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  • 特許-取手及び取手カバーを備えた車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】取手及び取手カバーを備えた車両
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/02 20060101AFI20221205BHJP
   B61D 19/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
B61D17/02
B61D19/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019142172
(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公開番号】P2021024366
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バダロッティ ティモテオ
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敬
(72)【発明者】
【氏名】阿部 行伸
(72)【発明者】
【氏名】松居 亮稔
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 尚志
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特許第4611059(JP,B2)
【文献】特開2000-280899(JP,A)
【文献】特開2002-030835(JP,A)
【文献】特開2015-093594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/02
B61D 19/00
B61D 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取手及び取手カバーを備える車両であって、
前記車両は、前記取手及び前記取手カバーを収容する開口部を有しており、
前記取手カバーの少なくとも1つは、
前記開口部の上流側の端部において、開放状態から閉鎖状態まで回動自在となるようにヒンジによって車両に固定されており、
前記閉鎖状態では、前記取手カバーの外壁面が車両の外壁とほぼ同一面となるように前記取手と係合する凹部を有し、
前記取手カバーの先端部と前記開口部の下流側壁との間に間隙を有し、
車体を流れる空気の速度が一定以上の場合には、前記間隙から空気が前記開口部に流入することによって、前記取手カバーを前記閉鎖状態に保つ、
ことを特徴とする取手及び取手カバーを備える車両。
【請求項2】
前記取手カバーの先端部の外壁面側の水平断面が丸い形状を有し、
前記開口部の前記下流側壁と、前記車両の外壁との角度が90度より大きい、
ことを更に特徴とする、請求項1に記載の取手及び取手カバーを備える車両。
【請求項3】
前記取手カバーの先端部の内壁面側の水平断面が丸い形状を有する、
ことを更に特徴とする、請求項1に記載の取手及び取手カバーを備える車両。
【請求項4】
前記開口部は、水平断面において、下流側面から底部の間が曲線で構成されており、
前記取手の形状はほぼ半円形状である、
ことを更に特徴とする、請求項1に記載の取手及び取手カバーを備える車両。
【請求項5】
前記取手カバーの外壁面は、前記凹部の上流側先端において、水平断面が前記車両の外側に向けた傾斜状の突部を有し、
前記取手の外壁面は、下流側先端において、水平断面が前記車両の外側に向けた傾斜状の突部を有する、
ことを更に特徴とする、請求項1に記載の取手及び取手カバーを備える車両。
【請求項6】
水平断面において、取手カバーのヒンジ側端部はほぼ円型であり、
前記ヒンジ側端部に対応する前記開口部の上流側壁も前記ヒンジ側端部に整合してほぼ円型である、
ことを更に特徴とする、請求項1に記載の取手及び取手カバーを備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は取手及び取手カバーを備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
航空力学的な観点から鉄道車両の設計を行うことは、鉄道列車のエネルギー効率を向上させる上で重要である。特に、空気力学的に発生する騒音及び空気力学的な抵抗(抗力としても知られる)は、鉄道設計に影響を及ぼす2つの重要な考慮事項である。
空気力学的に発生する騒音及び空気力学的な抵抗は列車の速度に応じて対数関数的に増加する。このため、鉄道技術の進展によって、列車速度が高速になるにつれて、空気力学的に発生する騒音及び空気力学的な抵抗を最小化することが、列車設計において大きな課題となっている。したがって、空気力学的に発生する騒音及び空気力学的な抵抗の影響を最小限に抑制できる車両形状が求められている。
