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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】燃料電池セル及び燃料電池セルスタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0258 20160101AFI20221205BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20221205BHJP
   H01M 8/0228 20160101ALI20221205BHJP
   H01M 8/0245 20160101ALI20221205BHJP
   H01M 8/026 20160101ALI20221205BHJP
   H01M 8/0265 20160101ALI20221205BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20221205BHJP
   H01M 8/0234 20160101ALN20221205BHJP
   H01M 8/0239 20160101ALN20221205BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20221205BHJP
   H01M 8/1004 20160101ALN20221205BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0206
H01M8/0228
H01M8/0245
H01M8/026
H01M8/0265
H01M8/2465
H01M8/0234
H01M8/0239
H01M8/10 101
H01M8/1004
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019031815
(22)【出願日】2019-02-25
(65)【公開番号】P2020136218
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】390032528
【氏名又は名称】株式会社エノモト
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】谷内 浩
(72)【発明者】
【氏名】那須 三紀
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 政廣
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-203560(JP,A)
【文献】特開2012-099382(JP,A)
【文献】特開2009-026476(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005300(WO,A1)
【文献】特開2013-020843(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072584(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードガス用セパレータと、膜電極接合体と、ガス拡散層と、アノードガス用セパレータとが積層されてなる燃料電池セルであって、
前記カソードガス用セパレータは、金属板と、導電性の多孔質体を有する燃料電池用ガス供給拡散層とを有し、
前記アノードガス用セパレータは、その一方の面に配置されアノードガスの流路を規定する第1凸部及び前記一方の面とは反対側の他方の面に配置され冷媒の流路を規定する第2凸部を有する流路規定板を有し、
前記膜電極接合体は、前記燃料電池用ガス供給拡散層と前記ガス拡散層との間に配置されていることを特徴とする燃料電池セル。
【請求項2】
前記流路規定板は、金属材料からなり、
前記第1凸部の裏側には、前記冷媒の流路となる第1凹部が存在し、
前記第2凸部の裏側には、前記アノードガスの流路となる第2凹部が存在することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池セル。
【請求項3】
前記カソードガス用セパレータと前記膜電極接合体との間及び前記ガス拡散層と前記膜電極接合体との間のうち少なくとも一方には、マイクロポーラス層が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池セル。
【請求項4】
前記燃料電池用ガス供給拡散層は、カソードガスを流す複数のガス流路用溝をさらに有することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の燃料電池セル。
【請求項5】
前記複数のガス流路用溝は、前記燃料電池用ガス供給拡散層の一方の面において並列に、かつ、それぞれが前記カソードガスの流入側から流出側に向かってジグザグ状又は波状に形成され、
平面的に見て、前記複数のガス流路用溝のうちそれぞれのガス流路用溝が外接する複数の矩形領域Rのうち、一のガス流路用溝が外接する第1矩形領域R1と、前記一のガス流路用溝に隣接するガス流路用溝が外接する第2矩形領域R2とがその接する領域に沿って重なっており、かつ、前記第1矩形領域R1と前記第2矩形領域R2とが重なる重なり領域R3が、前記複数のガス流路用溝の断面形状を問わず前記複数のガス流路用溝のどの深さ位置においても存在することを特徴とする請求項4に記載の燃料電池セル。
【請求項6】
前記燃料電池用ガス供給拡散層には、前記複数のガス流路用溝と交差するように、前記カソードガスの流入側から流出側に向かう方向に直交する幅方向全体にわたって、1又は複数のガス圧均等化用溝が形成され、
前記のガス圧均等化用溝によって分割された前記重なり領域を「分割重なり領域R4」と定義したとき、前記分割重なり領域R4は、前記複数のガス流路用溝の断面形状を問わず前記複数のガス流路用溝のどの深さ位置においても存在することを特徴とする請求項5に記載の燃料電池セル。
【請求項7】
前記ガス流路用溝の流入側端部の幅W1と、前記ガス流路用溝の流出側端部の幅W2とは、「W2<W1」の関係を満たすことを特徴とする請求項5又は6に記載の燃料電池セル。
【請求項8】
前記カソードガス用セパレータにおける前記燃料電池用ガス供給拡散層は、前記燃料電池用ガス供給拡散層の一方の面に分散して配置された複数の孤立穴をさらに有し、
前記孤立穴の各々は、互いに孤立して前記燃料電池用ガス供給拡散層に形成され、開口部を除く周囲が前記多孔質体に囲まれ、前記多孔質体の底を有する凹部からなることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の燃料電池セル。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の燃料電池セルが積層されてなり、
隣接する前記燃料電池セルの前記金属板と前記流路規定板とが前記第2凸部の頂上部で接していることを特徴とする燃料電池セルスタック。
【請求項10】
カソードガス用セパレータと、膜電極接合体と、ガス拡散層と、アノードガス用セパレータとが積層されてなる燃料電池セルであって、
前記カソードガス用セパレータは、平板状部位を備える第1の金属板と、導電性の多孔質体を有する燃料電池用ガス供給拡散層とを有し、
前記アノードガス用セパレータは、第2の金属板を有し、
前記第2の金属板は、その一方の面に第1凸部と、前記一方の面とは反対側の他方の面に第2凸部とが配置され、
前記第1凸部は、前記他方の面において冷媒の流路となる第1凹部を形成し、
前記第2凸部は、前記一方の面においてアノードガスの流路となる第2凹部を形成し、
前記膜電極接合体は、前記燃料電池用ガス供給拡散層と前記ガス拡散層との間に配置され、
前記燃料電池用ガス供給拡散層は、前記第1の金属板と前記膜電極接合体との間に配置され、
前記ガス拡散層は、前記第2の金属板と前記膜電極接合体との間に配置され、
前記第2の金属板の前記一方の面が前記ガス拡散層側に面していることを特徴とする燃料電池セル。
【請求項11】
請求項10に記載の燃料電池セルが積層されてなり、
隣接する前記燃料電池セルの前記第1の金属板と前記第2の金属板とが前記第2凸部の頂上部で接していることを特徴とする燃料電池セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池セル及び燃料電池セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)の技術分野において、例えば、特許文献1に示すように、燃料電池用ガス(アノードガス、カソードガス)を均一に供給及び拡散させることが可能な燃料電池セルスタックが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/072584号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池の技術分野においては、燃料電池の体積エネルギー密度の向上が求められており、それらを構成する部材を薄型化する技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の燃料電池セルは、カソードガス用セパレータと、膜電極接合体と、ガス拡散層と、アノードガス用セパレータとが積層されてなる燃料電池セルであって、前記カソードガス用セパレータは、金属板と、導電性の多孔質体を有する燃料電池用ガス供給拡散層とを有し、前記アノードガス用セパレータは、その一方の面に配置されアノードガスの流路を規定する第1凸部及び前記一方の面とは反対側の他方の面に配置され冷媒の流路を規定する第2凸部を有する流路規定板を有し、前記膜電極接合体は、前記燃料電池用ガス供給拡散層と前記ガス拡散層との間に配置されていることを特徴とする。
【0006】
あるいは、本発明の燃料電池セルは、カソードガス用セパレータと、膜電極接合体と、ガス拡散層と、アノードガス用セパレータとが積層されてなる燃料電池セルであって、前記カソードガス用セパレータは、平板状部位を備える第1の金属板と、導電性の多孔質体を有する燃料電池用ガス供給拡散層とを有し、前記アノードガス用セパレータは、第2の金属板を有し、前記第2の金属板は、その一方の面に第1凸部と、前記一方の面とは反対側の他方の面に第2凸部とが配置され、前記第1凸部は、前記他方の面において冷媒の流路となる第1凹部を形成し、前記第2凸部は、前記一方の面においてアノードガスの流路となる第2凹部を形成し、前記膜電極接合体は、前記燃料電池用ガス供給拡散層と前記ガス拡散層との間に配置され、前記燃料電池用ガス供給拡散層は、前記第1の金属板と前記膜電極接合体との間に配置され、前記ガス拡散層は、前記第2の金属板と前記膜電極接合体との間に配置され、前記第2の金属板の前記一方の面が前記ガス拡散層側に面していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の燃料電池セルによれば、アノードガス用セパレータは、その一方の面に配置されアノードガスの流路を規定する第1凸部及び一方の面とは反対側の他方の面に配置され冷媒の流路を規定する第2凸部を有する流路規定板を有するため、燃料電池セルにおいてアノードガス用の燃料電池用ガス供給拡散層及び冷媒用の冷媒供給拡散層が存在する場合と比較して、燃料セルスタックを構成する部材である燃料電池セルを薄型化することができる。その結果、本発明の燃料電池セルは、燃料電池セルスタックとしたときに上記従来の燃料電池セルスタックよりも薄型化できる燃料電池セルとなる。
【0008】
あるいは、本発明の燃料電池セルによれば、アノードガス用セパレータにおける第2の金属板は、その一方の面に第1凸部と、一方の面とは反対側の他方の面に第2凸部とが配置され、第1凸部は、他方の面において冷媒の流路となる第1凹部を形成し、第2凸部は、一方の面においてアノードガスの流路となる第2凹部を形成するように構成されるため、燃料電池セルにおいてアノードガス用の燃料電池用ガス供給拡散層及び冷媒用の冷媒供給拡散層が存在する場合と比較して、燃料セルスタックを構成する部材である燃料電池セルを薄型化することができる。その結果、本発明の燃料電池セルは、燃料電池セルスタックとしたときに上記従来の燃料電池セルスタックよりも薄型化できる燃料電池セルとなる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る燃料電池セルスタック20を模式的に示す正面図である。
