(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】アフィニティークロマトグラフィー洗浄バッファー
(51)【国際特許分類】
C07K 1/22 20060101AFI20221205BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20221205BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20221205BHJP
【FI】
C07K1/22 ZNA
C07K16/00
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2019503524
(86)(22)【出願日】2017-07-25
(86)【国際出願番号】 US2017043743
(87)【国際公開番号】W WO2018022628
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-07-22
(32)【優先日】2016-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506423475
【氏名又は名称】セファロン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リュ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ティエンイ・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオチン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ミ・ジン
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特表平03-504975(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0255302(US,A1)
【文献】国際公開第2007/054809(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0068612(US,A1)
【文献】PROTEIN A INTERMEDIATE WASH STRATEGIES [ONLINE],BIOPROCESS INTERNATIONAL,2015年02月06日,検索日2021.8.11 <https://bioprocessintl.com/downstream-processing/chromatography/protein-intermediate-wash-strategies/
【文献】THERMO FISHER SCIENTIFIC INC.,INSTRUCTIONS PIERCE PROTEIN REFOLDING KIT[ONLINE],2010年,検索日2021.8.11, <https://assets.thermofisher.com/TFS-Assets/LSG/manuals/MAN0011490_Pierce_Protein_Refolding_UG.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/22
C07K 16/00
C07K 1/34
C12N 15/13
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、
50mM~150mMのアルギニンと、
50mM~200mMのグアニジンとを含む、
抗体と、宿主細胞タンパク質(HCP)を含む1つ以上の夾雑タンパク質とを含む混合物から抗体を精製するのに使用するためのプロテインAアフィニティークロマトグラフィー洗浄溶液。
【請求項2】
アルギニンを75mM~125mM含む、請求項
1に記載の洗浄溶液。
【請求項3】
アルギニンを85mM~115mM含む、請求項1
または2に記載の洗浄溶液。
【請求項4】
アルギニンを90mM~110mM含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項5】
アルギニンを95mM~105mM含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項6】
アルギニンを100mM含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項7】
グアニジンを100mM~200mM含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項8】
グアニジンを150mM~200mM含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項9】
グアニジンを100mM~150mM含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項10】
グアニジンを150mM含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項11】
アニオン性界面活性剤をさらに含む、請求項1~1
0のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項12】
前記アニオン性界面活性剤を10mM~40mM含む、請求項1
1に記載の洗浄溶液。
【請求項13】
前記アニオン性界面活性剤を20mM~30mM含む、請求項1
1または12に記載の洗浄溶液。
【請求項14】
前記アニオン性界面活性剤を22.5mM~27.5mM含む、請求項1
1~1
3のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項15】
前記アニオン性界面活性剤を25mM含む、請求項1
1~1
4のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項16】
前記アニオン性界面活性剤が、ナトリウムオクタノエートを含む、請求項1
1~1
5のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項17】
ナトリウムクロライドをさらに含む、請求項1~1
6のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項18】
ナトリウムクロライドを50mM~200mM含む、請求項
17に記載の洗浄溶液。
【請求項19】
ナトリウムクロライドを100mM~200mM含む、請求項
17または請求項
18に記載の洗浄溶液。
【請求項20】
ナトリウムクロライドを150mM~200mM含む、請求項
17~
19のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項21】
ナトリウムクロライドを100mM~150mM含む、請求項
17~2
0のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項22】
ナトリウムクロライドを150mM含む、請求項
17~2
1のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項23】
pHが7.5である、請求項1~2
2のいずれか1項に記載の洗浄溶液。
【請求項24】
精製した
抗体の調製方法であって、
抗体と
、宿主細胞タンパク質(HCP)を含む1つ以上の夾雑タンパク質とを含む混合物を
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーリガンドの上に充填することと、
50mM~150mMのアルギニンと
50mM~200mMのグアニジンとを含む水性洗浄溶液で、前記リガンドを洗浄して、前記1つ以上の夾雑タンパク質を前記リガンドから溶出してから、前記
抗体を前記リガンドから溶出することによって、前記
抗体の精製溶出液を形成することを含む前記方法。
【請求項25】
前記抗体が、TNF様リガンド1A(TL1a)に特異的に結合する、請求項2
4に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体が、配列番号5のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLとを含む、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体が、配列番号6のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLとを含む、請求項
25に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体が、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に特異的に結合する、請求項2
4に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体が、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLとを含む、請求項
28に記載の方法。
【請求項30】
前記抗体が、CD38に特異的に結合する、請求項2
4に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体が、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLとを含む、請求項3
0に記載の方法。
【請求項32】
前記溶液が、アルギニンを75mM~125mM含む、請求項
24~3
1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記溶液が、アルギニンを85mM~115mM含む、請求項
24~3
2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記溶液が、アルギニンを90mM~110mM含む、請求項
24~
33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記溶液が、アルギニンを95mM~105mM含む、請求項
24~
34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記溶液が、アルギニンを100mM含む、請求項
24~
35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記溶液が、グアニジンを100mM~200mM含む、請求項
24~
36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記溶液が、グアニジンを150mM~200mM含む、請求項
24~
37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記溶液が、グアニジンを100mM~150mM含む、請求項
24~
38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記溶液が、グアニジンを150mM含む、請求項
24~
39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記溶液が、アニオン性界面活性剤をさらに含む、請求項
24~4
0のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記溶液が、前記アニオン性界面活性剤を10mM~40mM含む、請求項4
1に記載の方法。
【請求項43】
前記溶液が、前記アニオン性界面活性剤を20mM~30mM含む、請求項4
1または請求項
42に記載の方法。
【請求項44】
前記溶液が、前記アニオン性界面活性剤を22.5mM~27.5mM含む、請求項4
1~
43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記溶液が、前記アニオン性界面活性剤を25mM含む、請求項4
1~
44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記アニオン性界面活性剤が、ナトリウムオクタノエートを含む、請求項4
1~
45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記溶液が、ナトリウムクロライドをさらに含む、請求項
24~
46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記溶液が、ナトリウムクロライドを50mM~200mM含む、請求項
47に記載の方法。
【請求項49】
前記溶液が、ナトリウムクロライドを100mM~200mM含む、請求項
47または
48に記載の方法。
【請求項50】
前記溶液が、ナトリウムクロライドを150mM~200mM含む、請求項
47~
49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記溶液が、ナトリウムクロライドを100mM~150mM含む、請求項
47~5
0のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記溶液が、ナトリウムクロライドを150mM含む、請求項
47~5
1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記溶液のpHが7.5である、請求項2
4~
52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
ウイルスを不活化するのに十分な期間、前記
抗体の前記精製溶出液のpHを低下させることをさらに含む、請求項2
4~
53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
pHを2.5~5.0まで低下させることをさらに含む、請求項2
4~
54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記
抗体の前記精製溶出液をろ過して、ウイルスを除去することをさらに含む、請求項2
4~
55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
透析ろ過、限外ろ過または透析ろ過と限外ろ過の両方で、前記
抗体の前記精製溶出液を処理することをさらに含む、請求項2
4~
56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記
抗体の前記精製溶出液をメンブレンクロマトグラフィー担体の上に充填することと、さらに精製した溶出液を含むフロースルーを前記メンブレンクロマトグラフィー担体から回収することをさらに含む、請求項
24~
57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記メンブレンクロマトグラフィー担体が、陰イオン交換メンブレンクロマトグラフィー担体を含む、請求項
58に記載の方法。
【請求項60】
陰イオン交換クロマトグラフィー工程を含まない、請求項2
4~
59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
陽イオン交換クロマトグラフィー工程を含まない、請求項2
4~6
0のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
容量が少なくとも250リットルであるバイオリアクターで、前記
抗体と、1つ以上の夾雑タンパク質を発現させた、請求項2
4~6
1のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記バイオリアクターの容量が、少なくとも500リットル、少なくとも2000リットルまたは少なくとも5000リットルである、請求項
62に記載の方法。
【請求項64】
製薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物として、前記
抗体の前記精製溶出液を調合することをさらに含む、請求項2
4~
63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
製薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物として、前記
抗体の前記さらに精製した溶出液を調合すること
をさらに含む、請求項
58または
59に記載の方法。
【請求項66】
前記
抗体をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で発現させる、請求項2
4~
65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記溶液が、アルギニンを200mMと、トリブチルホスフェートを0.05%(w/v)と、NaClを150mM含む、請求項1または
17~2
3のいずれか
1項に記載の洗浄溶液。
【請求項68】
前記溶液が、アルギニンを250mMと、カプリル酸を25mMと、ナトリウムクロライドを150mM含む、請求項1または
17~2
3のいずれか
1項に記載の洗浄溶液。
【請求項69】
前記溶液が、アルギニンを100mMと、グアニジンを150mMと、CAを25mMと、ナトリウムクロライドを150mM含む、請求項1~1
0または
17~2
3のいずれか
1項に記載の洗浄溶液。
【請求項70】
前記溶液が、TRITON(登録商標)X-100を0.1%(w/v)と、アルギニンを250mMと、ナトリウムクロライドを150mM含む、請求項1、1
1~1
5または
17~2
3のいずれか
1項に記載の洗浄溶液。
【請求項71】
前記溶液が、アルギニンを250mMと、TRITON(登録商標)X-100を0.1%(w/v)含む、請求項1、1
1~1
5または
17~2
3のいずれか
1項に記載の洗浄溶液。
【請求項72】
前記溶液が、アルギニンを250mMと、トリブチルホスフェートを0.05%(w/v)含む、請求項1、1
1~1
5または
17~2
3のいずれか
1項に記載の洗浄溶液。
【請求項73】
前記溶液が、アルギニンを50mM~100mMと、グアニジンを100mM~250mMと、カプリル酸を25mM含む、請求項1~1
0または
17~2
3のいずれか
1項に記載の洗浄溶液。
【請求項74】
前記溶液が、グアニジンを350mMと、トリブチルホスフェートを0.05%(w/v)含む、請求項1または2
3のいずれか
1項に記載の洗浄溶液。
【請求項75】
ウイルス対数減少値(LRV)によって測定した場合に、前記プロテインA洗浄溶液が、前記混合物からのウイルスクリアランスを向上させる、請求項2
