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特許7187427ロータリー式切換弁及び冷凍サイクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】ロータリー式切換弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/074 20060101AFI20221205BHJP
   F25B 13/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
F16K11/074 Z
F25B13/00 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019217458
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085513
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】木村 宏光
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-256853(JP,A)
【文献】国際公開第2009/147932(WO,A1)
【文献】特開2009-270639(JP,A)
【文献】特開2001-295951(JP,A)
【文献】特開2002-340446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/00-3/36
11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室を有するケース部材と、前記弁室に対向して設けられた弁座と、前記弁室内で前記弁座上に軸線を中心として回転可能に配設された主弁と、前記主弁の均圧孔を開閉する副弁とを備え、前記均圧孔を開として前記主弁を弁座から前記軸線方向に浮上させて該主弁を回転させることで、前記弁座のポートに連通する流路を切り換えるロータリー式切換弁において、
前記主弁の前記軸線方向への浮上時に、該軸線方向の当該主弁の位置を規制するストッパ部を前記ケース部材に備え
前記主弁の上端面が前記ストッパ部に当接することを特徴とするロータリー式切換弁。
【請求項2】
前記主弁の前記軸線方向の遊動距離が、前記主弁以外の副弁を含む部材の前記軸線方向の遊動距離より小さいことを特徴とする請求項1に記載のロータリー式切換弁。
【請求項3】
前記弁座に形成された吸入ポートの内径と前記主弁の遊動距離から算出される流路面積が、吐出ポートの開口面積より小さいことを特徴とする請求項2に記載のロータリー式切換弁。
【請求項4】
前記主弁の低圧流路を囲う摺動リブの外周長と、前記主弁の遊動距離から算出される流路面積が、吐出ポートの開口面積より小さいことを特徴とする請求項2に記載のロータリー式切換弁。
【請求項5】
前記主弁と前記ケース部材との少なくとも一方に、前記主弁の外周と該主弁の背空間とを連通する連通溝を備えたことを特徴とする請求項3または4に記載のロータリー式切換弁。
【請求項6】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、流路切換弁とを含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のロータリー式切換が、前記流路切換弁として用いられている
ことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式の冷凍サイクル等に用いられ、冷媒の流路を切り換えるロータリー式切換弁及び冷凍サイクルシステムに関する。
【0002】
従来、この種のロータリー式切換弁(四方切換弁)として例えば特許第4602593号公報(特許文献1)に開示されたものがある。特許文献1のものは、冷房から暖房または暖房から冷房に切り換えるとき、弁座上の主弁を回転させるものであるが、この主弁を回転させる際に、副弁により主弁の均圧孔を開とし、主弁にかかる圧力差を軽減するような構造が用いられている。すなわち、副弁が回転して均圧孔を開いて、主弁を圧力差にて弁座から浮かせた状態で回転させた後、副弁が反回転することにより均圧孔を閉じ、主弁を着座させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4602593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のものでは、副弁が均圧孔を閉じる際には主弁は弁座から浮いているため、主弁の回転方向に対する摩擦が殆ど無い状態、あるいは押しばねを介して主弁が駆動部と回転一体の状態となり、副弁の反回転するときに主弁も一緒に回転してしまい、均圧孔を正常に閉じることができないという問題がある。
