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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】網材および網戸
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/52 20060101AFI20221205BHJP
【FI】
E06B9/52 F
E06B9/52 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019117235
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2021004458
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 章
(72)【発明者】
【氏名】若林 雅樹
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-132288(JP,A)
【文献】特開2006-183382(JP,A)
【文献】特開2017-025463(JP,A)
【文献】特開2010-150694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸および緯糸を融着した網材であって、
前記経糸および前記緯糸は、芯部および前記芯部を囲んだ鞘部を有したポリプロピレン製の複層モノフィラメント糸によってそれぞれ形成され、
前記経糸および前記緯糸の線径は0.05mmから0.30mmの範囲(0.10mm以上の範囲を除く)に設定され、
前記網材の各網目の開口幅は0.5mmから1.5mmの範囲に設定され、
前記芯部の断面積と前記鞘部の断面積との比は1.0~3.6の範囲に設定され、
前記経糸および前記緯糸の結晶化度は60%から70%の範囲にそれぞれ設定され、
前記経糸および前記緯糸の配向度は0.73から0.80の範囲にそれぞれ設定され、
前記網材の曲げ硬さは0.95gf・cm/cm以上1.30gf・cm/cm以下の範囲に設定され
前記経糸および前記緯糸の結晶化度が60%から70%へと高く設定されるのに対応して、前記経糸および前記緯糸の配向度が0.80から0.73へと低く設定され、
前記結晶化度60%および前記配向度0.80に設定した場合には前記網材の曲げ硬さは1.30gf・cm /cmとなり、前記結晶化度70%および前記配向度0.73に設定した場合には網材の曲げ硬さは0.95gf・cm /cmとなる
ことを特徴とする網材。
【請求項2】
巻取軸と、前記巻取軸に送出し可能に巻き取られた網材と、前記網材の送出し側の端縁部が取り付けられた可動框とを備え、
前記網材は、経糸および緯糸を融着した網材であって、
前記経糸および前記緯糸は、芯部および前記芯部を囲んだ鞘部を有したポリプロピレン製の複層モノフィラメント糸によってそれぞれ形成され、
前記経糸および前記緯糸の線径は0.05mmから0.30mmの範囲に設定され、
前記網材の各網目の開口幅は0.5mmから1.5mmの範囲に設定され、
前記芯部の断面積と前記鞘部の断面積との比は1.0~3.6の範囲に設定され、
前記網材の曲げ硬さは0.95gf・cm /cm以上1.30gf・cm /cm以下の範囲に設定され、
前記可動框には、前記網材が通されるスリットを有した筒部が形成され、
前記網材は、その送出し側の端縁部にループ部が形成され、
前記ループ部には前記筒部に係合される芯材が挿入され、
前記芯材の周面にはその長手方向に沿った溝部が形成され、
前記溝部には、押えロープによって前記ループ部が押し込み固定されている
ことを特徴とする網戸。
【請求項3】
四周枠組みされてなる網戸枠と、前記網戸枠に張設される請求項1に記載の網材とを備え、
前記網戸枠に沿って溝部が形成され、
前記網材の周縁部は、押えロープによって前記溝部に押し込み固定されている