4~
65のいずれか
1項に記載の方法。
【請求項76】
前記LRVが、4.0log
10~8.0log
10または3.0log
10~8.0log
10である、請求項
75に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年7月25日に提出された米国特許仮出願第62/366,302号、2016年7月25日に提出された米国特許仮出願第62/366,309号及び2017年6月21日に提出された米国特許仮出願第62/523,032号(それぞれ、その内容は、参照により、その全体が、あらゆる目的で本明細書に援用される)に関するものである。
【0002】
EFS-WEBを介して電子的に提出した配列表の参照
電子的に提出した配列表(名称:2873_274PC03_SeqListing.txt、サイズ:8,311バイト、作成日:2017年7月25)の内容は、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0003】
本発明は概して、タンパク質の生化学の分野に関するものである。さらに詳細には、本発明は、宿主細胞タンパク質から標的タンパク質を精製するためのアフィニティークロマトグラフィーで用いる中間洗浄バッファーに関するものである。アフィニティークロマトグラフィーカラムを塩基性アミノ酸、塩、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤または有機ホスフェートと、グアニジンで洗浄することによって、タンパク質調製物から、宿主細胞タンパク質の不純物が大幅に減少する。
【背景技術】
【0004】
組み換えタンパク質は、宿主細胞で発現させて、一連のクロマトグラフィーとろ過工程によって精製する(Liu et al.,MAbs 2:5 480-499(2010))。プロテインAアフィニティークロマトグラフィーは、その高い特異性のために、モノクローナル抗体を精製する際に、最も高い頻度で用いられているアプローチである(Shukla et al.,J of Chrom.B 848:1 28-39(2007))。標的タンパク質と共発現する宿主細胞タンパク質(HCP)は、問題となる主な不純物である。HCPは、標的タンパク質と共精製されることがあるからである。したがって、所望の純度の目的タンパク質を得るために、治療グレードのモノクローナル抗体(mAb)は通常、プロテインAクロマトグラフィーの後に、2回以上のポリッシングクロマトグラフィー工程によって精製する。残念なことに、追加の各クロマトグラフィー工程により、タンパク質収率が必然的に低下する。タンパク質がカラム上に残るからである。追加のカラムの使用により、プロセスの費用と操作の煩雑性が上昇する。
【0005】
典型的な精製スキーム(下流カスケードとしても知られている)では、アフィニティークロマトグラフィーの後に、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を用い、その後に、陰イオン交換クロマトグラフィー(AEX)を用いる。陽イオン交換クロマトグラフィーと陰イオン交換は通常、ポリッシング工程とみなす(例えば、GE Healthcare.(2006).Process-scale purification of monoclonal antibodies-polishing using CaptoTM Q、www.gelifesciences.com/gehcls_images/GELS/Related%20Content/Files/1314750913712/litdoc28903716_20130507212449.PDFを参照されたい)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】GE Healthcare.(2006).Process-scale purification of monoclonal antibodies-polishing using CaptoTM Q、www.gelifesciences.com/gehcls_images/GELS/Related%20Content/Files/1314750913712/litdoc28903716_20130507212449.PDF
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プロテインAカラムの性能を向上させることによって、ポリッシングクロマトグラフィー工程を減少または排除すると、開発努力と製造コストを大幅に削減したり、標的物の回収率を向上したり、製造作業を簡潔化したりできる。
本発明は、捕捉カラムの性能を改善することで、必要なポリッシング工程数を減らす目的で、アフィニティークロマトグラフィーカラムに適用する包括的な中間洗浄策を提供する。これらのデータにより、本発明の洗浄溶液によって、mAbの精製プロセスを大幅に簡潔化できる可能性のあることが示されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本発明は、水と、塩基性アミノ酸と、塩と、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤または有機ホスフェートとを含むアフィニティークロマトグラフィー洗浄溶液を特徴とする。いくつかの好ましい実施形態では、この塩基性アミノ酸はアルギニンであり、塩はナトリウムクロライドであり、アニオン性界面活性剤はナトリウムオクタノエートである。いくつかの好ましい実施形態では、塩基性アミノ酸はアルギニンであり、塩はナトリウムクロライドであり、アニオン性界面活性剤はナトリウムオクタノエートであり、洗浄溶液はグアニジンも含む。いくつかの好ましい実施形態では、塩基性アミノ酸はアルギニンであり、塩はナトリウムクロライドであり、非イオン性界面活性剤は、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール(TRITON(登録商標)X-100)である。いくつかの好ましい実施形態では、塩基性アミノ酸はアルギニンであり、塩はナトリウムクロライドであり、有機ホスフェートはトリブチルホスフェートである。本発明の洗浄溶液は好ましくは、pHが7~9の範囲である。好ましい実施形態では、洗浄溶液は、pHが約7.0であるか、pHが約7.5であるか、pHが約8.0であるか、pHが約8.5であるか、またはpHが約9.0である。
【0009】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを0mM超、約500mM未満と、ナトリウムクロライドを0mM超、約300mM未満と、アニオン性界面活性剤を5mM超、約45mM未満含む。本発明の洗浄溶液は、アルギニンを約50mM~約150mM、アルギニンを約75mM~約125mM、アルギニンを約85mM~約115mM、アルギニンを約90mM~約110mM、アルギニンを約95mM~約105mM、アルギニンを約100mM~約400mM、アルギニンを約150mM~約350mM、アルギニンを約200mM~約300mM、アルギニンを約300mM~約350mM、またはアルギニンを約250mM~約300mM含んでよい。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約300mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約250mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約200mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約50mM、アルギニンを約75mM、アルギニンを約90mM、アルギニンを約100mM、アルギニンを約105mM、アルギニンを約110mM、アルギニンを約125mM、アルギニンを約150mM、アルギニンを約200mM、アルギニンを約250mM、アルギニンを約300mM、アルギニンを350mM、アルギニンを約400mM、アルギニンを約450mM、またはアルギニンを約500mM含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ナトリウムクロライドを約50mM~約200mM、ナトリウムクロライドを約100mM~約200mM、ナトリウムクロライドを約150mM~約200mM、またはナトリウムクロライドを約100mM~約150mM含んでよい。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ナトリウムクロライドを約200mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ナトリウムクロライドを約50mM、ナトリウムクロライドを約100mM、またはナトリウムクロライドを約150mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ナトリウムクロライドを約100mM含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アニオン性界面活性剤を約5mM~約45mM、アニオン性界面活性剤を約10mM~約40mM、アニオン性界面活性剤を約20mM~約30mM、またはアニオン性界面活性剤を22.5mM~約27.5mM含んでよい。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アニオン性界面活性剤を約22.5mM~約27.5mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アニオン性界面活性剤を約5mM、アニオン性界面活性剤を約20mM、アニオン性界面活性剤を約22.5mM、アニオン性界面活性剤を約25mM、アニオン性界面活性剤を約30mM、アニオン性界面活性剤を約40mM、またはアニオン性界面活性剤を約45mM含む。いくつかの実施形態では、アニオン性界面活性剤は、ナトリウムオクタノエートを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約300mM、アルギニンを約250mM、またはアルギニンを約200mMと、ナトリウムクロライドを約150mM、またはナトリウムクロライドを約100mMと、アニオン性界面活性剤を約25mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約250mMと、ナトリウムクロライドを約150mMと、ナトリウムオクタノエートなどのアニオン性界面活性剤を約25mM含み、pHが約7.5である。
【0013】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約50mM超、約150mM未満と、グアニジンを約50mM超、約250mM未満と、ナトリウムクロライドを0mM超、約300mM未満と、アニオン性界面活性剤を約5mM超、約45mM未満含む。本発明の洗浄溶液は、アルギニンを約50mM~約150mM、アルギニンを約75mM~約125mM、アルギニンを約85mM~約115mM、アルギニンを約90mM~約110mM、アルギニンを約95mM~約105mM、またはアルギニンを約98mM~約102mM含んでよい。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約100mM含む。本発明の洗浄溶液は、グアニジンを約50mM~約200mM、グアニジンを約50mM~約250mM、グアニジンを約100mM~約200mM、グアニジンを約150mM~約200mM、グアニジンを約100mM~約150mM、グアニジンを約125mM~約175mM、グアニジンを約135mM~約165mM、またはグアニジンを約145mM~約155mM含んでよい。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、グアニジンを約150mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約100mMと、グアニジンを約150mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、グアニジンを約50mM、グアニジンを約125mM、グアニジンを約135mM、グアニジンを約145mM、グアニジンを約150mM、グアニジンを約155mM、グアニジンを約160mM、グアニジンを約165mM、グアニジンを約170mM、グアニジンを約175mM、グアニジンを約180mM、グアニジンを約185mM、グアニジンを約190mM、グアニジンを約195mM、グアニジンを約200mM含む。このような洗浄溶液は、アニオン性界面活性剤をさらに含んでもよいか、ナトリウムクロライドをさらに含んでもよいか、またはアニオン性界面活性剤とナトリウムクロライドをさらに含んでもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、アルギニンとグアニジンとを含む洗浄溶液は、アニオン性界面活性剤を約5mM~約45mM、アニオン性界面活性剤を約20mM~約30mM、アニオン性界面活性剤を約22.5mM~約27.5mM、アニオン性界面活性剤を約22mM~約28mM、またはアニオン性界面活性剤を約23mM~約29mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アニオン性界面活性剤を約25mM含む。アニオン性界面活性剤は好ましくは、ナトリウムオクタノエートである。いくつかの好ましい実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約100mMと、グアニジンを約150mMと、アニオン性界面活性剤(好ましくは、ナトリウムオクタノエートである)を約25mM含み、pHが約7.5である。
【0015】
いくつかの実施形態では、アルギニンとグアニジンとを含むか、またはアルギニンと、グアニジンと、アニオン性界面活性剤とを含む洗浄溶液は、ナトリウムクロライドを約50mM~約200mM、ナトリウムクロライドを約100mM~約200mM、ナトリウムクロライドを約150mM~約200mM、ナトリウムクロライドを約100mM~約150mM、ナトリウムクロライドを約125mM~約175mM、ナトリウムクロライドを約135mM~約165mM、またはナトリウムクロライドを約145mM~約155mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ナトリウムクロライドを約150mM含む。いくつかの好ましい実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約100mMと、グアニジンを約150mMと、アニオン性界面活性剤(好ましくは、ナトリウムオクタノエートである)を約25mMと、ナトリウムクロライドを約150mM含み、pHが約7.5である。
【0016】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを0mM超、約500mM未満と、ナトリウムクロライドを0mM超、約250mM未満と、非イオン性界面活性剤を0体積%超、約0.25体積%未満含む。その洗浄溶液は、アルギニンを約100mM~約400mM、アルギニンを約150mM~約350mM、アルギニンを約200mM~約300mM、アルギニンを約300mM~約350mM、またはアルギニンを約250mM~約300mM含んでよい。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約300mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄液は、アルギニンを約250mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約200mM含む。その洗浄液は、ナトリウムクロライドを約50mM~約200mM、ナトリウムクロライドを約100mM~約200mM、ナトリウムクロライドを約150mM~約200mM、またはナトリウムクロライドを約100mM~約150mM含んでよい。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ナトリウムクロライドを約200mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ナトリウムクロライドを約150mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ナトリウムクロライドを約100mM含む。その洗浄溶液は、非イオン性界面活性剤を約0.01%(w/v)~約0.2%(w/v)、非イオン性界面活性剤を約0.05%(w/v)~約0.15%(w/v)、非イオン性界面活性剤を約0.1%(w/v)~約0.15%(w/v)、または非イオン性界面活性剤を約0.05%(w/v)~約0.1%(w/v)含んでよい。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、非イオン性界面活性剤を約0.01%(w/v)、約0.05%(w/v)、約0.1%(w/v)、約0.15%(w/v)または約0.2%(w/v)含む。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤は、TRITON(登録商標)X-100を含む。いくつかの実施形態では、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約300mM、アルギニンを約250mM、またはアルギニンを約200mMと、ナトリウムクロライドを約200mM、ナトリウムクロライドを約150mM、またはナトリウムクロライドを約100mMと、有機溶媒を約0.0%含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約250mMと、ナトリウムクロライドを約150mMと、非イオン性界面活性剤を約0.1%(w/v)含み、pHが約7.5である。
