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特許7187471擬似三糖アミノグリコシドおよびその中間体の大規模調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-02
(45)【発行日】2022-12-12
(54)【発明の名称】擬似三糖アミノグリコシドおよびその中間体の大規模調製
(51)【国際特許分類】
   C07H 13/12 20060101AFI20221205BHJP
   C07H 15/23 20060101ALI20221205BHJP
   C07H 9/04 20060101ALI20221205BHJP
【FI】
C07H13/12
C07H15/23
C07H9/04 CSP
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019551278
(86)(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 IL2018050306
(87)【国際公開番号】W WO2018167794
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-15
(31)【優先権主張番号】201721008996
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】516361934
【氏名又は名称】エロックス ファーマシューティカルズ リミテッド
【住所又は居所原語表記】10 Prof. Menachem Plaut Street, Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ミズヒリツスキー、ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】コタラ、マニ・ブシャン
(72)【発明者】
【氏名】パラディ、ラビンデル
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-542981(JP,A)
【文献】DONDONI,A. et al,Stereoselective Addition of 2-Furyllithium and 2-Thiazolyllithium to Sugar Nitrones. Synthesis of Carbon-Linked Glycoglycines,Journal of Organic Chemistry,1997年,Vol.62, No.16,p.5484-5496
【文献】BRIMACOMBE,J.S. et al,The deamination of methyl 5-amino-5,6-dideoxy-2,3-O-isopropylidene-α-L- talo- and -β-D-allo-furanosides with nitrous acid,Carbohydrate Research,1972年,Vol.25, No.1,p.267-269
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式III:
【化1】
(式中、
OTおよびOTは、それぞれ独立して、供与体保護ヒドロキシル基であり;
は、アルキルであり;
Dは、保護アミノ基である)
で表される化合物を製造する方法であって:
前記方法は、
式IIIa:
【化2】
で表される化合物と式RMgX(Xはハライドである)で表されるグリニャール試薬を反応させ、それにより、式IIIb:
【化3】
で表される化合物を立体選択的に得ること、
前記式IIIbで表される化合物を式IIIc:
【化4】
で表される化合物に変換すること、
前記式IIIcで表される化合物とアミノ保護性基を反応させ、それにより、前記Dを形成すること;および
前記式IIIcで表される化合物とヒドロキシ保護性基を反応させ、それにより、前記OTおよびOTを形成すること、
を含み、それにより、前記式IIIで表される化合物を製造する、方法。
【請求項2】
前記アミノ保護性基が、N-ベンジルオキシカルボニルである、および/または、前記ヒドロキシ保護性基のそれぞれがベンゾイルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記式IIIaで表される化合物が:
D-リボースをジオキソラン保護D-リボースに変換すること;
5’’位のヒドロキシ基を、それぞれのアルデヒドに酸化すること;および
前記アルデヒドとN-ベンジルヒドロキシルアミン塩酸塩を反応させることにより製造される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
Dが、N-ベンジルオキシカルボニル(CBz)保護アミノ基で、Rがメチルで、TおよびTのそれぞれがベンゾイルである、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記式IIIaで表される化合物をD-リボースから製造すること、前記式IIIaで表される化合物と前記グリニャール試薬を反応させること、前記式IIIbで表される化合物を前記式IIIcで表される化合物に変換すること、および、前記式IIIcで表される化合物とアミノ保護性基を反応させ、それにより前記Dを形成することが、「ワンポット反応」として行われる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
III
【化5】
(式中、R はアルキルである)
で表される化合物。
【請求項7】
式Ia:
【化6】
(式中、
矩形破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し;
は、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールから選択され;
は、置換または無置換アルキル、OR’およびNR’R’’から選択され、R’およびR’’は、独立して、水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、置換または無置換アルカリールおよびアシルから選択され;
は、水素、アシル、アミノ置換α-ヒドロキシアシル、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換アルカリール、および細胞透過性基から選択され;
は、アルキルである)
で表される擬似三糖アミノグリコシド化合物、または医薬として許容できるその塩を製造する方法であって、
前記方法は、
請求項1~5のいずれか1項にしたがって、式IIIで表される化合物を製造すること;および
前記式IIIで表される化合物と、式IIb:
【化7】
(式中、
矩形破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し;
OPは、受容体保護ヒドロキシル基であり;
APは、受容体保護アミノ基であり;
Aは、式IaのRがOR’で、R’が水素である場合、受容体保護ヒドロキシル基であり;式IaのRがNR’R’’で、R’およびR’’の少なくとも1つが水素である場合、受容体保護アミノ基であり;または、RがOH、NH、NHR’もしくはNHR’’以外である場合、Rを定義する基の保護形態もしくは非保護形態であり;
Bは、式IaのRが水素である場合、受容体保護アミン基(AP)であり、または、Rが水素以外である場合、Rを定義する基の保護形態もしくは非保護形態である)で表される化合物をカップリングすること;
前記受容体保護および供与体保護ヒドロキシル基を脱保護すること;
前記受容体保護および供与体保護アミノ基を脱保護すること;および
存在する場合は、Rおよび/またはRを定義する基の前記保護形態を脱保護すること、
を含み、それにより、式Iaで表される化合物を製造する、方法。
【請求項8】
前記式IIIの化合物が、前記カップリングの前にその活性化形態に変換される、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記式IIIの化合物の活性化形態への変換が、前記活性化形態を単離することなく、インサイチューで行われる、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記受容体保護ヒドロキシル基のそれぞれが、O-アセチルであり、かつ、場合によっては前記受容体保護ヒドロキシル基の脱保護が、アンモニアのメタノール溶液中で行われる、請求項7~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記受容体保護アミノ基のそれぞれが、N-ベンジルオキシカルボニル(CBz)保護アミノ基である、請求項7~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記式Iaの化合物が硫酸塩で、前記方法が、式Iaで表される化合物の遊離塩基の形態を前記硫酸塩に変換することをさらに含み、かつ、場合によっては、前記変換が式Iaで表される化合物の遊離塩基の形態と硫酸(HSO)のメタノール溶液の接触により行われる、請求項7~11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その一部の態様ではアミノグリコシドの合成に関し、限定されるものではないが、特に、リードスルー活性および低毒性の擬似三糖アミノグリコシドを製造する新規な方法に関し、この方法はそのようなアミノグリコシドの大規模生成に有用であり、また、そのようなアミノグリコシドの製造に有用な受容体および供与体中間体化合物に関する。
【0002】
多くのヒト遺伝障害は、3つの終止コドン(UAA、UAGまたはUGA)の1つが、アミノ酸をコードするコドンに置きかわるナンセンス変異に起因し、翻訳の中途停止、最終的には不活性タンパク質の断片に至る。現在、何百ものそのようなナンセンス変異が公知であり、いくつかは、例えば、嚢胞性線維症(CF)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、毛細血管拡張性運動失調症、ハーラー症候群、血友病A、血友病B、テイサックス病等を含む致死性疾患の特定のケースを説明することが示された。そうした疾患の多くでは、現在、有効な治療法がない。
【0003】
アミノグリコシドは、通常、生命をおびやかす感染症の処置に用いられる、きわめて強力な広域スペクトラム抗生物質である。一部のアミノグリコシド化合物は、リボソームに終止コドン変異のリードスルーを誘導し、mRNA分子から完全長タンパク質を生成する能力のため、いくつかの遺伝子疾患の処置における治療的価値を有することが示されている。
【0004】
しかし、ヒト細胞の細胞質リボソームに対して著しい効果を示すアミノグリコシド化合物の大半は、抗微生物活性、および/または、哺乳類細胞に対する異なる毒性も示す。胃腸(GI)生物相の平衡を乱すことにより生じる副作用と耐性の出現のため、リードスルー薬物の抗微生物活性は、特にGI生物相に対し、抗生物質の不要な使用として望ましくない。
【0005】
未成熟終止コドン変異の高いリードスルー活性、哺乳類細胞に対する毒性および低抗微生物活性、ならびに、改善したバイオアベイラビリティおよび/または細胞透過性を示すことにより、遺伝子疾患の処置に有益に使用できるアミノグリコシド化合物を発見するために、広範な研究が行われている。
【0006】
ここに完全に記載されているように参照として組み込まれるWO2007/113841は、未成熟終止コドン変異の高いリードスルー活性、哺乳類細胞に対する細胞毒性および低抗微生物活性を示し、ひいては遺伝子疾患の処置に使用できるように特別に設計された、アミノグリコシドに由来するパロモマイシンの一群を教示する。このアミノグリコシドに由来するパロモマイシンの一群は、パロマミンコアに、特定の操作を導入することにより設計され、これはリードスルー活性の増強、毒性および抗微生物活性の低下につながる。この操作は、パロマミンコアのいくつかの位置で行われた。
【0007】
【化1】
【0008】
WO2007/113841に記載されているパロマミンコアのそのような操作の1つは、アミノグリコシドコアの6’位におけるヒドロキシル基の有益な役割の決定である。
【0009】
WO2007/113841で定義され実証されているパロマミンコアの別の操作は、アミノグリコシドコアの3’、5および/または6位における、1つ以上の単糖部分またはオリゴ糖部分の導入である。
【0010】
WO2007/113841で定義され実証されているパロマミンコアの追加の操作は、パロマミンコアの1位における、(S)-4-アミノ-2-ヒドロキシブチリル(AHB)部分の導入である。
【0011】
WO2007/113841に記載されているパロマミンコアの追加の操作は、アルキル基、例えばメチル基による6’位の水素の置換である。
【0012】
やはりここに完全に記載されているように参照として組み込まれるWO2012/066546は、終止コドン変異の効率的リードスルー活性、低細胞毒性および真核生物翻訳系に対する高い選択性を示す擬似三糖アミノグリコシドの別の一群を開示する。これらの擬似三糖アミノグリコシドは、化合物NB124に例示されるように、5’’位のアルキル基を特徴とする。
【0013】
【化2】
【0014】
WO2012/066546は、5’’位のS-配置を特徴とする、立体異性体の改善した性能についてさらに開示する。
【0015】
WO2007/113841およびWO2012/066546で開示されている擬似三糖アミノグリコシド化合物の合成は、供与体単糖部分(アミノグリコシド化合物の環IIIを形成する)と擬似二糖受容体のカップリングに基づく。WO2007/113841およびWO2012/066546の教示によれば、擬似二糖受容体は、パロマミン二糖コアを得るために、パロモマイシンの開裂により、これは望むようにさらに操作される。合成経路は、アミノ保護性基、典型的にはアジド基の使用、ヒドロキシ保護性基の使用、および合成の様々な段階における立体異性体のクロマトグラフィー分離を含む。
【0016】
さらなる背景技術は、Nudelman, I.ら、Bioorg Med Chem Lett, 2006. 16(24) : p.6310-5;Nudelman, I. ら、Bioorg Med Chem, 2010. 18(11) : p.3735-46;WO2017/037717およびWO2017/037718を含む。
【0017】
発明の概要
本発明者らは、現在、例えばWO2012/066546およびWO2017/037718に記載されている擬似三糖アミノグリコシドを生成する新規な合成経路であって、そのようなアミノグリコシド化合物の大規模な生成に適している新規な合成経路を設計し、その実施に成功した。この新たに設計された方法は、以前に記載されているように、単糖供与体と擬似二糖受容体のカップリングに基づくが、受容体を製造するための出発材料としてG-418を有益に使用し、重要なことには、供与体の望ましい立体異性体の立体選択的合成を使用し、それにより、立体異性体のクロマトグラフィー分離の必要性を避ける。新たに設計された方法は、さらに有利には、工程数の減少、実質的にはクロマトグラフィー分離の数の減少により、有害な試薬の使用の抑制または排除により、より高い収率とコスト効果の改善により特徴付けられる。
【0018】
したがって、本発明の一部の態様は、供与体グリコシル化合物の望ましい立体異性体を製造する新規な方法、そのような供与体を適切な受容体とカップリングし、それにより、例えばWO2012/066546およびWO2017/037718に記載されている擬似三糖アミノグリコシド化合物を得る新規な方法、ここに記載されている擬似二糖受容体を製造する新規な方法、および、ここに記載されている供与体と受容体をカップリングし、その後、最終的な擬似三糖アミノグリコシドを生成する新規な方法に関する。本発明の一部の態様は、ここに記載されている供与体グリコシル化合物の立体異性体(例えば、式IIIで表される化合物)の大規模生成に関する。本発明の一部の態様は、例えばWO2012/066546およびWO2017/037718に記載されている擬似三糖アミノグリコシド化合物(例えば、式IまたはIaで表される化合物)の大規模生成に関する。
【0019】
本発明の一部の態様は、ここに記載されている方法により製造される、供与体化合物、受容体化合物、擬似三糖アミノグリコシドおよび他の中間体化合物に関する。
【0020】
本発明の一部の態様の一側面によれば、式III:
【0021】
【化3】
【0022】
(式中、
OTおよびOTは、それぞれ独立して、供与体保護ヒドロキシル基であり;
はアルキル、好ましくはメチルであり;
Dは保護アミノ基である)
で表される化合物を製造する方法が提供され、
この方法は、式IIIの化合物、またはここに記載されている式IもしくはIaで表される化合物の大規模製造(ここでは、大規模生成または製造と定義される)のためのものである。
【0023】
本発明の一部の態様の一側面によれば、式III:
【0024】
【化4】
【0025】
(式中、
OTおよびOTは、それぞれ独立して、供与体保護ヒドロキシル基であり;
はアルキル、好ましくはメチルであり;
Dは保護アミノ基である)
で表される化合物を製造する方法が提供され、
この方法は、
式IIIa:
【0026】
【化5】
【0027】
で表される化合物と、式RMgX(Xはハライドである)で表されるグリニャール試薬を反応させ、
それにより、式IIIb:
【0028】
【化6】
【0029】
により表され、以下に示されているようにS-配置を特徴とする化合物を立体選択的に得ること、
式IIIbで表される化合物を式IIIc:
【0030】
【化7】
【0031】
で表される化合物に変換すること、
式IIIcで表される化合物とアミノ保護性基を反応させ、それによりDを形成すること;ならびに
式IIIcで表される化合物とヒドロキシ保護性基を反応させ、それによりOTおよびOTを形成することを含み、
それにより、式IIIで表される化合物を製造する。
【0032】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、アミノ保護性基はN-ベンジルオキシカルボニルである。
【0033】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、ヒドロキシ保護性基のそれぞれはベンゾイルである。
【0034】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、式IIIaで表される化合物は、
D-リボースをジオキソラン保護D-リボースに変換すること;
5’’位のヒドロキシ基をそれぞれのアルデヒドに酸化すること;および
アルデヒドとN-ベンジルヒドロキシルアミン塩酸塩を反応させることにより製造される。
【0035】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、DはN-ベンジルオキシカルボニル(CBz)保護アミノ基であり、Rはメチルであり、TおよびTのそれぞれはベンゾイルであり、この方法は、本質的に、ここに記載され、図1に示されている。
【0036】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、式IIIaで表される化合物をD-リボースから製造すること、式IIIaで表される化合物とグリニャール試薬を反応させること、式IIIbで表される化合物を式IIIcで表される化合物に変換すること、および、式IIIcで表される化合物とアミノ保護性基を反応させ、それによりDを形成することは、「ワンポット反応」として行われる。
【0037】
本発明の一部の態様の一側面によれば、式I:
【0038】
【化8】
【0039】
(式中、
(矩形)破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し;
は、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールから選択され;
は、水素、アシルおよびアミノ置換α-ヒドロキシアシルから選択され;
はアルキル、好ましくはメチルである)
で表される擬似三糖アミノグリコシド化合物、または医薬として許容できるその塩を製造する方法が提供され、
この方法は、
それぞれの態様のいずれか1つ、およびそれらの任意の組合せに従って、式IIIで表される化合物を製造すること;ならびに、
式IIIで表される化合物と、式II:
【0040】
【化9】
【0041】
(式中、
(矩形)破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し;
OPは、受容体保護ヒドロキシル基であり;
APは、受容体保護アミノ基であり;
Aは、受容体保護ヒドロキシル基(OP)であり;
Bは、式IのRが水素の場合、受容体保護アミン基であり、または、Rが水素以外のものである場合、Rを定義する基の保護形態もしくは非保護形態である)
で表される化合物をカップリングし;
受容体保護および供与体保護ヒドロキシル基を脱保護し;
受容体保護および供与体保護アミノ基を脱保護し;ならびに
存在する場合は、Rを定義する基の前記保護形態の脱保護を含み、
それにより、式Iで表される化合物を製造する。
【0042】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、カップリングはBFエーテラートの存在下で行われる。
【0043】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、式IIIの化合物は、カップリングの前にその活性化形態に変換される。
【0044】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、式IIIの化合物の活性化形態への変換は、活性化形態を単離することなく、インサイチューで行われる。ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、Rはメチルで、Rは水素で、式IIで表される化合物は、
G418スルフェートを6-メチルパロマミンに変換すること;
ヒドロキシル基を受容体保護ヒドロキシル基に変換すること;および
アミノ基を受容体保護アミノ基に変換することにより製造される。
【0045】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、G418スルフェートを6-メチルパロマミンに変換することは、G418の遊離塩基の形態と、HClのメタノール溶液を接触させることを含む。
【0046】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、受容体保護ヒドロキシル基のそれぞれは、O-アセチルである。
【0047】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、受容体保護ヒドロキシル基の脱保護は、アンモニアのメタノール溶液中で行われる。
【0048】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、受容体保護アミノ基のそれぞれは、N-ベンジルオキシカルボニル(CBz)保護アミノ基である。
【0049】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、受容体保護アミノ基の脱保護は、Pd/C触媒を用いた水素化により行われる。
【0050】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、6’位での立体配置はR-配置である。
【0051】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、式Iの化合物は硫酸塩であり、方法は、式Iで表される化合物の遊離塩基の形態を硫酸塩に変換することをさらに含む。
