(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】診断システム内の排出物を処置するための受動的重力駆動システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/32 20060101AFI20221205BHJP
C02F 1/72 20060101ALI20221205BHJP
C02F 1/24 20060101ALI20221205BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
C02F1/32
C02F1/72 Z
C02F1/72 101
C02F1/24 D
G01N35/00 Z
(21)【出願番号】P 2019532696
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(86)【国際出願番号】 US2017067412
(87)【国際公開番号】W WO2018118985
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-07
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511286517
【氏名又は名称】ヴェンタナ メディカル システムズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】メイ, エリック
(72)【発明者】
【氏名】コスメダー, ザ セカンド, ジェローム ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】シングラー, テイラー ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】クラム, ネイサン
(72)【発明者】
【氏名】オッター, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ジャクボウスキー, ジョセフ エム.
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴンズ, ベンジャミン シー.
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-113298(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0326677(US,A1)
【文献】特開2009-220015(JP,A)
【文献】特開2013-013871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20- 1/26、
1/30- 1/38、
1/40、
1/70- 1/78
B01D 17/00-17/12
G01N 35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断システム(10)を出る廃棄物流の処置のための受動的重力駆動処置システム(200)であって、前記システム(200)は、
(a)前記廃棄物流およびラジカル開始剤を受け入れるための、前記診断システム(10)に流体接続されている均質化リザーバ(201)であり、前記廃棄物流は、少なくとも1つの標的化合物を含有する油相流体成分および水性流体成分を含み、浮力の結果として、前記油相流体成分は、前記均質化リザーバ(201)内にあるとき、前記水性流体成分の上に上昇して浮き、上層の油排出物(220)および下層の標的排出物(222)を形成し、前記ラジカル開始剤は前記標的排出物内に配置される、均質化リザーバと、
(b)チャネル(202)を介して前記均質化リザーバ(201)に流体接続されるラジカル生成リザーバ(204)であり、前記チャネル(202)は、前記均質化リザーバの第1の出口(211)および前記ラジカル生成リザーバ(204)の入口(213)に接続され、前記第1の出口(211)は、前記均質化リザーバの基部(215)の付近に位置決めされ、前記入口(213)は、前記ラジカル生成リザーバの基部(217)にまたは付近に位置決めされ、重力が、前記均質化リザーバ(201)から前記チャネル(202)を介して前記ラジカル生成リザーバ(204)への前記標的排出物の流れを容易にする、ラジカル生成リザーバと、
(c)前記ラジカル生成リザーバ(204)に結合されるラジカルジェネレータ(216)であり、前記ラジカルジェネレータ(216)は、前記標的排出物が前記ラジカル生成リザーバ(204)内に配置されている間に前記標的排出物を照射し、前記標的化合物を分解する促進酸化処理(AOP)を助長するように構成されており、前記ラジカル開始剤は、前記ラジカル開始剤が前記ラジカルジェネレータ(216)に暴露されるときに前記AOPを加速するのに有効であり、したがって、前記標的化合物の検出可能な濃度が低減し、前記標的排出物が処置済み排出物になる、ラジカルジェネレータと、
(d)前記ラジカル生成リザーバの廃棄物出口(214)から出る前記処置済み排出物を受け入れるための第1の処分ユニット(208)と、
(e)前記均質化リザーバの廃油出口(212)から出る前記油排出物を受け入れるための第2の処分ユニット(209)であり、前記廃油出口(212)は前記下層の標的排出物の上方に位置決めされて、重力により容易にされる、前記均質化リザーバ(201)からの前記油排出物の排出のためのルートを提供する、第2の処分ユニットと
を備える、受動的重力駆動処置システム(200)。
【請求項2】
前記標的化合物は3,3'-ジアミノベンジジン(DAB)である、請求項1に記載のシステム(200)。
【請求項3】
前記油相流体成分および/または前記水性流体成分は、バイオフィルムまたは部分的に乾燥したスラッジをさらに含む、請求項1または2に記載のシステム(200)。
【請求項4】
前記均質化リザーバ(201)の基部に排出弁(203)が配置されており、前記排出弁(203)は、前記システム
(200)を空にするのに有効である、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【請求項5】
前記ラジカル開始剤は、個々にもしくは組み合わせて利用される、紫外線(「UV」)過酸化物光開始剤、熱過酸化物開始剤、アゾ熱/光分解開始剤、ニトロキシドラジカル開始剤、有機光増感剤、または、無機半導体ナノ材料である、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【請求項6】
前記ラジカルジェネレータ(216)はUV照射源を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【請求項7】
前記ラジカルジェネレータ(216)は、直列流水式UV照射システムを形成するように、前記ラジカル生成リザーバ(204)の内部に配置されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【請求項8】
前記ラジカルジェネレータ(216)は、トップダウンUV照射システムを形成するように、前記ラジカル生成リザーバ(204)から上方に距離をおいて位置決めされている、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【請求項9】
前記標的排出物を照射するUV光の量が所定の閾値よりも大きいことを保証するために、前記ラジカルジェネレータ(216)にフィードバック機構が結合されている、請求項1から8のいずれか一項に記載のシステム(200)。
【請求項10】
診断システム(10)を出る廃棄物流を処置するための方法であって、前記方法は、
(a)前記診断システム(10)に動作可能に結合される、請求項1に記載の受動的重力駆動処置システム(200)を提供することと、
(b)ラジカル開始剤を提供することと、
(c)前記診断システム(10)からの前記廃棄物流および前記ラジカル開始剤を均質化リザーバ(201)へと導入することであり、前記廃棄物流は、少なくとも1つの標的化合物を含有する油相流体成分および水性流体成分を含み、浮力の結果として、前記油相流体成分は、前記均質化リザーバ(201)内にあるとき、前記水性流体成分の上に上昇して浮き、上層の油排出物および下層の標的排出物を形成し、前記ラジカル開始剤は前記標的排出物内に配置される、導入することと、
(d)前記均質化リザーバ(201)からチャネル(202)を介して前記ラジカル生成リザーバ(204)へと前記標的排出物を導入することであり、重力が、前記均質化リザーバ(201)から前記ラジカル生成リザーバ(204)への前記標的排出物の流れを容易にする、導入することと、
(e)前記標的排出物が前記ラジカル生成リザーバ(204)内に配置されている間に、前記ラジカルジェネレータ(216)を介して前記標的排出物を照射することであり、前記照射は、前記標的化合物を分解する促進酸化処理(AOP)を引き起こし、前記ラジカル開始剤は、前記ラジカル開始剤が前記ラジカルジェネレータ(216)に暴露されるときに前記AOPを加速し、したがって、前記標的化合物の検出可能な濃度が低減し、前記標的排出物が処置済み排出物になる、照射することと、
(f)前記ラジカル生成リザーバ(204)の廃棄物出口(214)から出る前記処置済み排出物を第1の処分ユニット(208)内へと排出することと、
(g)前記均質化リザーバ(201)の廃油出口(212)から出る前記油排出物を前記第2の処分ユニット(209)へと排出することであり、前記油排出物の前記排出は重力によって容易にされる、排出することと
を含む、方法。
【請求項11】
前記標的化合物は3,3'-ジアミノベンジジン(DAB)である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記油相流体成分および/または前記水性流体成分は、バイオフィルムまたは部分的に乾燥したスラッジをさらに含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記システム
(200)を空にするための手段を提供するために、前記均質化リザーバ(201)の基部に排出弁(203)が配置されている、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ラジカル開始剤は、個々にもしくは組み合わせて利用される、紫外線(「UV」)過酸化物光開始剤、熱過酸化物開始剤、アゾ熱/光分解開始剤、ニトロキシドラジカル開始剤、有機光増感剤、または、無機半導体ナノ材料である、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ラジカルジェネレータ(216)はUV照射源を備える、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断機器とともに使用するための廃棄物分別および処置実務に関し、より詳細には、廃液中の油および他の標的材料の排除に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫組織化学(「IHC」)検出システムは、顔料または染料に変換して着色された最終生成物を生成することが可能である物質である、3,3’-ジアミノベンジジン(「DAB」)を色原体として利用することができる。しかしながら、DABは、変異原作用および発がん性の活動を有する可能性のある化学物質であり、IHCシステム内で使用されるスライド染色装置からの廃棄物流の毒性を増大させ、これによって、有害廃棄物処分が必要になる。上記廃棄物処分に対処する現在の技術は、有害廃棄物流の量を最小限に抑えるために、廃棄物分別方法を利用する。IHC廃棄物におけるDABの処置に推奨される方法は2つしか存在せず、その両方が、有害廃棄物の量を低減する役割しか果たさない。第1の最も一般的に使用されている方法は、過マンガン酸カリウムおよび硫酸を使用して、ろ過することができる沈殿物を生成することを伴う。第2の方法は、セイヨウワサビペルオキシダーゼを利用して、ろ過によって容易に単離される固体を形成することである。両方の方法において、任意の残った液体は非変異原性であると考えられるが、沈殿物または固体は依然としてDABの変異原性を保持し得る。
【0003】