【0018】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを0mM超、約500mM未満と、ナトリウムクロライドを0mM超、約250mM未満と、有機ホスフェートを0体積%超、約0.1体積%未満含む。本発明の洗浄溶液は、アルギニンを約100mM~約400mM、アルギニンを約150mM~約350mM、アルギニンを約200mM~約300mM、アルギニンを約300mM~約350mM、またはアルギニンを約250mM~約300mM含んでよい。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約200mM含む。その洗浄液は、ナトリウムクロライドを約50mM~約200mM、ナトリウムクロライドを約100mM~約200mM、ナトリウムクロライドを約150mM~約200mM、またはナトリウムクロライドを約100mM~約150mM含んでよい。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ナトリウムクロライドを約200mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ナトリウムクロライドを約150mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ナトリウムクロライドを約100mM含む。その洗浄溶液は、有機ホスフェートを約0.03%(w/v)~約0.07%(w/v)含んでよい。いくつかの実施形態では、有機ホスフェートは、トリブチルホスフェートを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ウイルスクリアランスを向上させるか、または目的タンパク質を含む混合物のウイルスを不活化する。ウイルスクリアランスは、log10減少値(LRV)で測定できる。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ウイルスクリアランスを向上させ、そのLRVは、約1.0~約10.0log10である。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ウイルスクリアランスを向上させ、そのLRVは、約1.0log10~約5.0log10であるか、そのLRVは、約1.0log10~約3.0log10であるか、そのLRVは、約2.0log10~約4.0log10であるか、そのLRVは、約3.0log10~約5.0log10であるか、そのLRVは、約3.0log10~約8.0log10であるか、そのLRVは、約4.0log10~約8.0log10であるか、またはそのLRVは、約5.0log10~6.0log10である。いくつかの実施形態では、LRVは、約1.0log10であるか、LRVは、約2.0log10であるか、LRVは、約3.0log10であるか、LRVは、約4.0log10であるか、LRVは、約5.0log10であるか、LRVは、約6.0log10であるか、LRVは、約7.0log10であるか、LRVは、約8.0log10であるか、LRVは、約9.0log10であるか、またはLRVは、約10.0log10である。
【0020】
プロテインAアフィニティークロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーまたは陰イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーカラムを用いて、目的タンパク質を精製するのに、このようないずれかの洗浄溶液を用いてよい。好ましい実施形態では、クロマトグラフィーカラムは、プロテインAクロマトグラフィーカラムである。好ましい実施形態では、クロマトグラフィーカラムは、陽イオン交換クロマトグラフィーカラムである。精製した目的タンパク質を含む組成物を提供し、そのタンパク質は、いくつかの実施形態では、本明細書に記載または例示されている方法に従って精製する。したがって、別の態様では、本開示は、組成物を特徴とする。このような組成物は、目的タンパク質と、最小限の量の宿主細胞タンパク質とを含み、宿主細胞タンパク質は、目的タンパク質と共発現するが、大部分は、記載されている洗浄溶液を用いるアフィニティークロマトグラフィーによって、目的タンパク質から分離させる。目的タンパク質は好ましくは、抗体を含む。いくつかの実施形態では、目的タンパク質は、TNF様リガンド1A(TL1a)に特異的に結合する抗体である。TL1aに特異的に結合する抗体は、配列番号5または配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号7のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含んでよい。いくつかの実施形態では、目的タンパク質は、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)に特異的に結合する抗体である。CGRPに特異的に結合する抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLとを含んでよい。いくつかの実施形態では、目的タンパク質は、CD38に特異的に結合する抗体である。CD38に特異的に結合する抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLとを含んでよい。CD38に特異的に結合する抗体は、インターフェロン分子(インターフェロンα分子を含むとともに、減弱化インターフェロンα分子を含む)への融合部をさらに含んでよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、組成物は、水性担体と、TL1aに特異的に結合する組み換え発現抗体またはハイブリドーマ発現抗体と、その組成物の約500ppm未満であるレベルの宿主細胞タンパク質とを含む。いくつかの好ましい実施形態では、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルは、その組成物の約450ppm未満である。いくつかの好ましい実施形態では、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルは、その組成物の約300ppm未満である。いくつかの好ましい実施形態では、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルは、その組成物の約200ppm未満である。いくつかの好ましい実施形態では、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルは、その組成物の約150ppm未満である。いくつかの好ましい実施形態では、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルは、その組成物の約100ppm未満である。ELISAを用いて、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベル(ppm)を割り出してよい。この抗体は、配列番号5または配列番号6のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLとを含んでよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、組成物は、水性担体と、CGRPに特異的に結合する組み換え発現抗体またはハイブリドーマ発現抗体と、その組成物の約800ppm未満であるレベルの宿主細胞タンパク質とを含む。いくつかの好ましい実施形態では、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルは、その組成物の約700ppm未満である。いくつかの好ましい実施形態では、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルは、その組成物の約500ppm未満である。いくつかの好ましい実施形態では、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルは、その組成物の約200ppm未満である。いくつかの好ましい態様では、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルは、その組成物の約150ppm未満である。いくつかの好ましい実施形態では、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルは、その組成物の約100ppm未満である。ELISAを用いて、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベル(ppm)を割り出してよい。この抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLとを含んでよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、組成物は、水性担体と、CD38に特異的に結合する組み換え発現抗体もしくはハイブリドーマ発現抗体、またはそのコンストラクトであって、その抗体に融合したインターフェロン分子を含む抗体またはそのコンストラクトと、その組成物の約500ppm未満であるレベルの宿主細胞タンパク質とを含む。いくつかの好ましい実施形態では、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルは、その組成物の約400ppm未満である。いくつかの好ましい態様では、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルは、その組成物の約300ppm未満である。いくつかの好ましい実施形態では、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルは、その組成物の約200ppm未満である。いくつかの好ましい実施形態では、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルは、その組成物の約150ppm未満である。いくつかの好ましい実施形態では、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベルは、その組成物の約100ppm未満である。ELISAを用いて、組成物中の宿主細胞タンパク質のレベル(ppm)を割り出してよい。この抗体は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLとを含んでよい。
【0024】
本発明の洗浄溶液は、タンパク質の精製法で用いてよい。別の態様では、本開示は、組み換え発現によるか、またはハイブリドーマ発現によるかを含め、細胞から発現させる目的タンパク質の精製方法を特徴とする。概して、この方法は、目的タンパク質と、1つ以上の夾雑宿主細胞タンパク質との混合物をアフィニティークロマトグラフィーリガンドの上に充填することと、塩基性アミノ酸と、塩と、非イオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤とを含む水性洗浄溶液で、そのリガンドを洗浄して、その1つ以上の夾雑タンパク質をそのリガンドから溶出して、続いて、目的タンパク質をそのリガンドから溶出することによって、目的タンパク質の精製溶出液を形成することを含む。その水性洗浄溶液は、上の段落で説明した洗浄溶液を含め、本明細書に記載または例示されているようないずれかの溶液であってよい。そのリガンドは、当業者に知られているいずれかの好適なアフィニティーリガンド、例えば、プロテインAであってよく、その場合、目的タンパク質は、抗体を含む。この方法は、目的タンパク質と、1つ以上の夾雑タンパク質をバイオリアクターで発現させることをさらに含んでよい。
【0025】
この方法は、目的タンパク質の精製溶出液を酸性化して(例えば、目的タンパク質の精製溶出液のpHを低下させて)、その溶出液中のウイルスを不活化することをさらに含んでよい。pHを低下させる作業は、溶出液中のウイルスを不活化するのに十分な期間行い、その後、pHは、より中性なpHまで上昇させる。この方法は、目的タンパク質の精製溶出液をろ過して、不活化ウイルスも含め、ウイルスを除去することをさらに含んでよい。この方法は、透析ろ過、限外ろ過、または透析ろ過と限外ろ過の両方によって、目的タンパク質の精製溶出液を処理することをさらに含んでよい。この方法は、製薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物として、目的タンパク質の精製溶出液を調合することをさらに含んでよい。この方法は、目的タンパク質の精製溶出液をメンブレンクロマトグラフィー担体、例えば、陰イオン交換メンブレンクロマトグラフィー担体の上に充填することと、さらに精製した溶出液を含むフロースルーを、メンブレンクロマトグラフィー担体から回収することをさらに含んでよい。この方法は、製薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物として、目的タンパク質の、さらに精製した溶出液を調合することをさらに含んでよい。
【0026】
いくつかの態様では、この方法は、陰イオン交換クロマトグラフィー工程を含まない。いくつかの態様では、この方法は、陽イオン交換クロマトグラフィー工程を含まない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】樹脂プレートにおける単一成分の洗浄バッファーによるHCPの除去量を示している。
【
図2】樹脂プレートにおける、アミノ酸と界面活性剤を組み合わせたもの、またはグアニジンと界面活性剤を組み合わせたものを含む洗浄バッファーによるHCPの除去量を示している。
【
図3】樹脂プレートにおける、アルギニンとグアニジンを界面活性剤とともに組み合わせたものを含む洗浄バッファーによるHCPの除去量を示している。
【
図4】Atollカラムにおける、NaClと、トリブチルホスフェートと、TRITON(登録商標)X-100と、アルギニンと、ナトリウムオクタノエートと、グアニジンを組み合わせたものによるHCPの除去量を示している。
【
図5】非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100/NaCl/アルギニンの洗浄バッファーを用いた場合の宿主細胞タンパク質クリアランスに対するpHの影響を示している。
【
図6】アルギニンと、グアニジンと、界面活性剤と、ナトリウムオクタノエートを様々に組み合わせたものを含む洗浄液を用いた場合の、様々な抗体(抗TL1a、抗CD-38及び抗CGRP)からのHCPの除去量を示している。
【
図7】本発明のプロテインA洗浄バッファーを用いる新規な精製スキーム(右側の列)と比較した従来の抗体精製スキーム(左側の列)のフローチャートを示し、プロテインAクロマトグラフィーの後にメンブレンクロマトグラフィーを行う。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明で提供するのは、アフィニティークロマトグラフィー洗浄組成物と、そのような組成物を用いるポリペプチド精製スキームと、純度の高いポリペプチド調製物、例えば、上記のような組成物または精製スキームを用いて精製したようなポリペプチド調製物である。
【0029】
本発明の態様に関連する様々な用語は、本明細書と請求項を通じて用いられている。別段に示されていない限り、このような用語には、当該技術分野における通常の意味が与えられるものとする。具体的に定義されている他の用語は、本明細書に示されている定義に沿った形で解釈するものとする。
【0030】
本明細書で使用する場合、「a」、「an」及び「the」という単数形には、明示的な別段の定めのない限り、複数の言及物が含まれる。
【0031】
「水を含む溶液」という用語は、「水溶液」という用語と同義的に用いられている。
【0032】
「宿主細胞タンパク質」、「HCP」、「宿主細胞タンパク質夾雑物」及び「宿主細胞タンパク質の不純物」という用語は、本明細書では同義的に用いられている。
【0033】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、「目的ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書では、いずれかの長さのアミノ酸のポリマーを指す目的で、同義的に用いられている。このポリマーは、直鎖状であることも、分岐状であることもでき、修飾されたアミノ酸を含むことができ、非アミノ酸によって中断されていることができる。これらの用語には、天然において修飾されているアミノ酸ポリマー、または介入、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化またはいずれかの他の操作もしくは修飾(標識成分とのコンジュゲートなど)によって修飾されているアミノ酸ポリマーも含まれる。この定義には、例えば、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、非天然アミノ酸などが挙げられる)を含むポリペプチドと、当該技術分野において知られているその他の修飾体も含まれる。本開示のポリペプチドは抗体ベースであるので、特定の実施形態では、本開示のポリペプチドは、一本鎖としても、会合鎖としても存在できることが分かる。好ましくは、目的タンパク質は、ポリペプチド、抗体、その抗原結合断片または抗体コンストラクトである。
【0034】
「抗TNF様リガンド1A(TL1a)」という用語は、TL1aに結合できるいずれかのタンパク質を指す。抗TL1aタンパク質としては、例えば、抗TL1a抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
【0035】
「抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)」という用語は、CGRPに結合できるいずれかのタンパク質を指す。抗GCRPタンパク質としては、例えば、抗CGRP抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
【0036】
「抗CD38」という用語は、CD38に結合できるいずれかのタンパク質を指す。抗CD38タンパク質としては、例えば、抗CD38抗体またはその抗原結合断片が挙げられる。
【0037】
本明細書で使用する場合、「抗体(antibody)」及び「抗体(antibodies)」という用語は、専門用語であり、本明細書では同義的に用いることができ、抗原と特異的に結合する抗原結合部位を有する分子を指す。
【0038】