ことを特徴とする網戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経糸および緯糸によって形成される網材および網戸に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、網戸枠に網(網材)が張られて構成される網戸が知られている(特許文献1参照)。この網戸では、網戸枠に沿った嵌合溝が形成されており、網材は、その周縁部が網押さえチューブによって嵌合溝に押し込まれることで網戸枠に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-184458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の網戸では、網材の曲げ硬さが高すぎると、網押さえチューブよって網戸枠の嵌合溝に押し込みにくくなってしまう。一方、網材の曲げ硬さが低すぎると、網材を網押さえチューブによって網戸枠の嵌合溝に押し込む際に皺等が発生しやすくなってしまう。このように、網材の曲げ硬さが高すぎても低すぎても網材の固定作業性を向上することが困難である。
【0005】
本発明は、固定作業性を向上できる網材および網戸を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の網材は、経糸および緯糸を融着した網材であって、前記経糸および前記緯糸は、芯部および前記芯部を囲んだ鞘部を有したポリプロピレン製の複層モノフィラメント糸によってそれぞれ形成され、前記経糸および前記緯糸の線径は0.05mmから0.30mmの範囲に設定され、前記網材の各網目の開口幅は0.5mmから1.5mmの範囲に設定され、前記芯部の断面積と前記鞘部の断面積との比は1.0~3.6の範囲に設定され、前記網材の曲げ硬さは0.95gf・cm/cm以上1.30gf・cm/cm以下の範囲に設定されることを特徴とする。
本発明の網戸は、巻取軸と、前記巻取軸に送出し可能に巻き取られた前述した本発明の網材と、前記網材の送出し側の端縁部が取り付けられた可動框とを備え、前記可動框には、前記網材が通されるスリットを有した筒部が形成され、前記網材は、その送出し側の端縁部にループ部が形成され、前記ループ部には前記筒部に係合される芯材が挿入され、前記芯材の周面にはその長手方向に沿った溝部が形成され、前記溝部には、押えロープによって前記ループ部が押し込み固定されていることを特徴とする。
本発明の他形態の網戸は、四周枠組みされてなる網戸枠と、前記網戸枠に張設される前述した本発明の網材とを備え、前記網戸枠に沿って溝部が形成され、前記網材の周縁部は、押えロープによって前記溝部に押し込み固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、固定作業性を向上できる網材および網戸を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係るロール網戸を示す横断面図。
図2図1に示すII-II線に沿った断面図。
図3】第1実施形態に係るロール網戸のネットおよびガイドレールを示す斜視図。
図4】第1実施形態に係るロール網戸のネットおよび巻取軸を示す斜視図。
図5】第1実施形態に係るロール網戸の経糸および緯糸を示す断面図。
図6】第1実施形態に係るロール網戸の要部を示す断面図。
図7】第1実施形態に係るロール網戸の網材および芯材を示す斜視図。
図8】第1実施形態に係るロール網戸の経糸および緯糸の結晶化度および配向度と曲げ硬さとの関係を示すグラフ。
図9】本発明の第2実施形態に係るパネル網戸を示す外観姿図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1から図4において、第1実施形態に係る網戸であるロール網戸10は、建物の外壁開口部に固定される窓の窓枠に取り付けられるものである。ロール網戸10は、窓枠に固定される網戸枠11(枠体)と、網戸枠11の内部にて左右に開閉自在に設けられるネット12(網材)とを備えている。
以下の説明において、ロール網戸10の左右方向をX軸方向とし、ロール網戸10の上下方向をY軸方向とし、ロール網戸10の見込み方向(屋内外方向)をZ軸方向とする。X,Y,Z軸方向は互いに直交する。
【0010】
網戸枠11は、収納ケース13と、当接枠14と、上レール枠15と、下レール枠16とを備えている。収納ケース13の内部には、ネット12の端部が固定されて当該ネット12を巻き取るY軸方向に沿った巻取軸13Aが設けられ、図示しないバネによって巻取軸13Aが巻取方向に付勢されることで、ネット12が収納ケース13内に収納されるようになっている。
【0011】
ネット12は、経糸21と緯糸22とが格子状に交差され、これらの交差部(交点)が融着されたネット本体20(網材本体)と、ネット本体20のX軸方向に沿った上下の側縁部に形成された被ガイド部30とを有しており、ネット12のX軸方向における閉鎖方向側(送出し側)のY軸方向に沿った端縁部には可動框24が取り付けられている。