本発明は、ラジカルジェネレータ(例えば、紫外線(「UV」)光)およびラジカル開始剤(例えば、過酸化水素)を用いる促進酸化処理(「AOP」)を利用してスライド染色装置廃棄物流中のDABを酸化する(すなわち、不活性にする)ための自動システムを提案する。AOPは、概して、UV光の存在下で過酸化水素の均等開裂によって形成されるHOラジカルの高い反応性を活用して、酸化処理を進める。さらに、本発明は、DAB色原体と液体カバースリップ(「LCS」)の両方をスライド染色装置廃棄物流から分別するように構成されている。LCSは、IHC検出システム内で使用される試薬と空気との間の障壁として使用される予め希釈されたカバースリップ溶液であり、スライド染色装置廃棄物流の成分でもある。
【0004】
UV光照射を介して廃水から汚染物質を回収および低減/除去するための様々な廃棄物処置システムが提案されており、従来の特許の主題となっている。例えば、Rhett(米国特許第5839091号)は、有害および非有害廃棄物を保管するための二重廃棄物箱を開示している。2つの異なる廃棄物ポンプが使用され、結果、一方の廃棄物ポンプが非有害廃棄物を除去するために使用され、他方の廃棄物ポンプが有害廃棄物を除去するために使用される。スイッチ(Swtch)ステップが、ユーザが一方の容器からもう一方の容器への廃棄物の切り替えを指示することを可能にする。スイッチ(Swtch)ステップは主として、有害廃棄物を非有害廃棄物から分離するために使用される。しかしながら、Rhettは、回収後に廃棄物を処置するいかなる方法も教示していない。
【0005】
また、Bogen(米国特許第6096271号)は、経済的処分のために少量の有毒廃液を回収するための手段を教示している。いくつかの液体廃棄物ボトルが、真空源と吸引ヘッドとの間に並列構成で位置決めされている。各液体廃棄物ボトル入口は通常、電磁弁によって閉鎖されている。液体が吸引されるべきであるとき、選択されたボトルの電磁弁が開く。吸引ヘッドは電気機械的に下げられ、結果、吸引ヘッドの底面が顕微鏡スライド上の液体に接する。このように、吸引ヘッド上の孔に吸引力が直に伝達され、選択された液体廃棄物ボトル内に液体が回収されるようになる。しかしながら、Bogenは、回収後に液体廃棄物を処置するいかなる方法も取り上げていない。
【0006】
別の例として、Underwood(米国特許第9096445号)は、ハウジング内に配置されている1つまたは複数の浄水構成要素を有する浄水装置を開示しており、上記構成要素の1つがUV光放射体であり得る。本発明とは逆に、Underwoodの発明は、浄化された水が装置を出る速度をも制御する、1つまたは複数のポンプを介して1つまたは複数の構成要素を通る廃棄物流体を駆動する能動的装置である。対照的に、本発明のデバイスは、廃水の流速がシステム全体を通じて重力制御される、受動的システムである。例示のために、均質化リザーバに入る複数の流体成分の初期流速(および上記リザーバの寸法)が、流体成分の必要な流速をもたらす。この流速は、流体成分が均一に混合し、したがって均質な排出物を生成するのに必要な滞留時間をもたらす。排出物が均質であるときは、排出物の照射が最も効果的であることは、当業者にはよく理解されている。またさらに、Underwoodの参考文献は、複数成分排出物の効果的な処置には対処していない。
【0007】
Emery他(WO2011/055133)は、浄水システム内での微生物の成長を制御/排除するための浄水システムとともに使用される装置を開示している。Emeryの装置は、システム内の複数の脆弱点(例えば、水路または水出口の分配点)上にまたは複数の脆弱点の周りに1つまたは複数のUV LEDを配置する。Emeryの装置の目的は、UV LEDからの光を使用して廃水を浄化することではなく、様々な脆弱点において、日和見微生物が浄化された水に近づこうとするのを制御/排除することによって浄化された水(または浄化過程にある水)の汚染に対抗することである。例示のために、Emeryの装置は、浄化された水から、1μS/cm未満の導電性を有する超純水を提供するために使用される。したがって、本発明の場合のように、UVランプ(廃水を浄化するために大幅に高いワット数の光を放出する)の代わりにUV LEDが採用されることが可能である(すなわち、放出される光が浄化された水の超純化に使用されるため、必要なワット数がより低い)。その上、Emeryの参考文献は、廃棄物処置システム内の微生物の成長を制御/排除するための軽減技法のみで、完璧な廃棄物処置システムを可能にしない。
【0008】
さらに、Yanyan他(CN104496094)は、電気化学タンクとともに使用される、電気化学分解と光触媒酸化とを組み合わせた高危険性廃水処置装置および処置方法を開示している。光触媒酸化は、UV光源を含む。この参考文献は、システム構成要素を成し、また、効果的な処置を達成するために電気化学分解および光触媒技術の相乗効果に依拠しているためにの両方で、本発明のシステムから区別される。
【0009】
本明細書において記載されている任意の特徴または特徴の組み合わせは、任意のそのような組み合わせに含まれる特徴が、文脈、本明細書、および当業者の知識から明らかになるものとして相互に一貫しないものでないことを条件として、本発明の範囲内に含まれる。本発明の追加の利点および態様は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲において明らかである。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、診断システムに動作可能に結合される、所与の流速において診断システムを出る流体成分のセットの処置のための受動的重力駆動処置システムを取り上げる。いくつかの実施形態において、システムは、流体成分のセットを受け入れるための均質化リザーバを備える。さらなる実施形態において、流体成分のセットは、ラジカル開始剤と、水性成分と、標的化合物とを含む。均質化リザーバ内での各流体成分の滞留時間は、流体成分のセットの均一な混合を助長して排出物を形成するのに十分である。滞留時間は、所与の流速および均質化リザーバの寸法(例えば、半径、高さ、または容積)の関数であり得る。
【0011】
他の実施形態において、システムは、ラジカル生成リザーバに結合されているラジカルジェネレータを備える。排出物は、排出物の流れを容易にする重力によって、均質化リザーバからチャネルを介してラジカル生成リザーバへと送ることができる。ラジカル生成リザーバに入ると、排出物はラジカルジェネレータに暴露される。排出物中のラジカル開始剤が、標的化合物を分解するAOPを始動する。これらのAOPは、排出物中のラジカル開始剤がラジカルジェネレータに暴露されると加速される。このようにして、標的化合物の検出可能な濃度が減少し、排出物は処置済み排出物になり、処置済み排出物はその後、処分のために、排出物を排出するためのルートを提供する流体排出物出口を介してラジカル生成リザーバに結合されている第1の処分ユニットに送られる。
【0012】
さらなる実施形態において、流体成分のセットは、油成分を含む。浮力の結果として、油成分は均質化リザーバ内で水性成分の上に上昇し、重力の結果として、油は均質化リザーバから廃油出口を介して第2の処分ユニットへと排出される。
【0013】
いくつかの態様において、本発明は、UV光および過酸化水素または別の光開始剤によって生成されるAOPを利用してスライド染色装置廃棄物流中のDAB(すなわち、標的化合物)を酸化する(すなわち、不活性にする)ことによってDABを破壊するための自動システムを提案する。追加の試薬は必要なく、初結果までの時間への影響は観察されなかった。IHC廃棄物流からのDAB除去のための他の市販の溶液は、追加の試薬およびDAB廃棄物流のハンズオン処理(すなわち、化学処置、pH調整、ろ過など)を必要とする。
【0014】
本発明の特徴および利点は、添付の図面とともに提示される以下の詳細な説明を考慮することから明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】診断システムに搭載されている本発明のシステムの処置システムの非限定的な実施形態を示す図である。
【
図2】処置システム内の排出物の流体流および油分離を示す図である。
【
図4】サービスおよびメンテナンス中の処置システムを示す図である。システムは、ヒンジカバースキンを介して受容可能であり、システムの排水を行うための排出弁の下に浅皿が配置され得る。ラジカルジェネレータ内のバルブおよび/またはチューブは、図示のように除去および交換することができる。
【
図5】油堰、水堰、相対高さ確認ツール、および調整堰ブラケットを有する処置システムの正面図である。
【
図7】UV照射に使用される処置システムの流水式直列ラジカルジェネレータの断面図である。
【
図8】流水式直列ラジカルジェネレータの別の図である。
【
図9A】UVランプによる流体無接触UV照射に使用されるトップダウンラジカルジェネレータであるラジカルジェネレータの別の実施形態の斜視図である。
【
図9B】UVランプによる流体無接触UV照射に使用されるトップダウンラジカルジェネレータであるラジカルジェネレータの別の実施形態の上面図である。
【
図9C】UVランプによる流体無接触UV照射に使用されるトップダウンラジカルジェネレータであるラジカルジェネレータの別の実施形態の側面図である。
【
図10】本発明の方法の一実施形態を示す図である。
【
図11A】代表的なHPLCおよび逆相UPLCを使用した代表的なDAB規格のUV-VISスペクトル(274ナノメートル(nm))を示す図である。
【
図11B】代表的なHPLCおよび逆相UPLCを使用した代表的なDAB規格のUV-VISスペクトル(274ナノメートル(nm))を示す図である。
【
図11C】蒸留脱イオン水中のDAB HPLC分析が136μg/mLから133μg/Lまで比較的に線形的であったことを示す図である。
【
図12A】代表的なHPLCおよびイオンペアリングによる逆相HPLCを使用した代表的なDAB規格のUV-VISスペクトル(310nm)を示す図である。
【
図12B】代表的なHPLCおよびイオンペアリングによる逆相HPLCを使用した代表的なDAB規格のUV-VISスペクトル(310nm)を示す図である。
【
図12C】ベンチマーク廃棄物中のDAB HPLC分析が、イオンペアリングによる逆相HPLCについて109mg/mLから4.26mg/Lまで比較的に線形的であったことを示す図である。
【
図13A】過酸化水素を用いたDAB UV酸化に対する混合の影響の結果を示す図である。
【
図13B】10℃において一晩保管した後の能動的な機械的混合からのUV酸化DAB試料を示す図である。
【
図13C】10℃において一晩保管した後のドウェル混合からのUV酸化DAB試料を示す図である。
【
図14A】ラジカル開始剤(過酸化水素)を用いたまたは用いない場合の蒸留脱イオン水中のDABのUV酸化速度を示す図である。
【
図14B】過酸化物を用いた場合の、10°Cにおいて一晩保管した後の、様々な照射時間において採取されたUV酸化DAB試料を示す図である。
【
図14C】過酸化物を用いない場合の、10°Cにおいて一晩保管した後の、様々な照射時間において採取されたUV酸化DAB試料を示す図である。
【
図15】過酸化水素を用いない場合の、蒸留脱イオン水およびベンチマークIHC廃棄物中のDABのUV酸化速度を示す図である。
【
図16】過酸化水素を用いた場合または用いない場合の、ベンチマークIHC廃棄物中のDABのUV酸化速度を示す図である。
【
図17】過酸化水素を用いた場合の、蒸留脱イオン水およびベンチマークIHC廃棄物中のDABのUV酸化速度を示す図である。
【
図18】18Wランプおよび55Wランプについての、過酸化水素を用いた場合の廃棄物中のDABのUV酸化速度を示す図である。
【
図19A】DABを有するLCSエマルションおよびDABを有する水性のみの層についての、55Wランプを使用する、過酸化水素を用いた場合の廃棄物中のDABのUV酸化速度を示す図である。
【
図19B】10℃において一晩保管した後の、様々な照射時間において採取された、LCSエマルションを有するベンチマークIHC廃棄物中のDAB UV酸化試料を示す図である。DAB分析試料は、LCSエマルションおよびDAB固体ポリマー沈殿物を除去するために、HPLC分析の前に14Kにおいて2分にわたって遠心分離した。
【
図19C】様々な照射時間において採取された、LCSエマルションを有するベンチマークIHC廃棄物中のDAB UV酸化試料を示す図である。室温において一晩保管した後、14Kにおいて4分にわたって遠心分離した後のマイクロキャップ試料が示されている。
【
