IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三洋電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電池モジュール及びこれを装備する車両 図1
  • 特許-電池モジュール及びこれを装備する車両 図2
  • 特許-電池モジュール及びこれを装備する車両 図3
  • 特許-電池モジュール及びこれを装備する車両 図4
  • 特許-電池モジュール及びこれを装備する車両 図5
  • 特許-電池モジュール及びこれを装備する車両 図6
  • 特許-電池モジュール及びこれを装備する車両 図7
  • 特許-電池モジュール及びこれを装備する車両 図8
  • 特許-電池モジュール及びこれを装備する車両 図9
  • 特許-電池モジュール及びこれを装備する車両 図10
  • 特許-電池モジュール及びこれを装備する車両 図11
  • 特許-電池モジュール及びこれを装備する車両 図12
  • 特許-電池モジュール及びこれを装備する車両 図13
  • 特許-電池モジュール及びこれを装備する車両 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】電池モジュール及びこれを装備する車両
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20221205BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20221205BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20221205BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01M50/289
H01M50/249
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019537987
(86)(22)【出願日】2018-07-18
(86)【国際出願番号】 JP2018026897
(87)【国際公開番号】W WO2019039139
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2017158454
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】今井 謙一
(72)【発明者】
【氏名】越智 新吾
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-222554(JP,A)
【文献】特開2012-256466(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024432(WO,A1)
【文献】特開2015-011819(JP,A)
【文献】特開2015-210971(JP,A)
【文献】特開2017-142942(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0141367(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の角形電池セルを厚さ方向に積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の両端面に配置される一対のエンドプレートと、
一対の前記エンドプレートを連結してなるバインドバーと、
前記エンドプレートをベースプレートに固定する固定ボルトとを備え、
前記エンドプレートは、面方向に伸びる前記固定ボルトの止め穴を有し、
前記止め穴が、前記電池積層体のセル反力による前記固定ボルトの変形スペースを電池側に有し、
前記エンドプレートが、前記止め穴を、前記固定ボルトの先端に向かって大きくなるテーパー状として、
前記固定ボルトの先端側に前記変形スペースを設けてなることを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載される電池モジュールであって、
前記エンドプレートが、前記止め穴を、前記電池積層体の積層方向に細長い長穴として、
前記固定ボルトの電池側に前記変形スペースを設けてなることを特徴とする電池モジュール。
【請求項3】
複数の角形電池セルを厚さ方向に積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の両端面に配置される一対のエンドプレートと、
一対の前記エンドプレートを連結してなるバインドバーと、
前記エンドプレートをベースプレートに固定する固定ボルトとを備え、
前記エンドプレートは、面方向に伸びる前記固定ボルトの止め穴を有し、
前記止め穴が、前記電池積層体のセル反力による前記固定ボルトの変形スペースを電池側に有し、
前記止め穴の内径が前記固定ボルトのネジ部の外径よりも大きく、
前記固定ボルトが、前記止め穴に嵌合する外径の嵌合部を後端側に有し、
前記嵌合部が前記止め穴に嵌合されて、前記固定ボルトの先端側に前記変形スペースを設けてなることを特徴とする電池モジュール。
【請求項4】
複数の角形電池セルを厚さ方向に積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の両端面に配置される一対のエンドプレートと、
一対の前記エンドプレートを連結してなるバインドバーと、
前記エンドプレートをベースプレートに固定する固定ボルトとを備え、
前記エンドプレートは、面方向に伸びる前記固定ボルトの止め穴を有し、
前記止め穴が、前記電池積層体のセル反力による前記固定ボルトの変形スペースを電池側に有し、
