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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】シートヒンジ
(51)【国際特許分類】
   B62J 1/12 20060101AFI20221205BHJP
   B62J 9/00 20200101ALI20221205BHJP
【FI】
B62J1/12 B
B62J9/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019216524
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021084580
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴志
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/180034(WO,A1)
【文献】特開2015-17678(JP,A)
【文献】特開2011-214328(JP,A)
【文献】特開平11-334667(JP,A)
【文献】実開平4-130685(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 1/12
B62J 9/00
B62J 9/14
F16C 11/00- 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗り物用シート部と、この乗り物用シート部によって開閉する収納部との回転軸を構成するシートヒンジであって、
前記収納部に備えられる第一部材と、
前記第一部材に取り付けられて直線上に伸縮する弾性部材と、
前記第一部材に取り付けられた第一開閉切替部材と、
前記乗り物用シート部に備えられる第二部材と、
前記第二部材に取り付けられた第二開閉切替部材と、を有し、
前記第二開閉切替部材が、
陥没した第一係止部と、
前記第一係止部よりも張り出した押圧部と、
前記押圧部に対して前記第一係止部の反対側において陥没した第二係止部と、を有し、
前記第一係止部が、前記第一開閉切替部材から受けた力の方向を、前記乗り物用シート部が閉じた状態において閉じる方向に切り替えるものであり、
前記押圧部が、前記乗り物用シート部が開く際に開く方向に切り替えるものであり、
前記第一開閉切替部材が、前記回転軸よりも前記第二開閉切替部材側において、前記第二開閉切替部材に向けて前記弾性部材の弾性力によって付勢され
記乗り物用シート部が開閉することに伴って、前記第一開閉切替部材と前記第二開閉切替部材とが摺動し、
前記第一開閉切替部材が、前記第一係止部に係止することで、前記乗り物用シート部が閉じた状態で維持され、
前記第一開閉切替部材が、前記押圧部を押すことで、前記乗り物用シート部が開き、
前記第一開閉切替部材が、前記第二係止部に係止することで、前記乗り物用シート部が開いた状態で維持される、
ことを特徴とするシートヒンジ。
【請求項2】
乗り物用シート部と、この乗り物用シート部によって開閉する収納部との回転軸を構成するシートヒンジであって、
前記乗り物用シート部に備えられる第一部材と、
前記第一部材に取り付けられて直線上に伸縮する弾性部材と、
前記第一部材に取り付けられた第一開閉切替部材と、
前記収納部に備えられる第二部材と、
前記第二部材に取り付けられた第二開閉切替部材と、を有し、
前記第二開閉切替部材が、
陥没した第一係止部と、
前記第一係止部よりも張り出した押圧部と、
前記押圧部に対して前記第一係止部の反対側において陥没した第二係止部と、を有し、
前記第一係止部が、前記第一開閉切替部材から受けた力の方向を、前記乗り物用シート部が閉じた状態において閉じる方向に切り替えるものであり、
前記押圧部が、前記乗り物用シート部が開く際に開く方向に切り替えるものであり、
前記第一開閉切替部材が、前記回転軸よりも前記第二開閉切替部材側において、前記第二開閉切替部材に向けて前記弾性部材の弾性力によって付勢され、
前記乗り物用シート部が開閉することに伴って、前記第一開閉切替部材と前記第二開閉切替部材とが摺動し、
前記第一開閉切替部材が、前記第一係止部に係止することで、前記乗り物用シート部が閉じた状態で維持され、
前記第一開閉切替部材が、前記押圧部を押すことで、前記乗り物用シート部が開き、
前記第一開閉切替部材が、前記第二係止部に係止することで、前記乗り物用シート部が開いた状態で維持される、
ことを特徴とするシートヒンジ。
【請求項3】
前記第一開閉切替部材が、前記第二開閉切替部材に向けて張り出した曲面を有し、
前記第二開閉切替部材が、前記第一係止部と前記押圧部とが連なった曲面を有している、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたシートヒンジ。
【請求項4】
前記第一開閉切替部材と前記第二開閉切替部材との接触面に、潤滑剤が溜まる複数の凹部を有している、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載されたシートヒンジ。
【請求項5】
前記第二開閉切替部材と前記乗り物用シート部とが離れる方向又は近づく方向に移動可能な可動手段を有している、
ことを特徴とする請求項1、請求項1に従属する請求項3、請求項1に従属する請求項3に従属する請求項4、又は、請求項1に従属する請求項4に記載されたシートヒンジ。
【請求項6】
前記第二開閉切替部材と前記収納部とが離れる方向又は近づく方向に移動可能な可動手段を有している、