【0003】
鉄道車両における騒音及び抗力の発生を抑制するための1つの手段は、列車の形状を流線型にし、空気が突起部分及び/又は空洞を含む列車の領域を流れることを防止することである。このような領域を流れる空気は、外部騒音の原因となる渦の発生につながることがあり、また、この渦は列車の本体を通って列車の車内に伝播すると、内部騒音及び抗力を発生させる。更に、車両の突出部分及び/又は空洞で生じる高速気流の分離は、車両構造自体を振動させ、さらなる内部騒音を発生させるおそれがある。
【0004】
車両に取り付けられた取手は、空気力学的に発生する騒音及び抗力につながり得る突出部分の一例である。典型的には、列車の車体には乗客及び乗務員が列車に搭乗するためのドアが設けられ、各ドアの両側には、取手として機能する垂直のポールが配置されている。場合によっては、これらの取手は車体から突出している。しかし、車体幅を小さくするために、これらの取手は、車体内に埋め込まれることが多い。このようにすることによって、線路の軌間の幅に基づいて、車体の幅を自由に決定することができるのである。
【0005】
列車の先頭車両は、最も空気流速の影響を受けるため、空気力学的に発生する騒音及び抗力が発生する主要な領域の1つとなり得る。特に、先頭車両の取手は、列車の運転室領域の内部騒音に著しく寄与する。そのため、高速車両の先頭車両に取り付けられた取手の上方に取手カバーを配置して、取手付近の高速気流によって発生する内外の騒音や抗力を防止することが望ましい。
【0006】
従来、取手カバーとしては、取手と取手を収容する開口部からなる間隙を遮蔽するものが使用されており、頻繁にメンテナンスが必要となる、圧縮空気やバネを用いた機構によって開閉されるものが採用されていた。
【0007】
特許文献1は、従来の取手の一例が開示されている。特に、特許文献1には、「先頭車両の車体10の側面には、車掌室への開口部40が設けてあり、開口部の両側には取手140が取付けられる。乗務員が取手を把持するための開口部130は、高速走行時の空気流を乱す原因となる。平滑取手装置200は、車体外側面と車内側の間で平行移動し、走行時には開口部130を塞いで平滑化を図る」ものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4611059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の発明は、取手の開口部にヒンジ止めされており、機械的に閉じられるカバーによって取手を覆うことにより、取手付近の形状を流線形にするものである。しかしながら、特許文献1の発明は手動操作が必要な複数の機械部品から構成されているため、ユーザ側(例えば、列車運転者側)で操作の手間がかかり、機械的に複雑な構成であるため、製造コストや管理コストが嵩む。
【0010】
そこで、本発明は、列車が停止状態では容易に開くことができ、列車が走行中の場合には、車体を流れる空気によって自動的に閉鎖状態に維持される、簡単な機械的構成を有する取手カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の代表的な鉄道車両の1つは、取手及び取手カバーを収容する開口部を有しており、取手カバーは、開口部の上流側の端部において、解放状態から閉鎖状態まで回動自在となるようにヒンジによって車両に固定されており、閉鎖状態では、取手カバーの外壁面が車両の外壁とほぼ同一面となるように取手と係合する凹部を有し、取手カバーの先端部と開口部の下流側壁との間に間隙を有し、車体を流れる空気の速度(以下、「風速」ともいう。)が一定以上の場合には、間隙から空気が開口部に流入することによって、取手カバーを閉鎖状態に保つ。
【0012】
本発明の他の態様では、取手カバーの先端部の外壁面側の水平断面が丸い形状を有し、開口部の下流側壁と、車両の外壁との角度が90度より大きい。
【0013】
本発明の他の態様では、開口部は、水平断面において、下流側面から底部の間が曲線で構成されており、取手の形状はほぼ半円形状である。
【0014】
本発明の他の態様では、取手カバーの外壁面は、凹部の上流側先端において、水平断面が車両の外側に向けた傾斜状の突部を有し、取手の外壁面は、下流側先端において、水平断面が車両の外側に向けた傾斜状の突部を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、列車が停止状態では容易に開くことができ、列車が走行中の場合には、車体を流れる空気によって自動的に閉鎖状態に維持される、簡単な機械的構成による取手カバーを提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本開示の実施形態による、鉄道車両の先頭車両における取手の位置を示す図である。