前記止め穴が、前記固定ボルトの後端側が挿通される小径部と、前記固定ボルトの先端側が挿通される大径部とからなり、
前記大径部でもって前記変形スペースを設けてなることを特徴とする電池モジュール。
【請求項5】
複数の角形電池セルを厚さ方向に積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の両端面に配置される一対のエンドプレートと、
一対の前記エンドプレートを連結してなるバインドバーと、
前記エンドプレートをベースプレートに固定する固定ボルトとを備え、
前記エンドプレートは、面方向に伸びる前記固定ボルトの止め穴を有し、
前記止め穴が、前記電池積層体のセル反力による前記固定ボルトの変形スペースを電池側に有し、
前記止め穴の内径が前記固定ボルトのネジ部の外径よりも大きく、
さらに、前記止め穴は、開口端に向かって大きくなるテーパー拡開部を有し、
前記固定ボルトは、前記テーパー拡開部に案内されるテーパー状の挿入部を有し、
前記挿入部が前記テーパー拡開部に案内されて、前記固定ボルトが前記止め穴の定位置に挿通されるようにしてなることを特徴とする電池モジュール。
【請求項6】
複数の角形電池セルを厚さ方向に積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の両端面に配置される一対のエンドプレートと、
一対の前記エンドプレートを連結してなるバインドバーと、
前記エンドプレートをベースプレートに固定する固定ボルトとを備え、
前記エンドプレートは、面方向に伸びる前記固定ボルトの止め穴を有し、
前記止め穴が、前記電池積層体のセル反力による前記固定ボルトの変形スペースを電池側に有し、
前記止め穴の内形が前記固定ボルトのネジ部の外形よりも大きく、前記止め穴と前記ネジ部との間に前記変形スペースを設けており、
前記変形スペースの一部にはカラーが挿入されて、前記カラーの中心孔に前記固定ボルトのネジ部を挿入してなることを特徴とする電池モジュール。
【請求項7】
複数の角形電池セルを厚さ方向に積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の両端面に配置される一対のエンドプレートと、
一対の前記エンドプレートを連結してなるバインドバーと、
前記エンドプレートをベースプレートに固定する固定ボルトとを備え、
前記エンドプレートは、面方向に伸びる前記固定ボルトの止め穴を有し、
前記止め穴が、前記電池積層体のセル反力による前記固定ボルトの変形スペースを電池側に有し、
前記止め穴の内形が前記固定ボルトのネジ部の外形よりも大きく、前記止め穴と前記ネジ部との間に前記変形スペースを設けており、
前記変形スペースには変形するネジ部に押されて変形する可撓性のある可撓性リングが挿入されてなることを特徴とする電池モジュール。
【請求項8】
複数の角形電池セルを厚さ方向に積層してなる電池積層体と、
前記電池積層体の積層方向の両端面に配置される一対のエンドプレートと、
一対の前記エンドプレートを連結してなるバインドバーと、
前記エンドプレートをベースプレートに固定する固定ボルトとを備え、
前記エンドプレートは、面方向に伸びる前記固定ボルトの止め穴を有し、
前記止め穴が、前記電池積層体のセル反力による前記固定ボルトの変形スペースを電池側に有し、
前記止め穴を電池側を開口する溝形として、固定ボルトのネジ部の電池側に前記変形スペースを設けてされてなることを特徴とする電池モジュール。
【請求項9】
請求項3、5、6、7、8のいずれかに記載される電池モジュールであって、
前記変形スペースが、一対の前記エンドプレートの両方に設けてなる前記止め穴と前記ネジ部との間に設けてなることを特徴とする電池モジュール。
【請求項10】
請求項1ないしのいずれかに記載される電池モジュールを備え、
前記ベースプレートが車両のシャーシーで、
前記固定ボルトが前記エンドプレートを前記シャーシーに固定してなることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池積層体の両端に配置してなるエンドプレートをバインドバーで連結し、エンドプレートを面方向に貫通する固定ボルトを介して、車両のシャーシーなどのベースプレートに固定してなる電池モジュールとこれを装備する車両に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な電池モジュールは、複数の角形電池セルからなる電池積層体と、電池積層体の両端面に配置される一対のエンドプレートと、一対のエンドプレートを連結するバインドバーとを備えている(特許文献1参照)。この電池モジュールは、電池積層体をエンドプレートとバインドバーにより拘束することで、電池積層体を構成する角形電池セルの膨張を抑制することができるようになっている。また、この電池モジュールは、車両等に搭載されて固定される場合、角形電池セルの充放電による膨張や、車両の走行時における振動、衝撃などを受ける環境において、拘束部が緩まないように、エンドプレートを面方向に貫通する固定ボルトを介して車両のシャーシーなどに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/057322号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、近年、体積あたりのエネルギー密度や重量あたりのエネルギー密度の高い電池モジュールが求められており、電池モジュールを構成する角形電池セルも、体積あたりのエネルギー密度や重量あたりのエネルギー密度の高い電池を採用することが望まれている。