ことを特徴とする請求項2、請求項2に従属する請求項3、請求項2に従属する請求項3に従属する請求項4、又は、請求項2に従属する請求項4に記載されたシートヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物のシートと、このシートの下に形成された収納部との回転軸を構成するシートヒンジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車等の乗り物は、シートに収納部が備えられている。例えば、下記特許文献1に記載された小型車両用シート構造は、収納ボックスと、この収納ボックスにヒンジ機構を介して連結されたシートとから構成されている。シートは、ヒンジ機構を介して開閉し、収納ボックスに荷物などが収納される。
【0003】
ヒンジ機構は、収納ボックスに固定されたブラケットと、シートに連結されたアームとが、支軸によって連結され、支軸にコイルスプリングが取り付けられている。アームが、支軸を介してブラケットに対して回転することで、シートが開閉する。コイルスプリングは、シートが開く方向に付勢されているため、シートは、収納ボックスとの係止状態から解放されると、コイルスプリングの弾性力によって自動的に開く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-227155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したヒンジ機構では、シートが閉じた状態においても、コイルスプリングの弾性力が、アームを介してシートに働いているため、シートが変形し、シートと収納ボックスとの隙間が開くことで、防水性能が劣ることとなる。
【0006】
本発明は、この様な実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、乗り物用のシートを自動的に開けることができ、かつ、閉じた状態における乗り物用のシートの変形や防水性能の劣化を防ぐことができるシートヒンジの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るシートヒンジは、乗り物用シート部と、この乗り物用シート部によって開閉する収納部との回転軸を構成するシートヒンジであって、前記乗り物用シート部又は前記収納部のうち、一方に備えられる第一開閉切替部材と、他方に備えられる第二開閉切替部材とを有し、前記第一開閉切替部材が、前記回転軸よりも前記第二開閉切替部材側において、前記第二開閉切替部材に向けて弾性力によって付勢され、前記第二開閉切替部材が、前記第一開閉切替部材から受けた力の方向を、前記乗り物用シート部が閉じた状態において閉じる方向に切り替える第一係止部と、前記乗り物用シート部が開く際に開く方向に切り替える押圧部とを有し、前記乗り物用シート部が開閉することに伴って、前記第一開閉切替部材と前記第二開閉切替部材とが摺動する、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るシートヒンジは、前記第一開閉切替部材と前記第一係止部との接触部が、前記第一開閉切替部材における当該第一係止部に向けられた頂点部よりも前記押圧部側にある、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るシートヒンジは、前記押圧部が、前記第一係止部よりも前記第一開閉切替部材に向けて張り出している、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るシートヒンジは、前記第一開閉切替部材が、前記第二開閉切替部材に向けて張り出した曲面を有し、前記第二開閉切替部材が、前記第一係止部と前記押圧部とが連なった曲面を有している、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るシートヒンジは、前記第一開閉切替部材と前記第二開閉切替部材との接触面に凹部を有している、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係るシートヒンジは、前記第二開閉切替部材と前記他方とが離れる方向又は近づく方向に移動可能な可動手段を有している、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係るシートヒンジは、前記第二開閉切替部材が、前記押圧部に対して前記第一係止部の反対側に、第二係止部を有し、前記押圧部が、前記第二係止部よりも前記第一開閉切替部材に向けて張り出している、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るシートヒンジは、前記収納部に固定される第一部材と、前記第一部材に取り付けられて直線上に伸縮する弾性部材と、前記第一部材に取り付けられた前記第一開閉切替部材と、前記乗り物用シート部に固定される第二部材と、前記第二部材に取り付けられた前記第二開閉切替部材と、を有し、前記第二開閉切替部材が、陥没した前記第一係止部と、前記押圧部に対して前記第一係止部の反対側において陥没した第二係止部とを有し、前記第一開閉切替部材が、前記第一係止部に係止することで、前記乗り物用シート部が閉じた状態で維持され、前記第一開閉切替部材が、前記押圧部を押すことで、前記乗り物用シート部が開き、前記第一開閉切替部材が、前記第二係止部に係止することで、前記乗り物用シート部が開いた状態で維持される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るシートヒンジは、乗り物用シート部又は収納部のうち、一方に備えられる第一開閉切替部材と、他方に備えられる第二開閉切替部材とを有し、第一開閉切替部材が、回転軸よりも第二開閉切替部材側において、第二開閉切替部材に向けて弾性力によって付勢され、第二開閉切替部材が、第一開閉切替部材から受けた力の方向を、乗り物用シート部が閉じた状態において閉じる方向に切り替える第一係止部と、乗り物用シート部が開く際に開く方向に切り替える押圧部とを有し、乗り物用シート部が開閉することに伴って、第一開閉切替部材と第二開閉切替部材とが摺動する。