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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】エレクトロクロミック素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/153 20060101AFI20221205BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20221205BHJP
   G02F 1/161 20060101ALI20221205BHJP
   E06B 9/24 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
G02F1/153
G02F1/15 502
G02F1/161
E06B9/24 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019048245
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020148993
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110870
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 芳広
(74)【代理人】
【識別番号】100096828
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敬介
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 和也
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-187684(JP,A)
【文献】特開2010-066585(JP,A)
【文献】特開2005-321521(JP,A)
【文献】特表2018-523170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0043668(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15 - 1/163
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極と、該一対の電極の間に配置されているエレクトロクロミック層と、を含み、光学濃度ΔODの変調範囲が0≦ΔOD≦Dであるエレクトロクロミック素子であって、
前記一対の電極の電極間隔を一定とした場合の着色領域面内の最大光学濃度をΔODmax、最小光学濃度をΔODminとしたときに、
前記一対の電極の電極間隔d’は、前記最小光学濃度ΔODminを示す位置において下記式で表され、
d’=d+δd
d:前記一対の電極の電極間隔を一定とした場合の電極間隔
δd:電極間隔補正量
前記最小光学濃度ΔODminを示す位置において、前記最大光学濃度ΔODmaxと前記最小光学濃度ΔODminの光学濃度差が完全に解消されると算出される、最適電極間隔補正量δd0が以下の式で定義されるとき、
δd0(ΔOD)=d×(ΔODmax/ΔODmin-1)
前記最小光学濃度ΔODminを示す位置における前記電極間隔補正量δdが、0<ΔOD<Dにおける前記最適電極間隔補正量δd0の最大値δd0,MAX(0<ΔOD<D)以下、ΔOD=Dにおける前記最適電極間隔補正量δd0(ΔOD=D)以上であることを特徴とするエレクトロクロミック素子。
【請求項2】
前記エレクトロクロミック素子の光学濃度差が、前記着色領域面内におけるいずれの領域間においても(log2)/16以下であることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項3】
前記着色領域面内における前記最大光学濃度ΔODmaxを示す位置と前記最小光学濃度ΔODminを示す位置の間の領域の前記一対の電極の電極間隔d’は、前記最大光学濃度ΔODmaxを示す位置での電極間隔以上、前記最小光学濃度ΔODminを示す位置での電極間隔以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項4】
前記着色領域面内における前記最大光学濃度ΔODmaxを示す位置と前記最小光学濃度ΔODminを示す位置の間の領域の前記一対の電極の電極間隔d’は、前記最大光学濃度ΔODmaxを示す位置での電極間隔を両端とし、前記最小光学濃度ΔODminを示す位置での電極間隔を頂点とする懸垂線上の値であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項5】
前記着色領域面は矩形状であり、前記最大光学濃度ΔODmaxを示す位置は前記着色領域面の四隅を含み、前記最小光学濃度ΔODminを示す位置は前記着色領域面の中心を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子と、前記エレクトロクロミック素子に接続されている能動素子と、を有することを特徴とする光学フィルタ。
【請求項7】
前記能動素子が、前記エレクトロクロミック素子を駆動することにより、前記エレクトロクロミック素子を通過する光の光量を調整することを特徴とする請求項6に記載の光学フィルタ。
【請求項8】