【0052】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、変換は、式Iで表される化合物の遊離塩基の形態を、HSOのメタノール溶液との接触により行われる。
【0053】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、Rはメチルで、6’位での配置がR-配置で、Rは水素で、Rはメチルである。例示的なそのような方法は、本質的に、ここに記載されているとおりで、図1~3に示されている。
【0054】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、式IIで表される化合物は、それぞれの態様のいずれか1つ、およびそれらの任意の組合せに記載されているように製造される。
【0055】
本発明の一部の態様の一側面によれば、式II:
【0056】
【化10】
【0057】
(式中、
(矩形)破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し;
は、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであり;
OPは、受容体保護ヒドロキシル基であり;
APは、受容体保護アミノ基であり;
Aは、受容体保護ヒドロキシル基(OP)であり;
Bは、受容体保護アミン基、アシル、または保護もしくは非保護アミノ置換α-ヒドロキシアシルである)
で表される化合物を製造する方法が提供され、
この方法は、
式IIa:
【0058】
【化11】
【0059】
(式中、
は水素、アシルまたはアミノ置換α-ヒドロキシアシルである)
で表される化合物、または医薬として許容できるその塩を提供すること;
アミノ基のそれぞれを受容体保護アミノ基に変換すること;および
ヒドロキシ基のそれぞれを受容体保護ヒドロキシル基に変換することを含む。
【0060】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、受容体保護ヒドロキシル基のそれぞれはO-アセチルである。
【0061】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、受容体保護アミノ基のそれぞれはN-ベンジルオキシカルボニル(CBz)保護アミノ基である。
【0062】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、Rはメチルで、6’位での配置がR-配置で、式IIaの化合物を提供することは、G418を式IIaで表される化合物に変換することを含む。
【0063】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、変換は、G418の遊離塩基形態とHClのメタノール溶液との接触を含む。
【0064】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、Rは水素で、その方法は、本質的に、ここに記載され、図2に示されている。
【0065】
本発明の一部の態様の一側面によれば、本質的にここに記載されている、式IIIaで表される化合物を立体選択的に製造する方法が提供される。
【0066】
本発明の一部の態様の一側面によれば、本質的にここに記載されている、式IIIbで表される化合物を製造する方法が提供される。
【0067】
本発明の一部の態様の一側面によれば、本質的にここに記載されている、式IIIcで表される化合物を製造する方法が提供される。
【0068】
本発明の一部の態様の一側面によれば、式Iで表される擬似三糖化合物、または医薬として許容できるその塩が提供され、それぞれの態様のいずれかにおいてここに記載されている方法により製造され、または取得可能である。
【0069】
本発明の一部の態様の一側面によれば、ここに記載され、請求されている式Iで表される擬似三糖化合物、および医薬として許容できる塩を含む、医薬組成物が提供される。
【0070】
本発明の一部の態様の一側面によれば、遺伝子障害の処置に使用するための、ここに記載され、請求されている式Iで表される擬似三糖化合物、またはここに記載されている同化合物を含む組成物が提供される。
【0071】
本発明の一部の態様の一側面によれば、それぞれの態様のいずれかにおいてここに記載されている方法により製造される、式IIIで表される化合物が提供される。
【0072】
本発明の一部の態様の一側面によれば、式IIIaで表される化合物が提供される。
【0073】
本発明の一部の態様の一側面によれば、式IIIbで表される化合物が提供される。
【0074】
本発明の一部の態様の一側面によれば、式IIIcで表される化合物が提供される。
【0075】
本発明の一部の態様の一側面によれば、式Ia:
【0076】
【化12】
【0077】
(式中;
矩形破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し;
は、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールから選択され;
は、置換または無置換アルキル、OR’およびNR’R’’から選択され、R’およびR’’のそれぞれは、独立して、水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、置換または無置換アルカリール、およびアシルから選択され;
は、水素、アシル、アミノ置換α-ヒドロキシアシル、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換アルカリールおよび細胞透過性基から選択され;
はアルキルである)
で表される擬似三糖アミノグリコシド化合物、または医薬として許容できるその塩を製造する方法が提供され、
この方法は、
それぞれの態様のいずれか、およびそれらの任意の組合せにおいて、ここに記載されているそれぞれの方法に従って、式IIIで表される化合物を製造すること;ならびに
式IIIで表される化合物と、式IIb:
【0078】
【化13】
【0079】
(式中;
矩形破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し;
OPは、受容体保護ヒドロキシル基であり;
APは、受容体保護アミノ基であり;
Aは、式IaにおけるRがOR’で、R’が水素である場合、受容体保護ヒドロキシル基(OP)であり;式IaにおけるRがNR’R’’で、R’およびR’’の少なくとも1つが水素である場合、受容体保護アミン基(AP)であり;または、RがOH、NH、NHR’もしくはNHR’’以外である場合、Rを定義する基の保護形態もしくは非保護形態であり;
Bは、式IaにおけるRが水素である場合、受容体保護アミン基(AP)であり、または、Rが水素以外である場合、Rを定義する基の保護形態もしくは非保護形態である)
で表される化合物をカップリングすること;
受容体保護および供与体保護ヒドロキシル基を脱保護すること;
受容体保護および供与体保護アミノ基を脱保護すること;ならびに
存在する場合は、Rを定義する基の保護形態、および/または、Rを定義する基の保護形態を脱保護することを含み、
それにより、式Iaで表される化合物を製造する。
【0080】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、カップリングはBFエーテラートの存在下で行われる。
【0081】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、式IIIの化合物は、カップリングの前にその活性化形態に変換される。
【0082】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、式IIIの化合物を活性化形態に変換は、活性化形態を単離することなく、インサイチューで行われる。
【0083】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、受容体保護ヒドロキシル基のそれぞれはO-アセチルである。
【0084】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、受容体保護ヒドロキシル基の脱保護はアンモニアのメタノール溶液中で行われる。
【0085】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、受容体保護アミノ基のそれぞれはN-ベンジルオキシカルボニル(CBz)保護アミノ基である。
【0086】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、受容体保護アミノ基の脱保護はPd/C触媒を用いた水素化により行われる。
【0087】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、6’位での立体配置はR-配置である。
【0088】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、式Iaの化合物は硫酸塩で、方法は、式Iaで表される化合物の遊離塩基の形態を、硫酸塩に変換することをさらに含む。
【0089】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、変換は、式Iaで表される化合物の遊離塩基の形態と、HSOのメタノール溶液を接触により行われる。
【0090】
本発明の一部の態様の一側面によれば、式Iaで表される擬似三糖化合物、または医薬として許容できるその塩が提供され、これは、それぞれの態様のいずれか、およびそれらの任意の組合せによる方法によって製造される。
【0091】
本発明の一部の態様の一側面によれば、ここに記載されている式Iaの化合物および医薬として許容できる塩を含む医薬組成物が提供される。
【0092】
特に定義がない限り、ここで使用されるすべての技術用語および/または科学用語はいずれも、本発明が属する当業者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。
ここに記載されているものに類似した、またはそれに等しい方法および材料を、本発明の態様の実施または試験に使用できるが、例示的な方法および/または材料が、以下に記載されている。矛盾する場合、定義を含めて、本特許明細書が優先される。さらに、材料、方法および実施例は、例証に過ぎず、必ずしも限定することを意図するものではない。
【0093】
本発明の一部の態様は、添付の図面を参照し、実施例としてのみここに記載される。ここで図面について詳細に具体的に言及すると、示されている事項は一例であり、また、本発明の態様の例証的考察の目的のためであることが強調される。この点において、図面の説明は、本発明の態様がどのように実施され得るかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1図1は、本発明の一部の態様による単糖供与体BB-D-OHを製造する合成経路の概略図を示す。
図2図2は、本発明の一部の態様による擬似二糖受容体BB-Aを製造する合成経路の概略図を示す。
図3図3は、BB-AとBB-Dをカップリングし、これにより、本発明の一部の態様による擬似三糖ELX-02(硫酸塩)を製造する合成経路の概略図を示す。
図4図4は、図3に示された方法で製造されたELX-02(硫酸塩)の1H-NMRスペクトルを示す。
図5図5は、図3に示された方法で製造されたELX-02(硫酸塩)のマススペクトル分析を示す。
図6A図6A~Bは、0~12μMの濃度のELX-02で行われた、レット症候群のR270Xナンセンス変異を抑制する用量反応無細胞アッセイの結果を示し、図6Aは、変異配列の下流にあるホタルルシフェラーゼの発現レベルを、対照実験(化合物の添加なし)で示された発現レベルに対する割合として示し、図6Bは、変異配列の下流および上流におけるホタル/ウミシイタケの発現比を、対照実験における発現レベルに対する割合として示す。
図6B図6A~Bは、0~12μMの濃度のELX-02で行われた、レット症候群のR270Xナンセンス変異を抑制する用量反応無細胞アッセイの結果を示し、図6Aは、変異配列の下流にあるホタルルシフェラーゼの発現レベルを、対照実験(化合物の添加なし)で示された発現レベルに対する割合として示し、図6Bは、変異配列の下流および上流におけるホタル/ウミシイタケの発現比を、対照実験における発現レベルに対する割合として示す。
【0095】
本発明の特定の態様の説明
本発明は、その一部の態様では、アミノグリコシドの合成に関し、限定されるものではないが、とりわけ、リードスルー活性および低毒性を示す擬似三糖アミノグリコシドを製造する新規な方法に関し、この方法は、そのようなアミノグリコシドと、そのようなアミノグリコシドの製造に有用な受容体および供与体中間体化合物の大規模生成に有用である。
【0096】
本発明の少なくとも1つの態様を詳細に説明する前に、本発明は、その適用に関し、以下の説明で明らかにされ、また、実施例により例示されている詳細に必ずしも限定されないことは理解されるべきである。本発明は、他の態様とすること、または様々な手段で実施もしくは実行されることが可能である。
【0097】
本発明者らは、例えばWO2012/066546に記載されている擬似三糖アミノグリコシドの大規模生成に高度に適している新規な方法を設計し、実施に成功した。
【0098】
WO2012/066546は、リードスルー活性、哺乳類細胞に対する低毒性、および低下したまたは打消された抗菌活性を示す擬似三糖アミノグリコシド化合物について記載する。
【0099】
WO2012/066546に開示されている擬似三糖アミノグリコシド化合物は、供与体単糖化合物と、パロモマイシンに由来する擬似二糖受容体のカップリングにより、グリコシル化反応を経由して、製造される。
【0100】
WO2012/066546の教示によれば、供与体化合物は、背景技術のスキーム1:
【0101】
【化14】
【0102】
に示されているように、出発材料としてチオグリコシド化合物7を使用して製造され、
ここで、「a」は1,1-ジメトキシプロパン、CSA、アセトン、室温を表し;「b」は、デス-マーチンペルヨージナン(DMP)、DCM、室温を表し;「c」は、MeMgBr、THF、-30℃を表し;「d」は、TsCl、Py、4-DMAP、室温を表し;「e」は、NaN、HMPA、DMF、70℃を表し;「f」は、酢酸/水(8:2)、還流を表し;「g」は、BzCl、Py、4-DMAP、室温を表し;「h」は、NBS、アセトン/水(8:2)、-30℃を表し;「i」は、CClCN、DBU、DCM、0℃を表す。
【0103】
一般に、WO2012/066546で開示されている合成経路によれば、イソプロピリジンによるC2-およびC3-ヒドロキシルの選択的保護(2,2-ジメトキシプロパン/アセトン、CSA)の後に、デス-マーチンペルヨージナン(DMP、ジクロロメタン)を用いる、残りの第一級アルコールの酸化が続き、2工程でアルデヒド化合物8を単離収率70%で得た。MeMgBrによる化合物8の処理により、対応する第二級アルコールを、C5-ジアステレオマーの混合物(4:1比)として単離収率88%で得た。多量および少量のジアステレオ異性体は、それぞれ(R)-および(S)-配置(化合物(R)-9および(S)-10)である。
【0104】
この混合物を、フラッシュカラムクロマトグラフィーで分離した。
【0105】
背景技術のスキーム1における以下の工程は、各ジアステレオ異性体に対して別々に行った。第二級アルコールのトシル化(TsCl、ピリジン、4-DMAP)の後に、NaN(DMF、HMPA)による、対応するトシレート(化合物(R)-11および(S)-12)のS2置換が続き、配置が逆転したアジド化合物(S)-13および(R)-14が得られた。酢酸水溶液によるイソプロピリデンケタールの加水分解、続く、生じた第二級アルコールのベンゾイル化により、ベンゾエート化合物(S)-15および(R)-16が得られた。チオグリコシド化合物(S)-15および(R)-16を、2つの連続する工程;アセトン水溶液中のNBSによる加水分解、およびDBU存在下でのCClCNによる生じたヘミアセタールの処理で、対応するトリクロロアセトイミデート化合物(S)-17および(R)-18に変換した。供与体化合物(S)-17および(R)-18を、さらに精製することなく、グリコシル化反応に使用した。
【0106】
WO2012/066546で開示されている合成経路によれば、以下の背景技術のスキーム2(WO2012/066546におけるスキーム4に対応)に示されているとおり、化合物(S)-17は、受容体219とカップリングし、それにより、擬似三糖アミノグリコシド化合物を生成する。
【0107】
【化15】
【0108】
ここで、「a」は、BF・EtO、DCM、4ÅMS、-20℃を表し;「b」は、MeNH-EtOH、室温を表し;
「c」は、PMe、NaOH、THF、室温を表す。
【0109】
受容体219の製造は、例えば、Nudelmanら、2010(前掲)に記載されている。一般に、G418は加水分解され、擬似二糖6-メチルパロマミンコアが得られ、これは、次いでTfNおよび無水酢酸と反応させる。
【0110】
WO2012/066546でさらに開示されているように、「S」ジアステレオ異性体NB124は、「R」鏡像異性体NB125より優れている。
【0111】
この明細書でELX-02またはELOXX-02とも呼ばれる化合物NB124の有望な治療活性を考慮して、この化合物の大規模生成に適している方法を考案する目的で、その合成を改善するための広範な努力が行われてきた。
【0112】
ELX-02生成の規模を拡大するために行った最初の研究では、供与体(S)-17と受容体219のカップリング(背景技術のスキーム2参照)を含む一般的な合成経路、および、以前に記載した供与体と受容体を製造する合成経路が維持された。ELX-02を製造する各手順は、17工程の合成と多数のクロマトグラフィー分離を伴い、いくつかのクロマトグラフィー分離が結晶化に置きかえられたにもかかわらず、供与体の量は実質的(例えば、4モル当量から2モル当量)に減少した。注目すべきことに、WO2012/066546で開示されている供与体分子を製造するための合成経路に従う限り、(R)および(S)立体異性体のクロマトグラフィー分離が必要である(背景技術のスキーム1参照)。
【0113】
合成経路のさらなる改善のため、本発明者らは、ここで化合物(S)-17と呼ばれ、BB-D-OHとも呼ばれる望ましい供与体分子のS-立体異性体を製造する新規な方法を発明した。この新たに設計した方法は、供与体の望ましい立体異性体の立体選択的合成を含み、それにより、面倒でコストがかかり、さほど有効ではない、立体異性体のクロマトグラフィー分離の必要性を回避する。
【0114】
以下の実施例でさらに詳細に記載され、図1に示されるBB-D-OHの合成は、出発材料としてD-リボースを使用する。一般に、D-リボースは、メタノール中でアセトンで保護され、1-メトキシアセトニドが得られ、対応するアルデヒドに酸化される。このアルデヒドとベンジルヒドロキシルアミンとの反応により、ニトロンが形成され、次いでこれを、例えばメチルマグネシウムクロライドのようなグリニャール試薬と立体選択的に反応させ、それにより、保護された中間体を単一の望ましい(S)立体異性体として得る。保護性基の脱保護により、5-アミノ-5,6-ジデオキシ-2,3-ジヒドロキシ-1-メトキシ-α-L-タロフラノシドが得られ、次いで、これをCBzクロリドで再度保護し、結晶化により分離し、精製された固体化合物であるN-CBz誘導体を形成する。この7工程の合成は、全収率26~28%(各工程の収率85~90%)の「ワンポット」合成として、中間体の分離および精製をすることなく行われることができ、このことは工業プロセスの点では、事実上、1工程の合成を意味する。得られた2,3-ジヒドロキシ中間体は、その後、塩化ベンゾイルにより保護され(収率77~78%)、続いて、メトキシ基を脱保護する(収率53~57%)。生じた1-ヒドロキシ化合物は、ほぼ定量的収率でBB-D-OHに変換される。
【0115】
BB-D-OHを製造するこの合成経路は、事実上4工程の工業用合成を意味し、単一のクロマトグラフィー精製を伴う。
【0116】
WO2012/066546に記載されている合成経路と比較して、合成工程の合計数および重要なことには、クロマトグラフィーの精製の合計数は、実質的に減少し、加えて、立体異性体のクロマト分離が省かれ、この方法が、この供与体化合物、および、当該化合物と適切な受容体分子のカップリングにより製造される最終的な擬似三糖化合物の、大規模生成に高度に適するものにする。
【0117】
ELX-02、および例えばWO2012/066546に記載されている類似した擬似三糖アミノグリコシドの生成をさらに改善するために、本発明者らは、ここでBB-Aとも呼ばれる受容体219(背景技術のスキーム2参照)を製造する、供与体BB-D-OH、または、ここではBB-Dと表されるその活性化形態と、受容体BB-Aをカップリングし、かつ、最終生成物ELX-02の塩を硫酸塩として形成する、新規な合成経路を設計し、その実施に成功した。
【0118】
以下の実施例にさらに詳細に記載され、図2に示されているBB-Aの合成は、出発材料としてG418スルフェート(ここで、そしてこの技術分野では、単にG418とも呼ばれる)を使用する。G418は、メタノール中の塩化水素溶液を使用して加水分解される。この新たに使用される試薬により、望ましい6-メチルパロマミンの変換および収率が良好になる。
【0119】
パロマミンコアのアミノ基の保護は、以前に記載された、トリフル無水物および危険なアジ化ナトリウムを使用して得られるアジド基の代わりに、CBz基を使用して行われる。CBz保護6-メチルパロマミンが製造され、クロマトグラフィーによる精製を行うことなく、次の工程で使用される。次の工程では、ヒドロキシ基は、塩化アセチルを使用し、塩基としてピリジンを使用するアセチル化により、溶媒としてピリジンが使用される以前の合成経路と比較して、実質的に減少した量で、保護される。この変更により、この工程の収率が、以前に報告されている60%から73~78%にさらに上昇する。
【0120】
BB-Dにおける保護性基(CBz、Bz)との適合性のため、CBz基およびAc基を保護性基として選択した。
【0121】
以下の実施例にさらに詳細に記載され、図3に示されている、供与体BB-DまたはBB-D-OHと受容体BB-Aのカップリング反応は、実質的に減少した量のBB-D(1モルのBB-Aに対し、1.5モル当量のBB-D)を使用して行われる。以下の脱アセチル化は、高価な、以前に使用されたエタノール中のメチルアミンの代わりに、メタノール中のアンモニア溶液を使用して行われる。CBz基の脱保護は、危険かつ高価なアジド基のトリメチルホスフィン脱保護の代わりに、水素化で行われる。
【0122】
全体として、ここに記載された、新たに設計した受容体、その製造方法、およびカップリング方法は、カップリングおよび脱保護反応を良好な収率で行い、危険および/または高価な試薬の使用を回避することができる保護性基を活用する。
【0123】
WO2012/066546に記載されているように、NB124は硫酸塩の形態として使用され、硫酸水溶液を使用してこの塩に変換される。ここに記載されている方法では、メタノール硫酸が使用され、塩形成と沈殿を実質的により効率的にする。
【0124】
したがって、本発明の一部の態様は、BB-D-OHを製造する新規な方法、BB-D-OHを、任意にその活性化形態BB-Dで、適切な受容体とカップリングし、それにより、例えばWO2012/066546で記載されている擬似三糖アミノグリコシド化合物を得る新規な方法、ここに記載されている受容体BB-Aを製造する新規な方法、および、BB-AとBB-D-OH(またはBB-D)をカップリングし、その結果、最終的な擬似三糖アミノグリコシドを生成する新規な方法に関する。
