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  • 特許-車両外装用吸音材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】車両外装用吸音材
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/08 20060101AFI20221205BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20221205BHJP
   B32B 5/22 20060101ALI20221205BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20221205BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
B60R13/08
D04H1/4374
B32B5/22
G10K11/16 110
G10K11/162
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019043588
(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公開番号】P2020147060
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】509069892
【氏名又は名称】株式会社HOWA
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 裕也
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-000897(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0139542(US,A1)
【文献】特開2002-348767(JP,A)
【文献】特開平02-258239(JP,A)
【文献】特開平11-132389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/08
D04H 1/4374
B32B 5/22
G10K 11/16
G10K 11/162
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外装用吸音材であって、
熱可塑性合成繊維を含んで交絡された面状の繊維ウェブである吸音層と、
前記吸音層の両面のそれぞれにおいて撥水加工を施した熱可塑性合成繊維を含む面状の不織布が積層される耐水カバー層とを有し、
前記耐水カバー層の周縁は、端縁から所定幅において厚み方向に熱プレスが施された第1熱圧着部と、前記第1熱圧着部よりも相対的に厚み方向に更に薄く熱圧着される溝状の第2熱圧着部と、を有する車両外装用吸音材。
【請求項2】
請求項1に記載の車両外装用吸音材であって、
前記第2熱圧着部は、前記耐水カバー層の周縁に沿って線状に且つ全周に亘って設けられている車両外装用吸音材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両外装用吸音材であって、
前記第2熱圧着部は、前記第1熱圧着部の幅内の中間に配設されている車両外装用吸音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両外装用吸音材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の外部から車内への騒音を吸収するための車両外装用吸音材が知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、車両外装用吸音材は、吸音層とこの吸音層の両面に耐水カバー層を有するものがある。ところで、車両外装用吸音材には、車両外装に配されるため飛水に晒されることが想定されるものとして、例えばボディーアンダーカバー、エンジンアンダーカバー、ホイールハウスプロテクタ、ドアに配設するものがある。これらの部位に係る車両外装用吸音材は、周縁を封止することで浸水対策が施される。係る封止は、車両外装用吸音材の周縁を厚み方向に熱プレスを施した熱圧着部が例示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-348767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両外装用吸音材の周縁の熱圧着部は、吸音層、耐水カバー層の目付けのバラつき、形状などによって熱プレスが不十分な部位が生じ得る。このような熱プレスが不十分な部位は、耐水カバー層の剥がれによる浸水の懸念がある。そのため、再度、周縁の熱プレス処理を施す必要があることから更なる改善が望まれている。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両外装用吸音材において、再度周縁の熱プレス処理を施すことなく、浸水対策の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両外装用吸音材の一つの特徴は、車両外装用吸音材であって、熱可塑性合成繊維を含んで交絡された面状の繊維ウェブである吸音層と、前記吸音層の両面のそれぞれにおいて撥水加工を施した熱可塑性合成繊維を含む面状の不織布が積層される耐水カバー層とを有し、前記耐水カバー層の周縁は、端縁から所定幅において厚み方向に熱プレスが施された第1熱圧着部と、前記第1熱圧着部よりも相対的に厚み方向に更に薄く熱圧着される溝状の第2熱圧着部と、を有する。
【0007】
上記構成の一つの特徴及び利点は、耐水カバー層の周縁は、端縁から所定幅において厚み方向に熱プレスが施された第1熱圧着部と、第1熱圧着部よりも相対的に厚み方向に更に薄く熱圧着される溝状の第2熱圧着部と、を有する。そのため、吸音層、耐水カバー層の目付けのバラつき、形状などがあっても、一度の熱プレス処理において熱プレスが不十分な部位が生じるのを抑制することができる。よって、車両外装用吸音材において、再度周縁の熱プレス処理を施すことなく、浸水対策の向上を図ることができる。
【0008】
上記車両外装用吸音材について、前記第2熱圧着部は、前記耐水カバー層の周縁に沿って線状に且つ全周に亘って設けられていることが好ましい。
【0009】
上記構成の一つの特徴及び利点は、第2熱圧着部は、耐水カバー層の周縁に沿って線状に且つ全周に亘って設けられている態様であるため、外周の何れの部位からの浸水も抑制することができるため、より一層浸水対策の向上を図ることができる。
【0010】