複数のレンズを有する撮像光学系と、請求項6または7に記載の光学フィルタと、を有することを特徴とするレンズユニット。
【請求項9】
請求項6または7に記載の光学フィルタと、前記光学フィルタを通過した光を受光する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のエレクトロクロミック素子を有することを特徴とする窓材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレクトロクロミック素子に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミック(以下、「EC」と表記する場合がある)素子は、一対の電極と、その電極間に配置されたEC層と、を有する素子である。そして、EC素子は、一対の電極間に電圧を印加してEC層内の化合物を酸化若しくは還元することによって可視光領域の色相や光量を調整する光学素子である。
近年、撮像素子を用いた動画撮影装置において、光学濃度を無段階に調整できる可変NDフィルタを搭載する要望が高まってきている。有機EC材料を用いたEC素子は光量調整範囲が広く、また分光透過率設計が比較的容易なことから、動画撮影装置に搭載する可変NDフィルタの候補として有望である。
一方で、有機EC材料を溶媒に溶かした溶液を一対の電極間に配置した構成の所謂溶液型EC素子は、比較的大きな電流が流れるために電極面内に不均一な電位分布を生じ、これによって着色領域面内に透過率ムラを発生する場合があった。
特許文献1には、EC層に増粘剤としてシアノエチル化ポリマーを添加することによって電流を制限する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-187684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
透過率ムラの原因となっている不均一な電位分布を直接的に改善する手法としては、電極抵抗を小さくする、若しくは素子電流を小さくするという二つの方法が考えられる。
しかしながら、前者を実施する場合、例えば透明電極の厚膜化によって電極の低抵抗化を行った場合、電極部位での光吸収が増大して素子全体の透過率が低下してしまうことになる。また、後者を実施する場合、例えば特許文献1のように増粘剤を添加することによって電流制限を行った場合、物質移動が阻害されて素子の応答速度が遅延してしまうことになる。
以上のように、不均一な電位分布を改善することによって透過率ムラを低減するという従来の方法論では、透過率や応答性能等のEC素子の基本性能を損なわずに十分な効果を得ることが難しかった。
そこで本発明は上記課題に鑑み、素子断面方向の光路長制御によって透過率ムラが低減されたEC素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のエレクトロクロミック素子は、一対の電極と、該一対の電極の間に配置されているエレクトロクロミック層と、を含み、光学濃度ΔODの変調範囲が0≦ΔOD≦Dであるエレクトロクロミック素子であって、
前記一対の電極の電極間隔を一定とした場合の着色領域面内の最大光学濃度をΔODmax、最小光学濃度をΔODminとしたときに、
前記一対の電極の電極間隔d’は、前記最小光学濃度ΔODminを示す位置において下記式で表され、
d’=d+δd
d:前記一対の電極の電極間隔を一定とした場合の電極間隔
δd:電極間隔補正量
前記最小光学濃度ΔODminを示す位置において、前記最大光学濃度ΔODmaxと前記最小光学濃度ΔODminの光学濃度差が完全に解消されると算出される、最適電極間隔補正量δd0が以下の式で定義されるとき、
δd0(ΔOD)=d×(ΔODmax/ΔODmin-1)
前記最小光学濃度ΔODminを示す位置における前記電極間隔補正量δdが、0<ΔOD<Dにおける前記最適電極間隔補正量δd0の最大値δd0,MAX(0<ΔOD<D)以下、ΔOD=Dにおける前記最適電極間隔補正量δd0(ΔOD=D)以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、素子断面方向の光路長制御によって透過率ムラが低減されたEC素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係るEC素子の一実施形態を示す図である。
図2】電極間隔が一定である場合の素子における(a)電位分布、(b)透過率分布を示したグラフである。
図3図2を用いて求めた電極間隔d’(x,y)を示したグラフである。
図4】電極間隔d’(x,y)の素子における(a)電位分布、(b)透過率分布を示したグラフである。
図5】電極間隔が一定である素子について、透過率ムラの光学段数依存性を示したグラフである。
図6】光学濃度0.3,1.0,2.0着色時において、電極間隔の補正を行った場合の透過率ムラを示したグラフである。
図7】光学濃度ΔODの変調範囲において、光学濃度と最適電極間隔補正量δd0の関係を示したグラフである。
図8】電極間隔補正量δd=1.35μmを採用した場合の透過率ムラの光学濃度依存性を示したグラフである。
図9】電極間隔補正量δd=1.73μmを採用した場合の透過率ムラの光学濃度依存性を示したグラフである。
図10】電極間隔補正量δd=1.50μmを採用した場合の透過率ムラの光学濃度依存性を示したグラフである。
図11】電極間隔補正量δd=0.84μmを採用した場合の透過率ムラの光学濃度依存性を示したグラフである。