【0125】
ここでBB-D-OHとして記載されている供与体、およびその製造方法は、他の単糖、二糖および三糖または擬似糖受容体とカップリングでき、したがって、擬似二糖、擬似三糖、擬似四糖アミノグリコシドの製造方法に活用できる。本発明の一部の態様では、ここに記載されている供与体は、例えばWO2017/037718に記載されている擬似三糖アミノグリコシド化合物の製造に活用される。
【0126】
本発明の一部の態様では、BB-Aのような受容体分子の製造、供与体と受容体のカップリング、および硫酸塩としての最終生成物の塩の形成のために、ここに記載されている合成経路は、例えばWO2017/037718に記載されている、擬似三糖アミノグリコシド化合物の製造方法に活用される。ここで「立体異性体」という用語は、鏡像異性体およびジアステレオ異性体を包含する。
【0127】
ここで使用されるように、「鏡像異性体」という用語は、互いの完全な反転/反射(鏡像)によってのみ、その相手側と重ね合わせることができる化合物の立体異性体を指す。鏡像異性体は、右手と左手というようにお互いを呼ぶので、「掌性」を有すると言われる。鏡像異性体は、それ自体が掌性を有する環境、例えばすべての生物系に存在する場合を除き、同一の化学的および物理的特性を有する。本発明の態様に関して、化合物は、1つ以上のキラル中心を示してもよく、そのそれぞれは、R-またはS-配置、およびその組合せを示し、本発明の一部の態様による化合物は、別段指示がない限り、R-またはS-配置を示すそのキラル中心のいずれか1つを有し得る。
【0128】
ここで使用される「ジアステレオ異性体」という用語は、互いに鏡像異性体ではない立体異性体を指す。ジアステレオ異性体性は、化合物の2つ以上の立体異性体が、1つ以上ではあるがすべてではない等価な(関連した)立体中心において、異なる配置を有し、互いに鏡像ではない場合に発生する。2つのジアステレオ異性体が1つの立体中心においてのみ互いに異なる場合、それらはエピマーである。各立体中心(キラル中心)は、2つの異なる配置、したがって2つの異なる立体異性体を生じる。本発明に関して、本発明の一部の態様は、立体配置の組合せ、すなわちジアステレオ異性体で生じる複数のキラル中心を有する化合物を包含する。本発明の一部の態様は、複数のキラル中心を有する化合物に関し、そのそれぞれは、別段指示がない限り、ここに記載され、示されているとおり、R-またはS-配置を示す。
【0129】
明細書全体に示される構造式では、キラル炭素が定義されているR-またはS-配置を特徴とする場合は、その対掌性は、示されている立体配置に応じて当該技術分野で許容できる三角形の破線または太線により表され、特定されない。キラル炭素がR-配置またはS-配置のいずれかであり得る配置を特徴とする場合、それは矩形の破線により表され、そのように記載される。R-配置もしくはS-配置をとり得るキラル炭素原子、またはそのラセミ混合物は、ここで、単純な線または曲(波)線により示される。
【0130】
「受容体」という用語は、ここで、グリコシル化反応中に反応性の(非保護)ヒドロキシル基をC5位に有し、グリコシルを受け入れることができる、パロマミンに由来する骨格構造の記述に使用される。
【0131】
「供与体」という用語は、ここで、受容体と反応し最終的な擬似三糖化合物を形成するグリコシルの記述に使用される。
【0132】
ここで使用されている「グリコシル」という用語は、単糖のヘミアセタール官能基からヒドロキシル基を除去することにより得られる化学構造を指す。
【0133】
ここで使用され、当該技術分野で周知の「単糖」という用語は、加水分解ではさらに分解することができない単一の糖質分子からなる単純な形態の糖を指す。本発明の態様による単糖はリボースである。炭水化物の炭素原子の数に従って分類される場合、単糖は、5個の炭素原子を有するペントースである。
【0134】
供与体および受容体は、本発明の一部の態様による望ましい擬似三糖アミノグリコシド化合物を形成するように設計される。
【0135】
本発明の一部の態様による化合物の合成は、一般に、(i)パロマミン足場に存在する選択された位置の1つ以上のヒドロキシルおよびアミンを選択的に保護し、選択された位置(C5)は非保護のままにして、これにより、ここで定義されている供与体(グリコシル)化合物を自由に受け入れる、受容体化合物を製造すること; (ii)とりわけ、グリコシルに存在する選択された位置の1つ以上のヒドロキシルおよびアミンを選択的に保護し、1つの位置を非保護のままにして、これにより、ここで定義されている受容体化合物と自由にカップリングする、供与体化合物の望ましい立体異性体を製造すること; (iii)供与体および受容体にカップリング反応を行うこと; また、(iii)保護性基を除去して、それにより、所望の化合物を得ること、を含む。
【0136】
ここで使用される「保護基」という語句は、その機能をブロックするための置換または修飾された基であって、反応条件下で、他の基との反応(例えば、ここに記載されているカップリング反応)から保護する基を指す。保護基は、置換基の除去により、または再度の修飾により、再生成される。
【0137】
「アミノ保護基」または「ヒドロキシル保護基」が使用される場合、保護性基は、示された保護基を生成するために、それぞれのアミン基またはヒドロキシ基を修飾するように結合または使用されることを意味する。
【0138】
ここで使用される「保護性基」という語句は、化合物の他の官能基が反応する間に特定の官能基をブロックまたは保護するために一般に用いられる置換基または修飾を指す。保護性基は、置換基を取り除くように、または、再度修飾し、それにより望ましい非保護基が生成するように選択される。
【0139】
例えば、「アミノ保護性基」または「アミン保護性基」は、化合物のアミノ官能基をブロックまたは保護し、それが化学反応中に関与することを防止する、アミノ基に結合した置換基、またはアミノ基の修飾である。
【0140】
アミノ保護性基は、置換基の除去、またはアミン基を再度生成する修飾により、除去される。
【0141】
本発明の一部の態様に従って使用可能な例示的なアミノ保護基は、N-ベンジルオキシカルボニル(CBz)である。
【0142】
「ヒドロキシル保護性基」または「ヒドロキシ保護性基」は、ヒドロキシル官能基をブロックまたは保護し、それが、化学反応中に関与することを防止するヒドロキシル(ヒドロキシ)基の置換基または修飾を指す。ヒドロキシ保護性基は、置換基の除去、またはヒドロキシ基を再度生成する修飾により、除去される。
【0143】
適切なヒドロキシ保護基は、イソプロピリデンケタールおよびシクロヘキサノンジメチルケタール(2個の隣接したヒドロキシル基から1,3-ジオキサンを形成する)、4-メトキシ-1-メチルベンゼン(2個の隣接したヒドロキシル基から1,3-ジオキサンを形成する)、O-アセチル、O-クロロアセチル、O-ベンゾイルおよびO-シリルを含む。
【0144】
保護性基の全般的説明およびその使用に関しては、T. W. Greene, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley&Sons, New York, 1991を参照されたい。
【0145】
一部の態様によれば、例示的なヒドロキシ保護基は、O-アセチル(AcO-)およびO-ベンゾイルを含む。
【0146】
ここで、「保護基」は、適用可能であれば、化合物の1個の反応性官能基が保護されている部分、または、例えば、イソプロピリデンケタールのようなケタールを形成することにより1度に保護されることが可能な2個のヒドロキシル基のような2個の隣接した官能基において1個を超える反応性が同時に保護されている部分を指す。
【0147】
擬似三糖アミノグリコシド化合物:
ここに記載されている方法は、例えば式I:
【0148】
【化16】
【0149】
(式中;
(矩形)破線は、6’位でのS-配置またはR-配置、好ましくはR-配置を表し;
は、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールから選択され、好ましくはアルキル、より好ましくはメチルであり;
は、水素、アシルおよびアミノ置換α-ヒドロキシアシルから選択され、好ましくは水素であり;
は、アルキル、シクロアルキルまたはアリールから選択され、好ましくはアルキル、より好ましくはメチルである)
で表される擬似三糖アミノグリコシド化合物の大規模生成(例えば、ここに記載されている)に有用である。
【0150】
代表的な化合物は、WO2012/066546に記載されている。
【0151】
式Iで表される化合物は、遊離塩基の形態であっても、またはその塩、好ましくは医薬として許容できるその塩の形態であってもよい。
【0152】
ここで使用される「医薬として許容できる塩」という語句は、親化合物の荷電化学種とその対イオンを指し、これは、典型的には、親化合物の溶解度特性を変化させ、および/または、親化合物による生物に対する著しい刺激を減少させるが、投与された化合物の生物学的活性および性質を無効にしないように用いられる。あるいは、ここに記載されている化合物の医薬として許容できる塩は、化合物の合成中に、例えば、反応混合物からの化合物の単離中、または化合物の再結晶中に形成できる。
【0153】
本発明の態様の一部に関して、ここに記載されている化合物の医薬として許容できる塩は、任意に、医薬として許容できる塩を形成する、選択された塩基に由来する少なくとも1つの対イオンと組み合わせた、正に荷電した(例えば塩基性基がプロトン化した)塩基性基(例えば、アミンおよび/またはグアニジン)を有する少なくとも1個の化合物を含む酸付加塩であってもよい。
【0154】
したがって、ここに記載されている化合物の酸付加塩は、化合物の1つ以上の塩基性基と、1当量以上の酸で形成される複合体であってもよい。
【0155】
塩における化合物の荷電した基(複数可)と対イオンの化学量論比に応じて、酸付加塩は、モノ付加塩またはポリ付加塩のいずれかであり得る。
【0156】
ここで使用される「モノ付加塩」という語句は、対イオンと荷電した化合物の化学量論比が1:1であることを指し、その結果、付加塩は化合物1モル当量当たり対イオン1モル当量を含む。
【0157】
ここで使用される「ポリ付加塩」という語句は、対イオンと荷電した化合物の間の化学量論比が1:1を超え、例えば、2:1、3:1、4:1等であることを指し、その結果、付加塩は化合物1モル当量当たり対イオン2モル当量以上を含む。
【0158】
医薬として許容できる塩の例は、以下に限定されるものではないが、アンモニウムカチオンおよびその酸付加塩である。
【0159】
酸付加塩は、様々な有機および無機酸、例えば、以下に限定されるものではないが、塩酸付加塩が得られる塩酸、臭化水素酸付加塩が得られる臭化水素酸、酢酸付加塩が得られる酢酸、アスコルビン酸付加塩が得られるアスコルビン酸、ベシル酸付加塩が得られるベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸付加塩が得られるカンファースルホン酸、クエン酸付加塩が得られるクエン酸、マレイン酸付加塩が得られるマレイン酸、リンゴ酸付加塩が得られるリンゴ酸、メタンスルホン酸(メシル酸)付加塩が得られるメタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸付加塩が得られるナフタレンスルホン酸、シュウ酸付加塩が得られるシュウ酸、リン酸付加塩が得られるリン酸、p-トルエンスルホン酸付加塩が得られるトルエンスルホン酸、コハク酸付加塩が得られるコハク酸、硫酸付加塩が得られる硫酸、酒石酸付加塩が得られる酒石酸、および、トリフルオロ酢酸付加塩が得られるトリフルオロ酢酸を含んでもよい。これらの酸付加塩のそれぞれは、これらの用語がここで定義されているように、モノ付加塩またはポリ付加塩のいずれかであり得る。
【0160】
本発明の態様は、ここに記載されている化合物のプロドラッグ、溶媒和物および/または水和物をさらに包含する。
【0161】
本発明のある態様では、式Iで表される例示的な化合物は、ここでELX-02とも呼ばれるNB124、または医薬として許容できるその塩、例えば、その硫酸付加塩(例えば2付加塩)である。
【0162】
ここに記載されている方法は、擬似三糖アミノグリコシド化合物、例えば式Ia:
【0163】
【化17】
【0164】
(式中;
矩形破線は、R配置またはS配置である6’位の立体配置を示し;
は、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールから選択され;
は、置換または無置換アルキル、OR’およびNR’R’’から選択され、R’およびR’’は、独立して、水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、置換または無置換アルカリールおよびアシルから選択され;
は、水素、アシル、アミノ置換α-ヒドロキシアシル、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換アルカリール、およびここに記載されている細胞透過性基から選択され;
はここに記載されているアルキルである)
または、ここに記載されている医薬として許容できるその塩の大規模生成(例えば、ここに記載されている)に有用である。
【0165】
本発明の一部の態様によれば、アミノグリコシド構造の1位におけるアミン置換基は修飾され、その結果、Rは水素以外である。
【0166】
ここで全体として、水素以外の置換基を含むアミンは、ここで「修飾アミン置換基」、または単に「修飾アミン」と呼ばれる。
【0167】
本発明の一部の態様によれば、アミノグリコシド構造の1位におけるアミン置換基は、疎水性部分、例えばアルキル、シクロアルキル、アルカリールおよび/もしくはアリール、または、生理学的pHで正に荷電し、化合物の細胞透過性を増加できる基(ここでは「細胞透過性基」または「細胞透過基」とも呼ばれる)、例えば、ここで定義されているグアニンまたはグアニジン基、あるいは、ヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、尿素およびチオ尿素を含むように修飾される。
【0168】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rはアルキルで、一部の態様では、これは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピルおよびイソブチルを含むが、それらに限定されない1~4個の炭素原子の低級アルキルである。
【0169】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rは無置換(非置換)アルキルである。
【0170】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rはメチルである。
【0171】
あるいは、ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含むが、それらに限定されないシクロアルキルである。
【0172】
あるいはさらに、ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rは、アリール、例えば置換または無置換フェニルである。非限定的な例は、無置換フェニルおよびトルエンを含む。
【0173】
あるいはさらに、ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rは、アルカリール、例えば置換または無置換ベンジルである。
【0174】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rはアルキルである。一部の態様では、Rはメチルである。
【0175】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、RはOR’である。
【0176】
これらの態様の一部では、R’は水素で、Rはヒドロキシである。
【0177】
他の態様では、RはOR’で、R’は水素以外である。
【0178】
これらの態様の一部では、R’は、ここで定義されている置換もしくは無置換アルキル、または、ここで定義されている置換もしくは無置換シクロアルキルで、Rはアルコキシである。
【0179】
これらの態様の一部では、R’は、ここで定義されている置換または無置換アリールで、Rはアリールオキシである。
【0180】
これらの態様の一部では、R’は、ここで定義されているアシルで、Rはここで定義されているカルボキシレートである。
【0181】
あるいは、RはNR’R’’である。
【0182】
これらの態様の一部では、R’およびR’’は、いずれも水素である。
【0183】
これらの態様の一部では、R’とR’’の一方または両方が水素以外である。
【0184】
がNR’R’’である場合の、式Iaの可変基Rで表され得る例示的な化学基は、
R’が水素で、R’’が、nが例えば1~6であるNH-(CH)n-NHのようなアルキルアミノである化合物;R’が水素で、R’’が、nが例えば1~6であるNH-(CH)n-OHである化合物;R’が水素で、R’’が、nが例えば1~6で、R’’’が、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであるNH-(CH)n-C(=O)R’’’である化合物;R’が水素で、R’’が、nが例えば1~6で、R’’’が、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであるNH-(CH)n-CH(OR’’’)である化合物;ならびに、R’が水素で、R’’が、nが例えば1~6で、R’’’が、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロアリサイクリックであるNH-(CH)n-R’’’である化合物を含むが、それらに限定されない。
【0185】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rはアルキルで、これらの態様の一部では、Rは置換アルキル、例えば、1個以上のアミン基で置換されたアルキル(アミノアルキル)である。
【0186】
ここに記載されている態様のいずれか、およびそれらの組合せの一部では、式Iaの1位(環II)のアミン置換基は、ここに記載されている修飾アミンであり、その結果、Rは水素以外である。
【0187】
これらの態様の一部では、Rは、ここで定義されているアルキル、アルカリール、シクロアルキル、アリール、アシル、または(S)-4-アミノ-2-ヒドロキシブチリル(AHB)もしくは(S)-4-アミノ-2-ヒドロキシプロピオニル(AHP)のようなアミノ置換α-ヒドロキシアシルであり得る。
【0188】
がアルキルである態様のいくつかでは、アルキルは、例えば、以下に限定されるものではないが、ここに記載されているように、それぞれ任意に置換されているメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピルおよびイソブチルのような1~4個の炭素原子の低級アルキルであり得る。
【0189】
これらの態様の一部では、アルキルは、独立して、以下に限定されるものではないが、エチル、プロピルおよびイソプロピルのような無置換アルキルである。
【0190】
これらの態様の一部では、アルキルは、独立して、置換メチル、例えば、限定されるものではないが、ベンジルのようなアルカリールである。
【0191】
あるいは、Rはシクロアルキルで、シクロアルキルは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルであり得る。
【0192】
あるいはさらに、Rはアリールで、アリールは、例えば、置換または無置換フェニルであり得る。非限定的な例は、無置換フェニルおよびトルエンを含む。
【0193】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rは、ここに記載されているアルキル、シクロアルキルまたはアリールである。
【0194】
これらの態様の一部では、Rは、ここで定義されているアルキル、シクロアルキルまたはアリールであり、好ましくはアルキルである。
【0195】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rはアルキルで、一部の態様では、1~4個の炭素原子の低級アルキルである。
【0196】
一部の態様では、Rはアルキル、例えば、それぞれ任意に置換されているエチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、tert-ブチルである。
【0197】
一部の態様では、Rはメチルまたはエチルで、好ましくは置換メチルまたはエチルである。これらの態様の一部では、メチルまたはエチルは、例えば、シクロアルキルまたはアリールにより置換されている。そのような置換基は、この技術分野においてそれぞれアルキルシクロアルキルおよびアルカリールとも呼ばれる。例示的なアルカリールはベンジル(-CH-フェニル)である。
【0198】
一部の態様では、Rはプロピルまたはイソプロピルである。
【0199】
一部の態様では、Rはベンジルである。
【0200】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rはここで定義されている細胞透過性基であり、一部の態様では、Rはグアニジニルである。
【0201】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rは、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであり、好ましくはここで定義されているアルキルであり、そして、Rは、ここで定義されているアルキルであり、好ましくは、エチル、プロピル、イソプロピルまたはベンジルである。
【0202】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rは、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであり、好ましくはここで定義されているアルキルであり;そして、Rはここで定義されている細胞透過基、好ましくはグアニジンまたはグアニンである。
【0203】
ここで細胞透過性基は、ここで「細胞透過基」とも呼ばれ、典型的には、生理学的pHで正に荷電し、化合物の細胞透過性を増加できる基を含む。その例は、ここで定義されているグアニンまたはグアニジン基、あるいは、ここで定義されているヒドラジン、ヒドラジド、チオヒドラジド、尿素およびチオ尿素を含むが、それに限定されない。
【0204】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rは、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであり、好ましくは、ここで定義されているアルキルであり;Rは、ここで定義されている細胞透過基、好ましくは、グアニジンまたはグアニン、より好ましくはグアニジンである。
【0205】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rは、水素または(S)-4-アミノ-2-ヒドロキシブチリル(AHB)もしくは(S)-4-アミノ-2-ヒドロキシプロピオニル(AHP)のような基である。
