(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】(ペル)フルオロポリエーテルポリマー
(51)【国際特許分類】
C08G 65/331 20060101AFI20221205BHJP
G11B 5/725 20060101ALI20221205BHJP
G11B 5/84 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
C08G65/331
G11B5/725
G11B5/84 B
(21)【出願番号】P 2019531150
(86)(22)【出願日】2017-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2017082328
(87)【国際公開番号】W WO2018108864
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-11-12
(32)【優先日】2016-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092877
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ イタリー エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ガリムベルティ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】フォンタナ, ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルセッキ, ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】トルテッリ, ヴィート
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/022871(WO,A1)
【文献】特開2011-223009(JP,A)
【文献】特表2006-510719(JP,A)
【文献】特表2005-508433(JP,A)
【文献】特開2004-203889(JP,A)
【文献】特開2000-282074(JP,A)
【文献】国際公開第2013/121986(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G,G11B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの鎖末端を有するペルフルオロポリエーテル主鎖を含む、少なくとも1種のポリマー[ポリマー(PFPE
FOR)]の合成方法[方法P
FOR)]であって、少なくとも1つの鎖末端が1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル基、-OC(=O)F、及び-C(=O)Fから選択される少なくとも1つの基を含み、
前記方法が、
(I)少なくとも2つのアシルフルオリド基を含む少なくとも1種のペルフルオロ化合物[化合物(F)]を、少なくとも2つのフルオロホルメート基を含む少なくとも1種の水素化化合物[化合物(H)]と接触させることで、2つの鎖末端を有する部分的にフッ素化されているポリエーテル主鎖を含むポリマー[ポリマー(FH)]を得る工程であって、前記主鎖が、前記少なくとも1種の化合物(H)由来の繰り返し単位と交互に配置された前記少なくとも1種の化合物(F)由来の繰り返し単位を含み、前記鎖末端のうちの少なくとも一方は、-OC(=O)F及び-C(=O)Fから選択される少なくとも1つの基を含む工程;並びに
(II)工程(I)で得られた前記ポリマー(FH)をフッ素源と接触させることで、少なくとも1種のポリマー(PFPE
FOR)を得る工程
を含む方法。
【請求項2】
前記化合物(F)が、式:
F-(O=)C-R
f-C(=O)-F
(式中、R
fは二価の直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル鎖であり、前記アルキル鎖は1~10個の炭素原子を含み、任意選択的に1つ以上の酸素原子が挟まれている)
の化合物である;及び/又は
前記化合物(H)が、式:
F-(O=)CO-R
H-OC(=O)-F
(式中、R
Hは二価の直鎖又は分岐のアルキル鎖であり、前記アルキル鎖は2~10個の炭素原子を含み、任意選択的には1つ以上の酸素原子が挟まれている)
の化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー(PFPE
FOR)において、前記主鎖が、シグマ結合を介して、又は少なくとも1つの部位R
f及び/又は少なくとも1つの部位R
Fを含む連結鎖[鎖(L)]を介して、その両端で1つの鎖末端と連結されており、前記部位R
fは二価の直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル鎖であり、前記アルキル鎖は1~10個の炭素原子を含み、任意選択的には1つ以上の酸素原子が挟まれており、前記部位R
Fは2~10個の炭素原子を含み任意選択的に1つ以上の酸素原子が挟まれている二価の直鎖又は分岐のペルフルオロアルキレン鎖である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー(PFPE
FOR)において、前記主鎖が、次の式(PFPE
FOR-b):
-[CF
2R
fCF
2-OR
FO]
y*- (PFPE
FOR-b)
(式中、
R
fは二価の直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル鎖であり、前記アルキル鎖は1~10個の炭素原子を含み、任意選択的に1つ以上の酸素原子が挟まれており、
R
Fは、2~10個の炭素原子を含み任意選択的に1つ以上の酸素原子が挟まれている二価の直鎖又は分岐のペルフルオロアルキレン鎖であり、
y*は、NMR分析により決定される前記ポリマー(PFPE
FOR)の前記主鎖の数平均分子量が282~70000であるように選択される整数である)
を満たす繰り返し単位を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリマー(PFPE
FOR)が、次の式(PFPE
FOR-1)~(PFPE
FOR-6):
F-C(=O)-R
fCF
2-OR
FO-[CF
2R
fCF
2-OR
FO]
y*-CF
2R
fC(=O)F (PFPE
FOR-1)
F-C(=O)O-R
F-O[CF
2R
fCF
2-OR
FO]
y*-C(=O)F (PFPE
FOR-2)
F-C(=O)-R
f-CF
2O-R
F-O[CF
2R
fCF
2-OR
FO]
y*-C(=O)F (PFPE
FOR-3)
T-R
f-CF
2O-R
F-O[CF
2R
fCF
2-OR
FO]
y*-C(=O)F (PFPE
FOR-4)
T-R
f-CF
2O-R
F-O[CF
2R
fCF
2-OR
FO]y*-CF
2R
fC(=O)F (PFPE
FOR-5)
T-R
fCF
2-OR
FO-[CF
2R
fCF
2-OR
FO]
y*-CF
2R
f-T (PFPE
FOR-6)
(式中、
R
f、R
F、及びy*は、請求項4で定義した通りであり、
Tは、フッ素原子、及び1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル鎖を含む群において選択される中性基である)
のうちの1つを満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(I)が、1つのアシルフルオリド基を含む少なくとも1種の化合物[化合物(F-mono)]及び/又は1つのフルオロホルメート基を含む少なくとも1種の化合物[化合物(H-mono)]を添加することを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
2つの鎖末端を有するペルフルオロポリエーテル主鎖を含むペルフルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(PFPE*
FOR)]であって、
*両方の前記鎖末端が-OC(=O)Fまたは-C(=O)Fを含み、
*前記主鎖が、次の式(Ia)~(If):
(Ia) -(C
2F
4O)
a-;
(Ib) -(C
3F
6O)
b-;
(Ic) -(C
4F
8O)
c-;
(Id) -(C
5F
10O)
d-;
(Ie) -(C
6F
12O)
e-;
(If) -(C
xF
2xO)
f-;
(式中、
xは7~12の整数であり;
a、b、c、d、e、及びfのそれぞれは、独立して0又は整数であり、a、b、c、d、e、及びfの合計は、NMR分析により決定される前記ポリマー(PFPE
FOR)の前記主鎖の数平均分子量が
800~70000であるような数であるが;
- aが0ではない場合、b、c、d、e、又はfのうち少なくとも1つは0ではなく、
- bが0ではない場合、a、c、d、e、又はfのうち少なくとも1つは0ではなく、
- cが0ではない場合、a、b、d、e、又はfのうち少なくとも1つは0ではない)
を満たす少なくとも1つの部位を含み、
前記主鎖が上で定義した式(Ia)~(If)を満たす2つの部位を含む場合、前記2つの部位は前記主鎖内で交互に配置されることを条件とする、ペルフルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(PFPE*
FOR)]。
【請求項8】
前記主鎖が、次の式(PFPE
FOR-b):
-[CF
2R
fCF
2-OR
FO]
y*- (PFPE
FOR-b)
(式中、
R
fは二価の直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル鎖であり、前記アルキル鎖は1~10個の炭素原子を含み、任意選択的に1つ以上の酸素原子が挟まれており、
R
Fは、2~10個の炭素原子を含み任意選択的に1つ以上の酸素原子が挟まれている二価の直鎖又は分岐のペルフルオロアルキレン鎖であり、
y*は、NMR分析により決定される前記ポリマー(PFPE
FOR)の前記主鎖の数平均分子量が
800~70000であるように選択される整数である)
を満たす繰り返し単位を含む、請求項7に記載のポリマー(PFPE*
FOR)。
【請求項9】
前記繰り返し部位(Ia)~(Ie)が、次の式(Ia*)~(Ie*):
(Ia*) -CF
2CF
2O-
(Ib*) -CF
2CF
2CF
2O-
(Ic*) -CF
2CF
2CF
2CF
2O-
(Id*) -CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O-;
(Ie*) -CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O-
を満たす、請求項7に記載のポリマー(PFPE*
FOR)。
【請求項10】
前記ポリマー(PFPE*
FOR)が、次の式(PFPE*
FOR-1)~(PFPE*
FOR-3):
F-C(=O)-R
fCF
2-OR
FO-[CF
2R
fCF
2-OR
FO]
y*-CF
2R
fC(=O)F (PFPE*
FOR-1)
F-C(=O)O-R
F-O[CF
2R
fCF
2-OR
FO]
y*-C(=O)F (PFPE*
FOR-2)
F-C(=O)-R
f-CF
2O-R
F-O[CF
2R
fCF
2-OR
FO]
y*-C(=O)F (PFPE*
FOR-3)
(式中、
y*は、NMR分析により決定される前記ポリマー(PFPE*
FOR)の前記主鎖の数平均分子量が
800~70000であるように選択される整数であり、
R
f及びR
Fはそれぞれ、互いに異なり
、式(Ia*)~(Ie*):
(Ia*) -CF
2CF
2O-
(Ib*) -CF
2CF
2CF
2O-
(Ic*) -CF
2CF
2CF
2CF
2O-
(Id*) -CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O-;
(Ie*) -CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2CF
2O-
のうちの1つを満たす)、
を満たす、請求項7~9のいずれか1項に記載のポリマー(PFPE*
FOR)。
【請求項11】
2つの鎖末端を有するペルフルオロポリエーテル主鎖を含むポリマー[ポリマー(PFPE
D-EST)]であって、両方の前記鎖末端が式-CF
2C(=O)OR(式中、Rは1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル鎖である)の基を含み、前記主鎖が、次の式(Ia)~(If):