角形電池セルは、体積あたりのエネルギー密度や重量あたりのエネルギー密度を高くしようとすると、充放電や劣化に伴う寸法変化が大きくなる傾向がある。このため、充放電や劣化に伴う寸法変化が大きい角形電池セルの膨張を抑制するためには、比較的大きな力で角形電池セルを拘束する必要がある。また、エンドプレートを面方向に貫通する固定ボルトを介して車両のシャーシーなどに固定する構造においては、角形電池セルの膨張によりエンドプレートに作用するセル反力が固定ボルトに負荷をかけることになる。このため、固定ボルトに作用する剪断力に対する対策も必要となる。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解決することを目的に開発されたもので、本発明の目的の一つは、極めて簡単な構造で、セル反力による固定ボルトの剪断力を減少して、全体を小型、軽量化し、さらに安価に多量生産できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の電池モジュールは、複数の角形電池セル1を厚さ方向に積層してなる電池積層体2と、電池積層体2の両端面に配置される一対のエンドプレート3と、一対のエンドプレート3を連結してなるバインドバー4と、エンドプレート3をベースプレート20に固定する固定ボルト5を備える。エンドプレート3は、面方向に伸びる固定ボルト5の止め穴7を有し、止め穴7は、電池積層体2のセル反力による固定ボルト5の変形スペース8を電池側に設けている。
【0007】
本発明のある態様の車両は、以上の電池モジュール10を備え、ベースプレート20を車両のシャーシー92として、固定ボルト5でエンドプレート3をシャーシー92に固定している。
【発明の効果】
【0008】
上記構成によれば、専用の部品を追加することなく、極めて簡単な構造で固定ボルトの剪断力を減少してボルトを軽量化し、さらに全体を小型化して、安価に多量生産できる特徴を実現する。以上の電池モジュールは、エンドプレートに変形スペースのある止め穴が形成され、止め穴に挿通される固定ボルトを介してエンドプレートが固定されるようになっているため、セル反力が大きくなると、エンドプレートをベースプレートに固定した状態のまま、エンドプレートを変位させることができる。エンドプレートが変位すると、電池セルの膨張が許容されてセル反力が低下するので、固定ボルトにかかる剪断力を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例にかかる電池モジュールの斜視図である。
図2図1に示す電池モジュールのII-II線断面図である。
図3】本発明の他の実施形態にかかる電池モジュールの断面図である。
図4】本発明の他の実施形態にかかる電池モジュールの断面図である。
図5】本発明の他の実施形態にかかる電池モジュールの断面図である。
図6】本発明の他の実施形態にかかる電池モジュールの断面図である。
図7】本発明の他の実施形態にかかる電池モジュールの断面図である。
図8】本発明の他の実施形態にかかる電池モジュールの断面図である。
図9】本発明の他の実施形態にかかる電池モジュールの断面図である。
図10】本発明の他の実施形態にかかる電池モジュールの断面図である。
図11図2に示す電池モジュールにセル反力が作用する状態を示す拡大断面図である。
図12】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電池モジュールを搭載する例を示すブロック図である。
図13】モータのみで走行する電気自動車に電池モジュールを搭載する例を示すブロック図である。
図14】従来の電池モジュールの概略垂直縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明の一つの着目点について説明する。多数の角形電池セルを備える電池モジュールは、複数の角形電池セルを積層している電池積層体の両端面にエンドプレートを配置し、一対のエンドプレートをバインドバーで連結して、電池積層体を積層方向に加圧する状態で固定される。この電池モジュールは、充放電による角形電池セルの膨張、振動、衝撃などを受ける環境において、締結部が緩まないように、エンドプレートを面方向に貫通する固定ボルトを介して車両のシャーシーなどに固定される。図14は、電池モジュール110をベースプレート120に固定する一例の断面図を示している。ベースプレート120に固定される電池モジュール110は、充放電による角形電池セル101の膨張によってエンドプレート103の内面を加圧する。エンドプレート103は、膨張する電池積層体102で内面から押圧されるので、電池積層体102の面積と、電池積層体102が押圧する圧力との積に比例するセル反力を矢印Aで示す方向に受ける。このため、充放電等に伴う寸法変化の大きい角形電池セル101は、その膨張量に応じた大きさのセル反力がエンドプレート103に作用することになる。エンドプレート103に作用するセル反力は、例えば、車両の走行モータを駆動する電源用の電池モジュール110においては数トンと極めて大きくなる。エンドプレート103に作用する強大なセル反力は、バインドバー(図示せず)を伸長する方向に作用する。この方向に作用するセル反力は、エンドプレート103を角形電池セル101の積層方向に移動させる方向に働く。エンドプレート103は、面方向に貫通する固定ボルト105でベースプレート120に固定しているので、エンドプレート103に作用する強大なセル反力は、固定ボルト105に剪断力として働く。エンドプレート103に加わるセル反力が極めて大きいので、固定ボルト105に作用する剪断力も極めて大きくなる。このため、電池モジュール110は、強大な剪断力に耐えるために、使用する固定ボルト105の本数を多くし、あるいはボルト径を大きくし、あるいはまたエンドプレート103を厚くする必要がある。このことは、電池モジュール110の外形を大きくし、重量を増加する必要が生じるため、電池モジュール110に大切な軽量化と低コスト化の実現を難しくする弊害となっていた。