すなわち、第一開閉切替部材と第二開閉切替部材とは、回転軸を介して連結されており、第一開閉切替部材は、回転軸よりも第二開閉切替部材側において、第二開閉切替部材に向けて、弾性力によって押される。この力によって第一開閉切替部材が第二開閉切替部材に押し当てられた状態で、各開閉切替部材が回転軸を軸として相対的に回転するため、各開閉切替部材は摺動する。各開閉切替部材が摺動すると、第一開閉切替部からの力の方向は、第二開閉切替部材によって切り替えられる。すなわち、乗り物用シート部が閉じた状態においては、第一開閉切替部材が、第二開閉切替部材の第一係止部に当たり、力は、乗り物用シート部が閉じる方向に働く。一方で、乗り物用シート部が開く際、第一開閉切替部材が、第二開閉切替部材の押圧部に当たることで、力の方向が切り替わり、力は乗り物用シート部が開く方向に働く。そのため、乗り物用シート部が閉じた状態において、閉じる方向に力が働けば、乗り物用シート部は閉じた状態を維持するし、換言すれば、乗り物用シート部が開く方向に力が働かないため、乗り物用シート部にも力が働かない。したがって、閉じた状態における乗り物用シート部の変形や防水性能の劣化を防ぐことができる。一方で、乗り物用シート部が開けられ、開く方向に力が働けば、乗り物用シート部は開き続ける。したがって、乗り物用シート部を自動的に開けることができる。
【0016】
本発明に係るシートヒンジは、第一開閉切替部材と第一係止部との接触部が、第一開閉切替部材における当該第一係止部に向けられた頂点部よりも押圧部側にある。すなわち、乗り物用シート部が閉じた状態においては、第一開閉切替部材からの力が、頂点部よりも押圧部側にずれた部位に働くことによって、当該ずれた側に分力が向けられ、各開閉切替部材の回転が規制される。したがって、乗り物用シート部は、閉じた状態を維持するし、また、乗り物用シート部には力が働かないため、閉じた状態における乗り物用シート部の変形や防水性能の劣化を防ぐことができる。
【0017】
本発明に係るシートヒンジは、押圧部が、第一係止部よりも第一開閉切替部材に向けて張り出している。この構成により、第一係止部と押圧部とにおいて、張り出しの度合いに差が生じ、第一開閉切替部材から第一係止部に働く力よりも、第一開閉切替部材から押圧部に働く力の方が大きくなる。すなわち、第一係止部に力が働いている状態から、押圧部に力が働く状態に変化する際(乗り物用シート部が開く際)、弾性力が増すため、この力に抗した外力が働かない限り、乗り物用シート部が閉じた状態を維持することができる。
【0018】
本発明に係るシートヒンジは、第一開閉切替部材が、第二開閉切替部材に向けて張り出した曲面を有し、第二開閉切替部材が、第一係止部と押圧部とが連なった曲面を有している。この構成により、乗り物用シート部が閉じた状態において、第一開閉切替部材が第一係止部に押し当てられた状態から、乗り物用シート部が開いて第一開閉切替部材が押圧部に押し当てられた状態となる過程において、各開閉切替部材が、曲面に沿って円滑に摺動する。
【0019】
本発明に係るシートヒンジは、第一開閉切替部材と第二開閉切替部材との接触面に凹部を有している。この構成により、潤滑剤が凹部に溜り易く、第一開閉切替部材と第二開閉切替部材との間に潤滑剤が留まるため、各開閉切替部材同士の摩耗を抑えることができる。
【0020】
本発明に係るシートヒンジは、第二開閉切替部材と他方とが離れる方向又は近づく方向に移動可能な可動手段を有している。この構成により、乗り物用シート部が閉じた状態から開いた状態となるまでの行程に、可動手段による行程が加わる。すなわち、第一開閉切替部材と第二開閉切替部材とが開く行程と、可動手段による行程との和が、乗り物用シート部が閉じた状態から開いた状態となるまでの行程となる。乗り物用シート部が開く際、はじめに可動手段が動作し、その行程においては、各開閉切替部材は回転しない。可動手段の行程は、いわゆる遊びとなる。可動手段の行程を経て、各開閉切替部材の行程においては、乗り物用シート部は自動的に開く。したがって、乗り物用シート部が閉じた状態から開いた状態となるまでの行程が、緩やかとなり、乗り物用シート部が瞬間的に開くのを防ぐことができる。
【0021】
本発明に係るシートヒンジは、第二開閉切替部材が、押圧部に対して第一係止部の反対側に、第二係止部を有し、押圧部が、第二係止部よりも第一開閉切替部材に向けて張り出している。すなわち、第一開閉切替部材が、第二係止部に押し当てられることで、乗り物用シート部が開いた状態を維持することができる。詳説すれば、第二係止部と押圧部とにおいて、張り出しの度合いに差が生じ、この差により、第一開閉切替部材からの弾性力は、第二係止部に働く際よりも、押圧部に働く際の方が大きくなる。すなわち、第一開閉切替部材が、第二係止部に押し当てられている状態から、押圧部に押し当てられる状態に変化する際(乗り物用シート部が閉じる際)、弾性力が増すため、この力に抗した外力が働かない限り、乗り物用シート部が開いた状態を維持することができる。また、本発明の構成を換言すれば、第二係止部は、押圧部よりも陥没していることから、第一開閉切替部材が、押圧部に押し当てられた状態から、第二係止部に押し当てられる状態に変化する際、弾性力への抵抗力が減少するため、例えば、搭乗者の操作等による外力が働かずとも、弾性力によって円滑に状態が変化し、自動的に乗り物用シート部が開く。