【0005】
本発明は、主弁の均圧路を開閉する副弁を備えたロータリー式切換及び冷凍サイクルシステムにおいて、主弁の安定した切り換え動作を行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロータリー式切換弁は、弁室を有するケース部材と、前記弁室に対向して設けられた弁座と、前記弁室内で前記弁座上に軸線を中心として回転可能に配設された主弁と、前記主弁の均圧孔を開閉する副弁とを備え、前記均圧孔を開として前記主弁を弁座から前記軸線方向に浮上させて該主弁を回転させることで、前記弁座のポートに連通する流路を切り換えるロータリー式切換弁において、前記主弁の前記軸線方向への浮上時に、該軸線方向の当該主弁の位置を規制するストッパ部を前記ケース部材に備え、前記主弁の上端面が前記ストッパ部に当接することを特徴とする。
【0007】
この際、前記主弁の前記軸線方向の遊動距離が、前記主弁以外の副弁を含む部材の前記軸線方向の遊動距離より小さいことを特徴とするロータリー式切換弁が好ましい。
【0008】
また、前記弁座に形成された吸入ポートの内径と前記主弁の遊動距離から算出される流路面積が、吐出ポートの開口面積より小さいことを特徴とするロータリー式切換弁が好ましい。
【0009】
また、前記主弁の低圧流路を囲う摺動リブの外周長と、前記主弁の遊動距離から算出される流路面積が、吐出ポートの開口面積より小さいことを特徴とするロータリー式切換弁が好ましい。
【0010】
また、前記主弁と前記ケース部材との少なくとも一方に、前記主弁の外周と該主弁の背空間とを連通する連通溝を備えたことを特徴とするロータリー式切換弁が好ましい。
【0011】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、流路切換弁とを含む冷凍サイクルシステムであって、前記ロータリー式切換が、前記流路切換弁として用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のロータリー式切換弁及び冷凍サイクルシステムによれば、前記副弁を回転させて主弁の均圧孔を開として主弁を弁座から軸線方向に浮上させると、この主弁がストッパ部に例えば当接し、主弁とストッパ部との間に摩擦力が生じる。したがって、副弁を反回転させて均圧孔を閉じるとき主弁が回転することがないので、主弁の安定した切り換え動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態におけるロータリー式切換弁の主弁の着座状態の要部縦断面図である。
図2】第1実施形態におけるロータリー式切換弁の主弁の浮上状態の要部縦断面図である。
図3】第1実施形態におけるロータリー式切換弁の主弁の上面図である。
図4】第1実施形態におけるロータリー式切換弁の主弁の底面図である。
図5】第1実施形態におけるロータリー式切換弁の副弁の底面図である。
図6】第1実施形態におけるロータリー式切換弁の弁座の上面図である。
図7】本発明の第2実施形態におけるロータリー式切換弁の主弁の浮上状態の要部縦断面図である。
図8】第2実施形態におけるロータリー式切換弁の主弁の上面図である。
図9】第1、第2実施形態における主弁の遊動距離の好適な実施例を説明する図である。
図10】本発明の実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明のロータリー式切換弁及び冷凍サイクルシステムの実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施形態におけるロータリー式切換弁の主弁の着座状態の要部縦断面図、図2は同ロータリー式切換弁の主弁の浮上状態の要部縦断面図、図3は同ロータリー式切換弁の主弁の上面図、図4は同ロータリー式切換弁の主弁の底面図、図5は同ロータリー式切換弁の副弁の底面図、図6は同ロータリー式切換弁の弁座の上面図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は図1及び図2の図面における上下に対応する。
【0015】
この第1実施形態のロータリー式切換弁100は、主弁1と、副弁2と、弁座部材3と、ケース部材4と、駆動部5と、中心軸6とを有している。弁座部材3は薄型円柱状の弁座31とこの弁座31の外周に形成されたフランジ部32とで構成されている。また、ケース部材4には略円筒状の弁室4Aが形成されている。弁室4A内には、主弁1、副弁2、駆動部5及び中心軸6が収容されており、中心軸6が、主弁1、副弁2及び駆動部5を貫通して、弁座部材3とケース部材4との間に固定されている。そして、ケース部材4の弁室4Aの開口部に弁座31が嵌合され、フランジ部32をケース部材4の下端に当接させるようにして、弁座部材3がケース部材4に取り付けられている。