経糸21は、巻取軸13Aに対する巻取り方向および送出し方向に沿って延びた糸である。緯糸22は、経糸21に対して直交する方向に沿って延びた糸である。ロール網戸10では、巻取軸13Aから引き出したネット12のX軸方向に沿って経糸21が延在し、ネット12のY軸方向に沿って緯糸22が延在する。
ネット12の送出し側の端縁部にはループ状に縫製されたループ部201(図5および図6参照)が形成されている。ループ部201には後述する可動框24の筒部246に係合される円柱状の芯材25が挿入されている。
芯材25の径寸法は後述する開口244Aの幅寸法よりも大きい寸法とされている。芯材25の周面にはその長手方向に沿った溝部251が形成されており、溝部251には、押えロープ26によってループ部201の一部が押し込み固定されている。
【0012】
可動框24は、図6に示す断面形状のアルミ押出形材によって形成されている。可動框24は、一対の框見付け片部241,242および框見込み片部243と、框見付け片部241,242に連続した一対の開口形成片部244と、框見込み片部243および開口形成片部244の間で框見付け片部241,242を連結した連結片部245とを有しており、連結片部245には、一対の開口形成片部244によって形成される開口244A側に位置する筒部246が可動框24の長手方向に沿って形成されている。筒部246には、可動框24の長手方向に沿ったスリット246Aを有して断面略C字状に形成されている。
前述した筒部246内に、ループ部201および芯材25を挿入しつつネット12をスリット246Aに通すことで、筒部246に芯材25が係合する。このとき、ループ部201は芯材25および筒部246の間に配置されるので、ネット12の端縁部に可動框24が取り付けられた状態となる。このようにネット12が係合された可動框24を開閉操作することで、ネット12を送出し、また、巻取軸13Aに巻き取らせる操作が可能である。
【0013】
上レール枠15および下レール枠16には、それぞれネット12の被ガイド部30をX軸方向(ネット12の繰出し方向)に沿って左右にスライド案内する樹脂製のガイドレール17が設けられている。
上レール枠15側のガイドレール17は、図2に示すように、上レール枠15に係合した底壁部171と、底壁部171から垂下した一対の側壁部172と、一対の側壁部172の下端からZ軸方向において互いに近接する方向に延出した一対の開口形成片部173とを有しており、底壁部171、一対の側壁部172および一対の開口形成片部173によってX軸方向に延びたガイド溝17Aが形成されている。一対の開口形成片部173の間にはガイド溝17AのX軸方向に沿った開口17Bが形成されている。
下レール枠16側のガイドレール17は、上レール枠15側のガイドレール17と同様に形成されており、上下逆向きに配置されている。このため、一対の側壁部172は底壁部171から立ち上げられ、一対の開口形成片部173は底壁部171よりも上方に配置されている。
【0014】
被ガイド部30は、図2から図4に示すように、X軸方向に沿ったゴムシートによって構成された抜止めシート31と、抜止めシート31をネット本体20に接続したX軸方向に沿った接続テープ32とを有している。
抜止めシート31は、ガイドレール17のガイド溝17Aに配置されている。抜止めシート31は、断面略矩形状に形成されており、ネット本体20とともに巻取軸13Aに巻取り可能な程度の可撓性を有している。抜止めシート31のX軸方向およびY軸方向に規定される仮想面(ネット本体20の面内方向に沿った面)に沿った外面は、フラットな当接外面31Aを構成している。第1実施形態では、抜止めシート31のY軸方向における幅寸法W1(図4参照)は1mmとされているが、ガイド溝17AのY軸方向における深さ寸法よりも若干小さい寸法であれば、更に大きな幅寸法とされていてもよい。抜止めシート31のZ軸方向における厚さ寸法は、ガイド溝17Aの開口17Bの幅寸法W(図2参照)やネット12の巻取状態における径寸法を考慮して1.5mmとされているが、これよりも大きい厚さ寸法であっても、またこれよりも小さい厚さ寸法であってもよい。また、抜止めシート31のゴム硬度は、一般的な軟質ゴムのゴム硬度90度以下とされており、例えば40度~80度の範囲内で設定されてもよい。
接続テープ32は、第1実施形態では布製のファスナーテープによって構成されている。接続テープ32のY軸方向における幅寸法W2(図4参照)は、抜止めシート31の幅寸法W1よりも大きい寸法とされており、図2図3に示すようにガイド溝17Aから開口17Bを通ってガイド溝17A外まで突出している。この接続テープ32は、ネット本体20の側縁部を補強して強度を高めていると共に、ネット本体20の片面側でネット本体20自体が開口形成片部173に摺接することを防いでいる。