【0022】
本発明に係るシートヒンジは、収納部に固定される第一部材と、第一部材に取り付けられて直線上に伸縮する弾性部材と、第一部材に取り付けられた第一開閉切替部材と、乗り物用シート部に固定される第二部材と、第二部材に取り付けられた第二開閉切替部材と、を有し、第二開閉切替部材が、陥没した第一係止部と、押圧部に対して第一係止部の反対側において陥没した第二係止部とを有し、第一開閉切替部材が、第一係止部に係止することで、乗り物用シート部が閉じた状態で維持され、第一開閉切替部材が、押圧部を押すことで、乗り物用シート部が開き、第一開閉切替部材が、第二係止部に係止することで、乗り物用シート部が開いた状態で維持される。したがって、乗り物用シート部を自動的に開けることができ、一方で、乗り物用シート部には力が働かないため、閉じた状態における乗り物用シート部の変形や防水性能の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態に係るシートヒンジが備えられたシート構造体の斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るシートヒンジ及びシート構造体の側面であって、乗り物用シート部が閉じた状態の説明図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るシートヒンジの分解斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るシートヒンジ及びシート構造体の側面であって、乗り物用シート部が閉じた状態で可動手段が動作した状態の説明図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るシートヒンジ及びシート構造体の側面であって、乗り物用シート部が自動的に開く瞬間の状態の説明図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るシートヒンジ及びシート構造体の側面であって、乗り物用シート部が開いている最中の状態の説明図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係るシートヒンジ及びシート構造体の側面であって、乗り物用シート部が開いた状態の説明図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係るシートヒンジ及びシート構造体の側面であって、乗り物用シート部が開いた状態で可動手段が動作した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施形態に係るシートヒンジを図面に基づいて説明する。図1は、シートヒンジ20が取り付けられたシート構造体1が示され、図2は、シート構造体1の側面、及び、シートヒンジ20の一部の断面を含む側面が示されている。図3は、分解されたシートヒンジ20が示されている。
【0025】
図1に示されているとおり、シートヒンジ20は、開閉するシート構造体1のヒンジとして用いられる。シート構造体1は、例えば、自動二輪車等(図示省略。)において搭乗者が着座するものであり、乗り物用シート部2と、この乗り物用シート部2によって開閉する収納部8とを有している。乗り物用シート部2は、収納部8に対して、シートヒンジ20を回転軸として開閉する。なお、以下の説明では、自動二輪車の全長において、進行方向を前方(Front)、反対側を後方(Back)とし、車高に沿った方向を上方(Up)、下方(Down)とし、車幅に沿った方向を側方(Right Side、Left Side)とする(図1参照。)。
【0026】
図1及び図2に示されているとおり、乗り物用シート部2は、前後方向に長手であり、上面が、例えば、天然皮革、人工皮革、合成皮革などで覆われている。乗り物用シート部2は、前方に在って上方に向かうに従って後方に傾斜した第一シート傾斜部3と、この第一シート傾斜部3の後端に連接された水平な第一シート平坦部4と、この第一シート平坦部4の後端に連接されて上方に向かうに従って後方に傾斜した第二シート傾斜部5と、この第二シート傾斜部5の後端に連接された水平な第二シート平坦部6とを有している。第二シート傾斜部5の裏側には、収納部8と係合する被係合部7が形成されている。
【0027】
収納部8は、乗り物用シート部2よりも前後方向に長手の箱型であり、内側に収納空間9を有している。収納部8の後部は、上部に第二シート部10を有している。第二シート部10は、閉じた状態における乗り物用シート部2の第二シート平坦部6と同一面となる。第二シート部10の前部には、乗り物用シート部2の被係合部7と係合する係合部11が形成されている(図4参照。)。
【0028】
乗り物用シート部2は、収納部8の上に蓋として取り付けられ、前方である第一シート傾斜部3側を軸として回転することで開閉する。シートヒンジ20は、第一シート傾斜部3の裏側に固定されるシート側部材26と、収納部8における前部の外側に固定される収納側部材46とを有し、各部材26,46が、回転軸としての軸部21を介して連結されている。
【0029】
図2及び図3に示されているとおり、収納側部材46は、収納部8に取り付けられる第一部材47と、この第一部材47に取り付けられて直線上に伸縮する弾性部材としてのコイルスプリング57と、第一部材47に取り付けられてコイルスプリング57によって押される第一開閉切替部材58とを有している。一方で、シート側部材26は、乗り物用シート部2に取り付けられる固定部材27と、この固定部材27に連結された第二部材32と、この第二部材32に固定された第二開閉切替部材39と、第二部材32と固定部材27とが離れる方向又は近づく方向に開閉が可能な可動手段63とを有している。