図2】実施形態1に係る燃料電池セルスタック20を模式的に示す側面図である。
図3】実施形態1に係る燃料電池セル1について、アノードガス用セパレータ26側から見た平面図である。
図4図3のA1-A1断面図及び燃料電池セル1を積層した状態を示す断面図である。
図5】実施形態1におけるカソードガス用セパレータ24を金属板30の側から見た平面図である。
図6図5のA2-A2断面図である。
図7】実施形態1における膜電極接合体81を説明するために示す図である。
図8】実施形態2におけるカソードガス用セパレータ24aを金属板30の側から見た平面図である。
図9図8のA3-A3断面図である。
図10】ガス流路用溝55の平面構造を示す図である。
図11】ガス流路用溝55の平面構造及び断面構造を示す図である。
図12】異なる深さ位置におけるガス流路用溝55の平面構造を示す図である。
図13】第1矩形領域R1、第2矩形領域R2及び重なり領域R3の関係を示す図である。
図14】実施形態3におけるカソードガス用セパレータ24bを金属板30の側から見た平面図である。
図15】実施形態4におけるカソードガス用セパレータ24cを金属板30の側から見た平面図である。
図16】実施形態5におけるカソードガス用セパレータ24dを金属板30の側から見た平面図である。
図17図16のA5-A5断面図である。
図18】カソードガスの流れを説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の燃料電池セル及び燃料電池セルスタックを図に示す実施形態を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。各実施形態においては、基本的な構成および特徴が同じ構成要素については、各実施形態において同じ符号を使用し、説明を省略する場合がある。発明の構成要素を表示する図は模式図であり、実際の寸法や比率を必ずしも正確に表現したものではない。
【0011】
[実施形態1]
実施形態1に係る燃料電池セルスタック20(固体高分子形燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell))について、以下説明する。
【0012】
[燃料電池セルスタック]
まず、実施形態1に係る燃料電池セルスタック20について説明する。
図1に、実施形態1に係る燃料電池セルスタック20を模式的に示す正面図を示す。
図2に、実施形態1に係る燃料電池セルスタック20を模式的に示す側面図を示す。
【0013】
燃料電池セルスタック20は、燃料電池セル1(単セル)が複数積層され、隣接する燃料電池セル1の金属板30と流路規定板90とが後述する第2凸部94の頂上部で接するように構成される。
【0014】
積層された燃料電池セル1の両端部には、集電板27A,27Bが配設されている。
さらに集電板27A、27Bの外側には、絶縁シート28A,28Bを介してエンドプレート75,76が配置されている。燃料電池セル1の構成要素は、エンドプレート75、76によって両側から押圧されている。
【0015】
なお、図1及び図2においては、カソードガス用セパレータ24、膜電極接合体81、ガス拡散層88、アノードガス用セパレータ26、集電板27A,27B、絶縁シート28A,28B及びエンドプレート75,76は、分かりやすくするために離間させて表示している。実際にはこれらは、図示された配列の順に、相互に密に接合されている。接合の方法は特に限定されない。例えば、エンドプレート75,76により各部材を両側から押圧することのみによって接合してもよい。また、例えば、各部材の適宜の位置を接着剤により接着したうえでエンドプレート75,76により各部材を両側から押圧することにより接合してもよい。当然、その他の方法により接合してもよい。カソードガス用セパレータ24、膜電極接合体81、ガス拡散層88、アノードガス用セパレータ26、集電板27A,27B、絶縁シート28A,28B等は、例えば、厚さが百μm程度から十mm程度である。これらの構成要素は、本明細書の各実施形態1における各図において厚さを誇張して描かれている。
【0016】
アノード側のエンドプレート75の一端部にはアノードガス供給口71A、カソードガス排出口72B及び冷媒排出口73Bがそれぞれ設けられている(図2では、これらがまとめて破線で示されている。)。他方、カソード側のエンドプレート76の一端部(エンドプレート75の上記一端部とは反対側)には、アノードガス排出口71B、カソードガス供給口72A及び冷媒供給口73Aが設けられている(図2では、これらもまとめて破線で示されている。)。これらの各供給口、各排出口にはそれぞれ対応する流体の供給管、排出管が接続されることになる。
【0017】
カソードガス用セパレータ24及びアノードガス用セパレータ26には、それぞれ、アノードガス供給口71Aに連通するアノードガス流入口61A、カソードガス排出口72Bに連通するカソードガス(及び生成水)流出口62B、及び、冷媒排出口73Bに連通する冷媒流出口63Bが設けられている(後述。)。また、カソードガス用セパレータ24及びアノードガス用セパレータ26には、それぞれ、アノードガス排出口71Bに連通するアノードガス流出口61B、カソードガス供給口72Aに連通するカソードガス流入口62A、及び、冷媒供給口73Aに連通する冷媒流入口63Aが設けられている(後述。)。
【0018】
アノードガス供給口71A、カソードガス供給口72A及び冷媒供給口73Aを通じてカソードガス、アノードガス及び冷媒が供給される。実施形態1においては、アノードガスとして水素ガスを使用し、カソードガスとして空気を用い、冷媒として水を用いた場合を例示する。
【0019】
[燃料電池セル]
次に、実施形態1に係る燃料電池セル1について説明する。燃料電池セルは、燃料電池セルスタック20を構成する単位であり、燃料電池の基本構成物である。
図3に、実施形態1に係る燃料電池セル1について、アノードガス用セパレータ26側から見た平面図を示す。
図4(a)に、図3のA1-A1断面図を示す。図4(b)に、燃料電池セル1を積層した状態を示す断面図を示す。なお、図4(a)及び図4(b)においては、見た目をわかりやすくするため、金属板(第1の金属板)30及び流路規定板(第2の金属板)90には断面であることを示すハッチングを施し、膜電極接合体81の断面構造の図示は省略している。図4(b)においては、第1凹部93が冷媒の流路となることをわかりやすくするために、最上部に金属板30を表示している。図4(b)においては、カソードガスの流路となる場所(燃料電池用ガス供給拡散層42)にはCの符号を、アノードガスの流路となる場所(第2凹部95)にはAの符号を、冷媒の流路となる場所(第1凹部93)にはWの符号をそれぞれ表示している。
図5に、実施形態1におけるカソードガス用セパレータ24を金属板30の側から見た平面図を示す。なお、図5においては、金属板30の図示は省略している。
図6に、図5のA2-A2断面図を示す。なお、図6においては、カソードガス用セパレータ24と膜電極接合体81との位置関係を示すために、膜電極接合体81が接合された状態のカソードガス用セパレータ24を示している。図6では、膜電極接合体81の断面構造は省略している。
【0020】
実施形態1における燃料電池セル1は、図1図6に示すように、カソードガス用セパレータ24と、膜電極接合体81と、ガス拡散層88と、アノードガス用セパレータ26とが積層されてなる。
ここで、カソードガス用セパレータ24は、金属板30と、導電性の多孔質体40を有する燃料電池用ガス供給拡散層42とを有し、アノードガス用セパレータ26は、その一方の面に配置されアノードガスの流路を規定する第1凸部92及び一方の面とは反対側の他方の面に配置され冷媒の流路を規定する第2凸部94を有する流路規定板90を有する。膜電極接合体81は、燃料電池用ガス供給拡散層42とガス拡散層88との間に配置されるよう構成される。
また、流路規定板90は、アノードガスの流路を規定する第1凸部92が配置された一方の面がガス拡散層88の配置される側になる(ガス拡散層88側に面する)ように構成される。
以下、燃料電池セル1を構成する各部材の詳細を説明する。
【0021】
[カソードガス用セパレータ]
まず、カソードガス用セパレータ24について説明する。
カソードガス用セパレータ24は、図5及び図6に示すように、金属板30と、導電性の多孔質体40を有する燃料電池用ガス供給拡散層42とを有する。
【0022】
カソードガス用セパレータ24は、金属板30の一方の面(膜電極接合体81側の面)に燃料電池用ガス供給拡散層42が形成された構造を有する。金属板30は、インコネル、ニッケル、金、銀及び白金のうち一以上からなる金属、またはオーステナイト系ステンレス鋼板への金属のめっきもしくはクラッド材であることが好ましい。これらの金属を用いることにより、耐食性を向上できる。
なお、本明細書では、金属板30を「第1の金属板」とも称する。
【0023】
カソードガス用セパレータ24においては、金属板30の縦方向の一端部(図5の下部)に、図5の右、中央、左の順に、カソードガス流入口62Aと、冷媒流入口63Aと、アノードガス流出口61Bとが設けられている。また、他端部(図5の上部)に、図5の左、中央、右の順に、カソードガス流出口62Bと、冷媒流出口63Bと、アノードガス流入口61Aとが設けられている。
【0024】
各流入口61A,62A,63A、各流出口61B,62B,63B、及び、燃料電池用ガス供給拡散層42の形成領域のそれぞれの周囲は、電子導電性又は非電子導電性の緻密枠32によって囲まれている。カソードガス用セパレータ24における緻密枠32はカソードガスの漏洩を防ぐ。緻密枠32の外面には、各流入口61A,62A,63A、各流出口61B,62B,63B、及び、燃料電池用ガス供給拡散層42の形成領域を囲むように、緻密枠32に沿って溝が形成されている。この溝内にガスケット33(パッキン、Oリングなどのシール材)が配置されている。
【0025】
金属板30の両面には、上記の各流入口61A,62A,63A、及び、各流出口61B,62B,63Bが設けられている部分を除いて、その全面に電子導電性を有する耐食層(図示せず。)が形成されている。各流入口61A,62A,63A、及び、各流出口61B,62B,63Bの内周面に耐食層が形成されていてもよい。また、金属板30の側面及び端面に耐食層が形成されていてもよい。耐食層は、好ましくは緻密枠32と同じ組成の緻密層であり、金属板30の腐食を抑制する作用を有する。燃料電池セル1を組み合わせて燃料電池セルスタック20を構成する段階で、ガスケット33は接合される他の燃料電池用セパレータ、膜電極接合体81、集電板27A,27B等と密着して流体の漏洩を抑制する。
【0026】
実施形態1においては、金属板30は、少なくとも一部に金属板30の両面にわたって平坦な板状の平板状部位を備える。
カソードガス用セパレータ24においては、基板としての長方形の金属板30の一方の面における中央部に形成された平板状部位に、カソードガスを供給・拡散する燃料電池用ガス供給拡散層42が形成されている。
また、金属板30は、平板状の金属板に設けられた平板状部位に燃料電池用ガス供給拡散層42が形成されており、燃料電池用ガス供給拡散層42が形成されている部分以外の部分に、上記の各流入口61A,62A,63A、及び、各流出口61B,62B,63Bが設けられている。
なお、燃料電池用ガス供給拡散層42には、カソードガスの流入側から流出側に向かう方向に直交する幅方向全体にわたって、1又は複数のガス圧均等化用溝(後述する図14参照。)が形成されていてもよい。
【0027】
