(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】関節軟骨修復
(51)【国際特許分類】
A61F 2/30 20060101AFI20221205BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/28 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/34 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/36 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/30 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/42 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/32 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/12 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/02 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/10 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/48 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/08 20060101ALI20221205BHJP
A61L 27/04 20060101ALI20221205BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20221205BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20221205BHJP
【FI】
A61F2/30
A61P19/08
A61L27/40
A61L27/56
A61L27/54
A61L27/28
A61L27/24
A61L27/34
A61L27/20
A61L27/22
A61L27/36 130
A61L27/36 312
A61L27/36 400
A61L27/30
A61L27/42
A61L27/32
A61L27/12
A61L27/02
A61L27/10
A61L27/52
A61L27/48
A61L27/36 100
A61L27/18
A61L27/38 112
A61L27/58
A61L27/16
A61L27/08
A61L27/04
B33Y80/00
B33Y40/00
(21)【出願番号】P 2019524137
(86)(22)【出願日】2017-07-21
(86)【国際出願番号】 US2017043290
(87)【国際公開番号】W WO2018017955
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-01-28
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519021990
【氏名又は名称】サイテックス・セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100211236
【氏名又は名称】道下 浩治
(72)【発明者】
【氏名】エステス,ブラッドリー・ティー
(72)【発明者】
【氏名】ギラク,ファーシッド
(72)【発明者】
【氏名】ムートス,フランクリン・トーマス
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-131362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0041952(US,A1)
【文献】特開平07-148243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0196901(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0220700(US,A1)
【文献】特開2008-264562(JP,A)
【文献】特表2006-528515(JP,A)
【文献】特開2011-045753(JP,A)
【文献】米国特許第06730252(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0081807(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0266000(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/30
A61P 19/08
A61L 27/40
A61L 27/56
A61L 27/54
A61L 27/28
A61L 27/24
A61L 27/34
A61L 27/20
A61L 27/22
A61L 27/36
A61L 27/30
A61L 27/42
A61L 27/32
A61L 27/12
A61L 27/02
A61L 27/10
A61L 27/52
A61L 27/48
A61L 27/18
A61L 27/38
A61L 27/58
A61L 27/16
A61L 27/08
A61L 27/04
B33Y 80/00
B33Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟骨病変の修復及び再生のための軟骨修復インプラントであって、
織成ファイバの少なくとも3つの層を含む3次元足場材と、
剛性のある形状が画定された3次元多孔性基材であって、前記足場材に固定式に結合され、骨の中に圧入され、骨形成を促進し、前記3次元多孔性基材を骨と一体化するように構成されている、3次元多孔性基材と、を含
み、
前記3次元足場材は湾曲した下側を有し、
前記3次元多孔性基材は、前記湾曲した下側に勘合するための湾曲した上部を有する、 軟骨修復インプラント。
【請求項2】
前記織成ファイバの少なくとも3つの層は、
第1の方向に配向される面内縦糸ファイバと、
前記第1の方向に直交する第2の方向に配向される横糸ファイバと、
前記第1及び第2の方向に直交する第3の方向に配向される拘束ファイバと、を含み、
前記横糸ファイバ及び前記拘束ファイバは、前記面内縦糸ファイバ間に配置される、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項3】
前記3次元足場材は、3次元縦糸インターロックファブリックである、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項4】
前記織成ファイバの少なくとも3つの層は、
第1の方向に配向される面内縦糸ファイバを含む縦糸層と、
前記第1の方向に直交する第2の方向に配向される横糸ファイバを含む横糸層と、
前記第1及び第2の方向に直交する第3の方向に配向される拘束ファイバを含む拘束層と、を含み、
前記3次元足場材は、前記第3の方向に配向されるファイバによって相互連結される5つの縦糸層及び6つの横糸層を含む、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項5】
前記織成ファイバの少なくとも3つの層は、
第1の方向に配向される面内縦糸ファイバを含む縦糸層と、
前記第1の方向に直交する第2の方向に配向される横糸ファイバを含む横糸層と、
前記第1及び第2の方向に直交する第3の方向に配向される拘束ファイバを含む拘束層と、を含み、
前記3次元足場材は、前記縦糸層の個々において24ヤーン/cmと、前記横糸層の個々において15~20ヤーン/cmと、前記第3の方向に配向される24ヤーン/cmと、を含む、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項6】
前記3次元足場材及び前記3次元基材の少なくとも一方は、少なくとも50%の間隙の体積を有する、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項7】
前記3次元足場材の圧縮率は、約200kPa~約5MPaである、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項8】
前記3次元多孔性基材は、ストラットを形成する押出加工フィラメントから構成され、各ストラットは、約150μm~約500μmの直径を有する、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項9】
前記3次元多孔性基材は、第1の3次元印刷層と、前記第1の3次元印刷層の上部に配置される第2の3次元印刷層と、を含み、