【0011】
本発明のある態様の電池モジュールは、複数の角形電池セル1を厚さ方向に積層してなる電池積層体2と、電池積層体2の両端面にあって、電池積層体2を加圧状態に固定している一対のエンドプレート3と、一対のエンドプレート3を連結してなるバインドバー4と、エンドプレート3をベースプレート20に固定する固定ボルト5を備えている。エンドプレート3は、面方向に伸びる固定ボルト5の止め穴7を有し、止め穴7は、電池積層体2のセル反力による固定ボルト5の変形スペース8を電池側に設けている。
なお、本明細書において、エンドプレートの面方向とは、外形を略プレート状とするエンドプレートの幅広面である主面と平行な方向を意味するものとする。
【0012】
以上の電池モジュールは、電池積層体のセル反力で固定ボルトが変形できるように変形スペースのある止め穴に配置することで、強大なセル反力の伝達経路を最適状態に分散して、固定ボルトの剪断力を著しく減少する。以上の構造は、大きなセル反力がエンドプレートを押圧する状態において、固定ボルトを止め穴の内面に強く衝突させることなく、変形スペースのある止め穴内部で変形させる。電池積層体のセル反力は、固定ボルトの剪断力とバインドバーの張力を増加させる。バインドバーとエンドプレートが全く変形しない剛体であれば、セル反力をバインドバーの張力とバランスさせて、固定ボルトの剪断力を小さくできる。しかしながら、バインドバーは厚い金属板を使用しても、全く変形しない剛体とすることはできない。剛体でないバインドバーは、セル反力で伸びる。従来の電池モジュールは、バインドバーが伸びてエンドプレートが移動すると、移動を固定ボルトの剪断力で阻止するので、固定ボルトの剪断力が極めて大きくなる。
【0013】
以上の電池モジュールは、バインドバーが伸びてエンドプレートが移動できるように、変形スペースのある止め穴の内部で変形できるように固定ボルトを配置する。止め穴の内部で変形する固定ボルトは、セル反力でエンドプレートを移動させる。移動するエンドプレートは、バインドバーの伸びを大きくしてバインドバーの張力を増加して、セル反力をエンドプレートの張力とバランスさせる。バインドバーの張力が変形量に比例して大きくなるからである。さらに、移動するエンドプレートは、ベースプレートとの間で摩擦抵抗力が作用する。摩擦抵抗力は、エンドプレートとベースプレートとの接触圧に比例して大きくなる。固定ボルトはエンドプレートをベースプレートに強く締結して、摩擦抵抗力を大きくする。セル反力が、変形量に比例して大きくなるバインドバーの張力と、強い接触圧によって強大な力となっている摩擦抵抗力との加算力は、固定ボルトの剪断力を小さくする。バインドバーの張力と摩擦抵抗力の両方が、セル反力の反対方向に作用するからである。このことから、以上の電池モジュールは、セル反力がバインドバーの張力と摩擦抵抗力とに分散される状態となって、固定ボルトの剪断力は小さくなる。エンドプレートが移動して発生するバインドバーの張力と、エンドプレートがベースプレートに締結されて発生する摩擦抵抗力は相当に大きく、セル反力が張力と摩擦抵抗力に分散する構造は、固定ボルトの剪断力を相当に小さくする。セル反力を張力と摩擦抵抗力に分散する構造は、変形スペースのある止め穴に固定ボルトを配置して、変形できる構造によって実現するが、この構造によって、固定ボルトの剪断力は数十分の1と著しく減少することも可能である。以上の電池モジュールは、固定ボルトの剪断力を著しく小さくできることから、太いボルトを多数使用する必要がなく、ボルトが重量に大きな影響を与えず、モジュールサイズを小さくできる特徴を実現する。
【0014】
また、電池モジュールは、エンドプレート3Aの止め穴7Aを、固定ボルト5の先端に向かって大きくなるテーパー状として、固定ボルト5の先端側に変形スペース8を設けることができる。この構造の電池モジュールは、固定ボルトを位置ずれなくエンドプレートの定位置に挿通しながら、セル反力で固定ボルトを変形スペースにおいて変形できる特徴がある。
【0015】
さらに、電池モジュールは、エンドプレート3Bの止め穴7Bを、電池積層体2の積層方向に細長い長穴として、固定ボルト5の電池側に変形スペース8を設けることができる。この構造の電池モジュールは、エンドプレートを薄くしながら、固定ボルトの変形スペースを大きくできる特徴がある。
【0016】
さらにまた、電池モジュールは、止め穴7Cの内径を固定ボルト5のネジ部の外径よりも大きくして、固定ボルト5には、止め穴7Cに嵌合する外径の嵌合部5Cを後端側に設け、嵌合部を止め穴7Cに嵌合して、固定ボルト5の先端側に変形スペース8を設けることができる。この電池モジュールは、固定ボルトを位置ずれなるエンドプレートの定位置に挿通しながら、セル反力で固定ボルトを確実に変形スペースで変形できる特徴がある。
【0017】
さらにまた、電池モジュールは、止め穴7Dに、固定ボルト5の後端側が挿通される小径部7aと、固定ボルト5の先端側が挿通される大径部7bとを設け、小径部7aでネジ部5Bを定位置に配置して、大きな内径の大径部7bで変形スペース8を設けることができ、この構造によって、電池モジュールは、固定ボルトを小径部で位置ずれなるエンドプレートの定位置に挿通しながら、大径部で固定ボルトの変形スペースを設けて変形できる特徴がある。
【0018】