カソードガスとしての空気(酸素ガス及び窒素ガス)は、導電性の多孔質体40内を拡散する。多孔質体40は、導電材(好ましくは炭素系導電材)と高分子樹脂の混合物を含む。高分子樹脂に炭素系導電材を混合することにより、高分子樹脂に高い導電性を付与することができ、また高分子樹脂の結着性により炭素材の成型性を向上させることができる。燃料電池用ガス供給拡散層42の流体抵抗は、多孔質体40の気孔率と流体の流れる面の面積に依存する。気孔率が大きくなれば流体抵抗は小さくなる。流体が流れる面積が大きくなれば流体抵抗は小さくなる。およその目安としては、多孔質体40における気孔率は、50~85%程度であることが好ましい。
【0028】
炭素系導電材の含有率を調整することにより、多孔質体40の気孔率を調整することができ、ひいては、燃料電池用ガス供給拡散層42内の移動抵抗を調整することができる。特に炭素系導電材の含有率を高くすると移動抵抗が小さくなる(気孔率が大きくなる)。逆に、炭素系導電材の含有率を低くすると移動抵抗が大きくなる(気孔率が小さくなる)。耐食層及び緻密枠32も炭素系導電材と高分子樹脂の混合物であり、炭素系導電材の適度な含有率により、導電性を確保しつつ緻密化したものであることが好ましい。
【0029】
炭素系導電材としては特に限定されないが、例えば黒鉛、カーボンブラック、ダイヤモンド被覆カーボンブラック、炭化ケイ素、炭化チタン、カーボン繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができる。高分子樹脂としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。高分子樹脂の例としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ゴム系樹脂、フラン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂等が挙げられる。
【0030】
カソードガス流入口62Aと多孔質体40が形成されている領域との間には流入通路57が形成されている。カソードガス流出口62Bと多孔質体40が形成されている領域との間には流出通路58が形成されている。これらの流入通路57及び流出通路58は膜電極接合体81又はそのフレームを支持するためのものである。したがって、カソードガスを円滑に流し、かつ膜電極接合体81をサポートできる構造であればよい。例えば、気孔率のきわめて大きい多孔質層でもよいし、多数の支柱を配列した構造でもよい。
燃料電池用ガス供給拡散層42における流入通路57と面する領域には金属板30の幅方向に沿って細長いガス流入側溝51が形成されている。また、燃料電池用ガス供給拡散層42における流出通路58と面する領域にも金属板30の幅方向に沿って細長いガス流出側溝52が形成されている。但し、ガス流入側溝51及びガス流出側溝52は、これらを省略することもできる。
【0031】
燃料電池用ガス供給拡散層42、流入通路57、及び流出通路58は、緻密枠32と同じ高さ(厚さ)に形成されている。
【0032】
実施形態1における燃料電池用ガス供給拡散層42の横幅は、これを輸送機器用の燃料電池に用いる場合には、輸送機器の種類・大きさにもよるが、例えば30mm~300mm程度である。燃料電池用ガス供給拡散層42の厚さは、例えば150~400μm程度である。実施形態1に係る燃料電池用ガス供給拡散層42を輸送機器以外の用途(例えば定置用)の燃料電池に用いる場合には、上記のサイズに限定されるものではなく、必要とされる性能などに応じて適宜のサイズのものを用いることができる。上記のサイズについては、後述する各実施形態においても同様である。
【0033】
燃料電池セルスタック20を運転すると、アノードガス(水素ガス)を導入する燃料極ではプロトン(H)が生成する。プロトンは、アノードガス用セパレータ26から膜電極接合体81中を拡散して酸素極側に移動し、酸素と反応して水が生成する。生成した水は、酸素極側から排出される。
【0034】
空気は、燃料電池用ガス供給拡散層42内を平面方向に拡散しながら厚さ方向にも拡散し、燃料電池用ガス供給拡散層42に接して設けられた膜電極接合体81に供給され、発電反応に寄与する。発電に使用されなかったガス(未使用の酸素ガス及び窒素ガス)及び発電時に生成した水(水蒸気又は凝縮水)は多孔質体40、ガス流出側溝52を介して流出通路58に流出する。流出通路58に流出した酸素ガス、窒素ガス及び水は、最終的に流出通路58からカソードガス流出口62B及びカソードガス排出口72Bを通って排出されていく。このとき、燃料電池用ガス供給拡散層42の構造上、全ての水は排出されず、一部が燃料電池用ガス供給拡散層42の多孔質体40内に留まる。
【0035】
[カソードガス用セパレータ24の製造方法]
一例として、耐食層、緻密枠32、燃料電池用ガス供給拡散層42等は等方圧加圧により形成する。たとえば熱硬化性樹脂を用いる場合(熱可塑性樹脂でもよい)、炭素系導電材粉末(及び、状況に応じて炭素繊維)、樹脂粉末及び揮発性溶剤を混錬してペースト状にする。このペーストには、耐食層、及び緻密枠用のもの、流体供給拡散層用のもの等、多数種類を用意しておく。そして、金属板30上に、耐食層、緻密枠32のパターン、燃料電池用ガス供給拡散層42のパターン等を順次プリント、スタンプ、絞り出し等により形成する。各パターンの形成ごとに溶剤を揮発させる。上記のすべてのパターンが形成された金属板30の全体を軟質の薄いゴムバックに入れ、真空に脱気した後、ゴムバックを耐圧容器に入れ、加熱流体を容器内に導入して、加熱流体で等方圧加圧して樹脂を硬化させる。緻密枠32、燃料電池用ガス供給拡散層42の高さ(厚さ)を最終的に同じ高さ(厚さ)にするために、樹脂硬化の際の収縮の程度に応じて、これらの各枠、壁、層等の高さ(厚さ)をパターン作製時に調整しておくことが好ましい。
【0036】
一方で、金属板30上に耐食層を形成しておき、他方で緻密枠32、燃料電池用ガス供給拡散層42を形成し、最後にこれらを熱圧着して製造することもできる。このとき緻密枠32は金属板30上の耐食層と同時に作成してもよい。第1段階で金属板30上に耐食層と緻密枠32とを作成し、この後第2段階で燃料電池用ガス供給拡散層42のペーストを金属板30の耐食層上に順次印刷し、乾燥させた後、ロールプレス(ホットプレス)で硬化させて製造することもできる。
【0037】
または、次のような製造方法を用いることもできる。カーボンファイバー(CF)、少量の黒煙微粒子(GCB)及び結着剤となる熱可塑性もしくは熱硬化性又は繊維状物を形成する樹脂を混錬してシート状に形成し、硬化する前のグリーンシート状態のときに、流入通路57、流出通路58、ガス流入側溝51及びガス流出側溝52に対応する形状の突起を有するスタンプ型をシートに押し当てて、流入通路57、流出通路58、ガス流入側溝51及びガス流出側溝52を形成する。最後にグリーンシートを熱処理し、これを耐食層が形成された金属板30に接着する。
【0038】
燃料電池用ガス供給拡散層42の移動抵抗(又は流体抵抗)は、多孔質体40の気孔率と流体の流れる方向に直交する面の面積(各層の高さ(厚さ)と幅)に依存する。気孔率が大きくなれば移動抵抗は小さくなる。流体が流れる面積が大きくなれば移動抵抗は小さくなる(単位面積当りの移動抵抗は一定である)。おおよその目安としては、燃料電池用ガス供給拡散層の気孔率は、多孔質体40については30~85%程度である。気孔率Pは、測定が容易な、P=(多孔質体層中の気孔の体積)/(多孔質体層の体積)で定められる。ここで、気孔は外部に通じていない気孔を含む真の気孔である。
【0039】
なお、上記した製造方法は、後述する各実施形態に係るカソード用セパレータ(ガス流路用溝、ガス圧均等化用溝、孤立穴等を有する燃料電池用ガス供給拡散層を有するカソード用セパレータ)を製造する際にも、燃料電池用ガス供給拡散層又はその前駆体の形状を各実施形態に係るカソード用セパレータにおける燃料電池用ガス供給拡散層の形状に対応する形状とすることで、適用することができる。
【0040】
[膜電極接合体]
次に、膜電極接合体81について説明する。
図7に、実施形態1における膜電極接合体81を説明するための図を示す。ここで、図7(a)は膜電極接合体81の平面図を、図7(b)は膜電極接合体81の正面図を、図7(c)は膜電極接合体81の側面図をそれぞれ示している。
【0041】
膜電極接合体81は、図1図2及び図4に示すように、燃料電池用ガス供給拡散層42とガス拡散層88との間に配置されている。
膜電極接合体81は、図7に示すように、電解質膜(PEM)82と、電解質膜82の両面にそれぞれ配置された触媒層(CL)85と、各触媒層85の外側の面に配置されたマイクロポーラス層(MPL)83とを有する。
【0042】
実施形態1においては、電解質膜82とその両側に配置された触媒層85から構成されるものを触媒コート電解質膜(Catalyst Coated Membrame:CCM)という。
実施形態1においては、図7に示すように、カソードガス用セパレータ24と膜電極接合体81との間及びガス拡散層88と膜電極接合体81との間の両方にマイクロポーラス層83が配置されている。マイクロポーラス層83はカソードガス用セパレータ24の燃料電池用ガス供給拡散層42よりも微細な径の気孔(細孔)を有する。
【0043】
なお、マイクロポーラス層83は、カソードガス用セパレータ24と膜電極接合体81との間及びガス拡散層88と膜電極接合体81との間のうち一方に配置されていてもよい。また、マイクロポーラス層83は、省略することもできる。
【0044】
[ガス拡散層]
次に、ガス拡散層88について説明する。
ガス拡散層88は、図1図2及び図4に示すように、膜電極接合体81とアノードガス用セパレータ26との間に配置されている。
ガス拡散層88は、アノードガスを拡散・供給を行うための多孔質体である。ガス拡散層88は、例えば、カーボンペーパーからなる。また、ガス拡散層88は、カーボンクロス、カーボンフェルト又は多孔質金属材料からなるものであってもよい。
【0045】
[アノードガス用セパレータ]
次に、アノードガス用セパレータ26について説明する。
アノードガス用セパレータ26は、図3及び図4に示すように、その一方の面に配置されアノードガスの流路を規定する第1凸部92及び一方の面とは反対側の他方の面に配置され冷媒の流路を規定する第2凸部94を有する流路規定板90を有する。
流路規定板90は、複数の第1凸部92及び複数の第2凸部94を有する。
「流路を規定する」とは、流体の流れを遮って流路を形成することをいう。第1凸部92及び第2凸部94は、流体の流れを遮断する壁であるということもできる。
【0046】
実施形態1における流路規定板90は、例えば、波板状の形状からなる部分を有する金属板である。
なお、本明細書では、波板状の形状からなる部分を有する金属板である流路規定板90について「第2の金属板」とも称する。
第1凸部92の裏側には、冷媒の流路となる第1凹部93が存在する。
第2凸部94の裏側には、アノードガスの流路となる第2凹部95が存在する。
なお、図3においては、第1凸部92及び第2凸部94の高さ及び幅は誇張して表示している。実際には第1凸部92及び第2凸部94の間隔はもっと狭くてもよいし、数も多くてもよい。
【0047】
あるいは、流路規定板90は、その一方の面に第1凸部92と、この一方の面とは反対側の他方の面に第2凸部94とが配置され、第1凸部92は、他方の面において冷媒の流路となる第1凹部93を形成し、第2凸部94は、一方の面においてアノードガスの流路となる第2凹部95を形成するように構成される。
したがって、アノードガスの流路となる第2凹部95の流路を横断する図3のA1-A1断面においては、流路規定板90は、波板状の形状となる(図4参照。)。
【0048】
実施形態1においては第1凸部92により規定されるアノードガスの流路及び第2凸部94により規定される冷媒の流路は、直線状である(図3参照。)。本発明においては、それぞれの凸部により規定される流路の形状は直線状に限られず、屈曲していたり曲がりくねっていたりしてもよい。
【0049】
実施形態1においては第1凸部92により規定されるアノードガスの流路及び第2凸部94により規定される冷媒の流路は、断面視したときに略台形形状となる(図4参照。)。本発明においては、凸部により規定される流路は、断面視したときに台形以外の多角形形状となっていてもよいし、曲線を含む形状となっていてもよい。
【0050】