前記第1の3次元印刷層は、第1のストラット方向に配向される第1の複数の押出加工ストラットを含み、
前記第2の3次元印刷層は、第2のストラット方向に配向される第2の複数の押出加工ストラットを含み、
前記第2のストラット方向は、前記第1のストラット方向に対して約30度~約120度に角度付けされる、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項10】
前記3次元足場材及び前記3次元多孔性基材の少なくとも一方の少なくとも一部分は、少なくとも1つの生物薬剤で被覆され、
前記少なくとも1つの生物薬剤は、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルギナート、アガロース、キトサン、ゼラチン、ラミニン、フィブロネクチン、フィブリン、プロテオグリカン、軟骨オリゴマーマトリックス蛋白質、ヒアルロン酸、I型コラーゲン、II型コラーゲン、ペプチド・シーケンサ、自己集合性ペプチド、抗炎症薬、骨形態形成蛋白質及び他のサイトカイン、サイトカイン抑制剤、軟骨由来マトリックス、脱塩骨マトリックス、及び/又は、他の脱細胞化細胞外マトリックス由来組織、から構成される群から選択される、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項11】
前記織成ファイバの少なくとも一部分は、少なくとも1つの無機マトリックスで被覆され、
前記少なくとも1つの無機マトリックスは、ハイドロキシアパタイト、燐酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、窒化珪素ベースの材料、生体活性ガラス、及び/又は、ガラスセラミックス、から構成される群から選択される、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項12】
前記3次元足場材の少なくとも一部分は、生体材料ゲルで少なくとも部分的に充填され、
前記生体材料ゲルは、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルギナート、アガロース、キトサン、ゼラチン、ラミニン、フィブロネクチン、完全に生物材料を、完全に合成物質を、若しくは、それらの混合物を、包含する相互侵入網目構造、及び/若しくは、フィブリン又はそれらの組合せ、から構成される群から選択される、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項13】
前記織成ファイバの少なくとも一部分は、軟骨及び/又は骨の誘導のために、前記インプラントの内部で、トランスフェクト細胞又は形質導入細胞に適合された、ウイルス、プラスミド、又は、DNA、で被覆される、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項14】
前記3次元足場材及び前記3次元多孔性基材の少なくとも一方の内部に埋め込まれた少なくとも1つの細胞を更に含み、
前記少なくとも1つの細胞は、1次細胞、未分化前駆細胞、幹細胞、iPS細胞、及び、それらの組合せ、から構成される群から選択され、
前記未分化前駆細胞及び幹細胞は、脂肪組織に由来する幹細胞又は前駆細胞、骨髄、滑膜、筋肉、骨、臍帯血、骨膜、及び、それらの組合せ、から構成される群から選択され、
前記1次細胞は、軟骨細胞、骨芽細胞、線維芽細胞、フィブロ軟骨細胞、及び、それらの組合せ、から構成される群から選択される、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項15】
前記織成ファイバ及び前記3次元多孔性基材の個々は、生体適合性材料で形成され、
前記生体適合性材料は、吸収性材料、非吸収性材料、及び、それらの組合せ、から構成される群から選択され、
前記非吸収性材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリアミド、ナイロン、ポリスルホン、セルロース、アクリル、ポリビニルアルコール、炭素、セラミック、金属、アクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エチレンテレフタル酸塩)、ポリ(メチル(メタ)アクリラート)、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリウレタン、から構成される群から選択され、
前記吸収性材料は、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコライドラクチド、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリオキサレート、ポリ酸無水物、ポリ(燐酸エステル)、腸線縫合糸、コラーゲン、絹、アルギナート、アガロース、キチン、キトサン、ハイドロキシアパタイト、生体吸収性カルシウム燐酸塩、ヒアルロン酸、エラスチン、ポリオルトエステル、ポリ(アミノ酸)、プルロニック/F-12、ポリ(エチレンオキシド)/ポリ(エチレングリコール)(PEO/PEG)、コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、ヒアルロン酸、プロテオグリカン、エラスチン、及び、それらの組合せ、から構成される群から選択される、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項16】
前記3次元足場材の内部には、複数の隙間が形成され、
前記隙間の個々は、約50μm~約1,000μmのポア寸法を画定する、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項17】
前記隙間の個々は、約100μm~約500μmのポア寸法を画定する、請求項16に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項18】
前記3次元足場材及び前記3次元多孔性基材の少なくとも一方は、複数の要素によって形成され、前記複数の要素の各要素は、約25μm~約300μmの直径を有する、請求項1に記載の軟骨修復インプラント。
【請求項19】
前記複数の要素の各要素は、約50μm~約200μmの直径を有する、請求項18に記載の軟骨修復インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2016年7月22日に提出した米国仮特許出願第62/365,517号の優先権を主張し、その開示内容は、参照によってその全体を本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
最近の米国保健統計は、現在5000万を超える人々が、臨床的に変形性関節症、関節軟骨及び下にある骨の破壊に起因する関節疾患、と診断されていることを示している。更にまた、この母集団の約40%は、慢性的な関節痛を患って暮らしている。40~65歳(又は、略280万の患者)の母集団の約3%が股関節変形性関節症を苦しんでおり、股関節変形性関節症のための医学的処置を探し求めていると推定される。これらの略280万の患者のうち、推定84万(約30%)は、活動を制限する股関節変形性関節症に苦しんでおり、典型的には、これらの患者は、完全股関節形成術としても知られている股関節置換手術を推奨されている。
【0003】
現在、これらの84万の患者の約15%が股関節置換手術を受けることを選ぶということが推定される。この低いパーセンテージは、活動的な患者のための股関節インプラントの比較的短い予測寿命、及び、その後の修正手術の必要性、のせいである場合がある。修正手術は、既に植え込んだ股関節インプラントを修正するために、重大な合併症、共存症、及び、全般的な有効性の減少、と関連している。
【0004】
理想的な解決策の欠如のせいで、40~65歳の多くの活動的な患者の痛みは、医薬(例えば、非ステロイド性の抗炎症性の薬物(NSAIDs))や栄養補助食品(即ち、グルコサミン及びコンドロイチン硫酸)を通じた患者自身の痛みの管理に委ねられている。こうして、活動を制限する股関節の変形性関節症で苦しんでいるが、関節全置換術の治療の良い志願者ではない活動的な若い患者(年が40~65歳)のこの母集団を扱うために、必要とされるアプローチは、変形性関節症の変質した関節の疾患軟骨(大きな関節炎の病変を有する軟骨)の置換をターゲットにすることである。従来の完全股関節形成術の手順を避けて、痛みの緩和を提供し、活動的な生活様式を回復することのできるこの患者の母集団のための任意の処置は、現在そのための良好な解決策が存在しない臨床の課題を解決するであろう。
【0005】