【0016】
主弁1は樹脂で形成された外周が円形の部材であり、弁座31側の袴部11と円筒状のピストン部12とを一体に形成したものである。ピストン部12の周囲にはピストンリング12aが配設されている。そして、中心の軸受け部13を中心軸6が貫通することで、主弁1は中心軸6の軸線Xの回りに回動自在に配設されている。また、弁室4Aの上部のピストン部12が収容される空間は円柱状のガイド孔41となっており、主弁1はピストンリング12aをガイド孔41の側面に摺動させて中心軸6の軸線X方向に移動可能となっている。そして、ガイド孔41の上端の下面は、後述のように主弁1が弁座部材3の弁座31から浮上したときに、ピストン部12の上端面121が当接するストッパ部411となっている。
【0017】
また、主弁1の袴部11には、軸線Xの片側においてドーム状に穿たれた低圧流路11Aが形成されるとともに、低圧流路11Aの天井の中央には、ピストン部12の内側に連通する均圧路11aが形成されている。また、袴部11の弁座部材3側の底面には低圧流路11Aの外周を囲うように摺動リブ111が形成されるとともに、摺動リブ111の軸線Xとは反対側の2か所に摺動リブ112,112が形成されている。さらに、袴部11は、低圧流路11Aに対して軸線Xの反対側に後述のDポート31Dが常時開放している高圧空間11Bが形成され、この高圧空間11Bの外側は略90°の範囲において開口されており、この開口部分の軸線X周り方向の両端は、それぞれストップピン当接部113となっている。このストップピン当接部113は後述の弁座31に設けられたストップピン31aに当接する。
【0018】
また、図3に示すように、ピストン部12の内側の底部には、金属板(この例ではSUS)からなる副弁座板14が配設されている。副弁座板14には、均圧路11aに対応する位置に均圧孔14aが形成されている。また、ピストン部12の内周面の一部は略90°の範囲において軸線X側に突出した突出部15が形成され、この突出部15の軸線X周り方向の両端は、それぞれ副弁係止部15aとされている。なお、この副弁係止部15aは後述する副弁2の主弁係止部21aに当接する。
【0019】
図5に示すように、副弁2は、主弁1のピストン部12の副弁収容室内に収納される略半円盤状のフランジ部21とその中央のボス部22とを有しており、このボス部22の中心には略長方形の角孔22aが形成されている。また、フランジ部21の主弁1側の面には円環状に突出したスライド弁部23が形成されている。このスライド弁部23の軸線Xからの距離は、前記主弁1における副弁座板14の均圧孔14aの軸線Xからの距離と等しくなっている。さらに、フランジ部21の軸線X周りの周上には半径方向の端面をなす主弁係止部21aとなっており、この2つの主弁係止部21aは、前記主弁1の2つの副弁係止部15aに対して択一的に係止する。
【0020】
図6に示すように、弁座31には、弁室4Aと圧縮機の冷媒の吐出側に連通されるDポート31D、低圧流路11Aと圧縮機の冷媒の吸入側に連通されるSポート31S、室外熱交換器側に連通されるC切換ポート31C及び室内熱交換器側に連通されるE切換ポート31Eが、それぞれ形成されている。なお、これらのポートはそれぞれ90°づつ離間する位置に開口されている。
【0021】
図1に示すように、駆動部5は、中心軸6に回動可能に配置されたウォームホイール51と、このウォームホイール51に歯合されたウォーム歯車52とを有し、このウォーム歯車52は図示しないモータの駆動軸に固定されている。ウォームホイール51は副弁2側に突出するカム部51aを有しており、ウォームホイール51は、このカム部51aによって中心軸6に回転可能に配置されている。また、このカム部51aは副弁2の前記略長方形の角孔22aに嵌合されている。これにより、副弁2はウォームホイール51に対して軸線X周りの回動が規制された状態で軸線X方向にのみ摺動可能となり、この副弁2はウォームホイール51と共に協働して回動する。また、ウォームホイール51と副弁2との間には、副弁2を主弁1側に付勢するコイルバネ53が配設されている。
【0022】