実施形態1における燃料電池セル1は、図1及び図2に示すように、燃料電池セルスタック20として用いることが前提となっている。燃料電池セル1においては冷媒の流路となる第1凹部93は解放されているが、燃料電池セル1を積層して燃料電池セルスタック20としたときには、第2凸部94の頂上部が他の燃料電池セル1の金属板30(最上部においては集電板27A)と接触する(図4(b)参照。)。このため、実際の使用時には第1凹部93は閉じた流路となる。
【0051】
アノードガス用セパレータ26は、その周囲に、端部が第2凸部94と同じ高さとなるように形成されているスペーサー91を備える。スペーサー91は、アノードガス用セパレータ26における冷媒の漏洩を防ぐ。
なお、スペーサー91は、第1凸部92及び第2凸部94のうち流路規定板90の端部から見て凸になっている側に配置されている。実施形態1においては第2凸部94側が流路規定板90の端部から見て凸になっている。第1凸部92側が流路規定板90の端部から見て凸になっている場合には、第1凸部92が凸となっている側にスペーサー91が配置される。
スペーサー91は、金属板30と一体となっていてもよいし、別体であってもよい。スペーサー91の代わりに、第2凸部94と同じ高さとなるように調整された凸部を有していてもよい。
【0052】
金属板である流路規定板90を構成する金属材料は、インコネル、ニッケル、金、銀及び白金のうち一以上からなる金属、またはオーステナイト系ステンレス鋼板への金属のめっきもしくはクラッド材であることが好ましい。これらの金属を用いることにより、耐食性を向上できる。また、流路規定板90は、燃料電池セルスタック20としたときに金属板30と接触することから、流路規定板90を構成する金属材料は、金属板30を構成する金属材料と同じものを用いることが好ましい。
実施形態1における流路規定板90は、例えば、プレス加工により形成することができる。
【0053】
流路規定板90は、主に製造コストの問題から金属材料からなるものを用いることが好ましいが、金属材料以外の材料、例えば、炭素系材料又は炭素系材料と樹脂との混合材料からなるものであってもよい。
また、第1凸部92及び第2凸部94は、主に量産性及び製造コストの観点からプレス加工により形成することが好ましいが、プレス加工以外の形成方法、例えば、切削加工により形成してもよい。
【0054】
以下、実施形態1に係る燃料電池セル1及び燃料電池セルスタック20の効果について説明する。
【0055】
実施形態1に係る燃料電池セル1によれば、アノードガス用セパレータ26は、その一方の面に配置されアノードガスの流路を規定する第1凸部92及び一方の面とは反対側の他方の面に配置され冷媒の流路を規定する第2凸部94を有する流路規定板90を有するため、燃料電池セル1においてアノードガス用の燃料電池用ガス供給拡散層及び冷媒用の冷媒供給拡散層が存在する場合と比較して、燃料電池セルを薄型化することができる。その結果、実施形態1に係る燃料電池セル1は、燃料電池セルスタック20としたときに上記従来の燃料電池セルスタックよりも薄型化できる燃料電池セルとなる。
【0056】
なお、本発明における燃料電池セルには、従来の燃料電池セルのセパレータにおける燃料電池用ガス供給拡散層及び冷媒供給拡散層に相当する部材が存在しないことになる。しかしながら、本発明の発明者らの鋭意研究の結果、アノードガス用セパレータに燃料電池用ガス供給拡散層及び冷媒供給拡散層が存在しない燃料電池セルであっても、主に以下の(1)~(4)の理由により、高い発電効率を保つことができることが判明した。
【0057】
(1)カソードガス用セパレータにおける燃料電池用ガス供給拡散層には、発電時に膜電極接合体で生成した水蒸気又は凝縮水を内部に分散させることで、水蒸気又は凝縮水を効率良く排出させることができるという効果がある。一方、アノードガス用セパレータには排水性は求められないので、この観点からはアノードガス用セパレータに燃料電池用ガス供給拡散層が存在しなくても影響はない。
【0058】
(2)冷媒の流量を増加させる等の簡単な手段により、冷媒供給拡散層が存在する場合と同等の冷却能力を担保することは容易である。なお、本発明の燃料電池セルスタックは、従来の燃料電池セルスタックよりも薄型になるにもかかわらず、1つの燃料電池セルごとに冷媒流路が存在することになる(図1図2及び図4参照。)。このため、当該観点からも冷却能力を担保することは容易である。
【0059】
(3)アノードガスとしては通常、水素が用いられる。水素は分子量が小さいために拡散性が高く、燃料電池用ガス供給拡散層が存在しない場合でも供給・拡散についての影響が少ない。
【0060】
(4)燃料電池セルを構成する部材が減ることにより、電気抵抗を低減できる。
【0061】
以上の(1)~(4)の理由により、燃料電池セルに燃料電池用ガス供給拡散層及び冷媒供給拡散層が存在しない場合であっても高い発電効率を保つことができる。
【0062】
また、実施形態1に係る燃料電池セル1においては、カソードガス用セパレータ24そのものに多孔質体40を有する燃料電池用ガス供給拡散層42が形成されていることから、カソードガスを燃料電池用ガス供給拡散層42の全面にわたって均一に拡散できる。その結果、実施形態1に係る燃料電池セル1によれば、アノードガス側セパレータ及びカソードガス側セパレータの両方が流路規定板(波板状の金属板)である燃料電池セルと比較して、カソードガスを膜電極接合体81の全面にわたって均一に供給でき、燃料電池の発電効率を高くすることができる。
【0063】
また、実施形態1に係る燃料電池セル1によれば、第2の金属板である流路規定板90は、その一方の面に第1凸部92と、この一方の面とは反対側の他方の面に第2凸部94とが配置され、第1凸部92は、他方の面において冷媒の流路となる第1凹部93を形成し、第2凸部94は、一方の面においてアノードガスの流路となる第2凹部95を形成するように構成されるため、燃料電池セル1においてアノードガス用の燃料電池用ガス供給拡散層及び冷媒用の冷媒供給拡散層が存在する場合と比較して、燃料電池セルを薄型化することができる。その結果、実施形態1に係る燃料電池セル1は、燃料電池セルスタック20としたときに上記従来の燃料電池セルスタックよりも薄型化できる燃料電池セルとなる。
【0064】
燃料電池セルの薄型化について別の表現で表すと、以下のようになる。実施形態1に係る燃料電池セル1においては、アノードガス用セパレータ26としてアノードガスの流路を規定する第1凸部92及び冷媒の流路を規定する第2凸部94を有する流路規定板90を用いているため、冷媒を流通させるための構造(冷媒供給拡散層)を別途用意する必要がない。このため、実施形態1に係る燃料電池セル1は、従来の燃料電池セルスタックを構成する燃料電池セルよりも薄型化することができる。
【0065】
実施形態1に係る燃料電池セル1を薄型化できる別の要因として、以下の点を挙げることができる。従来の燃料電池セルスタックにおける燃料電池セルは、(1)カソードガス用セパレータ用の金属板、(2)カソードガス用ガス供給拡散層、(3)膜電極接合体、(4)アノードガス用ガス供給拡散層、(5)アノード用セパレータ用の金属板及び(6)冷媒用拡散層の6部品で構成されている。一方、実施形態1に係る燃料電池セル1は、実質的に、(1)金属板30、(2)燃料電池用ガス供給拡散層42(カソードガス用ガス供給拡散層)、(3)膜電極接合体、(4)ガス拡散層88(アノードガス用ガス供給拡散層)、(5)流路規定板90の5部品で構成されている。このように、実施形態1に係る燃料電池セル1は、従来の燃料電池セルスタックにおける燃料電池セルと比較して部品点数を少なくすることができ、その結果、薄型化することが可能となる。
【0066】
また、実施形態1に係る燃料電池セル1を、カソードガス側及びアノードガス側の両極に波板状の形状からなる部分を有する金属板を配置した燃料電池セルと比較した場合、実施形態1に係る燃料電池セル1においてはカソード側に燃料電池用ガス供給拡散層42を有するカソードガス用セパレータ24が配置されているため、アノード側の構造が双方同じであってもカソード側の構造を薄型化できる。この観点からも、燃料電池セル1は薄型化できることが確認できている。
【0067】
また、実施形態1に係る燃料電池セル1によれば、カソードガスの流路(燃料電池用ガス供給拡散層42)、アノードガスの流路(第2凹部95)及び冷媒の流路(第1凹部93)を有するため、従来の燃料電池セルのように多種類のセパレータ等を用いる必要がなく、構造を単純化することが可能となる。
【0068】
また、実施形態1に係る燃料電池セル1によれば、流路規定板90は、金属板からなり、第1凸部92の裏側には、冷媒の流路となる第1凹部93が存在し、第2凸部94の裏側には、アノードガスの流路となる第2凹部95が存在するため、アノードガス用セパレータ26をプレス加工により簡易に製造できるものとすることが可能となる。
【0069】
また、実施形態1に係る燃料電池セル1によれば、カソードガス用セパレータ24と膜電極接合体81との間及びガス拡散層88と膜電極接合体81との間のうち少なくとも一方には、マイクロポーラス層83が配置されているため、燃料電池セル1内の水分管理を行うことが可能となる。
【0070】
実施形態1に係る燃料電池セルスタック20は、実施形態1に係る燃料電池セル1が積層されてなり、隣接する燃料電池セル1の金属板30と流路規定板90とが第2凸部94の頂上部で接しており、実施形態1に係る燃料電池セル1を用いるため、従来の燃料電池セルスタックよりも薄型化できる燃料電池セルスタックとなる。
【0071】
上記特許文献1には、カソードガス側及びアノードガス側の両極に燃料電池用ガス供給拡散層を配置する構造の燃料電池セルスタックが記載されている。従来の燃料電池セルスタックは、両極に波板状の形状からなる部分を有する金属板を配置する燃料電池セルスタックよりも薄型化することが可能である。しかし、従来の燃料電池セルスタックは、燃料電池用ガス供給拡散層の他に冷媒を流通させるための構造(冷媒供給拡散層)が必要となる。実施形態1に係る燃料電池セルスタック20においては、アノードガス用セパレータ26としてアノードガスの流路を規定する第1凸部92及び冷媒の流路を規定する第2凸部94を有する流路規定板90を用いているため、冷媒供給拡散層を別途用意する必要がない。このため、実施形態1に係る燃料電池セルスタック20は、従来の燃料電池セルスタックよりも薄型化できる燃料セルスタックとなる。
【0072】
実施形態1に係る燃料電池セルスタック20を薄型化できる別の要因として、以下の点を挙げることができる。従来の燃料電池セルスタックにおいては、冷却まで含めて燃料電池セル単位で想定した場合、(1)カソードガス用セパレータ用の金属板、(2)カソードガス用ガス供給拡散層、(3)膜電極接合体、(4)アノードガス用ガス供給拡散層、(5)アノード用セパレータ用の金属板及び(6)冷媒用拡散層の6部品が必要となる。一方、実施形態1に係る燃料電池セルスタック20においては、燃料電池セル1は、実質的に、(1)金属板30、(2)燃料電池用ガス供給拡散層42(カソードガス用ガス供給拡散層)、(3)膜電極接合体、(4)ガス拡散層88(アノードガス用ガス供給拡散層)、(5)流路規定板90の5部品で構成されている。このように、実施形態1に係る燃料電池セルスタック20は、従来の燃料電池セルスタックと比較して部品点数を少なくすることができ、その結果、従来の燃料電池セルスタックよりも薄型化できる燃料電池セルスタックとなる。
【0073】
また、実施形態1に係る燃料電池セルスタック20を、カソードガス側及びアノードガス側の両極に波板状の形状からなる部分を有する金属板を用いる燃料電池セルスタックと比較した場合、実施形態1に係る燃料電池セルスタック20においてはカソード側に燃料電池用ガス供給拡散層42を有するカソードガス用セパレータ24を用いるため、アノード側の構造が双方同じであってもカソード側の構造を薄型化可能である。この観点からも、燃料電池セルスタック20は薄型化できることが確認できている。
【0074】
[実施形態2]
図8に、実施形態2におけるカソードガス用セパレータ24aを金属板30の側から見た平面図を示す。図8においては、カソードガス用セパレータ24aの流路パターンを分かり易く表すために、金属板30の図示は省略している。後述する図14図16においても同様である。