(Ia) -(C
2F
4O)
a-;
(Ib) -(C
3F
6O)
b-;
(Ic) -(C
4F
8O)
c-;
(Id) -(C
5F
10O)
d-;
(Ie) -(C
6F
12O)
e-;
(If) -(C
xF
2xO)
f-;
(式中、
xは7~12の整数であり;
a、b、c、d、e、及びfのそれぞれは、独立して0又は整数であり、a、b、c、d、e、及びfの合計は、NMR分析により決定される前記ポリマー(PFPE
FOR)の前記主鎖の数平均分子量が282~70000であるような数である)
を満たす少なくとも1つの部位を含み、
前記主鎖が上で定義した式(Ia)~(If)を満たす2つの部位を含む場合には、前記2つの部位は前記主鎖の中で交互に配置されることを条件とする、ポリマー[ポリマー(PFPE
D-EST)]。
【請求項12】
2つの鎖末端を有するペルフルオロポリエーテル主鎖を含むポリマー[ポリマー(PFPE
D-OH)]であって、少なくとも1つの鎖末端が式-CF
2CH
2OHの基を含み、
前記主鎖が、次の式(Ia)~(If):
(Ia) -(C
2F
4O)
a-;
(Ib) -(C
3F
6O)
b-;
(Ic) -(C
4F
8O)
c-;
(Id) -(C
5F
10O)
d-;
(Ie) -(C
6F
12O)
e-;
(If) -(C
xF
2xO)
f-;
(式中、
xは7~12の整数であり;
a、b、c、d、e、及びfのそれぞれは、独立して0又は整数であり、a、b、c、d、e、及びfの合計は、NMR分析により決定される前記ポリマー(PFPE
FOR)の前記主鎖の数平均分子量が282~70000であるような数である
が;
- aが0ではない場合、b、c、d、e、又はfのうち少なくとも1つは0ではなく、
- bが0ではない場合、a、c、d、e、又はfのうち少なくとも1つは0ではなく、
- cが0ではない場合、a、b、d、e、又はfのうち少なくとも1つは0ではない)
を満たす少なくとも1つの部位を含み、
前記主鎖が上で定義した式(Ia)~(If)を満たす2つの部位を含む場合には、前記2つの部位は前記主鎖の中で交互に配置されることを条件とし;
前記ポリマー(PFPE
D-OH)の前記主鎖が-[(C
2F
4O)
a(C
4F
8O)
c]
y*-とは異なることを条件とする、ポリマー[ポリマー(PFPE
D-OH)]。
【請求項13】
2つの鎖末端を有するペルフルオロポリエーテル主鎖を含むポリマー[ポリマー(PFPE
D-OH-X)]であって、少なくとも1つの鎖末端が式-CF
2CH
2O-R
1の基(式中、R
1は1~16個の炭素原子を含み、少なくとも2個の-OH基で置換されている直鎖又は分岐のアルキル鎖である)を含み、前記主鎖が、次の式(Ia)~(If):
(Ia) -(C
2F
4O)
a-;
(Ib) -(C
3F
6O)
b-;
(Ic) -(C
4F
8O)
c-;
(Id) -(C
5F
10O)
d-;
(Ie) -(C
6F
12O)
e-;
(If) -(C
xF
2xO)
f-;
(式中、
xは7~12の整数であり;
a、b、c、d、e、及びfのそれぞれは、独立して0又は整数であり、a、b、c、d、e、及びfの合計は、NMR分析により決定される前記ポリマー(PFPE
FOR)の前記主鎖の数平均分子量が282~70000であるような数である)
を満たす少なくとも1つの部位を含み、
aが0とは異なる場合、b、c、d、eまたはfのいずれか1つは0とは異なること、及び、前記ポリマー(PFPE
D-OH)の前記主鎖が-[(C
2F
4O)
a(C
4F
8O)
c]
y*-とは異なることを条件とし、
前記主鎖が上で定義した式(Ia)~(If)を満たす2つの部位を含む場合には、前記2つの部位は前記主鎖の中で交互に配置されることを条件とする、ポリマー[ポリマー(PFPE
D-OH-X)]。
【請求項14】
両方の前記鎖末端が次の式:
-CF
2CH
2O-CH
2CH(OH)CH
2OH (PFPE
D-OH-X1)
-CF
2CH
2O-CH
2CH(OH)CH
2OCH
2CH(OH)CH
2OH (PFPE
D-OH-X2)
を満たす基を含む、請求項13に記載のポリマー(PFPE
D-OH-X)。
【請求項15】
ポリマー[ポリマー(PFPE
D-OH-MD)であって、次の式:
C
e-B-A-B-C
e
(式中、
各Ceが式-CF
2CH
2O-R
1の基であり、R
1は、1~16個の炭素原子を含み、少なくとも2個の-OH基で置換されている直鎖又は分岐のアルキル鎖であり;
各Bは、請求項13で定義した式(Ia)~(If)のうちの少なくとも1つの部位を含む基であり;
Aは、3~20個の炭素原子を含む二価のアルキル鎖であり、前記アルキル鎖は少なくとも1つの-OH基で置換されており、任意選択的に少なくとも1つのフッ素原子で置換されている)
を満たし、
各Bが-[(C
2F
4O)
a(C
4F
8O)
c]
y*-とは異なることを条件とする、ポリマー[ポリマー(PFPE
D-OH-MD)。
【請求項16】
磁気記録媒体(MRM)の潤滑方法であって、任意選択的に少なくとも1つのカーボンオーバーコートにより被覆されている少なくとも1つの磁気層を含む磁気記録媒体(MRM)を準備することと、請求項12に記載の少なくとも1種のポリマー(PFPE
D-OH)、及び/又は請求項13又は14に記載の少なくとも1種のポリマー(PFPE
D-OH-X)、及び/又は請求項15に記載の少なくとも1種のポリマー(PFPE
D-OH-MD)を、前記磁気層又は前記カーボンオーバーコートの上に塗布することとを含む、磁気記録媒体(MRM)の潤滑方法。
【請求項17】
次の式(PFPE
FOR-1)~(PFPE
FOR-5):
F-C(=O)-R
fCF
2-OR
FO-[CF
2R
fCF
2-OR
FO]
y*-CF
2R
fC(=O)F (PFPE
FOR-1)
F-C(=O)O-R
F-O[CF
2R
fCF
2-OR
FO]
y*-C(=O)F (PFPE
FOR-2)
F-C(=O)-R
f-CF
2O-R
F-O[CF
2R
fCF
2-OR
FO]
y*-C(=O)F (PFPE
FOR-3)
(式中、R
f及びR
Fはポリマー(PFPE
FOR-b)について定義したものと同じ意味を有し、y*は、NMR分析により決定される前記ポリマー(PFPE
FOR)の前記主鎖の数平均分子量が282~70000であるように選択される整数である)
のうちの少なくとも1つを満たす少なくとも1種のポリマー(PFPE
FOR)の、請求項12又は13に定義されている少なくとも1種のポリマー(PFPE
D-EST)の合成における中間体化合物としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年12月14日に出願された欧州特許出願第16204179.2号に基づく優先権を主張し、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、(ペル)フルオロポリエーテルポリマーの新規な合成方法及び特定の新規な(ペル)フルオロポリエーテルポリマーに関する。本発明は、このようにして得られた(ペル)フルオロポリエーテルポリマーの、特には磁気記録媒体(MRM)のための、潤滑剤としての使用に適した更なるポリマーの製造のための中間体化合物としての使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
フッ素化ポリマーの中でも、(ペル)フルオロポリエーテルポリマー(PFPE)はよく知られており、これらはその化学的及び物理的特性のために非常に関心が持たれており、そのため潤滑剤として特に興味深い。
【0004】
PFPEポリマーの複数の合成が当技術分野において開示されている。特定されていないペルフルオロ化ポリエーテル混合物の最初の合成は、ヘキサフルオロプロペンの光オリゴマー化の過程で油状生成物が得られた1953年に報告された。それ以来、多くの異なるペルフルオロ化ポリエーテルが合成され、文献に記載されてきた。(ALLEN,Geoffrey,et al.COMPREHENSIVE POLYMER SCIENCE-Second supplement.Edited by SIR ALLEN,Geoffrey,et al.Elsevier Science & Technology Books,1996.ISBN 0080427081.p.347-388.)。
【0005】
例えば、Du Pontの研究者らによって最初に開示された、特にヘキサフルオロプロピレンオキシド(HFPO)などのペルフルオロエポキシドの触媒重合は、Krytox(登録商標)の商標名で市販されている製品をもたらした。この主鎖は式-[CF(CF3)CF2O]y-の繰り返し単位を含む。その後、Montedisonの研究者らは、テトラフルオロエチレン及びヘキサフルオロプロペンなどのペルフルオロオレフィンの光化学酸化を開示し、これはFomblin(登録商標)の商標名で市販されている製品をもたらした。この主鎖は、ランダムに分布した式-[(CF2O)m(CF2CF(R)O)n]-の繰り返し単位(式中、Rは-F又は-CF3である)を含む。部分的にフッ素化されたオキセタンの開環重合とそれに続くフッ素化を含む別の合成法がDaikin Companyによって開示されており、これはDemnum(登録商標)の商品名で市販されている製品をもたらした。この主鎖は、式-(CF2CF2CF2O)p-の繰り返し単位を含む。
【0006】
当技術分野において公知の(ペル)フルオロポリエーテルポリマー間の主な違いは、Krytox(登録商標)ポリマー及びDemnum(登録商標)ポリマーが、1種類の繰り返し単位のみ、すなわちそれぞれ-[CF(CF3)CF2O]y-及び-(CF2CF2CF2O)p-を含む規則構造を特徴とするホモポリマーであることである。別の言い方をすれば、Fomblin(登録商標)ポリマーは、異なる式を有し、主鎖に沿ってランダムに分布している(統計的に分布しているとも定義される)2種以上の繰り返し単位の存在によって特徴付けられるコポリマーである。繰り返し単位のこのランダムな分布は、ペルフルオロオレフィンの光化学酸化に基づく製造方法によるものである。しかしながら、繰り返し単位のランダムな分布は、1つの炭素原子を有する複数の連続する繰り返し単位(すなわち式-CF2O-のもの)を含む主鎖をもたらし得る。これは一方ではポリマー主鎖の柔軟性を高めるが、他方ではこれらは金属及び/又はルイス酸によって攻撃され易いため、ポリマーの主鎖に弱い箇所を構成する。
【0007】
部分的にフッ素化されている化合物及びそれらの調製方法は当技術分野において開示されている。
【0008】
例えば、米国特許出願公開第20040192974号明細書(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)には、鎖に沿って統計的に分布している繰り返し単位を含有する(ペル)フルオロオキシアルキレン鎖を含むヒドロフルオロエーテル化合物を得るための方法が開示されている。
【0009】
また、国際公開第2010/057691号パンフレット(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)には、式(I):
A-(Rf)a-CFX-O-Rh-O-(CFX-(Rf)a*-CFX-O-Rh-O)nH (I)
(式中、Rhは、二価のC1~C20炭化水素系残基であり、
Xは、F又はC1~C6-(ペル)フルオロアルキルであり、
Rfは、(ペル)フルオロ(ポリ)オキシアルキレン(PFPE)鎖又は(ペル)フルオロアルキル鎖である)
のヒドロフルオロアルコールの合成が開示されている。好ましい実施形態によれば、Rfは、鎖に沿って統計的に(すなわちランダムに)分布している式-(C3F6O)-、-(CF2O)-、-(CF2CF2O)-、-(CF2CF2CF2O)-、-(CF2CF2CF2CF2O)-、-[CF(CF3)O]-のうちの1種以上の繰り返し単位を含むPFPE鎖である。
【0010】
しかしながら、上述した文献のいずれも、その中で得られるヒドロフルオロ化合物のペルフルオロ化反応を開示も示唆もしていない。
【0011】
アルファ-オメガ-ジメトキシフルオロポリエーテルの合成は、
AVATANEO,Marco,et al. Synthesis of alfa-omega-dimethoxyfluoropolyethers:reaction mechanism and kinetics. Journal of Fluorine Chemistry. 2005,vol.126,p.633-639.及びGALIMBERTI,Marco,et al.