さらにまた、電池モジュールは、止め穴7Eの内径を固定ボルト5のネジ部5Bの外径よりも大きくすると共に、止め穴7Eの開口部に、開口端に向かって大きくなるテーパー拡開部7eを設け、固定ボルト5には、テーパー拡開部7eに案内されるテーパー状の挿入部5Eを設け、挿入部5Eをテーパー拡開部7eに案内して固定ボルト5を止め穴7Eの定位置に挿通する構造とすることができる。この電池モジュールは、固定ボルトを位置ずれなるエンドプレートの定位置に配置しながら、固定ボルトを変形スペースにおいて変形して剪断力を小さくできる特徴がある。
【0019】
さらにまた、電池モジュールは、止め穴7Cの内形を固定ボルト5のネジ部5Bの外形よりも大きくして、止め穴7Cとネジ部5Bとの間に変形スペース8を設け、変形スペース8の一部にはカラー9を挿入して、カラー9の中心孔に固定ボルト5のネジ部5Bを挿入する構造とすることができる。この電池モジュールは、固定ボルトを位置ずれなるエンドプレートの定位置に挿通しながら、止め穴に変形スペースを設けることができる。
【0020】
さらにまた、電池モジュールは、止め穴7Cの内形を固定ボルト5のネジ部5Bの外形よりも大きくさし、止め穴7Cとネジ部5Bとの間に変形スペース8を設けて、変形スペース8には変形するネジ部5Bに押されて変形する可撓性のある可撓性リング11を挿入することができる。この構造の電池モジュールは、固定ボルトを位置ずれなくエンドプレートの定位置に挿通しながら、セル反力で固定ボルトを止め穴の内部で変形できる。
【0021】
さらにまた、電池モジュールは、止め穴7Fを電池側を開口する溝形として、固定ボルト5のネジ部5Bの電池側に変形スペース8を設けることができる。
【0022】
さらにまた、電池モジュールは、一対のエンドプレート3の両方に変形スペース8を設けてなる止め穴7を設けることができる。
【0023】
さらに、本発明の車両は、以上の電池モジュールを備えて、ベースプレート20を車両のシャーシー92として、固定ボルト5でエンドプレート3をシャーシー92に固定している。
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定しない。なお、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0025】
本発明の実施形態にかかる電池モジュール10を図1の斜視図と、図2ないし図10の断面図に示す。これらの図に示す電池モジュール10は、複数の角形電池セル1を絶縁材のスペーサ12を挟んで積層した電池積層体2と、電池積層体2の両端面にあって、電池積層体2を両端面から挟着している一対のエンドプレート3と、一対のエンドプレート3を締結するバインドバー4と、エンドプレート3をベースプレート20に固定する固定ボルト5とを備える。以上の電池モジュール10は、図1に示すように外観をほぼ箱形とし、角形電池セル1を多数積層して電池積層体2とし、電池積層体2を積層方向の両端面からエンドプレート3で挟み、両端のエンドプレート3をバインドバー4で連結して電池積層体2を加圧状態に固定している。電池積層体2は、積層された角形電池セル1を金属板のバスバー(図示せず)を介して直列に、あるいは並列に、あるいは又直列と並列に接続している。
【0026】
角形電池セル1は、外形を幅よりも厚さを薄くした角形とする外装缶の開口部を封口板で閉塞して、封口板に正負の電極端子を設けて、この電極端子にバスバーを接続している。角形電池セル1を互いに直列に接続する電池モジュール10は、出力電圧を高くして出力を大きくでき、並列に接続する電池モジュール10は電流容量を大きくできる。角形電池セル1は、リチウムイオン二次電池などの非水系電解液二次電池である。ただし、角形電池セル1は、ニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池等、現在使用され、あるいはこれから開発される全ての二次電池とすることもできる。
【0027】
エンドプレート3はアルミニウムやアルミニウム合金で製作される。ただし、エンドプレート3はアルミニウムやアルミニウム合金に代わって他の金属で製作でき、またプラスチックと金属プレートとの積層体とすることもできる。エンドプレート3は、図1に示すように、外側の表面の四隅部に、バインドバー4をネジ止めしている。金属製のエンドプレート3は、電池積層体2との間に絶縁材6を挟んで、角形電池セル1と絶縁される。
【0028】
エンドプレート3は、ベースプレート20に向かって面方向に伸びる固定ボルト5の止め穴7を設けている。固定ボルト5は止め穴7に挿通され、エンドプレート3を面方向に貫通してエンドプレート3をベースプレート20に固定する。エンドプレート3を面方向に貫通する固定ボルト5は、ねじ頭5Aを幅方向の一端面(図において上端面)に、ネジ部5Bの先端を幅方向の他端面(図において下端面)から突出させてベースプレート20に固定される。図1の電池モジュール10は、ベースプレート20の上に固定されるので、エンドプレート3には上下方向に伸びてエンドプレート3を上下に貫通する止め穴7を設けている。この止め穴7には、固定ボルト5が垂直姿勢に挿通されてエンドプレート3をベースプレート20に固定する。固定ボルト5は、ネジ部5Bの先端をベースプレート20の外側に設けた固定部であるナット21にねじ込んで、エンドプレート3をベースプレート20に固定する。ナット21は回転しないように、ベースプレート20に溶接や嵌合構造で固定される。ただ、厚い金属板のベースプレートは、雌ねじ穴を設けて、雌ねじ穴にネジ部の先端をねじ込んで固定することもできる。
【0029】
