(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/04 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
H02K5/04
(21)【出願番号】P 2019007296
(22)【出願日】2019-01-18
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000195959
【氏名又は名称】西芝電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 広基
(72)【発明者】
【氏名】紙上 敏和
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-116060(JP,A)
【文献】特開2016-101008(JP,A)
【文献】実開昭57-183059(JP,U)
【文献】特開2016-046846(JP,A)
【文献】特開昭49-133809(JP,A)
【文献】特開平10-322991(JP,A)
【文献】特開平5-015662(JP,A)
【文献】特開2004-101307(JP,A)
【文献】実開昭50-147098(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の固定子と、
前記固定子の内側に設けられ、前記固定子に対して相対的に回転可能な回転子と、
前記固定子及び前記回転子を収容するフレームと、
前記フレームの一端に設けられた環状の棚板と、
前記棚板の前記フレームとは反対側に前記棚板の周方向に間隔を空けて円周状に配置された複数のリブと、
前記複数のリブの外側を覆う円筒状の排気カバーと
を有する回転電機において、
前記棚板の外周に、前記棚板の外側に向かって突出する2個の吊り耳を前記棚板の周方向に間隔を空けて設け、
一方の前記吊り耳の根本部分における他方の前記吊り耳に近い側と、他方の前記吊り耳の根本部分における一方の前記吊り耳に近い側とに、それぞれ前記棚板の外周より一段高い段差を設け、
前記排気カバーに、前記2個の吊り耳のそれぞれの根本部分が収まる2個の切り欠きを設けた
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
一方の前記吊り耳の根本部分における他方の前記吊り耳から遠い側と、他方の前記吊り耳の根本部分における一方の前記吊り耳から遠い側とに、それぞれ前記棚板の外周より一段高い段差を設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記段差の高さが、前記排気カバーの厚さ以上である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転電機。
【請求項4】
環状の固定子と、
前記固定子の内側に設けられ、前記固定子に対して相対的に回転可能な回転子と、
前記固定子及び前記回転子を収容するフレームと、
前記フレームの一端に設けられた環状の棚板と、
前記棚板の前記フレームとは反対側に前記棚板の周方向に間隔を空けて円周状に配置された複数のリブと、
前記複数のリブの外側を覆う円筒状の排気カバーと
を有する回転電機において、
前記棚板の外周に、前記棚板の外側に向かって突出する2個の吊り耳を前記棚板の周方向に間隔を空けて設け、
一方の前記吊り耳の根本部分における他方の前記吊り耳から遠い側と、他方の前記吊り耳の根本部分における一方の前記吊り耳から遠い側とに、それぞれ前記棚板の外周より一段高い段差を設け、
前記排気カバーに、前記2個の吊り耳のそれぞれの根本部分が収まる2個の切り欠きを設けた
ことを特徴とする回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電機などの回転電機に係り、特に排気カバー及び吊り耳を有する構成の回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
直流機、同期機、誘導機などの回転電機は、構造面では回転子と固定子とによって構成され、機能面では電磁誘導の原理を利用して電機エネルギーと機械エネルギー(回転エネルギー)の相互変換を行うものである。
【0003】