【0030】
第一部材47は、ケース本体48と蓋部49とを有している。ケース本体48は、ほぼ直方体であって、前後方向に貫通した長方形の通路部50が、内側に形成されている。すなわち、ケース本体48は、互いに対面した一対のケース側面部51と、このケース側面部51の上下端部にそれぞれ連接されて互いに対面した一対のケース上面部52及びケース下面部53とから構成されている。両ケース側面部51は、前部が前方に張り出した一対の軸支持片54が形成されている。軸支持片54は、軸部21が通される軸孔22が形成されている。さらに、両ケース側面部51は、後端から側方に張り出した一対の第一ケースフランジ部55、及び、下端から側方に向けて張り出した一対の第二ケースフランジ部56が形成されている。それぞれの各ケースフランジ部55,56は、複数のボルト孔24が形成されている。また、各ケース上下面部52,53にも前後に向けて貫通したボルト孔24が形成されている。蓋部49は、通路部50を後方から閉塞するものであり、ケース本体48の後面に応じた長方形である。蓋部49の側部及び上下部は、前後に向けて貫通した複数のボルト孔24が形成されている。
【0031】
第一開閉切替部材58は、ほぼ直方体の移動体59と、この移動体59の前部において隆起した突部60とを有している。移動体59は、ケース本体48の通路部50を通れる大きさであり、後部にコイルスプリング57が挿入される複数の挿入孔25が形成されている。移動体59は、両側方に向けて張り出したストッパ69が形成されている。突部60は、前方に在る第二開閉切替部材39に向けて張り出し、側方から視して曲面状に形成されている。側方から視した突部60は、ほぼ半円状であり、前方に向けて最も張り出した頂部61を有し、移動体59との連接箇所である麓部62は、緩やかに傾斜して移動体59に連接されている。突部60は、側方に向けて長手であり、外面に複数の凹部(図示省略。)が形成されている。凹部は、突部60に対して浅く陥没している。
【0032】
固定部材27は、平坦な板状の固定板部28と、この固定板部28の両側端に連接されて固定板部28に対して直角である平坦な板状であると共に互いに対面した一対の第一固定側部29と、固定板部28の上端に連接されて固定板部28に対して鈍角に傾斜した平坦な板状の固定本体部30と、この固定本体部30の側端に連接されて固定本体部30に対して直角である平坦な板状であると共に互いに対面した一対の第二固定側部31とを有している。両第一固定側部29は、軸部21が通される軸孔22が下端に形成され、シャフト23が通されるシャフト孔64が上部に形成されている。固定本体部30は、複数のボルト孔24が形成されている。
【0033】
第二部材32は、第二開閉切替部材39が固定される平坦な第二部材後面部33と、固定部材27と対面する平坦な第二部材前面部34と、各部33,34の側端部に連接された第二部材側面部35と、各部33,34,35の上部であるシャフト受部36とを有している。両第二部材側面部35は、軸部21が通される軸孔22が形成されている。シャフト受部36は、前後方向に長手のシャフト用長孔37が形成され、このシャフト用長孔37が側方に貫通している。第二部材32と固定部材27との間には、緩衝部材38が挟まれる。緩衝部材38は、例えば、天然ゴム、合成ゴム、繊維、ポリウレタン等であり、具体的には、ゴムシート、フェルトシート、スポンジシート等である。
【0034】
第二開閉切替部材39は、第二部材32の第二部材後面部33に固定される平坦な第二切替部材後面部40と、第一開閉切替部材58と対面する切替面部41と、両側方に張り出した第二切替部材フランジ部45とを有している。切替面部41は、陥没した第一係止部42と、この第一係止部42に連接されると共に第一係止部42よりも第一開閉切替部材59に向けて張り出した押圧部43と、この押圧部43に対して第一係止部42の反対側に連接されると共に押圧部43よりも陥没した第二係止部44とを有し、上方から下方に向けて、第一係止部42、押圧部43及び第二係止部44の順に連なった湾曲面を形成している。両第二切替部材フランジ部45は、複数のボルト孔24が形成されている。
【0035】
以上のとおり、各部が構成されている。各部は、以下の通り組み立てられる。
【0036】
コイルスプリング57は、第一開閉切替部材58における移動体59の後方から挿入孔25に挿入される。この状態で、第一開閉切替部材58は、ケース本体48の後方から通路部50に通され、蓋部49が、ケース本体48の後部に取り付けられる。ケース本体48と蓋部49とは、各ボルト孔24にボルト65が通され、ボルト65がナット部材66に留められる。第一開閉切替部材58は、コイルスプリング57の弾性力によって前方に向けて押され、弾性力に抗して前方から外力が働けば、後方に押されるため、通路部50を前後に移動する。第一開閉切替部材58は、ストッパ69が通路部50の前部において引っ掛かるため、弾性力によって通路部50から外れて前方に飛び出すことはない。以上のとおり、収納側部材46が組み立てられる。
【0037】
第二開閉切替部材39は、第二部材32の第二部材後面部33に取り付けられる。第二開閉切替部材39と第二部材32とは、各ボルト孔24にボルト65が通され、ボルト65がナット部材66に留められる。第二部材32の第二部材前面部34は、緩衝部材38が貼り付けられる。
【0038】