図12】電極間隔補正量δd=2.02μmを採用した場合の透過率ムラの光学濃度依存性を示したグラフである。
図13】本発明の撮像装置の一実施形態を示した模式図である。
図14】本発明の窓材の一実施形態例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
≪エレクトロクロミック素子(EC素子)≫
以下、図面を参照しながら、本発明に係るEC素子の構成について、好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。但し、この実施の形態に記載されている構成、及び相対配置等は特に記載がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。
【0009】
先ず、図1を用いて本発明のEC素子の構成について簡単に説明する。図1(a)は本発明のEC素子5の一実施形態を示した平面模式図である。図1(b)は図1(a)の素子中心Oを通るA-A’位置におけるEC素子5の断面模式図である。図1において、EC素子5は、一対の電極2a,2bとしての透明電極をそれぞれ形成した一対の基板1a,1bとしてのガラス基板、この一対の電極2a,2bとシール3とで画定にされた空間に配置されたEC層4とから構成されている。図1(a)に示すように、シール3に囲まれた領域が着色領域6であり、図1(a)では、素子中心Oは着色領域6の中心でもある。
【0010】
本発明のEC素子5の一対の電極2a,2bの電極間隔は、電極間隔が一定の場合における光学濃度分布に基づいて決定することを特徴としており、図1におけるEC素子5では、素子中心における電極間隔が最大となる構成をとっている。素子中心に関して対称な電極配置及び給電構成をとっている限り、透過率が最も高くなるのは常に素子中心であり、この素子中心における電極間隔を最大化することによって透過率分布を補正改善することが可能となる。
【0011】
より具体的には、本発明のEC素子5の一対の電極2a,2bの電極間隔d’は、最小光学濃度ΔODminを示す位置において下記式(a)で表される。ここで、最小光学濃度ΔODminとは一対の電極2a,2bの電極間隔を一定とした場合の着色領域面内の最小光学濃度である。
d’=d+δd・・・(a)
d:一対の電極2a,2bの電極間隔を一定とした場合の電極間隔
δd:電極間隔補正量
【0012】
電極間隔の制御については、一対の基板1a,1bを貼合する際の荷重制御等によって好ましく実現することができる。
【0013】
図2は、一対の電極2a,2bの電極間隔が一定である場合の素子において、外部電圧0.661Vを印加して光学濃度ΔOD=2.0まで着色させた時の着色領域面内における(a)電位分布E(x,y)と(b)透過率分布T(x,y)を示すグラフである。図2において、着色領域面は矩形状であるが、円形等、他の形状であってもよい。図2(a)に示すように、電位は、着色領域面の四隅において最大値0.649V、着色領域面の中心において最小値0.640Vとなる。一方、図2(b)に示すように、透過率は、電位が最大となる着色領域面の四隅において最小値0.92%、電位が最小となる素子中心において最大値1.12%となる。この時の透過率ばらつきは面内で約±10%であり、可変NDフィルタ用途としては非常に大きな値となっている。
【0014】
ここで光学濃度(透過率の対数値)は光路長に比例するというLambert-Beer則を用い、位置(x,y)における電極間隔d’(x,y)を下記式(b)を満たす様にすれば、電位分布に起因する透過率ムラを完全にキャンセルする事が可能である。
d’(x,y)=d×(ΔODmax/ΔOD(x,y))・・・(b)
d:一対の電極2a,2bの電極間隔を一定とした場合の電極間隔
ΔOD(x,y):電極間隔を一定とした場合の位置(x,y)における光学濃度
ΔODmax:電極間隔を一定とした場合の着色領域面内の最大光学濃度(図2では着色領域面の四隅における光学濃度)
【0015】
図3は、図2に示す関係を適用して求めた、透過率ムラをキャンセルできる新たな電極間隔d’(x,y)を示すグラフである。図3(a)はX軸方向を基準としたグラフ、図3(b)はY軸方向を基準としたグラフである。電極間隔を一定とした場合の電極間隔d=30μmに対して、素子中心において最大1.35μmの凸形状補正が必要であることを示している。また、透過率ムラをキャンセルできる新たな電極間隔d’(x,y)は、両端固定の懸垂線(カテナリー)と同じ二次曲線である。このことから、最大透過率を示す位置/最小光学濃度ΔODminを示す位置(図2では素子中心)のみに着目して電極間隔補正を行えば、着色領域全域にわたって透過率ムラをキャンセルできる電極間隔を形成できることも示している。
【0016】
図4は、素子中心部分が凸形状となった、図3に示す新たな電極間隔d’(x,y)の素子において、図2と同じ条件で着色させたときの着色領域面内における(a)電位分布E(x,y)と、(b)透過率分布T(x,y)を示すグラフである。図4(a)に示すように、電位分布は図2(a)と全く変わっていない。一方、図4(b)に示すように、透過率は全域で0.92%、最小値に揃う形で透過率ムラが解消されていることがわかる。
【0017】
以上述べたように、電極間隔が一定であるEC素子の光学濃度分布に基づいて電極間隔d’(x,y)を新たに決定することにより、透過率ムラを低減することが可能である。
【0018】