以上の構成により、駆動部5のウォーム歯車52とウォームホイール51の駆動力が、ウォームホイール51のカム部51aを介して副弁2に回転力が加わり、副弁2が軸線X周りに回転する。副弁2が回転すると、スライド弁部23が主弁1の副弁座板14上を摺動し、この副弁座板14の均圧孔14aが開く。これにより、主弁1における均圧路11aが開き、主弁1の上部の流体の圧力が低圧流路11A内(低圧側)へ逃げる。ここで、主弁1のピストンリング12a(及びピストン部12)とガイド孔41とのクリアランス及び、中心軸6と軸受け部13のクリアランスを介して高圧の流体がピストン1の上部へ流れ込むが、このピストン1の上部へ流れ込む流量は、均圧孔14aから逃げる流量よりも小さく設定されている。このため、ピストンリング12aの上下に圧力差が発生し、主弁1が弁座31から浮上する。そして、主弁1が浮上すると、主弁1のピストン部12の上端面121がケース部材4のストッパ部411に当接する。
【0023】
副弁2を更に回転させると、副弁2の主弁係止部21aが主弁1の副弁係止部15aに当接し、副弁2と主弁1とが一体となって回転する。そして、弁座31の上面に設けたストップピン31aに主弁1のストップピン当接部113が当接し、この所定位置で回転が止まる。次に、駆動部5のウォームホイール51を反回転させると、副弁2が反回転し、この副弁2のスライド弁部23が副弁座板14上を摺動し、この副弁座板14の均圧孔14aを閉じる。これにより、均圧路11aが閉じられ、主弁1の上部に圧力が溜まり、主弁1の上部と低圧流路11A内(低圧側)との圧力差により、主弁1が弁座31に着座する。
【0024】
上記のように、主弁1が弁座31から浮上した状態で、副弁2を反回転させるとき、副弁2はスライド弁部23を副弁座板14上で摺動させるが、主弁1は、そのピストン部12の上端面121がケース部材4のストッパ部411に当接しているので、この上端面121とストッパ部411との摩擦力により、主弁1の軸線X周りの位置は固定されたままとなる。したがって、副弁2の反回転によりスライド弁部23で副弁座板14の均圧孔14aすなわち均圧路11aを確実に閉じることができ、主弁1の安定した切り換え動作が得られる。
【0025】
また、図1に示すように、主弁1の遊動距離L1は、副弁2の遊動距離L2よりも小さくなっている。このため、主弁1(上端面121)をストッパ部411に確実に当接させることができる。
【0026】
図7は本発明の第2実施形態におけるロータリー式切換弁の主弁の着座状態の要部縦断面図、図8は同ロータリー式切換弁の主弁の上面図であり、以下の実施形態において第1実施形態と同様な部材、同様な要素には第1実施形態と同じ符号を付記して詳細な説明は省略する。この第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、主弁1のピストン部12の上端の4か所に連通溝12Aを設けた点である。
【0027】
この連通溝12Aの開口面積は、ピストンリング12aとガイド孔41とのクリアランスの開口面積より大きくなっており、このような連通溝12Aを設けることで、主弁1が浮上してピストン部12の上端面121がケース部材4のストッパ部411に当接した状態で、ピストン部12の外周とガイド孔41とのクリアランスの高圧がピストン部12の背空間(主弁1の主な上部空間)にも供給されるようになる。したがって、ピストンリング12aの上下の圧力差が軽減され、主弁1(上端面121)のストッパ部411への押圧力を軽減できる。したがって、上端面121とストッパ部411との摩擦力を確実に確保でき、さらに主弁1の切換動作に必要な動力を削減でき、安定した切り換え動作が得られる。なお、上記のような連通溝はケース部材4のストッパ部411側に設けてもよい。
【0028】
第1実施形態及び第2実施形態において、好ましい実施例は以下のとおりである。例えば、図2に示すように、主弁1が弁座31から浮上して、ピストン部12の上端面121がストッパ部411に当接した状態では、主弁1の摺動リブ111と弁座31との隙間は、主弁1の遊動距離L1となる。そして、図9に示すように、弁座31の「吸入ポート」であるSポート31Sの内径「D1」と主弁1の遊動距離「L1」から決まる(算出される)流路面積が、「吐出ポート(内径D2)」であるDポート31Dの開口面積より小さくなるように、遊動距離「L1」が設定されているのが好ましい。すなわち、
π×D1×L1<π×(D2/2)2 より
L1<(D2/2)2 /D1
とされるのが好ましい。これにより、主弁1に適切な圧力差が加わる。
【0029】
また、主弁1の低圧流路11Aを囲う摺動リブ111の外周長「S」と、主弁1の遊動距離「L1」から決まる(算出される)流路面積(図9の斜線部)が、「吐出ポート」であるDポート31Dの開口面積より小さくなるように、遊動距離「L1」が設定されているのが好ましい。すなわち、
S×L1<π×(D2/2)2 より