図2図2は、本開示の実施形態による、車体、取手、及び取手カバーの外観図である。
図3図3は、本開示の実施形態による取手カバーが閉鎖状態の場合の、図2における断面A-A´の詳細を示す図である。
図4図4は、本開示の実施形態による取手カバーが閉鎖状態の場合の、図2における断面A-A´の詳細を示すもう1つの図である。
図5図5は、本開示の実施形態による、取手カバーが開いた状態である場合の、図2の断面A-A´の詳細を示す図を示す。
図6図6は、本開示の実施形態による、図3における領域Bを示す拡大図である。
図7図7は、本開示の実施形態による取手及び取手カバーの上端を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
本開示の態様は例として鉄道車両に関して説明されるが、本開示は鉄道車両への適用に限定されないことに留意されたい。また、本発明は、例えば航空機、バス、自動車、又は他の任意の移動手段にも適宜に適用されてもよい。
【0018】
図1は、本開示の実施形態による、鉄道車両の先頭車両上の取手の位置を示す図である。図1に示すように、列車は、先頭車両70を含む複数の車両(図示せず)から構成されてもよい。先頭車両70の車体10は、乗客及び/又は乗組員が乗降する際に出入りする、少なくとも1つの入口ドア50を含んでもよい。乗客及び/又は乗組員が先頭車両70に出入りする際に掴む取手30がドア50の両側に取り付けられてもよい。図1に示すように、取手はドア50の両側に縦に、地面に対して実質的に垂直に配置されてもよい。
【0019】
図2は、本開示の実施形態による、車体10、取手30、及び取手カバー20の外観図である。
【0020】
取手30は、開口部40内に収容されている。この開口部40は、取手30を収容するように構成された車体10の中空部である。取手30を開口部40内に配置することによって、先頭車両70の全幅を減少させ、空気力学的に発生する騒音及び抗力を低減させることができる。図2に示すように、開口部には、取手カバー20が取り付けられている。取手カバー20は、開口部40内への空気流を低減させるために、開口部40のヒンジ上で揺動して取手30と係合するように構成される。取手カバー20の詳細については後述する。
【0021】
図3は、本開示の実施形態による取手カバー20が閉鎖状態の場合に、図2における断面A-A´の詳細を示す図である。図3に示すように、説明の便宜上、取手カバー20は取手30と係合するように上方に回転された状態は、「閉鎖状態」という。破線で囲まれた領域Bは、取手カバー20が取手30と係合する領域を示している。
【0022】
図3に示すように、取手30は、開口部40内で取手カバー20によって覆われている。取手カバー20は、取手30を収容する開口部40の一端(例えば、上流側壁43)に固定されたヒンジ21を中心に回動自在となるように取り付けられている。取手カバー20は、取手カバー20が開口部40の上流側壁43に当接する開放状態と、取手カバーが取手30に係合する閉鎖状態との間で回転可能である。取手カバー20は、図3に示すように、ヒンジ21を中心に、取手30と係合する位置まで揺動するように構成されている(閉鎖状態)。また、取手カバー20は、ヒンジ21を中心に回動自在であり、取手カバー20が開いた状態(開放状態)では、人は取手30を把持することができる。
【0023】
なお、本明細書において、「上流側」とは、列車の走行中に空気が流れてくる側(すなわち、車両の進行方向)をいう。また、「下流側」とは、列車の走行中に空気が向かって流れる側(例えば、車両の進行方向とは逆方向)として定義される。また、ここでは、取手カバー20が取手30に係合している状態を閉鎖状態と呼び、取手カバー20が取手30に完全に係合していない状態を開放状態と呼ぶ(つまり、取手カバー20が取手30と上流側壁43との間に位置している状態も、開放状態とみなされる)。
【0024】
図3に示すように、取手カバー20は、取手30と係合または嵌合するように構成された凹部22を含む。この凹部22を設けることにより、車体の外面11と、取手カバーの外面23と、取手の外面31とが、列車走行中に互いに略同一面になる。このようにして、走行中に、開口部40内への空気の流入を低減させることができ、開口部40の近傍に生じる渦(及びその結果として生じる空気力学的ノイズ及び抗力)の発生を軽減することができる。
【0025】
図4は、本開示の実施形態による取手カバー20が閉鎖状態の場合に、図2の断面A-A´の詳細を示すもう1つの図である。
【0026】