多くの技術は、この患者の母集団を扱う目的で導入されてきた。これらの技術の幾つかは、股関節の両側が再表面化され又は金属置換キャップで一時的にカバーされる、関節半置換術を含む。関節半置換術のために使用される幾つかのインプラントは、股関節の両側に金属が適用される「メタルオンメタル」である。関節半置換術で使用されるメタルオンメタルインプラントは、良好な初期の成功を実証するが、最近の研究は、過剰な摩耗率と金属デブリの増加とに関係する多数の因子に起因した、メタルオンメタルの再表面化の高水準の失敗を立証しており、最終的に、それらのインプラントシステムの幾つかの市場リコールが引き起こされている。同様に、金属の代わりにポリエチレン製の表面を用いる関節半置換術用のインプラントが、粒子の摩耗に続発する骨溶解に起因したインプラントの弛緩と関連付けられてきた、ことがよく知られている。これらのケースでは、修正関節置換手術は、本来の手術よりも著しく困難であり、複雑になる傾向がある。
【0006】
変形性関節症の関節における疾患のある軟骨の幾つかの軟骨病変は、既存の軟骨修復戦略によって処置される場合がある。これらの既存の手術の「修復」戦略は、一般に3つのカテゴリ、即ち、骨髄刺激、骨軟骨移植、及び、自家軟骨細胞移植又はACI(マトリックス支援ACI又はMACI)、に分割される場合がある。
【0007】
1995年に公然と利用できるようになったACIは、米国での臨床的使用に供することのできる関節軟骨のための現在唯一の細胞ベースの修復治療である。この治療は、患者自身の軟骨細胞の隔離及び増幅を伴い、続いて、軟骨欠損の中に細胞が再植え込みされ、次いで、患者自身の骨膜組織のフラップによってカバーされる。臨床成果が良から優として報告されたが、かなりの数の患者において、グラフト肥大や遊離体の存在などの幾つかの合併症が報告された。これらの幾つかの問題は、おそらく足場材生体材料の不足に関係しており、足場材生体材料は、細胞を植え込み部位で保定し、組織の成長を案内及び強制し、宿主軟骨との統合を促し、適切な成長及び分化に必要とされる生物学的信号(内生であろうと治療的な埋め込みであろうと)を提供するのに役立つであろう。残念ながら、広汎性の変形性関節症又は疾患軟骨の大きなエリアは、患者が既存の軟骨修復戦略に適合することを阻む、1つの一貫した除外基準である。したがって、規定された時間枠があることがあり、現在の戦略が、一斉に抑制するか又は変形性関節症への進行を遅らせるために、深刻な軟骨病理を処置するために利用されることがある。
【0008】
関連のある文献の寸評は、包括的な注意事項、即ち、(1)広汎でない変形性関節症、(2)付随する不安定要素がない、(3)患者が45歳よりも若くすべきであり、及び、(4)病変が4cm2よりも小さくすべきであること、を有しているが、軟骨修復のこれら3つの幅広いカテゴリの成功した臨床結果を示している。
【0009】
既存の軟骨修復技術の使用を拡大する目的で、この若い患者の母集団において、変形性関節症を処置するために企てられた幾つかの研究があった。骨軟骨移植は、微少破壊手順と共に、大きめの病変に試みられてきて、小さめの抑えられた病変の処置に対して劣性の結果を明確に実証した。最近の試みは、若い患者における慢性病を処置するために、第2世代のACI又はMACI治療の算入基準を拡張することも含んでいる。27.3%の高い失敗率は、平均9年の追跡調査後に、MACI治療で処置された若い患者において報告された。同様に、悪い結果及び失敗の高いパーセンテージは、変形性関節症の状況でACI技術で処置された若い患者において報告されてきた。総合すれば、これらの結果は、組織工学戦略のための厳しい関節環境と、関節で存続するだけでなく、長期的な機能のための再生の応答を助成及び促進するための適切な機械特性を備えた材料の必要性と、を示唆している。
【0010】
関節軟骨を修復及び再生することの未対処の臨床的な必要性の理由から、この目的のための改善された組織工学戦略における著しい関心が続いている。この関心は、最近の15年間でエスカレートして、開発又は承認の様々な段階にある病巣の欠損修復に焦点を合わせた、20個を超える軟骨組織工学生成物がもたらされた。これらの生成物は、細胞を欠損の内部にトラップするための方法を改良する生体材料の使用に、主として焦点を合わせている。他のものは、骨軟骨組織の2層構造を再形成するために、2層の骨軟骨インプラントを作り出すことに焦点を合わせているが、天然の組織の機械特性を複製することができない。
【0011】
関連のある文献は、機能組織を生体外で成長させるための他のアプローチで満ちており、リサーチの場面で、合成及び天然の高分子材料の両方を用いて、これまでに探索されて現在も探索中である。そういったアプローチは、生物分解性βハイドロキシエステル(例えば、ポリグリコール酸やポリ乳酸)、ペプチド修飾ポリマ、コラーゲン、ヒアルロン酸、及び、キトサン、それに加えて、アガロース及びアルギナートのマクロ多孔性のヒドロゲル、で作られた繊維状メッシュ及びフォームを用いることを含む。そういった足場材の設計は、軟骨に組織構造的に類似の構造を形成することにおいて、一般的に成功してきた。しかしながら、特に、植え込み後の早い時期に、天然組織の生体力学的及び生化学的な機能の両方を効果的に再現することが、より困難であることが立証された。例えば、初期(即ち、培養後、植え込み前)の生物分解性ポリマ構造体の機械特性は、堅くなりすぎる傾向があったが、その一方、逆に、同じ段階の播種されたヒドロゲルは、流体加圧及び負荷支持を可能にすることが必要とされ、特に、張力で不十分な剛性を表示した。理想的な足場材は、足場材内部の機能組織の生合成を可能にし、さらに促進させながら、生体内の予想される負荷に耐えることに十分なほど堅くあるべきことが推奨される。現在、存在する生成物が天然の組織の機能特性を複製しないために、変質した軟骨表面の小さな病変のみに使用できる場合があり、変質した軟骨表面の大きな病変に使用できない。
【0012】
米国特許第8,691,542号は、軟骨組織再表面化のための3次元織成足場材を開示する。3次元織成足場材は、関節軟骨表面を置換することによって、軟骨表面の幾つかの欠損を再表面化するために使用される。しかしながら、米国特許第8,691,542号の3次元足場材は、固定する手段を採用せず、また、形状を維持して固定する層を組み込んでいない。
【0013】
他の参照文献は、骨軟骨組織工学の使用のために多面的な材料の使用を開示した。米国特許第7,776,100号及び第7,963,997号は、軟骨下の領域に接合され、領域間に疎水性バリアを備える高分子電解質合成物を含む軟骨領域を開示し、高分子電解質合成物は、ヒドロゲルに変化する。米国特許第6,319,712号は、骨統合を助成するための別個の因子を備えた細胞の成長及び組織の進展のための3次元多孔性キャリアの形式のバイオハイブリッド関節表面置換体を開示する。
【0014】
米国特許第6,306,169号は、2つのマトリックス構成要素、即ち、コラーゲンで構成される第1の構成要素と、損傷した軟骨組織で用いる水和したアルギナートで構成される第2の構成要素と、で構成される生体力学インプラントを開示する。米国特許第5,607,474号は、異なった機械特性を有する組織の領域の疾患又は損傷系統で成長する補充組織を支持するためのキャリアを開示する。この特許は、2つの異質の組織層の対応する機械特性を備えた組織の2つの異なった層の組織成長に従順である2つの多孔性層を開示する。米国特許第7,217,294号は、1つ又は複数のシーラント層の下の骨軟骨病変に植え込まれた2次元又は3次元の生物分解性足場材の使用を開示しており、シーラントは、骨及び軟骨の層を分離する。
【0015】
米国特許第5,842,477号は、軟骨修復の目的で骨膜又は軟骨膜の組織と組み合わせた3次元足場材構造の植え込みを開示する。米国特許第9,072,815号は、I型コラーゲン及びヒアルロン酸の第1の層と、I型及びII型のコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む第2の層と、I型及びII型のコラーゲンと他のポリマ又は生物製剤(例えば、グリコサミノグリカン)との第3の層と、を含む骨軟骨の組織修復に適した多層のコラーゲン足場材を開示する。
【0016】
米国特許第8,685,107号は、複数のポアを備えた1次の足場材と、軟骨欠損の修復のための前記ポア構造内部の2次のクロスリンク型コラーゲン性足場材と、を含む2重構造の組織インプラントを開示する。これは、軟骨修復の目的の単一相(即ち、2材料の組合せから構成される1構造)の複合材料であり、したがって、植え込み時に軟骨層の回復を必要とする。同様に、米国特許第8,192,759号、第8,444,968号、第8,512,730号、及び第8,580,289号は、多糖ポリマに絡み合っているポリエステルポリマを含むマトリックスを備えた骨軟骨(並びに他組織用の同材料を用いる)の修復のための単一相のインプラントを開示する。
【0017】
米国特許第5,736,372号は、生体外の軟骨構造を最終的に形成するために生体外でインキュベートされ次いで軟骨欠損に植え込まれる、ポリマファイバで構成される生体適合性マトリックスを混ぜた細胞を開示する。これもまた、関節軟骨修復のための単一相の混合物である。