エンドプレート3は、角形電池セル1の膨張によって内面にセル反力を受ける。エンドプレート3は電池積層体2を加圧する状態で固定しているので、角形電池セル1の膨張で大きなセル反力を受ける。電池積層体2の両端に配置されるエンドプレート3は、バインドバー4に連結されて角形電池セル1を加圧状態に固定するので、セル反力によってバインドバー4には張力が作用する。バインドバー4に作用する張力は、バインドバー4を変形し、さらにこれを伸ばしてエンドプレート3を移動させる。セル反力でエンドプレート3が移動して、固定ボルト5が止め穴7の内面に当たると、固定ボルト5には剪断力が作用する。セル反力に起因する剪断力で変形しない強靭な固定ボルト5でもって、エンドプレート3を定位置に移動しないように配置する電池モジュール10は、固定ボルト5を強靭なボルトとする要求があるので、固定ボルト5を相当に太く、また1枚のエンドプレート3を固定するボルト数を多くする必要がある。
【0030】
図2ないし図10の電池モジュール10は、電池積層体2のセル反力で固定ボルト5の変形を完全に阻止することなく、固定ボルト5を変形させてエンドプレート3をセル反力の方向に移動させる。このことを実現するために、エンドプレート3の止め穴7には固定ボルト5の変形スペース8を設けている。変形スペース8は、セル反力が作用してエンドプレート3が移動する状態で、固定ボルト5が変形できるように止め穴7に設けられる。変形スペース8は、止め穴7の電池側に設けられる。セル反力でエンドプレート3が移動すると、図11に示すように、固定ボルト5のネジ部5Bの電池対向面5bが相対的に電池側に接近するからである。変形スペース8は、セル反力でエンドプレート3が矢印Aで示す方向に移動する状態で、変形するネジ部5Bの電池対向面5bが止め穴7の内面に当たって発生する接触圧を小さくする。ネジ部5Bの電池対向面5bが止め穴7の内面に当たる接触圧が大きくなると、ベースプレート20との境界における剪断力が大きくなるので、接触圧を小さくして剪断力は小さくなる。セル反力で固定ボルト5が変形してエンドプレート3が移動する電池モジュール10は、セル反力をバインドバー4の張力やエンドプレート3とベースプレート20との摩擦抵抗力に分散して、固定ボルト5の剪断力を小さくする。エンドプレート3は、大きなセル反力でエンドプレート3を移動できるように、変形スペース8を設けて固定ボルト5を変形できるようにしている。セル反力で固定ボルト5が変形するとエンドプレート3がセル反力の方向に移動するからである。
【0031】
変形スペース8の寸法、正確には、止め穴7の内面とネジ部5Bの電池対向面5bとの変形隙間(d)は大きくして、セル反力による固定ボルト5の剪断力を小さくできる。変形隙間(d)は、エンドプレート3、バインドバー4、固定ボルト5の強度、最大セル反力を考慮して最適値に設定される。固定ボルト5の剪断力がこれ等のパラメーターによって変化し、ネジ部5Bの最大変形が、最大セル反力でエンドプレート3が押圧される状態で発生するからである。ネジ部5Bの最大変形は、最大セル反力と、エンドプレート3、バインドバー4、固定ボルト5の剛性などで変化するが、車両の走行モータを駆動する電池モジュールにおいては、たとえば0.8mm以上、好ましくは1mm以上、さらに好ましくは1.2mm以上とする。変形隙間(d)は、最大セル反力で止め穴7の内面とネジ部5Bの電池対向面5bとが接触しない寸法に設定して、固定ボルト5の剪断力を最小値にできる。ただ、最大セル反力が発生する状態で、ネジ部5Bの電池対向面5bが止め穴7の内面に接触するが、この状態における接触圧を小さく制限する寸法に変形隙間(d)を設定して、セル反力をバインドバー4の張力と、エンドプレート3とベースプレート20との摩擦抵抗力と、固定ボルト5の剪断力とに分散し、固定ボルト5の剪断力を設定値とすることもできる。
【0032】
図2のエンドプレート3Aは、止め穴7Aを固定ボルト5のネジ部5Bの先端に向かって大きくなるテーパー状として、固定ボルト5の先端側に次第に大きくなる変形スペース8を設けている。このエンドプレート3Aは、ネジ部5Bの後端を挿入する止め穴7Aの内径を、ネジ部5Bの外径にほぼ等しくして、ネジ部5Bの先端側には変形スペース8を設けることができるので、固定ボルト5を止め穴7Aに挿通して位置ずれなくエンドプレート3Aの定位置に連結しながら、セル反力でエンドプレート3Aが移動してネジ部5Bが止め穴7Aの内面に衝突する接触圧を小さくできる。ネジ部5Bは先端部をベースプレート20に固定して、後端部をエンドプレート3Aに連結しているので、セル反力でエンドプレート3Aが移動するとき、ネジ部5Bの後端部はエンドプレート3Aと一緒に移動して、先端部はベースプレート20の固定位置に配置される。したがって、セル反力で変形するネジ部5Bは、図11に示すように後端側がエンドプレート3Aと一緒に矢印Bで示す方向に移動して変形する。後端部が矢印Bの方向に移動して変形するネジ部5Bは、先端部が止め穴7Aの内面に接近する。ネジ部5Bの先端に向かって大きくなるテーパー状の止め穴7Aは、先端部に変形スペース8を設けているので、ネジ部5Bの先端部が止め穴7Aの内面に接近し、あるいは衝突する状態での接触圧を小さくして、ネジ部5Bのベースプレート20との境界における剪断力を小さくできる。
【0033】
図3の断面図に示すエンドプレート3Bは、止め穴7Bの内形を、電池積層体2の積層方向に細長い長穴として、固定ボルト5の電池側に変形スペース8を設けている。このエンドプレート3Bは、止め穴7Bを幅方向に大きくしないので、エンドプレート3Bの強度を低下することなく変形スペース8を大きくできる。長孔の止め穴7Bは、電池側の変形隙間(d)を広くするために、止め穴7Bの片側に偏在して固定ボルト5を挿入する。固定ボルト5を長孔の中央部に挿入すると、ネジ部5Bの両側、すなわち電池側と反対側に変形スペースができる。電池側との反対側に偏在して固定ボルト5を挿入して、変形スペース8をネジ部5Bの電池側にのみ設けて変形隙間(d)を広くできる。この状態で固定されるエンドプレート3Bは、電池側に広い変形スペース8を設けることができるので、長孔の長径を小さくしながら変形スペース8の変形隙間(d)を大きくできる。