従来の回転電機の構成例を、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、回転電機の一つである同期機発電機の構成例を示す部分断面図であり、点線の外側は回転電機の外形、内側は断面を示している。また
図5(A)、(B)は、回転電機の外観斜視図である。
図4に示すように、回転電機は、環状の固定子4と、固定子4の内側に設けられ固定子4に対して相対的に回転可能な回転子8と、固定子4と回転子8とを収容するフレーム9とを有している。固定子4は、固定子鉄心1と2枚の押さえ板2と固定子巻線3とによって構成され、回転子8は、磁極5及び回転子巻線6とシャフト7とによって構成されている。
【0004】
シャフト7の一端側には、冷却ファン11が取り付けられている。冷却ファン11は、シャフト7の回転にともなって回転することにより、フレーム9の他端側(冷却ファン11側とは反対側)に取り付けられた吸気カバー13の網部より冷却空気を吸入して、回転子巻線6、固定子巻線3及びその他の回転電機の構成部品を冷却するようになっている。このとき冷却空気は、吸気カバー13の網部からフレーム9の内側へ吸い込まれ、固定子4の内側を通り抜けて、フレーム9の一端側(冷却ファン11側)に設けられた棚板16の内側を通り、棚板16と原動機接続フランジ18との間に設けられた複数のリブ14を覆う排気カバー10の網部から回転電機の外側に放出される。
【0005】
図4に加えて
図5(A)に示すように、棚板16と原動機接続フランジ18は、それぞれ環状であり、これらの間には、複数のリブ14が棚板16及び原動機接続フランジ18の周方向に間隔を空けて円周状に配置されている。複数のリブ14と、棚板16及び原動機接続フランジ18とは溶接等で強固に固定され、これらにより回転電機の一端側に通風路が形成されている。また複数のリブ14の内側に冷却ファン11が位置している。原動機接続フランジ18は、回転電機の一端を形成していて、ディーゼル機関等の原動機のフレーム(図示せず)にボルト等で固定される。尚、
図4及び
図5に示す回転電機は、回転軸(シャフト7)を横に寝かせた向きで、原動機のフレームに固定されるようになっている。さらにシャフト7の一端側の端部(つまり冷却ファン11側の端部)には、原動機の出力軸と直結するための円板(図示せず)が設けられている。
【0006】
図5(A)、(B)に示すように、排気カバー10は、全体として円筒状であり、周方向に分割された第1の部分19と第2の部分20とで構成されている。排気カバー10は、第1の部分19を上側、第2の部分20を下側にして複数のリブ14を覆った状態で、第1の部分(以下、上側排気カバーと呼ぶ)19と第2の部分(以下、下側排気カバーと呼ぶ)20の合わせ面がボルトナットで締結されると、上側排気カバー19と下側排気カバー20がボルトナットの締め付け力によって引っ張られることにより、リブ14に固着するようになっている。尚、排気カバー10は、複数のリブ14とともに棚板16の外周も覆うようになっている。
【0007】
棚板16の上部には、棚板16の外周から棚板16の外側に向かって突出する2個の吊り耳12aが、棚板16の周方向に間隔を空けて設けられている。2個の吊り耳12aは、それぞれ棚板16と同じ厚さで厚さ方向に貫通する孔が設けられた板状であり、棚板16と一体に形成されている。
【0008】
上側排気カバー19は、棚板16側の端の吊り耳12aと対向する箇所に、吊り耳12aの根本部分が収まる切り欠き21が設けられていて、各切り欠き21の内側に各吊り耳12aの根本部分が収まった状態で、下側排気カバー20と締結されるようになっている。排気カバー10は、切り欠き21の周方向の端に位置する縁が、吊り耳12aの根本部分に接触することで、周方向への移動(つまり回転)が規制される。このように排気カバー10は、吊り耳12aがストッパとなり、周方向へのずれを防止するようになっている。
【0009】
従来、このような回転電機の吊り耳として、孔の形状に特徴を有するものや、取付箇所に特徴を有するものなどが提案されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実開平1-157545号公報
【文献】特開昭58-179868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここで、