【0015】
以上のロール網戸10では、ネット12をX軸方向に操作することで、ロール網戸10を開放状態および閉鎖状態に切り替える。具体的には、X軸方向における開放側である図1の左側に向かって可動框24を操作し、巻取軸13Aにネット本体20および被ガイド部30を巻き取らせるとともに、可動框24を収納ケース13に当接させることでロール網戸10を開放状態とする。一方、X軸方向における閉鎖側である図の右側に向かって可動框24を操作し、収納ケース13からネット本体20を送り出すとともに、可動框24を当接枠14に当接させることでロール網戸10を閉鎖状態とする。
【0016】
前述したネット12の経糸21および緯糸22は、図5(A)に示すように、所定の断面積A1を有した芯部23Aと、芯部23Aを囲んで所定の断面積A2を有した鞘部23Aと、を有した複層成形樹脂製(本実施形態ではポリプロピレン製)のモノフィラメント糸で構成されている。芯部23Aの断面積A1と鞘部23Aの断面積A2との比(芯/鞘比=A1/A2)は、1.0~3.6の範囲に設定されている。経糸21および緯糸22における芯部23Aおよび鞘部23Aは、互いの融点が相違し、芯部23Aの樹脂の融点(160℃~170℃程度)よりも低い融点(120℃~130℃程度)の樹脂で鞘部23Aが形成され、図5(B)に示すように、互いの鞘部23A同士が溶融した溶融部27を介して経糸21と緯糸22とが溶着されることでネット本体20が形成されている。
経糸21および緯糸22は、原料(ポリプロピレン)を溶融紡糸し、配向性を付与するために延伸をかけ、結晶化を増やすためにアニーリング工程を経て製造される。なお、経糸21や緯糸22に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止材、滑剤、帯電防止材、難燃剤等の各種添加剤を配合してもよい。
経糸21および緯糸22の線径は、0.05mm~0.30mmの範囲で同径寸法に設定され、ネット本体20の各網目の開口幅は0.5mm~1.5mmの範囲で設定されている。このようなネット本体20では、経糸21および緯糸22の線径が細くなるほど、捩れた場合に皺が生じやすい特性となる。
【0017】
このように構成される経糸21および緯糸22は、図8(A)に示すグラフにあるように結晶化度が60%から70%の範囲で設定され、図8(B)に示すグラフにあるように配向度が0・73から0.80の範囲で設定されることで、ネット12の曲げ硬さが0.95gf・cm/cm以上1.30gf・cm/cm以下の範囲に設定される。このように設定することで、ループ部201を適度に撓めつつ芯材25を挿入でき、また、ループ部201に適度な張りをもたせられるので、ループ部201に芯材25を挿入する際に当該ループ部201が2重、3重に巻き込まれることを抑制できる。
【実施例
【0018】
原料(ポリプロピレン)を溶融紡糸し、配向性を付与するために延伸をかけ、結晶化を増やすためにアニーリング工程を経ることで、下記(1)~(7)の特性を有する複層構造のモノフィラメント糸からなる経糸21および緯糸22を製造し、経糸21および緯糸22を採用して構成したネット本体20ついてそれぞれを評価した。ここで、ネット本体20の曲げ硬さとしては、カトーテック株式会社製の繊維計測システム(KES-FBシステム)を使用して測定した。各経糸21および緯糸22は、径寸法0.15mm、芯部23AはMFR2.5であり、鞘部23BはMFR7.0である。
[経糸および緯糸の結晶化度および配向度]
(1)結晶化度50% 配向度0.85
(2)結晶化度57% 配向度0.81
(3)結晶化度60% 配向度0.79
(4)結晶化度65% 配向度0.77
(5)結晶化度70% 配向度0.73
(6)結晶化度72% 配向度0.72
(7)結晶化度75% 配向度0.70