「抗体」という用語は、その免疫グロブリン分子の可変領域内における少なくとも1つの抗原認識部位を通じて、標的(タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、糖鎖、ポリヌクレオチド、脂質またはこれらを組み合わせたものなど)を認識して、その標的に特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味する。本明細書で使用する場合、「抗体」という用語には、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体を含む融合タンパク質、及びいずれかのその他の改変免疫グロブリン分子が含まれる(ただし、その抗体が、所望の生物学的活性を示す場合に限る)。抗体は、それぞれα、δ、ε、γ及びμという重鎖定常ドメインの特徴に基づき、5つのいずれかの主要なクラス、すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgM、またはそのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)の免疫グロブリンであることができる。免疫グロブリンのクラスによって、サブユニット構造と三次元構造が異なり、そのサブユニット構造と三次元構造は周知である。抗体は、ネイキッドであることも、他の分子(毒素、放射線同位体など)にコンジュゲートしていることもできる。本明細書で使用する場合、「抗体」という用語には、二重特異性抗体と多特異性抗体が含まれる。
【0039】
「抗体断片」という用語は、インタクト抗体の一部を指す。「抗原結合断片」とは、インタクト抗体の部分のうち、抗原に結合する部分を指す。抗原結合断片は、インタクト抗体の抗原決定可変領域を含むことができる。抗体断片の例としては、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、直鎖状抗体及び一本鎖抗体が挙げられるが、これらに限らない。「抗原結合断片」は、二重特異性抗原結合断片であることも、多特異性抗原結合断片であることもできる。
【0040】
「モノクローナル」抗体またはその抗原結合断片とは、単一の抗原決定基、すなわちエピトープを高い特異性で認識して、それに結合するのに関与する均一な抗体集団または抗原結合断片集団を指す。この抗体は、様々な抗原決定基に対する様々な抗体を典型的に含むポリクローナル抗体とは対照的である。「モノクローナル」抗体という用語またはその抗原結合断片には、インタクトな完全長モノクローナル抗体、ならびに抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、一本鎖(scFv)変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含むいずれかの他の改変免疫グロブリン分子の両方が含まれる。さらに、「モノクローナル」抗体またはその抗原結合断片とは、いずれかの数の方式(ハイブリドーマ、ファージ選択、組み換え発現及びトランスジェニック動物によるものが挙げられるが、これらに限らない)で作製したモノクローナル抗体と、その抗原結合断片を指す。
【0041】
「ヒト化」抗体という用語またはその抗原結合断片は、特異的免疫グロブリン鎖であるヒト以外の(例えばマウス)抗体または抗原結合断片、キメラ免疫グロブリン、またはヒト以外の(例えばマウス)最小配列を含むその断片の形態を指す。典型的には、ヒト化抗体またはその抗原結合断片は、ヒト以外の種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター)の相補性決定領域(CDR)の残基のうち、所望の特異性、親和性及び能力を有する残基によって、CDRの残基が置き換えられている(「CDR移植」)ヒト免疫グロブリンである(Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Riechmann et al.,Nature 332:323-327(1988)、Verhoeyen et al.,Science 239:1534-1536(1988))。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するヒト以外の種の抗体または断片の対応する残基で置き換えられている。ヒト化抗体またはその抗原結合断片は、Fvフレームワーク領域及び/またはヒト以外の置き換えた残基のいずれかにおいて、追加の残基を置換することによってさらに改変して、抗体またはその抗原結合断片の特異性、親和性及び/または能力を改良及び至適化することができる。概して、ヒト化抗体またはその抗原結合断片は、ヒト以外の免疫グロブリンに対応するCDR領域をすべてまたは実質的にすべてを含む可変ドメインの少なくとも1つ、典型的には2つもしくは3つの実質的にすべてを含むことになる一方で、すべてまたは実質的にすべてのFR領域は、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の領域である。ヒト化抗体またはその抗原結合断片は、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部も含むことができる。ヒト化抗体を作製するのに用いる方法の例は、米国特許第5,225,539号、Roguska et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91(3):969-973(1994)及びRoguska et al.,Protein Eng.9(10):895-904(1996)に記載されている。いくつかの実施形態では、「ヒト化抗体」は、表面再処理抗体である。
【0042】
抗体の「可変領域」とは、抗体軽鎖の可変領域または抗体重鎖の可変領域(単独であるか、または組み合わせたもの)を指す。重鎖と軽鎖の可変領域はそれぞれ、3つの相補性決定領域(CDR)(超可変領域としても知られている)によって連結された4つのフレームワーク領域(FR)からなる。各鎖のCDRは、FRによって密接して一体に保たれており、もう一方の鎖のCDRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。CDRを決定する技法には、(1)異種間配列可変性に基づくアプローチ(すなわち、Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,1991,National Institutes of Health,Bethesda Md.))と、(2)抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づくアプローチ(Al-lazikani et al(1997)J.Molec.Biol.273:927-948))という少なくとも2つのものがある。加えて、当該技術分野では、これらの2つのアプローチを組み合わせたものを用いて、CDRを決定することもある。
【0043】
「ヒト抗体」という用語は、ヒトによって産生される抗体、またはヒトによって産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体であって、当該技術分野において知られているいずれかの技法を用いて作製した抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義には、インタクトな抗体、すなわち完全長抗体、その断片、ならびに/または少なくとも1つのヒト重鎖及び/もしくは軽鎖ポリペプチドを含む抗体(例えば、マウス軽鎖ポリペプチドとヒト重鎖ポリペプチドとを含む抗体など)が含まれる。
【0044】
「ハイブリドーマ発現させた」という用語は、免疫学的起源の不死化細胞株と抗体産生細胞の融合によって作製するハイブリッド細胞株で発現する目的タンパク質を指す。「ハイブリドーマ」という用語には、ヒト細胞とマウスミエローマ細胞株との融合後に、形質細胞と融合させることによって得られる、ヘテロハイブリッドミエローマ融合体の子孫(一般的にはトリオーマ細胞株として知られている)が含まれる。さらに、「ハイブリドーマ」という用語には、例えばクアドローマのように、抗体を産生するいずれかの不死化ハイブリッド細胞株を含めるように意図されている(例えば、Milstein et al.,1983,Nature,537:3053を参照されたい)。ハイブリッド細胞株は、ヒトとマウスを含むいずれかの種のものであることができる。
【0045】
「組み換え発現させた」という用語は、組み換えプラスミドまたはベクターのように、外因性ポリヌクレオチドの導入によって遺伝子改変したか、または遺伝子改変できる「組み換え宿主細胞」で、目的タンパク質を発現させることを指す。このような用語は、特定の対象細胞のみならず、そのような細胞の子孫も指すように意図されていることを理解すべきである。継代世代では、変異または環境の影響のいずれかにより、特定の改変が生じることがあるので、このような子孫は実際には、親細胞と同一ではない場合があるが、それでも、本明細書で使用する場合の「組み換え宿主細胞」という用語の範囲に含まれる。
【0046】
「アミノ酸」という用語は、いずれかの天然及び/または非天然アミノ酸残基を指す。「天然アミノ酸」という用語は、Ala、Arg、Asn、Asp、Cys、Glu、Gln、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Pro、Ser、Thr、Trp、Tyr及びValを指す。「塩基性アミノ酸」という用語は、アルギニン、リシン、グリシン及びヒスチジンを指す。アミノ酸には、D体の天然アミノ酸と非天然アミノ酸も含まれる。「D-」とは、天然(「L-」)アミノ酸の構造とは対照的に、「D-」(右旋性)構造を持つアミノ酸を示す。天然アミノ酸と非天然アミノ酸は、企業(Sigma Chemical Co.、Advanced Chemtech)から購入することも、当該技術分野において知られている方法を用いて合成することもできる。
【0047】
「アフィニティークロマトグラフィー」または「アフィニティー精製」という用語は、固体支持体に固定化または結合したリガンドと、その結合パートナーとの特異的結合の相互作用に基づく分離方法を指す。複合混合物をカラムに通すと、リガンドに対する特異的結合親和性を持つそれらの分子が結合する。他の試料成分を洗い流した後、結合した分子を支持体から剥離し、その結果、元の混合物から、その分子が精製される。それぞれの特異的なアフィニティーシステムには、当業者に知られている独自の条件群が必要となる。
【0048】
「アフィニティーリガンド」という用語は、金属(例えば、Cd+2、Co+2、Cu+2、Ga+3、Fe+3、Ni+2及びZn+2)、色素(例えば、チバクロンブルー及びその変種)、グルタチオン、サブチリシン、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、プロテインL、ボロネート、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、抗c-Myc、抗HA、ヌクレオチド、コエンザイム、抗体、ヘパリン、抗原(特に、既知の特異性を持つ抗体に対する抗原)、ならびにその他の既知のアフィニティーリガンドを指す。
【0049】
「ウイルスクリアランス」という用語は、「ウイルス不活化」、「ウイルスの不活化」、「ウイルス除去」及び「ウイルスの除去」という用語と同義的に用いられている。「ウイルス不活化」という用語には、混合物に含まれるウイルスを無機能にしたり、または精製する混合物からウイルスを除去したりすることが含まれる。そのウイルスは、抗体産生源、下流の処理工程または製造条件に起因し得る。ウイルスを無機能にしたり、またはウイルスを除去したりする方法としては、熱活性化、pH不活化、化学的不活化剤などが挙げられる。「pHウイルス不活化」という用語には、ウイルスを無機能にするのに十分なpH環境、例えば、pH約2.5~5.0の環境にウイルスを暴露することが含まれる。
【0050】
「log10減少係数(LRF)」、「log10減少値(LRV)」及び「対数クリアランス」という用語は、同義的であり、出発物質のウイルス力価と、関連する生成物画分のウイルス力価との比の算出値を指す。減少係数は、ウイルスを除去または不活化するためのプロセス工程の潜在能または能力を示すのに好適なパラメーターである。いずれのプロセス工程のLRVも、生成物を汚染し得るウイルスに似ているいずれかの既知のモデルウイルス、例えば、マウス白血病ウイルス(MuLV)及びマウス微小ウイルス(MVM)を用いて測定できる。
【0051】
ウイルスクリアランスを調べる目的は、ウイルスを不活化/除去するのに有効とみなすことができるプロセス工程(複数可)を評価することと、プロセス工程(複数可)によって得られる全体的なウイルス減少レベルを定量的に推定することである。ウイルス減少レベルは、各種プロセス工程の後に得た、目的タンパク質を含む混合物に、相当量のウイルスを加えて(「スパイキング」)から、次の工程の際に、ウイルスの除去または不活化を示すことによって得てよい。ウイルス感染性の低下は、ウイルス粒子の除去またはウイルス感染性の不活化によって実現してよい。ウイルスクリアランスの調査は、混合物に存在することが分かっているウイルスのクリアランスを示す目的で行う。減少係数は通常、対数スケール(log10)で表す。クリアランス評価調査のためのモデルウイルスは、目的タンパク質を含む混合物を汚染し得るウイルスに似るように選択する。細胞株由来の目的タンパク質のウイルスクリアランスのバリデーションでは、モデルウイルス(異種指向性マウス白血病ウイルス(X-MulV)及びマウス微小ウイルス(MVM)など)を用いることが多い。
【0052】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、目的タンパク質を含む混合物のウイルスクリアランスを向上させたり、またはウイルスを不活化したりする。ウイルスクリアランスは、log10減少値(LRV)で測定できる。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ウイルスクリアランスを向上させ、そのLRVは、約1.0log10~約10.0log10である。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ウイルスクリアランスを向上させ、そのLRVは、約1.0log10~約5.0log10であるか、LRVは、約1.0log10~約3.0log10であるか、LRVは、約2.0log10~約4.0log10であるか、LRVは、約3.0log10~約5.0log10であるか、LRVは、約3.0log10~約8.0log10であるか、LRVは、約4.0log10~約8.0log10であるか、またはLRVは、約5.0log10~6.0log10である。いくつかの実施形態では、LRVは、約1.0log10であるか、LRVは、約2.0log10であるか、LRVは、約3.0log10であるか、LRVは、約4.0log10であるか、LRVは、約5.0log10であるか、LRVは、約6.0log10であるか、LRVは、約7.0log10であるか、LRVは、約8.0log10であるか、LRVは、約9.0log10であるか、またはLRVは、約10.0log10である。
【0053】
本発明は、目的タンパク質を含む精製溶出液と組成物であって、本発明の方法のいずれかを用いたウイルスクリアランス調査によって測定した場合に、ウイルス粒子を「実質的に含まない」精製溶出液と組成物を提供する。本明細書で使用する場合、「ウイルス粒子を実質的に含まない」という用語は、目的タンパク質を含む精製溶出液または組成物であって、目的タンパク質をウイルス粒子から分離した精製溶出液または組成物を指す。「実質的に含まない」という用語は、目的タンパク質を含む溶液または組成物であって、ウイルス粒子が約0.0005%~約0.001%未満である溶液または組成物を指す。好ましくは、本発明の組成物は、ウイルス粒子が約0.0005%未満であるであるときに、「実質的に含まない」。
【0054】
本発明は、目的タンパク質を含む精製溶出液と組成物であって、本発明の方法のいずれかを用いたウイルスクリアランス調査によって測定した場合に、ウイルス粒子を「含まない」精製溶出液と組成物を提供する。本明細書で使用する場合、「ウイルス粒子を含まない」という用語は、約0.0001%未満を有する組成物を指す。本発明の組成物は、最大感度条件のウイルスクリアランス調査によってウイルス粒子を検出できないときに、ウイルス粒子を含まない。
【0055】
本開示によれば、ナトリウムクロライド(NaCl)と、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤または有機ホスフェートの両方をアルギニンとともに洗浄溶液に含めると、アフィニティークロマトグラフィー精製の際に、組み換えタンパク質調製物からの宿主細胞タンパク質(HCP)の除去量が実質的に向上することが観察されている。このようなHCP除去量の向上は、それぞれの成分自体または他の成分のうちの1つのみと組み合わせた場合よりも大きかった。3つの成分(1.アルギニン、NaCl及びTRITON(登録商標)X-100、2.アルギニン、NaCl及びナトリウムオクタノエートまたは3.アルギニン、NaCl及びトリブチルホスフェート)による三成分の組み合わせにより、相加的(例えば、相乗的)であるよりも大きなHCP除去量の向上をもたらした。さらに、グアニジンを加えると、比較的低濃度のアルギニンの使用が可能になることが観察されたので、操作コストが低下する可能性がある。さらに、洗浄バッファー中の各成分が低濃度(当該技術分野において通常用いられる濃度との比較)であっても、HCPが有効に除去された。これは有益である。環境によくない廃棄物が削減される可能性があるからである。HCP(ppm)は、CHO Host Cell Proteins 3rd Generationというキット(Immunoenzymetric Assay for the Measurement of CHO Host Cell Proteins、カタログ番号F550、Cygnus Technologies,Southport,NC)をメーカーのプロトコールに従って用いて割り出すことができる。
【0056】
塩と非イオン性界面活性剤を組み合わせると、高度に宿主細胞タンパク質が除去されることは予想外であった。これらの賦形剤には、反対の作用がある場合があるからであり、すなわち、塩は、疎水性相互作用を向上させ、非イオン性界面活性剤は、疎水性相互作用を低下させるからである。
【0057】
アルギニンとアニオン性界面活性剤を組み合わせると、高度に宿主細胞タンパク質が除去されることも予想外であった。アルギニンを界面活性剤、例えばナトリウムオクタノエート(ナトリウムカプリレートまたはCAともいう)と組み合わせた洗浄バッファーの別の用途では、洗浄バッファーでアルギニンのみを用いた場合と比べて、残存HCPのレベルが高くなるからである。例えば、Nabila et al.(2014)Biotechnol.Progress,30:1114-24を参照されたい。
【0058】