図20】様々な平台層厚のDAB試料における36WトップダウンUV照射試験台を使用した反応緩衝液中のDABのUV酸化を示す図である。
【
図21】LCSエマルションを有するまたは有しない反応緩衝液中のDABについての36WトップダウンUV照射試験台を使用したDABのUV酸化を示す図である。
【
図22】ラジカル開始剤を用いないまたは異なるラジカル開始剤クラスを用いた場合の反応緩衝液中のDABのUV酸化を示す図である。
【
図23】ラジカル開始剤を用いないまたは異なるラジカル開始剤クラスを用いた場合の反応緩衝液中のDABの別のUV酸化を示す図である。
【
図24】ラジカル開始剤を用いたまたは用いない場合の超音波分解した反応緩衝液中のDABのUV酸化を示す図である。
【
図25】本発明の処置システムの代替的な非限定的実施形態を示す図である。任意選択的に、後置粒子フィルタが処置システムに含まれてもよく、または、システムから除去されてもよい(図示せず)。
【
図26A】浮力のみの分離を採用した処置システムの代替的な非限定的実施形態を示す図である。
【
図26B】浮力と親水性/合体ろ過とを組み合わせた分離を採用した処置システムの代替的な非限定的実施形態を示す図である。任意選択的に、後置粒子フィルタが処置システムに含まれてもよく、または、システムから除去されてもよい(図示せず)。
【
図27A】処置システムの代替的な非限定的実施形態を示す図である。
【
図27B】処置システムの代替的な非限定的実施形態を示す図である。
【
図27C】処置システムの代替的な非限定的実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで
図1~
図6を参照すると、本発明は、自動染色機械のような、診断システム(10)を出る廃棄物流の処置のための、診断システム(10)に動作可能に結合される、受動的重力駆動処置システム(200)を取り上げる。自動染色機械(例えば、IHC/ISHスライド染色装置)の例としては、itelliPATH(Biocare Medical)、WAVE(Celerus Diagnostics)、DAKO OMNISおよびDAKO AUTOSTAINER LINK 48(Agilent Technologies)、BENCHMARK XT(Ventana Medical Systems, Inc.)、BENCHMARK Special Stains(Ventana Medical Systems、Inc.)、BENCHMARK ULTRA(Ventana Medical Systems, Inc.)、BENCHMARK GX(Ventana Medical Systems, Inc.)、VENTANA H&E 600(Ventana Medical Systems, Inc.)、VENTANA DISCOVERY XT(Ventana Medical Systems, Inc.)、DISCOVERY ULTRA(Ventana Medical Systems, Inc.)、Leica BOND、ならびにLab Vision Autostainer(Thermo Scientific)が挙げられる。自動染色機械(自動スライド染色装置)はまた、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Prichard、Overview of Automated Immunohistochemistry、Arch Pathol Lab Med.、138巻、1578~1582ページ(2014)によっても記載されている。加えて、Ventana Medical Systems, Inc.は、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,650,327号、米国特許第5,654,200号、米国特許第6,296,809号、米国特許第6,352,861号、米国特許第6,827,901号、および米国特許第6,943,029、ならびに、米国特許出願公開第20030211630号および米国特許出願公開第20040052685号を含む、自動分析を実施するためのシステムおよび方法を開示している複数の米国特許の譲受人である。本発明の方法は、任意の適切な自動染色機械(または自動スライド処理機械)に対して実施されるように適合することができる。
【0017】
スライド処理機械は、組織標本に対する1つまたは複数の準備処理を実施することができる。準備処理は、限定ではないが、標本の脱パラフィン、標本のコンディショニング(例えば、細胞コンディショニング)、標本の染色、抗原回復の実施、免疫組織化学染色(標識化を含む)もしくは他の反応の実施、および/または、in situハイブリダイゼーション(例えば、SISH、FISHなど)もしくは他の反応の実施、ならびに、顕微鏡使用、微量分析、質量分析方法、もしくは他の分析方法のために標本を準備するための他の処理を含むことができる。
【0018】
自動IHC/ISHスライド染色装置は、典型的には、染色手順を実施するための試薬をスライドに分配するための少なくとも1つの染色装置ユニットを含む。市販の染色ユニットは、典型的には、以下の原理のうちの1つにおいて動作する。(1)個々のスライド染色を開く。スライドは水平方向に位置決めされ、試薬は組織試料を含むスライドの表面上にパドルとして分配される(DAKO AUTOSTAINER Link 48(Agilent Technologies)およびintelliPATH(Biocare Medical)染色装置上で実施されるものなど)。(2)液体オーバーレイ技術。試薬が、試料の上に堆積される不活性流体層によって被覆されるか、または、不活性流体層を通じて分配される(VENTANA BenchMarkおよびVENTANA DISCOVERY染色装置上で実施されるものなど)。(3)毛細管ギャップ染色。スライド表面が、狭い間隙を作成するように別の表面(別のスライドまたはカバープレートであり得る)と平行に近接して位置付けられる。この狭い間隙を通じて、毛細管力が液体試薬を汲み上げ、試料と接触したままにする(DAKO TECHMATE、Leica BOND、およびDAKO OMNIS染色装置によって使用される染色原理など)。毛細管ギャップ染色を数回繰り返しても、間隙中の流体は混合しない(DAKO TECHMATEおよびLeica BOND上など)。スライドと湾曲面との間に間隙が作成され、互いに対する表面の動きが混合をもたらす並進ギャップ技術(米国特許第7,820,381号参照)、および、毛細管ギャップ染色と同様に毛細管力を使用して試料をスライドに施与し、次いで、平行な表面を互いに対して並進させて、インキュベーション中に試薬をかくはんして試薬混合をもたらす、動的ギャップ染色(DAKO OMNISスライド染色装置(Agilent)上で実施される染色原理など)など、毛細管ギャップ染色のいくつかの変形形態において、試薬は間隙内で混合される。近年、WO2016-170008A1に記載されているように、スライド上に試薬を堆積するために、インクジェット技術を使用することが提案されている。この染色原理リストは、網羅的であるようには意図されておらず、本発明の方法およびシステムは、適切な試薬を試料に施与するために使用することができる任意の染色技術(既知のものと将来開発されるものの両方)を含むように意図されている。
【0019】
スライド処理機械は、広範囲の物質を標本に施与することができる。物質は、限定ではなく、染色剤、プローブ、試薬、リンス、および/または調整剤を含む。物質は、流体(例えば、気体、液体、または気体/液体混合物)などであってもよい。流体は、溶媒(例えば、極性溶媒、非極性溶媒など)、溶液(例えば、水溶液または他のタイプの溶液)などであってもよい。試薬は、限定ではないが、染色剤、湿潤剤、抗体(例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体など)、抗原回復流体(例えば、水性または非水性抗原回復溶液、抗原回復緩衝液など)などを含んでもよい。例えば、検出可能な部分と組み合わせて、色原体、蛍光性化合物、または発光性化合物のような検出可能な試薬が、検出可能な部分または試料上に堆積されている標識の存在および/または濃度を指示する検出可能な信号(視覚信号、電気信号、または他の信号など)を生成するために使用される。
【0020】
検出可能な信号は、光子(無線周波数、マイクロ波周波数、赤外線周波数、可視周波数および紫外線周波数の光子を含む)の吸収、放出および/または散乱を含む、任意の既知のまたは未発見のメカニズムによって生成することができる。例示的な検出可能部分は、(限定ではないが)色原体、蛍光性、リン光性、および発光性分子および材料、ある物質を変換して別の物質にして、検出可能な差を提供する(無色の物質を変換して有色の物質に、もしくはその逆にすることによって、または、沈殿物を生成することもしくは試料濁度を増大することなどによって)触媒(酵素など)、追加の検出可能に標識化された抗体複合体を使用した抗体-ハプテン結合相互作用を通じて検出することができるハプテン、ならびに、常磁性および磁性分子または材料を含む。例えば、検出可能部分は、ジアミノベンジジン(「DAB」)、抗原と抗体のような特異結合剤との相互作用を検出することによって試料中の抗原の存在または分布を決定するために免疫組織化学(「IHC」)検出システム内で使用される色原体である。
【0021】
本発明は、自動システムの使用に限定されない。いくつかの実施形態において、本明細書において記載されている組織化学的標識化方法が、手動で適用される。または、特定の工程が手動で実施されてもよく、一方、他の工程が、自動システム内で実施される。
【0022】
いくつかの実施形態において、前述した自動スライド染色装置またはスライド処理機械の廃棄物流は、本発明の受動的重力駆動処置システム(200)に送られる。したがって、本発明の1つの目的は、上記廃棄物流を分別し、DABのような標的化合物を不活性化することである。本発明のシステム(200)は、フレームを改変することを必要とすることなく、スライド処理機械の既存のフレームに容易に取り付けられるという点において有利である。さらに、システム(200)は、ワークフローに悪影響を及ぼすかまたは干渉することがないように、好都合に位置付けることができる。
【0023】
他の実施形態において、回収装置が、処置システム(200)に入る前に廃棄物流を回収するために使用され得る。1つの実施形態において、回収装置は、回収される廃棄物がシステム(200)へと方向付けられるように、処置システム(200)に静的に接続することができる。代替的に、回収装置は、ダイバータを介して流体タイプを選択的に事前分離するように作動されてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、受動的重力駆動処置システム(200)は、均質化リザーバ(201)と、チャネル(202)を介して均質化リザーバ(201)に流体接続されているラジカル生成リザーバ(204)と、ラジカル生成リザーバ(204)に結合されているラジカルジェネレータ(216)と、ラジカル生成リザーバの廃棄物出口(214)に結合されている第1の処分ユニット(208)と、均質化リザーバの廃油出口(212)に結合されている第2の処分ユニット(209)とを備えることができる。いくつかの実施形態において、均質化リザーバ(201)は、診断システム(10)に流体接続することができる。均質化リザーバ(201)は、ラジカル開始剤および廃棄物流を受け入れることができる。いくつかの実施形態において、廃棄物流は、少なくとも1つの標的化合物を含有する油相流体成分および水性流体成分を含む。浮力の結果として、油相流体成分は、均質化リザーバ(201)内にあるとき、水性流体成分の上に上昇し、浮いて、上層の油排出物(220)および下層の標的排出物(222)が形成され、ラジカル開始剤は標的排出物中にある。
【0025】
いくつかの実施形態において、均質化リザーバ(201)内での各流体成分の滞留時間は、油相流体成分を水性流体成分から分離するのに十分である。またさらに、滞留時間は、標的排出物が少なくとも均質化リザーバの第1の出口(211)において均質になるように、水性流体成分とラジカル開始剤との均一な混合を保証するのに十分である。滞留時間は、所与の流速および均質化リザーバ(201)の寸法の関数であり得る。例えば、均質化リザーバ(201)が実質的に円筒形である場合、均質化リザーバ(201)の寸法は、均質化リザーバ(201)の高さおよび半径を含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、チャネル(202)は、均質化リザーバの第1の出口(211)およびラジカル生成リザーバ(204)の入口(213)に接続することができる。