図6(A)~(D)に、従来の回転電機に設けられた吊り耳12a周辺部の概略図を示す。
図6(A)、(C)は、吊り耳12a周辺部を上方から見た概略図であり、
図6(B)、(D)は、吊り耳12a周辺部を回転電機の回転軸方向から見た概略図である。
【0012】
図6(A)~(D)に示すように、従来の構造では、回転電機運転時の振動等により、排気カバー10が周方向に少しずつ動き出してしまい、排気カバー10の切り欠き21の周方向(
図6の横方向)の端に位置する縁が、吊り耳12aの根本部分と棚板16の外周との間のR形状の角部15に乗り上がり、排気カバー10に亀裂が発生することがあった。またこのように排気カバー10が吊り耳12aの根本部分の角部15に乗り上がると、排気カバー10から吊り耳12aの根本部分に対して過度な力が加わり吊り耳12a側が破損する可能性も考えられる。
【0013】
このように、従来の回転電機は、排気カバー10が吊り耳12aの根本部分に乗り上がり、排気カバー10や吊り耳12aが破損することがあるという問題を有していた。
【0014】
本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、回転電機に設けられた排気カバー及び吊り耳の破損を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明による回転電機は、環状の固定子と、前記固定子の内側に設けられ、前記固定子に対して相対的に回転可能な回転子と、前記固定子及び前記回転子を収容するフレームと、前記フレームの一端に設けられた環状の棚板と、前記棚板の前記フレームとは反対側に前記棚板の周方向に間隔を空けて円周状に配置された複数のリブと、前記複数のリブの外側を覆う円筒状の排気カバーとを有する回転電機において、前記棚板の外周に、前記棚板の外側に向かって突出する2個の吊り耳を前記棚板の周方向に間隔を空けて設け、一方の前記吊り耳の根本部分における他方の前記吊り耳に近い側と、他方の前記吊り耳の根本部分における一方の前記吊り耳に近い側とに、それぞれ前記棚板の外周より一段高い段差を設け、前記排気カバーに、前記2個の吊り耳のそれぞれの根本部分が収まる2個の切り欠きを設けたことを特徴とする。
【0016】
また本発明による回転電機は、環状の固定子と、前記固定子の内側に設けられ、前記固定子に対して相対的に回転可能な回転子と、前記固定子及び前記回転子を収容するフレームと、前記フレームの一端に設けられた環状の棚板と、前記棚板の前記フレームとは反対側に前記棚板の周方向に間隔を空けて円周状に配置された複数のリブと、前記複数のリブの外側を覆う円筒状の排気カバーとを有する回転電機において、前記棚板の外周に、前記棚板の外側に向かって突出する2個の吊り耳を前記棚板の周方向に間隔を空けて設け、一方の前記吊り耳の根本部分における他方の前記吊り耳から遠い側と、他方の前記吊り耳の根本部分における一方の前記吊り耳から遠い側とに、それぞれ前記棚板の外周より一段高い段差を設け、前記排気カバーに、前記2個の吊り耳のそれぞれの根本部分が収まる2個の切り欠きを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、排気カバーの周方向への移動が、吊り耳の根本部分に設けられた段差により規制されて排気カバーが吊り耳の根本部分に乗り上がることを防ぐことができる。これにより排気カバー及び吊り耳の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施の形態に係る回転電機の部分断面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る回転電機の吊り耳周辺部の概略図である。
【
図3】第2の実施の形態に係る回転電機の吊り耳周辺部の概略図である。
【
図6】従来の回転電機の吊り耳周辺部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
[1.第1の実施の形態]
まず本発明による第1の実施の形態について説明する。
図1は、本発明による第1の実施の形態に係る回転電機の構成例を示す部分断面図であり、点線の外側は回転電機の外形、内側は断面を示している。尚、
図1は、
図3に対応する図であり、
図1に示す第1の実施の形態に係る回転電機の構成部品のうち、