アルギニンとグアニジンを組み合わせると、各成分の使用量を大幅に減少させることができる。米国特許第8,350,013号には、高濃度のアルギニン、特に>500mMのアルギニンまたは>1Mのグアニジンによって、不純物の有効な除去が概ね観察されたことが開示されている。本発明では、100mMのグアニジンと100mMのアルギニンを組み合わせたところ、同等の有効性で不純物が除去された。アルギニンは高価であり、高濃度のグアニジン(1M前後のグアニジン)には腐食性がある。したがって、本発明により、大幅にコストを削減できるとともに、腐食をなくすことができる一方で、HCPを有効に除去できる。
【0059】
HCPの除去レベルは、陰イオン交換(AEX)または陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィーによる、その後の精製工程をタンパク質精製スキームから除外できるほど十分であることが観察された。精製スキームにおけるAEXとCEXの二段階工程を、メンブレンクロマトグラフィーの精製スキームにおける一段階工程に置き換えて、高精製タンパク質調製物をもたらすことができる。単離の観点では、メンブレンクロマトグラフィーの工程は、AEXとCEXを組み合わせたもの(AEX+CEX)ほどは有効な精製工程ではない。しかしながら、本発明のアフィニティークロマトグラフィー方法によって、精製プロセスが改善される。本明細書に記載または例示されているようなアフィニティークロマトグラフィーとメンブレンアフィニティークロマトグラフィーによって得られる精製レベルは、先行技術で例示されているようなAEX+CEXの組み合わせによるアフィニティークロマトグラフィーによって得られる精製レベルに匹敵する。
【0060】
AEX+CEXをメンブレンクロマトグラフィーに置き換えると、特に初期臨床物質の生成において有益である。メンブレンクロマトグラフィーは、充填能と対流物質移動が高く、その結果、AEXまたはCEXの樹脂ベースの精製プロセススキームに比べて、生産スループットが向上し、バッファー消費量が減少し、コストが削減されるからである。さらに、メンブレンクロマトグラフィーは、使い捨てシステムであり、カラムクロマトグラフィーと比べて、精製スキームにおける柔軟性を高める。
【0061】
本開示は、アフィニティークロマトグラフィー洗浄組成物と、そのような組成物を用いるポリペプチド精製スキームと、例えばこのような組成物または精製スキームを用いて精製した高純度のポリペプチド調製物を特徴とする。この組成物と精製スキームは、特にハイブリドーマ発現または組み換え発現モノクローナル抗体に非常に適しているが、アフィニティークロマトグラフィーによって精製を行ういずれかの組み換え発現ポリペプチドの調製にも用いてよい。
【0062】
目的ポリペプチドの発現は、いずれかの好適な宿主細胞で行ってよく、その細胞は、そのポリペプチドをコードする遺伝子でトランスフォーメーションされていてよい。宿主細胞は、真核細胞であっても、原核細胞であってもよく、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞及び哺乳動物細胞が挙げられるが、これらに限らない。哺乳動物細胞が好ましい。好適な哺乳動物細胞の非限定的な例としては、抗体発現ハイブリドーマ細胞、発現宿主(チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児腎293(HEK293)細胞及びマウスハイブリドーマNS0細胞など)が挙げられる。ポリペプチドの発現は、細胞から細胞培養培地に分泌させても、細胞内で行わせてもよい。細胞培養は、バイオリアクターで行ってよい(例えば発酵)。典型的なバイオリアクター細胞培養は、基礎培地で開始し、培養の開始後、培養の終了まで、定期的に栄養分を注入して行う。この注入は概して、流加培地によるものであり、タンパク質の発現期に細胞培養を維持するものである。大半は、流加培地の注入は、ボーラス注入で行い、濃縮流加培地を細胞培養物に所定の時点で、通常は1日に1回、速やかに加える。ボーラス送りの代わりに、バイオリアクター細胞培養物は、長時間送りまたは連続送りを用いて注入してよい。市販の流加培地は、バイオリアクターへの栄養分の注入に適している。
【0063】
バイオリアクターの容量は、少なくとも約250リットルであってよい。いくつかの態様では、バイオリアクターの容量は、少なくとも約500リットルである。いくつかの態様では、バイオリアクターの容量は、少なくとも約2000リットルである。いくつかの態様では、バイオリアクターの容量は、少なくとも約5000リットル、10,000リットルまたは15,000リットルである。
【0064】
発現後、ポリペプチドを含む培地(例えば細胞培養培地)を清澄化して、例えば、宿主細胞と粒子状破片を除去してよい。清澄化は、ろ過、遠心分離またはこれらを組み合わせたものを含んでよい。例えば、珪藻土及びセルロース繊維による深層ろ過を用いてよい。市販のメンブレンフィルターを用いた(例えば0.2μmのフィルターによる)メンブレンろ過を用いて、いずれかの微生物夾雑物を除去してもよい。
【0065】
発現と、清澄化(用いる場合)の後、目的ポリペプチドをアフィニティークロマトグラフィーによって精製して、夾雑宿主細胞タンパク質(HCP)を除去してよい。アフィニティークロマトグラフィーは、目的ポリペプチドの精製に適するいずれかのアフィニティーリガンドを含んでよい。アフィニティークロマトグラフィーリガンドの非限定的な例としては、金属(例えば、Cd+2、Co+2、Cu+2、Ga+3、Fe+3、Ni+2及びZn+2)、色素(例えば、チバクロンブルー及びその変種)、グルタチオン、サブチリシン、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、プロテインL、ボロネート、アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、抗c-Myc、抗HA、ヌクレオチド、コエンザイム、抗体、ヘパリン、抗原(特に、既知の特異性を持つ抗体に対する抗原)、ならびに他の既知のアフィニティーリガンドが挙げられる。アフィニティーリガンドは概して、固体支持体に固定化されおり、アフィニティーリガンド用には、既知かつ一般的な担体が数多くある。担体は好ましくは、クロマトグラフィーカラムに詰めることができる粒子、例えばビーズを含む。
【0066】
プロテインA及び/またはプロテインGをアフィニティークロマトグラフィーリガンドとして用いて、抗体または抗体コンストラクトを精製するときには、その抗体または抗体コンストラクトは、プロテインAまたはプロテインGリガンドに結合するFcドメインまたはFcドメインの少なくとも一部を含む。Fcドメインまたはその一部は好ましくは、プロテインAまたはプロテインGに結合できるIgGアイソタイプ(そのいずれかのサブタイプを含む)のものである。プロテインLをアフィニティークロマトグラフィーリガンドとして用いて、抗体または抗体コンストラクトを精製するときには、その抗体または抗体コンストラクトは、プロテインLリガンドに結合する軽(L)鎖または軽鎖の少なくとも一部を含む。
【0067】
本発明のポリペプチド調製物は、リガンド-担体の上に充填し、それによって、目的タンパク質は、そのリガンド-担体に結合するのに十分な親和性で、リガンドと非共有結合で相互作用する。このリガンドは好ましくは、タンパク質結合能が高い。例えば、プロテインAリガンドの抗体結合能は好ましくは、約10g/L~約100g/Lであり、いくつかの態様では、その抗体結合能は、約10g/L~約60g/Lであり、いくつかの態様では、その抗体結合能は、約20g/L~約50g/Lである。その担体は好ましくは、ポリペプチド調製物の充填前に平衡化する。平衡化は好ましくは、バッファー溶液で行う。
【0068】
ポリペプチド調製物のアフィニティークロマトグラフィー担体への充填は、目的ポリペプチドをリガンドに吸着させるのに適する温度、体積及び期間で行う。リガンドに吸着しない無用なHCPは、クロマトグラフィーの際に担体を通流する。
【0069】
いくつかの好ましい態様では、目的ポリペプチドは、プロテインAと相互作用できる定常領域を含む抗体または抗体コンストラクトを含む。したがって、発現した抗体調製物は、プロテインAを含む担体に充填してよく、それによって、その抗体が、プロテインAリガンドと相互作用する。プロテインAの抗体結合能は、約10g/L~約100g/Lであってよい。プロテインA担体は、プロテインAアフィニティー培地(MABSELECT SURE(登録商標),GE Healthcare Life Sciences,Uppsala,Sweden)、プロテインAアフィニティー培地(MABSELECT(登録商標),GE Healthcare Life Sciences,Uppsala,Sweden)、プロテインAアフィニティー培地(MABSELECT SURE(登録商標)LX,GE Healthcare Life Sciences,Uppsala,Sweden)、プロテインA樹脂(UNOsphere SUPrA(商標),BioRad,Hercules,CA)、プロテインA樹脂(ESHMUNO(登録商標)A,Millipore Sigma,Billerica,MA)、プロテインA樹脂(POROS(商標)MABCAPTURE(登録商標)A,Life Technologies Corp.,Carlsbad,CA)、プロテインA樹脂(AMSPHERE(商標)A3担体,JSR Life Sciences,Sunnyvale,CA)、プロテインA樹脂(KANEKA KanCap(商標)A,(Osaka,Japan)、プロテインA樹脂(PROSEP(登録商標)Ultra Plus,Millipore Sigma,Billerica,MA)及びシリカ系プロテインA培地(ABSOLUTE(登録商標)High Cap,Novasep,Boothwyn,PA)を含め、市販されている。当該技術分野において入手可能ないずれかの好適なプロテインA担体を用いてよい。抗体調製物のプロテインA担体への充填は、モノクローナル抗体をプロテインAリガンドに吸着させるのに適する温度、体積及び期間で行う。プロテインAリガンドに吸着しない無用なHCPは、クロマトグラフィーの際に担体を通流する。
【0070】
アフィニティーリガンドに付着するか、または目的ポリペプチドに付着するHCPをさらに除去するために、ポリペプチド吸着担体を洗浄する。この洗浄液は、塩基性アミノ酸と、塩と、非イオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤とを含む水溶液を含む。好ましい実施形態では、このアミノ酸はアルギニンであるが、アルギニンの代わりに、ヒスチジン、リシンまたはグリシンを用いてもよい。いくつかの好ましい実施形態では、アミノ酸の代わりに、またはアミノ酸と組み合わせて(例えば、アルギニン、ヒスチジン、リシンもしくはグリシンの代わりに、またはアルギニン、ヒスチジン、リシンもしくはグリシンと組み合わせて)、尿素またはグアニジンを用いてよい。好ましい実施形態では、塩はナトリウムクロライドであるが、ナトリウムクロライドの代わりに、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウムを用いてよい。好ましい実施形態では、非イオン性界面活性剤は、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100、またはポリソルベート(例えば、TWEEN(登録商標)ブランドの非イオン性界面活性剤、J.T.Baker,NJ)であるが、TRITON(登録商標)X-100の代わりに、NP-40、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー、トリ(n-ブチル)ホスフェート(TNBP)、テトラメチルアンモニウムクロライド(TMAC)またはコール酸ナトリウムを用いてよい。好ましい実施形態では、アニオン性界面活性剤を非イオン性界面活性剤の代わりに用いる場合、アニオン性界面活性剤は、ナトリウムオクタノエート(ナトリウムカプリレートとしても知られている)である。好ましい洗浄液は、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を含む。別の好ましい洗浄液は、アルギニンと、グアニジンと、ナトリウムクロライドと、ナトリウムオクタノエートを含む。別の好ましい洗浄液は、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、アニオン性界面活性剤のナトリウムオクタノエートを含む。ナトリウムオクタノエートの代わりに、ヘプタン酸ナトリウム、ノナン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウムまたはN-ラウロイルサルコシンを用いてよい。本明細書の全体を通じて記載または例示されているようなこのような洗浄溶液は、本開示に従って特徴付けられている。
【0071】
いくつかの態様では、洗浄溶液は好ましくは、水と、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、アニオン性界面活性剤としてのナトリウムオクタノエートを含み、そのアルギニンは好ましくは、0mM超、約500mM未満の濃度であり、ナトリウムクロライドは好ましくは、0mM超、約250mM未満の濃度であり、ナトリウムオクタノエートは好ましくは、0mM超、約50mM未満の濃度である。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、ナトリウムオクタノエートを含み、そのアルギニンは、0mM超、約400mMの濃度であり、ナトリウムクロライドは、0mM超、約200mM未満の濃度であり、ナトリウムオクタノエートは好ましくは、0mM超、約35mM未満の濃度である。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、ナトリウムオクタノエートを含み、そのアルギニンは、0mM超、約350mM未満の濃度であり、ナトリウムクロライドは、0mM超、約200mM未満の濃度であり、ナトリウムオクタノエートは好ましくは、0mM超、約30mM未満の濃度である。
【0072】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、ナトリウムオクタノエートを含み、そのアルギニンは、0mM超、約300mM以下の濃度であり、ナトリウムクロライドは、0mM超、約175mM以下の濃度であり、ナトリウムオクタノエートは好ましくは、0mM超、約30mM以下の濃度である。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、ナトリウムオクタノエートを含み、そのアルギニンは、0mM超、約300mM以下の濃度であり、ナトリウムクロライドは、0mM超、約175mM以下の濃度であり、ナトリウムオクタノエートは好ましくは、0mM超、約25mM以下の濃度である。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、ナトリウムオクタノエートを含み、そのアルギニンは、0mM超、約300mM以下の濃度であり、ナトリウムクロライドは、0mM超、約150mM以下の濃度であり、ナトリウムオクタノエートは好ましくは、0mM超、約25mM以下の濃度である。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、ナトリウムオクタノエートを含み、そのアルギニンは、0mM超、約250mM以下の濃度であり、ナトリウムクロライドは、0mM超、約150mM以下の濃度であり、ナトリウムオクタノエートは好ましくは、0mM超、約25mM以下の濃度である。
【0073】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約100mM~約500mMと、ナトリウムクロライドを約50mM~約250mMと、ナトリウムオクタノエートを約10mM~約50mM含む。本発明の洗浄溶液は、アルギニンを約100mM~約400mMと、ナトリウムクロライドを約50mM~約300mMと、ナトリウムオクタノエートを約10mM~約40mM含んでもよい。本発明の洗浄溶液は、アルギニンを約150mM~約350mMと、ナトリウムクロライドを約100mM~約300mMと、ナトリウムオクタノエートを約15mM~約35mM含んでもよい。本発明の洗浄溶液は、アルギニンを約200mM~約300mMと、ナトリウムクロライドを約200mM~約300mMと、ナトリウムオクタノエートを約15mM~約35mM含んでもよい。本発明の洗浄溶液は、アルギニンを約250mM~約300mMと、ナトリウムクロライドを約125mM~約175mMと、ナトリウムオクタノエートを約20mM~約30mM含んでもよい。本発明の洗浄溶液は、アルギニンを約250mM~約300mMと、ナトリウムクロライドを約150mM~約200mMと、ナトリウムオクタノエートを約25mM~約30mM含んでもよい。本発明の洗浄溶液は、アルギニンを約200mM~約250mMと、ナトリウムクロライドを約100mM~約150mMと、ナトリウムオクタノエートを約20mM~約25mM含んでもよい。本発明の洗浄溶液は、アルギニンを約200mM~約250mMと、ナトリウムクロライドを約100mM~約150mMと、ナトリウムオクタノエートを約25mM~約30mM含んでもよい。本発明の洗浄溶液は、アルギニンを約225mM~約275mMと、ナトリウムクロライドを約125mM~約175mMと、ナトリウムオクタノエートを約20mM~約30mM含んでもよい。本発明の洗浄溶液は、アルギニンを約240mM~約260mMと、ナトリウムクロライドを約140mM~約160mMと、ナトリウムオクタノエートを約22mM~約28mM含んでもよい。本発明の洗浄溶液は、アルギニンを約245mM~約255mMと、ナトリウムクロライドを約145mM~約155mMと、ナトリウムオクタノエートを約24mM~約26mM含んでもよい。いくつかの好ましい実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約250mMと、ナトリウムクロライドを約150mMと、ナトリウムオクタノエートを約25mM含む。
【0074】