【0018】
米国特許第8,226,715号は、腱及び靭帯の復元目的のための複数の3次元織成生体吸収性ファイバを開示する。織成構造は、腱/靭帯修復デバイスを骨の中に固定する1つの方法であり、3次元織成構造体は、骨の中に組み込むことを意図しておらず、寧ろ、3次元織成層が接着される剛性のある多孔性の形状維持構造に依存する。
【0019】
前述した特許は、軟骨欠損を処置するための方法及びインプラントを開示し、多くは、骨軟骨の病変(即ち、骨及び軟骨)を修復するために、層状アプローチ(2相又は3相)の少なくとも2つの異なった構成要素に依存している。従来技術は、整った織成マトリックスを包含しておらず、固定する形状維持の特徴部を提供しない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本開示は、機能的な軟骨再生のための工学設計される生物学的に模倣する機械特性を備えた3次元織成足場材システムを利用することによって、これらの課題を扱っている。現在開示する方法及びインプラントは、関節の軟骨層を置換するためのバイオミメティックス3次元織成構造体に主として依存する。この層に対して、固定する基材は加えられ、この基材は、生地ベースの軟骨再浮上層に対して剛性のある形状画定式の多孔性基材を効果的に組み込む。
【0021】
関節の機能組織を再生、回復、及び/又は、複製する課題は、特に関節復元のために工学設計されるインプラントを必要とする。本明細書に開示する軟骨修復インプラントは、関節の軟骨組織の負荷支持特性を直ちに複製し、多孔性の剛性のある固定する基材を用いて、組織の進展を空間的に制御する。このバイオミメティックな解剖学的に正確なインプラントは、各病変に「きっちり適合」するためにカスタマイズすることができ、それによって、次の3つの特徴が提供される。1)各患者の軟骨の特有の輪郭を、つまり、関節適合性を、精密に回復するための能力。2)他の手順で使用する追加の縫合糸、ねじ、又は、フィブリン接着剤、を必要とせずに、軟骨インプラントの全厚さを固定するために、シームレスな「圧入」を提供するための能力。3)大きな軟骨病変が、多くの場合、下にある骨の変質(例えば、硬化した骨)を伴うので、多孔性ベースをアンカとして使用することには、この「疾患」のある骨を置換する追加の利点がある。
【0022】
植え込み時に直ちに、インプラントは、下にある骨に堅固に固定されながらも、細胞の流入やインプラント上の組織の進展の前に、天然軟骨のそれらと類似の引張、圧縮、及びせん断の特性を提供する。このアンカは、3次元織成軟骨層のための堅固なベースを提供し、関節適合性を維持するのを支援し、そして、下にある取り囲む骨の中に容易に組み込まれる。そうすることにおいて、インプラントは、現在の臨床の処置の選択肢についての欠陥に対処する。更に、このアプローチは、関節全置換術(TJA)への転換が後年に必要になる場合に、既存のボーンストックを維持する。そういうことで、このインプラントは、TJAへの時間を遅らせることを可能にし、関節の形態及び機能を回復させること、痛みの除去を提供すること、及び、患者を活動的な生活様式に復帰させること、によって、一般的な大腿軟骨障害の処置のための大きな利点を提供することができる。
【0023】
本開示は、骨軟骨の病変のせいで喪失又は変質してしまった組織に対して、天然の構造及び機能を回復させるために、関節の軟骨修復のための方法及びシステムに関する。本開示は、植え込み後直ちに天然軟骨機能と関節適合性の正確なメンテナンスとを提供することによって、大きな軟骨病変を処置するために使用することのできる高性能な精密に工学設計される構造を作り出すために、3次元微細織成生地に結合される多孔性の剛性基材を紹介する。ここでは、我々は、3次元多孔性剛性材料の3次元織成生地から構成されるハイブリッド構造の使用を開示する。
【0024】
3次元織成生地に対する多孔性基材の追加は、病的な関節軟骨の大きなエリアを修復、置換、及び/又は、再生するための3次元織成構造体の能力に対して実質的な改善を提供する。生地は、軟骨の負荷支持の機械特性の多くを模倣するために工学設計され、基材は、成功して機能する臨床成果のために必要とされる形状を厳格に画定するために3次元織成足場材に固定する。このように、基材は、軟骨が再生及び/又は修復されている間に、生地の解剖学的形状のメンテナンスを画定又は支援する。
【0025】
この構造の新規性は、関節の解剖学的構造及び適合性を回復及び維持しながら、関節の変質した軟骨の大きなエリアを再表面化するために、インプラントとして使用されるべきその能力に由来する。大きなエリアを再表面化することは、関節軟骨の孤立した局所的な欠損を処置することと正反対である。生地は、関節軟骨の非同質、異方性、及び、粘弾性の機械特性の多くを複製するバイオミメティックな足場材を生産するために、3次元直交ファイバ織成技術を用いて製作される。生地は、3次元印刷基材に接着され、関節の損傷、腐食、及び/又は、変質の大きなエリアのために使用することのできる軟骨修復インプラントを効果的に作り出す。得られるアーキテクチャは、インプラントの安定性及び固定化のために軟骨下骨の中の頑丈な固定点を提供しながら、天然の組織の物理的及び構造的な特性を再形成する高性能インプラントを効果的に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】3次元足場材及び3次元基材を含む軟骨修復インプラントを示す図である。
【
図2A】
図1の軟骨修復インプラントの3次元足場材の表面の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【
図2B】
図1の軟骨修復インプラントの3次元基材の上から下への立体顕微鏡画像を示す図である。
【
図2C】
図1の3次元足場材及び3次元基材の断面を示す図である。
【
図2D】
図1の軟骨修復インプラントの例示的な形状を示す図である。
【
図2E】
図1の軟骨修復インプラントの3次元基材の代替の例示的な形状を示す図である。
【
図3A】3次元足場材の微細織成構造の概略図である。
【
図3B】特定の解剖学的形状に成型される
図1の3次元足場材の例を示す図である。
【
図3C】代替の特定の解剖学的形状に成型される
図1の3次元足場材の例を示す図である。
【
図3D】
図1の3次元足場材の中及び上の肝細胞を示す図である。
【
図4A】生体外の
図1の3次元足場材を示す図である。
【
図4B】
図1の3次元足場材のCT復元を示す図である。
【
図5A】生体内の
図1の3次元足場材を示す図である。
【
図5B】骨組織の中に植え込まれる
図1の3次元足場材を示す図である。
【
図5C】生体内の
図1の3次元足場材を示す図である。
【
図6A】
図1のインプラントなどのインプラントによって置換されるべき軟骨病変を含む骨組織の概略図である。
【
図6D】
図6Cの調製済み骨層の中に挿入される
図1のインプラントなどのインプラントを示す図である。
【
図6E】
図1のインプラントなどのインプラントによって置換されるべき損傷した軟骨を含む骨組織を示す図である。
【
図6G】
図6Fの調製済み骨層の中に挿入される
図1のインプラントなどのインプラントを示す図である。
【
図7A】
図1の軟骨修復インプラントの3次元基材の1つの実施形態を示す図である。
【
図7A】
図1の軟骨修復インプラントの3次元基材の別の実施形態を示す図である。
【
図7C】
図1の軟骨修復インプラントの3次元基材の別の実施形態を示す図である。
【
図8A】
図1の軟骨修復インプラントの代替の実施形態を示す図である。
【
図9A】膝軟骨修復のために構成される
図1の軟骨修復インプラントの実施形態を示す図である。
【
図10A】
図1の軟骨修復インプラントなどのインプラントによって置換されるべき寛骨組織を含む股関節を示す図である。
【
図10B】寛骨組織が
図1の軟骨修復インプラントなどのインプラントによって置換された後の股関節を示す図である。
【
図11A】
図1の軟骨修復インプラントなどのインプラントによって置換されるべき負荷支持寛骨組織を含む股関節を示す図である。
【
図11B】インプラントの植え込みのための骨層の調製後の寛骨組織を示す図である。
【
図12A】
図1の軟骨修復インプラントなどのインプラントによって置換されるべき負荷支持膝骨組織を含む膝関節を示す図である。
【
図13A】
図1の軟骨修復インプラントなどのインプラントによって置換されるべき骨壊死を有する骨組織を含む上腕頭を示す図である。
【
図14A】
図1の軟骨修復インプラントなどのインプラントの植え込み後1カ月の犬モデルの活動レベルのグラフを示す図である。
【
図14B】
図1の軟骨修復インプラントなどのインプラントの植え込み後6カ月の犬モデルの活動レベルのグラフを示す図である。
【
図14C】
図1の軟骨修復インプラントなどのインプラントの植え込み後の犬モデルの最大垂直力のグラフを示す図である。
【
図14D】