【0206】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、Rは、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであり、好ましくはここで定義されているアルキルであり;Rは、水素、またはここで定義されているアミノ置換α-ヒドロキシアシルであり;Rはグアニジン基(グアニジニル)である。
【0207】
式Iaについてここに記載されている態様のいずれか1つのいくつか、およびそれらの組合せでは、6’位の配置は、R-立体配置である。
【0208】
式Iaについてここに記載されている態様のいずれか1つのいくつか、およびそれらの組合せでは、5’’位の配置は、S-立体配置である。
【0209】
ここで全体として、「アシル」という用語は、-C(=O)-R基を表し、Rは、置換または無置換アルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリールまたは水素である。
【0210】
例示的な態様では、アシルは、Rが、アルキル、アルカリールまたはアリールで、そのそれぞれが、1個以上のアミン置換基により任意に置換されている。
【0211】
一部の態様では、Rは置換アルキルであり、一部の態様では、Rは、カルボニル基のα位がヒドロキシで置換され、その結果、アシルは、α-ヒドロキシアシルである。
【0212】
一部の態様では、α-ヒドロキシアシルは1個以上のアミン基によりさらに置換され、アミノ置換α-ヒドロキシアシルである。
【0213】
ここに記載されているアシル基の態様のいくつかでは、アミン置換基は、例えば、アシルに関し、Rのβ、γ、δおよび/またはωの1つ以上の位置にあり得る。
【0214】
例示的なアミノ置換α-ヒドロキシアシルは、ここでAHB基とも呼ばれる(S)-4-アミノ-2-ヒドロキシブチリル基を含むが、それに限定されない。
本発明の一部の態様によれば、AHB基の代用物は、α-ヒドロキシ-β-アミノプロピオニル(AHP)基であり得る。追加の例示的なアミノ置換α-ヒドロキシアシルは、L-(-)-γ-アミノ-α-ヒドロキシブチリル、L-(-)-δ-アミノ-α-ヒドロキシバレリル、L-(-)-β-ベンジルオキシカルボニルアミノ-α-ヒドロキシプロピオニル、L-(-)-δ-ベンジルオキシカルボニルアミノ-α-ヒドロキシバレリルを含むが、それらに限定されない。
【0215】
ここで、本発明の一部の態様によれば、カルボニル(複数可)、ヒドロキシル(複数可)、および、任意の立体化学を示し低級アルキルを有するアミノ基(複数可)の組合せを含む他のRは、例えば、2-アミノ-3-ヒドロキシブタノイル、3-アミノ-2-ヒドロキシペンタノイル、5-アミノ-3-ヒドロキシヘキサノイル等を含む、AHBおよび/またはAHPの代わりの任意の置換基と想定されることは注目される。
【0216】
代表的な化合物は、WO2017/037718に記載されている。
【0217】
製造方法:
本発明の態様によれば、ここに記載されている方法の少なくとも一部は、アミノグリコシド化合物またはその中間体の大規模生成、製造または工業化に使用可能である。
【0218】
ここで、ここに記載されている化合物の生産で「大規模」とは、出発材料、中間体および/または最終生成物を問わず、化合物の少なくとも1つが、少なくとも1モル、少なくとも2モル、少なくとも3モル、または少なくとも5モル、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50モル、またはさらにそれを超える量で、そして、それらの値の任意の中間の値を含む量で、使用され、または製造される生産方法を意味する。
【0219】
あるいは、またはこれに加え、「大規模」な方法は、1つ以上の出発材料、中間体および/または最終生成物の重量により定義され、その結果、これらの材料の1つ以上は、少なくとも1Kg、少なくとも2Kg、少なくとも3Kgまたは少なくとも5Kg、例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100Kg、またはさらにそれを超える量で、そして、それらの値の任意の中間の値を含む量で、使用され、または生成される。
【0220】
あるいは、またはこれに加え、「大規模」な方法は、少なくとも10リットル、少なくとも15リットル、少なくとも20リットル、少なくとも30リットル、または少なくとも40、50、60、70、80、90、100リットル、またはさらにそれを超える量の、そして、それらの値の任意の中間の値を含む量の体積を有する反応容器において行われる、少なくとも1つの生成工程を含む方法に使用される反応容器の体積により定義される。
【0221】
擬似三糖アミノグリコシド化合物を製造する方法:
本発明の一部の態様の一側面によれば、ここに記載されている、式Iで表される擬似三糖アミノグリコシド化合物を製造する方法が提供される。この方法は、本発明の一部の態様によれば、ここで定義されている、アミノグリコシド化合物の大規模生成に有用である。
【0222】
本発明の一部の態様の一側面によれば、ここに記載されている、式Iaで表される擬似三糖アミノグリコシド化合物を製造する方法が提供される。この方法は、本発明の一部の態様によれば、ここで定義されている、アミノグリコシド化合物の大規模生成に有用である。
【0223】
本発明の態様によれば、ここに記載されている、式IまたはIaで表される化合物を製造する方法が提供され、この方法は、とりわけ、そのような化合物の大規模生成に使用可能で、この方法は、
ここに記載されている、式IIIで表される供与体化合物を、ここに記載されているそれぞれの態様のいずれか、およびそれらの任意の組合せに従って製造すること;
供与体化合物と、対応する受容体、例えば、ここで定義されているそれぞれの態様のいずれかの受容体(例えば、式II、IIa、IIbまたはIIc)をカップリングすること;ならびに、
すべての保護基を脱保護し、それにより、望ましい擬似三糖アミノグリコシドを得ることを含む。
【0224】
本発明の態様によれば、ここに記載されている式Iで表される化合物を製造する方法が提供され、この方法は、とりわけ、そのような化合物の大規模生成に使用可能であり、この方法は、
ここに記載されている、式IIIで表される供与体化合物を、ここに記載されているそれぞれの態様のいずれか、およびそれらの任意の組合せに従って製造すること;
式IIIで表される供与体化合物と、式II:
【0225】
【化18】
【0226】
(式中;
(矩形)破線は、ここに記載されている、6’位でのS-配置またはR-配置を表し;
OPは、ここに記載されている受容体保護ヒドロキシル基であり;
APは、ここに記載されている受容体保護アミノ基であり;
Aは、ここに記載されている受容体保護ヒドロキシル基(OP)であり;
Bは、ここに記載されているように、式IのRが水素の場合、受容体保護アミン基であり、および/または、Rが水素以外のものである場合、Rを定義する基の保護形態または非保護形態である)
で表される受容体化合物をカップリングすること;
保護ヒドロキシル基(存在する場合は、保護受容体ヒドロキシ基および保護供与体ヒドロキシ基)を脱保護すること;
保護アミノ基(存在する場合は、保護受容体アミン基および保護供与体アミン基)を脱保護し;ならびに、
任意に、存在する場合は、保護形態で存在する他の基、例えば、存在する場合は、Rを定義する基の保護形態を、脱保護することを含む。本発明の態様によれば、ここに記載されている、式Iaで表される化合物を製造する方法が提供され、この方法は、とりわけ、そのような化合物の大規模生成に使用可能で、この方法は、
ここに記載されている、式IIIで表される供与体化合物を、ここに記載されているそれぞれの態様のいずれか、およびそれらの任意の組合せに従って製造すること;
前記式IIIで表される化合物と、式IIb:
【0227】
【化19】
【0228】
(式中;
矩形破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し;
OPは、受容体保護ヒドロキシル基であり;
APは、受容体保護アミノ基であり;
Aは、式IaのRがOR’で、R’が水素である場合、受容体保護ヒドロキシル基(OP)であり;式IaのRがNR’R’’で、R’およびR’’の少なくとも1つが水素である場合、受容体保護アミン基(AP)であり;または、RがOH以外、またはNHR’もしくはNH以外である場合、Rを定義する基の保護形態または非保護形態であり;
Bは、式IaのRが水素である場合、受容体保護アミン基(AP)であり、または、Rが水素以外である場合、Rを定義する基の保護形態もしくは非保護形態である)
で表される化合物をカップリングすること;
前記受容体保護および供与体保護ヒドロキシル基を脱保護すること;
前記受容体保護および供与体保護アミノ基を脱保護すること;ならびに
存在する場合は、Rを定義する基の前記保護形態、および/または、Rを定義する基の前記保護形態を脱保護することを含む。
【0229】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、カップリングは、他のカップリング剤が想定されるにもかかわらず、BFエーテラートの存在下で行われる。
【0230】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、カップリングは、ここに記載されている式IIまたはIIbの化合物と、式III
【0231】
【化20】
【0232】
(式中、D、R、OTおよびOTは、それぞれの態様のいずれかでここで定義されているとおりであり、Lはここで定義されている脱離基である)
の化合物の間で行われる。
【0233】
ここで使用される「脱離基」という語句は、化学反応中に有機分子からたやすく脱離する、不安定な原子、基または化学構造の一部を表し、通常、脱離する原子、基または化学構造の一部の相対的な安定性により、脱離が促進される。典型的には、強酸の共役塩基である基は、脱離基として働く。一部の態様では、脱離基は、供与体と受容体のカップリング反応を促進する。本発明の態様の一部による適切な脱離基の代表的な例は、限定されるものではないが、イミデート(例えば、トリクロロアセトイミデートのようなアセトイミデート)、アセテート、トシレート、トリフラート、スルホネート、アジド、ハライド、チオヒドロキシ、アルコキシ、シアネート、チオシアネート、ニトロおよびシアノを含む。
【0234】
一部の態様では、脱離基の導入は、式IIIの化合物の活性化形態を表す。
【0235】
一部の態様では、式IIIの化合物は、カップリングの前にその活性化形態に変換される。
【0236】
一部の態様では、活性化形態への変換は、インサイチューで行われ、その結果、式IIIの化合物は、反応容器中で、式IIまたはIIbの化合物、および/またはカップリング剤と接触させる前、またはその最中に、活性化形態(例えば式III)に変換される。
【0237】
一部の態様では、式IIIの化合物のその活性化形態への変換は、カップリングが行われる前に、つまり、ここに記載されているカップリング剤および/または受容体と接触させる前に行われる。
【0238】
式IIまたはIIbの受容体の様々な位置における受容体ヒドロキシル保護基および受容体アミノ保護基は、それぞれの位置で、同一であり得、また、異なり得る。
【0239】
一部の態様では、例えば、式IまたはIaのRが水素以外である場合、式IIまたはIIbの受容体は、それと供与体との反応の前に、置換基Bを生成することにより製造される。
【0240】
一部の態様では、式IIまたはIIbの置換基Bは保護アミン基を含み、Rが水素以外の場合、Rを定義する基の保護形態をさらに含む。例えば、Rがアミンを含む基である場合、アミンは、ここに記載されているアミノ保護基の形態である。Rがグアニンまたはグアニジンを含む基である場合、グアニンまたはグアニジンは保護形態である。Rがヒドロキシを含む基である場合、ヒドロキシはここに記載されているヒドロキシ保護基の形態である。水素以外である場合のRを定義する基の保護形態は、当業者に周知で、すべてが本発明の態様に包含される。
【0241】
一部の態様では、式IIbの置換基Aは、RがOR’で、R’が水素である場合、保護ヒドロキシ基を含む。
【0242】
一部の態様では、式IIbの置換基Aは、RがNR’R’’で、R’とR’’の一方または両方が水素である場合、保護アミン基を含む。R’とR’’の一方または両方が水素以外で、アミンを含む場合、当該アミンはここに記載されているアミノ保護基の形態である。R’とR’’の一方または両方が、ヒドロキシを含む基である場合、当該ヒドロキシは、ここに記載されているヒドロキシ保護基の形態である。水素以外である場合のR’およびR’’を定義する基の保護形態は、当業者に周知で、すべてが本発明の態様に包含される。
【0243】
受容体化合物(式IIまたはIIb)の構造は、本発明の一部の態様に従い、それぞれ、式IまたはIaで表される得られた化合物の環Iおよび環IIの絶対構造を決定する。
【0244】
供与体化合物の構造は、本発明の一部の態様に従い、式IまたはIaで表される得られた化合物の環IIIの絶対構造、すなわち、5’’位の立体配置、および式IまたはIaにおけるRのタイプを決定する。
【0245】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、受容体ヒドロキシル保護基のそれぞれは、O-アセチルである。
【0246】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、O-アセチルヒドロキシ保護基の脱保護は、以下の実施例で説明され、例となるようなアンモニアのメタノール溶液中で行われる。
【0247】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、受容体アミノ保護性基のそれぞれは、ベンジルオキシカルボニル(CBz)基である。
【0248】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、供与体アミノ保護性基のそれぞれは、ベンジルオキシカルボニル(CBz)基である。
【0249】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、供与体ヒドロキシ保護基のそれぞれは、O-ベンゾイル基である。
【0250】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、アミノ基の脱保護は、以下の実施例で説明され、例となるような、Pd/C触媒を用いた水素化により有利に行われる。
【0251】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、式IまたはIaの化合物は硫酸塩で、その遊離塩基として形成された場合、当該方法は、式IまたはIaで表される化合物の硫酸塩への変換をさらに含む。
【0252】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、硫酸塩への変換は、供与体と受容体のカップリングで得られる、遊離塩基の形態の式IまたはIaで表される化合物を、以下の実施例で説明され、例となるような、HSOのメタノール溶液と接触させることにより行われる。
【0253】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、式IIまたはIIbで表される受容体化合物は、それぞれの態様のいずれか、およびそれらの任意の組合せにおいて、ここに記載されているように製造される。
【0254】
式Iにおいて、Rがメチル、6’位の配置がR-配置、Rが水素、Rがメチルである化合物を製造する例示的な方法は、以下の実施例に記載されているとおりで、かつ、図1~3に示されている。ここに記載されている態様のいずれかの一部では、式IまたはIaで表される化合物は、その塩を含め、ここに記載された受容体化合物と、例えば、WO2012/066546および/またはWO2017/037718で記載された供与体化合物をカップリングすることにより製造される。
【0255】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、式IまたはIaで表される化合物は、その塩を含め、ここに記載されたそれぞれの態様のいずれかの供与体化合物と、例えば、WO2012/066546および/またはWO2017/037718で記載されている受容体化合物をカップリングすることにより製造される。
【0256】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、式IまたはIaで表される化合物は、その塩を含めて、ここに記載されている受容体化合物のいずれかと、ここに記載されている供与体化合物のいずれかをカップリングすることにより製造される。
【0257】
これらの態様の一部では、カップリング、および/または保護性基とその対応する脱保護、および/または硫酸塩への変換は、それぞれの態様のいずれか、およびそれらの任意の組合せとしてここに記載されているように行われる。
【0258】
供与体化合物の製造:
本発明の一部の態様の一側面によれば、式III:
【0259】
【化21】
【0260】
(式中;
OTおよびOTは、それぞれ独立して、供与体保護ヒドロキシル基であり;
は、式IまたはIaにおいてここで定義されているとおりで、好ましくはアルキル、より好ましくはメチルであり;
Dは供与体保護アミノ基である)
で表される供与体化合物を製造する方法が提供される。
【0261】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、ここに記載されている方法は、式IIIの化合物の大規模生成に利用可能である。
【0262】
本発明の一部の態様によれば、供与体ヒドロキシ保護性基のそれぞれは、O-ベンゾイルである。
【0263】
一部の態様によれば、その方法は、
式IIIa:
【0264】
【化22】
【0265】
で表される化合物と、式RMgX(Xはハライドである)で表されるグリニャール試薬を反応させて、
それにより、式IIIb:
【0266】
【化23】
【0267】
で表される化合物を立体選択的に得ることにより行われる。
【0268】
「立体選択的」は、示された立体異性体が、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはさらにそれを超える光学的純度(鏡像異性体純度)で得られることを意味する。
これは、得られた式IIIbの化合物の、モルにより、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%は、それぞれ、式IIIbの5’’位がS-配置であることを意味する。
【0269】
この方法は、式IIIbで表される化合物を式IIIc:
【0270】
【化24】
【0271】
で表される化合物に変換すること、
式IIIcで表される化合物とアミノ保護性基を反応させ、それにより、Dアミノ保護基を形成すること;ならびに
式IIIcで表される化合物と、ヒドロキシ保護性基を反応させ、それにより、OTおよびOTヒドロキシ保護基を形成することにより続く。
【0272】
この方法は、1’’位でヒドロキシ基を生成することをさらに含んでもよい。
【0273】
式IIIbで表される化合物を、式IIIcで表される化合物に変換し、さらに、式IIIcで表される化合物と反応させて、式IIIで表される供与体化合物を得ることは、5’’位の立体配置を維持することにより行われる。
【0274】
「立体配置を維持すること」は、式IIIcおよび式IIIの化合物の光学的純度が、ここに記載されている式IIIbの化合物と本質的に同一であることを意味する。
「本質的に同一」は、式IIIbの化合物の光学的純度が10%以下、好ましくは5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、または0.1%以下で異なることを意味する。
【0275】
一部の態様では、式IIIcおよび式IIIの化合物の光学的純度は、ここに記載されている式IIIbの化合物と本質的に同一である。
【0276】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、アミノ保護性基は、N-ベンジルオキシカルボニルである。
【0277】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、ヒドロキシ保護性基のそれぞれは、ベンゾイルである。
【0278】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、その方法は、
D-リボースをジオキソラン保護D-リボースに変換すること;
5’’位のヒドロキシ基をそれぞれのアルデヒドに酸化すること;および
アルデヒドとN-ベンジルヒドロキシルアミン塩酸塩を反応させることによって、式IIIaで表される化合物を製造することにより行われる。
【0279】
例示的な態様では、式IIIaで表される化合物は、化合物103について以下の実施例に記載されているように製造される。
【0280】
例示的な態様では、置換基Dは、N-ベンジルオキシカルボニル(CBz)保護アミノ基で、Rはメチルで、TおよびTのそれぞれは、ベンゾイルである。ここでBB-Dとも呼ばれるそのような供与体化合物を製造する例示的な方法は、以下の実施例に詳細に記載され、概して図1に示されている。LがOHの場合、供与体化合物は、ここでBB-D-OHとも呼ばれる。
【0281】
一部の態様では、式IIIaで表される化合物をD-リボースから製造すること、式IIIaで表される化合物とグリニャール試薬を反応させること、式IIIbで表される化合物を、式IIIcで表される化合物に変換すること、および、式IIIcで表される化合物とアミノ保護性基を反応させ、それによりDを形成することは、「ワンポット反応」として、すなわち、これらの反応のそれぞれにおいて得られた中間産物を連続的に反応させ、それにより、次の中間体を得ることにより行われ、および/または中間体化合物を単離することなく行われる。
【0282】
ここに記載されている態様のいずれかについて、式IIIa、IIIbおよびIIIcの化合物における1’’位のメトキシ基は、ここで定義されている他のヒドロキシ保護性基で置換されることは注目されるべきである。
【0283】
ここに記載されている態様のいずれかについて、2’’および3’’位のヒドロキシ基を保護するジオキソラン基は、ここで定義されている他のヒドロキシ保護性基により置きかえられ、この保護性基は、ここに記載されているOTおよびOTと同一であり得、または異なり得ることはさらに注目されるべきである。
【0284】
本発明の一部の態様によれば、ここに記載されている、式IIIの化合物を製造する方法は、式IV:
【0285】
【化25】
【0286】
(式中;
は、ここで定義されているとおりであり
およびXは、それぞれ独立して、水素またはここで定義されているヒドロキシ保護性基である)
の化合物の製造に使用できる。
【0287】
その方法は、それぞれの態様のいずれかに記載されている式IIIcの化合物を得ること;当該技術分野で周知の手順を用い、それぞれのOXおよびOXを生成すること(式IIIcの化合物でこれらがヒドロキシ保護性基と異なる場合);ならびに、1’’位のヒドロキシ基を生成すること、により行われる。
【0288】
一部の態様では、式IVの化合物は、1’’位のヒドロキシ基を、ここで定義されているそれぞれの脱離基に変換することにより、ここに記載されている式IIIの化合物の製造に利用可能である。
【0289】
受容体化合物を製造する方法:
本発明の一部の態様の一側面によれば、式II:
【0290】
【化26】
【0291】
(式中;
(矩形)破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し、好ましくはR-配置であり;
は水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであり、好ましくはアルキル、より好ましくはメチルであり;