別の態様では、洗浄溶液は、水と、アルギニンと、グアニジンを含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アニオン性界面活性剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ナトリウムクロライドをさらに含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アニオン性界面活性剤とナトリウムクロライドをさらに含む。そのアニオン性界面活性剤は、ナトリウムオクタノエートであってよい。ナトリウムオクタノエートの代わりに、ヘプタン酸ナトリウム、ノナン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウムまたはN-ラウロイルサルコシンを用いてよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを0mM超、約200mM未満と、グアニジンを0mM超、約300mM未満と、ナトリウムクロライドを0mM超、約250mM未満と、アニオン性界面活性剤を0mM超、約50mM未満含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約50mM~約150mM、アルギニンを約75mM~約125mM、アルギニンを約85mM~約115mM、アルギニンを約90mM~約110mM、アルギニンを約95mM~約105mM、またはアルギニンを約98mM~約102mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約100mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、グアニジンを約50mM~約200mM、グアニジンを約100mM~約200mM、グアニジンを約150mM~約200mM、グアニジンを約100mM~約150mM、グアニジンを約125mM~約175mM、グアニジンを約135mM~約165mM、またはグアニジンを約145mM~約155mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、グアニジンを約150mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約100mMと、グアニジンを約150mM含む。
【0076】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アニオン性界面活性剤を約10mM~約40mM、アニオン性界面活性剤を約20mM~約30mM、アニオン性界面活性剤を約22.5mM~約27.5mM、アニオン性界面活性剤を約22mM~約28mM、またはアニオン性界面活性剤を約23mM~約29mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アニオン性界面活性剤を約25mM含む。アニオン性界面活性剤は好ましくは、ナトリウムオクタノエートである。いくつかの好ましい実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約100mMと、グアニジンを約150mMと、アニオン性界面活性剤(好ましくはナトリウムオクタノエートである)を約25mM含み、pHが約7.5である。
【0077】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ナトリウムクロライドを約50mM~約200mM、ナトリウムクロライドを約100mM~約200mM、ナトリウムクロライドを約150mM~約200mM、ナトリウムクロライドを約100mM~約150mM、ナトリウムクロライドを約125mM~約175mM、ナトリウムクロライドを約135mM~約165mM、またはナトリウムクロライドを約145mM~約155mM含む。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、ナトリウムクロライドを約150mM含む。いくつかの好ましい実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約100mMと、グアニジンを約150mMと、アニオン性界面活性剤(好ましくはナトリウムオクタノエートである)を約25mMと、ナトリウムクロライドを約150mM含み、pHが約7.5である。
【0078】
別の態様では、洗浄溶液は、水と、任意にグアニジンと組み合わせた塩基性アミノ酸と、塩と、非イオン性界面活性剤を含む。より好ましくは、本発明の洗浄溶液は、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を含み、そのアルギニンは好ましくは、0mM超、約500mM未満の濃度であり、ナトリウムクロライドは好ましくは、0mM超、約250mM未満の濃度であり、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100は好ましくは、0体積%超、約0.25体積%未満の濃度である。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を含み、そのアルギニンは、0mM超、約400mM未満の濃度であり、ナトリウムクロライドは、0mM超、約200mM未満の濃度であり、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100は、0体積%超、約0.25体積%未満の濃度である。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を含み、そのアルギニンは、0mM超、約350mM未満の濃度であり、ナトリウムクロライドは、0mM超、約150mM未満の濃度であり、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100は、約0.2体積%未満の濃度である。
【0079】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を含み、そのアルギニンは、0mM超、約300mM以下の濃度であり、ナトリウムクロライドは、0mM超、約100mM以下の濃度であり、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100は、約0.15体積%以下の濃度である。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を含み、そのアルギニンは、0mM超、約300mM以下の濃度であり、ナトリウムクロライドは、0mM超、約200mM以下の濃度であり、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100は、約0.11体積%以下の濃度である。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を含み、そのアルギニンは、0mM超、約300mM以下の濃度であり、ナトリウムクロライドは、0mM超、約150mM以下の濃度であり、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100は、約0.1体積%以下の濃度である。いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を含み、そのアルギニンは、0mM超、約250mM以下の濃度であり、ナトリウムクロライドは、0mM超、約150mM以下の濃度であり、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100は、約0.1体積%以下の濃度である。
【0080】
いくつかの実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約100mM~約500mMと、ナトリウムクロライドを約50mM~約250mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.01%~約0.25%(w/v)含む。本発明の洗浄溶液は、アルギニンを約100mM~約400mMと、ナトリウムクロライドを約50mM~約200mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.01%~約0.2%(w/v)含んでもよい。その洗浄溶液は、アルギニンを約150mM~約350mMと、ナトリウムクロライドを約50mM~約200mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.01%~約0.2%(w/v)含んでもよい。その洗浄溶液は、アルギニンを約100mM~約300mMと、ナトリウムクロライドを約100mM~約200mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.05%~約0.15%(w/v)含んでもよい。その洗浄溶液は、アルギニンを約200mM~約300mMと、ナトリウムクロライドを約100mM~約200mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.05%~約0.15%(w/v)含んでもよい。その洗浄溶液は、アルギニンを約250mM~約300mMと、ナトリウムクロライドを約100mM~約150mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.05%~約0.15%(w/v)含んでもよい。その洗浄溶液は、アルギニンを約300mM~約350mMと、ナトリウムクロライドを約100mM~約150mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.1%~約0.2%(w/v)含んでもよい。その洗浄溶液は、アルギニンを約250mM~約350mMと、ナトリウムクロライドを約75mM~約125mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.1%~約0.2%(w/v)含んでもよい。その洗浄溶液は、アルギニンを約275mM~約325mMと、ナトリウムクロライドを約90mM~約110mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.1%~約0.2%(w/v)含んでもよい。その洗浄溶液は、アルギニンを約290mM~約310mMと、ナトリウムクロライドを約95mM~約105mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.13%~約0.17%(w/v)含んでもよい。その洗浄溶液は、アルギニンを約295mM~約305mMと、ナトリウムクロライドを約97mM~約103mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.14%~約0.16%(w/v)含んでもよい。その洗浄溶液は、アルギニンを約298mM~約302mMと、ナトリウムクロライドを約98mM~約102mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.14%~約0.16%(w/v)含んでもよい。その洗浄溶液は、アルギニンを約299mM~約301mMと、ナトリウムクロライドを約99mM~約101mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.14%~約0.16%(w/v)含んでもよい。
【0081】
いくつかの好ましい実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約300mMと、ナトリウムクロライドを約100mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.15%(w/v)含む。いくつかの好ましい実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約200mMと、ナトリウムクロライドを約150mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.15%(w/v)含む。いくつかの好ましい実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約250mMと、ナトリウムクロライドを約100mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.05%(w/v)含む。いくつかの好ましい実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約300mMと、ナトリウムクロライドを約150mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.05%(w/v)含む。いくつかの好ましい実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約300mMと、ナトリウムクロライドを約200mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.1%(w/v)含む。いくつかの好ましい実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約250mMと、ナトリウムクロライドを約150mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.1%(w/v)含む。いくつかの好ましい実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約200mMと、ナトリウムクロライドを約100mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.1%(w/v)含む。いくつかの好ましい実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約250mMと、ナトリウムクロライドを約200mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.15%(w/v)含む。いくつかの好ましい実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを約200mMと、ナトリウムクロライドを約200mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を約0.05%(w/v)含む。
【0082】
本発明の洗浄液の導電率目標値は、約15mS/cm~約45mS/cmの範囲であってよい。本発明の洗浄液の導電率目標値は、約16mS/cm~約42mS/cm、約17mS/cm~約40mS/cmまたは約18mS/cm~約38mS/cmの範囲であってよい。導電率目標値は、導電率計を含むいずれかの好適な技法に従って測定できる。
【0083】
一実施形態では、洗浄溶液は、グアニジンと、アルギニンと、NP40を含む。
【0084】
一実施形態では、洗浄溶液は、グアニジンと、アルギニンと、PS20を含む。
【0085】
一実施形態では、洗浄溶液は、グアニジンと、アルギニンと、カプリル酸(CA)を含む。
【0086】
一実施形態では、洗浄溶液は、トリブチルホスフェートとアルギニンを含む。
【0087】
一実施形態では、洗浄溶液は、トリブチルホスフェートと、アルギニンと、塩(NaClなど)を含む。
【0088】
一実施形態では、洗浄溶液は、TRITON(登録商標)X-100とアルギニンを含む。任意に、この洗浄溶液は、塩(NaClなど)も含む。
【0089】
一実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを200mMと、トリブチルPiを0.05%と、NaClを150mM含む。
【0090】
一実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを250mMと、CAを25mMと、NaClを150mM含む。
【0091】
一実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを100mMと、グアニジンを150mMと、CAを25mMと、NaClを150mM含む。
【0092】
一実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを100mMと、グアニジンを150mMと、CAを25mMと、NaClを150mM含む。
【0093】
一実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを250mMと、TRITON(登録商標)X-100を0.1%(w/v)(またはトリブチルホスフェートを0.05%(w/v))含む。
【0094】
一実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを50~100mMと、グアニジンを100~250mMと、CAを25mM含み、好ましくは、アルギニンは>50mMであり、グアニジンは>100mMである。
【0095】
一実施形態では、洗浄溶液は、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を0.15%(w/v)と、アルギニンを300mMと、NaClを100mM含む。
【0096】
一実施形態では、洗浄溶液は、TRITON(登録商標)X-100を0.05%~0.15%(w/v)と、アルギニンを200~300mMと、NaClを100~200mM含む。
【0097】
一実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを100mMと、グアニジンを150mMと、CAを25mMと、NaClを150mM含む。
【0098】
一実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを200mMと、トリブチルを0.05%(w/v)と、NaClを150mM含む。
【0099】
一実施形態では、洗浄溶液は、アルギニンを250mMと、NaClを150mMと、TRITONを0.1%(w/v)含む。
【0100】
一実施形態では、洗浄溶液は、グアニジンを350mMと、トリブチルを0.05%(w/v)含む。
【0101】
一実施形態では、洗浄溶液は、TRITON(登録商標)X-100を0.1%(w/v)と、アルギニンを250mMと、NaClを150mM含む。
【0102】
一実施形態では、洗浄溶液は、カプリル酸を25mMと、アルギニンを100mMと、グアニジンを150mMと、NaClを150mM含む。
【0103】
一実施形態では、洗浄溶液は、CAを25mMと、アルギニンを250mMと、NaClを150mM含む。
【0104】
一実施形態では、洗浄溶液は、カプリル酸を25mMと、グアニジンを350mMと、NaClを150mM含む。
【0105】
一実施形態では、洗浄溶液は、カプリル酸を25mMと、アルギニンを100mMと、グアニジンを100mMと、NaClを150mM含む。
【0106】