図2に示すように、第1の出口(211)は、均質化リザーバの基部(215)付近に位置決めすることができ、入口(213)は、ラジカル生成リザーバの基部(217)にまたは基部の付近に位置決めすることができる。したがって、重力によって容易にされるように、標的排出物は、均質化リザーバ(201)からチャネル(202)を介してラジカル生成リザーバ(204)へと流れるように構成される。標的排出物がラジカル生成リザーバ(204)内にあるとき、ラジカルジェネレータ(216)は、標的排出物を照射し、上記標的化合物を分解する促進酸化処理(AOP)を助長するように構成される。標的排出物中のラジカル開始剤は、ラジカル開始剤がラジカルジェネレータ(216)に暴露されるときに、上記AOPを加速するのに有効であり、したがって、標的化合物の検出可能な濃度が低減し、標的排出物が処置済み排出物になる。
【0027】
他の実施形態において、第1の処分ユニット(208)は、ラジカル生成リザーバの廃棄物出口(214)から出る処置済み排出物を受け入れる。また他の実施形態において、第2の処分ユニット(209)は、均質化リザーバの廃油出口(212)から出る油排出物を受け入れる。廃油出口(212)は、油排出物を均質化リザーバ(201)から排出するためのルートを提供し、標的排出物が廃油出口(212)を通って出るのを防止するように、下層の標的排出物の上方に位置決めすることができる。いくつかの実施形態において、油排出物の排出は、重力によって容易にされる。
【0028】
別の実施形態によれば、システム(200)は、診断システム(10)を出る廃棄物流を処置するための方法において利用することができる。廃棄物流は、油相流体成分と、少なくとも1つの標的化合物を含有する水性流体成分とを含み得る。いくつかの実施形態において、方法は、診断システム(10)に動作可能に結合される受動的重力駆動処置システム(200)を提供することと、ラジカル開始剤を提供することと、診断システム(10)からの廃棄物流およびラジカル開始剤を均質化リザーバ(201)内へと導入することとを含むことができる。浮力の結果として、油相流体成分は、均質化リザーバ(201)内にあるとき、水性流体成分の上に上昇し、浮いて、上層の油排出物および下層の標的排出物が形成され、ラジカル開始剤は標的排出物中に配置される。方法は、標的排出物が均質化リザーバ(201)からラジカル生成リザーバ(204)へと流れるのを容易にする重力によって、標的排出物を均質化リザーバ(201)からチャネル(202)を介してラジカル生成リザーバ(204)内へと導入することと、標的排出物がラジカル生成リザーバ(204)内に配置されている間に、ラジカルジェネレータ(216)を介して、標的排出物を照射することとをさらに含むことができる。
【0029】
標的排出物を照射することによって、上記標的化合物を分解する促進酸化処理(AOP)が引き起こされる。その上、ラジカル開始剤が、ラジカル開始剤がラジカルジェネレータ(216)に暴露されるときに、上記AOPを加速することができ、したがって、標的化合物の検出可能な濃度が低減し、標的排出物が処置済み排出物になる。さらなる実施形態において、方法は、ラジカル生成リザーバ(204)の廃棄物出口(214)から出る処置済み排出物を第1の処分ユニット(208)内へと排出することと、均質化リザーバ(201)の廃油出口(212)から出る油排出物を第2の処分ユニット(209)内へと排出することとをさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、油排出物の排出は、重力によって容易にされる。
【0030】
別の実施形態によれば、診断システム(10)に動作可能に結合される受動的重力駆動処置システム(200)は、均質化リザーバ(201)と、ラジカル生成リザーバ(204)と、ラジカルジェネレータ(216)と、第1の処分ユニット(208)とを備えることができる。いくつかの実施形態において、均質化リザーバ(201)は、診断システム(10)に流体接続することができる。均質化リザーバ(201)は、ラジカル開始剤、および、所与の流速において診断システム(10)を出る廃棄物流を受け入れることができる。廃棄物流は、1つまたは複数の標的化合物を含有する水性成分を含む流体成分のセットを含み得る。均質化リザーバ(201)内での各流体成分の滞留時間は、流体成分のセットの均一な混合を助長して、均質化リザーバの第1の出口(211)においてまたは第1の出口付近で均質な標的排出物を形成するのに十分であり得る。滞留時間は、所与の流速、および、均質化リザーバ(201)の高さ、断面積、および容積など、均質化リザーバ(201)の寸法の関数であり得る。
【0031】
標的排出物は、均質化リザーバ(201)からチャネル(202)を介してラジカル生成リザーバ(204)へと送ることができる。いくつかの実施形態において、均質化リザーバ(201)からラジカル生成リザーバ(204)への標的排出物の流れは、重力によって容易にされる。ラジカル生成リザーバ(204)に結合されるラジカルジェネレータ(216)は、標的排出物がラジカル生成リザーバ(204)内に配置されている間に標的排出物を照射し、上記標的化合物を分解する促進酸化処理(AOP)を助長するように構成することができる。いくつかの実施形態において、ラジカル開始剤が、ラジカル開始剤がラジカルジェネレータ(216)に暴露されるときに、上記AOPを加速するのに有効であり得、したがって、標的化合物の検出可能な濃度が低減し、標的排出物が処置済み排出物になる。第1の処分ユニット(208)は、ラジカル生成リザーバの廃棄物出口(214)から出る処置済み排出物を受け入れるために、ラジカル生成リザーバに結合することができる。
【0032】
他の実施形態において、流体成分のセットは、油成分をさらに含み得る。均質化リザーバ(201)内にあるとき、油成分は、浮力の結果として水性成分の上に上昇し、浮く。油成分は、均質化リザーバ(201)の廃油出口(212)から排出することによって、標的排出物から分離して回収することができる。システム(200)は、排出された油成分を回収するための、廃油出口(212)に結合されている第2の処分ユニット(209)をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、油成分の排出は、重力によって容易にされる。
【0033】
いくつかの実施形態において、均質化リザーバ(201)内の水性成分と油成分との間の分離線(219)は、水性成分の密度ρ
wおよび油成分の密度ρ
wに基づいて算出することができる。この線は、均質化リザーバ(201)に対する廃棄物出口(214)の配置およびラジカル生成リザーバ(204)の配置(高さ)を決定するために使用することができる。
図2に示すように、分離線と廃油出口(212)の最上位置との間の第1の高さh
0が、廃油出口(212)の最上位置とラジカル生成リザーバ(204)の廃棄物出口(214)の最上位置との間の第2の高さΔhを決定することができる。いくつかの実施形態において、Δhは以下のように算出される。
この式は、廃油出口(212)に対する廃棄物出口(214)の位置を決定する。いくつかの実施形態において、Δhは、約0.5~1.5インチに及び得る。
【0034】
さらに別の実施形態によれば、システム(200)は、1つまたは複数の標的化合物を含有する水性成分を有する流体成分のセットを含む廃棄物流を処置するための方法において利用することができる。いくつかの実施形態において、方法は、診断システム(10)に動作可能に結合される受動的重力駆動処置システム(200)を提供することと、ラジカル開始剤を提供することと、均質化リザーバ(201)内に、ラジカル開始剤および所与の流速において診断システム(10)を出る廃棄物流を導入することとを含むことができる。いくつかの実施形態において、均質化リザーバ(201)内での各流体成分の滞留時間は、流体成分のセットの均一な混合を助長して、均質化リザーバの第1の出口(211)においてまたは第1の出口付近で均質な標的排出物を形成するのに十分であり得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、方法は、標的排出物を均質化リザーバ(201)からチャネル(202)を介してラジカル生成リザーバ(204)内へと導入することと、標的排出物がラジカル生成リザーバ(204)内に配置されている間に、ラジカルジェネレータ(216)を介して、標的排出物を照射することとをさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、均質化リザーバ(201)からラジカル生成リザーバ(204)への標的排出物の流れは、重力によって容易にされる。いくつかの実施形態において、標的排出物を照射することによって、上記標的化合物を分解する促進酸化処理(AOP)が引き起こされる。ラジカル開始剤が、ラジカル開始剤がラジカルジェネレータ(216)に暴露されるときに、上記AOPをさらに加速することができ、したがって、標的化合物の検出可能な濃度が低減し、標的排出物が処置済み排出物になる。またさらなる実施形態において、方法は、ラジカル生成リザーバ(204)の廃棄物出口(214)から出る処置済み排出物を第1の処分ユニット(208)内へと排出することを含むことができる。
【0036】
他の実施形態において、流体成分のセットは、油成分をさらに含み得る。油成分が均質化リザーバ(201)内にあるとき、油成分は、浮力の結果として水性成分の上に上昇し、浮き得る。したがって、方法はまた、均質化リザーバの廃油出口(212)から出る油成分を第2の処分ユニット(209)内へと排出することをさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、油成分の排出は、重力によって容易にすることができる。
【0037】
また他の実施形態によれば、受動的重力駆動処置システム(200)は、診断システム(10)に流体接続される均質化リザーバ(201)と、ラジカル生成リザーバ(204)と、ラジカルジェネレータ(216)とを備えることができる。均質化リザーバ(201)は、少なくとも1つの標的化合物および1つまたは複数の流体成分を含む廃棄物流を受け入れるように構成することができる。いくつかの実施形態において、均質化リザーバ(201)内での各流体成分の滞留時間は、i)水性排出物を形成するための水性流体成分の均一な混合、ii)非水性排出物を形成するための非水性流体成分の均一な混合、またはiii)水性排出物からの非水性排出物の分離のうちの1つまたは複数を助長するのに十分であることができる。
【0038】
例えば、1つの実施形態において、流体成分がすべて非水性である場合、滞留時間は、非水性排出物を形成するための非水性流体成分の均一な混合を助長するのに十分である必要がある。別の実施形態において、流体成分がすべて水性である場合、滞留時間は、水性排出物を形成するための水性流体成分の均一な混合を助長するのに十分である必要がある。また別の実施形態において、流体成分が非水性流体成分と水性流体成分との組み合わせである場合、滞留時間は、非水性排出物を形成するための非水性流体成分の均一な混合、水性排出物を形成するための水性流体成分の均一な混合、および、水性排出物からの非水性排出物の分離を助長するのに十分である必要がある。
【0039】
いくつかの実施形態において、滞留時間は、1つまたは複数の流体成分の所与の流速および均質化リザーバ(201)の寸法の関数であり得る。均質化リザーバ(201)の寸法は、均質化リザーバ(201)の高さ、断面積、および容積を含み得る。
【0040】
いくつかの実施形態において、標的化合物は、非水性排出物または水性排出物のうちのいずれかに配置され得、標的化合物を含有する上記排出物は以下、標的排出物として参照される。いくつかの実施形態において、ラジカル生成リザーバ(204)は、均質化リザーバ(201)から、リザーバを流体接続しているチャネル(202)を介して標的排出物を受け入れる。重力が、均質化リザーバ(201)からラジカル生成リザーバ(204)への標的排出物の流れを容易にすることができる。他の実施形態において、ラジカル生成リザーバ(204)に結合されるラジカルジェネレータ(216)は、標的排出物がラジカル生成リザーバ(204)内に配置されている間に標的排出物を照射し、上記標的化合物を分解する促進酸化処理(AOP)を助長することができ、結果、標的化合物の検出可能な濃度が低減し、標的排出物が処置済み排出物になる。