図1の軟骨修復インプラントなどのインプラントの植え込み後の犬モデルの後肢推進力のグラフを示す図である。
【
図14E】手術後6カ月の軟骨病変を含む骨組織の対照実験モデルを示す図である。
【
図14F】植え込み手術後6カ月の
図1の軟骨修復インプラントなどのインプラントによって置換された軟骨病変を含む骨組織の実験モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の原理の理解を促す目的で、今から以下の書面の明細書に説明した実施形態について参照を行う。理解されることは、それが本発明の範囲に対する制限を意図していないということである。更に理解されることは、本発明が、例示する実施形態についての任意の変更や修正を含み、本発明の属する技術の当業者には普通に思い浮かぶように、本発明の原理についての別の用途を含むということである。
【0028】
軟骨組織工学のために使用されるたいていの生体材料は、かなりのマトリックス沈着が長い間起きるまで、すなわち、植え込み前にかなりの生体外の培養を必要とし得るまで、天然軟骨の機械特性及び負荷支持の特徴を所有しない。米国特許第8,691,542号は、3つの直交する方向のファイバの3次元「微細織成」を開示している。このプロセスは、標準の織成方法より優れており、その理由は、ファイバのクリンプを排除し、正確な3次元構造を形成するからである。(比較して、つい最近の3次元生地複合材材料は、多数の2D構造を互いに積層することによって構築され、多層間のインターフェースは、層割れの起き得る複合材の弱点である)。更にまた、得られるポア構造の制御された規則性及び相互連結性は、細胞が、頑丈な細胞外マトリックス(ECM)をその上に合成できる足場材の内部に容易に充填されて均等に分配されることを可能にする。また、通常のポアジオメトリは、足場材の全体にわたる通常の連続的な経路に沿った栄養の拡散を容易にすることによって、組織のメンテナンスに対してプラスの効果も有する。
【0029】
本開示では、ファイバの3次元微細織成は、関節軟骨の機能特性を模倣するために最適化されていて、また、長期化した体外培養の間に機能特性を支えるための能力を論証している。具体的には、本明細書に開示した3次元微細織成は、天然軟骨と類似するように、引張係数及び圧縮係数において大きさが2~3桁の差を有して、強固な引張・圧縮非線形性を示す。更にまた、それらは、天然軟骨のそれに同じく類似するように、10-15m4/N-sの明らかな透水率を有して、かなりの流体負荷支持を示す。好適な実施形態では、本明細書に開示する足場材は、生体吸収性材料で構築されるが、同じく、非生体吸収性材料で構築されてもよい。いずれにしても、3次元織成は、軟骨と一致する構成的特性を備えたインプラントを生産するために必要な、適切な材料、フィラメント直径、ヤーン直径、ファイバ間隔、及び、織成パラメータ、で構築されなければならない。
【0030】
本発明の開示では、
図1に示すように、インプラント100は、多孔性の剛性基材108に固定式に結合され、軟骨修復用に使用される、3次元微細織成生地足場材104を含む。少なくとも1つの実施形態では、足場材104は、基材108に熱的に接着される場合がある。少なくとも1つの代替的な実施形態では、足場材は、医療グレードの接着剤を用いて基材108に取り付けられる場合がある。剛性基材108は、病変部位に対するインプラント100の効果的な固定を可能にし、固定を行う剛性基材108は、任意の形状及び寸法に製造することができるので、その多孔性アーキテクチャを依然として維持しながら、固定を行う剛性基材108は、適切な解剖学的ジオメトリを維持するのに役立ち、したがって、機械的な機能を行うインプラント100は、天然の解剖学的組織として機能可能である。
【0031】
図2Aに示すように、軟骨修復インプラント100の3次元織成生地足場材104は、ポア116をその間に形成するファイバ112の3次元微細織成構造である。織成生地足場材104は、制御された多孔度を有し、ポア116は、例えば、約50μm~約1000μmであり、インプラント100における組織の成長及び安定化を可能にする。少なくとも1つの実施形態では、ポア116は、約100μm~約500μmである場合がある。少なくとも1つの実施形態では、ポア116は、約250μm~約400μmである場合がある。
【0032】
織成生地足場材104のファイバ112は、マルチフィラメントファイバ、モノフィラメントファイバ、それらの長さに沿って可変の若しくは不規則な断面を有するフィラメント、中空糸、又は、任意のそれらの組合せ、であることがある生体適合性材料から作られる。ファイバ112は、例えば、厚さ又は直径が約25μm~約300μmである。生体適合性材料112は、生体吸収性生体材料、非生体吸収性生体材料、又は、それらの組合せ、で構成される。代表する非生体吸収性材料は、それらに限定されないが、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリカーボネートウレタン、ポリアミド、ナイロン、ポリアリールエーテルケトン材料(PAEK)、ポリスルホン、炭素、セラミック、金属、又は、任意の他の許容可能な非生体吸収性ファイバ、を含む。代表する吸収性材料は、それらに限定されないが、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、コラーゲン、絹、キチン、キトサン、ヒアルロン酸、又は、任意の他の許容可能な生体吸収性生体材料ファイバ、を含む。
【0033】
図2Bに示すように、インプラント100の剛性基材108は、ポア124をそれらの間に画定するストラット120を含む。剛性基材108のストラット120は、ポリマを3次元プロット/印刷すること、例えば、プロット済み/印刷済みのポリ(e-カプロラクトン)(PCL)、によって形成することが好ましい場合がある。PCLは、使用するのに有益な材料であり、その理由は、関節の適切なジオメトリのメンテナンスを可能にするからであり、また、ポアが100~500μmのバイオプロット済みPCLが、骨形成を高める信号経路を刺激することによって、移植した幹細胞の骨形成を促進できるからである。したがって、ポア124が100~500μmのバイオプロット済みPCLから形成されるストラット120を有する剛性基材108は、剛性基材108の固定機能の長期メンテナンスを更に支援する場合がある。
【0034】
深部骨病変は、インプラント100を用いて処置する軟骨病変に関係付けられることが可能であり、骨組織は、軟骨下骨の欠損が大きいか又は深いときに、自己再生のための能力を有するが、適切な骨間隙充填材が使用されない場合に、修復されないで頻繁に残存するであろう。このケースでは、剛性基材108は、ストラット120及びポア124によって提供される適切なジオメトリ及びポア寸法を有しており、成功した骨間隙充填材の必要な機械的及び構造的な特性を提供する。
【0035】
ポア124の寸法は、生体内でより重要になるが、その理由は、基材108の細胞浸潤及びその後の血管新生などのプロセスに影響を及ぼすからである。基材108の生体適合性ストラット112は、生体吸収性生体材料、非生体吸収性生体材料、又は、それらの組合せ、で構成される。代表する非生体吸収性材料は、それらに限定されないが、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリウレタン、ポリカーボネートウレタン、ポリアミド、ナイロン、ポリアリールエーテルケトン材料(PAEK)、ポリスルホン、炭素、セラミック、金属、又は、任意の他の許容可能な非生体吸収性生体材料フィラメント、を含む。代表する吸収性材料は、それらに限定されないが、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、コラーゲン、キチン、キトサン、又は、任意の他の許容可能な生体吸収性生体材料フィラメント、を含む。
【0036】
少なくとも1つの実施形態では、軟骨修復インプラント100は、細胞(例えば、軟骨細胞、線維芽細胞、前駆細胞、幹細胞、再プログラム化された細胞)、並びに/又は、成長因子、サイトカイン、ケモキネシス、抗生物質、DNA、プラスミド、若しくは、細胞の有向の成長及び/若しくは分化、若しくは生体活性の治療的遺伝子を生成物に送達することのできるベクトル、を誘導し得る、他の分子、などの追加の外因的に導入される生体活性分子を送達する場合もある。特に、生地足場材104及び/又は基材108は、異なった細胞、分子、成長因子、サイトカイン、ケモキネシス、抗生物質、DNA、プラスミド、又は、細胞の有向の成長及び/若しくは分化、若しくは生体活性の治療的遺伝子を生成物に送達することのできるベクトル、を誘導し得る、他の分子、を送達するために使用されることがある。インプラント100の基材108及び/又は3次元織成足場材104の一部は、ハイドロキシアパタイト、燐酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルミナ、ジルコニア、イットリア安定化ジルコニア、窒化珪素ベースの材料、生体活性ガラス、及び/又は、ガラスセラミックス、などの骨形成を促進するために知られている無機マトリックスコーティングで少なくとも部分的に被覆されることがある。生地足場材104及び基材108の一方又は双方は、軟骨由来マトリックス、脱塩骨マトリックス、又は、他の脱細胞化組織、などの細胞外由来の生体材料で少なくとも部分的に被覆されることもある。他の実施形態では、インプラント100は、部分的に(例えば、生地足場材104の側面に)又は完全に、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルギナート、アガロース、キトサン、ゼラチン、ラミニン、フィブロネクチン、相互侵入網目構造(完全に生物学的な、全て人造の、又は前2者の組合せである網目構造)、又は、フィブリン、から構成される生体材料で充填される場合がある。