一実施形態では、洗浄溶液は、カプリル酸を25mMと、アルギニンを100mMと、グアニジンを250mMと、NaClを150mM含む。
【0107】
一実施形態では、洗浄溶液は、カプリル酸を25mMと、アルギニンを50mMと、グアニジンを100mMと、NaClを150mM含む。
【0108】
一実施形態では、洗浄溶液は、カプリル酸を25mMと、アルギニンを50mMと、グアニジンを250mMと、NaClを150mM含む。
【0109】
一実施形態では、洗浄溶液は、トリブチルホスフェートを0.05%(w/v)と、アルギニンを250mMと、NaClを150mM含む。
【0110】
一実施形態では、洗浄溶液は、トリブチルホスフェートを0.05%(w/v)と、アルギニンを350mMと、NaClを150mM含む。
【0111】
一実施形態では、洗浄溶液は、トリブチルホスフェートを0.05%(w/v)と、アルギニンを200mMと、NaClを150mM含む。
【0112】
一実施形態では、洗浄溶液は、グアニジンを350mMと、NaClを150mM含む。
【0113】
一実施形態では、洗浄溶液は、TRITON(登録商標)X-100を0.05%(w/v)と、アルギニンを200mMと、NaClを200mM含む。
【0114】
一実施形態では、洗浄溶液は、TRITON(登録商標)X-100を0.15%(w/v)と、アルギニンを250mMと、NaClを200mM含む。
【0115】
一実施形態では、洗浄溶液は、TRITON(登録商標)X-100を0.1%(w/v)と、アルギニンを200mMと、NaClを100mM含む。
【0116】
一実施形態では、洗浄溶液は、TRITON(登録商標)X-100を0.1%(w/v)と、アルギニンを250mMと、NaClを150mM含む。
【0117】
一実施形態では、洗浄溶液は、TRITON(登録商標)X-100を0.1%(w/v)と、アルギニンを300mMと、NaClを200mM含む。
【0118】
一実施形態では、洗浄溶液は、TRITON(登録商標)X-100を0.05%(w/v)と、アルギニンを300mMと、NaClを150mM含む。
【0119】
一実施形態では、洗浄溶液は、TRITON(登録商標)X-100を0.05%(w/v)と、アルギニンを250mMと、NaClを100mM含む。
【0120】
一実施形態では、洗浄溶液は、TRITON(登録商標)X-100を0.15%(w/v)と、アルギニンを300mMと、NaClを100mM含む。
【0121】
一実施形態では、洗浄溶液は、TRITON(登録商標)X-100を0.15%(w/v)と、アルギニンを200mMと、NaClを150mM含む。
【0122】
夾雑物(HCPを含む)の除去のために、本明細書に記載及び例示されている洗浄溶液を用いて、アフィニティークロマトグラフィーカラムを洗浄する。洗浄後、目的ポリペプチドをアフィニティーリガンドから溶出する。溶出用バッファーは概して、アフィニティーリガンドの種類に合わせて作製するので、様々であり得る。溶出は、目的タンパク質の溶出収率を最大にするのに適する温度、体積、期間で行ってよい。ポリペプチドの溶出によって、そのポリペプチドを含むアフィニティークロマトグラフィー溶出液が得られる。定常領域を含む抗体または抗体コンストラクトをポリペプチドが含むとともに、アフィニティーリガンドがプロテインAである態様では、溶出用バッファーは好ましくは酸性である。抗体または抗体コンストラクトの溶出により、その抗体または抗体コンストラクトを含むアフィニティークロマトグラフィー溶出液が得られる。
【0123】
一実施形態では、本発明の方法は、(i)目的ペプチド(例えば抗体)と不純物(例えばHCP)とを含む混合物をプロテインAクロマトグラフィーカラムに充填することと、(ii)(精製抗体を作るなどのために、)本発明の洗浄溶液でカラムを洗浄して、混合物中のHCPのレベルを低下させるとともに、抗体の純度を向上させることと、(iii)溶出用バッファーをカラムに入れて、クロマトグラフィー溶出液を放出することを含む。アフィニティークロマトグラフィー溶出液は、精製抗体と、工程(i)でプロテインAクロマトグラフィーカラムに充填した混合物と比べてレベルの低下したHCPとの混合物を含む。
【0124】
抗体または抗体コンストラクトを含む溶出液を含め、ポリペプチドを含むアフィニティークロマトグラフィー溶出液は、大幅にレベルの低下した宿主細胞タンパク質(HCP)を含み、このタンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーの際に、ポリペプチドの調製物から、本発明の洗浄溶液によって除去された。抗体または抗体コンストラクトを含む溶出液を含め、ポリペプチドを含むアフィニティークロマトグラフィー溶出液は好ましくは、宿主細胞タンパク質を約1000ppm未満含む。パーツパーミリオン(ppm)でのHCP値は、生成物1mg当たりのHCPのng数で表してもよい。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィー溶出液は、宿主細胞タンパク質を約900ppm未満含む。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィー溶出液は、宿主細胞タンパク質を約800ppm未満含む。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィー溶出液は、宿主細胞タンパク質を約700ppm未満含む。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィー溶出液は、宿主細胞タンパク質を約600ppm未満含む。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィー溶出液は、宿主細胞タンパク質を約500ppm未満含む。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィー溶出液は、宿主細胞タンパク質を約400ppm未満含む。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィー溶出液は、宿主細胞タンパク質を約350ppm未満含む。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィー溶出液は、宿主細胞タンパク質を約300ppm未満含む。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィー溶出液は、宿主細胞タンパク質を約250ppm未満含む。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィー溶出液は、宿主細胞タンパク質を約200ppm未満含む。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィー溶出液は、宿主細胞タンパク質を約150ppm未満含む。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィー溶出液は、宿主細胞タンパク質を約100ppm未満含む。宿主細胞タンパク質の量(例えばppm)は、ELISA(宿主細胞タンパク質定量ELISAなど)を含むいずれかの好適なアッセイに従って割り出すことができる。例えば、HCPのppmは、ELISAアッセイによって測定したようなものである。液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)を用いて、HCPを測定したり、特徴付けたりしてもよい。HCP ELISAキットは市販されており(例えば、CHO HCP ELISAキット(Cygnus Technologies,Southport,NC28461,USA、カタログ番号F550)など)、このようないずれかのキットは、HCP含有量の測定に適している。
【0125】
HCP含有量を減少させるのに加えて、本発明のアフィニティークロマトグラフィー洗浄溶液を用いて、目的タンパク質を含む組成物において、ウイルスのレベルを低下させたり、またはウイルスを不活化させたりしてもよい。典型的な先行技術の精製プロセスでは、タンパク質(例えば抗体)の精製方法の際に、陰イオン交換を用いた後に、さらなる酸性化処理を行って、ウイルスのレベルを低下させたり、またはウイルスを不活化したりする。驚くべきことに、本発明のアフィニティークロマトグラフィー洗浄溶液を用いると、陰イオン交換クロマトグラフィーの工程を省けるほど十分に、ウイルスのレベルが低下することを本発明者は発見した。
【0126】
アフィニティークロマトグラフィー溶出液(例えば、ポリペプチドを含むか、または抗体もしくは抗体コンストラクトを含む)は、陽イオン交換方法及び/または溶出液に存在するいずれかの残存ウイルスを不活化するための処理法によって、さらに処理してよい。ウイルスの不活化は、溶出液に存在するいずれかのウイルスを不活化するのに十分な温度と期間で、溶出液を酸性化することを含んでもよい。酸性化は、例えば、所望のpHになるまで、酢酸、クエン酸、塩酸、ギ酸またはこれらを組み合わせたものを溶出液に加えることを含んでよい。低pHによるウイルス不活化の後、溶出液をpH5.0~7.5(プロセスでの必要性に左右される)まで中性化してよい。中性化工程の際には、不純物(または生成物)の沈殿により、生成物プールに混濁が現れることがある。深層ろ過を用いて、pH調整済みの調製物をろ過して、混濁と不純物を除去してよい。
【0127】
ウイルスの不活化後、ウイルスの不活化を含まない場合には、アフィニティークロマトグラフィーからの溶出後、またはウイルスの不活化を含む場合、陽イオン交換工程後、目的ポリペプチドをメンブレンクロマトグラフィーでさらに精製してよい。精製した目的ポリペプチド(抗体または抗体コンストラクトを含んでよい)を含むアフィニティークロマトグラフィー溶出液は典型的には、そのpHを調製して、メンブレンクロマトグラフィー担体に充填して、そのメンブレンに通すと、残存の宿主細胞タンパク質夾雑物がメンブレンに結合し、目的タンパク質がフロースルーに残る。メンブレンクロマトグラフィーフロースルー(精製した目的ポリペプチドを含むアフィニティークロマトグラフィー溶出液のままである)は、目的ポリペプチドと、クロマトグラフィーメンブレンに充填する前のアフィニティークロマトグラフィー溶出液よりも少ない宿主細胞タンパク質とを含む。メンブレンクロマトグラフィー担体は、陰イオン交換メンブレン(SARTOBIND(登録商標)Q(Sartorius AG,Goettingen,Germany)、MUSTANG(登録商標)Q(Pall Corp.,Westborough,MA)、NATRIX(登録商標)HDQ(Natrix,Burlington,Ontario,Canada)など)、または耐塩性マルチモジュール陰イオン交換メンブレン(SARTOBIND(登録商標)STICメンブレン(Sartorius AG,Goettingen,Germany)もしくはCHROMASORBメンブレン(Millipore Sigma,Billerica,MA)など)を含んでもよい。したがって、メンブレンクロマトグラフィーは、陰イオン交換メンブレンクロマトグラフィーを含んでよい。メンブレンクロマトグラフィー工程は典型的には、残存不純物の約50%~約99%以上を除去できる。
【0128】
本発明のアフィニティークロマトグラフィー溶出液は、精製した目的ポリペプチド(抗体または抗体コンストラクトを含んでよい)を含む。上で示したように、本発明のアフィニティークロマトグラフィー溶出液は、いずれかの残存ウイルスを不活化するために、さらに処理してもよく、及び/または第2のクロマトグラフィー工程(メンブレンクロマトグラフィーまたは陽イオン交換クロマトグラフィーなど)によってさらに精製してもよい。ウイルスの不活化のためにアフィニティークロマトグラフィー溶出液を処理したり、またはさらに精製したりするいずれのケースでも、抗体または抗体コンストラクトを含む目的ポリペプチドの、得られた組成物をさらに処理して、例えばヒト以外の動物またはヒトへの治療投与に適する形態にしてもよい。このようなさらなる処理としては、目的ポリペプチドの精製調製物の限外ろ過、ナノろ過、濃縮及び透析ろ過をいずれかに組み合わせたものを挙げてよい(
図7)。
【0129】
限外ろ過は、目的ポリペプチドの調製物を濃縮するためのプロセスである。メンブレンのポアサイズまたは分画分子量に基づき、溶液中の他の分子からタンパク質をろ過する。透析ろ過を用いて、目的ポリペプチドを所望のバッファーに(例えば、溶出用バッファーから安定な処方バッファーに)交換する。限外ろ過と透析ろ過では典型的には、タンジェンシャルフローろ過を用いる。
【0130】
精製スキーム(本発明のアフィニティークロマトグラフィー洗浄バッファーの使用を含むとともに、任意に、第2のクロマトグラフィー精製工程(例えば、メンブレンクロマトグラフィー及び/または陽イオン交換(順不同))の1つ以上をさらに含み、任意に、ウイルス不活化、ナノろ過、限外ろ過及び/または透析ろ過をさらに含む)の後には、目的ポリペプチドは好ましくは、組成物に存在している。この組成物は好ましくは、担体と目的ポリペプチドを含む。この担体は好ましくは水性であり、製薬学的に許容可能な担体であってよい。この担体は、バッファーを含んでもよく、1つ以上の製薬学的に許容可能な賦形剤を含んでもよい。この組成物は、医薬組成物と称してよい。「組成物」及び「精製組成物」という用語は、本明細書では同義的に用いられている。
【0131】
目的ポリペプチド(抗体または抗体コンストラクトを含む)を含む組成物は好ましくは、宿主細胞タンパク質を約1000ppm未満含む。この組成物は好ましくは、宿主細胞タンパク質を約900ppm未満、宿主細胞タンパク質を約800ppm未満、宿主細胞タンパク質を約700ppm未満、宿主細胞タンパク質を約600ppm未満、宿主細胞タンパク質を約500ppm未満、宿主細胞タンパク質を約450ppm未満、宿主細胞タンパク質を約400ppm未満、宿主細胞タンパク質を約350ppm未満、宿主細胞タンパク質を約300ppm未満、宿主細胞タンパク質を約200ppm未満、宿主細胞タンパク質を約250ppm未満、宿主細胞タンパク質を約150ppm未満または宿主細胞タンパク質を約100ppm未満含む。宿主細胞タンパク質の量(例えばppm)は、ELISA(宿主細胞タンパク質定量ELISAなど)を含むいずれかの好適なアッセイに従って割り出すことができる。例えば、HCPのppmは、ELISAアッセイによって測定したようなものである。
【0132】
いくつかの態様では、組成物中の目的ポリペプチドは、抗体または抗体コンストラクトである。この抗体または抗体コンストラクトは、トランスフォーメーションした宿主細胞(例えば、その抗体もしくは抗体コンストラクトをコードする遺伝子を含む宿主細胞)によって組み換え発現したものであってよく、またはハイブリドーマ細胞によって発現させたものであってもよい。この抗体または抗体コンストラクトは、TNF様リガンド1A(TL1a)上のエピトープに特異的に結合してよい。この抗体または抗体コンストラクトは、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)上のエピトープに特異的に結合してよい。この抗体または抗体コンストラクトは、CD38上のエピトープに特異的に結合してよい。
【0133】
いくつかの態様では、組成物は、CGRPに特異的に結合するとともに、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む精製抗体または抗体コンストラクトを含む。その重鎖可変領域(VH)は、配列番号1のアミノ酸配列を含んでよい。その軽鎖可変領域(VL)は、配列番号2のアミノ酸配列を含んでよい。本発明の組成物は、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、VLとを含む抗体または抗体コンストラクトを含んでよく、この抗体または抗体コンストラクトは、CGRPに特異的に結合する。本発明の組成物は、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLと、VHとを含む抗体または抗体コンストラクトを含んでよく、この抗体または抗体コンストラクトは、CGRPに特異的に結合する。本発明の組成物は、配列番号1のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号2のアミノ酸配列を含むVLとを含む抗体または抗体コンストラクトを含んでよく、この抗体または抗体コンストラクトは、CGRPに特異的に結合する。この抗体は、米国特許出願公開第2009/0220489号またはPCT公開第WO2007/054809号に記載されているいずれかの抗体であってよい。
【0134】
いくつかの態様では、本発明の組成物は、TL1aに特異的に結合するとともに、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む精製抗体または抗体コンストラクトを含む。この抗体は、米国特許出願公開第2014/0255302号(参照により、本明細書に援用される)に記載されているいずれかの抗体であってよい。この抗体は、米国特許仮出願第62/220,442号に記載されているいずれかの抗体であってよい。
【0135】
いくつかの態様では、本発明の組成物は、CD38に特異的に結合するとともに、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む精製抗体または抗体コンストラクトを含む。この抗CD38抗体はさらに、第2のポリペプチド分子に融合していてもよく、例えば、ポリペプチド毒素に融合しているか、またはインターフェロンポリペプチド(インターフェロンαなど)に融合していてよい。その重鎖可変領域(VH)は、配列番号3のアミノ酸配列を含んでよい。その軽鎖可変領域(VL)は、配列番号4のアミノ酸配列を含んでよい。本発明の組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、VLとを含む抗体または抗体コンストラクトを含んでよく、この抗体または抗体コンストラクトは、CD38に特異的に結合する。本発明の組成物は、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLと、VHとを含む抗体または抗体コンストラクトを含んでよく、この抗体または抗体コンストラクトは、CD38に特異的に結合する。本発明の組成物は、配列番号3のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号4のアミノ酸配列を含むVLとを含む抗体または抗体コンストラクトを含んでよく、この抗体または抗体コンストラクトは、CD38に特異的に結合する。この抗体は、米国特許出願公開第2016/0068612号または米国特許出願公開第2015/0313965号(それぞれ、参照により、本明細書に援用される)に記載されているいずれかの抗体であってよい(これらの刊行物に記載されているように、減弱化インターフェロン分子にさらに融合されている抗体を含む)。