次に、電極間隔一定で補正を行わない素子について、最小光学濃度ΔODminを示す位置における透過率ムラの光学段数依存性(光学濃度ΔODの変調範囲:0≦ΔOD≦2.0)を図5に示した。光学段数が大きくなるほど素子に流れる電流が増加するため、電圧降下による透過率ムラも大きくなる様子が見て取れる。光学濃度ΔOD=2.0における透過率ムラは+10.3%/-9.5%であるが、これは約0.3段分の露出差に相当するため、撮像装置の可変NDフィルタ用途としては大きな値といえる。また、光学濃度に依存して透過率ムラが大きく変化してしまうということは、撮像装置の可変NDフィルタ用途として用いた場合、取得画像の明るさが変化してしまうということを意味している。そのため、透過率ムラの光学濃度依存性を画像に影響がない範囲に抑えこむことも必要となってくる。
【0019】
これに対して、図6では光学濃度ΔOD=0.3,1.0,2.0各着色時において、電極間隔の補正を行った場合の透過率ムラの推移を、それぞれ、図6(a)、図6(b)、図6(c)に示した。図6の電極間隔補正量δdは、最大光学濃度ΔODmaxを示す位置/最小透過率を示す位置(図2では着色領域面の四隅)の電極間隔と、最小光学濃度ΔODminを示す位置/最大透過率を示す位置(図2では素子中心)の電極間隔との差分を示している。即ち、図6の電極間隔補正量δdは、最小光学濃度ΔODminを示す位置における電極間隔補正量であり、下記式(c)で定義される。
δd=d×(ΔODmax/ΔODmin)-d×(ΔODmax/ΔODmin
=d×(ΔODmax/ΔODmin-1)・・・(c)
d:一対の電極2a,2bの電極間隔を一定とした場合の電極間隔
ΔODmax:電極間隔を一定とした場合の着色領域面内の最大光学濃度
ΔODmin:電極間隔を一定とした場合の着色領域面内の最小光学濃度
【0020】
ΔOD=0.3着色時における電極間隔補正量と透過率ムラの関係を示す図6(a)より、先ず補正を行わない場合(δd=0)の透過率ムラは+1.1%/-1.1%である。そして、δd=0から電極間隔補正量を大きくしていくと透過率ムラは徐々に小さくなり、電極間隔補正量δd=0.84μmで透過率ムラがゼロになる。この電極間隔補正量δd、即ち、最大光学濃度ΔODmaxと最小光学濃度ΔODminの光学濃度差を完全に解消されると算出される電極間隔補正量δdが、ΔOD=0.3着色時における最適電極間隔補正量δd0であり、下記式(d)で示される。
δd0(ΔOD=0.3)=d×(ΔODmax/ΔODmin-1)・・・(d)
d:一対の電極2a,2bの電極間隔を一定とした場合の電極間隔
ΔODmax:電極間隔を一定とした場合の着色領域面内の最大光学濃度
ΔODmin:電極間隔を一定とした場合の着色領域面内の最小光学濃度
【0021】
最適電極間隔補正量δd0から更に電極間隔補正量を大きくしていくと透過率ムラは徐々に大きくなり、位置に関する濃度勾配が逆転する。つまり、図2では、素子中心側の透過率が着色領域面の四隅側によりも低くなる。
【0022】
同様に、図6(b)に示すように、ΔOD=1.0着色時においては、補正を行わない場合(δd=0)の透過率ムラは+6.7%/-6.6%である。そして、δd=0から電極間隔補正量を大きくしていくと透過率ムラは徐々に小さくなり、電極間隔補正量δd=1.73μmにおいて透過率ムラがゼロになる。即ち、最適電極間隔補正量δd0=1.73μmである。さらに、図6(c)に示すように、ΔOD=2.0着色時においては、補正を行わない場合(δd=0)の透過率ムラは+10.3%/-9.5%である。そして、δd=0から電極間隔補正量を大きくしていくと透過率ムラは徐々に小さくなり、電極間隔補正量δd=1.35μmにおいて透過率ムラがゼロになる。即ち、最適電極間隔補正量δd0=1.35μmである。
【0023】
このように、素子の電流-電圧特性、及び電圧-光学濃度特性の非線形性のために、光学濃度ΔODによって透過率ムラがゼロになる最適電極間隔補正量δd0が異なってくるので、素子の使用方法によって様々な補正仕様が考えられる。
【0024】
図7は、光学濃度ΔODの変調範囲(0≦ΔOD≦2.0)において、光学濃度ΔODと最適電極間隔補正量δd0の関係を示したグラフである。原点を通る二次曲線を仮定すると、最適電極間隔補正量δd0は光学濃度ΔOD=1.3において、最大値δd0,MAX(0<ΔOD<D)=1.81μmをとる。また、光学濃度ΔODの変調範囲端であるΔOD=2.0において、δd0(ΔOD=D)=1.35μmをとる。
【0025】
以下に示すように、素子の最小光学濃度ΔODminを示す位置における電極間隔補正量δdの好適な範囲はこの2値の間にあり、これによって光学濃度ΔODの変調領域にわたって透過率ムラを小さく抑えることが可能となる。
【0026】
そのため、本発明のEC素子は、最小光学濃度ΔODminを示す位置における電極間隔補正量δdが、下記式(e)を満たしている。
δd0(ΔOD=D)≦ΔODminを示す位置におけるδd≦δd0,MAX(0<ΔOD<D)・・・(e)
δd0(ΔOD=D):ΔOD=Dにおける最適電極間隔補正量
ΔODmin:電極間隔を一定とした場合の着色領域面内の最小光学濃度
δd:電極間隔補正量
δd0,MAX(0<ΔOD<D):0<ΔOD<Dにおける最適電極間隔補正量の最大値
【0027】
(1)電極間隔補正量δd=1.35μmの場合