L1<π×(D2/2)2 /S
とされるのが好ましい。これにより、主弁1に適切な圧力差が加わる。
【0030】
主弁1の遊動距離が大きいと、主弁1の上昇後高圧側の流体が低圧側へ多く流れ出てしまう為、高圧空間11Bの圧力が低くなり主弁1にかかる圧力差が小さくなってしまうが、上記の設定によりこのようなことが生じない。すなわち、主弁1の遊動距離L1を小さくすることで低圧側への流出を抑制でき、主弁1に適切な圧力差が加わり、安定した切り換え動作を行える。
【0031】
図10は実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図であり、空気調和機の冷凍サイクルシステムの例である。空気調和機は、圧縮機50、室外熱交換器60,膨張弁70、室内熱交換器80、実施形態のロータリー式切換弁100を有しており、これらの各要素は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルシステムを構成している。
【0032】
冷凍サイクルシステムの流路は実施形態のロータリー式切換弁100により冷房運転および暖房運転の2通りの流路に切換えられ、冷房運転時には図10(A)の状態となり、暖房運転時には図10(B)の状態となる。なお、この図10に示すロータリー式切換弁100は弁座部3の裏側から見た状態として、要部の位置関係のみを示し、主弁1の一部の破線表示と実線は弁座と当接した部分を図示してある。また、前記Sポート31S、Dポート31D、E切換ポート31E、C切換ポート31Cは符号を省略し、それぞれ「S」、「D」、「E」、「C」の記号で示してある。
【0033】
図10(A)の冷房運転時には、ロータリー式切換弁100において主弁の低圧流路11AによりSポート「S」がE切換ポート「E」に接続され、高圧空間11BによりDポート「D」がC切換ポート「C」に接続される。そして、図に矢印で示すように、圧縮機50で圧縮された流体としての冷媒がロータリー式切換弁100のDポート「D」に流入してC切換ポート「C」から室外熱交換器60に流入され、室外熱交換器60から流出する冷媒が、膨張弁70に流入される。そして、この膨張弁70で冷媒が膨張され、室内熱交換器80に供給される。この室内熱交換器80から流出する冷媒は、ロータリー式切換弁100でE切換ポート「E」からSポート「S」に流れ、Sポート「S」から圧縮機50へ循環される。
【0034】
図10(B)の暖房運転時には、ロータリー式切換弁100において主弁の低圧流路11AによりSポート「S」がC切換ポート「C」に接続され、高圧空間11BによりDポート「D」がE切換ポート「E」に接続される。そして、図に矢印で示すように、圧縮機50で圧縮された冷媒がロータリー式切換弁100のDポート「D」に流入してE切換ポート「E」から室内熱交換器80に流入され、室内熱交換器80から流出する冷媒が、膨張弁70に流入される。そして、この膨張弁70で冷媒が膨張され、室外熱交換器60に供給される。この室外熱交換器60から流出する冷媒は、ロータリー式切換弁100でC切換ポート「C」からSポート「S」に流れ、Sポート「S」から圧縮機50へ循環される。
【0035】
なお、上記第1、第2実施形態においては、モータの駆動軸の回転を副弁の回転に伝える歯車機構として、ウォーム歯車52とウォームホイール51によるウォーム歯車機構で説明してきたが、ウォーム歯車機構に限定するものではなく、その他の歯車機構を使用しても良い。例えば、平歯車や、遊星歯車機構等としても良い。
【0036】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
1 主弁
11 袴部
11A 低圧流路
11B 高圧空間
11a 均圧路
111 摺動リブ
112 摺動リブ
113 ストップピン当接部
12 ピストン部
12A 連通溝
12a ピストンリング
121 上端面
13 軸受け部
14 副弁座板
14a 均圧孔
15 突出部
15a 副弁係止部
2 副弁
21 フランジ部
21a 主弁係止部
22 ボス部
22a 角孔
23 スライド弁部
3 弁座部材
31 弁座
31D Dポート
31S Sポート
31E E切換ポート
31C C切換ポート
31a ストップピン
32 フランジ部
4 ケース部材
4A 弁室
41 ガイド孔
411 ストッパ部
5 駆動部
51 ウォームホイール
51a カム部
52 ウォーム歯車
53 コイルバネ
6 中心軸
X 軸線
50 圧縮機
60 室外熱交換器
70 膨張弁
80 室内熱交換器
100 ロータリー式切換弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10