【0037】
更に他の代替の実施形態では、インプラント100のファイバ112は、生体活性コーティング、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス(LV)、裸のDNA、ペプチド、自己集合性ペプチド、抗炎症薬、サイトカイン、サイトカイン抑制剤、骨及び軟骨に固有の高分子、(例えば、プロテオグリカン、軟骨オリゴマーマトリックス蛋白質、ヒアルロン酸、I型コラーゲン、II型コラーゲン、及び、骨形態形成蛋白質)又はそれらの組合せ、で被覆される場合がある。ファイバ112の一部分は、1つ又は複数の生物薬剤で被覆されることがあり、部分は、被覆なしのままにされ、或いは、完全に異なった薬剤で被覆されることがある。織成生地足場材104などの縦糸インターロックファブリックのアーキテクチャの利点の1つは、足場材104の細胞の部位特有の分化を引き起こすために、個々のファイババンドルを被覆する能力である。
【0038】
図2Aを参照すると、3次元織成生地足場材104の表面の走査型電子顕微鏡写真が示される。足場材104は、PCLから形成される(スケールバー=0.2mm)。
図2Bは、軟骨修復インプラント100の剛性基材108の上から下への立体顕微鏡画像を示す。剛性基材108のストラット120は、交互の0度と90度との整列で積重ねられる(スケールバー=0.5mm)。代替的な実施形態では、ストラット120は、相互に対して約30度~約120度の角度で積重ねられる場合がある。
【0039】
図2Cは、軟骨修復インプラント100の生地足場材104及び剛性基材108の断面を示す。
図2Dは、インプラント100の剛性基材108が、インプラント100を特定の部位に固定するのに役立つために、異なった形状に、例えば、解剖学的形状に、製造される場合がある、ことを例示する。特に、
図2Dは、直径24mmの大腿骨頭の湾曲に調和するように構成された解剖学的なドーム状の表面128を備えた直径10mmの軟骨修復インプラント100を示す。
図1Eは、異なった特定の用途のために様々な寸法及び形状で3次元印刷される剛性基材108の代替的な実施形態を更に示す。
【0040】
図3A~3Dは、生体内で軟骨組織を再生するときの生地足場材104の効能を例示している。
図3Aは、生地足場材104の3次元微細織成構造の概略図である。
図3B及び3Cは、解剖学的形状の中に成型されて次いで生体外で培養されている生地足場材104の例である。
図3Bに示す例では、生地足場材104は、剛性基材108なしで示されている。生地足場材104は、PCLから形成されて、大腿顆の形状の中に成型される。
図3Cに示す例では、生地足場材104は、PCLから形成されて、大腿骨頭の形状の中に成型される。
図3B及び3Cの両方に示す成型されたPCL足場材104は、軟骨形成状態で4週間培養され、こうして、図における足場材上の組織発生から理解される円滑な表面を発生させた。
図3Dは、5週間後の断面的な共焦点画像を示す。
【0041】
図3Dの画像は、ECMの内部に埋め込まれて足場材104を完全にカプセル化する肝細胞132を示す。こうして、
図3Dの画像は、足場材104の3次元多孔性アーキテクチャ内部の頑丈な組織発生を更に実証する。
図3Dの左側に示す挿入画は、誇張した図を示しており、足場材104のポア構造中の組織発生を実証する。
図3Dの右側に示す挿入画は、II型コラーゲンのための免疫標識を示しており、関節軟骨で見られる主要なコラーゲンの著しい沈着を実証する。
【0042】
図4A及び4Bは、幹細胞が播種されて生体外の骨形成媒体中で6週間培養される3次元印刷の足場材104を示す。
図4Aは、6週のグロスイメージを示し、
図4Bは、CT復元における足場材のミネラル化を明らかにしている。
【0043】
様々の動物モデルを用いて実行された研究は、生体内での組織の成長及び進展を支持するためにインプラント100の能力を評価する。初期の研究では、細胞浸潤、組織内殖、及び、宿主組織に対する3次元織成足場材104の付着は、ラット異所性モデルにおいて8週間無細胞式に植え込まれるときに実証された。この研究に続いて、堅固な組織合成は、ラビットの内側顆の骨軟骨の欠損に無細胞式に植え込まれたときの関節の軟骨修復のためのラビットモデルで示された。このラピーヌモデルでは、取り囲む天然組織の迅速且つ完全な一体化は、線維カプセル化、及び/又は、天然骨と天然軟骨との間のギャップ、の証拠無しに、6週には早くも明確に記述された。重要なことには、足場材ファイバ112(
図5A、5C、及び5Dの白い無着色なセクションは全て足場材ファイバ112のバンドルである)は、両方の種において、組織の成長の案内及び支持をしながら、「機能的な」インプラントを提供するために、未変化に留まった。構造体は、足場材104内部の生合成活動の堅固さのレベルを実証しただけでなく、足場材104の構造全体に亘るサフラン-O染色(
図5C及びD)によって証明されるように、構造体は、強い軟骨形成の表現型を同じく支持した。留意すべきことには、これらの初期の研究は、インプラント100の剛性基材108を組み込んでいなかった。
【0044】
図6A~6Gは、異なる関節空間での、即ち、股関節の犬モデル(
図6A、6B、6C、及び6Dに示す)と、膝の変形性関節症のためのヤギモデル(
図6E、6F、及び6Gに示す)と、でのこの技術の使用を示す。これらの外科的な写真は、複合的な解剖学的ジオメトリについての複雑な軟骨の病状を解決することへのアプローチの適用性を実証する。関節の個々の実質的な湾曲(
図6A及び6Eの矢印136によって注目されるような)は、複数の半径によって画定される。インプラント100(
図6D及び6Gに示す)は、湾曲に調和すること、及び、天然の機能する組織の構造特性及び機械特性の多くを再形成することができる。
【0045】
様々な適用例のためのインプラント100の多用途性を例示するために、
図7A~7Cの個々が、
図1に示すインプラント100の異なった可能な構成を示す。
図7A~7Cに示す構造の個々では、3次元織成及び成型ファブリック104は、修復されるべき関節組織の形状に形成される。特に、織成生地足場材104は、湾曲した下側138を有する中空の半球として形成される。
図7A、7B、及び7Cの個々は、足場材104に結合されて、
図1に示す3次元織成生地足場材104を支持するように構成される多孔性の剛性基材108の異なった可能な構成の断面を示す。基材108の様々な構成の個々は、修復されるべき種々の関節でのインプラント100の固定を可能にするために、ボディの異なった部位での植え込みに適している。
【0046】
図7Aは、円柱のように実質上形成された基材108を示す。基材108は、実質上平らな底部140と、足場材104の湾曲した下側138の一部分に嵌合するための湾曲した上部144と、を有する。基材108の上部144は、足場材104の湾曲した下側138の直径よりも小さい直径を有し、基材108の上部144は、足場材104の湾曲した下側138に対して中心決めされる。
【0047】
図7Bは、ステム152及びヘッド156を含む基材108を示す。ステム152は、実質上円柱状であり、基材108の底部140からヘッド156まで延びる。ステム152は、ヘッド156の直径よりも小さい直径を有し、ステム152は、ヘッド156に対して中心付けされる。ヘッド156は、実質上半球状であり、基材108の上部144からステム152まで延びる。ヘッド156の半球形状は、足場材104の湾曲した下側138の形状に嵌合するように、また、足場材104の湾曲した下側138全体に実質上接触するように、構成される。
【0048】
図7Cは、円柱のように実質上形成される基材108を示す。基材108は、実質上平らな底部140と、足場材104の湾曲した下側138に嵌合するための湾曲した上部144と、を有する。上部144は、足場材104の湾曲した下側138全体に実質上接触するために形状付けされる。
【0049】
図8A及び8Bは、インプラント100の他の代替的な実施形態を示す。