光学濃度ΔODの変調範囲(0≦ΔOD≦2.0)における最大値ΔOD=2.0(変調範囲端)における最適電極間隔補正量δd0=1.35μmを採用して素子を作製した例である。図8は、このときの最小光学濃度ΔODminを示す位置における透過率ムラの光学濃度依存性を示したものである。低濃度(ΔOD=0.3)側及び高濃度(ΔOD=2.0)側の透過率ムラが小さく抑えられており、中間濃度(ΔOD=1.0)での透過率ムラが比較的大きくなっているものの絶対値としては約±1.5%でごく小さい。また、低濃度(ΔOD=0.3)側では補正過剰(図6(a)参照)となっていて濃度勾配が逆転しているものの絶対値としては1%未満なので目立つことはない。光学濃度変調範囲全域にわたってバランスが取れた補正仕様となっている。
【0028】
(2)電極間隔補正量δd=1.73μmの場合
光学濃度ΔODの変調範囲(0≦ΔOD≦2.0)における中間値ΔOD=1.0での最適電極間隔補正量δd0=1.73μmを採用して素子を作製した例である。図9は、このときの最小光学濃度ΔODminを示す位置における透過率ムラの光学濃度依存性を示したものである。低濃度(ΔOD=0.3)側から中間濃度(ΔOD=1.0)にかけて透過率ムラが小さく抑えられており、高濃度(ΔOD=2.0)側の透過率ムラが比較的大きくなっているものの絶対値として約±2%程度でごく小さい。中間濃度領域での使用を多用する場合に好ましい補正仕様となっている。
【0029】
(3)電極間隔補正量δd=1.50μmの場合
光学濃度ΔODの変調範囲(0≦ΔOD≦2.0)における中間値ΔOD=0.8,1.8での最適電極間隔補正量δd0=1.50μmを採用して素子を作製した例である。図10は、このときの最小光学濃度ΔODminを示す位置における透過率ムラの光学濃度依存性を示したものである。低濃度(ΔOD=0.3)側及び高濃度(ΔOD=2.0)側で補正過剰(図6(a)、(c)参照)となっていて光学濃度勾配が逆転している。しかし、透過率ムラの絶対値としてはそれぞれ約±0.8%及び約±1.1%で、最大濃度差は1/32段未満となっており、肉眼で判別不能な範囲にある。また、中間濃度(ΔOD=1.0)においても、透過率ムラの絶対値は約±0.9%で非常に小さくなっている。
【0030】
(4)電極間隔補正量δd=0.84μmの場合
光学濃度ΔODの変調範囲(0≦ΔOD≦2.0)における中間値ΔOD=0.3での最適電極間隔補正量δd0=0.84μmを採用して素子を作製した例である。最適電極間隔補正量δd0=0.84μmは、光学濃度変調範囲端(ΔOD=2.0)における最適電極間隔補正量δd0=1.35μmよりも小さい。図11は、このときの最小光学濃度ΔODminを示す位置における透過率ムラの光学濃度依存性を示したものである。光学濃度ΔODの変調範囲全域にわたって補正不足となっているので、低濃度(ΔOD=0.3)側の透過率ムラは十分小さい。しかし、中間濃度(ΔOD=1.0)から高濃度(ΔOD=2.0)側にかけて透過率ムラがやや大きく絶対値として約±5%程度となっている。これは約1/8段分の露出差に相当し、肉眼でも明るさ変化が確認できてしまうため、撮像装置の可変NDフィルタ用途としては相応しくない。
【0031】
(5)電極間隔補正量δd=2.02μmの場合
光学濃度ΔODの変調範囲(0≦ΔOD≦2.0)における最適電極間隔補正量δd0の最大値δd0,MAX=1.81μmより大きな電極間隔補正量δd=2.02μmを採用して素子を作製した例である。図12は、このときの最小光学濃度ΔODminを示す位置における透過率ムラの光学濃度依存性を示したものである。光学濃度ΔODの変調範囲全域にわたって補正過剰(図6(a)乃至(c)参照)となっており、中間濃度(ΔOD=1.0)の透過率ムラは約±1.1%で十分小さくなっている。しかし、高濃度(ΔOD=2.0)側の透過率ムラがやや大きく絶対値として約±5%程度となっている。「(4)電極間隔補正量δd=0.84μmの場合」と同様、これも撮像装置の可変NDフィルタ用途としては相応しくない。
【0032】
以上の様に、最小光学濃度ΔODminを示す位置における電極間隔補正量δdが、上記式(e)を満たしていると、光学濃度変調範囲全域にわたってバランスが取れ、且つ透過率ムラの絶対値が非常に小さい優れた補正仕様となっている。
【0033】
ここで、素子の動径方向(中心点から周縁に向かう方向)の光学濃度勾配は逆転しない方が好ましいものの、実際判別がつかない範囲において光学濃度勾配が逆転することは許容されて構わない。人間が判別し難い明るさの基準を1/16段として、着色領域面内における最大濃度差(log2)/16以下、好ましくは光学濃度差が着色領域面内におけるいずれの領域間においても(log2)/16以下であれば、好ましく適用することができる。
【0034】
また、最大光学濃度ΔODmaxを示す位置と最小光学濃度ΔODminを示す位置の間の領域の電極間隔は、最大光学濃度ΔODmaxを示す位置での電極間隔以上、最小光学濃度ΔODminを示す位置での電極間隔以下であってよい。
【0035】
最大光学濃度ΔODmaxを示す位置と最小光学濃度ΔODminを示す位置の間の領域の電極間隔は、最大光学濃度ΔODmaxを示す位置での電極間隔を両端とし、最小光学濃度ΔODminを示す位置での電極間隔を頂点とする懸垂線上の値であってよい。
【0036】
着色領域面は矩形状であり、最大光学濃度ΔODmaxを示す位置は着色領域面の四隅を含み、最小光学濃度ΔODminを示す位置は着色領域面の中心を含んでよい。
【0037】
<EC素子の構成部材>