図3に示す従来の回転電機の構成部品と同一又は類似の構成部品については、同一符号を付すとともに詳しい説明は適宜省略する。
【0021】
第1の実施の形態に係る回転電機は、環状の固定子4と、固定子4の内側に設けられ固定子4に対して相対的に回転可能な回転子8と、固定子4と回転子8とを収容するフレーム9とを有している。固定子4は、固定子鉄心1と2枚の押さえ板2と固定子巻線3とによって構成され、回転子8は、磁極5及び回転子巻線6とシャフト7とによって構成されている。
【0022】
フレーム9の一端側には環状の棚板16が設けられ、棚板16のフレーム9とは反対側には棚板16の周方向に間隔を空けて円周状に配置された複数のリブ14が設けられている。また複数のリブ14の棚板16とは反対側には環状の原動機接続フランジ18が設けられている。円周状に配置された複数のリブ14の内側には、シャフト7の一端側に取り付けられた冷却ファン11が設けられ、複数のリブ14の外側には、複数のリブ14と棚板16の外周とを覆う円筒状の排気カバー10が設けられている。尚、
図1では省略するが、排気カバー10は、上側排気カバー19と下側排気カバー20とで構成されている。さらにフレーム9の他端側(冷却ファン11側とは反対側)には吸気カバー13が設けられている。
【0023】
棚板16の上部には、棚板16の外周から棚板16の外側に向かって突出する2個の吊り耳12bが、棚板16の周方向に間隔を空けて設けられている。ここで、
図2(A)、(B)に、第1の実施の形態に係る回転電機に設けられた吊り耳12b周辺部の概略図を示す。
図2(A)は、吊り耳12b周辺部を上方から見た概略図であり、
図2(B)は、吊り耳12b周辺部を回転電機の回転軸方向から見た概略図である。また
図2(A)、(B)には、回転電機の中心線を一点鎖線で示している。
【0024】
図2(A)、(B)に示すように、2個の吊り耳12bは、回転電機の中心線から等距離の位置に隣り合うように配置されている。2個の吊り耳12bは、それぞれ棚板16と同じ厚さで厚さ方向に貫通する孔が設けられた板状であり、棚板16と一体に形成されている。2個の吊り耳12bのうち、一方の吊り耳12bは、根本部分における他方の吊り耳12bに近い側に、棚板16の外周より一段高い段差22が設けられている。また2個の吊り耳12bのうち、他方の吊り耳12bは、根本部分における一方の吊り耳12bに近い側に、棚板16の外周より一段高い段差22が設けられている。
【0025】
すなわち、一方の吊り耳12bを
図2の左側の吊り耳12b、他方の吊り耳12bを
図2の右側の吊り耳12bとすると、左側の吊り耳12bの根本部分の右端側と、右側の吊り耳12bの根本部分の左端側とに、それぞれ段差22が設けられている。別の言い方をすると、2個の吊り耳12bの根本部分のそれぞれの内側(隣の吊り耳12bに近い側)に、段差22が設けられている。
【0026】
排気カバー10は、棚板16側の端の2個の吊り耳12bのそれぞれと対向する箇所に、吊り耳12bの根本部分が収まる切り欠き21が設けられていて、各切り欠き21の内側に各吊り耳12bの根本部分が収まった状態で、複数のリブ14の外側に取り付けられている。
【0027】
また
図2(B)に示すように、吊り耳12bの根本部分の段差22は、その高さが、排気カバー10の厚さ以上となっている。さらに
図2(B)に示すように、吊り耳12bの根本部分の段差22の立ち上がり部分と棚板16の外周との間のR形状の角部17は、その高さが、排気カバー10の厚さに比べて十分低くなっている。さらに
図2(A)に示すように、吊り耳12bの根本部分の段差22は、排気カバー10の切り欠き21の周方向(
図2(A)の横方向)に延びる縁に一番近い角部23が、面取り形状になっている。
【0028】
さらに
図2(A)に示すように、排気カバー10の切り欠き21は、周方向に延びる縁と周方向に対して直交する方向(
図2(A)の縦方向)に延びる縁との間の角部24がR形状になっている。第1の実施の形態に係る回転電機の構成は、以上のようになっている。
【0029】
ここまで説明したように、第1の実施の形態に係る回転電機は、2個の吊り耳12bの根本部分のそれぞれの内側に棚板16の外周より一段高い段差22を設けたことにより、排気カバー10の周方向への移動が段差22により規制されて排気カバー10が吊り耳12bの根本部分に乗り上がることを防ぐことができ、排気カバー10及び吊り耳12bの破損を防止することができる。この結果、第1の実施の形態に係る回転電機は、従来の回転電機と比べてより安定して運転できる。