New catalytic alkylation of in situ generated perfluoro-alkyloxy-anions and perfluoro-carbanions. Journal of Fluorine Chemistry.2005,vol.126,p.1578-1586.に開示されている。しかしながら、これらの文献に開示されている合成は、アルキルフルオロホルメート及びペルフルオロポリエーテルジアシルフルオリドから出発しており、後者は光重合によって得られる。つまり、ペルフルオロポリエーテルは一方の鎖末端に式-C(O)Fの基を含むが、これはポリマーの主鎖の中にランダムに分布している式-(CF2CF2O)-及び-(CF2O)-の繰り返し単位も含む。
【0012】
米国特許出願公開第2016137947号明細書(ASAHI GLASS COMPANY LIMITED)には、式:
{X-O-[(CF2CF2O)a-(CF2CF2CF2CF2O)b]}m-Y-{[(OCF2CF2)c-(OCF2CF2CF2CF2)d]-O-Z}nを満たすフッ素化ポリエーテル化合物が開示されており、式中、
mは1~10であり;
nは0~10であり;
Xはヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、又はアリール基を有する基であり;
Yは、(m+n)価のアルカン基、炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されている(m+n)価のアルカン基、(m+n)価のフルオロアルカン基、炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されている(m+n)価のフルオロアルカン基、又はシクロトリホスファゼン構造(P3N3)であり;
Zは、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、又はアリール基を有さず、ハロアルキル基(ただしハロゲン原子はフッ素原子又は塩素原子である)又は炭素-炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入されているハロアルキル基(ただしハロゲン原子はフッ素原子又は塩素原子である)を有する基である。部位-[(CF2CF2O)a-(CF2CF2CF2CF2O)b]-において、「a」個の単位(CF2CF2O)と「b」個の単位(CF2CF2CF2CF2O)の結合順序は限定されない。すなわち、単位(CF2CF2O)と(CF2CF2CF2CF2O)は、ランダムに配置されてもよく、交互に配置されてもよく、あるいは複数の単位(CF2CF2O)と単位(CF2CF2CF2CF2O)とからなる少なくとも1つのブロックが連結されていてもよい。次の構造:
-CF2CF2O(CF2CF2CF2CF2OCF2CF2O)e
(eは1~99である)を有する構造が好ましい。
【発明の概要】
【0013】
出願人は、所定の化学構造を有する(ペル)フルオロポリエーテルポリマー、すなわちポリマー主鎖中での分布がランダムではなく予め規定されている繰り返し単位によって特徴付けられる(ペル)フルオロポリエーテルポリマーを調製するという課題に取り組んだ。
【0014】
驚くべきことに、出願人は、繰り返し単位が主鎖中にランダムに分布していないペルフルオロポリエーテルポリマーの合成のために、工業スケールで都合よく適用できる方法を見出した。
【0015】
第1の態様において、本発明は、2つの鎖末端を有しそのうちの少なくとも1つの鎖末端が1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル基、-OC(=O)F、及び-C(=O)Fから選択される少なくとも1つの基を含むペルフルオロポリエーテル主鎖を含む、少なくとも1種のポリマー[ポリマー(PFPEFOR)]の合成方法[方法(PFOR)]であって、
(I)少なくとも2つのアシルフルオリド基を含む少なくとも1種のペルフルオロ化合物[化合物(F)]を、少なくとも2つのフルオロホルメート基を含む少なくとも1種の水素化化合物[化合物(H)]と接触させることで、2つの鎖末端を有する部分的にフッ素化されているポリエーテル主鎖を含むポリマー[ポリマー(FH)]を得る工程であって、
前記主鎖が、前記少なくとも1種の化合物(H)由来の繰り返し単位と交互に配置された前記少なくとも1種の化合物(F)由来の繰り返し単位を含み、
前記鎖末端のうちの少なくとも一方は、-OC(=O)F及び-C(=O)Fから選択される少なくとも1つの基を含む工程;並びに
(II)工程(I)で得られた前記ポリマー(FH)をフッ素源と接触させることで、少なくとも1種のポリマー(PFPEFOR)を得る工程;
を含む方法に関する。
【0016】
有利には、本発明による方法は、所定の明確な形式で主鎖内に分布している繰り返し単位を含むペルフルオロポリエーテル主鎖を含むポリマーの調製を可能にする。
【0017】
出願人は、特定のポリマー(PFPEFOR)が新規である、すなわちこれらが出願人に知られている先行技術文献に全く開示されていないことに注目した。
【0018】
したがって、第2の態様では、本発明は、2つの鎖末端を有するペルフルオロポリエーテル主鎖を含むペルフルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(PFPE*FOR)]であって、
*前記鎖末端のうちの少なくとも1つは1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル基、-OC(=O)F、及び-C(=O)Fから選択される少なくとも1つの基を含み、
*前記主鎖が、次の式(Ia)~(If):
(Ia) -(C2F4O)a-;
(Ib) -(C3F6O)b-;
(Ic) -(C4F8O)c-;
(Id) -(C5F10O)d-;
(Ie) -(C6F12O)e-;
(If) -(CxF2xO)f-;
を満たす少なくとも1つの部位、より好ましくは2つの部位を含み、
式中、
xは7~12、好ましくは7~10の整数であり;
a、b、c、d、e、及びfのそれぞれは、独立して0又は整数であり、a、b、c、d、e、及びfの合計は、前記ポリマー(PFPEFOR)の主鎖の数平均分子量が282~70000、好ましくは600~50000、より好ましくは700~10000、更に好ましくは800~5000であるような数であるが;
- aが0ではない場合、b、c、d、e、又はfのうち少なくとも1つは0ではなく、
- bが0ではない場合、a、c、d、e、又はfのうち少なくとも1つは0ではなく、
- cが0ではない場合、a、b、d、e、又はfのうち少なくとも1つは0ではなく;
前記主鎖が上で定義した式(Ia)~(If)を満たす2つの部位を含む場合、前記2つの部位は主鎖内で交互に配置されることを条件とする;
ペルフルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(PFPE*FOR)]に関する。
【0019】
ポリマー(PFPE*FOR)は、有利には上で定義した方法(PFOR)によって得られる。
【0020】
出願人は、2つの鎖末端を有し各鎖末端が少なくとも1つの中性基又は少なくとも1つの官能基を含むポリマー(PFPEFOR)について上で定義した通りであるペルフルオロポリエーテル主鎖を含むペルフルオロポリエーテルポリマー[ポリマー(PFPED)]を得るために、式-OC(=O)F又は-C(=O)Fの少なくとも1つの基を含む上で定義したポリマー(PFPEFOR)を更に反応させることができることに注目した。
【0021】
したがって、第3の態様では、本発明は、ポリマー(PFPED)の合成における中間体化合物としてのポリマー(PFPEFOR)の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書及び添付の請求項の目的のために、
- 例えば「ポリマー(PFPEFOR)」などのような表現における、式を識別する記号又は数字を囲む括弧の使用は、記号又は数字を文の残りから識別し易くする目的を有しているに過ぎず、そのため前記括弧は省略することもでき;
- 用語「(ペル)フルオロポリエーテル」は、完全にフッ素化されている又は部分的にフッ素化されている主鎖を含むポリエーテルポリマーを指すことが意図されており;
- 用語「ペルフルオロポリエーテル」は、完全にフッ素化されている主鎖を含むポリエーテルポリマーを指すことが意図されており;
- 「中性基」という表現は、フッ素原子、又は1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル鎖(例えば-CF3、-C2F5、C3F7等)を指すことが意図されており;
- 「官能基」という表現は、前記中性基とは異なる基を指すことが意図されている。前記官能基の適切な例は、-OH、-C(O)OR(Rは水素原子又は1~6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル基である)、1~12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル鎖(アルキル鎖は、任意選択的に少なくとも1つの酸素原子が挟まれている及び/又は任意選択的には少なくとも1つの-OH基で置換されている)、アミノ、アミド、トリアジン、ホスファゼン、シロキサンである。
【0023】
好ましくは、前記化合物(F)は、式:
F-C(=O)-Rf-C(=O)-F