図9に、図8のA3-A3断面図を示す。図9においては、カソードガス用セパレータ24aと膜電極接合体81との位置関係を示すために、膜電極接合体81が接合された状態のカソードガス用セパレータ24aを示している。膜電極接合体81の断面構造は省略している。
図10に、ガス流路用溝55の平面構造を示す。
図11に、ガス流路用溝55の平面構造及び断面構造を示す。図11(a)は平面図であり、図11(b)は図11(a)のA4-A4断面図である。
図12に、異なる深さ位置におけるガス流路用溝55の平面構造を示す。図12(a)は深さ位置D1(多孔質体40(又はガス流路用溝55)の表面における深さ位置)におけるガス流路用溝55の平面構造を示し、図12(b)は深さ位置D2(ガス流路用溝55の深さの1/2の深さ位置)におけるガス流路用溝55の平面構造を示し、図12(c)は深さ位置D3(ガス流路用溝55の底における深さ位置)におけるガス流路用溝55の平面構造を示す。
図10及び図11において、符号55はガス流路用溝を示し、符号55Aはガス流路用溝55のうち一のガス流路用溝を示し、符号55Bは一のガス流路用溝55Aに隣接するガス流路用溝を示す。従って、一のガス流路用溝55Aは、ガス流路用溝55でもあることからガス流路用溝55(55A)と表記することもあり、一のガス流路用溝55Aに隣接するガス流路用溝55Bも、ガス流路用溝55でもあることからガス流路用溝55(55B)という符号を付すこともある。
また、図10中、太実線で囲まれた領域が第1矩形領域R1であり、その左右の太破線で囲まれた領域が第2矩形領域R2であり、第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とが重なった領域が重なり領域R3であり色を濃くして示している。また、符号Rは複数のガス流路用溝55のうちそれぞれのガス流路用溝が外接する矩形領域を示し、符号R1はそのうち一のガス流路用溝55Aが外接する第1矩形領域を示し、符号R2は一のガス流路用溝55Aに隣接するガス流路用溝55Bが外接する第2矩形領域を示し、符号R3は第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とが重なる重なり領域を示す。
図11及び図12においては、カソードガスの流れを図示している。図11(a)及び図12中、ガス流路用溝55内の矢印はガス流路用溝55に沿った流れであり、多孔質体40内に記した縦方向上向きの矢印はガス流路用溝55から多孔質体40(ガス拡散層)中に押し出されたカソードガスの流れ(伏流ガス流れ)である。また、図11(b)中、多孔質体40内に記した横方向及び下方向(膜電極接合体側に向かう方向)向きの矢印は、ガス流路用溝55から多孔質体40中に押し出されたカソードガスの流れを示す。
図13に、第1矩形領域R1、第2矩形領域R2及び重なり領域R3の関係を示す。
【0075】
実施形態2に係る燃料電池セルは、基本的には、実施形態1に係る燃料電池セル1と同様の構成を有するが、カソードガス用セパレータの構成が実施形態1に係る燃料電池セル1の場合と異なる。
以下、実施形態2に係る燃料電池セル(全体は図示せず。)について、実施形態1に係る燃料電池セル1との差異を中心に説明する。また、実施形態1で説明した事項については適宜説明を省略する。
【0076】
実施形態2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42aは、カソードガスを流す複数のガス流路用溝55をさらに有する。
さらに詳しく説明すると、実施形態2に係る燃料電池セルにおいては、図8に示すように、カソードガス用セパレータ24aにおける燃料電池用ガス供給拡散層42aは、燃料電池用ガス供給拡散層42aの一方の面において並列に、かつ、それぞれがカソードガスの流入側から流出側に向かってジグザグ状又は波状に形成された複数のガス流路用溝55をさらに有する。実施形態2に係る燃料電池セルにおいては、複数のガス流路用溝55はジグザグに形成されている。
そして、図10図12に示すように、平面的に見て、複数のガス流路用溝55のうちそれぞれのガス流路用溝55が外接する複数の矩形領域Rのうち、一のガス流路用溝55(55A)が外接する第1矩形領域R1と、一のガス流路用溝55(55A)に隣接するガス流路用溝55(55B)が外接する第2矩形領域R2とがその接する領域に沿って重なっており、かつ、第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とが重なる重なり領域R3が、複数のガス流路用溝55の断面形状を問わず複数のガス流路用溝55のどの深さ位置においても存在する。
以下、カソードガス用セパレータ24aについて説明する。
【0077】
実施形態2における燃料電池用ガス供給拡散層42aは、カソードガスの透過及び拡散が可能で、かつ、導電性を有するシート状の多孔質体40と、燃料電池用ガス供給拡散層42aの一方の面において並列に、かつ、それぞれがカソードガスの流入側から流出側に向かってジグザグ状又は波状に形成された複数のガス流路用溝55とを有する。多孔質体40は、ガス拡散層であるということもできる。
【0078】
そして、平面的に見て、複数のガス流路用溝55のうちそれぞれのガス流路用溝55が外接する複数の矩形領域Rのうち、一のガス流路用溝55が外接する第1矩形領域R1と、一のガス流路用溝に隣接するガス流路用溝が外接する第2矩形領域R2とがその接する領域に沿って重なっている(図10及び図13参照。)。また、第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とが重なる重なり領域R3が、複数のガス流路用溝55の断面形状を問わず複数のガス流路用溝55のどの深さ位置D1,D2,D3においても存在する(図11及び図12参照。)。
【0079】
なお、本明細書において、「矩形領域」とは、複数のガス流路用溝のうちそれぞれのガス流路用溝が外接する矩形領域Rであるが(図10及び11参照。)、多孔質体40に、複数のガス流路用溝と交差するように、カソードガスの流入側から流出側に向かう方向に直交する幅方向全体にわたって、1又は複数のガス圧均等化用溝が形成されている場合には(例えば、後述する図14参照。)、当該ガス圧均等化用溝によって分割された領域に形成されるそれぞれの矩形領域Rに関しても、その幅及び/又は長さの違いにかかわらず、本発明の矩形領域に含まれるものとする。また、本明細書において、「伏流領域」とは、矩形領域のうちガス流路用溝55を除いた領域のことをいい、当該伏流領域中、多くのガスは流出側に向かって最短距離の経路に沿って流れることとなる。
【0080】
また、本明細書において、「カソードガスの流入側から流出側に向かって」とは、「およそカソードガスの流れる方向に沿って」という意味であり、「カソードガスの流入側から流出側に向かう」方向は、燃料電池用ガス供給拡散層42a全体としてみた場合の燃料電池用ガス供給拡散層42a内のガスの流れの方向である。これは、実施形態2に係る燃料電池用ガス供給拡散層42aのように、カソードガス流入口62Aとカソードガス流出口62Bが金属板30の対角線上の位置に配設されている場合に、ガス流路は上記の対角線に沿って形成されている必要はなく、実施形態2のように、「カソードガスの流入側から流出側に向かう」方向は、「燃料電池用ガス供給拡散層42a全体としてみた場合の燃料電池用ガス供給拡散層42a内のカソードガスの流れの方向が、図8の紙面の下から上の縦方向に向かうような場合は」、図8のように、図8の紙面の下から上の縦方向に沿ってガス流路用溝は形成されていればよいし、また、それ以外の方向に沿って形成されていてもよい。
【0081】
ここで、ガス流入側溝51又はガス流出側溝52に挟まれた部分に形成され、かつ、多孔質体40端部、ガス流入側溝51、ガス流出側溝52のいずれか2つの隣り合う多孔質体40端部又は溝と連通するように(換言すると、複数溝(51,52)及び多孔質体40端部のいずれか2つの隣り合う多孔質体40端部又は溝(51,52)の間に形成され、これら隣り合う2つの多孔質体40端部又は溝(51,52)と連通するように)形成され、並列に配置された複数のガス流路用溝55の各々について、このガス流路用溝55が外接する矩形領域を矩形領域Rとしている。従って、上記のように「第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とがその接する領域に沿って重なる」ように構成する、すなわち、図13(a)に示すように、ガス流路用溝(矩形領域R)の配列ピッチL2と、矩形領域R(第1矩形領域R1及び第2矩形領域R2)の幅Lとを、L2<Lの関係を満たすようにすると、隣り合うジグザグ状のガス流路用溝55の一方の谷側に他方の山側が互いの流路が重ならない程度に突き出すような構成となる。なお、多孔質体40端部は多孔質体40の端の近傍を含むものとする。
【0082】
実施形態2における燃料電池用ガス供給拡散層42aにおいては、重なり領域R3の幅L1と、矩形領域R(第1矩形領域R1及び第2矩形領域R2)の幅Lとが、「L1≧0.1×L」の関係を満たすことが好ましく、「L1≧0.2×L」の関係を満たすことがより好ましく、「L1≧0.3×L」の関係を満たすことがさらに好ましい(図11参照。)。
【0083】
カソードガスとしての空気(酸素ガス及び窒素ガス)は、多孔質体40(ガス拡散層)内を拡散する。およその目安としては、多孔質体40の気孔率は、50~85%程度である。
多孔質体40の気孔率が上記のように構成されていることから、ガス流路用溝55の内表面を介して、ガス流路用溝55と多孔質体40との間のカソードガス、水蒸気、凝結水の流通が適切に行われるようになる結果、多量の燃料電池用ガスを膜電極接合体に対して均一に供給できるようになり、また、発電時に使用されなかったカソードガスや発電時に生成した水蒸気や凝結水をガス流路用溝55の外に効率よく排出することができるようになる。その結果、ガス流路用溝55の内表面に、金属、セラミックス、樹脂等からなるガス不透過層に微細なガス流通孔を多数開口したガス透過フィルターのようなものを形成する必要も無い。
【0084】
燃料電池用ガス供給拡散層42aにおける金属板30に対向する側の面には、空隙からなる複数のガス流路用溝55が設けられており、これら複数のガス流路用溝55と金属板30との隙間に複数のガス流路用溝55が形成されている。ガス流路用溝55は所定の間隙で複数形成されている。各ガス流路用溝55は、流入側においてはガス流入側溝51を介して流入通路57と連通し、流出側においてはガス流出側溝52を介して流出通路58と連通している。ガス流路用溝55の数及び構造は図示のものに限定されない。
【0085】
実施形態2における燃料電池用ガス供給拡散層42aは、これを輸送機器用の燃料電池に用いる場合には、輸送機器の種類・大きさにもよるが、ガス流路用溝55の幅Wは例えば0.3mm~2mm程度である。ガス流路用溝55の深さは例えば100~300μm程度であり、ガス流路用溝の底と多孔質体40の他方の面との距離(天井厚)は例えば100~300μm程度である。ガス流路用溝55は、図8に示すように、ジグザグ形状をなしている。すなわち、ガス流路用溝55は、直線部55aと、空気の流れる方向を変える角部55bとを有している。直線部55aの長さや、角部55bの角度は図示のものに限定されない。例えば、図8においては角部55bの角度はほぼ直角であるが、鋭角であってもよく、鈍角であってもよい。また、角部55bは、適宜の面取り処理や丸め処理が施されていてもよい。
また、ガス流路用溝55の流入側端部と流出側端部の形成角度のいずれもが、ガスの流入側から流出側に沿う方向(金属板30の縦長方向)に平行となる角度になっていてもよい。さらに、ガス流路用溝55の流入側端部と流出側端部が、端部に向かうにつれて広くなるようなテーパー状になっていてもよい。
【0086】