本実施形態のEC素子5は、一対の基板1a,1bと、一対の電極2a,2bと、この一対の電極2a,2bの間に配置されているEC層4を有する。一対の電極2a,2bは、シール3によって貼合され、一対の電極2a,2bと、シール3とで画定された空間にEC化合物を有するEC層4が配置される。以下、EC素子5を構成する部材について、詳細に説明する。
【0038】
[EC層(エレクトロクロミック層)4]
EC層4は蒸着法等で形成された固体層であっても、電解質溶液にEC化合物を溶解させた溶液層であってもよい。EC層4の形成方法は、一対の電極2a,2bの間に設けた間隙に、真空注入法、大気注入法、メニスカス法等によって予め調製したEC化合物を含有する液体を注入する方法が挙げられる。
【0039】
EC化合物は有機化合物であっても無機化合物であってもよく、またEC化合物は透明状態から酸化反応によって着色するアノード性化合物であっても、透明状態から還元反応によって着色するカソード性化合物のいずれであってもよい。また、アノード性化合物とカソード性化合物の双方を用いても構わない。特に有機化合物を用いる場合は、アノード性有機化合物とカソード性有機化合物とを共に用いると、電流に対する着色効率が高くなり好ましい。本明細書においては、アノード性化合物とカソード性化合物の双方を有する素子を相補型EC素子と呼び、アノード性化合物とカソード性化合物のいずれか一方を有する素子を単極型EC素子と呼ぶ。アノード性化合物は、アノード材料、カソード性化合物はカソード材料とも呼ばれる。
【0040】
相補型EC素子を駆動させた場合、一方の電極では酸化反応によってEC化合物から電子が引き抜かれ、他方の電極では還元反応によってEC化合物が電子を受け取っている。酸化反応によって中性分子からラジカルカチオンを生成してもよい。また、還元反応によって中性分子からラジカルアニオンを生成しても、ジカチオン分子からラジカルカチオンを生成してもよい。一対の電極2a,2bの双方においてEC化合物が着色するため、着色時に大きな光学濃度変化を必要とする場合には相補型EC素子が好ましい。一方、単極型EC素子は、相補型EC素子に比べて消費電力を抑えることができるため好ましい。これは、相補型EC素子では着色したアノード性化合物と着色したカソード性化合物が電子をやり取りする自己消去反応があり、着色状態を維持するために大きな電流が必要となるためである。
【0041】
EC化合物が無機化合物である場合は、EC層4と、一対の電極2a,2bの内の少なくとも一方と、の間に電解質層を有してよい。一方、EC化合物が有機化合物である場合は、無機化合物の場合と同様に電解質層を有しても、有機化合物とともに電解質溶液を有してもよい。
【0042】
有機EC化合物は、ポリチオフェンやポリアニリン等の導電性高分子、ビオロゲン系化合物、アントラキノン系化合物、オリゴチオフェン誘導体、フェナジン誘導体等の有機低分子化合物等が挙げられる。無機EC化合物としては、NiOxやWO3等の金属酸化物材料が挙げられる。
【0043】
EC層4は、電解質を含む電解質層とEC化合物を含む層との積層構成であってもよい。EC層4は、EC化合物を1種類のみ有していても、複数種類のEC化合物を有していてもよい。EC層4が複数種のEC化合物を含有する場合は、EC化合物の酸化還元電位の差が小さいことが好ましい。複数種類のEC化合物を有する場合は、アノード性化合物とカソード性化合物とを合わせて4種類以上のEC化合物を有してよい。本発明のEC素子は5種類以上のEC化合物を有してもよい。複数種類のEC化合物を有する場合、複数のアノード材料の酸化還元電位は60mV以内であってよく、複数のカソード材料の酸化還元電位は60mV以内であってよい。複数種類のEC化合物を有する場合、複数種類のEC化合物は、400nm以上500nm以下に吸収ピークを有する化合物と、500nm以上650nm以下に吸収ピークを有する化合物と、650nm以上に吸収ピークを有する化合物を含んでよい。吸収ピークは半値幅が20nm以上のものを指す。また、光を吸収する場合の材料の状態は酸化状態であっても、還元状態であっても、中性状態であってもよい。
【0044】
電解質としては、イオン解離性の塩であり、かつ溶媒に対して良好な溶解性、固体電解質においては高い相溶性を示すものであれば限定されない。中でも電子供与性を有する電解質が好ましい。これら電解質は、支持電解質と呼ぶこともできる。電解質としては、例えば、各種のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の無機イオン塩や4級アンモニウム塩や環状4級アンモニウム塩等が挙げられる。具体的にはLiClO4、LiSCN、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiPF6、LiI、NaI、NaSCN、NaClO4、NaBF4、NaAsF6、KSCN、KCl等のLi、Na、Kのアルカリ金属塩等や、(CH34NBF4、(C254NBF4、(n-C494NBF4、(n-C494NPF6、(C254NBr、(C254NClO4、(n-C494NClO4等の4級アンモニウム塩および環状4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0045】