収納側部材46におけるケース本体48の軸支持片54が、第二部材32の第二部材側面部35の側方に重ねられ、固定部材27の第一固定側部29が、軸支持片54の側方に重ねられる。この状態で、軸部21が各軸孔22に通され、軸部21の端部に止め輪67が取り付けられる。さらに、固定部材27の第一固定側部29が、第二部材32のシャフト受部36の側方に重ねられ、シャフト23が、シャフト孔64とシャフト用長孔37に通され、シャフト23の端部に止め輪67が取り付けられる。以上のとおり、シート側部材26が組み立てられ、収納側部材46と連結される。
【0039】
収納側部材46と第二部材32とは、軸部21を軸として回転する。第一開閉切替部材58は、軸部21よりも上方である第二開閉切替部材39側に配置されている。第一開閉切替部材58の突部60は、コイルスプリング57からの弾性力によって第二開閉切替部材39の切替面部41に押し当てられる。したがって、第二部材32が収納側部材46に対して回転すると、突部60と切替面部41とが摺動する。切替面部41は、第一係止部42、押圧部43及び第二係止部44によって、凹凸が形成されているため、各部42,43,44と突部60とが摺動することで、突部60との接触の状態が変化し、このことに伴って弾性力が作用する向きも変化し、いわゆるカムの動作が実現する。
【0040】
シャフト用長孔37の前後の長さに応じて、シャフト23が移動できるため、固定部材27と第二部材32とは、シャフト用長孔37の長さの範囲において軸部21を軸として回転する。すなわち、固定部材27と、第二部材32のシャフト受部36及びシャフト用長孔37と、軸部21及びシャフト23とから、可動手段63が構成されている。
【0041】
収納側部材46は、ケース本体48における第二ケースフランジ部56のボルト孔24に、固定用ボルト68が通され、収納部8における前部の外側に固定される。シート側部材26は、固定部材27における固定本体部30のボルト孔24に、固定用ボルトが通され、乗り物用シート部2における第一シート傾斜部3の裏側に固定される。
【0042】
以上のとおり、シートヒンジ20が構成されている。
【0043】
次に、シートヒンジ20の動作を図面に基づいて説明する。図4ないし図8は、図2同様に、シート構造体1の側面、及び、シートヒンジ20の一部の断面を含む側面が示され、乗り物用シート部2が開く過程が各図に示されている。図2は、乗り物用シート部2が閉じた状態(以下、「閉じ状態」と記す。)が示され、図4は、閉じ状態から可動手段63が動作して乗り物用シート部2が僅かに開いた状態(以下、「初期開き状態」と記す。)が示され、図5は、乗り物用シート部2が自動的に開く瞬間の状態(以下、「開き瞬間状態」と記す。)が示され、図6は、乗り物用シート部2が自動的に開いている最中の状態(以下、「開き最中状態」と記す。)が示され、図7は、乗り物用シート部2が完全に開いた状態(以下、「第一開き状態」と記す。)が示され、図8は、開き状態から可動手段が動作した状態(以下、「第二開き状態」と記す。)が示されている。
【0044】
図2に示されているとおり、閉じ状態では、乗り物用シート部2が完全に閉じており、可動手段63も動作していない。第一開閉切替部材58の突部60と、第二開閉切替部材39の第一係止部42とが係止している。すなわち、第二開閉切替部材39が、第一開閉切替部材58を押しているため、コイルスプリング57は圧縮している。換言すれば、第一開閉切替部材58は、コイルスプリング57の弾性力によって、第一係止部42に押し当てられている。詳説すれば、突部60と第一係止部42との接触部は、突部60における頂点部61よりも下方にある押圧部43寄りであり、頂点部61から上側は、第一係止部42と接触せず、隙間が空いている。この構成により、接触部と軸部21とを通る仮想直線Vを仮定した場合、接触部における弾性力の分力Fは、仮想直線Vに対して下側に働く。したがって、閉じ状態では、第一係止部42において、第一開閉切替部材58から受けた弾性力の分力Fが、シート側部材26の閉じる方向D(乗り物用シート部2が閉じる方向)に働く。乗り物用シート部2は、閉じた状態を維持し、乗り物用シート部2には力が働かない。
【0045】
図4に示されているとおり、初期開き状態では、可動手段63が動作しており、乗り物用シート部2が僅かに開いる。第一開閉切替部材58の突部60と、第二開閉切替部材39の第一係止部42とは、閉じ状態と同様に係止している。シャフト23は、第二部材32のシャフト用長孔37の前後の長さに応じて移動できるため、搭乗者の操作等による乗り物用シート部2への外力が、シート側部材26の開く方向D(乗り物用シート部2が開く方向)に働くと、固定部材27は、シャフト用長孔37の長さの範囲において、軸部21を軸として、第二部材32に対して、開く方向Dに回転し、シャフト23が、シャフト用長孔37の前端に配置される。すなわち、乗り物用シート部2と収納部8との間に隙間が空く。なお、閉じ状態から初期開き状態へ変化する際の乗り物用シート部2への外力は、搭乗者が直接乗り物用シート部2を引き上げる力の他、例えば、係合部11と被係合部7との係合を解除する操作部(図示省略。)が設けられ、操作部が操作された場合に乗り物用シート部2を跳ね上げるためのスプリング等(図示省略。)による力がある。
【0046】
図5に示されているとおり、開き瞬間状態では、搭乗者の操作等による外力が、シート側部材26の開く方向Dに働き、乗り物用シート部2は、徐々に開く。すなわち、シート側部材26が、開く方向Dに回転することで、第二開閉切替部材39の切替面部41が、第一開閉切替部材58の突部60に対して摺動し、突部60の頂部61は、切替面部41の第一係止部42と押圧部43との境界に配置されている。押圧部43は、第一係止部42よりも張り出しているため、コイルスプリング57は、閉じ状態よりも圧縮して強い弾性力が蓄えられる。