【0034】
図4の断面図に示すエンドプレート3Cは、止め穴7Cの全体の内径を固定ボルト5のネジ部5Bの外径よりも大きくして、ネジ部5Bの周囲に変形スペース8を設けている。さらに、固定ボルト5は、止め穴7Cに嵌合する外径の嵌合部5Cを後端側に設けている。この固定ボルト5は、嵌合部5Cを止め穴7Cに嵌合して、ネジ部5Bの先端側に変形スペース8が設けられる。以上のエンドプレート3Cは、止め穴7Cの内径を嵌合部5Cの外径にほぼ等しいが僅かに大きくして、嵌合部5Cを止め穴7Cに挿入して、固定ボルト5を止め穴7Cに位置ずれなく正確な位置に配置できる。この電池モジュール10は、嵌合部5Cを止め穴7Cに挿入して、固定ボルト5をエンドプレート3Cの定位置に位置ずれなく配置しながら、止め穴7Cの先端部に変形スペース8を設けることができる。したがって、セル反力で弾性変形するネジ部5Bを確実に変形スペース8に配置できる。
【0035】
図5の断面図に示すエンドプレート3Dは、ネジ部5Bの後端側を挿通する部分を小径部7aとし、ネジ部5Bの先端側を挿通する部分を小径部7aよりも大きな内径の大径部7bとする止め穴7Dを設けている。この止め穴7Dは、ネジ部5Bを小径部7aに挿入して定位置に配置し、大径部7bにおいてその周囲に変形スペース8を設けている。以上のエンドプレート3Dは、小径部7aの内径をネジ部5Bの外径にほぼ等しいが僅かに大きくして、固定ボルト5を止め穴7にD位置ずれなく正確な位置に配置する。このエンドプレート3Dは、固定ボルト5を止め穴7Dに挿入してエンドプレート3Dの定位置に位置ずれなく配置しながら、止め穴7Dの先端部には大径部7bでもって変形スペース8を設けることができる。この電池モジュール10は、固定ボルト5に特別な形状のボルトを使用することなく、止め穴7Dに変形スペース8を設けることができる。
【0036】
図6の断面図に示すエンドプレート3Eは、止め穴7Eの内径を固定ボルト5のネジ部5Bの外径よりも大きくして、ネジ部5Bの周囲に変形スペース8を設けている。さらに、このエンドプレート3Eは、固定ボルト5を定位置に挿入するために、止め穴7Eの開口部にテーパー拡開部7eを設けている。すなわち、図に示す止め穴7Eは、ネジ部5Bの先端側を挿通する大きな内径の大径部7bを設けて、その上端開口部にテーパー拡開部7eを設けている。テーパー拡開部7eは、止め穴7Eの開口端に向かって大きくなるテーパー状としている。固定ボルト5は、止め穴7Eのテーパー拡開部7eに案内されるテーパー状の挿入部5Eを設けている。さらに、図6の固定ボルト5は、ねじ頭5Aと挿入部5Eとの間に鍔5Fを設けている。この固定ボルト5は、鍔5Fをエンドプレート3Eの上面に密着させる位置までねじ込まれて、テーパー状の挿入部5Eがテーパー拡開部7eに嵌合される。この構造は、鍔5Fを広い面積でエンドプレート3Eの上面に押圧して、エンドプレート3Eを強固にベースプレート20に固定しながら、テーパー状の挿入部5Eをテーパー拡開部7eに嵌合させて、固定ボルト5と止め穴7Eとを正確に同心位置に配置して、固定ボルト5と止め穴7Eとの間に変形スペース8を設けることができる。
【0037】
図7の断面図に示すエンドプレート3Cは、止め穴7Cの全体の内径を固定ボルト5のネジ部5Bの外径よりも大きくして、止め穴7Cとネジ部5Bとの間に変形スペース8を設けている。さらに、このエンドプレート3Cは、固定ボルト5を止め穴7Cの中心に配置するために、ネジ部5Bと止め穴7Cとの間に設けている変形スペース8の一部にカラー9を挿入して、カラー9の中心孔に固定ボルト5のネジ部5Bを挿入している。カラー9は、ネジ部5Bの後端部に挿入されて、ネジ部5Bの先端部と止め穴7Cとの間に、カラー9の配置されない変形スペース8を設けている。この電池モジュール10は、カラー9でもって固定ボルト5を位置ずれなくエンドプレート3Cの定位置に挿通しながら、セル反力による固定ボルト5の剪断力を小さくできる特徴を実現する。さらに、図8の断面図に示す構造は、カラー9に鍔9aを一体的に設けている。このカラー9は、固定ボルト5をベースプレート20に締め付ける状態で、鍔9aがエンドプレート3Cの上面に密着されて、止め穴7Cの定位置に配置される。
【0038】
図9の断面図に示すエンドプレート3Cは、止め穴7Cの内径を固定ボルト5のネジ部5Bの外径よりも大きくして、止め穴7Cとネジ部5Bとの間に変形スペース8を設けて、この変形スペース8に可撓性リング11を挿入している。可撓性リング11は、セル反力で変形するネジ部5Bに押圧されて変形する可撓性がある。この可撓性リング11は、外径を止め穴7Cの内径にほぼ等しくして止め穴7Cに挿入され、内径をネジ部5Bの外径にほぼ等しくしてネジ部5Bを挿入して、止め穴7Cと固定ボルト5のネジ部5Bとを同心位置に配置する。可撓性リング11は、変形するネジ部5Bに押されて変形する柔軟性のあるプラスチックやゴム状弾性体で製作される。止め穴7Cに可撓性リング11を挿入する構造は、可撓性リング11が変形するネジ部5Bに押されて変形するので、止め穴7Cの全長と同じ長さとして、ネジ部5Bと止め穴7Cとの間に設けられる変形スペース8全体に挿入することもできる。ただ、可撓性リングの長さを止め穴の全長よりも短くして、止め穴の上部にのみ挿入することもできる。
【0039】