OPは、受容体保護ヒドロキシル基であり;
APは、受容体保護アミノ基であり;
Aは、受容体保護ヒドロキシル基(OP)であり;
Bは、受容体保護アミン基、アシルまたは保護もしくは非保護アミノ置換α-ヒドロキシアシルであり、好ましくは受容体保護アミノ基である)
で表される受容体化合物を製造する方法が提供される。
【0292】
受容体の様々な位置の、受容体ヒドロキシ保護基および受容体アミノ保護基は、各位置で同一であり得、または異なり得る。
【0293】
受容体化合物の構造は、本発明の一部の態様に従い、得られた式Iの化合物の環Iおよび環IIの絶対構造を決定する。
【0294】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、ここに記載されている式IIの受容体を製造する方法が提供され、この方法は、当該受容体の大規模生成、または、式Iの化合物の大規模生成に利用可能である。
【0295】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、式IIの受容体を製造する方法が提供され、この方法は、とりわけ、当該受容体の大規模生成、または式Iの化合物の大規模生成に使用でき、この方法は、
式IIa:
【0296】
【化27】
【0297】
(式中;
破線は、ここに記載されている6’位での立体配置を表し、
は、水素、アシルまたはアミノ置換α-ヒドロキシアシル、好ましくは水素である)
で表される化合物、または医薬として許容できるその塩を用意すること;
アミノ基のそれぞれをアミノ保護基に変換すること;およびヒドロキシ基のそれぞれをヒドロキシ保護基に変換することを含む。
【0298】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、ヒドロキシ保護基のそれぞれは、O-アセチルである。
【0299】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、アミノ保護基のそれぞれは、ベンジルオキシカルボニル(CBz)保護アミノ基である。
【0300】
ここで論じられているように、そのようなアミノ保護基は、以前に記載されたアジド基より実質的に有害ではなく、さらに、有利には、水素化によりアミノ基の脱保護が可能になる。
【0301】
本発明の一部の態様によれば、Rはメチルであり、6’位での配置はR-配置であり、式IIaの化合物を得ることは、G-418スルフェートを式IIaで表される化合物に変換することを含む。
【0302】
本発明の一部の態様によれば、この変換は、(例えば、当該技術分野で公知の方法で)G-418をその遊離塩基の形態に変換し、G-418の遊離塩基の形態と、HClのメタノール溶液との接触を含む。
【0303】
ここでBB-Aと呼ばれる式IIの例示的な受容体を製造する例示的な方法は、実施例に詳細に記載され、図2に示されている。
【0304】
本発明の態様による例示的な方法では、ここに記載されている方法は、ここでNB124またはELX-02とも呼ばれる、擬似三糖アミノグリコシド化合物の大規模生成に使用可能で、ここに記載されている供与体化合物BB-D-OH、およびここに記載されている受容体化合物BB-Aを製造し、BB-D-OH(任意に、これをBB-Dのような活性化形態に変換する)とBB-Aをカップリングし、それにより、望ましい生成物を、可能であればその塩(例えば、硫酸塩)として得ることにより行われる。そのような方法は、図3に示されている。
【0305】
本発明の一部の態様の一側面によれば、式IIb:
【0306】
【化28】
【0307】
(式中;
(矩形)破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し、好ましくはR-配置であり;
は、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであり、好ましくはアルキル、より好ましくはメチルであり;
OPは、受容体保護ヒドロキシル基であり;
APは、受容体保護アミノ基であり;
AおよびBは、式IIbについてここで定義されているとおりる)
で表される受容体化合物を製造する方法が提供される。
【0308】
受容体の様々な位置の、受容体ヒドロキシ保護基および受容体アミノ保護基は、各位置で同一であり得、または異なり得る。
【0309】
式IIbの受容体化合物の構造は、本発明の一部の態様に従い、得られた式Iaの化合物の環Iおよび環IIの絶対構造を決定する。
【0310】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、ここに記載されている式IIbの受容体を製造する方法が提供され、この方法は、受容体の大規模生成、または式Iaの化合物の大規模生成に使用可能である。
【0311】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、式IIbの受容体を製造する方法が提供され、この方法は、とりわけ、受容体の大規模生成、または、式Iaの化合物の大規模生成に利用可能であり、この方法は、
式IIc:
【0312】
【化29】
【0313】
(式中;
矩形破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し;
Aは、式IaのRがOR’で、R’が水素である場合、OHであり;式IaのRがNR’R’’で、各R、R’’が水素の場合、NHであり;式IaのRがNR’R’’で、R’およびR’’の1つが水素の場合、NHR’またはNHR’’であり;または、式IaのRで定義された置換または無置換アルキルであり;
Bは、式IaのRが水素である場合、アミンであり、または、Rがここで定義されているように水素以外である場合、Rを定義する基の非保護形態である)
で表される化合物を得ること;
アミノ基のそれぞれをアミノ保護基に変換すること;および、ヒドロキシ基のそれぞれをヒドロキシ保護基に変換することを含む。
【0314】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、ヒドロキシ保護基のそれぞれは、O-アセチルである。
【0315】
ここに記載されている態様のいずれかの一部によれば、アミノ保護基のそれぞれは、ベンジルオキシカルボニル(CBz)保護アミノ基である。
【0316】
本発明の態様は、さらに、ここに記載されている式IIIa、IIIbおよびIIIcで表される中間体化合物の製造方法(例えば、ここで定義されている大規模方法)、ならびに、ここに記載されている式IIIa、IIIbおよびIIIcで表される化合物に関する。
【0317】
治療用途:
ここに示される化合物は、切断型変異の抑制活性、すなわち、未成熟終止コドン変異のリードスルーを誘導する能力を所有するように設計された。そのような活性は、これらの化合物の、遺伝子障害、特に切断型変異を特徴とする障害を処置するための治療活性剤としての使用に適するようにする。
【0318】
本発明の一部の態様の一側面によれば、ここで一般式IまたはIaでまとめて表され、ここに記載されている方法により製造される化合物は、遺伝子障害の処置に使用する、または、遺伝子障害の処置のための医薬の製造に使用するためのものである。
【0319】
本発明の一部の態様の一側面によれば、遺伝子障害を処置する方法が提供される。この方法は、本発明のこの側面によれば、化合物およびそれらの任意の組合せのそれぞれの態様を含む、ここに記載されている方法により製造され、ここで、一般式IまたはIaで示される1つ以上の化合物の治療有効量を必要とする対象に投与することにより行われる。
【0320】
ここで使用される「処置する」という用語は、状態の進展の抑制、実質的な阻害、遅延もしくは好転、状態の臨床的もしくは審美的症状の実質的な改善、または、状態の臨床的もしくは審美的症状の出現の実質的な防止を含む。
【0321】
ここで使用される「治療有効量」という語句は、処置される症状の1つ以上をある程度軽減する量の投与されるポリマーを表す。
【0322】
ここで使用される「遺伝子障害」という語句は、しばしば、両親から遺伝した1つ以上の欠損遺伝子によって引き起こされ、そして、欠陥のある劣性遺伝子の2つの健常なキャリアが再生産し、または、欠陥のある遺伝子が優性である場合、想定外に発生し得る、慢性的な障害を指す。遺伝子障害は、影響を受ける子孫に対して、1つの変異した遺伝子のコピーのみを必要とする常染色体優性パターン、および、影響を受ける子孫に対して、2つの遺伝子のコピーが変異していなければならない常染色体劣性パターンを含む、様々な遺伝型パターンで発生し得る。
【0323】
ここで使用される、「遺伝子障害」という語句は、遺伝的障害、遺伝的疾患、遺伝的状態または遺伝的症候群を包含する。
【0324】
本発明の態様のいずれかの一部によれば、遺伝的障害、遺伝的疾患、遺伝的状態または遺伝的症候群は、未成熟終止コドン変異、または切断型変異(ナンセンス変異)を有する遺伝子に関与し、これにより、不適切な翻訳が引き起こされる。不適切な翻訳は、必須タンパク質を機能不全にし、または必須タンパク質の合成の減少または中止を引き起こす。本発明の一部の態様に関して、本発明の態様の範囲内と期待される遺伝子障害は、未成熟終止コドン変異および/またはタンパク質切断表現型に関連する遺伝子障害と呼ばれる。
【0325】
本発明の態様のいずれかの一部によれば、未成熟終止コドン変異および/またはタンパク質切断表現型に関連する遺伝子障害は、完全な転写産物(mRNA)のリードスルーの促進により、または、言い換えれば、ナンセンス変異(未成熟終止コドン変異および/または切断型変異)の抑制の促進により処置できる。したがって、遺伝子障害は、リードスルー誘導化合物により処置できる障害であり得る。
【0326】
未成熟終止コドン変異および/またはタンパク質切断表現型に関連する遺伝子障害を同定する方法は、当該技術分野で周知で、完全または部分的なゲノム解読、遺伝的バイオマーカーの検出、表現型の分類および遺伝情報の分析を含む。
【0327】
そのような方法は、しばしば、変異型/野生型(WT)配列のペアを生じ、これらのペアは、遺伝子障害が、未成熟終止コドン変異および/またはタンパク質切断表現型に関連するかどうかを同定するための公知の方法論に使用できる。
【0328】
そのような遺伝子障害を処置する化合物のリードスルー誘導活性は、当該技術分野において周知の方法で確証できる。
【0329】
例えば、変異した遺伝子(遺伝子障害を引き起こす遺伝子)の配列により中断される2つのレポーター遺伝子を含むプラスミドを、完全な細胞または無細胞系のいずれかのタンパク質発現プラットフォームにトランセクトし、テスト化合物の存在下で、前記2つの遺伝子の発現レベル間の比が、典型的には一連の濃度と複製で測定され、野生型の遺伝子発現レベル比、および/または、テスト化合物を含まない対照試料で測定した発現レベル比と比較される。
【0330】
リードスルー活性の実験モデル、すなわち未成熟終止コドン変異を含む遺伝子の塩基配列は、未成熟終止コドン変異および/またはタンパク質切断表現型に関連する遺伝子障害を同定する方法の副生成物であることは注目され、さらに、ゲノムデータ獲得の大きな進歩で、この方法は、今や十分に当業者の技術範囲内にあり、また、未成熟終止コドン変異および/またはタンパク質切断表現型に関連すると示されてきた遺伝子障害の事例のように、候補薬物の作用機序が確立されれば、ここに示されるリードスルー誘導化合物のいずれか1つの効能、選択性および安全性の、同定、特徴付け、および評価が、十分に当業者の技術範囲内にあることは、注目される。ここに示されるリードスルー誘導化合物を、さらに薬物開発の日常的プロセスにより得ることは、十分に当業者の技術範囲内にあることはさらに注目される。
【0331】
ここでリードスルー活性と呼ばれる、未成熟終止コドン変異および/または切断型変異のリードスルーをテストする方法論は、当該技術分野で公知であり、いくつかの例示的な実験方法が以下の実施例で示され、これにより、本発明の一部の態様によるリードスルー誘導化合物が特徴付けられる。他の方法もリードスルー誘導化合物の特徴付けに使用でき、そのような方法も、本発明の範囲内にあると想定されることは理解されるべきである。例えばここに示される方法は、比較的短時間で数千もの化合物をアッセイできるハイスループットスクリーニング技術にも適合できる。
【0332】
薬物としての使用の安全性の観点から、そして、その細胞毒性と効能の観点で候補薬物を評価するために、多くのインビトロ方法論が、ここに示されるリードスルー誘導化合物を特徴付けるために使用されること当業者は認識する。真核生物と原核生物の選択性について、多くのインビトロ方法論がここに示されるリードスルー誘導化合物を特徴付けるために使用されること当業者は認識し、また、そのような方法論は、比較的短時間で何千もの化合物をアッセイできるハイスループットスクリーニング技術にも適合させてもよい。
【0333】
少なくとも1つの未成熟終止コドンまたは他のナンセンス変異の存在に関連する、例示的な遺伝子障害、疾患、状態および症候群は、レット症候群、嚢胞性線維症(CF)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、先天性筋ジストロフィー(CMD)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、第VII因子欠乏、家族性心房細動、ヘイリー-ヘイリー病、血友病A、血友病B、ハーラー症候群、ルイ-バール症候群(毛細血管拡張性運動失調症、AT)、マッカードル病、ムコ多糖症、腎型シスチン症、多発性嚢胞腎、脊髄性筋萎縮症(SMA)、テイサックス病、アッシャー症候群、X連鎖腎性尿崩症(XNDI)およびX連鎖網膜色素変性を含むが、それらに限定されない。
【0334】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、遺伝子障害は、レット症候群である。
【0335】
ここに記載されている方法および使用のいずれかにおいて、ここに記載されている化合物は、それ自体、または、ここで定義されている医薬として許容できる担体をさらに含む医薬組成物の一部の形態を利用できる。
【0336】
本発明の一部の態様の一側面によれば、活性成分、ここに記載されている化合物、および医薬として許容できる担体を含む医薬組成物が提供される。
【0337】
ここで使用される「医薬組成物」は、ここに示される化合物と、他の化学成分、例えば医薬として許容でき、適切な担体および賦形剤の調製物を指す。医薬組成物の目的は化合物の生物への投与の促進である。
【0338】
以下において、「医薬として許容できる担体」という用語は、生物に著しい刺激を引き起こさず、投与された化合物の生物学的活性および性質を無効にしない担体または希釈剤を指す。担体の例は、以下に限定されるものではないが、プロピレングリコール、生理食塩水、エマルションおよび有機溶媒と水の混合物、ならびに固体(例えば粉末化された)担体、および気体担体である。
【0339】
ここで「賦形剤」という用語は、化合物の投与をさらに促進するために、医薬組成物に添加される不活性物質を指す。賦形剤の例は、以下に限定されるものではないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖および様々なタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油ならびにポリエチレングリコールを含む。
【0340】
製剤化技術および薬物の投与は、"Remington's Pharmaceutical Sciences" Mack Publishing Co., Easton, PAの最新版で見出され得、これは、参照によりここに組み込まれる。
【0341】
本発明の医薬組成物は、当該技術分野で周知の方法により、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠化、研和、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥により製造してもよい。
【0342】
したがって、本発明に従って使用する医薬組成物は、ここに示された化合物を、医薬として使用できる調製物に加工することを促進する、賦形剤および助剤を含む1つ以上の医薬として許容できる担体を使用する、従来のやり方で製剤化されてもよい。適正な製剤は、選択された投与経路に依存する。
【0343】
一部の態様によれば、投与は経口的に行われる。経口投与に関し、ここに示される化合物は、化合物と、当該技術分野で周知の医薬として許容できる担体を組み合わせることにより容易に製剤化できる。そのような担体は、ここに示される化合物を、患者による経口摂取のために、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することを可能にする。経口使用のための薬理学的調製物は、固体賦形剤を使用し、任意に、生じた混合物をすり潰し、必要に応じて、錠剤または糖衣錠コアを得るために、適切な助剤を添加した後、顆粒混合物を加工することにより、作ることができる。適切な賦形剤は、詳細には、フィラー、例えばラクトース、スクロース、マンニトールもしくはソルビトールを含む糖;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボメチルセルロースナトリウム;および/または生理学的に許容できるポリマー、例えばポリビニルピロリドン(PVP)である。必要に応じて、崩壊剤、例えば架橋連結ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムを添加してもよい。
【0344】
経口的に使用できる医薬組成物は、ゼラチンでできたプッシュフィット式カプセルならびに、ゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールのような可塑剤でできたシールされた軟カプセルを含む。プッシュフィット式カプセルは、ラクトースのようなフィラー、デンプンのような結合剤、滑石またはステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、および任意に安定剤と混和した活性成分を含有してもよい。軟カプセルでは、ここに示される化合物を、適切な液体、例えば脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコール中で溶解または懸濁してもよい。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与のためのすべての製剤は、選択された投与経路に適する投与量にすべきである。
【0345】
注入に関して、ここに示される化合物は、プロピレングリコールやポリエチレングリコールのような有機溶媒の有無を問わず、水溶液、好ましくは生理学的に適合可能な緩衝液、例えばハンクス溶液、リンガー溶液または生理食塩水緩衝液として製剤化してもよい。
【0346】
経粘膜投与では、浸透剤が製剤に使用される。そのような浸透剤は一般に当該技術分野で公知である。
【0347】
糖衣錠コアは、適切なコーティングにより得られる。この目的のために、濃縮糖溶液を使用してもよく、これは、任意に、アラビアゴム、滑石、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含有してもよい。活性アミノグリコシド化合物の用量の様々な組合せを同定し、または特徴付けるために、染料または顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに添加してもよい。
【0348】
バッカル投与に関して、組成物は、従来のやり方で製剤化された錠剤またはトローチの形態をとってもよい。
【0349】
吸入による投与に関して、ここに示される化合物は、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素の使用により、加圧パックまたはネブライザーからのエーロゾルスプレーの形態(典型的には、粉末状、液状および/または気体状担体を含む)で都合よく送達される。加圧エーロゾルの場合、投与単位は、定量を送達するバルブを設けることにより決定してもよい。吸入器または注入器で使用するためのゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、ここに示される化合物と、限定されるものではないが、ラクトースまたはデンプンのような適切な粉末ベースの粉末混合物を含むように製剤化することができる。ここに示される化合物は、例えば、ボーラス注入または連続注入による非経口投与用に製剤化してもよい。注入用の製剤化は、任意に防腐剤が添加された、アンプルまたは複数回投与容器のような単位剤形で示されてもよい。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、液剤またはエマルションであってもよく、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤のような調合剤を含有してもよい。
【0350】
非経口投与用の医薬組成物は、水溶性形態の化合物調製物の水溶液を含む。さらに、ここに示される化合物の懸濁液は、適切な油性注入懸濁液およびエマルション(例えば、油中水、水中油または油中油中水エマルション)として調製してもよい。適切な脂溶性溶媒またはビヒクルは、ゴマ油のような脂肪油、オレイン酸エチルのような合成脂肪酸エステル、トリグリセリドまたはリポソームを含む。水性注入懸濁液は、懸濁液の粘度を上昇させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランを含有してもよい。任意に、懸濁液は、適切な安定剤、または、高度に濃縮した液剤の調製を可能にするためにここに示される化合物の溶解度を上昇させる作用剤も含有してもよい。
【0351】
あるいは、ここに示される化合物は、使用する前に、適切なビヒクル、例えば、無菌、パイロジェンフリー水で構成するための粉末形態であってもよい。
【0352】
ここに示される化合物は、ココアバターや他のグリセリドのような従来の坐剤ベースを使用して、坐剤または停留浣腸のような直腸組成物として製剤化してもよい。
【0353】
ここに記載されている医薬組成物は、ゲル相担体または賦形剤の適切な固体も含んでもよい。そのような担体または賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリマー、例えばポリエチレングリコールを含むが、それらに限定されない。
【0354】
本発明の使用に適した医薬組成物は、活性成分が意図された目的を達成するのに有効な量で含有される組成物を含む。より具体的には、治療有効量は、障害の症状を防止する、緩和する、もしくは改良する、または処置される対象の生存率を延長するのに有効な、ここに示される化合物の量を意味する。
【0355】
治療有効量の決定は、とりわけ、ここに示される、詳細な開示を踏まえると、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0356】
本発明の態様の方法で使用され、ここに示される化合物について、治療有効量または用量は、動物での活性アッセイから最初に評価できる。例えば、用量は、活性アッセイにより判定される変異抑制濃度となる循環濃度範囲(例えば、切断型変異の実質的なリードスルーを達成する試験化合物の濃度)を到達するために動物モデルで製剤化される。そのような情報は、ヒトで有用な用量をより正確に判定するために使用できる。
【0357】
ここに示される化合物の毒性および治療的効能は、例えば、対象化合物のEC50(最大効果の50%が観察される化合物の濃度)およびLD50(試験動物の50%が死亡する致死量)を決定することにより、実験動物を用いる標準の薬学的手順により決定できる。これらの活性アッセイおよび動物研究から得たデータは、ヒトに使用するための投与量範囲の製剤化に使用できる。