上記車両外装用吸音材について、前記第2熱圧着部は、前記第1熱圧着部の幅内の中間に配設されていることが好ましい。
【0011】
上記構成の一つの特徴及び利点は、第2熱圧着部が第1熱圧着部の幅内の中間に配設されていることにより、第2熱圧着部が途切れることを抑制出来るため、好適な車両外装用吸音材とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記各発明の手段をとることにより、車両外装用吸音材において、再度周縁の熱プレス処理を施すことなく、浸水対策の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る車両外装用吸音材を示した平面図である。
図2図1のII-II線断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について図1、2を用いて説明する。本実施形態では、エンジンアンダーカバーに被覆される車両外装用吸音材10を例示して説明する。本実施形態の車両外装用吸音材10は、吸音層20と、吸音層20の両面のそれぞれにおいて耐水カバー層30とが積層される。係る車両外装用吸音材10は、耐水カバー層30の周縁が厚み方向に熱プレスを施された熱圧着部40によって封止されている。
【0015】
吸音層20は、熱可塑性合成繊維を含んで交絡された面状の繊維ウェブである。吸音層20における熱可塑性合成繊維として、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリスチレン繊維、ポリエステル繊維等、及びそれらの混合物からなる群から選択することができる。吸音層20は、例えば、ポリプロピレン繊維の織布、ニット布又は不織布が挙げられる。ポリプロピレン繊維は、疎水性を有することから繊維間に水が侵入しにくく、使用中の吸音特性を維持することができるため好ましい。
【0016】
吸音層20は、不織布を用いることが好ましい。不織布は、単位体積又は単位質量当たりの表面積が大きいことから同じ厚みの他の吸音層20より軽量であってかつ優れた吸音性を示す。吸音層20の密度、厚さは車両に配される部位によって様々であってよいが、一般的に吸音性を発揮するため、より密度が高い不織布とすることが有利である。吸音層20の厚さは車両に配される部位によって様々であってよいが、一般的に吸音性を発揮するため、より厚い不織布を用いることが有利である。また、吸音層20に用いられる熱可塑性合成繊維は、繊維径、繊維長について適宜選択できる。
【0017】
耐水カバー層30は、吸音層20の両面のそれぞれにおいて撥水加工を施した熱可塑性合成繊維を含む面状の不織布として積層される。耐水カバー層30は、吸音層20を保護しつつ、車両外装用吸音材10に入射する音の反射を抑制し吸音層20まで透過させる。耐水カバー層30として、ポリオレフィン不織布層が例示される。ポリオレフィンは化学的安定性に優れていることから、耐水カバー層30により吸音層20が保護された車両外装用吸音材10は、車外の大気、排気ガス、塩、腐食ガスなどへの曝露に対して高い耐久性を有する。
【0018】
耐水カバー層30としてのポリオレフィン不織布層は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンの繊維を含む。ポリオレフィン繊維はそれらの一部が溶融して互いに結合していてもよい。また、必要に応じてこれらのポリオレフィン繊維を結合するためのバインダーを用いてもよい。耐水カバー層30と、吸音層20とが化学的性質が類似する場合には、耐水カバー層30におけるポリオレフィン不織布層と、ポリプロピレン繊維を含む吸音層20とが、容易に溶着させることができる。耐水カバー層30としてのポリオレフィン不織布層がポリプロピレン繊維を含むことが溶着強度を高める上で特に有利である。
【0019】
耐水カバー層30としてのポリオレフィン不織布層の密度、厚さは車両に配される部位によって様々であってよいが、吸音層20を保護し車両外装用吸音材10に適切な吸音特性を付与する範囲であれば適宜選択設定することができる。
【0020】
耐水カバー層30としてのポリオレフィン不織布層は、車両外装に配され飛水に晒されることに鑑みて、少なくとも撥水処理が施されている。また、撥油処理、難燃処理が施されていてもよい。これらの処理は、撥水剤、撥油剤、又は難燃剤の塗布又は原料ポリオレフィンへの混練などによって行うことができる。
【0021】
更に、耐水カバー層30の周縁は、厚み方向に熱プレスを施された熱圧着部40を有する。熱圧着部40は、端縁から所定幅において厚み方向に熱プレスが施された第1熱圧着部41と、第1熱圧着部41よりも相対的に厚み方向に更に薄く熱圧着される溝状の第2熱圧着部42と、を有する。第2熱圧着部42は、耐水カバー層30の周縁に沿って線状に且つ全周に亘って設けられている。また、第2熱圧着部42は、第1熱圧着部41の幅内の中間に配設されている。熱プレスの型は、第1熱圧着部を施す一対の第1プレス面と、一対の第1プレス面のうち、一方が凸形状であり他方が係る凸形状に対応した凹形状であって耐水カバー層30の周縁に沿った線状溝形成部が設けられている。これにより、第2熱圧着部42は、第1熱圧着部41を施す熱プレスと同じ工程において設けられる。
【0022】
このように、実施形態に係る車両外装用吸音材10によれば、耐水カバー層30の周縁は、端縁から所定幅において厚み方向に熱プレスが施された第1熱圧着部41と、第1熱圧着部41よりも相対的に厚み方向に更に薄く熱圧着される溝状の第2熱圧着部42と、を有する。そのため、吸音層20、耐水カバー層30の目付けのバラつき、形状などがあっても、一度の熱プレス処理において熱プレスが不十分な部位が生じるのを抑制することができる。よって、車両外装用吸音材10において、再度周縁の熱プレス処理を施すことなく、浸水対策の向上を図ることができる。
【0023】
また、第2熱圧着部42は、耐水カバー層30の周縁に沿って線状に且つ全周に亘って設けられている態様であるため、外周の何れの部位からの浸水も抑制することができるため、より一層浸水対策の向上を図ることができる。
【0024】
また、第2熱圧着部42が第1熱圧着部41の幅内の中間に配設されていることにより、第2熱圧着部42が途切れることを抑制出来るため、好適な車両外装用吸音材10とすることができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の車両外装用吸音材は、本実施の形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができるものである。
【符号の説明】
【0026】
10 車両外装用吸音材
20 吸音層
30 耐水カバー層
40 熱圧着部
41 第1熱圧着部
42 第2熱圧着部
図1
図2