図10の断面図に示すエンドプレート3Fは、止め穴7Fを溝形とする。溝形の止め穴7Fは電池側を開口してネジ部5Bの電池側に変形スペース8を設けている。図のエンドプレート3Fは、電池積層体2との間に絶縁材6を配置して、固定ボルト5のネジ部5Bと角形電池セル1との間を絶縁している。この電池モジュール10は、固定ボルト5を溝形である止め穴7Fの溝底部7fに配置してエンドプレート3をベースプレート20に固定する。変形スペース8は、溝底部7fに配置される固定ボルト5のネジ部5Bと絶縁材6との間に設けられる。
【0040】
バインドバー4は、両端をエンドプレート3に連結して、電池積層体2を加圧状態に締結する。図1のバインドバー4は、金属板の両端を内側に折曲している折曲片4Aをエンドプレート3にネジ止めして固定している。さらに、図1のバインドバー4は、上下の端縁を内側に折曲して保持部4Bとして、電池積層体2の上下面を挟着して角形電池セル1を定位置に保持している。バインドバー4は、角形電池セル1とスペーサ12との積層体である電池積層体2を両端面からエンドプレート3で狭持する。
【0041】
以上の電池モジュール10は、ベースプレート20の上面に載置されると共に、エンドプレート3を貫通する固定ボルト5がベースプレート20にねじ込まれてベースプレート20の定位置に固定される。このベースプレート20は、電池モジュール10が固定されるプレートであって、電池モジュール10を車両に搭載される使用例においては、車両に固定されるフレーム、例えば、車両のシャーシーとすることができる。車両に搭載される電池モジュールは、固定ボルト5をエンドプレート3の止め穴7に挿通し、固定ボルト5の先端をシャーシーの雌ねじ孔にねじ込んで、車両のシャーシーに固定される。固定ボルト5は、エンドプレート3をシャーシーに強固に固定する。この構造は、図12図13に示すように、エンドプレート3を貫通する固定ボルト5を、車両のシャーシー92に直接に固定することで、電池モジュール10を極めて強固に車両に固定できる。
【0042】
(電池モジュールを装備する車両)
以上の電池モジュールは、電動車両を走行させるモータに電力を供給する電源に最適である。電池モジュールを搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、車両を駆動する電力を得るために、上述した電池モジュールを直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置を構築して搭載することもできる。
【0043】
図12は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電池モジュールを搭載する例を示す。この図に示す電池モジュールを搭載した車両HVは、車両HVを走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、モータ93に電力を供給する電池モジュール10と、電池モジュール10の電池を充電する発電機94と、エンジン96、モータ93、電池モジュール10、及び発電機94を搭載してなる車両本体90と、エンジン96又はモータ93で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。電池モジュール10は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電池モジュール10の角形電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電池モジュール10から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電池モジュール10の電池を充電する。
【0044】
また、図13は、モータのみで走行する電気自動車に電池モジュールを搭載する例を示す。この図に示す電池モジュールを搭載した車両EVは、車両EVを走行させる走行用のモータ93と、このモータ93に電力を供給する電池モジュール10と、この電池モジュール10の角形電池を充電する発電機94と、モータ93、電池モジュール10、及び発電機94を搭載してなる車両本体90と、モータ93で駆動されて車両本体90を走行させる車輪97とを備えている。電池モジュール10は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電池モジュール10から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電池モジュール10の角形電池を充電する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明にかかる電池モジュールは、ハイブリッドカー、プラグインハイブリッドカー、電気自動車等の電源装置として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1…角形電池セル、2…電池積層体、3、3A、3B、3C、3D、3E、3F…エンドプレート、4…バインドバー、4A…折曲片、4B…保持部、5…固定ボルト、5A…ねじ頭、5B…ネジ部、5b…電池対向面、5C…嵌合部、5E…挿入部、5F…鍔、6…絶縁材、7、7A、7B、7C、7D、7E、7F…止め穴、7a…小径部、7b…大径部、7e…テーパー拡開部、7f…溝底部、8…変形スペース、9…カラー、9a…鍔、10…電池モジュール、11…可撓性リング、12…スペーサ、20…ベースプレート、21…ナット、90…車両本体、92…シャーシー、93…モータ、94…発電機、95…DC/ACインバータ、96…エンジン、97…車輪、101…角形電池セル、102…電池積層体、103…エンドプレート、105…固定ボルト、110…電池モジュール、120…ベースプレート、EV…車両、HV…車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14