【0041】
いくつかの実施形態において、システム(200)は、廃棄物流とともにまたは別個に均質化リザーバ(201)内へと添加されるラジカル開始剤をさらに含むことができる。他の実施形態において、ラジカル開始剤は標的排出物中に配置することができ、結果、ラジカル開始剤は、ラジカル開始剤がラジカルジェネレータに暴露されると、AOPを加速することができる。
【0042】
他の実施形態において、システム(200)は、処置済み排出物を受け入れるために、ラジカル生成リザーバの廃棄物出口(214)に流体結合されている第1の処分ユニット(208)をさらに備えることができる。また他の実施形態において、システム(200)は、均質化リザーバ(201)から出る、標的化合物を有しない排出物を受け入れるために、均質化リザーバの廃棄物出口(212)に流体結合されている第2の処分ユニット(209)をさらに備えることができる。いくつかの実施形態において、標的化合物を有しない排出物は、重力によって助長される排出によって、均質化リザーバ(201)を出ることができる。
【0043】
さらなる実施形態によれば、システム(200)は、少なくとも1つの標的化合物および1つまたは複数の流体成分を含む廃棄物流を処置するための方法において利用することができる。方法は、診断システム(10)に動作可能に結合される受動的重力駆動処置システム(200)を提供することと、診断システム(10)からの廃棄物流を均質化リザーバ(201)内へと導入することとを含むことができる。いくつかの実施形態において、均質化リザーバ(201)内での各流体成分の滞留時間は、i)水性排出物を形成するための水性流体成分の均一な混合、ii)非水性排出物を形成するための非水性流体成分の均一な混合、またはiii)水性排出物からの非水性排出物の分離のうちの1つまたは複数を助長するのに十分である。滞留時間は、1つまたは複数の流体成分の所与の流速、および、均質化リザーバ(201)の高さ、断面積、および容積など、均質化リザーバ(201)の寸法の関数であり得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、標的化合物は、非水性排出物または水性排出物のうちのいずれかに配置され、標的化合物を含有する上記排出物は以下、標的排出物として参照される。方法は、標的排出物を、チャネル(202)を介してラジカル生成リザーバ(204)内へと導入することと、標的排出物がラジカル生成リザーバ(204)内に配置されている間に、ラジカルジェネレータ(216)を介して、標的排出物を照射することとによって継続する。いくつかの実施形態において、重力が、均質化リザーバ(201)からラジカル生成リザーバ(204)への標的排出物の流れを容易にすることができる。他の実施形態において、標的排出物が照射される結果として、上記標的化合物を分解する促進酸化処理(AOP)を行うことができ、結果、標的化合物の検出可能な濃度が低減し、標的排出物が処置済み排出物になる。
【0045】
また他の実施形態において、方法は、ラジカル開始剤を均質化リザーバ(201)内へと導入することをさらに含むことができる。ラジカル開始剤は、標的排出物中に配置して、ラジカル生成リザーバ(204)内へと導入することができ、ラジカル生成リザーバにおいて、ラジカル開始剤は、ラジカル開始剤がラジカルジェネレータ(216)に暴露されると、AOPを加速することができる。
【0046】
さらなる実施形態において、方法は、ラジカル生成リザーバの廃棄物出口(214)から出る処置済み排出物を第1の処分ユニット(208)内へと排出することを含むことができる。またさらなる実施形態において、方法は、均質化リザーバの廃棄物出口(212)から出る標的化合物を有しない排出物を第2の処分ユニット(209)内へと排出することを含むことができる。
【0047】
上述したシステム(200)および方法によれば、当業者は、水性流体成分の組成が均質化リザーバの長さに沿って、特に、流れが受け入れられている入口の付近で変化し得ることを理解するであろう。しかしながら、均質化リザーバ内での水性流体成分の滞留時間は、均質化リザーバの第1の出口(211)においてまたは第1の出口の近傍領域において平衡が達成されるような均一な混合を助長するのに十分であり得る。本明細書において使用される場合、「均一な混合」という語句は、均質な溶液を提供する混合を指す。当業者は、流速、水性流体の成分の拡散係数、およびリザーバの寸法を使用することなどによって、流体流の原理および動態に基づいて、リザーバ内のいずれのロケーションにおいて均一な混合が達成されるかを決定することができる。いくつかの実施形態において、均一な混合のための滞留時間は、20分から120分までに及び得る。1つの実施形態において、均一な混合は、第1の出口(211)においてまたは第1の出口の付近で行われ得る。別の実施形態において、均一な混合は、第1の出口(211)の付近の領域において行われ得る。また別の実施形態において、均一な混合は、均質化リザーバの入口の付近の領域において行われ得る。さらなる実施形態において、流体成分が複数の層に分離する場合、均一な混合は、分離線の付近の領域において行われ得る。非限定的な実施形態において、出口において、かつ、リザーバの様々な高さに沿って水性流体成分の組成を試験することによって、水性流体成分が均一に混合されていることを決定することが可能である。
【0048】
前述したシステム(200)および方法と一致して、標的化合物の一例は、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)である。いくつかの実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、DABを中和するか、または、地方条例に準拠するようにDABの濃度を大幅に低減するのに有効であり得る。例えば、本発明は、残留DABの最大濃度が10ppbから130ppbまでに及ぶように、DABを中和することが可能である。他の実施形態において、流体成分は、バイオフィルム、または、部分的に乾燥したスラッジをさらに含む場合がある。
【0049】
本明細書において記載されているシステム(200)および方法の実施形態と一致して、ラジカル開始剤は、UV過酸化物光開始剤、熱過酸化物開始剤、アゾ熱/光分解開始剤、窒素酸化物ラジカル開始剤、または有機光増感剤であってもよい。いくつかの実施形態において、ラジカル開始剤は、単一の開始剤または複数の開始剤を含んでもよい。他の実施形態において、TiO2、SnO2、ZnO、Fe2O3、CdSなどのような、無機半導体ナノ材料がまた、ラジカル開始剤として使用されてもよい。例えば、無機材料は、単独でまたは別の開始剤と組み合わせて使用されてもよい。これらの無機材料は、ラジカルジェネレータの一部分を(すなわち、無機半導体コーティングを形成するために)コーティングすることができる。いくつかの実施形態において、ラジカル開始剤は、水性成分の標的化合物を酸化するために必ずしも必要ではなく、ラジカル開始剤の機能は、破壊的なAOPを加速することである。
【0050】
1つの実施形態において、ラジカル開始剤は、診断システム(10)を出る廃棄物流の成分である。ラジカル開始剤は必ずしも廃棄物流の成分ではないが、ラジカル開始剤は、均質化リザーバ(201)に入る前に廃棄物流中へと導入されてもよい。代替的な実施形態において、ラジカル開始剤は、廃棄物流とは別個の流れにおいて均質化リザーバ(201)内へと導入される。この場合、ラジカル開始剤は、廃棄物流が均質化リザーバ(201)に入る前に導入されてもよい。
【0051】
追加の実施形態において、本明細書に記載されているシステム(200)は、均質化リザーバ(201)の基部に配置されている排出弁(203)をさらに備えることができる。
図4に示すように、排出弁は、例えば、メンテナンス中にシステムを効果的にパージしまたは空にするために使用することができる。
【0052】
図5を参照すると、さらなる実施形態において、システム(200)のいずれか1つは、均質化リザーバ(201)内に配置される油堰(230)と、ラジカル生成リザーバ(204)内に配置される水堰(232)とを有することができる。システム(200)はまた、水堰(232)に対する油堰(230)の位置を同じ高さにしまたは維持するための相対高さ確認ツール(240)を有することもできる。
【0053】
本発明の先の実施形態と一致して、ラジカルジェネレータ(216)は、UV照射源を含むことができる。UV照射源の非限定例としては、水銀灯、ガス放電/重水素、メタルハライドアーク、タングステン-ハロゲン白熱灯、発光ダイオード、レーザ、プラズマ極紫外線源、または調節可能真空UV源が挙げられる。いくつかの実施形態において、UV照射源は、1W以上の電力範囲を有することができる。例えば、電力範囲は、少なくとも約5W、または少なくとも10W、または少なくとも20W、または少なくとも30W、または少なくとも40W、または少なくとも50Wであってもよい。いくつかの実施形態において、UV照射源は、約10W、18W、または50Wであってもよい。
【0054】
他の実施形態において、ラジカルジェネレータ(216)は、1つまたは複数のUV照射源を含むことができる。いくつかの実施形態において、UV照射源は、UVライトアレイのように、互いに並列または直列接続して、隣接して設置することができる。例えば、ラジカルジェネレータ(216)は、並列または直列に接続された2~4個のUV照射源を含んでもよい。
【0055】
図7および
図8を参照すると、いくつかの実施形態において、ラジカルジェネレータ(216)は、標的排出物がラジカルジェネレータ(216)に接触している直列流水式UV照射システムを形成するように、ラジカル生成リザーバ(204)の内部に配置することができる。いくつかの実施形態において、ラジカルジェネレータはまた、UV照射源を包囲する、石英管のような保護管をも備えることができる。この直列流水式UV照射システムにおいて、標的排出物は、ラジカル生成リザーバ(204)内にある間に、能動的に混合されるかまたはドウェル混合される。代替的に、標的排出物は、ラジカル生成リザーバ(204)内にある間に混合されなくてもよい。
【0056】
図9A~
図9Cを参照すると、代替の実施形態において、ラジカルジェネレータ(216)は、トップダウンUV照射システムを形成するように、ラジカル生成リザーバ(204)から上方に距離をおいて位置決めされ、標的排出物の照射は、ラジカルジェネレータ(216)に直に接触せずに実施される。
【0057】
先の実施形態と一致して、排出物を照射するUV光の量が所定の閾値を上回ることを保証するために、フィードバック機構を、ラジカルジェネレータ(216)に動作可能に結合することができる。1つの実施形態において、フィードバック機構は、標的排出物を照射するUV光の量を測定するためのUVセンサ(210)を含むことができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、
図25および
図26Aに示すように、粒子フィルタが、任意選択的に、ラジカル生成リザーバの廃棄物出口(214)に接続されてもよい。粒子フィルタ(115)は、標的排出物を処置する結果として形成される、ポリマー粒子のような沈殿物を回収するのに有効であり得る。他の実施形態において、システム(200)は、流れの流速のプライミング制御を容易にするための通気孔を有することができる。例えば、均質化リザーバ(201)および/またはラジカル生成リザーバ(204)は、通気手段を有することができる。
【0059】
さらなる実施形態において、
図26Bに示されているように、均質化リザーバ(201)は、任意選択的に、非水性流体成分または油成分を合体させるために、内部に配置されたフィルタを有してもよい。フィルタは、フィルタ気孔率が、油成分がフィルタを通じて流れることを防止しながら水性成分がフィルタを通じて流れることを可能にするように選択することができる。例えば、フィルタは、疎水性合体フィルタであってもよい。フィルタはまた、チャネル(202)への水性成分の流速を効果的に制御することもできる。
【0060】
実施例
以下は、本発明の非限定的な実施例である。当該実施例は、本発明を実践したところを明示する目的で提供されており、本発明を限定するようには決して意図されていないことを理解されたい。等価形態または置換形態は、本発明の範囲内である。