EC化合物および電解質を溶かす溶媒としては、EC化合物や電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、特に極性を有するものが好ましい。具体的には水や、メタノール、エタノール、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、ジメトキシエタン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピオンニトリル、3-メトキシプロピオンニトリル、ベンゾニトリル、ジメチルアセトアミド、メチルピロリジノン、ジオキソラン等の有機極性溶媒が挙げられる。
【0046】
EC層4は、さらにポリマーマトリックスやゲル化剤を含有させてもよい。この場合、EC層4は粘稠性が高い液体となり、場合によってはゲル状となる。ポリマーとしては、例えばポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロース、プルラン系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ナフィオン(登録商標)等が挙げられ、PMMAが好ましく用いられる。
【0047】
[基板1a,1b]
基板1a,1bとしては、例えば、無色あるいは有色ガラス、強化ガラス等が用いられる。これらガラス材としては、Corning#7059やBK-7等の光学ガラス基板を好適に使用することができる。さらに、基板1a,1bは剛性が高く歪みを生じることが少ない材料が好ましい。なお、本実施形態において、透明とは可視光の透過率が50%以上の透過率であることを示す。
【0048】
[電極2a,2b]
電極2a,2bとしては、例えば、酸化インジウムスズ合金(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化銀、酸化バナジウム、酸化モリブデン、金、銀、白金、銅、インジウム、クロム等の金属や金属酸化物、多結晶シリコン、アモルファスシリコン等のシリコン系材料、カーボンブラック、グラファイト、グラッシーカーボン等の炭素材料等を挙げることができる。また、ドーピング処理等で導電率を向上させた導電性ポリマー、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)とポリスチレンスルホン酸の錯体等も好適に用いられる。
【0049】
本発明に係るEC素子5は、消色状態で高い透過率を有することが好ましいため、電極2a,2bは、例えば、ITO、IZO、NESA、PEDOT:PSS、グラフェン等の透明材料が特に好ましい。これらはバルク状、微粒子状等様々な形態で使用できる。尚、これらの電極は、単独で使用してもよく、あるいは複数組み合わせて使用してもよい。
【0050】
[シール3]
シール3としては、化学的に安定で、気体及び液体を透過せず、EC化合物の酸化還元反応を阻害しない材料であることが好ましい。シール3として、例えば、ガラスフリット等の無機材料、エポキシ樹脂等の有機材料、金属材料等が挙げられる。
【0051】
[スペーサー]
本発明に係るEC素子5は、スペーサーを有してもよい。スペーサーは電極2a,2b間の距離を規定する機能を有する。スペーサーの機能は、シール3が有してもよい。スペーサーは、シリカビーズ、ガラスファイバー等の無機材料や、ポリジビニルベンゼン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム、エポキシ樹脂等の有機材料で構成されてよい。
【0052】
≪EC素子の用途等≫
本実施形態に係るEC素子を駆動することにより、EC素子を通過する光の光量を調整することができ、可変NDフィルタ等の光学フィルタ、レンズユニット、撮像装置等に用いることができる。
【0053】
<光学フィルタ>
本発明の光学フィルタは、本発明のEC素子と、EC素子に接続されている能動素子とを有する。本発明の光学フィルタは、周辺装置を含んでいても良い。能動素子は、EC素子に直接接続されていても、他の素子を介して間接的に接続されていてもよい。能動素子としては、例えば、TFT素子やMIM素子等が挙げられる。本発明の光学フィルタは、能動素子が、EC素子を駆動することにより、EC素子を通過する光の光量を調整する。本発明の光学フィルタは、カメラの如き撮像装置に用いられてもよく、撮像装置に用いられる場合、撮像装置本体に設けられても、レンズユニットに設けられてもよい。
【0054】
<レンズユニットおよび撮像装置>
本発明のレンズユニットは、上述した本発明の光学フィルタと、複数のレンズを有する撮像光学系とを有する。本発明のレンズユニットでは、本発明の光学フィルタを通過した光が撮像光学系を通過するように配置されていてもよいし、撮像光学系を通過した光が本発明の光学フィルタを通過するように配置されていてもよい。
【0055】
また、本発明の撮像装置は、本発明の光学フィルタと、光学フィルタを通過した光を受光する撮像素子とを有する。
【0056】
図13(a)は、本発明の光学フィルタを用いた撮像装置を示す模式図であり、図13(a)は、本発明の光学フィルタ101を用いたレンズユニット102を有する撮像装置、図13(b)は、本発明の光学フィルタ101を有する撮像装置である。図13に示す様に、レンズユニット102はマウント部材(不図示)を介して撮像ユニット103に着脱可能に接続されている。
【0057】