の化合物であり、式中、Rfは二価の直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル鎖であり、前記アルキル鎖は1~10個の炭素原子を含み、任意選択的に1つ以上の酸素原子が挟まれている。
【0024】
より好ましくは、前記ペルフルオロアルキル基は直鎖である。
【0025】
より好ましくは、前記ペルフルオロアルキル基は1~5個の炭素原子、更に好ましくは1~4個の炭素原子を含む。
【0026】
好ましくは、前記化合物(F)は、
を含む群から選択される。
【0027】
好ましくは、前記化合物(H)は、式:F-C(=O)O-RH-OC(=O)-F
の化合物であり、式中、RHは、二価の直鎖又は分岐のアルキル鎖であり、前記アルキル鎖は2~10個の炭素原子を含み、任意選択的に1つ以上の酸素原子が挟まれている。
【0028】
より好ましくは、前記アルキル鎖は直鎖である。
【0029】
より好ましくは、前記アルキル鎖は2~8個の炭素原子、更に好ましくは2~6個の炭素原子を含む。
【0030】
好ましくは、前記化合物(H)は、
を含む群から選択される。
【0031】
好ましくは、前記化合物(H)と前記化合物(F)との間のモル比は0.1~10、より好ましくは0.3~3、更に好ましくは0.5~2である。
【0032】
一実施形態によれば、前記工程(I)は、前記化合物(F)及び前記化合物(H)に、1つのアシルフルオリド基を含む1種以上の化合物[化合物(F-mono)]及び/又は1つのフルオロホルメート基を含む1種以上の化合物[化合物(H-mono)]を任意選択的に添加することを含む。前記化合物(H-mono)は、好ましくはアルキルフルオロホルメートから選択され、より好ましくはこれはメチルフルオロホルメートである。前記化合物(F-mono)は、好ましくは式R1-C(=O)Fのもの(R1は、1~12個の炭素原子、より好ましくは1~6個の炭素原子、更に好ましくは1~3個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル基である)から選択される。
【0033】
好ましくは、工程(I)は、フッ化物源、より好ましくは金属フッ化物の存在下で行われる。好ましい金属フッ化物は、例えば、CsF、KF、RbF、AgF及びそれらの組み合わせを含む、好ましくはそれらからなる群において選択される。
【0034】
前記金属フッ化物は好ましくはそのまま使用される。しかしながら、金属フッ化物が炭、NaF、又はCaF2上に担持されている実施形態も本発明に包含される。
【0035】
好ましくは、工程(I)は溶媒の存在下で、より好ましくは極性非プロトン性溶媒の存在下で行われる。
【0036】
好ましくは、前記極性非プロトン性溶媒は、ジメトキシエタン(グリム)、ビス(2-メトキシエチル)エーテル(ジグリム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エチレンポリオキシドジメチルエーテルを含む群の中で、より好ましくはそれらからなる群の中で選択される。テトラグリム及びアセトニトリルがより好ましい。
【0037】
工程(I)は、前記化合物(F)を前記化合物(H)に添加することにより、又はその逆に前記化合物(H)を前記化合物(F)に添加することにより行うことができる。好ましい実施形態によれば、前記化合物(F)及び前記化合物(H)は同時に反応環境に添加される。
【0038】
好ましくは、工程(I)の後、前記ポリマー(FH)の主鎖は、次の式(FHb):
-[CF2-Rf-CF2O-RH-O]y- (FHb)
を満たし、式中、
Rfは化合物(F)について上で定義したものと同じ意味を有し、
RHは化合物(H)について上で定義したものと同じ意味を有し、
yは、前記ポリマー(FH)の主鎖の数平均分子量が210~50000、好ましくは380~30000、より好ましくは450~8000、更に好ましくは500~3000であるような整数である。
【0039】
工程(I)で使用される化合物(F)と化合物(H)のモル比に応じて、鎖末端に2つの基-C(=O)F、2つの基-OC(=O)F、又は1つの基-C(=O)F、及び1つの基-OC(=O)F、を含むポリマー(FH)が得られる。
【0040】
より具体的には、化合物(F)と化合物(H)との間のモル比が1より大きい場合、すなわち化合物(F)が化合物(H)と比較してモル過剰で使用される場合、その鎖末端に2つの基-C(=O)Fを含むポリマー(FH)が好ましくは得られる。
【0041】
この第1の変形形態によれば、次の一般式(FHb1)を有するポリマー(FH)が得られる:
F-C(=O)-RfCF2-ORHO-[CF2RfCF2-ORHO]y-CF2Rf-C(=O)F (FHb1)
(式中、Rf、RH、及びyは上で定義した通りである)。
【0042】
一般式(FHb1)を有する全く同じポリマーは、異なる一般式を用いて書くこともできものの、全く同じポリマーが意図されていることが当業者には明らかであろう。1つの代替の式は、例えば次のものである:
F-C(=O)-[RfCF2-ORHO-CF2]y-Rf-C(=O)F (FHb1*)。
【0043】
好ましくは、化合物(F)と化合物(H)との間のモル比が1より小さい場合、すなわち化合物(H)が化合物(F)と比較してモル過剰で使用される場合、その鎖末端に2つの基-OC(=O)Fを含むポリマー(FH)が好ましくは得られる。
【0044】
この第2の変形形態によれば、次の一般式(FHb2)を有するポリマー(FH)が得られる:
F-C(=O)O-RH-O[CF2RfCF2-ORHO]y-C(=O)F (FHb2)
(式中、Rf、RH、及びyは上で定義した通りである)。
【0045】
同様に、化合物(F)と化合物(H)との間のモル比がほぼ1である場合、すなわち化学量論量の化合物(F)と化合物(H)が使用される場合、1つの鎖末端に基-C(=O)Fを含み他方の鎖末端に基-OC(=O)Fを含むポリマー(FH)が好ましくは得られる。
【0046】
この第3の変形形態によれば、次の一般式(FHb3)を有するポリマー(FH)が得られる:
F-C(=O)-Rf-CF2O-RH-O[CF2RfCF2-ORHO]y-C(=O)F (FHb3)
(式中、Rf、RH、及びyは上で定義した通りである)。
【0047】
工程(I)の反応条件を制御しながら、上で定義したポリマー(FHb1)、ポリマー(FHb2)、及びポリマー(FHb3)の混合物を得ることができ、それは本発明の範囲内に包含されることは当業者には明らかであろう。結果として、工程(II)の後、後に詳しく記載されるポリマー(PFPEFOR)の混合物が得られるであろう。
【0048】
ポリマー(FH)の好ましい実施形態を表す上の式から、ポリマー(FH)が上で定義した通りの主鎖及び2つの鎖末端を含み、前記主鎖及び前記鎖末端が、好ましくはシグマ結合を介して、又は少なくとも1つの部位RH及び/又は少なくとも1つの部位Rfを含み任意選択的に少なくとも1つの酸素原子及び任意選択的に少なくとも1つの基-CF2-を含む連結鎖[鎖(L)](RH及びRfは上で定義した通りである)を介して、一体に結合していることが明らかであろう。
【0049】
前記鎖(L)は、好ましくは次の式を満たす:
-RfCF2-ORHO-
-CF2Rf-
-RH-O-
(式中、RH及びRfは上で定義した通りである)。
【0050】
好ましくは、工程(II)におけるフッ素源は、フッ素原子を含むガスである。より好ましくは、前記フッ素源はフッ素ガス(F2)である。
【0051】
有利には、工程(II)におけるフッ素源は、好ましくはヘリウム及び窒素などの不活性ガスから選択される希釈ガスと混合して使用される。
【0052】
有利には、フッ素ラジカルを発生させてフッ素化工程を補助するために、ハロゲン化オレフィンを添加することができる。前記ハロゲン化オレフィンは、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、オクタフルオロブテン、ペルフルオロペンテン、ペルフルオロヘキセン、ペルフルオロヘプテン、ペルフルオロオクテン、ペルフルオロシクロブテン、ペルフルオロシクロペンテン、ペルフルオロシクロヘキセン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ジクロロジフルオロエチレン、クロロペンタフルオロプロペン、ペルフルオロブタジエン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロプロピルビニルエーテル、CF3OClC=CClF、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ジクロロエチレン異性体、及びフルオロジオキソールから選択することができる。
【0053】
好ましくは、前記ポリマー(PFPEFOR)は、次の式(PFPEFOR-b):
-[CF2RfCF2-ORFO]y*- (PFPEFOR-b)
を満たす繰り返し単位を含む主鎖を含み、式中、
Rfは化合物(F)について上で定義したものと同じ意味を有し、
RFは、2~10個の炭素原子を含み任意選択的1つ以上の酸素原子が挟まれている二価の直鎖又は分岐のペルフルオロアルキレン鎖であり、
y*は前記ポリマー(PFPEFOR)の主鎖の数平均分子量が282~70000、好ましくは600~50000、より好ましくは700~10000、更に好ましくは800~5000であるような整数である。
【0054】