【0047】
図6に示されているとおり、開き最中状態では、乗り物用シート部2が弾性力によって自動的に開き続ける。すなわち、突部60の頂部61が、第二開閉切替部材39の押圧部43に配置されると、押圧部43において、第一開閉切替部材58から受けた弾性力の方向が、押圧部43に対して真っ直ぐ向けられ、シート側部材26が開く方向Dに働く。したがって、開き最中状態では、開き瞬間状態において蓄えられた弾性力によって、第一開閉切替部材58が第二開閉切替部材39を押し続け、シート側部材26が、開く方向Dに自動的に回転する。
【0048】
図7に示されているとおり、第一開き状態では、乗り物用シート部2が完全に開き、停止している。突部60と、切替面部41の第二係止部44とは、係止している。第二係止部44は、切替面部41の押圧部43よりも陥没していることから、開き最中状態から第一開き状態に変化する際、弾性力への抵抗力が減少するため、第一開閉切替部材58が、弾性力によって前方に押し出され、自動的に乗り物用シート部が開く。また、換言すれば、押圧部43は、第二係止部44よりも張り出していることから、第一開き状態から、開き最中状態に変化する際、弾性力が増すため、この力に抗した外力が働かない限り、乗り物用シート部2が開いた状態で維持される。
【0049】
図8に示されているとおり、第二開き状態では、乗り物用シート部2が完全に開き、かつ、可動手段63が動作している。すなわち、第一開き状態において、搭乗者の操作等による外力がさらに働いた場合、固定部材27が、軸部21を軸として、第二部材32に対して、開く方向Dに回転し、シャフト23がシャフト用長孔37の前端に配置される。なお、開き瞬間状態、開き最中状態、第一開き状態では、可動手段63は、外力の働き具合によって動作するため、動作する場合もあればしない場合もある。ただし、閉じ状態では、乗り物用シート部2の自重があるため、搭乗者の操作等による外力が乗り物用シート部2に働かない限り、可動手段63は動作しない。固定部材27と第二部材32とは、接触による衝撃が、緩衝部材38によって緩衝される。
【0050】
乗り物用シート部2が閉じる場合は、上記の過程が逆となり、搭乗者の操作等による外力が働くことで、第二開き状態、第一開き状態、開き最中状態、開き瞬間状態、初期開き状態、閉じ状態の順を経て変化する。
【0051】
以上のとおり、本実施形態が動作する。
【0052】
次に、本実施形態の効果を説明する。
【0053】
上記したとおり、本実施形態によれば、図2に示されているとおり、シートヒンジ20は、乗り物用シート部2に取り付けられるシート側部材26と、収納部8に取り付けられる収納側部材46とを有し、各部材26,46が、軸部21を介して連結されている。収納側部材46は、コイルスプリング57と、このコイルスプリング57によって押される第一開閉切替部材58とを有し、一方で、シート側部材26は、第二部材32に固定された第二開閉切替部材39を有している。第一開閉切替部材58は、湾曲面の突部60を有し、一方で、第二開閉切替部材39は、陥没した第一係止部42、張り出した押圧部43及び陥没した第二係止部44によって、凹凸した湾曲面の切替面部41を有している。第一開閉切替部材58は、軸部21よりも上方である第二開閉切替部材39側に配置されており、第一開閉切替部材58の突部60が、コイルスプリング57からの弾性力によって第二開閉切替部材39の切替面部41に押し当てられている。この状態で、シート側部材26が収納側部材46に対して回転し、突部60と切替面部41とが摺動すると、突部60と切替面部41との接触の状態が変化すると共に弾性力が作用する向きも変化し、いわゆるカムの動作が実現する。
【0054】
この構成により、閉じ状態(図2参照。)では、第一開閉切替部材58の突部60が、第二開閉切替部材39の第一係止部42に当たり、弾性力は、乗り物用シート部2が閉じる方向Dに働き、一方で、開き最中状態(図6参照。)では、突部60が、第二開閉切替部材39の押圧部43に当たることで、力の方向が切り替わり、弾性力は乗り物用シート部2が開く方向Dに働く。そのため、閉じ状態では、乗り物用シート部2は閉じた状態を維持するし、換言すれば、乗り物用シート部2が開く方向に力が働かないため、乗り物用シート部2にも力が働かない。したがって、閉じた状態における乗り物用シート部2の変形や防水性能の劣化を防ぐことができる。一方で、開き最中状態では、乗り物用シート部2は開き続ける。したがって、乗り物用シート部2を自動的に開けることができる。
【0055】
特に、本実施形態によれば、図2に示されているとおり、第一開閉切替部材58の突部60と第二開閉切替部材39の第一係止部42との接触部は、突部60における頂点部61よりも下方にある押圧部43寄りであり、頂点部61から上側は、第一係止部42と接触せず、隙間が空いている。この構成により、接触部と軸部21とを通る仮想直線Vを仮定した場合、接触部における弾性力の分力Fは、仮想直線Vに対して下側に働く。したがって、閉じ状態では、第一係止部42において、第一開閉切替部材58から受けた弾性力の分力Fが、閉じる方向Dに働き、乗り物用シート部2は、閉じた状態を維持する。
【0056】
さらに、本実施形態によれば、図2に示されているとおり、第二開閉切替部材39の押圧部43が、第一係止部42よりも張り出していることから、閉じ状態(図2参照。)から、開き最中状態(図6参照。)に変化する際、弾性力が増すため、この力に抗した外力が働かない限り、乗り物用シート部2が閉じた状態を維持することができる。