本実施例では、経糸21および緯糸22の結晶化度と配向度とは後述する表1に示す通りの関係性を有している。上記(1)の経糸21および緯糸22を採用してネット本体20を形成した場合、ネット本体20の曲げ硬さは1.45gf・cm/cmとなり、上記(2)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20の曲げ硬さは1.40gf・cm/cmとなり、上記(3)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20の曲げ硬さは1.30gf・cm/cmとなり、上記(4)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20の曲げ硬さは1.12gf・cm/cmとなり、上記(5)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20の曲げ硬さは0.95gf・cm/cmとなり、上記(6)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20の曲げ硬さは0.88gf・cm/cmとなり、上記(7)の経糸21および緯糸22を有するネット本体20の曲げ硬さは0.77gf・cm/cmとなった。
上記(1)~(7)の経糸21および緯糸22について、前述したようにネット12とした状態(ネット本体20のサイズ600mm×1100mm、網目の開口幅1.06mm(24メッシュ)とする)で、ループ部201の芯材25に対する固定し易さ(張り易さ)の感性評価を行った。ループ部201が硬すぎも柔らかすぎもしない曲げ硬さを有して、押えロープ26を溝部251に十分に押し込みやすく且つループ部201に皺等が十分に生じにくい場合には、固定作業性を「〇」と評価した。ループ部201が硬すぎて(曲げ硬さが高すぎて)押えロープ26を溝部251に押し込みにくい場合や、ループ部201が柔らかすぎて(曲げ硬さが低すぎて)押えロープ26を溝部251に押し込む際に皺等が発生しやすくなる場合には固定作業性を「×」と評価した。また、上記「〇」および「×」の中間の特性を示す場合には固定作業性を「△」と評価した。結果は表1の通りである。
【0019】
【表1】
【0020】
上記(1)(7)の経糸21および緯糸22を有するネット12は固定作業性「×」であった。このため、上記(1)(5)の経糸21および緯糸22を有するネット12では、本発明の目的とする固定作業性の向上を図り得ないと評価される。
上記(2)(6)の経糸21および緯糸22を有するネット12は固定作業性「△」であった。このため、上記(2)(6)の経糸21および緯糸22を有するネット12では、本発明の目的とする固定作業性の向上を十分には図り得ないと評価される。
上記(3)~(5)の経糸21および緯糸22を有するネット12は固定作業性「〇」であった。このため、上記(3)~(5)の経糸21および緯糸22を有するネット12では、本発明の目的とする固定作業性の向上を十分に図れると評価される。
なお、上記(3)では配向度0.79だが0.80となる場合もあり、この場合でも固定作業性「〇」の評価を得られる。
【0021】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図9において、第1実施形態に係る網戸であるパネル網戸10Bは、建物の外壁開口部に固定される窓の窓枠に取り付けられるものである。パネル網戸10Bは、窓枠に固定される網戸枠11B(枠体)と、網戸枠11Bに張設されたネット12B(網材)とを備えている。
【0022】
網戸枠11Bは、アルミ押出形材によって形成された上枠111、下枠112および左右の縦枠113を四周枠組みして形成されている。上枠111、下枠112および左右の縦枠113の各見付け面114には各枠材の長手方向に沿った溝部115が形成されている。ネット12Bの周縁部は、押えロープ26によって溝部115に押し込み固定されている。
ネット12Bは、経糸21および緯糸22を有するネット本体20によって前述同様に形成されている。このため、経糸21および緯糸22の結晶化度および配向度を前述同様に設定することで、ネット12Bの曲げ硬さを0.95gf・cm/cm以上1.30gf・cm/cm以下の範囲に設定される。従って、ネット12Bが硬すぎも柔らかすぎもしない曲げ硬さを有して、押えロープ26を溝部115に押し込みやすく且つネット12Bに皺等が生じにくくでき、このため、ネット12Bの固定作業性を向上できる。
【0023】
[変形例]
前記実施形態では、経糸21および緯糸22は同じ径寸法に設定されているが、互いに異なる径寸法に設定されてもよい。
【0024】
[本発明のまとめ]
本発明の網材は、経糸および緯糸を融着した網材であって、前記経糸および前記緯糸は、芯部および前記芯部を囲んだ鞘部を有したポリプロピレン製の複層モノフィラメント糸によってそれぞれ形成され、前記経糸および前記緯糸の線径は0.05mmから0.30mmの範囲に設定され、前記網材の各網目の開口幅は0.5mmから1.5mmの範囲に設定され、前記芯部の断面積と前記鞘部の断面積との比は1.0~3.6の範囲に設定され、前記網材の曲げ硬さは0.95gf・cm/cm以上1.30gf・cm/cm以下の範囲に設定されることを特徴とする。