式(PFPEFOR-b)中の部位(RF)は、方法(PFOR)の工程(II)におけるペルフルオロ化の後の式(FHb)中の部位(RH)に対応する。
【0055】
したがって、上の式(PFPEFOR-b)において、部位-CF2-Rf-CF2O-は好ましくは上で定義した式(Ib)~(If)の繰り返し単位に対応し、部位-RFO-は上で定義した(Ia)~(If)の繰り返し単位に対応する。
【0056】
同様に、上の式(PFPEFOR-b)を適切に考慮すると、部位-CF2-Rf-CF2O-と部位-RFO-とが式(Ia)~(If)の2つの異なる繰り返し単位に対応する場合にそれらが主鎖内に交互に配置されるように、部位-CF2-Rf-CF2O-と部位-RFO-とが交互に配置されることは明らかであろう。
【0057】
好ましくは、ポリマー(PFPEFOR)において、主鎖は、シグマ結合を介して、又は少なくとも1つの部位RF及び/又は少なくとも1つの部位Rfを含み任意選択的に少なくとも1つの酸素原子及び任意選択的に少なくとも1つの基-CF2-を含む連結鎖[鎖(L)](RF及びRfは上で定義した通りである)を介して、その両端で1つの鎖末端と連結される。
【0058】
前記鎖(L)は、好ましくは次の式を満たす:
-RfCF2-ORFO-
-CF2Rf-
-RF-O-
(式中、RF及びRfは上で定義した通りである)。
【0059】
ポリマー(PFPEFOR)の好ましい実施形態は、下の式(PFPEFOR-1)~(PFPEFOR-6)で表されるものである:
F-C(=O)-RfCF2-ORFO-[CF2RfCF2-ORFO]y*-CF2RfC(=O)F (PFPEFOR-1)
F-C(=O)O-RF-O[CF2RfCF2-ORFO]y*-C(=O)F (PFPEFOR-2)
F-C(=O)-Rf-CF2O-RF-O[CF2RfCF2-ORFO]y*-C(=O)F (PFPEFOR-3)
T-Rf-CF2O-RF-O[CF2RfCF2-ORFO]y*-C(=O)F (PFPEFOR-4)
T-Rf-CF2O-RF-O[CF2RfCF2-ORFO]y*-CF2RfC(=O)F (PFPEFOR-5)
T-RfCF2-ORFO-[CF2RfCF2-ORFO]y*-CF2Rf-T (PFPEFOR-6)
(式中、Rf及びRFは、ポリマー(PFPEFOR-b)について上で定義したものと同じ意味を有し、
Tは、フッ素原子及び1~6個の炭素原子を含む直鎖又は分岐のペルフルオロアルキル鎖を含む、好ましくはそれらからなる群において選択される中性基であり、
y*は上で定義した通りである)。
【0060】
好ましくは、前記鎖RFは、直鎖のペルフルオロアルキレン鎖、より好ましくは2~8個の炭素原子、更に好ましくは2~6個の炭素原子を含む直鎖のペルフルオロアルキレン鎖である。
【0061】
両方の鎖末端が1つの官能基を含むポリマー(PFPEFOR-1)~ポリマー(PFPEFOR-3)は、二官能性PFPEポリマーとも呼ばれる。1つの鎖末端のみが1つの中性基を含むポリマー(PFPEFOR-4)及びポリマー(PFPEFOR-5)は、一官能性PFPEポリマーとも呼ばれる。両方の鎖末端が1つの中性基Tを含むポリマー(PFPEFOR-6)は、中性PFPEポリマーとも呼ばれる。
【0062】
式(PFPEFOR-1)~(PFPEFOR-5)を満たす(PFPEFOR)の実施形態が好ましい。式(PFPEFOR-1)~(PFPEFOR-3)を満たす(PFPEFOR)の実施形態が更に好ましい。
【0063】
上で定義した式(Ia)~(If)を満たす2つの繰り返し部位を含むポリマー(PFPE*FOR)の実施形態が好ましい。
【0064】
好ましくは、前記ポリマー(PFPE*FORは、式:
(Ia) -(C2F4O)a;
(Ib) -(C3F6O)b;
(Ic) -(C4F8O)c;
(Id) -(C5F10O)d-;
(Ie) -(C6F12O)e-;
のものから選択される2つの繰り返し部位を含む主鎖を含み、式中、a、b、c、d、及びeのそれぞれは上で定義した通りである。
【0065】
好ましくは、前記繰り返し部位(Ia)~(Ie)は直鎖である、すなわちそれらは次式を満たす:
(Ia*) -CF2CF2O-
(Ib*) -CF2CF2CF2O-
(Ic*) -CF2CF2CF2CF2O-
(Id*) -CF2CF2CF2CF2CF2O-;
(Ie*) -CF2CF2CF2CF2CF2CF2O-。
【0066】
ポリマー(PFPE*FOR)の好ましい実施形態は、下の式(PFPE*FOR-1)~(PFPE*FOR-3)で表されるものである:
F-C(=O)-RfCF2-ORFO-[CF2RfCF2-ORFO]y*-CF2RfC(=O)F (PFPE*FOR-1)
F-C(=O)O-RF-O[CF2RfCF2-ORFO]y*-C(=O)F (PFPE*FOR-2)
F-C(=O)-Rf-CF2O-RF-O[CF2RfCF2-ORFO]y*-C(=O)F (PFPE*FOR-3)
(式中、y*は上で定義した通りであり、
Rf及びRFは、ポリマー(PFPEFOR-b)について上で定義したものと同じ意味を有する)。
【0067】
有利には、ポリマー(PFPED)は、上で定義した式(PFPEFOR-1)~(PFPEFOR-5)を満たす少なくとも1種のポリマー(PFPEFOR)から出発する方法により得られる。
【0068】
例えば、2つの鎖末端を有し両方の鎖末端が1つの中性基を含むポリマー(PFPED)(中性PFPEポリマー[ポリマー(PFPED-N)]とも呼ばれる)は、有利には、例えば米国特許出願公開第2014309376号明細書、英国特許第1226566号明細書、及び米国特許第7321062号明細書(SOLVAY SOLEXIS S.P.A.)に開示されているものなどの、当業者に公知の合成経路に従って前記ポリマー(PFPEFOR)から出発して調製することができる。
【0069】
好ましい実施形態によれば、上で定義した前記ポリマー(PFPEFOR)から出発して、2つの鎖末端を有し少なくとも1つの鎖末端(より好ましくは両方の鎖末端)が少なくとも1つの官能性基を含む、ポリマー(PFPEFOR)について上で定義した通りのペルフルオロポリエーテル主鎖を含むポリマー(PFPED)が調製される。
【0070】
有利には、前記ポリマー(PFPEFOR)、好ましくは上で定義した式(PFPEFOR-1)~(PFPEFOR-5)のうちの少なくとも1つを満たすもの、又は式(PFPE*FOR-1)~(PFPE*FOR-3)のうちの少なくとも1つを満たすものを、少なくとも1つの-OH基を有する少なくとも1種の化合物、より好ましくは一般式R-OH(Rは1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル鎖である)を有する少なくとも1種の化合物と接触させることで、2つの鎖末端を有し少なくとも1つの鎖末端が式-CF2C(=O)ORの基(式中、Rは上で定義した通りである)を含む、ポリマー(PFPEFOR)について上で定義した通りのペルフルオロポリエーテル主鎖を含むポリマー[ポリマー(PFPED-EST)]が得られる。
【0071】
したがって、追加的な態様においては、本発明は、2つの鎖末端を有し少なくとも1つの鎖末端が式-CF2C(=O)ORの基(式中、Rは1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル鎖である)を含む、ポリマー(PFPEFOR)について上で定義した通りのペルフルオロポリエーテル主鎖を含むポリマー[ポリマー(PFPED-EST)]に関する。
【0072】
より好ましくは、前記ポリマー(PFPED-EST)の両方の鎖末端が、式-CF2C(=O)ORの基(Rは上で定義した通りである)を含む。
【0073】
好ましくは、前記ポリマー(PFPED-EST)の主鎖は、-[(C2F4O)a(C4F8O)c]y*-(a、c、及びy*は上で定義した通りである)とは異なる。
【0074】
また、前記ポリマー(PFPED-EST)は、更なる誘導体の合成のための中間体として使用することができる。例えば、前記(PFPED-EST)は少なくとも1種の還元剤と接触させることで、2つの鎖末端を有し少なくとも1つの鎖末端が式-CF2CH2OHの基を含む、ポリマー(PFPEFOR)について上で定義した通りのペルフルオロポリエーテル主鎖を含むポリマー[ポリマー(PFPED-OH)]が得られる。
【0075】
したがって、追加的な態様においては、本発明は、2つの鎖末端を有し少なくとも1つの鎖末端が式-CF2CH2OHの基を含む、ポリマー(PFPEFOR)について上で定義した通りのペルフルオロポリエーテル主鎖を含むポリマー[ポリマー(PFPED-OH)]に関する。ただし、前記ポリマー(PFPED-OH)の主鎖が-[(C2F4O)a(C4F8O)c]y*-(a、c、及びy*は上で定義した通りである)とは異なることを条件とする。
【0076】
より好ましくは、前記ポリマー(PFPED-OH)の両方の鎖末端が式-CF2CH2OHの基を含む。
【0077】
更に追加の態様においては、本発明は、2つの鎖末端を有し少なくとも1つの鎖末端が式-CF2CH2OHの基を含む、ポリマー(PFPEFOR)について上で定義した通りのペルフルオロポリエーテル主鎖を含むポリマー(PFPED-OH)に関し、前記ポリマー(PFPED-OH)は、
(IOH)少なくとも1種のペルフルオロ化合物[化合物(F)]を少なくとも1種の水素化化合物[化合物(H)]と接触させて方法(PFOR)の工程(I)において上で定義したポリマー[ポリマー(FH)]を得る工程であって、前記化合物(F)及び前記化合物(H)が方法(PFOR)の工程(I)において上で定義した通りである工程;