実施形態2における燃料電池用ガス供給拡散層42aにおいては、図8に示すように、各直線部55aの長さおよび各角部55bの形状はいずれも等しい。そして、上記したように、平面的に見て、複数のガス流路用溝55のうちそれぞれのガス流路用溝が外接する複数の矩形領域(長方形領域)Rを定義したとき、一のガス流路用溝55が外接する第1矩形領域R1と、一のガス流路用溝に隣接するガス流路用溝55が外接する第2矩形領域R2とがその接する領域に沿って重なっており(図10参照。)、かつ、第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とが重なる重なり領域R3が、複数のガス流路用溝55のどの深さ位置D1,D2,D3においても存在する(図11及び図12参照。)。
【0087】
燃料電池セルスタック20を運転すると、アノードガス(水素ガス)を導入する燃料極ではプロトン(H)が生成する。プロトンは、膜電極接合体81中を拡散して酸素極側に移動し、酸素と反応して水が生成する。生成した水は、酸素極側から排出される。このとき、実施形態2における燃料電池用ガス供給拡散層42aを備えるカソードガス用セパレータ24aにおいては、カソードガス流入口62Aから流入した空気は流入通路57及びガス流入側溝51を通って、ガス流路用溝55に流入する。ガス流入側溝51内に流入した空気の一部はガス流路用溝55内に入ってガス流路用溝55から多孔質体40内に入り、他の一部は多孔質体40の端面から直接に多孔質体40に入って、多孔質体40内を拡散していく。
【0088】
空気は、多孔質体40内を平面方向に拡散しながら厚さ方向にも拡散し、多孔質体40に接して設けられた膜電極接合体81に供給され、発電反応に寄与する。発電に使用されなかったガス(未使用の酸素ガス及び窒素ガス)及び発電時に生成した水(水蒸気又は凝縮水)は多孔質体40、ガス流路用溝55、ガス流出側溝52を介して流出通路58に流出する。流出通路58に流出した酸素ガス、窒素ガス及び水は、最終的に流出通路58からカソードガス流出口62B及びカソードガス排出口72Bを通って排出されていく。このとき、燃料電池用ガス供給拡散層42aの構造上、全ての水は排出されず、一部が多孔質体40内に留まる。
【0089】
実施形態2に係る燃料電池セルは、実施形態1に係る燃料電池セルが有する効果に加えて、以下の効果を有する。
【0090】
実施形態2に係る燃料電池セルによれば、燃料電池用ガス供給拡散層42aは、カソードガスを流す複数のガス流路用溝55を有することから、従来よりもカソードガスの移動抵抗が減少し、膜電極接合体81に対して従来よりも多量のカソードガスを供給できる。
【0091】
また、実施形態2に係る燃料電池セルによれば、複数のガス流路用溝55が燃料電池用ガス供給拡散層42aの一方の面に形成されていることから、燃料電池用ガス供給拡散層42aの他方の面に配設される膜電極接合体81に対するカソードガスの供給は必ず多孔質体40を介して行われるので、複数のガス流路が多孔質体40の一方の面から他方の面にかけて開口されている場合よりもカソードガスを膜電極接合体81に対して均一に供給できる。
また、実施形態2に係る燃料電池セルによれば、複数のガス流路用溝55が燃料電池用ガス供給拡散層42aの一方の面においてそれぞれがカソードガスの流入側から流出側に向かってジグザグ状又は波状に形成されていることから、ガス流路用溝55中のガス流れに限らず上流側流路と下流通路とを短絡して伏流するガス流れ(伏流ガス流れ)が形成されるため、多孔質体40に供給されるカソードガスの供給経路が面内に広く分散するようになり、複数のガス流路用溝がガスの流入側から流出側に向かって直線状に形成されている場合よりもカソードガスを膜電極接合体81に対して均一に供給できる。
【0092】
また、実施形態2に係る燃料電池セルによれば、複数のガス流路用溝55のうち一のガス流路用溝55Aが外接する第1矩形領域R1においては、当該一のガス流路用溝55A中を流れるカソードガスの一部が多孔質体40に入り込んでいわゆる伏流領域が第1矩形領域R1中に形成され、また、上記の一のガス流路用溝55Aに隣接するガス流路用溝55B中を流れるカソードガスの一部が多孔質体40に入り込んでいわゆる伏流領域が第2矩形領域R2中に形成され、これらの第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とがその接する領域に沿って重なっていることから(図10及び図11参照。)、多孔質体40に供給されるカソードガスの供給経路が面内に隙間無く分散するようになるため、カソードガスを膜電極接合体81に対してより一層均一に供給できる。
【0093】
また、実施形態2に係る燃料電池セルによれば、第1矩形領域R1と第2矩形領域R2とが重なる重なり領域R3が、複数のガス流路用溝55のどの深さ位置D1,D2,D3においても存在することから(図11及び図12参照。)、多孔質体40に供給されるカソードガスの供給経路がガス流路用溝55のどの深さ位置D1,D2,D3においても面内に隙間無く分散するようになるため、カソードガスを膜電極接合体81に対してより一層均一に供給できる。
【0094】
その結果、実施形態2に係る燃料電池セルは、従来よりも多量のカソードガスを膜電極接合体81に対して均一に供給できるようになることから、従来よりも発電効率を高くできる燃料電池セルとなる。
【0095】
また、実施形態2に係る燃料電池セルは、燃料電池用ガス供給拡散層42aが上記のような特徴を有することから、発電に使用されなかったカソードガス(酸素ガス、窒素ガス)を、多孔質体40及びガス流路用溝55を介してガス流路用溝55外に効率良く排出できるようになるため、また、伏流領域においては伏流ガス流れに押し出される形で発電に使用されなかったカソードガス(酸素ガス、窒素ガス)をガス流路用溝55外に効率良く排出できるようになるため、従来よりもカソードガスの移動抵抗が低く保つこと、ひいては、反応ガス濃度を高く保つことが可能となり、従来よりも発電効率を高くできる、燃料電池セルとなる。
【0096】
また、実施形態2に係る燃料電池セルは、燃料電池用ガス供給拡散層42aが上記のような特徴を有することから、発電時に膜電極接合体81で生成した水蒸気又は凝縮水を、多孔質体40及びガス流路用溝55を介してガス流路用溝55外に効率良く排出できるようになるため、また、伏流領域においては伏流ガス流れに押し出される形で水蒸気又は凝縮水をガス流路用溝55外に効率良く排出できるようになるため、従来よりも排水性に優れた燃料電池セルとなる。
【0097】
また、実施形態2に係る燃料電池セルによれば、燃料電池用ガス供給拡散層42aにおいて、重なり領域R3の幅L1と、矩形領域の幅Lとが、「L1≧0.1×L」の関係を満たすことから、燃料電池用ガス供給拡散層42aに占める重なり領域R3の平面面積割合を大きくすることができ、カソードガスを膜電極接合体81に対してより一層均一に供給できる。
【0098】
[実施形態3]
図14は、実施形態3におけるカソードガス用セパレータ24bを金属板30の側から見た平面図である。図14において、符号R4は後述する「分割重なり領域」を示す。
実施形態3に係る燃料電池セル(全体は図示せず。)は、基本的には、実施形態2に係る燃料電池セルと同様の構成を有するが、カソードガス用セパレータにおいて、ガス流路用溝に加えてガス圧均等化用溝が形成されている点が実施形態2に係る燃料電池セルの場合と異なる。
すなわち、実施形態3におけるカソードガス用セパレータにおいては、図14に示すように、燃料電池用ガス供給拡散層42bには、複数のガス流路用溝55と交差するように、カソードガスの流入側から流出側に向かう方向に直交する幅方向全体にわたって、1本のガス圧均等化用溝56が形成されている。また、当該ガス圧均等化用溝56によって分割された重なり領域を「分割重なり領域R4」と定義したとき、分割重なり領域R4が、複数のガス流路用溝55のどの深さ位置においても存在する。
なお、ガス圧均等化用溝56は、複数本形成されていてもよい。
【0099】
実施形態3に係る燃料電池セルは、実施形態2に係る燃料電池セルが有する効果に加えて、以下の効果を有する。
すなわち、実施形態3に係る燃料電池セルによれば、燃料電池用ガス供給拡散層42bにおけるガス圧均等化用溝56の作用により、カソードガスの流入側から流出側に向かう方向に直交する幅方向全体にわたってカソードガスの供給量を均等にできる。また、分割重なり領域R4が、複数のガス流路用溝55のどの深さ位置においても存在することから、多孔質体40に供給されるカソードガスの供給経路が隙間無く分散するため、カソードガスを膜電極接合体81に対してより一層均一に供給できる。
【0100】
なお、実施形態3における燃料電池用ガス供給拡散層42bにおいては、ガス流路用溝55の深さと、ガス圧均等化用溝56の深さを等しくしている。このためガス流路用溝55とガス圧均等化用溝56とを同じ製造工程でかつ単純な構造の金型を用いて形成することが可能となることから、ガス圧均等化用溝56を形成することによる製造コストの上昇を抑制できるという効果をも有する。
【0101】
[実施形態4]
図15は、実施形態4におけるカソードガス用セパレータ24cを金属板30の側から見た平面図である。
実施形態4に係る燃料電池セル(全体は図示せず。)は、基本的には実施形態2に係る燃料電池セルと同様の構成を有するが、ガス流路用溝55の構成が実施形態2に係る燃料電池セルの場合と異なる。
すなわち、実施形態4における燃料電池用ガス供給拡散層42cにおいては、図15に示すように、ガス流路用溝55が、ガス流路用溝55の流入側端部の幅W1と、ガス流路用溝55の流出側端部の幅W2とが、「W2<W1」の関係を満たすような構成を有する。
実施形態4においては、ガス流路用溝55の幅Wは、ガスの流入側から流出側に向かって徐々に狭くなっている。
【0102】
なお、燃料電池用ガス供給拡散層42cには、カソードガスの流入側から流出側に向かう方向に直交する幅方向全体にわたって、1又は複数のガス圧均等化用溝が形成されていてもよい。
【0103】
実施形態4に係る燃料電池セルは、実施形態2に係る燃料電池セルが有する効果に加えて、以下の効果を有する。
すなわち、実施形態4に係る燃料電池用ガス供給拡散層42cによれば、ガス流路用溝55中のガス流の線速度が流出端部側で高くなることから、流路間の多孔質中のガスの伏流割合が高くなり、より一層多量のカソードガスを均等に多孔質体40に送り込むことが可能となり、流出側の領域においても、いわゆる伏流領域におけるカソードガス濃度の低下を抑制することができる。
また、反応生成物として生じ下流に向かって増加する水蒸気又は凝縮水を効果的に排出できる。
【0104】
[実施形態5]
図16は、実施形態5におけるカソードガス用セパレータ24dを金属板30の側から見た平面図である。
図17は、図16のA5-A5断面図である。図17においては、カソードガス用セパレータ24dと膜電極接合体81との位置関係を示すために、膜電極接合体81が接合された状態のカソードガス用セパレータ24dを示している。また、膜電極接合体81の断面構造は省略している。
図18は、カソードガスの流れを説明するために示す図である。図18(a)は図16のB部を拡大した平面図であり、図18(b)は図18(a)のC-C線に沿った断面図である。
【0105】
なお、カソードガス用セパレータ24dには符号155で示す孤立穴が複数形成されているが、図16においては図を見易くするために、一部の孤立穴にのみ符号を付して他の孤立穴に符号を付すのを省略する。また、図16図18においては、孤立穴を示す符号155の後に(551)~(553)のカッコ付きの符号を示す場合があるが、カッコ内の符号は、各孤立穴の相対位置関係に関する説明の便宜上示しており、特定の位置にある孤立穴を示すものではない。また、図18においては、矢印でカソードガスの流れを示すが、太い矢印で流入側から流出側に向かうカソードガスの全体的な流れを示し、細い矢印で孤立穴155から多孔質体40(ガス拡散部)中に押し出されたカソードガスの流れ(伏流ガス流れ)を示す。
【0106】
実施形態5に係る燃料電池セル(全体は図示せず。)は、基本的には、実施形態1に係る燃料電池セル1と同様の構成を有するが、カソードガス用セパレータの構成が実施形態1に係る燃料電池セル1の場合と異なる。
以下、実施形態5に係る燃料電池セル(全体は図示せず。)について、実施形態1に係る燃料電池セル1との差異を中心に説明する。また、実施形態1で説明した事項については適宜説明を省略する。