図8A及び8Bに示す実施形態では、基材108の底部140は、実質上円柱のようであり、基材の上部144は、足場材104の湾曲した下側138と平らな下側148との両方の形状に嵌合するように構成される(
図8Bに示す)。換言すると、足場材104の中空の半球形状の下側は、凹状表面(湾曲した下側138)と、凹状表面を取り囲む平らな表面(平らな下側148)と、を含む。
図8A及び8Bに示す実施形態では、足場材104は、基材108に取り付け又は接着され、したがって、基材108は、3次元織成生地足場材104を完全に支持する。
【0050】
図9A及び9Bは、インプラント100の追加の代替的な実施形態を示す。
図9A及び9Bに示す実施形態では、足場材104は、膝の顆のように形状付けされる。
図9Aでは、足場材104は、細い基材108に取り付けられ、基材108は、足場材104の下側全体に接触及び支持しない。対照的に、
図9Bは、同じ足場材104を含むが、3次元織成生地足場材104の下側に完全に接触及び支持するように構成される基材108を含む。
図9A及び9Bの個々は、複雑な関節解剖学的構造を置換、修復、及び再生するための軟骨修復デバイス100の複雑な湾曲を示す。
【0051】
図10A及び10Bは、股関節の変形性関節症の修復のためのインプラント100の使用を示す。この例では、軟骨修復デバイス100は、人間の大腿骨頭の形状で形成される。
図10Aに示すように、デバイス100は、基材108が股関節の大腿骨頸部160に固定されるように植え込まれ、
図10Bに示すように、軟骨修復デバイス100は、大腿骨頭の全体の解剖学的構造を置換する。
【0052】
図11A~11Cは、
図10Aに例示されたものよりも小さい病変を修復するように構成された軟骨修復デバイス100の他の実施形態を示す。
図11Aは、大腿骨頭168の負荷支持の面内に位置する、現行の手順を用いて処置できるものよりも大きい、病変164を示す。欠損164は、病変164全体を包む通常の形状を有する、通常の管理された欠損170(
図11Bに示す)を形成するために、デブリードマンをされる。これは、
図11Bに示す軟骨修復デバイス100を受け入れるために部位を準備する。
図11Cに示すように、軟骨修復デバイス100は、優位に位置する軟骨病変164を処置するために大腿骨頭168に配置される。
【0053】
図12A及び12Bは、膝での軟骨修復デバイス100の適用例を実証する。顆の変形性関節症は、疾患の骨164まわりの領域の損傷した軟骨を除去すること、及び、
図12Aに示すように、顆の骨を準備することによって、効果的に修復される。解剖学的に形状付けされた軟骨修復インプラント100は、その後に、
図12Bに示すように、植え込まれる。
【0054】
図13A及び13Bは、上腕頭の骨壊死の処置を示す。
図13Aに示す壊死骨172は、除去され、軟骨修復インプラント100は、
図13Bに示すような壊死骨172の除去によって形成された規定の病変170に固定される。
【0055】
少なくとも1つの実施形態では、軟骨修復インプラント100は、次のように構築される。軟骨修復インプラント100の足場材104は、直交3次元織成ファブリックを用いて構築される。特に、生物医学グレードのヤーン(直径150μm)は、3次元直交構造の中に織成され、縦糸(x方向、即ち、織機において0度又は縦方向)方向に配向された5層と、横糸(y方向、即ち、縦方向ファイバに対して90度)方向に配向された6層との、11個の面内ファイバ層を包含する。足場材104は、5つの縦糸層の個々において24ヤーン/cmと、6つの横糸層の個々において20ヤーン/cmと、z方向の24ヤーン/cmと、を包含する。足場材104の相互連結された内部ポアは、390μm×320μm×104μmの寸法を有し、約60~70%の間隙の総体積を生じさせる。ファブリックの織成後に、足場材104は、近い寸法にカットされ、次いで、問題のジオメトリのための特注の型を用いて、欠損の形状に成型される。好ましくは、足場材104の材料は、制御した加熱を用いて安定化され、構成要素ヤーンを作り出して変容した物理的な配置の中にそれらをロックする、ポリマの分子状態を再編成する。このプロセスは、「ヒートセッテッィング」として知られているが、各層の多孔度、通し多孔度、又は、構造の計画機械特性を犠牲にせずに、構造を安定化させる。任意の従来の画像化モダリティ(例えば、MRI、CT、又はX線)を用いて、関節炎の欠損は、精密にマッピングされる。
【0056】
軟骨修復インプラント100の基材108は、3次元印刷するのが好ましく、したがって、問題のジオメトリ/解剖学的構造に調和するために、また、インプラント100の上側の3次元織成生地足場材104を完全に支持するために、容易に製造することができる。基材108の層は、厚さが200μm~500μmであることが好ましく、ストランド間隔は、0.5~1.0mmであることが好ましい。各連続する層は、前のものに対して90度、1mm間隔で、再び押出加工される。基材108の総高さは、層の数によって決定される。この例では、20層が押出加工され、約6.4mmである基材の厚さを生じさせる。軟骨修復インプラント100の厚さは、基材108と足場材104との両方を含んで、約7mmである。インプラント100の足場材104の上側面の半径及びジオメトリは、修復中の関節表面の直径/半径/湾曲に調和するために製造される。基材108は、次いで、2つのゾーンの軟骨修復インプラント100を作り出すために、足場材104に微視的制御下で熱的に接着することが好ましい。ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)は、その遅い劣化速度と、長い期間にわたって適切な機械特性を維持するための能力とのために、基材108と足場材104との両方を製造するために使用することが好ましい。インプラント100は、軟骨の圧縮率に調和するようにも構成され、即時の機能を可能にし、その間、新たな組織が軟骨修復インプラント100の中、通して、及びその表面上に発生する。例えば、足場材104の圧縮率は、200kPa~5MPaである場合がある。
【0057】
少なくとも1つの代替的な実施形態では、軟骨修復インプラント100は、次のように構築される。軟骨修復インプラント100の足場材104は、直交3次元織成ファブリックを用いて構築される。特に、生物医学グレードのヤーン(直径150μm)は、3次元直交構造の中に織成され、縦糸(x方向、即ち、織機において0度又は縦方向)方向に配向された5層と、横糸(y方向、即ち、縦方向ファイバに対して90度)方向に配向された6層と、の11個の面内ファイバ層を包含する。足場材104は、5つの縦糸層の個々において24ヤーン/cmと、6つの横糸層の個々において20ヤーン/cmと、z方向の24ヤーン/cmと、を包含する。足場材104の相互連結された内部ポアは、390μm×320μm×104μmの寸法を有し、約60~70%の間隙の総体積を生じさせる。ファブリックの織成後に、足場材104は、近い寸法にカットされ、次いで、問題のジオメトリのための特注の型を用いて、欠損の形状に成型される。好ましくは、足場材104の材料は、制御した加熱を用いて安定化され、構成要素ヤーンを作り出して変容した物理的な配置の中にそれらをロックする、ポリマの分子状態を再編成する。このプロセスは、「ヒートセッテッィング」として知られているが、各層の多孔度、通し多孔度、又は、構造の計画機械特性を犠牲にせずに、足場材104の構造を安定化させる。任意の従来の画像化モダリティ(例えば、MRI、CT、又はX線)を用いて、関節炎の欠損は、精密にマッピングされる。
【0058】
軟骨修復インプラント100の基材108は、3次元印刷するのが好ましく、したがって、骨に形成された準備した固定穴のジオメトリに調和する。基材108の層は、厚さが200μm~500μmであることが好ましく、ストランド間隔は、0.5~1.0mmであることが好ましい。各連続する層は、前のものに対して90度、1mm間隔で、再び押出加工される。基材108は、次いで、2層(即ち、2つの別個のゾーン)の軟骨修復インプラント100を作り出すために、3次元織成足場材104に微視的制御下で熱的に接着することが好ましい。ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)は、その遅い劣化速度と長い期間にわたって適切な機械特性を維持するための能力とのために、足場材104と基材108との両方を製造するために使用することが好ましい。インプラント100は、軟骨の圧縮率に調和するようにも構成され、即時の機能を可能にし、その間、新たな組織が軟骨修復インプラント100の中、通して、及びその表面上に発生する。
【0059】