【0358】
投与量は、用いる剤形および投与経路に応じて変化させてもよい。正確な製剤化、投与経路および投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師が選択できる(例えば、Finglら、1975, "The Pharmacological Basis of Therapeutics", Ch.1 p.1参照)。
【0359】
投与量および間隔は、最小有効濃度(MEC)といわれる、望ましい効果を維持するのに十分な、ここに示される化合物の血漿濃度となるために個々に調整してもよい。MECは、各調製物で変化するが、インビトロのデータ;例えば、切断型変異を有する遺伝子すべての10~90%の発現、すなわち変異コドンのリードスルーを達成するのに必要な化合物の濃度から推定できる。MECを達成するのに必要な投与量は、個々の特性および投与経路に依存する。HPLCアッセイまたはバイオアッセイは、血漿中の濃度を決定するのに使用できる。
【0360】
投与間隔は、MEC値を使用しても決定できる。調製物は、時間の10~90%、好ましくは30~90%、最も好ましくは50~90%にわたりMECを超える血漿中濃度を維持するレジメンを使用して投与する必要がある。
【0361】
処置される慢性状態の重症度および反応性に応じて、投与は、数日から数週間続く定期的な処置、定期的な処置中に十分な改善が達成されるまで、または、定期的な処置で障害状態の実質的な減少が達成されるまでの過程を伴う、上記徐放性組成物の単回の定期的な投与であることができる。
【0362】
もちろん、投与される組成物の量は、処置される対象、病気の重症度、投与法、担当医師の判断などに依存する。本発明の組成物は、必要に応じて、活性成分を含有する1つ以上の単位剤形を含有してもよいパックまたはディスペンサーデバイス、例えばFDA(米国食品医薬品局)で承認されたキットで提供してもよい。パックまたはディスペンサーデバイスは、投与のための説明書を伴ってもよい。パックまたはディスペンサーは、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により指定される形態で容器に付随する通知を伴ってもよく、この通知は、ヒトまたは獣医学的投与用の組成物の形態の当局による承認を反映する。例えば、そのような通知は、処方薬について米国食品医薬品局の承認を受けたラベル、または、承認された製品添付文書であってもよい。適合可能な医薬担体中で製剤化された、この態様による化合物を含む組成物も、以上に詳細に述べたように、調製され、適切な容器に入れられ、示された状態の処置または診断のために表示してもよい。
【0363】
したがって、一部の態様では、医薬組成物は、ここで定義されている遺伝子障害の処置に使用するために、パッケージング材料中にパッケージされ、パッケージング材料中または材料上の印刷で識別される。
【0364】
ここに記載されている組成物、方法および使用において、化合物は、遺伝子障害の処置に有用な他の作用剤と組み合わせて利用できる。
【0365】
定義によれば慢性である遺伝子障害の処置を主に対象とするので、ここに示される化合物、またはそれを含む医薬組成物は、処置される対象の生涯を通じて投与されると予想される。したがって、化合物を含む医薬組成物の投与の様式は、投与が、簡単かつ快適なものでなければならず、好ましくは自己投与であり、患者の健康と生活に対する影響を最小にするものでなければならない。
【0366】
ここに示される化合物、またはそれを含む医薬組成物の繰り返しかつ定期的な投与は、例えば、毎日、すなわち1日1回行われ、より好ましくは、投与は、毎週、すなわち週1回行われ、より好ましくは、投与は、毎月、すなわち月1回行われ、最も好ましくは、投与は、数ヶ月(例えば、1.5ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月または6ヶ月)に1回行われる。
【0367】
以上で論じられているように、切断型変異リードスルー薬物としての目下公知のアミノグリコシドの使用に関する限定の一部は、それらは、主に抗菌性である(抗生物質として使用される)という事実に関係する。抗菌剤の長期間の使用は、腸内の微生物叢を変化させ、これにより、炎症性腸疾患の紅斑といった他の医学的状態を引き起こす可能性、または悪化する可能性があり、かつ、一部の病理学的な微生物株に耐性の出現を引き起こす可能性があるため、まったく是認されず、生命を脅かすことさえある。
【0368】
一部の態様では、ここに示される化合物は、実質的に抗菌活性を有さない。「抗菌活性を有さない」は、特定の株に対するその最小阻害濃度(MIC)が、この株に対する抗生物質とみなされる化合物の濃度よりはるかに高いことを意味する。さらに、これらの化合物のMICは、切断型変異抑制活性を発揮するのに必要とされる濃度より顕著に高い。
【0369】
実質的に非殺菌性であるため、ここに示される化合物は、前述の副作用を示さず、ゆえに、良性、および/または有益な微生物を含む可能性のある吸収経路を介して投与でき、微生物は標的とはされず、したがって、保存が必要となる場合がある。ここに示される化合物のこの重要な特性により、抗菌性に関連した有害な蓄積効果を引き起こすことがなく、これらの化合物は、繰り返し、また生涯投与できるので、慢性疾患に対して特に有効な薬物となり、さらに経口または直腸で、すなわちGI管を経由して投与でき、これは、慢性疾患の処置を目的とした薬物にとってきわめて有用かつ重要な特性である。
【0370】
一部の態様によれば、ここに示される化合物は、原核細胞翻訳系ではなく、真核細胞翻訳系に選択的になるように選択され、および/または設計され、すなわちその化合物は、原核細胞、例えば細菌に対する活性と比較して、真核細胞、例えば哺乳類(ヒト)でより高い活性を示す。いかなる特定の理論に束縛されるものではないがリボソームは遺伝子の翻訳に関与するところ、ここに示される化合物は16SリボソームRNAのA-サイトに結合することにより作用することが知られており、真核生物のリボソームのA-サイトにより高い親和性を有し、そうでなければ、原核生物リボソームのA-サイト、ならびに、原核生物の対応物と類似するミトコンドリアのリボソームのA-サイトではなく、真核生物のA-サイトに選択的である。
【0371】
ここで使用される「約」という用語は、±5%または±10%を指す。
【0372】
「を含む(comprises)」、「を含む(comprising)」、「を含む(includes)」、「を含む(including)」、「を有する(having)」という用語、およびそれらの複合は、「を含むが、それ(ら)に限定されない」ことを意味する。
【0373】
「からなる」という用語は、「を含み、それ(ら)に限定される」ことを意味する。
【0374】
「本質的に、・・・からなる」という用語は、組成物、方法または構造が、追加の原料、工程および/または部分を含んでもよいが、追加の原料、工程および/または部分が、特許請求されている組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特性を著しく変えない場合に限られることを意味する。
【0375】
ここで使用される単数形「a」、「an」および「the」は、文脈からそうでないと明確に示さない限り、複数の言及を含む。例えば、「化合物(a compound)」または「少なくとも1つの化合物(at least one compound)」という用語は、その混合物を含む、複数の化合物を含んでもよい。
【0376】
本出願を通じて、本発明の様々な態様は、範囲の型式で示され得る。範囲の型式の記載は、単に利便性および簡潔さのためで、本発明の範囲の不変の限定と解釈されるべきではないことは、理解されるべきである。したがって、範囲の記載は、すべての可能性のあるそこに含まれる範囲、ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示していると考えられるべきである。例えば、1~6といった範囲の記載は、そこに含まれる範囲、例えば1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6など、ならびに、その範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5および6を具体的に開示していると考えられるべきである。これは、その範囲の広さに関係なく適用される。
【0377】
ここで数値範囲が示されている場合は常に、示されている範囲内の任意の数字(分数または整数)を含むことを意味する。第1の示す数および第2の示す数「の範囲/間の範囲」、ならびに第1の示す数「から」第2の示す数「の範囲/までの範囲」という語句は、ここでは互換的に用いられ、第1および第2の示す数、ならびにその間のすべての分数および整数を含むことを意味する。
【0378】
ここで使用される「方法」という用語は、化学、薬学、生物学、生化学および医学の実務者に公知のやり方、手段、技術および手順、または、実務者が公知のものから容易に開発されるやり方、手段、技術および手順を含むが、これらに限定されるものではない、特定の課題を達成するためのやり方、手段、技術および手順を指す。
【0379】
ここで使用される「処置する」という用語は、状態の進展を、無効にすること、実質的に阻害すること、遅くすること、もしくは好転させること、状態の臨床的もしくは審美的症状を実質的に改良すること、または状態の臨床的もしくは審美的症状の外観を実質的に防止することを含む。
【0380】
ここに記載されている化合物は、それらのプロドラッグ、水和物または溶媒和物の形態であり得、またはそのような形態で使用され得る。
【0381】
ここで使用される「プロドラッグ」という用語は、インビボで活性化合物(活性親薬物)に変換される作用剤を指す。プロドラッグは、典型的には、親薬物の投与の促進に有用である。例えば、これらは、経口投与で生物学的に利用可能であるかもしれないが、親薬物はそうではない。プロドラッグは、医薬組成物中において、親薬物と比較して溶解性が改善しているかもしれない。プロドラッグは、インビボで活性化合物の持続放出を達成するためにも、しばしば使用される。限定されるものではないが、プロドラッグの例は、1つ以上のカルボン酸部分を有し、エステル(「プロドラッグ」)として投与される本発明の化合物である。そのようなプロドラッグは、インビボで加水分解され、それにより、遊離の化合物(親薬物)を提供する。選択されたエステルは、プロドラッグの溶解度特性と加水分解速度の両方に影響を与える可能性がある。
【0382】
「溶媒和物」という用語は、可変化学量論(例えば、ジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-等)の複合体を指し、これは、溶質(本発明の化合物)および溶媒により形成され、それによって、溶媒は、溶質の生物学的活性を妨げない。適切な溶媒は、例えば、エタノール、酢酸等を含む。
【0383】
「水和物」という用語は、以前に定義されており、溶媒が水である溶媒和物を指す。
【0384】
ここで使用される「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を指す。
【0385】
ここで使用される「アミン」という用語は、-NR’R’’基を表し、R’およびR’’のそれぞれが、独立して、ここに記載されているとおりで、例えば、水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアリサイクリック、アリールまたはヘテロアリールであり、これらの用語はここで定義されている。R’およびR’’の一方が水素以外であるアミンは、ここで、「修飾アミン」と呼ばれる。
【0386】
ここで使用される「アルキル」という用語は、直鎖および分枝鎖を含む脂肪族炭化水素を表す。アルキルは、1~20個の炭素原子、または1~10個の炭素原子を有するかもしれず、また、分枝または非分枝であるかもしれない。本発明の一部の態様によれば、アルキルは、1~6個、または1~4個の炭素原子を有する低級(またはより低級)アルキル(すなわち、メチル、エチル、プロピルおよびブチル)である。
【0387】
数字範囲;例えば「1~10」が、ここに記載される場合、置換基、このケースではアルキル基は、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等、10個までの炭素原子などを含む可能性があることを意味する。一部の態様では、アルキルは、1~6または1~4個の炭素原子を含む低級アルキルである。
【0388】
アルキルは、置換または無置換であるかもしれない。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル(分枝アルキルを形成する)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、ハロ、トリハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシおよびヒドロキシアルキルの1つ以上であり得、これらの用語は以下で定義されている。アリールにより置換されたアルキルは、ここで「アルカリール」とも呼ばれ、その例はベンジルである。
【0389】
「アルキル」と表される場合、アルキルは、アルケニルまたはアルキニルによっても置きかえられる。ここで使用される「アルキル」という用語は、飽和または不飽和炭化水素も包含し、この用語は、アルケニルおよびアルキニルをさらに包含する。
【0390】
「アルケニル」という用語は、ここで定義されており、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する不飽和アルキル、例えば、アリル、ビニル、3-ブテニル、2-ブテニル、2-ヘキセニルおよびi-プロペニルを表す。アルケニルは、以上で記載されている1個以上の置換基により置換されていてもよく、または無置換であってもよい。
【0391】
ここで定義されている「アルキニル」という用語は、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する不飽和アルキルである。アルキニルは、以上で記載されている1個以上の置換基により置換されていてもよく、または無置換であってもよい。
【0392】
「シクロアルキル」という用語は、すべて炭素が単環式環または縮合環(すなわち、隣接した炭素原子の対を共有する環)の、3個以上の炭素原子を含有する分枝または非分枝基であって、環の1つ以上は、完全共役パイ電子系を有さず、さらに置換されていてもよく、または無置換であってもよい環を指す。例示的なシクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロドデシルを含む。シクロアルキルは、置換されていてもよく、または無置換であってもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、ハロ、トリハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシおよびヒドロキシアルキルの1つ以上であり得、これらの用語は、以下で定義されている。
【0393】
「アリール」という用語は、完全共役パイ-電子系を有する、すべて炭素の単環式環または多環式縮合環(すなわち、隣接した炭素原子の対を共有する環)を表す。アリール基は、無置換であってもよく、または1個以上の置換基により置換されていてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、ハロ、トリハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシおよびヒドロキシアルキルの1つ以上であり得、これらの用語は、以下で定義されている。
【0394】
「ヘテロアリール」という用語は、環(複数可)に1個以上の原子、例えば、窒素、酸素および硫黄を有し、さらに、完全共役パイ電子系を有する単環式環または縮合環(すなわち、隣接した原子の対を共有する環)基を表す。以下に限定されるものではないが、ヘテロアリール基の例は、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンを含む。代表的な例は、チアジアゾール、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンなどである。ヘテロアリール基は、無置換であってもよく、または1個以上の置換基により置換されていてもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、ハロ、トリハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシおよびヒドロキシアルキルの1つ以上であり得、これらの用語は、以下で定義されている。
【0395】
ここで使用される「ヘテロアリサイクリック」という用語は、環(複数可)に窒素、酸素および硫黄のような1個以上の原子を有する単環式環または縮合環基を表す。その環は、1つ以上の二重結合を有してもよい。しかし、その環は、完全共役パイ電子系を有さない。代表的な例は、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどである。ヘテロアリサイクリックは、置換されていてもよく、または無置換であってもよい。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリック、ハロ、トリハロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシおよびヒドロキシアルキルの1つ以上であり得、これらの用語は、以下で定義されている。
【0396】
ここで使用される「ハライド」という用語は、ハロ原子のアニオン、すなわちF、Cl、BrおよびIを指す。
【0397】
「ハロ」という用語は、置換基としてのF、Cl、BrおよびI原子を指す。
【0398】
「アルコキシド」という用語は、Ra-Oアニオンを指し、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロアリサイクリックである。
【0399】
「アルコキシ」という用語は、ORa基を指し、Raはここで定義されているが、水素以外である。
【0400】
ここで使用される「ヒドロキシアルキル」という用語は、1個以上のヒドロキシ基で置換されている、ここで定義されているアルキル基、例えばヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチルおよび4-ヒドロキシペンチルを指す。
【0401】
ここで使用される「アミノアルキル」という用語は、1個以上のアミノ基で置換されている、ここで定義されているアルキル基を指す。
【0402】
ここで使用される「アルコキシアルキル」という用語は、1個のアルコキシ基で置換されているアルキル基、例えば、メトキシメチル、2-メトキシエチル、4-エトキシブチル、n-プロポキシエチルおよびt-ブチルエチルを指す。
【0403】
「トリハロアルキル」という用語は、-CX(式中、Xは、ここで定義されているハロである)を指す。例示的なハロアルキルは、CFである。
【0404】
「グアニジノ」または「グアニジン」または「グアニジニル」基は、-RaNC(=NRd)-NRbRc基(式中、Ra、Rb、RcおよびRdのそれぞれは、R’およびR’’についてここで定義されているとおりであり得る)を指す。
【0405】
「グアニル」または「グアニン」基は、RaRbNC(=NRd)-基(式中、Ra、RbおよびRdは、ここで定義されているとおり)を指す。
【0406】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、グアニジン基は、-NH-C(=NH)-NHである。
【0407】
ここに記載されている態様のいずれかの一部では、グアニル基は、HN-C(=NH)-基である。
【0408】
ここに記載されているアミン基(修飾アミンを含む)、グアニジン基およびグアニン基の1つは、それらの遊離塩基の形態として示されるが、生理学的pHでのそれらのイオン化形態、および/またはその塩、例えば、ここに記載されている医薬として許容できるその塩を包含することを意味する。
【0409】
ここに記載されているアルキル、シクロアルキル、アリール、アルカリール、ヘテロアリール、ヘテロアリサイクリックおよびアシルのいずれか1つについて、代替置換基は、限定されるものではないが、ここで定義されているスルホネート、スルホキシド、チオスルフェート、スルフェート、スルファイト、チオスルファイト、ホスホネート、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、チオカルボニル、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、オキソ、チオオキソ、オキシム、アシル、ハロゲン化アシル、アゾ、アジド、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、ヒドラジンおよびヒドラジドを含む。
【0410】
「シアノ」という用語は、-C≡N基を表す。
【0411】
「ニトロ」という用語は、-NO基を表す。
【0412】
「スルフェート」という用語は、-O-S(=O)-ORa末端基を表し、この用語は以前に定義されており、または、-O-S(=O)-O-連結基について記載し、これらの語句は以前に定義されており、R’は以前に定義されている。
【0413】
「チオスルフェート」という用語は、-O-S(=S)(=O)-ORa末端基または-O-S(=S)(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、Raは以前に定義されている。
【0414】
「スルファイト」という用語は、-O-S(=O)-O-Ra末端基または-O-S(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、R’は以前に定義されている。
【0415】
「チオスルファイト」という用語は、-O-S(=S)-O-Ra末端基または-O-S(=S)-O-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、Raは以前に定義されている。
【0416】
「スルフィネート」という用語は、-S(=O)-ORa末端基または-S(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、Raは以前に定義されている。
【0417】
「スルホキシド」または「スルフィニル」という用語は、-S(=O)Ra末端基または-S(=O)-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、Raは以前に定義されている。
【0418】
「スルホネート」という用語は、-S(=O)-Ra末端基または-S(=O)-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、R’はここで定義されている。
【0419】
「S-スルホンアミド」という用語は、-S(=O)-NRaRb末端基または-S(=O)-NR’-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、Raはここで定義されており、Rbは、独立して、Raについてここで定義されているとおりである。
【0420】
「N-スルホンアミド」という用語は、RaS(=O)-NRb-末端基または-S(=O)-NRa-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、RaおよびRbは、ここで定義されている。