本発明の網材によれば、経糸および緯糸の線径は0.05mmから0.30mmの範囲で設定することで各網目の開口幅を0.5mmから1.5mmの範囲に設定できるが、経糸および緯糸の線径が細くなる分、捩れた場合に皺が生じ易い特性となる。ここで、本発明者の鋭意検討の結果、経糸および緯糸の曲げ硬さを0.95gf・cm/cm以上1.30gf・cm/cm以下の範囲に設定するのが好適であることが得られ、この範囲に設定することで、各種の固定部材の溝部に対して押えロープによって網材を押し込む際に適度に曲がって当該網材を固定部材に容易に固定できる一方、固定部材の溝部に対して押えロープによって網材を押し込む際に捩れて皺が生じることを抑制できる。このため、網材の固定作業性を向上できる。
【0025】
本発明の網材では、前記経糸および前記緯糸の結晶化度は60%から70%の範囲にそれぞれ設定され、前記経糸および前記緯糸の配向度は0.73から0.80の範囲にそれぞれ設定されていてもよい。
このような構成によれば、経糸および緯糸の結晶化度を60%から70%の範囲に設定し且つ配向度を0.73から0.80の範囲に設定することで、曲げ硬さが0.95gf・cm/cm以上1.30gf・cm/cm以下の範囲にある経糸および緯糸を構成でき、例えば、経糸および緯糸の結晶化度を70%に設定し且つ配向度を0.73に設定した場合には曲げ硬さを0.95gf・cm/cmに設定でき、また例えば、経糸および緯糸の結晶化度を60%に設定し且つ配向度を0.80に設定した場合には曲げ硬さを1.30gf・cm/cmにできる。
【0026】
本発明の網戸は、巻取軸と、前記巻取軸に送出し可能に巻き取られた前述した本発明の網材と、前記網材の送出し側の端縁部が取り付けられた可動框とを備え、前記可動框には、前記網材が通されるスリットを有した筒部が形成され、前記網材は、その送出し側の端縁部にループ部が形成され、前記ループ部には前記筒部に係合される芯材が挿入され、前記芯材の周面にはその長手方向に沿った溝部が形成され、前記溝部には、押えロープによって前記ループ部が押し込み固定されていることを特徴とする。
本発明の網戸によれば、前述した曲げ硬さを有する網材でループ部を形成するので、ループ部に芯材を通す場合には、ループ部を径方向に適度に撓めつつ芯材を容易に挿入でき、また、ループ部に適度な張りがあるので、ループ部に芯材を挿入する際に当該ループ部が2重、3重に巻き込まれることを抑制できる。
また、ループ部に挿入した芯材の溝部に押えロープを押し込んで当該ループ部を芯材に固定する場合には、ループ部が適度に曲がることで芯材に容易に固定でき、且つ、ループ部を押えロープによって芯材の溝部に押し込む際に捩じれて皺が生じることを抑制できる。
【0027】
本発明の他形態の網戸は、四周枠組みされてなる網戸枠と、前記網戸枠に張設される前述した本発明の網材とを備え、前記網戸枠に沿って溝部が形成され、前記網材の周縁部は、押えロープによって前記溝部に押し込み固定されていることを特徴とする。
本発明の網戸によれば、前述した曲げ硬さを有する網材を採用するので、網材を押えロープによって網戸枠の溝部に押し込む際に当該網材が適度に曲がることで網戸枠に容易に固定でき、且つ、網材を押えローブによって網戸枠の溝部に押し込む際に捩じれて皺が生じることを抑制できる。
【符号の説明】
【0028】
10…ロール網戸、10B…パネル網戸、11,11B…網戸枠、111…上枠、112…下枠、113…縦枠、114…見付け面、115,251…溝部、12,12B…ネット、13…収納ケース、13A…巻取軸、14…当接枠、15…上レール枠、16…下レール枠、17…ガイドレール、171…底壁部、172…側壁部、173…開口形成片部、17A…ガイド溝、17B,244A…開口、20…ネット本体、201…ループ部、21…経糸、22…緯糸、23A…芯部、23B…鞘部、24…可動框、241,242…框見付け片部、243…框見込み片部、244…開口形成片部、245…連結片部、246…筒部、246A…スリット、25…芯材、26…押えロープ、30…被ガイド部、31…抜止めシート、31A…当接外面、32…接続テープ、W,W1,W2…幅寸法。
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