レンズユニット102は、複数のレンズあるいはレンズ群を有するユニットである。例えば、図13(a)において、レンズユニット102は、絞りより後でフォーカシングを行うリアフォーカス式のズームレンズを表している。被写体側(紙面向かって左側)より順に正の屈折力の第1のレンズ群104、負の屈折力の第2のレンズ群105、正の屈折力の第3のレンズ群106、正の屈折力の第4のレンズ群107の4つのレンズ群を有する。第2のレンズ群105と第3のレンズ群106の間隔を変化させて変倍を行い、第4のレンズ群107の一部のレンズ群を移動させてフォーカスを行う。レンズユニット102は、例えば、第2のレンズ群105と第3のレンズ群106の間に開口絞り108を有し、また、第3のレンズ群106と第4のレンズ群107の間に本発明の光学フィルタ101を有する。レンズユニット102を通過する光は、各レンズ群104乃至107、開口絞り108および本発明の光学フィルタ101を通過するよう配置されており、開口絞り108および本発明の光学フィルタ101を用いて光量の調整を行うことができる。
【0058】
また、レンズユニット102内の構成は適宜変更可能である。例えば、本発明の光学フィルタ101は開口絞り108の前(被写体側)あるいは後(撮像ユニット103側)に配置でき、また、第1のレンズ群104よりも前に配置しても良く、第4のレンズ群107よりも後に配置しても良い。光の収束する位置に配置すれば、本発明の光学フィルタ101の面積を小さくできるなどの利点がある。また、レンズユニット102の形態も適宜選択可能であり、リアフォーカス式の他、絞りより前でフォーカシングを行うインナーフォーカス式であっても良く、その他の方式であっても構わない。また、ズームレンズ以外にも魚眼レンズやマクロレンズなどの特殊レンズも適宜選択可能である。
【0059】
撮像ユニット103が有するガラスブロック109は、ローパスフィルタやフェースプレートや色フィルタ等のガラスブロックである。また、撮像素子110は、レンズユニット102を通過した光を受光するセンサ部であって、CCDやCMOS等が使用できる。また、フォトダイオードのような光センサであっても良く、光の強度あるいは波長の情報を取得し出力するものを適宜利用可能である。
【0060】
図13(a)のように、本発明の光学フィルタ101がレンズユニット102に組み込まれている場合、駆動手段はレンズユニット102内に配置されても良く、例えば撮像ユニット103内等、レンズユニット102外に配置されても良い。レンズユニット102外に配置される場合は、配線を通してレンズユニット102内外のEC素子と駆動手段を接続し、駆動制御する。
【0061】
図13(b)に示す様に、撮像ユニット103が本発明の光学フィルタ101を有していても良い。本発明の光学フィルタ101は撮像ユニット103内部の適当な箇所に配置され、撮像素子110は本発明の光学フィルタ101を通過した光を受光するよう配置されていれば良い。図13(b)においては、例えば本発明の光学フィルタ101は撮像素子110の直前に配置されている。撮像ユニット103が本発明の光学フィルタ101を内蔵する場合、接続されるレンズユニット102自体が本発明の光学フィルタ101を持たなくても良いため、既存のレンズユニットを用いた調光可能な撮像装置を構成することが可能となる。
【0062】
このような撮像装置は、光量調整と撮像素子の組合せを有する製品に適用可能である。例えばカメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、デジタルビデオカメラに使用可能であり、また、携帯電話やスマートフォン、PC、タブレットなど撮像装置を内蔵する製品にも適用できる。
【0063】
本発明の光学フィルタ101を調光部材として用いることで、調光量を一つのフィルタで適宜可変させることが可能となり、部材点数の削減や省スペース化といった利点がある。
【0064】
<窓材>
本発明の窓材は、本発明のEC素子5を有する。本発明の窓材は、EC素子5を駆動する駆動手段を有することが好ましい。図14は、本発明の窓材を示す図であり、図14(a)は斜視図、図14(b)は図14(a)のX-X’断面図である。
【0065】
図14の窓材111は調光窓であり、EC素子5と、それを挟持する透明板113と、全体を囲繞して一体化するフレーム112とから成る。駆動手段はフレーム112内に一体化されていても良く、フレーム112外に配置され配線を通してEC素子5と接続されていても良い。透明板113は光透過率が高い材料であれば特に限定されず、窓としての利用を考慮すればガラス素材であることが好ましい。図14において、EC素子5は透明板113と独立した構成部材であるが、例えば、EC素子5の基板1a,1bを透明板113としても構わない。フレーム112は材質を問わないが、EC素子5の少なくとも一部を被覆し、一体化された形態を有するもの全般をフレームとして構わない。
【0066】
係る調光窓は、例えば日中の太陽光の室内への入射量を調整する用途に適用できる。太陽の光量の他、熱量の調整にも適用できるため、室内の明るさや温度の制御に使用することが可能である。また、シャッターとして、室外から室内への眺望を遮断する用途にも適用可能である。このような調光窓は、建造物用のガラス窓の他に、自動車や電車、飛行機、船など乗り物の窓、時計や携帯電話の表示面のフィルタにも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1a,1b:基板、2a,2b:電極、3:シール、4:EC層、5:EC素子、6:着色領域
図1
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