【0061】
システム寸法
実施形態1 液体カバースリップ(LCS)は、0.8の比重を有する。Δh=0.5インチについて、油層の高さであるh
0は、式
を使用して算出され、h
0=2.5インチ、すなわち63.5mmとなっている。
【0062】
実施形態2
図2を参照すると、均質化リザーバ(201)は、4,400mm
2の内部断面積、および、約600mmから1000mmまでに及ぶ高さを有する円筒カラムとすることができる。ラジカル生成リザーバ(204)は、内部に同軸に配置されている管状UVバルブを有する円筒カラムとすることができる。管状UVバルブの断面積を除いて、ラジカル生成リザーバ(204)の残りの内部断面積は、約2,330mm
2である。ラジカル生成リザーバ(204)の高さは少なくとも300mmであり、うち270mmが可動長である。Δh=0.5インチを所与として、油層のh
0は約63.5mmである。チャネル(202)は約283mm
2の断面積および約0.15Lの容量を有する。
【0063】
廃棄物流は、約50ml/分の平均流速において円筒カラムに入る。水性層の高さは約500mmであり、水性層の下向きの速度は約10mm/分である。したがって、水性層がカラムを下る移動時間は約50分であり、これによって、水性流体成分が、少なくともカラムの流体出口において、標的排出物を形成するために均一に混合されることを保証するのに十分な滞留時間がもたらされる。標的排出物は、約1.5分内でチャネル(202)を通じて流れる。次いで、標的排出物は、約21mm/分の上向き速度においてラジカル生成リザーバ(204)を通じて流れ、したがって、照射のためのラジカル生成リザーバ(204)を通じた標的排出物の移動時間は約12.8分である。カラム、チャネル、およびラジカル生成リザーバ(204)内の総流体容積は約3Lである。
【0064】
実施形態3 実施形態2と同じシステムおよび寸法を所与として、廃棄物流は、約23ml/分の平均流速において円筒カラムに入る。水性層の高さは約500mmであり、水性層の下向きの速度は約5mm/分である。したがって、水性層がカラムを下る移動時間は約100分であり、これによって、水性流体成分が、少なくともカラムの流体出口において、標的排出物を形成するために均一に混合されることを保証するのに十分な滞留時間がもたらされる。標的排出物は、約3分内でチャネル(202)を通じて流れる。次いで、標的排出物は、約10mm/分の上向き速度においてラジカル生成リザーバ(204)を通じて流れ、したがって、照射のためのラジカル生成リザーバ(204)を通じた標的排出物の移動時間は約27分である。カラム、チャネル、およびラジカル生成リザーバ(204)内の総流体容積は約3Lである。
【0065】
本発明は、前述のシステム寸法、流体速度、および滞留時間に限定されない。いくつかの実施形態において、上記寸法は、特定の自動システム向けに誂えることができる。
【0066】
実験
DABを破壊するための、ベンチマークISH/ISH自動機器の廃棄物におけるAOP活性に影響を与える可能性がある様々なレバーを調べるために、調査を実施した。これらのレバーは、蒸留脱イオン水、反応緩衝液およびベンチマークDAB IHC廃棄物マトリクス中で試験した。これらのレバーは、流水式UV光源試験台デバイス(すなわち、直列UV殺菌水製造装置)、トップダウン非接触照射源(tRED試験台)、および、水/油分離とDAB水性廃棄物UV照射とを組み合わせたtRED試験台内で試験した。
【0067】
油分離原理
BenchMark Ultra機器をスライド染色装置として使用して、実験データを得た。BenchMark Ultra機器上での典型的な液体カバースリップ(LCS)と水との比はおよそ20/80%であり、LCS(油)は典型的には蒸発損失を軽減するために高温段階に使用される。ランダムアクセス処理に起因して、LCSは、組み合わせ廃棄物流中で任意の時点において存在し得る。浮力(
図2)と、任意選択のろ過/合体(
図26B)との2つの分離原理が、LCSを水性廃棄物から分離するために行使される。これらの分離原理は両方とも、重力によって駆動される流れのみに基づき、いかなる圧送も必要としない。
【0068】
主な分離原理は、直立した管/チャンバ内の浮力に基づく。典型的なLCS(油)密度は0.79~0.81g/cm3であり、したがって、LCSは、特に低フローシナリオにおいて、経時的に水性層の表面の上まで浮く。浮力分離が適切に作用するためには、完全充填システムが必要とされる。典型的には、完全充填システムは、システム全体に水性流体を水準線まで充填することによって達成される。部分充填システムの場合、滴受けから放出されるLCSが水路内へと流れ込み、UVCランプを部分的にコーティングし得、経時的に劣化層が形成される。したがって、油分離層と水性分離層との間に高さ調整が必要な場合がある。この調整は、LCSと水との間の適切な層分離が、均質化チャンバ内で行われ、密度差(LCS≒0.8対水≒1)を補償することを可能にするために必要とされる。
【0069】
補助的な分離原理は、水性媒体を通過させながら油(例えば、LCS)を拒絶する、細孔径が5/10/15マイクロメートルのナイロン巻きフィルタ(Universal Filter Italiana、製品番号(「p/n」)UN5R5P、UN10R5P、UN15R5P)のような、親水性フィルタに基づく。親水性フィルタは合体媒体として作用し、より小さい油滴がフィルタの繊維によって吸収され、凝集してより大きい液滴になることが可能になる。開放媒体気孔率(5マイクロメートル)および親水性は、水がフィルタを(半径方向において外側から内側へ)通過することを可能にし、油がフィルタの外側の半径方向流体スリーブ内に留まることを可能にする。
【0070】
親水性/合体フィルタが巻きナイロンから構築されることに起因して、フィルタの表面積(約100cm2)は相当に大きく、低流速(約50ml/分)およびフィルタ媒体の多層気孔率に起因して、油に暴露することによる表面の付着物が低減する(同じフィルタ媒体をLCSと水との混合物に暴露して、4ヶ月以上均等に使用することによって実証した)。
【0071】
高速液体クロマトグラフィ(「HPLC」)分析方法
Milli-Q(登録商標)脱イオン(「DDI」)水、ベンチマーク反応緩衝液およびベンチマークIHC廃棄物マトリクス中のDAB濃度変化を監視するために、HPLC分析を使用してDAB分解速度を判定した。HPLC分析は、フォトダイオードアレイ(「PDA」)検出を備えたWaters Acquity超高速液体クロマトグラフィ(「UPLC」)機器上で実施した。標準的な逆相クロマトグラフィを、ベンチマーク反応緩衝液および蒸留脱イオン水マトリクスにおけるUPLC分析に使用した。イオン対化を用いた逆相HPLCクロマトグラフィを、ベンチマーク廃棄物におけるDAB分析に使用した。DAB試料はろ過または希釈せずに分析した。
【0072】
A.逆相UPLC分析方法
Waters ACQUITY UPLC Bridged Ethylene Hybrid(“BEH”)C18 Column 1x50mm(1.7μ)UPLCカラムを使用した。溶離液は、A:液体クロマトグラフィ質量分析(「LCMS」)の水中0.1%ギ酸、および、B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸であった。流速は0.2mL/分、カラム温度は40℃、注入量は8μLであった。PDA検出波長は210~499nmであった。(2.4nm分解能かつ20点/秒)。DABおよび2-ヒドロキシピリジン(2-HOPyr)の予測保持時間はそれぞれ0.35分および0.54分であった。代表的なHPLCスペクトル(274nm)が
図11A~
図11Cに示されている。勾配プロファイルを表1に示す。
表1:勾配プロファイル
【0073】
B.イオン対化を用いた逆相HPLC
SIELC PrimeSep S column 2.1x100mm(5μ)および2.1x10mm guard column HPLCカラムを使用した。溶離液は、50mMギ酸アンモニウム(pH=4.0)中の40%アセトニトリルであった。流速は0.2mL/分、勾配プロファイルは定組成溶離、カラム温度は30°C、注入量は8μLであった。PDA検出波長は210~499nmであった。(2.4nm分解能かつ20点/秒)。DABおよび2-HOPyrの(ベンチマーク廃棄物中の)予測保持時間はそれぞれ2.56分および1.64分であった。代表的なHPLCスペクトル(310nm)が
図12A~
図12Cに示されている。
【0074】
UV照射試験台
A.流水式UV照射試験台
複数のUV照射流水式システムを使用して、UVによって助長されるDAB酸化を調べた。事前設定のランプワット数およびUV照射チャンバ形状を有する市販の直列UV殺菌水製造装置、すなわち、Aquatop 10W直列UV滅菌器(Aquatop製品番号IL10-UV)を使用して、211ガロン/時までの流速で水を処置した。滅菌器は、独立した電源の支援を受けて流体流速を制御する外部可変速度マイクロポンプギアポンプを特徴とするものであった。能動的混合、ドウェル混合、または混合なしで試料を照射した。混合ポンプを用いずに使用された直列UV滅菌器については、試料採取の前に、一様な試料を作成するために転倒混和を実施した。複数のUV滅菌器UVランプワット数を調べた(10、18および55W)。排出物暴露時間を増大させるために、複数のUV照射源が、直列接続で互いに隣接して設置され得る。
【0075】
B.トップダウンUV照射試験台
図9A~
図9Cに示すように、液体がUV照射源(「UVランプ光」としても参照される)に直に接触しないトップダウンUV照射システムを調査するための試験台が準備された。この試験台では、試料暴露時間を制御するために下方の金属トレー内の所定の経路を通じて液体が蛇行している間に、2つの18Wランプを使用して、上方から流体マトリクスを照射した。UV光源は、アレイの電力を増大させるために互い(例えばUVライトアレイなど)に対して並列接続で隣接して設置され得る。代替的に、UV光源は、暴露時間を増大させるために直列に設置されてもよい。進行経路を有しない第2の底面照射プラスチック容器を準備した。UV光は液体媒体を通るときに吸収され、ランプから最も遠い水性層が受けるUV照射はより少なくなる。この試験台を使用して、液層厚および廃棄物マトリクス不純物(すなわち、LCS、DAB酸化生成物など)がDAB UV分解速度に及ぼす影響を調べた。
【0076】
C.UVランプ特性化
コストが低く、放出波長が離散的であることから、水銀灯を一次UV光源として使用した。より連続的な放出スペクトルを有するランプとしては、キセノンアークランプ、重水素アークランプ、水銀-キセノンアークランプ、メタルハライドアークランプ、および、タングステン-ハロゲン白熱灯が挙げられる。UV LED、UVレーザなどのような他のUV光源が利用可能であり、同様の影響をもたらし得る。直列UV滅菌器のAquatop 10W UVランプ光源を、蛍光検出器によって光源の放出スペクトルを読み取ることによって特性化した。蛍光検出器に対して光を放出するための小孔を含有するスズ箔でランプを包み込んだ。関連するUV光波長およびそれらの波長の光子エネルギーのリストを、下記において表2に見ることができる。253nmにおけるUVC光が、より高いエネルギーをもたらすため、DAB酸化のほとんどを実施することができる。
表2:関連するUV光波長およびそれらの波長の光子エネルギー
【0077】
DAB UV酸化実験結果
A.試料混合の影響
マイクロポンプユニットを使用した様々な機械的混合によって、Aquatop 10W直列UV滅菌器(Aquatop製品番号IL10-UV)において最初のDAB UV酸化実験を実施した。蒸留脱イオン水中のDAB試料(68.1mg/L)を、3%過酸化水素をラジカル開始剤として用いて(およそ225mLのDAB試料あたり1mL)処置した。試料採取の前に一様な試料を作成するために、一定の混合または迅速なドウェル混合のいずれかで、UV光によって試料を照射した(10分)。反応混合物を、10分間を通じて2分ごとに、UPLCによって分析した。
図13Aに示すように、DAB酸化速度は機械的混合を通じて加速された。混合は、DABを酸化する均等過酸化水素UV酸化生成物(HO)の拡散を補助した。
【0078】
UPLC上で10℃において保管している間に、蒸留脱イオン水中でDAB酸化を継続した。UV照射を受けたのが2分間のみであっても、一晩保管した後に、試料中でUPLC分析によってDABモノマーは検出されなかった。その上、試料をUV照射中に能動的に混合したとき(