【0107】
カソードガス用セパレータ24dは、図16及び図17に示すように、金属板30の一方の面に燃料電池用ガス供給拡散層42dが形成された構造を有する。
【0108】
カソードガス用セパレータ24dは、図16及び図17に示すように、基板としての長方形の金属板30の一方の面における中央部に、上流側から下流側に向かってカソードガス(燃料電池用ガス)が流れてカソードガスを供給・拡散する燃料電池用ガス供給拡散層42dが形成されている。燃料電池用ガス供給拡散層42dは、使用時に上流側から下流側に向かってカソードガスが流れる燃料電池用ガス供給拡散層であって、カソードガスを透過、拡散し、導電性を有する多孔質体40を有する。また、燃料電池用ガス供給拡散層42dは、多孔質体40の一方の面に分散して配置された複数の孤立穴155も有する。孤立穴155の各々は、互いに孤立して燃料電池用ガス供給拡散層42dに形成され、開口部を除く周囲が多孔質体40(ガス拡散部)に囲まれ、多孔質体40の底を有する凹部からなる。また、燃料電池用ガス供給拡散層42dは、一方の面の流入側の隅部に位置するガス流入側溝51と一方の面の流出側の隅部に位置するガス流出側溝52とを有する(図16参照)。なお、燃料電池用ガス供給拡散層42dは、必要に応じて、カソードガスの流入側から流出側に向かう方向に直交する幅方向全体にわたって形成されているガス圧均等化用溝や、カソードガスの流入側又は流出側から中央部方向に向かって延びるバイパス用溝を有していてもよい。
【0109】
以降、上流側から下流側に向かう流れ方向(カソードガスの流入口62Aが設けられている側の辺からカソードガスの流出口62Bが設けられている辺に向かう方向,図16では符号Yの矢印の方向)をY方向とし、平面的にY方向に直交する幅方向(図16では符号Xの矢印の方向)をX方向として説明する。
【0110】
ガス流入側溝51は、平面的に見て、燃料電池用ガス供給拡散層42dの流入側の隅部において幅方向一杯に延びた細い矩形状の溝部分(段差部分)を有する。また、ガス流入側溝51は、孤立穴155に対応するように矩形状の溝部分(段差部分)からY方向流出側に分岐する複数の分岐溝部分(分岐段差部分)を有していてもよい。例えば、図16には、矩形状の溝部分(段差部分)から円形の孤立穴155を切り取った形状でY方向流出側に分岐する複数の分岐溝部分(分岐段差部分)が描かれている。ガス流入側溝51は、所定の深さで形成されている。
【0111】
ガス流出側溝52は、平面的に見て、燃料電池用ガス供給拡散層42dの流出側の隅部において幅方向一杯に延びた細い矩形状の溝部分(段差部分)を有する。また、ガス流出側溝52は、孤立穴155に対応するように矩形状の溝部分(段差部分)からY方向流入側に分岐する複数の分岐溝部分(分岐段差部分)を有していてもよい。例えば、図16には、矩形状の溝部分(段差部分)から円形の孤立穴155を切り取った形状でY方向流入側に分岐する複数の分岐溝部分(分岐段差部分)が描かれている。ガス流出側溝52は、ガス流入側溝51と同じ深さで形成されている。
【0112】
実施形態5における燃料電池用ガス供給拡散層42dにおいては、孤立穴155が、多孔質体40の一方の面の所望の範囲にわたって分散して配置されている。各孤立穴155は、所定の規則性を備えた形状が好ましく、各孤立穴155の重心位置が、所定の規則性を備えて燃料電池用ガス供給拡散層42dの一方の面に配置されていることが好ましい。ここで、所望の範囲とは、燃料電池用ガス供給拡散層42dの一方の面に形成された孤立穴のうち、外側の孤立穴155の重心位置を結んだ閉曲線に囲まれる範囲(図16では符号Raで示す二点鎖線に囲まれる範囲)である。所望の範囲は、燃料電池用ガス供給拡散層42dの一方の表面積の60%以上をカバーしていればよく、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上カバーしていればよい。所望の範囲は、燃料電池用ガス供給拡散層42dの一方の面の全面にわたって分散配置するようにしてもよい。また、孤立穴155が分散して配置されているというのは、X方向及びY方向に等ピッチで並んで配置されている場合だけを意味するものではなく、所望の範囲においてそれほど偏ることなく点在して配置されていることを意味する。
【0113】
孤立穴155は、所望の範囲の面積(燃料電池用ガス供給拡散層42dの一方の面に形成された孤立穴155のうち、外側の孤立穴155の重心位置を結んだ閉曲線に囲まれる範囲の平面的な投影範囲の面積)をS1とし、複数の孤立穴155の合計面積(複数の孤立穴155を構成する全ての孤立穴について、それぞれの孤立穴155の平面的な投影面積を合計した面積)をS2としたとき、「0.9×S1≧S2≧0.1×S1」の関係を満たすように配置されていることが好ましい。
【0114】
また、各孤立穴155は、全て同じ形状、大きさとしてもよいし、形状のみ同じにしてその大きさを変えてもよい。なお、少なくとも所望の範囲において、孤立穴155は、規則性をもたせて配置されていることが好ましい。
【0115】
また、孤立穴155の底の形状は、膜電極接合体81あるいは電解質膜82に対し平行に平坦でも、場所によってその深さが異なるようにしてもよい。
【0116】
各孤立穴155は、幅が変化している形状であってもよく、例えば平面的に見て円形、楕円、菱形、三角形などとしてもよい。各孤立穴155は、ガス流入側溝51及びガス流出側溝52と同じ深さ、且つ一定の深さで形成してもよい。各孤立穴155は、内表面に多孔質体40(ガス拡散部)が露出している。
このように、複数の孤立穴155が円形、楕円、菱形、三角形などのように幅が変化するような構成をとれば、カソードガスを二次元的に広げて供給することも可能となる。
【0117】
また、孤立穴155として、平面的に見て幅が一定の平面形状(例えば、長方形)である孤立穴を用いてもよい。このような構成とすることにより、特に燃料電池用ガス供給拡散層42d(多孔質体40)の平面形状が矩形の場合に、孤立穴155を燃料電池用ガス供給拡散層42d(多孔質体40)の一方の面の全体にわたって配置しやすくできる。
また、、孤立穴155として、途中で曲がっている孤立穴を用いてもよい。途中で曲がっている孤立穴155の形状としては、例えば、L字、U字、C字、円弧などの形状を挙げることができる。
さらに、孤立穴155は、下流側にいくに従って平面的に見た面積が段階的に小さくなるように形成されていてもよい。このような構成とすることにより、下流側にいくに従って減っていくカソードガスの流量に対応するようになるため、上流側と下流側とのカソードガスの濃度がより均一になり、カソードガスを効率よく拡散できる。
【0118】
孤立穴155は、複数の孤立穴155のうちの一の孤立穴155(551)と一の孤立穴155(551)の下流側に近接する孤立穴155(552,553)との位置関係に規則性をもたせて配置されていることが好ましい。孤立穴155は、図16に示すように、複数の孤立穴155のうちの一の孤立穴551から下流側に位置する孤立穴155のうち、一の孤立穴551からX方向に沿った距離が最も短い孤立穴155(すなわち孤立穴551の重心位置と近接する孤立穴155の重心位置とを結ぶベクトルのX方向成分の絶対値が最も小さい(当該絶対値がゼロの場合ももちろん含む)孤立穴155を第1近接孤立穴552とし、一の孤立穴551からX方向に沿った距離が二番目に短い孤立穴155(すなわち孤立穴551の重心位置と近接する孤立穴155の重心位置とを結ぶベクトルのX方向成分の絶対値が二番目に小さい孤立穴155)を第2近接孤立穴553としたとき、一の孤立穴551と第1近接孤立穴552との間の距離であって、一の孤立穴551の開口部と第1近接孤立穴552の開口部との間の最短距離である第1間隔L1aと、一の孤立穴551と第2近接孤立穴553との間の距離であって、一の孤立穴551の開口部と第2近接孤立穴553の開口部との間の最短距離である第2間隔L2aとは、図16に示すように、「L2a≦L1a」の関係を満たすようにするとよい。すなわち、一の孤立穴551には、Y方向に並ぶ(X方向に沿った距離が最も短い)第1近接孤立穴552と隣の列(両隣の列)に位置する第2近接孤立穴553とが近接しているが、カソードガスが一の孤立穴551から第2近接孤立穴553に移動する際に多孔質体40(ガス拡散部)を通過する距離は、一の孤立穴551から第1近接孤立穴552に移動する際に多孔質体40(ガス拡散部)を通過する距離よりも短くなるようにする。このようにすると、一の孤立穴551から押し出されたカソードガスは、第1近接孤立穴552よりも第2近接孤立穴553に向かって流れやすくなる。このため、一の孤立穴551から押し出されたカソードガスが、第1近接孤立穴552に向かうよりも第2近接孤立穴553に多く向かうことでより広く拡散するようになる。よって、カソードガスを多孔質体40全体にわたって均一に拡散させることができる。
【0119】
また、第1間隔L1aと第2間隔L2aとは、図16に示すように、さらに「L1a<2×L2a」の関係を満たすようにしてもよい。すなわち、一の孤立穴551と第2近接孤立穴553との間隔が第2近接孤立穴553と第1近接孤立穴552との間隔とを同じにして、カソードガスが一の孤立穴551から直接第1近接孤立穴552に移動する際に多孔質体40(ガス拡散部)を通過する距離を、一の孤立穴551から第2近接孤立穴553を経由して第1近接孤立穴552に移動する際に多孔質体40(ガス拡散部)を通過する距離よりも短くする。このようにすると、カソードガスが一の孤立穴551から直接第1近接孤立穴552に移動する際に多孔質体40(ガス拡散部)を通過する距離(第1間隔L1a)は、カソードガスが一の孤立穴551から第2近接孤立穴553を経由して第1近接孤立穴552に移動する際に多孔質体40(ガス拡散部)を通過する距離(2×第2間隔L2a)より短くなる。このため、一の孤立穴551から直接第1近接孤立穴552に向かうカソードガスの流れが極端に少なくなることはなく、多孔質体40全体にわたってバランス良くカソードガスを拡散させることができる。
【0120】
なお、「L2a≦L1a」の関係、及び、「L1a<2×L2a」の関係を満たす場合には、孤立穴間のX方向のピッチ及びY方向のピッチの値については、これらの、「L2a≦L1a」の関係、及び、「L1a<2×L2a」の関係を満たす範囲で、適宜設定すればよい。
【0121】
実施形態5に係る燃料電池セルにおける燃料電池用ガス供給拡散層42dにおいては、所望の範囲の面積(燃料電池用ガス供給拡散層42dの一方の面に形成された孤立穴155のうち、外側の孤立穴155の重心位置を結んだ閉曲線に囲まれる範囲の平面的な投影範囲の面積)S1と複数の孤立穴の合計面積S2とが「0.9×S1≧S2≧0.1×S1」の関係を満たすように配置されていることが好ましい理由は以下の通りである。
すなわち、上記のS2が上記のS1の10%以上である場合には、カソードガスが所望の範囲を流れる際の移動抵抗を十分に小さくできるため、膜電極接合体81に対して従来よりも多量のカソードガスを供給できるからである。また、S2がS1の90%以下である場合には、カソードガスが所望の範囲内を拡散しながら伏流する領域を最低限確保できるため、カソードガスを所望の範囲内において均一に拡散させやすくできるからである。なお、より多量のカソードガスを供給するという観点からは、多孔質体40(ガス拡散部)の面積S1と複数の孤立穴155の合計面積S2とは、「S2≧0.2×S1」の関係を満たすことがより好ましく、「S2≧0.3×S1」の関係を満たすことがより一層好ましい。また、所望の範囲内において拡散させるという観点からは、「0.8×S1≧S2」の関係を満たすことがより好ましく、「0.7×S1≧S2」の関係を満たすことがより一層好ましい。
【0122】
多孔質体40(ガス拡散部)は、導電性を有し、細かな空隙が形成されている。多孔質体40(ガス拡散部)は、平面的に見て略矩形状をしている。多孔質体40(ガス拡散部)は、気体や液体をこの空隙を通して伏流させるのに適した気孔率で形成されている。詳細は後述する。
【0123】