【0421】
ここで使用される「カルボニル」または「カーボネート」という用語は、-C(=O)-Ra末端基または-C(=O)-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、Raはここで定義されている。
【0422】
ここで使用される「チオカルボニル」という用語は、-C(=S)-Ra末端基または-C(=S)-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、Raはここで定義されている。
【0423】
ここで使用される「オキソ」という用語は、(=O)基を表し、ここで、酸素原子は、示された位置の原子(例えば炭素原子)への二重結合で連結される。
【0424】
ここで使用される「チオオキソ」という用語は、(=S)基を表し、硫黄原子は、示された位置での原子(例えば炭素原子)への二重結合により連結される。
【0425】
「オキシム」という用語は、=N-OH末端基または=N-O-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されている。
【0426】
「ハロゲン化アシル」という用語は、-(C=O)Rd基を表し、Rdは、以前に定義されているハライドである。
【0427】
「アゾ」または「ジアゾ」という用語は、-N=NRa末端基または-N=N-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、Raは以前に定義されている。
【0428】
「アジド」という用語は、-N末端基を表す。
【0429】
ここで使用される「カルボキシレート」という用語は、C-カルボキシレートおよびO-カルボキシレートを包含する。
【0430】
「C-カルボキシレート」という用語は、-C(=O)-ORa末端基または-C(=O)-O-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、Raはここで定義されている。
【0431】
「O-カルボキシレート」という用語は、-OC(=O)Ra末端基または-OC(=O)-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、Raはここで定義されている。
【0432】
カルボキシレートは、直鎖状または環状であり得る。環状である場合、Raと炭素原子は共に連結して、C-カルボキシレートとして環を形成し、この基は、ラクトンとも呼ばれる。あるいは、RaとOは共に連結して、O-カルボキシレートとして環を形成する。環状カルボキシレートは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結している場合、連結基として機能し得る。
【0433】
ここで使用される「チオカルボキシレート」という用語は、C-チオカルボキシレートおよびO-チオカルボキシレートを包含する。
【0434】
「C-チオカルボキシレート」という用語は、-C(=S)-ORa末端基または-C(=S)-O-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、Raはここで定義されている。
【0435】
「O-チオカルボキシレート」という用語は、-OC(=S)Ra末端基または-OC(=S)-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、Raはここで定義されている。
【0436】
チオカルボキシレートは、直鎖状または環状であり得る。環状である場合、Raと炭素原子は共に連結して、C-チオカルボキシレートとして環を形成し、この基は、チオラクトンとも呼ばれる。あるいは、RaとOは共に連結して、O-チオカルボキシレートとして環を形成する。環状チオカルボキシレートは、例えば、形成された環における原子が別の基に連結している場合、連結基として機能し得る。
【0437】
ここで使用される「カルバメート」という用語は、N-カルバメートおよびO-カルバメートを包含する。
【0438】
「N-カルバメート」という用語は、RbOC(=O)-NRa-末端基または-OC(=O)-NRa-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、RaおよびRbは、ここで定義されている。
【0439】
「O-カルバメート」という用語は、-OC(=O)-NRaRb末端基または-OC(=O)-NRa-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、RaおよびRbは、ここで定義されている。
【0440】
カルバメートは、直鎖状または環状であり得る。環状である場合、Raと炭素原子は共に連結して、O-カルバメートとして環を形成する。あるいは、RaとOは共に連結して、N-カルバメートとして環を形成する。環状カルバメートは、例えば、形成された環の原子が別の置換基に連結する場合、連結基として機能し得る。
【0441】
ここで使用される「カルバメート」という用語は、N-カルバメートおよびO-カルバメートを包含する。
【0442】
ここで使用される「チオカルバメート」という用語は、N-チオカルバメートおよびO-チオカルバメートを包含する。
【0443】
「O-チオカルバメート」という用語は、-OC(=S)-NRaRb末端基または-OC(=S)-NRa-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、RaおよびRbは、ここで定義されている。
【0444】
「N-チオカルバメート」という用語は、RbOC(=S)NRa-末端基または-OC(=S)NRa-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、RaおよびRbは、ここで定義されている。
【0445】
チオカルバメートは、カルバメートについてここに記載されているように、直鎖状または環状であり得る。
【0446】
ここで使用される「ジチオカルバメート」という用語は、S-ジチオカルバメートおよびN-ジチオカルバメートを包含する。
【0447】
「S-ジチオカルバメート」という用語は、-SC(=S)-NRaRb末端基または-SC(=S)NR’-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、RaおよびRbは、ここで定義されている。
【0448】
「N-ジチオカルバメート」という用語は、RbSC(=S)NRa-末端基または-SC(=S)NRa-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、RaおよびRbは、ここで定義されている。
【0449】
「尿素」という用語は、ここで「ウレイド」とも呼ばれ、-NRaC(=O)-NRbRc末端基または-NRaC(=O)-NRb-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、RaおよびRbは、ここで定義されているとおりであり、Rcは、独立して、RaおよびRbについてここで定義されている。
【0450】
「チオ尿素」という用語は、ここで「チオウレイド」とも呼ばれ、-NRa-C(=S)-NRbRc末端基または-NRa-C(=S)-NRb-連結基を表し、Ra、RbおよびRcは、ここで定義されている。
【0451】
ここで使用される「アミド」という用語は、C-アミドおよびN-アミドを包含する。
【0452】
「C-アミド」という用語は、-C(=O)-NRaRb末端基または-C(=O)-NRa-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、RaおよびRbは、ここで定義されている。
【0453】
「N-アミド」という用語は、RaC(=O)-NRb-末端基またはRaC(=O)-N-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、RaおよびRbは、ここで定義されている。
【0454】
「ヒドラジン」という用語は、-NRa-NRbRc末端基または-NRa-NRb-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、Ra、RbおよびRcは、ここで定義されている。
【0455】
ここで使用される「ヒドラジド」という用語は、-C(=O)-NRa-NRbRc末端基または-C(=O)-NRa-NRb-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、Ra、RbおよびRcは、ここで定義されている。
【0456】
ここで使用される「チオヒドラジド」という用語は、-C(=S)-NRa-NRbRc末端基または-C(=S)-NRa-NRb-連結基を表し、これらの語句は以前に定義されており、Ra、RbおよびRcは、ここで定義されている。
【0457】
ここで使用される「イミデート」という用語は、-O-C(=NRa)-Rb-末端基または-O-C(=NRa)-連結基を表し、RaおよびRbは、ここで定義されている。
【0458】
明確性のため、別々の態様の文脈で記載されている本発明のある特徴は、単一の態様と組み合わせて示してもよいことが理解される。反対に、簡潔さのため、単一の態様の文脈に記載されている、本発明の様々な特徴は、別々に、または、適切なサブコンビネーションとして、または、本発明の他に記載された態様で適切なように示してもよい。様々な態様の文脈で説明されているある特徴は、その態様がそれらの要素がなければ作用しないというのでなければ、その態様の本質的な特徴とは考えるべきではない。
【0459】
以上に説明され、特許請求の範囲に請求されている本発明の様々な態様および側面は、以下の実施例で実験による裏付けが見出される。
【0460】
実施例
以下に実施例について言及するが、これは、これまでの説明と共に、本発明の一部の態様を非限定的に説明する。
【0461】
例1 BB-D-OHの製造
BB-D-OHを大規模生成する一般的な合成経路は、図1に示されている。
【0462】
以降、全体に「当量」は、重量単位で示す。
【0463】
「vol.」、「vol」または「Vol.」という用語は、1体積当量に対する体積比(v/v)を意味する。例えば、1当量に対して10Vol.という場合、1グラムの化合物に対して、溶媒または任意の試薬の示される体積は、その化合物1グラムの体積の10倍であることを意味する。
【0464】
「w/w」または「%w/w」という用語は、当該化合物が加えられた反応混合物の合計重量に対する当該化合物の重量パーセントを表す。
【0465】
「v/w」という用語は、ml/g単位での重量に対する体積の比を表す。
【0466】
「v/wまで濃縮した」または「v/vまで濃縮した」という語句は、溶媒および試薬/生成物/中間体から示されるv/wまたはv/vが達成されるまでの溶媒の除去を表す。
【0467】
化合物107の製造(図1、ステージ1a~g)
中間体化合物101の製造(図1、ステージ1a):メタノール(10vol.)およびD-リボース(1モル当量)の混合物を25(±5)℃で5~10分間撹拌した。次いで、アセトン(12vol.)を添加し、反応混合物を25(±)5℃で5~10分間撹拌した。その後、濃HCl(0.1vol.)を添加し、反応混合物を、30℃未満の温度で5~10分間撹拌した。次いで、温度を55(±)5℃(還流)に上昇し、2時間維持した。反応をTLCでモニターした。反応の完了後、反応混合物を15(±)5℃に冷却し、飽和重炭酸ナトリウム溶液(2.5vol.)を、30℃未満の温度で添加し、混合物を25(±)5℃で30分間撹拌した。その後、真空下、反応混合物を50℃未満の温度で3~4v/wまで濃縮し、25(±)5℃に冷却し、水(10vol.)およびジクロロメタン(DCM;10vol.)で希釈し、25(±)5℃で10~15分間撹拌した。相を分離し、水性層をDCM(5vol.)で抽出した。合わせた有機層(DCM)を、水(2×5vol.)およびブライン溶液(5vol.)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム(1w/w;1重量%)で脱水し、濾過し、濾液を、減圧下、40℃未満の温度で最小体積に濃縮した。生じた中間体の試料を、真空下、40℃未満の温度で1時間脱気し、GC純度に関する品質チェック(QC)に送った。中間体化合物101を含有する濃縮溶液を、真空下、45℃未満の温度で、アセトニトリル(2vol.)と共に蒸留し、得られた反応混合物を、25(±)5℃に冷却し、アセトニトリル(1.5vol.)を25(±)5℃未満の温度で添加した。得られた混合物を、25(±)5℃で、きれいな容器中に取り出した。反応容器をアセトニトリル(0.5vol.)で洗浄し、上述のきれいな容器に加えた。
【0468】
化合物102の製造(図1、ステージ1b):アセトニトリル(8vol.)およびデス-マーチンペルヨージナン(DMP)(1.3モル当量)を、窒素雰囲気下、25(±)5℃で反応容器に添加し、混合物を5(±)5℃に冷却し、10~15分間撹拌し、5(±)5℃で、アセトニトリルに溶解した化合物101(ステージ-1a化合物)を、反応混合物に2~3時間かけてゆっくり添加した。その後、温度を15(±)3℃に上昇し、反応混合物をさらに2時間撹拌した。反応をGCでモニターした。反応の完了後、酢酸エチル(10vol.)を15(±)3℃で添加し、得られた反応混合物を5(±)5℃に冷却し、飽和重炭酸塩溶液に溶かしたチオ硫酸ナトリウムの溶液を添加した。反応混合物を、25(±)5℃で1時間撹拌し、塩化ナトリウム(4w/w;4重量%)を添加し、得られた混合物を25(±)5℃で15~20分間撹拌し、次いで濾過した。その後、層を分離し、水性層を酢酸エチル(5vol)で抽出し、合わせた有機層を、飽和重炭酸塩溶液、続いてブライン溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム(1w/w;1重量%)で脱水した。混合物を濾過し、減圧下、40℃未満の温度で濾液を最小体積に濃縮した。得られた残渣を、真空下、40℃未満の温度でDCM(2vol.)と共に数(2~3)回蒸留した。その後、DCM(10v/w)を25(±)5℃とし、混合物を5分間撹拌した。得られた混合物の試料を、GC分析のためにQCに送った。 化合物103の製造(図1、ステージ1c):硫酸マグネシウム(0.5%w/w)を、25(±5)℃で、ステージ1b)で得られた反応混合物に添加し、得られた混合物を5分間撹拌した。次いで、N-ベンジルヒドロキシルアミン塩酸塩(0.65モル当量)を添加し、反応混合物を、25(±)5℃で5~10分間撹拌し、その後、10(±)5℃に冷却し、炭酸ナトリウム(0.25モル当量×4)を、同じ温度で、5~10分の間隔でゆっくり、少しずつ添加した。温度を25(±)5℃に上昇し、混合物を2時間撹拌した。得られた混合物の試料を、GC分析のためにQCに送った。反応混合物を濾過し、得られた湿ケーキをDCM(1.5v/w)でスラリー洗浄した。濾過後、合わせた濾液を、水(5v/w)、続いてブライン溶液で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム(1%w/w)で脱水し、濾過し、減圧下、40℃未満の温度で最小体積に濃縮した。THF(2vol.)を得られた残渣に添加し、真空下、45℃未満の温度で混合物を蒸留した。その後、THF(10v/w)を添加し、得られた生成物の試料を、MCとHPLC純度に関するQCに送った。
【0469】
化合物104の製造(図1、ステージ1d):ステージ1cで得られた反応混合物を-70(±)5℃に冷却し、そこに、THF中のメチルマグネシウムクロライドの溶液(2.5v/w)を、-70(±)5℃で2~3時間かけて添加した。反応混合物を、-70(±)5℃で2時間、次いで、0(±)5℃で1時間撹拌した。試料を、HPLC分析のためにQCに送った。反応混合物を、窒素雰囲気下、0(±)10℃で塩化アンモニウム溶液中にゆっくり注ぎ、酢酸エチル(10v/w)を添加し、得られた混合物を25(±)5℃で10分間撹拌した。その後、相を分離し、水性層を酢酸エチル(5v/w)で抽出した。合わせた有機層を、水(5v/w)およびブライン溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウム(1%w/w)で脱水し、濾過し、真空下、40℃未満の温度で1~2体積(v/v)まで濃縮した。次いで、反応混合物を25(±)5℃に冷却し、メタノール(5v/w)を25(±)5℃で添加し、得られた混合物を、真空下、40℃未満の温度で2~3体積(v/v)まで蒸留した。反応混合物を25(±)5℃に冷却し、25(±)5℃で1時間、次いで、-40(±)5℃で2時間撹拌した。得られた固体を濾別し、冷メタノール(-30(±)5℃)(1v/w)で洗浄し、真空下、35(±)5℃で6時間乾燥させた。得られた生成物の試料をLODに関するQCに送った。
【0470】
化合物105の製造(図1、ステージ1e):メタノール(10vol.)を、ステージ1dで得られた化合物104(1モルl当量)に添加し、混合物を25(±)5℃で5~10分間撹拌した。パラ-トルエンスルホン酸(PTSA)(1.4モル当量)を添加し、混合物を25(±)5℃で5~10分間撹拌した。次いで、温度を64(±)3℃(還流)に上昇し、2時間維持した。試料を、HPLCモニタリングのためにQCに送った。反応混合物を、真空下、45(±)3℃未満の温度で3~4v/wまで濃縮し、その後、25(±)5℃に冷却し、25(±)5℃で水(10v/w)に希釈し、10~15分間撹拌した。次いで、反応混合物を25(±)5℃未満の温度で飽和重炭酸ナトリウム溶液にゆっくり添加し、30~60分間撹拌し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機相を硫酸ナトリウム(1%w/w)で脱水し、濾過し、減圧下、40(±)5℃未満の温度で最小体積に濃縮した。得られた生成物を、45(±)5℃未満の温度でメタノール(3vol.)と共に蒸留し、25(±)5℃に冷却した。メタノール(3vol.)を添加し、得られた混合物の試料を、HPLC純度に関するQCに送った。
【0471】
化合物106の製造(図1、ステージ1f):ステージ1eで得られた化合物105の混合物を、オートクレーブに入れ、反応混合物を25(±)5℃でメタノール(8vol.)で希釈し、得られた混合物を窒素で5~10分間脱気した。10%パラジウム炭素(50%湿潤、0.1%w/w)を添加し、反応混合物を、25(±)5℃で窒素で2回フラッシュした(各回、3kgのHを用いる)。次いで、4~5kgの水素圧力を適用し、反応混合物を、4~5時間、50(±)5℃に加熱した。反応をTLCでモニターした。反応の完了後、反応混合物を25(±)5℃に冷却し、窒素雰囲気下、セライトベッドで濾過し、セライトベッドをメタノールで洗浄した。合わせた濾液を、0.5μmフィルターを通して濾過し、10体積となるまで真空下で蒸留した。得られた生成物の試料を、GC純度に関するQCに送った。
【0472】
化合物107の製造(図1、ステージ1g):ステージ1fで得られた化合物106を含有する混合物を、10(±)5℃に冷却し、炭酸ナトリウム(3.0モル当量)を添加した。反応混合物を15~20分間撹拌し、10(±)5℃を2時間維持しながら、そこにトルエン溶液中の50%CBzクロリド(1.0モル当量)を添加した。反応をTLCでモニターした。反応の完了後、反応混合物を濾過し、25(±)5℃でメタノール(3vol.)で洗浄した。溶媒を、真空下、40(±)5℃未満の温度で、1~2体積となるまで留去し、得られた混合物を25(±)5℃に冷却し、酢酸エチル(3vol.)で希釈した。相を分離し、有機相を飽和重炭酸ナトリウム溶液(1.5vol.)および水(1vol.)で洗浄し、硫酸ナトリウム(1%w/w)で脱水し、濾過した。
【0473】
有機溶媒を、真空下、40(±)5℃未満の温度で完全に蒸留して、それにより、単離した化合物107を得た。
【0474】
規模を拡大したバッチを60Kg規模で完了し、単離後、33.9Kg(全収率27%)のS-異性体化合物107(光学的純度99.5%)を得た。
【0475】
化合物108の製造(図1、ステージ2):
化合物108の製造に関し、硫酸ナトリウムの濾過後、化合物107を含有する溶液を、最小体積まで蒸留し、残渣をアセトニトリル(2vol.)で希釈し、得られた混合物を、真空中、40(±)5℃で蒸留した。その後、混合物を25(±)5℃に冷却し、アセトニトリル(2vol.)を添加し、混合物を次の工程に移した。
【0476】
25(±)5℃で、アセトニトリル(8vol.)、続いて、トリエチルアミン(3.2モル当量)および4-N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.1モル当量)を添加し、反応混合物を5(±)5℃に冷却し、塩化ベンゾイル(59mL;1.2モル当量)を添加した。反応混合物を、5(±)5℃で2時間撹拌した。試料を、HPLCモニタリングのためにQCに送った。反応の完了後、飽和重炭酸ナトリウム溶液(3vol.)を、25(±)5℃で添加し、得られた混合物を1~2時間撹拌した。次いで、混合物を酢酸エチル(5vol.)で抽出し、相を分離し、有機相をNaSOで脱水し、濾過し、真空下、40(±)5℃未満の温度で溶媒を完全に蒸発させ、化合物108を粘性のある液体として得た。
【0477】
規模を拡大したバッチを30Kg規模で完了し、単離後、37.14Kg(75%)の化合物108を得た。
【0478】
BB-D-OHの製造:
BB-D-OHの製造に関し、硫酸ナトリウムの濾過後、化合物108を含有する溶液を、最小体積まで蒸留し、酢酸を添加した。溶媒を蒸発した。酢酸を、得られた残渣に添加し、混合物を次の工程に移した。
【0479】
30%硫酸溶液(3vol.)を、25(±)5℃で、1~2時間かけてゆっくり添加し、次いで、反応混合物を28(±)5℃に加熱し、この温度で36時間撹拌した。試料を、HPLCによるSM含有量に関するQCに送った。反応の完了後、反応混合物を25(±)5℃に冷却し、ジクロロメタン(10vol.)で希釈し、30分間撹拌した。その後、反応混合物を1時間かけて沈降させ、底の有機物と上の水性層に分離した。DCM層を水(5vol.×3)、飽和重炭酸ナトリウム溶液およびブライン溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を、真空下、30(±)5℃未満の温度で濃縮し、それにより、粗生成物を濃厚シロップとして得た。
【0480】
BB-D-OHの精製:
得られた粗生成物をジクロロメタンに溶解し、25(±)5℃でシリカゲル(100~200メッシュ)、(3%w/w)に吸収させ、乾燥した。
【0481】
25(±)5℃で、ジクロロメタン(20vol.)をシリカゲル(100~200メッシュ;12v/w;1.2kg)に添加し、混合物を25(±)5℃でカラムに注いだ。適正なベッドを形成するために、25(±)5℃で、10vol.のジクロロメタンをカラムに通過させた。シリカに吸収させたステージ-3粗生成物を、カラムの頂部に充填し、非極性不純物を溶出するために、ジクロロメタン(10vol.)、続いてジクロロメタン(20vol.)中の1%酢酸エチルを使用して予備溶出を行った。次いで、化合物108の残渣を回収するために、ジクロロメタン(150vol.)中の2.5%酢酸エチルを溶離液として使用した。化合物108の溶出の完了後、すべてのBB-D-OH生成物を溶出するまで、カラムをジクロロメタン中の15%酢酸エチルで溶出した。純粋な分画を収集し、試料を純度に関するQCに送った。すべての許容される分画を合わせ、30(±)5℃未満の温度で最小体積に濃縮し、DCM溶液として保存した。試料に、完全な分析のためにQCを施した。
【0482】
