジ止め固定部
34 角度調整ガイドスリット
40 帯電ローラ
41 金属軸部
42 弾性接触部(帯電領域)
50 制御部
50a、50b 印加電圧自動制御部
60 クリーニングローラ
61 金属軸部
62 クリーニング材
A 傾斜角度
B 帯電ローラの両端位置での軸中心位置の差
D 感光体と帯電ローラの軸中心間距離
E 電極板
P 紙等の転写材
R1 感光体の半径
R2 帯電ローラの半径
S バネ
T クロス量
W 重複部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15