図4に示すように、取手カバー20の先端(例えば下流端)と開口部40の下流側壁41との間には、間隙24が設けられている。この間隙24は、取手カバー20と下流側壁41との間を車体10に沿って流れる空気を開口部40内に導く通路として機能する。図4に示すように、開口部40の下流側壁41に対向する取手カバー20の下流側外面25は、丸みを帯びた縁部を有する。この構成によれば、空気を、取手カバー20の丸みを帯びた縁部の周りを通して間隙40内に送り込むことができる。開口部40内に送り込まれた空気は渦のように旋回し、開口部40内に空気渦60を生成する。その結果、開口部40内の空気圧が上昇し、開口部40内の圧力が開口部40の外側の空気圧を上回る。この圧力差は取手カバー20に作用するy方向における負のモーメント(取手カバー20を反時計回りに回転させるモーメント)を生成し、取手カバー20を閉鎖位置に加勢する。列車が一定速度に達すると、開口部40内及び開口部40の外部の圧力は、この状態に維持される。
つまり、開口部は、水平断面において、下流側面から底部の間が曲線で構成されており、取手の形状はほぼ半円形状である構成によれば、車両走行中に、空気流は間隙を通って開口部に導かれ、取手カバーを閉鎖状態に維持する圧力を発生させることができる。
【0027】
また、開口部40の下流側壁41の車両外側への接線12と車体の外面11とは、鈍角α(90度よりも大きい)を形成するように交差する。このような構成によれば、開口部40内の空気流80の流出を防止することができる。
つまり、取手カバーの先端部の外壁面側の水平断面が丸い形状を有し、開口部の下流側壁と、車両の外壁との角度が90度より大きい構成によれば、車両走行中に、空気流が容易に開口部内に流れ込み、開口部内の空気が流出するのを防止することができる。
【0028】
更に、図4に示すように、取手カバー20の下流側内面26も、丸みを帯びた形状となっている。取手カバー20の下流側内面26を丸みを帯びた形状にすることにより、取手カバー20が閉鎖状態にあるときの、間隙長さL(下流側壁41に沿った間隙24の長さ)が小さいことによる開口部の圧力損失を低減し、開口部40の内部と外部との間の圧力差が減少することを防止することができる。圧力損失を好適に低減させるためには、z方向の間隙長さLと少なくとも同程度の曲率半径r1が好ましい。半径をこれより小さくすると、空気流が突如変化するおそれがあり、開口部40内の空気流の分離及び圧力損失につながり得る。
【0029】
図5は、本開示の実施形態による、取手カバー20が開いた状態にあるときの、図2の断面A-A´の図を示す。
【0030】
開口部40の湾曲した形状は、開口部40の下流側壁41から開口部40の底部44を通って上流側壁43まで延在し、開口部の断面における輪郭全体の長さに及ぶ。このような形状は、空気流80を取手カバー20と開口部の上流側壁43との間の領域に向けて送り込む。その結果、開口部40内の空気圧が増大し、開口部40の内部と外部の間に圧力差を生じさせ、この圧力差がy方向における負のモーメント(取手カバー20を反時計回りに回転させるモーメント)を発生させる。この負のモーメントにより、取手カバー20が閉鎖状態に押される。湾曲した開口部40が、空気を開口部40内に効率的に導き、適当な差圧を生成するためには、大きな曲率r2が好ましいことに留意されたい。
【0031】
図5に示すように、取手の内面32は、略半円形状である。このような形状は、人間工学の観点から把持しやすいものであり、空気流を開口部40の下流側面41に向ける点で効率的である。一方、鋭い縁部を有する形状は例えば、開口部40内への空気流に悪影響を及ぼし得る。
【0032】
図5の水平断面図に示すように、取手カバー20のヒンジ端部27(すなわち、ヒンジを取り囲む取手カバー20の部分)は、空気流を開口部41内へと案内するために丸くされており、ヒンジ端部27に対応する上流側壁43もまた、ヒンジ端部27に整合する丸みを帯びた形状を有している。これにより、空気流を開口部40内へと案内することができ、ヒンジ端部27が上流側壁43と緊密に係合するので、空気はヒンジ端部27と上流側壁43との間から漏れることはない。更に、ヒンジ端部27は、車体から突出していない。この構成により、開口部40の内部と外部との間の圧力差を維持することができ、車両走行中に取手カバー20を閉鎖状態に保つことができる。
【0033】
図6は、本開示の実施形態による、図3の領域Bを示す拡大図である。
【0034】
取手30と取手カバー20の凹部22との間には、間隙29が設けられている(例えば、製造誤差等に対応するため)。間隙29を流れる空気は、y方向に(取手カバー20の移動を妨害してしまう)正のモーメント(取手カバー20を時計回りに回転させるモーメント)を生じさせ、高周波ノイズを発生させることがあるので、間隙29を小さくすることが望ましい。
【0035】