(IIOH)工程(IOH)で得られた前記ポリマー(FH)をフッ素源と接触させて、方法(PFOR)の工程(II)において上で定義したポリマー[ポリマー(PFPEFOR)]を得る工程;
(IIIOH)工程(IIOH)で得られた前記ポリマー(PFPEFOR)を、少なくとも1つの-OH基を有する少なくとも1種の化合物、好ましくは一般式R-OH(Rは1~10個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル鎖である)を有する少なくとも1種の化合物と接触させて、2つの鎖末端を有し少なくとも1つの鎖末端が式-CF2C(=O)ORの基(Rは上で定義した通りである)を含む、ポリマー(PFPEFOR)について上で定義した通りのペルフルオロポリエーテル主鎖を含むポリマー[ポリマー(PFPED-EST)]を得る工程;
(IVOH)工程(IIIOH)で得られた前記(PFPED-EST)を少なくとも1種の還元剤と接触させて前記ポリマー[ポリマー(PFPED-OH)]を得る工程;
を含む方法によって得られる。
【0078】
また、前記ポリマー(PFPED-OH)は、ポリマー(PFPEFOR)について上で定義したペルフルオロポリエーテル主鎖を含む更なるPFPEポリマーの合成のための中間体としても有用である。
【0079】
特に、出願人は、前記ポリマー(PFPED-OH)が、2つの鎖末端を有し少なくとも1つの鎖末端が式-CF2CH2O-R1の基(R1は1~16個の炭素原子を含み少なくとも2個、より好ましくは2~8個の-OH基で置換されている直鎖又は分岐のアルキル鎖である)を含む、ポリマー(PFPEFOR)について上で定義した通りのペルフルオロポリエーテル主鎖を含むポリマー[ポリマー(PFPED-OH-X)]の合成のために有利に使用され得ることに注目した。
【0080】
したがって、第6の態様においては、本発明は、2つの鎖末端を有し少なくとも1つの鎖末端が式-CF2CH2O-R1の基(R1は1~16個の炭素原子を含み少なくとも2個、より好ましくは2~8個の-OH基で置換されている直鎖又は分岐のアルキル鎖である)を含む、ポリマー(PFPEFOR)について上で定義した通りのペルフルオロポリエーテル主鎖を含むポリマー[ポリマー(PFPED-OH-X)]に関する。
【0081】
好ましい実施形態によれば、前記ポリマー(PFPED-OH-X)の両方の鎖末端が式-CF2CH2O-R1の基(R1は上で定義した通りである)を含む。
【0082】
より好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1つの鎖末端が次の式を満たす1つの基を有し、更に好ましくは両方の鎖末端が次の式を満たす1つの基を含む:
-CF2CH2O-CH2CH(OH)CH2OH (PFPED-OH-X1)
-CF2CH2O-CH2CH(OH)CH2OCH2CH(OH)CH2OH (PFPED-OH-X2)。
【0083】
出願人は、上で定義したポリマー(PFPED-OH)及び/又はポリマー(PFPED-OH-X)のうちの少なくとも2種を、典型的には脱エポキシカップリング剤により一緒に反応させることで、いわゆる「多数の歯をもつ(multi-dentate)」PFPEポリマー[ポリマー(PFPED-OH-MD)]が得られることにも注目した。
【0084】
好ましくは、前記ポリマー(PFPED-OH-MD)は、次の式:
Ce-B-A-B-Ce
を満たし、式中、
各Ceは式-CF2CH2O-R1の基であり、式中、R1は、水素原子、1~16個の炭素原子を含み少なくとも2個、より好ましくは2~8個の-OH基で置換されている直鎖又は分岐のアルキル鎖であり;
各Bは、上で定義した式(Ia)~(If)のうちの少なくとも1つの部位、好ましくは2つの部位を含む基であり;
Aは3~20個の炭素原子を含む二価のアルキル鎖であり、前記アルキル鎖は少なくとも1つ、好ましくは1~10個の-OH基で置換されており、任意選択的に少なくとも1つのフッ素原子で置換されている。
【0085】
出願人は、前記ポリマー(PFPED-OH)及び前記ポリマー(PFPED-OH-X)を、例えば国際公開第2014/195299号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY S.P.A.)に開示されている手順に従って、シクロフォスファゼン環を有する少なくとも1種の化合物と反応させることで、前記ポリマー(PFPED-OH)及び前記ポリマー(PFPED-OH-X)から選択される少なくとも1つの置換基を有するシクロフォスファゼン中心コアを含むポリマー[ポリマー(PFPED-OH-PN)]も得られることにも注目した。
【0086】
出願人は、少なくとも1つのヒドロキシ基を含む上で開示したPFPEポリマーが、潤滑剤として、特には磁気記録媒体(MRM)用の潤滑剤として、有利に使用できることに注目した。
【0087】
したがって、追加的な態様においては、本発明は、上で定義したポリマー(PFPED-OH)、ポリマー(PFPED-OH-X)、ポリマー(PFPED-OH-MD)、及び/又はポリマー(PFPED-OH-PN)のうちの少なくとも1種の、磁気記録媒体(MRM)のための潤滑剤としての使用に関する。
【0088】
実際、ポリマー(PFPED-OH)、ポリマー(PFPED-OH-X)、ポリマー(PFPED-OH-MD)、及び/又はポリマー(PFPED-OH-PN)は、ポリマー(PFPEFOR)から出発して調製され、これは、本発明による方法(PFOR)に従って、1つの炭素原子を含む繰り返し部位なしで(すなわち2つ以上の炭素原子を含む部位よりもポリマー主鎖を金属及びルイス酸からより攻撃されやすく脆弱にすることが知られている式-(CF2O)-の繰り返し部位なしで)合成される。また、この弱点は、ランダムに分布した繰り返し単位を有するポリマーを与える従来の合成を使用する場合に起こり得るように、一列に1つの炭素原子を有する2つ以上の繰り返し部位を含むポリマーが得られる場合に特に増大する。
【0089】
更に重要なことには、1つの炭素原子を含む繰り返し部位を含まないPFPEポリマーは高温に耐えることができる。この特性は、熱アシスト磁気記録(HAMR)技術を用いる磁気記録媒体のコーティングで使用するための潤滑剤の開発において特に重要である。熱アシスト磁気記録は、書き込みが行われている間にディスクの磁気特性を熱により短時間変化させて超常磁性効果を低減又は除去するように、書き込まれているディスクの一部を加熱するためにレーザーを使用する、ハードドライブのための磁気記憶技術である。
HAMRの効果は、以前よりもはるかに小さいスケールでの書き込みを可能にし、標準的なディスクプラッタに保持できるデータ量を大幅に増やすことである。
【0090】
磁気記録媒体(MRM)は、典型的にはそのそれぞれの面上に下層を逐次的に堆積させた非磁気基板、少なくとも1つの磁気層、及び保護オーバーコート、好ましくは炭素オーバーコートを含む複数の層を含む。
【0091】
更に別の態様においては、本発明は、任意選択的に少なくとも1つのカーボンオーバーコートにより被覆されている少なくとも1つの磁気層を含む磁気記録媒体(MRM)を準備することと、少なくとも上で定義したポリマー(PFPED-OH)、ポリマー(PFPED-OH-X)、ポリマー(PFPED-OH-MD)、及び/又はポリマー(PFPED-OH-PN)のうちの少なくとも1種を、前記磁気層又は前記カーボンオーバーコートの上に塗布することとを含む、磁気記録媒体(MRM)を潤滑するための方法に関する。
【0092】
本発明によるポリマーをMRMに適用する工程は、当技術分野で公知の任意の慣用方法によって行うことができる。
【0093】
例えば、上で定義したポリマー(PFPED-OH)、ポリマー(PFPED-OH-X)、ポリマー(PFPED-OH-MD)、及び/又はポリマー(PFPED-OH-PN)のうちの少なくとも1種を、MRMのディスクの磁気層の上に、又は存在する場合には保護オーバーコートの上に、直接塗布することができる。
【0094】
あるいは、上で定義したポリマー(PFPED-OH)、ポリマー(PFPED-OH-X)、ポリマー(PFPED-OH-MD)、及び/又はポリマー(PFPED-OH-PN)のうちの少なくとも1種を、最初にヒドロフルオロエーテル(例えばNovecTMHFE(3MTMから市販))、ヒドロフルオロカーボン(HFC)(例えばVertrel(登録商標)HFC(DuPontTMから市販))、ペルフルオロ化炭化水素、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、及びこれらの組み合わせなどの適切な溶媒中に溶解させることで溶液[溶液(S)]を得ることができ、その後ディスクは前記溶液(S)の中に沈められ、そこからゆっくり引き出される。
【0095】
慣用のリフタータイプのディッパーが、記録媒体のディスクを前記溶液(S)に沈めるために使用されてもよい。任意選択で、そのようにして得られたコーティングされたディスクは、更なる処理、例えば、UV線への曝露などにかけられる。当業者は、沈めることの継続時間及び引出しの速度を最適化して、所望のコーティング厚さを達成することができる。
【0096】
好ましくは、上で定義したポリマー(PFPED-OH)、ポリマー(PFPED-OH-X)、ポリマー(PFPED-OH-MD)、及び/又はポリマー(PFPED-OH-PN)のうちの少なくとも1種を含むコーティングは、約2~約30オングストローム(Å)、より好ましくは2~15Åの厚さを有する。