なお、実施形態5に係る燃料電池セルの説明において、「伏流」とは、ガス流入側溝51、各孤立穴155、ガス圧均等化用溝及びバイパス用溝等から多孔質体40中に押し出されたカソードガス(伏流ガス)の流れをいう。
図16のように、図16の紙面の下から上のY方向に沿って孤立穴155は整列されていればよいし、また、それ以外の方向に沿って整列されていてもよい。
【0124】
さらに、カソードガス用セパレータ24dに関して詳しく説明する。
およその目安としては、燃料電池用ガス供給拡散層42dにおいては、多孔質体40の気孔率は、50~85%程度である。
多孔質体40の気孔率が上記のように構成されていることから、孤立穴155の内表面を介して、孤立穴155と多孔質体40との間のカソードガス、水蒸気、凝結水の流通が適切に行われるようになる結果、多量のカソードガスを膜電極接合体81に対して均一に供給できるようになり、また、発電時に使用されなかったカソードガスや発電時に生成した水蒸気や凝結水を孤立穴155外に効率よく排出することができるようになる。その結果、燃料電池用ガス供給拡散層42dにおいては、孤立穴155は、孤立穴155の内表面に金属、セラミックス、樹脂等からなるガス不透過層に微細なガス流通孔を多数開口したガス透過フィルターのようなものを形成する必要が無く、内表面に多孔質体40が露出するよう構成されている。
【0125】
燃料電池用ガス供給拡散層42dにおける金属板30に対向する側の面には、空隙からなる複数の孤立穴155が設けられており、これら複数の孤立穴155と金属板30との隙間に複数のガス流路が形成されている。孤立穴155は前述したような配置で複数形成されている。各孤立穴155は、多孔質体40(ガス拡散部)を伏流して流入してきたカソードガスを、移動抵抗を減らして広げて再び多孔質体40(ガス拡散部)に流出させることで、強制伏流により拡散させる。孤立穴155の数及び構造は図示のものに限定されない。
【0126】
実施形態5における燃料電池用ガス供給拡散層42dは、これを輸送機器用の燃料電池に用いる場合には、輸送機器の種類・大きさにもよるが、燃料電池用ガス供給拡散層42dの横幅は例えば30mm~300mm程度である。孤立穴155の幅は例えば0.3mm~2mm程度である。多孔質体40の厚さは例えば150~400μm程度であり、孤立穴155の深さは例えば100~300μm程度であり、孤立穴155の底と多孔質体40の他方の面との距離(天井厚)は例えば100~300μm程度である。実施形態5における燃料電池用ガス供給拡散層42dを輸送機器以外の用途(例えば定置用)の燃料電池に用いる場合には、上記のサイズに限定されるものではなく、必要とされる性能などに応じて適宜のサイズのものを用いることができる。
【0127】
実施形態5に係る燃料電池スタックを運転すると、上記のような構造を有する燃料電池用ガス供給拡散層42dを有するカソードガス用セパレータ24dにおいては、カソードガス流入口62Aから流入した空気は流入通路57及びガス流入側溝51から多孔質体40(ガス拡散部)に入り、伏流した空気は、孤立穴155を経由することで移動抵抗が大きい多孔質体40内を通過する距離を減らせるため、孤立穴155間を渡り進むようにして流出側に向かう。孤立穴155に流入した空気は、孤立穴155内に広がり、孤立穴155の内表面から再び多孔質体40(ガス拡散部)に押し出されて強制伏流させられてさまざまな方向に拡散する。
【0128】
カソードガス(空気)が孤立穴155間を渡り進むようにして流出側に向かうことを図16及び図18(a)を参照してさらに詳しく説明すると、孤立穴155は空洞であり空気の移動抵抗が多孔質体40(ガス拡散部)よりも小さくなるため、空気は、多孔質体40(ガス拡散部)を通過するよりも孤立穴155を通過しようとする。このため、一の孤立穴551から多孔質体40(ガス拡散部)に平面方向に押し出された空気は、下流側に近接する第1近接孤立穴552又は第2近接孤立穴553に向かって伏流する。特に、第1間隔L1aと第2間隔L2aとが「L1a≦L2a」の関係を満たす場合には、一の孤立穴551から第2近接孤立穴553までの多孔質体40(ガス拡散部)を通過する距離(第2間隔L2a)が第1近接孤立穴552までの多孔質体40(ガス拡散部)を通過する距離(第1間隔L1a)と同じ又はより短くなり、一の孤立穴551から押し出されたカソードガスの多くは、X方向にずれて第2近接孤立穴553に向かって伏流する。第2近接孤立穴553に流入したカソードガスは、再び多孔質体40(ガス拡散部)に押し出され、同様にして、第2近接孤立穴553に隣接する孤立穴155に向けて伏流する。このような繰り返しにより、空気が孤立穴155間を渡り進むようにして流出側に向かう。
【0129】
また、第1間隔L1aと第2間隔L2aとが「L1a<2×L2a」の関係をさらに満たす場合には、一の孤立穴551から直接第1近接孤立穴552までの多孔質体40(ガス拡散部)を通過する距離(第1間隔L1a)が一の孤立穴551から第2近接孤立穴553を経由して第1近接孤立穴552までの多孔質体40(ガス拡散部)を通過する距離(2×第2間隔L2a)より短くなり、カソードガスの一部は、一の孤立穴551から直接第1近接孤立穴552に向かうルートで伏流する。
【0130】
また、図18(b)に示すように、カソードガスは、多孔質体40(ガス拡散部)内を平面方向に拡散しながら厚さ方向にも拡散し、多孔質体40(ガス拡散部)に接して設けられた膜電極接合体81に供給され、発電反応に寄与する。発電に使用されなかったガス(未使用の酸素ガス及び窒素ガス)及び発電時に生成した水(水蒸気又は凝縮水)は多孔質体40(ガス拡散部)、孤立穴155、ガス流出側溝52を介して流出通路58に流出する。流出通路58に流出した酸素ガス、窒素ガス及び水は、最終的に流出通路58からカソードガス流出口62B及びカソードガス排出口72Bを通って排出されていく。このとき、燃料電池用ガス供給拡散層42dの構造上、全ての水は排出されず、一部が多孔質体40(ガス拡散部)内に留まる。
【0131】
実施形態5に係る燃料電池セルは、実施形態1に係る燃料電池セルが有する効果に加えて、以下の効果を有する。
【0132】
実施形態5に係る燃料電池セルによれば、燃料電池用ガス供給拡散層42dにおいて複数の孤立穴155が燃料電池用ガス供給拡散層42dの一方の面に配置されていることから、カソードガスが孤立穴155を流れる際に多孔質体40(ガス拡散部)を伏流するよりも移動抵抗が小さくスムーズに流れるため、膜電極接合体81に対して従来よりも多量のカソードガスを供給できる。
【0133】
また、実施形態5に係る燃料電池セルによれば、燃料電池用ガス供給拡散層42dにおいて複数の孤立穴155が燃料電池用ガス供給拡散層42dの一方の面に形成されていることから、燃料電池用ガス供給拡散層42dの他方の面に配設される膜電極接合体81に対するカソードガスの供給は必ず多孔質体40を介して行われるため、複数のガス流路が燃料電池用ガス供給拡散層42dの一方の面から他方の面にかけて形成されている場合よりもカソードガスを膜電極接合体81に対して均一に供給できる。
【0134】
また、孤立穴155の周囲が多孔質体40で囲まれていることから、カソードガスは下流側の孤立穴155には必ず多孔質体40を通って進行するため、燃料電池用ガス供給拡散層42dにガス流路が流入側から流出側まで繋がるように形成されている場合よりも、カソードガスを多孔質体40全体にわたって均一に拡散させることができる。
【0135】
その結果、実施形態5に係る燃料電池セルは、多量のカソードガスを膜電極接合体81に対して均一に供給できるようになることから、燃料電池の発電効率を高くできる。
【0136】
また、実施形態5に係る燃料電池セルは、燃料電池用ガス供給拡散層42dが上記のような特徴を有することから、発電に使用されなかったカソードガス(酸素ガス、窒素ガス)を、多孔質体40(ガス拡散部)及び孤立穴155を介して効率良く燃料電池用ガス供給拡散層42d外に排出できるようになるため、従来よりもカソードガスの移動抵抗が低く、ひいては、反応ガス濃度を高く保つことになり、従来よりも燃料電池の発電効率を高くできる燃料電池セルとなる。
【0137】
また、実施形態5に係る燃料電池セルは、燃料電池用ガス供給拡散層42dが上記のような特徴を有することから、発電時に膜電極接合体81で生成した水蒸気または凝集水を、多孔質体40(ガス拡散部)及び孤立穴155を介して効率良く燃料電池用ガス供給拡散層42d外に排出できるようになるため、従来よりも排水性に優れた燃料電池セルとなる。
【0138】
実施形態5に係る燃料電池セルは、燃料電池用ガス供給拡散層42dが上記のような特徴を有することから、発電時に膜電極接合体で生成した水(水蒸気又は凝縮水)を、多孔質体40及び孤立穴155を介して孤立穴155外に効率良く排出できるようになる。また、伏流領域においては伏流ガス流れに押し出される形で水を孤立穴155外に効率良く排出できるようになる。
【0139】
また、実施形態5に係る燃料電池セルは、燃料電池用ガス供給拡散層42dが上記のような特徴を有することから、発電に使用されなかったカソードガスを、多孔質体40(ガス拡散部)及び孤立穴155を介して効率良く回収できるようになるため、従来よりも燃料電池の発電効率をより一層高くできる燃料電池セルとなる。さらにまた、燃料電池用ガス供給拡散層42dが上記のような特徴を有することから、発電時に膜電極接合体81で生成した水蒸気又は凝集水を、多孔質体40及び孤立穴155を介して効率良く回収できるようになるため、従来よりも排水性に優れた燃料電池セルとなる。
【0140】
実施形態5に係る燃料電池セルは、燃料電池用ガス供給拡散層42dが上記のような特徴を有することから、発電に使用されないカソードガスを多孔質体40及び孤立穴155を介して効率良く排出できるようになるため、従来よりもカソードガスの移動抵抗を低くでき、従来よりも燃料電池の発電効率をより一層高くできる、燃料電池セルとなる。
【0141】
実施形態5に係る燃料電池セルは、カソードガス用セパレータ24dが、金属板30と、金属板30の一方の面に配設された燃料電池用ガス供給拡散層42dとを備える燃料電池用セパレータであって、当該燃料電池用ガス供給拡散層42dは、複数の孤立穴155が金属板30側に位置するように金属板30に対して配置されており、孤立穴155と金属板30とでガス流路が構成されていることから、従来よりも燃料電池の発電効率を高くでき、さらには、従来よりも排水性に優れた、燃料電池セルとなる。
【0142】
以上、本発明を上記の各実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0143】
1…燃料電池セル、20…燃料電池セルスタック、24,24a,24b,24c,24d…カソードガス用セパレータ、26…アノードガス用セパレータ、27A,27B…集電板、28A,28B…絶縁シート、30…金属板、32…緻密枠、33…ガスケット、40…多孔質体、42,42a,42b,42c,42d…燃料電池用ガス供給拡散層、51…ガス流入側溝、52…ガス流出側溝、55,55A,55B…ガス流路用溝、55a…直線部、55b…角部、56…ガス圧均等化用溝、57…流入通路、58…流出通路、61A…アノードガス流入口、61B…アノードガス流出口、62A…カソードガス流入口、62B…カソードガス流出口、63A…冷媒流入口、63B…冷媒流出口、71A…アノードガス供給口、71B…アノードガス排出口、72A…カソードガス供給口、72B…カソードガス排出口、73A…冷媒供給口、73B…冷媒排出口、75,76…エンドプレート、81…膜電極接合体、82…電解質膜、83…マイクロポーラス層、85…触媒層、88…ガス拡散層、90…流路規定板、91…スペーサー、92…第1凸部、93…第1凹部、94…第2凸部、95…第2凹部、155…孤立穴、551…一の孤立穴、552…第1近接孤立穴、553…第2近接孤立穴、L…重なり領域の幅、L2…配列ピッチ、L1a…第1間隔、L2a…第2間隔、R…矩形領域、R1…第1矩形領域、R2…第2矩形領域、R3…重なり領域、R4…分割重なり領域、Ra…外側の孤立穴の重心位置を結んだ閉曲線に囲まれる範囲
図1
図2
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