取手30と取手カバー20との間の間隙29に流入する空気量を低減するために、取手カバー20の凹部22の上流端には、車両の外側に向けた第1の傾斜状突起部28が設けられている。第1の傾斜状突起部28のx方向の高さを間隙幅Lと等しくすることにより、間隙29と取手30との間の空気流量を適度に低減することができる。なお、高さがこれ以上高くなると、望ましくない気流剥離が生じ、また、高さが低くなると、間隙29と取手30との間への空気流の流入を防止するのに効果的でなくなることがある。
【0036】
同様に、取手30と取手カバー20との間の間隙29に流入する空気量を低減するために、取手カバー20の下流側には、車両の外側に向けた第2の傾斜状突起部33が設けられている。第1の傾斜状突起部28と同様に、第2傾斜突起部33のx方向の高さを間隙幅Lと等しくすることにより、間隙29と取手30との間の空気流量を適度に低減することができる。なお、高さがこれ以上高くなると、望ましくない気流剥離が生じ、高さが低くなると、間隙29と取手30との間への空気流の流入を防止するのに効果的でなくなることがある。
つまり、適度な高さを有する突起部を、取手カバー20の凹部22の上流端及び取手カバー20の下流側に設けることで、取手と取手カバーとの間の間隙に流れ込む空気流が制限され、取手カバーが不注意に開放状態になることを防止することができる。
【0037】
図7は、本開示の実施形態による取手及び取手カバーの上端を示す図である。
【0038】
原則として、取手30付近の空気力学的な圧力は一定ではないため、高圧の領域が開口部の外側に生じることがある。このような高圧の領域は、取手カバー20を開放状態に移動させるように働く力を及ぼすことがある。したがって、このような高圧領域が開口部の外側に断続的に発生することを防止するために、開口部は、その上端又は下端に漏洩領域42を備えることができる。この漏洩領域42は、取手カバー20によって覆われていない開口部の部分である。この漏洩領域42は、開口部内外の空気の移動を制限し、開口部内外の空気を均等にすることを可能にする。
【0039】
更に、取手カバーのばたつきを防止するために、ねじりダンパをヒンジに取り付けることができる。
【0040】
車両が低速で走行し、開口部の内部と外部との間の圧力差が小さい間、取手カバー20の閉鎖状態を維持するために、低剛性コイルばねを、ねじりダンパーとして、ヒンジに設けることができる。これにより、車両が低速で走行している場合であっても、取手カバー20を閉鎖状態に維持することができる。更に、このばねは、列車が休止状態の場合に取手カバーを容易に開けることができる程度に低い剛性を有していてもよい。
【0041】
上記の説明では、車両のドアの一方の側に取り付けられた取手に設けられた取手カバーについて説明したが、車両の他方の側に取り付けられた取手に設けられた取手カバーは実質的に同様である。ドアの両側の取手カバー20は、ヒンジがそれぞれの取手の開口部の上流縁に取り付けられ、同じ方向に配置されてもよい。
【0042】
最後尾車両の取手カバーは、それらを開放状態に回転させやすい空気力学的モーメントを受ける可能性があるが、最後尾車両の空気速度は先頭車両の空気速度よりも小さいため、この効果は空気力学的騒音又は抗力の発生にはあまり寄与しないことに留意されたい。
【0043】
以上説明した取手カバーは、閉鎖状態では、車体と同一面になるため、列車の走行中に空気力学的騒音(内部及び外部の両方)を低減することができる。
【0044】
本発明の取手カバーの構成によれば、列車の走行中、空気が取手の下方の開口部内に流れ、開口部の外部の圧力よりも大きな圧力を発生させる。この圧力差は、取手カバーを旋回させ、閉鎖させる。更に、開口部の内側と外側の領域との間のこの圧力差は、列車が走行している間、取手カバーを閉じた状態に保つように機能する。
【0045】
また、取手カバー以外の付加的な構成要素を必要としないので、機械的な複雑さ及び構成要素のメンテナンスを低減することができる。
【0046】
更に、列車走行中に取手カバーが自動的に閉じるので、ユーザ(例えば列車運転者)による手動操作が不要となる。また、列車が運転されていない(例えば、移動していない)ときに、取手カバーを容易に開くことができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0048】
10 車体
11 車体の外面
12 接線
20 取手カバー
21 ヒンジ
22 凹部
23 取手カバーの外面
24 間隙
25 取手カバーの下流側外面
26 取手カバーの下流側内面
27 ヒンジ端部
28 第1の傾斜状突起部
30 取手
31 取手の外面
32 取手の内面
33 第2の傾斜状突起部
40 開口部
41 下流側壁
42 漏れ領域
43 上流側壁
44 底部
50 ドア
60 渦
70 先頭車両
80 空気流
L 間隙長さ
r1 取手半径
r2 開口部半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7