【0030】
また第1の実施の形態に係る回転電機は、吊り耳12bの根本部分の段差22の高さを、排気カバー10の厚さ以上にするとともに、段差22と棚板16の外周との間のR形状の角部17の高さを、排気カバー10の厚さに比べて十分低くしたことにより、排気カバー10が段差22を乗り越えてしまうことをより確実に防ぐことができる。
【0031】
さらに第1の実施の形態に係る回転電機は、段差22における排気カバー10の切り欠き21の周方向に延びる縁に一番近い角部23を面取り形状にしたことにより、段差22の角部23が、切り欠き21の縁に接触することを防ぐことができ、吊り耳12bの破損を防止することができる。さらに第1の実施の形態に係る回転電機は、排気カバー10の切り欠き21の角部24をR形状にしたことにより、切り欠き21の角部24に亀裂が発生することを抑制できる。
【0032】
[2.第2の実施の形態]
次に本発明による第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、段差22の位置が第1の実施の形態とは異なる実施の形態である。よってここでは主に段差22の位置について説明する。
図3(A)、(B)に、第2の実施の形態に係る回転電機に設けられた吊り耳12c周辺部の概略図を示す。
図3(A)は、吊り耳12c周辺部を上方から見た概略図であり、
図3(B)は、吊り耳12c周辺部を回転電機の回転軸方向から見た概略図である。
図3(A)、(B)は、
図2(A)、(B)に対応する図であり、同一部分については同一符号を付している。
【0033】
図3(A)、(B)に示すように、2個の吊り耳12cは、回転電機の中心線から等距離の位置に隣り合うように配置されている。2個の吊り耳12cは、それぞれ棚板16と同じ厚さで厚さ方向に貫通する孔が設けられた板状であり、棚板16と一体に形成されている。2個の吊り耳12cのうち、一方の吊り耳12cは、根本部分における他方の吊り耳12cから遠い側に、棚板16の外周より一段高い段差22が設けられている。また2個の吊り耳12cのうち、他方の吊り耳12cは、根本部分における一方の吊り耳12cから遠い側に、棚板16の外周より一段高い段差22が設けられている。
【0034】
すなわち、一方の吊り耳12cを
図3の左側の吊り耳12c、他方の吊り耳12cを
図3の右側の吊り耳12cとすると、左側の吊り耳12cの根本部分の左端側と、右側の吊り耳12cの根本部分の右端側とに、それぞれ段差22が設けられている。別の言い方をすると、2個の吊り耳12cの根本部分のそれぞれの外側(隣の吊り耳12cから遠い側)に、段差22が設けられている。
【0035】
また
図3(B)に示すように、吊り耳12cの根本部分の段差22は、その高さが、排気カバー10の厚さ以上となっている。さらに
図3(B)に示すように、吊り耳12cの根本部分の段差22と棚板16の外周との間のR形状の角部17は、その高さが、排気カバー10の厚さに比べて十分低くなっている。さらに
図3(A)に示すように、吊り耳12cの根本部分の段差22は、排気カバー10の切り欠き21の周方向(
図3(A)の横方向)に延びる縁に一番近い角部23が、面取り形状になっている。
【0036】
さらに
図3(A)に示すように、排気カバー10の切り欠き21は、周方向に延びる縁と周方向に対して直交する方向(
図3(A)の縦方向)に延びる縁との間の角部24がR形状になっている。第2の実施の形態に係る回転電機の構成は、以上のようになっている。
【0037】
ここまで説明したように、第2の実施の形態に係る回転電機は、2個の吊り耳12cの根本部分のそれぞれの外側に棚板16の外周より一段高い段差22を設けたことにより、排気カバー10の周方向への移動が段差22により規制されて排気カバー10が吊り耳12cの根本部分に乗り上がることを防ぐことができ、排気カバー10及び吊り耳12cの破損を防止することができる。この結果、第2の実施の形態に係る回転電機は、第1の実施の形態に係る回転電機と同様、従来の回転電機と比べてより安定して運転できる。
【0038】