【0136】
いくつかの態様では、本発明の組成物は、TL1aに特異的に結合するとともに、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む精製抗体または抗体コンストラクトを含む。そのVHは、配列番号5のアミノ酸配列を含んでもよい。そのVHは、配列番号6のアミノ酸配列を含んでもよい。そのVLは、配列番号7のアミノ酸配列を含んでもよい。したがって、そのVHは、配列番号5を含んでもよく、VLは、配列番号7を含んでもよいか、またはVHは、配列番号6を含んでもよく、VLは、配列番号7を含んでもよい。本発明の組成物は、配列番号5または配列番号6のアミノ酸配列を含むVHと、VLとを含む抗体または抗体コンストラクトを含んでよく、この抗体または抗体コンストラクトは、TL1aに特異的に結合する。本発明の組成物は、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLと、VHとを含む抗体または抗体コンストラクトを含んでよく、この抗体または抗体コンストラクトは、TL1aに特異的に結合する。本発明の組成物は、配列番号5または配列番号6のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号7のアミノ酸配列を含むVLとを含む抗体または抗体コンストラクトを含んでよく、この抗体または抗体コンストラクトは、TL1aに特異的に結合する。この抗体は、米国特許出願第15/267,213号または米国特許出願公開第2014/0255302号(それぞれ、参照により、本明細書に援用される)に記載されているいずれかの抗体であってよい。
【0137】
いくつかの好ましい態様では、抗体(例えば、抗TL1a、抗CGRP及び抗CD38)は、ヒトIgG定常領域を含む。このヒトIgG定常領域は、ヒトIgG1またはヒトIgG4定常領域であってよい。抗体(例えば、抗TL1a、抗CGRP及び抗CD38)は、ヒト化抗体または完全ヒト抗体であってよい。
【0138】
本明細書に説明されているように、アルギニンと、ナトリウムクロライドと、非イオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤とを含む洗浄バッファーで洗浄することを含むアフィニティークロマトグラフィーを少なくとも含む精製スキームであって、任意に、第2のクロマトグラフィー精製工程(例えば、AEX、AEX/HIC、CEXまたはメンブレンクロマトグラフィー)、ウイルス不活化、ナノろ過、濃縮及び透析ろ過のうちの1つ以上をさらに含むスキームに従って作製した目的タンパク質(抗体または抗体コンストラクトを含む)の宿主細胞タンパク質低減調製物も提供する。このような宿主細胞タンパク質低減調製物は、宿主細胞タンパク質を約900ppm未満、宿主細胞タンパク質を約800ppm未満、宿主細胞タンパク質を約700ppm未満、宿主細胞タンパク質を約600ppm未満、宿主細胞タンパク質を約500ppm未満、宿主細胞タンパク質を約450ppm未満、宿主細胞タンパク質を約400ppm未満、宿主細胞タンパク質を約350ppm未満、宿主細胞タンパク質を約300ppm未満、宿主細胞タンパク質を約200ppm未満、宿主細胞タンパク質を約250ppm、宿主細胞タンパク質を約150ppm未満または宿主細胞タンパク質を約100ppm未満含む。宿主細胞タンパク質の量(例えばppm)は、ELISA(宿主細胞タンパク質定量ELISAなど)を含むいずれかの好適なアッセイに従って割り出すことができる。例えば、HCPのppmは、ELISAアッセイによって測定したようなものである。
【0139】
本開示の実施形態は、本開示の洗浄溶液の調製物と、目的タンパク質の精製のために、本開示の洗浄溶液を使用する方法とを詳細に説明する下記の非限定的な実施例を参照することによって、さらに定義できる。本開示の範囲から逸脱することなく、材料と方法の両方に多くの修正を行えることは当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0140】
本明細書に記載されている実施例と実施形態は、例示するためのものに過ぎないことと、これらを踏まえた様々な修正または変化が当業者に示されるとともに、それらの修正または変化が、本願の趣旨及び範囲に含まれることになることが分かる。
【0141】
実施例1
材料と方法
材料と器具:これらの実施例で用いるモノクローナル抗体は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いて、研究室内で発現させた。MABSELECT SURE(登録商標)プロテインA樹脂は、GE Healthcare(Uppsala,Sweden)から購入した。バッファー溶液はすべて、Milliporeの水精製システムから得た超純水を用いて調製した。バッファーと溶液調製物で用いた化学物質は、JT Baker(Philipsburg,NJ)から入手した。ハイスループットのクロマトグラフィー実験は、Tecan Freedom EVO(登録商標)200という液体処理システム(Tecan Group AG,Mannedorf Switzerland)で行った。この機器には、組み込まれた樹脂プレートとAtollのカラムステーションが搭載されており、最大で96個のクロマトグラフィー条件を並行して調査可能である。FREEDOM EVOWARE(登録商標)というソフトウェア(Tecan Group AG,Mannedorf Switzerland)をシステムの制御と試料の回収に使用した。Akta Avantの液体クロマトグラフィーシステム(GE Healthcare Life Sciences,Uppsala,Sweden)を用いて、ハイスループット調査から得られた所定の洗浄溶液をさらに検証した。この機器には、カラムの排出口をモニタリングして、1ランあたり1回、洗浄条件を調査可能にするために、UV検出器と導電率検出器が組み込まれている。
【0142】
プロテインAクロマトグラフィー:5C.V(カラム体積)において1×PBSで、MABSELECT SURE(登録商標)というクロマトグラフィーカラムを平衡化した。平衡化後、回収した細胞培養液(HCCF)をカラムに、樹脂1リットルあたりmAb40グラムという充填量で充填した。充填を行った後、カラムの1回目の洗浄を3カラム体積(CV)の1×PBSバッファーで行ってから、2回目の洗浄を5CVの洗浄バッファー候補で行った。続いて、5CVの5mMコハク酸(pH5.8)バッファーを用いて、カラムの3回目の洗浄を行った。5CVの25mMグリシン、10mMコハク酸(pH3.7)バッファーを用いて、mAbをカラムから溶出した。生成後、定置洗浄を行った。
【0143】
宿主細胞タンパク質(HCP)の定量ELISA:CHO Host Cell Proteins 3rd Generationキット(Immunoenzymetric Assay for the Measurement of CHO Host Cell Proteins、カタログ番号F550、Cygnus Technologies,Southport,NC)をメーカーのプロトコールに従って用いることによって、宿主細胞タンパク質(HCP)を割り出した。SPECTRAMAX(登録商標)Plusというマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale CA)で450/650nmにおける吸光データを取得して、SOFTMAX(登録商標)Pro 6.4.2というソフトウェア(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)で解析した。CHO Host Cell Proteins 3rd Generationキットに含まれる標準物質から作成した標準曲線の4つのロジスティック当てはめパラメーターから、HCP値を算出した。
【0144】
実施例2
プレートベースの調査の実験結果
MabSelect SuReの樹脂プレートで、TL1a抗体を用いて、合わせて28個の単一成分条件のHCPクリアランスを調べた。結果は
図1に示されており、下記のようにまとめることができる。
・アミノ酸とテトラメチルアンモニウムクロライド(TMAC)は、ナトリウムオクタノエート(CA)と界面活性剤よりも、HCPの除去に有効である。
・アミノ酸またはTMACの濃度が高いほど、HCPクリアランスが向上する傾向があり、試験した濃度範囲では、CAに関しても同様である。
・試験したすべての化学物質のうち、アルギニンとグアニジンが最も有効である。
【0145】
二成分におけるHCPクリアランスの結果は、
図2に示されている。二成分実験においては、洗剤と荷電賦形剤(アルギニン、グアニジン、ヒスチジン、TMACまたはグリシンを含む)を組み合わせて、HCPの除去における有効性を評価する。結果は、下記のようにまとめることができる。
・25mMのCAを低濃度の荷電賦形剤(50mMのアルギニン、50mMのグアニジンまたは100mMのヒスチジンのいずれか)に加えると、0.05%(w/v)のNP40または0.05%(w/v)のPS20を加える場合と比べて、HCPクリアランスを大幅に向上できる。
・アルギニンまたはグアニジンの濃度が175mMを超えると、具体的には、アルギニンを175mM~300mMの範囲で、グアニジンを175mM~1Mの範囲で試験すると、試験した二成分のいずれの組み合わせにおいても、500ppm未満のHCPクリアランスが実現する。
【0146】
三成分のスクリーニングでは、アルギニンと、グアニジンと、洗剤の複合作用を試験し、HCPクリアランスの結果は、
図3に示されている。この結果は、下記のようにまとめることができる。
・低濃度のグアニジンとアルギニン(それぞれ<100mM)を洗剤と組み合わせると、<500ppmのHCPクリアランスを実現可能である。
・25mMのCAを低濃度のアルギニンとグアニジンの組み合わせ(アルギニンとグアニジンはそれぞれ、<100mMである)を加えると、0.05%(w/v)のNP40または0.05%(w/v)のPS20を加える場合よりも、HCPクリアランスが向上する。
・グアニジンとアルギニンを組み合わせたものの濃度が>175mMであると、HCPクリアランスは一貫して<500ppmとなる。
【0147】
実施例3
Atollカラムから得られた実験結果
14個の洗浄溶液で、HCPクリアランスについて、抗Tl1a(mAb)において、MABSELECT SURE(登録商標)クロマトグラフィー(GE Healthcare Life Sciences,Uppsala,Sweden)で調べた。溶出プール中のHCPレベルは、
図4に示されている。その結果は、下記のようにまとめることができる。
・アルギニンまたはグアニジンを含まない7つの洗浄溶液のHCPレベルは、10,000ppm超であった。
・250mMのアルギニンを単独で用いると、HCPクリアランスは約400~500ppmであり、トリブチルホスフェートを0.05%(w/v)と、NaClを150mM組み入れると、アルギニン濃度を200mMまで低下させることができ、HCPクリアランスも300~400ppmに改善した。アルギニンは高価であるので、この方策にはコストメリットがある。
・0.1%(w/v)のTRITON(登録商標)X-100を250mMのアルギニンと、150mMのNaClと組み合わせると、HCPは、200~300ppmまで低減される。
・グアニジンを150mMのNaClとともに加えると、HCPクリアランスを500~600ppmまで低減できる。
・250mMのアルギニンを25mMのCAと150mMのNaClと組み合わせると、HCPは、300ppm前後まで低減される。150mMのアルギニンを150mMのグアニジンと置き換えても、HCPクリアランスは、300ppm前後のままである。アルギニンはグアニジンよりも高価であるので、この方策にはコストメリットがある。
【0148】
要約すると、下記の組み合わせの4つの溶液では、HCPクリアランスが単一成分また二成分溶液よりも優れていた。
・アルギニンを200mMと、トリブチルPiを0.05%(w/v)と、NaClを150mM
・アルギニンを250mMと、CAを25mMと、NaClを150mM
・アルギニンを100mMと、グアニジンを150mMと、CAを25mMと、NaClを150mM
・TRITON(登録商標)X-100を0.1%(w/v)と、アルギニンを250mMと、NaClを150mM
【0149】
アルギニンを250mMと、CAを25mMと、NaClを150mMという条件に関しては、150mMのアルギニンをグアニジンと置き換えても、HCPクリアランスの効果は同様に有効であるうえに、より安価である。
【0150】
抗Tl1a抗体をモデルとして用いて、アルギニンを250mMと、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を0.1%(w/v)と、NaClを150mM含む洗浄溶液のHCPクリアランスを複数のpH値でさらに調べた。結果は
図5に示されている。pH6.5~pH10.5の範囲では、溶出プール中のHCPのレベルは、100ppm~200ppmの範囲で、pHによる有意な影響は観察されなかった。150mMのNaClは、タンパク質のすべての荷電基を遮蔽するのに十分であると考えられる。したがって、pHにいずれかの有意な作用があるようには観察されなかった。すべての組み合わせの溶液は、NaClを150mM含み、pHの作用について、さらなる試験は行われていない。
【0151】
抗TL1a抗体、抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)抗体、及びモノクローナル抗CD38抗体のC末端をインターフェロン分子に融合した融合タンパク質によって、アルギニンと、0.1%(w/v)のTRITON(登録商標)X-100との組み合わせ、アルギニンと、グアニジンと、ナトリウムオクタノエートとの組み合わせ、及びトリブチルホスフェートの組み合わせを調査した。HCPクリアランスの結果は、
図6に示されている。3つのすべての分子において有効である組み合わせは、下記のとおりである。
・アルギニンを250mMと、TRITON(登録商標)X-100を0.1%(w/v)(またはトリブチルホスフェートを0.05%(w/v))
・アルギニンを50~100mMと、グアニジンを100~250mMと、CAを25mM(好ましくは、アルギニンは>50mM、グアニジンは>100mM)
・グアニジンを350mMと、トリブチルホスフェートを0.05%(w/v)
【0152】
このデータにより、これらの洗浄溶液をプラットフォームプロセスで使用できることが示唆されており、すなわち、これらの洗浄溶液は、いずれの抗体の精製においても有効であることが見込まれる。
【0153】
実施例4
濃縮作用
非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100と、アルギニンと、NaClの濃度がHCPクリアランスに及ぼす作用も、抗TL1a、抗CGRP及び抗CD38-IFN融合分子で調べた。8個の洗浄溶液を調べ、HCPの結果は、表1にまとめられている。これらのデータでは、3つのすべての分子において、HCPクリアランスに関して、同様の傾向が見られる。データによって、非イオン性界面活性剤のTRITON(登録商標)X-100を0.15%(w/v)と、アルギニンを300mMと、NaClを100mMの洗浄液によって、HCPの除去に関して、有意な改善が得られたことが示された。有効なHCPクリアランス作用範囲は、TRITON(登録商標)X-100については0.05%~0.15%w/v、アルギニンでは200~300mM、NaClでは100~200mMである。データにより、これらの洗浄溶液が、いずれの目的ペプチド(例えば抗体)の精製においても有効であり得ることが示唆されている。
【表1】
【表2】
【0154】
実施例5
所定の条件のプロセス検証
MabSelect SuReとSartobind Qのプロセスを用いた5cmのクロマトグラフィーカラムで、4つのプロセス条件を3つの分子(TL1a、CGRP及びCD-38)においてさらに調べた。HCPクリアランスの結果を表3にまとめた。3つのすべての組み合わせの洗浄液条件において、HCPの除去が、コントロール条件の1M NaClよりもかなり改善した。プロテインA及びSartobind Qの工程後の残存HCPは少なく、臨床用途の要件を満たしている(HCP<100ppm)。
【表3】
【0155】
実施例6
ウイルスクリアランスの結果
7つの所定の洗浄溶液のウイルスクリアランスをインビトロでのウイルス様粒子クリアランスで調べ、その結果は、表4Aにまとめられている。TRITON(登録商標)X-100は、インビトロでのVLPクリアランスの有効性が高いことが観察された。
【表4A】
【0156】
追加の洗浄溶液(表4Bにまとめられている)を用いた調査により、Tritonが、レトロウイルス様粒子のクリアランスを大幅に改善できることが示された。
【表4B】
【0157】
さらに、異種指向性マウス白血病ウイルス(X-MulV)とマウス微小ウイルス(MVM)という2つのモデルウイルスを用いて、スパイクインによる調査によって、所定の洗浄溶液によるウイルスクリアランスを評価した。その組成物と結果は、表5及び6に示されている。結果により、pH5.8の5mMコハク酸のコントロール洗浄溶液と比べて、X-MulVクリアランスが1.7log(アルギニン)または0.8log(アルギニン+グアニジン)上昇し、MVMクリアランスは1.0log(アルギニン+トリブチルホスフェート)、1.3log(アルギニン)または(アルギニン+グアニジン)上昇したことが示されている。
【表5】
【表6】
【0158】
本発明は、上に記載及び例示されている実施形態に限定されないが、添付の請求項の範囲内で変形及び修正できる。
【0159】
本明細書の全体にわたり、特許、特許出願、アクセッション番号、技術論文及び学術論文を含む様々な文献が引用されている。これらの各引用文献は、あらゆる目的において、参照により、その全体が本明細書に援用される。
【0160】
配列表
抗CGRP VH(配列番号1)
抗CGRP VL(配列番号2)
抗CD38 VH(配列番号3)
抗CD38 VL(配列番号4)
抗TL1a VH1(配列番号5)
抗TL1a VH2(配列番号6)
抗TL1a VL(配列番号7)
Xaa32は、GまたはAである。
Xaa33は、L、SまたはQである。
Xaa36は、HまたはLである。
Xaa93は、Y、FまたはWである。
【配列表】