【0097】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【0098】
本発明は、以下の実験の項に含まれる実施例によってより詳細に以下に例証され;実施例は、例証的であるに過ぎず、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0099】
方法
数平均分子量(Mn)は、NMR分析(19F-NMR及び1H-NMR)により決定した。
【0100】
実施例1
工程(a):式FC(=O)O-RH-O[CF2RfCF2-ORHO]y-C(=O)F
(式中、
RHは-(CH2)4-であり、
Rfは-(CF2)2-であり、
yは数平均分子量が2200g/molであるような数である)
を有するポリマー(FH)の合成のための重縮合反応。
【0101】
メカニカルスターラー及び圧力変換器を備えたParrオートクレーブ(100ml)の中に、粉末の乾燥CsF(Aldrich Co.から入手、タイトル99.9%;5.09g、33.51mmol)、フルオロホルメートF(O=)C-O(CH2)4O-C(=O)F(12.20g、67.01mmol)、及びテトラエチレングリコールジメチルエーテル(21.0g)を、窒素雰囲気下のドライボックスの中に入れた。
【0102】
非凝縮性ガスを-196℃で10-5mbarの真空によって除去した後、テトラフルオロスクシノイルフルオリドF(O=)C-CF2CF2-C(=O)F(13.0g、67.01mmol)を液体窒素温度でオートクレーブの中で凝縮させた。反応混合物を加熱マントルで120℃に加熱し、この温度で30時間機械撹拌下に保った。アルキル化反応中のCO2形成による時間内の圧力増加を監視したところ、反応が短時間でも目的生成物を高収率で与えることが示された。
【0103】
反応が終了した後、オートクレーブを室温まで冷却し、ガス状生成物(CO2、HF)を除去し、5%のNaOH溶液(100cc)の中にバブリングした。オートクレーブ内のフッ素化相を回収し、反応混合物をPTFEフィルター(0.45mm)で加圧濾過してCsF触媒を除去した。
【0104】
得られた溶液から、溶媒並びに未反応のフルオロホルメート及びテトラフルオロスクシノイルフルオリド生成物を分別蒸留によって除去することで、14.0gのポリマー(FH)を得た。これは、1H-NMR及び19F-NMR分析によって特徴付けられた。
【0105】
工程(b):式F(O=)CO-RF-O[CF2RfCF2-ORFO]y*-C(=O)F
(式中、
RFは-(CF2)4-であり、
Rfは-(CF2)2-であり、
y*は数平均分子量が約3300g/molであるような数である)
を有するポリマーの合成及び対応するジエステルPFPEポリマーの合成のためのペルフルオロ化反応。
【0106】
メカニカルスターラーと、2つの入口管と、オフガスライン上で-30℃に保たれているコンデンサーとを備えた250mlのステンレス鋼製反応器に、約100mlの1,2,3,4-テトラクロロ-ヘキサフルオロブタン(A316)を入れ、外部冷却/加熱システムにより35℃に保った。He(13.0Nl/h)で希釈した単体フッ素(3.2Nl/h)を第1の入口管によって30分間反応器に供給し、次いで上の工程(a)で得られたポリマー(A316に溶解に溶解させて50mlの総体積に到達させたもの)を第2の入口管により14.3ml/hの流量で3.5時間供給した。この後、反応器を0℃まで冷却し、1.5Nl/hのヘリウムで希釈した0.3Nl/hのヘキサフルオロプロペンを第2の入口管から1時間供給して残留水素原子を変換した。
【0107】
反応器をヘリウムでパージした後、全てのフルオロホルメート末端基を対応するエチルエステルに変換するために20mlのエタノールを入れた。その後、HFをブロックするために未精製混合物をフッ化ナトリウムで処理し、濾過し、溶媒、副生物、及び過剰のエタノールを分別蒸留により除去した。
【0108】
エチルエステルとしての19.7gの目的のペルフルオロ化PFPEポリマー(数平均分子量=3300g/mol)が得られた。
【0109】
実施例2
工程(a):式F(O=)CO-RH-O[CF2RfCF2-ORHO]y-C(=O)F
(式中、
RHは-(CH2)4-であり、
Rfは-(CF2)2-であり、
yは数平均分子量が1400g/molであるような数である)
を有するポリマー(FH)の合成のための重縮合反応。
【0110】
メカニカルスターラー及び圧力変換器を備えたParrオートクレーブ(100ml)の中に、粉末の乾燥CsF(Aldrich Co.から入手、タイトル99.9%;5.09g、33.51mmol)、フルオロホルメートF(O=)C-O(CH2)4O-C(=O)F(13.42g、73.71mmol)、及び無水テトラエチレングリコールジメチルエーテル(21.0g)を、窒素雰囲気下のドライボックスの中で入れた。非凝縮性ガスを-196℃で10-5mbarの真空によって除去した後、テトラフルオロスクシノイルフルオリドF(O=)C-CF2CF2-C(=O)F(13.0g、67.01mmol)を液体窒素温度でオートクレーブの中で凝縮させた。反応混合物を加熱マントルで120℃に加熱し、この温度で8時間機械撹拌下に保った。その一方で、CO2の形成による圧力の上昇が観察された。
【0111】
反応が終了した後、オートクレーブを室温まで冷却し、ガス状生成物(CO2、HF)を除去し、5%のNaOH溶液(100cc)の中にバブリングした。オートクレーブ内のフッ素化相を回収し、反応混合物をPTFEフィルター(0.45mm)で加圧濾過してCsF触媒を除去した。
【0112】
得られた溶液から、溶媒並びに未反応のフルオロホルメート及びテトラフルオロスクシノイルフルオリドを分別蒸留によって除去することで、数平均分子量が1400である最終的なポリマー(FH)13.66gを得た。これは、1H-NMR及び19F-NMR分析によってキャラクタリゼーションした。
【0113】
工程(b):式F(O=)CO-RF-O[CF2RfCF2-ORFO]y*-C(=O)F
(式中、
RFは-(CF2)4-であり、
Rfは-(CF2)2-であり、
y*は数平均分子量が約2100g/molであるような数である)
を有するポリマーの合成及び対応するジエステルPFPEポリマーの合成のためのペルフルオロ化反応。
【0114】
実施例2の工程(a)で得たポリマーを14.6ml/hの流量で3.4時間供給したことのみが異なるだけで、実施例1の工程(b)について上述した手順に従ってペルフルオロ化反応を行った。
【0115】
反応の終わりに、エチルエステルとしての18.8gの目的のペルフルオロ化PFPEポリマー(数平均分子量=2100g/mol)が得られた。
【0116】
実施例3
工程(a):式F(O=)CO-RH-O[CF2RfCF2-ORHO]y-C(=O)F
(式中、
RHは-(CH2)3-であり、
Rfは-(CF2)2-であり、
yは数平均分子量が1100g/molであるような数である)
を有するポリマー(FH)の合成のための重縮合反応。
【0117】
メカニカルスターラー及び圧力変換器を備えたParrオートクレーブ(100ml)の中に、粉末の乾燥CsF(Aldrich Co.から入手、タイトル99.9%;6.26g、41.21mmol)、フルオロホルメートF(O)C-O(CH2)3O-C(O)F(15.25g、90.72mmol)、及び無水テトラエチレングリコールジメチルエーテル(25.0g)を、窒素雰囲気下のドライボックスの中で入れた。縮性ガスを-196℃で10-5mbarの真空によって除去した後、テトラフルオロスクシノイルフルオリドF(O=)C-CF2CF2-C(=O)F(16.0g、82.47mmol)を液体窒素温度でオートクレーブの中で凝縮させた。
【0118】
その後、反応を実施例1で上述したものと同じ手順に従って行った。
【0119】
得られた溶液から、溶媒並びに未反応のフルオロホルメート及びテトラフルオロスクシノイルフルオリドを分別蒸留によって除去することで、数平均分子量が1100である最終的なポリマー(FH)14.42gを得た。これは、1H-NMR及び19F-NMR分析によってキャラクタリゼーションした。
【0120】
工程(b):式F(O=)CO-RF-O[CF2RfCF2-ORFO]y*-C(=O)F
(式中、
RFは-(CF2)3-であり、
Rfは-(CF2)2-であり、
y*は数平均分子量が約1500g/molであるような数である)
を有するポリマーの合成及び対応するジエステルPFPEポリマーの合成のためのペルフルオロ化反応。
【0121】
実施例3の工程(a)で得たポリマーを17.3ml/hの流量で2.9時間供給したことのみが異なるだけで、実施例1の工程(b)について上述した手順に従ってペルフルオロ化反応を行った。
【0122】
反応の終わりに、エチルエステルとしての19.1gの目的のペルフルオロ化PFPEポリマー(数平均分子量=1500g/mol)が得られた。
【0123】
実施例4
工程(a):式F(O=)CO-RH-O[CF2RfCF2-ORHO]y-C(=O)F
(式中、
RHは-(CH2)3-であり、
Rfは-(CF2)2-であり、
yは数平均分子量が1800g/molであるような数である)
を有するポリマー(FH)の合成のための重縮合反応。
【0124】