図13B~
図13C)、UV光および過酸化水素によってもたらされるAOPは、蒸留脱イオン水からのDABを効果的に重合した。能動機械的混合は、酸化DABの分子間重合を増大させ、これによって、溶液から容易に沈殿するより大きいポリマーが形成された。DABポリマーの沈殿は、混合試料について初日には観察されなかった。ドウェル混合試料において、一晩保管した後に沈殿は観察されなかった。完全なDAB沈殿が、すべてのDAB副産物がマトリクスからろ過され得る条件を助長することになるため、有利であることになる。
【0079】
DAB試料を、一切混合せずに蒸留脱イオン水中で照射したとき、DAB UV酸化速度はさらにより減速した。およそ34%のDABモノマーが、15分の静的UV照射の後に検出された。これは、ドウェル混合を伴う10分間のUV照射において観察されたDABモノマー濃度とほぼ同じであった。最終的には、試料採取の前に液体を均質化するために、機械的ドウェル混合の代わりに、直列UV滅菌器を単純に2回転倒させた。結果として、同様のDAB UV酸化速度が観察された。データは示さない。曝気は、ベンチマークIHC廃棄物マトリクス中では十分に許容されなかった。曝気されると、ベンチマークIHC廃棄物界面活性剤が、DAB試料に気泡/発泡を生じさせ、DAB分解が複雑になった。
【0080】
B.過酸化水素の影響
様々な過酸化水素ラジカル開始剤濃度を用いて、上記のようにAquatop 10W直列UV滅菌器においてDAB UV酸化実験を実施した。蒸留脱イオン水中のDAB試料(68.1mg/L)を、3%過酸化水素(およそ225mLのDAB試料あたり1mL)の存在下または非存在下で照射した。試料はUV光によって(60~90分)照射した。試料採取の前にマトリクスを一様に混合するために、エアポケットを使用してAquatop直列滅菌器を転倒させた(2回)。反応混合物を、10分ごとにUPLCによって分析した。
【0081】
UV照射は、過酸化水素ラジカル開始剤の不在下でDAB酸化を有効に助長したが、DAB酸化速度は、過酸化水素を添加することによって加速した(
図14A)。DAB UV酸化反応は、より迅速にHPLC分析検出限界に達した。過酸化水素の存在下での50分間のUV照射後に、DABモノマーは検出されなかった。およそ10%のDABモノマーが、過酸化水素の不在下での60分のUV照射の後に依然として検出可能であった。過酸化水素の不在下であっても、UPLC上で10℃において保管している間に、蒸留脱イオン水中でDAB分解は依然として継続した。過酸化水素ラジカル開始剤とは無関係に、2分間のみのUV照射の後でさえ、一晩保管した試料におけるUPLC分析によってDABモノマーは検出されなかった。試料をUV照射によって30分以上処置したとき(
図14B~
図14C)、UV光および過酸化水素によってもたらされるAOPは、蒸留脱イオン水からのDABを効果的に重合した。この時間は能動的混合(
図13B~
図13C)によってもたらされる6分の期間よりも大幅に長い。過酸化水素の不在下で一晩保管した後に、DABポリマー沈殿物は観察されなかった。
【0082】
C.DAB試料マトリクスの影響
様々な試料マトリクス(すなわち、蒸留脱イオン水対ベンチマークIHC廃棄物)を用いて、上記のようにAquatop 10W直列UV滅菌器においてDAB UV酸化実験を実施した。マトリクス中のDAB試料(蒸留脱イオン水中の68.1mg/L DABおよびベンチマークIHC廃棄物中の136.2mg/L)を、3%過酸化水素の非存在下で照射した。TSA増幅IHC廃棄物を含有する新鮮なベンチマークUltra OptiView DABを、水性層が重力によってLCSの大部分から分離されるこの実験に使用した。ベンチマークIHC廃棄物は、依然としていくらかのLCSを含有していた。このLCSは、ベンチマークIHC廃棄物界面活性剤によって微細に分散される。両方の試料をUV光によって75分にわたって照射した。試料採取の前にマトリクスを一様に混合するために、エアポケットを使用してAquatop直列滅菌器を転倒させた(2回)。反応混合物を、10分ごとにUPLCによって分析した。
【0083】
UV照射は、両方のマトリクスのDAB酸化を有効に誘発したが、DAB酸化速度はベンチマークIHC廃棄物(
図15)では遅かった。蒸留脱イオン水中では60分のUV照射後におよそ10%のDABモノマーが依然として検出可能であり、一方、ベンチマーク廃棄物中では60分のUV照射後におよそ21%のDABモノマーが依然として検出可能であった。廃棄物マトリクスは蒸留脱イオン水よりも多くのUV光を吸収するため、水中のDAB UV酸化速度は推定上、ベンチマーク廃棄物中でより遅かった。
【0084】
TSA増幅IHC廃棄物を含有するベンチマークUltra OptiView DAB中のDAB試料(136.2mg/L)を、3%過酸化水素の存在下または非存在下で照射した。ベンチマークIHC廃棄物中でのDAB UV酸化速度は、水中よりも遅く、そのため、過酸化水素濃度は、ベンチマーク廃棄物中では250mLのDAB試料あたり3mLの過酸化水素に増大した。UV照射は、過酸化水素濃度を増大したベンチマーク廃棄物中でDAB酸化を有効に誘発した(
図16)。DABモノマーは、30分以内で廃棄物中でHPLC検出限界以下であった。
【0085】
ベンチマークIHC廃棄物中の3倍の過酸化水素濃度によるDAB UV酸化速度が、蒸留脱イオン水中の1倍の過酸化水素によって観察される速度と同様の速度であることが実証された(
図17)。これらのDAB試料は、TSA増幅IHC HRP試薬を含有するOptiView DABによって存在する残存活性に起因して、推定上、TSA増幅IHC廃棄物を含有するOptiView DAB中では、蒸留脱イオン水中よりも安定性がはるかに低いことを実証した。この安定性問題は、過酸化水素がIHC廃棄物に添加されたときはより顕著であった(データは示さない)。
【0086】
D.UVランプワット数の影響
UVランプワット数を様々に変えて、直列UV殺菌水製造装置内でDAB UV酸化実験を実施した。TSA増幅廃棄物を含有するベンチマークUltra OptiView DAB中のDAB試料(136.2mg/L)を、3%過酸化水素(およそ1.5Lの廃棄物あたり20mL)を用いて照射した。試料採取の前にマトリクスを一様に混合するために、エアポケットを使用してAquatop直列滅菌器を転倒させた(2回)。反応混合物を、10分ごとにUPLCによって分析した。DAB UV酸化速度は、UVランプワット数に比例して増大した(
図18)。55Wにおける30分のUV照射の後、DABモノマーは、ベンチマークIHC廃棄物中でDABの検出限界まで低減した。ベンチマークIHC廃棄物中で、DABモノマーがDABの検出限界未満に低減するには、18Wにおいておよそ90分のUV照射が必要であった(およそ1/3のUVランプワット数では3倍長い)。
【0087】
様々な試料マトリクス(すなわち、LCSエマルションの存在下および非存在下でのベンチマークIHC廃棄物)によって、DAB UV酸化実験を、上記のような55W直列UV滅菌器において再び試験した。マトリクス中のDAB試料(廃棄物中の136.2mg/LのDAB)を、3%過酸化水素(およそ1.5Lの廃棄物あたり20mL)を用いて照射した。TSA増幅IHC廃棄物を含有するベンチマークUltra OptiView DABを、この実験に使用した。水性層は、重力によってLCSの大部分から分離され、または、完全に混合され、エマルションとして処置された。両方のDAB試料をUV光によって60分にわたって照射した。試料採取の前にマトリクスを一様に混合するために、エアポケットを使用してAquatop直列滅菌器を転倒させた(2回)。反応混合物を、10分ごとにUPLCによって分析した。
【0088】
UV照射は、両方のマトリクスのDAB酸化を有効に誘発したが、DAB酸化速度は、LCSエマルションを有するベンチマークIHC廃棄物(
図19A)ではわずかに遅かった。55Wにおける30~40分に近いUV照射において、DABモノマーは、両方のベンチマークIHC廃棄物マトリクス中でDABの検出限界まで低減した。ベンチマークIHC廃棄物LCSエマルション中のLCSのほとんどは、直列UV滅菌器内部の水性層から迅速に分離し、これを、滅菌器の底部内の水性層のみと同様に照射した。同様の実験条件下で55W UV直列滅菌器において20~30分照射した後、蒸留脱イオン水中で逆相UPLC分析によってDABモノマーは検出可能でなかった(データは示さない)。
【0089】
55W直列滅菌器ランプによってベンチマークIHC廃棄物中で、より多くの不溶性DAB UV酸化ポリマー生成物が観察された。これは、DAB試料がLCSエマルションを含有するベンチマークIHC廃棄物中でUV酸化されたときにより明白であった。DAB分析試料は、LCSエマルションおよびDAB固体ポリマー沈殿物を除去するために、HPLC分析の前に14Kにおいて2分にわたって遠心分離した。UV酸化反応が進行するにつれて、試料が示す色は漸進的に薄くなっており、これは、重合によって除去されているDABの量を明示している(
図19B)。マイクロキャップチューブによって、室温において一晩保管した後に同じ結果が確認される(
図19C)。これらの試料において、より多くのDABポリマーがLCSおよび過酸化水素の存在下で沈殿した。過酸化物を含有するt=0におけるHPLC試料バイアルは溶液中で依然として酸化DABを示し、一方で、マイクロキャップチューブ内ではすべてのDABが溶液から重合し、溶液中に色は残らなかった。HPLC分析によって、DABモノマーはマイクロキャップチューブ試料内では検出されないことが確認された。
【0090】
E.トップダウンUV照射試験台の試験
マトリックス層厚の影響
試料液がUV光源に直に接触しない36WトップダウンUV照射試験台を使用して、DAB UV照射中のマトリクス層厚の許容性を調査した(
図9A~
図9C)。UV光は液体媒体を通るときに吸収され、ランプから最も遠い水性層が受けるUV照射はより少なくなる。反応緩衝液マトリクス中のDAB試料は、およそ20%(v/v)のLCSを含有する予測廃棄物濃度において調製した。OptiView DAB IHC検出キットDAB色原体、検出過酸化物および阻害剤過酸化物試薬を、ベンチマーク反応緩衝液マトリクスに添加した(250mLあたり143μLの各試薬)。36WトップダウンUV照射試験台底部を、特定のマトリクス層厚(すなわち、10、20または30mm厚)で充填した。DAB試料を、混合せずにUV照射によって処置し、試料を2分~10分ごと、次いで5分ごと、その後、30分を通じて除去した。マトリクス試料を逆相UPLCによって分析した。
【0091】
すべての水性層厚について、2~4分のUV照射後にDABモノマーは検出されなかったが、DABモノマーおよび初期酸化中間体の総曲線下面積はすべて変化している(
図20)。これらの中間体は、層厚が漸増するにつれてより長く観察された。10mm試料マトリクスは、15~20分のUV照射後にDAB中間体(例えば、DAB二量体、三量体など)を示さなかった。20mmマトリクス試料は、25分内で完了し、一方、30mm試料は30分の照射後に依然としてこれらの中間体を示した。
【0092】
トップダウンUV照射に対するLCSエマルションの影響
試料液がUV光源に直に接触しない36WトップダウンUV照射試験台を使用して、トップダウン構成におけるDAB UV照射中にLCSがいかに許容され得るかを調査した。反応緩衝液マトリクス中のDAB試料は、およそ20%(v/v)のLCSを含有するまたは含有しない予測廃棄物濃度において調製した。OptiView DAB IHC検出キットDAB色原体、検出過酸化物および阻害剤過酸化物試薬を、反応緩衝液マトリクスに添加した(250mLあたり143μLの各試薬)。これらの反応緩衝液/LCS混合マトリクスを、LCSを混合しない状態、20回転倒することによって混合して初期気泡LCSが形成された状態、および、激しく混合して初期不透明LCSエマルションを形成した状態で試験した。
【0093】
36WトップダウンUV照射試験台底部を、10mmボリューム層厚で充填した。DAB試料を、混合せずにUV照射によって処置し、試料を2分~10分ごと、次いで5分ごと、その後、30分を通じて除去した。マトリクス試料を逆相UPLCによって分析した。すべての試料マトリクスについて、2~4分のUV照射後にDABモノマーは検出されなかったが、DABモノマーおよび初期酸化DAB中間体(例えば、DAB二量体、三量体など、