また第2の実施の形態に係る回転電機は、吊り耳12cの根本部分の段差22の高さを、排気カバー10の厚さ以上にするとともに、段差22と棚板16の外周との間のR形状の角部17の高さを、排気カバー10の厚さに比べて十分低くしたことにより、排気カバー10が段差22を乗り越えてしまうことをより確実に防ぐことができる。
【0039】
さらに第2の実施の形態に係る回転電機は、段差22における排気カバー10の切り欠き21の周方向に延びる縁に一番近い角部23を面取り形状にしたことにより、段差22の角部23が、切り欠き21の縁に接触することを防ぐことができ、吊り耳12cの破損を防止することができる。さらに第2の実施の形態に係る回転電機は、排気カバー10の切り欠き21の角部24をR形状にしたことにより、切り欠き21の角部24に亀裂が発生することを抑制できる。
【0040】
[3.他の実施の形態]
次に本発明による他の実施の形態(変形例)について説明する。上述した第1の実施の形態に係る回転電機では、2個の吊り耳12bのそれぞれの内側(隣の吊り耳12bに近い側)に段差22を設け、第2の実施の形態に係る回転電機では、2個の吊り耳12cのそれぞれの外側(隣の吊り耳12cから遠い側)に段差22を設けた。これに限らず、第1の実施の形態と第2の実施の形態とを組み合わせて、2個の吊り耳12bのそれぞれの内側と外側に段差22を設けるようにしてもよい。
【0041】
また上述した第1の実施の形態に係る回転電機では、棚板16の外周に2個の吊り耳12bを設けた。これに限らず、例えば吊り耳12bを3個以上設けるようにしてもよい。吊り耳12bを3個以上設ける場合、例えば、3個以上の吊り耳12bのうち、いずれか2個の吊り耳12bのそれぞれの内側に段差22を設けるようにすればよい。同様に、第2の実施の形態に係る回転電機についても、吊り耳12cを3個以上設けるようにしてもよい。この場合も、3個以上の吊り耳12cのうち、いずれか2個の吊り耳12cのそれぞれの外側に段差22を設けるようにすればよい。
【0042】
さらに上述した第1の実施の形態では、棚板16の外周に吊り耳12bを設けた。これに限らず、フレーム9の外周など、他の固定子構造体の外周に設けるようにしてもよい。例えば、フレーム9と棚板16とが一体に形成されていて、フレーム9の一端側の棚板16に相当する部分の外周に吊り耳12bを設けるなどしてもよい。第2の実施の形態についても同様に、吊り耳12cを、フレーム9の外周など、他の固定子構造体の外周に設けるようにしてもよい。
【0043】
さらに上述した第1の実施の形態では、吊り耳12bの根本部分の段差22の高さを、排気カバー10の厚さ以上にするとした。これに限らず、段差22の高さを、排気カバー10の厚さよりわずかに薄くするようにしてもよい。第2の実施の形態についても同様に、段差22の高さを、排気カバー10の厚さよりわずかに薄くするようにしてもよい。
【0044】
さらに上述した第1及び第2の実施の形態では、同期機発電機の構成を有する回転電機に本発明を適用した。これに限らず、排気カバー及び吊り耳を有する構成の回転電機であれば、上述した第1及び第2の実施の形態の構成とは異なる構成の回転電機に本発明を適用してもよい。
【0045】
さらに本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した第1及び第2の実施の形態と他の実施の形態の一部または全部を任意に組み合わせた実施の形態や、一部を抽出した実施の形態にもその適用範囲が及ぶものである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、排気カバー及び吊り耳を有する同期機発電機等の回転電機で広く利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1……固定子鉄心、2……押さえ板、3……固定子巻線、4……固定子、5……磁極、6……回転子巻線、7……シャフト、8……回転子、9……フレーム、10……排気カバー、11……冷却ファン、12a……吊り耳(従来)、12b……吊り耳(内側段差付)12c……吊り耳(外側段差付)13……吸気カバー、14……リブ、15……角部(吊り耳根本部分の角部)、16……棚板、17……角部(段差と棚板外周との間の角部)、18……原動機接続フランジ、19……上側排気カバー、20……下側排気カバー、21……切り欠き、22……段差、23……角部(段差の角部)、24……角部(切り欠きの角部)。