基材108の総高さは、層の数によって決定される。この例では、30層が押出加工され、約9.6mmである基材108の厚さを生じさせる。3次元印刷基材108は、基材108及び足場材104が互いに接合される取付け点で、織成足場材104の湾曲に調和する。3次元印刷基材108は、円形断面を備えて押出加工され、直径が10mmである。穴は、直径が同じく10mmであるか又は僅かに小振りであるドリル又はエンドミルを用いるなど、公知の技術を用いて、骨に準備される。関節炎エリアは、次いで、デブリードマンが行われ、基材108は、圧入され、それ故に、骨の中に固定し、したがって、足場材104は、変質表面と完全に置き換わり、それによって関節適合性が回復する。軟骨修復インプラント100の総厚さは、約11mmである。
【0060】
少なくとも1つの代替的な実施形態では、軟骨修復インプラント100は、次のように構築される。軟骨修復インプラント100の足場材104は、直交3次元織成ファブリックから構築される。特に、生物医学グレードのヤーン(直径150μm)は、11個の面内ファイバ層を含む3次元直交構造の中に織成され、5個の層は、縦糸(織機において0度又は縦方向)方向に配向され、6個の層は、横糸(縦方向ファイバに対して90度)方向に配向される。構造は、5つの縦糸層の個々において24ヤーン/cmと、6つの横糸層の個々において20ヤーン/cmと、z方向の24ヤーン/cmと、を包含していた。織成前に、縦糸ファイババンドルは、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)をコードするレンチウイルスで被覆され、植え込み後の足場材104に移動する細胞の軟骨性の分化を引き起こす。
【0061】
基材108は、3次元印刷され、層厚さが320μm、押出加工フィラメント間の間隔が1mmである。各連続する層は、前のものに対して90度、1mm間隔で、再び押出加工される。基材108の総高さは、層の数によって決定される。この例では、10層が押出加工され、約3.2mmである基材108の厚さを生じさせる。軟骨修復インプラント100の厚さは、基材108と足場材104との両方を含んで、約4mmである。基材108の上側表面は、修復(例えば、大腿骨頭又は膝顆)を必要とする表面の湾曲に調和するように、設計されて製造される。基材108の印刷層は、骨形成因子2(BMP-2)又はBMP-2のためにコードするレンチウイルスで被覆され、構造の中に移動し、したがって、下にある骨の中に構造体を固定する骨形成ステム細胞の骨形成の分化を促進させる。
【0062】
先の実施形態の場合のように、足場材104の相互連結された内部ポアは、390μm×320μm×104μmの寸法を有し、約60~70%の間隙の総体積を生じさせる。足場材104のファブリックの織成後に、足場材104は、3次元印刷基材108に、好ましくは、熱的に、接着される。ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)は、その遅い劣化速度と長い期間にわたって適切な機械特性を維持するための能力とのために、足場材104と基材108との両方を製造するために使用することが好ましい。インプラント100は、軟骨の圧縮率に調和するようにも設計され、即時の機能を可能にし、その間、新たな組織が軟骨修復インプラント100の中、通して、及びその表面上に発生する。
【0063】
基材108と足場材104との相互連結後に、得られる2つのゾーンのインプラント100は、近い寸法にカットされ、凍結乾燥され、そして、非加熱の滅菌方法(例えば、低温度のエチレンオキシド滅菌)を用いて滅菌される。インプラント100は、手術の時にパッケージから取り出されて、欠損の形状にカットされ、次いで、骨形成側が、準備した骨層上の欠損の中に配置される。
【0064】
少なくとも1つの代替的な実施形態では、軟骨修復インプラント100は、犬の股関節の軟骨修復用に構築される。足場材104は、生物医学グレードのヤーン(直径150μm)を用いて製造される直交3次元織成ファブリックを用いて構築され、ヤーンは、縦糸(x方向、即ち、織機において0度又は縦方向)方向に配向された5層と、横糸(y方向、即ち、縦方向ファイバに対して90度)方向に配向された6層との、11個の面内ファイバ層を包含する、3次元直交構造の中に織成される。足場材104は、5つの縦糸層の個々において24ヤーン/cmと、6つの横糸層の個々において20ヤーン/cmと、z方向の24ヤーン/cmと、を包含する。足場材104の相互連結された内部ポアは、390μm×320μm×104μmの寸法を有し、約60~70%の間隙の総体積と、約700ミクロンの総厚さと、を生じさせる。ファブリックの織成後に、足場材104は、近い寸法に、このケースでは、直径10mmの円板に、カットされる。
【0065】
インプラント100の基材108は、インプラント100の生地足場材104のそれと同一である直径10mmで約2mmの総高さに3次元印刷される。基材108の層のフィラメントは、厚さ320μmで印刷され、ストランド間隔は、1.0mmである。基材108の各連続する層は、前のものに対して90度、1mm間隔で、再び押出加工される。3次元印刷基材108は、置換及び再生されるべき関節炎軟骨の湾曲に調和するように、構成されて印刷される。基材108は、次いで、軟骨修復インプラント100を作り出すための2層(即ち、2つの別個のゾーン)構造を作り出すために、3次元織成足場材104に微視的制御下で熱的に接着することが好ましい。ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)は、その遅い劣化速度と長い期間にわたって適切な機械特性を維持するための能力とのために、足場材104と基材108との両方を製造するために使用される。
【0066】
インプラント100は、軟骨の圧縮率に調和するようにも構成され、即時の機能を可能にし、その間、新たな組織が軟骨修復インプラント100の中、通して、及びその表面上に発生する。例えば、足場材104の圧縮率は、200kPa~5MPaである場合がある。インプラント100の効能をテストするために、変形性関節症の犬モデルは、インプラント100の2層/2ゾーン構造をテストするために使用される場合がある。
図14Aに示すように、1つのそういったテストからのデータが示すことは、2週間にわたって平均化された24時間活動レベル(重要な動き)が、術前(植え込み手術前)の活動レベルに関連して、術後(植え込み手術後)1カ月の活動が少ないことを示すということである。
図14Bに示すように、6カ月の活動レベルは、2層/2ゾーンのインプラント100を受けた実験動物の正常な活動への回復を示す。
図14C及び14Dに示すように、圧力感応性通路の研究は、最大垂直力(PVF)(
図14Cに示す)及び後肢推進力(
図14Dに示す)によって測定されるように、手術前の「正常な」運動学への3カ月での回復を明らかにしている。
図14C及び14Dに示すSIは、計測するために、処置された肢から得られる値を、対側の肢から得られる値に対して、標準化することによって、歩行障害を測定する「対称性指数」を指す。ゼロの値は、動作制御と対側制御の間に差が無いことを意味し、200の値は、完全な歩行障害を意味する。
【0067】
図14E及び14Fは、植え込み手術後6カ月の、対照実験(
図14Eに示す)と実験(
図14Fに示す)との、手術された股関節の解剖の例を示す。
図14Eに示す関節炎対照実験における劣化した軟骨は、
図14Fに示す2層インプラント100を用いる実験グループにおける円滑な修復の効能を例示する。解剖で6カ月の実験グループの関節のグロス評価は、大腿骨頭の正常な解剖学的な湾曲を維持しながら、軟骨表面の空洞形成や更なる浸食の徴候なしの、宿主組織との一体化を明らかにしている。これらのデータは、3次元印刷固定基材108に接着された機能的な生物模型の3次元織成生地足場材104が、成功した臨床結果を達成するのに資する、ことを示している。
【0068】
少なくとも1つの代替的な実施形態では、軟骨修復インプラント100は、上腕頭の骨壊死の修復のために構築される。壊死性骨は、標準の磁気共鳴又はコンピュータ断層撮影画像化を介して患者に確認される場合がある。いったん壊死ゾーンが確認されると、外科手術のプランニングが行われて、健常のボーンストックを最大限に保護しつつ除去する必要のある壊死性骨の縁が決定される。カスタムガイドは、その後に自由形式のモデリングソフトウエアを用いて設計され、次いで、製造され、疾患組織の除去を案内する。
【0069】
インプラント100は、ガイドツールで作り出される欠損に調和するように構成される。この例に関して、ガイドツールからの欠損の位置付け後に、深さ停止型カニューレ挿入式エンドミルには、壊死性骨に孔開けをするために、kワイヤが通されて、深さ15mmのカットによって直径15mmがもたらされる。先の実施形態で提供したものと似たやり方で製造した適切な寸法の二層型インプラント100は、所定の位置に押し込まれる。
【0070】
本開示は、例示であって、特徴における制限ではないと考えるべきである。理解されることは、単なる或る種の実施形態が紹介されたということと、本開示の範囲の範囲内に入る全ての変更、修正、そして、更なる適用例の保護が望まれるということである。