工程(a)は、120℃で50時間加熱したこと以外は実施例3の工程(a)で上述した手順に従って行った。
【0125】
得られた溶液から、溶媒並びに未反応のフルオロホルメート及びテトラフルオロスクシノイルフルオリドを分別蒸留によって除去することで、数平均分子量が1800である最終的なポリマー(FH)15.80gを得た。これは、1H-NMR及び19F-NMR分析によってキャラクタリゼーションした。
【0126】
工程(b):式F(O=)CO-RF-O[CF2RfCF2-ORFO]y*-C(=O)F
(式中、
RFは-(CF2)3-であり、
Rfは-(CF2)2-であり、
y*は数平均分子量が約2500g/molであるような数である)
を有するポリマーの合成及び対応するジエステルPFPEポリマーの合成のためのペルフルオロ化反応。
【0127】
実施例4の工程(a)で得たポリマーを15.8ml/hの流量で3.2時間供給したことのみが異なるだけで、実施例1の工程(b)について上述した手順に従ってペルフルオロ化反応を行った。
【0128】
反応の終わりに、エチルエステルとしての21.1gの目的のペルフルオロ化PFPEポリマー(数平均分子量=2500g/mol)が得られた。
【0129】
実施例5
工程(a):式F(O=)CO-RH-O[CF2RfCF2-ORHO]y-C(=O)F
(式中、
RHは-(CH2)3-であり、
Rfは-(CF2)2-であり、
yは数平均分子量が1900g/molであるような数である)
を有するポリマー(FH)の合成のための重縮合反応。
【0130】
工程(a)は、13.86g(82.47mmol)のフルオロホルメートF(O)C-O(CH2)3O-C(O)Fを供給したこと以外は実施例3の工程(a)で上述した手順に従って行った。
【0131】
得られた溶液から、溶媒並びに未反応のフルオロホルメート及びテトラフルオロスクシノイルフルオリドを分別蒸留によって除去することで、数平均分子量が1900である最終的なポリマー(FH)15.24gを得た。これは、1H-NMR及び19F-NMR分析によってキャラクタリゼーションした。
【0132】
工程(b):式F(O=)CO-RF-O[CF2RfCF2-ORFO]y*-C(=O)F
(式中、
RFは-(CF2)3-であり、
Rfは-(CF2)2-であり、
y*は数平均分子量が2600g/molであるような数である)
を有するポリマーの合成及び対応するジエステルPFPEポリマーの合成のためのペルフルオロ化反応。
【0133】
実施例5の工程(a)で得たポリマーを16.4ml/hの流量で3.0時間供給したことのみが異なるだけで、実施例1の工程(b)について上述した手順に従ってペルフルオロ化反応を行った。
【0134】
反応の終わりに、エチルエステルとしての19.5gの目的のペルフルオロ化PFPEポリマー(数平均分子量=2600g/mol)が得られた。
【0135】
実施例6
工程(a):式F(O=)CO-RH-O[CF2RfCF2-ORHO]y-C(=O)F
(式中、
RHは-(CH2)3-であり、
Rfは-(CF2)2-であり、
yは数平均分子量が1900g/molであるような数である)
を有するポリマー(FH)の合成のための重縮合反応。
【0136】
工程(a)は、13.86g(82.47mmol)のフルオロホルメートF(O)C-O(CH2)3O-C(O)Fを供給し、120℃で48時間加熱したこと以外は実施例3の工程(a)で上述した手順に従って行った。
【0137】
得られた溶液から、溶媒並びに未反応のフルオロホルメート及びテトラフルオロスクシノイルフルオリドを分別蒸留によって除去することで、数平均分子量が2000である最終的なポリマー(FH)18.83gを得た。これは、1H-NMR及び19F-NMR分析によってキャラクタリゼーションした。
【0138】
工程(b):式F(O=)CO-RF-O[CF2RfCF2-ORFO]y*-C(=O)F
(式中、
RFは-(CF2)3-であり、
Rfは-(CF2)2-であり、
y*は数平均分子量が2800g/molであるような数である)
を有するポリマーの合成のためのペルフルオロ化反応。
【0139】
実施例6の工程(a)で得たポリマーを13.3ml/hの流量で3.8時間供給したことのみが異なるだけで、実施例1の工程(b)について上述した手順に従ってペルフルオロ化反応を行った。
【0140】
反応の終わりに、エチルエステルとしての24.4gの目的のペルフルオロ化PFPEポリマー(数平均分子量=2800g/mol)が得られた。
【0141】
実施例7
工程(a):式F(O=)CO-RH-O[CF2RfCF2-ORHO]y-C(=O)F
(式中、
RHは-(CH2)3-であり、
Rfは-(CF2)4-であり、
yは数平均分子量が1200g/molであるような数である)
を有するポリマー(FH)の合成のための重縮合反応。
【0142】
メカニカルスターラー及び圧力変換器を備えたParrオートクレーブ(100ml)の中に、粉末の乾燥CsF(Aldrich Co、タイトル99.9%;5.17g、34.03mmol)、フルオロホルメートF(O=)C-O(CH2)3O-C(=O)F(11.43g、68.00mmol)、オクタフルオロアジポイルフルオリドF(O=)C-(CF2)4-C(=O)F(2)(20.0g、68.00mmol)、及び無水アセトニトリル(30.0g)を、窒素雰囲気下のドライボックスの中で入れた。
【0143】
反応混合物を加熱マントルで120℃に加熱し、この温度で24時間機械撹拌下に保った。その一方で、CO2の形成による圧力の上昇が観察された。反応が終了した後、オートクレーブを室温まで冷却し、ガス状生成物(CO2、HF)を除去し、5%のNaOH溶液(100cc)の中にバブリングした。
【0144】
オートクレーブ内のフッ素化相を回収し、反応混合物をPTFEフィルター(0.45mm)で加圧濾過してCsF触媒を除去した。
【0145】
得られた溶液から、溶媒のアセトニトリル並びに未反応のフルオロホルメート及びオクタフルオロアジポイルフルオリドを分別蒸留によって除去することで、数平均分子量が1200である最終的なフルオロポリエーテルポリマー(FH)16.89gを得た。これは、1H-NMR及び19F-NMR分析によってキャラクタリゼーションした。
【0146】
工程(b):式F(O=)CO-RF-O[CF2RfCF2-ORFO]y*-C(=O)F
(式中、
RFは-(CF2)3-であり、
Rfは-(CF2)4-であり、
y*は数平均分子量が1500g/molであるような数である)
を有するポリマーの合成及び対応するジエステルPFPEポリマーの合成のためのペルフルオロ化反応。
【0147】
実施例7の工程(a)で得たポリマーを20.3ml/hの流量で2.5時間供給したことのみが異なるだけで、実施例1の工程(b)について上述した手順に従ってペルフルオロ化反応を行った。
【0148】
反応の終わりに、エチルエステルとしての20.9gの目的のペルフルオロ化PFPEポリマー(数平均分子量=1500g/mol)が得られた。
【0149】
実施例8
工程(a):式F(O=)CO-RH-O[CF2RfCF2-ORHO]y-C(=O)F
(式中、
RHは-(CH2)4-であり、
Rfは-(CF2)4-であり、
yは数平均分子量が1100g/molであるような数である)
を有するポリマー(FH)の合成のための重縮合反応。
【0150】
メカニカルスターラー及び圧力変換器を備えたParrオートクレーブ(100ml)の中に、粉末の乾燥CsF(Aldrich Co、タイトル99.9%;3.87g、25.48mmol)、フルオロホルメートF(O=)C-O(CH2)4O-C(=O)F(10.21g、56.10mmol)、オクタフルオロアジポイルフルオリドF(O=)C-(CF2)4-C(=O)F(15.0g、51.00mmol)、及び無水アセトニトリル(25.0g)を、窒素雰囲気下のドライボックスの中で入れた。
【0151】
反応混合物を加熱マントルで120℃に加熱し、この温度で45時間機械撹拌下に保った。その一方で、CO2の形成による圧力の上昇が観察された。反応が終了した後、オートクレーブを室温まで冷却し、ガス状生成物(CO2、HF)を除去し、5%のNaOH溶液(100cc)の中にバブリングした。オートクレーブ内のフッ素化相を回収し、反応混合物をPTFEフィルター(0.45mm)で加圧濾過してCsF触媒を除去した。
【0152】
得られた溶液から、溶媒のアセトニトリル並びに未反応のフルオロホルメート及びオクタフルオロアジポイルフルオリドを分別蒸留によって除去することで、数平均分子量が1100である最終的なフルオロポリエーテルポリマー(FH)15.20gを得た。これは、1H-NMR及び19F-NMR分析によってキャラクタリゼーションした。
【0153】
工程(b):式(O=)CO-RF-O[CF2RfCF2-ORFO]y*-C(=O)F
(式中、
RFは-(CF2)4-であり、
Rfは-(CF2)4-であり、
y*は数平均分子量が1500g/molであるような数である)
を有するポリマー(PFPEFOR-b3)の合成及び対応するジエステルPFPEポリマーの合成のためのペルフルオロ化反応。
【0154】
実施例8の工程(a)で得たポリマーを17.8ml/hの流量で2.8時間供給したことのみが異なるだけで、実施例1の工程(b)について上述した手順に従ってペルフルオロ化反応を行った。
【0155】
反応の終わりに、エチルエステルとしての19.0gの目的のペルフルオロ化PFPEポリマー(数平均分子量=1500g/mol)が得られた。