【0057】
さらに、本実施形態によれば、第一開閉切替部材58における突部60の外面には、この突部60に対して浅く陥没した複数の凹部が形成されている。したがって、グリース等の潤滑剤が凹部に溜るため、突部60と、第二開閉切替部材39の切替面部41との間に潤滑剤が留まって各部41,60同士が滑らかに摺動し、各部41,60の摩耗を抑えることができる。
【0058】
さらに、本実施形態によれば、図2に示されているとおり、シート側部材26は、乗り物用シート部2に取り付けられる固定部材27を有し、第二部材32と固定部材27とが離れる方向又は近づく方向に開閉が可能な可動手段63を有している。可動手段63は、固定部材27と、第二部材32の上部であるシャフト受部36及び前後に向けて長手のシャフト用長孔37と、軸部21及びシャフト用長孔37に通されたシャフト23とから構成されている。シャフト23は、第二部材32のシャフト用長孔37の前後の長さに応じて移動できるため、搭乗者の操作等による乗り物用シート部2への外力が、開く方向Dに働くと、固定部材27は、シャフト用長孔37の長さの範囲において、軸部21を軸として、第二部材32に対して、開く方向Dに回転し、シャフト23が、シャフト用長孔37の前端に配置される。
【0059】
この構成により、乗り物用シート部2が開いて、閉じ状態(図2参照。)から初期開き状態(図4参照。)に変化する際、はじめに可動手段63が動作し、その行程においては、第二部材32は回転せず、可動手段63の行程は、いわゆる遊びとなる。したがって、閉じ状態から開き瞬間状態(図5参照。)となるまでの行程において、乗り物用シート部2が瞬間的に開くのを防ぐことができ、閉じ状態から開き最中状態(図6参照。)となるまでの行程を、緩やかにすることができる。また、初期開き状態では、乗り物用シート部2が僅かに開き、乗り物用シート部2と収納部8との間に隙間が空くため、搭乗者が、隙間に手を入れて乗り物用シート部2を引き上げることができ、操作が容易である。
【0060】
さらに、本実施形態によれば、図7に示されているとおり、第二開閉切替部材39の第二係止部44は、押圧部43よりも陥没している。このことから、開き最中状態(図6参照。)から第一開き状態(図7参照。)に変化する際、弾性力への抵抗力が減少するため、例えば、搭乗者の操作等による外力が働かずとも、第一開閉切替部材58が、弾性力によって前方に押し出され、自動的に乗り物用シート部が開く。
【0061】
また、換言すれば、押圧部43は、第二係止部44よりも張り出していることから、第一開き状態(図7参照。)から、開き最中状態(図6参照。)に変化する際、弾性力が増すため、この力に抗した外力が働かない限り、乗り物用シート部2が開いた状態で維持される。例えば、乗り物用シート部2が開いている環境が、上り坂である場合や、強風の中の場合であっても、閉じる方向Dに作用する重力や風力等の外力が、開き最中状態における弾性力を超えなければ、乗り物用シート部2は容易に閉じることが無い。
【0062】
本発明の他の実施形態では、第一部材、弾性部材及び第一開閉切替部材が、乗り物用シート部に取り付けられてシート側部材となり、固定部材、第二部材及び第二開閉切替部材が、収納部に取り付けられて収納側部材となる。また、他の実施形態では、固定部材及び可動手段を有さず、第二部材が、乗り物用シート部又は収納部に直接固定されている。また、他の実施形態では、第二部材と第二開閉切替部材とが一体で成形されている。また、他の実施形態では、シートヒンジは、シート構造体の後部又は側部に取り付けられ、乗り物用シート部が、後部又は側部を回転軸として開く。また、他の実施形態では、第二開閉切替部材に凹部が形成され、第一開閉切替部材は、凹部を有していない。また、他の実施形態では、凹部が、第一開閉切替部材及び第二開閉切替部材に形成され、各部材の凹部が互いに対面しないようにずれて配置されている。また、他の実施形態では、凹部を有していない。
【0063】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。本発明は、例えば、自動車、航空機、船舶等の乗り物のシート構造体にも用いられる。
【符号の説明】
【0064】
1 シート構造体
2 乗り物用シート部
3 第一シート傾斜部
4 第一シート平坦部
5 第二シート傾斜部
6 第二シート平坦部
7 被係合部
8 収納部
9 収納空間
10 第二シート部
11 係合部
20 シートヒンジ
21 軸部(回転軸)
22 軸孔
23 シャフト
24 ボルト孔
25 挿入孔
26 シート側部材
27 固定部材
28 固定板部
29 第一固定側部
30 固定本体部
31 第二固定側部
32 第二部材
33 第二部材後面部
34 第二部材前面部
35 第二部材側面部
36 シャフト受部
37 シャフト用長孔
38 緩衝部材
39 第二開閉切替部材
40 第二切替部材後面部
41 切替面部
42 第一係止部
43 押圧部
44 第二係止部
45 第二切替部材フランジ部
46 収納側部材
47 第一部材
48 ケース本体
49 蓋部
50 通路部
51 ケース側面部
52 ケース上面部
53 ケース下面部
54 軸支持片
55 第一ケースフランジ部
56 第二ケースフランジ部
57 コイルスプリング(弾性部材)
58 第一開閉切替部材
59 移動体
60 突部
61 頂部
62 麓部
63 可動手段
64 シャフト孔
65 ボルト
66 ナット部材
67 止め輪
68 固定用ボルト
69 ストッパ
閉じる方向
開く方向
F 分力
V 仮想直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8