ある規模を拡大したバッチを、37.1Kg規模で完了し、カラムで精製後、20.6KgのBB-D(収率57%)を92%純度(HPLCにより判定)で得た。
【0483】
別の規模を拡大したバッチを、38.7Kg規模で完了し、カラムで精製後、19.8Kg(収率53%)を95%純度(HPLCにより判定)で得た。
【0484】
例2 BB-Aの製造
BB-Aを大規模生成する一般的な合成経路は、図2に示されている。
【0485】
G418スルフェートを、この技術分野で公知の方法を使用して、G418(化合物111)の遊離塩基形態に変換した。
【0486】
6-メチルパロマミンの製造(化合物112、図2、ステージ-2):
精製したG-418(遊離塩基として;1.0モル当量)およびHClのメタノール溶液(MeOH HCl;10vol)の混合物を、70(±5)℃で24時間加熱した。反応の進行をHPLCでモニターし、24時間後、G-418は約4%であることが示された。次いで、真空下、70(±5)℃でメタノール(体積の2/3)を留去した。反応混合物を30(±5)℃に冷却し、そこにMeOH HCl(10vol)を添加した。得られた混合物を、70(±5)℃で24時間加熱した。反応の進行を、HPLCでモニターし、48時間後、G-418は約0.5%であることが示された。次いで、反応混合物を5~10℃に冷却し、1~2時間撹拌し、次いで濾過し、フィルター上で20~30分間乾燥した。得られた固体を、エタノールを含有する反応容器に移した。混合物を0~10℃に冷却し、5~10℃で1~2時間撹拌し、次いで濾過し、冷エタノールで洗浄し、真空下、50(±5)℃で5~6時間乾燥した。
【0487】
G-418の酸開裂の規模を拡大した反応を16.4Kg規模で完了し、単離後、0.47%のG418を含有する12.7Kg(85%)の6-メチルパロマミンを得た。
【0488】
化合物113の製造(6-メチルパロマミンのCBz保護、図2、ステージ-3):
6-メチルパロマミン(化合物112、1モル当量)およびDIPEA(10モル当量)を、アセトン(15vol)および水(15vol)に溶解した。CBzCl(4モル当量)(トルエン中の50%溶液として)を30(±5)℃で添加し、反応混合物を24時間撹拌した。その後、混合物を水(10vol)で希釈し、15~20分間撹拌し、次いで濾過した。得られた固体を、30(±5)℃で、アセトン(20vol)中で1~2時間撹拌し、真空下で濾過し、得られたスラリーをアセトン(5vol)で洗浄した。得られた生成物を、真空下、50~60℃で3~4時間乾燥させ、粗化合物113を白色固体として得た。
【0489】
CBz保護反応を12.5kg規模で完了させ、単離後、15.8Kgのトリス-CBz-6-メチルパロマミン(収率82%;HPLCにより純度93%と判定)を得た。
【0490】
BB-Aの製造(トリス-CBz-6-メチルパロマミンのアセチル保護;図2):
トリス-CBz-6-メチルパロマミン(化合物113、1.0モル当量)を、ピリジン(2vol)およびDMF(3vol)に溶解し、DMAP(0.1モル当量)を添加し、得られた反応混合物を、30(±5)℃で10~15分間撹拌した。30(±5)℃で反応混合物に、無水酢酸を、ロットごとに(1+1+1+1+0.5モル当量)ゆっくりと添加した。反応の進行を、HPLCでモニターした。反応の完了後、反応混合物を水(10vol)および酢酸エチル(10vol)で希釈し、10~15分間撹拌した。その後、有機層を分離し、水性層を酢酸エチル(5vol)で抽出した。合わせた有機層を20%HCl水溶液(10vol)、水(10vol)およびブライン溶液(10vol)で洗浄し、NaSOで脱水し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。
【0491】
粗生成物は、酢酸エチルおよびDCM(15~40%)を溶離液として使用し、シリカゲル(100~200)メッシュ(20w/w)カラムで精製した。
生成物を含有する3つの主要な分画を収集し、真空下で濃縮した。
【0492】
規模を拡大した反応を15.5Kg規模で完了し、単離後、16.5Kg(86%)のBB-Aを得た。
【0493】
例3 ELX-02の製造
ELX-02を大規模生成する一般的な合成経路は、図3に示されている。
【0494】
BB-Dの製造(インサイチュー):
DCM(1.5モル当量)中の化合物BB-D-OH(図1)の溶液に、25(±)5℃でDCM(8vol.)を添加し、混合物を10~20分間撹拌した。その後、溶液を-5(±)5℃に冷却し、そこにトリクロロアセトニトリル(3モル当量)を、-5(±5)℃で添加し、得られた混合物を5~10分間撹拌した。DCM(0.5vol.)中のDBU(0.15モル当量)溶液を、温度を-5(±5)℃に維持しながら、反応混合物にゆっくり添加し、混合物を2時間撹拌した。反応の進行を、HPLCでモニターした。反応の完了後、10(±)5℃で20%塩化アンモニウム溶液(10vol.)を反応混合物にゆっくり添加した。層を分離し、有機層を5(±)5℃で20%塩化ナトリウム溶液(10vol.)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム(1%w/w)で脱水した。
【0495】
化合物121の製造(BB-AとBB-Dのカップリング、図3):
製造されたインサイチューのBB-DとBB-A(1モル当量)を含有する有機層を、10(±)5℃で混合し、10~15分間撹拌した。モレキュラシーブ(0.5%w/w)を添加し、混合物を10~15分間撹拌し、その後、-15(±)5℃に冷却した。-15(±)5℃を維持しながら、DCM(0.5vol.)中のBF-エーテラート(0.1モル当量)溶液を、反応混合物にゆっくり添加し、得られた混合物を、この温度で1時間撹拌した。反応の進行を、HPLCでモニターした。反応完了後、温度を5(±)5℃に上昇し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10vol.)をゆっくり添加した。得られた混合物をセライトベッドで濾過し、セライトベッドをDCM(5vol.)で洗浄した。有機層を分離し、水性層をDCM(5vol.)で抽出した。合わせた有機層を、塩化ナトリウム溶液(5vol.)で洗浄し、大気圧下、45(±)5℃で濃縮した。残渣にメタノール(2vol.)を添加し、その後、真空下、45(±)5℃で留去した。
【0496】
化合物122の製造(図2;アセチル脱保護):
化合物121を含有する上記工程の生成物を、10(±)5℃に冷却し、アンモニアのメタノール溶液(25v/w)を添加した。反応混合物を、30(±)5℃で24時間撹拌し、反応の進行をHPLCでモニターした。反応の完了後、反応混合物を、真空下、40(±)5℃で濃縮した。酢酸エチル(2vol.)を残渣に添加し、真空下、40(±)5℃で溶媒を蒸留した。得られた混合物を30(±)5℃に冷却し、酢酸エチル(10vol.)を添加し、混合物を30~40分間撹拌し、濾過し、水(2×10vol.)およびブライン溶液(10vol.)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、減圧下で濃縮した。得られた残渣を、40(±)5℃でMTBE(2v/w)と共に蒸留し、混合物を30(±)5℃に冷却した。MTBE(20v/w)を添加し、混合物を30(±)5℃で2時間撹拌した。生成物を濾過し、MTBE(2vol.)で洗浄し、化合物122(収率85%;HPLCにより純度98.2%と判定)を得た。
【0497】
化合物123の製造(ELX-02遊離塩基;図2;CBz-脱保護):
化合物122(1モル当量)およびMeOH(10vol.)を、25±5℃で混合し、水(1vol.)を添加し、得られた混合物を10~15分間撹拌した。10%Pd/C(0.25%w/w)を添加し、得られた混合物を、水素圧力下で25(±5)℃で24~36時間撹拌した。反応の進行をTLCでモニターした。反応の完了後、反応混合物をセライトベッドで濾過し、セライトベッドをMeOHで洗浄した。濾液を、真空下で45±5℃で濃縮した。粗生成物(純度95.8%)をカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0498】
ELX-02の製造(図2、塩形態):
MeOH(10vol.)中のELX-02遊離塩基(化合物123、1モル当量)の混合物を、10~15分間撹拌し、次いで、0~10℃に冷却した。予め冷却したメタノール硫酸(2.0モル当量)溶液を、0±5℃で混合物にゆっくり添加し、反応混合物を、0~10℃で20~30分間、次いで30±5℃で1~2時間撹拌し、その後、真空下で45±5℃で濃縮した。アセトン(15vol.)を添加し、得られた混合物を、25±5℃で30分間撹拌し、濾過し、ケーキをアセトン(5vol.)で洗浄し、真空下、40±5℃で6時間乾燥させ、HPLCによる純度が95.78%(生成物ピーク:76.36%、硫酸塩ピーク:19.42%)であることを特徴とするELX-02を硫酸塩として得た。
【0499】
得られた生成物の構造を、それぞれ、図4および5に示されるH-NMRおよびマススペクトルで確認した。
【0500】
例4 無細胞アッセイによるリードスルー活性
実験方法:
プラスミドを、インビトロ転写し、ウサギ網状赤血球(TNT mix)を使用して翻訳し、次いで、ホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼの発現を試験した。WTプラスミドは、ホタルルシフェラーゼとウミシイタケルシフェラーゼの両者を発現したが、変異プラスミドは、挿入された配列に見られる終止コドンのため、ウミシイタケルシフェラーゼしか発現しなかった。リードスルーアッセイは、試験化合物および対照について、インビトロ転写/翻訳反応混合物に当該化合物を添加することにより行った。中途ナンセンス/終止コドン変異を抑制した化合物のケースでは、ホタルルシフェラーゼが発現し、その発現の倍の変化が観察された。
【0501】
結果:
レット症候群の変異であるR270Xのリードスルー活性は、例1および2で製造したELX-02を使用して試験し、変異の抑制は、ホタル/ウミシイタケ発現比の値に基づいて計算し、WTおよび対照試料(テスト化合物ではない)の発現レベルに対して正規化した。
【0502】
図6A~Bは、本発明の態様によるELX-02の0~12μMの濃度で行った、レット症候群の変異であるR270Xナンセンス変異を抑制する用量反応無細胞アッセイの結果を示す。
【0503】
図6Aは、ELX-02の濃度の関数としての、変異R270Xのリードスルーと比較したWTのリードスルー%(50%ウミシイタケに対するリードスルー)を示し、終止コドン変異のリードスループロットを図示し、図6Bは、ELX-02の濃度の関数としての、変異R270Xのリードスルーと比較した、ELX-02に曝露後の非処理対照からのリードスルーの倍増を示し、終止コドン変異のリードスループロットを図示す。ELX-02は、レット症候群の変異R270Xのリードスルーに関し、用量依存的増加を示した。
【0504】
本発明は、特定の態様に関連して説明されているが、多くの代替、修正および変形が当業者に明らかなことは明白である。したがって、特許請求の範囲の精神および範囲に含まれるそのような代替、修正および変更のすべてを包含することが意図されている。
【0505】
本明細書で言及するすべての出版物、特許および特許出願は、その全体を参照することによりこの明細書に組み込まれ、個々の公報、特許または特許出願が、具体的かつ個々に、参照によりこの明細書に組み込まれることが示されるように、本明細書に組み込む。さらに、この出願におけるいかなる参照の引用または特定は、そのような参照が、この発明に対する従来技術として利用できることの承認と解釈されるべきではない。用いられたセクションの見出しの範囲は、これらが、必ずしも限定的なものと解釈されるべきではない。
以下に、本願の出願当初の請求項を実施の態様として付記する。
[1] 式III:
【化30】
(式中、
OT およびOT は、それぞれ独立して、供与体保護ヒドロキシル基であり;
は、アルキルであり;
Dは、保護アミノ基である)
で表される化合物を製造する方法であって:
前記方法は、
式IIIa:
【化31】
で表される化合物と式R MgX(Xはハライドである)で表されるグリニャール試薬を反応させ、それにより、式IIIb:
【化32】
で表される化合物を立体選択的に得ること、
前記式IIIbで表される化合物を式IIIc:
【化33】
で表される化合物に変換すること、
前記式IIIcで表される化合物とアミノ保護性基を反応させ、それにより、前記Dを形成すること;および
前記式IIIcで表される化合物とヒドロキシ保護性基を反応させ、それにより、前記OT およびOT を形成すること、
を含み、それにより、前記式IIIで表される化合物を製造する、方法。
[2] 前記アミノ保護性基が、N-ベンジルオキシカルボニルである、[1]に記載の方法。
[3] 前記ヒドロキシ保護性基のそれぞれがベンゾイルである、[1]~[2]のいずれか一つに記載の方法。
[4] 前記式IIIaで表される化合物が:
D-リボースをジオキソラン保護D-リボースに変換すること;
5’’位のヒドロキシ基を、それぞれのアルデヒドに酸化すること;および
前記アルデヒドとN-ベンジルヒドロキシルアミン塩酸塩を反応させることにより製造される、[1]~[3]のいずれか一つに記載の方法。
[5] Dが、N-ベンジルオキシカルボニル(CBz)保護アミノ基で、R がメチルで、T およびT のそれぞれがベンゾイルである、[1]~[4]のいずれか一つに記載の方法。
[6] 前記式IIIaで表される化合物をD-リボースから製造すること、前記式IIIaで表される化合物と前記グリニャール試薬を反応させること、前記式IIIbで表される化合物を前記式IIIcで表される化合物に変換すること、および、前記式IIIcで表される化合物とアミノ保護性基を反応させ、それにより前記Dを形成することが、「ワンポット反応」として行われる、[1]~[5]のいずれか一つに記載の方法。
[7] 式I:
【化34】
(式中、
矩形破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し;
は、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールから選択され;
は、水素、アシルおよびアミノ置換α-ヒドロキシアシルから選択され;
は、アルキルである)
で表される擬似三糖アミノグリコシド化合物、または医薬として許容できるその塩を製造する方法であって:
前記方法は、
[1]~[6]のいずれか一つにしたがって、式IIIで表される化合物を製造すること;前記式IIIで表される化合物と、式II:
【化35】
(式中、
矩形破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し;
OPは、受容体保護ヒドロキシル基であり;
APは、受容体保護アミノ基であり;
Aは、受容体保護ヒドロキシル基(OP)であり;
Bは、式IのR が水素の場合、受容体保護アミン基であり、または、R が水素以外のものである場合、R を定義する基の保護形態もしくは非保護形態である)
で表される化合物をカップリングすること;
前記受容体保護および供与体保護ヒドロキシル基を脱保護すること;
前記受容体保護および供与体保護アミノ基を脱保護すること;および
存在する場合は、R を定義する基の前記保護形態を脱保護すること、
を含み、それにより、式Iで表される化合物を製造する、方法。
[8] 前記カップリングが、BF エーテラートの存在下で行われる、[7]に記載の方法。
[9] 前記式IIIの化合物が、前記カップリングの前にその活性化形態に変換される、[7]または[8]に記載の方法。
[10] 前記式IIIの化合物の活性化形態への変換が、前記活性化形態を単離することなく、インサイチューで行われる、[9]に記載の方法。
[11] R がメチルで、R が水素で、前記式IIで表される化合物が:
G418スルフェートを6-メチルパロマミンに変換すること;
ヒドロキシル基を前記受容体保護ヒドロキシル基に変換すること;および
アミノ基を前記受容体保護アミノ基に変換することにより製造される、[7]~[10]のいずれか一つに記載の方法。
[12] G418スルフェートを6-メチルパロマミンに変換することが、G418の遊離塩基の形態とHClのメタノール溶液の接触を含む、[11]に記載の方法。
[13] 前記受容体保護ヒドロキシル基のそれぞれが、O-アセチルである、[7]~[12]のいずれか一つに記載の方法。
[14] 前記受容体保護ヒドロキシル基の脱保護が、アンモニアのメタノール溶液中で行われる、[13]に記載の方法。
[15] 前記受容体保護アミノ基のそれぞれが、N-ベンジルオキシカルボニル(CBz)保護アミノ基である、[7]~[14]のいずれか一つに記載の方法。
[16] 前記受容体保護アミノ基の脱保護が、Pd/C触媒を用いた水素化により行われる、[15]に記載の方法。
[17] 6’位の立体配置がR-配置である、[7]~[16]のいずれか一つに記載の方法。
[18] 前記式Iの化合物が硫酸塩で、前記方法が、式Iで表される化合物の遊離塩基の形態を前記硫酸塩に変換することをさらに含む、[7]~[17]のいずれか一つに記載の方法。
[19] 前記変換が、式Iで表される化合物の遊離塩基の形態と、H SO のメタノール溶液の接触により行われる、[18]に記載の方法。
[20] R がメチルで、6’位の配置がR-配置で、R が水素で、R がメチルである、[7]~[19]のいずれか一つに記載の方法。
[21] 前記式IIで表される化合物が、[22]~[26]のいずれか一つに記載されているように製造される、[7]~[19]のいずれか一つに記載の方法。
[22] 式II:
【化36】
(式中、
破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し;
は、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであり;
OPは、受容体保護ヒドロキシル基であり;
APは、受容体保護アミノ基であり;
Aは、受容体保護ヒドロキシル基(OP)であり;
Bは、受容体保護アミン基、アシル、または保護もしくは非保護アミノ置換α-ヒドロキシアシルである)
で表される化合物を製造する方法であって:
前記方法は、
式IIa:
【化37】
(式中、R は、水素、アシルまたはアミノ置換α-ヒドロキシアシルである)
で表される化合物、または医薬として許容できるその塩を提供すること;
前記アミノ基のそれぞれを、前記受容体保護アミノ基に変換すること;および
前記ヒドロキシ基のそれぞれを前記受容体保護ヒドロキシル基に変換すること、
を含む、方法。
[23] 前記受容体保護ヒドロキシル基のそれぞれが、O-アセチルである、[22]に記載の方法。
[24] 前記受容体保護アミノ基のそれぞれが、N-ベンジルオキシカルボニル(CBz)保護アミノ基である、[22]~[23]のいずれか一つに記載の方法。
[25] R がメチルで、6’位の配置がR-配置で、前記式IIaの化合物の提供が、G418を前記式IIaで表される化合物に変換することを含む、[22]~[24]のいずれか一つに記載の方法。
[26] 前記変換が、G418の遊離塩基の形態とHClのメタノール溶液の接触を含む、[25]に記載の方法。
[27] [7]~[21]のいずれか一つに記載の方法により製造される、式Iで表される擬似三糖化合物、または医薬として許容できるその塩。
[28] [27]に記載の化合物および医薬として許容できる塩を含む、医薬組成物。
[29] [1]~[6]のいずれか一つに記載の方法により製造される、式IIIで表される化合物。
[30] 式IIIaで表される化合物。
[31] 式IIIbで表される化合物。
[32] 式IIIcで表される化合物。
[33] 式Ia:
【化38】
(式中、
矩形破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し;
は、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールから選択され;
は、置換または無置換アルキル、OR’およびNR’R’’から選択され、R’およびR’’は、独立して、水素、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換ヘテロアリール、置換または無置換アルカリールおよびアシルから選択され;
は、水素、アシル、アミノ置換α-ヒドロキシアシル、置換または無置換アルキル、置換または無置換シクロアルキル、置換または無置換アリール、置換または無置換アルカリール、および細胞透過性基から選択され;
は、アルキルである)
で表される擬似三糖アミノグリコシド化合物、または医薬として許容できるその塩を製造する方法であって、
前記方法は、
[1]~[6]のいずれか一つにしたがって、式IIIで表される化合物を製造すること;および
前記式IIIで表される化合物と、式IIb:
【化39】
(式中、
矩形破線は、6’位でのS-配置またはR-配置を表し;
OPは、受容体保護ヒドロキシル基であり;
APは、受容体保護アミノ基であり;
Aは、式IaのR がOR’で、R’が水素である場合、受容体保護ヒドロキシル基(OP)であり;式IaのR がNR’R’’で、R’およびR’’の少なくとも1つが水素である場合、受容体保護アミン基(AP)であり;または、R がOH、NH 、NHR’もしくはNHR’’以外である場合、R を定義する基の保護形態もしくは非保護形態であり;
Bは、式IaのR が水素である場合、受容体保護アミン基(AP)であり、または、R が水素以外である場合、R を定義する基の保護形態もしくは非保護形態である)で表される化合物をカップリングすること;
前記受容体保護および供与体保護ヒドロキシル基を脱保護すること;
前記受容体保護および供与体保護アミノ基を脱保護すること;および
存在する場合は、R および/またはR を定義する基の前記保護形態を脱保護すること、
を含み、それにより、式Iaで表される化合物を製造する、方法。
[34] 前記カップリングが、BF エーテラートの存在下で行われる、[33]に記載の方法。
[35] 前記式IIIの化合物が、前記カップリングの前にその活性化形態に変換される、[33]~[34]のいずれか一つに記載の方法。
[36] 前記式IIIの化合物の活性化形態への変換が、前記活性化形態を単離することなく、インサイチューで行われる、[35]に記載の方法。
[37] 前記受容体保護ヒドロキシル基のそれぞれが、O-アセチルである、[33]~[36]のいずれか一つに記載の方法。
[38] 前記受容体保護ヒドロキシル基の脱保護が、アンモニアのメタノール溶液中で行われる、[37]に記載の方法。
[39] 前記受容体保護アミノ基のそれぞれが、N-ベンジルオキシカルボニル(CBz)保護アミノ基である、[33]~[38]のいずれか一つに記載の方法。
[40] 前記受容体保護アミノ基の脱保護が、Pd/C触媒を用いた水素化により行われる、[39]に記載の方法。
[41] 6’位の立体配置がR-配置である、[33]~[40]のいずれか一つに記載の方法。
[42] 前記式Iaの化合物が硫酸塩で、前記方法が、式Iaで表される化合物の遊離塩基の形態を前記硫酸塩に変換することをさらに含む、[33]~[41]のいずれか一つに記載の方法。
[43] 前記変換が、式Iaで表される化合物の遊離塩基の形態と、H SO のメタノール溶液の接触により行われる、[42]に記載の方法。
[44] [33]~[43]のいずれか一つに記載の方法により製造される、式Iaで表される擬似三糖化合物、または医薬として許容できるその塩。
[45] [44]に記載の化合物および医薬として許容できる塩を含む、医薬組成物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B