図21)の総曲線下面積はすべて変化している。これらのDAB中間体は、不透明白色LCS層が存在するときはより長く溶液中に残った。反応緩衝液のみの試料マトリクスは、4~6分のUV照射後に中間体を示さなかった。透明LCS層状マトリクス試料は、約10~15分のUV照射後に中間体を示さず、一方、他のエマルション試料は、20~25分のUV照射内で完了した。
【0094】
F.フリーラジカル開始剤スクリーニング
UVラジカル開始剤によるDAB分解
様々な過酸化水素濃度を用いて、上記のようにAquatop 10W直列UV滅菌器においてラジカル開始剤スクリーニング実験を実施した。ベンチマーク反応緩衝液中のDAB試料(68.1mg/L)を、ラジカル開始剤の存在下または非存在下で照射した。ラジカル開始剤モル濃度は、過酸化水素によって以前に使用したモル濃度(250mL試料あたりおよそ0.882mmol)に維持した。ラジカル開始剤をDAB試料に添加し、UV光によって30分にわたって照射した。試料採取の前にマトリクスを一様に混合するために、エアポケットを使用してAquatop直列滅菌器を転倒させた(2回)。反応混合物を、10分間を通じて2分ごとに、次いで、その後5分ごとに、UPLCによって分析した。
【0095】
異なるラジカル開始剤クラスを、DAB UV酸化においてスクリーニングした。開始剤は、UV過酸化物光開始剤(過酸化水素および過酢酸)、熱過酸化物開始剤(過酸化ベンゾイル)、アゾ熱/光分解開始剤(アゾビスイソブチロニトリル(AIBN))、ニトロキシドラジカル開始剤(TEMPO)、および有機光増感剤(4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン(BDABP)および4-アミノ-ベンゾフェノン(ABP))を含む。新しいラジカル開始剤を、過硫酸アンモニウム(APS)、迅速に解離して2個の硫酸ラジカル等価物を形成することが分かっているジアニオン酸化剤と比較した。有機ラジカル開始剤は、水中で変化した溶解性を示した。過酸化水素、過酢酸および過硫酸アンモニウムのみが、水中で完全に溶解性であった。半導体ナノ材料(例えば、TiO2、SnO2、ZnO、Fe2O3、CdSなど)も、AOP過程を加速することが分かっている。これらのラジカル開始剤を単独でまたは相乗的に使用して、DAB酸化速度をさらに加速することができる。
【0096】
UV照射は、過酸化水素の不在下でDAB酸化を有効に助長したが、DAB酸化速度は、ベンチマーク反応緩衝液中で過酸化水素によって加速した。過酸化水素の存在下での60分間のUV照射後に、5%未満のDABモノマーが検出された。およそ38%のDABモノマーが、過酸化水素の不在下での60分のUV照射の後に依然として検出可能であった。これらの酸化速度は、蒸留脱イオン水において以前に観察されたもの(
図14Aおよび
図15)よりも遅かった。
【0097】
TEMPOおよびABPは、UV光に暴露されると水中でDAB酸化を阻害すると考えられた(
図22)。HPLC分析は、TEMPOとABPの両方によって、30分のUV暴露後により多くの残留DABモノマーが存在することを示した(表3)。AIBNは、わずかにより多くのDAB損失が観察されて、DAB UV酸化への影響が最小限であったと考えられる(
図23)。BDABP、過酸化ベンゾイルおよび過酢酸はすべて、30分のUV暴露後に溶液中に見られるDABモノマーの量を低減したが、それらの開始剤の影響は、過酸化水素と比較してはるかに低減した。過酢酸はDABを含有する不溶性塩を形成した。不溶性塩は、過酢酸がそのラジカル生成物(メチル/ヒドロキシルラジカルおよびCO
2ガス)にUV分解すると、溶解した。APSは容易にすべてのDABを消費し、APSへの2分の暴露後には、ほぼ95%を超える損失が示された。ベンチマーク反応緩衝液中のいかなるUVラジカル開始剤によっても、溶液からDABポリマーは沈殿しなかった。
表3:ラジカル開始剤を用いたUV照射からの損失したDABの割合
【0098】
熱ラジカル開始剤によるDAB分解
超音波分解は、液体中で音響キャビテーションを形成することができ、気泡の形成、成長および爆縮崩壊ならびに熱生成を引き起こす。超音波分解を使用して、熱ラジカル開始剤を熱的に活性化させ、DAB分解を誘発した。MisonixSonicator 3000超音波液体プロセッサを使用して、熱ラジカル開始剤スクリーニング実験を実施した。ソニケータ電圧変換器およびホーンをマイクロチッププローブに接続した。Misonix Sonicator 3000電力設定を7.5に設定し、30分にわたって30秒ごとにオンおよびオフをサイクルするようにプログラムした。RTDベンチマーク反応緩衝液中のDAB試料(68.1mg/L)を、熱ラジカル開始剤の存在下または非存在下で超音波分解した。ラジカル開始剤モル濃度は、過酸化水素によって以前に使用したモル濃度(25mL試料あたりおよそ0.0882mmol)に維持した。超音波分解によって、試料は効率的に混合した。反応混合物を、30分間を通じて5分ごとに、UPLCによって分析した。
【0099】
ラジカル開始剤を用いないDAB溶液超音波分解は、識別可能なDAB分解を一切示さなかった(
図24)。超音波分解は加熱を引き起こし、15~20分の超音波分解後に、蒸発によってわずかな濃縮を引き起こした。過酸化水素を用いる超音波分解も、実質的なDAB分解を一切示さなかった。熱ラジカル開始剤AIBNを用いる超音波分解は、溶液からDABモノマーを有効に除去した。25分の超音波分解後、UPLC分析によってDABモノマーは検出されなかった。AIBNは、最初、ベンチマーク反応緩衝液中で高可溶性ではなかったが、このラジカル開始剤は超音波分解を受けて溶解し、分解してN
2ガスを放出した。蒸留脱イオン水中での過酸化水素を用いた前出のDAB UV酸化と同様に、暗色DABポリマー生成物が、溶液中に形成し始めた。
【0100】
ベンチマーク反応緩衝液中で過酸化ベンゾイルを用いて、熱ラジカル開始によるDAB分解を試行した。上述したように、ベンチマーク反応緩衝液中での過酸化ベンゾイルの可溶性は非常に低い。超音波分解によって、DABモノマーは溶液から急速に消滅し、5分後には、DABモノマーは検出できなかった。過酸化ベンジルは急速に可溶化し、その後、黄橙色固体としてのDAB安息香酸塩としての、溶液からのDAB沈殿を引き起こしたと考えられる。さらなる超音波分解によって、この塩を完全に分解して暗褐色DAB酸化ポリマーにすることはできなかった。
【0101】
APSを用いたDAB超音波分解は、APSを用いた5分以内の超音波分解ですべてのDABを容易に消費した。APSを用いたUV照射実験とは異なり、APSを用いた超音波分解中に、ベンチマーク反応緩衝液から不溶性DABポリマーが沈殿した。推定上、超音波分解による液体キャビテーションによって引き起こされた混合によって、より大きいDABポリマーが形成した。他のアゾ水溶性熱ラジカル開始剤[2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)および4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)]は、AIBNによってもたらされるような超音波分解によってDAB酸化を促進した。
【0102】
結論
DABを酸化するためのベンチマークIHC廃棄物におけるラジカルジェネレータを使用したAOP活性に影響を与える可能性がある様々なレバーを調べるために、調査を実施した。これらのレバーは、蒸留脱イオン水、ベンチマーク反応緩衝液およびベンチマークDAB IHC廃棄物マトリクス中で試験した。これらのレバーは、ラジカルジェネレータがUV照射源を利用するシステムにおいて試験した。試験台は、流水式UV試験台デバイス、トップダウン非接触UV照射試験台、および、DAB水性IHC廃棄排出物の水/油分離とUV照射とを組み合わせる試験台を含む。
【0103】
試験された複数のレバーがDAB UV酸化速度に影響を与えることが分かった。例えば、いくつかの実施形態において、UVランプ電力(ワット数)、ラジカル開始剤濃度(過酸化水素)、および/または機械的試料混合を増大することによって、より高速のDAB UV酸化動態がもたらされた。場合によっては、より大きいポリマー種が生成された。完全なDAB沈殿が、すべてのDABがろ過によって除去され得る条件を助長し得た。広範なラジカル開始剤がスクリーニングされ、ラジカルジェネレータにおけるDAB分解を助長するのに効果的であることが分かった。これらのラジカル開始剤を単独でまたは相乗的に使用して、より迅速なDAB分解を助長することができた。
【0104】
他の実施形態において、ラジカルジェネレータがUV照射を利用するときに、マトリクス層の厚さが重要な要因であった。DAB UV酸化速度は層厚が増大するとともに減速した。UV光は水を通るときに吸収され、混合しない場合、UVランプから最も遠い水性層の外側部分が受けるUV照射はより少なくなる。試験台が10mm厚よりも大きい水性マトリクス層を使用する場合、機械的混合が必要とされ得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、廃棄物マトリクス不純物(すなわち、LCS、DAB酸化生成物など)は一般的にUVを吸収し、DAB分解速度をより遅くした。UV光吸収は溶液の色または不透明性によって引き起こされ得る。LCSは水性層から迅速に分離し、下側分離層において水性層に対する十分な照射を直に許容したため、直列流水式UV照射試験台内で十分に許容された。他の実施形態において、トップダウンUV照射試験台は、LCSエマルションが提供し得る不透明性に対する許容性が低かった。これらのシステムは、UV照射の前にLCS層を分離することから受益する。
【0106】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、参照されている数±10%を指す。
【0107】
本明細書において記載されているものに加えて、本発明の様々な変更が、上記の説明から当業者には明らかであろう。そのような変更も、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。本出願において引用されている各文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0108】
本発明の好ましい実施形態が図示および記載されているが、添付の特許請求の範囲を超えない変更を、当該実施形態に行うことができることは、当業者には明らかであろう。それゆえ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。特許請求の範囲に記載されている参照符号は例示であり、特許庁による検討を容易にするためのものに過ぎず、決して限定ではない。いくつかの実施形態において、本特許出願において提示されている図面は、角度、寸法比などを含め、原寸に比例して描かれている。いくつかの実施形態において、図面は、代表的なものに過ぎず、特許請求の範囲は、図面の寸法によって限定されない。いくつかの実施形態において、「備えている(comprising)」という語句を使用して本明細書において記載されている本発明の記述は、「~から構成される(consisting of)」ものとして説明され得る実施形態を含み、そのため、「~から構成される」という語句を使用して本発明の1つまたは複数の実施形態を特許請求するための明細書記述要件が満たされている。
【0109】
添付の特許請求の範囲に記載されている参照符号は本特許出願の説明を容易にするためのものに過ぎず、例示的なものであり、特許請求の範囲を、図面において対応する参照符号を有する特定の特徴に限定することは決して意図されていない。
【符号の説明】
【0110】
以下は、本明細書において参照される特定の要素に対応する要素のリストである。
10 診断システム
200 受動的重力駆動処置システム
201 均質化リザーバ
202 チャネル
203 排出弁
204 ラジカル生成リザーバ
208 第1の処分ユニット
209 第2の処分ユニット
210 UVセンサ
211 均質化リザーバの第1の出口
212 廃油出口
213 ラジカル生成リザーバの入口
214 流体廃棄物出口
215 均質化リザーバの基部
216 ラジカルジェネレータ
217 ラジカル生成リザーバの基部
219 水性成分と油成分との間の分離線
220 上層の油排出物
222 下層の標的排出物
230 油堰
232 水堰
240 相対高さ確認ツール